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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(95)平成22年 1月29日 東京地裁 平20(ワ)19640号 損害賠償請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(95)平成22年 1月29日 東京地裁 平20(ワ)19640号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成22年 1月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)19640号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2010WLJPCA01298019

要旨
◆被告会社の契約社員であった原告が、同社の部長らによるパワーハラスメント等や同人らを含む従業員によるいじめ行為が行われていたところ、被告会社には、これを知っていたにもかかわらず放置したなどの過失があるとして、同部長ら及び被告会社に対し、不法行為等に基づく損害賠償を求めた事案において、同部長が、原告が業務について満足な指導を受けることができていないことを知りうる状況にありながら、会議の席上で厳しく原告の仕事ぶりを揶揄するなどしたことは不法行為を構成し、被告会社には、従業員が業務について十分な指導を受けた上で就労できるよう職場環境を保つ労働契約上の付随義務違反が認められるなどと判断した事例

参照条文
民法415条
民法709条
民法710条

裁判年月日  平成22年 1月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)19640号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2010WLJPCA01298019

茨城県ひたちなか市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 田中博文
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 株式会社Y1
同代表者代表取締役 A
東京都多摩市〈以下省略〉
被告 Y2
東京都日野市〈以下省略〉
被告 Y3
被告3名訴訟代理人弁護士 小林弘明

 

 

主文

1  被告Y2及び被告株式会社Y1は,原告に対し,連帯して,55万円及びこれに対する平成20年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,原告と被告Y2及び被告株式会社Y1との間においては,原告に生じた費用の10分の1を被告Y2及び被告株式会社Y1の負担とし,その余は原告の負担とし,原告と被告Y3との間に生じたものは原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,連帯して,729万9580円及びこれに対する平成20年4月1日から支払済みまで,年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要等
1  事案の概要
本件は,被告株式会社Y1(以下「被告会社」という。)の契約社員であった原告が,被告らに対し,以下の理由で,損害賠償を請求した事案である。
(1)  被告Y2(以下「被告Y2」という。)及び被告Y3(以下「被告Y3」という。)に対して
被告会社の社員である被告Y2は,原告に対し,いわゆるパワーハラスメントに該当する不法行為をし,また,同じく被告会社の従業員である被告Y3は,原告に対し,いわゆるセクシャルハラスメント及びパワーハラスメントに該当する不法行為をした。
(2)  被告会社に対して
ア 被告Y3及び被告Y2の使用者として不法行為責任(使用者責任〔民法715条〕)を負う。
イ 被告会社では,上記ハラスメントの他,被告Y2及び被告Y3を含む被告会社の従業員による原告に対するいじめ行為が行われていたところ,被告会社は,これを原告の訴えにより知っていたにもかかわらず,放置した過失があり,または,雇用契約に付随する良好な状態で就業できるように職場環境を整備する義務に違反したことにより,不法行為責任又は債務不履行責任を負う。
2  前提事実(争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実)
(1)ア  被告会社は,コンピュータネットワークの構築,導入,運用及び維持管理等を業とする株式会社であり,平成14年ころから,IT資産管理部を設け,顧客企業におけるPC・周辺機器等のハードウェア資産の調査,ソフトウェア管理台帳の構築,IT資産の情報管理と運用支援及びコールセンター(PCサポート)業務の支援等を行ってきた。
イ  原告は,昭和○年○月○日生まれの女性で,平成17年11月1日,被告会社に契約社員として入社し,平成18年7月13日からIT資産管理部の所属となった。
ウ  被告Y2は,平成8年10月1日,被告会社に入社し,平成14年ころに被告会社のIT資産管理部の部長に任命され,同部に配属された社員,契約社員及び派遣社員の管理責任者を務めており,原告がIT資産管理部に配属されてからは原告の所属長であった。
エ  被告Y3は,平成3年4月に被告会社に入社し,上記IT資産管理部が開設された時から同部に配属され,原告が同部に配属された時には主管として,原告の直接の上司であった。
(2)  被告会社は,a株式会社(以下「a社」という。)からIT資産管理のアウトソーシングサービス業務や物流管理業務等の業務の委託を受け,a社の顧客のIT資産管理のアウトソーシング業務を行なっており,この業務を履行するため,a社に被告会社のIT資産管理部の社員等が常駐していた。
原告がIT資産管理部に配属された平成18年7月当時は,a社内の同部には,原告の他に,正社員として被告Y2,被告Y3,B,C外2名,契約社員として1名,被告会社所属の派遣会社からの派遣スタッフD,E,F,G外2名,他社所属の派遣スタッフH,I,パートナー会社のスタッフJ外1名が配属され(以下,上記派遣スタッフらを「派遣スタッフら」という。),a社の社員と一緒に業務を行なっていた。
(3)  原告は,平成20年3月31日に被告会社を退社した。
2  争点
(1)  被告Y2の不法行為の成否
(原告の主張)
被告Y2は,原告に対し,以下のパワーハラスメント行為を行なった。
ア 原告は,平成18年7月にIT資産管理部に配属になった時から,派遣会社からの派遣スタッフであるDやFらに継続的にいじめを受けていたので,これに耐えかねて,同年9月ころ,トイレで泣いてしまい,席をはずすこととなった。被告Y2は,その報告を聞き,被告会社近くの喫茶店で問いただした際,原告に対し,「何があっても,どんな暴言を言われても,仕事をしに来ているんだから,そんなの気にすることがいけない。泣くという行為が,社会人として間違っている。」「お前は派遣がいくら給料をもらっているのか知っているか」「派遣は社員よりもお金が安いんだから,社員に対して文句も言いたくなるじゃないか」「相手の事も考えろ」「お前が悪い」「トイレで泣いても許さないぞ。今度1度でも泣いたら,その場でクビだぞ。俺はなく奴,嫌いなんだよ」などと言って責めた。
イ 上記アの後,被告会社社長に,「Xは甘えている」「男性社員に自分がいじめられていると,甘えている」「男性社員に媚びている」と報告した。
ウ 上記アの後,被告は,原告を毎月1,2回1時間程度a社の会議室に呼び出し,以下のような言葉を使用し一方的に罵声を浴びせ,原告の人格を否定し,就業時間前の出社及び残業を強制した。
「大馬鹿野郎」
「お前は,要らない人間なんだ」
「辞めさせてやる」
「目障りだ」
「テメーは,本当に意地が悪いな」
「頑張る奴は,朝も一番早く来るし,休憩も取らないで働くんだよ。毎日,一番最後まで仕事するんだよ」
「この仕事じゃなくて,夜の仕事でもいいんだ」
「死んだ方がいいんじゃないか」
「お前が,いつか親になっても,子どもはまともに育たないぞ」
「お前は休憩をとるな」
「朝は8時に来い」
「なんでお前が休憩を取る必要があるんだ。一人前じゃないのに,休み事だけは一人前だな。サボる事だけは,一人前だな。ちゃっかり休憩とってんじゃねーよ」
「やる気があるなら,休まないで頑張るんだよ。それが頑張るって事だ。お前は口だけだ」
「体調が悪いからって,何,勝手に遅れてきてんだよ。いつから物言える立場になったんだよ。誰にそんな指示もらってんだよ。馬鹿野郎。てめーにそんな権利ねーんだよ」
「体調くずすのも,いじめられるのも,怒られるのも,みんな全てお前が悪い」
「毎日,残業するように。上司より先に帰ってるんじゃねーよ」
エ また,休憩時間の直前にコピーを依頼したり退社時刻に資料作成を依頼した。その結果,原告は,毎日,朝は人より早く始業し,1,2時間の残業を全く休憩なく働くことを余儀なくされ,体調が悪くても休むことも許されなかった。こうした日が1月以上続いた。
オ 同年の忘年会が開催されたころ,原告に対し,飲み会に「お前がいると,目障りだ。来るな」と言われた。
カ 平成19年5月ころから,原告に対し,以下のように罵声を浴びせ続け,原告の人格を否定する発言をした。
「お前は最低だよ。お前を必要とする奴は,いないんだよ。いい加減に気づけよ。本当,テメーは馬鹿だな」
「仕事ができないんだから,金くらいだせ。(飲み会には)お前が来ると,目障りだ。来るな」
「仕事以外に教えてやってるんだから,お前,俺に金払え」
「習い事したら,月謝を払うだろ」
「何がしたいんだ,テメーは。もう一度言ってやる。他に行ってもテメーはやっていけねーぞ。生きてねーぞ」
「死んだ方が良いんじゃないか。教えてやってんだ。今後も辛いだろうから,親切で言ってやってるんだ」
「ここまで言われても,お前は何もわかんないんだよ。感じないんだよ。馬鹿だから。キチガイなんだよ」
「a社に,何てお前を薦めればいいんだよ。俺が困る。お互いのためになる判断をしろ。辞める事,考えろ」
「他のやつには怒鳴りも,監視もしないんだよ。テメーだけなんだよ。ムカつくんだよ」
「お前みたいな奴が,親になっても,子どもはちゃんと育たないぞ。テメーは無責任なんだよ」
キ 同年8月ころ,原告に対し,次のように言い,原告が既に取っていた有給休暇を取消し,予定していた有給休暇も取り消し,全員順番にとっている「NO残業の日」も原告だけなくした。
「お前に有給は使わせない」
「自己申請ありということで,お前の有給取消し」
「デスクのPC,個人パスワード教えろ」 等
ク 平成20年1月ころ,原告に対し,次のように言い,原告の人格を否定し,被告は退職を余儀なくされた。
「お前を評価するのは,俺だ。要は,お前は俺に気に入られていれば良いんだよ。お前はそんな事もわからない馬鹿なんだよ。でも,もう遅いぞ」
「仕事ができないのも,いじめられるのも,体調崩すのも,すべて,みんなお前が悪いんだ」
ケ 叱責中に,手帳で机をたたくなどして原告を脅すような行為をした。
(被告の認否及び主張)
原告主張の上記事実をいずれも否認する。
ただし,上記ウについて,原告が遅刻しそうになったので,馬鹿者と注意したことは一度ある。また,原告にサービス業を提案したのは,担当業務の向上が見られない原告に対して,原告がお客様商売をやってみたいと言っていたのを思い出し,原告の向いている分野として客商売やサービス業を目指すのも一つの方法と言ったものであり,これは服の販売等の趣旨で発現したものである。
更に,休憩中勉強していたスタッフの話や頑張る姿勢として一番早いスタッフは8時出社であるなどのの話をしたことはあるが,休憩をとることを禁止したり,8時出社を命令してはいない。休憩時間は決まっていないので休憩時間前にコピーを依頼したのも意図的なものではない。そして,退社時刻直前に資料作成を依頼したのは1度だけであり本人の意思を確認した。
オについても,特定のスタッフと交流していたので忘年会の意義を説明し注意したことはあり,また,原告が店の出入りを繰り返していたので,その行為を目障りだと注意した。
カについても,仕事場は稽古事を習いに来ている場所ではなく,お金を払って稽古事を習いに来ているのではないのであるから,何度も注意を受けないよう業務の信頼度を上げて欲しいという趣旨の発言はした。
キについても,原告による欠勤申請があるが,これは会社の規定上事前主義のためであり,最終的には有給扱いにしている。また,原告が夏休み前から会社支給の携帯電話の調子が悪く,電話,メールとも着信できなかった可能性があると言っていたので,そのようなことがわかっているのであれば,事前に対処してほしい,と伝えたことはある。
クについて,原告との契約を更新しなかった理由は,a社から「Xさんははずして欲しい」という話がされたからであり,契約期間満了の3月をもって契約は更新せず終了する旨原告に話したところ,原告は了解した。
ケについて,原告が質問に答えないので,会議室にて手帳を机の上で閉じ音を出したことはあるが,脅しとしての行動ではない。
(2)  被告Y3の原告に対する不法行為の成否
(原告の主張)
被告Y3は,原告に対して,以下のセクシャルハラスメント行為及びパワーハラスメント行為を行なった。
ア 平成18年7月から9月ころまで毎日何度も,原告の手を触ったり,必要以上に近寄ってきたりするなどセクシャルハラスメント的な行為をした。
イ 同9月ころ,「依頼した仕事ができていない」「適当な仕事をしている」等と言って原告を責めた。
ウ 平成19年5月ころ,原告に対して依頼していない仕事を依頼したかのように装い,原告が仕事上のミスをしたものとして被告Y2に虚偽の報告をして原告の評価を貶めた。
エ 同月ころ,オフィス外で原告が休憩中に原告の後をつけたり,原告の携帯番号や就寝時間を聞いたりするなどして,原告に不安感を与えた。
オ 同年8月ころ,時間的に余裕があった原告が更なる仕事を要求したことに対し,「ちょっと待って」と言って更なる仕事を与えず,被告Y2には「本当は,Xに預ける仕事だったが,Xは仕事に時間がかかり過ぎて,時間が空かないので,派遣にやらせた」と報告し,被告Y2からa社に「Xは仕事が遅く,ミスも多い」と報告させ,原告の地位を不当に貶めた。
カ 同月ころ,原告の体調不良により休みたいとの申出に対し,出社を強制した。
キ 同月ころ,行方が不明となった原告の業務用ボックスを隠匿あるいは所在場所を知りながら原告に告げなかった。
ク 同月ころ,夏休み中の原告の業務を引き受け,わからないことはないと確認したにもかかわらず,原告が夏休み中の原告に毎日電話をかけ,夏休み明けの原告に対し連絡がつかないと非難した。
ケ 以上のほか,被告Y2が原告に対してパワーハラスメントをする際に,同調して原告にパワーハラスメントをした。
(被告の認否及び主張)
原告の上記主張事実をいずれも否認する。
アについて,被告Y3が原告に対し業務指導しているときにマウスを操作しようとして同時にマウスを操作しようとした原告の手に触れたことがあったが,それはセクシャルハラスメント行為に該当しない。
ウについて,メールの自動仕分け機能により被告Y3が原告に送信したメールが別の場所に仕分けされたため原告が被告Y3からの業務依頼メールが届いていないと誤解したものである。
オについて,業務内容が原告に無理と判断して派遣スタッフに仕事をまわしたこと,原告の業務の信頼度が低かったため,a社から原告にもっと仕事をさせて欲しい,と言われて「業務によってはできないものもあります」と答えたことはある。「時間が空かないので」という理由は言っておらず,これらは原告のレベルを理由とした判断であり,いじめではない。
クについて,被告Y3が原告に数回電話したことがあるが,いずれも,業務上の確認事項が生じて至急原告に連絡をとる必要があったからである。しかも,被告Y3は,原告に対して「何か連絡するかもしれない」と言い,原告はこれを了解している。また,夏休み明けに被告Y3が原告を呼び出したことはあったが,それは,原告がメールを「CC.」で別の会社の担当者に送付してしまったというミスを犯したため問題となっていたことに関してであり,いずれも正当な業務行為であり,不法行為は構成しない。
(3)  被告会社の不法行為責任又は債務不履行責任の成否
(原告の主張)
ア 被告Y2及び被告Y3の上記各行為,被告会社の職場で行われ,事業の執行につきなされたものである。また,原告は,IT資産管理部に配属後,派遣会社の派遣スタッフらから日常的にいじめ行為を受けており,このいじめ行為も同スタッフらの原告に対する不法行為に該当するところ,この行為も,被告会社の職場内で行われ,事業の執行につき行われたものであるから,被告会社は,上記被告Y2及び被告Y3の各行為及び上記派遣スタッフらのいじめ行為によって原告が被った損害について,使用者として民法715条により,賠償する責任を負う。
イ 被告会社は,原告に対し,良好な職場環境を整備する義務を負っている。ところが,被告会社はセクシャルハラスメント,パワーハラスメント防止に関する規定を定めておらず,また,その体制も整えておらず,原告が本件各行為の存在と改善を被告会社に訴えたにもかかわらず,これらについて十分調査せず,結果的に本件各行為を認容した。その結果,民法415条により債務不履行責任または709条により不法行為責任を負う。
(被告の認否及び主張)
上記原告の主張を否認ないし争う。
原告は,当初,派遣スタッフらのいじめ行為,被告Y3のセクシャルハラスメント,パワーハラスメント,被告Y2のパワーハラスメントについて調査することを拒否しており,原告が調査を求めた後は,被告会社は適切に調査した。また,調査の結果,いじめ行為,セクシャルハラスメント,パワーハラスメントはなかった。
(4)  損害
(原告の主張)
原告は,派遣スタッフら,被告Y3,被告Y2の各行為によって以下の損害を被った。
ア 慰謝料 500万円
原告は,被告らによる本件行為により,手の震え,鼻血,食欲不振,生理不順,高熱,喘息等の症状が出て抑うつ状態と診断されるに至り,精神的苦痛を被った。こうした精神的苦痛を金銭に評価すると500万円が相当である。
イ 逸失利益 金164万9580円
原告は,被告会社を退職することを余儀なくされた後も,アのとおり精神的苦痛を受けたため,そのトラウマにより就職することも不可能となった。従って,原告の半年間の収入に相当する分として金164万9580円(274,930円〔1か月分の給料〕×6ヶ月))の損失を被った。
ウ 弁護士費用 65万円
(被告の認否)
争う。
第3  争点に対する判断
1  事実経過
前提事実,証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実経過が認められる(認定にかかる証拠番号等は項末に掲記する。)。
(1)  原告は,平成17年12月に被告会社に入社し,平成18年7月13日,a社に常駐して業務を行うIT資産管理部に配属された。IT資産管理部は,顧客企業におけるPC・周辺機器等のハードウェア資産の調査,ソフトウェア管理台帳の構築,IT資産の情報管理と運用支援及びコールセンター(PCサポート)業務の支援等を行う部署であるから,パソコン作業が必至であったが,原告は,パソコン作業が得意ではなく,知らないパソコン用語もある状態であった。(前提事実,原告)
(2)  原告が配属されたIT資産管理部では,正社員として被告Y2,被告Y3,B,C外2名,契約社員として原告外1名,被告会社所属の派遣スタッフD,E,F,G外2名,他社所属の派遣スタッフH,I,パートナー会社のスタッフJ外1名が,a社の社員と一緒に業務を行なっていた。派遣スタッフらの中には,被告会社の契約社員が同じ職務を担当しているにもかかわらず,給与が高いことに不満を持ち,契約社員であるにもかかわらず,パソコン作業が得意ではない原告に厳しい感情を持っている者もいた。そのような状況で,派遣スタッフ同士は,業務中もヒソヒソ話をしたり,昼食についてのメモを回したり,親しくしていたが,原告と親しくする者はおらず,他のIT資産管理部の従業員との人間関係はうまくいっていなかった。
引継担当の派遣スタッフであったDは,一応の業務手順を一度説明したものの,原告が業務手順についてのメモをとることや再確認することを嫌がり,その結果,原告は,ミスをすることが多く,業務に対する習熟度が低いと評価された。(前提事実,原告,被告Y3,被告Y2,弁論の全趣旨)
(3)  平成18年9月又は10月初旬,原告は,派遣スタッフらの言動に耐えかねて就業時間中にa社のトイレ内にこもって泣いてしまった。(原告,被告Y2,弁論の全趣旨)
(4)  上記(3)の一件の報告を受けた被告Y2は,a社近くの喫茶店で,原告から,この一件についての報告を受けた。原告は,派遣スタッフらの勤務中のいじめ行為に耐えられず泣いたと説明した。被告Y2は,原告に対し,状況調査と善処を約束したが,他方で,派遣社員は原告より給料が安いのであるから,派遣社員の気持ちも考えて行動するよう,また,業務中に業務を離れてトイレで泣くようなことがないよう,厳しい口調で指導した。このとき,原告は被告Y2の指導の意味が理解できなかった。(甲3,原告,被告Y2)
(5)  被告Y2は,上記(3)の一件及び(4)の原告の報告を被告会社に報告し,IT資産管理部所属の社員,派遣スタッフ一人一人から聞き取りをし,a社にも聞き取り調査を依頼し,聞き取り調査の結果,派遣スタッフらは,業務中,ひそひそ話をしたり,メモを回したり,原告が業務中に同じ質問を何度も繰り返すので,原告に「もう説明したでしょう」と強い口調で言うことがあるが,原告に対するいじめ行為はなかったと判断し,原告及び被告会社にその旨報告した。
ただ,被告会社は,それまで,被告Y2の席を個室においていたが,原告外の社員らと同じ部屋に移して部内の状況を見ることができるよう配慮した。(乙1,被告Y2,弁論の全趣旨)
(6)  IT資産管理部では,月に1,2度,30分から1時間程度,a社の会議室を使用し,被告Y2,被告Y3,原告の3人で会議が行なわれた。
その多くの議題は,業務の進捗状況であったが,被告Y2は,原告の仕事の習熟度が低いと評価していたため,この会議の席上で,原告に対し,原告の仕事ぶりは稽古事のようであり,稽古事について指導をしているのであるから,月謝を支払えと言ったり,午前8時に出社して,習熟度を上げるようにと言ったり,被告会社の業務に向かないなら退職して,他の職業に就くことを勧めるといった趣旨の言動をしたことがあった。被告Y2は,いずれも,原告の業務の習熟度を上げるため,原告を鼓舞する意図でこれらの言動をしたものであるが,言い方が厳しかったことも伴って,原告は,被告Y2及び被告Y3と3名で行う会議をおびえるようになった。(原告,被告Y3,被告Y2,弁論の全趣旨)
(7)  原告は,平成18年10月ころから,体調不良を訴え,遅刻,欠勤することがあり,平成19年4月,鼻血が止まらずに欠勤する旨連絡すると,被告Y2から診断書を持参するように言われた。そこで,同月7日,水戸赤十字病院で診察を受け,生理時の鼻血出血との病名を診断され,診断書を受領し,被告会社に提出したが,不要であると言われ,受領してもらえなかった。(甲1,原告)
(8)  平成18年10月以降,原告と派遣スタッフらの人間関係は修復せず,IT資産管理部内で,原告がいつ退職するかといったことが話題になるようになってしまった。そして,平成19年7月ころ,派遣スタッフの社員Jは,原告に対し,同部の状況の中でいつまで耐え,いつ退職するかについて賭けをしている旨告げた。(前提事実,甲1,原告)
(9)  被告Y2は,原告と派遣スタッフらとの不和の原因は,原告が同人らとの融和を図ろうとしないことと原告の業務の習熟度の低さにあると考え,平成18年の年末に行われた忘年会の席でIT資産管理部の者との対話をしなかったことを叱責したり,上記のとおり,会議の席で,厳しい指導を行ったりした。(被告Y2,弁論の全趣旨)
(10)  平成19年10月ころには,原告は,IT資産管理部の者らとの人間関係や被告Y2等の叱責が原因で発熱等の身体症状が出るようになり,同月27日,大野クリニックで受診し,抑うつ状態及び身体化障害と診断され,3か月の自宅療養を要すると診断された。(甲2,原告)
(11)  原告は,平成20年3月31日に被告会社を退社した。
2  争点(1)(被告Y2の不法行為の成否)について
ア  上記1の認定事実のとおり,被告Y2は,パソコン使用が必至であるIT資産管理部において,元々パソコンに対する能力が不足したまま,配属されてきた原告が,派遣スタッフらとの人間関係がうまくいかず,業務について満足な指導を受けることができていないことを知りうる状況にありながら,会議の席上で,厳しく,原告の仕事ぶりが稽古事のようであると揶揄し,金員を要求するような言動をしたり,退職を勧めるような言動をすることは社会相当性を欠き,不法行為を構成するものというべきである。上記のとおり,被告Y2の言動は,原告の業務の習熟度を上げるため,原告を鼓舞する意図で行われたものと認められるが,被告Y2の立場,これら言動がなされた時の原告を取り巻く環境(IT資産管理部において,他の者の指導を受けることができず,人間関係もうまくいかず,同部の者らが原告の退職を話題にする環境)に照らせば,上記のような言動は,原告を追いつめるだけで,あまりにも不適切というべきであり,被告Y2が上記意図を持っていたことは,上記評価を左右することはない。
イ  原告は,被告Y2が原告に対してその他の厳しい言動を述べたと主張し,原告本人尋問においてそれに副う供述をしているが,平成18年7月から平成20年3月の間の長きに亘って,原告が被告Y2の言動の詳細を記憶していたとはいえず,原告の供述だけでは,原告が主張する意味合いや言葉遣いで被告Y2が原告に対して上記厳しい言動をしたと認めることはできない。また,原告主張の言動以外の不法行為の存在も,これに副う証拠は甲3号証(原告の陳述書)と原告本人の供述のみであるところ,これのみではその存在を直ちに認定することはできない。
3  争点(2)(被告Y3の原告に対する不法行為の成否)について
(1)  原告は,被告Y3が,ア平成18年7月から9月ころまで毎日何度も,原告の手を触ったり,必要以上に近寄ってきたりするなどした,イ同月ころ,「依頼した仕事ができていない」「適当な仕事をしている」等と言って原告を責めた,ウ平成19年5月ころ,原告に対して依頼していない仕事を依頼したかのように装い,原告が仕事上のミスをしたものとして被告Y2に虚偽の報告をして原告の評価を貶めた,エ同月ころ,オフィス外で原告が休憩中に原告の後をつけたり,原告の携帯番号や就寝時間を聞いたりするなどした,オ同年8月ころ,原告に故意に仕事を与えず,被告Y2には「Xは仕事に時間がかかり過ぎて,時間が空かないので,派遣にやらせた」との虚偽の報告をした,カ同月ころ,原告の体調不良により休みたいとの申出に対し,出社を強制した,キ同月ころ,原告の業務用ボックスを隠匿あるいは所在場所を知りながら原告に告げなかった,ク同月ころ,夏休み中の原告の業務を引き受け,わからないことはないと確認したにもかかわらず,原告が夏休み中の原告に毎日電話をかけ,夏休み明けの原告に対し連絡がつかないと非難した,ケ被告Y2の原告に対するパワーハラスメント行為に同調して原告にパワーハラスメントをしたと主張する。
(2)ア  上記のとおり,原告は,被告Y3が,平成18年7月から9月ころまで毎日何度も,原告の手を触ってきたと主張し,原告本人尋問にこの主張に副う供述がある。しかしながら,一日に何度も触ってきたという原告の供述が抽象的であるばかりでなく,原告と被告Y3が所属するIT資産管理部は従業員約20人が稼働しており,また,顧客のa社の中にあり,同社の従業員も出入りしていた(前提事実,被告Y3)のであるから,被告Y3が一日に何度も原告の手に触れていたら,誰かが見とがめるはずであり,その危険を犯してまで,被告Y3が上記のような行為をしたとは到底考えられず,原告の上記供述のみで被告Y3の上記行為を認定することはできない。必要以上に近寄ってきたことについても同様である。
イ  原告は,被告Y3から,「依頼した仕事ができていない」「適当な仕事をしている」などと言って責められたと主張し,原告本人尋問において,これに副う供述をしているが,この供述は抽象的で,具体的に被告Y3が原告を責めたとまで認めることはできず,また,証拠(被告Y3)によれば,被告Y3が原告の業務上のミスを指摘したことがあること,被告Y3が原告の業務の習熟度を低いものと評価していたことが認められるが,これら事実によって,被告Y3が原告のミスや習熟度が低いことについて責めたことまでを認めることはできない。
ウ  原告は,平成19年5月ころ,被告Y3が原告に対して依頼していない仕事を依頼したかのように装い,原告が仕事上のミスをしたものとして被告Y2に虚偽の報告をして原告の評価を貶めたと主張し,原告本人尋問において,この主張に副う供述がある。上記のとおり,被告Y3が原告の業務上のミスを指摘したが,これが誤りであったことは当事者間に争いがないが,本件全証拠によっても,被告Y3がこれを故意に行ったことを認めることはできず,故意で行ったものと認められないとすれば,業務において社会相当性を逸脱する行為とはいえず,不法行為とは評価できない。
エ  原告は,被告Y3が,同月ころ,オフィス外で原告が休憩中に原告の後をつけたり,原告の携帯番号や就寝時間を聞いたりするなどしたと主張し,証拠(原告,被告Y3)によれば,原告と被告Y3は,休憩時間に度々a社の社屋外で出会ったことが認められる。しかしながら,他方において,原告,被告Y3両名とも休憩時間に外出する習慣があったことも認められ,短い休憩時間において,社屋の近所で出会ったり,帰社時間が合致し,帰社の際,度々,前後になってしまうことは大いにあり得ることであるから,度々社屋外で出会ったことから直ちに,被告Y3が,休憩中に原告をつけていたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。また,原告の携帯番号や就寝時間を聞いたりしたと主張し,原告本人尋問ではこれに副う供述がある。しかしながら,上記供述のみでは,被告Y3が原告に対して度々これらの事項を尋ねたと認めることはできず,また,これらの事項を質問したことがあったとしても,同じ部に務める者同士で,日常会話の中で,このような質問が出ることはあり得ることであるから,これら質問があっただけでは不法行為を構成しない。
オ  原告は,平成18年8月ころ,原告に故意に仕事を与えず,被告Y2に虚偽の報告をしたと主張し,証拠(原告,被告Y3)によれば,そのころ,原告は,業務に慣れてきたと感じ,被告Y3に「時間が空いたので,仕事が欲しい」旨申し向けたことがあり,被告Y3が手が空いていなかったので,「ちょっと待って欲しい」と言って,原告を待たせておいたが,手持ちの業務を他の派遣スタッフに依頼したことがあったことが認められる。しかしながら,証拠(被告Y2,被告Y3,証人K)によれば,その時期においては原告の業務についての習熟度はあまり高いものとはいえないものであったことが認められるところ,本件において,被告Y3の手持ちの業務の内容は不明で,本件全証拠によっても原告にこれを任せられるものであったと認めることはできず,とすれば,上記原告の申入れがあっても,他の派遣スタッフに依頼したことが被告Y3の業務上不当なもので,不法行為を構成するものとはいえないし,被告Y2に虚偽の報告をしたともいえない。
カ  原告は,同月ころ,被告Y3に対し,原告の体調不良により休みたいとの申し出たのに対し,出社を強制された,と主張し,原告本人尋問にそれに副う供述があるが,原告の供述のみでこれを認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
キ  証拠(原告)及び弁論の全趣旨によれば,同月ころ,原告の業務用ボックスをなくなり,探していたところ,被告Y3が1週間後,発見したと言って原告にこれを渡したことが認められるが,被告Y3が隠匿,所在場所を知りながら原告に告げなかったと認めることはできず,不法行為があったと認定することはできない。
ク  争いのない事実,証拠(原告,被告Y3)及び弁論の全趣旨によれば,被告Y3が,同年8月ころ,夏休み中の原告に数回電話をかけ,夏休み明けの原告に対し連絡がつかなかったことについて非難したことが認められるが,他方,上記電話は業務に関するものであったことも認められ,夏休み中といえど,連絡がつくようにしておくよう指導することも業務上正当なことであるから,上記被告Y3の行為が不法行為を構成するとはいえない。
ケ  上記1の認定事実,証拠(原告,被告Y3)によれば,月に1,2回開催される被告Y2,被告Y3及び原告の会議において,被告Y2が時に原告に対して業務上正当な範囲を超える厳しい叱責を行ったこと,被告Y3はほとんどの場合この会議に出席していたこと,被告Y3は被告Y2の上記叱責を止めなかったこと,時には被告Y2の言動に同調していたことが認められる。しかしながら,被告Y3が上記叱責を止めなかったことについては,被告Y2が被告Y3の直属の上司であることなどを考慮すれば,致し方なく社会通念上相当性を欠く違法な行為とまではいえず,本件において,被告Y3が同調したときの被告Y2の言動が具体的に何であったか特定されておらず,被告Y3が上記会議において被告Y2に同調したことがあったとしても,直ちに被告Y3に不法行為があったということはできない。
4  争点(3)(被告会社の不法行為責任又は債務不履行責任の成否)
一般に雇用主は労働契約上の付随義務として,業務について十分な指導を受けた上で就労できるよう職場環境を保つ義務があるところ,IT資産管理部において,原告は,派遣スタッフらとの人間関係をうまく形成することができず,十分な指導を受けることができない状況であり,被告会社としては,その環境を整える義務を負っていたところ,席替え等はしたものの,被告Y2においては叱咤激励(時には行きすぎた叱責)するばかり,直属の上司の被告Y3も,習熟度が低いと評価するばかりで,被告会社において,上記義務を尽くしていたとは認められず,その結果,原告に下記5の損害が生じたものであるから,下記5において認定する損害を賠償する義務を負う。(なお,上記2認定の被告Y2の不法行為は,勤務時間中に,職場で行なわれたものであり,被告Y2の職務行為として行われたものであるから,これによって原告が被った損害は,被告Y2が被告会社の事業の執行について加えた損害にあたるというべきである。よって,被告会社は,民法715条1項に基づき,被告Y2の上記不法行為によって原告が被った損害を賠償する責任が生ず得ることはもちろんである。)
5  争点(4)(損害)について
ア  慰謝料について
上記1認定の事実及び証拠(甲1,甲2,原告本人,被告Y2,被告Y3)によれば,被告Y2の不法行為及び被告会社の債務不履行によって,原告には,鼻血,生理不順,喘息等の症状が出て,抑うつ状態及び身体化障害と診断されるに至ったことが認められ,上記不和の状況,被告Y2の不法行為の態様,不法行為が行われた期間及び上記原告に現れた症状等を総合考慮すれば,原告が被った精神的損害は,50万円に相当する(なお,上記損害は,被告Y2の不法行為及び被告会社の債務不履行いずれとも因果関係があると評価できるので,額を分けない。)。
イ  逸失利益について
上記認定事実及び証拠(甲2,原告本人)によれば,原告が抑うつ症等で通院したのは平成19年10月27日から3か月間であり,被告会社を退職した平成20年3月31日には治療を終了しており,原告には,同日時点では十分な就労能力があったと認められ,この事実に照らせば,原告には,被告Y2の不法行為に基づく再就職が適わなかったことによる逸失利益が損害が発生したと認めることはできない。
ウ  弁護士費用
本件事案の内容,訴訟の審理経過,認容額等一切の事情を勘案すると,被告Y2の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は5万円をもって相当と認める。
第4  結論
以上の次第で,原告の本訴各請求は,主文第1項記載の範囲で理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 坂田千絵)

 

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