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「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(5)平成30年11月14日 東京地裁 平29(ワ)31288号 不当利得返還請求事件(本訴)、損害賠償金等請求事件(反訴)

「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(5)平成30年11月14日 東京地裁 平29(ワ)31288号 不当利得返還請求事件(本訴)、損害賠償金等請求事件(反訴)

裁判年月日  平成30年11月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)31288号・平30(ワ)3650号
事件名  不当利得返還請求事件(本訴)、損害賠償金等請求事件(反訴)
文献番号  2018WLJPCA11148019

裁判年月日  平成30年11月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)31288号・平30(ワ)3650号
事件名  不当利得返還請求事件(本訴)、損害賠償金等請求事件(反訴)
文献番号  2018WLJPCA11148019

平成29年(ワ)第31288号 不当利得返還請求事件(本訴事件)
平成30年(ワ)第3650号 損害賠償金等請求事件(反訴事件)

茨城県古河市〈以下省略〉
本訴原告・反訴被告 X
訴訟代理人弁護士 小川晶露
大阪府守口市〈以下省略〉
本訴被告・反訴原告 一般社団法人Y協会
代表者代表理事 C

 

 

主文

1  本訴被告は,本訴原告に対し,3025万0325円及びこれに対する平成29年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  本訴被告は,本訴原告に対し,110万円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  本訴原告のその余の本訴請求をいずれも棄却する。
4  反訴原告の反訴請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,これを6分し,その1を本訴原告(反訴被告)の負担とし,その余は本訴被告(反訴原告)の負担とする。
6  この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴事件
(1)  本訴被告は,本訴原告に対し,3275万0325円及びこれに対する平成29年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  本訴被告は,本訴原告に対し,660万円及びこれに対する平成29年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  反訴事件
(1)  反訴被告は,反訴原告に対し,550万円を支払え。
(2)  反訴被告は,反訴原告に対し,100万円を支払え。
(3)  反訴被告は,反訴原告に対し,20万円を支払え。
第2  事案の概要
本訴事件は,本訴原告・反訴被告(以下「原告」という。)が,本訴被告・反訴原告(以下「被告」という。)に対し,(1)被告との間で特定商取引に関する法律(以下「法」という。)にいう「特定継続的役務提供契約」を締結したが,法42条が規定する書面の交付を被告から受けなかったとして,法48条1項に基づいて同契約を解除(クーリングオフ)した上で,不当利得または法48条7項に基づき,入会金等として支払った合計3275万0325円とこれに対する催告の日の翌日である平成29年3月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)インターネット上の被告のホームページ及びブログに書かれた掲載文が原告の名誉を棄損するものであるとして,不法行為に基づき,660万円(慰謝料及び弁護士費用)とこれに対するホームページに掲載されていた同年12月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
他方,反訴事件は,被告が,原告に対し,(1)原告が,雑誌社に事実無根の記事を掲載するよう仕組んで取材を受けた,(2)原告が,警察に虚偽の報告をして捜査を求めた,(3)原告による本訴事件の提起が不当訴訟であるとして,不法行為に基づき,(1)につき550万円,(2)につき100万円,(3)につき20万円の損害賠償の支払をそれぞれ求める事案である。
1  前提事実(末尾に証拠等の摘示がない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)  被告は,日本人とウクライナ人との結婚を支援することにより,国際交流の促進と世界平和の実現に寄与することを目的とする一般社団法人であり,日本人男性に対して,ウクライナ人女性を結婚相手として紹介する事業(以下「本件事業」という。)を行っている(甲1,2)。
本件事業は,結婚を希望する者に継続的に異性を紹介し,相手方がそれに対して金銭を支払うというものであり,法41条1項にいう「特定継続的役務提供」にあたる(特定商取引に関する法律施行令11条,同別表第四の七参照)。
(2)  原告は,被告との間で,結婚相手としてウクライナ人女性を紹介してもらうというサービスを継続的に受けることを内容とする役務提供契約を締結し(以下「本件契約」という。),平成27年2月4日,32万4000円を被告に対して入会金として支払った。なお,その際,契約書等の書面は作成されなかった。
(3)  原告は,被告に対し,平成29年3月16日に被告に到達した同月14日付け内容証明郵便によって,本件契約(個々のサービスごとに契約が成立しているという場合にはその個々の契約)について,法48条1項に基づいてこれを解除するとの意思表示をするとともに,支払済みの費用等の合計3275万0125円の返還を求めた(甲14の1,2)。
(4)  原告は,同月17日,被告を相手方として,独立行政法人国民生活センターの紛争解決委員会にあっせん,仲介手続の申立てを行ったが,被告の協力が得られなかったことから,同年9月14日,東京地方裁判所に本件訴訟を提起した。
(5) 株式会社a(以下「a社」という。)が同年11月30日に発行した「b誌(12月7日号)」に,「『ウクライナ女性』結婚斡旋に被害続出は『世界一の美女大国』だから」と題する記事(甲18,乙5。以下「本件記事」という。)が掲載された。本件記事の内容は,原告が提起した本件訴訟を取り上げるものであり,本件本訴事件における原告の主張と同様の原告のコメントが引用されているほか,冒頭には「かの国では日本人男性へウクライナ美女との結婚を斡旋するビジネスが跋扈して,被害が続出しているというのだ。」との記載がある。
(6) 被告は,インターネット上の被告のホームページ,ブログ及びツイッターにおいて,「皆様にお知らせ」との表題のもと,別紙の記載の掲載文を,原告の実名を年齢及び在住都道府県名とともに挙げて掲載した(以下「本件掲載文」という。甲23,25,71。なお,ブログ上では少なくとも同年12月12日の時点で閲覧が可能である。)。
2  争点
【本訴事件】
(1) 原告の被告に対する費用等の支払の有無
(2) 本件掲載文についての名誉棄損による不法行為の成否
【反訴事件】
(3) a社に事実無根の記事を掲載させようとしたという不法行為の成否
(4) 捜査機関に虚偽の報告をしたという不法行為の成否
(5) 原告の本訴事件が不当訴訟であるという不法行為の成否
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(原告の被告に対する費用等の支払の有無)について
(原告の主張)
ア 原告は,被告の理事であったD(以下「D」という。)から,スカイプでの口頭会話またはチャット交信でのやり取りを通じて本件事業についての説明を受けた上で,被告との間で本件契約を締結し,その後,以下のとおり,入会金やウクライナ滞在パッケージ費用等の代金を被告に対して支払った。
①入会金
平成27年2月4日 32万4000円(甲3)
②ウクライナ滞在2週間パッケージ料金
平成27年3月23日 38万8800円(甲4)
現地でのアテンド費用,宿泊費,通訳料,現地空港までの送迎料,女性との現地お見合いセッティング料等
③ウクライナ滞在4週間パッケージ料金
平成27年6月10日 84万2000円(甲6)
現地でのアテンド費用,宿泊費,通訳料,現地空港までの送迎料,女性との現地お見合いセッティング料等
④1回目の結婚費用
平成27年9月2日 218万4000円(甲7)
1回目の新婦Eとの現地結婚式手数料等,成婚に対する成功報酬
⑤ウクライナ滞在4週間パッケージ料金
平成27年10月20日 85万3200円(甲8の1,2)
現地でのアテンド費用,宿泊費,通訳料,現地空港までの送迎料,女性との現地お見合いセッティング料,往復航空券代金等
⑥2回目の結婚費用
平成27年11月 250万0000円(手渡し)
2回目の新婦F(通称「F1」または「F2」)との入籍手続,アレンジ費用,パーティーバス,飲食代等
⑦VIP会員資格取得費用
平成27年11月27日 1080万0000円(甲9,11)
「必ず理想のウクライナ女性と籍を入れさせる」「一生かけても最後の最後まで面倒をみる」と被告が説明する無期限かつ最高ランクのVIP会員の資格取得費用
⑧VIP会員活動諸経費
平成27年11月27日 1300万0000円(甲10,11)
上記⑦にいうVIP会員の活動諸経費
⑨ウクライナ滞在2週間パッケージ料金
平成28年1月8日 42万1200円(甲12の1)
現地でのアテンド費用,宿泊費,通訳料,現地空港までの送迎料,女性との現地お見合いセッティング料等
⑩VIP会員延長料金
平成28年4月6日 143万7125円(甲13)
上記⑦にいうVIP会員の延長料金
イ 本件契約(上記ア①ないし⑩の個々のサービスごとに契約が成立するという場合には,その個々の契約)は,「特定継続的役務提供契約」(法41条1項1号参照)にあたるところ,原告は,被告から法42条が求める書面の交付を受けていないから,前記前提事実(3)のとおり,法48条1項に基づき,被告に対して本件契約を解除するとの意思表示(クーリングオフ)をした。
したがって,被告は,原告に対し,本件契約に関連して原告が被告に支払った上記ア①ないし⑩の代金について,不当利得または法48条7項に基づいてその全額の返還義務を負っている。
ウ なお,被告は,上記ア②ないし⑩の支払につき,ウクライナの現地法人である「c社」(以下「c社」という。)が原告にサービスを提供し,その代金もc社に支払われたものであって,被告に支払われたものではないと主張するが,c社という会社が実際に存在するかも不明であるし,仮にc社が存在するとしても,原告が提供されたサービスは被告のホームページにおいてサービスとして掲載されているものであり,原告がやり取りをしたDのスカイプ名も被告の法人名が表示されていたのであって,原告は一度もc社という名前を聞いたことがないから,原告にサービスを提供し,原告がその代金を支払った相手が被告であることは明らかである。
(被告の主張)
ア 原告が,被告の会員であり,①入会金として支払いを受けた32万4000円について返還義務があることは認める。
なお,本件契約の契約書は,原告に郵送してその返送を待っていたが,そのまま原告が役務提供を希望しないままであったことから,作成には至らなかったものである。
イ 原告の主張する②,③,⑤及び⑨のパッケージ料金については,原告は,被告と提携関係にあるウクライナ法人の結婚相談所であるc社と契約を締結したのであり,原告の支払は,c社によるあっせん,紹介の対価としてc社に支払われたものであるから(被告宛てに送金されたことの証拠も被告が発行した領収書もない。),被告がこれらについて返還義務を負うことはない。
なお,仮に契約の相手方が被告であるとしても,上記の代金は,原告がウクライナにおいて女性に対価を支払って性行為をするための費用を立て替えたものであり,本件契約とは関係性がないものである。
ウ 原告の主張する④の結婚費用は,c社が結婚式場料金などを立替払いした分について支払を受けたものであり,被告がこれらについて返還義務を負うことはない。
エ 原告の主張する⑥の結婚費用は,何も知らない。
オ 原告の主張する⑦及び⑧のVIP費用については,Dは1080万円及び1300万円といった大金を受け取っていないし,VIP会員という制度がない被告にはそもそも関係のないものである。
オ 原告の主張する⑩のVIP延長料金は,Dが個人的に原告に貸し付けた金銭の返済を受けたものである。
(2)  争点(2)(本件掲載文についての名誉棄損による不法行為の成否)について
(原告の主張)
ア 本件掲載文には,原告の実名と年齢が明確に記載されている上に,原告のフェイスブックのアカウントまでリンクが貼られており(甲28),本件掲載文の対象が原告であることは一般人にとって明らかである。
イ(ア) 本件掲載文には,「訴訟が存在する点は事実でございますが,全く事実に反する金額を請求してきている」「57歳男性側から悪意を持って雑誌社に事実無根の内容を話している」との記載があるところ,これは,原告が訴訟において全く事実に反する請求をしており,また,悪意を持って雑誌社に事実無根の話をしているような印象を社会一般に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させ,その名誉を棄損するものである。
(イ) 本件掲載文には,「この57歳男性は,当初10代のウクライナ人女性との結婚を至急というかたちで希望」「57歳男性は,10代女性は絶対条件であり妥協はできないとの旨,要請を受けた」との記載があるところ,これは,原告が無理難題な要求を結婚業者に対して行う会員であるかのような印象を社会一般に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させ,その名誉を棄損するものである。
(ウ) 本件掲載文には,「しかしながら,女性Aが日本に来日し,共に生活したところ,女性は57歳男性のことが恐くなり逃げ出した」との記載があるところ,これは,当該女性が原告から逃げ出さざるを得なくなるような乱暴ないし異常な性格を原告が有しているかのような印象を社会一般に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させ,その名誉を棄損するものである。
(エ) 本件掲載文には,「後に女性Bより『性的虐待を受けた』との勇気ある告発が当協会にもたらされ,それによって恐ろしい事実が判明致しました。」との記載があるところ,これは,原告が,女性Bに対して,継続的に暴力や脅迫による性行為を強要する性的虐待を行ったものであり,当該女性がその実態を勇気をもって告発せざるを得なかったかのような印象を社会一般に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させ,その名誉を棄損するものである。
(オ) 本件掲載文には,「少なからず不安な気持ちを持って来日されるウクライナ人女性に,来日直後に性行為を幾度と強要し,人ではなく物のように扱った」との記載があるところ,これは,原告が,当該女性を自らの異常な性行為,性的偏向のための道具としてのみ扱い,尊厳ある人間として扱わなかったかのような印象を社会一般に強烈に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させ,その名誉を棄損するものである。
(カ) 本件掲載文には,「こういった理由がありウクライナ人女性と結婚してもすぐに帰国され,それを当協会の責任だと押し付けており,そういったことから事実無根の訴訟を提起してきた」との記載があるところ,これは,原告の性暴力や性的虐待が原因となってウクライナ人女性がすぐに帰国してしまったというのに,原告が,それを被告の責任だと押し付けるために事実無根の訴訟を提起しているかのような印象を社会一般に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させ,その名誉を棄損するものである。
ウ 上記イ(ア)ないし(カ)で指摘した摘示事実のうち,訴訟が存在するという点以外は,すべて虚偽の事実であり,また,いずれの事実も公共の利害に関するものではないことは明らかであって,掲載について目的の公益性がないことも明らかである。
エ 本件掲載文によって,原告は,性暴力者,性変質者であるかのごとく記載され,著しい精神的苦痛を被った。その損害額は600万円を下らない。
また,原告は,上記損害賠償を求めるため,本件本訴事件の原告代理人に訴えの変更を依頼せざるを得なくなった。上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は60万円を下らない。
(被告の主張)
社会的評価の低下があったという点や,虚偽の事実であるという点,原告に損害が生じたという点は争う。
また,被告は,原告がb誌を利用して被告に対する事実無根の中傷を行ったこと(本件記事)に対し,顧客が離れてしまわないように反論(本件掲載文)したものであり,公共の利害に関する事実を,公益を図る目的をもって掲載したものである。
なお,原告の実名を公表したのは,原告と同年齢の会員から問い合わせがあり,実名公表を求められたことによるものである。
(3)  争点(3)(a社に事実無根の記事を掲載させようとしたという不法行為の成否)について
(被告の主張)
ア 前記前提事実(5)のb誌の記事(本件記事)は,事実無根のものであるところ,この記事は,原告が,a社に対し,虚偽の内容を掲載するように取材対応したことによるものである。
イ 上記アの原告の行為は不法行為にあたるところ,これによって被告は信用が棄損されるとともに営業を妨害され,550万円の損害を受けた。
(原告の主張)
本件記事は,発行の5日前である平成29年11月25日夜に,記者が突然原告宅に現れて取材協力を求め,原告がこれに応じたことによるものであり,原告から取材を求めたものではない。また,原告において,自己のコメントがそのままの形で掲載されることに同意しただとか,それを予想,容認しつつあえてコメントをしただとか,出版社による裏付け取材が期待できなかったといった事情は存在しない。
したがって,本件において名誉棄損による不法行為が成立する余地はない。
(4)  争点(4)(捜査機関に虚偽の報告をしたという不法行為の成否)について
(被告の主張)
ア 原告は,被告に不当に精神的圧力をかける目的で,大阪府警察本部の刑事に対し,被告の紹介する女性が売春婦であるとの虚偽の通知をして捜査を求めた。
イ 上記アの不法行為によって被告は100万円相当の精神的損害を受けた。
(原告の主張)
原告は,被告について,管理売春,詐欺,特定商取引に関する法律違反,旅行業法違反の被害相談を大阪府警にしたが,そのような被害相談をもって名誉棄損が成立するとの原告の主張は独自の見解に過ぎない。
(5)  争点(5)(原告の本訴事件が不当訴訟であるという不法行為の成否)について
(被告の主張)
ア 本件本訴請求は,事実に基づかない虚偽の主張により,不当に高額の請求を行うものであり,悪意をもって被告を陥れようとするものである。
イ 不当訴訟である本件本訴請求による慰謝料は20万円が相当である。
(原告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠(証人Dの証言を含む。)は信用することができない。
(1)  被告のホームページ(甲2の3,甲31,32)
ア 平成28年5月11日時点の被告のホームページの「運営法人」の欄には,「理事 D(代表・現地コーディネーター)」との記載がある。また,平成29年8月4日時点の被告のホームページには,「理事 D(代表理事・現地法人代表)」との記載がある。
イ 平成29年5月6日時点の被告のホームページには,日本人男性にウクライナ人女性を結婚相手として紹介するという被告の本件事業の利用料金等に関して,以下の記載がある(なお,各サービスがc社によって提供されるといった記載はない。)。
各サービスのご利用料金
ご利用料金
入会金 10万円(税別)
会費
ゴールドコース 30歳未満の方 2年間:20万円
プラチナコース 30歳以上の方 2年間:40万円
ダイヤモンドコース 無期限(成婚するまで,成功報酬型):300万円
(省略)
成婚料
・ゴールドコース,プラチナコースの成婚料:800,000円
(省略)
・VIPスペシャルコースの成婚料:Dまでお問い合わせください。(成功報酬:女性との婚約,及び,ウクライナでの法に基づいた婚姻手続きが完了したのちのお支払いになります。婚約時半金,結婚成立時半金をそれぞれいただきます。)
(省略)
ロマンスツアー キエフ滞在
短期6泊まで短期パック:料金はお見積りさせていただきます。
(省略)
キエフ滞在 2週間パック(13泊まで):料金はお見積りさせていただきます。
(省略)
キエフ滞在 マンスリー滞在パック:(30泊まで):料金はお見積りさせていただきます。
(2)  入会金の支払
原告は,本件事業について,被告の理事であったDから説明を受けた上で,被告に対し,入会金等として32万4000円を支払った(前記前提事実(2),甲70)
(3)  1回目の渡航
ア 原告は,平成27年5月13日にウクライナに渡航し,同月18日まで同国に滞在して,その間,数人の女性とお見合いをしたが,成婚には至らなかった(甲5,70)。
イ 原告は,上記アにかかる航空券代,アテンド通訳代,宿泊費,空港送迎往復費用,お見合い料等として,渡航前の同年3月23日に,Dの個人名義の口座に38万8800円を振込送金した(甲4,原告本人尋問の結果)。
(4)  2回目の渡航
ア 原告は,同年8月3日にウクライナに渡航し,同月30日までの約1か月にわたって同国に滞在して,その間,女性とお見合いをするなどした(甲5,原告本人尋問の結果)。
イ 原告は,上記アにかかる航空券代,アテンド通訳代,宿泊費,空港送迎往復費用,お見合い料等として,渡航前の同年6月10日に,Dの個人名義の口座に84万2400円を振込送金した(甲6,原告本人尋問の結果)。
(5)  Eとの結婚等
ア 上記(4)のウクライナ滞在中の同年8月上旬頃,原告は,Eという女性と会い,同月29日には現地で結婚式を行ったが,指環の交換などはなく,また,その結婚式にはEの親族や友人の出席はなく,被告ないしはDの関係者4名が列席しただけであった(甲62,原告本人尋問の結果)。
イ その後,原告が先に日本に帰国し,おって同年10月12日にEが来日して,数日間,原告の自宅に滞在したが,Eは,原告宅に到着した直後から,親が結婚に反対している,ウクライナにいいなづけがいるなどと言い出して,体調不良を理由に部屋に引きこもり,その後,ウクライナに帰国してしまった(甲36(66ないし74頁),64,原告本人尋問の結果)。
(6)  3回目の渡航
ア 原告は,Eの帰国後,同月25日にウクライナに渡航し,同年11月25日までの約1か月にわたって同国に滞在して,その間,後述するFを含む数人の女性とお見合いをするなどした(甲5,70)。
イ 原告は,上記アにかかる航空券代,アテンド通訳代,宿泊費,空港送迎往復費用,お見合い料等として,渡航前の同年10月20日に,Dの個人名義の口座に85万3200円を送金した(甲8の1,2,原告本人尋問の結果)。
(7)  4回目の渡航
原告は,同年12月2日にウクライナに渡航し,同月13日まで同国に滞在して,その間,後述するFと会うなどした(甲5,70)。
(8)  5回目の渡航
ア 原告は,平成28年1月9日にウクライナに渡航し,同月23日までの約2週間にわたって同国に滞在した(甲5,70)。
イ 原告は,上記アにかかる航空券代,アテンド通訳代,宿泊費,空港送迎往復費用,お見合い料等として,渡航前の同月8日に,Dの個人名義の口座に42万1200円を送金した(甲12の1,2,甲70)。
(9)  Fとの結婚等
ア 上記(6)の3回目のウクライナ滞在中の平成27年11月上旬頃,原告は,Fという女性と会い,レストラン等で数回会った後,同月21日に現地で結婚式を挙げるに至ったが,その結婚式において,Fは私服姿のままであり,出席者はDの関係者ばかりであった(乙3,原告本人尋問の結果)。また,原告が結婚式の際にFの父親及び兄として紹介された人物(被告はFの父親と兄であると主張している。)は,その後,Fの父親及び兄ではないことが判明した(甲33,61,68ないし70,原告本人尋問の結果)。
イ Fとの結婚式の後,原告は,上記(7)のとおり,同年12月2日から同月13日までウクライナに4回目の渡航をし,Fと会うなどした。
ウ その後,Fは,同年12月28日に来日し,平成28年1月5日まで日本に滞在した(甲65)。
エ 原告は,Fの帰国後,上記(8)のとおり,同月9日から同月23日まで,ウクライナに5回目の渡航をした。
オ さらにその後,Fは,同年3月20日に再び来日したが,その日本滞在中に,原告に対して,原告をだましていた,嘘をついていたと告白し,同月26日にウクライナに帰国した(甲66,原告本人尋問の結果)。
カ Fがウクライナに帰国した後,原告は,同年7月13日にウクライナに渡航して10日間ほど滞在し,また,同年11月27日にもウクライナに渡航して,Fと会うなどした(甲67)。
2  争点(1)(原告の被告に対する費用等の支払の有無)について
(1)  入会金(原告の主張する①の費用)について
上記認定事実(2)のとおり,原告は,本件契約に関連する入会金として32万4000円を被告に支払っている。
(2)  ウクライナ滞在パッケージ料金(原告の主張する②,③,⑤及び⑨の費用)について
ア 上記認定事実(3)イ,(4)イ,(6)イ及び(8)イのとおり,原告は,1回目,2回目,3回目及び5回目のウクライナへの渡航等にかかる費用として,Dの個人名義の口座に,38万8800円(1回目),84万2400円(2回目),85万3200円(3回目)及び42万1200円の合計250万5600円を送金している。
イ これらの送金につき,原告は,本件契約に関連して被告が提供したサービスに対する代金を被告に対して支払ったものであると主張するのに対し,被告は,原告がウクライナの現地法人であるc社と契約を締結してサービスを受けたものであり,c社に対して支払われたものであると主張する。
そこで検討するに,被告のホームページにおいては,ウクライナに滞在して女性の紹介を受けるツアーがサービスとして紹介されているところ(上記認定事実(1)イ),〈ア〉原告は,上記認定事実(3)ア,(4)ア,(6)ア及び(8)アのウクライナへの渡航,滞在,同国でのウクライナ人女性の紹介については,Dとのみやり取りを行っており,直接会っている時以外のやり取りのほとんどはスカイプ通信で行われているが(3回目と5回目の渡航にかかる費用についてのやり取りも残されている。),そこにおいてDが「一般社団法人Y協会 D」というスカイプ名を終始使用し続けていたこと(甲8の2,12の2,甲36),〈イ〉被告の理事であるDは,平成28年5月11日時点の被告のホームページにおいて「代表・現地コーディネーター」との肩書で掲載されているほか(上記認定事実(1)ア),被告のブログが平成26年11月に開設された際には,「代表理事」との肩書でメッセージを残し,自らの写真も掲載した上で(甲38(1,2頁)),その後のブログ上には「代表からのご挨拶」とある動画で登場しており(甲43),実質的に被告を代表する存在として活動しているものと認められること,〈ウ〉被告のホームページにおけるサービスの掲載において,そのサービスを実際には被告と提携するc社あるいは現地法人が担うといった旨の説明が一切なく(上記認定事実(1)イ),また,Dが,原告に対し,ウクライナへの渡航にかかるサービスはc社との契約によるものであると伝えたことをうかがわせる証拠や事情もないことからすると,原告は,被告の理事であるDとのやり取りを通じて,被告の提供するサービスを受けることとしてウクライナに渡航,滞在したものと認めることができ,そして,その代金の支払も,被告の理事であるDの個人口座への送金ではあるが,これを被告に対する支払と認めることができるというべきである。
ウ なお,被告は,仮に支払先が被告であるとしても,これらは原告がウクライナにおいて女性に対価を支払って性行為をするための費用の立替えに対して支払われたものであり,本件契約とは関係性がないなどと主張するが,原告がお見合い等を行っていることは上記認定事実(3)ア,(4)ア,(6)ア及び(8)アのとおりであり,被告の主張は採用できない。
(3)  結婚費用(原告の主張する④及び⑥の費用)について
ア Eとの結婚費用について
上記認定事実(5)アのとおり,原告は,平成27年8月29日にEと結婚式を挙げており,また,証拠(甲7,70)によれば,その直後である同年9月2日に,原告がDの個人名義の口座に218万4000円を振込送金していることが認められる。そして,被告のホームページにおいて,サービスのご利用料金として成婚料(最低額は80万円)が記載されているところ(上記認定事実(1)イ),上記(2)イで検討した〈ア〉ないし〈ウ〉の事情に加えて,被告が,平成30年4月25日受付の本訴被告準備書面(3)において,上記218万4000円は結婚式場料金などを立替払いした分であると主張していることも踏まえると,原告は,被告の提供するサービスに含まれる成婚料や,それに関連する結婚式費用等として218万4000円を支払ったものであり,その支払先も,被告の理事であるDの個人口座への送金ではあるが,これを被告に対する支払と認めることができるというべきである。
イ Fとの結婚費用
原告は,Fとの結婚についても,結婚費用としてDに250万円を手渡したと主張するが,かかる250万円の授受をうかがわせる証拠が何ら存在しない以上,原告の主張する結婚費用の支払を認めることはできない。
(4)  VIP料金等(原告の主張する⑦,⑧及び⑩の費用)について
ア 1080万円及び1300万円の支払について
原告は,平成27年11月27日に,被告のVIP会員資格取得費用としての1080万円とVIP会員活動諸経費としての1300万円を現金でDに渡したと主張し,これに対し,被告は,Dはそのような大金を受け取っておらず,また,被告にはVIP会員という制度がないから関係のないものであると主張する。
そこで検討するに,〈ア〉原告とDが,平成27年11月26日に一緒にウクライナから日本に帰国し,その日はDが原告の自宅に泊まった上で,翌27日,ともに原告の自宅近くのゆうちょ銀行に行き,そこで原告が預金口座の残高全額にあたる2410万8252円を引き出していること(甲5,55の1,2,甲70,原告本人尋問の結果),〈イ〉被告のブログにおいて,同年10月頃には,代表名で「特別VIP会員様募集しております。ハイレベルな女性と結婚したい。・・・」といったVIP会員募集の記載があり(甲41(48頁以下)),原告とDとの間のスカイプ通信においても,同年9月頃に「一千万プロジェクト」といった話題が出ていること(甲36(47,52頁)),〈ウ〉原告とDの間において,時期は不明であるが,原告「でもあれでしょ?俺が払った,VIPの1080万円は結構足しになったでしょ。」,D「いやだから,Xさんにも感謝してるから,絶対Xさんはうまいことやらさなあかんってつくづくそれ思うんですよ,僕も。」といった金銭の授受を前提とする会話があり,その録音が残されていること(甲56の1,2。Dは,無理やり言わされたという趣旨の証言をしているが,その前後のやり取りを通じて,そのような形跡はうかがわれない。),〈エ〉原告とDの間において,平成29年3月頃に,原告「(省略)それはちょっと守ってほしいんだけど,ほらDさん前に来たときに2400万渡したじゃん,お金。あのときそのまま,俺うっかりしちゃったんだけど,領収書もらわないで返しちゃったんだけど,その後来たときにもうしょうがないからって向こうの事務所で領収書もらったでしょ。あれ,下こう消してもらったんだけど,Dさん書いてくれたのは金額の1300万と2400万と,あとXって俺の名前しか書いてくれなかったんだよね。だからちゃんと,Dでも支援協会でもいいから,宛名と日付をもう一回書き直してほしいんだよね,領収書。」,D「うん,書くよ」といった会話があり,その録音も残されていること(甲54の1,2。Dが無理やり言わされたという形跡がうかがわれないことは上記と同じ。)を踏まえると,原告が,Dからの提案を受けて,被告の提供するVIP会員のサービスを受けるために,Dに対して1080万円と1300万円の合計2380万円を渡したことが認められ,そして,上記(2)イ及び(3)アでの検討と同様に,Dに対する支払をもって,被告に対する支払があったものと認めることもできる。
イ 143万7125円の支払について
原告は,VIP会員延長料金として,143万7125円を被告に支払ったと主張し,証拠(甲13)によれば,原告が,平成28年4月6日に,Dの個人名義の口座に同金額を送金していることが認められるところ,〈ア〉上記(2)及び(3)での認定のとおり,この送金以前においても,原告は,被告の本件事業にかかるサービスに関してその代金をDの個人名義の口座を通じて支払っており,この143万7125円についても同様のものと推認することができること,〈イ〉他方で,被告は,Dの原告に対する個人的貸付けに対する返済であると主張するが,Dが原告に対して金銭を貸し付けていたことをうかがわせる証拠がないこと(むしろ,従前からの原告のDに対する送金や支払状況を踏まえると,原告においてDから金銭を借り入れる必要性があったとは考えられない。)を踏まえると,原告の主張するように,上記の143万7125円は,被告のサービスであるVIP会員制度の延長のための費用として支払われたものであり,Dに対する送金をもって被告に対する支払がなされたものと認めることができるというべきである。
(5)  まとめ
ア 以上によれば,原告は,本件契約に関連するものとして被告から提供されたサービスに関し,入会金,ウクライナ滞在パッケージ料金(渡航費用や滞在費用なども,まとめて結婚相手の紹介という被告のサービスに関連した費用とみるべきである。),成婚費用等(結婚式の費用等の実費も関連費用とみるべきことは上記同様である。)及びVIP会員関連費用の合計3025万0725円を被告に支払ったものと認められる。
イ そして,原告は,法48条1項に基づいて本件契約を解除しているところ,同条7項によれば,被告は,本件契約に関連するものとして受け取っている上記の合計3025万0725円を全額原告に返還しなければならないと解される(なお,原告の主張する③の費用については,証拠(甲6)上は84万2400円の支払が認められるが,原告の請求は84万2000円にとどまっているので,本件請求にかかる認容額は3025万0325円となる。)。
3  争点(2)(本件掲載文についての名誉棄損による不法行為の成否)について
(1)  本件掲載文は,年齢や居住する都道府県の記載のほか,原告自身のフェイスブックへのリンクも付けた上で,原告本人の実名を記載しており,本件掲載文の対象が原告であると認識できることは明らかである。
(2)ア  本件掲載文には,「しかしながら,女性Aが日本に来日し,共に生活したところ,女性は57歳男性のことが恐くなり逃げ出した」,「後に女性Bより『性的虐待を受けた』との勇気ある告発が当協会にもたらされ,それによって恐ろしい事実が判明致しました。」,「少なからず不安な気持ちを持って来日されるウクライナ人女性に,来日直後に性行為を幾度と強要し,人ではなく物のように扱った」との記載があるところ,これらは,原告が,結婚相手として来日したウクライナ人女性に対して,過度に性行為を要求したり,性的虐待を行ったという事実を摘示するものであり,原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
イ  また,本件掲載文には,「この57歳男性は,当初10代のウクライナ人女性との結婚を至急というかたちで希望」「57歳男性は,10代女性は絶対条件であり妥協はできないとの旨,要請を受けた」との記載があるところ,これらは,上記アで引用した記載と合わせて読めば,原告が,性行為や性的虐待の相手とするために紹介を求めているウクライナ人女性を10代の年若い女性に限っているとの事実を摘示するものであり,これらも原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
ウ  さらに,本件掲載文には,「訴訟が存在する点は事実でございますが,全く事実に反する金額を請求してきている」,「57歳男性側から悪意を持って雑誌社に事実無根の内容を話している」,「こういった理由がありウクライナ人女性と結婚してもすぐに帰国され,それを当協会の責任だと押し付けており,そういったことから事実無根の訴訟を提起してきた」との記載があるところ,訴訟の相手方が,当該訴訟の内容を事実無根であるなどと述べること自体は,通常は,一般人も紛争関係にある当事者間の一方的な発言としてみるので,社会的評価を低下させるものとまではいえないことが多いが,本件の場合には,その前後に上記ア及びイで引用した記載もあり,これらも合わせて読むと,原告が,自らの過度な性行為の要求や性的虐待によって紹介された結婚相手に帰国されてしまったにもかかわらず,その責任を被告に押し付けるために不当に訴訟を提起しているとの真実性の高まった印象を一般人に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させるものということができる。
(3)ア  そして,本件掲載文が,公共の利害に関する事実にかかるものではないこと,公益を図る目的をもって掲載されたものでもないことは,その記載内容から明らかである。
イ  また,被告は,原告がb誌を利用して被告に対する事実無根の中傷を行ったこと(本件記事)に対し,顧客が離れてしまわないように反論したものであると主張するが,原告がb誌を利用して本件記事を掲載させたという前提事実をうかがわせる証拠や事情はなく,また,仮にそのような事実があったとしても,本件掲載文は,原告を性的虐待を行う者であるかのように誹謗中傷するものであり,本件記事に対する反論としての相当性を欠いているから,その違法性が阻却される余地はないというべきである。
ウ  なお,本件掲載文の内容について,これが真実である,あるいは,真実であると信じるにつき相当の理由があったということについての立証もない。むしろ,E及びFの来日時等の様子を撮影した証拠(甲64ないし67)によれば,原告が同女らに性的虐待等をしていた様子はうかがわれず,本件掲載文の内容は虚偽のものであると疑われるところである。
(4)  以上によれば,本件掲載文について,原告に対する名誉棄損が成立する。
(5)  そして,本件掲載文の内容が原告を誹謗中傷するものであることのほか,そのほか本件記録から認められる一切の事情を踏まえると,本件掲載文によって受けた原告の精神的苦痛は大きく,これに対する慰謝料は100万円が相当である。
また,本件掲載文による不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用は,10万円が相当である。
(6)  以上によれば,原告は,被告に対し,不法行為に基づき,110万円の損害賠償の支払を求めることができる。
4  争点(3)(a社に事実無根の記事を掲載させようとしたという不法行為の成否)について
(1)  本件記事は,前記前提事実(5)のとおり,原告が提起した本件本訴事件を取り上げ,原告のコメント(被告と本件契約を締結するに至った経緯や,E及びFとの結婚の経緯,結末について述べるもののほか,「怪しい業者だとは思っていたのですが,リスクを背負わないと結果が出ないと思ってしまった。把握しているだけで,私の他に騙された人は4,5人います。」とのコメントがある。)を引用しつつ,被告による本件事業が被害者を生じさせるものであるとの内容を伝えるものであるところ,被告は,本件記事が事実無根のものであり,これは,原告が虚偽の内容を掲載するように仕組んで取材を受けたことによるものであるとして,不法行為が成立すると主張する。
(2)  この点,被告は,a社に対して虚偽の記事を掲載させるように取材対応したという原告の行為を問題とするものと解されるが(その意味で,当裁判所は,a社による本件記事について被告に対する名誉棄損等の不法行為が成立するか否かは判断しない。),本件においては,原告がa社に虚偽の記事を掲載させようとしたことをうかがわせる証拠はないから,被告の主張はその前提を欠くものとして,認めることができない。
なお,被告の主張は,a社からの取材に対して,原告が上記のコメントをしたことを問題とするものと解する余地もあるが,そうであるとしても,そのコメント内容は相当性を欠くものとはいえず,また,原告が,自らのコメントがそのまま掲載されることを予測し,認容していたことをうかがわせる証拠や事情も存在しないことから,被告の主張を上記のように解したとしても,これを認めることはできない。
(3)  したがって,原告が虚偽の内容を掲載するように仕組んで取材を受けたということを不法行為とする被告の請求は認められない。
5  争点(4)(捜査機関に虚偽の報告をしたという不法行為の成否)について
(1)  被告は,原告が,被告に不当に精神的圧力をかける目的で,警察に対して,被告の紹介する女性が売春婦であるとの虚偽の通知をして捜査を求めたと主張する。
(2)  この点,捜査機関等への被害の申告自体は法律上正当な行為であるから,容易に把握し得る客観的な事実や申告者自身の認識していた事実と著しく異なる被害事実を申告した場合であり,かつ,申告者において,その点に故意や重大な過失があると認められる場合に限って,不法行為が成立する場合があると解するのが相当である。
本件においては,弁論の全趣旨によれば,原告は,大阪府警に対し,被告につき,管理売春,詐欺,法(特定商取引に関する法律)違反,旅行業法違反等に関して被害相談をしたことが認められるが,かかる被害相談において,容易に把握し得る客観的な事実や原告自身の認識していた事実と著しく異なる被害事実を申告したというような事実を認めるに足りる証拠はない。
(3)  したがって,原告が捜査機関に虚偽の報告をしたということを不法行為とする被告の請求も認められない。
6  争点(5)(原告の本訴事件が不当訴訟であるという不法行為の成否)について
(1)  被告は,原告による本件本訴請求は,事実に基づかない虚偽の主張により不当に高額の請求を行うものであり,不当訴訟であると主張する。
(2)  この点,訴えの提起は,提訴者が当該訴訟において主張した権利または法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであり,同人がそのことを知りながら,または,通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り,相手方に対する違法な行為となると解するのが相当である。
本件においては,本件本訴請求が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くといえるような事情が何ら認められないばかりか,前記のとおり,そもそも原告の本件本訴請求は,そのほとんどにおいて理由があると認められるものであり,不当訴訟でないことは明らかである。
(3)  したがって,この点にかかる被告の請求も理由がない。
第4  結論
よって,原告の本訴請求は主文の範囲内で理由があるのでこれを認容し,原告のその余の本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第45部
(裁判官 郡司英明)

 

〈以下省略〉

 

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