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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(59)平成29年 1月23日 東京地裁 平26(ワ)14996号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(59)平成29年 1月23日 東京地裁 平26(ワ)14996号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成29年 1月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)14996号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2017WLJPCA01238004

要旨
◆インターネット等の情報通信網を利用したサービス業務等を目的とする株式会社である原告が、同社と企業提携に関する本件基本合意を契約した被告Y2社ないし被告Y4社並びに同社らの代表取締役又は前取締役等である被告Y1に対し、被告らが本件基本合意に基づく本件最終合意をしたのにこれを一方的に破棄した、あるいは、本件基本合意に基づき本件最終合意をすべき義務があったのにこれに違反した、又は、被告らには契約締結上の過失があるなどとして、債務不履行又は共同不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案において、本件最終合意が成立したと認めることはできず、本件最終合意の内容やその締結までの原告と被告らの交渉の経緯によっても、本件基本合意によって被告らに本件最終合意をすべき義務があるとは認められず、本件基本合意の不当破棄等本件基本合意違反も認められないとした上、被告Y1が本件最終合意を断った時点において、本件最終合意に関し最終段階に至っていたとはいえないなどとして、契約締結上の過失も認められないとし、請求を棄却した事例

【判例タイムズ社(要旨)】
◆企業提携についての基本合意の締結後,最終合意に向けて交渉が進んでいたとき,最終的に,被告らが原告の提示した内容での最終合意を拒否した事案において,①最終合意が締結されたとは認められない,②基本合意には最終合意をすべき具体的義務まで定められていないから被告らに債務不履行又は不法行為はない,③最終合意をしなかった被告らに契約締結上の過失はないとして,被告らには,原告に対する損害賠償義務がないとの判断がされた事例

評釈
岩田合同法律事務所・新商事判例便覧 3341号(旬刊商事法務2197号)
大塚和成・銀行法務21 842号69頁

参照条文
民法130条
民法415条
民法709条
民法719条

裁判年月日  平成29年 1月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)14996号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2017WLJPCA01238004

東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 長竹信幸
同上 中谷健二
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告(以下「被告Y1」という。) Y1
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告(以下「被告Y2社」という。) 株式会社Y2
同代表者代表取締役 Y1
上記2名訴訟代理人弁護士 五島丈裕
東京都千代田区〈以下省略〉
被告(以下「被告Y3社」という。) 株式会社Y3
同代表者代表取締役 B
東京都千代田区〈以下省略〉
被告(以下「被告Y4社」という。) 株式会社Y4
同代表者代表取締役 B
上記2名訴訟代理人弁護士 下田久

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,原告に対し,連帯して,2714万4600円及びこれに対する平成26年6月27日から支払済みに至るまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
原告が,原告と企業提携に関する基本合意を契約した被告らに対し,被告らが被告Y3社の株式譲渡契約を締結したのにそれを怠った,被告らが基本合意に違反した,又は,被告らには契約締結上の過失があるとして,被告らは債務不履行又は共同不法行為によって,損害賠償義務を負うとして,2714万4600円及びこれに対する請求日である本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実(証拠等に基づく事実は,後掲()内に証拠等を摘示する。)
(1)原告(当時の商号は「株式会社a」である。)は,インターネット・携帯電話網等の情報通信網を利用したマーケティング・広告宣伝・商品の発注・物流・代金決済・管理等のサービス業務及びコンテンツの企画・制作・販売・運営・集客等を目的とする株式会社である(甲1)。
被告Y1は,被告Y2社の代表取締役,被告Y3社(当時の商号は「株式会社b」である。以下,時期を通じて被告Y3社という。)の前代表取締役及び被告Y4社の前取締役である。
被告Y2社は,コンピュータソフトウェアの企画,開発,保守,販売・配信及びライセンス使用許諾等を目的とする会社である。発行済み株式総数は60株であり,被告Y1が全株式を保有している。
被告Y3社は,インターネットを媒体としたコンテンツ配信並びにインターネット及び通信回線を通じたアプリケーション・ソフトウェアの企画・販売等を目的とする株式会社である。平成26年4月4日に辞任するまでは,被告Y1がその代表取締役であった。発行済株式総数は1540株であり,同日までは被告Y1がその全株主を保有していた。被告Y3社は,被告Y4社の発行済み全株式140株を保有している(被告Y2社,被告Y3社及び被告Y4社を併せて,「被告会社ら」という。)。
被告Y4社は,パーソナルコンピュータソフト及びテレビゲームソフトの卸,販売,輸出入,企画及び制作等を目的とする会社である。平成26年4月4日に辞任するまでは,被告Y1が取締役であった。
株式会社c(以下「c社」という。)は,インターネット,携帯電話などを通しての通信販売業務及びコンピュータソフトウェアの企画,開発,販売並びにそのコンサルティングを目的とする会社である。その代表取締役はB(以下「B」という。)である。
(2)被告Y3社及び被告Y1は,平成25年7月23日付けで,d社に対し,企業提携の対象企業の探索とその実現に関し,業務を委託した(乙13)。
(3)被告Y1は,その頃,c社との間で,被告Y3社及び被告Y2社の全株式譲渡について交渉をしていたものの,合意に至っていなかった。
(4)原告執行役員C(以下「C」という。)は,平成25年10月7日以降,M&Aの仲介会社である株式会社d(以下「d社」という。)に対し,M&Aによって企業買収の仲介を打診したところ,d社からある会社が経営権の譲渡を希望しているとの話があったため,同年11月28日,d社に「守秘義務に関する誓約書」を提出し(甲6),d社から,被告会社らの資料を受け取った(甲7)。
(5)原告の代表取締役,C,被告Y1及びd社の担当者2名は,同年12月16日,被告Y3社の事務所で顔合わせをした。
(6)原告は,同月24日,d社に対し,被告Y3社との企業提携の実現の仲介を依頼した(甲8)。d社の担当者はD(以下「D」という。)であった。
(7)原告の代表者,取締役2名,原告執行役員C及び被告Y1は,平成26年1月7日(以下,平成26年は省略する。),飲食店にて会談をした。原告は,同月9日,被告Y3社に対し,被告会社らの経営権の取得を希望している旨の買収意向表明書を交付した(甲9参照)。
(8)原告及び被告らは,2月14日,被告Y1から原告に対し,別紙企業提携に関する基本合意書のとおり,合意した(甲10参照)(以下「本件基本合意」という。)。
(9)被告Y1は,同月25日及び同月27日,原告に対し,d社を通じて,本件基本合意に基づく最終合意をしない旨伝えた。
(10)被告Y1は,4月4日又はそれより前に(時期については争いがある。),c社に対し,被告Y3社の株式を譲渡し,被告Y3社及び被告Y4社の経営権をc社に譲渡した。Bは,同日,被告Y3社及び被告Y4社の代表取締役となった。
2  争点
(1)最終合意の成否
ア 原告の主張
原告と被告らは,平成26年3月19日,本件基本合意に基づく最終合意(以下「本件最終合意」という。)を締結したのに,被告らはこれを一方的に破棄した。
本件最終合意があったことは,(ア)d社が同日付けで原告に成功報酬の請求書を送付していること(甲19),(イ)原告と被告Y1は同月17日にd社担当者Dを通じて株式譲渡金額について2億6000万円とすることに合意していること(このことは,d社担当者Dが被告Y1から「買収金額は2.6億円のままで」と伝えられていること(甲13)から明らかである。),(ウ)役員や従業員の処遇についても合意されていたこと(同月19日d社担当者Dから被告Y1に送付されたメールに添付された同日付け株式譲渡契約書(案)(甲15,以下「契約書案3月19日版」という。)),(エ)本件最終合意の内容に従って手続が進められていること(被告会社らの事務所の賃貸人に対する代表取締役変更のお知らせ(甲17),辞任届(甲22),就任承諾書(甲23),臨時株主総会議事録(甲24)が作成され,司法書士から見積書をもらい,具体的な手続について指示を受け(甲25~28),原告は印鑑証明や入金の準備が整えられ(甲20),原告側が4月4日に行われる被告Y3社の歓迎会に誘われている(甲13)。)ことから明らかである。
イ 被告らの主張
原告の本件最終合意が成立したとの主張は否認する。
M&A取引における株式譲渡契約については,契約書をもって締結するのが当然であるところ,本件において契約書が交わされていない以上,本件最終合意の成立はない。
(ア)上記ア(ア)は認める。しかし,被告らには成功報酬の請求書のみならず,見積書の送付もなく,原告にのみ請求書が送付されたことは,本件最終合意の成立の根拠とはならない。
(イ)上記ア(イ)は,否認する。3月17日,d社担当者Dは被告Y1に対し原告が譲渡代金2億6000万円を提案していると伝えたので,被告Y1がこれ以上上がらないのか尋ねたところ,d社担当者Dにはこれ以上上がらないと回答した。そこで,被告Y1は,その額に承諾せず,原告からの契約書全体の提案を見てから本件最終合意をするか否かを決めると返答した。また,被告Y1は,同月19日,契約書案3月19日版を受け取った後,「家族(妻)や(被告Y3社の)役員と相談して検討する。」と回答したものであって(乙7においても確認すると述べている。),被告Y1が,同日,原告に対し,d社経由で本件最終合意を締結するとの意思表示をしたことはない。
(ウ)上記ア(ウ),(エ)については,原告が主張する事実は認めるが,その評価は争う。同月24日までには本件最終合意がされる必要があると伝えられていたのに,原告から被告らに具体的な最終契約書案が提示されたのが同月19日であったことから,原告及び被告らで最終合意がされた場合のために,併行して準備を進めていたものに過ぎない。
(エ)原告執行役員Cは,d社担当者Dを通じて,被告Y1に対し,同月19日より後に契約書案3月19日版を変更した同月24日付けの株式譲渡契約書案(以下「契約書案3月24日版」という。),同月26日に,譲渡代金を含む従前の内容を変更した株式譲渡契約書案(以下「3月26日版契約書案」という。)を渡していることからすると,同月19日に本件最終合意が成立したことなどあり得ない。
(2)本件基本合意の不当破棄等本件基本合意違反
ア 原告の主張
(ア)a 一般的にM&A,特に株式譲渡によるM&Aにおいては,提示された買収金額が低額でない限り,売り主側が拒絶することはないこと,本件においては平成25年12月26日,原告代表取締役,C,被告Y1及びd社の担当者2名の合計5名で被告Y3社の事務所で面談を行っていること,1月7日原告の役員4名と被告Y1とでいわゆるトップ会談を行っていること,それを踏まえて原告が被告らに詳細な買受意向表明書を提出したこと,それのような事前の協議を踏まえ,原告の申込みの意思表示と承諾の意思表示の合致によって成立したものであること,本件基本合意の条項(1条,3条,5ないし9条)によると本件基本合意はそれぞれが相手方の情報等の提供を受け,これを慎重に検討した上締結されており,原告希望の譲渡価格が記載されていて,従来の役員が辞任することやその臨時株主総会の時期や従業員の処遇も具体的に定めていることからすると,本件基本合意は法的拘束力がある。
b 被告らは,原告に対し,d社を通じて,3月25日,理由も示さずに一方的に本件最終合意をしないと連絡をし,同月27日の時点で,被告c社との交渉を再開するということではなく,「やはりc社さんにします。」と断言している。被告らは,本件基本合意に基づき,本件最終契約の締結に向けて誠心誠意努力する義務を負っていたのであり(14条),その有効期間であり,法的拘束力がある排他的交渉権限を付与していた期間である同月31日を待つことなく,上記通知をすることは本件基本合意の不当破棄であると共に本件基本合意によって定める誠意義務違反である。
(イ)a 本件基本合意によって,被告らは,排他的交渉義務及び誠意義務を負っている。
b (a)排他的交渉期間中である同月23日及び同月25日に取得したBらの印鑑登録証明書が被告Y3社の役員変更登記申請に用いられていたこと(甲90の4・5),(b)排他的交渉期間中の同月27日の時点で被告Y1がd社担当者Dに対して,「やはり,ごめんなさい。c社さんにします」,「すみません。」として株式譲渡の相手方をc社にするという断定的なメッセージを送っていること(甲75),(c)4月4日の時点で役員変更登記の申請も含めた手続を終えていること,(d)独占交渉期間中のやり取りに関する被告らの主張の重要部分が変遷していることからすると,被告らとc社は,排他的交渉期間中にc社と株式譲渡契約締結に向けたやり取りを行っていたことは明らかであり,被告らには独占交渉義務違反がある。
c 事前に買収意向表明書(甲9)を提出して,その内容を検討した上で本件基本合意を締結し,諸条件について合意し,原告において,本件基本合意の締結後,原告が多大な費用と労力をかけて最終合意に向けた手続や準備をすることになることを考えると,原告と被告らは,少なくとも自らの希望する条件を適切に示して相手方に交渉の機会を与え,契約締結に支障となるような事情や疑問点があればその解消に努めるという義務を相互に負っていたものと解することができる。そうであるのに,被告らは自らが希望する条件を原告に提示しなかったこと,最終合意の判断にとってE取締役の影響力が大きいという事実やE取締役の処遇に関する条件について開示しなかったこと,原告について詐欺まがいとのネット記事の情報を鵜呑みにして,真偽の確認をしようともしなかったこと,原告の情報を要求しなかったこと,本件基本合意については交渉にテーブルに着くという趣旨との認識であり,最終合意の成立に向けて努力するという誠意義務に対する認識が希薄であることは,およそ最終合意の成立に向けて努力したものとはいえず,明らかに誠意義務違反である。そして,これらの事情からすると,原告が譲渡代金さえ折り合えば最終合意書の締結に至ると信じたとしてもやむを得ない。
イ 被告らの主張
(ア)上記ア(ア)は,争う。
一般的に,M&A取引における基本合意は,交渉段階によって締結されるものであり,最終的な合意を定めるものではないこと,本件基本合意書においても,被告らが本件最終合意をしなければならない義務が発生する条項はないこと,定められた譲渡価額の総額は基準であって協議によって定まるものであることからすると,本件基本合意は,排他的交渉権の期間に関する部分(第10条及び第12条)を除き,法的拘束力はなく,原告から譲渡価格の幅の中の提案がされたとしても,被告らに本件最終合意をする義務はない。
被告Y1は,契約書案3月19日版(甲15)について週末を使って,家族や当時の被告Y3社の他の役員と協議し,後に示された契約書案3月24日版(乙5)も加えて考慮し,同月25日,本件最終合意をしないという結論にいたってその旨を伝えたに過ぎない。なお,その日に伝えたのは,原告から,最終合意をする場合の日として,同月24日と言われていたこと,原告が条件としていた生命保険の解約には7日前後かかる一方で,一旦解約すると会社に損害が発生すること,同月27日に原告から要望されていた被告Y3社の従業員参加の食事会の後に成約に至らなかった場合は,被告Y3社の従業員が混乱し,今後の会社運営にも支障を来す損害が発生する事情もあったからである。また,そうではあったが,その後も,被告Y1は,原告との交渉を続けていた。
このように,被告Y1が原告の提案を断ったことは,タイミングも含め,原告への配慮や被告Y3社の損害を考慮してのことであって,誠意義務に違反すると評価されるような事情はまったくない。
(イ)a 上記ア(イ)aは,認める。
b 上記ア(イ)b(a)ないし(c)は,認め,その余は争う。
被告Y1は,排他的交渉期間中にc社と具体的な交渉をしたことはなく,排他的交渉期間経過後に速やかに合意に至ったのは,元々,c社とは,本件基本合意を締結する前から一部の条件(アプリケーションのリリースや営業利益の保証)を除き,ほぼ合意に達していたところ,その後,折り合いが付かなかった当該条件についてc社が譲歩したため,具体的な交渉の必要がなかったからである。
また,被告Y1が,原告の提示条件について,c社が提示していた従前の条件と頭の中で比較すること自体は,c社との交渉ではなく義務違反を問われるものではない(証人D・27頁)。
さらに,被告Y1は,d社に対し,本件基本合意前のc社との交渉経緯について知らせており,原告との交渉に入る前から,c社の条件についてもd社と共有していたことに加えて,原告も被告Y1が他社と交渉していたことは認識しており,この点においても被告Y1において,信義に反する事情はない。
(3)契約締結上の過失
ア 原告の主張
上記(1)ア(ア)ないし(エ)記載の事実に,(ア)下記のとおり,被告らが自らの希望や条件,懸念を伝えないまま交渉を進めたため,原告に本件最終合意が成立するものと誤信させたこと,(イ)本件基本合意の締結をし,誠意義務(甲10)を負っていたこと,(ウ)本件最終合意が成立間近の段階にあったことからすると,原告と被告らとの交渉は成熟段階に至っており,当事者双方は相手方の契約締結に対する期待を侵害しないよう誠実に契約の成立に努めるべき信義則上の義務を負っていたのに,被告らは特段の事情なく,本件交渉を破棄したものであるから,その義務違反が認められる。
即ち,上記(ア)の具体的な内容としては,a 原告から最終合意に関する条件提案がなされるまでの間,ほとんど自らの希望する条件を示していないこと,b そうであるにもかかわらず,3月25日,対案を示すこともなく一方的に交渉を拒絶する意思を示したこと,c 交渉拒絶の理由(=被告らの希望条件)は交渉期間中には一切示されなかったこと,d 本件最終合意の判断について被告Y3社のE取締役が強い影響力を有していることやc社との間ではE取締役は被告Y3社の取締役を辞任することなく残留する条件になっていたという重要な事実を開示しなかったこと,e 原告が詐欺まがいの商売を行っているというネット上の噂についての懸念を交渉期間中に示さなかったこと,f d社担当者Dから具体的な金額の提示を受けた後も,「印鑑登録証明書」や「辞任届」などの話題について漫然とメールを受け取り,被告らの希望する条件を含めた対案を示さなかったことから,原告は,株式譲渡代金さえ合意できれば,その他の条件は細かい問題であり,本件最終合意は成立するものと誤信したものである。
イ 被告の主張
上記(1)ア(ア)ないし(エ)については,上記(1)イのとおり。
上記ア(ア),(イ),(ウ)については,評価を争う。
被告Y1が3月4日,原告執行役員Cに対し,e社に融資することの提案をした際,同日同人より,ブレイクがあり得ることを前提としたメールが送られたこと,被告Y1は,同月19日になって初めて,原告においても重要と考えていたクロージング前提条件など全ての内容が記載された契約書案3月19日版の提示を受けたのであり,それまでは,交渉期限が迫っているというのに具体的な提案もなく,原告において本件最終合意の意思があるのかどうかさえ分からなかったこと,被告らは原告を知るため会社概要を求めたがないとのことであり,さらにd社に資料を求めたところ同月14日に帝国データバンクの資料を貰ったにすぎなかった(乙3)ため,原告をより知るために原告のCに対して提案した同月21日,22日にシンガポールを訪れそこに住む原告の実質的オーナーとの面談することについて断られたこと,本件基本合意に基づく交渉期間の大半は,原告のデューデリジェンス(以下「DD」という。)に費やされたが,その間,原告が本件最終合意を成立させたいという意向を持っているという積極的な意欲は,原告自身においても,d社を通じても見られなかったこと,原告のDDが,同月19日を経過した後も続いていたことからすると,原告が本件最終合意を断った同月25日又は同月27日の段階で,契約締結交渉が最終段階にまで至っていたとはいえない。
(4)損害
ア 原告の主張
原告は,本件最終合意が成立することを前提に,別紙損害一覧表のとおり,以下の費用を支出したが,これは上記(1)ないし(3)各ア記載の合意又は義務違反に基づく損害である。
人件費 900万9000円
システム強化費 917万2500円
専門家報酬 327万0600円
合計 2145万2100円
イ 被告らの主張
否認ないし争う。
原告の義務違反ないし不法行為の主張を前提としても,原告が主張する損害項目は,次のとおり,本件とは相当因果関係がない。
(ア)人件費,システム関連費については,本件との関連性が認められない。
(イ)本件において,法務DDを行った形跡がない。
(ウ)人件費,システム強化費の発生原因やサービス提供が,本件基本合意の交渉期間と重なっていない部分がある。
(エ)被告Y1は,原告に対し,本件基本合意成立前に,他社と成約したときは本件基本合意ができないことを伝えているから,本件基本合意前の時期を発生原因とする損害は認められない。
(オ)原告執行役員Cは,3月4日に本件最終合意がされない可能性を認めていたのみならず,同月24日までDDが続いていたことからすると,その時点で,原告においても最終合意の期待が十分ではなかったものであるから,その時点までの損害の主張は失当である。
(カ)原告執行役員C及びd社担当者Dは,同月26日,被告Y1に,「今回のM&Aを断るなら,この件で1000万円かかったので負担して欲しい」旨述べた。
(キ)被告Y1は,本訴提起前,原告とのやり取りに際し,損害の根拠等について再三問い合わせたが,正確な回答はなかった。
第3  争点に対する判断
1  認定事実
前記前提事実に甲91,92,乙70,証人D,証人C,証人Y1(ただし,下記認定に反する部分は除く。)及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる(なお,後掲括弧内に特に用いた証拠を特定すること,事実認定の補足説明をすることがある。)。
(1)被告Y1は,平成25年7月頃,d社に対し,被告Y3社などを譲渡したいと相談した。d社は,同月19日付けで,被告Y3社文書に対し,その株式価値が年買法で3億4444万8000円から4億1969万7000円,類似会社比較倍率法で3億4518万3000円から4億4761万2000円とするDiscussion Materialと題する書面を交付した。被告Y3社及び被告Y1は,平成25年7月23日付けで,d社に対し,企業提携の対象企業の探索とその実現に関し,業務を委託した。(乙13,17)
(2)被告Y1は,その頃,c社との間で,被告Y3社の全株式譲渡について交渉をしており,同年12月初旬頃から,DDが行われていた。
(3)原告執行役員Cは,同年10月7日以降,d社に対し,M&Aによって企業買収の仲介を打診したところ,d社からある会社が経営権の譲渡を希望しているとの話があったため,同年11月28日,d社に「守秘義務に関する誓約書」を提出し,d社から被告会社らの資料を受け取った。(甲6,7)
d社は,同月21日付けM&Aスキーム提案書によって,被告Y1に対し,被告Y3社等の譲渡に際しての役員構成の変更,役員保険解約及び被告Y1に対する役員報酬の支払を提案した。(乙21)
原告代表取締役,原告執行役員C,被告Y1及びd社担当者D及びその上司渋谷大は,同年12月16日,被告Y3社の事務所で顔合わせをした。
原告は,同月24日,d社に対し,被告Y3社との企業提携の実現の仲介を依頼した。
(甲6ないし8,乙21)
(4)原告代表者,取締役2名,C及び被告Y1は,1月7日,飲食店にて会談をした。被告Y1は,その席で,原告に対し,他社との間で独占交渉権を与えない形でM&A交渉中であること,同社がDDを行っている最中であること及び原告と同社は合意に至っていないことを伝えた。原告は,同月9日,被告Y3社に対し,株式評価額を2億5000万円ないし3億円とする株式譲渡の方法で,被告会社らの経営権の取得を希望している旨の買収意向表明書を交付した。被告Y1は,c社との交渉が続いているので,原告とc社を平行して進めることを希望したものの,原告は,独占交渉権を取得することを希望した。そこで,まず,被告らはc社と交渉し,2月12日までに合意に至らなかったときは,原告と被告らが,原告が独占交渉権を持つ基本合意を締結することとした。被告Y1は,d社担当者Dに,c社との交渉経緯を伝えていた。被告らは,同日までにc社と合意に至らなかったので,原告に独占交渉権を与える本件基本合意を締結することとした。
原告,被告ら及びd社は,同月14日,本件基本合意をした。その後,原告は,DDを開始した。
(甲9,10,85,乙37,50の1~4)
(5)原告執行役員Cは,d社担当者Dに対し,同月21日,事業譲渡契約書にクロージング前提条件を入れるよう求める旨のメールを,同月28日,最終契約書において定めることとして,クロージング前提条件,買収価格及び被告Y1の処遇でよいかを確認し,原告の案を同年3月17日くらいまでに決める旨のメールを送付した。
d社担当者Dは,2月26日,原告執行役員Cに対し,譲渡代金が3億円である場合の報酬を計算したメールを送付した。
(乙18,27,33,54)
(6)原告のオーナー報告が同月24日であってそれ以降は契約条項の変更できないこと,原告は4月1日までに被告Y3社が加入している保険契約の解約を求めていたが,その手続には一週間程度が必要であって,3月24日から25日までにそのための手続に着手するためには最終契約の成立が必要であることから,原告,被告ら及びd社は,同月24日から25日までに最終契約を締結することを目指していた。
(乙22の1~4,乙23,34,35,62の2)
(7)被告Y1は,同月4日,原告執行役員Cにe社に対する1000万円の新規融資が決まったこと,過去実績から回収に問題ないこと,これから締結する契約書のデータを送ることを記載したメールを送付した。これに対し,原告執行役員Cは,今はDD中なので中止をして欲しい,買収が決定した場合,再度原告で検討する,当然ブレイクした場合はやっていただいて構いませんとのメールを送った。この件に関しては,d社担当者Dの仲介もあって,最終的に,回収ができないときは,被告Y1がその債権を買い取る旨の覚書を交わすことで,原告において,その承認をすることとなり,覚書に関しやり取りがされ,本件最終合意に際し,締結されることとなっていた。被告Y1は,この点に対する原告の対応を受け,原告は最終合意に至らないことも想定していると考え,原告は,合理的な提案について検討をしない傾向があり,問題が生じたときは自らが責任をとるのではなく他に責任を求める傾向があるのではという危惧をもった。
(甲29,乙14,39の1~6,乙63)
(8)被告Y1は,同月5日,d社担当者Dに対し,原告から事業譲渡後の被告Y3社の人事構想についての回答を得て欲しい旨伝えるメールを送信した。d社担当者Dは,被告Y1に対し,それを承知したこと及び別紙前提条件や譲渡代金について空欄であることを伝えた上で,最終契約書(案)を添付したメールを送信した。この最終契約書(案)は,原告側の了承を得ていない概略のものであった。ここで,被告Y1が,有する被告Y3社と被告Y2社の全株式を原告に譲渡することとなっており,以降,それを前提に交渉が進んだ。また,同日,被告Y1は,d社担当者Dに対し,被告Y1の本件事業譲渡後の雇用条件を教えて欲しい,その条件について判断するために本件事業譲渡のその他の内容も早く教えて欲しい旨伝えた。(甲77の1・2,乙25,30,31の1・2)
被告Y1は,上記の同月5日のほか,同月6日,同月13日に,d社担当者Dに,譲渡後の原告の事業運営に関する構想について質問をしたものの,d社担当者Dは,同月18日午後4時51分の電子メールで初めて原告執行役員Cに伝え,同月19日10時23分に初めて被告Y1に回答した。(乙25,28,29,44,45)
被告Y1は,同月6日,d社担当者Dに対し,本件事業譲渡契約書の別紙前提条件はいつになるかを尋ねた上で,それがないと検討できないので完全版をもらってから検討する旨のメールを送付した。被告Y1は,同日,d社担当者Dに対し,上記本件事業譲渡契約書案に対しコメントを付して送付していたが,そこでは,①譲渡代金の提示は同月14日ないし17日かを問い,②競合避止義務の期間が10年であるのに対し,三,四年を希望する旨記載し,③被告Y1が負うべき補償について譲渡代金と退職慰労金を加えたものの100パーセントが上限であるところを20パーセントとすることを希望することなどを記載した。(乙28,31の1・2)
(9)原告執行役員Cは,平成26年3月12日,d社担当者Dに対し,最終契約における譲渡代金を算出するのに,税務リスク及び資産既存リスクなどを減算すべきであるとして,基本合意の基準額よりかなり低額な譲渡代金の提案をし,d社から提示された契約書に対して様々な変更を求め,別紙前提条件を提案した。原告執行役員Cは,同日,d社担当者Dに対し,譲渡金額をある程度増額したもの,退職慰労金で支払う形としたものの,株式譲渡契約書案を添付したメールを送付した。(甲12,56,78,77の1・2,甲78,79)
d社担当者Dは,同月13日午後0時20分,原告執行役員Cに対し,DDで新たに出たことでないことを理由に譲渡金額について本件基本合意の基準を下げれば,被告Y1の合意を得ることができないので,交渉前に提案代金を上げるよう提案した(乙46)。これに対し,原告執行役員Cは,同日午後0時55分,d社担当者Dに,基本合意に出した想定金額はd社の買収希望に合わせただけである,いくらであれば交渉してくれるのか,原告執行役員Cが直接被告Y1に話をしようかと記載したメールを送付した(乙51)。その後,原告執行役員Cとd社担当者Dが協議し,原告執行役員Cは,d社担当者Dに,2億3150万9000円との提案をした(証人D・14,29頁)。
d社担当者Dは,同月14日,被告Y1とミーティングをした。そこで,原告執行役員Cから提案のあった上記譲渡代金を被告Y1に伝えたが,被告Y1は,c社との交渉に比べると安いと述べた。また,被告Y1は,このミーティングで,d社担当者Dに,原告の会社についての情報提供を求めたところ,d社担当者Dは,原告が作成した資料も,d社が作成した資料もなかったため,同日,被告Y1に対し,帝国データバンクで調査したものをメールで送付した。被告Y1は,これでは,原告の会社としての詳細の理解が困難であると考えた。なお,d社担当者Dと被告Y1は,この日を含め,本件基本合意の前後を通じて,被告らのM&Aに関し,ミーティングをしていた。(甲80,85,乙3,31の1,証人D・14頁。なお,証人Dは,d社担当者Dが,同日,被告Y1に,別紙前提条件が付された最終契約書案を交付した旨証言(12頁)するが,その陳述書である甲92に記載がなく,現に交付したとする同日付けの最終契約書案が書証として提出されていないことも勘案すると,これに反する乙70,被告Y1に照らし,採用できない。)
(10)原告執行役員Cは,d社担当者Dに対し,同月17日午前9時25分頃,譲渡代金がいくらであれば納得できるかの目安を教えて欲しいとのメールを送り,同日午後1時16分,事業譲渡代金を2億6000万円で合意をする場合の手数料の見積もりを求め,それに対し,d社担当者Dは,同日午後4時44分成功報酬が3078万5000円となる旨の計算書を送付した。原告執行役員Cは,同日午後4時50分,d社担当者Dに原告における本件事業譲渡の予算はd社への手数料を含めて2.9億円までなので,譲渡代金が2億6000万円でも予算オーバーなので,d社の手数料を78万5000円値引きして欲しい旨のメールを送付した。(乙19,20の1~3,乙58)
(11)被告Y1は,平成26年3月17日午後0時52分,d社担当者Dに対し,これまでの金額の交渉の経緯を簡単に聞きたい,F先生の退職金について実行資料がもらいたい,過去の譲渡後のトラブルの事例を聞きたいから電話をするとのメールを送付し,d社担当者とこれらについて電話で打ち合わせた。d社担当者Dは,同日,被告Y1に対し,電話で,原告提案の譲渡代金は2億6000万円であることを伝え,被告Y1にこれ以上上がらないのか尋ねられたのに対し,これ以上上がらないと回答した。
(甲70,証人D・15頁,なお,甲92,証人Dには,被告Y1は,代金2億6000万円を承諾した旨の記載があるが,その供述は曖昧で(証人D・33頁,49頁等),裏付けがなく,下記の同月26日以降の価格に関するやりとりも総合すると,これに反する乙70,被告Y1に照らし,採用できない。また,乙70,被告Y1の,Dが原告提案の譲渡代金が2億6000万円より上がらないのかの質問に,上がらないと答えたとする部分は,上記(10)認定の原告とd社の交渉における原告執行役員Cとの交渉に望む姿勢に沿うものであって,採用できる。)
(12)d社担当者Dは,同月18日,原告執行役員Cに対し,被告Y1が解約すべき保険契約について具体的に提案したこと,被告代表者Y1から受け取った雇用契約書のフォーマット,被告Y1から被告Y3社のマネージャークラスも含めた昼食会を同月27日午後7時以降で調整お願いしますと言われたこと,買収金額をそのままで株価をその分減額してF先生に対する退職金を支給して欲しいと提案を受けたこと及び被告Y1に,被告Y3社の新人歓迎会が4月4日にあるので原告からの参加を御願いしますと伝えるメールを合計2通送付した。(甲13,57,71)
(13)原告執行役員Cは,同月19日午前10時39分,d社担当者Dに対し,雇用契約書を送付すること,「株式契約書OKです。製本してY1様の捺印お願いします。」,被告会社らの事務所の賃貸人であるfビルの件についてOKですとして,被告会社ら役員候補などを記載したメールを送付した。d社担当者Dは,同日午前10時50分,原告執行役員Cに対し,本件株式譲渡契約の成功報酬に関する請求書を送付する旨メールで知らせた。(甲16,19の1・2,甲59,60)
d社担当者Dは,同日午後1時25分頃,被告Y1に対し,「株式譲渡契約書(案)の最新のものを添付致します。」とした上で,契約書案3月19日版を添付したメールを送付し,そこで,原告の了承を得ているので,問題なければ確定させてもらうと述べ,解約を要する保険契約の保険会社であるマニュライフの資料がいつ届くかを問い合わせた。それに対し,被告Y1は,同日午後3時18分頃,マニュライフの資料は来週月~水曜日を予定していること,契約書はこれから確認することを記載したメールを送付した。それに対し,d社担当者Dは,同日午後4時10分頃,承知したこと,fビルへの通知書を添付したこと,E取締役及びF監査役の業務委託契約書の送付をしてほしいことを記載したメールを返信した。(乙6,7)
(14)d社担当者Dは,同日午後4時33分,原告執行役員Cからの問い合わせに対し,被告Y1が契約書の文書の最終チェックをしていること,被告Y1から文言に指摘がなく,同月24日までに被告らの印鑑登録証明書を準備してもらえれば,同日中に捺印してもらうこと,保険についても全部解約する手続をしてもらうよう伝えてある旨メールを送付し,同月22日,部分的に訂正をするメールを送付した。
原告執行役員Cは,同月20日,d社担当者Dに対し,原告の印鑑証明,入金,すべて準備が整った旨の連絡をした。
d社担当者Dは,同日,原告担当者Gに対し,議事録等資料一式が整ったので添付する旨記載した旨のメールをした。
(甲20,21,61,62,乙23,24の1・2)
(15)原告執行役員Cは,同月21日,d社Dに対し,原告顧問弁護士から契約書案19日版に部分的に問題があるとの指摘があったので,月曜日に確認するので捺印を待って欲しいとメールした。
d社担当者Dは,同日,株式譲渡契約書について新たに原告から指摘があったので,文言を修正した最終版の契約書であるとして,原告代表者Y1に対し,契約書案3月24日版を添付したメールを送付し,問題がなければこの文言で確定させてもらうことを記載したメールを送付した。また,そのメールにおいて,譲渡契約締結のための被告会社らの印鑑登録証明書及びY1社長の印鑑登録証明書,取締役,監査役の辞任届の実印での捺印及び印鑑登録証明書の手配,保険契約の全部の解約手続,取締役EとFのすべての契約の解除の準備を依頼するとともに,文言に問題がなく,印鑑登録証明書が準備できたら最終合意を締結させて欲しい旨述べた。
d社担当者Dは,同月24日,原告執行役員Cに対し,被告会社らの役員変更について司法書士から見積りの連絡が来た旨をメールで伝えた。
(甲25,63,72,乙4,24の1・2)
(16)被告Y1は,c社の提案は,被告Y1において5000万円の価値があると判断していた被告Y2社の株式を除く,被告Y3社の株式の譲渡代金が2億5400万円であったこと,d社の被告Y3社の株式評価が3億円を優に超えていたこと(上記(1))からすると,原告提案の譲渡代金は高くなく,d社担当者Dからはそれ以上上がらないと説明を受けていたこと,原告についてはネット上に詐欺的である旨の記載があったこと(乙66ないし69(枝番も含む。)),被告Y3社取締役で,c社に被告Y3社株式を譲渡したときは取締役を退任しなくともよいのに,本件最終合意を締結したときは退任することとなっていた取締役Eが本件最終合意に反対し,c社へとの事業提携を望んでいたこと,e社の件に関する原告執行役員Cの対応に不安を持っていたことなどから,本件最終契約を締結しないこととし,同月25日,d社担当者Dからの問い合わせに対し,原告の提案を受けない旨回答した。そこで,d社担当者Dは,同日午後9時48分,原告執行役員Cに対し,被告Y1が気にしていたc社との条件の比較表を作成し,メールに添付して送信し,原告執行役員Cは,それを参考にし,被告らに対する再提案の内容を検討した。なお,それによるとc社は対象企業が被告Y3社だけで提携後の被告Y1のすべき支援とその処遇は期間5か月で月額120万円であって,競業避止義務の期限は3年間で被告Y1が譲渡先に負うべき補償は約3000万円で期限は1年間であるのに対し,原告であれば対象企業として被告Y2社も含まれ,提携後の被告Y1のすべき支援とその処遇は期間1年,その後は協議の上で,1年間は月額60万円で,競業避止義務の期限は5年間で,補償の上限は譲渡価額と退職金を加えたものの80パーセントで,期限は1.8年間であって,被告Y1にとっては,内容的に,c社の条件が有利であった。(乙36の1・2,乙66の1・2,乙67の1~5,乙68,69の1・2)
d社担当者Dは,同26日月午後1時頃,被告Y1を呼び,同日の夜にかけて,原告執行役員C,Dの上司H立会の下,契約書案3月26日版を示し,それによる合意を求めたが,その内容は,契約書案3月19日版と比較し,退職慰労金を合算した実質的な譲渡代金を2億9000万円とし,被告Y1の地位を1年間の執行役員から最大6か月間の業務委託契約に基づく受託者とし,競業避止の期間を3年に変更した点においては被告Y1の意に沿うものであったが,被告Y1の損害賠償の上限を定めないものとしていたことは被告Y1に不利な内容であって,被告Y1の意に沿わないものであった。それに対し,被告Y1は,そこでの交渉を中座して,E取締役に電話をするなどして,対応を検討したが,交渉時における原告執行取締役Cの対応に不安を持ったこと,被告Y1の損害賠償の上限を定めないものとしていたこと,Eの反対があったことなどから,その日,最終的にそれに応じることはなかった(乙12)。
d社担当者Dは,平成26年3月27日,被告Y1に電話した後,原告執行役員Cと共に午後9時半に待っているので,本件最終合意をするようメッセージで求めたところ,被告Y1は,当初は,「説得中です」,「何とかなるように動いています」などと返信していたが,結局,「すみません」,「やはり,ごめんなさい。c社さんにします」と返信した。それに対し,d社担当者Dは,「先ほどのお電話でお伝えしました通りです。どちらにせよラストチャンスと思って下さい。」とメッセージを送信した(甲75,76)。
(17)d社担当者Dは,平成26年3月28日,被告Y1に,進めるのであれば原告は譲渡代金として3億円を支払うとメールした。それに対し,被告Y1は,同日,d社担当者Dに,損害賠償をゼロにして欲しい旨のメール及び決済日は同月31日で可能かと問うメールを送ったものの,d社担当者Dから返信はなかった。(甲89,乙41)
2  最終合意の成否
(1)本件最終合意が,平成26年3月19日に成立したことを認めるべき原告代表者と被告Y1が署名捺印した契約書,陳述書及び証言などの直接証拠はない。
なお,原告は,甲15(契約書案3月19日版)をその直接証拠とするようでもあるが,体裁が契約書案であり,原告代表者と被告会社ら代表者Y1の押印がないから,上記認定の経緯を検討するまでもなく,それのみでは,最終合意成立の直接証拠たり得ない。
また,原告は,証人C,証人Dの各証言及び同人らの陳述書である甲91,92を平成26年3月19日に最終合意が成立したことの直接証拠とするようでもあるが,証人Cの証言及び陳述書(甲91)は,d社担当者Dからそのように聞いたという伝聞のものであるから,結局問題とすべきは,証人Dの証言及び陳述書(甲92)である。
そこで,証人Dの証言及び陳述書(甲92)を検討する。まず,内容であるが,同月14日の被告Y1とのミーティングで,原告からの提案を受けて修正した契約書を見せた上(当裁判所は上記のとおりこの点を認定していないが,この点はひとまずおく。),同月17日,譲渡代金が2億6000万円であると伝え,被告Y1の承諾を受け(当裁判所は上記のとおりこの点を認定していないが,この点もひとまずおく。),被告Y1の希望も踏まえて作成した,原告の了承済みの契約書案を同月19日に被告Y1に送付したというものに過ぎず,被告Y1において,どの時点で,全体としてどのような内容の最終合意をしたかの供述がないので,仮に,それらに信用性があるとしても,法的に最終合意が成立していたことを立証する直接証拠としては足りない。また,既に述べたとおり,証人Dの証言及び陳述書(甲92)のうち,同月14日に被告Y1に原告の訂正を踏まえた最終契約書案を交付したとする部分,及び,同月17日に被告Y1において,最終合意における譲渡代金を2億6000万円とすることに合意したとする部分については,いずれも採用することができない。したがって,証人Dの証言及び陳述書(甲92)によっても,その余の点について判断するまでもなく,最終合意が成立したと認めることはできない。
(2)また,最終合意が成立したと推認するに足りる事実も認められず,かえって,上記1認定の事実経過,特に,同月21日に原告自身が本件最終合意であるとするようである契約書3月19日版と異なる提案をしていること,同月25日に被告Y1が最終合意を断った後,原告執行役員Cが契約書案3月26日版によって新たな提案をしていること,事業譲渡契約が成立するためには,その方法が株式の譲渡であったとしても,本件で現実に問題となったように,譲渡人の競業避止義務の期間,譲渡人の責任の制限の有無・程度及び譲渡人の株式譲渡後の会社への関与の有無・程度の詳細を認定すべき雇用契約書なども問題となり得るのに,本件において,d社が前二者について被告Y1にそれを提示したのは平成26年3月19日であって,被告Y1においてはそれを確認すると述べていること,後者に至っては,同日の段階では原告から被告らへの提供もなかったこと,その後,原告執行役員Cから契約書案3月26日版において異なる提案がされていることからすると,同日に具体的に特定した内容の最終合意が成立していたとは言い難い。
(3)そうすると,原告の本件最終合意を前提とする請求は理由がない。
3  本件基本合意の不当破棄等本件基本合意違反
(1)原告は,本件基本合意によって,被告らに本件最終合意をすべき義務があるかのような主張をするが,上記認定の本件最終合意の内容,その締結までの原告と被告らの交渉の経緯によっても,そのような義務を認めるべき事情はない。したがって,そのような義務があることを前提としての原告の主張は理由がない。
(2)また,原告は,被告らにおいて,本件基本合意において原告と交渉すべきである3月31日まで対案を出すなどして,交渉を継続することなく,同月25日及び同月27日に最終合意をしないとしたことは,本件基本合意の誠意義務違反である旨主張する。しかし,上記認定の事実のとおり,原告側及び被告ら側の事情によって,同月24日から同月25日までに最終合意をすることが目指されていたものであるから,その頃に最終合意をしない旨の連絡をしたことが本件基本合意の不当破棄に当たるとか,誠意義務違反に該当するなどと解される余地はない。
(3)さらに,原告は,被告らにおいて,排他的交渉義務違反があったとの主張をし,その推認の根拠として,ア排他的交渉期間中である同月23日及び同月25日に取得したBらの印鑑登録証明書が被告Y3社の役員変更登記申請に用いられていたこと,イ排他的交渉期間中の同月27日の時点で被告Y1がd社担当者Dに対して,「やはり,ごめんなさい。c社さんにします」,「すみません。」として株式譲渡の相手方をc社にするという断定的なメッセージを送っていること,ウ4月4日の時点で役員変更登記の申請も含めた手続を終えていることを挙げており,上記認定のとおり,それらの事実は認められる。
このうち,上記イ,ウの事実は,上記認定の同年2月13日まで被告らとc社が事業提携のための交渉を実施し,その頃c社から具体案が提示されていたことも併せ考えると,それのみでは,被告らが排他的交渉期間中にc社と交渉していたことを推認するには足りない。他方,上記アの事実は,被告らが排他的交渉期間中にc社と交渉したことをうかがわせる事実とも考えられるが,被告Y1において,c社側から定期的な借入のために常備している印鑑登録証明書を用いたと説明を受けたと供述しているところ,その可能性も含め,一般的に,印鑑登録証明書の取得の目的としては,本件のような取締役の変更登記手続に限られず,流用の可能性もあることからすると,被告らが排他的交渉期間中にc社と交渉したことを否定する被告Y1の供述も考慮すると,上記イ,ウの事実を併せ考慮するとしても,被告らが排他的交渉期間中にc社と交渉した事実を推認するまでには足りない。
c また,原告は,本件基本合意における誠意義務の内容として,少なくとも自らの希望する条件を適切に示して相手方に交渉の機会を与え,契約締結に支障となるような事情や疑問点があればその解消に努めるという義務を相互に負っていたものとした上で,被告らの義務違反を問題とする。しかし,本件基本合意における誠意義務は,「努力するものとする。」(10条)とされていることからすると,具体的な行為義務を発生させるものとは解されず,仮に義務があるとしても,抽象的な義務に過ぎないから,下記4の契約締結上の過失の判断の一事情となるに過ぎない。そうすると,この点の原告の主張も理由がない。
(4)したがって,本件基本合意の不当破棄等本件基本合意違反に基づく請求も理由がない。
4  契約締結上の過失について
(1)原告は,被告Y1が3月17日,譲渡代金について2億6000万円とすることを承諾していたこと,同月14日に原告の提案を反映した別紙前提条件も記載された契約書案を示されていたことを前提として被告Y1に契約締結上の過失があるとの主張するようであるが,上記認定事実のとおり,それらの事実は認めるに足りない。そうすると,上記認定のとおり,本件最終合意がされた場合も想定した準備がされていたとしても,被告Y1が本件最終合意を断った同月25日及び同月27日の時点において,本件最終合意に関し最終段階に至っていたとはいえない。
なお,原告は,被告Y1がどのような具体的な内容であれば最終合意をするかについて積極的に提案していないことを問題とし,確かに,被告Y1においては,本件においては,原告の提案を待って検討するとの交渉スタンスであったことが認められる。しかし,上記認定の原告執行役員C,d社担当者D及び被告Y1の交渉経緯からすると,実質的な交渉期間は2月13日から最終合意締結を目指していた3月24日頃の約40日間しかなかったのに,その半分以上が経過した3月6日に被告Y1がd社担当者Dに対し原告の提案全体を知りたいと求めたにもかかわらず,d社担当者Dが被告Y1に具体的な譲渡代金額の提示ができたのは同月14日であって,交渉期間の約4分の3が過ぎた時点で,本件最終合意締結を目指した日まで約10日しかなかったこと,その段階に提案された譲渡代金は2億3000万円であって本件基本合意において基準とされた額より低いものであったこと,本件基本合意において基準とされた額である2億6000万円が提示されたのは同年17日であって,本件最終合意を目指した日まで約1週間を残すのみであったことが認められ,その際に被告Y1がd社担当者Dからは譲渡代金はこれ以上上げられないと伝えられたこと,これらの事実は,原告執行役員Cからの最終的な譲渡代金の提案が2億9000万円又は3億円であったことも勘案すると,交渉を有利に進め,譲渡代金を低く押さえようとする原告執行担当者Cの判断によると推認されること,被告Y1に契約書案全文が示されたのは前記認定のとおり同月19日で上記期間の余すところ約5日間であって被告Y1が全体的に検討したり,対案を提示したり,原告側と交渉したりするには,事実上の困難が伴う時期であったこと(仮に,証人Dの証言を信用するとしても,同月14日であったこととなるが,そうであっても本質的に異なる時期ではない。),他方,d社担当者Dや原告執行役員Cにおいて,被告Y1に被告らが合意できる具体的な条件を提案するよう求めたことはうかがえず,同人らも原告側の提案を被告Y1が検討するとの交渉形態を想定していたと解されることからすると,本件交渉において,被告らが必ずしも積極的に自らの合意し得る案を提案しなかったことは責められるべきではないことからすると,それは契約締結上の過失であるとして,法的責任が発生すべき根拠とはならない。
そうすると,被告らには契約締結上の過失も認められない。
5  したがって,被告らには債務不履行責任も不法行為責任も認められない。
第4  結語
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第50部
(裁判官 水野有子)

 

〈以下省略〉

 

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