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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(291)平成20年 3月28日 東京地裁 平17(ワ)13818号 損害賠償等請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(291)平成20年 3月28日 東京地裁 平17(ワ)13818号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成20年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)13818号
事件名  損害賠償等請求事件
文献番号  2008WLJPCA03288029

裁判年月日  平成20年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)13818号
事件名  損害賠償等請求事件
文献番号  2008WLJPCA03288029

東京都調布市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 小林幸与
大阪市〈以下省略〉
被告 朝日ユニバーサル貿易株式会社
同代表者代表取締役 A
千葉県市川市〈以下省略〉
被告 Y1
埼玉県朝霞市〈以下省略〉
被告 Y2
被告ら訴訟代理人弁護士 森仁至

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して5437万3000円及び内金4707万3000円に対する平成15年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は,被告らの負担とする。
3  この判決は,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  主位的請求 主文同旨
2  予備的請求 被告朝日ユニバーサル貿易株式会社は,原告に対し,4707万3000円及びこれに対する平成15年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
(主位的請求)
原告は,被告朝日ユニバーサル貿易株式会社(以下「被告会社」という。)の従業員である被告Y1及び同じく被告会社の従業員で東京支店第一事業部の部長である被告Y2らによる勧誘を受け,平成15年3月6日,被告会社との間に商品先物取引の委託契約(以下「本件委託契約」という。)を締結し,商品先物取引を行った。しかし,原告は,従前から統合失調症を発症しており,その後,平成16年9月15日には,保佐開始の審判もされている。
原告は,以上の事実経過等を前提として,本件委託契約が適合性の原則に違反するものであること,本件委託契約において,被告らが断定的判断の提供をしたこと,説明義務や新規委託者保護義務に違反したことなどを主張し,被告らによる不法行為に基づき,被告らに対し,この商品先物取引(以下「本件取引」という。)により失った預託金4707万3000円,慰謝料100万円及び弁護士費用630万円(着手金150万円,報酬金480万円),以上合計5437万3000円及び内金4707万3000円に対する不法行為が終了した日である平成15年6月12日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による損害金の支払を求める事案である。
(予備的請求)
原告は,①平成15年2月以前から統合失調症に罹患しており,先物取引の仕組やリスク,売買手法などを理解する能力がないことが明らかであったから,平成15年3月6日,原告と被告会社との間において締結された本件委託契約は,無効であることを主張し,②仮に,そうでないとしても,被告Y1及び同Y2は,「イラク戦争になったら金が急騰する。」とか,「初心者には必ず利益を出す。」などの断定的判断を提供して,原告に本件委託契約を締結させ,また,委託証拠金の意味合いや,先物取引の仕組など重要事項につき十分な説明と告知をしなかったとし,消費者契約法4条1項2号,同条2項に基づき,被告会社に対し,平成16年4月15日到達の内容証明郵便により,本件委託契約を取り消す旨の意思表示をしたと主張する。
そして,①ないし②の事実に基づき,本件委託契約が無効であること,あるいは,取り消されたことを前提として,不当利得返還請求権に基づき,被告会社が受領した預託金4707万3000円及びこれに対する本件委託契約が終了した日である平成15年6月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実
(1)原告について(甲1,甲17,弁論の全趣旨)
① 原告は,昭和37年4月,東京教育大学文学部に入学し,昭和41年3月に同大学を卒業後した。同年4月,同大学附属桐ヶ丘養護学校(現,筑波大学附属桐ヶ丘養護学校)に社会科教師として就職した。原告は,平成11年3月に定年退職するまで,同学校に勤務していた。
② 原告は,平成16年7月,東京家庭裁判所八王子支部に保佐開始の申立をし,同年9月15日,前記家庭裁判所において,保佐開始の審判を受けた。保佐人には,原告訴訟代理人弁護士小林幸与が選任されている。
(2)被告らについて
① 被告会社は,商品取引所法に基づく商品取引員であり,商品取引所に上場されている商品先物取引の受託等を業とする資本金10億円の株式会社である。
② 被告Y2は,被告会社東京支店第1営業部の部長であり,原告に商品先物取引の勧誘をし,原告から現金を受領した者である。
③ 被告Y1は,被告会社の営業社員であった者であり,平成15年2月ころ,原告に対し,最初に商品先物取引の勧誘をし,また,同年3月6日,原告との間において本件委託契約を締結させ,最初の証拠金を受領した者である。当時,同被告は,被告Y2の部下であった。
(3)原告と被告会社間の本件取引の概要について(甲3の1,甲3の2)
① 原告は,被告らの勧誘により,平成15年3月6日から同年7月1日までの間,「別紙建玉分析表」記載のとおり,「東工-金」,「東工-ガソリン」,「中部-ガソリン」,「東工-ガソリン」,「東工-灯油」及び「東穀コーン」について,商品先物取引を行った。
② 原告は,本件取引において,被告会社に対し,「別紙証拠金一覧表」記載のとおり,総額4710万円を預け,同年7月8日,2万7000円の返金を受けた。
③ 本件取引により,原告には,総額4707万3000円の損失が発生した。
2  原告の主張
(1)本件商品先物取引が開始された経緯について
① 原告は,平成15年2月ころ,被告Y1から,商品先物取引について,「イラク戦争になるので金が値上がりするチャンスだ。」などと電話や手紙によりしつこい勧誘を受けた。原告が6万円くらいなら取引をしてもよいと返事をしたところ,同年3月6日,原告の自宅に被告Y1が訪問してきた。
② 被告Y1から,原告に対し,商品先物取引について大まかな説明があったが,早口の説明で内容も難解であったため,原告には理解できなかった。しかし,原告は,Y1の「イラン戦争になったら金が急騰するから儲けられる。」「初心者には必ず利益を出す。」などと言われたことが記憶に残った。
③ その後,原告は,被告Y1に言われるままに商品先物取引の委託に関する約諾書等の書面に署名押印したが,その内容を理解して署名押印したものではない。原告は,署名押印後,被告Y1が同道した被告会社管理サービス部の社員であるBから,種々説明を受けたが,ほとんど理解できなかった。しかし,原告は,Bについては,原告の利益を守ってくれる立場の人と理解した。
(2)被告らの不法行為責任
①被告らの違法行為
被告らの不法行為については,勧誘当初から取引終了までを一連の行為としてとらえ,その間に行われた各種違法行為を全体的に評価して,一体的な不法行為とする考え方が正当である(以下「一体的不法行為構成」という。甲6)。
ア 適合性原則違反
取引勧誘者が顧客熟知義務を尽くさず,取引適格を欠く者に対して取引を勧誘し,あるいは,取引の受託を受けた場合には,これらの勧誘あるいは受託行為は,不法行為を構成する。原告は,被告らから勧誘を受けた平成15年2月以前から統合失調症に罹患していた。したがって,被告らによる勧誘は,適合性原則に違反している。
イ 断定的判断の提供
本件において,被告Y2及び同Y1は,原告に対し,「初心者には必ず利益を出す。」などと断定的判断を提供して勧誘をした。
ウ 説明義務違反
被告Y1,同Y2及びBは,先物取引の仕組やリスク等について,早口で簡単に説明しただけであるから,説明義務に違反している。
エ 新規委託者保護義務違反・過当売買
被告会社の規則によれば,初回取引から3か月間は,取引経験のない委託者の投下予定金額は,500万円未満までとされている。ところが,被告らは,原告に当初から1000万円以上の資金を投下させていた。
オ 無断売買ないし一任売買
商品先物取引が取扱業者の従業員に一任されると,顧客に不利な価格での取引の成立,過当売買,頻繁売買,その他,顧客の利益が害される危険性が高いこと等から,無断売買は勿論のこと,一任売買も禁止されている。
原告は,その能力からして自己の判断で具体的に注文できる筈はなく,本件取引は,いずれも無断ないし一任売買である。
②原告の損害
ア 原告の損失 4707万3000円
原告は,被告らの不法行為により,預けた金額と返戻された金額との差額4707万3000円の損害を受けた。
イ 慰謝料 100万円
原告は,被告らの不法行為により多額の金員を失い,このため甚大な精神的損害を被った。その慰謝料額は,100万円を下らない。
ウ 弁護士費用 630万円
原告は,本件訴訟代理人に対し,弁護士費用として,着手金150万円を支払った。また,成功報酬として,損害金の10パーセントを支払うことを約した。これらは,本件不法行為と相当因果関係がある損害である。
エ 以上によれば,原告の損害は,5437万3000円である。
(3)被告会社に対する不当利得返還請求権(予備的請求)
① 原告は,前記のとおり,平成15年2月以前から統合失調症に罹患し,平成16年9月15日には,保佐開始の審判を受けた。したがって,原告は,先物取引の仕組み,リスク,売買手法などを理解する能力を欠く者であることは明らかである。したがって,本件委託契約は,無効である。
② 仮に,そうでないとしても,原告に対する被告らの説明は,早口で大まかな内容に過ぎず,委託証拠金の意味合いの説明がなく,先物取引の仕組みやリスクなどの重要事項の説明も不十分であり,顧客理解の確認も怠っていた。したがって,被告らは,原告に対する重要事項ないし重要事項に関連する事項を告知することなく,本件委託契約を締結させたものである。また,前記のとおり,被告らは,確定的判断の提供をし,また,前記のとおり重要事項について不告知がある。
③ 原告は,平成16年4月14日付内容証明郵便により,消費者契約法4条1項2号,同条2項に基づき,本件委託契約の申込及び同契約に基づく個別注文を取り消す旨の意思表示をした。同意思表示は,同月15日に被告会社に到達した。
④ よって,原告は,被告会社に対し,4707万3000円の不当利得返還請求権を有する。
3  被告らの主張
(1)本件委託契約締結時の状況
① 原告は,平成15年3月6日,本件取引の開始前に,被告ら側から先物取引の危険性,投機性について,十分説明を受け,事前交付書面「商品先物取引委託のガイド」(乙1の1),その別冊(乙1の2)を受領した(乙1の3)。また,同じく商品先物取引の流れ,危険性を告知したステップ(乙2の1)を受領し(乙2の2),取引について受託準則(乙3の1)を受領したうえで,自己の判断と責任において取引することを理解した旨を,文書をもって確認した(乙3の2,乙4)。
また,原告は,申出書(乙6)により,資金に余裕があること,商品先物取引の仕組み,投機性,自己責任を確認した。原告は,この確認のとおり,注文は総て自らの意思で行っていた。したがって,被告らが原告の意思を確認せず,独断で取引をした事実は一切ない。
② しかも,同日は,原告が新規委託者であることから,営業管理サービス部部長のBが直接原告に面会して,先物取引の危険性,投機性,のみならず,委託のガイドについて,受託契約準則等の受領,追証について,また,元本保証のないこと,ストップ高安のことを理解しているか,について再度確認し,被告Y1は,その後,初めて初回の注文を受け付けた。
③ さらに,同日,本件取引開始当日,被告会社本社営業管理サービス部のCが原告に直接電話をして売買契約を詳しく報告するとともに,原告の理解の度合いを確認した(乙13)。
(2)アンケートによる確認
被告会社は,平成15年3月28日,慎重を期して商品取引理解度アンケート(乙8)を送付して,原告の理解度を確認した。また,平成15年5月12日にも,被告会社は,アンケート(乙9)を送付して,原告の理解度を確認した。
これによれば,原告が商品先物取引の仕組を理解して,自らの意思と責任において発注し,決済したことは確実である。また,その証拠の一つとして,原告による極めて多数回にわたる残高照会回答書合計34通が存在する。すなわち,原告は,各取引について事後にも確認済みである。
(3)原告の請求原因は,要するに,原告が適合性を有していないにもかかわらず被告らが勧誘したこと,断定的判断を提供したこと,被告ら側が必要な説明を怠り,本件取引について,手数料稼ぎのため,無断ないし不当取引をしたというに尽きるのであり,被告らは,これらの主張全部を否認する。
(4)原告は,被告Y1及び同Y2に対し,長く教員を勤め,大きな退職金を手にするとともに,兄弟で大金を相続し,原告はこれを受け取って現住所に転居したこと,その金で2階建マンションを建築し,その一室にオーナーとして居住し,他の部屋を賃貸して収入としていること,職業は,弟が経営する本多国際実業の顧問であることを話しており,資産家そのものであった。
そして,原告に直接に接した被告Y1,同Y2及びBは,原告に何らの異常も感じていなかった。乙15は,平成15年3月6日,Bと原告の会話を記録したものであるが,原告の応対は,正常であり,原告が通常の能力をもって被告Y1の説明を理解し,さらにBの説明を完全に理解して,本件取引を開始したことが現れているものである。
(5)原告は,平成15年3月6日,60万円を被告会社に預け入れ,金2月限10枚を買った。
翌日7日,被告Y1が,原告に対し,勧誘の電話を入れ,金の環境が良いので2000万円預からせてくださいと勧誘すると,原告は,そこまではないと答えた。これに対し,同被告がどれくらいでしょうかと尋ねると,原告は,半分くらいだなと答えた。そこで,同被告が1200万円はいかがですか,訊いたところ,原告は「分かった。小切手で用意できる。」と返事をした。被告Y1は,小切手を受け取ったことがなかったため,上司の被告Y2とともに原告方に赴いた。原告は,三井住友銀行つつじヶ丘支店振出の額面600万円の預手を1通のみ用意していたので,被告Y1は,用意した1200万円の預かり証を見せて,600万円の不足を申し出た。すると,原告は,電話一本でいけるから大丈夫と言い,被告Y1及び同Y2の車に乗り,3名で同支店へ向かった。同支店には,原告のみが入って手続をして,2通目の額面600万円の銀行小切手を被告Y1及び同Y2に交付した。この日,被告Y1は,原告から金200枚新規買いを受注し,これにより金2月原告200枚新規買いが成立し,合計の買いが210枚となった。
このように,原告は,電話一本で600万円の銀行預手を作成させるだけの資力と信用があり,これを目の前で被告Y1と同Y2に見せつけたのであり,両名が原告を資産家と考えたことは,当然である。
(6)原告は,被告会社の担当者である被告Y2,同Y1及びBに対し,自分がマンションと大きな金融資産を保有し,しっかりした会社の取締役であり,銀行に電話一本で銀行預手を発行させるなど,万全の資力があることを誇示し,その後も,残高照会書多数,建玉確認書等々に淀みなく署名押印して,被告会社に交付している。
これらは,総て原告が被告らに対し,原告が十分な能力者であることを示し,また,その印象を強化させる行為である。したがって,現民法21条の趣旨に照らし,本件取引は,完全に有効であり,また,仮に一部に問題があるとしても,大幅な過失相殺が必要である。
第3  当裁判所の判断
1  原告の経歴について
甲1,甲9,甲16,甲17,甲55,甲69,証人D,証人E,原告本人,弁論の全趣旨によれば,原告の経歴について,以下の事実が認められる。
(1)原告は,昭和○年○月○日,父Fと母Gの間の長男として出生した。
(2)原告は,昭和32年3月,都立新宿高校を卒業した後,昭和35年ころから統合失調症を発症して,不眠,不安,緊張感,思考障害が出現し,千葉市内の病院で7か月間入院した。その後,昭和51年まで外来通院し,治療を受けていた。
(3)原告は,昭和37年4月,東京教育大学文学部に入学し,昭和41年3月に同大学を卒業後した。そして,同年4月から同大学附属桐ヶ丘養護学校(現,筑波大学附属桐ヶ丘養護学校)に社会科教師として就職し,平成11年3月に定年退職するまで勤務した。
(4)原告は,昭和51年,37歳のときに,見合い結婚をしたが,7か月程度で離婚した。
(5)昭和52年には,症状が悪化したため,別の病院で受診したが,主治医との折り合いが悪く,3か月で他県の病院に転院し,前記養護学校を定年退職するまで,加療を受けていた。
(6)原告は,前記養護学校を定年退職した後,実弟のHが経営する本多国際実業株式会社(以下「本多国際実業」という。)の取締役に就任したが,名目上の取締役であり,同会社の経営には,全く関与していなかった。
(7)原告は,平成16年7月,東京家庭裁判所八王子支部に保佐開始の申立をしたこともあり,同月,本多国際実業の取締役を辞任した。
2  商品取引に関する原告の適合性について
(1)甲17及び原告本人によれば,原告は,本件取引について,ほとんど正確な記憶を有していないことが認められる。
この原告の記憶の欠如については,その当時,原告が先物取引について理解や判断ができず,現実に即した行動がとれなかったことが,原告の記憶欠如という形となって表れたと解することができる(甲69,証人D)。
(2)また,前記認定のとおり,原告は,昭和35年ころから統合失調症を発症し,その後も入院や通院を繰り返していた。そして,平成15年7月1日に本件取引が終了した後,平成16年9月15日には,保佐開始の審判がされた(甲1)。
そして,甲69及び証人Dによれば,同証人は,平成12年夏に原告を診察して以来,その治療に当たってきたが,本件取引が行われた平成15年2月ころから同年7月ころにかけての間における原告の症状は,慢性疾患であることから,原告の保佐開始の裁判のために鑑定書(以下「本件鑑定書」という。甲9)を作成した平成16年9月6日当時と同様の状態であり,良いとはいえないと判断していることが認められる。
また,本件鑑定書の鑑定事項は,①精神障害の有無,内容及び障害の程度,②自己の財産を管理・処分する能力,③回復の可能性であり,これに対する鑑定主文は,①について,統合失調症,程度は中程度,②について,常に援助が必要,③回復の可能性は極めて低い,となっている(甲9)。
なお,甲29の1ないし甲54の2は,いずれも原告により作成された意味不明の文書であり,原告が統合失調症に罹患していること推認させるものである。
(3)以上によれば,原告には,本件取引の当時,自己の財産を管理・処分する能力はなく,加えて,その能力が回復する可能性もなかったことが認められる。したがって,原告には,商品取引に関する原告の適合性が欠如していたことが認められる。
(4)もっとも,被告らは,平成15年3月6日,本件取引の開始前に,原告に対し,事前交付書面「商品先物取引委託のガイド」(乙1の1)等を交付し,これに基づき,先物取引の危険性,投機性などについて十分に説明したこと,原告から,自己の判断と責任において取引することを理解した旨の文書を徴求したこと,加えて,当日は,営業管理サービス部部長のBも直接原告に面会し,先物取引の危険性,投機性を説明し,委託のガイドに基づき,追証について説明したり,元本保証のないことや,ストップ高安のことを理解しているか等について再度確認した旨を主張する。
そして,原告提出の申出書(乙6)にも,原告には,資金に余裕があり,商品先物取引の仕組をよく理解し,危険性や投機性を十分認識したうえで,自分の意志と責任において500万円以上の取引を申し出る旨の記載があること,加えて,同日の午後4時過ぎには,大阪本社営業管理サービス部のCが原告宅に架電し,同日の契約内容や,その後送付される売買報告書を確認してもらいたいことなどを伝えたことも認められる(乙13)。
さらに,同月28日及び同年5月12日には,原告から被告会社にアンケートの回答が送付されたこと(乙8,乙9),また,原告から返送された残高照合回答書も,合計34通存在することも認められる(乙10の1ないし乙10の30,乙11の1ないし乙11の4)。
(5)しかしながら,既に認定したように,原告の統合失調症は,本件委託契約を締結した平成15年3月の時点においても,本件鑑定書が作成された平成16年9月6日当時と同様の状態であったから,前記被告らの説明等により,原告が本件取引の仕組や内容を理解していたということはできない。
3  原告の統合失調症の症状について,被告らに認識があったか,あるいは,容易に認識することができたか。
(1)証人Dによれば,原告は,自分というものが壊れてしまう病気に罹患しているから,相手の言葉に関して自分の判断力できちんと対応できる人ではないから,話をしていけば,意思能力がはっきりしている人だとは,認識しないと思うとのことである。
この点,被告Y1とBは,平成15年3月6日,180分間,原告と話をしていたこと,また,翌日7日には,被告Y1と同Y2が,やはり180分間,原告と話をしていたことが認められるが(乙43),証人Dによれば,このような長時間面談していれば,意思能力がはっきりしない人だと判断できるとし,世間話ではなく,金の話をしている訳であるから,表情や語調により,理解しているか,表面的に言っているかは,十分に判断できるとのことである。
他方,証人Dは,普通の人は,こういうものに投資すれば儲かりますよと言われた場合,どういう仕組で儲かるのか,説明を求めるものであるが,原告の場合は,多分,「はい。」または「いいえ。」としか言えないだろうと証言している。
さらに,証人Eによれば,原告の精神的な異常さは,話を始めれば直ぐに分かるとのことで,不意にテレパシーの話になったりして,明らかに異常であると誰でも気付くとのことである。
(2)この点,被告Y1本人,同Y2本人及び証人Bは,原告が統合失調症であることには全く気付かなかった旨を供述し,あるいは,証言するが,前記Dの証言によれば,180分も話せば意思能力がはっきりしないことは,前記のとおり,十分に判断できるとのことである。
そこで,検討するに,平成15年3月6日,Cが原告に架電した際に録音したテープの反訳録(乙13)によれば,原告は,ほとんど,「はい。」または「いいえ。」としか答えていない。このことは,前記証人Dの証言にも一致するところである。なお,被告らは,乙13の証拠説明書において,原告が「売買報告書が来ることは了解しており,今現在特に質問はなく,今後の通知をよろしく頼む」としっかり返答していると説明しているが,この反訳書には,そのような記述はない。多少,似ているとすれば,原告が「ただ,あのう,通知,またよろしくお願いします。」と言っている箇所だけである。また,同日,Bが電話での会話を録音したテープの反訳もあるが(甲70,乙15),原告の発言は,ほとんどが,「はい。」というものであり,やはり,証人Dが説明したように,この反訳をもって,内容を理解していたということは,到底できないものである。仮に,原告に十分な理解力があれば,商品先物取引について,もっと具体的な質問や具体的な論点について,説明を求めるなどの発言があって然るべきである。
そして,被告Y1及び同Y2らは,原告がこの程度の会話しかできないことを現認していた訳であるから,本件取引の内容を理解していないことを十分知り得たはずであり,仮に知り得なかったとしても,被告Y1及び同Y2らには,原告の本件取引に対する適合性を確認するうえで,過失があったというべきである。
(3)また,原告は,平成15年3月6日,証拠金1200万円を差し入れる約束をしたが,翌日,被告Y1及び同Y2が原告方に赴いたところ,銀行預手で600万円しか用意していなかったことについては,当事者間に争いはない。
そこで,原告が1200万円という前日の約束を忘れて,半額の600万円しか用意をしなかったこと自体,その忘却した600万円という金額からして,原告が正常な能力を有していないことが窺われるところであるが,さらに,1200万円の約束だったことを被告Y1及び同Y2らから指摘されて,何らの抵抗もなく,直ちに600万円の銀行預手を準備した点についても,被告Y1及び同Y2らにおいて,その金銭感覚の著しい軽率さに留意する必要があったというべきである。
(4)他方,被告らは,原告が残高照合回答書を,きちんと返送してきていたことについて,原告が取引内容を理解していた証拠である旨を主張するが,返送するだけのことなら誰にでもできることであり,そのことから当然に,原告が商品先物取引を理解していたということはできない。
(5)なお,甲16,甲67,証人Eによれば,原告宅は,キッチン,ダイニング及び居間が続いたワンルームという構造であるが,平成15年10月ころに,同証人が原告宅を訪問した際,キッチンのシンクはごみの山,ダイニングの床には新聞紙の山,居間のテーブル,ソファーには雑誌類が乱暴に重ねられ,鉛筆の非常に細かい文字でびっしりと書き込まれた紙切れが辺り構わず散らばっているという異常な状態であったとのことであり,その状態が継続しているとのことである。
この点,被告らは,自分達が原告宅を訪問したときには,部屋は,片付いていたと供述するが,甲69及び証人Dによれば,原告の統合失調症は,慢性疾患であり,被告らが訪問した平成15年3月当時も,保佐開始の審判があった平成16年9月15日ころも,その病状には変化がないとのことである。したがって,被告らが,原告宅を訪れた際にも,部屋が異常に散らかっていることを現認していたものと解するのが相当であり,その異常な乱雑ぶりから,被告らにおいても,原告が何らかの精神的疾患に罹患していることを認識し得たというべきである。
さらに,取引開始の当日,原告は,被告らから要請され,翌日には,1200万円を預託することを約束したが,実際には,1200万円の約束を失念して,600万円のみを用意しただけであった。しかし,そのことを被告らから指摘されるや,原告は,直ちに銀行から600万円を下ろしてきたことが認められる。したがって,原告においては,自ら明確な投資金額を決めることなく,被告らから言われるままに,金員の用意をしていることは,明らかである。そして,この事実は,被告らも現認したところであり,被告らにおいても,既にこの時点で,原告には,あるべき金銭感覚が欠如していること認識するに至っていたというべきである。
4  以上によれば,原告において,商品先物取引に適合性がないことは明らかであり,また,被告らは,その事実を知っていたというべきであるから,その余の事実について判断するまでもなく,被告らは,不法行為に基づき,本件取引により原告に与えた損害を賠償する義務がある。
そして,原告に生じた損害は,まず,原告が被告会社に預託した証拠金合計4710万円から返戻された2万7000円を控除した金額であるから,この関係では,4707万3000円であることが認められる。次に,原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝としては,100万円をもって相当というべきである。また,弁護士費用としても,本件は,商品先物取引という複雑な内容を含む事案であり,原告も統合失調症に罹患し,解決に至るまでに相当な困難があったことが認められるから,通常の場合よりも加算するのが相当であるから,630万円を認容するべきである。
5  よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の主位的請求には理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 鯉沼聡)

 

〈以下省略〉

 

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