
「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(16)平成30年 8月 9日 東京地裁 平29(ワ)18612号 清算金請求事件
「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(16)平成30年 8月 9日 東京地裁 平29(ワ)18612号 清算金請求事件
裁判年月日 平成30年 8月 9日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ワ)18612号
事件名 清算金請求事件
文献番号 2018WLJPCA08098007
裁判年月日 平成30年 8月 9日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ワ)18612号
事件名 清算金請求事件
文献番号 2018WLJPCA08098007
東京都港区〈以下省略〉
原告 株式会社ミスターフュージョン
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 中澤佑一
松本紘明
船越雄一
柴田佳佑
西郷豊成
延時千鶴子
岩本瑞穂
東京都豊島区〈以下省略〉
被告 グローバルパートナーズ株式会社
同代表者代表取締役 Y1
東京都練馬区〈以下省略〉
被告 Y1
上記両名訴訟代理人弁護士 大森剛
林友宏
主文
1 被告らは,原告に対し,連帯して1937万5426円及びこれに対する平成30年6月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告らは,原告に対し,連帯して2198万3800円及びこれに対する平成28年12月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が被告グローバルパートナーズ株式会社(以下「被告会社」という。)に対して,原告の取り扱うWebコンサルティングサービス等の商材について顧客を紹介する業務を委託し,その顧客紹介手数料の前払金を交付したが,被告会社においては,その後上記業務により清算日までに生じた顧客紹介手数料が上記前払金を大きく下回ったことから,その不足額を清算金として原告に返還すべき義務があるなどと主張して,被告会社及びその代表者として上記債務につき連帯保証人となっていた被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対し,当該合意に基づき,上記清算金残額2198万3800円及びこれに対する上記清算日の翌日である平成28年12月1日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実
本件の前提として,当事者間に争いのない事実又は後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実は,次のとおりである。
(1)ア 原告は,Webマーケティング等を業とする株式会社である。
イ 被告会社は,企業間取引に関する調査等を業とする株式会社であり,被告Y1は,被告会社の代表取締役である。
(2) 原告は,平成25年4月1日,被告会社との間で,次の内容の顧客紹介契約(以下「本件契約」という。)を締結した。(甲1)
ア 目的(第1条)
被告会社は,原告に対し,原告の取り扱うWebコンサルティングサービス,Webコンサルティング・アクセスログ解析,リスティング広告運用等の商材(以下「本件商材」という。)の導入及び契約見込の顧客(見込顧客)を紹介するものとする。なお,原告は,見込顧客に対し,本件商材の販売,勧誘等を行い,見込顧客との間で本件商材に係る契約が締結されるよう最善の努力を尽くすものとする。
イ 顧客紹介手数料(第2条)
(ア) 原告は,被告会社から紹介された見込顧客との間で,本件商材に係る契約を締結した場合,原告が見込顧客から受領する本件商材の利用料金の30パーセントに相当する顧客紹介手数料を被告会社に対して支払うものとする。なお,原告は,原告の責任及び費用負担において本件商材に係る契約の締結を行い,同契約に基づく原告の義務を誠実に遂行するものとする。(1項)
(イ) 顧客紹介手数料は,支払条件(原告が被告会社の紹介により見込み顧客との間で本件商材に関する契約を締結し,当該見込顧客から本件商材の利用料金の入金が確認できた場合をいう。)が満たされた日の属する月の末日締め,翌月末日(支払日が金融機関休業日の場合にはその前営業日とする。)までに,原告が被告会社の指定する金融機関の口座に振り込む方法により支払うものとする。(2項)
(ウ) 原告は,被告会社に対して本件契約に基づく金銭債務の支払を遅滞した場合,支払期日の翌日から完済に至るまで年14.5パーセント(365日の日割計算)の割合による遅延損害金を支払うものとする。(3項)
ウ 契約終了後の措置(第10条)
(ア) 本件契約が終了したときは,原告及び被告会社は,互いに有する債権債務を確定し,相手方からの請求により速やかにこれを支払い,本件契約に基づく債権債務関係を清算するものとする。なお,本件契約終了事由の如何を問わず,本件契約の終了日までに被告会社が原告に対し紹介した見込顧客を,本件契約に基づく顧客紹介手数料の支払対象とする。(1項)
(イ) 本件契約終了後も,第2条(顧客紹介手数料),第4条(秘密保持義務),第5条(権利譲渡の禁止),第8条(苦情処理),第9条(損害賠償等),第11条(誠実協議)及び第12条(合意管轄)の規定の効力は有効に存続するものとする。(2項)
(3)ア 原告は,平成28年6月29日,被告会社との間で,本件契約に関し,次の内容の覚書を取り交わし,その旨の合意(以下「本件合意」という。)をした。(甲2)
(ア) 被告会社は,平成28年6月1日から,その従業員の中から,あらかじめ原告と協議の上決定した者(対象従業員)に対して,本件契約に係る紹介業務を専属で遂行させるものとし,原告は,被告会社に対して,対象従業員による紹介業務遂行の対価(固定手数料)として,対象従業員1名につき月額50万円(税別)を顧客紹介手数料とは別で支払うものとする。(第1条1項,2項)
(イ) 原告は,被告会社に対し,平成28年7月1日(基準日)以降に支払期日が到来する本件契約に係る対価(固定手数料を含む。)の前払金として2500万円を支払う。(第1条3項)
(ウ) 原告は,平成28年11月末日(清算日)までに,基準日以降に支払期日が到来する本件契約に係る対価の総額が前払金額を超えた場合,当該超えた月分から,本件契約に基づき,被告会社に当該対価の支払を行うものとする。(第1条4項)
(エ) 被告会社は,清算日までに基準日以降に支払期日が到来する本件契約に係る対価の総額が前払金の額を超えなかった場合,その不足分を清算日付で原告に返還するものとする。(第1条5項)
イ 被告Y1は,上記アの際,上記覚書をもって,原告に対し,被告会社の上記ア(ウ)の返還債務について連帯保証をした。
ウ 原告は,平成28年6月30日,被告会社に対し,本件合意に基づく前払金として2500万円を支払った。
(4)ア 上記清算日である平成28年11月末日の時点で原告が被告会社に対して支払うべき本件契約に係る対価の額(ただし,後記(5)アの修正前の額)は,原告作成の支払明細書等によると,合計272万9002円(同年6月度78万4077円,同年7月度81万5259円,同年9月度85万3174円及び同年10月度27万6492円。なお,同年8月度の対価86万9981円は,同年9月30日に原告が被告会社に別途支払をしたため,これに含まれない。)であった。(甲4~7,11)
イ その後,原告は,被告会社に対し,本件合意に基づく清算金として,前払金2500万円から上記対価を控除した2227万0998円の返還を求めたが,被告会社から何らの返還もされなかったことから,被告会社に対し,平成29年2月21日到達の書面で,改めて上記清算金の返還を求めるとともに,その債務不履行を理由として,本件契約を解除するとの意思表示をした。(甲13,14)
ウ 被告会社は,平成29年3月31日,原告に対し,上記清算金の一部として27万0998円を返還した。
(5)ア 原告は,平成29年6月5日,本件訴訟を提起し,被告らに対し,上記清算金の未払額として2200万円の返還を求めたが,その後,平成28年6月度の対価のうち4万8600円の顧客紹介手数料について,上記支払明細書上3万2400円と誤って記載されており,1万6200円不足していることが判明したことから,平成30年3月26日受付けの訴えの変更申立書をもって,上記不足額を清算金から控除して請求額を2198万3800円に減縮した。
イ 原告が本件訴訟において被告らに開示した平成28年11月度から平成30年1月度までの支払明細書等によると,原告が被告会社の紹介により見込顧客との間で締結した契約に基づき,上記期間に当該顧客から受領した利用料金の30パーセントに相当する額は,別紙1の「金額」欄(ただし,上記期間に係る部分に限る。)記載のとおりである(このうち本件契約継続中の平成28年11月度から平成29年2月度までの額は,合計93万8365円となり,本件契約終了後の翌3月度から上記開示最終月の平成30年1月度までの額は合計289万1975円となる。)。(甲16,21)
ウ 被告会社は,後記主張のとおり,本件契約の終了後も,原告が被告会社の紹介した見込顧客から利用料金を受領する限り顧客紹介手数料が発生するなどとして,平成30年6月14日の本件口頭弁論期日で,原告に対し,平成28年11月度から平成30年4月度までの顧客紹介手数料459万6408円(別紙1の「金額」欄記載の各金員の合計。ただし,同年2月度から同年4月度までの額は原告の推計による。)に係る債権をもって,原告の本件請求債権と対当額で相殺するとの意思表示をした。
2 争点に関する当事者の主張
(1) 本件契約終了後の顧客紹介手数料支払義務の有無
(被告の主張)
本件契約第10条2項は,本件契約終了後も,顧客紹介手数料について定める第2条の規定の効力は有効に存続するものと規定していることから,本件契約終了後も顧客紹介手数料が発生することは明らかである。実質的にみても,原告は,被告会社の尽力によって見込顧客の紹介を受けることにより,当該顧客から継続的に利用料金を受領することができるのであり,被告会社は,この見込顧客の紹介をするために人的物的資源を投入していることから,この投下資本を回収する方法として,本件契約終了後であっても,原告が被告会社の紹介した顧客から利用料金を受領する限り,被告会社においても顧客紹介手数料を受け取ることができるよう,あえて契約終了後も顧客紹介手数料に係る規定が存続する旨が明記されたのである。かかる規定の趣旨からすると,本件契約終了後であっても,原告が被告会社の紹介した顧客から利用料金を受領する限り,顧客紹介手数料は発生するのであり,原告は,被告会社に対し,その支払義務を負うのである。そうすると,原告は,被告会社に対し,本件契約に基づき,平成28年11月度から平成30年4月度までの顧客紹介手数料として,別紙1の「金額」欄記載の各金員を,これに対応する「支払期限」欄記載の各支払期日限り支払う義務がある。
(原告の主張)
本件契約10条1項は,本件契約から生じる債権債務を清算することを定めているところ,その対象は,顧客紹介手数料のみであるから,その清算をもって顧客紹介手数料の支払義務は消滅し,以後顧客紹介手数料は発生しないことを定めたものにほかならない。この点,本件契約10条2項は,本件契約終了後も第2条の規定の効力が存続することを定めているが,その趣旨は,上記清算における支払先及び約定遅延損害金の率の存続を定めたものにすぎず,本件契約終了後も顧客紹介手数料が発生することを定めたものではない。実質的にみても,本件契約において被告会社の実施する業務は,顧客の紹介のみであり,実際に,顧客との間で契約の締結に至り,当該契約が続いていくかどうかは,原告の営業努力や本件商材の価値にかかっているのであり,これらに関わらない被告会社が本件契約終了後も,延々と顧客紹介手数料を受領し続けるというのは,不合理というほかはない。一般の人材紹介契約や継続的役務等の代理店契約でも報酬発生対象期間が設定されているのが通常である。これらによれば,本件契約終了後は顧客紹介手数料が発生することはないというべきである。
(2) 相殺禁止合意の有無
(原告の主張)
本件合意1条5項は,被告会社において清算金を清算日付で原告に返還するものと規定していることから,清算日である平成28年11月30日をもって返還額は確定し,その後に生じた事情を考慮することは予定されていないのである。すなわち,本件合意は,清算金額については,清算日までに生じた顧客手数料を清算の対象としてこれを自働債権とする相殺予約を定めたものであり,清算日以降に生じる顧客手数料を自働債権とする相殺は行わない旨の合意が含まれているものであるから,民法505条2項により,かかる相殺をすることは許されない。
(被告の主張)
原告の上記主張は否認し,争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件契約終了後の顧客紹介手数料支払義務の有無)について
(1) 本件契約は,前記のとおり,第10条1項において,その契約が終了したときには互いに有する債権債務を確定して速やかにこれを支払い,本件契約に基づく債権債務関係を清算すると定める一方,契約終了事由の如何を問わず,本件契約の終了日までに被告会社が原告に対して紹介した見込顧客を,本件契約に基づく顧客紹介手数料の支払対象とする旨定めるとともに,同条2項おいて,顧客紹介手数料について定める第2条の規定の効力は有効に存続するものとすると定めているのである。こうした規定の文言に照らすと,本件契約は,契約終了の時点で継続的な契約に基づき生じた債権債務関係を清算させるとした上で,その終了日までに被告会社が原告に対して紹介した見込顧客に係る顧客紹介手数料については,契約終了後も第2条の規定に基づき支払うものとすることを定めたものと解するのが相当である。
(2)ア これに対し,原告は,①本件契約10条1項において,その清算の対象となる債権債務は実際には顧客紹介手数料のみであるから,その清算をもって以後顧客紹介手数料は発生しないことを定めたものであり,他方で,同条2項において本件契約終了後も第2条の規定の効力が存続することを定めている趣旨は,上記清算における支払先及び約定遅延損害金の率の存続を定めたものにすぎず,契約終了後も顧客紹介手数料が発生することを定めたものでない,②実質的にみても,本件契約において被告会社の実施する業務は,顧客の紹介のみであり,実際に顧客との間で契約の締結に至り,これが続いていくかどうかは,原告の営業努力及び本件商材の価値にかかっているのであり,これに関わらない被告会社が本件契約終了後も延々と顧客紹介手数料を受け取り続けるというのは不合理というほかなく,一般の人材紹介契約等でも報酬発生対象期間が設定されているのが通常であるなどとして,本件契約終了後は顧客紹介手数料が発生することはないと主張する。
イ しかし,上記ア①の点についてみると,本件契約10条1項に関する原告の解釈は,同項が本文で契約終了時の清算義務について規定する一方,なお書で,契約終了事由の如何を問わず,その終了日までに被告会社が原告に対して紹介した見込顧客を,本件契約に基づく顧客紹介手数料の支払の対象とすることを明記していることに反する上,同条2項に関する原告の解釈も,同項が秘密保持条項等について定める他の規定とともに,顧客紹介手数料について定める第2条について,このうち支払方法や遅延損害金の約定に係る部分に限定することなく,契約終了後も有効に存続する対象として規定していることから採り得ないものといわざるを得ない。
ウ 上記ア②の点についてみても,本件契約における被告会社の業務の内容は,第1条の規定に照らし,原告に対し,本件商材に係る契約締結の見込みのある顧客を紹介することを内容とするものであり,その報酬に係る規定も,契約成立後,顧客から利用料金の入金があった段階でその一定割合を顧客紹介手数料として支払うという成功報酬型のものであるから,実際には,被告会社において,単に顧客を紹介するにとどまらず,その契約の成立に向けて尽力することまで予定されていたものとみられるのであり,そうであるからこそ,本件契約1条なお書及び2条1項なお書で,原告においても,被告会社の紹介した見込顧客について契約が締結されるよう最善を尽くすとともに,契約成立後も,当該契約に基づく義務を誠実に遂行することが規定されているのである。このことは,原告と被告会社の担当者の間で上記業務に関して取り交わされていた電子メールの記載(甲8)からも容易にうかがわれるところである。もともと原告が顧客に提供する本件商材に係るサービスは,その内容に照らして,一定期間継続的に提供することが予定されているものと認められるところ,本件契約は,上記のとおり,被告会社において紹介した顧客について契約が締結された後,当該契約が存続する限り,顧客から入金される利用料金の一定割合を報酬として受領することを条件として契約締結に向けた業務を行うことを内容とするものであり,報酬発生の対象期間は本件契約上限定されていないのであるから,その後に本件契約が事由の如何を問わず終了したとしても,その報酬請求権の範囲がこれにより左右されることなく,顧客から利用料金の入金がある限り,これに応じた報酬が発生すると解したとしても不合理なものとはいうことはできない。本件契約10条1項なお書及び2項は,上記のとおりその文言に照らし,このことを明確にする趣旨で規定されたものと解するのが当事者の合理的意思に沿うものと認められる。
エ これらによれば,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 以上によれば,本件契約終了後であっても,原告において被告会社の紹介した顧客から利用料金の入金がある限り,被告会社の顧客紹介手数料は発生すると認めるのが相当である。そうすると,前記のとおり,原告が被告会社に対して開示した平成28年11月度から平成30年4月度までの支払明細書等(甲16,21)によれば,原告が被告会社の紹介により見込顧客との間で締結した契約に基づき,上記期間に当該顧客から受領した利用料金の30パーセントに相当する額は,別紙1の「金額」欄(ただし,上記期間に係る部分に限る。)記載のとおりと認められるから,原告は,被告会社に対して,このうち本件契約継続中の平成28年11月度から平成29年2月度までに生じた顧客紹介手数料93万8365円のみならず,本件契約終了後の翌3月度から上記開示最終月の平成30年1月度までに生じた顧客紹介手数料289万1975円についても支払義務を負うことになる。また,翌2月度から口頭弁論終結前に支払期限が到来した同年4月度までに生じた顧客紹介手数料は,原告から資料が開示されていないため不明であるが,上記開示に係る期間中も月額の顧客紹介手数料が21万5000円を下回ることはなかったことから,上記期間も少なくとも同額を下回ることはなかったものと推認することができ,原告は,被告会社に対してその支払義務も負うというべきである。
2 争点(2)(相殺禁止合意の有無)について
(1) 原告は,本件合意は,第1条5項の規定に照らし,清算日までの顧客紹介手数料を清算の対象としてこれを自働債権とする相殺の予約を定めたものであり,清算日以降に生じる顧客紹介手数料を自働債権とする相殺をしない旨の合意が含まれていたから,かかる相殺をすることは許されないと主張する。
(2) しかし,本件合意は,将来発生する被告会社の顧客紹介手数料を前払することを内容とするものであるから,一定の期間経過後,その終了日において,その間に生じた顧客紹介手数料と清算することを当然に予定しているものであり,第1条5項は,その規定の文言からみても,かかる趣旨を確認的に規定したものにすぎず,これをもって,同規定による被告会社の清算金返還義務につき,清算日以降生じる顧客紹介手数料に係る債権と対当額で相殺することまで禁止したものと解することはできない。
(3) これらによれば,原告の上記主張は採用することはできない。
3 結論
以上によれば,原告は,被告会社に対し,顧客紹介手数料(報酬)として,別紙2の「金額」記載の各金員を,これに対応する「支払期限」欄記載の各期日限り支払う義務を負うところ,被告会社の原告に対する当該報酬債権を自働債権として,原告の本件請求債権と対当額で相殺すると,その相殺後の清算金の額は,別紙計算書のとおり,1937万5426円となる。
よって,原告の本件請求は,被告らに対し,本件合意に基づき,清算金1937万5426円及びこれに対する最終の相殺日の翌日である平成30年6月1日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
(裁判官 井出弘隆)
〈以下省略〉
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