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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(186)平成24年12月27日 東京地裁 平22(ワ)22376号 業務委託料等請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(186)平成24年12月27日 東京地裁 平22(ワ)22376号 業務委託料等請求事件

裁判年月日  平成24年12月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)22376号
事件名  業務委託料等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2012WLJPCA12278011

要旨
◆平成19年5月時点の本件会社の株主である被告らとの間で、同社の株式の公開買付けが成功したときは公開買付価格、そうでないときは基準日の同社の株価を基準として、レーマン方式によって報酬を定める旨の約定をしてそれぞれコンサルティング委託契約を締結した原告が、被告らは故意に条件成就を妨害したとして、公開買付価格を算定の基準とした報酬合計額の支払を求めるなどした事案において、本件各契約における当事者が了解する合理的な料率は、東京商工会議所がウェブページ上に掲載している報酬ガイドラインにおける料率の2分の1を目安とする料率が相当であるとした上で、被告らが故意に本件各契約の条件成就を妨害したとは認められないとし、被告らの支払うべき報酬額を算定するなどして請求を一部認容した事例

参照条文
商法512条
民法130条
民法656条

裁判年月日  平成24年12月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)22376号
事件名  業務委託料等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2012WLJPCA12278011

東京都中央区〈以下省略〉
原告 ハヤテインベストメント株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 豊田賢治
同訴訟復代理人弁護士 内藤悠作
同訴訟代理人弁護士 池田理明
同 横井良
同 小宮誉文
兵庫県芦屋市〈以下省略〉
被告 Y1
兵庫県西宮市〈以下省略〉
被告 Y2
兵庫県西宮市〈以下省略〉
被告 Y3
兵庫県西宮市〈以下省略〉
被告 Y4
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y5
兵庫県西宮市〈以下省略〉
被告 有限会社G&L
同代表者代表取締役 Y1
兵庫県西宮市〈以下省略〉
被告 有限会社Lam’s
同代表者代表取締役 Y4
被告ら訴訟代理人弁護士 大塚明
同 藤本久俊
同訴訟復代理人弁護士 渡辺弘
同訴訟代理人弁護士 中川勘太

 

 

主文

1  被告Y1は,原告に対し,677万3494円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
2  被告Y2は,原告に対し,722万2393円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
3  被告Y3は,原告に対し,964万8641円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
4  被告Y4は,原告に対し,676万0127円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
5  被告Y5は,原告に対し,676万0127円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
6  被告有限会社G&Lは,原告に対し,1916万8636円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
7  被告有限会社Lam’sは,原告に対し,998万3394円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
8  原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
9  訴訟費用は,これを20分し,その17を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
10  この判決は,第1項から第7項までに限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告Y1は,原告に対し,5174万8200円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
2  被告Y2は,原告に対し,5513万3358円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
3  被告Y3は,原告に対し,7274万9880円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
4  被告Y4は,原告に対し,5164万7400円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
5  被告Y5は,原告に対し,5164万7400円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
6  被告有限会社G&Lは,原告に対し,1億4103万1334円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
7  被告有限会社Lam’sは,原告に対し,7494万6386円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1(1)  原告は,平成19年5月時点の株式会社シャルレの株主である被告らとの間で,同社の株主総会対策や株式の公開買付け等のコンサルティング業務を行い,公開買付けが成功したときは公開買付価格,そうでないときは基準日の同社の株価を基準として,レーマン方式によって報酬を定める旨の約定をして,それぞれコンサルティング委託契約を締結した。
本件は,原告が,被告らとの間で,レーマン方式による報酬算定について東京商工会議所がウェブページ上で公開している料率を適用する合意をしたことを前提に,被告らに対し,前記契約に基づき,①主位的な請求原因として,被告らが公開買付けへの応募を撤回してこれを成立させず,故意に条件成就を妨害したことから,民法130条により条件成就が擬制されると主張して,公開買付価格1株800円を算定の基準とした報酬合計4億9890万3958円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合の遅延損害金の支払を求め,②予備的な請求原因として,前記契約の基準日の株価1株386円を算定の基準とした報酬合計2億8098万8831円及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合の遅延損害金の支払を求め,前記契約に基づく請求のうち,主位的な請求原因①が認められない場合には,予備的に,③被告らが公開買付けへの応募を撤回したことが不法行為にあたり,原告は,公開買付価格1株800円を算定の基準とした場合の報酬と前記契約の基準日の株価1株386円を算定の基準とした場合の報酬との差額合計2億1791万5127円の損害を被ったと主張して,不法行為に基づき,同損害賠償金及びこれに対する平成21年2月1日から支払済みまで年6%の割合の遅延損害金の支払を求め,さらに,前記契約に基づく請求が認められない場合には,予備的に,④商法512条に基づき,請求原因①又は②と同額の支払を求めた事案である。
(2)  請求金額の内訳(ただし,遅延損害金は除く。)
ア 原告は,前記契約に基づく請求のうち主位的な請求原因①について,被告らがそれぞれ所有する株式会社シャルレの株式数に公開買付価格の1株800円を乗じて,さらにレーマン方式に前記料率を適用して,報酬として,被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対し5174万8200円,被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し5513万3358円,被告Y3(以下「被告Y3」という。)に対し7274万9880円,被告Y4(以下「被告Y4」という。)及び被告Y5(以下「被告Y5」という。)に対し各5164万7400円,被告有限会社G&Lに対し1億4103万1334円(ただし,833万9952円を弁済として充当した後の残金),被告有限会社Lam’sに対し7494万6386円(ただし,22万6894円を弁済として充当した後の残金)の支払を求めている。
イ 原告は,前記契約に基づく請求のうち予備的な請求原因②について,被告らがそれぞれ所有する株式会社シャルレの株式数に同株式の前記約定の基準日(平成20年12月31日)における大阪証券取引所の株価である1株386円を乗じて,さらにレーマン方式に前記料率を適用し,報酬として,被告Y1に対し2957万4757円,被告Y2に対し3153万4763円,被告Y3に対し4212万8364円,被告Y4及び被告Y5に対し各2951万6394円,被告有限会社G&Lに対し7535万5075円(ただし,833万9952円を弁済として充当した後の残金),被告有限会社Lam’sに対し4336万3084円(ただし,22万6894円を弁済として充当した後の残金)の支払を求めている。
ウ 原告は,不法行為に基づく損害賠償請求について,被告ら各自につき,1株800円を算定の基準として計算した報酬(前記ア参照)と1株386円を算定の基準として計算した報酬(前記イ参照)の差額分が被告らの不法行為により原告の失った報酬分であるとして,被告Y1に対し2217万3443円,被告Y2に対し2359万8595円,被告Y3に対し3062万1516円,被告Y4及び被告Y5に対し各2213万1006円,被告有限会社G&Lに対し6567万6259円,被告有限会社Lam’sに対し3158万3302円の支払を求めている。
(3)  これに対し,被告らは,レーマン方式によって前記契約の報酬額を算定する際に,前記料率を適用する旨の合意をしていないこと,したがって,原告に対し報酬を支払う旨の合意があるといえないこと,被告らが公開買付けへの応募を撤回しても故意に条件成就を妨害したことには当たらないこと,公開買付けへの応募の撤回について不法行為は成立しないこと,原告が株主総会対策や公開買付けのコンサルティング業務を適切に実行していないために公開買付けも失敗しており,前記契約の趣旨に反しているから,前記契約に基づく報酬請求権が発生していないこと等を主張した。
2  前提となる事実
(1)  当事者
ア 原告は,投資顧問業等を目的とする株式会社であり,A(以下「A」という。)は,その代表取締役である。
イ 株式会社シャルレは,昭和50年11月,被告Y3と被告Y2により,レディースインナー等卸売等を目的として設立された株式会社であり,平成10年11月,大阪証券取引所市場第二部に株式を上場した。
株式会社シャルレは,平成18年6月,商号を「株式会社テン・アローズ」に変更して,新設分割方式により新設した子会社である株式会社シャルレに対し,レディースインナー等卸売事業を承継させ,いわゆる純粋持株会社体制へ移行したが,平成20年10月,子会社である株式会社シャルレを分割会社とする吸収分割により,レディースインナー等卸売事業を再度承継し,商号を「株式会社シャルレ」に再変更して(子会社である株式会社シャルレは株式会社BCに商号変更した。),事業持株会社体制へ移行した(以下,商号変更の前後を通じ「シャルレ」という。)。
シャルレの資本金は36億0025万円,発行済み株式総数は2103万4950株である。(甲7の2,8の3)
ウ 被告Y1は,被告Y3と被告Y2の長男であり,シャルレの株式を95万7100株(シャルレ発行済株式総数の約4.55%)保有している。
エ 被告Y2は,シャルレの株式を103万7699株(シャルレ発行済株式総数の約4.93%)保有している。
オ 被告Y3は,シャルレの株式を150万8925株(シャルレ発行済株式総数の約7.17%)保有している。
カ 被告Y4は,被告Y3と被告Y2の次男であり,平成20年9月まで,被告有限会社Lam’s(旧商号有限会社オットー。以下,後記ケの商号変更の前後を通じ「被告Lam’s」という。)の代表取締役を務めていた。その後,平成21年1月から再度,被告Lam’sの代表取締役に就任した。被告Y4は,シャルレの株式を95万4700株(シャルレ発行済株式総数の約4.54%)保有している。
キ 被告Y5は,被告Y3と被告Y2の長女であり,平成20年9月時点で,被告有限会社G&L(旧商号有限会社サザンイーグル。以下,後記クの商号変更の前後を通じ「被告G&L」という。)及び有限会社クレマチス(以下「クレマチス」という。)の代表取締役を務めていた。被告Y5は,シャルレの株式を95万4700株(シャルレ発行済株式総数の約4.54%)保有している。
ク 被告G&Lは,被告Y3,被告Y2,被告Y5,被告Y1及び被告Y4(以下「被告5名」という。)の資産管理を目的とする会社であるが,平成21年1月19日,有限会社サザンイーグルから商号を変更した。被告G&Lは,シャルレの株式を380万2432株(シャルレ発行済株式総数の約18.08%)保有する筆頭株主である。また,被告G&Lは,平成20年9月時点で,クレマチスの株式の51%を保有していた。
ケ 被告Lam’sは,被告5名の資産管理を目的とする会社であるが,平成21年1月19日,有限会社オットーから商号を変更した。被告Lam’sは,シャルレの株式を158万1050株(シャルレ発行済株式総数の約7.52%)保有している。
コ クレマチスは,被告5名の資産管理を目的とする会社であるが,平成20年9月時点で,被告Lam’sの株式を24%保有していた。
(2)  原告と被告らとの合意
ア 原告と被告Y1及び被告Y2は,平成19年5月23日付けで,次のとおりの約定でコンサルティング業務を原告に委託する各契約(以下「本件契約1」という。)を締結して,その旨の合意書(以下「本件合意書1」という。)を作成した(甲1)。
(ア) 被告らは,原告又は原告が指定する法人若しくはファンド(以下「原告等」という。)が行うシャルレの公開買付けが成功するべく,被告らの保有するシャルレの株式売却を含む最大限の努力を行うこと及び被告らの保有するシャルレの株式の全部についてその譲受に関しての独占交渉権を原告が有することを確認する。
(イ) 被告らは,被告らが保有するシャルレの株式について原告等が原告等の判断により同株式の全部又は一部を独占的に買い取る権利を有することを確認する。この買取権を行使する際の買取価格については,シャルレの株式の権利行使日の大阪証券取引所における対象株式の引け値の上下30%をそれぞれ買取価格の上限と下限とし,その範囲の中で原告等が提示した価格とする。
(ウ) 原告は,平成19年6月のシャルレの株主総会対策,将来の譲受者による公開買付け及び被告5名の相続問題について総合コンサルタントとして,被告らとコンサルティング委託契約を結び,被告らの抱える問題解決の努力をする。
(エ) 原告は前記(ウ)の目的を果たすために,法務,税務等の専門家をその裁量により登用することができ,その際の費用及び必要経費は被告らが負担するものとする。
(オ) コンサルティング委託契約についての報酬は,投資銀行業界の標準的な報酬算定式であるレーマン方式に則るものとする。なお,報酬算定の分母たる案件金額は,被告らがそれぞれ保有するシャルレ株式の報酬算定時の時価総額とする。
(カ) 報酬算定時は,シャルレの公開買付けが成立した日又は合意期限である平成20年12月31日のいずれか早い日とする。
報酬算定の分母の案件金額は,公開買付けが成立した場合は,その金額を,前記合意期限が到来した場合は,平成20年12月31日の大阪証券取引所の引け値を使用して算定する。
(キ) 公開買付けが成立せず,平成20年12月31日が到来した場合には,前記(オ)で計算される金額の2分の1を下限として,原告及び被告らの合意を条件として,これを減じることができる。
(ク) 原告は,公開買付けの結果を約束するものではないこと,被告らは,原告よりコンサルティングサービスの提供を受けた場合でも,全ての意思決定は被告らの判断と責任によって行われるものであること,原告の助言に従った結果,被告らに損害が発生した場合でも,原告は被告らに対し損害賠償義務を負わないことを確認する。
(ケ) 報酬の支払期限は,合意期限である平成20年12月31日の5営業日後の日(平成21年1月9日)である。
イ 原告と被告Y3は,平成19年6月11日,前記アと同様の約定で契約(以下「本件契約2」という。)を締結して,その旨の合意書(以下「本件合意書2」という。)を作成した(甲2)。
ウ 原告と被告Y4及び被告Lam’sは,平成19年6月11日,前記アと同様の約定で各契約(以下「本件契約3」という。)を締結して,その旨の合意書(以下「本件合意書3」という。)を作成した(甲3)。
エ 原告と被告Y5及び被告G&Lは,平成19年6月19日頃,前記アと同様の約定で各契約(以下「本件契約4」といい,本件契約1から4までを総称して「本件各契約」という。)を締結して,その旨の合意書(以下「本件合意書4」といい,本件合意書1から4までを総称して「本件各合意書」という。)を作成した(甲4)。
(3)  本件各合意書において報酬算定式と定めたレーマン方式は,一般にはM&Aの報酬を算定する場合に,資産の価格に対して一定の料率(資産価格が多額になるほど料率は逓減される。)を乗じて算出された金額を報酬とする方法であり,同方式自体は算定式であることから,適用される具体的な料率を規定するものではないが,東京商工会議所のウェブページ上には,「売り手担当アドバイザー報酬ガイドライン(上限 レーマン方式)」と題するM&A仲介アドバイザーの報酬体系表が掲載され,その料率は次のとおりである。(以下「本件料率」という。甲16)
① 取引金額が3億円以下の部分については手数料率8%
② 取引金額が3億円超5億円以下の部分については手数料率6%
③ 取引金額が5億円超10億円以下の部分については手数料率5%
④ 取引金額が10億円超30億円以下の部分については手数料率4%
⑤ 取引金額が30億円超50億円以下の部分については手数料率3%
⑥ 取引金額が50億円超の部分については手数料率2%
(4)  被告Lam’sは,平成20年4月15日,原告に対して,6825万円を支払った。なお,この支払の対象となった債務については,争いがある。
(5)  被告G&Lは,平成20年6月30日,原告に対して,本件各契約に基づく報酬の内金として6300万円を支払った。
(6)  原告,被告Y1及びモルガン・スタンレー・キャピタル株式会社(以下「モルガン・スタンレー」という。)は,平成20年6月13日,シャルレの取締役会に対し,シャルレの株式について,次の要領でその100%を公開買付け(以下「本件公開買付け」という。)したい旨,及びその前提としてシャルレの法務,財務について,デューディリジェンスを行いたい旨を伝えた(乙3)。
ア 目的
資本集約効果及び外部資源を活用した事業改革の加速による企業価値の向上
イ 本件公開買付け実施後の資本構成
被告Y1,原告及びシャルレの従業員等が共同で49%,モルガン・スタンレーが51%
ウ 公開買付価格
デューディリジェンスを実施して決定
(7)  被告5名,モルガン・スタンレーの関連会社であるMSPE Tanya Holdings BVBA(以下「MSPE」という。),K&H L.P(以下「ハヤテビークル」という。)及び株式会社Tomorrow(MSPEが100%出資し,後記本件MBOのスキームの中で,特別目的会社とされる株式会社。以下「Tomorrow」という。)は,平成20年9月18日,シャルレのマネジメントバイアウト(以下「本件MBO」という。)を目的とするマネジメントバイアウト基本契約(以下「本件MBO契約」という。)を締結し,その旨の契約書を作成した(甲13)。
本件MBO契約において予定されたシャルレのマネジメントバイアウトは,Tomorrowが,事前に被告G&L,被告Lam’s及びクレマチスの株式の発行済株式を譲り受け,直接又は間接的に被告G&L及び被告Lam’sの株式を100%保有し,その後,被告G&L及び被告Lam’sが公開買付け(本件公開買付け)の方法により,シャルレの発行済普通株式の全て(シャルレ保有の自己株式を除く)を取得すること,被告5名のうち再度出資を行う者はシャルレの株式を売却して得た資金をハヤテビークルに再出資し,ハヤテビークルはこの資金等を,Tomorrowに出資して,その発行する種類株式を受け,MSPEが約50.8%,ハヤテビークルが約49.2%の割合でTomorrowの議決権を保有し,Tomorrowにおいて,被告Lam’s,被告G&L及びクレマチスを吸収合併して経営統合すること等をスキームとしていた。
本件MBO契約では,MSPE及びTomorrowは,被告5名に対し,次のいずれかの事由が発生又は判明した場合,被告5名に対する書面による通知により,①応募前であれば,本件公開買付けに応募しないことを,②応募後であれば,本件公開買付けに係る契約を解除することを請求することができる旨を規定した(第3.2条)。
ア 被告5名又はハヤテビークルの表明及び保証の違反が判明した場合
イ 被告5名又はハヤテビークルが本件MBO契約に定める義務の履行を怠った場合
ウ 本件公開買付け期間終了日までに,シャルレの取締役会が,本件公開買付けに賛同する旨の意見を公表しない場合又は賛同する旨の意見を変更した場合
(8)  MSPEとハヤテビークルは,同日,本件MBO契約締結と同時に株主間契約を締結し,本件MBO契約により,MSPEとハヤテビークルが,Tomorrowの議決権をそれぞれ50.8%,49.2%の比率で取得した後,Tomorrowの株式を譲渡する場合には互いに先買権を有し,さらに,買受希望者に対する売却に参加して売却する権利を有すること,Tomorrowの取締役を5名として,MSPEが3名,ハヤテビークルが2名指名する権利を有することなどを確認した(甲14)。
(9)  シャルレは,平成20年9月19日,本件公開買付けに対して賛同意見を表明した(甲9)。
(10)  被告G&L及び被告Lam’sは,平成20年9月22日,関東財務局長に対し,金融商品取引法に従い,対象者をシャルレとする公開買付届出書(以下「本件届出書」という。)を提出した。
本件届出書によれば,本件公開買付けの買付期間は,平成20年9月22日から同年11月5日まで,買付価格は,1株につき800円とされ,本件公開買付けに応じて売付け等をした株式の数が970万4989株に満たない場合には,応募株式の全部の買付け等を行わない旨の条件が付されていた。
また,本件届出書においては,シャルレの賛同表明が撤回された場合等一定の事由が発生若しくは判明した場合には,被告5名は,本件公開買付けに応募しないか又は応募を撤回する義務を負うとされている。(甲10)
(11)  シャルレは,平成20年11月18日,「大阪証券取引所からの「改善報告書」提出請求について」とのプレスリリースを公表した。その内容は,シャルレは,平成20年9月19日,普通株式の公開買付けに対して賛同意見を表明する旨の開示をし,その際,公正性を担保するために,シャルレの創業家一族である取締役が公開買付けに関与することから,同取締役は関連する審議に参加していないこと,法的な論点に関する説明を法律事務所から受けていることを開示したが,第三者委員会による調査及びシャルレによる照会の結果,創業者一族のアドバイザーが,社外取締役らによる利益計画の検討過程の関与,アドバイスを行っていたと評価されうる事実が存在し,またシャルレが,法律事務所から受けた「株式の算定価格を低くする目的で利益計画を作成したと判断される可能性が十分にある」との意見は容認できないとし,同意見の記載された意見書の正本を受領しなかったことが認められ,その結果,大阪証券取引所から,シャルレの開示は不適正な開示であるため,法規に基づき,その経緯及び改善措置を記載した改善報告書を平成20年12月2日までに提出するよう求められたこと等である(乙4の1)。
(12)  シャルレは,平成20年12月2日,取締役会を開催し,本件公開買付けについて,最終的に賛同できない旨を決定し,意見表明した(甲11の5)。
(13)  MSPEは,シャルレの意見表明を受け,Tomorrowを通じて,本件MBO契約に基づき,被告5名に対し,本件公開買付けへの応募を撤回するように通知し,被告5名は,本件公開買付けへの応募を撤回することを決定した。
(14)  被告G&L及び被告Lam’sは,平成20年12月17日,本件公開買付けの結果,買付予定数の下限に満たなかったため,応募株式の全部の買付けを行わない旨発表し,本件公開買付けは成立しなかった(甲11の6)。
(15)  平成20年12月30日時点のシャルレ株式の価格(引け値)は1株当たり386円であった(甲17)。
3  争点
(1)  原告と被告らは,本件各契約の報酬の算定について,レーマン方式に本件料率を適用する合意をしたか(請求原因①,②,③)
(原告の主張)
Aは,被告らに対し,本件各契約を締結するに当たり,本件各契約の報酬の算定について,レーマン方式に本件料率を適用して算出すると説明し,被告らから,その了承を得た。したがって,原告と被告らは本件各契約において,その報酬の算定について,レーマン方式に本件料率を適用することを合意している。
(被告らの主張)
ア 被告らは,Aから,本件各契約を締結するに当たり,本件各契約の報酬の算定について,レーマン方式の意味やレーマン方式に本件料率を適用すること等の説明を受けたことがなく,原告と被告らは,本件各契約において,その報酬の算定について,レーマン方式に本件料率を適用すること等を合意していない。
イ 東京商工会議所方式とは,レーマン方式を用いる際に対象となる資産の価格について,取引金額から算出する方法を指すにすぎず,仮に原告から被告らに対して,本件各契約の報酬の算定は東京商工会議所方式によるとの説明があったとしても,そのことからレーマン方式に本件料率を適用するとの合意があったとはいえない。
(2)  被告らが故意に条件成就を妨害したか(民法130条の成否,請求原因①)
(原告の主張)
ア 被告5名は,本件公開買付けが成立しなかった場合,本件公開買付けが成立した場合に比べ,被告らが原告に対して支払う報酬額が低くなることを知っていながら,本件公開買付けへの応募を撤回し,あえて本件公開買付けを不成立にした。
したがって,被告5名が本件公開買付けへの応募を撤回したことにより,本件各契約の報酬に関する条件である本件公開買付けの成立が妨害されたことから,民法130条の定めに基づき,本件公開買付けが成立したものとみなすべきである。
イ 本件MBO契約中,被告5名に対して本件公開買付けへの応募撤回を義務付ける条項は,金融商品取引法27条の11第1項に抵触し無効であるから,Tomorrowによる本件MBO契約に基づく本件公開買付けへの応募撤回を請求することは違法である。したがって,被告5名は,本件公開買付けへの応募を撤回する義務を負っていなかったのに,あえて,本件公開買付けを取り止めた。
(被告らの主張)
ア 被告らは,原告との間で本件各契約を締結して,原告からコンサルティングを受け,本件公開買付けを成立させるためにその応募をしていたのであり,本件各契約の報酬の減額のために本件公開買付けへの応募を撤回することなどあり得ない。
イ 被告5名は,本件MBO契約に基づき,やむを得ず本件公開買付けへの応募を撤回せざるを得なかった。また,被告5名は,原告のコンサルティングにより本件MBO契約を締結し,関東財務局長も本件届出書を受理しているのであるから,本件MBO契約が規定する本件公開買付けへの応募撤回を義務付ける条項が無効であったとはいえない。
(3)  原告の被告らに対するコンサルティング業務の履行について(請求原因②)
(被告らの主張)
原告は,本件各契約について,委託の本旨に従い,善良な管理者の注意をもってコンサルティング業務をする義務を負っていたにもかかわらず,本件公開買付手続において,不適切なアドバイスをして,その結果,シャルレが本件公開買付けについて賛同できない旨の意見を表明するに至り,被告5名は,本件MBO契約により,本件公開買付けへの応募を撤回せざるを得なかったし,また,被告らは,本件MBOが不成立となったことにより多大な損害を被った。したがって,原告は,委託の趣旨に反し,コンサルティング業務を履行しなかったに等しいのであって,本件各契約に基づく報酬請求権は発生しないというべきである。
(原告の主張)
原告は,被告らに対し,本件各契約に基づき,本件公開買付けに関するコンサルティング業務を履行した。シャルレの第三者委員会は,Aが被告らのアドバイザーとして不適切な行動をとったと認定しているわけではなく,社外取締役に対する関与が透明性を欠いていると指摘しているにすぎず,被告らは,本件公開買付けへの応募を維持することもできたのであるから,原告のコンサルティング業務が原因で本件公開買付けへの応募を撤回するに至ったとはいえないし,Aの行動が委託の本旨に反していたともいえない。
(4)  被告らの原告に対する不法行為の成否(請求原因③)
(原告の主張)
ア 被告らは,法律上の義務がないにもかかわらず,本件公開買付けへの応募を撤回し,本件公開買付けを成立させなかった。そして,被告らは,本件公開買付けへの応募を撤回することによって,本件公開買付けが不成立となること及び原告に対して支払うべき報酬額の算定基準が公開買付価格である1株800円から,本件公開買付け不成立後の低い株価による基準に変更されることを認識していたのであるから,被告5名の本件公開買付けへの応募を撤回したことは原告に対する不法行為を構成する。
イ 原告は,被告5名が本件公開買付けへの応募を撤回したことにより,本件公開買付けが成立した場合の報酬(シャルレ株式を1株800円として本件料率を適用したレーマン方式により算出した金額)から,本件公開買付けが成立しなかった場合の報酬(シャルレ株式を平成20年12月31日時点の株価である1株386円として本件料率を適用したレーマン方式により算出した金額)を減じた差額分の損害を受けた。
(被告らの主張)
被告5名が本件公開買付けへの応募を撤回したことが不法行為に当たることはない。
(5)  原告の被告らに対する商法512条に基づく請求の成否(請求原因④)
(原告の主張)
原告は,被告らのために,本件公開買付け成立のためのコンサルティング業務を行っていたから,商法512条に基づき,相当な報酬請求権を有する。
被告らは,本件公開買付けが成立すると,総額86億0928万8566円相当額を取得できたのであって(また,本件MBOにより得られたはずの税務メリットは少なくとも25.5億円にのぼる。),原告が本件で請求している報酬額の合計はその5%程度にすぎず,相当な報酬額というべきである。
相当な報酬とは,商慣習上相当な報酬を意味し,東京商工会議所は,公的機関として社会一般から認識され,そのウェブページ上で本件料率を公表していることから,本件料率を適用したレーマン方式によって算定される報酬額は,商慣習上相当な報酬といえる。
(被告らの主張)
本件各合意書では,原告にシャルレ株式についての独占買取権,その行使に際しての価格決定権及び本件公開買付けへの資本参加を認める条項が定められているが,これによると原告と被告らは利益相反関係に立ち,また,本件公開買付けにおいても,原告のコンサルティング業務が不適切であったために被告らが本件公開買付けへの応募を撤回せざるを得なくなり,その結果,多大な損害を被った。そうすると,原告は,被告らのためにコンサルティング業務を行ったとはいえず,原告に報酬請求権は発生しない。また,本件公開買付けが成立した後,被告らは取得した現金をTomorrowに再投資することになっていたのであり,被告らが約86億円を取得できたとはいえない。
(6)  弁済の抗弁(被告Lam’sが原告に対して支払った6825万円は,本件各契約の報酬請求権に対する弁済であるか)
(被告らの主張)
原告は,平成20年4月頃,被告らに対し,本件各契約に基づく報酬の内金として,合計1億2000万円の支払を求めた。
原告と被告らは,協議の上,支払事務の繁雑さと税務上の損金計上の便宜のため,被告らのうち法人である被告G&L及び被告Lam’sがそれぞれ6000万円ずつを支払うことを合意した。
また,原告は,本件各契約に基づき,新日本アーンストアンドヤング税理士法人(以下「アーンストアンドヤング」という。)への報酬500万円及び消費税の合計525万円を立て替えていたために,被告らは,この立替金を支払うことを了承した。
そして,被告Lam’sは,平成20年4月15日,原告に対し6825万円(本件各契約の報酬として6000万円,これに対する消費税300万円,立替金の525万円)を支払い,被告G&Lは,同年6月30日,原告に対して6300万円(本件各契約の報酬として6000万円及び消費税300万円)を支払った。
(原告の主張)
原告は,被告Lam’sから本件各契約の報酬としての弁済を受けていない。
原告は,被告Lam’sとの間で,アドバイザリー契約(以下「本件アドバイザリー契約」という。)を締結しており,被告Lam’sから原告に対して支払われた6825万円のうち6300万円(税込み)は,同契約の報酬として受け取ったにすぎない。
(7)  原告代理人による本訴提起が利益相反行為に当たるか(本案前の抗弁)
(被告らの主張)
ア 原告代理人は,原告から委任を受け,被告らのために,本件MBO契約の契約書の英訳についての精査・検討,その適切なコメント,ハヤテビークルの表明保証事項についての違法性の有無等を検討して,英文による意見書を作成するなどして委任事務を処理したが,原告は,被告らに対し,これらの委任契約に基づく報酬について,立替金として,本訴において請求している。
イ したがって,原告代理人は,被告らのために法律事務を行い,その報酬の支払を請求しているが,これは利益相反行為を禁止した弁護士法25条1号,2号及びこれと同趣旨の弁護士職務基本規程27条1号,2号に違反し,原告代理人は同請求に係る本訴について職務を行い得ないのであるから,これに抵触する本訴提起は無効である。
(原告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前提となる事実,当事者間に争いのない事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められ,これに反する証拠はない。
(1)  平成18年頃までにシャルレが置かれた状況
ア シャルレは,主に婦人下着の訪問販売事業を営み,全国に設けられた主婦が営む代理店及び特約店が自宅においてホームパーティー形式で主婦に対し下着を販売するという営業方法をとっていた。シャルレは,会社設立以降売上げを伸ばし,平成8年に過去最高となる535億円の売上げを達成したが,それ以降,社会環境の変化,競業会社の進出等により,売上げが年々減り続け,平成16年3月期には,最盛期の約70%である381億円まで減少した。
イ シャルレは,売上げ減少の打開策として,著名なスポーツ選手であったB(以下「B」という。)を招聘し,Bは,平成16年6月29日付けでシャルレの代表取締役兼最高経営責任者に就任した。この頃,被告Y3と被告Y2は,相次いで取締役を退任するなどして,経営から退いた。しかし,それ以降もシャルレの売上げは回復せず,減少を続けた。
(2)  原告と被告らが本件各契約を締結した経緯
ア Aと被告Y1は,平成18年6月14日頃,当時シャルレの子会社の代表取締役を務めていたC(以下「C」という。)及びシャルレの従業員であるD(以下「D」という。)からの紹介で知り合った(甲19)。
イ 被告らは,シャルレの売上げの減少傾向が回復しないことから,今後のシャルレの経営を心配し,平成18年夏頃,日興プリンシパル・インベンストメンツ株式会社から同社がスポンサーとなるシャルレのマネジメントバイアウトの提案を受け,大阪弁護士会所属のE弁護士の紹介を受け,同弁護士と相談を重ねたが,Bとの間で調整を図ることができなかった。被告らは,平成19年度のシャルレ定時株主総会(以下「19年度総会」という。)以降の経営体制について,代理店の評判がよかったBには取締役として残ってもらい,ほかの取締役には退任を求めていたが,Bとほかの取締役が退任する様子もなく,かえって,平成19年4月には,E弁護士から,取締役の退任を求めずに,被告Y1が取締役に就任してはどうかとの提案を受けるに至った。
ウ 被告Y1は,平成19年4月14日,当時,シャルレの関連会社の代表取締役を務めていたF(以下「F」という。)及びCに対し,Bと交渉したが,現取締役が退任しない意向であることを伝えたところ,Cは,同日,Aに対し,その旨を電話で連絡した。
エ Aは,平成19年4月17日,被告Y1に対して,E弁護士以外の弁護士からもアドバイスを受けたほうがよいと助言し,a法律事務所を紹介し,被告Y1及び被告Y2は,同日,C,F及びAを伴って,a法律事務所を訪問して,シャルレの経営について相談した。
オ a法律事務所の弁護士らは,平成19年4月23日,被告Y1及び被告Y2に対し,19年度総会において,Bら現取締役を再任する提案を行うことが予定されているが,それに対して,事前に別の株主提案をせず,19年度総会の当日,その場で,会社提案に反対の上,取締役に被告Y1を選任する等の修正動議を出すことが適切であるとの提案をした。同席していたC及びFもこの提案に賛成したことから,被告Y1と被告Y2は,19年度総会について,修正動議を提出することにして,株主総会対策について,a法律事務所の指導を受けることに決めた。
カ Aは,被告Y1,被告Y2及び被告Y4に対し,C及びFも同席のもと,平成19年4月27日,今後のシャルレの経営についての相談者として,モルガン・スタンレーの従業員であるG(以下「G」という。)を紹介した,また,平成19年5月14日,税務問題の相談者として,アーンストアンドヤングを紹介した(甲22)。
キ 被告Y1は,平成19年5月1日,Aに対して,電子メールで,19年度総会後,Aがシャルレのファイナンシャルアドバイザーとして,被告ら及びシャルレの立場に立って,最適なスキームとモルガン・スタンレーの組成するファンドの内容をコントロールしてもらいたいこと,19年度総会までの代理人としての契約について,具体的な報酬金額を含む諸条件を先に教えてもらいたい旨を伝えた(甲23)。
ク 被告Y1及び被告Y2は,原告との間で,平成19年5月23日,本件契約1を,被告Y3,被告Y4及び被告Lam’sは,同年6月11日,本件契約2及び3を,被告Y5及び被告G&Lは,同月19日,本件契約4をそれぞれ締結した(前提となる事実(2))。
(3)  本件各契約締結後から19年度総会までの経緯
ア a法律事務所の弁護士の助言を受けた被告Y1は,平成19年6月17日,シャルレに対して,同月27日に開催予定である19年度総会の決議事項である「取締役7名選任の件」について,現取締役の継続選任に反対し,新任の役員構成に移行するための修正動議を提出する予定である旨通知した(甲8の1,35)。
イ 被告Y1は,ほかの被告らの委任を受け,平成19年6月27日,19年度総会において,修正動議を提出し,取締役会が提案する取締役選任議案を否決させ,修正動議である取締役選任議案を可決させて,シャルレの取締役兼代表執行役に就任し,被告Y2も取締役に就任した(甲8の1,8の2)。
ウ 平成19年6月27日発行の神戸新聞は,19年度総会の結果を伝え,「人事介入,数の横暴」などとの見出しで,被告らシャルレの創業家によるBの解任について批判的な記事を掲載した。
エ その後,被告らは,a法律事務所に対し,被告らがシャルレの経営権を取得したことに対する報酬として3000万円を支払った。
(4)  19年度総会後の本件MBOの実施の経緯
ア Aは,平成19年12月14日,Dに対し,Dが被告Y1に説明のためメールした時に使用したテーブルを提示してほしいこと,被告Y1に対しフィーの説明をしようと考えていることを,電子メールで送信した。
Dは,平成19年12月18日,Aに対し,被告Y1に対しては,会社売買成約時の成功報酬は,①取引金額3億円以下では手数料8%,②取引金額3億円超5億円以上では手数料6%,③取引金額5億円超10億円以上では手数料5%,④取引金額10億円超30億円以上では手数料4%,⑤取引金額30億円超50億円以上では手数料3%,⑥取引金額50億円超では手数料2%との情報を流していたこと,当時,Dは被告Y1に対し,Aには友達価格を提示するように依頼したと伝えたこと,Aに対しリーズナブルなフィーの提示を依頼する旨,電子メールで返信した。(甲26,27)
イ 平成20年1月頃から,シャルレは,将来の経営計画の策定を始め,ベイン・アンド・カンパニーに対し,中期経営計画に関する分析と検討を依頼した。
ウ 被告Y1は,平成20年4月11日,Aに対し,本件MBOが成立し,シャルレの株式が非公開になった後は再上場を目指さず,非公開のまま自己株買いをしていく方針であること,被告Y1,被告Y3及び被告Y2は,本件MBOで得た現金についてはその100%を再出資するが,被告Y5は再出資しない,被告Y4は,個人分は現金化し,被告Lam’s分は再出資する方針であること,現金化のタイミングについては今判断はできないことを伝えた。
エ 被告Y1,C及びFは,平成20年4月14日,シャルレの中核社員7名に対し,モルガン・スタンレーの全額出資する会社が公開買付けをする方法によりシャルレのマネジメントバイアウト(本件MBO)を行う計画があることを伝えた。前記7名,C及びFは,それ以降,本件MBOを推進するプロジェクトチームのメンバー(以下「PJメンバー」という。)となり,被告Y1とともに,本件MBOの是非,これを行う場合の方法等をシャルレの立場から検討していくこととなった。
オ シャルレは,ベイン・アンド・カンパニー日本支社の行った経営分析に基づいて策定した中期経営計画についてさらに検討を加え,同年4月15日,シャルレの社外取締役3名(H,I及びJ。)も加わった取締役会において,目標数値として,向後5期分の中期利益計画を承認した。
カ A及びGは,平成20年6月7日,シャルレの執行役及び社外取締役に対し,シャルレの現状の経営分析を伝えた上,モルガン・スタンレーが主体となって本件MBOを行いたい旨を提案した。その後の同月13日,モルガン・スタンレー,原告及び被告Y1は,シャルレの取締役会に対し,正式に,シャルレの株式について公開買付けしたいこと及びデューディリジェンスを行いたい旨を伝えた(前提となる事実(6))。
キ Aは,被告Y2からの要望を受け,平成20年6月18日,同人に対し,本件MBOが成立しなかった場合には,被告5名が最大で50億円程度の相続税を負担しなければならない可能性があること,Aの提案する本件MBOのスキームのメリットとして,シャルレ株式の売却価格が増額し,節税効果の分を併せて,合計50億円ほどの利益があること,ブルドック・ソースのTOBの事例では,弁護士や財務アドバイザーへの支払額が数か月のプロジェクトで総額7億円であることを伝えた(甲43の1の1,43の1の2)。
ク シャルレの社外取締役は,平成20年6月20日までに,被告Y1らのデューディリジェンスに応じる旨を決定した。
モルガン・スタンレーは,シャルレの社外取締役からデューディリジェンスに応じる旨の決定の報告を受けた後,シャルレの法務についてはb法律事務所(以下「b法律事務所」という。)に,財務・会計については,アーンストヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社(以下「EY」という。)にそれぞれ依頼して,デューディリジェンスを開始した。また,モルガン・スタンレーは,その関連会社及びb法律事務所らと協力して,本件MBOの特別目的会社であるTomorrowを設立する等した。
他方,シャルレは,平成20年6月末頃,自社の適正株価を算定するため,株式会社KPMGFAS(以下「KPMG」という。)に対し,シャルレ株式の価格の算定を依頼した。なお,この頃,シャルレの平成20年度の第1四半期の売上げが前年同期と比して減少し,前記オの利益計画又は目標を大きく下回っていた。そこで,Fは,同年7月22日付けで前記オの利益計画を修正する利益計画案を作成し,KPMGに提出した。
ケ KPMGは,平成22年7月30日,前記クの利益計画案等を参考資料として,シャルレの株価を市場株価法では,528円から544円,株価倍率法では,897円から1129円,DCF法では,1104円から1300円,修正純資産法では925円であると算定し,速報値のドラフトとして,シャルレにその旨を報告した。
コ シャルレは,平成20年8月12日,社外取締役も参加する取締役会を開催し,AとGも参加した。取締役会では,EYとKPMGが算定したシャルレの株価のレンジが重ならないことが報告された。そして,社外取締役及びGは,KPMGに提出された前記クの利益計画案については実現可能性を考慮していない目標値にすぎないこと等を指摘し,疑問を呈した。
サ 被告Y1は,平成20年8月23日,Gに対し,被告Y1と社外取締役からの経営確認書署名があれば,KPMGがワーストシナリオをもとに下方幅を広げた価格レンジを算定価格として出す予定になっていること,KPMGから経営確認書を入手して内容の確認をしたいと思っていること,比較法での算定価格では,Fを通じて,現在の対象企業から,数社を外し,代わりに別の数社を入れるよう指示したことなどを報告した(甲72)。
シ 社外取締役らは,平成20年8月29日,PJメンバーのヒアリングを行った上,その結果を基に前記クの利益計画案を分析し,その結果を「試算指示書」と題する書面にまとめ,PJメンバーに対し,試算指示書に基づく試算をするように指示した。
そして,その結果,平成20年8月31日までに新しく利益計画案が作成され,同計画案はKPMGに提出された。
ス KPMGは,平成20年9月17日,前記シの利益計画案をダウンケースとして,シャルレの株価を株式市価法では518から535円,株価倍率法では976円から1259円,DCF法では681円から1010円,修正純資産法では929円であると算定し,シャルレに報告した。
シャルレの社外取締役らは,KPMGの報告を参考にして,モルガン・スタンレーとAに対し,公開買付価格を1株800円とするならば,本件MBOに応じてもよいと回答した。
セ 被告5名,Tomorrow,MSPE及びハヤテビークルは,平成20年9月18日,本件MBO契約を締結し,MSPEとハヤテビーグルは,同日,本件MBO契約に関して株主間契約を締結した。
シャルレは,同月19日,本件公開買付けに対する賛同意見表明を行った(前提となる事実(8)及び(9))。
ソ 被告Lam’s及び被告G&Lは,平成20年9月22日,関東財務局長に対し,公開買付届出書を提出し,同日から同年11月5日までの予定で公開買付けを開始した(甲10)。
タ 本件公開買付けに関して,平成20年10月16日以降,公開買付けの株価算定手続に違法又は不公正な点があったという内部通報が相当数あった(甲11の2)。
チ シャルレは,前記タの内部通報を受け,K弁護士を委員長とするシャルレ第三者委員会を設置して,調査を始めた。同委員会は,平成20年10月31日付けで,調査報告書(以下「第三者委員会報告書」という。)を提出した。
第三者委員会報告書によれば,調査の目的は,本件MBOの端緒から現在に至るまでのシャルレ取締役及びその関係者による利益相反行為の有無にあり,その結論として,シャルレ取締役及びその関係者は,同年9月16日及び17日の公開買付者側との交渉に臨み,結果として,創業家に約20億円の利益の吐き出しを認めさせた上で,公開買付価格について1株800円とすることを承認した点において,構造的利益相反状況を除去するための努力が一応見られるものの,本件利益計画策定承認プロセスにおける原告の関与形態は,交渉の自由として認められる合理的範囲を超える介入が有り,かつ,シャルレの社外取締役らもこれを受け入れたと見られる状況にあったと評価できるから,交渉時における社外取締役の裁量の範囲を限定することにつながる利益計画の承認に関する意思決定過程における透明性,公正性に問題があり,これらの事情を総合的に勘案すれば,本件MBOにおいて社外取締役らの利益相反行為があったと断定することはできないが,他方,利益相反行為があったという合理的疑念を払拭することもできない,との判断がされている。
なお,同調査書では,公開買付者側であるモルガン・スタンレーの関連会社が,1株あたり700円程度で買い付けることを希望し続けていたにもかかわらず,最終的に800円という買付価格を受け入れたのは,シャルレの創業家が従前保有していた被告G&L及び被告Lam’sの株式をモルガン・スタンレーの関連会社に譲渡する際の代金額を引き下げたことにより実現したとの指摘がある。(甲11の2)
ツ シャルレは,第三者委員会の報告を受け,平成20年11月7日,本件MBOに対する賛同意見を一旦撤回し,意見の再表明までの間,意見を留保することとして,外部委員からなる検証委員会の設置を決定した(甲11の3)。
L弁護士を委員長とする検証委員会は,同月18日,報告書(以下「検証報告書」という。)を作成し,シャルレに提出した。
検証報告書によれば,第三者委員会報告書により外形的には利益相反のおそれがあったとされた利益計画が妥当なものであるかどうかについて,シャルレと独立な立場から検証することが目的であるところ,平成20年8月31日及び同年9月13日にそれぞれ策定された利益計画は,結論としていずれも不合理なものとはいえないとされている。(甲11の4)
テ 大阪証券取引所は,シャルレに対し,平成20年11月18日,第三者委員会報告書等を踏まえ,同年9月19日のシャルレによる賛同意見表明の際の開示内容が不適正であるなどとして,開示体制の改善につき,改善報告書の提出を求めた(乙4の1)。
ト 三菱東京UFJ銀行は,平成20年11月頃,被告G&L及び被告Lam’sに対し,本件公開買付けに際しての融資をすることを撤回する旨の報告をした(被告Y1本人[37頁],甲73[67頁])。
ナ シャルレは,平成20年12月2日,取締役会を開催し,本件公開買付けについて,最終的に賛同できない旨を決定し,意見表明した(甲11の5)。その理由として,第三者委員会の調査結果において認定された行為のほかに,要旨次の事実が判明したことを勘案したとしている。
すなわち,被告Y1は,①原告のアドバイスを受けて,同年8月3日から同月12日にかけて,低い公開買付価格に賛同した場合の法的リスクを社外取締役に説明すべきであると主張する執行役に対し,リスクを過大に評価した説明をすべきではないと指示したこと,②社外取締役に対する本公開買付けに関する最初の説明の場に原告が同席することに反対する執行役に対して,KPMGによる算定結果の速報値をもとに社内の者のみで議論しては,公開買付けに賛成する方向にならないから原告を出席させるように指示したこと,③原告のアドバイスを受けて,同月21日ころから同年9月9日にかけて,執行役に対し,KPMGと交渉し,シャルレの株価算定に当たっては,DCF法及び純資産法を採用せず,株価倍率法についてEYによる算定結果で用いられている類似企業を採用するよう働きかける指示をしたこと,この交渉の仕方の指示については,モルガン・スタンレーからも,具体的な内容の指摘を受けており,結果として,KPMGの最終的な算定結果では,被告Y1の要望が一部受け入れられたことが判明したとされている。
MSPEは,シャルレの意見表明を受け,Tomorrowを通じて,本件MBO契約に基づき,被告5名に対し,本件公開買付けへの応募を撤回するように通知し,被告5名は,本件公開買付けへの応募を撤回することを決定した。
ニ 被告G&L及び被告Lam’sは,平成20年12月17日,本件公開買付けの結果,本件公開買付けにおける応募株式の総数(548万3070株)が買付予定数の下限(970万4989株)に満たなかったため,平成20年9月22日付け公開買付開始公告及び同日付け公開買付届出書に記載のとおり,応募株式の全部の買付けを行わない旨発表した(甲11の6)。
ヌ シャルレは,平成20年12月19日,大阪証券取引所に対し,改善報告書を提出した(乙4の2)。
(5)  本件MBOが不成立になってからの経緯
ア Tomorrow,MSPE,被告5名は,平成20年12月25日,本件MBO契約の契約書に関連して,覚書を作成した。この覚書では,本件MBOの準備及び実施に関連して買付者の立場において発生した費用,経費及び手数料に関して,本件MBO契約に則り,総合的に判断して合理的な費用負担について誠実に協議するものとするとの条項を定め,この覚書により本件MBOの手続を終了したことを確認した(乙5)。
イ モルガン・スタンレーは,平成20年12月24日付けで,被告らに対し,本件MBOに際して必要であった費用として,合計4億9215万5112円のうち,約3億5636万7564円の支払を求めた(乙6)。
ウ 原告は,平成21年1月13日,被告ら代理人に対し,請求書を送信した。
この請求書においては,①アドバイザリー報酬は1億6355万5682円,②海外諸費用は5134万4918円,③弁護報酬立替分は128万7562円,④交通宿泊費概算は148万8880円,⑤通信,事務,他雑費概算は63万円,⑥各種割引は1707万7462円とされている。請求書明細によれば,①アドバイザリー報酬は,被告らの保有するシャルレ株式の平成20年年末時価について,レーマン方式によって本件料率を乗じて算出した報酬額の合計2億7576万7316円から1億2000万円を控除した1億5576万7316円に消費税を加えて算出されている。(乙1の1,1の2)
エ 被告らは,モルガン・スタンレーからの費用請求についての交渉を被告ら代理人に依頼し,モルガン・スタンレー及び被告らとの間で,平成21年3月26日,費用についての合意が成立して,原告は,モルガン・スタンレーに対し,1億9033万7060円を支払った(被告Y1[39頁])。
2  争点(1)について
(1)ア  原告は,被告らとの間で,本件各契約の報酬について,本件料率(前提となる事実(3))を適用したレーマン方式によって算定する約定をしたと主張する。
しかし,本件各合意書には,報酬算定についてはレーマン方式によるものであることが定められているにとどまり,本件料率を適用する旨の規定がないため,本件各合意書を根拠として原告と被告らが本件各契約の報酬を本件料率を適用したレーマン方式によって算定するとの合意をしたと認めることはできないし,ほかに同合意をしたことを認めるに足りる証拠はない。
イ  これに対し,Aは,本件各契約締結に当たり,被告らに対して,本件各契約の報酬について,東京商工会議所が公表している料率(本件料率)を適用したレーマン方式によって算出するとの説明をしたと供述する。しかし,Aが被告らに対し本件各契約を締結する前に本件料率の説明をして,その了承を得たかどうかについて,Aは具体的な供述をしないし,これを裏付ける的確な証拠はない。また,Aが被告らに対して本件料率について説明をするに当たり,本件料率が記載された資料を示したり,交付するなどしたかも判然としないことから,被告らが本件各契約の報酬の算定に際してどのように本件料率が適用されるかを理解し,これを了承したかも定かとはいえない。かえって,Aと被告らが,本件各契約締結前に,本件各契約の報酬算定の基準やこれを適用した場合の報酬額の概算等を話し合った形跡や,Aが,被告らに対し,本件各合意書に署名押印をしてもらう前に,同合意書の案を書面で示すなどしたことも証拠上うかがうことができないのであって,被告らが本件料率を適用して報酬を算定することを事前に検討する余地もなかったし,そのことを理解し,了承していたとは考えられない。原告は,本件各合意書作成時には,本件各契約の報酬算定の基準となるシャルレの株価が定まらないから具体的な報酬を算定できない旨の供述をするが,例えば本件各合意書作成時点のシャルレの株価を適用して報酬算定の例を示すことなどは容易かつ可能であって,そのような検討をすることもなく,被告らが本件各契約の報酬算定の了解をしたとは考えがたい。さらに,被告らが本件各合意書に記載があるとおりに本件各契約の報酬額の算定についてレーマン方式によることを承諾していたとしても,レーマン方式に適用される料率の高低によって被告らが受ける不利益の度合いが相当程度変わるのであるから,被告らが適用される料率の採否をAに委ねていたと考えるのも相当ではない。そうすると,Aの前記供述を直ちに採用しがたいし,仮にAが被告らに対し本件各契約を締結するに当たり本件料率に言及したことがあったとしても,被告らが本件各契約の報酬の算定について,レーマン方式に本件料率が適用されることまで合意していたとは認めがたいというべきである。
そもそも,東京商工会議所のウェブページ(甲16)によれば,本件料率は,成功報酬の基準であり,かつ上限である旨の説明が付記されていること,レーマン方式を用いる際に,取引金額から算出する方式と総資産額から算出する方式とあるが,そのうち取引金額から算出する方式を東京商工会議所方式と呼ぶことが認められる。したがって,本件料率は,成功報酬の基準であって,かつその上限基準として定められたものであるといえるが,本件各契約は,本件MBOの成功いかんにかかわらず被告らは原告に対し報酬を支払う旨を約定しているのであるから,被告らが本件各契約においてレーマン方式に本件料率を適用することを了承していたとは容易に認めがたいというべきである。また,Aが被告らに対し,本件各契約の報酬算定について,東京商工会議所方式であるとか,そのウェブページを閲覧するように発言をしたとしても,東京商工会議所方式とは,レーマン方式を用いる際に取引金額から算出する方式を指すと読み取れるにすぎないから,このことのみから,被告らが本件各契約においてレーマン方式に本件料率を適用する了承をしたということはできないというべきである。
ウ  さらに,Aは,平成19年5月23日に東京で被告Y1及び被告Y2と面談し,その場で本件各契約の報酬算定方法についての説明をしたと供述するが,Aの供述どおりに面談をしていたとしても,本件各合意書を作成するために被告Y1及び被告Y2がAと面談をすることはごく自然なことであり,面談をしたという事実のみから,Aが被告Y1及び被告Y2に対して本件料率についての説明をしていたと推認することはできないし,前記認定のとおり,本件各合意書作成の前に,Aと被告Y1及び被告Y2が本件各契約の報酬算定に当たり本件料率を適用することについて具体的な交渉をしたとか,その資料を示されたという事実も認められないのであるから,被告Y1及び被告Y2が,前記面談のその場でAから本件各契約の報酬算定についての説明を受け,これを了承したとはおよそ考えがたいというべきである。これに付け加えると,被告らも,被告Y4が本件合意書3を作成する際にAに対し報酬額を尋ねたことを認めているが,このときにも,報酬算定についての具体的な協議がされたことは証拠上うかがうことはできない。そして,被告Y1が平成19年5月23日にAと面談をしていないと供述したからといって,直ちに被告Y1の供述が全く信用できなくなるというわけではないし,このことのみから,Aが,被告Y1及び被告Y2に対し,本件料率についての説明をしていたと認めることができるわけでもない。
エ  Aは,平成20年7月頃,シャルレ本社の社長室で,被告Y1及び被告Y2に対し,東京商工会議所のウェブページ上に掲載されている本件料率の表を印刷した書面を交付し,これを示して,本件料率の説明をしたなどと供述する(A[5頁])が,これを裏付ける適確な証拠はなく,また被告Y1はそのような説明がなかったと供述していることから,Aのこの供述を容易に採用しがたいが,これをひとまず措くとしても,Aが本件各契約締結後の平成20年7月頃に被告Y1に対して本件料率の記載のある資料を示して本件料率の説明をしたというのであれば,本件各契約締結時点では本件料率を適用する合意がなかったと考えるのがきわめて自然かつ合理的である。
オ  付言すると,Aは,平成19年12月14日頃,Dに対し,電子メールで,被告Y1に対して説明した報酬算定に適用される料率を示すように依頼し,Dは,Aに対し,本件料率と符合する料率を伝えたと返信したことが認められる(前記1(4)ア)。
しかし,前記のメールの送受信は,AとDの間の連絡事項にすぎないことはいうまでもないが,これを素直に読めば,Aは,Dに対し,被告Y1が報酬の算定をどのように考えているかを確認しているのであって,本件各契約締結時に本件料率を適用する旨の約定をしていれば,このようなメールを送信する必要はなく,かえって,本件料率を適用する約定をしていなかったと考えることが相当である。しかも,前記のメールの送受信については,Dは,Aに対し,MBOの成功報酬を想定して,リーズナブルなフィーの提示をお願いすると伝えていることが認められ(前記1(4)ア),これらの送受信から,本件料率を適用する約定をしたと認めることは到底困難であるというべきである。
カ  さらに,後記7で説示するとおり,原告は,平成20年4月頃,被告らに対し,本件各契約に基づく報酬の内金として1億2000万円の支払を求めたと認められるが,この事実によっても,報酬額を1億2000万円と算定した根拠は明らかでなく,同額がレーマン方式に本件料率を適用して算出されたことを裏付ける的確な証拠もないことから,レーマン方式に本件料率を適用する旨の合意があったと推認することはできない。なお,この点について,Aは,平成20年4月当時のシャルレの株価(1株当たり約540円)を基準として,レーマン方式に本件料率を適用して算出された金額の3分の1(本件各契約の3つの内容(株主総会対策,本件MBO,相続税対策)のうち少なくとも株主総会対策は完了していた。)のさらに半分程度の6000万円を請求した旨の供述をするが,そもそも,原告が被告らに対して請求した金額は1億2000万円であることは後記7で説示するとおりであるから,Aの供述はその前提を欠くし,およそ合理的な内容とはいえず,また,そのような計算が行われたこと又はそのような計算に基づいて6000万円の請求がされたことを裏付ける計算書や請求書などの証拠もなく,これを採用することはできない。
キ  他方,被告Y1は,Aから本件各契約の報酬についてはレーマン方式により算定すること及びウェブページでレーマン方式を参照するよう伝えられたこと,その後,Dから,レーマン方式がその適用される取引金額等によって料率が変わる計算方式を示すこと,レーマン方式に用いられる料率も様々な種類があること等の説明を受けたこと,Dに対し,料率の内,低いものを適用するようAに伝えてほしいと依頼したこと等を供述するが(被告Y1[15頁及び17頁]及び甲27),これらの供述は前記認定と矛盾せず,特段不自然な点や不合理な点があるとはいえない。
ク  以上の検討によれば,原告と被告らとの間で,本件各契約の報酬について,レーマン方式に本件料率を適用する合意があったとは認められない。
(2)ア  前記1で認定した事実によれば,原告と被告らは,本件各契約を締結するに当たって,原告が株主総会対策や本件MBOについてコンサルティング業務を行い,被告らがレーマン方式によって算定した報酬を支払うことを合意し,本件各合意書にその旨を明記していること,そのコンサルティングの内容にかんがみても,無償であるとはおよそ考えがたく,被告らが原告に対する報酬の支払いを了承していたと考えるのが合理的であること,また,本件MBO以外のコンサルティング業務を含むため,明確な基準によってその報酬を算定することは難しいが,取引金額(又は総資産)に割合的な率を乗じて報酬を算出する程度の認識はあったと考えられること(前記(1)キ),実際に,被告らは,原告の請求に特段の異議を述べることなく1億円以上の報酬内金等を支払っていること(後記7)が認められ,したがって,被告らが原告に対しコンサルティング業務についての報酬を支払う旨を承諾していることは明らかであるというべきである。
そうすると,被告らが,レーマン方式に適用する料率については本件料率とすることまで合意したとは認められないとしても,当事者の意思を合理的に解釈すれば,レーマン方式によって報酬金額を算定する場合には料率を適用する必要がある上に,そのような算定方法については被告らも了承していたというべきであるから,少なくとも,本件各契約の内容に沿った合理的な料率を適用することの了解が被告らにあったというべきであり,原告と被告らとの間では,この限度で,これを報酬基準とする旨の合意があったと解することが相当である。
イ  なお,これらの点について,被告らは,レーマン方式に適用する料率について合意がなかったこと,したがって,報酬の合意もなかったこと,本件各契約締結時点では,MBOについてコンサルティング業務を依頼していないこと(さらにいえば,MBOに係る報酬の合意がなかったこと)等を主張し,被告Y1は,これに加え,本件各契約の報酬については,MBOに関しては成功報酬と考えていた旨の供述をする。しかし,前記アで説示したとおり,本件料率についての合意がなかったとしても,被告らとしても無償でのコンサルティングを原告から受けることを想定していたとはおよそ考えがたいことから,有償でのコンサルティングを受けること及びその報酬としては,レーマン方式に合理的な料率を適用して算出することについての合意をしていたものと認めることが相当である。また,本件各合意書には,原告は,MBOに関するコンサルティングも行い,被告らはその成功いかんにかかわらず報酬を支払う旨が明記されていたのであるから,原告の行うコンサルティング業務にはMBOに関するものも含み,その報酬は成功報酬とされてはいなかったと認められ,これに反する被告らの前記主張及び被告Y1の供述は採用できない。
ウ  そして,本件料率は最高で8%(取引金額が3億円以下の部分)の乗数とされているが,レーマン方式に適用する料率について,低いものとしては最高の乗数が5%程度のものもあること(弁論の全趣旨),本件各契約では,本件MBOの成否にかかわらず,つまり成功報酬でなく,期限の到来によって報酬を支払うとの約定をしていること等を考慮すると,当事者が了解する合理的な料率は,次のとおり本件料率の2分の1を目安とする料率が相当であるというべきである(以下「本件料率認定分」という。)。
① 取引金額が3億円以下の部分については手数料率4%
② 取引金額が3億円超5億円以下の部分については手数料率3%
③ 取引金額が5億円超10億円以下の部分については手数料率2.5%
④ 取引金額が10億円超30億円以下の部分については手数料率2%
⑤ 取引金額が30億円超50億円以下の部分については手数料率1.5%
⑥ 取引金額が50億円超の部分については手数料率1%
3  争点(2)について
(1)  原告は,被告らが,本件MBOが成立すれば,公開買付価格の株価によって算定した報酬を支払わなければならないことから,これを免れ,基準日の株価によるために,本件公開買付けへの応募を撤回したのであって,故意に本件MBOの成立という条件を妨げたと主張する。そして,甲10によれば,本件公開買付けにおける最大買付株式数は1399万6853株であるところ,被告5名の有する株式数は合計541万3124株であり(前提となる事実(1)),被告5名が本件公開買付けへの応募を撤回すれば,応募株数は最大でも858万3729株となり,本件公開買付けの買付予定数の下限に達せず,本件公開買付けが成立しないことになる。
しかしながら,前提となる事実(10)から(12)まで及び前記1(4)キで認定した事実によれば,被告らは,シャルレの創業家として,本件MBO契約を締結する前年には,原告に対しコンサルティング業務を依頼してシャルレの株主総会対策を実施して,その経営権の取得に成功し,さらにシャルレの支配権の確保を進め,併せて,保有するシャルレ株式を現金化して,その一部を再投資しないで相続税等の資金を確保し,数十億円単位の節税効果まで企図して,本件MBOの実現を目指してその手続を進めてきたものの,シャルレが本件公開買付けに対する賛同意見を翻意したため,Tomorrowから本件公開買付けへの応募の撤回をするように通知を受け,検討した結果,本件公開買付けへの応募の撤回を決めたというのである。したがって,被告らが,原告に対して本件MBOが成立したときに公開買付価格の株価によって算定した報酬を支払うことを免れるために,本件公開買付けへの応募を撤回したなどとは到底認めがたいというべきである。
この点について,原告は,Tomorrowが被告Y1の言動を理由として被告らに対して本件公開買付けへの応募の撤回をするように通知したのであるし,また,応募撤回の通知を受けても,被告らにはまだ本件公開買付けへの応募を維持する選択肢も残されていたことから,被告らが故意に本件公開買付けへの応募を撤回することが信義則に反すると主張するが,Tomorrowがどのような理由で被告らに対し本件公開買付けへの応募撤回を通知したとしても,また,被告らには本件公開買付けへの応募を維持できる選択肢があったとしても,これらのことから,被告らがあえて公開買付価格によって算定した報酬を免れるために本件公開買付けへの応募撤回をしたなどと推認できないことは明らかである。ほかに,被告5名が本件公開買付けへの応募を撤回することが信義則に反することを裏付ける事情は認められない。
なお,被告らは,シャルレが本件公開買付けに対して賛同できない意見を表明し,Tomorrowが被告5名に対し,本件公開買付けへの応募を撤回するよう求める通知をしたことから,これを主な理由として本件公開買付けへの応募を撤回したところ,本件公開買付けに対して賛同できない結論に至った理由として,被告Y1が不適切な言動をしたことが挙げられているものの,同時にそのアドバイザーである原告のアドバイスを受けて不適切な言動をしたと指摘されているのであって(前記1(4)ナ),シャルレは専ら被告Y1の言動のみを取り上げて本件公開買付けに対して賛同できない旨の意見を表明したとは認められないから,被告Y1の言動が原因となって本件MBOが不成功に終わったということもできず,このことを前提とする原告の主張は採用できない。
(2)  したがって,被告らが故意に本件各契約の条件成就を妨害したとは認められない。
4  争点(3)について
(1)  被告らは,原告のコンサルティング業務が不適切であったため,シャルレが本件公開買付けに賛同できない旨の意見を表明し,本件MBOが成立しなかったことから,原告のコンサルティング業務が委任の趣旨に反し,原告に報酬請求権が発生しないと主張する。
しかし,前記1で認定した事実によれば,原告は,本件各契約を締結した後,シャルレの株主総会対策についてコンサルティング業務を行い,被告Y1がその代表執行役に就任するなど,被告らの経営権の取得に成功したこと,さらに,原告は,被告らの相続税対策を踏まえて,被告らによるシャルレの経営の安定化を目的として本件MBOを計画し,投資銀行や弁護士事務所,税理士法人などを紹介して,その調整を図り,本件MBO契約を締結したこと,本件公開買付けが実施され,シャルレも,これに対して一度は賛同する意見を表明したこと等が認められる。したがって,被告Y1がシャルレの代表執行役に就任し,解任されるまでに原告が果たした役割について異なる評価があり得るとしても,また,前記2で説示したとおり,本件各契約の報酬額の算定については当事者間の合理的な意思解釈をする必要があるとしても,原告は,概ね,被告らとの本件各契約に基づいてコンサルティング業務を行ったということができるというべきである。
この点について,第三者委員会報告書(甲11の2)によれば,本件公開買付けに対するシャルレ内部の意思決定過程において,原告は合理的範囲を超える介入を行ったが,シャルレの社外取締役らの利益相反行為があったと断定することもできないと指摘されていること,検証委員会の調査結果(甲11の3)によれば,公開買付価格を設定するための算定の基礎とすべく供された利益計画はいずれも不合理とはいえないと指摘されていること,シャルレの本件公開買付けに対する最終的な意見に至る経緯として,被告Y1の不適切な言動の一部については原告のアドバイスを受けて行われたとされていること等が認められる。すると,要するに被告らのアドバイザーであった原告が第三者から見て公正を疑われるような言動をしたことから,シャルレが本件公開買付けに対する賛同意見を撤回し,結局これが原因で本件MBOが成功しなかったことから,原告にはコンサルティング業務として適切さを欠いたところが見受けられるといえるものの,しかし,公開買付価格の検討までは,原告は被告らのアドバイザーとして同人らのために本件MBOを成立させる目的を持ってその成立に向けた行動を取っていたといえるし,公開買付価格を不正に操作したと認定されているわけでないのであって,原告に本件各合意に基づく報酬請求権を生じさせない程度の委任の趣旨に反するコンサルティング業務が行われたというべきではない。
(2)  したがって,被告らの主張には理由がない。
5  争点(4)について
原告は,被告らが本件公開買付けへの応募撤回をしたことが不法行為にあたる旨を主張するが,その根拠が明らかでなく,これを認めることはできない。
原告は,本件MBO契約で規定されているMSPE又はTomorrowによる本件公開買付けへの応募の撤回請求が金融商品取引法27条の11第1項の規定に抵触して違法であり,無効であると主張する。しかし,本件MBO契約が定める応募撤回を求めることができる旨の規定が金融商品取引法27条の11第1項に抵触するかどうかによって,被告らの応募撤回行為が原告に対する不法行為を構成するかどうかが定まるものでなく,本件では原告は被告らの利益のために本件MBO契約の締結を含むコンサルティング業務をしたのであるから,なおさら被告らが応募撤回を選択したところで原告に対する不法行為を構成するとは認めがたいのであって,いずれにしても,原告の上記主張を採用することはできない。
6  争点(5)について
原告は,原告の行ったコンサルティング業務に基づく相当な報酬額がシャルレの株式数に本件公開買付けの公開買付価格又は平成20年12月31日時点の株価を乗じ,それに本件料率を適用したレーマン方式によって算出した額であると主張する。
しかし,前記2で説示したとおり,本件各契約について,本件料率認定分を適用してレーマン方式によって報酬を算定する合意があったと認定することが相当であり,仮に,そのような合意がなかったとしても,相当報酬額はこれを超えることはないというべきである。したがって,原告の商法512条に基づく報酬請求を検討したとしても,前記結論に影響を与えない。
7  争点(6)について
(1)  被告らは,被告G&L及び被告Lam’sが原告に対して1億2600万円(税込み)を支払っており,これは,本件各契約に基づく報酬の一部についての弁済であると主張する。
被告Y1は,平成20年4月頃,原告から本件各契約の報酬内金の支払を求められたため,原告に対して報酬内金として1億2600万円を支払った旨の供述をしているところ,その支払の時期も報酬額も被告G&L及び被告Lam’sの原告への支払の事実と一致している上に,被告G&L及び被告Lam’sが原告に対して支払った金額は立替金部分を除くといずれも6300万円であり(前提となる事実(4)及び(5)),原告も,本件各契約の報酬として被告G&L名義で6300万円の支払を受けたことを自認しており,被告Lam’sが原告に支払った6825万円の内の6300万円部分については本件契約に基づく報酬に対する弁済とは異なると理解すべき事情も認められず,実際に,原告は,本件MBOが失敗した後に,被告らに対し,被告らの保有するシャルレの株式の時価総額(平成20年12月31日時点の株価により計算)にそれぞれレーマン方式に本件料率を適用して算出した金額の総額から1億2000万円を控除した報酬残金を請求している(乙1の2)ことから,被告Lam’sの原告に対する6300万円の支払を含む1億2600万円全額について,本件各契約の報酬に対する弁済であると認めることが相当である。
(2)  原告は,原告が被告Lam’sとの間で本件アドバイザリー契約を締結しており,被告Lam’sが本件アドバイザリー契約に基づく報酬として6300万円を支払ったと主張する。
この点について,Aは,被告Lam’sに対する支払が本件アドバイザリー契約に基づく報酬であると供述するほか,被告らに対して交付した本件各契約に基づく報酬の請求書において1億2000万円を控除したことについては記載のミスであると供述するが,その供述内容が必ずしも明確ではないばかりか,そのような数千万円もの多額の弁済について記載を誤ったとは容易に認めがたい。また,Aは,被告らに対して1億2000万円を控除して請求したことについて,値引きをした趣旨であると供述するが,前記1(5)ウで認定した事実及び乙1の2によれば,原告の送付した請求書の摘要欄に明示的に報酬割引との記載があり,請求書明細においては内金控除として1億2000万円の記載があることが認められ,この事実と整合しないAの供述は採用できない。
かえって,原告と被告Lam’sは平成19年12月18日付けでアドバイザリー契約書を交わしているが(甲5),前記1で認定したとおり,同日頃には,原告と被告らは,原告が株主総会対策,本件MBO,相続税対策を対象とするコンサルティング業務を行うことを目的として本件各合意書を作成しており,原告は株主総会対策を終えていたのであるから,同時点において,あらためて被告Lam’sとの間で本件合意書3と内容の重複する本件アドバイザリー契約を締結する必要が乏しいと考えられるし,Aが供述する本件アドバイザリー契約に基づく業務内容は本件各契約と重複するものも多く,原告が本件契約に基づくコンサルティング業務とは別に,被告Lam’sに対して,6300万円もの報酬を受けるような業務を実際に行ったとは到底認めがたいし,それを裏付ける的確な証拠もなく,本件アドバイザリー契約の報酬が6000万円であると算定された経緯も根拠も判然としない。
Aは,本件アドバイザリー契約にMの相続対策も含まれてると供述するが,被告Y3と被告Y4は,平成20年8月25日,Mの遺産分割協議書を作成し,遺産分割協議が成立した(乙14)ところ,原告が同遺産分割協議に関与したことを裏付ける的確な証拠はない。
他方,被告らは,本件各契約に基づく報酬の内金を支払うにあたり,損金処理をするために被告Lam’s名義で支払うことにしたため,税理士の指導を受けて,本件アドバイザリー契約を締結したと主張し,被告Y1も同旨の供述をするところ,相応の合理性があり,これを排斥するだけの確たる証拠もない。
そうすると,Aの供述やアドバイザリー契約書によっても,前記6300万円が本件合意に基づく報酬内金の弁済であったとの認定を左右しないというべきである。したがって,原告の主張は採用できない。
8  被告らが原告に対して支払うべき報酬残額
(1)  前記2から7までの検討によれば,被告らは原告に対し,本件各契約に基づき,平成20年12月31日のシャルレの株価を基準として,本件料率認定分を適用したレーマン方式によって算出された報酬を支払うべきである。
また,被告らは,原告に対し,本件各契約に基づき,原告が立替払いした①NERO Partnersに対する報酬5134万4918円(甲12),②c法律事務所に対する報酬122万6250円,③原告らの交通費宿泊費等148万8880円及び④雑費60万円を支払うべきである。
他方,被告らは,原告に対し,被告G&L及び被告Lam’sを通じて,本件各契約に基づく報酬の内金として1億2600万円を弁済している(前記7)ほか,原告も自認するとおり,アーンストアンドヤングに対する報酬の立替金についての過払金22万6894円の返還請求権を有するのであり,これらを被告らが原告に対して支払うべき金額から控除する必要がある。
(2)  被告らの支払うべき報酬額
ア 被告Y1
被告Y1は,シャルレの株式を95万7100株有していることが認められるから(前提となる事実(1)ウ),平成20年12月31日の時価総額は,3億6944万0600円であり,本件料率認定分を適用したレーマン方式によれば,1408万3218円と計算される。
イ 被告Y2
被告Y2は,シャルレの株式を103万7699株有していることが認められるから(前提となる事実(1)エ),平成20年12月31日の時価総額は,4億0055万1814円であり,本件料率認定分を適用したレーマン方式によれば,1501万6554円と計算される。
ウ 被告Y3
被告Y3は,シャルレの株式を150万8925株有していることが認められるから(前提となる事実(1)オ),平成20年12月31日の時価総額は,5億8244万5050円であり,本件料率認定分を適用したレーマン方式によれば,2006万1126円と計算される。
エ 被告Y4及び被告Y5
被告Y4及び被告Y5は,シャルレの株式を各自95万4700株ずつ有していることが認められるから(前提となる事実(1)カ,キ),平成20年12月31日の時価総額は,それぞれ3億6851万4200円であり,本件料率認定分を適用したレーマン方式によれば,1405万5426円と計算される。
オ 被告G&L
被告G&Lは,シャルレの株式を380万2432株有していることが認められるから(前提となる事実(1)ク),平成20年12月31日の時価総額は,14億6773万8752円であり,本件料率認定分を適用したレーマン方式によれば,3985万4775円と計算される。
カ 被告Lam’s
被告Lam’sは,シャルレの株式を158万1050株有していることが認められるから(前提となる事実(1)ケ),平成20年12月31日の時価総額は,6億1028万5300円であり,これに本件料率認定分を乗じると,2075万7133円と計算される。
(3)  被告らの支払うべき報酬金額から控除されるべき金額
弁論の全趣旨によれば,原告は,被告らに対して有する本件契約に基づく立替金請求権について,被告G&Lからの6300万円の支払によりすでに弁済済みであるとして,残りの報酬を請求していること,被告らは,報酬内金として1億2600万円を支払ったと認識し,かつ,本件契約に基づき原告が立て替えた立替金を支払うべき義務を負うが,同立替金請求権は被告G&L及び被告Lam’sによる1億2600万円の支払の時点で既に生じていたこと等が認められ,これらの事実に照らせば,被告らが支払った報酬内金合計1億2600万円から原告の被告らに対して有する立替金請求権の残額である5443万3154円(前記過払金22万6894円を控除したもの。)を差し引き,その残金7156万6846円を前記(2)で計算した報酬額から控除した残額について,被告らが支払義務を負うと解することが相当である。そして,前記の1億2600万円の内金弁済については,被告G&Lと被告Lam’s名義とされているが,被告らも形式的なものと自認していることから,被告ら各自がそれぞれ負う報酬金債務の額で案分して充当することが相当である。したがって,前記7156万6846円を被告らが負担する報酬金額で割り付けた額が,被告ら各自の報酬金債務から控除されるべき金額であるといえる。この控除されるべき金額を計算すると,被告Y1は730万9724円,被告Y2は779万4161円,被告Y3は1041万2485円,被告Y4及び被告Y5はそれぞれ729万5299円,被告G&Lは2068万6139円,被告Lam’sは1077万3739円の控除となる。
(4)  前記(2),(3)の検討によれば,原告は被告らに対して次の金額を請求することができる。
ア 被告Y1
1408万3218円-730万9724円=677万3494円
イ 被告Y2
1501万6554円-779万4161円=722万2393円
ウ 被告Y3
2006万1126円-1041万2485円=964万8641円
エ 被告Y4及び被告Y5
1405万5426円-729万5299円=676万0127円
オ 被告G&L
3985万4775円-2068万6139円=1916万8636円
カ 被告Lam’s
2075万7133円-1077万3739円=998万3394円
9  争点(7)(本案前の抗弁)について
被告らは,原告代理人が,被告らのために原告との間で委任契約を締結したが,本件訴訟でその委任契約に基づく費用を請求していることから,弁護士法25条1号又は2号に該当し,本件訴訟提起が無効であると主張する。
しかし,原告は,本件訴訟において,被告らに対し,コンサルティング業務を行う旨の本件合意に基づいて,約定の報酬やこれに要した経費相当額の支払を求めているのであって,このうちの一部について原告訴訟代理人に事務処理を依頼したことによって生じた費用が含まれるとしても,弁護士法25条1号又は2号に該当することはないというべきである。
したがって,被告らの主張する本案前の抗弁については理由がない。
10  以上によれば,原告の請求は主文掲記の限度で理由があるから,これを認容し,その余を棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 齋藤清文 裁判官 西村修 裁判官 大谷智彦)

 

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