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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(68)平成24年 2月29日 東京地裁 平22(ワ)6874号 業務執行組合員地位確認等請求本訴事件、解散確認等請求反訴事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(68)平成24年 2月29日 東京地裁 平22(ワ)6874号 業務執行組合員地位確認等請求本訴事件、解散確認等請求反訴事件

裁判年月日  平成24年 2月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)6874号・平22(ワ)45344号
事件名  業務執行組合員地位確認等請求本訴事件、解散確認等請求反訴事件
裁判結果  本訴請求認容、反訴請求一部棄却・一部却下  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA02298009

要旨
◆有限責任事業組合である原告が、訴外O社の代表取締役である被告Y1及び同Y1の資産管理会社である被告会社との間で、原告を業務執行組合員、被告らを非業務執行組合員とし、当事者がそれぞれ出資することを内容とする本件組合契約を締結したところ、被告らが本件出資金の一部を支払わないことから、原告が業務執行組合員の地位にあることの確認及び未払出資金の支払を求めた(本訴)のに対し、被告らが、本件事業組合が解散したことの確認及び原告が業務執行組合員の地位を有しないことの確認を求めた(反訴)事案において、本件組合契約は公序良俗に反しないなどとして、被告らは本件組合契約に基づき原告に対し残出資金の出資義務を負うとし、また、本件各解散請求及び原告の解任は無効であると判断して、原告の地位確認本訴請求及び出資義務履行本訴請求を認容する一方、被告らの解散確認反訴請求を棄却し、消極的地位確認反訴請求に係る訴えは不適法却下した事例

新判例体系
公法編 > 産業経済法 > 金融商品取引法〔昭和… > 第三章 金融商品取引… > 第一節 総則 > 第二款 金融商品取引… > 第二九条 > ○登録
◆いわゆるベンチャーキャピタルを行うための組合契約は、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律第三条の投資一任契約に当たらず、金融商品取引法第二九条にも違反しない。

 

評釈
小林俊明・ジュリ 1469号100頁
小沢征行・金法 1970号4頁
水野信次・銀行法務21 770号90頁
水野信次・銀行法務21 758号60頁

参照条文
有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律3条
金融商品取引法29条
民法667条
民法672条2項
民法683条
金融商品取引法附則48条1項(平18法65)

裁判年月日  平成24年 2月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)6874号・平22(ワ)45344号
事件名  業務執行組合員地位確認等請求本訴事件、解散確認等請求反訴事件
裁判結果  本訴請求認容、反訴請求一部棄却・一部却下  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA02298009

平成22年(ワ)第6874号業務執行組合員地位確認等請求本訴事件
同第45344号解散確認等請求反訴事件

東京都中央区〈以下省略〉
本訴原告・反訴被告 キャピタル・イニシアチブ有限責任事業組合
(以下「原告」という。)

同代表者組合員 A
同 B
同訴訟代理人弁護士 小川幸三
静岡市〈以下省略〉
本訴被告・反訴原告 Y1
(以下「被告Y1」という。)

同所
本訴被告・反訴原告 有限会社トリリオン
(以下「被告会社」という。)

同代表者取締役 Y1
被告ら訴訟代理人弁護士 佐藤明夫
同 若松俊樹

 

 

主文

1  原告が,原告と被告らとの間の平成17年12月27日付けキャピタル・イニシアチブ第1号投資事業組合契約に基づく業務執行組合員の地位にあることを確認する。
2  被告Y1は,原告に対し,1億4610万円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告会社は,原告に対し,1億2180万円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  被告らの解散確認反訴請求をいずれも棄却する。
5  被告らの消極的地位確認反訴請求に係る訴えを却下する。
6  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,被告らの負担とする。
7  この判決は,第2,3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  本訴
主文1ないし3項と同旨
2  反訴
(1)ア(主位的)
原告と被告らとの間の平成17年12月27日付けキャピタル・イニシアチブ第1号投資事業組合契約(以下「本件組合契約」という。)に基づく組合(以下「本件組合」という。)が平成22年2月19日に解散したことを確認する。
イ(予備的)
本件組合が平成22年12月13日に解散したことを確認する。
(2)  原告が本件組合契約に基づく業務執行組合員の地位を有しないことを確認する。
第2  事案の概要
1(1)  本訴は,原告が被告らに対し,
ア 原告が本件組合契約の業務執行組合員の地位にあることの確認(地位確認本訴請求),
イ 本件組合契約に基づき被告らは出資義務を負っていると主張して,被告らの残出資金(被告Y1について1億7500万円,被告会社について1億4000万円)の一部(被告Y1に対して1億4610万円,被告会社に対して1億2180万円)及び上記残出資金の一部に対する弁済期以降の日である平成21年7月1日から支払済みまで,年6分の割合による約定遅延損害金の各支払(出資義務履行本訴請求),
を求めたものである。
(2)  反訴は,被告らが原告に対し,
ア 主位的に平成22年2月19日,予備的に同年12月13日本件組合の解散請求をし(以下,順に「本件解散請求①」「本件解散請求②」という。),これにより本件組合は解散したと主張して,上記各時点で本件組合が解散したことの確認(解散確認反訴請求),
イ 被告らは平成22年2月19日及び同年12月13日に原告を業務執行組合員から解任する旨の意思表示をした(以下,これらの解任の意思表示を合わせて「本件解任」という。)と主張して,原告が業務執行組合員の地位にないことの確認(消極的地位確認反訴請求),
を求めたものである。
2  前提事実
以下の事実は当事者間に争いがないか,証拠により容易に認めることができる。
(1)  原告は,平成17年11月21日に,「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づいて成立した有限責任事業組合であり,民法に基づく投資事業組合等の組成,運用,管理業務及び経営コンサルティング業務を事業の目的としている。原告の組合員は,A(以下「A」という。)及びB(以下「B」という。)の2名である。
被告Y1は,ジャスダック株式市場に株式を上場している株式会社アウトソーシング(以下「アウトソーシング社」という。)の代表取締役であり,被告会社は被告Y1の資産管理会社である。
(2)  原告は被告らとの間で,平成17年12月27日,キャピタル・イニシアチブ第1号投資事業組合に係る契約書を取り交わし,もって本件組合契約を締結した(甲1)。
本件組合契約においては,原告は業務執行組合員,被告らは非業務執行組合員とされ,総額で原告は1000万円,被告Y1は5億9000万円,被告会社は4億円をそれぞれ出資することとされ(以下「本件出資金」という。),本件組合契約締結時に本件出資金の総額の半額を払い込み,残額については,業務執行組合員からの14日前までの書面による通知に従い,各自の出資約束金額に業務執行組合員の指定する割合を乗じて得られた金額を,業執行組合員が当該通知において指定した払込日までに組合口座に入金して払い込むこととされた。
(3)  平成17年12月26日,本件出資金総額の半額として,原告は500万円を,被告Y1は2億9500万円を,被告会社は2億円をそれぞれ本件組合の口座に入金して払い込んだ。
その後,原告は,平成20年2月から7回にわたり,被告らに対し,払込期日を決めて残出資金全額の払込要請をする通知書(以下「キャピタルコール要請書」という。)を差し出したが,被告らは払込期限の延長を繰り返し求め,平成21年6月28日まで本件出資金の残金の払込みをしなかった。
(4)  原告は,平成21年4月11日付け内容証明郵便(原告の本訴代理人名義のもの)により,被告らに対して本件出資金の残金を支払うよう求めた。被告Y1とA及びBは,同年6月4日,本件出資金の払込みを巡り面談した。この面談の席上で,被告らは原告との間で覚書(甲4。以下「本件覚書」という。)を取り交わし,被告らが保有するアウトソーシング社の株式1万株を売却し,当該売却代金から必要経費を控除した残金を,平成21年6月30日限り入金して払い込むことを約束した。その後,被告会社は同年6月29日に6000万円を,被告Y1は同月30日に1億2000万円を,それぞれ本件組合の口座に入金して払い込んだ。
その後,原告は被告らに対し,本件覚書で約束した払込みが行われていないとして,その履行を求めた。
(5)  被告らは,平成21年9月11日到達の内容証明郵便により,原告に対し,本件組合契約は無効であると主張して,未履行の出資金払込請求を拒絶し,本件組合契約に基づいて被告らが既に払い込んだ出資金全額の返還を請求した(甲5)。
被告らは,平成22年2月19日到達の内容証明郵便により,原告に対し,原告を業務執行組合員から解任する旨の意思表示をするとともに,本件組合の解散を請求する旨の意思表示をした(甲8。本件解散請求①)。
被告らは,平成22年12月13日に原告に送達された反訴状において,原告を業務執行組合員から解任する旨の意思表示をするとともに,本件組合の解散を請求する旨の意思表示をした(本件解散請求②)。
3  争点
(1)  本件組合契約は「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律」(昭和61年法律第74号。平成19年9月30日廃止。以下「投資顧問業法」という。)に違反して無効か(争点1(1))
(2)  本件組合契約は金融商品取引法に違反して無効か(争点1(2))
(3)  出資金の支払方法に関する合意(以下「被告主張合意」という。)の成否及び被告らの出資義務の存否(争点2)
(4)  本件解散請求①及び②についてのやむを得ない事由の有無(争点3)
(5)  本件解任についての正当な事由の有無(争点4)
4  争点についての当事者の主張
(1)  争点1(1)(本件組合契約は投資顧問業法に違反して無効か)
(被告らの主張)
本件組合契約は,被告らは本件出資金を拠出するものの,一切有価証券投資に関する権限を有さず,原告のみが投資に関して判断して執行し,その判断及び執行の対価として報酬を得ることを内容とする契約である。このように,原告が本件組合契約を締結して,その業務執行組合員として業務を行うことは,投資判断の一任による投資を行うことを営業とすることを禁じた投資顧問業法(本件組合契約が締結された平成17年12月27日時点で効力を有したもの。以下同じ。)3条に違反し,同法54条1号に該当して刑事上の責任を負う。したがって,本件組合契約は公序良俗に反し無効である。
(原告の主張)
被告らの主張を争う。
投資顧問業法にいう投資判断の一任による投資を行うことを営業とすることとは,投資顧問業者が顧客のために有価証券の最適な資産構成を形成し,その最適性を常時確保するため,自己の裁量でその構成を随時変更する方式を指すものである。これに対し,本件組合は,いわゆるベンチャーキャピタルとして,資金を投じたベンチャー企業が上場を果たすまで基本的に株式等を持ち続けるものであり,頻繁な売買や銘柄の入替えは行わない。このように,本件組合契約は,投資顧問業法が禁じる投資判断の一任による投資を行うことを営業とすることに該当しないから,投資顧問業法3条に違反せず,有効である。
(2)  争点1(2)(本件組合契約は金融商品取引法に違反して無効か)
(被告らの主張)
原告が本件組合契約に基づいて実施している業務は,金融商品取引法上の投資運用業(同法28条4号)に該当するものであり,金融商品取引法29条により金融商品取引業者としての登録が必要になる。しかるに,原告はこれを行っておらず,有限責任事業組合たる原告は上記登録を行うことができないから,原告が本件組合契約に基づいて業務を執行することは同法198条1号に該当し,刑事上の責任を負う。したがって,本件組合契約は金融商品取引法に違反し,公序良俗に反し無効である。
(原告の主張)
被告らの主張を争う。
投資事業組合契約に基づいて出資された財産を運用する業務執行組合員は,原則として,金融商品取引法29条に定める金融商品取引業者として登録する必要があるが,同法の改正に関する平成18年法律第65号の施行日である平成19年9月30日時点において,現に上記業務を行っている者は,同法附則48条1項により,同法施行日から3か月以内に同条2項に定める届出(以下「特例投資運用業務に関する届出」という。)を行えば,当該業務の終了までの間は,引き続き当該業務を行うことができる。
原告は法人格を有しないため,原告名義で特例投資運用業務に関する届出を行うことはできないが,AとBの両名(原告組合の全組合員)は,関東財務局から個人の届出で問題ないとの指導を受けた上で,平成19年11月7日,各個人名義で特例投資運用業務に関する届出を行った。
このように,AとBは,適切に特例投資運用業務に関する届出を行っているのであって,本件組合が違法となることはない。
(3)  争点2(被告主張合意の成否及び被告らの出資義務の存否)
(被告らの主張)
ア 原告と被告らは,本件組合契約締結時に,本件出資金総額の半額を本件組合契約締結時に支払い,残りの半額については,被告らが保有するアウトソーシング社の株式の売却状況に応じて,当該売却代金から出資する方法によることを合意(被告主張合意)した。
イ 被告らが保有するアウトソーシング社の株式は売却ができていない。したがって,被告らは新たな出資義務を負わない。
(原告の主張)
被告主張合意の存在を否認し,被告らが出資義務を負わない旨の主張を争う。
(4)  争点3(本件解散請求①及び②についてのやむを得ない事由の有無)
(被告らの主張)
ア 組合が存続するためには組合員間の信頼関係が維持されることが重要であるから,組合員間の信頼関係が破壊されたときは,民法683条の組合の解散を請求するやむを得ない事由が存在する。
イ 被告らが本件覚書に基づいて,被告会社は同年6月29日に6000万円を,被告Y1は同月30日に1億2000万円を出資した後も,原告は,被告主張合意に反して,被告らに対して高圧的に出資を迫った。このため,原告と被告らの間の信頼関係は完全に破壊され,その回復は不可能な状況となった。
被告らは,本訴提起後,原告を債務者として,平成22年5月7日に原告名義の銀行預金について仮差押決定を得て仮差押を行った。これに対し,原告は,保全異議を申し立て,保全異議手続において,同年8月3日から同年11月1日まで,8回にわたって裁判官による和解が試みられたものの,原告側が譲歩しなかったために和解交渉は不調に終わった。このような本件解散請求後の事情からも,原告と被告らの対立状況は明らかである。
このように,本件解散請求①を行った平成22年2月19日時点(主位的請求)又は本件解散請求②を行った平成22年11月1日時点(予備的請求)において,被告らが本件組合の解散を請求するやむを得ない事由がある。
(原告の主張)
被告主張合意は否認する。
民法683条にいう組合の解散を請求することができるやむを得ない事由が存在するとの主張は争う。原告が被告らとの信頼関係を破壊する行為をしたことはないし,本件組合について組合の目的を達成することが著しく困難になっている事情もない。
(5)  争点4(本件解任についての正当な事由の有無)
(被告らの主張)
組合員は,正当な事由があれば,業務執行組合員以外の組合員の全員一致によって業務執行組合員を解任することができる(民法672条2項)。
原告は被告らに対して,被告主張合意を無視して執拗に追加出資を迫り,また,保全異議手続における和解において,原告が譲歩しなかったために和解交渉が不調に終わった。原告の上記各行為により,被告らの原告に対する信頼関係は完全に破壊されている。
そうすると,平成22年2月19日時点又は同年11月1日時点において,被告らが原告を業務執行組合員から解任するについて正当な事由がある。
(原告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  上記「前提事実」に,証拠(甲1ないし5,15,17ないし22,25,26,29,47,50,乙2,4,9(枝番のあるものは枝番を含む。),原告代表者B,被告Y1本人兼被告会社代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1)  原告は,平成17年11月21日に「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づいて成立した有限責任事業組合であり,民法に基づく投資事業組合等の組成,運用,管理業務及び経営コンサルティング業務を事業の目的としている。原告の組合員は,A及びBの2名であり,両名が組合である原告を代表するものとされている。
被告Y1は,ジャスダック株式市場に株式を上場しているアウトソーシング社の代表取締役である。被告会社は被告Y1の資産管理会社である。
(2)  アウトソーシング社は,現在ジャスダック市場に上場しているが,同社が上場する前,野村リサーチ・アンド・アドバイザリー株式会社(以下「野村リサーチ」という。)のファンドがアウトソーシング社に出資したことがあった。その当時,Bは野村リサーチに勤務しており,アウトソーシング社を担当していたため,被告Y1と面識があった。また,Aも以前,野村リサーチに勤務していた。
(3)  A及びBは,平成17年4月ないし10月に野村證券株式会社(A及びBの野村リサーチへの出向元会社)を退職し,同年11月に原告を設立した。
この頃,Bは,被告Y1と面識があったことから,A及びBが立ち上げを計画していたベンチャー・キャピタルへの出資を勧誘したところ,被告Y1はこれに応じることとした。こうして,原告は被告らとの間で,平成17年12月27日,キャピタル・イニシアチブ第1号投資事業組合に係る契約書(甲1)を取り交わして,本件組合契約を締結した。本件組合契約に係る本件組合は,行っている事業に将来性があり,当該事業が今後発展し,将来株式の公開が期待できる発展途上の企業等に出資して,株式が公開されるに至ったときには,公開により値上がりした株式を売却する等して利益を上げることを目指すものである。本件組合契約には要旨以下の規定がある。
ア 定義(第1条)
業務執行組合員 原告
非業務執行組合員 業務執行組合員以外の組合員
イ 組合契約の締結(第2条)
組合員は,事業者に対する投資事業を行うため,以下の条項に従って日本国民法上の組合契約を締結する。
ウ 組合員(第5条)
組合員は,業務執行組合員及び非業務執行組合員をもって構成されるものとし,原告を業務執行組合員,被告らを非業務執行組合員とする。
エ 組合の事業(第6条)
組合員は,本件組合の事業として,共同で次に掲げる事業を行い,その投下資本を増殖回収することを目的とする。
(ア) 株式会社の設立に際して発行する株式の取得及び保有
(イ) 株式会社の発行する株式,新株予約権付社債,新株予約権の取得及び保有
(ウ) 前2号の規定により本件組合がその株式,新株予約権付社債,新株予約権を保有している株式会社に対して経営又は技術の指導を行う事業
(エ) 事業者を相手方とする匿名組合契約の出資の持分又は信託の受益権の取得及び保有
(オ) 本件組合契約の目的を達するため,銀行その他の金融機関への預金等による業務上の余裕金の運用
オ 本件組合の組合契約効力発生日及び本件組合の存続期間(第7条)
(ア) 本件組合契約の効力は平成17年12月27日をもって発生する。
(イ) 本件組合の存続期間は,前項に定める日より平成26年12月31日までとする。
(ウ) 前項にかかわらず,本件組合は,業務執行組合員が必要と認めた場合,その裁量により平成27年12月31日まで延長できるものとする。
カ 出資(第8条)
(ア) 本件組合の出資1口の金額は,100万円とする。
(イ) 組合員は,本条の規定に従い,各自の出資約束金額を本件組合に出資する。組合員の各自の出資約束金額は次のとおりである(本件出資金)。
① 原告 金1000万円
② 被告Y1 金5億9000万円
③ 被告会社 金4億0000万円
キ 出資の時期と方法(第9条)
(ア) 組合員は,出資約束金額の50%に相当する額を,平成17年12月26日限り組合口座に入金して払い込む。
(イ) 組合員は,出資約束金額のうちいまだ払込みをしていない金額に関し,業務執行組合員からの14日前までの書面による通知に従い,各自の出資約束金額に業務執行組合員の指定する割合を乗じて得られた金額を,業務執行組合員が当該通知において指定した払込日までに組合口座に入金して払い込む。業務執行組合員は,出資約束金額の30%以上を投資した後に,かかる通知を行うものとする。
ク 出資金の払戻し(第10条2項)
第26条,第36条,第39条及び第40条に基づく組合財産の分配,払戻し及び清算による場合を除き,その理由の如何を問わず,出資履行金額を払い戻さないものとする。
ケ 出資払込の遅滞(第11条)
(ア) 第9条の出資払込を遅滞した組合員は,払込日の翌日から支払済みまで日割計算で,本件組合に対し,未払込残高に対して年利6%の割合で計算した遅延損害金を支払う(1円未満の端数は切り上げる)。
(イ) 前項において,出資払込を遅滞した組合員が,遅延損害金の全部又は一部の支払を履行しない場合,当該組合員は,本件組合又は他の組合員が被った一切の損害を賠償する責任を負う。
コ 業務執行組合員の権限(第12条)
業務執行組合員は,第6条に規定する本件組合の事業の遂行のため,本件組合の名又は業務執行組合員の名において下記の事項その他本件組合の業務を執行し,裁判上及び裁判外において本件組合を代表するものとする。
(ア) 組合財産の運用,管理及び処分
(イ) その他本件組合の目的達成のため必要な一切の事項
サ 組合財産の運用(第19条)
(ア) 業務執行組合員は,組合財産を第6条の目的のために運用するものとする。
(イ) 業務執行組合員は,業務上の余裕金を第6条第5号に定める方法により運用するものとする。
(ウ) 前2項に定めるほか,投資の時期及び方法,投資証券に関する権利行使,組合財産の売却等組合財産の運用に関する事項は全て,業務執行組合員の裁量により行われるものとする。
シ 組合財産の帰属(第24条)
(ア) 組合財産は組合員の共有とし,各組合員は,各自の持分金額の按分割合による組合持分を有する。
(イ) 組合員は,組合の清算前に組合財産の分割を請求することができない。
ス 組合員の脱退(第33条2項前段・3項)
(ア) 組合員は,やむを得ない理由のある場合を除き,本件組合を脱退することができない。
(イ) 前項に定める場合のほか,組合員は,次の事由により脱退する。
①解散 ②死亡 ③破産 ④除名
セ 脱退組合員の持分及び責任(第34条)
(ア) 地位の譲渡を行わない脱退組合員は,脱退時における組合財産のうちいまだ投資されていない分に対する持分の2分の1に相当する金額の払戻しを請求することができる。ただし,脱退時において本件組合の債務が存在する場合は脱退組合員の持分の割合に応じた債務額を上記払戻金から差し引くものとする。
(イ) 脱退時における組合財産のうちいまだ投資されていない分の価額は,業務執行組合員の判断に基づき公正と認める評価方法による評価額とする。
(ウ) 脱退組合員が脱退前に本件組合に対し負担していた債務は,脱退によってその効力に影響を受けない。
ソ 解散(第36条)
(ア) 本件組合は,下記の事由がある場合に限り,解散するものとする。
① 本件組合の存続期間の満了
ただし,本件組合の存続期間満了以前においても,業務執行組合員が本件組合が第6条に定める本件組合の事業の目的を達成し,又は,達成することが不能に至ったと判断した場合
② 非業務執行組合員の全員の脱退
③ 業務執行組合員が脱退した後,その事由が生じた日から2週間以内に,非業務執行組合員の全員一致により,後任の業務執行組合員が組合員の中から選任されない場合
④ 組合員の全員一致により解散が決定された場合
(イ) 組合員が解散前に本件組合に対して負担していた債務は,解散によってその効力に影響を受けない。
(4)  平成17年12月26日,本件出資金総額の半額として,原告は500万円を,被告Y1は2億9500万円を,被告会社は2億円をそれぞれ本件組合の口座に入金して払い込んだ。
(5)  原告は,本件出資金の30%以上を投資した後である平成20年2月,被告らに対し,払込期限を同月末日として,キャピタルコール要請書(甲21の1)を差し出した。これに対し,被告らは原告に対して,インサイダー規制のため野村證券株式会社から自己保有するアウトソーシング社(代表取締役は被告Y1である。)の株式の売却を禁じられており,資金が作れないとの事情を述べて,残出資金の払込日を同年3月末日まで延長するよう要請し(甲22の1),原告もひとまず延長を受け入れた。しかし,被告らは同年3月末日までに本件出資金残額を払い込まなかった。
その後,原告は,同年3月にも被告らに対するキャピタルコールを行ったが,被告らは払込期限の延期を求めた。当該延期後の払込期限の頃に原告が再度のキャピタルコールを行い,それに対して被告らが払込期限の延期を求めるということが繰り返された。原告は,上記同年3月のキャピタルコールの後,同年5月,7月,8月,12月,平成21年3月にも被告らに対するキャピタルコールを行ったが,被告らは本件出資金の残額を払い込まなかった(甲21,22)。
(6)  原告と被告らは,平成20年10月21日,本件組合の存続期間を平成28年12月31日まで伸張し,業務執行組合員が必要と認めた場合にはその裁量で存続期間を平成29年12月31日まで延長できる旨合意した(甲2)。
(7)  原告は,平成21年4月11日付け内容証明郵便(甲3。原告の本訴代理人名義のもの)により,被告らに対して本件出資金の残額を支払うよう求めた。被告Y1とA及びBは,同年6月4日,本件出資金の払込みを巡り面談をした。この面談において,被告らは,被告らが保有するアウトソーシング社の株式1万株を売却し,当該売却代金から必要経費を控除した残金を平成21年6月30日限り入金して払い込むことを約束し,本件覚書(甲4)を作成した。その後,被告会社は同年6月29日に6000万円を,被告Y1は同月30日に1億2000万円をそれぞれ本件組合の口座に入金して払い込んだ。
(8)  被告らは,平成21年9月11日到達の内容証明郵便により,原告に対し,本件組合契約は投資顧問業法が禁じる投資一任契約に該当し,又は原告が金融商品取引法上必要となる投資運用業者としての登録を行っていない,などとして,本件組合契約は無効であると主張し,既に払い込んだ本件出資金の全額を返還するよう求めた(甲5)。
(9)ア  金融商品取引法の改正に関する平成18年法律第65号附則48条は,その1項で,同法の施行の際,現に同法2条2項5号又は6号に掲げる権利について,同条8項15号に掲げる行為に関する業務を行っている者は,当該業務(特例投資運用業務)が終了するまでの間は,同法29条の規定にかかわらず,引き続き特例投資運用業務を行うことができる旨定め,その2項で,同条1項に基づき特例投資運用業務を行う者は,同法の施行日から起算して3か月以内に特例投資運用業務に関する届出を行わなければならない旨定めている。同法の施行日は平成19年9月30日である。
イ  原告が業務執行組合員として行っていた業務は,同法2条2項5号に掲げる特例投資運用業務に該当するものであった。
ウ  A及びBは,平成19年11月7日,関東財務局東京財務事務所に赴き,同事務所の調査官に,原告が業務執行組合員として行っている特例投資運用業務を継続するための届出の方法について問い合わせた。A及びBは,同調査官からの指導に基づいて,各個人の名義で作成した「特例投資運用業務に関する届出書」(甲19の1・2)を提出し,これが受理された。金融庁のホームページには,A及びBについて,金融商品取引法附則48条に基づく届出を行ったことが届出業者リストに記載されている(甲20の1・2)。
(10)  被告らは,平成22年2月19日到達の内容証明郵便により,原告に対し,原告を業務執行組合員から解任する旨の意思表示をするとともに,本件組合の解散を請求する旨の意思表示をした(甲8。本件解散請求①)。被告らは,平成22年12月13日に原告に送達された反訴状により,原告を業務執行組合員から解任する旨の意思表示をするとともに,本件組合の解散を請求する旨の意思表示をした(本件解散請求②)。
2  争点1(1)(本件組合契約は投資顧問業法に違反して無効か)について
(1)  被告らは,本件組合契約においては,被告らは本件出資金を拠出するものの,一切有価証券投資に関する権限を有さず,原告のみが投資に関して判断して執行し,その判断及び執行の対価として報酬を得ることを内容とするものであるとし,業務執行組合員である原告が被告らの出資した金員を運用する行為は「他人のために投資を行っている」ものであり,本件組合契約は「投資一任契約」に該当し,投資顧問業法3条に違反し,公序良俗に反して無効であると主張する。
(2)  そこで検討するに,投資顧問業法3条は,「何人も,投資一任契約に係る場合又は他の法律に特別の規定のある場合を除くほか,他人から,有価証券の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任され,当該投資判断に基づき当該他人のため投資を行うことを営業としてはならない。」と規定しており,同項は,投資顧問業者が行う投資一任契約(投資顧問業者が,顧客から,有価証券の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに,当該投資判断に基づき当該顧客のため投資を行うのに必要な権限を委任されること等を内容とする契約。同法2条4項)に係る業務は,顧客の財産に直接関与し,その財産に及ぼす影響が大きいものであり,投資顧問業者と顧客との間に高い信頼関係があることを前提として初めて成り立ち得るものであることに照らし,投資顧問業者が投資一任契約に基づいて行う業務を原則として禁止し,これを行うには同法4条の登録と共に同法24条の内閣総理大臣の認可を要するとする趣旨であると解される。
一方,本件組合のような投資事業組合は,民法667条に基づく組合を設立して,当該組合の組合員全員が出資し,かつ,業務執行組合員がその高度な専門的能力を発揮して上場が有望なベンチャー企業を見いだして株式の取得という形式で投資を行い,経営を指導するなどして,当該企業の株価を高めて企業を上場させるよう努力し,上場した際に生ずる株式値上がり益を組合員に分配するというものである(争いのない事実)。
以上のような投資顧問業法3条の文言及び趣旨並びに投資事業組合の実体に照らせば,投資事業組合である本件組合の業務執行組合員である原告が本件組合の組合財産を運用して投資を行うことは,本件組合が「自己のために投資を行う」ものであり,同法3条にいう「他人から,…投資判断…を一任され,当該投資判断に基づき当該他人のために投資を行うこと」に該当しないというべきである。したがって,本件組合契約は同法3条に違反せず,公序良俗に反するものではない。
(3)  被告らは,本件組合契約が実質的に投資顧問業法3条で禁止される投資一任契約であると主張し,その根拠として,①原告以外の組合員は被告らのみであること,②被告らの出資割合は98.5%に上り,実質的には被告らのみが出資していること,③本件組合が行う投資については,業務執行組合員である原告のみが権限を有し,被告らは一切その権限を有していないこと,④原告が業務執行について組合財産から報酬を得ていることを挙げる。
しかし,上記①については,民法667条は,組合契約について各当事者が出資して共同の事業を営むことを約する旨規定しているから,組合員が2人以上いれば共同事業を目的とする組合契約の成立が認められ,被告らと原告以外の組合員がいないからといって本件組合の共同事業目的が否定されることはない。上記②については,有限責任事業組合である原告の組合員を構成するA及びBは,その資力に応じて共同出資をしてリスクを取っており,実質的にみても被告らのみが出資したとはいえない。上記③については,被告らは非業務執行組合員であり,本件組合契約上投資の最終決定の権限を有しないけれども(14条1項,19条3項),本件組合の運営全般,投資対象の発掘や選別に関しては,共同で事業に参画し得るから(15条3項,19条5項),被告らはこの限りでは権限を有しているということができる。上記④については,ベンチャーキャピタル事業にあっては,業務執行組合員に対し組合財産から毎期一定額の管理報酬が支払われることは業界に一般に行われており(甲15,原告代表者B),この事情は本件組合契約が投資一任契約であることを基礎付けるものとはいえない。したがって,本件組合契約は実質的にみても投資顧問業法3条で禁止される投資一任契約であるとはいえず,被告らの上記主張は採用することができない。
3  争点1(2)(本件組合契約は金融商品取引法に違反して無効か)について
(1)  被告らは,原告が本件組合契約に基づいて実施している業務は金融商品取引法上の投資運用業に該当するから,同法29条の規定により金融商品取引業者としての登録が必要であるのに,原告は投資運用業者として登録をしていないから,原告が本件組合契約に基づいて業務を執行することは同法198条1号に該当し,本件組合契約は公序良俗に反し無効であると主張する。
(2)  そこで検討するに,投資事業組合契約に基づく出資者の権利は金融商品取引法2条2項5号の「みなし有価証券」に該当し,また,投資事業組合契約に基づいて出資された財産の運用は,同条8項15号の投資運用業に該当するから,投資事業組合契約に基づいて出資された財産を運用する業務執行組合員は同法29条の金融商品取引業者として登録が必要である。ただし,金融商品取引法の改正に関する平成18年法律第65号附則48条1項は,同法施行日である平成19年9月30日の時点で,既に同法2条2項5号に掲げる権利について,同条8項15号に掲げる行為に係る業務を行っている者については,同法29条の規定にかかわらず,当該業務が終了するまでの間は,引き続き当該業務を行うことができ,その場合には同法の施行日から3か月以内に同法附則48条2項の定める届出をする必要がある旨規定している。
本件において,原告は民法上の組合としての有限責任事業組合であり,権利義務の帰属主体になれないことから,原告名義での上記届出はできない。しかし,原告の権利義務の帰属主体である組合員全員であるAとBは,関東財務局東京財務事務所の調査官に対し,原告が本件組合の業務執行組合員として行っている特例投資運用業務を継続するための届出の方法について問い合わせた上,同調査官の指導に従い,同法の改正に関する法律平成18年法律第65号附則48条1項に基づき,同法施行日(平成19年9月30日)から3か月以内である平成19年11月7日,それぞれ自身の名義による同法附則48条2項の「特例投資運用業務に関する届出書」を提出して届出をしたこと,金融庁のホームページの届出業者リストにには,A及びBが同法附則48条に基づく届出を行った旨記載されていることは前記1認定のとおりである。このような事実関係の下では,原告について金融商品取引法29条に違反せず,本件組合契約は公序良俗に反するものではない。被告らの上記主張は採用することができない。
4  争点2(被告主張合意の成否及び被告らの出資義務の存否)について
(1)  被告らは,本件組合契約締結の際,被告らによる追加の出資は,アウトソーシング社の株式の売却の代金を充てることを前提としており,出資の方法について,出資総額の半額を本件組合契約締結時に現金で支払い,残りの半額について,被告らが保有するアウトソーシング社の株式の売却代金を売却状況に応じて出資する方法による旨合意(被告主張合意)したと主張する。被告Y1は法廷でこれに沿う供述をし,乙2(被告Y1の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。
しかし,被告Y1の上記供述等は,次のアないしエのとおり不自然,不合理である上,反対趣旨の証拠(甲47,原告代表者B)と対比しても,たやすく信用することができない。他に被告主張合意が成立したことを認めるに足りる証拠はない。
ア 被告Y1の上記供述等のとおりであるとすると,本件組合における追加出資の時期及び金額は不確実な株式売却動向に左右されることになるが,これでは本件組合の投資戦略を安定的かつ機動的に立案することができず,ひいては本件組合の目的が達成できなくなるおそれがある。原告が,本件組合契約締結の際に,このような不合理な内容の合意を了解したとは考え難い。
イ 本件組合契約に被告主張合意を特約として付加するというのであれば,これは本件組合の出資義務の履行時期が先延ばしになるなどして,目的達成に重大な影響を及ぼすものであるから,契約書の特約条項に入れるか別途覚書を取り交わすのが自然であると思われる。しかるに,本件組合契約に係る契約書中にはその旨の記載はなく,被告主張合意の記載された覚書も存在しない。
ウ 原告が平成20年2月以降被告らに対し繰り返しキャピタルコールを行ったのに対し,被告らは払込期限の延期を繰り返し要請しており,被告Y1は上記要請をする際,A及びBに対して「インサイダー規制のため野村證券から自己保有のアウトソーシング社の株式の売却を禁じられており,資金が作れないため出資を待ってほしい。」などと述べている(争いのない事実)。被告らのこのような言動からは,被告主張合意の存在はうかがわれない。
エ 被告らが原告との間で平成21年6月4日に取り交わした本件覚書(甲4)には,被告らが保有するアウトソーシング社の株式1万株を売却し,当該売却代金から必要経費を控除した残金を平成21年6月30日限り入金して払い込む旨の約束が記載されるとともに,「甲(被告Y1)及び乙(被告会社)は,未出資額について,全額を支払う意志があることを確認する。ただし,甲および乙の事情に鑑み,残額の出資方法については,一ヶ月以内に再度甲,乙,丙(原告)にて会談し,詳細を詰めることにする。」旨記載されている。このように,本件覚書は,被告らが本件出資金の残額を支払う意思のあることを確認するものであって,被告主張合意の存在を認める記載はなく,被告主張合意の存在をうかがわせるような記載もない。
(2)  そうすると,被告らは原告に対し,本件組合契約に基づき残出資金(被告Y1は1億7500万円,被告会社は1億4000万円)の出資義務を負う。原告は,被告らに対し,平成21年4月11日に残出資金の出資を求める内容証明郵便(甲3)を発送し,この頃同内容証明郵便が被告らに到達した(争いのない事実)から,残出資金は同年4月30日には遅滞に陥っている。
以上によれば,被告らは原告に対し,上記残出資金の一部(被告Y1は1億4610万円,被告会社は1億2180万円)及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年6分の割合による約定遅延損害金の支払義務を負う。
5  争点3(本件解散請求①及び②についてのやむを得ない事由の有無)について
(1)  被告らは,原告との間の信頼関係が破壊されたから,本件解散請求①及び②にはやむを得ない事由があると主張し,原告との間の信頼関係が破壊されたとする事情として,①原告が被告らに対して,被告主張合意の存在を無視し,弁護士を立ててまで高圧的・執拗に追加出資の払込みを求めたこと,②原告と被告ら間の保全異議事件において,裁判官が和解を試みたものの,原告が譲歩しないために和解が決裂したこと(本件解散請求②に関する事情)を挙げる。
しかし,上記①について,被告主張合意の成立は認められないから,原告が被告主張合意に反して原告に追加出資を迫ったということはできない。また,原告は被告らに対し繰り返しキャピタルコールを行ったところ,被告らから払込期限の延期を繰り返し求められ,これに1年以上にわたって何度も応じてきたことは上記認定のとおりであり,このような事実関係の下では,原告が平成21年4月に弁護士名義で内容証明郵便(甲3)を出して被告らに追加出資を求めたことが高圧的であるとか被告らのとの間の信頼関係を破壊したなどということはできない(本件組合契約上被告らが出資金の大部分を出資する義務を負っていたことは,上記判断を左右しない。)。また,上記②について,和解に応ずるかどうかは当事者の自由な意思に委ねられるものであるから,裁判所での和解において原告が譲歩しなかったとしても,これをもって当事者間の信頼関係を破壊したということはできない。
(2)  ところで,民法683条の「やむを得ない事由」とは,経済界の事情の変更,組合の財産状態,組合員間の不和などによって,組合の目的を達成することが著しく困難になることをいうものと解される。
本件組合の目的は,株式会社の設立に際し発行する株式の取得及び保有等を共同して行い,その投下資本を増殖回収することであるところ,本件組合は現時点において帳簿上の資産価値が減少している(争いのない事実)。しかし,これは,被告らが出資義務を履行しないため本件組合の投資規模が当初の半分となっており,その結果,原告は潜在的な有望な投資機会を逸しているためであるとも考えられ,被告らが残出資金の出資義務を履行すれば,なお本件組合の目的の実現可能性があるものと考えられる。本件解散請求①及び②は,この点からみてもやむを得ない事由があるとはいえない。
(3)  以上によれば,被告らの本件解散請求①及び②はやむを得ない事由がないから,無効である。
6  争点4(本件解任についての正当な事由の有無)について
被告らは,①保有株式の売却によって得る金銭を本件組合契約の出資金とする旨の被告主張合意があったのに,原告が被告主張合意に違反して直ちに被告らに対し出資を行うように求める対応をした,②その後の裁判所における和解交渉の場面においても原告の真摯な対応がみられなかったとして,組合員である原告と被告らとの間の信頼関係は破壊されたから,本件解任には正当な事由があると主張する。
しかし,上記①については,被告主張合意の成立を認めるに足りる証拠はない。上記②については,被告の指摘する事情をもって原告が被告らとの間の信頼関係を破壊したということはできない。したがって,本件解任について正当な事由があるといえず,被告らの上記主張はいずれも採用することができない。
7  結論
以上によれば,当裁判所の判断は次のとおりとなる。
(1)  原告は投資顧問業法3条及び金融商品取引法29条に違反せず,本件組合契約は公序良俗に反しない。被告主張合意の成立を認めるに足りる証拠はなく,被告らは本件組合契約に基づき原告に対し残出資金の出資義務を負う。本件解散請求①及び②について民法683条の「やむを得ない事由」がなく無効である。本件解任について民法672条2項の「正当な事由」がなく無効である。
原告は,本件組合契約12条の規定により,自らの名で組合財産を管理し,対外的業務を執行する権限を与えられた業務執行組合員であるから,組合財産に関する訴訟につき組合員から任意的訴訟信託を受けており,出資義務履行本訴請求について自己の名で訴訟を追行する当事者適格を有する(最高裁昭和45年11月11日大法廷判決・民集24巻12号1854頁参照)。
したがって,原告の地位確認本訴請求及び出資義務履行本訴請求は理由があるから認容する。
(2)  民法上の組合の解散は,組合の対内及び対外関係における諸般の法律関係の基礎をなすものであり,その解散の効力に疑義が存するときは,業務執行組合員の地位の有無,業務執行組合員のした業務執行行為及び代表行為の効力等派生する法律関係について連鎖的に種々の紛争が生じ得るのであって,このような場合には,基本となる解散自体の効力を確定することが,紛争の抜本的な解決のため適切かつ必要な手段ということができる。被告の解散確認反訴請求は,原告の業務執行組合員の地位の有無,原告が業務執行組合員としてした業務執行行為及び代表行為の効力等の派生する法律関係についての紛争があり,このような現に存する法律上の紛争の解決のため適切かつ必要と認められ,適法と解される。しかし,本件解散請求①及び②は無効であるから,被告らの解散確認反訴請求はいずれも理由がないので棄却する。
(3)  被告らの消極的地位確認反訴請求に係る訴えは原告の地位確認本訴請求に係る訴えと訴訟物が同一である。そうすると,原告の地位確認本訴請求に係る訴えが提起されている以上,被告らの消極的地位確認反訴請求に係る訴えは確認の利益を認めることができないから,不適法として却下を免れない。よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 畠山稔 裁判官 杉山順一 裁判官 瀬戸信吉)

 

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