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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(262)平成22年 1月20日 京都地裁 平20(ワ)1582号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(262)平成22年 1月20日 京都地裁 平20(ワ)1582号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成22年 1月20日  裁判所名  京都地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)1582号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2010WLJPCA01206007

出典
証券取引被害判例セレクト 36巻1頁

裁判年月日  平成22年 1月20日  裁判所名  京都地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)1582号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2010WLJPCA01206007

京都市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 木内哲郎
同 加藤進一郎
同 大濵巌生
東京都中央区〈以下省略〉
被告 イー・キャピタル株式会社
同代表者代表取締役 A
東京都西東京市〈以下省略〉
被告 Y1
被告ら訴訟代理人弁護士 後藤邦春

 

 

主文

1  被告イー・キャピタル株式会社は,原告に対し,346万2250円及び内金210万円に対する平成19年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金104万7500円に対する平成19年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金31万4750円に対する平成20年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員(346万2250円及び内金210万円に対する平成19年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金104万7500円に対する平成19年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金31万4750円に対する平成20年6月18日から支払済みまで年5分の割合による金員については,被告Y1と連帯して)を支払え。
2  被告Y1は,原告に対し,被告イー・キャピタル株式会社と連帯して,346万2250円及び内金210万円に対する平成19年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金104万7500円に対する平成19年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金31万4750円に対する平成20年6月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は被告らの負担とする。
4  この判決は,第1,2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は,原告が,投資顧問業等を業とする被告イー・キャピタル株式会社(以下「被告会社」という。)との間で投資顧問契約(以下「本件契約」という。)を締結し,被告会社従業員である被告Y1(以下「被告Y1」という。)から投資助言を受けて有価証券取引を行ったところ,被告Y1は,(a)原告に特別の利益を提供する旨を告げ,(b)断定的判断を提供して原告を本件契約に勧誘したほか,(c)本件契約締結にあたって投資意向を確認し,その適法性,妥当性を検討した上,その投資意向に沿って忠実かつ合理的な投資助言をすべきであったのに,原告の投資意向を確認せず,合理的かつ十分な投資助言をしなかったとして,①主位的に,被告Y1及び被告会社に対し,不法行為(使用者責任)による損害賠償請求権に基づき,連帯して,被告会社に支払った登録費・会費合計210万円,上記有価証券取引による損失104万7500円及び弁護士費用相当損害金31万4750円並びにこれらに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるほか,被告会社に対しては,予備的に,②上記(c)のとおり,合理的かつ十分な投資助言をしなかったことによる本件契約の債務不履行責任(解除による原状回復請求権及び損害賠償請求権)に基づき上記登録費・会費合計210万円,上記取引損失104万7500円及び上記弁護士費用相当損害金31万4750円並びにこれらに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,さらに,③上記(b)のとおり,断定的判断の提供により原告を本件契約に勧誘したことを理由として本件契約を消費者契約法4条により取り消し,または,金融商品取引法37条の6ないし投資顧問業法17条1項に基づいて本件契約を解除(クーリング・オフ)したとして,不当利得返還請求権に基づき,上記登録費・会費合計210万円及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実
(1)  当事者
ア 原告
原告は,昭和34年○月○日生まれの無職の女性である。(乙1,3)
イ 被告ら
被告会社は,投資顧問業を業とする株式会社であり,被告Y1は,被告会社に投資アドバイザーとして勤務する従業員であって,本件契約に基づく原告に対する投資助言を担当した者である。
(2)  原告の投資経験等
ア 原告は,平成17年に夫を亡くしているが,その保険金等で約4700万円を取得し,そのころ,これを原資として投資信託を購入した後,株式取引を開始した。(甲19,弁論の全趣旨)
イ 本件契約締結当時,原告は,エイベックス,武富士,日本製鋼,住友電工,大阪証券金融及びオーハシテクニカの各株式(いずれも現物株)のほか,約200万円ほどの中国株を保有していた(乙1,3)。
ウ また,原告は,平成17年9月ころ,投資顧問業者である訴外株式会社東山経済研究所との間で投資顧問契約(契約期間は6か月,顧問料は30万円)を締結し,投資助言を受けたことがあった。(乙3,弁論の全趣旨)
(3)  本件契約締結に至る経緯
原告は,平成19年6月12日(以下,月日のみで表記するときは,平成19年の月日を示す。)ころ,インターネット上の広告で被告会社の存在を知り,被告会社に架電した。その後,被告Y1は,原告に数回にわたって架電し,原告を本件契約に勧誘した。
(4)  本件契約の締結
ア 原告は,7月3日,被告会社を訪問し,概要,以下の内容の本件契約を締結し(甲1,甲2),同日,登録費及び会費として210万円を被告会社に支払った(甲5)。
(ア) 会員区分 A会員
(イ) 被告会社の義務
随時,電話・FAX・電子メール・Webサイト上,又は面談により助言を行う。
(ウ) 助言内容
東京・大阪・名古屋・札幌・福岡・ジャスダックの各証券取引所の上場株式,店頭取扱株式,外国市場の株式,ワラント債,転換社債,先物,オプションを対象とし,その分析に基づく投資判断に関し,助言を行う。
(エ) 契約期間 1年間
(オ) 登録費及び会費 210万円(登録費105万円,会費105万円)
(カ) 成功報酬 売買差益の21%
(キ) その他
a 株式指導は原告にとって任意であり,被告会社は原告に対して売買の強制はできない。被告会社の指導によって原告に損失が発生しても,被告会社は原告に対してその損失の部分を賠償する責任を負わない。
b 原告は,投資顧問業法第15条書面を受領した日より起算して10日以内に,書面により契約を解除できる。
イ 被告会社から投資助言を受ける会員には,上記A会員のほか,B会員,C会員の区分があり,それらの会員に対する投資助言の内容や費用は以下のとおりである(甲1)。
(ア) B会員
助言内容 1か月に原則最低1銘柄以上を助言
契約期間 6か月
登録費及び会費 63万円
(イ) C会員
助言内容 3か月に原則最低1銘柄以上を助言
契約期間 6か月
登録費及び会費 26万2500円
(5)  投資助言に基づく有価証券取引
ア ナイガイ株の購入
被告Y1は,7月4日以降,原告に対し,東京証券市場第1部上場銘柄である株式会社ナイガイの株式(以下,同社を「ナイガイ」といい,同社の株式を「ナイガイ株」という。)の購入を助言し(乙3),原告は,次のとおり,7月6日から同月26日にかけて,ナイガイ株を合計615万1000円(手数料込)で5万株購入した(甲10の1,甲10の2)。

年月日 株数 単価 総額 (手数料込の額)
H19.7.6 10,000 ¥126 ¥1,260,000 ¥1,260,950
H19.7.12 1,000 ¥125 ¥125,000 ¥125,250
H19.7.13 10,000 ¥125 ¥1,250,000 ¥1,250,950
H19.7.23 10,000 ¥122 ¥1,220,000 ¥1,220,950
10,000 ¥122 ¥1,220,000 ¥1,220,950
H19.7.26 9,000 ¥119 ¥1,071,000 ¥1,071,950
(計) 50,000   ¥6,146,000 ¥6,151,000

イ ナイガイ株の売却
原告は,9月20日,上記アで購入したナイガイ株を,次のとおり,合計510万3500円(手数料込み)で売却した(甲10の1,甲10の2)。

株数 単価 約定価格(手数料込)
1 7,000株 101円 70万6794円
2 31,000株 102円 316万1068円
3 12,000株 103円 123万5638円

(6)  爾後の経過
ア 解除通知
原告は,10月22日,被告会社に対し,本件契約を解除する旨の書面(甲7)を発送し,同書面は,同月24日,被告会社に到達した。
イ 解除・解約通知
原告は,11月26日(被告会社への到達は翌27日),本件契約を債務不履行に基づいて解除し,また,消費者契約法4条1項2号により取消し,あるいはクーリング・オフするとともに,14日以内に登録費及び会費合計210万円,取引損失104万7500円を支払うよう被告会社に通知した(甲8の1,甲8の2)。
(7)  ナイガイの財務状況等について
ア ナイガイの平成19年1月期における総資本利益率(ROA)は0.38%(製造業ないし全産業の平均は3.11%),自己資本利益率(ROE)は0.74%(製造業の平均は9.8%),一株あたり利益は1.46円であり,7月6日時点の株価収益率(PER)は86.3(一般的に20を上回る銘柄は割高とされる。)である(甲14,弁論の全趣旨)。
イ また,同社の平成17年1月期から平成19年1月期の損益は下表のとおりであり(甲14),平成11年1月期以降,配当を行っていない(甲6)。
単位(百万円)

平成17年1月期 平成18年1月期 平成19年1月期
売上総損益 9,763 9,214 9,209
営業損益 389 -221 -453
経常損益 606 13 -74
税引前損益 -2,930 2,985 134
純損益 -2,952 2,963 108

2  争点
(1)  被告らの不法行為責任の有無
(2)  被告会社の債務不履行責任の有無
(3)  被告会社の不当利得返還義務の有無
3  争点に関する当事者の主張
(1)  被告らの不法行為責任の有無(争点1)
〔原告の主張〕
ア 被告Y1は,原告に対し,本件契約の勧誘,同契約に基づく投資助言に関し,下記イないしエの不法行為を行った。
イ 特別な利益の提供を約束した勧誘
被告Y1は,本件契約締結に先立つ平成19年6月ころ,原告に架電して,「あなたを特別な枠に入れてあげるので,特別な情報を得ることができる。」などと,投資顧問業法(22条1項3号)により禁止される特別な利益の提供を約束した勧誘を行った。
ウ 断定的判断の提供
被告Y1は,原告に対し,①本件契約締結に先立つ平成19年6月ころ,「利益をあげればチャラにできる。最初に紹介する銘柄で210万円分の元は取れるので,その後は儲けになる。もし最初の銘柄がだめでもすぐに救済銘柄の情報を教えるので大丈夫」などと述べ,また,②7月3日には,本件契約締結に先立ち,「A会員の方で利益を出されて契約を更新していただける方がいます。銘柄の情報は,『先生』しか知りません。先生に電話をして銘柄を確認して,その情報を会員の皆様に教えます。指示通り買えば儲かります。」など説明し,断定的判断を提供して,本件契約の締結を勧誘した。
エ 助言義務違反
(ア) 助言義務
投資顧問業者は,顧客の投資経験,投資可能資金,資金の性質及び運用目的等から投資意向を適切に把握し,顧客の投資意向に沿って忠実かつ合理的な投資助言をする義務がある。
(イ) 助言義務違反
被告Y1は,原告の投資意向を確認することなく,ナイガイ株の購入を原告に助言しており,また,その助言内容は,下記a及びbのとおり,不合理かつ不十分であった。
a ナイガイ株購入の助言について
ナイガイは,平成19年当時,営業利益が赤字であり,平成11年決算以降,配当をしていない会社であったうえ,ROA,ROE及びPER等の各種収益率の数値も著しく低く,ナイガイ株は投資対象としての合理性を欠いていたにもかかわらず,被告Y1は,ナイガイの上記財務状況及び各種収益率についての分析,検討や原告への情報提供をすることなく,ナイガイ株の購入を助言したのであって,その助言内容は不合理かつ不十分であった。
b 株価下落局面における助言について
原告は,当初,1株126円でナイガイ株を購入し,その後,株価が下落したにもかかわらず,被告Y1は,その局面においても,①ナイガイ株の買い増し(いわゆる難平買い)を助言して原告の投資金額を増大させ,また,②ナイガイ株を損切りするかどうか,他の銘柄への分散投資や乗換えをするかどうかなどの株価下落局面において原告が取りうる投資行動についての分析,検討や原告への情報提供をしなかったのであって,その助言内容は,不合理かつ不十分であった。
オ 原告は,被告Y1の上記イないしエの不法行為により,本件契約を締結して登録費・会費合計210万円を被告会社に支払い,また,同契約に基づく投資助言によりナイガイ株の取引を行って104万7500円の取引損失を被り,さらに,本件訴訟による弁護士費用として31万4750円の支出を余儀なくされて合計346万2250円の損害を被った。
カ よって,原告は,被告会社及び被告Y1に対し,不法行為(使用者責任)による損害賠償請求権に基づき,上記オの損害及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める。
〔被告らの主張〕
ア 原告の主張は否認ないし争う。
イ 特別な利益提供の約束について
被告Y1は,推奨銘柄が決まった際に,A会員の中でもはじめに助言するという意味合いの説明をしたが,「特別な枠に入れる」という発言はしておらず,特別な利益提供を約束して原告を本件契約に勧誘した事実はない。
ウ 断定的判断の提供について
被告Y1は,原告に対し,「1000万円の購入余力があれば,会費分は2割程度の金額に相当し,助言の下,1年間売買を繰り返していけば,早期に利益でカバーできる可能性は高い」旨の説明をしたが,必ず利益を出すことができるなどの説明をしたことはなく,断定的判断の提供をしていない。
エ 助言義務違反について
(ア) ナイガイ株購入の助言について
被告Y1は,本件契約締結時に,原告の投資意向が短期間での値幅取りである旨を確認し,ナイガイ株は,チャート分析から短期間での値動きが大きく,短期間での値幅取りに適した割安な銘柄(株価上昇・下落の1つのシグナルである移動平均線の上昇・下落を小刻みに繰り返していた銘柄であって,4月までは100円前後で推移し,4月13日に155円の年初来最高値を付けた後,5月21日に118円の下値を付けたものの,6月8日には136円まで上昇していたため,1か月ほどで1株18円の値幅取りができるものと判断され,時間をかけて平均的な価格[120円程度]で分散購入すれば,短期間で繰り返し起こりうる株価の上昇局面で1株10円程度の値幅取りが期待できた。)であって原告の上記投資意向に沿った銘柄であったこと,チャート分析から株価上昇が見込まれたことから,その購入を推奨したのであって,被告Y1の助言内容は合理的かつ十分なものである。
また,ナイガイの業績は悪かったとはいえ,ナイガイ株の株価は平成15年以降上昇トレンドにあったこと,業績内容が悪い会社でもその中で株価の上昇・下落があり,株価が上がる例もあること(例えば,ナイガイと同様に配当がなく,各種収益率がナイガイより低いものの,短期間に株価が大きく上昇した会社として株式会社アイビーダイワや東邦グローバルアソシエイツなどがある。)によれば,ナイガイ株が投資対象として合理性を欠いていたとはいえない。
(イ) 株価下落局面における助言について
被告Y1は,7月6日以降,同月26日までナイガイ株の買い増しを助言しているが,同日時点のナイガイ株の株価は1株119円であり,また,上記期間中,株価が下落し続けたわけではない(128円,129円,130円などの高値を付けたこともある。)から,この期間を株価下落局面とはいえず,上記助言は何ら不合理なものではない。
また,被告Y1は,ナイガイ株が下落した後,①7月27日,日本市場の下落基調を原告に説明したうえで,様子を見ることとし,②同月29日,基本姿勢はホールド(様子見)しながら,リスク回避のため130円台になった場合には一旦売却するよう助言し,③8月8日,見直し買い期待も強まる相場と考えてホールドを助言し,④同月16日,米国株価下落の影響を含めて銘柄動向を説明したうえでホールドを助言し,その後,⑤9月10日,乗り換え銘柄の助言,持株の売買イメージ連絡のため,その旨を留守電に入れ,⑥同月20日には,銘柄を乗り換えるよう助言しているのであって,これらの助言内容は合理的かつ十分なものである。
なお,被告Y1は,原告に対し,ナイガイ株以外の銘柄を推奨していないが,これは,7月下旬以降,サブプライムローン問題等が発生し,市況が悪化していたため,相場動向を見極めるために,新規の銘柄推奨を控えたためであって,合理的な投資判断である。
(2)  被告会社の債務不履行責任の有無(争点2)
〔原告の主張〕
ア 本件契約
前記前提事実(4)のとおり,原告は,7月3日,被告会社との間で本件契約を締結し,同契約に基づき,被告会社に対し,登録費・会費合計210万円を支払った。
イ 債務不履行
前記(1)原告の主張エのとおり,被告会社の原告に対する助言内容は不合理かつ不十分であり,本件契約上の助言義務に違反した債務不履行がある。
ウ 前記前提事実(6)イのとおり,原告は,11月27日,被告会社に対し,本件契約を解除する旨通知した。
エ 原告は,被告会社の上記イの債務不履行により次の損害を被った。
(ア) ナイガイ株取引による損失 104万7500円
(イ) 弁護士費用 31万4750円
オ よって,原告は,被告会社に対し,本件契約の解除による原状回復義務に基づき登録費・会費合計210万円,債務不履行による損害賠償請求権に基づき136万2250円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める。
〔被告会社の主張〕
ア 原告の主張ア及びウは認め,その余は否認ないし争う。
イ 債務不履行について
前記(1)被告らの主張エのとおり,被告会社の助言内容は合理的かつ十分なものであり,被告会社に助言義務に違反する債務不履行はない。
(3)  被告会社の不当利得返還義務の有無(争点3)
〔原告の主張〕
ア 消費者契約法4条による本件契約の取消
(ア) 前記(1)原告の主張ウのとおり,被告会社は,断定的判断を提供して原告を本件契約に勧誘し,原告は,本件契約に基づく助言に従って有価証券取引を行えば,確実に利益を得られる旨誤信して本件契約を締結し,登録費・会費合計210万円を支払った。
(イ) 原告は,11月27日,被告会社に対して,消費者契約法4条1項2号により,本件契約を取り消すとともに,14日以内に登録費及び会費を返還するよう通知した。
イ クーリング・オフ
(ア) 本件契約の締結にあたって被告会社が原告に交付した契約締結時書面には,「分析者・投資判断者・助言者」(甲3)と題する書面が添付されているが,同書面からは,「分析者・投資判断者・助言者」が誰なのか判然とせず,投資顧問業法15条1項7号,同法施行規則18条1項4号,5号が定める記載要件(分析者等の氏名,当該顧客に対する投資顧問契約に基づく助言の業務を行う者の氏名)を欠いており,原告には,同法15条1項に定める契約締結時書面が交付されていない。
(イ) 原告は,11月27日,被告会社に対し,本件契約を取り消す旨通知した。
ウ よって,原告は,被告会社に対し,不当利得返還請求権に基づき210万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。
〔被告会社の主張〕
ア 原告の主張ア(イ)及びイ(イ)は認め,その余は否認ないし争う。
イ 消費者契約法4条による本件契約の取消について
前記(1)被告らの主張ウのとおり,被告会社は,本件契約の締結にあたって原告に断定的判断を提供していない。
ウ クーリング・オフについて
上記原告の主張イ(ア)の書面(甲3)には,「分析者・投資判断者・助言者」として,被告会社代表者や被告Y1らの氏名が列挙されており,これらの者全員が「分析者・投資判断者・助言者」であることが明白であるから,原告には,投資顧問業法15条1項に定める契約締結時書面が交付されており,上記原告の主張イ(イ)の通知時点において,クーリング・オフ期間は経過している。
第3  当裁判所の判断
1  事実認定
証拠(甲1,3,4,6,9,10,13ないし16,18ないし25,27ないし29,乙1,3,17,19ないし23,原告本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  原告の生活状況
原告は,平成17年に夫を亡くし,その際,夫の保険金等として約4700万円を取得したが,その時,長男には障害があり,その他の2人の子はいずれも18歳未満であった。そのため,原告は働きに出ることができず,収入としては児童扶養手当がある程度であったから,その後の生活は,上記の金銭を取り崩しながら営んでいかなければならない状況にあった。
(2)  原告の投資経験等
原告は,上記の金銭が,生活費等のための取り崩しによって次第に減少していくことに不安を感じ,当初,銀行で投資信託を購入したり,他人の口座を借りて株式の取引をしていたが,思うように運用成績が上がらなかった。そこで,原告は,平成17年9月,新聞の折り込みチラシを見て知った東山経済研究所の講演会を聴き,会費30万円を支払ってその会員となったものの,同研究所からは,6か月の契約期間に1銘柄(アキレス株)の推奨を受けたのみで,満足のできる助言を得ることができなかったため,契約を更新しなかった。
これと平行して,原告は,平成17年9月から都証券で株式の取引を始め,同年10月からは藍澤証券で,平成18年3月からはイートレード証券で,平成19年5月からは東洋証券で,株式の取引をするようになった。原告は,都証券では,少数の東証1部銘柄を比較的長期に保有することが多かったが,藍澤証券では,多くは東証1部銘柄であったものの,一部はジャスダックといった新興市場銘柄の取引をしており,保有期間も長短まちまちで,1年以上保有していた銘柄もあれば,買い付けた当日中に売却した銘柄や,買い付けから1週間以内で売却した銘柄も多数にのぼっていた。なお,原告は,藍澤証券での株式の取引は,平成19年9月に打ち切った。さらに,原告は,東洋証券ではもっぱら中国株式を取引しており,イートレード証券では,わずかな銘柄を除いては,買い付けの当日ないし1週間以内に売却する取引をしていたところ,特に,被告のアドバイスを受けるようになったのと同時期の平成19年7月ころからは,取引の回数や銘柄も多くなった。
なお,都証券での取引は,担当者を介しての対面取引であったが,藍澤証券やイートレード証券での取引は,もっぱらインターネットを介したオンライン取引であった。
(3)  本件契約前の原告の状況等
このように,原告は,複数の証券会社で,本件契約を締結するまでの間にも多数の取引を行っていたが,その中には,週刊誌の株情報の記事をそのまま信用して買い付けたもの(たとえば,平成17年10月に藍澤証券で買い付けたアクセス株),担当者から勧められて買い付けたが,納得できないために,短期間で売却したものなどが含まれていた。
原告がこのような多数の取引を行った原因の一つは,上記アクセス株で100万円を超える損失を出したことにあり,原告は,その損失を取り戻そうとして,短期の売買を繰り返すようになったものである。そして,そのような取引を繰り返した結果,平成19年7月当時では,原告の収支はほぼ均衡状態にあった。
(4)  被告から本件契約の勧誘を受けた経緯
ア このような状況で,原告は,インターネットを利用して適切な投資顧問会社を探していたところ,被告のウェブサイトに行き当たった。そして,原告は,同サイトの音声ガイドで,被告が推奨した株式の値上がり状況が解説されているのをみて関心を持ち,被告に連絡を取ったところ,被告Y1から,取引の勧誘を受けることとなった。
イ 被告は,顧客の勧誘にあたり,そのパンフレットに,「投資家最優先」を標榜し,「数ある金融商品を上手に使い分けて最大の利益を上げることの出来るプロフェッショナルな運用センスが必要なのです。」,「(被告は)リスク商品の利用経験のない方にも商品性や運用内容を解り易くアドバイスするなど時代に合った資産構築のお手伝いをさせていただきます。」,「本来の勝ち組とは損失が生じた場合,その損失を最小限に食い止めることができる人達だと当社は考えます。(中略)当社のアドバイスならば,相場下落時の損失を最小限に止めることが可能です。」などの宣伝文句を記載していた。
ウ 被告会社の投資顧問契約では,前記前提事実(4)のとおり,A,B,Cの3つの会員区分を設けて,これを「特別情報会員」と称しており,それぞれの登録費・会費には,最も高額のA会員から低額のC会員まで,大きな差がつけられていた。
エ 被告Y1は,原告に対して電話をかけ,原告の投資経験を尋ねたり,運用資金が1000万円から1500万円であることを聞き出したりした後,A会員として入会するよう勧誘した。その際,被告Y1は,A会員になれば,A会員の中でも原告には早く情報を教える,最初の銘柄で登録費・会費分を儲ける,万が一うまくいかなくても救済銘柄を出す,A会員の中でも特別な人向けの情報を仕入れることでそれができる,先生と呼ばれる人がいて,情報を早く仕込むことで利幅がとれる,などと述べた。
オ 被告Y1は,原告に対し,株式の売買は儲かることもあるが損をすることもあるという説明は行ったが,投資金額の何割程度までであれば原告がリスクを負えるのかということについては確認しなかった。
カ 原告は,本件契約に先立って,被告が実体のある会社であることを確認し,さらに,先生と呼ばれる人物に面会するため,210万円を持参して,京都から東京に赴いた。その際,原告は,先生と呼ばれる人物とは面会できなかったが,被告Y1やその上司というBから,種々の説明を受け,その説明により,210万円に見合う情報が得られるものと考えて,本件契約に至った。
(5)  ナイガイ株の助言の経緯
被告Y1は,前記前提事実(5)アのとおり,原告に対してナイガイ株の購入を助言したが,その際,「先生からの伝言です。」と述べた上で助言した。
ここで,被告Y1ないし先生と呼ばれる人物(C)は,ナイガイ株の購入を原告に助言するに当たり,4月ないし6月において,5日移動平均線と25日移動平均線とがゴールデンクロス・デッドクロスを繰り返しており,6月下旬にデッドクロスが出たことのみを判断材料とした。
また,被告Y1は,原告に対し,電話でナイガイ株の購入を助言するに当たり,原告にチャートを見るよう促したり,チャートを見ているか確認したりしていなかった。
(6)  ナイガイ株について
ア ナイガイ株は,東証1部に上場されている株式であるが,長期的にみると,平成15年ころの約40円を底として,平成18年初頭の約210円まで上昇し,以後,月初と月末で20円ないし40円も下げる月を挟みつつ,下降トレンドに入っており,平成18年10月から平成19年3月にかけては,120円ないし140円の範囲で上下し,月初と月末の価格差が10円未満という比較的細かな動きをするようになっていた。
イ ナイガイ株の平成18年10月から平成19年7月4日までの株価(高値・安値でみたもの)は,次のとおりである。
平成18年10月上旬に126円に下がった後,同月下旬には144円まで上昇した。同年11月下旬には112円まで下がった後,同年12月上旬に128円まで上がり,同月下旬にはまた116円まで下がった。平成19年1月下旬には131円に上がったが,2月上旬に120円に下がり,同月下旬には136円に上がり,3月はまた115円まで下がった。4月中旬には155円まで急騰したが,同月下旬には128円に下がり,5月上旬には144円に上がったものの,同月中旬には116円に下がった。そして,6月上旬に約136円まで上がった後,7月4日までは約121円から132円の間で推移した。
この間の出来高は,4月に急騰した数日を除いて,おおむね200万株以下(その多くの日で100万株に達しない。)であり,たまに400万株に達する程度であった。
ウ これを4月ないし7月4日の日足チャートでみると,5日移動平均線と25日移動平均線とは,ゴールデンクロス(4月10日ころ,当時の株価124円前後。6月8日ころ,同130円前後。)及びデッドクロス(5月11日ころ,当日の株価136円前後。6月22日ころ,同128円前後。)を2回ずつ繰り返していた。このうち,4月10日ころのゴールデンクロスでは,株価がその付近を底値として,その後急上昇しているが,6月8日ころのゴールデンクロスや,上記2回のデッドクロスは,いずれも短期の上昇又は下降局面の中間ないし終盤近くに出現したもので,出現以後の値動きもそれほど大きなものではなく,いずれも,その数日ないし1週間後には,相場の流れが逆転するという状況であった。
エ ナイガイ株の株価は,7月4日には値上がりしたものの,その後は下落を続け,同月下旬から8月にかけて,100円を挟む水準にまで急落し,10月から11月までほぼ同様の水準を保って,10円ないし20円の上下を繰り返した後,12月以降,再度急落して,平成20年4月には70円前後にまで下落した。
この間の出来高は,4月に急騰した数日を除いて,おおむね200万株以下(その多くの日で100万株に達しない。)であり,たまに400万株に達する日がある程度であった。
オ ナイガイは,平成17年1月期において,若干の営業利益を計上したが,同期には,多額の特別損失を出して大幅な赤字決算となり,平成18年1月期には,営業利益が赤字に転落しながらも,特別利益の計上によって,前記の赤字を打ち消す程度の黒字を計上した。しかし,平成19年1月期には,営業赤字が増大して,かろうじて当期利益を計上できる程度の経営状況であった。平成19年1月期において,ナイガイの総資本利益率(ROA)は0.38%(製造業ないし全産業の平均は3.11%),自己資本利益率(ROE)は0.74%(製造業の平均は9.8%),株価収益率(PER)は86.3(一般的に20を上回る銘柄は割高とされる。)であり,平成11年1月期以降は配当が行われていない。
カ サブプライムローンとは,アメリカにおいて,通常の住宅ローンの審査には通らないような信用度の低い人向けの,主として住宅ローンを指すものであるが,当初数年間の支払額を抑制する仕組みがとられたりしていたことと,折からの住宅価格の高騰とが相まって,住宅価格が上昇している限りは,より低利のローンへの借り換えや住宅の売却により,返済には困らないとの認識から,返済能力と無関係の貸付けが行われるようになり,その債権が大量に証券化されて,投資家に販売されていたものである。ところが,平成18年に住宅価格上昇率が急速に鈍化すると,延滞率が急上昇し,平成19年に入ると,住宅ローン会社の破綻が発生するなどして,その経済全体への影響が懸念されるようになってきていた。
この間,アメリカの株価(ニューヨークダウ,ナスダック)は,3月を底に7月にかけて上昇トレンドにあり,日経平均も同様の動きを示していたが,アメリカの株価が2月から3月にかけての下落(ニューヨークダウは1万2700ドルから1万2000ドルに下落した。)を超えて大きく上昇した(1万3600ドルに上昇した。)のに対し,日経平均は,7月になってようやく2月の下落前の水準(1万8000円)に回復したという程度であった。
また,この間の円相場は,3月の1ドル117円から7月の1ドル123円へと動いており,円安傾向であった。
そして,7月初めころは,アメリカにおける金利の安定や株価上昇といったプラス材料が報じられる一方で,アメリカでの株価上昇の鈍化,日本の景況感改善についての消極的な見通しが報じられるとともに,サブプライムローン問題が経済全体に波及することについての懸念も,リスク要因として繰り返し報道されている状況にあった。
キ 被告Y1は,原告に対し,7月4日にナイガイ株を推奨した上,同月6日に単価126円で1万株,同月12日に単価125円で1000株,同月13日に単価125円で9000株,同日に単価124円で2万株,同月26日に単価119円で9000株を購入するよう助言した。
2  被告らの不法行為責任について(争点1)
以上の前提事実及び認定事実に基づいて,被告らの不法行為責任の有無について検討する。
(1)  前記のとおり,平成19年7月において,原告は,原告とその家族の生活資金,特に障害のある子を抱えての将来にわたる生活資金となる亡夫の保険金の目減りを心配し,上記金銭をできるだけ維持し,増殖させることに関心を抱いていたが,それまでの株式投資は思うような成績を残すことができず,中には大きな損失を出した銘柄もあったし,東山経済研究所の助言も原告を満足させるものではなかったことから,適切な投資顧問契約による投資助言に,大きな期待を抱いている状況にあったものである。
このような原告の状況からすると,原告の投資意向は,できる限り投資資金を温存し,これを確実に増殖させることにあったということができる。
そうした場合,原告と本件契約(投資顧問契約)を締結した被告の負う義務としては,そもそも投資顧問契約自体が,顧客の投資リスクを低減することのできる助言をすることにある(仮に顧客がハイリスクハイリターンの投資を望んだ場合であっても,顧客としては,助言を受けることにより,リターンに対応するリスクの低減を期待していることはいうまでもないことである。)ことに加えて,原告の場合には,その投資リスクを可能な限り低減し,かつ,被告に対する支払金を上回るリターンの期待できる銘柄を推奨することにあったということになる。
なお,被告らは,原告の投資意向は短期値幅取りにあったと主張するが,上記のとおりの原告の状況からして,原告は,上記のとおり,できる限り投資資金を温存し,これを確実に増殖させることを大前提としていたのであるから,単に短期値幅取りを希望していたとは考えられない。
(2)  ところが,前記認定事実のとおり,そもそも被告Y1ないし先生と呼ばれる人物がナイガイ株購入を助言するに当たって検討したのは,ナイガイ株が,助言前の半年余りの間に,おおむね値幅にして10円ないし20円で,1か月程度のサイクルで上下を繰り返している銘柄であって,4月ないし6月の3か月の間にゴールデンクロス・デッドクロスが繰り返し現れていたところ,6月下旬にデッドクロスが現れたということのみであって,被告Y1らは,ナイガイ株のそのような値動きの原因,より長期的にみたトレンドの状況,相場全体の動き・その原因,ナイガイ株の株価の動きと相場全体の動きとの関係等についての検討すらしていなかったものである。
前記認定事実のとおり,ナイガイ株は,平成18年初頭からの下降トレンドが,同年終わりころから一服して,値動きの乏しい状況にあったところ,同社の営業成績が芳しくなく,当時,株価上昇をもたらすような材料があったとも認められず(現に,平成19年3月以降の日経平均の上昇局面においても,同社株は目立った上昇をしていない。),上記のような細かな上昇・下降のサイクルが維持されると見通すことのできる根拠は特段存在しなかったものである。また,同社株は,日常の出来高が少ないため,少々の材料で大きく値が動く危険が大きいこと(現に,4月にそのような状況が生じている。)に加えて,7月においては,日経平均の上昇の鈍化等,相場全体の先行きに関する消極的な見方が報じられたり,サブプライムローン問題が経済全体のリスク要因として指摘され続けていたのであるから,年額210万円(月額にして17万5000円)という高額の報酬を得て行う投資顧問としては,その銘柄推奨のための分析の基本をチャート分析に置くとしても,上記諸要素を検討の対象外とすることや,チャート分析で得られるほかの指標を考慮しないことは,原告の投資リスクの低減という,投資顧問契約に必然的に要求される目的に沿わないものといわなければならない。
確かに,前記認定事実のようなナイガイ株の平成18年終わりから平成19年7月にかけての値動きの状態からすると,値動きの波動を上手に捉えて,1か月ないし2か月のサイクルで,10円程度の値幅をとることができれば,5万株であれば,1サイクルで所得税及び被告の報酬を差し引いても35万円程度の利益を得ることができると考えられるところではある。しかしながら,前記認定事実のとおり,そのような値動きの波動は,平成18年終わりころに始まったもので,波動の上下にもかなりの差があって,必ずしも安定したものということはできないし,相場の反転のシグナルとされるゴールデンクロスやデッドクロスの出現も,相場の転換点からはなれた波動の中間で出現しているものであることを考えると,そのような波動の把握を的確にすることには,相当の困難が伴うものといわなければならない。
また,そもそも,チャート分析については,初心者向けにも,経験者向けにも様々な解説書等が多数出版されており(公知の事実),単にチャート分析,しかも,被告Y1が行ったようにゴールデンクロス・デッドクロスの有無のみを検討するのであれば,一般投資家であっても容易にできるのであって,しかも,それのみで利益をあげられる株式が分かるのであれば,およそ投資顧問会社など不要であって,被告Y1が,210万円もの多額の登録費・会費に見合い,被告自らが標榜する投資家最優先の宣伝文句が空虚でないといえるだけの専門的な知識・経験・判断を用いて,利益が得られる銘柄としてナイガイ株を選択し,助言したとは到底認められない。なお,被告らは,ナイガイ株は上昇トレンドにあったと主張するが,前記認定事実のとおり,ナイガイ株は平成18年ころ以降は下降トレンドにあったもので,被告らの主張は事実に沿わないものである。また,被告らは業績内容が悪くても株価が上がる例があると主張するが,被告らは,ナイガイ株の株価の上昇・下降の原因について分析すらしておらず,本件契約の締結時に原告に説明した「特別な人向けの情報」を把握してもいなかったのであって,他社の例と同様にナイガイ株の株価が上がるとの予測が合理性を有するとは到底認められない。
さらに,被告らは,原告が購入したナイガイ株が下落したのは,アメリカ・ニューヨーク発のサブプライムローン問題の影響で相場全体が下落したからであって,それは予測し得なかったし,実際,株価下落の原因がサブプライムローン問題によるものであったことは8月13日までわからなかったとも主張する。しかし,前記認定事実のとおり,3月や4月ころにはサブプライムローン問題の影響が経済全体に広がることについて懸念する声が報道されており,7月にはたびたびサブプライムローン問題について日経新聞等において報道されていたのであって,日本の株式市場がアメリカの株式市場の影響を少なからず受けることは公知の事実であることも併せ考えると,被告Y1がサブプライムローン問題の影響を予測・認識していなかったのであれば,それは,被告Y1が株式市場の情報収集・分析等を全く行っていなかったことを意味するにすぎず(被告Y1は,本人尋問において,ロイターのニュースや被告会社のアナリストの見解を収集するなどしたが原因がわからなかったと供述するが,前記認定事実のとおり,日経新聞等で株価下落はサブプライムローン問題の影響である旨報道されていたから,情報収集した旨の被告Y1の供述は信用できない。),かかる被告らの主張は,被告Y1が,株価の値動きの分析をまともに行っておらず,顧客最優先の姿勢もとっていなかったことを露呈しているといわざるを得ない。
そして,前記認定事実のとおり,3月,4月以降,サブプライムローン問題の影響が懸念される中で,ナイガイ株の株価は最初に推奨された7月4日以降に下落を続けていたにもかかわらず,上記のとおり,被告Y1は,株式市場の情報収集・分析や株価の値動きの分析を行わないまま,原告に対し,同月6日,12日,13日,26日に買い増ししていくよう助言していったのであって,これもまた,反転上昇の見通しが得られていない以上,およそ合理的な根拠のある助言であったとは到底認められない。(この点に関し,被告は分散購入によるリスクの分散などとも主張するが,上昇の見通しのない状況でのいわゆる難平買いをリスクの分散と評価することはできない。)
しかも,被告らは,被告Y1はナイガイ株購入を助言するに当たって原告に理由を説明したと主張するが,前記認定事実のとおり,被告Y1は,原告にチャートを見るよう促したり,見ているか確認したりしていなかったものであるところ,ナイガイ株購入の理由を説明するに当たり,原告に対し,推奨した根拠であるチャートを見るよう促したり,見ているか確認しなかったというのは極めて不自然であって,被告Y1がチャートについて説明したとは認められないし,仮に,被告Y1が何らかの説明を述べていたとしても,原告に理解できるような説明がなされたとは認められない。
このように,被告Y1がナイガイ株を推奨した根拠は極めて希薄であって,買い増しを助言するに当たっても株式市場の情報収集・分析等を行わなかったのであり,その助言内容は,およそ210万円という登録費・会費に見合うものではなかった。また,被告Y1の原告に対する説明も極めて不十分なものであった。
すなわち,被告Y1は,極めて不十分な分析・検討しかしていなかったにもかかわらず,確実な根拠により利益が得られる可能性が高いと原告に誤信させてナイガイ株を購入させたのであるから,かかるY1の行為には不法行為が成立する。
(3)  また,上記のようなナイガイ株の推奨に至る経過に照らして,本件契約の勧誘についてみるに,前記認定事実のとおり,本件契約においては「特別情報会員」という名称が用いられている上,A会員の登録費・会費はB,C会員と比べて相当高額に設定されていることに加えて,被告Y1は,原告に対し,A会員の中でも早く情報を教える旨述べて勧誘していることを併せ考えると,このような方法で勧誘を受けた原告としては,本件契約を締結する以上,A会員であればB,C会員と比較して,確実に利益を得やすい株式の情報が得られると考え,しかも,他のA会員と比較しても,ますます利益を得やすい特別な情報が教えてもらえるとの期待を抱くことは,まことにもっともなことといわなければならない。
そして,上記(2)で説示したとおり,被告Y1らによるナイガイ株の分析・検討は極めて不十分で,原告の投資意向に合致しないものであったことからすると,被告Y1は,本件契約の勧誘をした当初から,被告Y1を含めた被告会社の助言のあり方として,原告に対し,合理的かつ十分な検討・分析を行った上で株式を助言する意思はなかったと認めるのが相当である。
このように,本件契約は,その実質において,被告会社の標榜するところに沿い,顧客に,高額な登録費・会費に見合うだけの利益をもたらす助言をすることのできる契約とは到底認められないのであって,このような契約を,あたかも,投資による利益を得るために有益な特別な情報に基づいて助言がされる投資顧問契約であるとして勧誘することは,その真実を隠し,顧客に,現実には得られない可能性の高い過剰な期待を抱かせるものであって,その勧誘行為もまた,不法行為を構成するというべきである。
(4)  損害について
そうすると,原告の損害は,本件契約の締結により支払った登録費・会費210万円,ナイガイ株の取引損失104万7500円(前記前提事実のとおりの購入金額615万1000円から売却金額510万3500円を控除した金額)及び弁護士費用31万4750円であり,合計346万2250円となる。
よって,被告Y1は不法行為に基づき,被告会社は使用者責任に基づき,連帯して,上記合計346万2250円及び内金210万円に対する不法行為日(本件契約締結日)である平成19年7月3日から支払済みまで民法所定の遅延損害金,内金104万7500円に対する不法行為日の後である平成19年11月27日から支払済みまで民法所定の遅延損害金,内金31万4750円に対する訴状送達日の翌日(被告会社は平成20年6月14日,被告Y1は同月18日)から支払済みまで民法所定の遅延損害金の損害賠償責任を負う。(なお,以上のとおりの被告らの違法性の強さに鑑みると,原告について過失相殺をすべきではない。)
3  主位的請求が認容されるため,予備的請求について判断する必要はない。
4  結論
以上より,原告の主位的請求はいずれも理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松本清隆 裁判官 橋本眞一 裁判官 髙橋里奈)

 

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