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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(94)平成28年 2月26日 岡山地裁 平26(ワ)143号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(94)平成28年 2月26日 岡山地裁 平26(ワ)143号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成28年 2月26日  裁判所名  岡山地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)143号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2016WLJPCA02266018

要旨
【先物取引被害全国研究会(要旨)】
◆1.本件ファンドは、被告会社(適格機関投資家等特例業務届出者)が営業者として勧誘・運営を行う匿名組合形式のファンドであり、外国為替証拠金取引や日経225を出資対象としていた。原告は昭和34年生まれ、大学中退後、長年自動車組立作業に従事していたが、本件出資当時はうつ病等の精神疾患に罹患して勤務先を退職し無職、預貯金は約2000万円(生活費として不可欠)であった。本件以前に投資経験はない。
◆2.本件ファンドは非常に高リスク(デリバティブで運用、出資者保護のための制度的保障や情報提供がない、運用利益に関わりなく高い配当金・営業者報酬を支出するなど)であり、原告の実情からすると適合性原則の要請は相当高度であったにもかかわらず、原告がリスク等を的確に理解できるだけの説明を行わなかったとして説明義務違反を認めた。
◆3.原告の出資額から受領した配当金を控除した額を損害と認めた。過失相殺なし。
◆4.被告会社、被告会社営業員に不法行為責任を認めたほか、被告会社の代表取締役についても、業務を任せきりにして説明義務違反を看過するに至ったものであり重過失による任務懈怠があるとして会社法429条1項の責任を認めた。

出典
先物取引裁判例集 75号327頁

参照条文
民法709条
民法715条1項
会社法429条1項

裁判年月日  平成28年 2月26日  裁判所名  岡山地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)143号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2016WLJPCA02266018

岡山市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 加瀬野忠吉
同 村上友紀
岡山市〈以下省略〉
被告 株式会社モモトラスト
同代表者代表取締役 Y1
東京都〈以下省略〉
被告 Y1
岡山市〈以下省略〉
被告 Y2
上記三名訴訟代理人弁護士 田村尚史
同訴訟復代理人弁護士 宮平靖子

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して1706万4623円及びこれに対する平成25年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
被告らは,原告に対し,連帯して1815万円及びこれに対する平成25年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告らの匿名組合(以下「本件ファンド」という。)に出資するように原告を勧誘した行為について,本件ファンドへ出資させる行為そのものが金融商品取引まがいの詐欺的取引への勧誘にあたって違法な取引行為にあたり,また,同勧誘に適合性の原則,説明義務,断定的判断の提供禁止に反する違法な勧誘行為があったとして,①被告株式会社モモトラスト(以下「被告会社」という。)の従業員である被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対しては,原告に現に違法な勧誘行為をした者であるとして,民法709条による不法行為責任に基づき,②被告会社に対しては,従業員被告Y2の不法行為に係る使用者責任(民法715条1項本文),及び当該違法行為が被告会社固有の行為であるとする民法709条による不法行為責任並びに金融商品の販売等に関する法律(以下「金融商品販売法」という。)5条に基づき,③被告兼被告会社代表者Y1(以下「被告Y1」という。)に対しては,被告会社代表者として従業員である被告Y2に組織的に違法な勧誘行為をさせたとする民法709条による不法行為責任,及び代表取締役でありながら被告会社の営業が適法なものになるように業務執行を行うべき注意義務を怠ったとして会社法429条1項に基づき,原告が被った損害及びこれに対する最後の支出日である平成25年6月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  争いのない事実等
以下の事実は,当事者間で争いがないか,括弧内掲記の証拠(証拠の枝番号については,括弧を付して表記する。)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。
(1)  当事者等
ア 原告は,昭和34年○月○日生まれの男性で,平成25年4月20日に当時の勤務先であったa株式会社(以下「当時勤務先」という。)を退職した者である。原告には,本件ファンド出資以外に,投資・投機等の取引の経験はない(甲19)。
イ 被告会社は,金融に関する国内及び国外の総合コンサルタント業務等を目的とする株式会社であり,本件当時,金融商品取引法63条に定める適格機関投資家等特例業務に関する届出をしていた。
ウ 被告Y1は,原告が本件ファンドに出資した当時,被告会社の代表取締役であった者である。
エ 被告Y2は,原告が本件ファンドに出資した当時,被告会社の統括管理責任者兼ファンドアドバイザーの役職にある従業員であり,原告に対して,本件ファンドへの出資を勧誘した者である。
(2)  本件ファンドについて
本件ファンドは,平成25年2月に設立された桃の華2号という匿名組合で,被告会社が適格機関投資家等特例業務として顧客から出資金を募り,外国為替証拠金取引(FX取引)や日経225に運用資金を提供して,運用益を顧客の出資金に応じて分配することを予定しており,1口1万円を基準価格とする(甲1)。
本件ファンドには,適格機関投資家として,YH投資事業有限責任組合(以下「本件投資組合」という。)のみが出資し,その他は原告を含めて一般の投資家が出資した(甲14,15,乙21)。
(3)  本件に至る経緯
ア 平成25年5月15日,原告は,出資口数を1000口とする「桃の華2号契約兼口座開設申込書」に署名押印し,被告会社との間で,匿名組合出資契約を締結した(甲3。以下,当該契約を「本件第一契約」という。)。
同月16日,原告は,被告会社に対して,出資金1000万円及び手数料100万円を支払った(甲5,7)。
イ 平成25年6月10日,原告は,出資口数を500口とする「桃の華2号契約兼口座開設申込書」に署名押印し,被告会社との間で,匿名組合出資契約を締結した(甲4。以下,当該契約を「本件第二契約」といい,本件第一契約と本件第二契約を総称して「本件契約」という。)。
同日,原告は,被告会社に対して,出資金500万円及び手数料50万円を支払った(甲6,8)。
ウ 被告会社は,平成26年10月31日に本件ファンドを閉鎖することとし,原告に対して,「桃の華2号の閉鎖のお知らせとお詫び」と題する書面を送付し,本件ファンドを閉鎖するとの連絡をした(甲11,弁論の全趣旨)。
2  主要な争点
(1)  被告Y2の原告に対する勧誘行為の違法性(以下の点を含む。)
ア 本件ファンドへ出資させることが詐欺的行為に該当するか否か
イ 著しい適合性原則違反による違法性
ウ 説明義務違反による違法性
エ 断定的判断の提供による違法性
(2)  損害額
第3  主要な争点に対する当事者の主張
1  争点(1)について
【原告の主張】
(1) 本件ファンドへ出資させることが詐欺的行為に該当するか否か
ア(ア) 被告会社は,適格機関投資家等特例業務を行って広く一般の人に出資を勧誘して資金を集めることを目的として,被告Y2が被告Y1に出資を依頼して設立された会社である。また,適格機関投資家等特例業務を行うために被告Y2がA(以下「A」という。)に依頼して,本件投資組合を設立させて本件ファンドへ出資させている。さらに,被告Y2は,本件ファンドの一般顧客に対する出資の勧誘,出資及び運用に至るまで中心となっている。
被告Y2は,これまでも投資詐欺ないし違法な投資勧誘を繰り返しており,本件ファンドもその一環として行われたものである。
(イ) 本件ファンドへ出資している適格機関投資家は,本件投資組合のみであり,法律上必要とされる適格機関投資家数を形式的には満たすものの,その他の出資者は,全て一般の投資家である。加えて,本件投資組合は,本件ファンドが適格機関投資家等特例業務の要件を満たすために設立されたものにすぎず,その出資額はわずかで,一般投資家から多額の資金を集めている。
これらから,本件ファンドは,脱法ファンドというべきである。
(ウ) 本件ファンドでは,原告ら一般投資家に対して当期配当名目で毎月配当が支払われているが,実際には運用利益の分配ではなく,「総出資口数×100円」で計算されるものであり,出資額の一部(1%相当額)の払戻しに過ぎない。
原告ら一般投資家は,本件ファンドの運用状況を全く知らされず,これを把握する手段がなく,被告会社によって一方的に本件ファンドを閉鎖された。
(エ) 被告会社は,本件ファンドの出資者から契約締結時に出資額10%を契約時報酬(手数料)として受領するのみならず,毎月300万円の期間報酬を受領しており,本件契約の契約書では上限が500万円と定められているのみで,当該期間報酬の計算方法が明らかにされていない。
(オ) これらに照らせば,本件ファンドは,匿名組合員が出資した出資金の大部分が数年間のうちに被告会社によって当然に失われ,その間に原告ら一般投資家が得られる配当はわずかである仕組みとなっており,当初から破たんすることが必至で,投資を行う者に適正な損益を帰属させることを目標として組成され管理された金融商品として不適切である。
(カ) 以上によれば,本件ファンドは,被告らによる詐欺の手段に当たり,投資といえるものではなく,このような本件ファンドに出資金を拠出させることは出資者に対する関係において不法行為というべきである。
イ 被告らは,原告の上記アの主張が本件ファンドの運用益を考慮していないとして本件ファンドへの出資勧誘行為が詐欺的取引にあたることを否定するものの,本件ファンドの運用によって利益が生じたことから配当された事実はないから,当該被告の主張は,反論たり得ない。
(2) 著しい適合性原則違反について
原告は,本件契約の締結当時うつ病に罹患しており,また,投資・投機取引の知識,経験は全くなかったから,本件ファンドの営業の対象であるデリバティブ取引の内容や仕組み,ひいては本件ファンドへ出資することの意味や危険性を理解することは不可能であった。
被告Y2は,このような原告に対して,本件ファンドへの出資を勧誘し,取引を行わせたものであるから,当該勧誘・取引行為は,適合性の原則に著しく違反し,民事上も違法である。
(3) 説明義務違反について
被告Y2は,原告が被告会社と本件ファンドへの出資を勧誘するに際して,原告には精神疾患があり,通常期待できる合理的判断能力を有していないこと,投資・投機取引の経験や知識が全くないこと,及びそもそも本件ファンドの仕組みを理解するのは容易ではないことを踏まえて,本件ファンドの仕組みや具体的なリスクを説明すべき信義則上の義務があったにもかかわらず,被告Y2は,原告に対する本件ファンドの勧誘に際して,これらの説明義務を果たしていない。
また,本件ファンドの販売には金融商品販売法の適用があり,被告会社は,本件ファンドの販売に際して,顧客の知識,経験,財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らして,当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度により,本件ファンドの重要事項を説明する義務があるにもかかわらず,被告Y2は,これらの説明義務を果たしていない。
したがって,被告Y2には,本件ファンドへの勧誘に際して,原告に対する説明義務懈怠があったというべきである。
(4) 断定的判断の提供について
本件ファンドへの出資は,そのファンドの運用(営業)の対象が外国為替証拠金取引等のデリバティブ取引であるから,取引により利益を生ずること,又は損失を取り戻せることが確実であると誤解されるような断定的な判断を提供して取引を行わせることは,それ自体違法である上,本件ファンドの販売に適用のある金融商品販売法4条にも禁止されている。
にもかかわらず,被告Y2は,本件ファンドへの出資を勧誘するに際して,「損はしない。」,「絶対に儲かる。」などと断定的判断を提供して本件ファンドを販売しており,被告Y2には断定的判断を提供した違法がある。
【被告らの主張】
(1) 本件ファンドへ出資させることが詐欺的行為に該当するか否かについて
ア(ア) 被告Y2が被告Y1に出資を依頼して被告会社を設立させ,適格機関投資家等特例業務を行うためにAに依頼して本件投資組合を設立させて出資させていることは認める。
しかし,Aは投資目的で本件投資組合を設立して本件ファンドに出資しており,専ら金融商品取引法上の要件を形式的に整える目的のみで行われたものではない。また,被告Y2が過去に投資詐欺や違法な投資勧誘を行ったことがあったとしても,それぞれの会社に従業員として勤務していたからにすぎず,本件ファンドとの関連を基礎付けるものではない。
(イ) 本件ファンドに出資している適格機関投資家が本件投資組合だけで,その余の出資者が一般の投資家であるとしても,直ちに脱法ファンドに当たるとはいえない。
(ウ) 各匿名組合員に対して各計算期間の運用状況を書面等にて報告する義務は,商法や匿名組合契約書にこれらに関する規定はなく,本件契約の善管注意義務規定や各計算期間に配当報告書が送付されていた事実から当然に導かれるものではないから,本件ファンドにおいて,被告会社から原告ら一般投資家に対して何ら報告がなくても不自然,不合理ではない。
(エ) 「期間報酬」は,毎月発生する人件費等の経費で,本件ファンドを運用するために必要なものであり,その上限が月額500万円と明確に定められ,そのとおり運用していた。期間報酬を計算して留保利益がある場合には,匿名組合員に対して特別配当を分配する予定とされ,それでもなお留保利益がある場合には被告が成功報酬を取得できるとされており,被告が成功報酬を取得したことはない。
本件ファンドにおける被告会社の期間報酬として,300万円を得ているものの,当該期間報酬は,被告会社の事務所賃料,光熱費,人件費等を内容とし,当時の被告会社の事務所賃料月額二十二,三万円,被告会社の従業員が正社員三,四名とパート・アルバイト十名程度がいたことから人件費として月額200万円程度が必要であり,当該金額は,匿名組合員から預かった出資金を運用する上で被告会社を維持するために必要かつ相当な費用である。
(オ) 原告への配当金や被告会社の期間報酬から本件ファンドでは出資金の大部分が被告会社によって当然に失い,原告ら一般投資家が得られる配当がわずかであるとの原告の主張は,本件ファンドの運用益を一切考慮していないから適当ではない。
本件ファンドの事業計画は,3億円の出資を募って出資金を運用し,月々出資金の1%の配当を行って300万円の期間報酬を得るというもので,月に出資金の2%相当の利益を上げることができれば十分に配当金と期間報酬を拠出することができる計画であり,月に2%の利回りは十分に実現可能で,当初から破たんすることが必至であったとはいえない。
現に,本件ファンドの運用によって利益が生じた月もあった。
イ 以上によれば,本件ファンドへ出資を勧誘する行為そのものが詐欺的行為にあたるとはいえない。
(2) 適合性原則違反について
ア 原告が被告Y2に対して本件契約締結までに精神疾患に罹患していることや当該精神疾患に罹患していたために当時勤務先を退職したことを説明したことはない。精神疾患は外見上判断し難いから,原告から申告がなければ原告の症状を認識できないとしてもやむを得ない。また,うつ病には,様々な症状があり,およそ投資に関する判断能力に欠けるということはできない。
イ 原告は,本件ファンドへの出資以前から投資に関心を持ち,被告Y2の本件ファンドの取引の仕組みやリスクの説明に対して,その内容を理解の上,資金が減る場合について質問し,被告Y2の説明に対して自ら経済問題に言及して自分の考えを述べ,投資に関して自ら勉強する意向を示し,本件第一契約締結後には自らブラジル債や金の投資について相談を持ちかけて本件第二契約を決めるなど投資に関する知識や意欲を有していた。
ウ 原告は,本件ファンドへの投資は,原告の余剰資金を活用することを目的としており,被告Y2に対して,当初投資金額は500万円と述べていたものの,当時有していた資金以外に退職金が700万円以上入る予定であるので,1000万円は5年間預けても使う予定がないと答えるなど,原告の財産状況に照らしても適当なものであった。
エ 以上から,原告の状況に照らしても,本件ファンドへの勧誘につき,適合性原則に違反していない。
(3) 説明義務違反について
ア 被告Y2は,本件契約締結に至るまで,原告が精神疾患に罹患していることを認識しておらず,これを前提に説明をすべきであることは予見できなかった。
イ 被告Y2は,被告会社作成のパンフレット,為替チャート,新聞折込みなどを用いて本件契約の取引の仕組みやリスクなどについて説明をし,余剰資金があれば出資するように勧誘し,本件ファンドのリスクについて記載された契約書前交付書面,重要事項説明書を交付した。
原告も,本件ファンドの内容を把握して元本割れが生じる可能性があることも認識し,その説明に対して自ら経済問題に言及して自身の考えを述べ,1000万円は5年間預けても使う予定がないなどと話していたことから,被告Y2の説明を理解していた。
また,本件第二契約の際にも,原告のブラジル債や金についての質問につき,被告Y2は,これらのメリット・デメリットに併せて本件ファンドへのメリット・デメリットについて再度説明し,原告は本件第二契約を締結するに至っている。
これらから,被告Y2は,原告に対する説明義務を果たしているというべきである。
(4) 断定的判断の提供について
ア 被告Y2は,原告に対して,本件ファンドへの勧誘や本件契約の締結に際して,「絶対に儲かる。」,「損はしない。」などと言った事実はない。
イ 被告Y2は,原告に対して,本件ファンドが元本割れを生じる可能性のある商品であり,原則として途中解約できないことを説明しており,原告もその旨を理解していた。
ウ したがって,被告Y2が原告に対して断定的判断の提供をしたという事実はない。
2  争点(2)について
【原告の主張】
(1) 原告の交付金額について
原告は,本件ファンドへの出資に際して,被告会社に,平成25年5月16日に1100万円,同年6月10日に550万円を交付したから,被告らの不法行為によって,1650万円の損害を被った。
(2) 弁護士費用
原告は,上記(1)の損害を回復するために弁護士を委任しているから,弁護士費用として,上記交付金額の約1割に相当する165万円が被告らの不法行為と相当因果関係にある損害というべきである。
【被告の主張】
争う。
第4  当裁判所の判断
1  争いのない事実等に加え,証拠(各事実末尾記載)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠は採用できない。
(1)  原告は,大学中退を最終学歴とし,昭和63年から二十数年間にわたって当時勤務先で自動車の組立作業に従事していたものの,平成22年7月7日に身体表現性障害の精神疾患に罹患して,約2年半の間休職した後,平成25年4月20日に当時勤務先を退職し,本件契約時,労務不能で休業を要すると診断されており,無職であった。なお,原告の本件契約当時の傷病名は身体表現性障害,うつ病であった(甲19ないし21,原告本人)。
本件契約時の原告の預貯金は,当時勤務先の退職金を含め,約2000万円の預貯金を有していた(甲19)。
(2)ア  被告Y1は,被告Y2から適格機関投資家等特例業務を行うための会社設立の依頼を受けて,本件ファンドを閉鎖した際には純利益の半分程度を受け取ることを約束して,それまでに投資によって得た利益から1000万円を出資し,平成22年2月24日に被告会社を設立した。その際,被告Y1が代表取締役に就任したのは,被告Y2が営業を担当することから,他の人物を代表取締役にした方が営業上の利便性があることを理由とした(乙19,20,被告Y1本人,被告Y2本人)。
被告Y1は,被告Y2が行う本件ファンドの勧誘や運用に関して詳しい内容を把握せず,被告会社の業務についてもほとんど知らないままで関与もせず,被告Y2から事業の概括的な決定内容の報告を受けるに留まった(被告Y1本人)。
イ  また,Aは,被告会社の設立を検討していた被告Y2から,適格機関投資家が必要であるとして投資事業有限責任組合を設けて被告会社が運営するファンドへ出資するように依頼され,平成22年4月1日,本件投資組合を設け,被告会社が運営するファンドに290万円(本件ファンドについては70万円)を出資した。なお,本件投資組合は被告会社が運営するファンド以外には出資していない(甲14,15,乙20,21,証人A,被告Y2本人)。
ウ  被告Y2は,本件ファンドを設けるにあたって,被告会社の報酬など契約内容について,自ら意見を述べながら税理士と相談して策定した。また,被告会社が本件ファンドの出資金を募るのに電話勧誘を経て100人程度の勧誘をした上,実際に二十人弱の出資者を募った(被告Y2本人)。
(3)  平成25年5月15日午前,被告Y2は,事前に電話をした上で,原告の自宅を訪問し,また,同日午後5時頃,原告は,被告Y2に連れられて,被告会社を訪れ,この間,被告Y2と原告との間で,以下のとおりのやりとりがあった(甲19,乙20,原告本人,被告Y2本人)。
ア 被告Y2は,被告会社作成のパンフレット(甲1)や為替チャート,新聞折込みなどを用いて,本件ファンドの内容,計算式などの為替の仕組み,投資をした場合の毎月利益が上がっていなくても配当すること,金額が大きければ大きいほど配当も大きくなることやリスクを説明し,原告から投資の経験がないこと,仕事をできなくなって退職したこと,金額が定かではないものの退職金を得たことや今後2年間くらいは無職で生活する予定であることを聞いた。その際の原告と被告Y2との会話で,ギリシャに関する経済問題やユーロの値動きが話題に上がった(乙20,原告本人,被告Y2本人)。
イ 原告は,被告Y2との会話の中で,出資金額を当初500万円と述べていたものの,被告Y2からできれば多くするようにとの話を受けて,1000万円を出資することとした(原告本人,被告Y2本人)。
ウ 被告Y2は,原告に対して,15頁にわたる契約締結前交付書面(重要事項説明書)を初めて示し,下線を引いたり,印を付けたりしながら,10分から20分くらいで記載内容を説明した。
その契約締結前交付書面の下線が引かれたり,印が付けられたりした部分には,概ね,以下の記載がある。なお,当該契約締結前交付書面には,以下の(イ),(ウ)の他にも,匿名組合出資に係る金融商品取引契約の概要,匿名組合に係るリスクとして①信用リスク,②流動性リスク,デリバティブ取引にかかるリスクとして③価格変動リスク,④レバレッジ効果によるリスク,⑤流動性リスク,⑥OTC(相対取引)のリスク,共通リスクとして⑦電子取引システムのリスク,⑧税制,関連法制の変更によるリスク,⑨手数料,証拠金,スワップ金利の変更によるリスク,⑩信用リスクについて,個別に説明する記載があるものの,当該箇所には,下線が引かれたり,印がつけられたりはしていない。(甲2,乙20,原告本人,被告Y2本人)。
(ア) 出資者は,営業者に対して,契約時報酬として,匿名組合出資時に匿名組合出資金総額の10%相当額の手数料(消費税及び地方消費税を含む。)を支払う。また,各計算期日に,期間報酬として,当期配当を分配した残額の全部又は一部を支払う。期間報酬は,月額500万円を超えないものとする。さらに,特別配当の分配を行って留保利益がある場合には,成功報酬として,残額の全部又は一部を支払うことがある。営業に関して,これらの報酬以外には一切手数料がかからない。
(イ) 結果として,匿名組合出資金について損失が生じるおそれがある。
(ウ) 税制による影響
(エ) 当該匿名組合出資に関する取引は,金融商品取引法37条の6に基づくクーリング・オフの規定は適用されない。
(オ) やむを得ない事由がある場合を除き,契約期間中の解約脱退はできない。出資金の返還を求めることもできない。やむを得ない場合がある場合の解約により行われる出資対象事業持分に係る財産の分配に係る金銭の計算方法,支払方法及び支払予定日については定めがある。
エ 原告は,「桃の華2号 契約前確認書」と題する書面において,①事前交付書面の内容と商品の説明を受けて書面を受け取ったか,②本件ファンドにはリスクがあり,元本割れを生じる可能性があることを理解したか,③自己判断による自己責任での取引であることを理解したか,④預け金は自己資金の範囲内であるか,⑤10%相当の取引手数料が契約当初に要することを理解したか,⑥途中解約をすることが原則できないことを承知しているか,⑦配当金が配当されないことがあることを理解したかなどの問いに対して,被告Y2と確認しながら,いずれも自ら「はい」に丸印をつけて,署名押印した(乙1,原告本人,被告Y2本人)。
オ 原告は,12頁にわたる契約書につき,改めて詳しい説明を受けることはなく,同契約書に添付された契約兼口座開設申込書に署名押印した。
その契約書には,以下の定めがある(甲3,原告本人)。
(ア) 本契約は,匿名組合員と被告会社との間における営業者のデリバティブ取引の運用資金に対する匿名組合員の匿名組合出資に関する取決めを記載する。
(イ) 運用期間は,平成25年2月から平成30年1月末日までとする。
(ウ) 計算期間は,平成25年2月1日から同月28日までを第1期とし,以降は,毎月1日から計算期日までの期間をいう。
(エ) 当期配当は,「前計算期日の総出資口数×100円」として計算する。
(オ) 匿名組合員は,被告会社に対し,本件契約締結日に,契約時報酬として,匿名組合員出資金とは別に10%相当額を支払うものとする。
(カ) 被告会社は,各計算期間において,期間報酬として,当期配当を分配した残額の一部または全部を取得する。
(キ) 期間報酬は,月額500万円を上限とする。
(ク) 原則として,中途解約ができない。
(4)  平成25年5月16日午前,被告Y2は,原告から出資金及び手数料合計1100万円を受領した(甲5,7,19)。
(5)  平成25年6月10日,原告は,被告Y2との電話で,本件ファンドに500万円を追加投資することが話題となり,本件第二契約を締結することとし,その後,被告Y2に対して,出資金及び手数料合計550万円を交付した(甲4,6,8,19,乙18,20,原告本人,被告Y2本人)。
(6)  平成25年6月17日,原告は,被告Y2に対して,本件ファンドへの出資契約について,一部解約したいとの申し出をしたものの,被告Y2は,本件契約は契約書にも記載のとおり解約できないと返答した(甲19.乙20)。
(7)  本件ファンドの運用状況等
ア 本件ファンドでは,被告会社の被告Y2その他被告従業員2名が投資判断をし,インターネットを利用したオンライン専用取引を扱う上田ハーロー株式会社(以下「上田ハーロー」という。)に対して,オンラインで注文,照会及び出金依頼等の取引を行っていた。被告会社は,出資者用口座及び上田ハーローとの間の取引用口座を利用して被告会社の金員の管理を行っており,被告会社が匿名組合員から受領した出資金は出資者用口座に一時保管して取引用口座への送金を経て,上田ハーローにおける取引口座へ入金された(乙2ないし5,14,18,20,被告Y2本人)。
イ 本件ファンドは,当初3億円の出資金を集め,5年間運用し,毎月2%の利益を見込んでいたものの,3億円の出資金を集めることはできず,8500万円に留まった。また,本件ファンドの運用において,FX取引によって損失が生じた期間もあれば,利益が生じた期間もあった(甲2,3,乙3(1)ないし(15),4,16,17,被告Y2本人)。
ウ 本件ファンドの損益計算書では,販売費及び一般管理費として月額300万円を支出している(乙3(1)ないし(15))。
同販売費及び一般管理費には,本件契約の契約書7条2項3項(重要事項説明書4頁)の「期間報酬」が含まれ,同条項では月額500万円が上限とされている。当該期間報酬は,毎月発生する人件費等の経費を内容とするもので,「成功報酬」とは区別されるものの,その計算方法に関する定めはない(甲2,3)。
エ 原告は,被告会社から,配当金として,平成25年5月度に3万8710円,同年6月度に10万6667円,同年7月度から平成26年1月度まで毎月12万円を受領し,同年2月以降は受領しておらず,原告は,これらの配当報告書以外に本件ファンドの運用状況に関する書類を受け取ったことはない(乙6(1)ないし(9),原告本人)。
配当金は,本件契約書記載6条4項①,2条1項(11)に規定のとおり,「当期配当」=「前計算期日の総出資口数×100円」によって計算され,配当に関しては,支払時に20%の源泉所得税を徴収することとされている(甲2,3)。
2  争点(1)について
(1)  本件ファンドへ出資させることが詐欺的行為に該当するか否かについて
ア 上記認定事実によれば,本件ファンドは,適格機関投資家等特例業務の届出をしている被告会社が適格機関投資家である本件投資組合から出資を得て設けた匿名組合であり,被告Y2が率先して被告会社や本件投資組合を設け,本件ファンドの内容を策定している。その出資金として3億円を集めることが目的とされつつ,本件投資組合から合計70万円を集めるに留まり,最終的に集めることのできた8500万円の大部分は二十人弱の一般投資家から出資金を募っている。本件契約上,配当金として出資金の1%が出資者に毎月支払われ,被告会社も毎月期間報酬として上限500万円を得ることとされ,実際に毎月300万円を取得している。
これらによれば,本件ファンドには,適格機関投資家等特例業務に係る本件契約当時の金融商品取引法等法律上の要件を逸脱するところは直ちには認められない。また,原告が主張するように本件以前に被告Y2が投資詐欺や違法な投資勧誘など不適切な金融商品の取扱いをしていたとしても,被告Y2が中心となって本件ファンドが設けられたことが認められることのみでは,新たに設けられた本件ファンドが直ちに金融商品まがいの詐欺的取引であると推認することもできない。さらに,確かに,運用利益の有無にかかわらず,配当金として出資金額の1%や多額の期間報酬が毎月支出され,そのこと自体によって本件ファンドの契約内容がデリバティブ取引であることのみよりも高リスクとなっていることが認められるものの,当該事情は契約締結前交付書面や契約書に明らかになっており,実際に運用利益が生じた期間があって運用利益を考慮すると破たんすることが必至とはいえず,公序良俗を含む何らかの法規制に違反しているとまでは認め難いから,その高リスクである契約内容自体が本件ファンドの違法性を基礎付ける事情ということもできない。
これらからは,本件ファンドの内容自体が違法であると認められない。
イ また,上記認定事実によって認められる本件ファンドの内容や運用状況等が契約書などによっても明解であると言い難く,出資者には配当報告書以外に運用状況に関する書類が送られず,期間報酬の計算方法も明らかでなく,これらについて被告会社がなすべき具体的義務が本件契約によって定められていない。しかし,これらは,いずれも本件ファンド運用上の被告会社の行為が問題となるもので,本件ファンドへ出資させること自体の違法性を基礎付けるものということもできない。
ウ 以上によれば,本件ファンドそのものが出資者に対して金融商品まがいの詐欺的取引にあたると認められない。
(2)  著しい適合性原則違反による違法性及び説明義務違反について
ア 本件ファンドは,適格機関投資家等特例業務として行われたものであり,平成27年改正前の本件契約当時の金融商品取引法によれば,同業務には,金融商品取引法40条に規定された適合性の原則の適用が除外されていた。
しかしながら,同法上の規制は,金融商品等の取引等を公正にするなどして国民経済の健全な発展及び投資者保護に資することを目的(金融商品取引法1条)として取引耐性のない顧客を後見的配慮に基づいて保護する行政監督上の規制であり,当該規制が適用されないことから直ちに出資者との間で適合性の原則の趣旨(いわゆる広義の適合性の原則の趣旨)まで私法上の注意義務一般に及ばないと解するのは相当ではない。当該業務が適格機関投資家等特例業務であることを含めた当該金融商品の商品特性を踏まえて,これとの相関関係において顧客の投資経験,知識,意向,財産状態等の諸要素からすると,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を勧誘することとなる場合には,一般投資家の顧客に対しては適合性の原則の趣旨が妥当し,これらを考慮した上で,金融商品の販売や取次ぎしようとする者は,出資者に対して,当該金融商品に係る状況を説明する義務を負うものと解される。
イ 上記の点につき,本件を検討するに,適格機関投資家等特例業務は,資金調達の融通性を確保し投資の活性化を促す趣旨で設けられた制度で,その資金的裏付けや専門知識を前提に適格機関投資家からファンドに出資を募るものであると共に,その他に一般投資家からも出資を募ることを予定しているものの,その一般投資家は当該ファンドと関係の深い投資家を念頭に置いている(甲9参照)。しかしながら,本件ファンドでは,適格機関投資家は本件投資組合に限られる上,本件ファンド全体で3億円の出資を募ることを予定し,実際に8500万円もの出資金を募ったのに対して,本件投資組合からの出資額は70万円と低額に留まり,その出資額に占める割合は極めて小さい。また,その他一般投資家についても,被告会社は本件ファンドと関係を持っているとは認められない多数の者に対して電話勧誘等を行って二十数名弱の一般投資家を募っている。これらのことに照らせば,本件ファンドが適格機関投資家等特例業務にあたるとしても,その実質は,適格機関投資家等特例業務が予定していた実情と必ずしも合致しない。
加えて,本件ファンドは,デリバティブ取引を前提にしており,その取引内容は複雑でリスクの高い取引類型である上,投資判断は被告Y2など被告会社の従業員が行い,運用状況については一般投資家に知らされていなかったというのであるから,出資者保護のための一定の制度的保障や情報提供がなされていたとは言い難い。さらに,上記のとおり,本件ファンドが予定し,実際に支出された配当金や期間報酬に照らせば,本件ファンドがよりリスクの高い金融商品である。
これらからすると,本件ファンドが適格機関投資家等特例業務にあたるとしても,本件ファンドの実質的な出資状況が適格機関投資家等特例業務の定めが念頭に置いていたものと合致せず,一般投資家の保護の要請が相当程度あることに加えて,本件ファンドが非常に高リスクで,一般投資家保護のための制度的保障や情報提供がなされていない状況下にあるものと認められる。
ウ 原告は,本件ファンド以前に投資経験が全くない上,その学歴や職歴は,大学中退を最終学歴として,長年自動車組立作業に従事していた者であり,本件ファンドを理解するに十分な前提知識や経験をおよそ欠いていたというべきである。加えて,本件契約締結以前2年半にわたって精神疾患に罹患して休職し,本件契約締結直前には精神疾患を理由に当時勤務先を退職し,本件契約時には労務不能で休業を要する状態にあったのであるから,本件ファンドへの出資について自身の状況や本件ファンドのリスクなどを客観的に十分な理解ができるような状況にあったとも認め難い。加えて,本件契約時には,退職金を含めて約2000万円の預金を有していたものの,上記傷病のため,原告は労務不能であり,被告Y2に対しても数年間は無職で生活することを予定していると述べるなど,上記預金は,生活費として欠かせない資金であったことが認められる。
これらに対して,被告Y2は,原告が本件第一契約締結時に自ら当時の経済問題に言及したり,本件第二契約締結時にブラジル債のことを尋ねたりしており,投資に必要な知識や意向を有していたと供述する。しかし,原告が自らこれら経済問題に言及したことやブラジル債のことを尋ねたことを認めるに足りる証拠はない。また,被告Y2が言及する経済問題の内容は,ギリシャがユーロから脱退するか否かに関わるものに留まり,そのような話題が原告と被告Y2との間で上ったとしても,当該事情のみでは,本件ファンドへの出資に必要な知識を有していたとは到底認められない。
また,被告Y2は,原告の退職の原因が精神疾患にあることは本件契約締結後に初めて説明を受けたと供述する。しかし,上記認定事実によれば,原告が本件契約締結直前に精神疾患を理由に労務不能のために当時勤務先を退職して本件契約当時は無職で,被告Y2は,原告が労務不能になって退職したために本件契約当時は無職であり,数年間は無職で生活することを原告から聴いており,原告が本件契約締結によって合計1500万円を被告Y2に預けている。これらからすると,原告が被告Y2に退職の原因について殊更に虚偽の説明をしたり,退職の原因を伏せたりすることは考え難く,原告が本件契約当時当然に退職するような年齢でなかったことからすると被告Y2において退職の理由について関心をもって然るべきであるから,本件契約当時,原告は,被告Y2に対して,精神疾患を理由に労務不能となって退職したことを説明したものと推認される。
エ 上記イ及びウからすると,被告Y2が原告に対して本件ファンドの勧誘をすることは,その商品特性を踏まえると,原告の実情に反し,明らかな過大に危険を伴う取引を勧誘することとなるから,適合性の原則の要請は相当に高度で,同原則の趣旨が妥当するというべきである。そうすると,被告Y2には,これらの事情の理解を前提に,原告の上記知識,経験,財産の状況を考慮して,元本欠損が生じるおそれのみならず,その要因やこれが生ずるおそれを生じさせる取引の仕組みの重要な部分を原告が的確に理解できるように明確かつ詳細に説明する信義則上の義務があったものというべきである(金融商品販売法3条1項2項参照)。
上記認定事実における被告Y2の原告に対する説明は,パンフレットや為替チャートを用い,契約締結前交付書面の下線や印がなされた箇所や原告の「桃の華2号 契約前確認書」の丸印からすると,本件ファンドの仕組みや元本割れするリスクがあることなどを一通りの限りでなされたことは認められる。しかし,契約締結前交付書面や契約書は十数頁にわたるにもかかわらず,原告はこれを契約締結日に初めて手にし,被告Y2から二十分程度の説明を受けたのみである。加えて,概括的なリスクに関する部分に若干の下線が引かれているのみで,契約締結前交付書面の取引契約の概要や取引リスク等に関する個別の説明部分には一切下線や印がつけられていない。また,本件ファンドのパンフレット(甲1)は,本件ファンドのリスクに触れられているものの,簡易な記載に留まっている。これらからすると,本件ファンドの取引概要やリスクが生じることの要因やその程度について,被告Y2が,上記本件ファンドの商品特性や原告の状況を踏まえて,原告の実情に反して過大な危険を伴う取引を勧誘していることを理解した上で原告が的確に理解できるように,契約締結前交付書面に記載された説明を格別に解りやすく,個別状況に応じた説明をしていないものと認められる。
以上から,被告Y2は,原告に対して,本件ファンドへの出資勧誘に際して,説明義務違反の違法があるというべきである。
(3)  以上によれば,被告Y2に原告に対する勧誘行為には,説明義務違反の違法性が認められるから,その余の点について,判断するまでもない。
3  原告が本件ファンドを本件第一契約のみならず,本件第二契約をも締結しているものの,両契約の日時は近接しており,その締結した際の事情は未だ本件第一契約締結時と同様であって,本件全証拠に照らしても,原告が積極的に本件第二契約を締結する意向をもって被告Y2との間でやり取りをしたといった事情があったとは認められないから,本件契約全体につき,被告Y2の原告に対する勧誘行為について違法性が認められる。
4  争点(2)について
(1)ア  原告は,被告Y2の本件ファンドへの勧誘行為によって本件契約を締結して,出資金及び手数料として1650万円を支出しており,当該支出は,被告Y2の説明義務違反がなければ,原告は本件ファンドへの出資をしなかったものと推認できるから,被告Y2の説明義務違反との間に相当因果関係があるものと認められる。
他方,原告は,本件ファンドの配当金として,98万5377円を受領している。
したがって,原告が支出した1650万円から受領した配当金98万5377円を控除した1551万4623円が被告Y2の説明義務違反による原告の損害と認められる。
イ  なお,上記本件ファンドの商品特性や原告の状況など被告Y2の説明義務に係る事情に照らせば,本件契約締結について,原告の損害について,過失相殺を考慮することは相当とはいえない。
(2)  原告は,上記損害を回復するために弁護士を委任しているから,弁護士費用としてその約1割に相当する155万円が原告の損害と認められる。
(3)  以上より,原告の損害は,1706万4623円と認められる。
5  小括
(1)  被告Y2は,原告に対する勧誘行為につき,説明義務違反によって民法709条に定める不法行為責任に基づき原告の上記損害に対して賠償する義務を負い,また,被告会社は,被告Y2の当該行為が被告会社の被用者の事業の執行にあたるから,民法715条1項本文に定める使用者責任に基づき原告の上記損害に対して賠償する義務を負い,被告Y2及び被告会社について,その余の点については,判断するまでもない。
被告Y1は,被告会社の代表取締役であるところ,被告Y2から被告会社の事業の概括的な決定内容の報告を受けるに留まり,被告会社の代表取締役として本件ファンドや被告会社の業務を把握したり,関与することはなく,被告Y2に会社業務の一切を任せきりとし,その業務執行に何ら意を用いず,被告Y2の当該説明義務違反を看過するに至ったというべきであるから,被告Y1においても,その重過失により代表取締役の任務を怠ったと解されるから,会社法429条1項に基づき,被告Y2の当該説明義務違反によって生じた原告の損害について賠償する責任を負う。
(2)  したがって,原告は,被告らに対して,連帯して,上記原告の損害である1706万4623円及びこれに対する最後の損害が発生した本件第二契約による支出日である平成25年6月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
6  よって,原告の請求は上記の限度で理由があるからその限度でこれを認容することとし,その余を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行の宣言につき,これを付することが相当であり,仮執行免脱の宣言につき,これを付さないことが相当であるから,同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判官 一藤哲志)

 

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