【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(88)平成22年 9月28日 東京高裁 平22(行コ)110号 不当労働行為再審査命令取消請求控訴事件 〔国・中労委(NTT西日本)事件・控訴審〕

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(88)平成22年 9月28日 東京高裁 平22(行コ)110号 不当労働行為再審査命令取消請求控訴事件 〔国・中労委(NTT西日本)事件・控訴審〕

裁判年月日  平成22年 9月28日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(行コ)110号
事件名  不当労働行為再審査命令取消請求控訴事件 〔国・中労委(NTT西日本)事件・控訴審〕
裁判結果  控訴棄却  上訴等  上告受理申立  文献番号  2010WLJPCA09286001

要旨
◆大手通信会社である控訴人が、自己の策定した経営計画に基づく構造改革に伴う退職・再雇用制度の導入等について、少数派労働組合である参加人に対する取扱いと他の多数派労働組合に対する取扱いとに差異を設け、参加人の配転の実施方針に関する団体交渉に応じなかったことは不当労働行為に該当するとして、労働委員会から救済命令を受けたため、同命令の取消しを求めたところ、原審で請求を棄却されたことから、控訴した事案において、控訴人が、本件退職・再雇用制度の導入の当初提案の時期を多数派労働組合と参加人とで同一にしなかったこと、本件制度につき、必要な限りで多数派組合と同様の資料提示及び説明を行わなかったこと、配転基準や手続などの実施方針に関する協議を拒んだことなどの一連の対応は、控訴人の誠実交渉義務に違反するものであるといえるとして、原判決を維持し、控訴を棄却した事例
◆団体交渉における使用者の誠実交渉義務の履行の有無について、当該団体交渉で労働条件等を論議するに足りる資料が提示されたか否かで判断すべきは当然のことであるが、同一企業内に複数の労働組合がある場合には、使用者には各労働組合との対応において平等取扱い、中立義務が課されているのであるから、一方の労働組合との団体交渉における誠実交渉義務の履行の有無を判断するに当たり、他方の労働組合との団体交渉で提示された資料や説明内容をも対照してこれを検討することは意味があるとされた事例
◆配転は、従業員の配置の変更であって、職務内容や勤務場所が相当の長期間にわたって変更されるものであり、労働者の労働条件や生活環境に多大な影響を与えるものであるから、配転の基準(理由ないし要件)や手続(組合との協議、同意等)などの実施方針は、労働条件に関する事項であり、義務的団体交渉事項になるが、個々の労働者に対してなされる個別具体的な配転は、労使間に事前協議等の協定がある場合を除き、使用者は、事後的に団体交渉等で対応すれば足り、事前協議に応ずる義務はないとされた事例

裁判経過
第一審 平成22年 2月25日 東京地裁 判決 平20(行ウ)701号 不当労働行為再審査命令取消請求事件 〔国・中労委(NTT西日本)事件・第一審〕

関連審決・命令
平成20年 9月 3日 中央労働委員会 平成18年(不再)第12号・平成18年(不再)第16号

出典
労判 1017号37頁
中央労働時報 1126号57頁(要旨)
中央労働委員会命令・裁判例データベース

評釈
大内伸哉・ジュリ 1439号131頁
名古道功・ジュリ臨増 1440号244頁(平23重判解)
根本到・法セ増(新判例解説Watch) 10号261頁
柳澤旭・法時 84巻2号126頁
根本到・法セ 682号135頁
柳原旭・山口経済学雑誌(山口大学) 60巻5号53頁
宮里邦雄・ジュリ増刊(実務に効く労働判例精選) 219頁

参照条文
労働組合法7条2号
労働組合法7条3号
行政事件訴訟法3条2項

裁判年月日  平成22年 9月28日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(行コ)110号
事件名  不当労働行為再審査命令取消請求控訴事件 〔国・中労委(NTT西日本)事件・控訴審〕
裁判結果  控訴棄却  上訴等  上告受理申立  文献番号  2010WLJPCA09286001

控訴人 X株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 高坂敬三
被控訴人 国
同代表者法務大臣 B
処分行政庁 中央労働委員会 C
同指定代理人 D他6名
参加人 Z労働組合
同代表者 E
同訴訟代理人弁護士 河村武信
同 出田健一
同 横山精一
同 西晃

 

 

主文

1  本件控訴を棄却する。
2  控訴費用は控訴人の負担とする。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決を取り消す。
2  中央労働委員会が中労委平成18年(不再)第12号及び同第16号事件(初審・大阪府労働委員会平成14年(不)第15号事件)について,平成20年9月3日付けでした救済命令及び再審査棄却命令をいずれも取り消す。
3  訴訟費用(参加費用を含む。)は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。
第2  事案の概要
1  大阪府労働委員会(以下「府労委」という。)は,参加人に継承されたZ労働組合西日本地方本部(以下,継承される前の同地方本部についても「参加人」という。)が控訴人を被申立人として申し立てた不当労働行為救済申立事件(府労委平成14年(不)第15号事件。以下「本件初審事件」という。)について,平成18年2月28日付けで,控訴人が策定した経営計画に基づく構造改革に伴う労働条件の当初の提案における参加人に対する提案内容は他の労働組合に対する提案内容と比べて格差があり,これが労働組合法7条3号に該当するとして,上記申立ての一部を認容し,その余を棄却する旨の命令(以下「本件初審命令」という。)をした。
参加人及び控訴人は,中央労働委員会(以下「中労委」という。)に対し,参加人においては本件初審命令のうち申立てを棄却した部分の取消し及び同部分に係る救済命令を求め,控訴人においては本件初審命令のうち一部申立てを認容した部分の取消しを求めて,それぞれ再審査を申し立てた(中労委平成18年(不再)第12号,第16号事件。以下「本件再審査事件」という。)。中労委は,本件再審査事件について,平成20年9月3日付けで,控訴人が,① 経営計画に基づく構造改革に伴う退職・再雇用制度の導入等に関する参加人との団体交渉における参加人に対する提案並びに参加人の求める資料の提示及び説明において,合理的な理由がないにもかかわらず他の労働組合と比べて取扱いに差異を設け,団体交渉期日の設定及び団体交渉における説明・協議において誠実性を欠く対応をし,上記退職・再雇用制度導入に伴う意向確認を参加人との誠実な協議を行わずに実行に移したこと,② 参加人が申し入れた組合員の勤務地等に関する団体交渉において,本人の希望を尊重した配置を行うことなどの配転の実施方針に関する団体交渉に応じなかったことは,労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するとして,本件初審命令の一部認容部分を原判決別紙記載Ⅰのとおり変更し,控訴人の再審査申立てを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)をした。
控訴人は,本件命令を不服として,原審裁判所に,本件命令の取消しを求める本訴を提起した。
2  原判決は,控訴人の請求を棄却したので,控訴人がこれを不服として控訴をした。
3  前提事実,争点,争点に関する当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要等」の2から4に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり改める。
(1)  原判決5頁2行目(労判1004号〈以下同じ〉28頁右段7行目)の「a労組との間で,」の後に「控訴人の設立時である平成11年7月1日,「中央経営協議会の設置に関する協約」及び「企業本部経営協議会の設置に関する協約」を締結し,」を加え,同4行目(28頁右段10行目)の「経営協議会」を「中央経営協議会及び企業本部経営協議会(以下,併せて「経営協議会」という。)」と改め,同5行目(28頁右段11行目)の末尾に「経営協議会の設置目的は,全面的競争状況の下において積極的な事業運営を行い,事業の健全な発展を図るため,経営の基本施策など重要課題について議論する場として設けられ,その付議事項は,① 事業計画及びその実績に関する事項,② 人員計画に関する事項,③ 会社機構の改廃に関する事項,④ 営業制度の基本に関する事項,⑤ 新規サービスに関する事項,⑥ 業務運営の基本に関する事項,⑦ グループ事業運営の基本に関する事項等とし(なお,上記付議事項は,中央経営協議会のものであり,企業本部経営協議会の付議事項は,上記①から③,⑥,⑦,新技術・新規サービスに関する事項,中央経営協議会から付託された事項等とされていた。),構成員は,控訴人側委員とa労組側委員からなり,4半期ごとに開催するほか,控訴人側とa労組側の双方が必要と認めた場合に開催することとされていた。また,控訴人とa労組とは,平成11年7月1日,「グループ事業の形成に関する覚書締結に伴う了解事項」を締結し,控訴人は,グループ事業の形成に伴い,新会社の設立及び既存サービス・業務の事業化に当たっては,計画した段階で速やかに経営協議会に付議し,十分話し合った上で実施に移すこととし,付議する計画の概要としては,新会社の設立を行う場合においては,設立目的,新会社の名称,所在地,事業内容,出資,組織,社員数及び営業開始時期とされていた。」を,同6行目(28頁右段12行目)の「おいては,」の後に「上記協約等に基づき,」を,同12行目(28頁右段21行目)の末尾に「さらに,本件構造改革の実施に当たり,新会社の設立に関する事項が論議された。」を,同18行目(28頁右段30行目)の末尾に行を改めて「また,控訴人と参加人との間には,交渉の場として,団体交渉のほか窓口対応や勉強会があり,窓口対応は,控訴人側の窓口担当者と参加人側の窓口担当者とが,団体交渉の日程調整,文書や資料の授受,議題のすり合わせなどを行うものであり,また,勉強会は,小委員会的なものとして,本件構造改革に伴う労働条件について参加人からの質問に控訴人が答え,参加人の理解を深める場として設けられた。」をそれぞれ加える。
(2)  同9頁17行目(30頁左段17行目)の「労働条件整備等」を「労働条件諸制度等」と改める。
(3)  同10頁24行目(30頁右段8行目)の「上記1(事案の概要)」を「本判決上記第2の1」と改める。
(4)  同11頁3行目(30頁右段13~14行目)の「当裁判所」を「原審裁判所」と改める。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所は,控訴人の本件退職・再雇用制度導入団交及び本件配転団交における控訴人の対応は,いずれも労働組合法7条2号の不当労働行為に該当し,控訴人に対し,本件命令主文1項1の内容を記載した文書を参加人に手渡すよう命じた本件命令は相当であると判断するが,その理由は,次項に控訴人の控訴理由に対する判断を加えるほか,原判決の「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の1から4に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり改める。
(1)  原判決24頁1行目(31頁右段下から12行目)の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(カ) 実施時期は,平成14年度第1・4半期を目途とする。」
(2)  同26頁22行目(32頁右段下から10行目)の末尾に「また,b会社等に勤務する者も本件退職・再雇用制度の対象となることが明記されていなかったが,これは,控訴人と参加人とは会社毎に交渉を行うこととされており,控訴人としては,b会社等に勤務する者の労働条件は参加人との交渉対象ではないと判断したためであった(〈証拠省略〉,弁論の全趣旨)。」を加える。
(3)  同28頁22行目(33頁右段12行目)の「参加人は,」の後に「第13回団交後,控訴人に対し,複数回にわたり,6月中に団体交渉を行うよう要求したが,控訴人からは,日程等の事情で開催できないとの対応であったため,参加人は,質問書を提出して真摯な回答を求める必要があるとして,」を加える。
(4)  同29頁12行目(33頁右段下から16行目)の「〈証拠省略〉」を「〈証拠省略〉」と改める。
(5)  同30頁13行目(34頁左段22行目)の末尾に「このうち,激変緩和率設定の考え方については,本件退職・再雇用制度の導入に伴うコストダウンによる競争力強化を図りつつ,実際に移行する社員の生活条件の激変防止の観点から設けられるものであり,緩和率は,繰延型であれば50%,一時金型では一部前払いによる金利差等を考慮して40%とするとして,年齢別の措置総額につき,平成14年度末の年齢が51歳から60歳までそれぞれの60歳までの年収減額とこれに対する措置額を実在者モデルによる平均推計値を用いて図表に示し,緩和率で補正後の地域毎の賃金水準のイメージがグラフを用いて説明されていた。」を加える。
(6)  同38頁1行目(36頁右段下から6行目)の「行い,」の後に「控訴人は,a労組に対し,」を加える。
(7)  同41頁25行目(38頁左段下から14行目)の「効用について』(」を「公表について』(〈証拠省略〉。」と改める。
(8)  同44頁6行目から同7行目にかけて(39頁左段21~22行目)の「変更した理由を質問した」を「変更したことにつき,55歳平均を50歳とすると原資が少なくてすむとして,その理由を質問した」と改める。
(9)  同60頁21行目(45頁左段16行目)の「5項目を含む下記の」を「下記の5項目を含む」と改める。
(10)  同64頁8行目(46頁左段下から10行目)の「(イ)~(エ)」を「(イ)及び(ウ)」と改め,同9行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(エ)について
人員の配置に当たっては業務上の必要性等を勘案し,控訴人の責任により対処する考えであり,要求には応じられない。」
(11)  同64頁14行目(46頁左段下から4行目)の「(ア)~(オ)」を「(ア),(ウ)~(オ)」と改め,同15行目(46頁左段下から3行目)の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(イ)について
人員の配置に当たっては業務上の必要性等を勘案し,控訴人の責任により対処する考えであり,要求には応じられない。」
(12)  同65頁1行目(46頁右段10~11行目)の冒頭から末尾までを次のとおり改める。
「a (ア)及び(ウ)について
人員の配置に当たっては業務上の必要性等を勘案し,控訴人の責任により対処する考えであり,要求には応じられない。
b (イ)について
研修の実施に当たっては業務上の必要性等を勘案し,控訴人の責任により対処する考えであり,要求には応じられない。」
(13)  同75頁1行目(50頁左段28~29行目)の「a労組との間で」から同2行目(50頁左段30~31行目)の「状況にあったのであり」までを「a労組が,平成13年6月14日,本件構造改革について,労使交渉を再開し,控訴人提案を受け入れる決定をして,同月15日,団体交渉が再開され,それ以降,本件退職・再雇用制度の導入が現実化してきた状況にあったことからすれば」と,同13行目(50頁左段下から3行目)の「上記(ア)で認定したとおり」を「a労組が,同年11月8日,本件構造改革についての控訴人の最終回答を受けることを承認し,同月9日,控訴人との間で最終決着を図るための団体交渉がもたれ」とそれぞれ改め,同18行目から19行目にかけて(50頁右段5行目)の「a労組との間の」の後に「平成13年6月15日から同年11月13日までの間になされた」を加える。
(14)  同80頁22行目(52頁左段下から8行目)の「同月31日」を「平成13年10月31日」と改める。
(15)  同86頁末行(54頁右段19行目)の「第17回団交の時点で」の後に「OS会社の業務内容や労働条件につき」を加える。
(16)  同98頁23行目(59頁左段14行目)の「要求するとともに,」を「要求し,また,14.3.6要求書(研修)により,全国配転等について,配転は参加人及び本人との協議・同意を得て実施することを要求するとともに,同日付け団体交渉申入書により,」と,同25行目(59頁左段17行目)の「14.3.11回答書(退職再雇用)」から同末行から同99頁1行目にかけて(59頁左段19行目)の「考えであり」までを「14.3.11回答書(国民春闘),14.3.11回答書(退職再雇用)及び14.3.11回答書(研修)により,人員の配置に当たっては業務上の必要性等を勘案し,控訴人の責任により対処する考えであり」とそれぞれ改める。
2  控訴人の控訴理由に対する判断
(1)  控訴人は,控訴理由において,多数派労働組合であるa労組とは経営協議会を設けているが,少数派労働組合である参加人とは経営協議会を設けていないところ,原判決は,使用者が一方の労働組合の経営協議会で説明協議を行ったとしても,他の労働組合で同様の対応をすべき義務を負わないとしながら,使用者が一方の労働組合の経営協議会で示した資料や説明内容が,その後の団体交渉における使用者の説明や協議の基礎となり得るとして,他の労働組合から経営協議会におけるものと同様の資料の提示や説明を求められたときは,必要な限りで団体交渉で同様の資料提示や説明をする必要がある旨判示するが,会社の経営施策は多かれ少なかれすべて従業員の労働条件に関係するのであって,経営協議会における説明や資料はその後の団体交渉の会社側の対応のバックグラウンドにあるのであるから,原判決の論理によれば,他の組合が要求すれば,経営協議会の内容について開示した上で団体交渉をすることになり,経営協議会の存在意義を否定する結果となり是認できない,つまるところ,当該組合との関係において,団体交渉で労働条件を論議するに足りる資料が提示されたか否かで判断すべきであり,経営協議会での資料を対照して資料や説明の多寡を論ずるのは誤りである旨主張する。
たしかに,控訴人とa労組と間の労働協約で設けられている経営協議会は,経営の基本施策など重要課題について議論する場として設けられたものであり,その付議事項は,事業計画及びその実績に関する事項,人員計画に関する事項,会社機構の改廃に関する事項,営業制度の基本に関する事項など多岐にわたることは前記引用に係る原判決認定(前記訂正部分を含む。)のとおりであるが,控訴人がa労組との経営協議会において提示した資料や説明内容のうち,その後のa労組との団体交渉における控訴人の資料や説明の基礎となるものがある場合において,参加人との間における同様の交渉事項に関する団体交渉に際して,参加人から,a労組との団体交渉で提示され,あるいは団体交渉の前提とされていたところの情報について,その交渉を行う上で,必要な限りで開示を求められたときには,控訴人は,参加人に対し,当該情報が直接的には経営協議会においてすでに提示された資料や説明内容と一致するものであったとしても,参加人との間において上記の当該情報はこれを開示すべきものであるのであり,これをもって,直ちに,経営協議会での協議内容のすべてが他の労働組合に開示されることになるとか,経営協議会の存在意義を否定する結果になるということはできないのである。
また,団体交渉における使用者の誠実交渉義務の履行の有無について,当該団体交渉で労働条件等を論議するに足りる資料が提示されたか否かで判断すべきは当然のことであるが,同一企業内に複数の労働組合がある場合には,使用者には各労働組合との対応において平等取扱い,中立義務が課されているのであるから,一方の労働組合との団体交渉における誠実交渉義務の履行の有無を判断するに当たり,他方の労働組合との団体交渉で提示された資料や説明内容をも対照してこれを検討することは意味があり,本件において,控訴人の参加人との団体交渉における誠実交渉義務の履行の有無を判断するに当たり,a労組との団体交渉で提示された資料や説明内容を対照する際,当該団体交渉において経営協議会で提示された情報が控訴人の資料や説明の基礎となっているのであれば,それをも含めて情報提供の多寡を検討することになる理であり,これをもって,経営協議会での資料と対照して参加人に対する団体交渉の誠実交渉義務の履行の有無を論じたことにはならないのである。
したがって,控訴人の前記主張は,採用することができない。
(2)  控訴人は,控訴理由において,原判決は,本件退職・再雇用制度の導入に関する当初提案の時期,提示資料及び説明内容につき,控訴人の参加人に対する対応が誠実交渉義務に違反する旨判示するが,控訴人は,当初提案を,a労組には平成13年4月26日の団体交渉において提示し,参加人には同年5月8日に13.5.8提示資料をファックス送付しており,その差は,ゴールデンウィーク期間中の休日を除き4日であり,実施が翌年の平成14年5月1日であることからみても,この4日の遅れが論議に決定的な影響を及ぼしたとみることもできず,この程度の差があることをもって誠実交渉義務違反が成立するとはいえない,また,控訴人が経営協議会で提示した13.4.26経協資料(〈証拠省略〉)がa労組の団体交渉の際に提示された13.4.26a労提示資料(〈証拠省略〉)及びこれに関する説明の前提となるとの原判決の判示は根拠のない憶測であり,そもそも経営協議会で取り扱う事項を他の労働組合に説明する義務はないのであるから,参加人に対する当初提案資料の妥当性を判断するに当たって経営協議会での提示資料と比較すべきではなく,また,当初提案の説明内容の差異についても,13.4.26a労経協資料は,経営協議会において,今後の経営改善施策の説明として提示されたものであり,かかる資料を経営協議会参加者以外の者に対し開示すべきではなく,13.4.26経協資料の内容を参加人に対し開示しないことは当然である旨主張する。
しかしながら,本件退職・再雇用制度の導入は,本件構造改革の中核を成すものであり,参加人の組合員を含む控訴人の社員の労働条件を大きく変更させることになるから,可能な限り同一時期にその説明をすべきであることは前記引用に係る原判決説示のとおりである。そして,控訴人は,a労組に対し,平成13年4月26日に開催された経営協議会において,13.4.26経協資料に基づいて本件構造改革について提案し,また,同日,その後に行われた団体交渉において,13.4.26a労提示資料を提示して本件構造改革の実施に伴う労働条件の見直しについて提案してa労組と協議を行ったが,一方,参加人に対しては,同年5月8日に13.5.8提示資料をファックス送付し,同月11日に開催された第13回団交において,13.5.8提示資料を読み上げて本件退職・再雇用制度の導入の提案をし,参加人からの求めにより説明を加えたことは前記引用に係る原判決認定のとおりであり,これによれば,控訴人は,a労組に対しては同年4月26日に当初提案をしたが,参加人に対しては同年5月11日に当初提案をしたものと認められるのである。控訴人と参加人との間に従来から提示資料をファックス送付する取り決めがあったとしても,本件退職・再雇用制度の導入の当初提案の時期については,a労組に対して同年4月26日の団体交渉で説明したことと対照すれば,参加人に対する同制度の導入の当初提案は,13.5.8提示資料をファックス送付した同年5月8日ではなく,第13回団体交渉で,同制度の導入を説明した同月11日をもってなされたものと認めるべきである。そして,控訴人において,a労組に対する提案と参加人に対する提案を同一時期にすることが困難であったと認めるに足りる的確な証拠がないことからすると,上記提案時期の差に合理的な理由があったということはできず,控訴人の参加人に対する本件退職・再雇用制度の導入に関する当初提案の時期につき,複数組合が併存する場合において使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。
また,本件退職・再雇用制度の導入に関する当初提案の提示資料の内容については,平成13年4月26日に開催された経営協議会で提示された13.4.26経協資料は,控訴人のこれまでの取組と今後の展望,控訴人の本件構造改革に向けての基本的考え方,収益確保とコスト改善の徹底,OS会社の創設や業務運営内容を含む控訴人の事業運営スキームの再構築,そしてこの再構築に伴う諸制度の見直しを内容とするものであり,このうち,事業運営スキームの再構築に伴う諸制度の見直しについては,OS会社の人員配置につき,現在アウトソーシング対象業務に従事している社員の移行によって対処すること,51歳以上の社員は,今回新たに予定している退職・再雇用のスキームを選択しての移行を想定しており,雇用確保の観点から,この移行方式を基本とすること,OS会社の労働条件については,雇用形態・処遇形態の多様化の観点及び同一地域同業種の賃金水準などを勘案して設定することという基本的な見直し内容を記載するとともに,OS会社の労働条件の具体的設定の考え方や社員の移行方法等の労働条件諸制度の見直し内容は別途提案する旨記載されているところ,同日,引き続き行われた団体交渉で提示された13.4.26a労提示資料には,13.4.26経協資料に基づいて,aグループの事業運営スキームの再構築を行い,コスト競争力強化を図り,発展基盤の確立を図る観点から,マーケットプライスを実現するためにOS会社を創設し,既存の一定の業務をアウトソーシングすることが記載され,これと合わせて,OS会社の労働条件の具体的設定の考え方や社員の移行方法等の労働条件諸制度の見直しの具体的な提案内容が記載されていることは前記引用に係る原判決認定のとおりである。そうすると,控訴人が経営協議会で提示した13.4.26経協資料のうち本件構造改革についての基本的な考え方やOS会社の創設とその業務運営内容等の内容が13.4.26a労提示資料の前提となっていることはその記載自体から明らかであり,また,13.4.26a労提示資料に示されたOS会社の労働条件の具体的設定の考え方や社員の移行方法等の労働条件諸制度の見直しの具体的な提案内容は,13.4.26経協資料で別途提案するとされていたOS会社の労働条件の具体的設定の考え方や社員の移行方法等の労働条件諸制度の見直し内容であると認められるのであり,これによれば,控訴人が経営協議会で提示した13.4.26経協資料がa労組との団体交渉の際に提示された13.4.26a労提示資料及びこれに関する説明の前提となっているものと認められるのである(なお,控訴人の上記主張に係る13.4.26a労経協資料は本訴において証拠として提出されていない。)。そこで,a労組と参加人との当初提案の内容について,控訴人がa労組に対し経営協議会において提示した資料や説明内容のうち,その後の団体交渉において提示された資料や説明の前提となっていると認められる前記内容については,参加人に対する当初提案資料や説明の妥当性を判断する上で対照されるべきであり,また,控訴人が参加人に提示した13.5.8提示資料には,本件構造改革の必要性や本件退職・再雇用制度の導入の位置づけ,OS会社がどのように設置されるのかについての説明は記載されていないことは前記引用に係る原判決認定のとおりであるから,以上の諸点を併せ考えれば,控訴人としては,参加人から当該情報について開示を求められたときには,必要な限りで,a労組と同様の資料の提示を行い,当該情報を開示すべきであったものと解するのが相当である。そうであれば,控訴人の参加人に対する本件退職・再雇用制度の導入に係る当初提案の提示資料及び説明内容は前示した使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(3)  控訴人は,控訴理由において,原判決は,控訴人の赤字状態の要因,赤字状態の推移の見通し及び赤字状態の解消策,OS会社の業務概要,経営方針,将来展望及び設立スケジュールについて,控訴人は誠実に対応する必要があった旨判示するが,会社が団体交渉で新たな労働条件を提案する場合に,その背景事情の説明が必要であるとしても,経営協議会の場で説明した詳細な経営分析まで他の労働組合に開示する必要はないのであり,控訴人は参加人に対し,提案に至った経営状況について相応の説明は尽くした旨主張する。
しかしながら,控訴人が参加人に提示した13.5.8提示資料(〈証拠省略〉)には,a労組との本件退職・再雇用制度の導入に係る団体交渉で提示され,また,同団体交渉の前提とされた本件構造改革の必要性や本件退職・再雇用制度の導入の位置づけ,OS会社がどのように設置されるのかといった事項について説明がなかったところ,控訴人としては,参加人から当該情報について開示を求められたときには,必要な限りで当該情報を開示すべきであったことは前記(2)のとおりである。しかるに,控訴人は,参加人との第14回団交(平成13年7月11日),第16回団交(同年9月19日)及び第17回団交(同年10月12日)において,参加人から,本件構造改革の必要性等について説明を求められたにもかかわらず,控訴人の赤字改善の方策等について,経営問題に関わるなどとして具体的な説明を行わなかったことは前記引用に係る原判決認定のとおりであり,控訴人が参加人に対し,提案に至った経営状況について相応の説明を尽くしたと認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(4)ア  控訴人は,控訴理由において,原判決は,本件退職・再雇用制度の導入に関する労働条件の内容に関する控訴人の参加人に対する団体交渉につき,誠実交渉義務に違反する旨判示するが,原判決には事実誤認等があるとして,まず,第14回団交における激変緩和措置率の説明につき,原判決は,控訴人が誠実交渉義務に違反する旨判示するが,控訴人は,参加人に対し,13.6.20提示資料(〈証拠省略〉)で,激変緩和措置率を50%又は40%に設定することを提示し,第14回団交でも,激変緩和措置率が100%とならないことを回答しており,控訴人が経営専管事項であることを理由に説明を拒否した事実はない旨主張する。
しかしながら,控訴人は,平成13年6月15日に開催されたa労組との団体交渉で提示した13.6.15a労提示資料(〈証拠省略〉)では,激変緩和率設定の考え方につき,緩和率が繰延型で50%,一時金型で40%であることのほかに,年齢別の措置総額につき,平成14年度末の年齢が51歳から60歳までそれぞれの60歳までの年収減額とこれに対する措置額を実在者モデルによる平均推計値等を用いて説明していたにもかかわらず,参加人に対しては,同月20日にファックス送付した13.6.20提示資料で,激変緩和措置率は繰延型で50%,一時金型で40%であることを記載したもののその余の13.6.15a労提示資料で示されていた激変緩和措置率設定の考え方については記載されておらず,また,同年7月11日に開催された参加人との第14回団交では,参加人から,激変緩和措置率を設定した理由について質問された際,痛みを伴う改革だから100%ではないとだけ答え,その余の設定の考え方を具体的に説明しなかったことは前記引用に係る原判決認定(前記訂正部分を含む。)のとおりである。以上の認定事実によれば,控訴人は,第14回団交では,参加人から,激変緩和措置率を設定した理由について質問された際,13.6.15a労提示資料でa労組に提示したのと同程度の具体的な説明をすることができたのに具体的な説明をしなかったと認められるのであり,控訴人の参加人に対する第14回団交における激変緩和措置率の説明内容は,前示した使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
イ  控訴人は,第16回団交(平成13年9月19日)におけるOS会社の賃金に関する説明につき,原判決は,第16回団交において,OS会社の賃金を50歳から59歳までの賃金額の平均値の7割で設定することに関し,参加人からのモデル賃金額はいくらか,現在の50歳から59歳までの平均賃金はいくらか,7割の賃金額はいくらかとの質問に対し,控訴人がOS会社の賃金額が決まれば提示するなどの回答しかしなかったとして,これが誠実交渉義務に違反する旨判示するが,この時点では,OS会社の賃金額は決まっていないからそれ以上の説明はできないのであり,また,参加人の質問内容は,具体的にはモデル賃金額とその50歳から59歳までの平均賃金額であるから,これはOS会社の賃金額が決まらなければ算出できず,答えられない旨主張する。
しかしながら,平成13年9月19日に開催された第16回団交において,参加人が,OS会社の賃金を50歳から59歳までの平均値の7割で設定することに関して,モデル賃金額はいくらか,現在の50歳から59歳までの平均賃金はいくらか,7割の賃金額がいくらになるのかなどの質問をしたのに対し,控訴人は,賃金額は人によって違うこと,OS会社の賃金が決まれば提示するなどの説明をしたが,それ以上の具体的説明をしなかったこと(なお,控訴人は,同団交で参加人から質問されたのは,モデル賃金額とその50歳から59歳までの平均賃金額であるとして,これに沿うものとして,証人Fの中労委での平成18年12月5日付け第2回審問調書(〈証拠省略〉)での供述内容を摘示するが,当該供述につき前後の尋問及び供述の記載内容をも併せてみれば,当該供述内容は前記認定のところと抵触するものとは解されない。),第16回団交より前の平成13年6月15日に控訴人がa労組に対して提示した13.6.15a労提示資料には,OS会社の賃金水準につき,その設定方法や地域別,年齢別に試算した具体的数値を示して説明がされているが,同年8月6日に参加人に提示した13.8.6提示資料(〈証拠省略〉)には,OS会社の賃金水準につき具体的な数値を示した説明はされていないことは前記引用に係る原判決認定のとおりである。そうすると,控訴人は,第16回団交において,参加人からされた上記質問に対し,13.6.15a労提示資料に記載されている説明と同程度の説明ができる状態にあったにもかかわらず,OS会社の賃金額が決まれば提示するなどの説明にとどまったことは,前示した使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ウ  控訴人は,第17回団交(平成13年10月12日)における中間面談の際に行う社員のニーズ把握の前提となるOS会社の業務内容,労働条件等に関する説明につき,原判決は,第17回団交において,控訴人はそれまでにOS会社の業務内容,労働条件等に関して十分に説明しておらず,OS会社の労働条件を示してから中間面談を実施すべきであるとの参加人の要望に控訴人が応えなかったことは誠実交渉義務に違反する旨判示するが,控訴人は,それ以前の平成13年5月8日以降,複数回にわたりOS会社の労働条件を提示しており,また,中間面談は大まかな社員の動向を把握するために実施するものであるから,OS会社の業務内容や労働条件の詳細を議論した後でなければ実施できない性質のものではなく,原判決の上記判示は,事実を正確に把握しておらず,また,何が説明不足であったのか具体的な指摘もせずに不十分であるとするのは理由不備である旨主張する。
しかしながら,控訴人が中間面談で社員から聴取しようとする雇用形態の選択ニーズは,本件退職・再雇用制度における雇用形態について,社員が正式に選択をする前の意向調査的なものと解され,社員が意向を形成するには,社員が雇用形態の種類にとどまらず雇用先であるOS会社の業務内容や労働条件についても知る必要があり,参加人としても,組合員にOS会社の業務内容や労働条件について説明する必要があるから,控訴人としては,これらの事項について参加人に説明すべきであるにもかかわらず,控訴人は,第17回団交までに,OS会社の業務内容や労働条件について十分な説明をしていないという状況の下で,第17回団交で,参加人から,OS会社の労働条件を示してから中間面談を実施すべきであるとの要望を受けたのに,控訴人がこれに応えなかったことは前記引用に係る原判決認定説示(前記訂正部分を含む。)のとおりである。そうすると,控訴人が,第17回団交において,参加人からの上記要望に応えなかったことは,前示した使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
エ  控訴人は,第18回団交(平成13年11月6日)におけるOS会社の賃金額の基礎の変更に関する説明につき,原判決は,第18回団交において,控訴人が,参加人からのOS会社の賃金額を50歳から59歳までの平均賃金額を50歳の賃金額に変更した理由の質問に対し,最終的に平均値ではなく調整手当で措置することにし,公平性を考えて実施するとだけ述べて,それ以上の説明をしなかったことが誠実交渉義務に違反する旨判示するが,変更理由については述べたとおりであり,原判決は,それ以上何をどこまで説明すべきであるとするのか理解できない旨主張する。
しかしながら,第18回団交において,参加人は,控訴人に対し,控訴人がOS会社の賃金の基礎を50歳から59歳までの平均賃金額から50歳の賃金額に変更したことにつき,55歳平均値と50歳の額では賃金原資が少なくてすむとして,その理由を質問したこと,控訴人は,これに対し,手当てを調整して公平性を考えて実施する旨を回答し,その余の説明をしなかったことは前記引用に係る原判決認定(前記訂正部分を含む。)のとおりである。そうすると,参加人の質問の趣旨が,控訴人の上記変更につき,賃金原資が少なくなることによる労働条件の変更を懸念し,その変更の理由や経緯を問い質したものであるのに,控訴人が,上記のとおり手当てを調整して公平性を考えて実施する旨を回答し,その変更の理由や経緯を説明しなかったことは,上記質問に対する回答としては極めて不十分であり,前示した使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
オ  控訴人は,第19回団交(平成13年12月6日)における本件構造改革の提案内容の変更の説明につき,原判決は,第19回団交において,控訴人は,本件構造改革の提案内容を説明したが,変更理由や変更経緯を説明していない旨判示するが,控訴人は,第19回団交で,提案内容を十分に説明し,参加人からの質問にも誠実に回答しており,原判決は,どの点についてどの程度まで説明すべきであるとするのか理解できない旨主張する。
しかしながら,第19回団交において,控訴人が,OS会社の賃金の基礎を50歳から59歳までの平均賃金額から50歳の賃金額に変更したことにつき,その変更の理由や経緯を説明しなかったことは前記引用に係る原判決認定のとおりであり,控訴人が,その変更の理由や経緯を説明したと認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(5)ア  控訴人は,控訴理由において,原判決は,本件退職・再雇用制度の導入に関する団体交渉の期日・設定頻度につき,誠実交渉義務に違反する旨判示するが,事実誤認があるとして,まず,第13回団交(平成13年5月11日)後2か月間次の団体交渉が行われなかったことにつき,原判決は,参加人が,第14回団交(同年7月11日)において,前回の団体交渉から2か月間団体交渉を行わなかった控訴人の対応は遺憾であると述べたことに対し,控訴人が反論しなかったことを使用者として不誠実であることの認定の根拠として判示するが,団体交渉の席で,遺憾の意を述べた参加人に敢えて異を唱えることなく本題の議論をしようと大人の対応をしたことが不誠実の証であるとするのは不見識であり,また,第13回団交後,控訴人と参加人とは,合意の上で窓口対応で施策論議を進めており,その過程で,参加人から同年6月26日に団体交渉の開催要求があり,控訴人は交渉委員の日程調整の結果,同年7月11日に第14回団交を開催したのであり,原判決は,このような経緯を看過して誤った事実認定をしている旨主張する。
しかしながら,第13回団交において,参加人は,控訴人に対し,本件構造改革は大問題であり,これまでの団体交渉の回数にこだわらず,論議の場を設けるようにしたいと提案し,控訴人は,これを了承したこと,上記団交当日の午後,控訴人と参加人とは,窓口対応で,今後,団体交渉とは別に小委員会的なものとして勉強会を開催することを合意したこと,第13回団交後,参加人は,控訴人に対し,複数回にわたり,6月中に団体交渉を行うよう要求したが,控訴人からは,日程等の事情で開催できないとの対応であったこと,控訴人と参加人とは,同月26日,次回の団体交渉の開催日を同年7月11日とすることを合意したこと,同日開催された第14回団交において,参加人は,前回の団体交渉から2か月間開こうとしなかった控訴人の対応は遺憾であると述べたが,控訴人は,この点について反論をしなかったことは前記引用に係る原判決認定(前記訂正部分を含む。)のとおりである。以上の認定事実によれば,第13回団交の後に設けられた前記の勉強会等は,団体交渉に代わるものではなく,参加人は,控訴人に対し,複数回にわたり,6月中に団体交渉を行うよう要求したが,控訴人がこれに応じなかったことが認められるのであり,第14回団交まで2か月間団体交渉が行われなかったことにつき,控訴人は前示した使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。第14回団交において,控訴人が,参加人からこの点について遺憾の意を表されたが,反論しなかった事実も上記認定判断に沿うものである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
イ  控訴人は,第15回団交が参加人の要望よりも遅い日に開催されたことにつき,原判決は,参加人が控訴人に対し,平成13年7月18日に,同月25日から同月31日の間に団体交渉を行うことを要求したが,控訴人の都合で同年8月10日になったことを不誠実であると判示するが,これは,控訴人の交渉委員の都合がつかず,参加人と協議して労使合意の下に同日の開催としたのであり,控訴人が開催を引き延ばしたものではない旨主張する。
しかしながら,参加人が控訴人に対し,平成13年7月18日に,同月25日から同月31日の間に団体交渉を行うことを要求したが,控訴人の交渉委員の日程調整が付かないとして上記期間中に団体交渉が行われず,同年8月10日に第15回団交が行われたことは前記引用に係る原判決認定のとおりであり,また,同年7月10日には,a労組が本件退職・再雇用制度の導入に基本的に合意したことが公表されるなどしており(前記引用に係る原判決認定),控訴人としては,参加人との本件退職・再雇用制度の導入に関する団体交渉について機敏な対応が求められる時期であったことも併せ勘案すれば,第15回団交が参加人の要望よりも遅い日に開催されたことにつき,控訴人には前示した使用者として負担する誠実交渉義務違反があるものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ウ  控訴人は,原判決は,第19回団交において,控訴人が参加人から団体交渉を機敏に開催するよう申し入れられたことをもって,控訴人が第19回団交の期日の設定につき機敏に対応していない根拠である旨判示するが,控訴人は,それまで団体交渉の開催を労使合意の下に決定してきており,控訴人の次回の団体交渉期日を早く設定するようにとの申入れは,従前とは異なった要望であり,これをもって控訴人の不誠実の根拠とするのは誤りである旨主張する。
しかしながら,平成13年11月6日に行われた第18回団交で,控訴人はOS会社の労働条件を同月中には出したいと述べたこと,控訴人は,同月13日,参加人に対し,OS会社の労働条件等を提示した13.11.13提示資料をファックス送付したこと,同月16日,参加人は,控訴人に対し,団体交渉を同月26日から30日の間に行うことを申し入れたこと,同年12月6日,第19回団交が開催され,参加人は,控訴人に対し,本件構造改革に伴う労働条件等について控訴人から資料の提示があるが,団体交渉の場を機敏に設定できないのは問題であり,控訴人は同場の設定について機敏に対応するように申し入れ,これに対し,控訴人は,できる限りの対応をしたい旨を回答したことは前記引用に係る原判決認定のとおりである。そうすると,控訴人としては,参加人とのOS会社の労働条件等に関する団体交渉について機敏に対応すべきであったのに,第19回団交が参加人の申し入れよりも遅い日に開催されたことにつき,控訴人には前示した使用者として負担する誠実交渉義務違反があるものというべきである,したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
エ  控訴人は,第21回団交(平成14年1月24日)が開催されたことにつき,原判決は,第20回団交(平成13年12月18日)後に,参加人から複数回団体交渉の申入れがされていたのに控訴人が機敏に対応しなかった旨判示するが,控訴人は,上記団交後,参加人からの同月21日から25日までの開催希望日での調整をしたが,交渉委員の調整がつかず,参加人からの14.1.9団交申入書による開催希望日である平成14年1月21日から同月24日で日程調整し,同月24日に第21回団交を開催することとなったのであり,控訴人が意図的に同月下旬に設定したのではない,また,原判決は,参加人の上記団交申入書に控訴人の対応が不誠実であるとの抗議が記載されていたのに,控訴人がこれに抗議しなかったことを不誠実な対応の証と判示するが,上記の経緯を無視した参加人からの抗議文に敢えて反論しなかっただけであり,これを控訴人が不誠実を自認していた根拠とするのは偏った判断である旨主張する。
しかしながら,前記引用に係る原判決認定事実によれば,平成13年12月18日,第20回団交後に行われた窓口対応で,参加人は控訴人に対し,年内に団体交渉を行うことを申し入れたこと,また,同月25日,参加人が控訴人に対し,年内に本件意向確認について団体交渉を行うように申し入れたが,控訴人は,年内には日程調整ができないとして,年始にすぐ入れる旨回答したこと,参加人は控訴人に対し,年明け後,団体交渉を行うように再三申し入れたが,控訴人が対応しなかったため(〈証拠省略〉),平成14年1月9日,14.1.9団交申入書(〈証拠省略〉)により団体交渉を申し入れたことが認められる。そうすると,第20回団交後に,参加人から複数回団体交渉の申入れがされていたのに控訴人が機敏に対応しなかったものと認められるので,平成14年1月24日に第21回団交が開催されたことにつき,控訴人は前示した使用者として負担する誠実交渉義務に違反するものというべきである。14.1.9団交申入書に控訴人の対応が不誠実であるとの抗議が記載されていたのに,控訴人がこれに抗議しなかった事実も上記認定判断に沿うものである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(6)ア  控訴人は,控訴理由において,原判決は,控訴人のみなし取扱い,意向確認についての交渉態度につき,誠実交渉義務に違反する旨判示するが,事実誤認等があるとして,まず,みなし取扱いについて,原判決は,みなし取扱いの導入は,重大な労働条件の変更をもたらすものである旨判示するが,意向確認手続に応ぜず,退職・再雇用を選択しなければ従前の労働条件のまま控訴人に残ることは当然のことであり,また,社員に勤務事業所又は担当職種の変更があることは社員就業規則のとおりであるから,重大な労働条件の変更には当たらない旨主張する。
しかしながら,みなし取扱いは,51歳以上の社員が,繰延型,一時金型及び60歳満了型の三つの雇用形態のいずれも選択しない場合は,60歳満了型(市場性の高いエリア等を中心として,勤務地を問わず,成果・業績に応じて高い収入を得る機会を追求する意欲を持った社員の当該意欲に応えるという趣旨を含む。)を選択したものとみなす取扱いであるところ,みなし取扱いが適用されると,60歳満了型を選択したものとして,他府県事業所や他職種への配転を望まない社員についても,本人の意思に反して,広域配転や他職種への配転の可能性が相当高まることは前記引用に係る原判決説示のとおりである。使用者である控訴人の側に,人事権の一内容として労働者の職務内容や勤務地を決定する権限があり,現行の人事・賃金制度が適用されるとしても,みなし取扱いにより,これまで事実上,勤務地及び職種が限定されてきた社員についても,その意思に反して,広域配転や他職種へ配転される可能性が相当高まることからすれば,これは重大な労働条件の変更をもたらすものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
イ  控訴人は,原判決は,控訴人は,a労組と合意した本件意向確認の実施方法及びスケジュールを既定路線として参加人の要求等を顧慮せずに押し進めたのであり,本件意向確認の実施に係る控訴人の参加人に対する対応等は不誠実である旨判示するが,本件退職・再雇用制度については,a労組は本件退職・再雇用制度の導入に前向きで,意向確認にも協力的であったが,参加人は,平成13年5月8日の提案以来,半年にわたり控訴人と論議を重ねたにもかかわらず,本件構造改革自体に全面的に反対で,個別面談についても組織的に反対しており,参加人に配慮していては構造改革の実施は不可能であって,社員に対する意向確認の実施スケジュールを変更することもできなかったことからすれば,参加人に対する上記対応をもって使用者として不誠実であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,a労組が,控訴人の社員の大多数を占める労働組合であり,控訴人としては,a労組と合意した本件意向確認のスケジュールに沿って社員の意向確認手続を進めることになるとしても,このことをもって,少数派の労働組合である参加人をないがしろにしてよいということにはならず,参加人に対しても,a労組との対比において,相応の時期に,本件意向確認の実施方法及びスケジュールを提案し,団体交渉の場で説明,協議をすべきであったのに,相応の時期における提案や団体交渉での十分な説明,協議を行うことなく,a労組との合意内容を既定路線として,参加人の意向を顧慮することもなくこれを押し進めたことは前記引用に係る原判決の認定説示のとおりであり,これによれば,本件意向確認の実施に係る控訴人の参加人に対する対応等は誠実交渉義務に違反するものというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(7)ア  控訴人は,控訴理由において,原判決は,控訴人の第22回団交(平成14年2月15日)及び第23回団交(同年3月12日)における配置転換に係る交渉態度につき,不誠実であるだけでなく団体交渉の拒否に当たる旨判示するが,事実誤認があるとして,まず,原判決は,① 参加人が14.1.29要求書,14.2.5要求書で,人事配転や人事配置につき参加人との配転協議や各地域交渉委員会での対応を求めたのに対し,控訴人は,14.1.31回答書(〈証拠省略〉)及び14.2.8回答書(〈証拠省略〉)で,人事配置は控訴人の責任で対処するので参加人の要求に応じられないと回答し,また,② 第22回団交で,控訴人は,配転実施後に疑義が生じたら参加人からの要求に応じて団体交渉において扱うとの説明をしたにとどまるとして,控訴人のこれらの対応は不誠実であり,団体交渉の拒否に当たる旨判示するが,そもそも配転に関する実施方針は人事権の問題であり,使用者が自らの裁量で行うべきものであって,人事協議条項や人事同意条項のない労働組合と個別の人事について事前協議に応ずる義務はないのであるから,控訴人が個々人の配置について団体交渉の場での協議や要求には応じられないとしたのは当然の対応であり,また,上記①の各回答書では,60歳満了型,退職再雇用型選択者の移行先会社等の考え方や,勤務地についても具体的に方向性を示す回答をしており,同②の第22回団交において,控訴人は,参加人からのその他の質問にも回答しているのであるから,第21回団交から第22回団交までの間において,控訴人が団体交渉を拒否したと評価することはできない旨主張する。
しかしながら,参加人は,14.1.29要求書で,本件退職・再雇用制度の実施により行われる社員の配転につき,社員個々人の具体的な配置転換について本人の同意を尊重し,事前に参加人と配転協議を行うことを要求し,また,14.2.5要求書で,参加人の組合員個々人の勤務地・事業所及び職種に関する希望を記載した上で,本人の希望を尊重した配置を行うこと,社員個々人の配転に係る要求については,各地域交渉委員会で具体的に対応することを要求し,平成14年2月15日に開催された第22回団交においても,上記①の各要求書による要求事項を議題として交渉がされたところ,控訴人は,上記①の14.1.31回答書及び14.2.8回答書で,上記各要求書の要求につき,人事配置は控訴人の責任で対処するので参加人の要求に応じられない旨回答し,また,第22回団交においても,配転は,労働契約上の問題であるから個別に対応し,参加人とは交渉しない,配転等を実施した結果,疑義が生じたら,参加人の要求に基づく団体交渉で扱う旨回答したことは前記引用に係る原判決認定のとおりである。
そして,配転は,従業員の配置の変更であって,職務内容や勤務場所が相当の長期間にわたって変更されるものであり,労働者の労働条件や生活環境に多大な影響を与えるものであるから,配転の基準(理由ないし要件)や手続(組合との協議,同意等)などの実施方針は,労働条件に関する事項であり,義務的団体交渉事項になるのである。もっとも,個々の労働者に対してなされる個別具体的な配転は,労使間に事前協議等の協定がある場合を除き,使用者は,事後的に団体交渉等で対応すれば足り,事前協議に応ずる義務はないものというべきである。そこで,参加人の上記①の各要求書及びこれらを議題として開催された第22回団交における要求事項につき,その当時配転先となるOS会社の業務内容や労働条件も必ずしも明確ではない状況下で社員の配転につき具体的な可能性が生じていた時期であったことをも踏まえてこれを合理的に解すれば,① 社員個々人の具体的な配転について本人の同意を尊重し,参加人と事前協議あるいは各地域交渉委員会で事前に対応することを求める(以下「要求事項①」という。)趣旨であるとともに,② 本件退職・再雇用制度に伴う配転の基準や手続などの実施方針に関する協議を求める(以下「要求事項②」という。)趣旨であると解することが相当であるから,控訴人としては,要求事項①についてはともかく,要求事項②については,協議に応じ,説明する義務があったものというべきである。しかるに,控訴人は,上記のとおり,要求事項②についても参加人との協議を拒んだのであるから,控訴人の上記対応は,誠実交渉義務に違反するものというべきである。原判決中,控訴人が指摘する判示部分も,これと同旨のものと解される。なお,控訴人は,前記①の各回答書及び同②の第22回団交において,参加人からの質問にも対応した旨主張するが,控訴人が,前記①の各回答書等で本件退職・再雇用制度に伴う配置転換の基準や手続などの実施方針に関する協議に応じたものと認めるに足りる的確な証拠はなく,前記認定判断を左右するに足りない。
したがって,控訴人の前記及び上記の主張は,採用することができない。
イ  控訴人は,原判決は,第22回団交後から第23回団交間での交渉においても,控訴人が,① 参加人からの14.2.25要求書(〈証拠省略〉)及び14.3.6要求書(退職再雇用。〈証拠省略〉)で,出向等の配転は本人の同意を要する,個々人の勤務地等の労働条件は団体交渉で協議するとの要求に対し,14.3.11回答書(退職再雇用。〈証拠省略〉)で,参加人の要求に応じられない旨回答し,② 第23回団交において,人事配置について疑義が生じた場合は,地域交渉委員会で扱う旨回答したにとどまるとして,控訴人のこれらの対応は不誠実であり,団体交渉の拒否に当たる旨判示するが,個々人の配置につき団体交渉で協議すべきではないことは上記アで主張したとおりであり,また,第23回団交で,控訴人は,参加人からのその他の質問にも回答しているのであるから,控訴人のこれらの対応をもって,団体交渉を拒否したと評価することはできない旨主張する。
しかしながら,参加人は,14.2.25要求書で,出向・単身赴任・異職種配転・長距離通勤などの配転は本人の同意を得て行うことを要求し,また,14.3.6要求書(退職再雇用)で,個々人についての勤務地,業務を含む労働条件等を団体交渉で協議することを要求し,14.3.6要求書(研修。〈証拠省略〉)で,配転は,参加人及び本人との協議・同意を得て実施することを要求するとともに,一定の50歳以上の社員を配置転換の対象とするのか否か明らかにすること,玉突き的配置転換を行わないこと,単身赴任者に配慮すること,広域配転については,個々の配転について参加人との協議を行うことといった配置転換の実施方法に関する要求事項をも記載し,また,平成14年3月12日に開催された第23回団交においても,上記各要求書による要求事項を議題として交渉がされたところ,控訴人は,14.3.11回答書(国民春闘。〈証拠省略〉),14.3.11回答書(退職再雇用)及び14.3.11回答書(研修)で,人員配置は控訴人の責任で対処するので参加人の要求に応じられない旨回答し,また,第23回団交においても,人員配置について事前に団体交渉で協議する考えはなく,人員配置について疑義が生じた場合は,地域交渉委員会において扱っていく旨の回答をしたことは前記引用に係る原判決認定(前記訂正部分を含む。)のとおりである。そして,参加人からの上記要求事項のうち本件退職・再雇用制度に伴う配置転換の実施方針については,控訴人は,参加人との協議に応じ,説明する義務があったことは,上記アで説示したとおりであるところ,控訴人は,上記のとおり,当該要求事項について参加人との協議を拒んだのであるから,控訴人の上記対応は,誠実交渉義務に違反するものというべきである。控訴人は,第23回団交において,参加人からの質問にも対応した旨主張するが,控訴人が,第23回団交で本件退職・再雇用制度に伴う配置転換の実施方針に関する協議に応じたものと認めるに足りる的確な証拠はなく,上記認定判断を左右するに足りない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ウ  控訴人は,本件構造改革に伴う人員移行方針等について,参加人に対し,13.5.8提示資料から第23回団交まで,本件構造改革の実施並びに本件退職・再雇用制度の導入に伴う60歳満了型及び退職・再雇用を選択した場合の勤務地等の業務契約や人員移行等について参加人に対応してきたものであり,配転の実施方法について,全く参加人に示していないかのような原判決の認定は誤っている旨主張する。
しかしながら,控訴人の14.1.31回答書から第23回団交までの間の本件退職・再雇用制度に伴う配置転換の実施方針に関する参加人への対応が誠実交渉義務に違反するものであることは前示のとおりである。また,それ以前に控訴人が参加人に対して本件退職・再雇用制度に伴う配置転換の実施方針に関する協議に応じていたと認めるに足りる的確な証拠もない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
第4  結論
以上の次第で,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 稲田龍樹 裁判官 金子順一 裁判官 内堀宏達)

 

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