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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(63)平成28年12月16日 東京地裁 平26(ワ)19335号 業務委託料請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(63)平成28年12月16日 東京地裁 平26(ワ)19335号 業務委託料請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)

裁判年月日  平成28年12月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)19335号・平27(ワ)19193号
事件名  業務委託料請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)
裁判結果  認容(本訴)、請求棄却(反訴)  文献番号  2016WLJPCA12168028

要旨
◆原告が、被告に対し、被告の資金調達等について原告がアレンジメント業務を行う旨の本件アドバイザリー契約に基づき、新株予約権の行使による資金調達の実現及び新株予約権の未行使報酬条項によって発生した各アドバイザリー・フィーの支払を求めるとともに、事業譲渡等に関する業務委託契約に基づき、業務委託料の支払を求めた(本訴)ところ、被告が、原告に対し、業務委託料に係る本件合意が公序良俗に反するなどとして、不当利得に基づき、既払額と本来支払うべき成功報酬額との差額の支払を求めた(反訴)事案において、原告主張に係る資金調達について被告が支払義務を負うアドバイザリー・フィーは発生していると認定し、また、意図的にアドバイザリー・フィーの支払を免れることを回避するために必要な未行使報酬条項は公序良俗に反しないと判断するとともに、本件事情の下では本件合意が公序良俗に反するとはいえないとして、本訴請求を認容する一方、反訴請求を棄却した事例

参照条文
民法90条
民法648条
民法656条
民法703条

裁判年月日  平成28年12月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)19335号・平27(ワ)19193号
事件名  業務委託料請求事件(本訴)、不当利得返還請求反訴事件(反訴)
裁判結果  認容(本訴)、請求棄却(反訴)  文献番号  2016WLJPCA12168028

(本訴)平成26年(ワ)第19335号 業務委託料請求事件
(反訴)平成27年(ワ)第19193号 不当利得返還請求反訴事件

東京都中央区〈以下省略〉
本訴原告兼反訴被告(原告) 株式会社ストリーム
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 渥美央二郎
同 北川朝恵
東京都港区〈以下省略〉
本訴被告兼反訴原告(被告) グローバルアジアホールディングス株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 大森一志

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,4273万7712円及びうち1131万3312円に対する平成25年5月1日から支払済みまで,うち675万3600円に対する平成25年7月13日から支払済みまで,うち1732万5000円に対する平成25年10月24日から支払済みまで,うち734万5800円に対する平成25年11月17日から支払済みまで,年6分の割合による金員を支払え。
2  被告の反訴請求を棄却する。
3  訴訟費用は本訴反訴を通じて被告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴請求
主文第1項と同じ。
2  反訴請求
原告は,被告に対し,6926万3850円及びこれに対する平成27年7月14日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件本訴は,原告が,被告との間で① 被告の資金調達等について原告がアレンジメント業務を行う旨のフィナンシャル・アドバイザリー契約(以下「本件アドバイザリー契約」という。)を締結し,(ア) 同契約に基づく原告のアレンジメント業務の遂行により被告が新株予約権の発行に成功し同予約権の行使による資金調達を実現したことによって同契約に定めるアドバイザリー・フィー(平成25年6月の1億2864万円の資金調達にかかるフィー:643万2000円(税込675万3600円),同年10月の1億3992万円の資金調達にかかるフィー:699万6000円(税込734万5800円)の合計額)が発生した旨主張してその支払を求め,また(イ) 被告が自己取得した新株予約権2750個について,新株予約権の権利行使がされないことが確定したことにより本件アドバイザリー契約上のいわゆる未行使報酬条項(第5条)に基づく1650万円(税込1732万5000円)のアドバイザリー・フィーが発生した旨主張してその支払を求めるとともに,② 事業譲渡等に関する業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)に基づいて,被告の連結子会社である訴外株式会社ハミングステージ(以下「ハミングステージ」という。)の事業譲渡を完了したことにより1077万4583円(税込1131万3312円)の業務委託料が発生した旨主張して,被告に対し,各支払及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。これに対して,被告は,①(ア)のうち平成25年10月の資金調達は本件アドバイザリー契約に基づくものではないからアドバイザリー・フィーは発生しない,①(イ)の未行使報酬条項は公序良俗に反し無効であるから,同条項に基づくアドバイザリー・フィーは発生しない,②の本件業務委託契約に基づく業務委託料については,事業譲渡の対価について2億5000万円を超えた部分について40%の成功報酬を定めた合意(以下「本件合意」という。)は公序良俗に反し無効であると主張して,原告の請求を争っている。
本件反訴は,被告は原告に対して上記業務委託料の一部を支払ったが,上記のとおり業務委託料にかかる本件合意が公序良俗に反して無効であるから本来支払うべき業務委託料は既払額より低額なものとなり,その差額について原告が不当に利得しているとして,原告に対して不当利得の返還を求める事案である。
1  前提事実(当事者間に争いがない事実,証拠又は弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)  当事者
ア 原告は,株式公開に関するコンサルティング業務,M&Aに関するコンサルティング業務,経営コンサルティング業務等を目的とする株式会社である。
イ 被告(本件当時の商号は,株式会社プリンシバル・コーポレーション)は,投資業,有価証券の保有,運用及び売買,有価証券等に係る投資顧問業等を目的とする株式会社である。
(2)  本件アドバイザリー契約の締結
原告は,平成24年11月1日,被告との間で,被告の資金調達及び資本の異動に関するアレンジメント業務を被告が原告に委託する旨のフィナンシャル・アドバイザリー・サービス契約(本件アドバイザリー契約)を締結した。
原告及び被告は,本件アドバイザリー契約において,資金調達及び資本の異動に関するアレンジメント業務のアドバイザリー・フィーを,調達金額及び異動額の5%相当額の成功報酬とする旨の合意をした。
なお,本件アドバイザリー契約の契約書(甲3)には,アドバイザリー・フィーについて定めた第5条に次の記載がある(新株予約権の権利行使がされないことが確定した場合の報酬条項を,以下「未行使報酬条項」という。)。
「 当該金額とは別に,消費税相当分をご請求させていただきます。
資金調達及び資本の異動に関するアレンジメント業務にかかる成功報酬については,投資家から入金がされた時点,及び異動があった時点から3営業日以内でお支払いいただきます。
新株予約権の取得条項の行使等の事由により,新株予約権の権利行使がなされなかった場合には,新株予約権の未行使残高の5%を行使がなされないことが確定した日から3営業日以内にお支払いいただきます。」
(3)  本件業務委託契約の締結
原告は,平成24年12月25日,被告との間で,被告の連結子会社ハミングステージに関するFA業務(株式譲渡,事業譲渡,第三者割当増資等の資本政策),財務デューデリジェンス対応業務及び株式価値評価業務を被告が原告に委託する旨の業務委託契約(本件業務委託契約)を締結した。
なお,本件業務委託契約のうち,FA業務の成功報酬については,平成25年3月1日,原告被告間で変更合意がされ,調達額が3億8000万円以上になることを条件に,事業譲渡契約の締結が平成25年3月末までに実施される場合は,調達額2億5000万円までの金額の5%相当額及び調達額2億5000万円を超えた金額の40%相当額とする旨の合意(本件合意)がされた(甲5)。
(4)  被告の資金調達等
被告は,平成25年3月4日,訴外三田証券株式会社(以下「三田証券」という。)に対し,8850個の新株予約権を発行した(新株予約権1個当たりの払込金額12万円,合計10億6961万1000円)。
被告は,平成25年4月27日,三田証券から新株予約権2750個を自己取得した。
被告は,平成25年6月1日から同月30日までの間に,新株予約権の権利行使による払込総額1億2864万円の資金調達をした。
被告は,平成25年10月1日から同月31日までの間に,新株予約権の権利行使による払込総額1億3992万円の資金調達をした。
(5)  ハミングステージの事業譲渡
ハミングステージは,平成25年3月21日,ハミングステージと訴外株式会社マルダイ(後出の株式会社マルナカホールディングスの元代表者が代表取締役である会社,以下「マルダイ」という。)との間の同月15日付の事業譲渡契約に基づき,同社の運営する全5店舗にかかるスーパーマーケット事業をマルダイに事業譲渡した。譲渡代金4億6200万円のうち,4億3200万円については同日決済が行われ,原告は,被告からこの4億3200万円に相当する業務委託料(変更後の合意に基づく成功報酬)を受領した。なお,譲渡代金の残額(同月21日時点では,帳簿上の棚卸資産を3000万円と想定し,残額を3000万円としていたが,後日,実際に棚卸を行った際に想定していたよりも少ない2693万6458円と判明した。)は2693万6458円として決済することになった。
(6)  原告の被告に対する支払請求
原告は,被告に対し,以下の年月日に,以下のとおり支払期限を定めて以下のアドバイザリー・フィー及び業務委託料の支払いを求めた。
平成25年4月11日 FA業務の成功報酬として,2693万6458円の40%に相当する1077万4583円(税込1131万3312円)
支払期限:同年4月30日
平成25年7月5日 6月中の資金調達にかかるアドバイザリー・フィー(税込675万3600円)
支払期限:同年7月12日
同年10月18日 同年4月27日付の被告による新株予約権の自己取得にかかるアドバイザリー・フィー(税込1732万5000円)
支払期限:同年10月23日
同年11月11日 10月中の資金調達にかかるアドバイザリー・フィー(税込734万5800円)
支払期限:同年11月16日
2  争点及びこれに対する当事者の主張
(1)  平成25年10月1日から同月31日までの間の新株予約権の権利行使による資金調達についてアドバイザリー・フィーが発生するか
(原告の主張)
当該資金調達は,本件アドバイザリー契約に基づく原告のアレンジメント業務により平成25年3月4日に三田証券に対して割り当てられた新株予約権の行使がされた結果実現した資金調達であるから,本件アドバイザリー契約に基づくものであり,アドバイザリー・フィーが発生する。
被告は,原告が行うべきアレンジメント業務は,原告が被告に対して新株予約権を行使する「投資家」を紹介し,その投資家が新株予約権を行使することが中核である旨主張するが,被告は,「投資家」について,三田証券が予約権を行使して取得した株式を,さらに三田証券から譲渡を受けた者と誤解している。「投資家」とは,新株予約権を行使し,被告に代金を支払う三田証券そのものであり,三田証券が取得した株式をどうするかは原告の本件アレンジメント業務とは関わりのないことである。原告は,「投資家」である三田証券を被告に紹介したのであるから,原告が本件アレンジメント業務を遂行したことは明らかである。
なお,被告が三田証券に新株予約権を発行し10億もの資金調達の枠の設定をすることができたのは,まさに本件アドバイザリー契約に基づく原告のアレンジメント業務の成果である。すなわち,被告が原告に本件アレンジメント業務を依頼した当時,被告は2期連続債務超過となって上場廃止になる可能性があった。被告は第三者割当増資等による資金調達等を模索していたが,被告の株式は「特設注意市場銘柄」に指定されており,資金調達先を探すことは非常に困難であった。客観的な状況からすれば,被告の新株予約権を引き受けようとする証券会社が現れる可能性は極めて低い厳しい状況において,原告は本件アドバイザリー契約に基づき,三田証券と鋭意交渉し,ようやく新株予約権引受枠を設定することに成功した。被告が上場企業として生き残りをかけるために資金調達をするには,原告のような専門家のアドバイスが必要不可欠であったのであり,原告の関与がなければ三田証券による新株予約権の引き受けは実現しなかった。被告も,新株予約権の引受先の紹介に原告の力が必要であると考えたからこそ,原告と本件アドバイザリー契約を締結したのであって,三田証券の新株予約権の引き受けについて原告がほとんど関与していないとする被告の主張は事実に反する。
(被告の主張)
本件アドバイザリー契約に基づいて原告が行うべきアレンジメント業務は,原告が被告に対し,新株予約権を行使する投資家を紹介し,その投資家が新株予約権を行使することが中核であった。平成25年6月分の資金調達については,原告が被告に対し,新株予約権を行使する投資家を紹介し,当該投資家が新株予約権を行使したことから,被告は,本件アドバイザリー契約に基づくアドバイザリー・フィーの発生を認めるが,同年10月分の資金調達は,全て被告取締役であるCが以前から面識のあった個人投資家に新株予約権の行使を勧誘し,これを受けて同人が投資を決めたものであって,原告は一切関与していない。したがって,同年10月の資金調達は被告自身がしたものであって,原告はアレンジメント業務を遂行しておらず,アドバイザリー・フィーは発生していない。
新株予約権引き受けに関する三田証券との交渉は,主に被告において行っていたのであって,原告は,三田証券が割当先となることが決まった後,Dの紹介により三田証券の担当者と1回だけ面談し,三田証券が割当先となることを確認したにすぎない。このことからも,原告のアレンジメント業務が三田証券が引き受けた新株予約権の譲り受け先を被告に紹介することであったことが分かる。
(2)  本件アドバイザリー契約第5条の未行使報酬条項は,公序良俗に違反する無効なものか
(被告の主張)
本件アドバイザリー契約は,被告の資金調達を目的として行われたものであるところ,資金調達が達成されないにもかかわらず,被告が原告に対しアドバイザリー・フィーを支払うこととなる未行使報酬条項は本件アドバイザリー契約の目的に反するのみならず,原告に暴利を与えるものであって公序良俗に反し無効である。
原告は,いったん発生した新株予約権をすべて被告において自己取得してから,再度第三者に譲渡することによりアレンジメント業務を行う原告に対するアドバイザリー・フィーの支払義務を意図的に免れることとなるなどと主張するが,このような場合には,原告がアレンジメント業務を行っていないのであるから被告に支払義務が発生しないのは当然であり,何ら不合理ではない。
なお,自己取得した新株予約権であっても消却するまでは行使可能であり,実際にも被告は自己取得した新株予約権を株式会社ティーティーアイ(以下「ティーティーアイ」という。)に第三者割当方式により処分したのであって,新株予約権は行使されたから,自己取得したことによってその新株予約権について権利行使されないことが確定したわけではない。
仮に,未行使報酬条項が有効であるとしても,新株予約権の自己取得は,本件アドバイザリー契約に基づくものではなく,東京証券取引所からの指導の下,被告自らの判断に基づき取得したものであるから,被告は原告に対し,アドバイザリー・フィーの支払い義務を負わない。
(原告の主張)
未行使報酬条項は,公序良俗に反するものではない。すなわち,もし仮に当該条項を入れず,実際に新株予約権の権利行使がされて資金調達できた場合にしかアドバイザリー・フィーが発生しないとすると,被告においていったん発行した新株予約権をすべて自己取得してから,再度,第三者へ譲渡することにより,アレンジメント業務を行う原告に対するアドバイザリー・フィーの支払義務を意図的に免れることができてしまう。未行使報酬条項は,このような不合理な事態の発生を回避するために設けられたものであり,公序良俗に反するものではない。
なお,本件アドバイザリー契約の契約書は,被告から提示されたひな形をそのまま用いて作成したものであり,当該条項を含む第5条も被告から提案された内容を原告がそのまま承諾したものである。被告が公序良俗違反を主張することは禁反言の原則に照らして許されない。
新株予約権の自己取得について被告が本件アドバイザリー契約に基づくアドバイザリー・フィーの支払い義務を負わないとの主張は争う。被告は,上述のとおり原告のアレンジメント業務により発行された新株予約権を利用して結果的にティーティーアイから資金調達できたのであるから,それに見合うアドバイザリー・フィーの支払義務を当然に負っている。
(3)  本件合意が公序良俗に反して無効か
(被告の主張)
本件合意は公序良俗に反して無効なものである。
すなわち,本件合意は,一般的な報酬の算定方式であるいわゆるレーマン方式を採用せず,いわゆる逆レーマン方式により報酬を算定するものであるところ,本件は逆レーマン方式が妥当する事案ではない。すなわち,逆レーマン方式は,依頼主(売主)において,受任に難色を示すM&Aアドバイザーに対して提案するものであるところ,本件においては,原告から逆レーマン方式の提案がされている
また,被告は,株式会社マルナカホールディングス(以下「マルナカ」という。)との間で協議を重ね,平成24年12月28日にはハミングステージを予定価格5億円で事業譲渡する合意に至っていた(乙4)。その後,マルナカは,平成25年2月1日,被告に対し,4億5000万円を提示して同月5日,被告がこれを承諾したのであって,原告のマルナカとの交渉の難易度は高いものではなかった。この点においても本件は逆レーマン方式採用の前提を欠いていた。
さらに,本件においては,いったんレーマン方式による契約を締結した後,M&A成立直前になって,逆レーマン方式への変更合意がされている。被告は債務超過を免れ,上場廃止を回避するためにどうしても平成25年3月中にM&Aを成立させる必要があったところ,原告はこのような被告の窮状につけ込んで契約変更を迫ってきたのである。
加えて,極めて例外的に逆レーマン方式を定める場合であっても,その報酬は,10%から15%程度が通常であり,本件のように40%というのは異常な高率である。しかも,本件では,基本合意における予定価格が5億円であり,その後4億5000万円で合意したにも関わらず,基準額が2億5000万円と低く設定されている。本件において逆レーマン方式を採用することは著しく不当であり,その合意の経緯や合意内容からしても,本件合意が公序良俗に反する無効なものであることは明らかである。
原告の行った役務の提供と原告の得た報酬額が著しく均衡を失していることからすれば本件合意は暴利行為であってこの点からも無効というべきである。
(原告の主張)
上記合意が公序良俗に反することはない。
被告は,事業譲渡を含むM&Aにおける仲介手数料については,一般的に,価格が高くなるに従って手数料率が低くなるいわゆるレーマン方式という報酬体系が用いられているところ,価格が高くなるほど手数料率が高くなるいわゆる逆レーマン方式を採用している本件合意は公序良俗に反すると主張する。
しかしながら,M&A案件の報酬算定においてレーマン方式が採用されるのが一般的ではあるものの,例えば,顧客が公正価値(売り手と買い手が合意しうる価格)を超えた売却価格を実現することを要望した場合などには,M&Aアドバイザーが実施する価格交渉の難易度は急激に高くなり,それに伴いM&Aアドバイザーが負担する労力や費用は通常の水準を大きく超えることになるから,M&Aアドバイザーのインセンティブを高めるために公正価値を超える部分の手数料率を高く設定する逆レーマン方式を採用するのも合理的な選択となる。逆レーマン方式を採用していることから直ちに公序良俗に反することにはならない。
また,被告は,マルナカの買い取り価格が3億8000万円以上になることは確実であったから,2億5000万円を超えた部分につき40%もの報酬を支払うとの合意は公序良俗に反する旨主張する。しかし,買主であるマルナカは,デューデリジェンスの結果を受けて本件事業譲渡に非常に躊躇しており,かつ被告側の都合で実行時期を延期したという事情もあって,そもそも事業譲渡自体が実行不能になる可能性も高かった。このような被告に極めて不利な状況のもと,平成25年3月末までというタイトなスケジュールのなかで,何とかできる限り高額で事業譲渡を実現してほしいという被告の強い要望を受けて,また,そのような状況にあることも被告自身も認識した上で締結されたのが本件合意を含む報酬合意であった。本件は,同年3月末までに資金調達できないと上場廃止になるという差し迫った状況のもと,さらに被告に不利な様々な事情がある中で,M&Aアドバイザーである原告に難易度の高い交渉に挑戦させるインセンティブを与える必要があった事案であり,逆レーマン方式が妥当する事案である。被告も原告に高いインセンティブを与えて何とか上場廃止を免れることが最優先事項であったことから合意したものである。
さらに,被告は,原告の行った役務の提供と原告の得た報酬額とは著しく均衡を失しているため本件合意は暴利行為であって無効である旨主張する。しかしながら,上記のとおり,本件事業譲渡の実現は,時間的に制約がある中,かつ被告にとって極めて不利な状況の下で難易度の高い交渉を行ったことによりようやく実行にこぎつけた事案であり,なんら役務の提供と報酬額が均衡を失するものではない。
(4)  不当利得の額
(被告の主張)
被告は,原告に対し,本件合意に基づいて,少なくとも合計8530万円の支払いをした。
しかしながら,調達額が2億5000万円を超えた金額の40%を成功報酬とする本件合意は上記のとおり公序良俗に反して無効であるから,成功報酬は調達額の5%となるところ,被告に実際に入金された調達額は,1回目の決済において,3億6378万6547円,2回目の決済において,2693万6458円であったから,成功報酬はこれらの合計額の5%相当額となる。そして,原告は,ハミングステージの買掛金等の債務を譲渡対象とせず,これらの債務は被告が負担することとなったから,被告の調達額は,上記調達額の合計から7000万円を控除した金額となり,これに対する5%の金額である1603万6150円が,本来被告が原告に支払うべき成功報酬額となる。
したがって,既払額と,本来支払うべき成功報酬額との差額の6926万3850円は原告が不当に利得していることとなる。
(原告の主張)
争う。
第3  争点に対する判断
1  争点1(平成25年10月の新株予約権の権利行使による資金調達についてアドバイザリー・フィーが発生するか)について
(1)  証拠(甲6,18,19,26,27,D,A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
ア 原告は,平成24年10月頃,被告従業員であったD(以下「D」という。)から,被告(当初は固有名詞は伏せた上で)の資金調達について,約10億円の第三者割当増資をしたい旨の相談を受けた。
原告は,同年11月に入ってから,正式に被告から資金調達についての依頼を受けた。当時,被告は,2期連続で債務超過に陥る可能性が高く,平成25年3月期末までに債務超過を解消しなければ上場廃止を余儀なくされる状況にあった。また,被告は特設注意市場銘柄に指定され,証券取引所や金融庁からいわゆる要注意企業として監視をされている状況であった。そのような状況の中で,原告は,被告から,債務超過を解消して,平成25年3月末の上場廃止を回避するために協力を求められた。これを受けて,原告は,平成24年11月1日,被告との間で本件アドバイザリー契約を締結した。
なお,本件アドバイザリー契約の契約書は,被告において用意したひな形をそのまま使用したものであり,本件アドバイザリー契約の内容については,被告において事前に取締役会の承認を得ていた。
イ 被告は,本件アドバイザリー契約締結当時,三田証券を割当先の候補として同社と交渉を始めていたが,三田証券から新株予約権の引き受けについて承諾を得られてはいなかった。
原告は,本件アドバイザリー契約に基づき,兼ねてから面識のあった三田証券との交渉を進めるとともに,金融庁や証券取引所への対応のアドバイス,新株予約権の発行に際して必要となる金融庁に提出する有価証券届出書の作成や証券取引所に提出するいわゆるIR文書の作成,ハミングステージの売却も含めて平成25年3月末までに必要な資金調達をするための株主総会の招集・開催も念頭に置いた全体的なスケジュール管理のほか,発行する新株予約権の行使価格の設定方法,株価が10円を切った場合に上場廃止になることを避けるために株式併合をすることなど,総合的なアドバイスを行った。
ウ 被告は,同年3月4日,三田証券を引受先として,8850個の新株予約権を発行することに成功した。
この発行に先立ち,被告は,平成25年2月6日付の「第三者割当により発行される新株予約権の募集に関するお知らせ」と題するIR文書において,被告の置かれた現状において,時間的に限られた状況の中で新株予約権の引受先を確保することができなかったため,原告から三田証券の紹介を受け,三田証券から新株予約権の引受けの提案を受けたこと,当該提案は,資金調達のタイミングが割当先の判断次第となる点において,債務超過の解消方法として必ずしも確実な方法ではないが,株価が行使価額を上回る限り権利行使が進むことが想定され,その場合3月末日までに債務超過が回避される可能性が高まることを記載し,新株予約権による資金調達を採用したことを報告した。
また,被告は,同IR文書において,調達する資金の額について,払込金額の総額を10億6961万1000円,発行諸費用の概算額を5898万0550円,差引手取概算額を10億1063万0450円とし,発行諸費用の概算額には,フィナンシャル・アドバイザリー費用として割当予定先(三田証券)の行使額の5%である5348万0550円が含まれる旨の報告をした。
エ 被告及び三田証券は,三田証券が同新株予約権について,権利行使(行使された新株予約権の個数に応じた額の資金調達が実現することになる)により被告から交付される株式を保有した上,証券会社として市場動向を勘案して適時売却するという方針で権利行使を実施していくことを予定していた。(甲6)
(2)  以上の事実によれば,被告が,本件アドバイザリー契約締結当時,三田証券に対して新株予約権の発行をすることができた時点で,原告に対して支払うべきアドバイザリー・フィーとして,発行したすべての新株予約権にかかる権利行使時の払込総額の5%である5348万0550円を予定していたことが認められる。そうすると,被告は,原告が三田証券が新株予約権の行使により取得した株式を買い受ける第三者を被告に紹介することによりアドバイザリー・フィーが発生するのではなく,三田証券が新株予約権の権利行使をした都度,その行使額の5%のアドバイザリー・フィーの支払義務が発生することを認識した上で,本件アドバイザリー契約を締結したと認めることができる。
したがって,平成25年10月の新株予約権の権利行使による資金調達についても,被告が支払義務を負うアドバイザリー・フィーが発生している。
これに反する被告の主張はいずれも採用できない。
2  争点2(未行使報酬条項が公序良俗に反して無効か)について
未行使報酬条項は,新株予約権の発行の実現後に被告が同新株予約権を自己取得して第三者に譲渡するなどの方法により意図的に原告に対するアドバイザリー・フィーの支払いを免れることを回避するために必要な条項であるといえ,公序良俗に反するものといえないことは明らかである。
なお,被告は,自己取得した本件新株予約権を,ティーティーアイに第三者割当方式により処分し,新株予約権の行使がされているから,未行使報酬条項の権利行使がされないことが確定したとの要件を満たさない旨主張するが,未行使報酬条項はまさにこのようにして原告の業務遂行により発行された新株予約権を用いて資金調達を得ながら被告が原告に対する報酬の支払いを拒むことを許さない趣旨で合意された約定である。そもそも,被告の指摘する上記要件は,被告において本件新株予約権の自己取得をすることによりその引受先である三田証券において権利行使がされなかった場合について規定したものであると認められるし,上記のように結果的に本件新株予約権を用いて資金調達を実現させておきながら,未行使報酬条項の文言に形式的に該当しないとして報酬の支払いを拒もうとする被告の主張は許されない。
さらに,被告は,未行使報酬条項が有効であるとしても,新株予約権の自己取得は被告自らの判断によりされたもので本件アドバイザリー契約に基づくものではない旨主張するが,未行使報酬条項が有効であれば同条項により,自己取得を被告自らの判断により行ったとしてもアドバイザリー・フィーが発生するのであるから,この点に関する被告の主張は失当である。
3  争点3(事業譲渡にかかる本件合意が公序良俗に反して無効か)について
(1)  証拠(甲5,10,11,16,17,20~24,26~29,D,A)および弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告は,当初,被告の売上の大部分を占めるハミングステージの事業譲渡には消極的であり,同社を使った資金調達の方法については,その株式の49%を売却する方法を原告に対して希望したが,被告の財務状況が悪いことなどから買い手が見つからず,唯一話を聞いてくれたマルナカからも株式の譲渡については断られる状況であった。そこで,原告は,資金調達のためにハミングステージの事業譲渡にスキームを変更することを被告に対して説得し,マルナカとの協議を継続させた。原告は,ハミングステージの譲渡価格について,新株予約権による資金調達の状況を見ながら,その都度マルナカの譲渡価格で出す必要のある売却益のシミュレーションを行いつつ被告の役員らと協議をし,マルナカとの交渉を重ねた。
イ 被告は,平成24年12月28日,マルナカとの間で,ハミングステージのスーパーマーケット事業の事業譲渡について,譲渡予定価格を5億円とする基本合意をした。なお,同価格は,同基本合意締結後に実施される上記譲渡対象事業に対するデューデリジェンスの結果を受けて調整される可能性のあるものであった。(乙4)
ウ ハミングステージのデューデリジェンスの結果,ハミングステージが酒類の販売免許を取得していないことが判明し,また,譲渡対象の店舗のうち,土地の所有者からマルナカへの承継について承諾が得られず,同土地を2億円で買い取るように持ち掛けられ,マルナカからは,そうであれば譲渡価格から2億円を差し引くように迫られるなどの問題が起こった。原告は,これらの問題への対応も行った。
エ 被告は,平成25年2月1日,マルナカから,ハミングステージの譲渡価格(買取価格)について,4億5000万円(税別)とする提案を受けた。
オ 被告は,平成25年2月上旬,原告に対し,新株予約権による資金調達が順調であるから,ハミングステージの事業譲渡をいったん止めるよう要請した。原告はやむなくマルナカに事業譲渡の話を白紙にする提案をしたが,その後,被告から,やはり新株予約権による資金調達だけでは必要な資金の調達が困難であるとして,ハミングステージの事業譲渡の話を再開するよう依頼を受けた。
カ 原告は,もともと困難なマルナカとの交渉を被告の都合でいったん白紙にした後,これを再開して当初の事業譲渡のスケジュールを延期するよう要請した上,しかも同年3月末までに必要な資金を調達できるだけの売却益を上げて事業譲渡を成功させることについて,極めて困難であると考えたが,被告からの依頼を断れば被告が上場廃止になってしまうことから,同年2月21日,被告に対してこのような状況の説明をし,困難を極める交渉をするにあたり,本件業務委託契約の成功報酬をいわゆる逆レーマン方式に変更するよう提案した。原告は,成功報酬の発生条件として,調達額が売却損を回避するための3億5000万円となることを提案したが,被告から4億円とするよう要請があり,原告被告間で交渉した結果,同年3月1日,最終的に3億8000万円とする合意がされた。調達額が2億5000万円を超えた部分にかかる報酬の率(40%)については,被告から対案が出されて交渉されることはなかった。
なお,変更された成功報酬の合意の内容は以下のとおりである。
「(本件業務委託契約の)成功報酬については,調達額が3億8000万円以上となることを条件に,以下の通りとする。
(1) 契約締結が平成25年3月末までに実施される場合
調達額 2億5000万円までの金額 ×5%
調達額 2億5000万円を超えた金額 ×40%
(2)  契約締結が平成25年4月から5月末までに実施される場合
調達額 2億5000万円までの金額 ×4%
調達額 2億5000万円を超えた金額 ×20%
(3)  契約締結が平成25年6月以降になる場合
調達額 2億5000万円までの金額 ×3%
調達額 2億5000万円を超えた金額 ×3%」
キ 被告は,ハミングステージのスーパーマーケット事業をマルダイ(マルナカの元代表者が代表取締役を務める会社)に譲渡対価4億6200万円で事業譲渡した。なお,買掛金その他の債務については譲渡の対象とされなかった。
(2)  以上認定した事実によれば,原告が,マルナカ(マルダイ)に対してハミングステージを3億8000万円以上の価格で譲渡することをまとめるには相当の困難が伴うものであったことが認められ,原告に業務遂行についてインセンティブを与える逆レーマン方式を採用したことや2億5000万円を超えた部分の40%の高率の報酬を定めることに合理性があるといえる。また,被告としても,上記困難な状況を理解した上,交渉を行って原告から一定の譲歩を得た上で合意に至ったものと認められ,これらの事情に,上記合意を全体としてみれば一方的に原告に有利な内容になっているわけではないことも併せて考えると,本件合意が公序良俗に反して無効であるということはできない。
4  以上の次第で,原告の被告に対する本件アドバイザリー契約に基づくアドバイザリー・フィーの支払請求権及び本件業務委託契約に基づく業務委託料の支払請求権はいずれも認められる。他方,被告の本件合意が公序良俗に反して無効であるとの主張は認められないから,その余の争点について判断するまでもなく,これを前提とした被告の原告に対する不当利得返還請求権は認められない(なお,買掛金債務分約7000万円は,被告も合意の上で事業譲渡の対象から控除したものであるから(甲10,11),同額を譲渡対価から差し引くべきとの被告の主張も採用できない。)。
第4  結論
以上の次第で,本訴請求は理由があるからこれを認容し,反訴請求は理由がないからこれを棄却し,仮執行免脱宣言は相当でないのでこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部
(裁判官 辻山千絵)

 

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