【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(76)平成28年 7月29日 名古屋高裁 平27(ネ)704号 損害賠償請求控訴事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(76)平成28年 7月29日 名古屋高裁 平27(ネ)704号 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日  平成28年 7月29日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ネ)704号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  文献番号  2016WLJPCA07296003

事案の概要
◇映像ソフト等の制作、販売及びレンタル等の事業を営む会社等の株式を保有することにより当該会社の事業活動を支配・管理する株式会社である被控訴人が、その代表取締役会長であった控訴人Y1、同代表取締役社長であった控訴人Y2及び同取締役副社長であった控訴人Y3は、架空の業務委託契約等を複数締結して被控訴人の財産を不正に流出させたなどと主張して、控訴人らに対し、会社法423条1項又は民法709条に基づく損害賠償として、合計4億6539万3500円等の支払を求めたところ、原審が、控訴人らの任務懈怠ないし不法行為を認めて請求を一部認容したことから、控訴人らが控訴した事案

裁判経過
上告審 平成29年 6月15日 最高裁第一小法廷 決定 平28(オ)1611号・平28(受)2041号 損害賠償請求事件
第一審 平成27年 6月30日 名古屋地裁 判決 平24(ワ)1138号 損害賠償請求事件

評釈
岩田合同法律事務所・新商事判例便覧 3234号(旬刊商事法務2123号)
池野千白・CHUKYO LAWYER 29号65頁

裁判年月日  平成28年 7月29日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ネ)704号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  文献番号  2016WLJPCA07296003

名古屋市〈以下省略〉
控訴人 Y1(「控訴人Y1」という。)
訴訟代理人弁護士 野間自子
石田宗弘
東京都台東区〈以下省略〉
控訴人 Y2(「控訴人Y2」という。)
訴訟代理人弁護士 榎本修ほか6名
名古屋市〈以下省略〉
控訴人 Y3(「控訴人Y3」という。)
訴訟代理人弁護士 東正人
名古屋市〈以下省略〉
控訴人ら補助参加人 Z株式会社
代表者代表取締役 A30
訴訟代理人弁護士 鈴木信一
松冨しほ里
松尾政治
大塚隼
名古屋市〈以下省略〉
被控訴人 株式会社X
代表者監査役 A1
訴訟代理人弁護士 小野吉則
矢嶋雅子
藤田美樹
天白達也

 

 

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。
2  控訴費用中,補助参加によって生じた部分は,控訴人ら補助参加人の負担とし,その余は控訴人らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決中,控訴人らの敗訴部分をいずれも取り消す。
2  上記部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。
第2  事案の概要
1(1)  控訴人Y1は,被控訴人の代表取締役会長であった者,控訴人Y2は,同代表取締役社長であった者,控訴人Y3は,同取締役副社長であった者である。本件は,被控訴人が,会社法423条1項又は民法709条に基づく損害賠償として,控訴人らそれぞれに対し,以下のとおり,連帯して,合計4億6539万3500円(控訴人Y1につき合計4億6539万3500円,控訴人Y2につき合計2億9214万3500円,控訴人Y3につき合計3億4268万8500円)及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
ア 被控訴人の子会社であった株式会社b(以下「b社」という。)が株式会社みずほ銀行(以下「みずほ銀行」という。)を主幹事とするシンジケートローンから借り入れていた28億円について,リファイナンスの必要性がなかったのに,控訴人Y1及び同Y3が,被控訴人の顧問と称するA4(以下「A4」という。)ないし同人の支配する会社に金銭を支払うため,必要な取締役会決議を経ずに,A4が支配する会社との間で,架空のリファイナンス等に関するコンサルティング契約を締結し,業務委託成功報酬名目で1億5750万円を支出したことについて,控訴人Y1及び同Y3に対し,連帯して,1億7325万円(上記支出額1億5750万円及びこれに対する弁護士費用1575万円の合計額)及びこれに対する不法行為日(支出日)である平成21年9月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの。
イ 被控訴人の有するb社の株式を売却する必要がなかったのに,控訴人らが,A4ないし同人の支配する会社に金銭を支払うため,必要な取締役会決議を経ずに,A4が支配する会社との間で,架空の株式譲渡に関するアドバイザリー契約を締結し,着手金名目で1365万円及び成功報酬名目で合計1億0500万円を支出したことについて,控訴人らに対し,連帯して,1億3051万5000円(上記支出額1365万円及びこれに対する弁護士費用136万5000円並びに上記支出額1億0500万円及びこれに対する弁護士費用1050万円の合計額)及びうち1501万5000円(上記1365万円及び上記136万5000円の合計額)に対する不法行為日(支出日)である平成22年9月14日から,うち1億1550万円(上記1億0500万円及び上記1050万円の合計額)に対する不法行為日(支出日)である平成23年2月28日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求めるもの。
ウ 控訴人Y1及び同Y2が,(ア)A4からの不当な金銭的要求に応えるため,同人の支配する会社との間で,架空の被控訴人店舗用複合機の導入に関するコンサルティング契約を締結し,必要な稟議を経ずに,コンサルタント料名目で2625万円を支出したこと,(イ)A4からの上記(ア)の要求に応えたことに加え,A4ないし同人の支配する会社に金銭を支払うため,A4が支配する会社との間で,架空の営業用車両の調達等に関するコンサルティング契約を締結し,必要な稟議を経ずに,成功報酬名目で3070万円を支出したこと,(ウ)上記アの架空のリファイナンス等に関するコンサルティング契約の後に行われたb社のリファイナンスに関わったとされるA5(以下「A5」という。)に対する支払の必要はないのに,A5及びA4ないし同人らの支配する会社に金銭を支払うため,A4が支配する会社との間で,架空の金融商品仲介業に関するコンサルティング契約を締結し,必要な稟議を経ずに,コンサルタント料名目で2310万円の支出をしたことについて,控訴人Y1及び同Y2に対し,連帯して,8805万5000円(上記支出額2625万円及びこれに対する弁護士費用262万5000円,上記支出額3070万円及びこれに対する弁護士費用307万円並びに上記支出額2310万円及びこれに対する弁護士費用231万円の合計額)及びこれに対する不法行為日(支出日)である平成22年11月25日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求めるもの。
エ 上記イの株式譲渡に関わったとされるA5に対して支払をする必要がなかったのに,同人に金銭を支払うため,控訴人Y1及び同Y2が,A4の支配する会社との間で,架空の東日本大震災の被害対応に関するコンサルティング契約を締結し,A4ないしA5の関連する会社との間で,架空のニンテンドー3DS大量仕入れに関するコンサルティング契約を締結し,必要な稟議を経ずに,前者につき1050万円を支出し,後者につき2100万円を支出したことについて,控訴人Y1及び同Y2に対し,連帯して,3465万円(上記支出額1050万円及びこれに対する弁護士費用105万円並びに上記支出額2100万円及びこれに対する弁護士費用210万円の合計額)及びこれに対する不法行為日(支出日)である平成23年4月28日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求めるもの。
オ 控訴人らが,自らの保身のために,第三者に被控訴人を買収させることを計画し,必要な取締役会の決議を経ずに,控訴人ら補助参加人との間で,株主総会アドバイザリー契約を締結し,アドバイザリー報酬3150万円を支出し,株式会社電通国際情報サービスとの間で,情報提供サービス利用契約を締結し,被控訴人をして,147万円及び241万5000円をそれぞれ支出させたことについて,控訴人らに対し,連帯して,3892万3500円(上記支出額3150万円及びこれに対する弁護士費用315万円,上記支出額147万円及びこれに対する弁護士費用14万7000円並びに上記支出額241万5000円及びこれに対する弁護士費用24万1500円の合計額)及びうち3465万円(上記3150万円及び上記315万円の合計額)に対する不法行為日(支出日)である平成23年8月31日から,うち161万7000円(上記147万円及び上記14万7000円の合計額)に対する不法行為日(支出日)である同年11月30日から,うち265万6500円(上記241万5000円及び上記24万1500円の合計額)に対する不法行為日(支出日)である平成24年1月31日から各支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求めるもの。
(2)  原審は,上記(1)アないしオの各行為が控訴人らの被控訴人に対する任務懈怠(会社法423条1項)ないし不法行為(民法709条)に該当すると認め,被控訴人の支出額全額を損害として認めたが,弁護士費用については,損害額の7%相当額(ただし,支出額毎に算出し,損害金額が1000万円以上の場合は10万円未満を,損害金額が1000万円未満の場合は1万円未満をそれぞれ四捨五入した額)を損害と認め,同金額とこれらに対する被控訴人が請求する日から年5分の割合による金員の支払を求める限度で被控訴人の本訴請求を認容した。そこで,控訴人らが控訴した。
2  前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり補正し,3のとおり控訴人らの当審における補充主張等を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2ないし4に記載するとおりであるから,これを引用する(なお,原判決別紙1略語一覧表のとおり,氏名及び法人名等を略称する。)。
(1)  原判決の7頁16行目の「平成18年4月」を「平成16年6月」に改め,同9頁18行目ないし19行目の「企画業務等は,」の次に「重要性により」を加える。
(2)  同16頁初行冒頭から3行目末尾までを次のとおり改める。
「オ 控訴人らは,前記エのb社の株式譲渡に際し,同月25日,取締役会の承認を得たが,株式譲渡アドバイザリー契約①及び同②の締結並びに同各契約に基づく前記ア及びエの金銭の支出に際しては,被控訴人において取締役会決議を経なかった。」
(3)  同21頁6行目の「(甲37,41)」を削除し,同35頁13行目の「1495万0882円」を「1495万8822円」に,同38頁13行目の「関西銀行」を「関西アーバン銀行」にそれぞれ改め,同39頁25行目の「コンサルティング」の次に「(上記2(9)イ(ア))」を加え,同83頁の損害計算表の番号4の「項目」欄の「店舗用」を削除する。
3  控訴人らの当審における補充主張等
(1)  争点(1)(本件共同事業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
(控訴人Y1の主張)
ア 被控訴人の職務権限基準表上,支出を伴う契約締結案件については,原則として「支払に関する事項」が適用されるため,取締役会決議は不要である。「1件1億円以上」の場合に取締役会決議が必要になるという債務負担とは,有形固定資産及び無形固定資産の取得,社員の独立を伴わない直営店舗売却の選定・決定,新規アミューズメント店出店計画立案等,特定の契約類型のみであり,それ以外は取締役会決議は不要である。本件共同事業コンサルティング契約は,これらの契約類型に該当せず,原則どおり取締役会決議は不要である。上記数値基準について他の契約類型にまで拡大して一律に適用すべきと解するのは相当ではない。また,「月額50万円以上」の顧問・コンサルティング契約については,継続的な場合は会社法362条4項の「重要」性が類型的に高いが,単発案件のコンサルティング契約の締結にはそのような事情はないから,取締役会の決議は不要である。
本件共同事業コンサルティング契約に基づく支出額は,平成21年3月31日現在の被控訴人単体の総資産額の約0.2%にすぎない。被控訴人の従前の運用によれば,M&Aに際してのアドバイザリー契約の締結及び報酬の支払には取締役会決議は不要であった。
したがって,控訴人Y1には,本件共同事業コンサルティング契約締結及び金員の支出について法令違反及び手続違反はなく,これらについて故意又は過失もない。
イ 本件リファイナンスや被控訴人のlグループとの事業提携のような取引を行う場合,専門家の助言等を始めとする各種支援を受けることが一般的である。したがって,本件共同事業コンサルティング契約の締結が必要であるという控訴人Y1の判断が著しく合理性を欠くものでない限り,控訴人らに善管注意義務違反はないというべきである。
本件共同事業コンサルティング契約が締結された当時の状況に鑑みると,本件シンジケートローンの延長はおよそ不可能であり,lグループ以外の他の会社又は被控訴人から融資を受けることも不可能ないし困難であった。本件シンジケートローンの期限が到来した場合には,b社及び被控訴人に損害が生じることが当然に予想されたため,被控訴人としてそれを回避する必要があったことから,控訴人Y1が相応の条件である本件リファイナンスを実施したことは極めて合理的な判断であった。その他のlグループとの事業提携も,被控訴人に利益をもたらすものであったし,当該事業提携を背景として本件リファイナンスが実現したものであるから,当該事業提携の合理性は当然認められる。かかる事業提携を実現するため,本件共同事業コンサルティング契約が締結されたものである。
そして,A4は,本件リファイナンスの実現のみならず,被控訴人とlグループとの間の包括的な事業提携に関して重要な役割を果たした。すなわち,A4は,被控訴人とlグループとを引き合わせるきっかけを作り,その後も同グループの代表者のA14との関係を強固なものとして,被控訴人とlグループとの関係を築き上げた。そして,A4は,両者の事業提携や本件リファイナンスに関する協議にも毎回出席し,知識と経験に裏付けられたアイデアを提供するにとどまらず,両者の橋渡しや意見調整も務めていたのであり,この業務提携に必要不可欠な唯一無二の存在であった。なお,本件共同事業コンサルティング契約で対象とされた業務は全て実現されるに至っている。
ウ 本件共同事業コンサルティング契約で定められた業務は,本件リファイナンスのみならず,lグループと被控訴人の事業提携の実現等に向けた業務も含まれており,かかる業務の対価も考慮する必要がある。A4に支払われる報酬は,同人の提示に対する減額交渉を踏まえて決定された妥当なものである。
(控訴人Y3の主張)
ア 控訴人Y3が控訴人Y1及びA22から本件シンジケートローンの指示を受けた平成21年6月当時,資金繰りが悪化し,相当厳しい財務環境に置かれていたなどのb社の具体的な状況に鑑みると,本件共同事業コンサルティング契約を締結する具体的必要性はあったのである。A4は,b社における本件シンジケートローン返済に関する問題の概略を把握し,担当者である控訴人Y3に対し,その解決策を提案した。そして,A4は,控訴人Y3に対し,lグループを紹介し,限られた期間で被控訴人の窓口の一切を担い,中心となって同グループとの調整を行い,lホールディングスのA14との面談も控訴人Y3に周旋しており,A4による業務提供の実体は存在したのである。
イ 控訴人Y3は,被控訴人の代表権はなく,本件共同事業コンサルティング契約について,その内容や報酬の決定には一切関与しておらず,その決定をした控訴人Y1及びA22の指示に従って行動したにすぎない。したがって,控訴人Y3に故意又は過失は認められない。仮に控訴人Y3に善管注意義務違反があるとしてもその程度は極めて小さく,その割合は相当低いものである。
(2)  争点(2)(株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
(控訴人Y1の主張)
ア 株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出については,当時,役員全員が異議なく賛成していたb社の株式譲渡に伴い,取締役の合理的判断として行われたものである。そして,これらについても取締役会決議は不要であり,控訴人Y1には,法令違反及び手続違反がなく,故意又は過失もないことは,上記(1)(控訴人Y1の主張)アで主張するとおりである。
イ b社の株式のような上場会社の株式譲渡に関しては,実務上,アドバイザーを依頼するのが一般的であり,株式譲渡アドバイザリー契約の締結等に係る控訴人Y1の判断が著しく合理性を欠くものでない限り,控訴人Y1に善管注意義務違反はないというべきである。
b社の不動産事業と被控訴人のグループ会社の主力事業とでは経営戦略上の相乗効果が全くなかった上,不動産市況及びb社の財務状況が悪化し,被控訴人が連結対象であったb社は,将来保有する不動産に係る損失を計上するリスクを抱えていた。このような状況下で,b社の株式の譲渡により同社を連結対象から外すことは,被控訴人にとって喫緊の課題であった。このような事情を背景として,被控訴人の取締役会でも役員から何らの異議が出ることもなく同株式の譲渡は承認されたのであり,その合理性が容易に認められる。このような株式譲渡を実現するため,株式譲渡アドバイザリー契約が締結されたものである。
A4は,b社の株式の譲渡につき譲渡先を探索してm社やn社を被控訴人に紹介し,m社をあっせんしたA5らと連絡して同人らとの交渉の窓口となり,譲渡先との打合せにも同席し,A5らとの間で譲渡の条件等について交渉した。そして,被控訴人の従前の方針どおり,上記株式の譲渡及びb社に対する支配関係の解消を実現したのであり,A4は,株式譲渡アドバイザリー契約に基づく業務を提供したものである。
ウ M&Aの仲介・あっせんに係る報酬の算定方式としては,売買代金額及び有利子負債の額の合計額に一定料率を乗じる移動総資産方式も一定の合理性を有するもので,一般に用いられている。b社の株式の売買代金の合計は3億0505万円であり,当時のb社の負債額は70億6462万円であるところ,上記料率を乗じて報酬額を算定すると2億1239万3400円となるから,株式譲渡アドバイザリー契約の報酬額(着手金及び成功報酬の合計1億1865万円)は不相当とはいえない。
(控訴人Y2の主張)
株式譲渡アドバイザリー契約が締結された平成22年9月当時,b社は,被控訴人の連結子会社であり,約40億円の含み損があった。そこで,市場における被控訴人自身の信用が低下して存続の危険に陥ることを防止するために,b社を清算して連結決算の対象とならないようにすべく金融支援をすることには合理性があった。したがって,株式譲渡アドバイザリー契約締結の決定の過程,その内容に著しく不合理な点がない限り,控訴人Y2は,経営判断の原則により,取締役としての善管注意義務に違反するものではない。なお,同契約に基づく着手金及び成功報酬の支出については,国税当局による被控訴人の税務調査においても,費用として合理的なものと是認するとの判断がされており,このような合理的費用について損害賠償として控訴人らに請求するのは不当である。
控訴人Y2は,A4によりb社の株式の譲渡の問題を解決するために様々な業務提供を受けている旨の説明を主として控訴人Y3からされてきたのであり,少なくとも,当時,A4が十分な業務提供を行っていたものである。
(控訴人Y3の主張)
ア 当時のb社の状況からして,株式譲渡アドバイザリー契約を締結するについては,具体的必要があったものである。
イ 本格的に案件ベースに乗った以降のm社との主たる打合せは,A4が窓口となって,週に2回程度は必ず実施し,交渉は難航したものの,A4の尽力により最終的に案件成就となった経緯がある。A4は,自己の人脈を駆使しながらb社の株式の譲渡に尽力したのであり,A4による業務提供の実体は十分に存在する。
ウ 控訴人Y3は,株式譲渡アドバイザリー契約について,その内容及び支払の決定に一切関与していない。控訴人Y3には被控訴人の代表権はなく,同控訴人の被控訴人社内での地位や影響力は,代表権のある控訴人Y1及び同Y2に比して圧倒的に弱く,控訴人Y3が他の控訴人らの意向に反して行動することはあり得ないことである。したがって,控訴人Y3に善管注意義務違反はなく,あるとしても,その程度は,控訴人Y1及び同Y2に比して極めて小さいというべきであり,故意又は過失についても同様である。
(3)  争点(3)(複合機導入コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)及び争点(4)(車両調達等コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
(控訴人Y1の主張)
ア 被控訴人において,控訴人Y2が平成22年1月に代表取締役に就任して以降は,代表取締役会長の控訴人Y1を営業統括責任者,代表取締役社長の控訴人Y2を管理統括責任者とする分業体制となった。その結果,控訴人Y1は,業績の回復に専念しており,営業に関しない総務・経理等については管理統括責任者である控訴人Y2の責任で行われていた。したがって,控訴人Y1は,複合機導入コンサルティング契約及び車両調達等コンサルティング契約,そして,争点(5)に係る金融商品仲介業コンサルティング契約の締結等の事実を知る立場にはなく,その役割を担っていなかった。
イ 被控訴人は,平成22年5月から同年6月にかけてr社に対する公開買付けを行ったが,応募株式等の総数が買付け予定数の上限を超えたため,同社のオーナーであったA31(以下「A31」という。)の保有する同社株式を全部取得することはできなかった。そこで,控訴人Y2は,A31から同人の手元に残ったr社の株式を買い取るようにとの要請を受け,A4に依頼して同人の関係者にこれを買い取らせた。複合機導入コンサルティング契約は,同社株式の買取資金を補填するために行われたものであるから,控訴人Y2には,控訴人Y1の意向を確認せずに自ら主体的にこれを実行する動機があった。
(4)  争点(5)(金融商品仲介業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
(控訴人Y2の主張)
A5は,40億円もの含み損を抱えたb社にリファイナンスをした関西アーバン銀行を被控訴人に紹介し,融資をあっせんしたのである。したがって,A5は,商人としてその業務の範囲内で被控訴人のために行為をし,又は,管理者として有益な費用を支出したものであるから,被控訴人には,A5に対し,報酬(商法512条)ないし費用(民法702条)を支払う義務がある。
(5)  争点(6)(本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティング契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
(控訴人Y1の主張)
これらの金員の支出については,実質的にはb社の株式譲渡に係るA5への報酬支払のためにされたものである。A5は,A4とともにb社の株式の譲渡や,それに先立つo社からb社に対する融資の実現に寄与し,それ以外にも,平成22年6月の関西アーバン銀行のb社に対するリファイナンスに際し,被控訴人の窓口となって同銀行との調整に貢献している。控訴人Y1は,控訴人らが直接A5に会ってb社への支援先を紹介するように依頼した経緯もあったことから,被控訴人がA5に報酬を支払うべきであると認識していた。b社の株式譲渡に係る報酬の金額も,A4及びA5に支払った金額を全て合計しても1億5015万円(税込)であり,M&Aの仲介・あっせんに係る報酬額1億1865万円(上記(2)(控訴人Y1の主張)ウ)と比較しても不相当とはいえない。したがって,控訴人Y1に任務懈怠ないし不法行為が成立することはない。
(控訴人Y2の主張)
b社は,当時,40億円もの含み損を抱える会社であり,そのような会社の株式の買い手を探すのは大変困難な中,それを探し出したのがA5である。そして,売買の仲立ちをする者としては,売り手と買い手の双方から報酬や手数料を受領することは認められており,o社を被控訴人に紹介し,売買をあっせんしたのはA5であるから,被控訴人には,A5に対し,報酬(商法512条)ないし費用(民法702条)を支払う義務がある。
(6)  争点(7)(株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
(控訴人Y1の主張)
株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約については,これらの契約に基づく業務が提供されているから,その目的に特段不合理な点がないのであれば,取締役の裁量の範囲内にあるということができ,控訴人Y1がこれらの行為について任務懈怠ないし不法行為責任を問われる理由はない。そして,被控訴人の経営支配に係るA3を巡る当時の状況からすれば,少なくとも平成23年7月27日にA3が社外取締役5名選任の臨時株主総会の招集請求を行った時点で,株主の共同利益のため,A3が一部上場企業の代表取締役になるのは不適切であると考えて,株主総会アドバイザリー契約の締結等を行うことが必要であると判断した控訴人Y1の判断に不合理な点はない。
(控訴人Y2の主張)
控訴人Y2は,一部の株主ではなく株主全体の利益を考え,A3が代表取締役となって被控訴人についての支配権を確立してしまうことは,株主全体の利益にはならないものと考えたからこそ,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約に基づく各支出に至ったのであり,自己の保身のために行ったものではない。なお,上記各支出は,国税当局の税務調査において,費用として是認されているから,被控訴人の経営に必要な費用として合理的なものであると判断されたのである。したがって,このような合理的費用について,損害賠償として被控訴人が控訴人らに請求することは不当である。
(控訴人Y3の主張)
控訴人Y3は,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約には一切関与しておらず,責任を負ういわれはない。
(7)  争点(8)(被控訴人の損害及び控訴人らの任務懈怠ないし不法行為と損害との間の因果関係の有無)について
(控訴人Y1の主張)
A4は,本件共同事業コンサルティング契約及び株式譲渡アドバイザリー契約に係る業務を遂行しており,報酬も妥当であったことから,被控訴人には損害が生じていない。
(控訴人Y3の主張)
本件共同事業コンサルティング契約,株式譲渡アドバイザリー契約,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約に基づく報酬は相当なものであり,被控訴人に損害はない。また,控訴人Y3の善管注意義務違反や過失の程度が低いことから,損害全部との因果関係は認められない。
(8)  損益相殺,過失相殺ないしその類推について
(控訴人Y2の主張)
ア A5は,金融商品仲介業コンサルティング契約,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティング契約に基づいて,被控訴人に対し,関西アーバン銀行を紹介し,融資をあっせんし,o社を紹介し,売買をあっせんした。被控訴人は,同各契約に基づく支出がされたことによって,これらに関してA5に対する報酬ないし費用の支払を免れているのであるから,被控訴人には損害が発生していない。仮に損害が発生していたとしても損益相殺の法理により,被控訴人がこれを控訴人Y2に請求することは許されない。
イ 本件共同事業コンサルティング契約以外の本件の各契約に基づく各支出は,いずれも被控訴人ひいてはその全株主の利益を図るため締結されたものであり,これらの支出によって実際にb社が連結子会社の対象から外れるなど,被控訴人は利益も享受している。したがって,被控訴人主張の損害については,損益相殺の法理ないしその類推により減額されるべきである。
ウ 仮に控訴人らに任務懈怠があったとしても,他の取締役(A3やA22)についても,取締役会非上程事項を含めて監視義務があり,これらの者の責任を不問に付したまま控訴人らの責任のみを追及することは妥当ではない。よって,過失相殺の法理の類推ないし同法理の趣旨により,控訴人らに対する賠償額は減額されるべきである。
(控訴人Y3の主張)
仮に,本件共同事業コンサルティング契約,株式譲渡アドバイザリー契約,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約により被控訴人に損害が生じているとしても,相当な額の報酬を控除した金額になるというべきである。
(9)  内規違反と任務懈怠について
(控訴人Y2の主張)
被控訴人の職務権限基準表等については,社内で制定した一種の内規であり,このような会社の自治規範違反については,法令違反の場合とは異なり,事後の追認等により違法性が除去される可能性がある。被控訴人においては,上記基準表の規定が厳格に履践されていない状況も散見され,その後の被控訴人の機関で問題とされたり責任追及がされたりすることもなく,実質的に追認されてきていたのが実情であった。このような場合,特に内規に違反したとしても,過失なしとして善管注意義務違反は認められないものと解すべきである。とりわけ,取締役が会社の利益になると誠実に考えて行った一連の行為について責任が問われるべきではない。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所も,被控訴人の本訴請求については,原審が認容する限度で理由があると判断する。その理由は,2のとおり補正し,3のとおり控訴人らの当審における補充主張等に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1ないし10に記載するとおりであるから,これを引用する。
2  原判決の補正
(1)  原判決の54頁12行目及び13行目の各「A15」をいずれも「A17」に,24行目ないし25行目の「ニンテンドー3DSコンサルティング契約」から末行末尾までを「ニンテンドー3DSコンサルティング契約については実体がない旨認めるに至っている。」にそれぞれ改める。
(2)  同55頁初行冒頭から4行目末尾までを次のとおり改める。
「(イ) 関係者の最終的な説明内容
控訴人Y1,同Y2,A15及びA4らは,本件調査委員会に対し,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティング契約の各契約書に記載された業務が実施された事実はなく,これらは,b社の株式の譲渡に関するA5への報酬の支払をするためのものであると説明した。なお,控訴人Y2は,A4を通じてのその支払について,控訴人Y1の了解を得た上でA15に対してその旨指示したと説明していた。」
(3)  同55頁17行目の「乙36」を「甲109,乙36」に改める。
(4)  同59頁6行目冒頭から同61頁19行目末尾までを次のとおり改める。
「(2) 本件共同事業コンサルティング契約締結の必要性等
ア 本件リファイナンスを実行することについては,被控訴人の取締役会において,その必要性やlホールディングスへの投資に関する説明がされ,取締役会の承認が得られている(甲84)。また,本件シンジケートローンの返済期限は平成21年9月末日であったが,主幹事であるみずほ銀行に期限延長の要請をしたものの,同意を得ることができなかった(乙26,原審における控訴人Y3本人)。平成20年頃,上場している不動産関連企業のうち,とりわけ新興の企業が多く破綻したところ(乙17,19,同被控訴人代表者),平成21年2月期から平成22年2月期頃のb社の業績は悪化し,これに伴い資金繰りは悪化していた(乙15の2ないし4,同被控訴人代表者)。さらに,被控訴人がb社に直接融資することについては,A29監査役からそれを実施しないことを厳しく要求されていたほか,その融資により,横浜銀行が本牧不動産の共有持分(2分の1)に有する根抵当権を解除する条件として,被担保債権の支払額を減少させるための同銀行との交渉が不利に働くおそれがあった(乙12の1,2,乙12の3の1,乙12の8,乙26)。以上の事情からすると,一般的に本件リファイナンスの必要性がなかったとまでは断言することはできない。
イ しかし,b社は,当時,被控訴人の連結対象子会社であり,みずほ銀行は,被控訴人のメインバンクであったから(原審における被控訴人代表者,同控訴人Y3本人),みずほ銀行と被控訴人との今後の関係も考慮に入れれば,みずほ銀行が,b社に対し,新たな貸付けに一切応じないで,本件シンジケートローンの一括返済を強行に求め続けたかどうかは不明で不確かであったというべきである。また,A29監査役の上記要求については,多分に控訴人Y1と良好な関係になかったことによるもので,他の監査役が上記要求について同じ意見を持っていたとは断定できないし(甲84,同被控訴人代表者),被控訴人がb社に直接融資しないことが,横浜銀行との交渉材料になるとしても,それが決定的であったとまで認めるに足りる証拠はない。さらに,被控訴人の取締役会で初めて本件リファイナンスの話が出たのは,その旨の決議がされた取締役会においてであって,それまで本件リファイナンスの説明がされたことはなかったというのであり(甲84,同被控訴人代表者),その他の方法との関係で,本件リファイナンスを採用するのがどれほど必要で切実なものであったかについて疑問を払拭することができない。そして,本件リファイナンスは,いわゆるブリッジファイナンスであり,事実上,わずか6か月の返済期限延長をもたらすにすぎないものであった。また,形式的にはk社が合計28億円の貸倒れリスクを負うものではあるものの,被控訴人のlグループに対する合計28億円の投資等と見合いになっているため,lグループ全体としてみれば,実質的にリスクはなかったと評価することができ,このような好条件であれば,lグループ以外の他の企業グループであっても融資に応じた可能性は高いと推察される。
ウ 以上によれば,本件リファイナンスを実行する具体的な必要性があったか疑問が残るというべきであり,少なくとも,A4との間で業務委託契約を締結し,これに基づいて1億5750万円(税込)を支出する必要性は乏しかったものと認められる。」
(5)  同65頁14行目の「書面や議事録等が一切提出されていないため」を「書面や議事録等について,乙A64,A65,C38(いずれも採用することができない。)を除き,提出されていないため」に改め,同67頁24行目ないし25行目の「平成23年7月に」を削除し,同74頁24行目の「前記1(2)」を「前記第2の2(11)ア及び前記1(2)」に,同75頁5行目の「2日後には被告ら補助参加人に接触し」を「2ないし5日後には控訴人ら補助参加人に対し」に,同76頁13行目の「必要性」を「具体的必要性」に,同79頁初行の「損害額の」から5行目末尾までを「損害額の7%相当額である原判決別紙2損害計算書の「認容額(単位・円)」の「弁護士費用相当額」欄に記載するとおりであると認めるのが相当である。」にそれぞれ改める。
3  控訴人らの当審における補充主張等に対する判断
(1)  争点(1)(本件共同事業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア 取締役会決議の欠缺について
(ア) 控訴人Y1は,被控訴人の職務権限基準表上,取締役会決議が必要となるのは,特定の類型のみであり,本件共同事業コンサルティング契約はこれに該当しないから,「1件1億円以上」という数値基準について他の契約類型にまで拡大して一律に適用すべきではない旨主張する。しかし,被控訴人の職務権限基準表(甲15,23,24)においては,有形固定資産及び無形固定資産の取得,直営店舗売却の選定・決定,新規アミューズ店出店計画立案等,ある程度多額の支出が想定される取引については,取締役会決議を要するものとして1件1億円以上との基準を設けている。その一方で,それ以外の単なる支出を伴うものについては,稟議を要するものとして単発の購入につき1件100万円,継続の購入につき半期合計100万円という基準を設けており,金額の多寡を基準にして取締役会決議や稟議の要否を検討していることが認められる。このことは,控訴人Y1が,1億を超える支出を要する本件共同事業コンサルティング契約には取締役会決議が必要であったと認識していること(原審における控訴人Y1本人)や,被控訴人の取締役であった証人A13が,原審において,被控訴人においては,一定の金額に達すれば取締役会決議が必要となっていると証言していることからも裏付けられる。以上によれば,被控訴人の職務権限基準表では,契約類型に関わらず,取引額が1件1億円以上の場合には取締役会決議が必要であると定められていると解するのが相当である。そして,本件共同事業コンサルティング契約が実質的に1件1億5750万円(税込)の支出であることは,原判決が第3の2(1)で認定説示するとおりであるから,本件共同事業コンサルティング契約の締結には,取締役会決議が必要であったということができる。
(イ) 控訴人Y1は,単発案件のコンサルティング契約の締結については,会社法362条4項の「重要」性が類型的に高いというような事情はないから,取締役会決議は不要である旨主張する。しかし,コンサルティング契約は,その名目が抽象的であることから,不明瞭な支出名目に用いられることが懸念されることからすると,チェック体制を確立する要請は高いといえる。このことは,本件においても,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティング契約がその名目とは全く異なる趣旨で締結されていること(当事者間に争いがない。)からも明らかである。したがって,コンサルティング契約であっても,一定額以上のものについては質的にも取締役会に付議すべき必要性が高く,被控訴人の上記職務権限基準表においても,「顧問・コンサルティング契約(月額50万円以上)」が取締役会決議を要するとされているのは,この趣旨からであると解される。その趣旨からすると,上記基準表から単発のコンサルティング契約が排除されていると解することはできない。そして,本件共同事業コンサルティング契約が実質的に1件1億5750万円であることは,上記(ア)で説示するとおりであり,これが月額50万円以上の顧問・コンサルティング契約に相当することは明らかであるといえる。この点からも,本件共同事業コンサルティング契約の締結には,取締役会決議が必要であったということができる。
(ウ) 控訴人Y1は,本件共同事業コンサルティング契約に基づく支出額が被控訴人の単体の総資産額の約0.2%にすぎない旨主張する。しかし,被控訴人の職務権限基準表上に定められた取締役会決議事項は,被控訴人にとって「重要な業務執行」(会社法362条4項)を類型化したものといえるから(原判決の第3の2(1)),取締役会決議の必要性は,契約の支出額の総資産額に占める割合のいかんに関わらないというべきである。また,控訴人Y1が主張するように,被控訴人において,M&Aに際してのアドバイザリー契約の締結及び報酬の支払には取締役会決議を要しなかったという実例を認めるに足りる証拠はないから,控訴人Y1が主張するような従前の運用を認めることはできない。
(エ) したがって,控訴人Y1には,本件共同事業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出に当たって,取締役会決議を行わなかったことに法令違反があるといえる。そして,これについて,控訴人Y1に故意あるいは少なくとも過失が認められることは,原判決が第3の2(5)アで認定説示するとおりである。
イ 本件共同事業コンサルティング契約締結の必要性及び業務提供の実体について
(ア) 控訴人Y1及び同Y3は,本件共同事業コンサルティング契約締結当時のb社の状況に鑑みると,同契約締結の必要性があった旨縷々主張する。しかし,本件共同事業コンサルティング契約を締結し,それに基づく支出をする具体的必要性に乏しかったといえることは,上記の2(4)(原判決の第3の2(2)の補正)で認定説示するとおりである。
なお,控訴人Y1は,本件共同事業コンサルティング契約の業務範囲には,lグループとの事業提携も含まれている旨主張する。確かに,同契約書上にはその旨の記載もあるが,同契約に基づく成功報酬1億5750万円(税込)は本件リファイナンスに対するものであることは控訴人Y1が認めるところであるから(乙28,原審における控訴人Y1本人),同契約締結の必要性の有無及び業務提供の実体を検討する上で,上記事業提携を考慮するのは相当ではない。
(イ) 控訴人Y1及び同Y3は,A4が,被控訴人とlグループとを引き合わせるきっかけを作り,同グループの代表者であるA14との関係を強固なものとし,協議にも出席し,両者の間の意見の調整を行うなど,本件リファイナンスの実現に向けて重要な役割を果たした旨縷々主張し,その旨陳述し(乙26,28),供述する(原審における控訴人Y3本人,同控訴人Y1本人)。しかし,A4は,被控訴人の顧問をしていたというのであるから(甲83の3),そうであれば,控訴人らの主張する程度の業務を行ったとしても,必ずしも特別なこととはいえない。本件共同事業コンサルティング契約を締結し,合計1億5750万円(税込)もの成功報酬を受け取る以上,A4においてそれに値するだけの業務を提供しなければならないが,それを裏付けるような客観的な証拠はない(なお,乙A64,A65,C38については,後記(カ)のとおりおよそ採用に値しない。)。上記各証拠によっても,業務として行うことが考え得る事項をA4が行ったと単に挙げるのみで,A4が具体的にどのような行動をしたかをうかがうことはできないし,他にそれを認めるに足りる証拠もない。そもそも,A4は,大学卒業後,電機会社に就職し,法律事務所勤務を経て,行政書士事務所を設立し,その後,d社を設立したり,w株式会社の顧問に就任した経歴を有するようであるが(甲83の3,4),控訴人Y1もA4の経歴の詳細を把握していないのであるから(同控訴人Y1本人),A4が真に控訴人Y1及び同Y3が主張するような業績を挙げ得るだけの能力を有しているのかさえ不明である。コンサルティング契約についても,行われた業務の内容は具体的に明らかにされていない限り,契約に基づく業務の提供がされたとは認めらないのであるから,そのような業務に対して報酬を支払うことは不合理であるといえる。
なお,控訴人Y1は,本件リファイナンスのような取引を行う場合,各種支援を受けることが一般的であるから,同契約締結の必要性に関する控訴人Y1の判断が著しく合理性を欠くものでない限り,控訴人らに善管注意義務違反はないというべきである旨主張する。しかし,本件共同事業コンサルティング契約は,これに基づく報酬が支払われた平成21年9月18日の直前の同月初め頃に締結されたものであるから(原判決の第2の2(5)),同報酬の支払が同契約に基づく業務に対するものとは認められず,又,上記のとおり,業務の提供があったとも認められない。そうである以上,同契約を締結し,それに基づく金員の支出を行うことは著しく不合理であり,その不透明な支出は,公正さを疑われるものというべきである。
(ウ) 控訴人Y1は,被控訴人監査役会が,平成21年12月28日付け監査役監査実施報告書(甲104)において,無条件に取締役の義務違反がない旨を認める記載をしており,監査役会として,取締役の善管注意義務違反がないと判断した証左である旨主張する。しかし,取締役から提供された情報に特に疑うべき事情がない限り,監査役会が取締役に義務違反がない旨の判断をすることはあり得ることであるから,監査役会が監査報告書に取締役の義務違反がない旨を記載したからといって,取締役に善管注意義務違反がなかったということにはならない。そして,被控訴人の監査役会において本件共同事業コンサルティング契約の具体的内容を知悉した上で上記の監査がされたと認めるに足りる証拠はないから,上記の監査報告書の記載をもって,同契約の締結及びそれに基づく金員の支出について,取締役に善管注意義務違反がないと判断した証左であるとはいえない。
(エ) 控訴人Y1は,本件調査委員会の調査において,A4が本件リファイナンスのあっせんを行ったことを認めており,それが仮装な取引であり,必要性がなく,金額が不相当かその疑いがあったとの指摘がされていないことからすると,本件調査委員会も,本件共同事業コンサルティング契約について,取引の実体,必要性及び報酬の相当性を認めたというべきである旨主張する。本件調査委員会の調査で明らかにされたA4の業務内容についても,控訴人Y1及び同Y3の陳述ないし供述によるものと大きく変わるところはない。しかし,本件調査委員会がそのような業務内容を認めたとしても,それが,本件共同事業コンサルティング契約に基づく業務の提供と認めるに値しないものであることは,上記(イ)で説示したところと同じであり,本件調査委員会の判断によってその結論が左右されるものではない。
(オ) 控訴人Y1は,本件共同事業コンサルティング契約につき,取引の実体又は必要性がないのに,A4に多額の金銭を支払う動機がない旨主張する。しかし,その金銭支払の経緯の詳細は明らかでないが,金員を支出する何らかの理由があることは否定し切れないことからすると,その必要性がなかったとも言い切れない。したがって,本件においては,金銭を支払う動機の有無については,具体的な業務提供の実体があったとは認められない本件共同事業コンサルティング契約が締結されたことを否定する理由とはならない。
(カ) 控訴人Y1及び同Y3は,lホールディングスの匿名社員からの聴き取り内容を文書化したものと同社員作成の打合せノートを代理人作成の報告書として提出している(乙A64,A65,C38)。しかし,同報告書でも,同社員が誰かは具体的に明らかとされておらず,真実同社の社員であるのかどうかの確証もない。仮に同社の社員だとしても,その者に対する反対尋問の余地すらないのであるから,証拠としておよそ採用に値しないというべきである。なお,控訴人Y1は,聴取した弁護士の反対尋問の機会があるとか,弁護士4名が陳述内容を聴取してその結果をまとめたものであるから,伝聞過程で誤りを生じたおそれはないなどと主張するが,本件では,上記社員の供述内容の真偽そのものが問題となっているのであるから,およそ意味のある主張とはいえない。
ウ 控訴人Y3の善管注意義務違反ないし責任の程度について
控訴人Y3は,被控訴人の代表権はなく,本件共同事業コンサルティング契約の内容について一切関与しておらず,控訴人Y1らの指示に従って行動したにすぎないから,善管注意義務違反の程度は小さく,故意又は過失も一切認められないか,過失があったとしてもその程度は相当低い旨主張する。しかし,控訴人Y3は,本件リファイナンスについて,被控訴人の取締役副社長として関与し,本件共同事業コンサルティング契約締結の手続に関与しているばかりか(乙26,原審における控訴人Y3本人),本件共同事業コンサルティング契約の成功報酬の額について,控訴人Y1とともにA4と交渉したことを自認しており(乙35,同控訴人Y3本人),同契約に浅からず関与したことは明らかである。関与の程度によって他の取締役との関係で責任の軽重の問題は生じることはあっても,控訴人Y3は,被控訴人に対し,他の取締役と連帯して責任を負うものであるから(会社法430条),被控訴人との関係ではその責任を免れるものではない。
(2)  争点(2)(株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア 取締役会決議の欠缺について
控訴人Y1は,株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出についても,取締役会決議は不要であり,控訴人Y1には,法令違反及び手続違反はなく,故意又は過失もない旨主張する。しかし,「1件1億円以上」の契約の締結及びこれに基づく金員の支出については,取締役会の決議が必要であることは,上記(1)ア(ア)で認定説示するとおりである。そして,株式譲渡アドバイザリー契約が実質的に1件1億1865万円(税込)の支出とみるべきであることは,原判決が第3の3(1)で認定説示するとおりである。また,上記支出額からは,月額50万円以上の顧問・コンサルティング契約に相当することも明らかである。したがって,同契約の締結及びこれに基づく金員の支出は法令違反であって,これについて控訴人Y1に故意又は過失が認められることは,原判決が第3の3(5)アで認定説示するとおりである。
イ 株式譲渡アドバイザリー契約の必要性及び業務提供の実体について
(ア) 控訴人Y1及び同Y3は,株式譲渡アドバイザリー契約が締結された当時のb社の状況からすれば,同契約締結の具体的必要性があった旨縷々主張する。同契約締結の一般的必要性がないとまではいえないことは,原判決が第3の3(2)で説示するとおりである。しかし,A4が,同契約に先立つ本件共同事業コンサルティング契約でも,同契約に基づく業務を行ったとは認められないことは,上記(1)イで認定説示し,また,原判決が第3の2(2)で認定説示するとおりである。株式譲渡アドバイザリー契約においても,着手金及び成功報酬の合計1億1865万円(税込)に見合う相当な業務の提供があったと認められないことは,後記(イ)で説示し,また,原判決が第3の3(3)で説示するとおりである。また,控訴人Y1が主張するような報酬額の当不当を論じる以前に(上記第2の3(2)(控訴人Y1の主張)ウ),そもそも報酬を支払うことが不当といえる。したがって,同契約締結の具体的必要性があったとは到底認められない。
なお,控訴人Y1は,b社の株式のような上場会社の株式譲渡に関しては,実務上アドバイザーを依頼するのが一般的である旨主張する。しかし,以上に説示した事情からすれば,実務がそのようなものであったとしても,それが本件に当てはまるとはいえない。
(イ) 控訴人Y1及び同Y2は,A4が,m社やn社を被控訴人に紹介し,交渉窓口となり,打合せに出席し,自己の人脈を駆使しながらb社の株式の譲渡に尽力し,株式譲渡アドバイザリー契約の業務を提供した旨縷々主張し,その旨陳述し(乙26,28),供述する(原審における控訴人Y3本人,同控訴人Y1本人)ほか,これに沿う証拠(乙5,A62,A82)を提出する。しかし,上記各証拠によっても,A4の具体的な業務提供の詳細が明らかであるとはいえず,およそ同契約に基づく相当な業務の提供があったと認められないことは,上記(1)イ(イ)で認定説示するところと同じである。
(ウ) 控訴人Y1は,本件調査委員会が,株式譲渡アドバイザリー契約について,取引の実体,必要性及び報酬の相当性を認めたというべきである旨縷々主張するが,本件調査委員会の判断によって,上記(イ)の判断が左右されるものではないことは,上記(1)イ(エ)で説示するところと同じである。
また,控訴人Y1は,株式譲渡アドバイザリー契約につき,取引の実体又は必要性がないのに,A4に多額の金銭を支払う動機がない旨主張するが,動機の有無が架空の内容の株式譲渡アドバイザリー契約が締結されたことを否定する理由とならないことは,上記(1)イ(オ)で説示するところと同じである。
ウ 控訴人Y2のいう経営判断の原則について
控訴人Y2は,b社の清算をして連結決算の対象とならないようにすべく金融支援をすることは,経営判断の原則からすれば,取締役としての善管注意義務に違反しない旨縷々主張する。しかし,本件では,b社の株式の譲渡そのものが義務違反として捉えられているのではなく,それに伴う株式譲渡アドバイザリー契約を締結し,これに基づき報酬として多額の金員を支出したことが義務違反とされているものである。そして,A4が同契約に基づく報酬額に見合う相当な業務提供をしていないことは,上記イ(イ)で説示するとおりであり,同契約を締結する具体的必要性があったと認められないことは,上記イ(ア)で説示するとおりである。そのような契約に対して,合計1億1865万円(税込)もの支出を行うことは不合理であるというほかないから,控訴人Y2のいう経営判断の原則というものを考慮に入れても,なお控訴人Y2に善管注意義務違反があるということができる。
なお,控訴人Y2は,同契約に基づく着手金及び成功報酬の支出が,国税当局の税務調査により,費用として合理的なものと是認するとの判断がされた旨主張する。しかし,税務調査は,課税要件事実に関する必要な資料を収集するために行われるものであり,善管注意義務違反の有無の判断を目的とするものではないから,税務調査により費用として認められたからといって,その支出について善管注意義務違反にならない理由はない。
また,控訴人Y2は,控訴人Y3からの説明からすれば,A4が十分な業務提供を行っていた旨主張するが,A4が相当な業務提供を行ったとはいえないことは,上記イ(イ)で認定説示するとおりである。
エ 控訴人Y3の善管注意義務違反ないし責任の程度について
控訴人Y3は,株式譲渡アドバイザリー契約の内容の決定及び支出に一切関与しておらず,被控訴人社内での地位や影響力も他の控訴人らに比べて圧倒的に弱いから,善管注意義務違反及び故意又は過失がないか,あっても極めて小さい旨主張する。しかし,控訴人Y3は,b社の株式の譲渡にも株式譲渡アドバイザリー契約の締結にも関与している(乙26,原審における控訴人Y3本人)ばかりか,株式譲渡アドバイザリー契約の着手金及び成功報酬の額について,控訴人Y1及び同Y2とともにA4と交渉したことを自認しているのである(乙35,同控訴人Y3本人)。控訴人Y3がその責任を免れることがないことは,上記(1)ウで説示するところと同じである。
(3)  争点(3)(複合機導入コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)及び争点(4)(車両調達等コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア 控訴人Y1の関与について
控訴人Y1は,控訴人Y2を管理統括責任者とし,自身は営業統括責任者として業績回復に専念していたから,上記各契約の締結等の事実を知る立場にはなく,その役割を担っていなかった旨主張する。平成21年6月以降,役職の分掌の面では,控訴人Y1が営業部門を担当し,控訴人Y2が管理部門を担当していることが認められる(乙A58)。しかし,控訴人Y1の地位及び控訴人Y1と同Y2の関係に鑑みれば,控訴人Y1が上記契約の締結等に関与したと強く推認されることは,原判決が第3の4(2),5(2)及び6(2)で認定説示するとおりであり,役職の分掌のみによっては,上記推認が覆されるとはいえない。
イ 控訴人Y2が主体的に行動する動機について
控訴人Y1は,複合機導入コンサルティング契約について,控訴人Y2がA4に依頼したr社株式の買取資金を補填するために行われたものであるから,控訴人Y1の意向を確認することなく,自ら主体的にこれを実行する動機があった旨主張し,控訴人Y2は,原審における本人尋問において,r社株式の売買の話をA4に相談したこと自体は認める供述をしている。しかし,控訴人Y1の複合機導入コンサルティング契約に関する上記主張は,本件の訴え提起から原審口頭弁論終結までの約3年間に全くされたことはなく,同弁論終結後に初めてされたものである。これに加え,同主張に沿うかのようなA32の陳述書(乙A63)も,控訴人Y2がA31の保有していたr社株式を買収するために支出したものである疑いが強いとの話をA25から聞いたというあいまいなものにすぎず,控訴人Y1の主張を裏付けるものとはいえない。そして,控訴人Y2の上記供述も,同様である。したがって,控訴人Y1の上記主張は,およそ採用することはできないのであり,少なくとも,上記アの推認を覆す事情とはいえない。
なお,控訴人Y1は,控訴人Y2が,原審における本人尋問において,複合機導入コンサルティング契約の締結等について控訴人Y1に相談していない旨明確に述べている旨主張する。しかし,上記供述は,本件調査委員会に対しては,控訴人Y1に相談したとの説明をしていないとの趣旨でされたものにすぎず,控訴人Y2の供述が控訴人Y1の関与を否定しているものと解することはできない。
(4)  争点(5)(金融商品仲介業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
控訴人Y2は,被控訴人に関西アーバン銀行を紹介し,融資をあっせんしたA5に対し,報酬(商法512条)ないし費用(民法702)を支払う義務がある旨主張し,A5は,控訴人らから本牧不動産に関するリファイナンス先の紹介の依頼を受けた旨陳述する(乙A62,A92)。しかし,控訴人らの各陳述書(乙26ないし28)及び原審における控訴人ら各本人尋問にはそれに沿う部分はない。控訴人Y3によれば,関西アーバン銀行の紹介者はA4であり,A5とは面識があったにすぎないのであるから(原審における控訴人Y3本人),控訴人らからA5に対して依頼があったと認めることはできない。また,控訴人Y3によれば,関西アーバン銀行は,A3本人又はその資産管理会社と取引があったというのであり(乙26),A5が同銀行を紹介することが報酬を支払うに値するものであったのか疑問が生じる。さらに,A5は,税理士であるから(乙A62),商人とはいえず,商法に基づく報酬請求権は発生しないし,A5が被控訴人のために有益な費用を支出したとも認められない。したがって,被控訴人がA5に報酬ないし費用を支払う義務があるとは認められない。
(5)  争点(6)(本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティング契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア 控訴人Y1の主張について
控訴人Y1は,A5が関西アーバン銀行によるリファイナンスの被控訴人の窓口であった旨主張し,A5は,それに沿う陳述をし(乙A62),控訴人Y3もその旨陳述する(乙26)。しかし,被控訴人に関西アーバン銀行を紹介することがそれほど価値のあるものとは考え難く,関西アーバン銀行の紹介者がA4であるとの控訴人Y3の供述もあることは,上記(4)で認定説示するとおりであることからすると,A5が被控訴人の窓口になる理由は認められず,上記各陳述は信用できないものであって,A5が被控訴人の窓口であったとの事実を認めることはできない。
控訴人Y1は,A5にb社の支援先の紹介を依頼した経緯もあったため,被控訴人が報酬を支払うべきであると認識していた旨主張する。しかし,A5は,b社の株式を購入したm社の代理人を務めており(乙A49の2),被控訴人にとっては取引の相手方であるから,そのような者に報酬を支払うのは不合理である。
イ 控訴人Y2の主張について
控訴人Y2は,売買の仲立ちをする者としては,売り手と買い手の双方から報酬や手数料を受領することが認められており,A5が被控訴人のために業務をしたから,同人に報酬ないし費用を支払う義務がある旨主張する。しかし,A5は相手方側の人物であるから,双方のために行動していたとはいえないことは,上記アで説示するとおりである。そのような人物に報酬ないし費用が発生しないことは,上記(4)で認定説示するところと同じである。
(6)  争点(7)(株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア 控訴人Y1の主張について
控訴人Y1は,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約に基づく業務は提供されているのであるから,その目的に特段不合理な点がなければ,取締役の裁量の範囲内にあり,控訴人Y1が任務懈怠ないし不法行為責任を問われる理由はない旨主張する。しかし,上記各契約が控訴人らの自己保身ひいては経営支配権維持を目的に締結されたものであることは,原判決が第3の8で認定説示するとおりである。したがって,このような目的の下に締結された上記各契約は不合理であり,取締役の裁量の範囲を逸脱するものであって,控訴人Y1に任務懈怠ないし不法行為が成立するものである。
イ 控訴人Y2の主張について
控訴人Y2は,上記各契約が株主全体の利益を考えて行われたものであり,自己保身のために行われたものではない旨主張するが,その主張が採用できないことは,上記アで説示するところと同じである。
また,控訴人Y2は,上記各契約に基づく支出が,税務調査において,費用として是認され,合理的費用と判断されている旨主張するが,それによって善管注意義務違反を免れるものでないことは,上記(2)ウで説示するとおりである。
なお,控訴人Y2は,控訴人ら補助参加人が当初提示した報酬額1億円を交渉の努力の末実費相当額の3150万円に減額させているところ,自己保身のためであれば先方の言い値で契約することも考えられる旨主張する。しかし,余りに巨額な報酬を定めて契約することは,それだけで責任が問われる可能性があるから,報酬額を交渉の末減額させることは,必ずしも自己保身等の目的があったことを妨げるものとはいえない。また,税務調査により費用として認められたからといって,同各契約に基づく金員の支出について善管注意義務違反にならない理由がないことは,上記(2)ウで説示するとおりである。
ウ 控訴人Y3の主張について
控訴人Y3は,上記各契約に一切関与していないから,責任を負ういわれはない旨主張する。しかし,控訴人Y3は,控訴人ら補助参加人との面談に関与し,実務レベルとはいえ,打合せに参加しているのであるから(原判決の第3の1(4)イ,エ),上記各契約締結に向けての行為を取締役として担っていたといえる。取締役として,他の控訴人らとの連帯責任を免れるものではない。
(7)  争点(8)(被控訴人の損害及び控訴人らの任務懈怠ないし不法行為と損害との間の因果関係)について
ア 報酬額の相当性について
控訴人Y1は,本件共同事業コンサルティング契約及び株式譲渡アドバイザリー契約について,控訴人Y3は,それに加え,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約について,それぞれ報酬として妥当ないし相当であるから被控訴人には損害が生じていない旨主張する。しかし,上記各契約は,その締結の必要性がない若しくは乏しいか又は同契約に基づく業務の提供が認められないのであるから(原判決の第3の9(1)ア(補正後),(2)ア及び(6)),それらの契約に基づく報酬が妥当であるとも相当であるともいえないことは明らかである。
イ 控訴人Y3の義務違反等と損害との因果関係について
控訴人Y3は,同控訴人の善管注意義務違反や過失の程度からは,損害全部との因果関係は認められない旨主張する。しかし,控訴人Y3が控訴人Y1ないし控訴人Y2と連帯して責任を負うことは,上記(1)ウ,(2)エ及び(6)ウで説示するとおりであるから,義務違反や過失の程度に関わらず,損害全額との間に因果関係が認められることは明らかである。
(8)  損益相殺,過失相殺ないしその類推について
ア 損益相殺ないしその類推について
(ア) 控訴人Y2は,金融商品仲介業コンサルティング契約,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティング契約に基づく支出を行うことにより,A5に対する報酬ないし費用を免れているから,被控訴人には損害が発生していないか,発生していたとしても損益相殺の法理が適用される旨主張する。しかし,被控訴人においてA5に対する報酬ないし費用を支払う義務がないことは,上記(4)及び(5)で説示するとおりであるから,控訴人Y2の主張はその前提を欠いて失当といえる。
(イ) 控訴人Y2は,本件共同事業コンサルティング契約以外の本件の各契約に基づく各支出を行うことによって,b社が連結子会社の対象から外れるなど,被控訴人が利益を享受しているから,被控訴人の損害については,損益相殺の法理ないしその類推により減額控除されるべきである旨主張する。しかし,上記各支出がいずれも被控訴人が支払う必要のないものであることは,上記(7)アで説示し,また,原判決が第3の9(2)ア,(3)ないし(6)で説示するとおりである。したがって,その支出によって被控訴人が利益を享受していないことは明らかであるから,損益相殺の法理の適用ないしその類推の余地はない。
(ウ) 控訴人Y3は,本件共同事業コンサルティング契約,株式譲渡アドバイザリー契約,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約により被控訴人に損害が生じているとしても,相当な額の報酬を控除した額になるというべきである旨主張するが,それに理由がないことは,上記(7)ア並びに上記(ア)及び(イ)で説示するとおりである。
イ 過失相殺ないしその類推について
控訴人Y2は,他の取締役(A3やA22)にも監視義務違反があるから,これらの者の責任を不問に付したまま控訴人らの責任を追及するのは妥当ではなく,過失相殺の法理の類推ないし同法理の趣旨により,賠償額が減額されるべきである旨主張する。しかし,任務懈怠ないし不法行為を実際に行ったのは控訴人らであり,他の取締役については,仮に責任があるとしても,監視義務に違反したにすぎない。取締役間の内部関係においても,専ら責任を負うべきは控訴人らであるから,被控訴人が他の取締役らに請求せず,控訴人らのみに損害賠償請求をしたとしても不当とはいえず,被控訴人の請求する賠償額を減額すべき理由はない。
(9)  内規違反と任務懈怠について
控訴人Y2は,被控訴人の職務権限基準表が内規であり,被控訴人においては,これまで上記基準表の規定が厳格に履践されておらず,実質的に追認されてきたのが実情であるから,内規に違反しても過失なしとして善管注意義務違反は認められないと解すべきである旨主張する。しかし,被控訴人の職務権限基準表により取締役会決議とされた事項は「重要な業務執行」(会社法362条4項)に該当するものといえるから,これに違反した場合,単純に内規に違反したと評価されるにとどまるとするのは相当ではない。また,上記基準表の規定が厳格に履践されておらず,実質的に追認されてきたとの実情を認めるに足りる証拠はない。そして,控訴人Y2が株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出に当たって取締役会決議を行わなかったことに少なくとも過失が認められることは,原判決が第3の3(5)アで認定説示するとおりである。
なお,控訴人Y2は,会社の利益となると誠実に考えて行った一連の行為について責任が問われるべきではない旨主張する。しかし,控訴人Y2が関与した本件共同事業コンサルティング契約以外の本件の各契約については,契約の締結及びこれに基づく金員の支出が必要のないものであり,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約は,控訴人らのために締結されたものであることは,原判決の認定説示及び上記認定説示から明らかであり,控訴人Y2がおよそ会社の利益となると誠実に考えて行ったと認めることはできない。
第4  結論
よって,原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木幸男 裁判官 大久保香織 裁判長裁判官木下秀樹は,差し支えのため,署名押印することができない。裁判官 鈴木幸男)

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296