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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(62)平成24年 9月28日 大阪地裁 平23(ワ)2469号 賃金等請求事件 〔末棟工務店事件〕

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(62)平成24年 9月28日 大阪地裁 平23(ワ)2469号 賃金等請求事件 〔末棟工務店事件〕

裁判年月日  平成24年 9月28日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)2469号
事件名  賃金等請求事件 〔末棟工務店事件〕
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA09286005

要旨
◆被告の従業員であったと主張する原告が、被告に対し、一方的に賃金を減額されたとして、減額前賃金との差額の支払を、また、未払の時間外割増賃金及び付加金の支払を求め、さらに、原告の離職票への虚偽記載により損害を被ったとして、損害賠償を求めた事案において、本件で、原被告間に指揮命令関係が存在していたとはいえず、賃金を月額30万円とする内容の雇用契約が成立したとは認められないものの、少なくとも毎月「基本給」名目の15万円を支払う合意があったことは認められ、被告が、原告に対し、支払うべき15万円を支払ったことの主張・立証はないから、原告の請求は同額の支払を求める限度で理由があるとする一方、雇用関係が認められない以上、割増賃金請求は理由がなく、また、そもそも原被告間の契約関係が雇用契約とは評価できないのであるから、離職票の記載によって原告に損害が生じたとは認められないとして、その余の請求を棄却した事例

出典
労判 1063号5頁

評釈
戦東昇・法政研究(九州大学) 80巻2・3号127頁

参照条文
労働契約法6条
労働基準法37条
労働基準法114条
民法623条
民法709条

裁判年月日  平成24年 9月28日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)2469号
事件名  賃金等請求事件 〔末棟工務店事件〕
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA09286005

原告 X
同訴訟代理人弁護士 井上寛
被告 Y株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 大本力

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,15万円及びこれに対する平成22年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用はこれを20分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。
4  この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告に対し,311万3298円及びこれに対する平成22年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,46万1490円及びこれに対する平成23年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告に対し,60万5007円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,被告の従業員であったと主張する原告が,被告から一方的に賃金を減額されたとして,減額前の賃金との差額を請求し,また,時間外労働に対する割増賃金が未払であるとして割増賃金及び付加金を請求し,さらに,被告が原告の離職票に虚偽の事実を記載したことにより損害を被ったとして,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。
被告は,原告を雇用した事実はなく,原告の事業に対する資金援助ないし出資をしただけであると主張して争っている。
1  前提事実(争いがないか,後掲の各証拠〈省略〉により容易に認められる事実)
(1)  被告は,建設業等を目的とする株式会社である。
(2)  原告は,IT関連事業を目的とする訴外a株式会社(以下「a社」という。)に勤務していたが退職し,平成20年4月1日から,「○○」(以下「○○」という。)の名称でIT関連事業を行っていた(後記のとおり,○○が被告の一事業部門であるか,原告の個人事業であるかについて争いがある)。
原告と被告との間で,雇用契約書,業務委託契約書その他契約内容を証する書面は作成されていないが,被告は,原告に対し,「給与支払明細書」(証拠〈省略〉)を交付していた。
(3)  被告は,原告に対し,平成20年4月から平成21年1月まで,毎月末日限り,「基本給」の名目で15万円,「外注費」の名目で15万円の合計30万円ずつを支払った。
(4)  被告は,「基本給」名目で原告に支払っていた15万円について,所得税の源泉徴収を行い,雇用保険料等も支払っていた。一方,「外注費」名目の15万円については,源泉徴収は行わず,雇用保険料等も支払っていなかった。
(5)  被告は,平成21年2月及び3月,原告に対する支払額を「基本給」名目の15万円のみに減額した。
その後,被告は,同年4月の支払については,差引支給額が20万円になるように,額面を23万1369円(「基本給」15万円,「外注費」8万1369円)とし,同年5月から平成22年3月までの間も,差引支給額が20万円になるように,額面を23万1069円(「基本給」15万円,「外注費」8万1069円)とした。そして,同年4月は,再び「基本給」名目の15万円のみとした。
(6)  被告は,原告について,離職年月日を平成22年5月31日とする離職票を発行したが,同離職票の「具体的事情記載欄(事業主用)」には,原告の離職理由について,「自己都合」と記載されている(証拠〈省略〉)。
2  争点
(1)  原告と被告との間で,月額30万円の給与を支払う内容の雇用契約が成立したか否か(争点1)
(2)  雇用契約の成立が認められる場合,未払の時間外割増賃金があるか否か(原告による時間外労働があったか否か)(争点2)
(3)  被告が原告の離職票に記載した内容に関し,被告に不法行為が成立するか否か(争点3)
第3  当事者の主張
1  争点1について
(1)  原告の主張
ア 原告は,被告代表者に請われて,被告の一部門である○○名で業務を担当するため,平成20年4月1日,被告に入社した。原告の賃金は,入社時に30万円と定められた。被告は,このうち15万円を給与名目で,15万円を外注費名目でそれぞれ支払っているところ,これが,被告が雇用保険料等の支払の一部を免れるための偽装工作であることは,被告代表者も認めている。
被告は,「外注費」名目の15万円を経費であると主張するが,経費は後記のとおり別途支払ってもらっており,経費ではない。また,被告代表者は,一時的な温情による支給であるとも供述するが,給与と同額であり,温情による支給と見るには多額に過ぎ,30万円が当初から約束された固定の給与であることは明らかである。
平成21年2月,原告と取引先との間で小さなトラブルが発生すると,被告は,上記第2の1(5)のとおり,給与を減額した。
被告は,平成22年4月17日,原告に一方的に解雇を申し渡した。被告は当初,4月末での退職を求めたが,その後,5月末での退職ということになった。被告は,4月分の給与を15万円しか支払わず,5月分は全く支払わなかった。
したがって,被告は,原告に対し,合計157万6872円の未払賃金請求権を有する。
イ 原告の所定労働時間は,月曜日から金曜日までの週5日,午前9時から午後6時まで(休憩1時間を含む。)の1日8時間であったが,実際には,被告から命じられて,ほとんど毎週のように土曜日に出勤して最低1日8時間,時間外労働をしていた。また,祝日に出勤して勤務をしたこともあった。
原告が担当していた○○の事業は,もともと被告が行っていた建設業とは畑違いの新たな事業展開であり,そのために原告が採用されたことから,OA関係に詳しい原告にある程度の仕事の裁量は認められていたものの,営業方針等については,折々に被告代表者から指示があり,また,代金の決定には被告の決済が必要であり,請求書も被告から取引先に送付されていた。
被告は,原告と雇用関係になく,資金援助であると主張するが,被告代表者が仕事を通じて知り合っただけの原告に対し,何らの見返りもなく,2年間もの間,しかも事業が軌道に乗るまでということでもなく,当初は毎月30万円,減額後も15万円以上の資金援助をし,雇用保険等にまで加入させて保険料を負担していたなどということは,常識的に考えて到底あり得ない話である。
原告が「○○事業計画書」(証拠〈省略〉)を作成したのは,入社後の平成20年4月25日ころである。仮に,原告が独立事業を行うにあたって資金援助をしてくれる被告に提出するのであれば,資金援助前に事業計画書を提出するのが当然であるが,同被告は○○を将来的に別会社として独立させようとしていたので,同事業計画書もそれに沿って,原告が被告代表者から命じられて作成したものである。
ウ ○○の預金通帳(証拠〈省略〉)の名義人は,「○○・A」(被告代表者の妻)となっており,同人が管理していた。事業主にとって資金管理は最も重要な事柄の一つであるから,唯一の預金口座の管理を第三者に委ねるなどという事態はあり得ない。被告が○○の資金を管理していた事実は,○○が被告の事業であったことを裏付けるものである。被告は,この通帳から立替金の回収分と被告が外注を受けた仕事の利益分を出金したと主張するが,通帳からの出金は,平成22年1月19日の600万円,同年1月27日の200万円及び平成23年2月25日の85万円の3回である。いずれもおおざっぱな金額であり,1回目と2回目は100万円単位で引き出せるだけ引き出しているのであって,到底立替金や外注を受けた仕事の利益分を計算して引き出したものではあり得ない。
なお,被告代表者の妻名義にした理由は,被告代表者によれば,将来的に被告代表者の妻を代表者として別会社を設立するための準備であるとのことであった。
原告は,毎月被告に経費明細書をメールで送信し,経費の請求をしていた。単に被告から資金援助を受けていたのであれば,このような詳細な経費明細書を毎月被告に送信する必要はない。原告は,この経費を,30万円とは別に被告に支払ってもらっていた。
エ ○○の事務所の賃貸借契約は被告が締結し,原告は賃料も負担していなかった。パソコンやコピー機も被告がリースしていた。取引先との契約も被告名義で行われ,原告の立場は被告の担当者であった。
会社が,本業とは別の事業を行う場合に,その事業だけのための事業名称,事務所,電話番号を使うことは一般によく行われていることであり,また,○○の事業に被告の名称を表示する必要もない。むしろ,工務店が経営しているIT事業であることを示すことは,一般顧客に対する事業の印象としてマイナスに働く可能性も考えられる。被告代表者は,原告に,建築会社である被告がIT事業を行うと,他の同業者のやっかみがあり仕事がやりにくくなるのでIT事業を別の名称で行うことにしたと説明していた。
オ 被告は,自らのホームページで,「○○事業部」という項目を作り,新着情報として,「4月1日新規事業IT事業部○○新設」と掲載している(甲6)。これは,被告が,○○を自社の事業として認識していた何よりの証拠である。
カ 被告は,業務日報(証拠〈省略〉),原告の日記(証拠〈省略〉)に出てくる業者について,被告の事業と関係がないとか,被告が全く知らない業者であると主張するが,被告が列挙する業者はいずれも○○すなわち被告の事業に関する業者であり,被告が知らない業者などない。「b社」は,被告代表者からの紹介により○○の仕事をすることになった業者である。「c社」は,被告が○○の事業を行うに当たり,参考に話を聞きに行った会社であり,その際,被告代表者と原告とが同行している。「d社」は,「△△.com」のインターネットサイトの作成を依頼した会社である。「C」は,デザイン会社を経営する者であるが,被告の事業に深く関わっていた。また,Cは,原告が退職した後の平成20年5月頃から平成21年5月頃までの間,○○で使用していた事務所を被告から毎月5万円の賃料で賃借していた。「e社」,「f社」は,いずれも○○で仕事を受けており,被告の売上として計上されていた。原告の日記に記載のある「g社」,「h社」は○○の顧客であり,「Dちゃん」はi社の職人である。その他は原告の個人的な知人である。
キ 被告は,「△△.com」や「j社」などの名義で複数の事業を行っており,原告はこれらの業務も行ったが,報酬等を受け取っていないのは,被告の従業員として行ったからである。
(2)  被告の主張
ア 被告代表者と原告とは,原告がa社に勤めていた以前から,仕事を通じて面識があったが,原告は,IT関係に詳しく,a社に勤めていたころ,盛んに独立したいと言っていた。そして,平成20年初めころ,原告が,被告代表者に対し,「勤務先を辞めてIT関係の仕事を独立して行いたいが,資金がなく応援してほしい。」と持ちかけてきた。
原告はサラ金等から多額の借金をしており,資金が無かったため,被告代表者に資金援助を求めてきたのであるが,被告代表者が支援する旨を伝えたところ,原告は,以前から会社員として雇用保険等に加入しており,継続して雇用保険等に加入する形にしてほしいと頼んできたことから,資金援助を給与の形で交付することになったのである。
しかし,被告代表者は,資金援助といってもそれほど多くはできず,また,雇用保険料等の負担もあり,月15万円程度として,不足分は経費という形で交付することとなり,期間を平成20年4月から2年間として資金援助をすることになったのである。
仮に,原告の被告に対する資金援助が給与に当たるとしても,被告は,月に30万円を固定して支給することには不安があったこと,また,雇用保険料等の雇用主負担もあることから,出資のリスクを考慮し,原則として最低限月15万円を「基本給」として支給することになり,残りの月15万円については,原告の仕事上の成果により増額や減額もできるよう,いわば歩合給的要素を持たせ,「外注費」名目で支払うこととなったのである。この「外注費」が単なる経理上の名目であることは,原告の経費は原告の請求により被告がその都度支払っていたことからも明らかであり,原告が現実に被告から外注を受けていたわけではない。
以上のことは,原告に説明しており,原告が被告の取引先と大きなトラブル等を起こしたことから,15万円を減額した際,原告からは何の異議も出なかった。しかし,原告から,それでは苦しいからと懇願され,同年4月からは,23万1369円とし,実質上5万円を増額したのである。
したがって,「外注費」名目の月15万円の減額には合理的理由が存在し,何ら違法,不当ではない。
原告は,平成20年4月25日ころに作成した「○○事業計画書」を被告代表者に示して資金援助を願い出たのであり,同事業計画書からも明らかなとおり,○○は被告とは全く別個の原告の独立事業であり,原告が被告の従業員でないことは明らかである。○○という名称もロゴも原告自身が決定した。
また,原告は,「不動産検索システム計画書」(証拠〈省略〉)を作成しているが,その中で,被告を○○の協力会社の一つと位置づけている。
原告は,被告が,何らの見返りもなく,仕事を通じて知り合った原告に資金援助をするはずがないと主張するが,被告代表者が原告に援助をしたのは,原告がIT業を中心とした営業会社として成功すれば,被告にとっても受注が増えるというメリットがあり,投資分が還元されると期待した面もあるからである。
イ 原告が労働基準法上の労働者であると言えるためには,原告と被告との間に使用従属関係の存在が必要になる。しかし,原告は,被告の知らない相手と仕事上のやりとりをしており,被告の指示が及んでおらず,また,被告は,原告の出社時刻や退社時刻,休日等を決めることはできず,当然,原告のタイムカードもなく,原告は思うままに仕事をしていた。
仮に,原告が独立の事業者でないとしても,被告から受託した業務を処理して報酬を受領する業務委託社員であり,いずれにしても被告の一従業員とはいえない。原告が,被告がIT事業を立ち上げるために入社させた一従業員であるのであれば,事業計画のうち,事業の大枠ないしアウトラインは被告代表者が決め,また,自由な出退勤ではなく,他の従業員と同様の出退勤でなければならず,仕事を進めるにあたっても具体的な指示が存在しなければならないが,そのような事実はない。
原告は,手帳(証拠〈省略〉)の記載をもって,土曜日に被告の仕事をしていた証拠であると主張するが,例えば,平成22年3月13日の記載によれば「会社は,午前中は休み,昼から出勤,事務所では座談会の設営」とあり,原告は被告の了解を得ずに午前中は休み,昼から出勤後,事務所でEの座談会の設営準備をしているのであり,およそ従業員としては考えられないことを堂々と行っているのである。
原告が休む場合,被告に一方的にメールを入れるのみで,被告の了解を得る必要はなかった。
業務日報メールの送信を求めたのは,原告が一向に真面目に仕事をしている様子が見えなかったからである。資金援助をした以上,真面目に仕事をしているか否かの報告を求めるのは当然であり,従業員に書かせる業務日報とは性質が異なる。これをもって「原告が被告の支配・管理下に置かれていた」というのは失当である。
なお,被告は,従業員には日報など書かせたことはない。被告の従業員は,被告代表者の段取り,指揮の下で仕事をしており,日報を書かせる必要性・理由がないからである。
ウ 原告にはサラ金等に多額の借金があったため,同人名義の口座を作ることができず,被告代表者の妻名義で,○○の口座を作って管理し,そこから立替金等を回収していたのである。被告代表者の妻を代表として別法人を設立する計画などなかった。
原告が○○を立ち上げたからといって,直ちに資金ができるはずもなく,当面の経費等は被告が立て替えざるを得なかったのである。しかし,それはあくまで立替えであり,将来の原告の売上から返還すべきは当然である。
エ 原告が○○の事務所としていた場所は,被告住所地から300~400メートル離れた場所である。被告が賃貸借契約をしたのは,原告の名前では信用や保証の点で問題があったからであり,被告が原告を従業員として雇用するのであれば,わざわざ賃貸物件を借りることなどあり得ない。
原告の報酬から天引きされている9555円という金額は,原告が被告名義で購入したパソコンのリース料金である。原告の信用情報に問題があり,原告自身がリースを組めないことから,被告名義でリース契約をしたが,同パソコンは,原告の所有物として原告が使用し,現在も原告が保有している。原告は,原告の私物であるが故に同パソコンを持ち帰ったのである。
被告名義でリース契約をしていることをもって,被告の物であり,原告は一担当者に過ぎないというのであれば,原告がリース料を支払う理由はなく,また,同パソコンを原告が持ち帰ったことは窃盗に当たる。
原告は,本件訴訟において,同パソコンのリース料相当額について被告に請求していたが,後に請求を放棄した。原告は,同パソコンが,OAフロアなどの3D図面の作成のためにリース契約を締結した高性能のものであり,かつ,原告が被告の従業員として,3D図面作成を請け負うことをk社に提案し,当初はk社も乗り気の様子であったと主張するが,原告の主張どおりであれば,被告名義でリース契約を締結していることも考慮すると,同パソコンは明らかに業務用のパソコンであり,被告の物であるから,原告の当初の主張どおり,リース料金を給与から天引きすることは被告の不当利得であり,原告が天引きされた分の返還を求めるのが当然である。
しかるに,原告が同請求を放棄したことは,原告が同パソコンを自己の事業のために使用する目的で,自己の名義で購入しようとしたが,原告に資金がなく,かつ多重債務が存する結果,リース契約が通らなかったとの被告の主張を裏付けるものである。
オ 原告は,○○が主として行うIT事業の一つとして,「ホームページを作成してみませんか。」と題するパンフレットを作成しているが(証拠〈省略〉),これには被告の名前等は全く記載されておらず,原告専用の電話・FAX番号,メールアドレスが記載されている。そもそも,建設業を主たる目的とする被告にとって,ホームページの作成は全く関係のない業務であり,このことからも○○が原告の独立事業であることは明らかである。
原告は,他の同業者からのやっかみがあるから,IT事業を○○という被告とは別の名称で行うことにしたと主張するが,他方で,○○は被告の事業の一部であるとして,○○と被告との対外的表示の一体性(例えば甲6のホームページ)を強調している。被告代表者はパソコン関係に強くなく,ホームページを作成していなかったところ,原告が,被告のために作成すると言って作ったホームページが甲6である。同業者のやっかみがあるということと甲6の存在とは矛盾しており,原告の主張は失当である。
原告が,被告の名義を使って取引を行ったのは,原告が○○の名称で取引をしようとしても,信用がないことから,被告の名前を使わせて欲しいとの依頼があり,被告が承諾したことに基づくのであって,甲6に「IT事業部○○新設」と掲載されているのも,○○と被告との間に関連性を持たせるためである。
これをもって○○が被告の事業であるということはできない。
カ 原告の業務日報(証拠〈省略〉)に出てくる,「l社F社長」,「i社G社長」,「m社」,「n社」,「o社」,「p社」,「q社」,「b社」,「c社」,「d社」,「Cさん」,「f社」等の中には,被告が全く知らない業者が含まれており,また,被告の取引先であっても,業務内容は,ホームページの作成等,被告の業務とは関係のない原告の事業に関するものである。
なお,「C」は原告の友人であり,被告の事業とは関係がない。原告と同様に会社を辞めて独立する際,資金がなく,原告を介して○○の事務所の間借りを依頼してきたため,インターネット回線費,コピー機使用料,電気代その他全てを含めて5万円で間借りを承認したものである。原告は,Cと組んで,被告と関係なく,d社,k社,r社,s社,t社,u社等の仕事をしていた(証拠〈省略〉)。
また,日記(証拠〈省略〉)に出てくる「e社」,「g社」,「Hさん」,「h社」,「Dちゃん」,「Iちゃん」,「J」など,被告は全く知らず,被告の取引先ではない。上記の名前が各所に出てくるが,いずれも被告の業務ではなく,原告の独立事業としての○○の仕事である。
キ 「△△.com」は,被告代表者と訴外i株式会社代表者であるG(以下「G」という。)が共同出資した別会社(社名は「株式会社v」)である。また,「j社」というのは,訴外K(以下「K」という。)が行っていたノベルティグッズ等販売業である。Kが事業資金に苦しんでいたところ,Gが被告代表者に対し,資金繰りの相談を持ちかけてきたため,被告とGがKに資金援助をすることになった。事業の中心は,新商品やカタログギフト等の作成であり,IT業務に精通している原告が「代表としてやりたい。」と言ったことから代表になったものであり,「j社」という名称も原告が付けたものである。以上のことは,原告がIT事業を立ち上げたことと何ら矛盾することではない。
2  争点2について
(1)  原告の主張
ア 原告の所定労働時間は,月曜日から金曜日までの週5日,午前9時から午後6時まで(休憩1時間を含む。)の1日8時間であったが,実際には,被告から命じられて,ほとんど毎週のように土曜日に出勤して最低1日8時間,時間外労働をしていた。また,祝日に出勤して勤務をしたこともあった。しかし,被告はこれら時間外労働に対する賃金を一切支払わなかった。原告が労働をした土曜日,祝日は,別表〈省略〉のとおりである。
イ 被告の平成20年の時間外労働日数は24日,所定労働日数(土,日,祝日以外の日)は,248日であり,1カ月の平均所定労働時間数は,165.33時間(248日×8時間÷12)であるから,平成20年分の割増賃金額は,30万円÷165.33時間×1.25×24日×8時間=43万5492円となる。
ウ 被告の平成21年の時間外労働日数は45日,所定労働日数(土,日,祝日以外の日)は,245日であり,1カ月の平均所定労働時間数は,163.33時間(245日×8時間÷12)であるから,平成21年分の割増賃金額は,30万円÷163.33時間×1.25×45日×8時間=82万6545円となる。
エ 被告の平成22年の時間外労働日数は15日,所定労働日数(土,日,祝日以外の日)は,246日であり,1カ月の平均所定労働時間数は,164時間(246日×8時間÷12)であるから,平成22年分の割増賃金額は,30万円÷164時間×1.25×15日×8時間=27万4389円となる。
オ 以上によれば,原告の時間外労働に対する割増賃金合計153万6426円が未払である。
また,平成21年8月1日以降の時間外労働による割増賃金は60万5007円であり,これと同額の付加金の支払を請求する。
(2)  被告の主張
原告は,被告の従業員ではなく,出退勤時刻や休日の定めはなく,被告が原告に対し,土曜日の勤務を指示したこともない。
原告が被告の従業員であり,出退勤の決まりがあったのであれば,使用者の許可がない限り,原告は定められた出退勤時刻に出退勤すべきは当然であり,仕事がないからといって自由に出退勤して良いということにはならない。土曜日も出勤日であるという以上,仕事がないからといって,空いた時間に座談会の設営等の私用をしても良いということにはならない。原告の論法では,土曜日のみならず,平日でも,仕事がなければ従業員であっても私用をしても良いことになるが,これは明らかに不当であり,当然に減給の対象となるはずである。この発想からしても,原告は,独立の事業者という認識であったといわざるを得ない。
3  争点3について
(1)  原告の主張
原告は,被告の解雇により,平成22年5月末日をもって退職したが,被告は,離職票の離職理由欄の「労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合,転職希望等)」にチェックを付け,事業主用の具体的事情記載欄にも「自己都合」との虚偽の記載を行った。
原告は,離職者用の具体的事情欄に異議がない旨の記載をせず,ハローワークの担当者に対して口頭で,実際には解雇であった旨を説明したが,同担当者より,それならばその旨の資料の提出が必要であり,自己都合か会社都合かの認定ができるまでは,失業手当の支給は留保になるとの説明がなされた。そのため,原告としては,失業手当の支給手続を早く進めてもらうためにやむなく自己都合退職として手続を進めてもらうこととし,結局,3か月の給付制限がかかり,失業手当は,平成23年2月からの支給となった。
これにより,原告は,3か月間の基本手当合計41万9490円(日額4661円×90日)の受給ができなくなった。
会社都合による解雇であるにもかかわらず,離職票に自己都合である旨の虚偽の記載を行うことは違法行為であり,原告は,これによって受給できなかった失業手当41万9490円の損害を被った。
また,原告は,上記損害の賠償を求めて本件訴訟を提起するため,原告代理人弁護士に委任しており,その弁護士費用4万2000円は,被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。
よって,被告には,原告に対し,46万1490円の損害を賠償する義務がある。
(2)  被告の主張
被告は,上記のとおり,原告に対し,平成20年4月から援助期間を2年間として資金援助をし,2年を経過した時点で打ち切ったのであり,原告は被告の従業員ではないから,解雇ではない。被告は,原告に対する資金援助について,「給与」という形をとっていた関係上,「自己都合退職」とせざるを得なかったに過ぎない。
第4  当裁判所の判断
1  認定事実
原告本人尋問の結果,被告代表者尋問の結果及び後掲の各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,前提事実のほか,以下の事実が認められる。
(1)  原告は,平成20年4月11日から後記の○○の事務所で業務を開始し(証拠〈省略〉),同月25日付けで,被告に対し,「○○事業計画書 事業の展開について,計画と方向性」と題する資料(証拠〈省略〉。以下「事業計画書」という。)を提出した。
事業計画書の「○○とY社」と題する項には,「Y社は建設工事,そして親会社の位置にある。業務内容も建設工事を中心に,不動産の仲介がメインである。それに対して○○は営業がメインで,OAフロア工事,LAN配線工事,HP作成並びにシステムの開発,PCの設定等の営業を中心に活動を起こす。Y社は○○の工事外注先として,○○はY社の営業会社として事業展開を考える。」などと記載されている。
なお○○という名称やロゴのデザインは原告が考案したものであり,原告は,○○という名称のみを記載した名刺と,○○と被告の社名の両方が記載された名刺とを併用していた。
また,原告は,「不動産検索支援システム計画書」(証拠〈省略〉)と題する書面も作成しているが,同書面の中でも,被告は,○○の「協力会社」に位置付けられている。
(2)  被告は,原告のために,被告事務所から数百メートル離れた大阪府東大阪市〈以下省略〉に所在する倉庫・ガレージを賃借し,原告は,平成20年4月11日以降,同所を○○の事務所として自由に使用することができた。同事務所で使用するOA機器等も,被告が用意した。また,被告は,社用車として中古のホンダフィットを購入し,これを原告に使用させていた。(証拠〈省略〉)。
ただし,原告が使用していたパソコンのうち1台(代金約30万円)については,被告名義でリース契約を締結し,リース代は原告が負担しており(証拠〈省略〉),当該パソコンは,現在も原告が保有している。当該パソコンは,OAフロアなどの3D図面の作成のためにリース契約を締結した高性能のものであった(証拠〈省略〉)。
なお,一時,ノベルティグッズの販売を行っていた訴外K(以下「K」という。)や,原告の友人である訴外Cが,それぞれの事業の事務所として,○○の事務所に間借りしていた時期があった。
(3)  原告は,平成20年4月ころ(原告の手帳(証拠〈省略〉)の記載によると同月26日),以前からの知人である訴外株式会社d代表取締役L(以下「L」という。)と面談しているところ,その際,原告は,Lに対し,新しい会社ができたので協力して欲しいという趣旨のあいさつをし,○○の名刺を差し出した。
その際,原告からLに対し,Y社に就職した,あるいは,Y社がIT事業に新規参入するなどの話はなく,Lは,被告は○○の親会社的立場にあり,原告が,被告という協力者を見付けて○○という会社を始めたのだろうとの印象を持った(人証〈省略〉)。
(4)  原告は,被告のホームページを作成しているところ,同ホームページには,「4月1日 新規事業IT事業部 ○○新設!」と記載されている(甲6)。
一方で,原告が○○の業務に関連して作成した「ホームページを作成してみませんか?」という広告には,○○のロゴ,事務所の住所,電話番号及びメールアドレスが記載され,被告の社名,被告事務所の住所,電話番号等は表示されていない(証拠〈省略〉)。
(5)  原告は,平成20年10月25日ころから,被告代表者に対し,業務日報をメールで提出していた(証拠〈省略〉)。
被告の従業員(原告以外の者)は,被告事務所に勤務しており,被告代表者の目が届くため,被告は,従業員に対しては,日報の提出をさせていない(被告代表者)。
(6)  ○○の業務のために必要な経費は,被告が負担しており,○○の売上が入金される預金口座(以下「○○口座」という。)の口座名義人は「○○・A」となっていた。Bは,被告代表者の妻であり,○○口座の通帳は,被告の経理担当者であるBが管理していた(証拠〈省略〉)。
(7)  ○○の業務内容は,OAフロア工事及びLAN配線工事の営業,ホームページの作成,システムの開発並びにパソコンの設定等であったが,被告代表者は,IT関連の知識を有しておらず,仕事の進め方は,原告の裁量に任されていた(証拠〈省略〉)。
OAフロア工事の場合,原告(○○)がOAフロア工事の仕事を獲得し,工事自体は被告本体が行い,その後のパソコンの設定等は原告(○○)が行うこととなる。請求書は被告が発行し,代金も被告に支払われる(○○口座に振り込まれた場合も,同口座は,上記のとおり被告代表者の妻が管理しているので,原告が自由に引き出すことはできない。)。
(8)  被告は,○○口座から,平成22年1月19日に600万円,同月27日に200万円,平成23年2月25日に85万円をそれぞれ引き出して取得した(証拠〈省略〉,被告代表者)。
(9)  原告は,日々の出来事を手帳に記録しているが,同手帳(証拠〈省略〉)には,以下のような記載が存在する(なお,原告は,当該手帳の一部しか証拠提出していないため,証拠提出された部分以外の記載内容は不明である。)。
ア 平成20年6月5日(木)
昼からは蔦屋にCDを借りに行って夕方迄ダビングをする。
イ 同月14日(土)
今日は1日会社で星の王子さまの小説を読む。
ウ 平成22年3月13日(土)
会社は午前中は休み,昼から出勤,事務所では座談会の設営。
これらは,いずれも○○の業務とは無関係な私用であった。
(10)  被告代表者は,平成21年1月ころ,Kに頼まれて,Gとともに,Kの事業に「資金援助」をしたことがあった。ここでいう「資金援助」とは,被告代表者及びGが,Kの事業に必要な経費(仕入代金等)を半分ずつ負担し,利益が出た場合には,K,G及び被告代表者で3等分するという内容であった。
その際,被告代表者は,原告に対し,ホームページ作成やインターネット上で販売するノウハウを持っている原告が代表をやったら良いのではないかなどと提案した。
原告は,当該事業について「j社」という名称を付け,j社の代表の肩書きで営業を行ったが,そのことに関し,被告から報酬等は受け取らなかった。
しかし,j社は,利益を生むことなく,平成23年12月ころ解散した(証拠・人証〈省略〉)。
なお,j社は,事務所として,○○の事務所を使用しており,j社の通帳の名義人は,原告が代表者をしていた間は,原告名義となっていた(証拠〈省略〉)。
(11)  また,被告代表者は,Gと共同で,訴外株式会社vという法人を設立した。原告は,Lに,「△△.com」というウェブシステムを構築する仕事を依頼したことがあった。この件で,Lは,株式会社vとの間で同システムの構築に関する契約を締結した(人証〈省略〉)。
(12)  被告は,原告が被告の取引先であるk社のM氏という人物とトラブルになったことを理由に,上記第2の1(5)のとおり,原告に「外注費」名目で支払っていた金員の金額を増減させているところ,平成21年4月から平成22年3月までの間,原告が,「外注費」名目の金員について15万円に戻すよう抗議したことはなかった。
(13)  原告と被告とは,平成22年4月17日,同年5月末日をもって,契約関係を解消させることを合意した(証拠〈省略〉,被告代表者)。その後,同年6月1日の話し合いの際,原告は,被告に対し,月30万円の報酬と実際に支払われた報酬額との差額の支払いを求めたのに対し,被告代表者は,原告が上記社用車で事故を起こした際の修理代を請求するなどした(証拠〈省略〉)。
2  争点1について
(1)  原告と被告との間の契約が雇用契約といえるか否かは,単に契約の形式(文言)のみによって決すべきではなく,仕事依頼への諾否の自由,業務内容や遂行の仕方についての裁量の有無・程度,勤務場所や勤務時間の拘束の有無等,諸般の事情を考慮して,原告と被告との間に指揮命令関係が認められるか否かという実質によって判断すべきであり,支払われる報酬が賃金に当たるか否かの判断に当たっては,その額,計算方法,支払形態において従業員の賃金と同質か否か,源泉徴収,雇用保険等加入の有無等が参考となる。以下,これらの観点から検討を加える。
(2)  仕事依頼への諾否の自由,業務内容や遂行の仕方についての裁量の有無・程度等について
ア 原告の業務内容については,被告代表者がIT関連事業について全くの素人であることから,ほぼ原告の自由裁量に委ねられていたと認められる。この点,原告が被告に業務報告のメールを送信している事実は認められるものの(証拠〈省略〉),それは予定の連絡ないし事後報告の域を出ないものであるし,その内容を受けて被告が原告に何らかの具体的な業務指示を出していたことを客観的に裏付ける証拠も見当たらないから,これをもって,業務内容について,被告の指揮命令が及んでいたと評価することはできない。被告は工務店であって,被告代表者は,IT関連事業について素人であること(なお,被告の全部事項証明書の「目的」欄には,IT関連事業は含まれていない(弁論の全趣旨)。),原告は,被告に提出した事業計画書(証拠〈省略〉)の中で,被告を親会社,○○を子会社と位置付けていること(上記1(1))なども併せ考えると,原告及び被告は,○○を被告から独立した事業主体であると考えていたことが認められ,このことは,原告と被告との間に指揮命令関係が存在しなかったことを強く推認させる事実であるといえる。
イ もっとも,原告が主張するとおり,○○の経費は被告が負担し,請求書の中にも被告の名義で出されているものが存在すること,○○の事業に係る売上のうち被告名で請求書を発送したものについては,被告の口座又は○○口座に入金され,○○口座は被告代表者の妻が管理しており,原告の自由にはならなかったことなどからすると,現実には,○○が,被告から独立した事業主体とはなっていなかったことが認められる(被告は,原告が借金を抱えており,差押えの危険があったため,○○口座を被告代表者の妻名義にしたと主張するが,差押えを避けるためであれば,通帳の管理まで被告代表者の妻が行う必要はないし,j社については原告名義の口座を開設していること,実際に被告が○○口座から多額の金員を引き出していることからすると,被告が○○の売上や経費を管理するため,被告代表者の妻(被告の経理担当)の名義にしたとみるべきであって,単に差押えを免れる目的であったとはいえない。)。
なお,原告の手帳(証拠〈省略〉)によれば,被告が主張するとおり,被告が把握していない○○独自の売上があり,これを原告が取得している可能性は残るが,その詳細は不明である。
しかし,上記1(1)のとおり,原告作成の事業計画書(証拠〈省略〉)において,「○○はY社の営業会社として事業展開を考える」とされていることからすると,Y社は,○○に営業に関する業務を月額30万円(その後減額あり)の報酬でアウトソーシングしていたと評価することも可能であり,そうであれば,○○が営業活動を行って受注した業務について,Y社が経費を負担し,売上を取得することも特段不合理とはいえない。
被告代表者は,Kとの間でも,経費を負担し,利益が出たら折半するという内容の合意をして,「資金援助」をしているし(上記1(10)。Kには,被告の従業員であったとの認識は全くない。),業務委託契約であれば,委託者が受託者に委託料を支払い,売上から委託料を差し引いた金員を委託者が取得するという契約形態もあり得るのであるから,経費の負担や利益の分配に関する合意内容と,雇用契約の成否とは直接結びつくものではない。
ウ 原告は,事業計画書の作成は,被告に入社した後,被告の指示で行ったものであり,○○を別の事業体としたのは,被告代表者から,将来,被告代表者の妻を代表者として別法人にすると聞いていたからである,○○という別の名称を付したのは,工務店がIT関連の仕事をやっていることが同業者に知れるとやっかみがあるので,被告の名称を出さないように指示されたためであるなどと主張し,これに沿う供述をする。
これに対し,被告は,事業計画書は,原告から資金援助を求められた際,口頭で説明された内容を後日書面化したものである,被告において,被告代表者の妻を代表者として○○を別法人にする計画などなかった,工務店がIT関連事業を行ったからといって,同業者にやっかまれることはなく,○○の名称のみでは取引先の信用が得られない場合に,被告の名称を利用させていたに過ぎないと主張する。
この点,事業計画書によれば,○○の事業内容はすべて原告の発案によるものであることが明らかであるから,事業計画書作成の時点で,被告代表者が,妻を代表者として別法人を設立する計画を立てていたとは到底考えられず(仮に,原告主張のとおり,工務店がIT事業を行うと同業者からやっかまれるのであれば,当初から,株式会社vのように別法人を設立する方が自然である。),この点に関する原告の供述は採用できない。
また,原告が作成した被告のホームページには,新規事業部として○○の名称が上がっており(上記1(4)),被告と○○の名称を併記して取引をしている事例も見られること(同(7))からすると,被告代表者から,工務店がIT関連事業をやっていることがわかると同業者からやっかまれるので名称を出さないよう指示があったとの原告の供述も採用しがたく,被告代表者が供述するとおり,原告は,○○の名称のみでは取引先の信用が得られない場合に,被告の名称を利用していたとみるのが自然である。
エ 次に,原告は,被告の指示で,「△△.com」のサイトや不動産サイトの作成,j社の業務を担当させられたが,それについて諾否の自由はなく,報酬も得ていないと主張する。
しかし,不動産サイト(「不動産検索支援システム」(証拠〈省略〉)のことであると思われる。)については,同システム計画書(証拠〈省略〉)では,被告は,○○の協力会社と位置付けられているところ(上記1(1)),仮にこれが被告の事業であるとすれば,被告を○○の協力会社に位置付けることはあり得ない。また,「△△.com」は,被告代表者が出資した株式会社vの事業であり,被告の事業ではない(上記1(11))。
ところで,被告代表者とKとの合意内容は上記1(10)のとおりであり,原告が同事業を手伝ってもメリットのない内容になっている。しかし,株式会社v及びj社は,いずれも被告とは別個の事業主体であるから(上記1(10),(11)),仮に原告が被告の従業員であるとすれば,被告が従業員である原告に,j社の代表を務めることを提案するというのも不自然であり,被告代表者が原告にj社の代表になることを提案したのは,被告代表者が,原告を独立の事業者と認識していたことの現れであるともいえる。
よって,原告がこれらの事業を手伝ったからといって,原告が被告の従業員であったことが裏付けられるものではない。
かえって,被告代表者のKに対する「資金援助」の内容は,経費を被告代表者とGが負担し,利益が出たら出資者とKとで分けるというものであって,被告が主張する,原告に対する「資金援助」の内容とも概ね合致しているから,被告代表者がKに対して「資金援助」をしたという事実は,被告と原告との関係についても,これと類似の関係であったこと(少なくとも,被告代表者には,原告を雇用する意思はなかったこと)を裏付ける事実であるといえる。
また,原告は,被告の指示で,雇用調整助成金の申請業務を行ったとも供述し,原告の手帳にもそれを窺わせる記載が存在するが(平成21年6月27日),被告代表者は,これを否定する供述をしており,原告が被告の指示でかかる業務を行ったことを認めるに足る証拠はなく,実態は不明である。
(3)  勤務場所や勤務時間の拘束の有無等
ア 原告の勤務場所については,被告は,被告事務所とは別に,○○のために倉庫・ガレージを賃借して事務所を用意し,原告は,同事務所を自由に使用することができたことが認められ(上記1(2)),被告の他の従業員とは明らかに異なる取扱いを受けている。
もっとも,被告が○○のためにコピー機等の備品や社用車等を購入していることは,○○の独立性を否定する方向に働く間接事実であるといえるが,他方で,OAフロア工事のために購入した高性能パソコンについては,原告がリース料を負担し,契約解消後も原告が私物として所有しているから(上記1(2)),○○の備品等を被告が用意した事実は,原被告間の契約の性質の判断に決定的な要素であるとまではいえない。
イ 次に,勤務時間の拘束の有無を検討すると,原告は,所定労働時間は午前9時から午後6時まで(休憩1時間を含む。)の1日8時間であり,土曜日も出勤を命じられていたと主張するが,原告は,土曜日のみならず,平日であっても,日中,明らかに私用と認められる行動を行っており(上記1(9)),これについて被告の承認を受けた形跡もないことからすると,所定労働時間の定めがあり,土曜日も出勤を命じられていたとの原告の供述は採用できない。
(4)  報酬額の決定方法等について
ア 原告は,被告代表者から被告に来ないかと誘われ,a社からの慰留もあり,一旦は断ったものの,被告から懇願され,30万円の給料と雇用保険等への加入を条件に入社すると言ったところ,被告代表者が了解し,平成20年4月1日に被告に入社したと供述し(証拠〈省略〉),原告の手帳(証拠〈省略〉)の平成20年1月29日の欄にも,「晩はA社長と約束してた為,Y社に寄る。会社拡大の為,営業で来て欲しいとの事,行きたい気持ちはあるが…なぜか乗れず。」旨,原告の上記供述に沿う内容の記載がある。
イ これに対し,被告代表者は,原告から,「現在の勤め先を辞めて,IT関係事業を独立してやりたいが,資金がないので応援して欲しい。」,「建設業は右肩下がりである。」,「IT関連の事業が軌道に乗ればお互いに事業を拡大することができる。」などと言われ,応援する気持ちになった,原告から月30万円で雇用保険等にも加入したいという希望があったが,30万円を支払い続けることには不安もあったので,資金援助の期間は2年間とし,15万円は確実に支払うが,残りの15万円については減額もあり得るものとして,15万円を「給与」の形とし,残りを「外注費」の形で支払うこととした,原告が被告の取引先(k社のM氏)とトラブルを起こした際,「外注費」名目の15万円をカットしたが,原告からそれでは事業活動ができないと懇願されたため,その後,手取り20万円になるよう実質5万円の増額をした,その際,原告から何ら異議は出なかったと供述する(証拠〈省略〉)。
ウ そこで,いずれの供述が信用できるかを検討すると,被告代表者が供述する原告の発言内容は,事業計画書(証拠〈省略〉)の記載内容と概ね一致していること(上記1(1)),IT関連について素人である被告代表者が,原告からの働きかけなしに,自発的にIT関連事業を新規展開しようと考えて原告を雇用するために勧誘するとは考えにくいこと,被告代表者は,Kに対しても同内容の「資金援助」をしており,株式会社vにも出資するなど,本件と類似の行動を取っていること(上記1(10),(11)),仮に原告が被告代表者から懇願されて,月額30万円の賃金で被告に雇用されたのであれば,30万円のうち15万円のみについて雇用保険等に加入し,残りを「外注費」名目として,雇用保険料等を支払わないという説明を受けた場合,失業時の雇用保険の給付額が半分になってしまう提案を受け入れるとは考えにくいところ,原告がこれを受け入れて特段異議を述べた様子も見当たらないこと,被告は,原告がk社のM氏とトラブルになった際,月額30万円の報酬を15万円に減額し,その後,手取り額が20万円になるよう若干増額させているが,手取り額が20万円になって以降,契約解消までの約1年間,原告は被告に対し,特段異議を述べていないこと(上記1(12)),一般に,従業員ではない下請けの個人事業者等について,雇用保険等に加入するために賃金という体裁を取る事例も存在することなどに照らすと,本件合意に至る経緯については,原告が月額30万円の資金援助と雇用保険等への加入を求めたのに対し,被告が,月額15万円のみについてこれを受け入れ,残り15万円については将来の減額もあり得るものとして「外注費」名目としたとの被告代表者の供述の方が,信用性が高いというべきである。
なるほど,原告が指摘するとおり,被告代表者は,「外注費」名目の15万円の法的性質について問われると,経費であると供述したり,個人の気持ちであると供述したりと,供述は変遷しているが,少なくとも,「外注費」名目の15万円を,「基本給」名目の15万円とは区別して,状況に応じて変動する金員であると認識し,原告にもその旨説明していたという限度では一貫した供述をしている。
そして,上記のとおり,仮に,原告が被告から懇願されて月30万円の固定給という内容で入社したのだとすれば,15万円が「外注費」名目になっていることについて,原告は,当然,抗議するはずであるところ,それがなされていないことからすれば,原告においても,「外注費」名目の15万円が,「基本給」とは別個の性質の金員であることを認識していたというべきである。原告と被告との間の契約解消後のやり取りの録音反訳書(証拠〈省略〉)においても,被告代表者が,「それから押し通して30万やけど,月15万円で残りは,まー言うたらな,営業経費やと言うとったやん。」と発言し,原告もそれを特段否定せず,「うん,ほんじゃ,営業ずっとやってるんやから,その営業経費…」と発言している部分が存在する。
そうすると,法律の素人である被告代表者が,「外注費」名目の15万円の法的性質についてうまく説明できないからといって,この15万円の法的性質が雇用契約に基づく賃金であるということはできない。
(5)  契約解消に至る経緯について
最後に,契約解消に至る経緯について検討すると,原告の手帳(証拠〈省略〉)には,平成22年3月6日の欄に,「朝から社長がやって来て,○○の今後についての話を語り出した。これはチャンスと思い辞める方向に持っていくも,どうも辞めて欲しくない様子」,同年4月5日の欄に,「Y社に5月末迄と期限を切った。」,同月12日の欄に,「イライラする。早く辞めたい,辞めたい,辞めたい。」同月17日の欄に,「朝から社長がやって来て,ついに決裂,5月末日にて退職が決定した。」とそれぞれ記載されており,これらの記載からすれば,原告の側から積極的に関係の解消を望んでいたことが窺える。そうすると,被告代表者が供述するような,当初から資金援助を2年間に限る旨の合意があったとは認められないものの,○○が思うような利益を上げないことから,原告と被告とで話し合った結果,契約解消に至ったとみるのが自然である(上記1(13)。なお,被告代表者は,j社に対する資金援助も,利益が得られないとして,約3年で打ち切っている(上記1(10))。
これに対し,原告は,平成22年4月17日(土)の午前中に,被告代表者から,「もう止めや!辞めてしまえ!」と言われ,これで突然解雇されることになったと供述するが(証拠〈省略〉),上記のような原告自身の手帳の記載内容とも矛盾しており,採用できない。
(6)  結論
以上検討した結果を総合すると,原告と被告との間に,指揮命令関係が存在していたとはいいがたく,原告と被告との間で賃金を月額30万円とする内容の雇用契約が成立したとは認められない。
もっとも,原告と被告との間で,少なくとも,毎月「基本給」名目の15万円を支払う合意があったことは認められるところ,上記1(13)のとおり,当該合意は,平成22年5月末日をもって解消されたと認められる。
そして,被告が,原告に対し,平成22年5月分として支払うべき15万円を支払ったことの主張・立証はないから,原告の請求は,15万円の支払を求める限度で理由がある(なお,原告は,本件請求を雇用契約に基づく賃金請求であると主張しているが,その意図するところは,原告と被告との間の上記合意に基づく金員の支払を求めることにあるから,15万円の限度で請求を認容することは処分権主義に反するものではないと解する。)。
また,仮に,原告が主張するとおり,原告と被告との間の上記合意が雇用契約であったと評価したとしても,上記(4)ウのとおり,「外注費」名目の15万円については,源泉徴収も雇用保険料等の支払もなされていないこと,手取額が月20万円になって以降,契約解消まで原告が異議を述べていないことなどからすれば,原告と被告との間では,「基本給」名目の15万円を固定給として支払う旨の合意があったと評価しうるに止まり,月額30万円の固定給を支払う旨の合意があったとまでは認められないから,いずれにせよ,原告の請求は,被告に対し15万円の支払を求める限度で理由がある。
3  争点2について
上記2のとおり,原告と被告との間に雇用契約が成立していたとは認められないから,原告の割増賃金請求には理由がない。
なお,仮に,原告と被告との間の契約関係を雇用契約であると評価したとしても,以下のとおり,原告の割増賃金請求には理由がない。
すなわち,原告は,所定労働時間が1日8時間であることを前提に,土曜日の出勤を命じられていたため,土曜日に出勤して勤務した時間は,週40時間を超える労働として時間外労働に当たると主張するものであるところ,上記2で検討したとおり,原告と被告との間で所定労働時間を1日8時間とする合意があったとも,土曜日に出勤するよう業務命令がなされていたとも認めがたく,原告は,平日,土曜日を問わず,日中かなり自由に私用のために時間を使っていたことが認められるのであるから,原告が土曜日に毎日8時間時間外労働をしていたとの原告の主張は,その前提を欠いているといわざるを得ない。そして,原告の勤務状況については,手帳(証拠〈省略〉)及び業務報告のメール(証拠〈省略〉)以外にこれを裏付ける資料は見当たらないところ,手帳及び業務報告メールのいずれにも,業務に従事した時間を示す記載は見当たらないから(なお,手帳については,上記のとおり,一部しか証拠提出されていない。),結局のところ,原告において,週40時間を超えて時間外労働をしたことの立証は全くなされていないといわざるを得ない。
4  争点3について
上記2で検討したとおり,原告と被告との間で雇用契約が成立していたとは認められないから,被告が,離職票に,離職年月日を平成22年5月31日,離職理由を「自己都合」と記載したことは,事実に反するが,そもそも原告と被告との間の契約関係が雇用契約であるとは評価できない以上,上記離職票の記載によって,原告に損害が生じたとは認められない。
なお,上記2(5)で検討したとおり,原告は,平成22年3月の時点で,すでに被告との契約を解消したいとの意思を有しており,その後の話し合いの結果,同年4月17日,同年5月末日をもって契約を解消する旨の合意が成立したとみるのが相当であるから(上記1(13)),仮に,原告と被告との間の契約関係が雇用契約であったと評価したとしても,契約終了原因は解雇ではなく自己都合退職であるといえ,離職票の記載内容に何ら虚偽はないこととなる。
よって,この点に関する原告の主張にも理由がない。
第4  結論
以上によれば,原告の請求は,15万円及びこれに対する平成22年6月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 田中邦治)

 

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