【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(100)平成21年 8月31日 東京地裁 平20(ワ)17767号 地位確認等請求事件、損害賠償請求事件 〔アクサ生命保険ほか事件〕

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(100)平成21年 8月31日 東京地裁 平20(ワ)17767号 地位確認等請求事件、損害賠償請求事件 〔アクサ生命保険ほか事件〕

裁判年月日  平成21年 8月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)17767号・平21(ワ)1955号
事件名  地位確認等請求事件、損害賠償請求事件 〔アクサ生命保険ほか事件〕
裁判結果  一部却下・一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2009WLJPCA08318011

要旨
◆試用期間中に被告会社から解雇された原告が、解雇の効力を争い、地位確認及び賃金請求をするとともに、同僚や上司から嫌がらせやプライバシー侵害をされた、あるいは所属労働組合書記長が職務を適正に遂行しなかったとして、同人らに慰謝料請求をした事案について、被告会社の解雇は留保解約権の行使であるから、通常の解雇より緩やかな基準で判断されるべきところ、原告には経歴詐称のほか、不適切な副業活動等も認められるから、解雇に違法性はないし、同僚や上司による違法行為の事実は認められず、書記長も個人として原告に契約法上の義務を負うものではないとして、請求を却下・棄却した事例

参照条文
民法709条
民法710条
労働契約法16条

裁判年月日  平成21年 8月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)17767号・平21(ワ)1955号
事件名  地位確認等請求事件、損害賠償請求事件 〔アクサ生命保険ほか事件〕
裁判結果  一部却下・一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2009WLJPCA08318011

平成20年(ワ)第17767号 地位確認等請求事件(以下「第1事件」という。)
平成21年(ワ)第1955号 損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。)

東京都中央区〈以下省略〉
原告 X
東京都港区〈以下省略〉
第1事件被告 アクサ生命保険株式会社
代表者代表取締役 A
東京都港区〈以下省略〉
第2事件被告 Y1
同所
同 Y2
上記被告3名訴訟代理人弁護士 木下潮音
同所
第2事件被告 Y3
訴訟代理人弁護士 三上安雄

 

 

主文

1  第1事件にかかる訴えのうち,原告が被告アクサ生命保険株式会社に対し本判決確定の日の翌日以降の毎月25日限り47万3000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員の各支払を求める部分をいずれも却下する。
2  原告の第1事件にかかるその余の請求及び第2事件にかかる請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は原告の負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
(1)  原告が,第1事件被告アクサ生命保険株式会社(以下「被告会社」という。)との労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
(2)  被告会社は,原告に対し,平成19年10月以降毎月25日限り月額金47万3000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
(3)  被告会社は,原告に対し,303万4975円及びうち300万円に対する平成19年9月26日から,うち3万4975円に対する同年10月26日から各支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
(4)  被告会社は,原告に対し,3万4975円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2  第2事件
(1)  第2事件被告Y1(以下「被告Y1」という。)は,原告に対し,30万円及びこれに対する平成19年9月26日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
(2)  第2事件被告Y2(以下「被告Y2」という。)は,原告に対し,30万円及びこれに対する平成19年9月26日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
(3)  第2事件被告Y3(以下「被告Y3」という。)は,原告に対し,20万円及びこれに対する平成19年9月26日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
第1事件は,原告が被告会社に対し,平成19年9月26日にされた同月30日付け解雇(本採用拒否)の意思表示(以下「本件解雇」という。)が無効であること等を理由として,雇用契約に基づく労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに解雇後の賃金(月額47万3000円)及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率である年6パーセントの割合による遅延損害金の支払,不法行為に基づく慰謝料等303万4975円及びうち慰謝料300万円に対する不法行為の結果が発生した日(本件解雇通告日)である平成19年9月26日から,うち未払時間外手当相当分3万4975円に対する支払期日の翌日である同年10月26日から各支払済みまで商事法定利率である年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基準法114条に基づく前記未払時間外手当相当分と同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで商事法定利率である年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
第2事件は,被告Y1と同Y2が原告に対し様々な嫌がらせやプライバシー侵害をしたこと等を理由として不法行為に基づく慰謝料として各30万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成19年9月26日から支払済みまで商事法定利率である年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めたほか,被告Y3に対し,同被告が原告の属していた社内の労働組合の書記長としての職務を適正に遂行しなかったことを理由として債務不履行に基づく慰謝料20万円及びこれに対する本件解雇通告日である平成19年9月26日から支払済みまで商事法定利率である年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
第1事件は,当初労働審判事件として申し立てられたが,申立人であった原告が労働審判に異議申立てをしたため,通常の裁判手続に移行し,その後に提起された第2事件と併合された。
1  前提となる事実(争いがないか,証拠によって容易に認められる事実)
(1)  当事者等
原告は,昭和○年○月生まれの女性である。
被告会社は,生命保険事業を目的とする株式会社である。
被告Y1は,被告会社の従業員であり,平成19年当時,被告会社財務部ファイナンス・プロジェクト・マネージメント・オフィス(以下「FPMO」という。)の責任者であった。
被告Y2は,被告会社の従業員であり,平成19年当時,被告会社人事部の部長であった。
被告Y3は,被告会社の従業員であり,平成19年当時,被告会社の従業員で組織されるアクサ生命保険内勤社員労働組合(以下「本件組合」)の書記長であった。
(乙21,原告本人,弁論の全趣旨)
(2)  雇用契約等
ア 原告は,被告との間で,平成19年4月7日,以下の約定で,期限の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結した。
①入社日 平成19年5月1日
②所属 FPMO
③タイトル アシスタント・マネージャー(係長相当)
④ジョブグレード JG-E
⑤試用期間 平成19年5月1日から同年10月31日まで6か月間(最大9か月に延長することがある)
⑥賃金 基本給47万3000円(うち住宅手当3万円)
固定賞与66万4500円(半期)
⑦支払条件 毎月25日払い
(甲1)
イ 原告は,同年5月1日より,本件雇用契約に基づき,FPMOにおいて,被告Y1の下で業務に従事していた。
また,原告は,被告会社で就労を開始するのと同時に本件労働組合に加入し,同組合に対し,月額3000円の組合費を支払っていた。
(甲43,46,弁論の全趣旨)
(3)  就業規則
被告の就業規則には,新たに採用された従業員の試用期間は原則として入社後6か月であり,業務の状況に応じて最大入社日から9か月を限度に延長することがあること(同規則5条の2),試用期間中の従業員について不適格と判断された場合は当該従業員を解雇すること(同規則41条6号)が定められている。
また,同規則には,従業員は勤務時間中は定められた職務に専念しなければならないこと(同規則9条),被告会社以外の業務に就く場合には被告会社の了解を得なければならないこと(同規則11条)も定められている。
なお,同規則には,私用メールやインターネット閲覧についての特段の規定はない。
(甲32,乙7)
(4)  本件解雇等
ア 被告会社は,原告に対し,平成19年9月26日(水曜日),原告を解雇する(本採用を拒否する)旨の意思表示をした(本件解雇)。
被告会社が原告に対し同日提示した解雇理由書には,試用期間中の不適格事由に該当する理由として,①原告が平成18年(西暦2006年)にダグミュージック有限会社で正規社員として就業した事実及び当該会社と係争中である事実を被告会社に事前に伝えていないこと,②これは重要な経歴であり,被告会社の採用選考の結果に多大な影響を与えるものであること,が記載されていた。
(弁論の全趣旨)
イ 被告会社は,原告に対し,平成19年9月28日(金曜日),所定の解雇予告手当を支払った。
(弁論の全趣旨)
ウ 原告は,被告会社に対し,同年9月分の残業を45時間として残業代の支払を請求した。
これに対し,被告会社は,原告に対し,同月分の残業時間を14時間30分とする残業代のみを支払った。
(甲21,22,43)
2  争点
(1)  本件解雇の効力及び原告の被告会社に対する賃金請求権の有無
(2)  原告の被告会社,同Y1及び同Y2に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無及び額並びに被告会社に対する労働基準法114条に基づく付加金請求権の有無及び額
(3)  原告の被告Y3に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権の有無及び額
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件解雇の効力及び原告の被告会社に対する賃金請求権の有無)について
(被告会社の主張)
ア 原告の経歴詐称の事実
被告会社は,本件解雇前,原告が平成18年3月にダグミュージック社に正社員として就職し短期間に同社から解雇されて同社と訴訟が係属した又は係属しているのにこれを被告会社に提出した履歴書に記載せず,平成18年3月にはメリルリンチ日本証券に勤務していたと記載していた事実を認識し,さらに,調査の結果,原告が被告会社においてダグミュージック社と自己の訴訟準備行為を業務時間中に行っていたと判断した。
したがって,原告について「平成18年にダグミュージック有限会社で正規社員として就業した事実および当該会社と係争中である事実をアクサ生命保険株式会社に事前に伝えていない」事実が存在する。
イ 本件解雇の相当性
(ア) 履歴書,経歴書が過去の事実である本人の学歴や職歴を客観的に記述するものであることは論を待たず,原告の主張するように,編集や記述の変更を許容されるものではない。そして,求人に対し,応募者が提出する履歴書や職務経歴書に虚偽の内容があれば,これを信頼して採用することはできない(原告がこのように履歴書を編集した目的は,相手にどのように見えるかを考えてのことであると述べていることからして,原告自身,履歴書の内容が採用の決定に重要な役割を果たすことを十分自覚した上で様々な内容の履歴書を作成していたものであり,本訴における強弁は,とりもなおさず経歴詐称を行っていたことを自認するものである。)。
そして,被告会社は,金融機関における業務経験とインベストメント・プロジェクトの管理・運営等の業務に対する高度の知識を求めて求人を行っていたところ,原告から被告会社に採用手続の過程で著名な金融機関等で比較的長期間にわたって勤務経験があるという内容の履歴書が提出されたことから,このような経歴に基づく能力,勤務態度を期待できるとして採用を決定したものであって,被告会社に採用される直前に金融業務とはまったく関係のない会社で勤務していたこと及び短期間で退職している事実が記載されていれば被告会社が原告を採用するには至らなかった。
(イ) 原告は,入社後の勤務ぶりや業務能力が劣悪であり(例えば,原告が作成したプレゼンテーション資料には,被告会社を理由無く誹謗中傷する記述があった。),上司である被告Y1や同僚とのコミュニケーションがうまくいっていなかったばかりでなく,「△△△△」なる肩書きを付して自宅住所を業務上の住所として副業と見られる活動を行っていたり,平成19年8月30日ころには被告会社の社員であったにもかかわらずクレディ・スイス投信に転職を目的として接触を開始しており,すでに被告会社での勤務の意欲を失っていた。
また,原告は,自宅のパソコンのデータのバックアップのためと称して自宅のパソコンから大量のデータを添付したメールを被告会社のパソコンに送ったり,逆に被告会社のパソコンから自宅のパソコンに同様のメールを送信することを繰り返していた上,自分の興味のあるインターネット上のホームページのURLを会社のパソコンで閲覧し,さらに自宅でも閲覧を続けるために,前記URLを貼り付けた電子メールを作って自宅に送付していたのであり,原告が職場で業務に専念せず自己の利益を求める行為を行っていたことが明らかである。
このような事実及び前記アの事実を踏まえるときは,原告が就業規則41条6号「試用期間中の者が,不適格と判断されたとき」に該当することは明らかである。
(ウ) 本件解雇の決定に当たって原告から聴取等を行わなかったのは,被告会社のリスクとして事前に通知をすると被告会社の情報の持ち出しなどが行われる恐れがあると判断したからである。これはすでに調査により明らかになった原告のパソコンの使用状況からして,合理的な判断である。
また,試用期間満了を待たずに本件解雇に及んだのは,経歴詐称の点は今後の改善を図ることは不可能であり,職場の状況から速やかな解雇が必要と考えたためである。
ウ まとめ
してみると,本件解雇は,試用期間中にされたものとして,正当な理由があり,解雇権を濫用したものとはいえず,有効であるというべきである。
したがって,原告の被告会社に対する地位確認請求及び賃金請求はいずれも理由がないというべきである。
(原告の主張)
ア 原告の経歴詐称の事実について
原告は,平成18年(西暦2006年)3月末より3週間の短期間,ダグミュージック有限会社で勤務していた事実があるが正規社員ではなかった(1日5時間の非常勤勤務であったのであり,次の就職先が見つかるまでの間,生活費捻出のためにアルバイト感覚で働いていたに過ぎない。ダグミュージック社に対する訴訟提起の時点での原告の主張が正規社員であることを前提としたものであったからといって,その期間に原告が実態として正規社員であったことにはならない。)。
また,ダグミュージック社での就業の事実について,原告が被告会社に事前に企業名を伝えていなかったけれども,平成18年3月以降,労働契約を結んで就業経験がある事実について伝えており,被告会社も了承していた(甲28,29)。
イ 本件解雇の違法性について
(ア) ダグミュージック社と係争中である事実については,労働契約において,被告に事前に訴訟について伝える義務はなく,これを解雇事由とすることに合理的理由はない。仮に,これを伝えなかったことが秘匿に当たるとしても,被告会社とは全く無関係の企業においてわずか3週間勤務した事実が,重大な経歴詐称に当たると主張するのは無理があり,入社後の実際の業務との関連でみても,これが被告会社での業務に影響するはずもない。
さらに,被告会社は,原告が金融機関で働いていなかったことや,名の通った企業に所属せずフリーで働いていたことを面接時に知っており,被告会社が原告と労働契約を締結したのは,面接において原告に能力があると判断したからに過ぎないし,原告も自己の経歴を偽る意図があったわけではない。
したがって,ダグミュージック社についての経歴詐称を問題とすること自体,社会的相当性を欠いている。
(イ) 原告の入社後の勤務ぶりや業務能力が劣悪であったということはないし(被告会社の指摘するプレゼンテーション資料は,上司である被告Y1の指示により,原告自身が所属するチームについて,現状を観察した事実を記したものにすぎない。),上司である被告Y1とのコミュニケーションがうまくいっていなかったとしても,それは被告Y1からの嫌がらせ行為に対抗するための対応にすぎず,他方,同僚とのコミュニケーションがうまくいっていなかったことはなかった。原告が二重就職などの兼業や副業をしていた事実はなく,「△△△△」というのもインターネット上のブログ名にすぎない。
また,原告は,自宅のパソコンのデータが消えるなどの事態があったため,データのバックアップの目的で,原告の個人メールアドレスから,被告会社ドメインの原告名義のメールアドレスへ,ファイルの転送を行っていたが,他者とのメールのやり取りではなく,自宅と職場の自分自身間のやりとりであり,ほとんどは業務時間内に文書を考え作成し送信したものではなかった。そして,業務自体は滞りなく行っていたのであるから,これが職務遂行の支障とはならず,職務専念義務違反の程度も大きいとはいえない。内容も,被告会社とはなんら関係がなく,信用毀損などの被害の懸念もない。また,就業規則には,私用メールやインターネット閲覧についての特段の規定はないのであるから,規定にないことを理由に解雇するのは,具体的な被害などが出ていない状況において,社会通念上相当ではない。
(ウ) 試用期間における解雇についても解雇権濫用の法理が及ぶところ,被告会社が原告に注意,指導をしたことはなく,解雇を回避するための努力もしなかったのであるから,本件解雇が試用期間中であることを考慮しても,解雇が客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合にあたるとは認められないから無効である。
また,本件解雇は,原告が被告Y1の嫌がらせと些細な理由でまさに解雇されようとしていることを被告会社のホットライン等に何度も相談していたが,調査もせずに,そのような事実はないとして取り合ってもらえなかった一方,その直後に被告会社による一連の調査が行われていることから,内部告発に対する不利益処分としての不当解雇であったと考えられ,公益通報保護法3条違反により無効である。
さらに,本件解雇は,解雇予告手当てが解雇と同時に支払われておらず,支払も一方的に振込まれたもので,労働基準法20条に反し,無効である。
ウ まとめ
してみると,本件解雇は,解雇権を濫用したものであり,また,公益通報保護法3条,労働基準法20条に反し,違法かつ無効であるというべきである。
したがって,原告の被告会社に対する地位確認請求及び賃金請求はいずれも理由があるというべきである。
(2)  争点(2)(原告の被告会社,同Y1及び同Y2に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無及び額並びに被告会社に対する労働基準法114条に基づく付加金請求権の有無及び額)について
(原告の主張)
ア 不法行為
(ア) 被告Y1による職場での嫌がらせ
上司であった被告Y1は,原告に対し,不快なジェスチャーを示して病院に行きにくくさせたり,指示にちょっと反論しただけでも解雇をほのめかして従わせようとするなど,違法な嫌がらせのレベルに達する言動を繰りかえしており,また,研修の却下についても,組織的な運用として試用期間中の社員に研修を受けさせないわけではなく,虚偽理由を挙げて辞退の強要をした。
原告は,解決に当たるべき人事部,権限ある上司や労働組合に幾度となく対応を求めていたが,被告は問題を放置し,原告が求めていた配置転換なども行わず,職場環境配慮義務責任を果たさなかった。
(イ) 不当な解雇
原告は,被告Y1から継続的に受けた嫌がらせを被告会社に訴えたところ,被告Y1の働きかけによって,逆に不当に解雇された(本件解雇)。
被告Y1や同Y2は,段ボール箱を突きつけて出て行くよう怒鳴ったり,原告のかばんの中を漁ったり,腕を掴んで強制退去させる暴挙は,原告に尋常ならぬ恐怖感を与え,110番通報をさせるまでに至っており,これらは心理的な暴行である。
(ウ) プライバシーの侵害
被告の「社員情報の取り扱いに関するポリシー」には,「収集する社員情報」中,社員の訴訟に関する事項は含まれておらず(4条),「社員情報の収集」では,「当社が社員情報を書面で収集する際には,次の各号に掲げる事項を明示し,その内容のすべてについて社員の同意を得た上で当該社員から社員情報の提供を受けるものとする。」としている(7条)。
しかしながら,被告は,原告に無断で電子メールのモニタリングや訴訟に関する調査をするなど,秘密裏に過剰な詮索をし,これによって,原告は大きな精神的損害を被った。
(エ) 被告Y1による名誉毀損
被告Y1は,本件解雇通告当日,事実の確認をしないままであるのに,チームメンバー全員を呼び出して,原告について「経歴を詐称したので解雇した」と発表し,即時解雇が正当であるような不正が原告にあったとする内容を断定的に話しており,原告が「解雇されるような不正を働いた」との噂が広がり,名誉が著しく毀損され,原告の社会的評価を低下させた。
被告Y1の発言は,原告のメールから得た情報に基づいた推測によるもので,名誉を毀損する事実を摘示し,自らの立場を正当化しようとした不法行為に当たる。
(オ) 虚偽の労働条件を提示した募集
被告会社は,原告が応募時に「プロジェクト・リーダー」と2度も提示して中途採用の面接を行い,当該業務でなければ辞退するとして雇用契約に応じた原告に対し,労働契約締結に際して,従事する業務について,「アシスタント・マネージャー」として,係長に相当する肩書きしか記載せず,職務内容記述書に記載されている職務内容である「プロジェクト・リーダー」を意図的に外し,実際には連絡窓口業務を中心とした一般事務的な別業務に当たらせていたののであり,これは虚偽の広告にあたり,職業安定法65条9号の「虚偽の労働条件を提示して労働者の募集を行った」行為であり,労働基準法15条1項,同施行規則5条の「労働条件の書面による明示」規定に反する不法行為である。
(カ) 残業代一部支払拒否
残業代については,労働者が月末に申請書類に記載して押印の上,提出することになっているが,被告は原告が記載した残業代について,申請どおりの金額を支払うことを拒否するという労働基準法37条に違反する不法行為をした。
イ 損害額等
(ア) 原告は,被告会社,被告Y1及び同Y2による前記不法行為により,多大な精神的苦痛を被った。
原告は,上司の嫌がらせから体に変調をきたして通院しており,その後の暴力的な本件解雇によって症状は大きくなり,いまだにそれが治癒していないことから,健康上の不利益も被っている。
さらに,原告は,就業期間が6か月未満で解雇されるに至ったことから,失業手当の給付も受けられず,収入がない状態となった。
原告の被ったこれらの苦痛等についての慰謝料としては少なくとも300万円を下らない。
(イ) 被告会社のした残業代一部支払拒否の不法行為(前記ア(カ))に基づく損害は未払残業代であり,また,労働基準法114条により,同額の付加金が支払われるべきである。
(被告会社,同Y1及び同Y2の主張)
原告が主張する不法行為の内容は否認し,損害額等は争う。
(3)  争点(3)(原告の被告Y3に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権の有無及び額)について
(原告の主張)
原告は,被告Y3に対し,平成19年8月以降,被告Y1による嫌がらせについて相談をしたが,解決につながるような特段の措置をとってくれなかった。
また,被告Y3は,原告に対し,本件解雇後である同年10月3日,「本件組合は,ユニオンショップ制であるので,もう解雇されて在籍がない者は,それと同時に組合員としての資格を失う。だから非組合員に対しては,助ける義務がない。」と言って原告からの対応要請(顧問弁護士との面談を含む。)に対処しなかった。しかしながら,このような解釈は誤りである。
したがって,被告Y3は,組合員であった原告に対し,本件労働組合の代表として本件解雇に対応しなかったことについて,債務不履行による慰謝料として少なくとも20万円を支払う義務を負うというべきである。
(被告Y3の主張)
原告は,被告Y3が労働組合書記長として原告の解雇に対処すべき義務を怠ったとして被告Y3個人に対する債務不履行(民法415条)による損害賠償の請求を行っているが,被告Y3は,個人としては原告との間で何らの契約法上の法的義務を負う立場にはない。
仮に,被告Y3において法的義務があるとの原告の主張を前提としても,原告が主張する事実,即ち,被告Y3が「本件組合は,ユニオンショップ制であるので,もう解雇されて在籍がない者は,それと同時に組合員としての資格を失う。だから非組合員に対しては,助ける義務がない。」と言って原告からの対応要請に対処しなかったことはなく,原告が被告会社から解雇理由とされた経歴詐称についてどこがどう違うのかの説明も一切行おうとしない中で,本件組合として原告のこれまでの職歴を調べることなど組合としての対応の範囲を超えているから対応できない旨回答したのであり,被告Y3において組合書記長として対処すべき義務を怠ったとはいえない。
第3  当裁判所の判断
1  事実の認定
証拠(甲1ないし6,7の1及び2,8,9の1及び2,10ないし14,18,19,23の1及び2,24ないし36,42,44の1及び2,45ないし48,50,乙1,2,4の1及び2,5の1及び2,6の1及び2,7ないし9,11ないし22,27,30ないし34,丙1,原告本人,被告Y1本人,同Y2本人,同Y3本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(この認定に反する証拠は採用しない。)。
(1)  原告の被告会社への入社の経緯
ア 被告会社は,人材紹介会社であるジュノー・システムズ社(以下「ジュノー社」という。)に対して,被告の組織であるインベストメント・プロジェクト・オフィスの業務に従事するプロジェクト・リーダー又はプロジェクトマネージャーの求人を依頼した。
その後,被告会社は,平成18年9月12日,ジュノー社から,前記求人に応募した原告の紹介を受けた。
イ 被告会社がジュノー社を通じて入手した原告の職務経歴書(原文は英文であり,西暦で表記されている。)に記載されていた原告の職歴は概ね以下のとおりである(乙6の1及び2)。
①平成6年9月から平成8年9月
日本総領事館(ボストン,マサチューセッツ州)
マーケティング及びPRオフィサー
②平成9年4月から平成13年12月
ゴールドマン・サックス証券(東京,日本)
システム・ディベロップメント・マネージメント
③平成14年10月から平成15年10月
UBSペインウェバー証券(ニューヨーク,ニューヨーク州)
インターン/インベストメント・バイス・プレジデント付アシスタント
④平成16年2月から平成18年3月
メリル・リンチ・ジャパン証券(東京,日本)
ファイナンシャル・コントローラー付アシスタント
ウ 原告は,平成18年10月から平成19年2月までの間,被告会社の面接を3度受けた(うち1回は,被告Y1が担当者として面接をした。)。
原告は,これらの面接において,出席した被告会社担当者から平成18年3月以降の具体的な就労状況について質問されたが,フリーランスとして就業していた旨答え,企業名や詳細な就労状況については答えなかった。
エ 被告会社は,原告に対し,平成19年3月26日,同日付け採用条件提案書を交付し,同年4月15日からの就労開始を提案した。
これに対し,原告は,被告会社に対し,当時は別の職務に従事しているので同月中はパートタイムとして就業する旨伝えた。
被告会社は,原告に対し,基本的に兼業を禁止していることを理由として,原告の前記希望(パートタイムとして就労すること)には応じられない旨回答し,同年4月7日,就労開始日を同年5月1日とすることで合意し,本件雇用契約を締結した。
(2)  原告の被告会社における就労状況
ア 原告は,同年5月1日より,被告会社のFPMOにて勤務し,被告Y1の下で,当初は,業務のアウトソーシングに関するプロジェクトの中のアカウント・マネジメント業務(サービスレベルを維持・向上することを目的とする業務をいう。)を担当した。
イ 原告は,被告Y1から,同月初旬ころ,ステート・ストリート信託銀行(以下「SSTB社」という。)のアウトソーシングに関するマネジメント・プラン(業務管理計画)を企画作成する業務の担当を了解し,これに関するすべての契約書及びバインダーに綴られた資料を読んだ上で何か質問があれば聞くよう指示された。
しかしながら,原告は,前記契約書等をすべて読むことはせずに被告Y1に質問したところ,被告Y1から1枚1枚読んで答えを探すよう再度指示を受けた。
また,原告は,同月中旬になっても前記マネジメント・プランの企画を立てることができず,被告Y1が口授した内容をまとめたドラフト(乙36)を作成するにとどまった。
ウ 原告は,同年6月ごろ,被告Y1に昼食に誘われたので,「何か話すことがあるのですか。」と聞くと,同被告から「仕事のこと。他の部下もよく誘っているから。」と言われたので,誘いに応じた。
原告は,被告Y1から,昼食時,休日に何をして過ごしているのか,週末バトミントンをしているから一緒に来ないかと誘われたが,この誘いを断った。
エ 被告会社は,同年7月12日,オフィスのレイアウトを変更し,従業員の座席位置も変更した。
その際,原告の座席位置は,従前の被告Y1の座席の隣ではなくなった(原告は,被告Y1の座席の隣を希望していた。)。
オ 被告Y1は,原告に対し,同月19日,試用期間中の従業員に対して行われる中間レビュー面談(1対1のミーティング)を実施した。
その際,被告Y1は,原告に対し,原告に対する現段階の評価を伝えたほか,同被告とのウィークリー・ステータス・ミーティング(毎週の業務推進進捗状況を報告・連絡して必要な指示等を受ける面談をいう。FPMO所属の従業員は全員行っていた。)を行うよう求めたが,原告からは会議室の予約が一杯であり,同被告も多忙であるから原告が自ら同ミーティングを設定できない旨の回答を得た。
他方,原告は,この面談を終えて,試用期間後に本採用されないかもしれないという思いを抱くようになった。
カ 原告は,被告会社人事教育部に対し,同月24日,同部主催の研修に参加したい旨申し込んだ。
これに対し,被告Y1は,原告に対し,同年8月6日,FPMOでは試用期間中の従業員は研修を受けないことをルールとしていることを理由として(もっとも,このルールは被告会社の内部で共通のものではない。),原告の前記研修への参加を承認しないから,申込みを辞退するよう電子メールで求めた。
原告は,自分が希望していた研修への参加を承認しないとされたことから,被告会社の人事部に配属部署を変えてほしい旨申し出たり,アクサホットライン(被告会社の従業員向け相談電話)や,内部通報者ダイレクトライン(被告会社の内部通報制度)に相談したり,被告Y1の上司であるBにも相談したが,みるべき成果を得られなかった。
キ 被告Y3は,同月8日,原告から,被告Y1の指示で希望した研修が受けられないこと等の相談を受け,原告が申し出た嫌がらせが本当であるなら,それは上司によるパワーハラスメントではないか,似た様な事例を集めて被告会社に話した方がより確実であるから,他の周囲の従業員に本件組合のヒアリングに協力する様話をしてもらいたい旨回答した。
その後,被告Y3は,同月13日,原告から同僚の協力が得られなかった旨の電子メールを受信したので,原告に対し,原告一人よりも複数の証言がある方がよいので引き続き周囲に話してみるよう求める電子メールを返信した。
ク 原告は,被告Y1の指示に従い,同月9日,SSTB社のアウトソーシング業務に関し,被告会社の経営陣に対する報告用のプレゼンテーション資料のドラフト(乙35)を作成し,これを被告Y1に提出した。
同資料は,前年度からの内容を切り貼りしただけの部分があったほか,「FPMOのメンバーは皆素人であり,そのためにFPMOは単なる事務室となっている」,「FPMOですら非常にお役所的で,真の変革を行なうことを嫌がっている」といった記載があった(甲13)。
(3)  被告会社による原告に関する調査
ア 原告は,被告会社のC社長(当時)に対し,平成19年8月17日,試用期間中の従業員の研修への参加について,上司である被告Y1の指示に従うべきとするBの意見を支持するかどうかを問いただす電子メール(乙11)を送信した。
イ 被告Y1は,同Y2に対し,同日,電子メールで,原告がチームの会食時に内緒の仕事をしている旨述べていたことや,自分が命じた業務とは直接関係のないホームページをインターネットで閲覧していることに多くの時間を使っているように見えること等から,被告会社以外の仕事をしているのではないかという疑いがあり,その対処を相談した(甲19)。
相談を受けた被告Y2は,同Y1の申出の真偽等を確認する上で原告の電子メールのモニタリングが必要であると判断し,同年8月末から同年9月初めにかけて,被告会社の所定の手続きを経て(法務コンプライアンス部長の了解,情報リスク管理アンドITコンプライアンス部長への依頼),原告の過去の電子メールデータの調査・確認を行った。
その結果,原告の業務とは関係のないメールやメール添付のデータが大量に発見され,①入社時に提出されたものとはまったく異なる内容の履歴書が複数作成されていること(乙19から21),②入社時に報告されていなかったダグミュージック社との間で解雇等を争う訴訟が係属しており,当該訴訟の関連文書が被告会社のパソコンを使用して大量に作成されていること(乙18),③原告は被告会社に入社後も「△△△△」なる肩書きを付して自宅住所を業務上の住所として豊胸を目的とした商品を日本に紹介する業務を行っていること(乙14,15),④その他自宅のプライベートアドレスと職場の業務用アドレスとの間で大量の私用メール送受信が行われ,そのうち,業務用アドレスからプライベートアドレスへ送信された「今日のタスク」という表題の電子メールには多数のURLが記載されていたこと(乙16),⑤原告が同年8月16日にクレディ・スイス投信株式会社の商品企画・管理スタッフの募集に履歴書を添付の上応募し,同月30日にかけて面接日時を調整するメールのやりとりをしていること等がうかがえた。
ウ 被告会社は,前記イ②のデータを手がかりに,同年9月10日,東京地方裁判所に出向き,原告とダグミュージック社との訴訟記録を閲覧し,同訴訟の内容を確認した。
なお,同訴訟では,原告に対する平成18年4月14日付け解雇の効力が争点となっており,原告が同年3月27日から試用期間中は1日5時間との約束で正規社員として採用された旨主張し,パートタイムとして採用したとするダグミュージック社の主張を争っていた。
(4)  本件解雇前後の事実経緯
ア 被告会社は,前記(3)イ,ウの事情をふまえ,所定の手続に従い,同年9月25日,D人事担当執行役の決裁によって,試用期間の満了を待たずに原告を解雇することを決定した。
なお,被告会社は,前記決定に際し,原告から聴取等を行わなかった。
イ 原告は,同月26日,被告Y1の立ち会いの下,被告会社内の会議室において,被告Y2から本件解雇の通告を受けるとともに,自宅待機が命じられ,解雇日である同月30日までの勤務が免除された上,私物を整理して退去するよう命じられた。
ウ 原告は,所轄警察署に対し,同月26日,「会社で脅迫されている」旨通報したが,外出しようとしていた被告Y2が来訪した警察官に事情を説明したことから,社内に警察官を呼び入れることができなかった。
その後,原告は,被告Y3に対し,同日,顧問弁護士の紹介と本件解雇の相談を申し入れようとしたが,被告Y3が夏季休暇中であったため,相談等をすることができなかった。
結局,原告は,入館証を返還しないまま,遅くとも同日午後7時までには,被告会社を退出した。
エ 原告は,被告Y1に対し,同月27日午前2時29分ころ,偽名で,同被告を中傷し,同被告の業務態度を被告会社の経営陣や同被告の妻にも報告する旨の電子メール(乙27)を送信した。
オ 原告は,被告Y3に対し,同年10月2日,電話で,本件解雇について本件組合として対応してほしい旨求めた。
これに対し,被告Y3は,原告に対し,本件組合はユニオンショップ制であること,被告会社から退職した場合には組合員としての資格を失うこと,本件解雇が不当である場合は本件組合としても保護していきたいが,本件解雇について不当かどうか検討する必要があることを説明し,被告会社からの解雇理由とされた経歴詐称が事実でないとするなら,どの点で経歴詐称でないというのか,必要資料とともに説明して欲しい旨伝えた。
原告は,被告Y3に対し,経歴詐称がどの点で違うのか説明せず,「それを調べるのは組合だ!」と言い,本件組合が原告の職歴を調査することは労働組合としての対応の範囲を超えておりできない旨回答する同被告を非難し,相談を打ち切った。
2  争点に対する判断
前記1の認定事実及び前記第2の1の事実を踏まえて判断する。
(1)  争点(1)(本件解雇の効力及び原告の被告会社に対する賃金請求権の有無)について
ア 試用期間中の(普通)解雇は,採用決定の当初にはその者の資質,性格,能力などの適格性の有無に関連する事項につき資料を十分に得ることができないため,後日における調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨でされた留保解約権の行使であるから,通常の(試用期間中でない)解雇よりも緩やかな基準でその効力を判断すべきであるが,試用期間の趣旨,目的に照らし,客観的に合理的理由があり,社会通念上相当として是認されるものであることを要する。
イ 履歴書や職務経歴書に虚偽の内容があれば,これを信頼して採用した者との間の信頼関係が損なわれ,当該被採用者を採用した実質的理由が失われてしまうことも少なくないから,意図的に履歴書等に虚偽の記載をすることは,当該記載の内容如何では,従業員としての適格性を損なう事情であり得るということができる。
そして,原告は,被告会社入社時までに,原告が平成18年3月27日にダグミュージック社に正社員として就職したという認識であったこと,同年4月14日付けで同社から解雇されたことに関し同社との訴訟が係属した又は係属しているのにこれを被告会社に提出した履歴書に記載しなかったこと,また,被告会社との3度の面接でも平成18年3月以降の就労状況を質問されても「フリーランス」と答えるのみで具体的に明らかにしない対応をとっていたことが認められるところ,少なくとも,原告において,平成18年3月までの金融機関での勤務の告知に比べ,それ以降から被告会社就職までの間の就労状況については,意図的に曖昧に回答しているといわざるを得ない。
そして,以前の会社と係争中であるかどうかは,採用にあたって申告すべき事項とまではいい難いけれども,採用する側にとっては採否を考慮する上での重要な事実であることは否定し難い。原告も,そのことを了解していたからこそ,被告会社にダグミュージック社での勤務の事実を明らかにしないことで,被告会社の同社への関心をそらし,被告会社による同社との係争中の事実の調査の端緒を与えなかったものといえる。
この点,原告は「フリーランス」と説明して他社への勤務の事実を明らかにしたと主張するが,「フリーランス」では企業名が明らかではなく,この程度の説明で係争中であったダグミュージック社の就労を説明したものと同様の扱いをすることはできない。
そうすると,ダグミュージック社に正規社員として雇用された事実が必ずしも明らかではなく,また同社との係争の事実が経歴に含まれないとしても,同社への就職及び解雇の事実を明らかにしなかったことは,金融機関における業務経験とインベストメント・プロジェクトの管理・運営等の業務に対する高度の知識を求めて求人を行っていた被告会社が原告の採否を検討する重要な事実への手掛かりを意図的に隠したものとして,その主要部分において,「経歴詐称」と評価するのが相当である。
ウ そして,原告は,担当する業務の企画ができなかったり,不相当な記載をしたプレゼンテーション資料を作成するなど芳しくない勤務態度が認められるし,被告Y1との中間レビュー面談,研修への参加辞退の要請に関し,過剰な反応を示していることとも併せ,上司である被告Y1や同僚ともコミュニケーションがうまくいっていなかったことが推認できる。
さらには,「△△△△」なる肩書きを付して自宅住所を業務上の住所として副業と見られる活動を行っていたり(これが単なるブログ上での活動にすぎない旨の原告の主張は採用できない。),平成19年8月30日ころには被告会社の社員であったにもかかわらずクレディ・スイス投信株式会社に転職を目的として接触を開始しており,すでに被告会社での勤務の意欲を失っていたともいえる。
加えて,原告は,自宅のパソコンのデータのバックアップのためと称して自宅から大量のデータが添付したメールを被告会社のパソコンに送ったり,被告会社から自宅のパソコンに送信することを繰り返していた上,自分の興味のあるインターネット上のホームページのURLを会社のパソコンで閲覧し,さらに自宅でも閲覧を続けるために,前記URLを貼り付けた電子メールを作って自宅に送付していたのであり,原告が職場で業務に専念せず自己の利益を求める行為を行っていたというほかない(この行為は,電話や私書に代えて,会社の業務上のアドレスを使って会社内外の者と私的なメールの送受信をするという範疇を超えている。)。
このような事実及び前記イの事実を踏まえるときは,原告について,就業規則41条6号「試用期間中の者が,不適格と判断されたとき」に該当する事由があり,本件解雇も解雇権の濫用とはいえないというのが相当である。
エ 原告は,被告会社が原告に注意,指導をしたことはなく,解雇を回避するための努力もしなかったと主張するが,履歴書等の虚偽記載によって生じる状態(信頼関係の破綻)は,単に業務能力の育成の問題ではないし,試用期間中であれば,むしろ解雇を回避する要請は本採用以後のときよりも緩やかであると解すべきであるから,原告の指摘する事情があるとしても,そのことで本件解雇が客観的に合理的な理由を欠いているとはいえないから,原告の前記主張は理由がない。
また,原告は,本件解雇が内部告発に対する不利益処分としての不当解雇であり,公益通報保護法3条違反により無効であると主張するが,本件における原告に対する調査は被告Y1の同Y2に対する相談を端緒としており,かつ被告Y1が原告の内部告発を了知していたことを認めるに足りる証拠はないから,原告の前記主張は理由がない。
さらに,原告は,本件解雇は,解雇予告手当てが解雇と同時に支払われておらず,支払も一方的に振込まれたもので,労働基準法20条に反し,無効であると主張するが,解雇予告手当ては本件解雇の日より前に支払われており,労働基準法20条に反するところはなく,原告の主張は理由がない。
オ まとめ
してみると,本件解雇は,試用期間中にされたものとして,正当な理由があり,解雇権を濫用したものとはいえず,有効であるというべきである。
したがって,原告の被告会社に対する地位確認請求及び賃金請求はいずれも理由がないというべきである。
なお,本件解雇の決定に当たって原告から聴取等を行わなかったこと及び試用期間満了を待たずに本件解雇に及んだことは,本件解雇が試用期間中に行われた通常解雇(本採用拒否)であることからすると,前記判断を左右しない。
(2)  争点(2)(原告の被告会社,同Y1及び同Y2に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無及び額並びに被告会社に対する労働基準法114条に基づく付加金請求権の有無及び額)について
ア 不法行為
(ア) 被告Y1による職場での嫌がらせ
上司であった被告Y1は,原告に対し,不快なジェスチャーを示して病院に行きにくくさせたり,指示にちょっと反論しただけでも解雇をほのめかして従わせようとした事実は,これを認めるに足りる証拠がない(このような行為があったとする甲50及び原告本人の供述は,このような行為を否定する乙33及び被告Y1本人の供述並びに原告が被告Y1の隣の席を希望した事実に照らし,前記行為を認定するには足りない。)。
また,研修の却下についても,試用期間中の従業員には研修を受けさせないという被告Y1の方針があり,このことが被告会社内でも不相当とはされていない(甲50及び被告Y2本人により認める。)ことから,「虚偽理由を挙げて辞退の強要をした」ともいえない。
したがって,被告会社において,原告が求めていた配置転換なども行わなかったとしても,そのことが直ちに職場環境配慮義務に反するともいえない。
(イ) 不当な解雇
前記のとおり,本件解雇は正当な理由があってされたものであって違法ではない。また,被告Y1や被告Y2が,段ボール箱を突きつけて出て行くよう怒鳴ったり,原告のかばんの中を漁ったり,腕を掴んで強制退去させる行為は,これを認めるに足りる証拠がない(このような行為があったとする甲50及び原告本人の供述は,このような行為を否定する乙34,被告Y1本人及び同Y2の各供述に照らし,前記行為を認定するには足りない。)。
(ウ) プライバシーの侵害
証拠(甲18)によれば,被告会社の「社員情報の取り扱いに関するポリシー」は,従業員の個人情報に関する取扱いを定めるものであり,その対象である「個人情報」とは,「個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他記述又は個人別に付された文字,番号,記号,その他の符号,画像もしくは音声により当該個人を識別できるもの(当該情報のみでは識別できないが,他の情報と容易に照合することができ,それにより当該個人を識別できるものを含む)をいう。」と定義されており,社員情報とは被告会社の従業員等の個人情報である旨定義されていることが認められる。
そうすると,原告の電子メールや訴訟記録については,前記規定の社員情報には該当しないから,被告会社が原告に無断で電子メールのモニタリングや訴訟に関する調査をしたとしても,被告会社の「社員情報の取り扱いに関するポリシー」に反する違法な行為であるとはいえない。
(エ) 被告Y1による名誉毀損
前記認定のとおり,経歴詐称を理由とした本件解雇は正当であるから,被告Y1が本件解雇通告当日にチームメンバー全員を呼び出して原告について「経歴を詐称したので解雇した。」と発表した事実があったとしても,その行為が不法行為であるとはいえないというのが相当である。
(オ) 虚偽の労働条件を提示した募集
被告会社は,原告との最終的な合意(平成19年4月7日)の前に,原告を「アシスタント・マネージャー」として採用することを条件とすることを明示しているから,職業安定法65条9号の「虚偽の労働条件を提示して労働者の募集を行った」行為であるとか,労働基準法15条1項,同施行規則5条の「労働条件の書面による明示」規定に反する不法行為であるとはいえない。
(カ) 残業代一部支払拒否
証拠(甲22)によれば,原告の平成19年9月分の時間外労働時間が14時間30分であることが認められる一方,原告の平成19年9月分の時間外労働時間が原告の主張のとおり45時間であることを認めるに足りる証拠はないから,被告会社が原告の申請したとおりの残業代の支払を拒否したとしても,そのことが直ちに労働基準法37条に違反する不法行為をしたものとはいえない。
イ まとめ
前記アのとおり,原告の主張する不法行為はいずれもこれを認めることができないから,損害額等を検討するまでもなく,原告の被告会社,同Y1及び同Y2に対する損害賠償等請求には理由がない。
(3)  争点(3)(原告の被告Y3に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権の有無及び額)について
被告Y3は,原告から本件組合の書記長としての対応を求められたのであって,個人としては,原告との間で何らの契約法上の法的義務を負う立場にはない。
したがって,原告の被告Y3に対する債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)には理由がないというのが相当である。
3  結語
以上の次第であり,原告の第1事件にかかる訴えのうち,原告が被告会社に対し,本判決確定の日の翌日以降の賃金及び遅延損害金の支払を求める部分は,原告と被告会社との間に雇用契約関係が存在することを確認する判決が確定すれば,特段の事情のない限り,右の雇用契約関係を前提とする法律関係が構築されるものと解されるから,あらかじめその請求をする必要があるとはいえず,訴えの利益を欠くものとしてこれを却下するのが相当であり,第1事件にかかるその余の請求及び第2事件にかかる請求については,理由がないから失当として棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木拓児)

 

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