【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(255)平成22年 3月 8日 東京地裁 平19(ワ)4774号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(255)平成22年 3月 8日 東京地裁 平19(ワ)4774号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成22年 3月 8日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)4774号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA03088011

要旨
◆被告Y1が原告らから愛玩動物用品や玩具の製造販売や輸出入に係る営業を譲り受ける旨の営業譲渡契約に基づき、原告らが、Y1に対しては上記営業権の代金の支払いを求め、また原告X1は選択的にY1及び被告Y2に対して不法行為に基づく損害賠償等を求めた事案において、原告らから有効な代理権授与を受けた代理人がY1との間で交わした修正合意に基づいて、営業権の代金の支払いは既に行われており、また、X1に対する不法行為等も認められないなどとして、原告らの請求が全て認められなかった事例

参照条文
民法91条
民法703条
民法709条

裁判年月日  平成22年 3月 8日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)4774号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA03088011

東京都板橋区〈以下省略〉
原告 株式会社福治
同代表者代表取締役 甲山A
東京都豊島区〈以下省略〉
原告 株式会社日本ウェブ加工
同代表者代表取締役 甲山B
原告ら訴訟代理人弁護士 林正紀
同 尾関孝彰
同 鰺坂和浩
神戸市〈以下省略〉
被告 株式会社ヘイセイ
同代表者代表清算人 C
神戸市〈以下省略〉
被告 日本毛織株式会社
同代表者代表取締役 D
被告ら訴訟代理人弁護士 丹羽一彦
同 森嶋裕子

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は,原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  第一請求
(1)  被告株式会社ヘイセイは,原告株式会社福治に対し,4800万円及びこれに対する平成14年4月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  被告株式会社ヘイセイは,原告株式会社日本ウェブ加工に対し,6400万円及びこれに対する平成14年4月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  第二請求
被告らは,各自原告株式会社福治に対し,1億1200万円及びこれに対する平成14年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
本件は,被告株式会社ヘイセイ(以下「被告新ヘイセイ」という。)が原告らから,愛玩動物用品の製造及び販売並びに輸出入,玩具の製造及び販売並びに輸出入に係る営業を譲り受けることを内容とする営業譲渡契約に基づき,原告株式会社福治が被告新ヘイセイに対し,営業権の代金6300万円のうち4800万円及びこれに対する平成14年4月2日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を,原告株式会社日本ウェブ加工が被告新ヘイセイに対し,営業権の代金8400万円のうち6400万円及びこれに対する同日から支払済みまで商事法定利率による年6分の割合による遅延損害金をそれぞれ請求するとともに,これらと選択的に,原告株式会社福治が,被告新ヘイセイに対し,不当利得又は不法行為(使用者責任)に基づき,被告日本毛織株式会社に対し,不法行為(使用者責任)に基づき,各自1億1200万円及びこれに対する平成14年4月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求した事案である。
2  前提事実(以下の各事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1)  当事者
ア 原告株式会社福治(以下「原告福治(旧ヘイセイ)」という。)は,商号を「株式会社ヘイセイ」として,平成元年1月11日に設立された愛玩動物用品の製造,販売,輸出入等を行う会社であり,平成14年4月1日,商号を現商号に変更し,現在は,一切の活動を停止している。(甲31,47)
イ 原告株式会社日本ウェブ加工(以下「原告日本ウェブ加工」という。)は,昭和41年に同社の代表取締役である甲山Bにより,「株式会社アニマルヘルスフード」として設立された会社であり,その後,「株式会社アニマルヘルス」と商号変更し,平成9年7月1日に現商号に変更した。原告日本ウェブ加工も現在は一切の活動を停止している。(甲31)
ウ 原告日本ウェブ加工の代表取締役である甲山Bと,原告福治(旧ヘイセイ)の代表取締役である甲山Aとは夫婦である(以下「甲山夫妻」という。)。甲山Bは,原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工の実質的なオーナーであり,昭和39年にペットフードに関する卸売販売の個人営業を開始し,昭和41年に原告日本ウェブ加工を設立して,ペット関係のサプリメント及びペット用品の製造販売を行い,平成元年に原告福治(旧ヘイセイ)を設立してからは,主に,原告福治(旧ヘイセイ)を営業主体として,ペット用品等の製造,販売等を行ってきた。なお,甲山Bは,平成14年3月1日の後記の営業譲渡契約締結後,同年4月1日から平成17年3月31日まで,被告新ヘイセイの顧問として勤務した。(甲31)
エ 被告日本毛織株式会社(以下「被告日本毛織」という。)は,衣料繊維製品・繊維資材製品等の製造・販売,商業施設の開発とその賃貸・運営,スポーツ施設の運営,乗馬用品・ペット用品の製造・販売,不動産の建設・販売・賃貸,産業向け機械,電子・電気計測器及び制御装置の製造・販売などを業とする株式会社である。
オ 被告新ヘイセイは,昭和54年8月1日に設立された会社であり,当初の商号は「郡上ウール株式会社」であったが,平成14年1月20日,その目的をペット用品の販売,ペット用品(引紐,首輪等)の製造等に変更し,同年4月1日,商号を現商号に変更するとともに,本店も肩書地に変更した。なお,被告新ヘイセイは,商号譲渡人である原告福治(旧ヘイセイ)の債務については責を負わない旨の登記をしている。被告新ヘイセイは,被告日本毛織株式会社の連結子会社である双洋貿易株式会社(以下「双洋貿易」という。)が100%の株式を所有しており,被告日本毛織のペット関連事業再編に伴い,平成18年9月30日,株主総会の決議により解散した。(甲31,46,84,乙34)
(2)  営業譲渡契約
被告新ヘイセイは,平成14年3月1日,原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工との間で,愛玩動物用品の製造及び販売並びに輸出入,玩具の製造及び販売並びに輸出入に係る営業を譲り受ける営業譲渡契約(以下「本件契約」といい,同契約に基づく営業譲渡を「本件営業譲渡」という。)を締結した。
本件契約では,原告福治(旧ヘイセイ)(当時の商号「株式会社ヘイセイ」)を甲,原告日本ウェブ加工を乙,被告新ヘイセイ(当時の商号「郡上ウール株式会社」)を丙として,以下のとおりの条項が定められていた(以下,本件契約の契約書を「本件契約書」という。)。なお,本件契約書に添付された「(別紙1)」には,譲渡財産明細(平成13年7月31日現在)として,「なお,特許権,実用新案権,商標権等の対価は,第3条第3項の営業権の対価に含むものとする。」こと,同日現在,資産は合計2億3121万円,負債は合計2億5631万円であることが記載されていた。また,「(別紙2-1)」には,譲渡の対象となった特許権,実用新案権,意匠権,商標権(以下「本件各権利」という。)が列挙されていた。(乙1)
第1条(営業譲渡)
甲及び乙は平成14年4月1日(以下「譲渡日」という。)付にて,甲及び乙の,愛玩動物用品の製造及び販売並びに輸出入,玩具の製造及び販売並びに輸出入,にかかる営業(以下「本営業」という。)を丙に譲渡する。
第2条(譲渡の内容)
前条により譲渡すべき財産は本営業に必要な譲渡日現在の資産負債(別紙1)並びに営業権,甲及び乙が保有する特許権,実用新案権,商標権(別紙2)等の一切の権利及びリース契約(別紙3)の範囲内とする。
第3条(資産の評価等)
第1項 前条による譲渡価格は,固定資産については譲渡日現在における適正価格,その他の財産については同日現在における甲の帳簿価格とする。
第2項 営業権は,甲を60,000,000円,乙を80,000,000円とする。
第3項 資産,負債の細目及び精算方法等については,甲及び乙並びに丙協議の上定めるものとする。
4.消費税は外税とする。
第4条(引渡時期)
第2条にもとづく譲渡財産の引渡時期は平成14年4月1日とする。但し手続上の事由により必要があるときは甲及び乙並びに丙協議の上これを変更することができる。
第7条(役員の引継ぎ)
第1項 甲及び乙の現役員については,丙はこれを引き継がない。
第2項 甲山Bは顧問として採用する。その処遇については別途協議する。
(第3項以下省略)
第9条(引継義務等)
第1項 甲乙並びに丙の新旧役員は協力して,丙の本営業の引き継ぎをおこなうものとする。その場合,甲乙は丙に対して,会社の過去の決算書類その他の帳簿,資産の権利の証書,その他会社の経営,管理に必要な書類等を整理して交付し,また丙からの問い合わせに対して,誠実に対応するものとする。
第2項 本合意の成立後,譲渡日までに,甲及び乙は,その経営及び資産の管理について,善良なる管理者としての注意義務をもって行うものとする。
第10条(公租公課等の負担)
本営業譲渡日前の期間に対応するものは甲乙の,譲渡日以降の期間に対応するものは丙の負担とする。
第11条(簿外負債等)
本営業譲渡後,知られざる債務その他の瑕疵が発見され,その結果丙が損害を被ったときは,その損失については甲及び乙並びに甲山B,甲山Aが連帯してその債務の履行もしくは瑕疵の補修を行い,丙に対して求償その他何らの請求を行わないものとする。
第18条(効力発生日)
この契約は,甲及び乙並びに丙が平成14年3月31日迄にそれぞれの株主総会の承認を得,又は法令により必要とする手続きが完了したとき,その効力を生じるものとする。
3  争点
(1)  営業権の代金の支払の有無
(2)  被告新ヘイセイの不当利得の有無
(3)  被告らの不法行為責任(使用者責任)の有無
4  争点についての当事者の主張
(1)  争点(1)(営業権の代金の支払の有無)について
(被告新ヘイセイの主張)
ア 本件契約の修正合意の成立
平成13年7月ころ,被告日本毛織の子会社の双洋貿易は,甲山Bらと原告福治(旧ヘイセイ)の株式譲渡又は営業譲渡についての交渉を始めた。同月31日,E弁護士(以下「E弁護士」という。)及びF公認会計士(以下「F会計士」という。)の要請に従って,双洋貿易は,「秘密保持誓約書」を両名に差し入れ,公認会計士による原告福治(旧ヘイセイ)の財務内容の調査(デューディリジェンス)を行った。その調査の結果,原告福治(旧ヘイセイ)には貸借対照表に開示されていない借入金が多数あること,売掛金や買掛金についても不明なものが多いことが判明した。そこで,双洋貿易は,原告福治(旧ヘイセイ)の株式を譲り受けることはできないと判断して,原告らの営業のうち,健全なもののみを譲り受けることとし,その具体的内容はさらに協議することとした。
その後,平成14年3月1日に本件契約が締結されたが,同月20日,被告新ヘイセイと原告らの代理人であったF会計士が協議の上,原告福治(旧ヘイセイ)の借入金については譲渡の対象から除外し,売掛金・買掛金については,譲渡日(同年4月1日)前のものは原告福治(旧ヘイセイ)に帰属し,同日以降は被告新ヘイセイに帰属するもの(同年3月31日までに原告福治(旧ヘイセイ)が売却した製品の売掛金は原告福治(旧ヘイセイ)に帰属すること)とした(以下「本件修正合意」という。)。その後,同日現在の在庫等の確定作業が行われ,譲渡資産の範囲が確定し,各譲渡資産の対価が合意されたことによって,譲渡代金が合意された。
イ F会計士の代理権限
F会計士は,平成13年7月期,平成14年7月期の原告らの法人税申告書を代理人として作成・届出を行っている。また,F会計士は,原告福治(旧ヘイセイ)の資金繰りについて双洋貿易に緊急の借入要請を行うなど,平成14年3月以降の原告らの借入金の返済を含む資金繰り,経理処理の決定も行っていた。甲山Bは送付されてくる租税や社会保険料の督促状等が来ると,全てF会計士に送付して指示を受けるように指示しており,譲渡日前後の通帳・印鑑の保管方法の決定もF会計士が行っていた。このように,F会計士は,平成13年7月ころから,原告らを財務・税務面で代理していた。
そして,F会計士は,本件営業譲渡の具体的条件の交渉や営業権の各代金の決定にも直接関与しており,また,平成14年5月30日の打合せで,修正譲渡契約書の原案をF会計士に示した際,基本スキームについて苦情を述べていることからすれば,F会計士が原告側で被告新ヘイセイと交渉している事実が明らかになっている。
以上のとおり,F会計士が本件修正合意について,原告福治(旧ヘイセイ)の代理権を有していたことは明らかである。
ウ 甲山夫妻の同意
(ア) 甲山Bの行動
本件修正合意では,在庫分は譲渡日現在の帳簿価格で原告が引き取るが,それまでに売却できれば売掛金として原告福治(旧ヘイセイ)の手元に残り,より高額の資産となるところ,甲山Bは,本件修正合意の成立以降,原告福治(旧ヘイセイ)の営業部員に対し,平成14年3月31日までに,できるだけ在庫を販売してくるように強く指示した。甲山Bが,本件修正合意成立後に突然上記のような指示をしたのは,同人が本件修正合意に同意していたからにほかならない。
(イ) 原告らから異議が全くなかったこと
平成14年4月末日までは甲山Aが毎日出勤し,原告福治(旧ヘイセイ)や原告ウェブ加工の通帳や銀行印,実印を管理していたにもかかわらず,経理処理や税務処理について,甲山夫妻からは,甲山Aの退職慰労会の処理費用について甲山氏から指摘を受けたことを除くと,何ら異論が出されたことはなかったのであり,このことは,原告ら代表者である甲山夫妻が本件修正合意に同意していたことを意味する。
エ 営業譲渡代金の振込み及び振り込まれた金銭の使途
(ア) 原告らの指示に基づく振込み
被告新ヘイセイは,原告らの営業権の対価を,甲山Bや原告らの代理人であるF会計士の指示に従い,次のとおり,原告福治(旧ヘイセイ)又は原告日本ウェブ加工名義の預金口座に振り込む方法により支払った。
a 平成14年3月15日,7000万円を朝日信用金庫の株式会社日本ウェブ加工名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉,以下,「本件預金①」という。)に振込送金(以下「本件振込(1)」という。)。
b 平成14年3月29日,1500万円をあさひ銀行の株式会社ヘイセイ名義(その後「株式会社福治」に名義変更)の普通預金口座(口座番号〈省略〉,以下「本件預金②」という。)に振込送金(以下「本件振込(2)」という。)。
c 平成14年4月1日,4500万円を朝日信用金庫の株式会社ヘイセイ代表取締役甲山A名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉,以下「本件預金③」という。)に振込送金(以下「本件振込(3)」という。)。
d 平成14年4月30日,1700万円を本件預金③に振込送金(以下「本件振込(4)」という。)。
(イ) 振り込まれた金銭の使途
被告新ヘイセイによって本件預金①ないし③に振り込まれた金銭は,以下のとおり,原告らの債務の弁済等に充てられた。
a 本件預金①について
被告新ヘイセイからの本件預金①への7000万円の振込みは甲山B及びF会計士の指示に基づき,原告らの本件預金②に2000万円,同③に5000万円振り込まれた。
b 本件預金②について
前記aで本件預金②に振り込まれた2000万円及び本件振込(2)にかかる1500万円の使途は別表3の2のとおりである。
c 本件預金③について
前記aで本件預金③に振り込まれた5000万円の使途は,別表3の1のとおりである。本件振込(3)に係る4500万円の使途は,別表3の3のとおりであり,本件振込(4)に係る1700万円の使途は別表3の4のとおりである。
オ 本件預金①ないし③の管理の状況
本件契約第4条では,譲渡財産の引渡時期は平成14年4月1日と合意されており,同年3月31日までは,原告らの従業員が事務所に勤務し,原告らの経理担当者G(以下「G」という。)も同日に退職するまで事務所に勤務し,原告らの預金通帳等の管理を行っていた。そして,同年4月1日に同事務所が被告新ヘイセイに対し引き渡され,このとき,被告新ヘイセイの経理担当者であるH(以下「H」という。)が同事務所に赴任した。
甲山Bは,同年4月1日以降,ほぼ毎日,被告新ヘイセイの顧問として被告新ヘイセイの事務所に出勤しており,原告らの銀行印や預金通帳には容易にアクセスし得る立場にあった。また,甲山Bは,Hやその他の被告新ヘイセイの従業員に対し,銀行取引の代行を命じていた。
被告新ヘイセイは,原告日本ウェブ加工の預金通帳等の引渡を受けたことは一切ない。被告新ヘイセイが保管している本件預金①の預金通帳は,平成14年4月1日から平成17年3月31日まで被告新ヘイセイに顧問として勤務していた甲山Bが管理していたのであって,同人が退職する際に,被告新ヘイセイの社内に残置したため,被告新ヘイセイがこれを保管しているにすぎない。
被告新ヘイセイは,平成14年4月中旬に,本件預金②,③を含む原告福治(旧ヘイセイ)の預金通帳を預かったが,これはG退職後に,原告福治(旧ヘイセイ)代表者甲山Aから預かってほしいと依頼されたので,被告新ヘイセイの経理担当者であるHが預かったにすぎない。原告らの銀行印については,印鑑のボックスが事務所内にあり,その中に入ったままであった。
カ 小括
以上のとおり,被告新ヘイセイは,原告らに対し,営業権の対価について全額支払を行っている。
(原告らの主張)
ア 被告新ヘイセイの主張する本件各振込みがあったこと及び営業権の対価のうち,3500万円の支払を受けたことは認めるが,その余は否認する。
イ 原告らは,平成14年3月1日の本件契約の締結直後に,本件預金①ないし③を含む,その保有する預金口座に関する預金通帳,定期預金証書,手形帳及び小切手帳を,そのキャッシュカード,銀行印,代表者印及び印鑑カードとともに,被告新ヘイセイに引き渡している。したがって,被告新ヘイセイは,自己の管理する口座に被告新ヘイセイが管理使用する目的で金銭を振り込んだにすぎず,そもそも,営業譲渡代金の弁済とは評価できない。
また,被告新ヘイセイは,原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工の住所で現実の提供を行ったわけではなく,原告らが,被告新ヘイセイに対し,送金先を指定したこともない。この点からも,被告新ヘイセイの主張する各振込みは,本件営業譲渡代金の支払とは評価できない。
さらに,被告新ヘイセイが支払ったとする金銭は,本件契約に基づいて被告新ヘイセイが原告福治(旧ヘイセイ)から引き継いだ債務の弁済に使用されており,本件営業譲渡の対価としての弁済にはなりえない。
ウ 被告新ヘイセイは,本件契約の内容を修正する旨の合意が成立したと主張するが,そのような事実はない。
被告新ヘイセイは,被告新ヘイセイとF会計士との間に本件修正合意が成立したと主張しているが,平成14年3月1日の前後を通じて,原告らがF会計士にかかる契約を行う代理権を与えた事実はなく,F会計士も同事実を否定している。F会計士は,同日以降,被告新ヘイセイ側の会計士として行動しており,原告らとは本件契約締結後は利益相反の関係であるから,原告ら側の代理人として行動できる立場にはない。したがって,仮に,F会計士が,I(以下「I」という。)やJ(被告新ヘイセイの従業員であり,双洋貿易の経理課長)と協議して本件修正合意をしたとしても,F会計士には,原告らを代理する権限はなく,本件修正合意の効果が原告らに帰属することはない。また,本件修正合意の内容を書面化した修正営業譲渡契約書(乙25,以下「本件修正契約書」という。)には,原告らの署名・押印はなく,代理権のないF会計士への一方的通告により本件修正合意が成立するはずがない。
(2)  争点(2)(被告新ヘイセイの不当利得の有無)について
(原告福治(旧ヘイセイ)の主張)
被告新ヘイセイの主張を前提とすると,原告福治(旧ヘイセイ)に帰属すべき資産額は4億1255万1401円(営業権と譲渡資産の対価2億7250万8739円,預貯金合計5904万0033円,売掛金・受取手形金8100万2629円)であり,金融機関からの借入れ1億2074万0872円,個人からの借入れ1億2232万5925円の合計2億4306万6797円であるから,借入れを返済しても,残額1億6948万4604円が残るはずである。ところが,被告新ヘイセイは,3500万円を返済するのみで,残りの1億3484万4604円は存在しないとして,原告福治(旧ヘイセイ)に返済していない。
原告福治(旧ヘイセイ)の経理は,本件契約締結以降,平成14年3月31日までは,被告日本毛織の子会社である双洋貿易の従業員のJが,平成14年4月1日以降は,被告日本毛織の従業員であるHが行っていた。その過程で1億3448万7604円の使途不明金が生じたのであるから,この使途不明金は被告新ヘイセイによって利得されたものというべきである。そして,本件修正合意によれば,預貯金及び売掛金は原告福治(旧ヘイセイ)に帰属するのであり,被告新ヘイセイが,この使途不明金を保持すべき理由はないのであるから,この使途不明金は被告新ヘイセイの不当利得となる。実際に,別表1及び別表2のとおり,被告新ヘイセイによる入出金処理には不自然な点がある。
(被告新ヘイセイの主張)
ア 本件営業譲渡の基準日は平成14年4月1日であるから,原告福治(旧ヘイセイ)の資産負債は同日付けで検討すべきところ,原告福治(旧ヘイセイ)は,その資産負債について,借入金は同年2月末日のものと同年3月13日時点のものを採用しており,かつ預金残高も同年2月末日の額を前提としている点で不適切であり,原告福治(旧ヘイセイ)の主張は,その前提を欠いている。実際には,被告新ヘイセイが受領した金額の合計は4億0256万1029円(営業権と譲渡資産の対価2億7250万8739円,預貯金合計5904万0033円,売掛金・受取手形回収額7101万2257円),支出した金額の合計は4億3594万0648円(借入金返済額2億7222万0497円,買掛金等の外部支出1億6372万0151円)であり,被告新ヘイセイにとって3337万9619円の支払過剰になっているのであって,使途不明金などはない。
イ なお,原告福治(旧ヘイセイ)は,原告らの銀行口座からの出金記録や仮払金補助元帳の出金記録について,否認するとしているが,そもそも,原告らの銀行口座は,平成14年3月31日以前は,原告らの取引のために利用されていたものであり,同年4月1日以降も,以前の取引上の売掛金等の回収と買掛金や未払金の支払を目的として,そのまま利用されたものであるから,その入出金は,原則として原告らのための取引に関するものというべきである。したがって,被告新ヘイセイに不当利得があると主張するのであれば,具体的な主張・立証を行うべきであって,単に否認するとするのみでは主張自体失当というべきである。
また,別表1,2で原告福治(旧ヘイセイ)が否認する項目のうち,被告新ヘイセイが金銭を取得したものとして,本件預金③の取引番号283及びみずほ銀行の株式会社ヘイセイ名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉)の取引番号211があるが,前者は,被告新ヘイセイが従業員に支払った夏期賞与のうち,原告福治(旧ヘイセイ)分を返還し精算したものであり,後者は,前商事が誤って被告新ヘイセイに支払うべき売掛金を原告福治(旧ヘイセイ)の口座に振り込んだため,これを被告新ヘイセイの口座に振り込んだものであって,これらの出金については,金銭の受領につき,被告新ヘイセイに法律上の原因がある。そのほか別表1,2で原告福治(旧ヘイセイ)が否認する項目は,ほとんどが,決済等の必要性から資金移動等を行った際に銀行が手数料を受領したもの,口座からの引落しや他口座への振込みにより取引先や原告ら代表者等が金銭を取得したもの,仮払金の補助元帳に記載があり精算されたことが明らかなもの,平成14年3月31日までに原告福治(旧ヘイセイ)に帰属した債務の支払のために振り出された手形・小切手の決済がなされたものなどであり,これらは,いずれも被告新ヘイセイの利得発生を示すものではない。
ウ 以上のとおり,被告新ヘイセイに不当利得がないことは明らかである。
(3)  争点(3)(被告らの不法行為責任(使用者責任)の有無)について
(原告福治(旧ヘイセイ)の主張)
被告新ヘイセイの主張を前提とすると,前記のとおり,原告福治(旧ヘイセイ)の資産から負債を差し引いた残額1億6984万7604円が残るはずである。そして,本件契約以降,原告福治(旧ヘイセイ)の資産の管理は,被告らの従業員等が行っていたのであるから,被告新ヘイセイは,上記金額を原告福治(旧ヘイセイ)に返済しなければならない。ところが,被告新ヘイセイは,3500万円を返済するのみで,残りの1億3448万7604円は存在しないとして,原告福治(旧ヘイセイ)に返済していない。
被告新ヘイセイによる原告らの経理処理に不自然な点があるのは前記のとおりであり,被告新ヘイセイが原告福治(旧ヘイセイ)に残額を返還しないのは,被告日本毛織の従業員で,かつ被告新ヘイセイの代表取締役であったIが,原告福治(旧ヘイセイ)に帰属すべき残金1億3448万704円について,横領等の不正を行ったからである。さもなければ,被告日本毛織の従業員であるHがかかる不正を行い,Iがこれを見逃したのである。また,被告日本毛織は,自らの企業グループを統括するにあたって,被告新ヘイセイの責任者とした被告日本毛織の従業員であるI及びHを監督し,Iに責任者としての適格性に,Hには経理担当者としての適格性に疑問がある場合には,その責任者から排除すべき企業倫理上の義務,コンプライアンス上の義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然とIを責任者として,Hを経理担当者として放置し,違法な行為が行われるのを見逃した。
以上のとおり,IないしHが,違法な経理処理を行い,1億1200万円以上の支払いを免れようとした行為は不法行為に当たり,Iの行為は,被告新ヘイセイの代表者としてなされたものであると同時に,被告日本毛織の従業員として行われたものでもあるから,被告新ヘイセイは不法行為責任,被告日本毛織は不法行為責任または使用者責任を負う。
そして,これについての弁護士費用は,1120万円と評価されるべきである。よって,原告福治(旧ヘイセイ)は被告らに対し,少なくとも総額1億2320万円の損害賠償請求権を有しており,これは,遅くとも平成14年4月2日には発生していたものと判断される。
(被告らの主張)
原告福治(旧ヘイセイ)の主張が,その前提を欠いていること,実際には,別表4のとおり,被告新ヘイセイにとって3337万円余りの支払過剰になっていることは前記のとおりである。そして,被告新ヘイセイの従業員であったHの経理処理に違法な点はなく,IがF会計士との間で本件修正合意を成立させ,これに基づいて活動したことについても何ら違法な点はない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)  本件契約書作成に至る経緯
ア 交渉の開始
平成12年11月ころ,原告福治(旧ヘイセイ)側から,双洋貿易に対し,原告福治(旧ヘイセイ)の売却の打診の話が持ち込まれた。この話を受けて,当時,双洋貿易の代表者であったIは,甲山夫妻や,原告福治(旧ヘイセイ)の営業部長を務めていたC(以下「C」という。)と面談するなどして,原告福治(旧ヘイセイ)買収の実施可能性等について検討を開始した。(甲26,乙33,39)
他方,甲山Bは,原告福治(旧ヘイセイ)の売却について,甲山Aとともに,E弁護士や同弁護士以外の弁護士にも相談したり,被告日本毛織の本社に赴いて話を聞くなどした上で売却を決意し,その交渉(以下「本件売却交渉」という。)及びそれに伴う経理処理を含めた手続を,E弁護士及び同弁護士から紹介されたF会計士に依頼した。(甲26,甲27,乙39)
なお,甲山夫妻は,従前から,原告福治(旧ヘイセイ)や原告日本ウェブ加工の経理について,経理担当者に任せきりにしており,大まかな方向性を除いて,資金繰りなどの財務状況は把握していなかったこともあり,本件売却交渉に関する金銭面の条件等についても,E弁護士やF会計士,Cに任せていた。ただし,甲山B個人のKに対する債務3500万円や税金などを支払った後に,甲山夫妻に5000万円ないし7000万円が手元に残る内容になるとの認識を有していた。(甲26)
イ 原告福治(旧ヘイセイ)の財務調査及びその後の状況
本件売却交渉が進められる中,平成13年8月下旬から同年9月にかけて,原告福治(旧ヘイセイ)の財務状況を詳細に調査する,いわゆるデューディリジェンスが行われた(以下「本件財務調査」という。)。本件財務調査は,双洋貿易側の担当者としてL公認会計士(以下「L会計士」という。)及びM公認会計士,原告福治(旧ヘイセイ)側の担当者としてF会計士により実施された。本件財務調査では,原告福治(旧ヘイセイ)の財務情報等が双洋貿易に開示されることになるため,これに先立って,双洋貿易は,同年7月31日,原告福治(旧ヘイセイ)からの求めに応じ,E弁護士及びF会計士あてに,上記情報等を秘密に保持すること等を誓約する内容の秘密保持誓約書を作成し,原告福治(旧ヘイセイ)に交付した。(甲27,乙33,38,39)
そして,本件財務調査の結果,同調査を担当した公認会計士及び原告福治(旧ヘイセイ)の経理担当者であったGにより,同年7月31日付けの平成13年7月貸借対照表が作成され,それによれば,資産が合計約2億5514万円余り,債務が合計2億1870万円余りであった。(乙2)
F会計士は,上記アのとおり,甲山Bから,本件売却交渉に関係する経理処理の依頼を受けたため,本件財務調査に関与するほか,その前提として,原告福治(旧ヘイセイ)の財務内容を把握し,本件財務調査終了後も,会計処理のための作業を,Gに指示するなどしていた。(甲27)
ウ 本件売却交渉の進展
Iは,本件財務調査を踏まえ,原告福治(旧ヘイセイ)の買収をどのような形式で行うべきかを検討していたところ,L会計士から,原告福治(旧ヘイセイ)には多くの借入金があり,高利の借入れや従業員や取引先からの借入れもあり,契約書がないものも多いこと,原告日本ウェブ加工は実際に営業活動をしていないが,同社名義の知的財産権もあり,原告福治(旧ヘイセイ)とともに同一グループとして取り扱うべきであること,両社には家族経営の不透明さがあることなどの報告を受けた。そのため,原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工の株式の譲り受ける形ではなく,両社の営業を譲り受けることとし,その譲り受ける主体として,被告日本毛織のグループ会社で休眠状態にあった被告新ヘイセイ(当時の商号は「郡上ウール株式会社」)を活用することとした。また,譲渡の対象から不良資産や甲山一族の個人的負債は除くこととした。そして,本件営業譲渡代金は,総額1億5000万円とすることが合意され,当初は本件各権利を含む営業権の対価を1億円,甲山Bの退職金を5000万円とすることにしていたが,3年間の顧問契約で5000万円の退職金とするのは多額すぎて税金の関係で難しいため,営業権の対価を1億4000万円とし,1000万円を甲山Bの成功報酬とすること,3年間の顧問契約により年俸1200万円の報酬を支払うことを含め合意が成立した。(乙33)
エ 双洋貿易から原告福治(旧ヘイセイ)に対する貸付け
Iは,平成13年10月ころ,F会計士から,緊急に原告福治(旧ヘイセイ)の手形決済資金が必要であるとして,2000万円の貸付依頼を受けたことから,双洋貿易から原告福治(旧ヘイセイ)に対し2000万円の貸付けを行った。(乙33,乙39)
オ 平成13年12月11日の打合せ
E弁護士,F会計士,I及びL会計士は,平成13年12月1日,L会計士の事務所において,本件売却交渉に関する打合せを行った。その際,F会計士は,IないしL会計士に対し,甲山Bが原告福治(旧ヘイセイ)の甲山Aほかからの借入金1000万円について,原告福治(旧ヘイセイ)に弁済のための資金が提供されることを希望していることを伝えたり,また,平成14年1月以降の原告福治(旧ヘイセイ)の資金繰りが苦しくなる可能性があることを伝えるなどした。また,L会計士からは,個人借入先との契約内容がはっきりせず,利息の支払も不定期で,未払利息等の債務が不明であることから,営業譲渡時までに精算しておいてもらいたいとの発言があった。(乙39,41)
カ 本件契約の締結
以上のように,本件売却交渉は進められ,平成14年3月1日,被告日本毛織本社において,甲山夫妻並びにE弁護士が立会いの上,被告新ヘイセイと原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工との間で本件契約が締結された。(甲92,97,乙1,33,39)
なお,甲山夫妻は,本件営業譲渡についての交渉をE弁護士,F会計士及びCに任せており,本件営業譲渡により,手元に5000万円ない7000万円が残ること以外の条件には関心がなかったため,本件契約の内容を十分把握していなかった。(甲26)
(2)  平成14年3月31日までの状況
ア I及びJの原告福治(旧ヘイセイ)事務所への常駐
原告福治(旧ヘイセイ)の経理を担当していたGは,平成14年3月31日に退任し,双洋貿易側から後任者が選任される予定であった。しかし,本件契約締結時には,双洋貿易側で適任者を見つけることができなかったため,本件契約発効日である同年4月1日まで,引継ぎの準備のためにI及びJが原告福治(旧ヘイセイ)の事務所に駐在することとなり,同年3月中は,Gが,Jとともに原告福治(旧ヘイセイ)の資金繰り,経理等を担当し,併せてJに対し事務処理の引き継ぎを行った。なお,同月の資金繰りは,従前から作成されていた資金繰り表と同様のもの(乙21,22)が作成され,それに基づいて行われていた。(甲26,27,乙33)
他方,甲山夫妻,F会計士,G及びIは,平成14年3月初めに協議の上,社印・銀行印及び銀行通帳・公社キャッシュカードを甲山Aの管理に移管すること,テレフォンバンキングを停止すること,同月11日以降は,大口の資金操作はJの立会いを要することを決定し,同年3月20日のF会計士とI及びJとの打合せにより,手形・小切手用紙の管理は金庫保管とした。(乙26,30,33)
イ 借入れの返済,資金繰り等
(ア) Iは,平成14年3月4日及び5日に,甲山Bと共に,原告福治(旧ヘイセイ)の一部の取引金融機関を訪れて,本件契約の説明や,借入金の支払猶予及び同年4月以降の取引継続の依頼を行ったが,いずれの金融機関からも支払猶予の了承は得られず,平成14年3月末までの貸付けの弁済を求められ,同年4月以降の取引継続についても,一部を除いて消極的な対応を受けた。(乙30,33)
また,Iは,原告福治(旧ヘイセイ)の金融機関以外からの借入金について,その返済に立ち会うなどしたが,契約書のない例が多く,帳簿上の金額と債権者の主張する金額との間で相違がある例もあり,不安を覚えることがあった。(乙30,乙39)
さらに,本件営業譲渡の具体的な実行に向けて,原告福治(旧ヘイセイ)の資産や負債の細目を確認する作業が行われたが,それにより,原告福治(旧ヘイセイ)では,平成13年12月分以降の従業員の源泉徴収分の納付や社会保険料の支払などが,滞納になっていることが判明するなどした。(乙39)
(イ) 平成14年3月以降の原告福治(旧ヘイセイ)の資金繰りは,上記アのとおり,G及びJによって行われていたが,同月は,資金繰りが厳しいことから,I,J及びF会計士の話合いにより,被告新ヘイセイ(当時の商号は「郡上ウール株式会社」)から,本件契約に基づく原告日本ウェブ加工の営業権の代金8400万円の一部として,7000万円を原告福治(旧ヘイセイ)に振り込み,同社の資金繰りに充てることとなり,同月15日に,被告新ヘイセイは,本件預金①に7000万円の振込みを行った。(乙6の2,27,30,33)
(ウ) 平成14年3月20日,F会計士,C,I及びJにおいて打合せが行われ,その際,F会計士から,甲山Bが個人借入れについて,同年4月1日に返済することを希望していること,原告福治(旧ヘイセイ)における一時的な資金繰りの必要が生じた場合に協力してほしい旨の依頼があった。同日の打合せに関するIの報告書には,原告福治(旧ヘイセイ)の借入金について,「(被告新ヘイセイが)引き継ぐ資産と営業権の額内で先方勘定で負債を返済する」という基本スキームをF会計士が了解したことが記載されている。(乙26)
その後,同年3月26日,Iは,被告日本毛織のN(以下「N」という。)に対し,ファクシミリで,原告福治(旧ヘイセイ)の資金繰りについて報告するとともに,原告福治(旧ヘイセイ)に対する6000万円の送金を依頼した。IがNに対し送信した文書には,「引継資産と営業権の枠内で先方勘定で負債を返済する」という本件修正合意に沿って借入返済を行うこと,現預金及び3月末までの負債を残資産とした場合,1億1500万円が引継資産となること,4月中の資金繰り等の計算により,原告福治(旧ヘイセイ)の手元残高が約5200万円になること等が記載されている。(乙164)
なお,Iが作成した平成14年4月16日付けの「ヘイセイ駐在報告」には,現預金,借入金,売掛金,買掛金について,被告新ヘイセイにおいて引き継がないことを原告らと合意した旨,同合意に基づき,被告日本毛織の了承を得て,平成14年4月1日までに営業権の対価として1億3000万円を原告福治(旧ヘイセイ)に送金したことなどが記載されている。(乙29)
(3)  平成14年4月1日以降の状況
ア 被告新ヘイセイの営業の開始
平成14年4月1日,被告新ヘイセイは,原告福治(旧ヘイセイ)の営業を引き継ぎ,東京都板橋区〈以下省略〉の原告福治(旧ヘイセイ)の事務所において営業を開始した。被告新ヘイセイの代表取締役社長には,原告福治(旧ヘイセイ)の営業部長であったCが就任し,代表取締役会長には,郡上ウール株式会社の代表者であったIが就任した。(乙32,34)
イ 甲山夫妻の立場
甲山Bは,平成14年3月1日の本件契約締結後,被告新ヘイセイと顧問契約を締結し,同年4月1日以降,被告新ヘイセイの顧問という立場で,平成17年3月31日まで被告新ヘイセイに勤務し,ほぼ毎日のように出社していたが,工場において過ごすことが多かった。上記の顧問契約の契約期間は,平成14年4月1日から平成17年3月末までの3年間であり,甲山Bは被告新ヘイセイから年間約1200万円の報酬を受領したほか,顧問を退任するに当たり,成功報酬として1000万円の支払を受けた。
他方,甲山Aは,平成14年4月1日から1か月間,被告新ヘイセイの従業員の指導を担当し,被告新ヘイセイから100万円を受領した。(甲26)
ウ 原告福治(旧ヘイセイ)の経理処理等
平成14年4月1日,Hが被告新ヘイセイに着任し,同月10日ころまでJから事務引継を受けた。Hが引継において受けた指示は,原告福治(旧ヘイセイ)と原告日本ウェブ加工の経理処理や税務処理はF会計士が行うので,Hは一切関与しないこと,原告福治(旧ヘイセイ)の資金計画を作成すること,すなわち,同月以降に毎日どこの銀行でいくらの支払をするかの計画を立て,必要資金の移動をすること,同年6月までに金融機関の返済はすべて完了すべきこと,受取手形は早めに手形割引すべきことであった。
経理処理については,F会計士が行っており,F会計士の事務所の事務員が月2回程度被告新ヘイセイの事務所を訪れ,原告福治(旧ヘイセイ)の振替伝票とそれに添付してある帳簿類をすべてチェックしデータの入力作業や記帳をしていた。Hは,F会計士から渡された原告福治(旧ヘイセイ)の債務リストを元に,その引き落とし口座に資金を移動したり,F会計士から指示を受けた原告福治(旧ヘイセイ)の税金を振込送金により支払うなどの事務を行っていた。また,税務署等から原告福治(旧ヘイセイ)や原告日本ウェブ加工あての督促状やその他郵便が来ると,Hは甲山Bに手渡し,同人はそれをF会計士に送るよう指示していた。
また,Hは,平成14年4月以降,原告福治(旧ヘイセイ)の口座において,被告新ヘイセイに対する入金や引落が行われたり,原告福治(旧ヘイセイ)の同年3月までの費用を被告新ヘイセイにおいて立替払することがあったため,これらを,被告新ヘイセイの原告福治(旧ヘイセイ)に対する仮受金又は仮払金として処理し,補助帳簿を作成することも行っていた。これらの処理の結果,同年9月30日時点で,被告新ヘイセイの原告福治(旧ヘイセイ)に対する84万3437円の仮受金が確定し,その後,仮受金として3万5730円が判明したことから,被告新ヘイセイは,同年10月31日,本件預金③に,これらの合計87万9167円を振込送金して支払った。
なお,Hが,甲山Aが同年4月30日に退職する際の慰労会の費用につき,原告福治(旧ヘイセイ)と被告新ヘイセイで折半するものと考え,被告新ヘイセイにおいて全額支払った上で,その半額を旧ヘイセイのために立替払したとして,原告福治(旧ヘイセイ)のための仮払金として処理したところ,甲山Bから抗議を受けたため,Cの指示により,全額被告新ヘイセイの負担となるよう修正処理を行ったが,この件のほかには,甲山夫妻が入出金処理について異議を述べることはなかった。(乙29,33,35,39,190,証人H)
エ 原告らの預金通帳,実印等の管理
平成14年3月31日,原告福治(旧ヘイセイ)の経理を担当していたGが退職し,同年4月末には甲山Aも新ヘイセイを退職して出社することはなくなり,甲山Bは従前と同様,原告福治(旧ヘイセイ)の経理や資金繰りに関心を示さなかったため,事実上,Hが原告らの実印や銀行取引印及び銀行のキャッシュカードが入った印鑑箱の保管を担当するようになった。なお,原告福治(旧ヘイセイ)名義のみずほ銀行池袋西口支店の通帳は甲山Aが自宅に持ち帰った。(乙30,33,35)
オ 営業権及び営業権以外の資産の対価の支払
(ア) 被告新ヘイセイは,前記(2)イ(イ)のとおり,平成14年3月15日,本件契約に基づく原告日本ウェブ加工の営業権の代金8400万円の一部として,本件預金①に7000万円を振り込み(本件振込(1)),その後,同月29日に,本件契約に基づく原告福治(旧ヘイセイ)の営業権の代金6300万円の一部として,本件預金②に1500万円を振り込み(本件振込(2)),同年4月1日,本件契約に基づく原告福治(旧ヘイセイ)の営業権の代金6300万円の一部として,本件預金③に本件4500万円を振り込み(本件振込(3)),同月30日に,本件契約に基づく原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工の各営業権の代金の残金として,本件預金③に,本件1700万円を振り込んだ(本件振込(4))。(乙6の2,乙7の2,乙8の2,乙9の3,乙27)
(イ) なお,本件振込(1)に係る7000万円のうちの2000万円は,F会計士の指示に基づき,平成14年3月29日に,本件預金①から本件預金②に振り込まれ,同日の本件振込(2)に係る1500万円と併せて,同日,原告福治(旧ヘイセイ)のあさひ銀行からの短期借入金83万7000円,長期借入金302万8000円及び長期借入金3084万1000円の合計3470万6000円の返済に充当されるなど,別表3の2のとおりの支払に充てられた。(乙6の3,乙7の2)
また,本件振込(1)に係る7000万円のうち5000万円は,F会計士の指示に基づき,同月18日に,本件預金①から本件預金③に振り込まれ,同年4月1日の本件振込(3)に係る4500万円,同月30日の本件振込(4)に係る1700万円とともに,別表3の1,3及び4のとおり,主として,原告福治(旧ヘイセイ)の朝日信用金庫からの借入金の弁済,金融機関以外の個人からの借入金の弁済,支払手形の決済,税金の支払,E弁護士に対する3500万円の送金等に充てられた。(乙9の1ないし10,乙17)
カ F会計士の立場
被告新ヘイセイは,F会計士に対し,被告新ヘイセイの税務関係の処理を依頼し,平成14年6月7日ころ,顧問契約を締結した。ただし,平成15年9月,上記顧問契約は合意解除された。(甲1,27,乙24,33,39,40,190)
また,F会計士は,原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工の,平成12年7月期,平成13年7月期及び平成14年7月期決算に伴う会計処理の指示及び税務申告業務の代理を行った。また同年3月以降の原告らの借入金の返済を含む資金繰り,経理処理の決定,譲渡日前後の通帳・印鑑等の保管方法の決定にもF会計士が関与していた。(甲27,乙26,29,30,36,37,159,162,175)
キ 本件契約の修正に係る契約書
平成14年4月下旬までには,同年3月31日現在の原告らの在庫の実棚調査が終了し,営業権以外の譲渡資産の評価額が算出され,預貯金,売掛金,受取手形及び仮払金等の流動資産並びに債務を譲渡の対象から除き,それ以外の資産を譲渡日現在の帳簿価格等として算定した結果,1億2550万8739円と評価された。
その後,Iは,同年5月30日,F会計士と資産譲渡に関する打合せを行い,本件修正合意に係る契約書案を交付して検討を依頼した上で,同年6月7日ころ,本件修正契約書を3通作成し,被告新ヘイセイ名下の押印をしたが,原告ら名下の押印はされなかった。なお,Iは,上記打合せの結果について,H,C及びNに対し,電子メールで報告したが,同電子メールには,F会計士が,「負債を清算するので実質的には問題ないが,旧ヘイセイの取締役会・総会等の書類を作成する。」「形式的に言えば『負債を引き継がない』変更により金利分で2~3百万円の損失が出ている。ただ,新ヘイセイ側に立てば,これを支払えば『違約金』となり,ニッケ(被告日本毛織)側の了承は得られないと思う。苦慮している。」と述べたこと等の記載がある。また,本件修正契約書には,①被告新ヘイセイが譲渡を受ける対象を,「資産及び負債」から資産のみに変更すること,②譲渡を受ける資産の内容を,在庫,有形固定資産,無形固定資産,投資等に限定してその詳細を一覧表として添付し,現金預金,受取手形,売掛金及び仮払金を対象外とすること,③原告らに対する営業権以外の譲渡資産の代金を1億2550万8739円とし,平成14年6月17日に,1億0191万3863円,借地権等の名義書換手続完了後に2359万4876円を支払うこと等が記載されている。(甲79,乙24,25,31,33ないし35,39)
ク 本件修正合意の履行等
被告新ヘイセイは,平成14年6月18日,営業権以外の資産の対価1億2550万8739円の一部として,1億0191万3863円を本件預金③に振り込み,その後,同月20日に,原告福治(旧ヘイセイ)が所有していた借地上の建物について,被告新ヘイセイに対し所有権移転登記手続が行われた後,同年9月27日に,残りの2359万4876円を本件預金③に振り込んだ。(乙9の6,9の10)
また,F会計士は,営業譲渡代金の支払を受けたこと,在庫,有形固定資産及び投資等が譲渡されたこと並びに現金預金,受取手形,売掛金及び仮払金が譲渡されないことを前提とする原告福治(旧ヘイセイ)の合計残高試算表を作成するなどして本件修正合意に従った会計処理を行った。(甲68,69,乙20,181ないし184)
(4)  本件訴訟に至る経緯
ア 本件各権利の名義移転について
被告新ヘイセイは,本件各権利のうち,原告日本ウェブ加工名義であったものは,被告新ヘイセイ名義に移転登録手続を行った。しかし,原告福治(旧ヘイセイ)名義のものについては,原告福治(旧ヘイセイ)が現商号に商号変更していたため,いったん名義を「株式会社福治」に変更し,その後被告新ヘイセイ名義に変更する必要があり,手続が煩雑で費用もかかること,名義人が実質的には原告福治(旧ヘイセイ)から被告新ヘイセイに替わったとしても,外見上は「株式会社ヘイセイ」と変化がないことから,大きな問題になることはないと考え,移転登録手続を行わなかった。(乙32)
イ 原告らの権利主張
原告らは,平成17年3月31日,甲山Bが被告新ヘイセイとの顧問契約を終了するのに伴い,被告新ヘイセイに対し,本件各権利が原告らのものであること及び本件各権利の一部を原告福治(旧ヘイセイ)名義に書き換えたことなどを通知した。これを受けて,Cが甲山Bにその真意を尋ねたところ,甲山Bは,同人の手元に残るはずの本件契約の対価5000万円が手元に残っていないなどとして,対価の支払について説明してもらえれば,移転登録手続に協力するなどと述べた。(乙16,32ないし34)
また,同年7月4日,甲山夫妻の代理人として,原告ら訴訟代理人弁護士である林弁護士が,被告新ヘイセイに対し,営業権の対価1億4000万円のうち3500万円のみ支払を受けたが,残り1億500万円の支払を受けていないとして,残金の支払を催告する通知書を送付した。(甲7,乙32)
ウ 訴訟の提起
その後,数回にわたり双方の代理人弁護士の間で内容証明郵便のやり取りが行われ,協議の場が設けられるなどしたが,営業権の対価として支払われた金員の使途等について,原告らが納得せず,本件各権利についての移転登録手続の協力を得ることはできなかった。そこで,被告新ヘイセイは,原告福治(旧ヘイセイ)を被告として,本件各権利のうち,名義変更の行われていないもの等について,移転登録手続等を求めて東京地方裁判所に訴えを提起し(平成17年(ワ)第25884号),同訴訟の係属中に本件訴訟が提起された。その後,東京地方裁判所は,平成17年(ワ)第25884号事件につき,平成20年1月23日,被告新ヘイセイの訴えを全部認容する判決をし,原告福治(旧ヘイセイ)はこれを不服として控訴した(平成20年(ネ)10024号)が,平成21年10月20日,東京高等裁判所は,原告福治(旧ヘイセイ)の控訴を棄却する旨の判決をした。(甲7,10.乙32,42,202)
2  争点(1)(営業権の代金の支払の有無)について
(1)  本件修正合意について
ア F会計士と被告新ヘイセイとの合意
前記1(2)イ(ウ)のとおり,平成14年3月20日のF会計士,C,I及びJの打合せの結果についてのIの報告や,同年4月16日付けのIの被告日本毛織あての報告書には,原告福治(旧ヘイセイ)の現預金,借入金売掛金,買掛金は譲渡対象としない旨の合意が成立したことが記載されていること,前記1(3)キのとおり,Iが,同年5月30日のF会計士との打合せの結果報告のため,N等に対して送付した電子メールには,F会計士が,原告福治(旧ヘイセイ)の債務が譲渡対象とならなかったことを前提とする発言をした旨及びIがF会計士に対し,本件修正合意に係る契約書のひな型を交付して検討を依頼した旨の記載がされていること,本件修正合意を内容とする修正契約書面が実際に作成され,被告新ヘイセイにおいて,被告新ヘイセイ名下に押印がされていること,前記1(3)ウのとおり,同年4月1日以降,被告新ヘイセイの経理担当者であったHは,原告福治(旧ヘイセイ)に関する入出金について,仮受金又は仮払金として処理し,その帳簿を作成し,同年9月30日で仮受・仮払勘定を確定させ,同年10月31日に,それによって確定された被告新ヘイセイの原告福治(旧ヘイセイ)に対する仮受金の弁済をしており,実際に,本件修正合意において対象外とされたものについては,被告新ヘイセイにおいて,被告新ヘイセイとは別に会計処理しており,本件修正合意の内容に従った処理をしていること,こうした一連の会計処理について,F会計士から特段の異議は述べられなかったことなどからすれば,同年3月20日に,被告新ヘイセイとF会計士との間において,上記修正合意が成立していたと認めるのが相当である。
イ F会計士の代理権
前記1(1)アのとおり,F会計士は,原告日本ウェブ加工の代表者であって原告福治(旧ヘイセイ)の実質的なオーナーでもある甲山Bから,本件営業譲渡を成功させ,それに伴う原告福治(旧ヘイセイ)の経理処理を含めた手続を行うことの依頼を受け,前記1(1)イ,エのとおり,本件財務調査に立ち会い,原告福治(旧ヘイセイ)の資金繰りのための融資を双洋貿易に依頼するなど原告らの側の立場から被告らと交渉を行っていること,F会計士は,前記1(3)カのとおり,平成14年7月の決算まで,原告らの会計処理の指示及び税務申告業務の代理を行っていたことなどからすれば,F会計士は,本件営業譲渡に関して原告らから一定の代理権を与えられ,原告らの意向を受けて交渉を行っていたものというべきである。
そして,前記1(1)アのとおり,甲山夫妻は,原告福治(旧ヘイセイ)や原告日本ウェブ加工の経理や資金繰りに携わることはなく,経理担当者に任せきりにして,大まかな方向性以外は把握しておらず,本件営業譲渡の交渉についても,同様にE弁護士やF会計士らに任せていたこと,前記1(1)カのとおり,甲山夫妻は,本件契約の締結に当たって,その具体的な内容は把握しておらず,被告新ヘイセイが原告らの負債等を引き継ぐか否かということについては関心を有していなかったこと,前記1(3)ウ,1(3)クのとおり,F会計士の平成14年4月1日以降行っていた会計処理は,本件修正合意に従うものであったところ,それについて,甲山夫妻からは,甲山Aの退職慰労会の費用処理についての指摘を除き,何ら異論が出されたことはなかったことなどからすれば,本件修正合意についても,原告らが本件営業譲渡の事務についてF会計士に委任した内容の範囲内のものであったものというべきである。
ウ 原告らの主張について
なお,原告らは,原告らとF会計士は契約関係にあったことはなく,金銭的な関係はないこと,F会計士は被告新ヘイセイと顧問契約を締結していること,本件修正合意を書面化した本件修正契約書は,原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工の押印がされないままとなっていることなどから,F会計士が,原告らの代理人であることはないと主張し,甲山B及びF会計士はこれに沿う供述をする。
しかしながら,上記ア,イ記載の事情に加え,本件修正契約書が作成されたのは,本件契約の発効日の後である平成14年6月7日ころであり,本件修正合意に従って諸手続が進められている状況であって,契約書の作成は確認的意味合いを有するにすぎない。また,F会計士が被告新ヘイセイと顧問契約を締結したのは,本件契約及び本件修正合意が成立した後のことであり,F会計士が被告新ヘイセイの顧問会計士となったとしても,法的な影響を受けるものとはいえない。そして,F会計士は結果として原告福治(旧ヘイセイ)から報酬を受け取っていないが,当初から報酬を受け取らない予定であったわけではない。これらのことからすれば,この点についての甲山B及びF会計士の供述は容易に措信することはできず,上記原告らの主張は採用することができない。
エ 小括
以上のとおり,F会計士は,原告らのために本件修正合意を行うための代理権を有していたのであるから,平成14年3月20日の打合せにおける本件修正合意の了承によって,原告らと被告新ヘイセイとの間で,本件修正合意が成立したものと認められる。
(2)  代金の支払
ア 前記1(3)オのとおり,被告新ヘイセイは,平成14年3月15日に,原告日本ウェブ加工の営業権の代金8400万円の一部として,本件預金①に7000万円(本件振込(1))を,同月29日に,原告福治(旧ヘイセイ)の営業権の代金6300万円の一部として,本件預金②に1500万円(本件振込(2))を,同年4月1日に,原告福治(旧ヘイセイ)の営業権の代金6300万円の一部として,本件預金③に4500万円(本件振込(3))を,同月30日に,原告福治(旧ヘイセイ)及び原告日本ウェブ加工の各営業権の代金の残金として,本件預金③に1700万円(本件振込(4))をそれぞれ振り込んでいる。
上記各振込みのうち,本件振込(1)は,前記1(2)イ(イ)のとおり,原告らの代理人であったF会計士の指示に基づき,原告日本ウェブ加工の営業権の代金の支払としてなされたものである。また,本件振込(2)ないし(4)についても,前記1(3)オ(イ)のとおり,振り込まれた金銭の大半が,原告福治(旧ヘイセイ)の債務の弁済に充てられており,原告らのために使用されたものと認められること,平成17年3月に至るまでF会計士や甲山夫妻など原告らの関係者から営業権の代金の支払について何ら異議が出されていないこと,前記1(2)イ(ウ)のとおり,平成14年4月1日までに営業権の対価として1億3000万円を振り込んだ旨の記載があることなどからすると,本件振込(2)ないし(4)についても,原告らの指示に基づき,原告らの営業権の代金の支払としてなされたものと推認される。これに加え,本件修正合意により,預貯金や債務が譲渡の対象から除外されたのであるから,本件預金①ないし③は,原告らに帰属すべきものであることも併せ考えれば,上記各振込みは,営業権の代金の支払として有効なものと認められる。
イ 原告らの主張について
これに対し,原告らは,上記各振込みについて,①被告新ヘイセイが原告らに支払った金銭は,被告新ヘイセイが原告らから引き継いだはずの債務の弁済に使用されていること,②原告らは,被告新ヘイセイに対し送金先を指定していないこと,③平成14年3月4日,原告らは被告新ヘイセイに対し,預金通帳,手形帳,小切手帳,キャッシュカード,銀行印,代表者印,印鑑カード等をすべて引き渡しており,上記各振込みは被告新ヘイセイが管理する預金口座への振込みであったことから,上記各振込みは有効な弁済とはいえないと主張する。
しかしながら,前記1(2)イ(ウ),1(3)キのとおり,本件修正合意によって,被告新ヘイセイは原告福治(旧ヘイセイ)の債務を承継しないこととされたのであり,振り込まれた金銭が,原告福治(旧ヘイセイ)の債務の弁済に使用されたことは,弁済の有効性を否定する根拠とならないことは明らかである。また,上記各振込みが,原告らの指示に基づくものと推認されることは前記アのとおりである。さらに,原告らが,被告新ヘイセイに対し,平成14年3月4日に,預金通帳,手形帳,小切手帳,キャッシュカード,銀行印,代表者印,印鑑カード等をすべて引き渡したことについては,これを認めるに足りる証拠はない。仮に,本件預金①ないし③を,被告新ヘイセイにおいて管理し入出金処理を行っていたとしても,同事実は,前記1(3)オ(イ)のとおり,本件①ないし③に振り込まれた金銭が原告らのために使用されていることにかんがみれば,弁済の有効性を否定することにつながるものとはいえない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
3  争点(2)(被告新ヘイセイの不当利得の有無)について
(1)  原告福治(旧ヘイセイ)は,平成14年3月4日に,被告新ヘイセイに原告福治(旧ヘイセイ)の財産管理権が移転したことを前提に,原告福治(旧ヘイセイ)の手元に本来残存してしかるべき1億6984万7604円が原告福治(旧ヘイセイ)の手元に残っておらず,同金額は,被告新ヘイセイが法律上の原因なく利得したと主張する。原告福治(旧ヘイセイ)の上記各主張は,本件修正合意の成立を前提とするものか否か必ずしも明らかではないが,本件修正合意が成立したことは前記のとおりであるから,本件修正合意の成立を前提として,原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張につき以下検討する。
(2)  原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張は,平成14年3月4日に原告福治(旧ヘイセイ)の財産管理権が被告新ヘイセイに移転したことを前提としている。
しかし,前記1(2)アのとおり,同月中は,社印・銀行印及び銀行通帳・会社キャッシュカードは甲山Aが管理しており,同月の経理は,原告福治(旧ヘイセイ)のGが中心となって行っていたのであるから,同月において,被告新ヘイセイが原告福治(旧ヘイセイ)の財産を管理していたとは認めることはできず,原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張はその前提を欠く。
(3)  また,原告福治(旧ヘイセイ)は,債務を全て弁済しても原告福治(旧ヘイセイ)の手元には1億6984万7604円が残るはずであるとするが,本件修正合意を前提とするのであれば,被告新ヘイセイは,原告福治(旧ヘイセイ)の債務を承継しないのであるから,原告福治(旧ヘイセイ)は,金融機関や個人からの借入金だけではなく,買掛金や税金等の支払義務も負う(なお,税金については本件契約上も原告福治(旧ヘイセイ)の負担)ところ,原告福治(旧ヘイセイ)は,上記金額の算定に当たり,平成14年3月31日までに発生した買掛金や税金等について一切考慮しておらず(なお,平成14年3月31日までに発生した原告福治(旧ヘイセイ)の買掛金等の債務があることは別表1のとおり原告らも認めるところである。),原告福治(旧ヘイセイ)の主張する上記金額の算出方法が不適切なものであることは明らかである。さらに,本件修正合意を前提とするのであれば,算定の上で基礎となる数字は,本件契約の引渡期日である同年4月1日当時のものを採用すべきであるが,原告福治(旧ヘイセイ)は,金融機関からの借入金額及び預金残高は同年2月末日のものを,金融機関以外の借入金については同年3月13日時点のものを採用するなど,同年4月1日とは異なる時点のものを採用している上,個々の項目によりその時点は区々であり,この点からも原告らの主張する金額の算出方法は不適切といえる。
上記のとおり,手元に1億6984万7604円が残るはずであるとの原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張は,金額の算出方法が不適切であり,他方,被告新ヘイセイが,原告福治(旧ヘイセイ)の主張するような残存すべき金銭はないと主張していることを併せ考えると,原告福治(旧ヘイセイ)の別表1,2における指摘を考慮しても,債務を全て返済した後に原告福治(旧ヘイセイ)の手元に一定の金銭が残るはずであったと認めることはできないというべきである。
したがって,原告福治(旧ヘイセイ)において,損失が生じていると認めることはできず,また,被告新ヘイセイにおいて,利得があるとも認めることはできない。
(4)ア  なお,原告らは,第12回弁論準備手続(平成21年1月13日)において,「被告株式会社ヘイセイが利得した個別の金額については,主張しない。」ことを明らかにし,原告ら保有の複数の口座間における資金移動,売掛金の入金,受取手形の入金,被告新ヘイセイの原告福治(旧ヘイセイ)に対する仮払金の処理について,別表1及び2の「認否,コメント」欄,右端欄(欄名なし),「認否とコメント」欄の各記載のとおり主張するも,それ以上の具体的な事実等については主張をしない。これは,原告福治(旧ヘイセイ)が,利得や損失の存在について,被告らが主張・立証責任を負う旨主張していることによるものとも解される。しかしながら,不当利得返還請求権において,利得や損失の存在等は,不当利得返還請求権の存在を主張するものが主張・立証責任を負うのであり,本件において,被告新ヘイセイの利得や原告福治(旧ヘイセイ)の損失等につき,原告福治(旧ヘイセイ)に主張・立証責任があることは明らかであり,原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張は,採用できない。
イ  さらに,原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張では足りないことについて付言する。被告新ヘイセイは,本件預金①ないし③,東京信用金庫の株式会社ヘイセイ代表取締役甲山A名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉),巣鴨信用金庫の株式会社ヘイセイ名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉),株式会社東日本銀行の株式会社ヘイセイ代表取締役甲山A名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉),株式会社みずほ銀行の株式会社ヘイセイ名義の普通預金口座(口座番号〈省略〉),王子信用金庫の株式会社ヘイセイ代表取締役甲山A名義の当座預金口座(口座番号〈省略〉)及び朝日信用金庫の株式会社ヘイセイ名義の当座預金口座(口座番号〈省略〉)について,出入金の摘要及びその相手方につき,一応の説明をしているところ,原告福治(旧ヘイセイ)は,これに対し認否するだけで,原告福治(旧ヘイセイ)が損失として主張しているものと思われる出金について,これが被告新ヘイセイの利得となっていることについては具体的な主張・立証をしない。
原告福治(旧ヘイセイ)は,一部の項目については,①乙第35号証の貸方に記載されている,②被告新ヘイセイが負担すべきリース料である等と主張する。しかしながら,①の乙第35号証の記載は,当該項目に係る出金が被告新ヘイセイの仮払金の補助元帳の貸方に記帳され,被告新ヘイセイの原告福治(旧ヘイセイ)に対する返還債務として処理されたことを意味するものであり,被告新ヘイセイの会計処理としては精算し返済されたことをうかがわせるものであるから,乙第35号証の上記記載をもって,被告ヘイセイが利得していることを推認させるに足りない。②のリース料についても,リース料は被告新ヘイセイが原告福治(旧ヘイセイ)から譲り受けた車両の未払リース料であるところ,被告新ヘイセイは原告福治(旧ヘイセイ)に対し,車両の譲渡代金を支払っており,リース料の支払は譲渡人である被告福治(旧ヘイセイ)の負担となるべきものである旨の主張に照らし,上記リース料が被告新ヘイセイの利得になるものと認めるに足りない。その他の原告福治(旧ヘイセイ)主張の事実についても,直ちに被告新ヘイセイの利得となったことを推認するには足りない。
ウ  また,総勘定元帳(甲94,95)に記載された売掛金・受取手形の入金についても,入金確認できたもののほかは,行方不明である等と主張している。しかしながら,被告に利得があるというためには,行方不明であるというだけでは足りず,行方不明の売掛金を被告新ヘイセイが利得していることまで主張し,立証する必要があるところ,その旨の主張・立証はない。
エ  そして,被告新ヘイセイの原告福治(旧ヘイセイ)に対する仮払金の処理について,原告福治(旧ヘイセイ)は,別表2の「認否とコメント」欄記載のとおり,借方(原告福治(旧ヘイセイ)の被告新ヘイセイに対する債務)欄に記載された金員の多くにつき,①証拠がないこと,②平成14年4月以降,従業員の給与等は発生しないこと,③甲山Aの役員報酬は被告新ヘイセイが負担すべきであること等の理由をあげて,否認している。しかしながら,原告福治(旧ヘイセイ)の従業員の平成14年3月21日から同月31日までの給与は同年4月末に支払われたこと(乙190),同年4月以降も原告福治(旧ヘイセイ)の代表者甲山Aの役員報酬が支払われていたこと(甲69),解雇された従業員の給与が同年5月以降も支払われたこと(甲69,弁論の全趣旨),同年3月31日までに原告福治(旧ヘイセイ)が負担した債務の一部は,同年4月以降も存在していたこと(甲68,69)を併せ考慮すれば,原告福治(旧ヘイセイ)が否認する項目に係る金員を,被告新ヘイセイが利得したと推認するに足りず,他に被告新ヘイセイがこれらの金員を利得したことを認めるに足りる証拠はない。
(5)  以上のとおり,原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張は,その前提を欠き,また,被告新ヘイセイの利得や原告福治(旧ヘイセイ)の損失があるとも認められないことから,同主張には理由がない。
4  争点(3)(被告らの不法行為責任(使用者責任)の有無)について
原告福治(旧ヘイセイ)は,原告福治(旧ヘイセイ)の手元に本来残存してしかるべき金額が残っていないのは,被告日本毛織の従業員であり,被告新ヘイセイの代表者であったI又は被告日本毛織の従業員であったHが,原告福治(旧ヘイセイ)に残るはずであった金銭について,横領等の不正な行為により領得したからであり,被告日本毛織は,IやHに対する監督義務等を怠ったなどとして,被告新ヘイセイは不法行為責任,被告日本毛織は不法行為責任または使用者責任を負うと主張する。
上記主張について,争点(2)と同様,本件修正合意の主張を前提として検討するに,原告福治(旧ヘイセイ)の手元に金銭が残ると認めることができないことは前記3(3)のとおりであり,原告福治(旧ヘイセイ)において損害が生じているとは認めることはできない。そもそも,原告福治(旧ヘイセイ)は,IないしHが横領等の不正な行為を行ったと主張するのみで,不法行為の具体的内容を特定しておらず,主張自体失当というべきであるし,本件証拠上,IやHが何らかの不法行為を行ったと認めるに足りる証拠もない。
したがって,原告福治(旧ヘイセイ)の上記主張には理由がない。
5  結論
以上のとおり,原告らの請求にはいずれも理由がないから,これらを棄却することとし主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 本間健裕 裁判官 田口治美 裁判官 小野本敦)

 

〈以下省略〉

 

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