【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(198)平成24年 8月 7日 東京地裁 平21(ワ)27330号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(198)平成24年 8月 7日 東京地裁 平21(ワ)27330号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成24年 8月 7日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)27330号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA08078004

要旨
◆原告が、本件各土地の開発事業につき、被告県の担当者から、本件土地は自然公園法上、普通地域ではなく、第二種特別地域内の土地であるとする誤った違法な指導を受けたため、損害を被ったと主張して、被告に対し、損害賠償を請求した事案において、原告は、当初から本件各土地を第二種特別地域内の土地として開発分譲する計画を立て、これを遂行していること等から、本件各土地を普通地域内の土地として開発分譲する権利・利益を侵害されたということはできないとする一方、本件各土地の売却先の一部に原告が支払った違約金及び原告が被告県との交渉を依頼した行政の許認可事業に詳しい業者に対する報酬の一部を原告の損害と認定した事例

新判例体系
公法編 > 憲法 > 国家賠償法〔昭和二二… > 第一条 > ○公権力の行使に基く… > (三)違法性 > G その他 > (1)違法とした事例
◆南房総国定公園内の土地の開発分譲を予定する業者の申出に基づき千葉県の担当者が行った事前協議において、自然公園法所定の普通地域内の土地(知事に届出を要する土地)を第二種特別地域内の土地(知事の許可を要する土地)と誤信し、誤った規制を前提とする行政指導をし、その後さらに厳しい規制を前提とする行政指導をしたことは違法である。

 

評釈
黒坂則子・判例地方自治 378号94頁

参照条文
国家賠償法1条1項
自然公園法13条1項
自然公園法13条3項
自然公園法26条1項
千葉県宅地開発事業の基準に関する条例3条
千葉県宅地開発事業の基準に関する条例7条

裁判年月日  平成24年 8月 7日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)27330号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2012WLJPCA08078004

東京都港区〈以下省略〉
原告 アセッツ・アーバン有限会社
代表者取締役 A
訴訟代理人弁護士 木下貴司
千葉県千葉市〈以下省略〉
被告 千葉県
代表者知事 B
訴訟代理人弁護士 村田豊
指定代理人 根本由香里
同 宇田川浩幸
同 岩﨑美貴
同 大瀧章裕
同 木村竜男

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,407万5000円及びこれに対する平成18年11月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用はこれを50分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実

第1  請求
1  請求の趣旨
(1)  被告は,原告に対し,1億9234万5000円及びこれに対する平成18年11月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  訴訟費用は被告の負担とする。
(3)  仮執行宣言
2  請求の趣旨に対する答弁
(1)  原告の請求を棄却する。
(2)  訴訟費用は原告の負担とする。
(3)  仮執行免脱宣言
第2  事案の概要
本件は,有限会社幸和商事東京営業所(以下「幸和商事」という。)から営業譲渡を受けた原告が,幸和商事の行っていたa公園内の別紙第1物件目録,第2物件目録,第3物件目録記載の各土地(以下,順に「第1期土地」,「第2期土地」,「第3期土地」といい,「本件各土地」と総称する。)の開発事業につき,被告の環境生活部自然保護課(以下,単に「自然保護課」という。)の担当者から,上記土地の自然公園法上の規制に関する誤った違法な行政指導を受けたため,得べかりし利益を失ったなどと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を求める事案である。
第3  当事者の主張
1  請求原因
(1)  第1期土地の開発分譲について
ア 被侵害利益
幸和商事は,平成13年10月頃から,第1期土地を造成・販売する計画を進め,平成14年1月24日,大崎土地建物株式会社から同土地を6000万円で購入した。第1期土地は,自然公園法(平成21年法律第47号による改正前のものをいう。以下同じ。)26条1項所定の「普通地域」内の土地として,一定の工作物の新築等を行う場合に所定の届出が必要となるにすぎず,幸和商事は,第1期土地を普通地域内の土地として開発することが法的に可能であった。
イ 公共団体の公権力の行使に当たる公務員によるアに対する加害行為
幸和商事は,第1期土地を20区画に造成し販売する事業計画(甲9)を作成し,これを前提に,平成13年12月頃,被告の館山土木事務所(後の安房地域整備センターであり,現在の名称は安房土木事務所)と,千葉県宅地開発事業の基準に関する条例(以下「県宅開条例」という。)7条の確認のための事前協議を開始した。館山土木事務所がこれを被告内の関係各課の協議に回したところ,平成14年1月頃,自然保護課から,第1期土地は,自然公園法上,普通地域ではなく,第2種特別地域に指定された土地であり,かつ,上記開発計画は同法13条3項の規制の対象となる「土地の形状を変更する」ものに当たるなどとして,県宅開条例7条の確認をすることには同意できない旨の意見が示され,館山土木事務所を通じて,幸和商事にその旨が伝えられた。
そこで,幸和商事は,第1期土地を4区画に分け,それぞれの区画に5棟の連棟式住宅を建築するという計画を検討した(甲31,甲32,甲34の1~4,甲56の2)。これは,第1期土地が第2種特別地域内の土地であることを前提に,自然公園法所定の許可基準(敷地面積を戸数で除した面積が250m2以上)に適合するようにしたものであったが,平成14年3月末頃,自然保護課は,この計画についても,自然公園法所定の許可基準に適合しないとして,館山土木事務所を通じてその旨幸和商事に通知した。
ウ 上記イが違法であること
被告は,真実は第1期土地は普通地域であるにもかかわらず,第2種特別地域とする指定がある前提で上記イの行政指導をした。
エ 当該公務員の故意又は過失
宅地開発事業の対象土地が自然公園法上の普通地域か第2種特別地域かにより,規制内容は大きく変わるのであるから,同法に関する事務を所管する自然保護課としては,特別地域の指定の有無を調査すべき高度の注意義務を負うというべきである。ところが,第1期土地が第2種特別地域に当たるという自然保護課の判断は,地図(甲30)にマーカーで色づけされている土地は第2種特別地域であり,第1期土地はマーカーで色づけされている土地であることのみを根拠とする不十分なものであった。
また,当時幸和商事の取締役であったA(現原告代表者)が,平成14年4月1日頃,自然保護課に対して,「昭和40年10月26日公有水面埋立」の記載がある登記簿謄本を見せて,第1期土地は昔は海であり,昭和40年に被告の許可で埋め立てられた土地であり,その後三井金属鉱業社員の保養所が建てられたことを説明し,特別地域に指定されているのはおかしいと抗議したにもかかわらず,自然保護課のCは,第1期土地の特別地域の指定の有無につき特別地域指定台帳等を用いて調査する義務を怠った。なお,自然保護課は,その後も,平成18年11月28日まで,本件各土地はいずれも第2種特別地域内の土地であるという立場を維持し,その立場を前提とした規制を続けた。
オ 損害の発生及び額
幸和商事は,第1期土地を,普通地域であれば実現が可能であった当初の計画(20区画での分譲)により,総額2億3860万円で販売する予定であったが,被告の上記イの指導により上記計画を変更せざるを得ず,総額1億3530万円でしか販売できなかった。よって,予定販売価格と実際の販売価格の差額1億0330万円の損害が幸和商事に発生した。
また,原告は,本件訴訟を提起するにあたり原告代理人に報酬の支払を約した。被告の違法な行為と相当因果関係のある弁護士報酬の額は1750万円が相当である(下記(2),(3)に係る分を含む。)。
カ 上記イとオの因果関係
幸和商事は,第1期土地が第2種特別地域に当たるという自然保護課の判断を前提として,当初計画(20区画)のとおり自然公園法13条3項の許可を得ることなく造成工事を強行すれば同法70条の罰則が適用される上,今後千葉県内での開発行為を行うことができなくなると考え,当初計画(20区画)を断念した。
幸和商事は,その後,「土地の区画形質の変更」を要しない造成工事であれば都市計画法29条1項に基づく県知事の許可は不要であること(同法4条12号)に着目し,第1期土地を縦6区画に分割する計画案(甲33)を作成して,これに基づく分譲を開始したものの,販売価格が高額になる上,地形も悪いため,買手が付かなかった。そこで,次に,自然保護課作成の「自然公園法の手引」(甲7)によれば,建物の建築に関して事前協議が必要なのは建物建築に係る建築業者のみであり,個人住宅であれば種々の規制がかからないとあることから,個人が住民票を鋸南町に移して住民票を添付して建築確認の申請を出せば,土地面積が1000m2以下であれば規制がかからないと判断し,1000m2以下で分割して,10区画に分割して分譲することになった(甲12)。
幸和商事は,平成14年10月末頃,上記10区画分譲計画に基づく造成工事を完成し,その頃から実際の分譲を開始し,10区画全てを合計1億3530万円で売却した。
(2)  第2期土地の開発分譲について
ア 被侵害利益
幸和商事は,第2期土地の開発を予定し,平成16年2月16日,日本証券金融株式会社から同土地を5000万円で購入した。第2期土地は,特別地域の指定がない普通地域であるので,幸和商事は第2期土地を普通地域として造成する機会を,法律上保護される利益として有していた。
イ 公共団体の公権力の行使に当たる公務員による上記アに対する加害行為
上記(1)イと同じ。
ウ 上記イが違法であること
被告は,真実は第2期土地は普通地域であるにもかかわらず,第2種特別地域とする指定がある前提で上記イの行政指導をした。
エ 当該公務員の故意又は過失
上記(1)エと同じ。
オ 損害の発生及び額,因果関係
第1期土地についての自然保護課の行政指導を受け,当該行政指導が変わらないことが予想されたために,幸和商事は,第2期土地を,個人の住宅を建築する目的の土地として,1区画を700m2程度に分割し,第2期土地を管轄する富山町に造成許可申請をし,平成16年10月5日の事前協議承認を経て,造成,販売に至った。しかし,普通地域としての第2期土地の平成16年2月時点の適正な分譲価格は1億2080万円であるから,実際の販売価格8450万円との差額3630万円が原告の被った損害である。
また,普通地域であれば,より分譲区画を細分化して,個人住宅以外のレストラン,民宿等の業者にも販売することが可能であったのに,これができなかったため,第2期土地の分譲の完了は平成16年6月30日まで遷延することとなった。その結果,原告は,第2期土地の売主である日本証券金融株式会社に対する売買代金残金(4750万円)の支払ができず,109万3150円の遅延損害金を支払うこととなった。これも被告の違法な加害行為と相当因果関係のある損害である。
(3)  第3期土地の開発分譲について
ア 被侵害利益
幸和商事は,第3期土地の開発を予定し,平成16年10月22日,朝日信用金庫から同土地を3800万円で購入した。第3期土地は,特別地域の指定がない普通地域であるので,幸和商事は第3期土地を普通地域として造成する機会を,法律上保護される利益として有していた。
イ 公共団体の公権力の行使に当たる公務員によるアに対する加害行為
上記(1)イと同じ加害行為があるほか,第3期工事に関しては,以下の加害行為が存在する。
すなわち,幸和商事が,安房地域整備センターとの間で第3期土地の造成許可を得るための事前協議を行っていたところ,自然保護課から,平成17年2月頃,安房地域整備センターに対し,第3期土地は第2種特別地域に指定された土地であるとの認識の下,幸和商事の予定していた開発計画中,新たに道路を設けることが自然公園法13条3項の規制を受けるとした上,同項の許可が認められない事案なので同意できないとの意見が示され,安房地域整備センターを通じて,幸和商事にその旨が伝えられた。その後,自然保護課は,上記道路につき,アスファルトやコンクリートなどの舗装をしないこと,雨水,雑排水も地下配管で排水せず,側溝に流すことを条件に同意したが,造成許可は,同年8月26日まで遷延した。
この間,原告が上記許可を待たずに平成17年9月頃から造成工事を始めたところ,平成18年2月頃,自然保護課は,幸和商事に対し,本件各土地は,いずれも,基準日前に造成行為が完了した土地であるから,自然公園法施行規則(平成22年環境省令第4号による改正前のものをいう。以下同じ。)11条5項が適用され,敷地面積が500m2未満の土地については建ぺい率10%,容積率20%,同500m2以上1000m2未満の土地については建ぺい率15%,容積率30%の規制を受ける旨通告した。原告は,この通告を受けて,家が建つ広さを確保するため,第3期土地を8区画に分けて造成分譲する計画(甲17)を変更し,6区画に分けて造成分譲する計画(甲22)に変更した。
ウ 上記イが違法であること
被告による上記行政指導は,それまで第2種特別地域であることを前提に建ぺい率20%,容積率40%という規制が適用されることを認めてきた従前の取扱いを更に制限するものであったが,そもそも第3期土地が普通地域である以上,この行政指導が誤りであることは明らかである。
エ 当該公務員の故意又は過失
上記(1)エと同じ。
オ 損害の発生及び額,上記イとの因果関係
幸和商事は,平成16年10月ごろ,第3期土地を普通地域として総額9500万円で分譲できたにもかかわらず,平成18年1月から平成19年1月にかけて第3期土地を合計6876万円でしか分譲できなかったので,差額2624万円の損害を被った。
また,幸和商事は,平成16年10月9日,Dとの間で,第3期土地のC区画につき,代金を1190万円,造成許可を条件とする売買契約を締結し,同月12日,Eとの間で,同B区画につき,代金を1495万円,引渡期限を平成17年3月末,造成許可を条件とする売買契約を締結した。しかし,自然保護課の上記イの行為により,造成許可が得られず,Dとの間のC区画の売買契約については解約せざるを得なくなり,また,B区画については,Eから損害賠償請求訴訟を提起され,訴訟上の和解をすることとなった。これらを通じて,D及びEに対し,違約金として計250万5000円の支払を余儀なくされ,また,Eから提起された訴訟の応訴のため弁護士費用30万円を負担せざるを得なくなった(甲18,甲19,甲52)。
さらに,原告は,自然保護課が,第3期土地について第2種特別地域であるとの立場を堅持していたので,行政の許認可事業に詳しい株式会社山喜エンタープライズ(以下「山喜エンタープライズ」という。)に被告との交渉を依頼し,同社への報酬650万円の損害を受けた。
(4)  幸和商事からの移転原因
幸和商事は,平成17年3月18日,原告に幸和商事の岩井シーサイドリゾート事業(本件各土地の全てに関するもの)に関する債権債務を含めた一切の事業を事業譲渡した(甲3)。
(5)  よって,原告は,被告に対し,国家賠償請求法1条1項に基づき,上記損害の一部である1億9264万5000円及びこれに対する加害行為の後である平成18年11月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2  請求原因の認否
(1)  請求原因(1)について
ア 請求原因(1)アのうち,第1文は不知,第2文は争う。
幸和商事は,第1期土地を第2種特別地域であると誤認して購入し,分譲したのであり,普通地域として転売利益を上げる蓋然性はないので,法律上保護される利益はない。
イ 請求原因(1)イのうち,幸和商事の計画については不知,その余は否認する。
自然保護課は県宅開条例7条の確認において意見を言う立場ではないので,同意しないという意見を出すことはあり得ない。また,幸和商事が4区画20戸連棟式の計画(甲31)から10区画の土地分譲計画に変更したのは,排水の関係で漁業協同組合の同意を得ることが困難であったことと,敷地の一部に買主が現れたことにより,自主的に分譲計画の見直しを行ったからであり,被告が行政指導をしたわけではない。原告が主張する当初の事業計画(20区画造成)自体,甲9,甲57に「(仮称)いわいシーサイドコンドミニアム」と記載されているように,コンドミニアム(連棟式建物)を前提とするものであったと解される。
ウ 請求原因(1)ウのうち,行政指導をしたことは否認し,違法と評価されることは争う。
エ 請求原因(1)エのうち,一般論として特別地域の指定の有無を調査すべき義務があることは争わないが,その余は否認し,争う。
原告や幸和商事は,平成18年9月11日より前に,自然保護課に対し,本件各土地について第2種特別地域に指定された経緯の調査要求や抗議をしたことはない。甲30は,平成18年2月20日,自然保護課のF副主幹が,原告に対し,乙1の一部をコピーして「第2種特別地域」と手書きして手渡したものである。甲30は,平成14年10月11日にa公園区域を変更したことに伴い平成15年3月に作成された「a公園(その1)区域及び公園計画図」(乙1)の一部の写しであって,自然保護課職員が原告主張の時期(平成14年1月頃)に示したというのは明らかに事実に反する。
オ 請求原因(1)オについては,否認,かつ争う。
幸和商事は,自らの調査により第1期土地を第2種特別地域であると誤認した上で入手して転売したことから,普通地域として転売利益を上げる蓋然性はなく,またその具体的計画もなかったので,普通地域としての転売利益の減少はあり得ず,現実の損害は発生していない。
また,幸和商事は,第1期土地を,購入時よりも高い価格で転売したので,その意味でも損害が発生しない。
カ 請求原因(1)カについては,否認,かつ争う。
上記イのように,幸和商事は,漁業協同組合からの同意が困難であること及び敷地の一部に買主が現れたことから,計画を変更したものである。
(2)  請求原因(2)について
ア 請求原因(2)アについては,第1文は不知,第2文は争う。
幸和商事は,第2期土地も第2種特別地域であると誤認して購入し,分譲したのであり,普通地域として転売利益を上げる蓋然性はないので,法律上保護される利益はない。
イ 請求原因(2)イからエまでについては,上記(1)イからエまでと同じ。
ウ 請求原因(2)オについては,自然保護課の行政指導については否認,その余は不知,かつ争う。
被告は,幸和商事に対して第1期土地及び第2期土地が第2種特別地域であることを前提として行政指導を行っていないし,幸和商事は,第2期土地も第2種特別地域であると誤認して購入し,分譲したのであり,普通地域として転売利益を上げる蓋然性はなく,またその具体的計画もなかったから,普通地域としての転売利益の減少はなく,現実損害は生じていない。
(3)  請求原因(3)
ア 請求原因(3)アについては,第1文は不知,第2文は争う。
幸和商事は,第3期土地も第2種特別地域であると誤認して購入し,分譲したのであり,普通地域として転売利益を上げる蓋然性はないので,法律上保護される利益はない。
イ 請求原因(3)イについては,自然保護課が,第3期土地は第2種特別地域内の土地であるとの誤認により,平成17年2月に安房地域整備センターを通じて,第3期工事が工作物としての道路の新築行為を伴う場合には,自然公園法施行規則11条9項に該当するので,一分譲区画の面積が1000m2以上であること等の許可条件を満たす必要があると指導したこと,自然保護課が平成18年2月,幸和商事に対し,原告主張の内容の建ぺい率,容積率等に関する通告をしたことは認め,その余は否認又は不知,かつ争う。
ウ 請求原因(3)ウについては,被告が第3期土地は真実は普通地域であるにもかかわらず,第2種特別地域であるとして上記イの各行政指導をしたことは認め,その余は争う。
エ 請求原因(3)エについては上記(1)エと同じ。
オ 請求原因(3)オについては,否認,かつ争う。
幸和商事は,第3期土地も第2種特別地域であると誤認して購入し,分譲したのであり,普通地域として転売利益を上げる蓋然性はなく,またその具体的計画もないので,普通地域としての転売利益の減少はなく,そもそも現実損害は生じる余地はない。まして,原告が平成19年4月15日代表者個人に対して売却した1274番7の宅地429.38m2(甲22のC区画〔乙9〕)の売却代金額を加えれば,第3期土地の販売価格の合計は9500万円に近似することになるので,何らの損害も生じていない。
被告が初めて幸和商事に対して行政指導を行ったのは平成17年2月であり,幸和商事とD,Eとの売買契約における引渡日は既に到来していたので,被告の行政指導の結果幸和商事が債務不履行に陥ったわけではない。幸和商事が債務不履行に陥ったのは,富山町の行政指導の結果である(乙15)。
また,原告主張の損害は特別事情に基づく損害であるが,原告が平成18年5月15日受付7103号をもって所有権移転登記を経由する以前に(甲61の1),Dとは平成16年10月9日,Eとは同年10月12日にそれぞれ売買契約を締結しているという事情(甲18,19)は,被告が知り又は知り得べき状況にはないから,相当因果関係はない。
原告が山喜エンタープライズに委託した業務内容は,「1期2期3期の各区画がa公園特別地域内の特例適用を受け,建ぺい率20%以上,容積率40%以上として千葉県に容認してもらう」という交渉事項であり(甲25),しかも山喜エンタープライズは弁護士でもないから,加害行為と山喜エンタープライズに対する報酬との間に相当因果関係がない。
(4)  請求原因(4)は,不知。
(5)  請求原因(5)は,争う。
第4  当裁判所の判断
1  開発規制の概要
(1)  国定公園内の土地であっても,特別地域等の指定のない普通地域であれば,高さ13m又は床面積1000m2を超える工作物の新築等,土地の形状を変更すること等の場合に都道府県知事に対する届出が必要となるにすぎず(自然公園法26条1項),下記(2)の規制は適用されない。(甲7,甲8)
(2)  自然公園法13条1項所定の特別地域においては,都道府県知事(国定公園の場合)又は環境大臣(国立公園の場合)の許可を受けなければ,工作物の新築等,土地の形状の変更等の行為をすることができない(同法13条3項)。その許可基準については,自然公園法施行規則11条が下記ア~ウのように定めている(下記には,本件に関係する許可基準の一部の要件のみを示す。)。なお,千葉県において,同法に関する千葉県知事の許可に係る事務を所管するのは,自然保護課である。
ア 集合住宅の新築等に係る許可基準(自然公園法施行規則11条4項)
(ア) 敷地面積が1000m2以上
(イ) 敷地面積を戸数で除した面積が250m2以上
(ウ) 建ぺい率20%,容積率40%以下(第2種特別地域の場合)
(エ) 道路(公園事業道路等以外)の路肩,敷地境界から建築物(地上部分の水平投影外周線)との距離が5m以上
イ 基準日(昭和50年4月1日)前に造成が完了し,基準日後にその造成に係る届出をした分譲地内建築物の新築等に係る許可基準(同条5項)
(ア) 建ぺい率10%,容積率20%以下(第2種特別地域内における敷地面積500m2未満の建築物の場合)
(イ) 建ぺい率15%,容積率30%以下(第2種特別地域内における敷地面積500m2以上,1000m2未満の建築物の場合)
(ウ) 建ぺい率20%,容積率40%以下(第2種特別地域内における敷地面積1000m2以上の建築物の場合)
ウ 分譲地の造成を目的とした道路の新築等に係る許可基準(同条9項)
一分譲区画の面積が全て1000m2以上
(3)  本件各土地は,いずれも都市計画区域及び準都市計画区域の域外であることから,建築基準法が定める建ぺい率,容積率の規制も適用されないが,0.3ha以上,1ha未満の一団の土地の宅地開発事業(区画形質の変更に係るものであることが要件とされている。)については,県宅開条例3条,7条により,知事の確認が必要とされている。この確認を受けるための確認申請書の受理事務は,第1期土地については安房郡鋸南町(以下,単に「鋸南町」という。)が,第2期土地及び第3期土地については安房郡富山町(現南房総市。以下,単に「富山町」という。)が行うこととなっており,町は当該宅地開発事業に係る町長の意見書を添付して,県の出先機関である土木事務所に送付し,土木事務所がこれを受けて確認又は不確認の判断をして申請者に通知するという流れが予定されている。(甲43~45,乙3,乙4,乙13,乙16,証人G)
他方,鋸南町は,0.1ha以上の宅地開発事業を対象として,鋸南町宅地開発事業等指導要綱に基づく事前協議制度を設けている(甲47)。このため,県宅開条例に基づく県知事の確認手続と鋸南町の事前協議制度が二重に適用になる開発案件もあることになるが,その場合,前者に基づく確認申請書と後者に基づく事前協議申出書を併せて町に提出するのが通例である。富山町にも,同様に富山町宅地等開発指導要綱に基づく事前協議制度がある(甲40)。
2  本件の事実経過(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下のとおり認められる。)
(1)  本件各土地の来歴,位置関係
ア 本件各土地は,a公園内に位置するが,自然公園法が施行された後である昭和40年12月から昭和41年2月にかけて,千葉県知事の認可の下,公有水面の埋立てにより造成された土地である。そして,その造成地の周囲は第2種特別地域に指定されているが,本件各土地自体は,この造成後に特別地域に指定されたことはなく,したがって,普通地域内の土地である。ところが,被告(自然保護課)の作成,管理するa公園の指定区域図(乙1,乙21)上,本件各土地の全体が第2種特別地域に編入されていることを示す誤った記載がされており,このため,被告(自然保護課)において,本件各土地は第2種特別地域内の土地であることを前提とする誤った規制を行ってきた。昭和42年には,三井金属鉱業株式会社が第1期土地に保養所(海の家)を新築したが,その際も,第2種特別地域であることを前提とする許認可の手続が行われた。(甲10,甲11,甲23,甲24,乙1,乙14の1,証人C)
イ 本件各土地は,鋸南町と富山町の境界を挟んで近接しており,第1期土地が鋸南町に,第2期土地及び第3期土地が富山町に所在する。(甲50)
(2)  第1期土地の開発分譲について
ア 第1期土地は,三井金属鉱業株式会社の上記保養所が取り壊され,更地となっていたところ,幸和商事は,平成13年頃から,第1期土地を「岩井シーサイドリゾート」として開発分譲する事業を計画し,同年12月頃から,設計業者である株式会社ベルセン建築計画(以下「ベルセン」という。)を介して,鋸南町及び館山土木事務所と事実上の協議を開始した。ベルセンは,まず,館山土木事務所を訪れ,計画の素案という前提で,開発区域内に建築物を配した図面を提示した。館山土木事務所の担当者のGは,この開発計画は土地の区画形質の変更を伴うものであり,かつ,開発区域の面積が0.3ha以上,1ha未満であれば,県宅開条例による県知事の確認が必要であると教示した。(乙16,証人G)
イ 続いて,ベルセンは,平成14年1月18日,自然保護課を訪れ,同日の作成日付の「(仮称)いわいシーサイドコンドミニアム」と題する図面(乙7の2,甲56の2。以下「原計画図面」という。)を提示し,これが第2種特別地域内の土地の開発に係る許可基準と適合するかどうかという趣旨の相談をした。この原計画図面は,上記アの図面から建築物の配置等に若干の変更があるものの基本的には同様のものであり,北側公道から開発区域内に侵入するT字型の道路(幅員約5m)を設けて,開発区域を大きく4分割し,それぞれの区画に連棟式の建築物(各5戸の住戸を連結したもの)を配するというものである。
上記相談の応対をしたCは,「自然公園の保護 規制と手続きについて」と題するリーフレット(甲7)を手渡して,上記1(2)アの規制について説明した。もっとも,ベルセンが持参した原計画図面自体,一区画の面積が1000m2以上,敷地面積を戸数で除した面積が250m2以上,道路及び敷地境界から建築物までの距離が5m以上とされているなど,明らかに第2種特別地域内の土地の許可基準に適合するように作成されたものであった。
千代田は,原計画図面にある連棟式の建築物を「集合住宅」(自然公園法施行規則11条4項)と扱うことができるかどうかについて,館山土木事務所に確認をとる必要があると考えて,即答は避けて,週明けに連絡すると回答した。
千代田は,翌週月曜日の同月21日,館山土木事務所のGにファクシミリで上記の点の照会をした(乙7の1)。この照会を受けたGは,各住戸の連結部分が明確でないので詳細な平面図を見る必要があると判断し,その旨を直接ベルセンに連絡するとともに,いずれにせよ県宅開条例に係る確認申請が必要であるとして,その手続を促した。(甲56の1,2,乙16,乙17,証人G,証人C)
ウ 幸和商事は,この間の平成14年1月24日,大崎土地建物株式会社から第1期土地を6000万円で購入し(甲4),同年6月4日頃,鋸南町に対し,県宅開条例に基づく確認申請書と鋸南町宅地開発事業等指導要綱に基づく事前協議申出書を提出した(甲73の1,乙11の2)。その事業計画は,自然公園法上の第2種特別地域であることを前提に,その許可基準を充足することを意図した内容であり,細部はともかく,4区画の分譲地のそれぞれに5戸ずつの住戸を連結した連棟式の建築物を配するという基本的な計画自体は,当初のものから変更されていなかった。
エ その後,鋸南町において,幸和商事からの上記確認申請及び事前協議についての検討が行われていたところ,鋸南町宅地開発事業等指導要綱(甲47)第6条が要求する「利害関係を有する漁業団体の同意」の取得に難航し,このままでは上記事前協議の終了条件を満たすことができない見込みとなった(乙6,乙11の5)。このため,幸和商事は,県宅開条例及び鋸南町の指導要綱の適用される区画形質の変更を伴う「宅地開発事業」を断念し,「造成を伴わない土地分譲」に事業計画を変更することを決意した。なお,このような形での土地分譲であっても土地を購入してくれる買手が一部についたことも,上記の方針変更に至った要因となった。
このような経緯で,幸和商事は,平成14年8月21日,館山土木事務所を訪れ,造成工事をしない前提での開発図面(乙12)を担当者のHに交付した。この図面では,分譲予定の8区画の全てが直接公道に面する敷地割りになっているため,新たに開発地内に道路を設ける必要がない内容となっており,また,幸和商事から,すでに擁壁設置工事済みの2区画のほかは整地程度のことしか行わない予定であるとの説明がされたことから,Hは,その程度であれば,区画形質の変更を伴う「宅地開発事業」には当たらないと判断し,県宅開条例は適用されない旨を伝えた。
幸和商事は,同年9月6日,鋸南町に対し,従前の「宅地造成を含む土地分譲」事業を「造成を伴わない土地分譲」に変更する旨の事前協議の申請に係る事業内容の変更申請を提出した。(乙6,乙11の3,乙18,証人H,)
オ その後,第1期土地の分譲は,上記乙12の図面を若干変更した10区画の分譲計画(甲12,甲62の1,2)として販売が開始され,平成15年12月までに9区画の販売が完了し,残り1区画は販売が遅れたが最終的に平成18年3月に分譲が完了した。その売買価格は,別紙「対象不動産の売買価格等」の対象不動産1記載のとおりであり,合計1億4130万円である。この販売契約においては,第1期土地が国定公園内の第2種特別地域であることが前提とされ,売買契約書の特約条項及び重要事項説明書にその旨が明示されている。(甲35,甲59の1~14,甲87,乙8,乙11の4,原告代表者本人)
(3)  第2期土地の開発分譲について
ア 幸和商事は,その後,第2期土地の開発分譲を計画し,平成16年2月16日,所有者である日本証券金融株式会社から第2期土地を5000万円で購入した。この売買契約においては,第2期土地は第2種特別地域内にあることが前提とされており,幸和商事が説明及び交付を受けた重要事項説明書にもその旨が明記されていた。(甲5,甲55)
イ 幸和商事は,第2期土地の開発分譲計画につき,平成16年4月頃,富山町と事前協議を開始した(甲40,甲41の1)。
幸和商事は,当時,これと並行して第3期土地(朝日信用金庫所有)の開発分譲計画も進めていたところ,富山町は,上記事前協議において,第2期土地と第3期土地は所有者が異なることから,両者を分離して申請するよう指導し,第3期土地の申請開発に係る申請は第2期土地の造成完了後に受理するとの意向が伝えられた(乙15,原告代表者本人)。
なお,第2期土地の開発区域の面積が約2815m2,第3期土地の開発区域の面積が約3139m2(合計約5954m2)であるから(甲50),両者が別個の開発案件だとすれば第2期土地の開発につき県宅開条例は適用されず,富山町の事前協議だけで足りるが,一体の開発案件だとすれば県宅開条例が適用されることになる。他方,仮に,第2期土地が特別地域内の土地だとすれば,県宅開条例の適用の有無とは関係なく,自然公園法13条3項の都道府県知事の許可が必要ということになる。
ウ このような中,幸和商事は,富山町からの指導もあり,専ら富山町の事前協議手続(平成16年10月5日承認)だけを経て,第2期土地の造成工事を開始し,完成させた。第2期土地の開発は,開発区域内に道路を造成することなく,単純に4区画に区分し,全ての区画が北側の公道に直接面するようにしたものであるが,整地程度しか行わなかった第1期土地の造成とは異なり,特別地域であれば県知事の許可が必要な,駐車場や擁壁の建築を伴うものであった。(甲20,甲41の1,乙19,証人F)
そうして,幸和商事は,別紙「対象不動産の売買価格等」の対象不動産2記載のとおり,平成16年1月から平成17年12月にかけて,第2期土地の4区画を合計8450万円で売却分譲した。(甲14,甲37,甲39,甲60の1~5,甲87)
(4)  第3期土地の開発分譲について
ア 幸和商事は,平成16年10月22日,朝日信用金庫から第3期土地を3800万円で買い受けた。この時点で幸和商事が予定していた開発分譲計画の内容は,開発区域内にL字型の道路(幅員6m)を新たに造成して8区画に区割りして分譲するというもの(甲17,甲20,甲49)であったが,幸和商事は,第3期土地は第2期土地と隣接する土地であること,富山町の第2期土地の開発に係る事前協議が無事に終えたばかりであることから,第3期土地の開発についても,特段の問題なく行政上の手続が進むと考えていた。(甲6,甲84,原告代表者本人)
イ 幸和商事は,上記のような見通しの下,第3期土地の購入と前後して,平成16年10月9日,造成予定の8区画のうちのC区画(285.0m2)につき,買主Dとの間で代金を1190万円とする売買契約を締結し,手付金100万円を受領し,同月12日,同じくB区画(395.2m2)につき,買主Eとの間で代金を1495万円とする売買契約を締結し,手付金149万5000円を受領した。前者の売買契約においては,所有権移転・引渡日を同年12月15日とすること,売主又は買主の契約違反による契約解除がされた場合の違約金の額は238万円とすることが定められており,後者の売買契約においては,所有権移転・引渡日を平成17年1月20日とすること,売主又は買主の契約違反による契約解除がされた場合の違約金の額は299万円とすることが定められていた。(甲18,甲19,原告代表者本人)
ウ 幸和商事が,平成16年11月末,富山町に第3期土地の開発に係る事前協議を求めたところ,第2期土地にすべて建物が建つまで第3期の開発に係る協議は開始しないという従前の説明と異なった対応がされた。このため,幸和商事が安房地域整備センターに対し,富山町の誤った対応の是正を求める申入れをしたところ,同センターからは,そもそも第2期土地と第3期土地を合わせた全体の開発案件として申請する必要があるという見解が示されるに至った。
そして,第3期土地の開発計画が,上記のとおり開発区域内に道路を造成する内容であり,これが特別地域内だとすれば,自然公園法施行規則14条9項3号により,一分譲区画の面積がすべて1000m2以上であることが要求されることになる案件であったこと(前記1(2)ウ参照)から,自然保護課又は同課の見解を踏まえた安房地域整備センターの担当者は,幸和商事に対し,平成17年2月頃に,第3期土地の上記開発計画は自然公園法施行規則14条9項所定の上記規制の対象となる旨の指導をした。しかし,幸和商事は,第3期土地の一分譲区画の面積は250m2~395m2程度という前提で計画を進めており,上記ウのとおり,既にその前提で一部区画の販売さえ完了していたことから,対応に窮することとなった。(甲49,乙15,乙19,証人F,原告代表者本人)
エ 幸和商事の取締役で本件各土地の開発分譲事業の責任者であったA(現原告代表者)は,平成17年6月20日,自然保護課を訪れ,第3期土地の開発に関する千葉県知事宛の要望書(乙15)を差し出し,幸和商事は上記のとおりの窮地に陥っており,このままでは違約金の発生が考えられること,その原因としては富山町の指導の誤りもあったこと,第3期土地の開発計画は自然公園法の趣旨を損なうものではなく,むしろ自然環境の保全に資するものであることを訴え,何とか知事の許可を得ることができないかと懇願した。しかし,自然保護課の担当者は,上記要請に対しては,裁量で法令の基準を曲げることはできないとの対応に終始し,むしろ,第2期土地の開発行為が自然公園法3条3項の知事の許可を得ることなく行われた違法なものであるとして,これを問題視し,幸和商事に対し始末書を出すよう求めた(もっとも,本来必要となる原状回復については事実上これを求めるのは不可能であると判断された。)。これに対し,幸和商事は,富山町からそのような指導は受けていなかった,仮に始末書を出すにしても,富山町にも責任があり富山町と連名の始末書にすべきであるなどと主張して,これに応じなかった。(乙15,乙19,証人F,原告代表者本人)
オ 上記のような状況で,幸和商事は,第3期土地の造成に着手できないまま,上記イの各売買契約の目的物の引渡しを期限(C区画が平成16年12月15日,B区画が平成17年1月20日)内に履行することができなかった。このため,幸和商事は,B区画の買主であるEから,手付金返還金149万5000円及び違約金299万円の支払を求める損害賠償請求訴訟(東京地方裁判所平成17年(ワ)第5136号)を提起され,平成17年7月22日に訴訟上の和解を合意した。その内容は,①幸和商事が上記手付金返還金及び違約金の合計448万5000円の支払義務を認め,②このうち300万円を期限内に支払ったときは,残額の支払義務を免除するというものであり,幸和商事は上記300万円を支払うとともに,これとは別に弁護士費用30万円を支出することとなった。また,C区画の買主であるDとの関係でも,同じ頃,手付金の返還及び違約金の請求が訴訟外であり,手付金の倍返しの趣旨で200万円を支払って売買契約を解消することとなった。(甲52,原告代表者本人)
カ 幸和商事は,平成17年3月18日,原告に対し,幸和商事の岩井シーサイドリゾート事業(本件各土地全てに関するもの)に関する債権債務を含めた一切の事業を事業譲渡した(甲3)。
キ 平成17年8月4日,環境省国立公園課保護係長から,自然保護課に電話があり,第1期土地は基準日(昭和50年4月1日)前に造成が完了している分譲地であるという情報を得た,そうだとすると,自然公園法施行規則11条5項(上記1(2)イ参照)が適用されるはずであるという連絡・助言があった。そこで,自然保護課が調査したところ,本件各土地とも,基準日前に造成が完了していることが判明し,これを受けて,自然保護課として,自然公園法施行規則11条5項の規定により,敷地面積500m2未満の土地では建ぺい率10%,容積率20%,敷地面積500m2以上1000未満の土地では建ぺい率15%,容積率30%の規制を適用することとし,その限度で,従前の幸和商事に対する説明(自然公園法施行規則11条4項によれば,建ぺい率20%,容積率40%)を改めるという方針を決定した。(乙19,証人F)
ク 原告代表者Aは,平成18年2月頃に自然保護課の上記方針を知り,このままでは,第3期土地を8区画に区分して分譲する現行の計画では十分な大きさの建物を建築することができなくなる(最も敷地面積の小さい区画で約250m2であるから〔甲20〕,50m2程度の建物しか建たない。)ばかりでなく,既に売却した本件各土地の顧客からのクレームも予想されるなど,到底容認できない内容であると考え,自然保護課に対し詳しい説明を求めるとともに抗議をしたが,受け入れられなかった(甲21)。このため,原告は,とりあえず現に造成工事が進行中の第3期土地については,1区画当たりの面積を確保するため,従前の8区画の区割りから6区画の区割り(各区画の面積は約328m2~578m2〔甲22,甲63の1,2〕)に急きょ変更するとともに,平成18年9月1日,行政の許認可業務に詳しい山喜エンタープライズとの間で,本件各土地について「a公園特別地域内の特例適用を受け,建ぺい率20%以上,容積率40%以上として千葉県に認容してもらうこと」を業務内容とする業務委託契約を締結し,その成功報酬を650万円と定めた。(甲25,84,原告代表者本人)
ケ 山喜エンタープライズは,平成18年8月から同年9月にかけて,自然保護課を訪れ,本件各土地について自然公園法施行規則11条5項の適用をする旨の方針変更に至った経緯について説明を求めるとともに,国定公園に指定された経緯について過去の文書に遡って確認するよう求めた。また,山喜エンタープライズは,自らも,本件各土地の埋立て,これに係る行政上の許認可の経緯等を調査し,甲10,甲11,甲23,甲24等の資料から,本件各土地は,前記(1)のとおりの埋立てにより造成された土地であるという事実を突き止めた。そして,同年10月頃,山喜エンタープライズ及び原告は,これを示して自然保護課に再度調査するよう求めた(甲26)。
こうした要求に基づいて自然保護課が本件各土地の第2種特別地域の指定について改めて確認したところ,上記埋立てによる造成がされた後,特別地域に編入された事実がないこと(すなわち普通地域であること)が判明し,これまで,自然保護課が本件各土地は第2種特別地域内の土地であることを前提に自然公園法13条3項に基づく規制及び指導を続けてきたことが誤りであったことが明らかとなった。これを受けて,自然保護課は,同年11月24日,来庁した原告代表者に対し,上記のとおりの説明をし,また,同年12月9日には,鋸南町役場において,住民説明会を行い,自然保護課においてこれまで規制内容を「誤認」していたことを認め,関係者に謝罪した。(甲8,乙19,証人F,原告代表者本人)
コ 原告は,別紙「対象不動産の売買価格等」の対象不動産3記載のとおり,平成18年1月から平成19年1月にかけて,第3期土地の6区画中5区画を計7865万9187円で販売した。残りの1区画(C区画)は,原告代表者Aが購入した後,第三者に2500万円で売却した。また,原告は,山喜エンタープライズに対し,前記クの業務委託契約に基づく成功報酬650万円を支払った。(甲61の1~8,甲84,甲87,原告代表者本人)
3  第1期土地の開発分譲に関する原告の請求について
(1)  原告は,幸和商事は第1期土地を普通地域内の土地として開発することが可能であったところ,その権利又は利益が,被告の違法な行政指導により侵害され,その結果,幸和商事は,普通地域であれば実現が可能であった当初計画(20区画での分譲)による販売予定価格(総額2億3860万円)と実際の販売価格(総額1億3530万円)との差額に相当する得べかりし利益(1億0330万円)を失ったと主張する。
(2)  原告の上記主張は,幸和商事において,第1期土地は普通地域内の土地であると認識し,普通地域内の土地として開発分譲する計画を有していたことを前提とするものと解されるが,以下に述べるとおり,本件においては,この前提自体を認めることができない。
ア 第1期土地においては,従前から,保養所の新築等に当たり,第2種特別地域であることを前提とする許認可が行われてきたことは前記2(1)アのとおりであり,幸和商事が第1期土地の所有者(大崎土地建物株式会社)からこれを買い受けるに当たっても,そのような規制については当然説明がされていたものと推認することができる。実際,原告(その依頼を受けたベルセン)が最初に館山土木事務所及び自然保護課を訪れて第1期土地の開発計画を相談した時点で原告側から提示された原計画図面が,明らかに第2種特別地域内の土地としての許可基準に適合するように作成されていたことは上記2(2)イのとおりである。このような事情に照らすと,幸和商事は,第1期土地が普通地域であるとの認識を有しておらず,その開発計画について被告(館山土木事務所,自然保護課)と相談する以前から,自然公園法上の第2種特別地域内の土地であるとの前提で事業計画を立て,そのような前提で同土地を買い受けたものと認めるのが相当である。このことは,平成13年10月25日という開発計画のごく初期の段階(証拠上,幸和商事が館山土木事務所又は自然保護課と最初に接触したと認められる時期よりも早い段階である。)で作成された幸和商事の企画書(甲86)中に,「国定(ママ)公園法に依り20/40%の容積率」という記載があること(これが自然公園法施行規則11条4項6号を受けていることは明らかである。)からも,十分裏付けられる。
イ この点について,原告は,幸和商事が当初計画していたのは,連棟式の建築物を配した原計画図面(乙7の2)ではなく,20区画の造成販売を予定する甲9の図面にある内容であって,これが被告の違法な指導により連棟式の建築物を配する計画に変更された旨主張し,原告代表者本人中にはこれに沿う供述がある。しかし,甲9の図面の作成日付(平成14年5月7日)から考えて,乙7の2の図面(作成日付が平成14年1月18日)よりも前に作成されていたとは考え難い。また,甲9の図面も含めて,第1期土地の開発計画に係る図面のタイトルが最初から「いわいシーサイドコンドミニアム」とされていることも,当初から連棟式(すなわちコンドミニアムタイプ)の建築物を配する計画であったことをうかがわせるものといえる。
ウ また,原告は,幸和商事取締役Aが平成14年4月1日頃,自然保護課に対し,「昭和40年12月23日公有水面埋立」の記載がある登記簿謄本(甲11)を見せて,これを根拠に第1期土地が第2種特別地域に指定されているのはおかしいと抗議したのに,第2種特別地域の指定を示す区域図の写し(甲30)を示され,それ以上の調査をしてもらえなかった旨主張し,原告代表者本人中にはこれに沿う供述がある。しかし,①上記登記簿謄本が自然保護課に示されたのが,平成18年10月に山喜エンタープライズが来庁した際であること(上記2(4)ケ)は,欄外のファクシミリ送信の日時の記録(平成18年10月11日)からも裏付けられること,②甲30の区域図の写しが,平成15年3月に作成された指定区域図(乙1)の写しであることは明らかであり,原告の主張する時期に交付されたものとは考えられないこと等に照らすと,原告代表者本人の上記供述は,客観的事実と整合しないものといわざるを得ない。このほか,幸和商事が本件各土地が普通地域内の土地であることを当初から知っていたことを認めるに足りる証拠はない。
エ これに対し,幸和商事(その依頼を受けたベルセン)が館山土木事務所及び自然保護課と最初に接触することとなった上記2(2)認定の経緯について述べる証人G,証人Cの証言は,乙7の1,2のファクシミリ文書によって客観的に裏付けられるものであって,その信用性は高く評価することができる。これと反する原告代表者本人の上記供述を採用することはできない。
(3)  以上の認定判断に基づいて判断するに,幸和商事は,第1期土地が普通地域内の土地であるという認識がないまま,当初から,第1期土地を第2種特別地域内の土地として開発分譲する計画を立て,これを遂行したにすぎないのであって,普通地域であることを前提とする販売予定価格での販売が合理的に期待できたということはできない。そうすると,第1期土地の開発をめぐる幸和商事と自然保護課との間のやり取りにおいて,自然保護課の担当者から第1期土地が第2種特別地域であることを前提とする指導があったからといって,これによって,幸和商事が普通地域としての販売利益を享受することのできる権利,利益を侵害されたということはできず,また,原告の主張するような得べかりし利益の損害が発生したということもできない。
よって,第1期土地の開発分譲に関する原告の請求は理由がない。
4  第2期土地の開発分譲に関する原告の請求について
(1)  原告は,幸和商事は第2期土地を普通地域内の土地として開発することが可能であったところ,その権利又は利益が,被告の違法な行政指導により侵害され,その結果,幸和商事は,①普通地域としての適正な分譲価格(総額1億2080万円)と実際の販売価格(総額8450万円)との差額に相当する得べかりし利益(3630万円)を失い,また,②普通地域としての販売ができなかったために分譲が遷延し,第2期土地の売主に対する売買代金残金の支払が遅れ遅延損害金109万3150円を支払わざるを得なくなるという損害を被ったと主張する。
(2)  しかし,幸和商事が第2期土地を所有者(日本証券金融株式会社)から買い受けた際に説明及び交付を受けた重要事項説明書に同土地が第2種特別地域内の土地であることが明記されていた等の前記認定の事情に照らすと,幸和商事において,第2期土地が普通地域内の土地と認識し,これを普通地域内の土地として開発分譲する計画を有していたとは到底認められない。そうすると,幸和商事において,第2期土地について,普通地域としての販売利益を享受することのできる権利,利益を侵害されたとも,原告の主張する得べかりし利益を失ったとも認めることはできない。また,「普通地域としての販売ができなかったために分譲が遷延したことによる損害」についても,前提を欠くものであり,失当である。
さらに,第2期土地に関しては,上記認定のとおり,県宅開条例の適用される開発面積(0.3ha以上)に満たないこともあり,富山町との事前協議だけで開発手続が進められたのであって,そもそも被告による違法な指導が行われたと認めることもできない。
(3)  よって,第2期土地の開発分譲に関する原告の請求は理由がない。
5  第3期土地の開発分譲に関する原告の請求について
(1)  逸失利益の賠償請求について
原告は,第3期土地についても,幸和商事において普通地域内の土地として開発することが可能であったとして,普通地域としての適正な分譲価格(9500万円)と実際の販売価格(6876万円)との差額(2624万円)に相当する得べかりし利益を失った旨主張する。
しかし,前記2の認定に照らすと,幸和商事において第3期土地が普通地域内の土地であるという認識を有することなく,当初から第2種特別地域内の土地としてこれを購入し,第2種特別地域内の土地であるという前提で開発及び分譲をしたにすぎないことは,第1期,第2期土地における状況と同様と認められる。したがって,幸和商事が,第3期土地につき,これを普通地域内の土地としての販売利益を享受することのできる権利,利益を侵害されたということはできず,また,原告の主張するような得べかりし利益を失ったということもできない。
なお,損害自体について付け加えれば,原告は第3期土地の実際の販売価格は6876万円であると主張するが,上記認定のとおり,原告代表者Aが個人として買い受けたC区画を除く5区画の販売価格の合計が7865万9187円,C区画につきAを経由して第三者に売却した販売価格が2500万円であるから,原告の主張する「普通地域としての適正な分譲価格(9500万円)」を前提にしたとしても,そもそも原告主張の逸失利益が計算上生じていると認めるに足りない。
以上のとおりであり,幸和商事が第3期土地につき普通地域内の土地としての販売利益を享受することができたはずであることを前提とする逸失利益の賠償請求は理由がない。
(2)  D及びEに対する違約金等の支払について
次に,原告は,第3期土地の買主であるD及びEとの間の売買契約を解消せざるを得なくなったために支払うこととなった手付金返還金,違約金等の損害賠償を求めるので,検討する。
ア 前記2(4)で認定したとおり,幸和商事は,第3期土地の販売は,平成16年12月頃までには可能であると考え,同年10月中にC区画をDに,B区画をEに売却する旨の売買契約を締結し,その引渡期限をC区画につき同年12月15日,B区画につき平成17年1月20日と定めたこと,ところが,その後,①富山町が第2期土地に全て建物が建つまで第3期土地の事前協議を受け付けないという従前の説明と異なった対応をとるようになったことに加え,②被告(自然保護課又は同課の見解を踏まえた安房地域整備センターの担当者)からも,幸和商事が計画している第3期土地の開発については自然公園法施行規則14条9項3号により一分譲区画の面積が全て1000m2以上であることが必要であるという指導(客観的には普通地域であるから誤った指導である。)がされたことから,これら①,②の要因が複合して,幸和商事は,第3期土地の造成に着手することができないまま,前記売買契約の引渡期限を大幅に徒過しても引渡義務を履行することができなくなり,その結果,Eからは損害賠償請求訴訟を提起され,平成17年7月22日の訴訟上の和解により300万円を支払わざるを得なくなり,Dとの関係でも,訴訟外の和解により手付金倍返しの趣旨の200万円を支払わざるを得なくなったことが認められる。
以上によれば,被告(自然保護課又は同課の見解を踏まえた安房地域整備センターの担当者)が,幸和商事に対し,第3期土地の開発につき自然公園法施行規則14条9項3号が適用され一分譲区画の面積が全て1000m2以上であることが必要であるという誤った指導をした違法行為と,上記違約金等の支払との間には相当因果関係があるというべきである。
イ この点について,被告は,①第3期土地の開発分譲に関して幸和商事に初めて行政指導を行ったのは平成17年2月であり,この時点では,幸和商事とD及びEとの間の売買契約上の引渡期限(平成16年12月15日及び平成17年1月20日)は既に到来していたので,被告の行政指導の結果幸和商事が債務不履行に陥ったものとはいえない,②幸和商事が債務不履行に陥った原因は専ら富山町の指導に原因がある旨主張する。
しかし,幸和商事とD及びEとの間の上記売買契約上,引渡期限の徒過により当然に違約金が発生するとされているわけではなく,買主による催告及び解除が必要とされていること,実際には,数か月程度の遅滞があっても,売主において引渡時期についての具体的な目途を示すことができれば,買主による契約の解除及び違約金の発生という事態にまで至らないのが通常であることからすると,本件においては,一区画当たりの敷地面積が1000m2以上であることが必要であるという被告の指導により引渡時期の目途さえ示すことができなくなったことが契約解除にまで至った大きな理由になったと推察される。
これらの事情を総合すると,被告による行政指導の開始時期と上記売買契約上の引渡期限の先後関係が被告の指摘するとおりであるからといって,被告の違法な行政指導と違約金等の発生との間の相当因果関係を否定することはできない。
なお,仮に,被告の単独での違法行為と上記損害との相当因果関係が否定されるとしても,前記認定の事実関係の下においては,被告は,国家賠償法4条,民法719条1項前段又は後段の規定により,富山町との共同不法行為責任を免れることはできないというべきである。
ウ 次に,被告は,幸和商事は平成18年9月以前に自然保護課に対し,本件各土地につき第2種特別地域に指定された経緯の調査要求をしたことはない旨主張する。
しかし,自然公園法13条3項のような民間事業者の開発事業に極めて大きな影響を及ぼす規制権限を行使する被告の担当者においては,開発予定とされている対象土地が特別地域として指定されているのか普通地域にすぎないのかを直接的な資料に基づいて確認すべき職務上の義務があったというべきであり,規制を及ぼす相手方からの調査要求がなかったからといって,対象土地が特別地域に編入されているのか否かを調査し確認すべき職務上の義務を免れるものではないというべきである。これを本件についてみるに,被告(自然保護課)の担当者は,a公園の指定区域図(乙1)を確認したにとどまり,本件各土地が特別地域に指定されたことを示す直接的な資料を確認することを怠ったのであるから,公務員としての職務執行上の過失があったというべきである。
エ そこで,進んで,被告が国家賠償責任を負う損害の額について検討するに,手付金返還金は既に受領している手付金をそのまま返還するものにすぎないから,これについて損害があるとはいえない(損害とみることができるとしても,受領済みの手付金の額を損益相殺により控除すべきである。)。したがって,幸和商事の損害(実損)と認めることができるのは,①Eに支払った300万円から受領済みの手付金額149万5000円を控除した150万5000円,②弁護士費用30万円,③Dに支払った手付金倍返しのうちの違約金の実質を有する部分100万円の合計280万5000円である。
被告は,この損害についての賠償責任を免れない。
(3)  山喜エンタープライズに対する成功報酬の支払について
次に,原告は,山喜エンタープライズとの間の業務委託契約に基づき同社に支払った成功報酬650万円についても,被告の違法な行政指導によって生じた損害であると主張する。
ア そこで検討するに,被告は,もともと,普通地域である本件各土地を第2種特別地域内の土地であると誤認し,この誤った認識に基づく規制を行っていたことに加えて,第1期土地及び第2期土地の販売が既に終了した平成17年8月以降,従前指導してきた規制(建ぺい率20%,容積率40%)を更に制限し,自然公園法施行規則11条5項の規定により,敷地面積500m2未満の土地では建ぺい率10%,容積率20%,敷地面積500m2以上1000未満の土地では建ぺい率15%,容積率30%の規制を適用するという方針で臨むことを決定したこと,原告とすれば,このような方針変更は,既に売却した本件各土地の顧客からのクレームを引き起こすことが予想されるものであり,到底容認できないものであったこと,このため,原告は,行政の許認可業務に詳しい山喜エンタープライズとの間で,本件各土地について「建ぺい率20%以上,容積率40%以上として千葉県に認容してもらうこと」を業務内容とする業務委託契約を締結し,その成功報酬を650万円と定めたこと,その後,山喜エンタープライズは本件各土地の埋立て,これに係る行政上の許認可の経緯等を調査し,その結果,本件各土地は前記(1)のとおりの埋立てにより造成された土地であるという事実を突き止めたこと,こうした調査結果を被告に伝えて調査を依頼したことが直接の契機となって,本件各土地が特別地域の指定のない普通地域であることが明らかとなり,その規制内容に関する被告(自然保護課)の認識の誤りが正されることとなったことが認められる。
イ このような経過に照らすと,原告による山喜エンタープライズへの上記業務委託及びこれに基づく山喜エンタープライズによる調査活動が,被告の長年にわたる規制内容の誤認を明らかにするために有益であったことは明らかであるが,他面,弁護士でもない業者に高額の成功報酬の支払を約して上記委任事務にあるような行政庁との交渉を依頼するということは,弁護士法に違反する可能性もある行為であって,そのような報酬の支払の全額が,被告の上記違法な行為によって通常生ずる損害又は被告において予見可能な損害であると認めることはできない。被告の上記違法な行政指導と相当因果関係のある損害と認めることができるのは,格別の資格を有しない通常の民間業者が行い得る調査業務・分析・指導の範囲での報酬の支払にとどまるというべきであり,その金額は90万円と認めるのが相当である。
(4)  弁護士費用について
上記(2),(3)で認定した損害額合計370万5000円に加えて,本訴の提起遂行のために要した弁護士費用のうち37万円を被告の違法行為と相当因果関係のある損害と認める。
6  以上によれば,原告の請求は,407万5000円及びこれに対する加害行為の後である平成18年11月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がないというべきである。仮執行免脱宣言は,相当でないから付さない。
(裁判長裁判官 宮坂昌利 裁判官 青木裕史 裁判官 鬼丸のぞみ)

 

〈以下省略〉

 

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