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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(273)平成21年 7月10日 札幌高裁 平19(ネ)85号 損害賠償請求控訴事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(273)平成21年 7月10日 札幌高裁 平19(ネ)85号 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日  平成21年 7月10日  裁判所名  札幌高裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ネ)85号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  原判決取消  文献番号  2009WLJPCA07109005

要旨
◆被控訴人パチンコ業者が、出店を計画していた土地の近くに、控訴人地元パチンコ業者らによって児童遊園を設置された上、控訴人社会福祉法人にこれを寄附されたため、パチンコ店開業に必要な風営法上の許可を得ることができなくなったとして、共同不法行為に基づき、本件不許可により被った損害の賠償を求めたところ、差戻前控訴審が、被控訴人の請求を認容した一審判決を取り消してこれを棄却したのに対し、上告審が、控訴人地元パチンコ業者らは風営法の規制を利用して被控訴人の開業を妨害し、その営業の自由を侵害したから不法行為を構成するとして、差戻前控訴審判決を破棄差戻しとした事案の差戻後控訴審において、寄附の準備行為が出店計画の相当前から行われていたなど、上告審が前提とした事実関係とは異なる事実を認定した上で、本件寄附は違法とはいえないとして、請求を認容した第一審判決を取り消し、差戻前控訴審判決と同一結論に達した事例

裁判経過
上告受理審 平成19年 3月20日 最高裁第三小法廷 判決 平17(受)277号 損害賠償請求事件
差戻前控訴審 平成16年10月28日 札幌高裁 判決 平15(ネ)61号
第一審 平成14年12月19日 札幌地裁 判決 平12(ワ)529号 損害賠償請求事件

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
民法709条
民法719条
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条2項
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律3条1項
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律4条2項2号
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例3条1項2号オ(昭30北海道条例77号)
民事訴訟法325条3項

裁判年月日  平成21年 7月10日  裁判所名  札幌高裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ネ)85号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  原判決取消  文献番号  2009WLJPCA07109005

主文

1  原判決を取り消す。
2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用はそのすべてを被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
主文同旨
第2  事案の概要
1  本件は,北海道稚内市内にパチンコ店出店を計画していた被控訴人が,同市内のパチンコ業者である控訴人事業者ら並びに控訴人社会福祉法人A(以下「控訴人A」という。)において,被控訴人の出店を阻止する目的で,控訴人事業者らが児童遊園を設置するなどしたため,被控訴人の出店予定地におけるパチンコ店の営業につき風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)3条1項の許可を受けることができなくなり,損害を被ったと主張して,控訴人らに(亡Cは,第1審係属中に死亡し,同人の相続人である控訴人C1,同C2,同C3及び同C4が,本件訴訟を承継した。)に対し,共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
一審判決は,控訴人らによる不法行為の成立を認め,控訴人らに対し,請求どおり,連帯して総額10億0414万1150円(ただし,控訴人C1,同C3及び同C4については2億5103万5287円の限度で)及び遅延損害金の支払を命じたので,控訴人らは控訴した。
差戻前控訴審判決は,控訴人事業者らが,控訴人Aに対し,上記児童遊園用地の寄附を申し入れた時点では,上記パチンコ店出店計画は未だ確定しておらず,控訴人事業者らが,被控訴人の出店計画を殊更に阻止するために,上記寄附を申し入れ,被控訴人の営業の自由を侵害したとは評価できず,上記寄附には違法性がないとして,一審判決を取り消し,被控訴人の請求を棄却した。
これに対し,被控訴人が,上告の提起及び上告受理の申立てをしたところ,上告審は,上告は棄却したものの,最高裁判所の判例違反を主張する上告受理の申立てを受理した上,上記寄附は,被控訴人の事業計画が上記出店予定地の購入により実行段階に入った後に行われたものというべきであり,風営法の規制を利用し,競業者である被控訴人のパチンコ店開業を妨害したものというべきであるから,控訴人事業者らによる上記寄附は被控訴人の営業の自由を侵害するものであり,違法性を有し,不法行為を構成するとして,差戻前控訴審判決を破棄し,控訴人事業者らとの関係では被控訴人が被った損害について,控訴人Aとの関係では被控訴人に対する不法行為の成否等について更に審理を尽くさせるために当審に差し戻した。
2  前提事実
以下の事実は当事者間に争いがないか又は以下に掲げる証拠若しくは弁論の全趣旨により明らかに認められる。
(1)  被控訴人は,北海道内において16店の遊技場を経営する株式会社である。控訴人事業者らは,いずれも稚内市内においてパチンコ店を経営していた者である。控訴人Aは,稚内市内において福祉事業を営む社会福祉法人である。
(2)  風営法4条2項2号は,同法3条1項の許可の申請に係る営業所が都道府県の条例で定める地域内にあるときは,公安委員会は,その許可をしてはならないと定める。これを受けて,風営法施行条例(昭和30年北海道条例第77号)は,風営法4条2項2号にいう都道府県の条例で定める地域について,児童福祉法7条の児童福祉施設の敷地の周囲100メートルの区域内と定める。
(3)  平成10年ころ,名古屋地区に本拠を有するパチンコ業者が稚内市内にパチンコ店を出店する計画を進めたことがあった。この計画は見送られることとなったが,控訴人事業者らは,このようなパチンコ業者の進出を阻止するために,同年5月15日,稚内市ac丁目d番eの土地(以下「本件海側公園土地」という。)を購入し,同日その移転登記を了した。(甲121)
(4)  控訴人事業者らは,平成10年7月16日,稚内市ab丁目f番g及び同所同番hの各土地(以下「本件山側公園土地」といい,本件海側公園土地と併せて「本件事業者土地」という。)を購入し,同年9月29日,その移転登記を了した。(甲118,119,乙21)
(5)  被控訴人は,平成11年4月1日,株式会社Xから,下記の12筆の各土地(以下「本件土地」という。)を代金2億7000万円で購入し(以下「本件売買契約」という。),同月8日,その移転登記を了した。(甲24,104ないし115)

稚内市ab丁目i番j,同所k番l,同所m番,同所n番o,同所p番q,同所r番s,同市ac丁目t番,同所u番v,同所w番x,同所y番z,同所d番e,同所f番g
(6)  R組の代表者であるDは,平成11年4月12日付けで,本件山側公園土地に児童福祉施設等を建築する確認申請をし,同月20日,同申請に基づく建築確認がされた。また,Dは,同月13日,本件海側公園土地に公衆便所を建築する確認申請をし,同月16日,同申請に基づく建築確認がされた。(乙3,9)
その後間もなく,上記各建築確認に基づく児童福祉施設等の建築が開始された(以下「本件建築工事」という。)。
(7)  控訴人事業者らは,平成11年5月14日,控訴人Aに対し,本件事業者土地3筆,同土地上の上記(6)記載の各建物及び遊具一式等を寄附し(丙6),同月21日,本件事業者土地について,控訴人Aへの共有者全員持分全部移転登記を了し,同月27日には,上記各建物について,控訴人A名義の所有権保存登記を了した。(丙6,甲118ないし122。以下「本件寄附」という。)
(8)  控訴人Aは,平成11年5月28日,北海道知事に対し,本件事業者土地上の児童遊園(以下「本件児童遊園」という。)の設置運営を定款の事業目的に追加する旨の定款変更について認可の申請をし,同年6月1日,その認可を受けた。
(9)  控訴人Aは,平成11年6月7日,北海道知事に対し,本件児童遊園設置についての認可の申請をした。
(10)  被控訴人は,平成11年6月14日付けで,北海道旭川方面公安委員会に対し,本件土地上に建築を予定するパチンコ店(以下「本件パチンコ店」という。)の営業について,風俗営業の許可申請をした。(甲2,弁論の全趣旨)
(11)  北海道知事は,平成11年7月14日,控訴人Aに対し,本件児童遊園の設置を認可した(以下「本件認可」という。)。
(12)  北海道旭川方面公安委員会は,平成11年8月6日,上記(10)の許可申請について,本件パチンコ店の敷地の周囲100メートルの区域内に,児童福祉法7条所定の児童福祉施設(児童厚生施設・児童遊園)が,同年7月14日付けで認可されたことを理由として,不許可とした。(甲2)
3  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  控訴人らの不法行為の成否
(被控訴人の主張)
被控訴人は,憲法22条1項により営業の自由を保障されており,自己の好むときに,稚内市内の本件土地を含むすべての土地において,パチンコ業の事業分野へ,新規事業者として参入する自由を有している。したがって,被控訴人が本件土地に店舗を建設してパチンコ営業を行おうとしたのを,他の者が何らかの方法で開業を阻止し,損害を与えた場合には,営業の自由を妨害する行為として違法性が認められる。
控訴人事業者らは,被控訴人が本件土地において本件パチンコ店を開業するのを阻止することを主たる目的とし,まず,児童遊園の施設を建設設置し,控訴人Aに本件寄附の申入れをし,次いで,控訴人Aは,控訴人事業者らの上記意図を十分に承知していながら,その寄附を受け入れ,定款改正をした上,児童福祉法上の児童福祉施設である児童厚生施設としての児童遊園の認可申請を行い,北海道知事が本件認可を与え,これによって被控訴人の出店予定地である本件土地を風営法に基づく条例による指定営業禁止区域に該当させ,被控訴人の営業を不許可にさせるという方法によって,被控訴人による開業を阻止したものである。
かかる控訴人らの行為は,そもそも被控訴人が自由競争に参加しようとするのを阻止するものであり,被控訴人の営業の自由を妨害するものであるから,被控訴人に対する共同不法行為を構成する。
本件認可自体は適法である。さらには,それに至るまでの,控訴人事業者らによる児童遊園の建設設置,控訴人Aへの寄附,控訴人Aによる定款の改正及び児童遊園設置の認可申請行為も,個々の行為としては適法である。しかし,それらが,結局において,被控訴人の開業を阻止することを主たる目的とし,開業阻止の方法の一手段である以上,全体として控訴人らの行為は違法性を帯びることになる。
(控訴人らの主張)
控訴人事業者らによる本件寄附に違法性が認められるとすれば,それは,被控訴人がパチンコ店営業目的の下に本件土地を取得したことを知り,それを知った控訴人事業者らが,営業妨害目的で突貫工事をして,控訴人Aに本件寄附を行い,他方,控訴人Aは,必要のない児童遊園であるが,控訴人事業者らの上記営業妨害目的に協力をして本件認可を得たというような例外的な場合に限られる。
しかし,控訴人事業者らは,被控訴人が本件土地を取得する平成11年4月1日以前から,控訴人Aに本件児童遊園を寄附することを決定して準備行為を進めていた。そうだとすれば,その準備行為が始まった後に被控訴人が本件パチンコ店開業のために本件土地を取得したとしても,控訴人事業者らのその後の本件寄附は,先に行われた寄附の決定の単なる延長にすぎないのであるから,これを自由競争の範囲を逸脱する違法行為と評価することはできない。
また,控訴人事業者らが,パチンコ業者が本件土地を購入したとの事実を知ったのは,早くても平成11年5月20日ころである。よって,控訴人事業者らは,本件寄附を行った時点において,被控訴人が本件土地を取得したことを知らなかったのであり,そうだとすれば,そのことだけでも,上記準備行為の有無にかかわらず,控訴人らの不法行為責任は否定される。
控訴人Aは,控訴人事業者らから,本件寄附を含めて平成10年から平成12年まで一連の寄附を受けており,本件寄附も,稚内市a地区を,児童,高齢者及び地域住民が豊かな社会環境を実現できる地区にするという展望のもとに受けたものである。また,本件寄附は,被控訴人が本件土地を取得する以前の平成11年1月ころから,控訴人事業者らからの打診を受けて始まったのであるから,控訴人Aが被控訴人による本件パチンコ店開業を妨害する意思のもとに本件寄附を受け入れることなどあり得ず,その後も,本件寄附の受入れ決定まで,被控訴人が本件土地を取得したことを認識したことはない。
したがって,控訴人Aに不法行為責任が発生することはない。
(被控訴人の反論)
控訴人らは,本件寄附行為についてその準備行為がなされたことを主張し,本件土地取得により被侵害利益が発生してから準備行為が始められていない以上,違法性は認められない旨主張するが,違法行為は本件寄附であってその準備行為ではないのであるから,そもそも本件寄附の準備行為がいつなされたかということは,違法性の判断にとって何らの意味を持つものではない。上告審判決は,準備行為の存在を強調する控訴人らの主張について,全く判示せず,本件寄附の前に控訴人らが本件売買契約の存在を知っていれば十分であり,準備行為の有無は不法行為の成否に関係ないと判断したものと解される。
また,控訴人事業者らは,少なくとも,不特定の同業者によるパチンコ店進出を阻止する目的で,本件児童遊園の設置及び控訴人Aへの寄附を計画し,その後本件売買契約が行われたことを知って本件寄附を実行しているのであるから,仮に控訴人らが主張する準備行為開始の後に本件売買契約が行われたとしても,被控訴人に対する不法行為の成立が妨げられることはない。
仮に控訴人らが主張する準備行為の存在により,不法行為の成立が否定されるとしても,被控訴人が本件土地を取得した平成11年4月1日以前に本件寄附の準備行為がなされた事実はない。控訴人事業者らは,上記4月1日か又はその日から同月5日までの間に,上記土地取得の事実を知り,大至急,本件児童遊園を建設して,控訴人Aに本件寄附を行ったものであり,本件寄附の主たる目的が,被控訴人による本件パチンコ店の新規開店を阻止することにあったことは明らかであって,控訴人Aも,控訴人の上記意図を十分承知しながら,必要もないのに,本件寄附を受け入れ,控訴人事業者らに協力したものである。
よって,控訴人らの行為が被控訴人に対する不法行為となることは明らかである。
(2)  控訴人事業者ら個々の責任について
(控訴人事業者らの主張)
AC遊技場組合(以下「組合」という。)は,権利能力なき社団としての性格を有しており,本件寄附は,権利能力なき社団としての同組合の行為と見るべきものであり,個々の組合員である控訴人事業者らに個別に不法行為の要件が認められない限り,同人らが自己の財産をもって責任を負うべきではなく,本件においてその立証はない。
(被控訴人の主張)
組合が権利能力なき社団であることの主張,立証はまったくなされていない。また,寄附された土地は,控訴人事業者ら全員の共有名義であり,共有者全員の承諾なくして寄附できないこと等からすれば,その全員が本件寄附の趣旨を知っていたことは明らかであり,控訴人事業者ら全員につき不法行為責任が発生する。
(3)  損害
(被控訴人の主張)
被控訴人が,控訴人らにより本件パチンコ店の開業を阻止されたことによって被った損害は,同店舗で開業したならば将来において得られたであろう利益の合計である。その利益は,本件パチンコ店と同等の市場規模を有する,被控訴人が北海道内で開業する4店舗の営業実績,具体的には,税引前利益の平均額に基づいて算定すべきであり,予定通り,平成11年8月に開業することができたのであれば,毎年2億8926万円の営業利益をあげることができたと認められる。そして,本件パチンコ店は,開業後少なくとも50年は継続できるであろうと合理的に推定される。よって,ライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると,次のとおり,損害額は合計52億8070万円となる。
289,260,000×18.2559≒5,280,700,000
また,被控訴人は,本訴の追行を被控訴人代理人らに委任し,その成功報酬の支払を約したが,そのうち8000万円は,控訴人らの不法行為と相当因果関係を有し,損害として控訴人らに請求し得る。
よって,控訴人らは,共同不法行為者として,被控訴人に対し,連帯して上記逸失利益及び弁護士費用相当額の損害賠償義務を負うが,被控訴人は,その一部請求として,一審判決の認容額と同額の10億0414万1150円(逸失利益につき一部である9億2414万1150円,弁護士費用については全額である8000万円)及びこれに対する不法行為の日である本件パチンコ店の営業不能が確定した後の日である平成11年8月7日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(控訴人らの主張)
ア そもそも物的損害については,その物の交換価値の減少分を賠償すれば足り,これとは別にその使用価値の賠償を求めることはできない。また,そもそも,法人について自然人と同じような意味での逸失利益を観念することはできない。
イ 被控訴人の決算報告書を見る限り,被控訴人は本件パチンコ店開店の有無にかかわらず順調な収益をあげており,本件パチンコ店を開業できなかったことによる損害は発生していない。
ウ 新設店舗開業による利益を既設店舗の営業実績から推計するのは相当でない。また,比較対照としての既設店舗を,被控訴人が主張する4店舗とすることは,種々の条件の違いを考慮すると相当でない。
(4)  過失相殺
(控訴人事業者らの主張)
仮に損害が認定されたとしても,被控訴人には,以下のとおり,損害の発生及び拡大について相当な落ち度があり,大幅な過失相殺が適用されるべきである。
ア 被控訴人の責任者であるEは,平成11年3月31日に本件土地を見に行き,翌日である同年4月1日に本件土地を購入し,ほどなく総額2億7000万円の売買代金を支払っており,全くと言っていいほど事前調査をしていない。また,同月8日に,本件建築工事が児童遊園設置のためのものであるかもしれないと考えながら,民間の児童遊園が認可になるはずがないとの主観的認識のもとに,本件パチンコ店建築を進めている。
イ Eは,平成11年6月3日に本件児童遊園が建設されていることを新聞報道により知りながら,本件パチンコ店の建築工事を続行しており,その工事を中止する指示をしたのは,本件児童遊園に関する本件認可のあった同年7月14日になってからであった。
ウ 児童遊園の存在によりパチンコ開業の目的を達せられないのであれば,本件売買契約の錯誤無効の主張や,瑕疵担保責任の請求等も可能であり,又は,本件土地を転売することも可能であった。
エ 以上によれば,本件パチンコ店開業が不許可になる蓋然性があるにもかかわらず,敢えて本件パチンコ店を建築した被控訴人は,損害の極小化について全く努力しようとしなかったものである。
(被控訴人の主張)
被控訴人の行う本件パチンコ店建築は営業の自由に基づく適法行為なのであるから,不法行為が行われることを懸念して適法行為を中止する理由はなく,中止しなかったことをもって過失であると非難されるいわれはない。
また,児童遊園の設置例は過去においてもほぼ皆無に等しく,被控訴人が児童遊園が認可されることはないと信じた判断に過失はないし,そもそも控訴人らの不法行為は故意によるものであるから,過失相殺は適当ではない。
なお,被控訴人の請求する損害は逸失利益であり,本件土地の買入代金ではないから,控訴人事業者らの主張は前提を欠く。
第3  当裁判所の判断
1  当審における審理の対象
差戻審である当審は,上告審が破棄理由とした事実上及び法律上の判断に拘束されるが(民事訴訟法325条3項),他方,従前の控訴審の審理の続行として,破棄理由とされた事項に限らず,事件全般にわたって審理することができ,破棄判断の基礎となった事実関係を審理の上これを変更することができるのであるから,上告審が破棄判断をするに当たりその基礎として立脚した事実関係の確定については,上記拘束力は生じない(最高裁判所昭和36年11月28日第三小法廷判決・民集15巻10号2593頁参照)。したがって,当審は,上告審判決の前提となった差戻前控訴審判決の確定した事実関係と異なる事実関係を認定した上で,差戻前控訴審判決と同一の結論に達することもできる。
控訴人事業者らは,上告審が前提とした差戻前控訴審が確定した事実関係,すなわち,被控訴人が本件パチンコ店の出店予定地である本件土地を取得した後に,これを知った控訴人事業者らが本件児童遊園用地を控訴人Aに寄附したという事実関係を前提にするならば,上告審の判断は正しいことを認めている。しかしながら,控訴人事業者らは,①被控訴人が出店予定地を取得する前から,控訴人Aに対し,児童遊園を寄附する旨決定し,その準備行為を行っていた旨主張し,原審が確定していない上記事実関係を前提にするならば,控訴人らの行為を自由競争を逸脱する違法行為と評価することはできず,また,②差戻前控訴審が確定した,被控訴人が出店予定地を取得した後,間もなく控訴人事業者らはそのことを知り,平成11年4月6日に,控訴人Aに寄附の意向を伝えたとの事実認定は誤っており,控訴人事業者らがこれを知ったのは同年5月以降のことであるから,控訴人らの本件寄附は被控訴人のパチンコ店開業を妨害する違法行為とはいえない旨主張し,控訴人Aも同旨主張すると解される。
よって,当審においては,上告審が再度の審理を求めた事項に加えて,原審が確定した事実関係に,控訴人らが主張するような変更を加えるべきか否か,変更したとして,その変更された事実関係に基づくならば,控訴人事業者らの不法行為責任を認めた上告審判決の結論は相当かどうかも,併せて審理の対象とする。
なお,被控訴人は,上告審は,控訴人らが主張する準備行為の存在いかんにかかわらず,本件売買契約がなされたことを知って本件寄附が行われた以上,不法行為は成立する旨判示したと主張するが,上告審判決が原審の確定した事実関係の概要等として判示する事実関係には,本件売買契約成立以前の本件寄附の準備行為の有無は含まれておらず,差戻前控訴審判決を破棄するに至ったその判断部分を見ても,本件売買契約締結の事実を知った控訴人事業者らが,風営法の規制を利用して本件パチンコ店開設を妨害する目的で本件寄附を申し入れた行為が,被控訴人の営業の自由を侵害すると判示するのみであり,本件寄附の準備行為が,控訴人事業者らが本件売買行為を知る前から行われていた場合にも,同様の結論となるかどうかについての判断は,示されていないというべきである。よって,上記被控訴人の主張は採用できない。
2  認定事実
前記前提事実に後掲証拠及び弁論の全趣旨を合わせると,以下の事実を認めることができる。
(1)  組合は,北海道宗谷支庁管内にあるパチンコ遊技場業者をもって組織する団体であり,平成10年に創立30周年を迎えた。組合は,創立30周年記念事業として,社会福祉に貢献することを考え,組合事務局長であるFを窓口として,平成10年4月,控訴人Aに対し,精神障害者のためのグループホーム用地購入費用864万円の寄附を申し入れた。控訴人A側の窓口は,常務理事兼施設長であるGであった。控訴人Aは,同年6月ころ,上記寄附を受け入れた。控訴人Aは,これにより,本件海側公園土地の近くの土地を購入し,建物建築資金を借入金及び補助金により調達して,グループホームを建築した。この寄附を通じて,FとGとの間では,今後も控訴人Aが行う社会福祉事業に,組合が協力していきたいとの話がなされた。(一審証人G,一審控訴人B1代表者本人F(以下「一審本人F」という。),当審控訴人B1代表者本人F(以下「当審本人F」という。))
(2)  組合は,控訴人事業者らの共有名義で,平成10年5月15日に本件海側公園土地,同年7月16日に本件山側公園土地を購入した。本件海側公園土地は,新規パチンコ店進出を阻止するために購入されたものであったが,本件山側公園土地は,2筆合わせても547.76m2に過ぎず,パチンコ店を建築する用地としては敷地面積が不足しており,その使途として,組合は,上記(1)のグループホーム用地資金寄附で繋がりを持った控訴人Aへの寄附を考えていた。(前提事実,乙21,当審本人F)
(3)  Fは,平成11年1月ころ,Gに対し,児童公園を寄附したいと申し入れた。Gは,検討する旨Fに回答し,かかる寄附を受け入れることが可能かどうかを調査することとした。Gは,調査の結果,児童福祉法に基づく児童厚生施設たる児童遊園(児童福祉法7条1項,40条)としてであれば,寄附を受け入れることが可能であると判断した。そこで,Gは,児童遊園であれば受入れ可能である旨Fに話した。(一審本人F,当審本人F,一審証人G)
(4)  Dは,Fから,平成11年1月ころ,R組で児童遊園建設を請け負う依頼を受け,同年2月初旬,宗谷支庁を訪れ,社会福祉課のH主事から児童遊園について説明を受け,その際,「標準的児童遊園設置運営要綱」と題する書面の交付を受けた。同要綱によれば,児童遊園の敷地は原則として330m2以上であり,標準的設備として,ブランコ,砂場などの遊具のほか,トイレや飲料水設備等を備えることが要求され,また,児童の遊びを指導する者を置くことも要求されていた(そのための管理棟の設置も必要となる場合もあり得る。)。なお,その後,Gも,宗谷支庁の担当者のもとを訪れ,児童遊園の設置基準等について説明を受けている。Dは,その後も,同年5月一杯くらいまで,何度か児童遊園設置の件で宗谷支庁を訪問しており,宗谷支庁においても,平成11年3月ないし5月ころにDが来庁し,児童遊園の設置基準について照会がなされたこと,その際,Dが,「ある慈善家が施設に寄付するため組に造営を依頼してきた」旨説明したとの記録が残されている。(乙16,17,丙49,一審証人G,差戻前控訴審証人D,当審証人D)
(5)  Dは,宗谷支庁で受けた説明や受領した書面に基づき,児童遊園設置に必要な遊具の見積りを,平成11年2月10日ころ,S商事に依頼し,同月22日付けで,同社を通じて遊具メーカーであるT産業から見積書を受け取った。(乙18の1,2,19,20,23,差戻前控訴審証人D,当審証人I,当審証人D)
(6)  一級建築士であるJは,平成11年2月ころ,R組から,本件児童遊園に必要なトイレ及び管理者が常駐するための管理棟の設計を依頼されて設計を始め,同年3月,Jはこれを正式に受注した。Jは,基本設計は自ら行ったが,実施設計は外注した。基本設計には3週間,実施設計には3週間で,全部で合計約6週間を要する。設計図は完成し,同年3月20日ころ,Jは,これをR組に交付した。(乙34ないし37,当審証人J,差戻前控訴審証人D)
(7)  Fは,有限会社Uの代表者Kの息子から,平成10年10月か11月ころ,有限会社Uの経営するホームセンター「AB」の用地として,本件海側公園土地を買い受けるか又は賃借したいとの申入れを受けた。Fは,この件を組合に諮ったところ,本件海側公園土地は,前記の目的で時価より高い金額で購入しているので,転売が望ましいということとなり,Fは,Kに対して,賃貸は難しい旨伝えた。その後,Kは,大規模小売店舗法が大規模小売店舗立地法に変更になることから,その前に店舗開設の届け出だけでもしようと考え,Fにそのための書類作成の了解を求め,Fは,一存でこれを了承した。上記届け出には,店舗開設予定地にその旨の看板を立てた写真を提出する必要があった。そこで,有限会社Uは,平成11年2月25日,V株式会社を通じて,稚内市で看板業を営む株式会社Wに,上記看板の製作を依頼した。株式会社Wでは,「第二種大規模小売店舗 設置者名㈱U 表示年月日平成11年2月26日」という記載のある看板を作成し,同月26日,本件海側公園土地にこれを持って行った。当時はまだ雪が深く,上記看板を雪にさして何カ所かで写真を撮影しただけで,雪を掘って地面に固定することはなかった。撮影の後,その看板は,株式会社Wが自社に持ち帰り,倉庫に保管したが,その後見当たらなくなった。有限会社Uは,上記写真を添えて,同年3月2日,宗谷支庁を経由して北海道知事に対し,完成予定日を平成12年3月2日とするAB開設を内容とする第二種大規模小売店舗届出書を提出した。なお,Kは,上記写真撮影について,撮影後にFに事後報告した。(甲12,127,128,乙26,差戻前控訴審証人K,一審本人F,当審証人L)
(8)  その後,Z信用金庫から,Kに対し,株式会社Xが所有する本件土地の一部を同信金の融資金で買ってくれないかとの話しが持ち込まれた。Kは,この話の方に興味を示し,本件海側公園土地を買い取る話はそれ以上進展しなかった。Fは,平成11年3月20日ころ,Kからその話を聞いた。(甲127,差戻前控訴審証人K,一審本人F)
(9)  Fは,平成11年3月20日ころ,株式会社Xが廃業し,同社が所有する本件土地が売りに出されるとの噂を聞き,知り合いの不動産業者,取引のあるZ信用金庫,建設会社等を通じて,買主に関する情報を収集し,同業者であるパチンコ店が買主かどうかを調査したが,その時は上記噂以上に詳しい情報は得られなかった。(一審本人F,当審本人F)
(10)  Fは,平成11年3月20日ころ,Gに,本件児童遊園の寄附について非公式の申入れを行い,Gは,同月21日,控訴人AのN理事長に,上記申入れの話があることを告げた。同理事長は,理事会での正式決定に向けて具体的な話を詰めるよう,Gに指示をした。Gは,その旨をFに伝え,これを機に,本件児童遊園の設置及び本件寄附に向けた動きが具体化されることとなった。(一審本人F,一審証人G)
(11)  なお,本件寄附の態様について,金銭で寄附を受け,控訴人Aが自ら児童遊園を設置することも可能であったが,その事務作業が煩瑣であるため,Gは,Fに対して,児童遊園の設備付設済みの土地の寄附を求め,Fもこれを了承した。また,控訴人Aとしては,本件児童遊園の寄附を受け入れてこれを運営するに当たって,事業の追加に伴う定款変更を要するところ,Gは,宗谷支庁の行政指導により,少なくとも,受入施設に建築物が含まれる場合には,定款変更申請の際にその検査済証の交付を受けることが必要と考えていた。(丙2,5,一審証人G)
(12)  R組は,平成11年3月22日,本件児童遊園設置のため,本件海側公園土地につき,測量会社に頼んで測量を行った。当時はまだ積雪があったため,測量は簡易な測量にとどまった。測量には,R組の専務取締役であるIが立ち会った。(乙41,42,当審証人I)
(13)  R組は,平成11年3月24日,組合に対して,本件児童遊園の施設(建物,トイレ,遊具等)新設工事の見積書を提出した(乙5ないし8)。4通の見積書の内容は,2289万円の「a東児童遊園施設(遊具,修景施設)新設工事」(乙5),609万円の「a児童遊園(遊具)新設工事」(乙6),2984万1000円の「a児童遊園(建築)新設工事」(乙7),1170万7500円の「a東児童遊園施設トイレ新設工事」(乙8)であり,その総合計金額は7052万8500円となる。R組と組合との間では,同年4月6日,工事名を「a児童遊園・a東児童遊園新築工事」,請負金額を合計7000万円とする工事請負契約が締結された(乙22)。
(14)  株式会社Wの部長兼工場長であるLは,平成11年3月31日,控訴人BのM社長を通じて,組合から,本件児童遊園設置を示す「建設予定地」と記載された看板2基の製作及び設置を依頼され,同年4月1日これを設置した。その後,Lは,同月7日,同じく上記M社長を通じて,組合から,「児童公園建設用地 完成予定5月初旬」と記載された看板2基の製作及び設置を頼まれ,同日中に従前の看板の上に取り付ける形でこれを設置した。(乙38,39,当審証人L,当審本人F,差戻前控訴審証人D)
(15)  被控訴人は,かねてより,稚内市内にパチンコ店を出店することを考え,稚内市内の不動産業者を通じ,そのための用地を探していたところ,候補地の情報が入った。被控訴人の取締役であるEは,被控訴人代表者とともに,平成11年3月13日,上記土地を見るため,稚内市を訪れたが,同土地単独では面積が足りず,隣接地の取得や借用が必要であったところ,これもできず,被控訴人は,この件は断念した。(甲210,一審証人E,当審証人E)
(16)  その後,平成11年3月中に,被控訴人は,稚内市内の不動産業者から,本件土地が売りに出されるとの情報を得た。本件土地の所有者である株式会社Xの手形決済期限が同月末であり,同月中に本件土地の売買が決まらないと手形が不渡りとなるとのことだったので,Eは,被控訴人代表者を伴って,同月31日に稚内市を訪れ,現地を見た。その上で,被控訴人は,翌日である同年4月1日,本件土地につき本件売買契約を締結した。そして,同月8日には,Eが再び稚内市を訪れ,残金決済を行い,本件土地の移転登記を了した。(前提事実,甲210,一審証人E,当審証人E)
(17)  組合は,控訴人Aに対し,平成11年4月6日,正式に本件児童遊園寄附の申入れを行い,控訴人Aでは,これを受けて緊急の常任理事会で検討がなされたが,同会では,受入れをするかどうかは理事会で審議することし,それまではいかなる約束もできない旨が組合に伝えられた。そして,同年5月10日,組合から控訴人Aに対して,本件寄附の申入文書が提出され,同文書に基づき,同日,組合の理事ら及び控訴人Aの常務理事らとの間で事前協議がなされ,同月13日,理事会において審議の上で本件寄附を受け入れることが可決され,同月14日本件寄附が成立した。(前提事実,丙6,一審証人G)
(18)  組合から平成11年5月10日提出された「社会福祉事業に対する寄付の申し入れ(案)」と題する書面には,「最近,道内資本の最大手が大規模出店の噂があり,当AC遊技場組合としても無視出来ないも(の)です。」,「更に大規模な出店はこれまでの組合の努力が無に等しいものになるだけでなく,一層の射幸心を煽る営業展開が必然的となり地域環境にとっても問題であります。」,「当組合として,a地区を遊技場の施設エリヤとしてでなく,住民と子供に豊かな社会環境を実現できる地区にしたいと考え」,「児童福祉法の第7条の児童福祉施設に該当する「児童遊園(児童厚生施設)」を建設いたしました。」との記載がある。そして,同日の事前協議に参加した控訴人AのN理事長は,その場で,「とかくの噂が出ている昨今,何かがあるのではとの憶測が生まれたり,悪印象をもたれたりすることは双方にとって好ましくない」との見解を述べている。また,同月13日の控訴人Aの理事会の席では,本件土地へのパチンコ店出店の可能性が話題に上り,出店阻止戦略に控訴人Aが利用されるのではないかとの疑念も出されたが,最終的には,本件寄附の申入れを組合の善意として純粋に受け止めると共に,本件寄附を控訴人Aの福祉事業が飛躍的に発展する契機にしようとの意見が大勢を占め,本件寄附を受け入れることが決定された。(丙6)
(19)  R組は,平成11年4月6日,組合との間で,本件建築工事請負契約を締結した後,同月12日に本件山側公園土地に児童福祉施設等,同月13日に本件海側公園土地に公衆便所を建築する確認申請をした。本件海側公園土地の公衆便所については,同月16日,本件山側公園土地の児童福祉施設等については,同月20日,建築確認が行われ,その後間もなく本件建築工事が開始され,工事完成の後,同年5月11日には,本件海側公園土地の建物の,同月18日には,本件山側公園土地の建物の,それぞれ検査済証が交付された。(前提事実,乙4,10,22)
3  事実認定の補足説明
(1)  被控訴人は,本件寄附の準備行為が平成11年4月以前に行われていたことを認めるに足る証拠はないとして,そもそも準備行為の存在自体を否定し,前記認定事実中,準備行為に関する認定事実につき,次のとおり主張する。
ア 認定事実(2)について
本件山側公園土地と本件海側公園土地の購入目的に違いはなく,本件山側公園土地についても,同業大手のパチンコ業者の新規開業の妨害を目的とするものであった。Fは,一審において,本件山側公園土地を含めて,その取得目的が大手パチンコ店進出を阻止する目的であった旨供述している。
イ 認定事実(3)について
控訴人らは,Gが,児童公園ではなく児童遊園であれば寄附を受け入れることが可能であると考えたと主張するが,社会福祉法人たる控訴人Aは,基本財産としてではなく,運用財産としてであれば,児童遊園としてではなく児童公園として受け入れ,周辺児童の「遊び場」として開放してこれを使用させることも可能であったのだから,上記控訴人らの主張は前提を欠く。敢えて児童遊園として寄附を受け入れたのは,控訴人事業者らの要請に応えて,被控訴人のパチンコ店出店を阻止するためである。
ウ 認定事実(4)について
Dと宗谷支庁との面談経過に関する宗谷支庁作成にかかる丙第49号証には,Dが来庁したのは「平成11年3月から5月頃」と記載されているにすぎない。「3月から5月頃」との表現は,4月中のいずれかの日であると解すべきであり,また,これによれば,少なくとも,控訴人らが主張する2月訪問の事実は否定される。
エ 認定事実(5)について
当審証人I及び同証人Dは,平成11年2月10日ころに遊具の見積りを依頼したと供述するが,一審本人Fは,当時は本件事業者土地のうち海側公園土地まで寄附するかどうかは未確定であった旨供述し(12頁),また,一審証人Gは,その時点で遊具の中味についての打ち合わせはなかった旨供述する(13頁)から,遊具につき見積りを依頼することができるはずがない。また,S商事を通じた見積依頼であれば,T産業名義の見積書ではなく,S商事の取り分を加えたS商事名義の見積書になるはずである。
オ 認定事実(6)について
控訴人事業者らは,Jが平成11年3月に本件児童遊園の建物設計を受注した証拠として,受注記録(乙37)を提出するが,平成19年1月19日作成の陳述書(乙34)において,Jは,受注日を示す書面は残っていない旨述べている。また,受注記録中,本件児童遊園関係の受注のみ時点が記載されており,しかも,月日ではなく年月が記載されているのは不自然である。現地調査に行った日につき,Jは,尋問の際当初4月初めであった旨述べた後に3月初めと言い直している。J供述にかかる当時の積雪量が実際の積雪量と異なる。外注を用いれば,1週間もあれば設計図は完成できる。
カ 認定事実(7)について
売買等の約束もないのに,写真撮影をするためだけに看板を立てることはあり得ないし,また,代金支払済みの看板につきいつの間にか見当たらなくなったというのも無責任極まりない。また,平成11年4月7日に,組合によって「児童公園建設用地」との看板が建てられるまでは,Kや本件海側公園土地の向かいで店舗を営むOらが,有限会社Uが設置した前記看板が設置されているのを現認している。
キ 認定事実(12)について
控訴人事業者らは,I証言の裏付証拠として,Iが当時付けていた手帳(乙42)を提出する。しかし,差戻前控訴審証人Dは,当時の出来事につき作業日報等はなかったので作業員の記憶に基づいて供述した旨述べており(25頁),矛盾する。
ク 認定事実(13)について
平成11年3月24日に作成されたとされるR組作成の本件児童遊園施設新築の見積書(乙5,7,8)及び同年4月6日に作成されたとされるその工事請負契約書(乙22)には,それらの作成日以後に工事等の内容が変更になった(甲133,218)にもかかわらず,変更後の工事等の内容が記載されていることからすれば,上記各見積書及び契約書は,実際には,同年4月13日以降(乙7)又は同月22日以降(乙5,8,22)に作成された文書の日付を遡らせたものである。
ケ 認定事実(14)について
本件海側公園土地に「建設予定地」というだけの看板を立てても何の意味もなく,かかる看板の制作依頼があったこと自体考えがたく,当審証人Lの供述,その陳述書の記載及びその裏付証拠(乙38,39)に信用性はない。
(2)  しかしながら,被控訴人の以上アないしケの主張には,次のとおり,いずれも理由がない。
ア Fは,一審において,「いずれにしても,これらの土地というのは,今回購入した経緯としては,大手に進出されるならこちらで取得しといたほうがいいという,そういう見地から買っておいたということでよろしいですか。」という質問に対して,「はい。そうです。」とは答えている。(一審本人F),しかし,その答えに続いて,Fは,「先方のほうからたまたまそういう転売の話がありましたので,買いました。」と供述しており,これは明らかに本件海側公園土地を念頭においた供述と認められ,上記「はい。そうです。」が,本件山側公園土地の取得目的が同業者進出を阻止する目的であったことを明確に認める発言であると認めるのは相当でない。そして,Fは,当審において,本件山側公園土地購入の目的は,寄附であり,パチンコ店阻止目的ではないと明確に供述している(当審本人F)。また,本件山側公園土地は,①その購入時期が本件海側公園土地よりも約2か月後であること,②土地の広さがパチンコ店を開設するには狭すぎること,③妨害目的で買ったとすれば,組合が,購入当時から児童遊園に関する距離規制を知っており,かつ,株式会社Xが現に会社を営む本件土地がパチンコ店に売られる可能性を認識していたこととなるが,平成10年7月16日当時に組合がそのような認識を有していたというには無理があることなどからすれば,当審におけるFの上記供述は信用できる。
以上によれば,一審における上記F供述を根拠に,本件山側公園土地の取得目的がパチンコ店進出阻止目的であったとする被控訴人の主張は,採用できない。
イ 被控訴人が主張するように,控訴人Aが,運用財産として,児童遊園ではない児童公園を保有することは,法的に不可能ではない。しかし,本件寄附の目的が,控訴人Aが行う児童福祉事業に協力していきたいということであれば,控訴人Aとしては,本件寄附によって新たにこれまで定款上の目的にもなかった児童に関する事業を営んでいくことを意味し,そうなると,定款を変更した上,その事業の用に供する本件寄附の対象となる土地を,基本財産として受け入れ,これを前提に,監督官庁から定款変更の認可を得る必要があったと認められる。したがって,Gが,基本財産として本件寄附を受け入れるためには児童遊園でなければならないと考えたとすれば,その判断は相当であったというべきである。そうすると,運用財産たる「児童公園」として受け入れれば十分な本件寄附を,控訴人事業者らが敢えて「児童遊園」として受け入れることにより,パチンコ店出店を阻止しようとしたとの被控訴人の主張は,その前提を欠き,採用できない。
ウ 丙第49号証の「3月から5月頃」との表現は,その期間中のいずれかの時点という意味ではなく,その間に複数回にわたってという意味と解するのが相当であり,丙第49号証の「児童遊園の設置認可に係る経過」には,「H11 3~5月ころ」の次欄に「4.12」(4月12日)の本件児童遊園の確認申請の記載があることからも,そのことは明らかである。また,上記記載は,面談の記録が残っているのは,平成11年3ないし5月ころであったとの趣旨と解すべきであって,同年2月にDが宗谷支庁を訪れたことを否定する趣旨とまで解することはできない。
エ T産業の見積書(乙19)について,見積書の依頼がS商事を通して行われたとしても,T産業が直接R組宛の見積書を作成することはあり得ないことではない。S商事の取り分は別途支払われれば足りる。また,遊具について,寄附を受ける側の控訴人Aとの打ち合わせは必ずしも必要ではないし,本件海側公園土地の寄附が正式に決まっていなかったとしても,その準備行為として,遊具の見積りを行うことはあり得る。
オ Jが,乙第34号証の陳述書において,乙第37号証の存在を認識しながら受注日を示す書面が残っていないと供述したとしても,Jが請負契約書など明確な日付の分かる書面がないという意味でそう述べたとも考えられ,乙第37号証のような作業日誌がそれに当たらないと考えて上記供述をしたとすれば矛盾はない。
受注記録中,本件児童遊園関係の受注のみ時点が記載されている点,及び受注記録は1年単位で作成され,かつ「月日」欄とされているのに敢えて年である「11」と月である「3」の記載がなされている点は,確かに不自然であり,この記載は,工事内容等の記載時点よりも後に書き込まれた可能性が高く,この記載をもとに平成11年3月における発注の事実を認定することはできない。しかしながら,上記時点以外の本件児童遊園の建物の設計にかかる上記受注記録の記載は,建築確認日が一致するなど,その内容からしても,実際になされた受注を記載したものというべきである。そして,Jの設計に基づく建築確認申請がなされたのが,平成11年4月12日及び同月13日であることと,設計に要する期間とを併せ考慮するならば,同月1日以後に受注したと考えるのは無理であり,その受注は,Jが供述するようにそれ以前であったと認めるのが相当である。
なお,Jの尋問における被控訴人が主張する程度の言い間違い,記憶違いは,著しく不自然ではなく,それだけでJの証言全体の信用性を失わせるものではない。設計図完成に要する期間が一週間であるとする被控訴人の主張は,これを認めるに足る証拠はない。
カ AB開設に関する看板の製作設置に関する株式会社Wの作業日報(乙26)によれば,その製作に関する記載はあるが,その設置作業に関する記載はなく,組合が平成11年4月1日及び同月7日に設置したと主張する看板に関する作業日報(乙38,39)には,設置,取付作業がなされた旨の記載があることも併せ考慮するならば,ABの看板については,これを設置することなく写真撮影のみ行ったとのLの供述(乙26,当審証人L)は信用することができる。これに対して,ABの看板が4月7日まで設置されていたということについては,K(甲127,差戻前控訴審証人K)の供述,Pの供述(甲211,当審証人P)しかなく,その信用性を裏付けるに足る供述以外の証拠はない。また,本件海側公園土地を,組合から購入又は賃借できるかどうかについては未定であったが,法律の改正前に届け出をしなければならなかったことはK自身認めており,だとすれば,届出書提出に必要な写真撮影だけのために看板を製作することは決してあり得ないことではなく,かかる目的であれば,目的を達した代金1万5000円(乙26)に過ぎない看板の処理について,有限会社Uが関心を抱かず,株式会社Wでもその保管に意を用いないこともあり得ないことではない。
以上によれば,上記ABの看板は,写真撮影目的のみで作成され,写真撮影後直ちに株式会社Wが持ち帰って倉庫に保管していたと認定するのが相当である。
キ 差戻前控訴審において,証人Dは,作業員の作業日報等はない旨供述しているが(25頁),乙第42号証がIの個人的備忘録であると認められることなどからして,Dが上記証言時にその存在を認識していなかったからといって,乙第42号証の記載が直ちに虚偽記載であるということはできない。
ク(ア) Dは,乙第22号証の請負契約書の内容であると被控訴人が主張する2枚の「施設一覧表」は,平成11年秋ころに作成された資料が誤って契約書添付書類として提出されたものである旨供述しているところ(乙64,当審証人D),乙第22号証の請負契約書には割印がないことからすれば,同一覧表は平成11年4月6日になされた請負契約の内容をなすとは認められず,後日作成された資料が誤って添付されて証拠提出されたとの上記Dの供述は信用でき,この点に関する被控訴人の主張には理由がない。
(イ) 次に,平成11年3月24日付でR組が作成したとされる乙第5,第7,第8号証の作成日付について検討する。
(ウ) 以下に掲げる証拠によれば,次の事実が認められる。
a 本件海側公園土地に設置予定のa東児童遊園の遊具及び修景施設の平成11年3月24日付見積書(乙5)において,遊具の記載は,木製コンビネーション遊具1基,スプリング遊具2基及び砂場となっている。
b 本件海側公園土地に設置予定のトイレの建築計画概要書(甲218)記載の建物配置図によれば,遊具は,上記aとは異なり,木製コンビネーションは記載されておらず,その代わりに,富士型スベリ台,鉄棒(3連),2人用ブランコ,回転トリカゴが記載されている。
c 最終的に,a東児童遊園に設置された遊具は,上記aと同じ,木製コンビネーション遊具1基,スプリング遊具2基及び砂場であった(丙6)。
d a東児童遊園のトイレの平成11年3月24日付見積書(乙8)において,建築面積は21.6m2となっている。
e 上記dのトイレの建築計画概要書(甲218)によれば,建築面積について,いったんは35.10m2で建築確認を申請し確認を得た後,間もなくこれを21.6m2に変更し,最終的に寄附された上記トイレの面積は21.6m2となっている(丙6)。
f 本件山側公園土地に設置予定のa児童遊園の管理棟の平成11年3月24日付見積書(乙7)において,建築面積は97.20m2となっている。
g 上記fの建物の建築計画概要書(甲133)によれば,建築面積について,いったんは174.96m2で建築確認を申請し確認を得た後,間もなくこれを97.20m2に変更し,最終的に寄附された管理棟の面積はさらに狭い77.76m2となっている(丙6)。
(エ) 上記認定したところによれば,乙第5,第7,第8号証が作成されたのは,本件売買契約の後の上記各変更がなされた後であり,その作成日付は,後日遡って記載されたものであるかにも思われる。
この点,控訴人らは,トイレ及び管理棟については,当初からの計画がいったん大規模なものに変更された後,再度当初計画されたものに戻ったのであるから,上記各見積書の内容が再変更後の建物と一致するのは当然であり,遊具については,見積段階で既に計画が変更されており,見積もりは変更後の計画を反映しているにもかかわらず,建築概要計画書の配置図は,上記変更前の計画を反映したものが誤って提出された旨主張し,Dも同旨供述する(乙64,当審証人D)。
(オ) Dの上記供述内容は,概要以下のとおりである。
a 管理棟及びトイレの規模は,当初の計画では,最終的に建築された建物と同じであったが,平成11年3月初旬ころ,FからDに対して,本件山側公園土地に建築予定の管理棟に,老健施設を付け加えられないかという提案があった。また,老健施設が付け加わると,本件海側公園土地に建設予定のトイレに障害者等の出入りが多くなるだろうという見込みのもと,そのトイレに障害者用トイレを併設する計画も持ち上がった。
b また,同じころ,本件海側公園土地に設置する予定の遊具につき,T産業の見積もりに基づき検討していたところ,設置遊具として木製コンビネーション遊具がよいのではないかということになった。
c Dは,管理棟及びトイレについて,上記a及びbの変更の時点で,既にJに設計を依頼していたところ,変更後の計画に従った設計の変更もJに依頼することとなった。ただし,上記変更はまだ確定的なものではなかったため,両計画案の準備が並行して進められ,変更前の第1次案が固まったところで,これに基づく見積書(乙7,8)が作成された。
d 遊具については,木製コンビネーション遊具に変更することが確定したため,この変更を取り込んだa東遊園設置遊具の見積書(乙5)が作成された。
e ところが,平成11年4月初旬ころ,老健施設を付設するとの変更後の計画が,周辺住民の日照や職員の駐車場確保等の観点から実施できなくなった旨,Fから連絡があったため,Dは,並行して準備していた変更前の計画に基づいて,トイレ及び管理棟の確認申請書類を準備するようJに連絡を取った。しかし,Jは,既に変更後の計画に従って確認申請書類を完成させており,Jは,これに基づいて下請先に発注していたため,下請代金の支払の都合もあって,より規模の大きな工事である変更後の計画に従って確認申請を行い,その後に,より規模の小さい変更前の計画に変更することとし,Dもこれに同意した。
f 遊具については,Jが,トイレの建築確認の際,建築計画概要書に,最初の見積もりの際にT産業が作成しJに渡されていた木製コンビネーション遊具を含まない変更前計画に基づく遊具配置図を,変更を考えずにコピーして貼り付けたため,変更を反映しない異なる配置図となってしまった。
(カ) 上記Dの供述内容は,前記見積書や建築計画概要書の内容とも合致し,また,その内容自体において,一応合理性を有する。Jは,第二次案を第一次案に戻す要請があったのは,当初の建築確認申請がなされた平成11年4月12日の後である旨供述するが(当審証人J),同供述と上記D供述の齟齬は,本来変更後の内容で確認申請すべき立場にあったJが,下請代金等の関係で実際と異なった確認申請を行ったことから,実際の経緯を述べられなかったことに起因すると考えるべきであって,上記齟齬をもって,D供述の信用性を否定するのは相当でない。また,トイレの建築確認に当たり,遊具の種類等は重要な意味を持たないことから,Jが変更前に入手していた遊具配置図を,確認申請書類に用いたとしても,著しく不合理であるとはいえない。トイレ及び管理棟の建築確認申請につき,第一次案で申請すべきところ,第二次案で申請したという点については,本来あってはならないところであるが,結果的に,短期間で第一次案に変更申請しており,注文主の意向に反した申請とはなっていないことからすれば,上記事実をもって,この点に関するDの供述を虚偽と断ずることはできない。
かえって,前記建築確認の変更に要した期間は1週間程度であり,被控訴人が主張するように,いったん建築確認を申請した後にそれまで検討の対象ともなっていなかった建築内容への変更が急きょなされたとすると,期間として短か過ぎ,逆に既に完成していた変更案であったから,これだけの短期間で建築確認の変更が可能であったと考えるのが相当である。そして,他に,上記D供述の信用性を否定するに足る証拠はない。
被控訴人は,平成11年4月7日に組合が株式会社Wに製作設置を依頼した看板に,「児童遊園」ではなく,「児童公園」建設予定地と記載されたことから,その時まで,組合では,「児童遊園」ではなく「児童公園」を設置する予定であり,その後,本件山側公園土地に建てる建物の建築確認申請をした同月12日までに,「児童遊園」を設置することに変更したとし,そうすると,「a東児童遊園」及び「a児童遊園」という標題を用いた乙第5ないし第9号証の各見積書の平成11年3月24日との作成日付は虚偽である旨主張する(J作成の乙第37号証の受注記録の「児童福祉施設等」の工事を平成11年3月に受注したとの記載も虚偽である旨主張する。)。
株式会社WのLが依頼を受けたのは,あくまで「児童公園」建設用地と記載された看板であることが認められる(乙38,39,当審証人L)。しかし,株式会社Wに看板製作を依頼したのは,事情を知るFではなく,前記M社長であり,児童遊園と児童公園の違いを必ずしも明確に認識しておらず,そのため,Lへの依頼の際に間違った可能性がある。また,看板設置の趣旨が周辺住民への周知にある以上,F自身,その違いに意識が向かず,記載内容をM社長に伝える際,「児童遊園」ではなく「児童公園」と誤って指示した可能性も認められる。実際,Fも,一審において,「看板屋さんが聞き間違ったのか,発注した人間が間違ったのか,ちょっと分からないんですが,結果として児童公園ということで立ってしまいました。」と証言している(一審本人F)。以上によれば,上記看板の記載が「児童公園」となっていることから,平成11年4月7日当時設置が予定されていたのは,「児童遊園」ではなく「児童公園」であったとする被控訴人の主張を採用することはできない。
(キ) 以上によれば,計画変更等に関する前記D供述は信用することができ,前記各見積書の内容と実際の工事内容が合致することについては,一応合理的な説明が可能であるから,上記合致を理由に,前記各見積書が,建築確認後に日付を遡らせて作成されたとする被控訴人の主張には理由がない。
ケ 「建設予定地」の看板を立てたのが,控訴人Aへの本件寄附の正式な申入れ(平成11年4月6日)の前であったことからすれば,建設対象を明示しないことも想定できないではない。そして,本件寄附の正式申入れがなされた平成11年4月6日の翌日である同月7日に,児童公園の建設予定地であることを明示する看板に変えたことも,著しく不合理とはいえない。
4  本件寄附が行われた経緯
以上認定したところによれば,組合から控訴人Aに対する本件寄附の経緯に関して,①組合は,グループホーム設置資金の寄附を通じて交流のあった控訴人Aに対して,控訴人事業者らの共有名義で保有する本件事業者土地を児童の公園として寄附したいと考え,組合事務局長のFが窓口となって,平成11年1月ころから,控訴人Aの常務理事であるGとの間でその準備行為を開始したこと,②Gは,児童福祉法上の児童厚生施設たる児童遊園として,児童遊園の基準を満たす設備を組合で設置した上ならば,寄附を受入可能である旨Fに伝え,Fもこれを了承したこと,③組合は,R組に,本件事業者土地上に児童遊園として必要な設備を設置する工事を請け負わせたこと,④R組は,監督官庁である宗谷支庁の担当者から,児童遊園として必要な設備の教示を受けた上,遊具メーカーに遊具の製作を依頼し,一級建築士であるJにトイレと管理棟の設計を依頼したこと,⑤平成11年3月下旬ころ,J作成の設計図が完成し,Fは,Gに対し,本件寄附に関する非公式の申入れを行い,Gは,控訴人Aの理事長にその旨伝えたこと,⑥その後,本件児童遊園設置の動きが具体化し,平成11年3月24日,R組が本件児童遊園設置工事にかかる見積書を組合に提出したこと,⑦平成11年4月6日には,組合から控訴人Aに対し,正式な本件寄附の申入れがなされ,控訴人Aは,緊急常任理事会で受入れを検討したが,これを受け入れるかどうかは理事会で審議する旨が組合に伝えられ,同日,上記⑥の見積もりに基づき,組合とR組との間で本件児童遊園設置にかかる本件建築工事請負契約が締結されたこと,⑧平成11年4月7日には,本件事業者土地に「児童公園建設用地」との記載がある看板が立てられ,同月12日及び同月13日には,トイレ及び管理棟につき建築確認申請がなされ,同月16日及び同月20日には建築確認がなされ,その後,本件建築工事が開始されたこと,⑨平成11年5月13日には,控訴人Aの理事会において,本件寄附を受け入れることが決定され,同月14日,本件寄附が成立したこと,⑩平成11年5月11日にはトイレの,同月18日には管理棟の検査済証が交付され,同月21日には本件事業者土地の控訴人Aへの移転登記が,同月27日には,上記各建物の控訴人A名義の保存登記がなされたこと,⑪控訴人Aは,平成11年6月7日には,本件児童遊園の設置についての本件認可の申請をなし,同年7月14日に認可がなされたこと,がそれぞれ認められる。
以上の本件寄附の経緯を全体として見た場合にも,児童遊園を設置して寄附する場合に通常想定される経緯として,格段不自然な点は認められない。
被控訴人は,本件売買契約がなされた平成11年4月1日以前の本件寄附の準備行為の存在をすべて否定し(上記①ないし⑥。なお,上記⑦の4月6日の工事請負契約締結も否定する。),本件寄附に向けた行為は,同月1日から同月5日までの間に,組合が本件売買契約を知った後,いわばゼロから始められた旨主張する。しかし,平成11年4月12日には,本件山側公園土地に建築予定の管理棟についての建築確認申請が,同月13日には,本件海側公園土地に設置予定遊具の種類まで書かれた遊具配置図を含む本件海側公園土地に建築予定のトイレの確認申請がなされており,同月1日から組合が動き始めたとして,児童遊園の設置に必要な設備の調査,建築物の設計,遊具の選定を,すべて上記短期間のうちに完了させることは不可能であるといわざるを得ない。その点からも,本件売買契約がなされた平成11年4月1日の時点では,前記認定のとおり,本件児童遊園寄附のための内部的な準備行為は概ね終了していたと解するのが相当である。
5  控訴人事業者らが本件売買契約を知った時点
(1)  被控訴人は,控訴人事業者らが本件売買契約を知ったのは,本件売買契約がなされた平成11年4月1日から,本件寄附を控訴人Aに申し入れた同月6日の前日である同月5日までの間である旨主張する。上記本件寄附申入れが何らの事前の準備行為なく,いきなり同月6日になされたのであれば,上記のとおり推認することもできよう。しかし,本件においては,前記認定のとおり,寄附の準備行為が2か月以上も前から行われ,かつ,本件児童遊園設置の内部的な準備行為もほぼ完了した後に,寄附が行われているのであるから,本件売買契約の直後に本件寄附の正式な申入れがなされているだけで,その時点で控訴人事業者らが本件売買契約の事実を知っていたと推認するのは相当でないというべきである。
(2)  被控訴人は,控訴人事業者らが平成11年4月1日から同月5日までに本件売買契約を知った根拠として,①控訴人事業者らは,平成10年春ころから,同業者の出店を阻止するために情報収集に努め,その阻止に成功してきたこと,②被控訴人は,平成11年3月13日に稚内市内に新規出店するため土地を取得しようとしたが,控訴人事業者らに妨害されたこと,③控訴人事業者らは,同月20日過ぎころ,本件土地売却の噂を聞いて,関係者から情報収集を行ったこと,④本件売買契約は,Z信用金庫で締結されたが,控訴人事業者らのほとんどは同金庫と取引をしていること,⑤控訴人AのN理事長が取締役を務めるY株式会社の代表取締役であるQは,本件売買契約締結の3日後にその情報を得ていたこと,⑥本件海側公園土地について,有限会社Uとの間で売買の話が進んでいたにもかかわらず,組合は,平成11年4月7日に有限会社Uに連絡することなく,本件海側公園土地に立てられたABの看板を撤去して,売買の話が立ち消えになったこと,⑦有限会社Uも,平成11年4月8日までには本件売買契約の締結を知っていたことを指摘する。
(3)  上記事情②について
前記認定事実(15)によれば,平成11年3月13日,Eは,パチンコ店出店の用地を探すために稚内市を訪れたが,結局用地取得に至らなかったことが認められる。Eは,上記計画が頓挫したのは組合が妨害したからである旨供述するが(一審証人E),Eの供述以外にこれを認めるに足る証拠はない。よって,そもそも上記②の事実は認められない。
(4)  上記事情⑤について
証拠(甲211,乙57,当審証人P,当審証人Q)によれば,少なくとも,①Qは,稚内市内で手広く不動産関係の仕事をしている株式会社Yの代表取締役であったこと,②Pは,理髪業を営みながら不動産仲介の仕事にも関与し,株式会社Xと被控訴人との間の本件売買契約を仲介し,平成11年4月1日の契約の場にも立ち会ったこと,③同月3日ころ,Qは,PをQの自宅に呼び出し,本件土地をパチンコ屋に売るのかどうか確認したことが認められる。
以上の事実のみによっても,Qは,本件売買契約の直後である平成11年4月3日には,Pの仲介により,本件土地が,被控訴人に売却されたか,あるいは近々売却予定であることを知っていたと認めることができる。
(5)  上記事情⑥について
途中まで建設された被控訴人の本件パチンコ店は,その後の一部の取壊しもあって,本件海側公園土地に設置された児童遊園との関係では,最終的に風営法上の距離制限に違反しないこととなった。しかし,本件土地上の本件パチンコ店の位置いかんによっては,風営法の距離制限に触れることもあり得た。したがって,本件売買契約時点においては,控訴人事業者らが,本件海側公園土地に児童遊園を設置する動機は存在した。しかし,前記認定のとおり,そもそもABの看板は,形式的な行政上の届出に必要な写真撮影のために作成されたにすぎないし,組合と有限会社Uとの間の話は,有限会社Uが本件土地の一部を購入する話が出た時点で実質的に立ち消えになっていたと認められる。したがって,本件寄附を行うために有限会社Uとの話を反古にしたことを前提とする被控訴人の主張は,そもそも前提を欠き理由がない。
(6)  上記事情⑦について
Kは,控訴人事業者らが提出した同人の陳述書(乙25)において,Kの息子が,本件売買契約の後,被控訴人に電話をして,本件土地の使用を求めた旨述べており,同供述は,平成11年4月8日に,Kの息子から本件土地の一部を使わせてくれないかとの電話があったとのEの供述と一致している(一審証人E)。以上に加えて,前記認定したところによれば,有限会社Uは,同年3月20日以前に,Z信用金庫から本件土地購入の打診を受けており,本件土地の購入先については重大な関心を持ってしかるべき立場にあったことも併せ考慮するならば,Kは,同年4月8日の時点で本件売買契約の存在を知っていたと認められる。
(7)  上記事情①,③,④について
前記認定したところ及び弁論の全趣旨によれば,組合は,パチンコ業者の進出を阻止するために,名古屋のパチンコ業者が購入を諦めた本件海側公園土地を,他の同業者が進出するのを阻止するために購入するなど,外部の同業者が稚内市内に新規にパチンコ店を開業することを警戒してこれを阻止する活動を行ったこと,平成11年3月20日ころには,株式会社Xが本件土地を手放そうとしているとの情報を入手し,Z信用金庫の関係者らからの買主情報の収集活動を行ったこと,控訴人事業者らのほとんどがZ信用金庫と取引があることがそれぞれ認められる。
(8)  以上認定したところによれば,本件土地に関心を持つ稚内市内の者の多くが,本件売買契約後相当早い時期から,本件土地を被控訴人が購入したか,あるいは購入するという情報を入手していたことが認められ,Z信用金庫や地元の不動産業者と密接な関係を持ち,平成11年3月下旬の時点から本件土地をパチンコ業者が購入するとの情報を入手していたFも,同年4月6日の時点では,本件土地を被控訴人が購入したか購入すること,少なくともその可能性が非常に高いことは知っていたと認めるのが相当である。
(9)  控訴人事業者らは,本件売買契約を知ったのは平成11年5月20日ころである旨主張するが,前記認定事実(18)の,同月10日に組合が控訴人Aに提出した寄附申入書の文面や寄附成立に至る協議の経緯を見るならば,組合は,寄附申入文書を提出した同月10日以前から,被控訴人が本件土地を購入して本件パチンコ店を開業しようとしていることを知っていたこと,そして,本件寄附の目的の1つにその開業の阻止があったことは明らかである。このことからも,本件寄附の申入れがなされた平成11年4月6日の時点で,控訴人事業者らが本件売買契約を知っていた事実は,優に認められるというべきである。
(10)  控訴人事業者らは,平成11年4月7日の時点では,児童遊園の設置により,被控訴人が本件土地にパチンコ店を開業できなくなることは知らなかった旨主張する。しかしながら,前記認定したところによれば,D及びGは,平成11年2月ころから,宗谷支庁に何度も通うなどして,児童遊園に関する法的問題には通暁していたと認められ,Fも,上記両名と打合せを重ねる中で,児童遊園設置が一定範囲のパチンコ店開業を阻止する効力があることは十分認識していたと認めるのが相当である。
6  控訴人事業者らに不法行為は成立するか
以上認定した事実に基づき,まず,控訴人事業者らの本件寄附が,被控訴人の営業の自由を侵害するものとして,被控訴人に対する不法行為となるか否か検討する
(1)  上告審判決は,被控訴人が本件売買契約により本件土地を購入したことを知った後,控訴人事業者らが,風営法の規制を利用して,被控訴人がパチンコ店営業の許可を受けることができないようにする意図で,本件寄附を申し入れたことを前提に,かかる場合には,風営法の趣旨とは関係のない自らの利益確保のために,上記規制を利用して,競業者である被控訴人が本件パチンコ店を開業することを妨害したというべきであるから,本件寄附は,許された自由競争の範囲を逸脱し,被控訴人の営業の自由を侵害するものとし,不法行為を構成すると判示する。
不法行為責任を認めた判例として被控訴人が引用する最高裁判決(平成20年7月8日第3小法廷判決・平成18年(受)第1214号)の事案も,パチンコ業者が,自らの店舗の近隣地域でパチンコ店出店のための借地契約が締結されたことを知った後,風営法の規制を利用して,上記パチンコ店の開業を妨害することを計画して,診療所を開設したという事案である。
(2)  これに対して,本件は,控訴人事業者らが,社会福祉法人である控訴人Aの社会福祉事業の発展拡大を目的として本件寄附を計画し,その準備行為たる児童遊園の設置手続を相当程度進めていた最中に,被控訴人が本件児童遊園を設置する予定の本件事業者土地との関係で風営法のパチンコ店開業規制のかかる本件土地を購入したという事案である。前記認定したとおり,組合が控訴人Aに正式に本件寄附の申入れを行ったのは,本件売買契約の5日後であり,控訴人事業者らは,本件売買契約の後間もなくその事実を知り,本件寄附の正式申入れを行っている。また,その時点で,本件寄附が,本件パチンコ店の開業を阻止する効果を有することを,控訴人事業者らは知っていたものと認められる。
そうすると,本件寄附は,結果として,競業者である被控訴人が本件パチンコ店を開業することを阻止することとなり,また,控訴人事業者ら自身,その効果を欲していたとは認められるものの,その主たる目的は,控訴人Aが営む社会福祉事業の発展にあったというべきであり,被控訴人のパチンコ店開業を阻止するという自らの利益の確保のためにのみ,風営法の規制を利用したという上告審判断の前提は,当審における事実審理の結果,本件には当てはまらないこととなったというべきである。そして,上記事実関係を前提とする限り,本件寄附は,控訴人事業者らが自由になし得るものであり,本件寄附の実行により被控訴人が本件パチンコ店が開業できなくなるからといって,控訴人事業者らに対して,相当の期間・費用・労力をかけて行った準備行為を断念することを強いることはできないと解すべきである。そして,控訴人事業者らが,本件寄附の申入れの時点では本件寄附が本件パチンコ店開業を阻止することを知り,さらにその効果を欲していたとしても,そのことにより上記判断が左右されることはない。
なお,被控訴人は,仮に控訴人事業者らが主張する準備行為が存在するととしても,その準備行為自体,不特定のパチンコ業者によるパチンコ店進出を阻止する目的で行われたものであるから,違法性がある旨主張する。しかし,前記認定したところによれば,準備行為はもともと控訴人Aの社会福祉事業への協力のために始められたものであり,副次的にでも不特定ではあるがパチンコ店進出阻止目的が加わったのは,早くても,平成11年3月下旬ころからであるから,被控訴人の主張は,その前提を欠き,採用できない。
(3)  結論
以上によれば,本件寄附には,そもそも違法性が認められないから,控訴人Aの責任や被控訴人の被った損害など,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人の各請求には理由がない。
よって,本件控訴には理由があるから,一審判決を取り消して被控訴人の各請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 末永進 裁判官 古閑裕二 裁判官 住友隆行)
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