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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(153)平成26年 1月17日 東京地裁 平22(ワ)5259号 損害賠償請求事件(甲事件本訴)、手数料支払等請求事件(甲事件反訴)、損害賠償等請求事件(乙事件)

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(153)平成26年 1月17日 東京地裁 平22(ワ)5259号 損害賠償請求事件(甲事件本訴)、手数料支払等請求事件(甲事件反訴)、損害賠償等請求事件(乙事件)

裁判年月日  平成26年 1月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)5259号・平22(ワ)44060号・平24(ワ)13179号
事件名  損害賠償請求事件(甲事件本訴)、手数料支払等請求事件(甲事件反訴)、損害賠償等請求事件(乙事件)
裁判結果  甲事件本訴請求棄却、甲事件反訴一部認容、乙事件請求棄却  文献番号  2014WLJPCA01178012

要旨
◆X1社が、弁護士Y1及び不動産売買仲介業者Y3社の欺罔行為により委任していない事務の手数料を支払わされたとして損害賠償又は不当利得返還を求めた(本訴)のに対し、Y3社が、X1社代表者Aから買い受けた不動産の売買契約事務及び賃貸管理業務をX1社から委託されたとして事務手数料の支払を求めた(反訴)事案において、Y1から受任時に報酬の説明を受けたAはこれを了解し、当事者間では仲介手数料相当額をY1及びY3社の報酬としてX1社から支払うことが合意され、X1社とY3社間では賃貸管理業務の委託報酬額につき合意がされていたから、Y1がX1社から仲介手数料相当額を騙取したとかY1に不当利得があるとはいえない一方、X1社はY3社に対する未払報酬額の支払義務を負うなどとして、本訴請求を棄却し反訴請求を一部認容した事例(甲事件)
◆X1社及びX2社が、Y3社の代表取締役Y2は委任契約上の善管注意義務に反してX1社の預金口座からY3社の口座に送金したとして、Y3社については不当利得の返還を、Y2については委任契約の債務不履行による損害賠償をそれぞれ求めた事案において、X各社とY3社との間ではX各社所有の各物件についての賃貸管理業務委託契約の締結が認められ、Y3社は各契約の履行に伴いX各社が支出すべき費用を立て替えていたから、Y2がX各社名義の預金口座からY3社名義の預金口座に送金したことには理由がある上、X各社は具体的な損失又はY3社の利得を主張立証せず、Y3社に法律上の原因なく利得したと認めるに足りる証拠もないとして、各請求を棄却した事例(乙事件)

参照条文
民法415条
民法643条
民法644条
民法656条
民法703条
民法719条1項

裁判年月日  平成26年 1月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)5259号・平22(ワ)44060号・平24(ワ)13179号
事件名  損害賠償請求事件(甲事件本訴)、手数料支払等請求事件(甲事件反訴)、損害賠償等請求事件(乙事件)
裁判結果  甲事件本訴請求棄却、甲事件反訴一部認容、乙事件請求棄却  文献番号  2014WLJPCA01178012

平成22年(ワ)第5259号 損害賠償請求事件(甲事件本訴)
平成22年(ワ)第44060号 手数料支払等請求事件(甲事件反訴)
平成24年(ワ)第13179号 損害賠償等請求事件(乙事件)

東京都港区〈以下省略〉
甲事件本訴原告・反訴被告,乙事件原告 ニュークリウス株式会社(以下「原告ニュークリウス」という。)
上記代表者代表取締役 A
福岡県久留米市〈以下省略〉
乙事件原告 株式会社プラスティド(以下「原告プラスティド」という。)
上記代表者代表取締役 A
上記2名訴訟代理人弁護士 村林俊行
同 川﨑健一郎
東京都中央区〈以下省略〉
甲事件本訴被告 Y1(以下「被告Y1」という。)
東京都中央区〈以下省略〉
甲事件本訴被告・反訴原告,乙事件被告 株式会社ジービーエイトハウジング(以下「被告ジービーエイト」という。)
上記代表者代表取締役 Y2
さいたま市〈以下省略〉
乙事件被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士 山﨑雄一郎
同 田中純一郎
同 髙田康章

 

 

主文

1  甲事件における原告ニュークリウスの本訴請求をいずれも棄却する。
2  原告ニュークリウスは,被告ジービーエイトに対し,201万5529円並びにうち65万1000円に対する平成18年12月1日から,うち130万0079円に対する平成19年8月17日から,うち6万4450円に対する平成22年12月3日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  甲事件における被告ジービーエイトのその余の反訴請求を棄却する。
4  乙事件における原告らの各請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,甲事件の本訴反訴及び乙事件を通じてこれを20分し,その1を原告プラスティドの負担とし,その余を原告ニュークリウスの負担とする。
6  この判決の第2項は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  甲事件本訴
(1)  主位的請求
被告Y1及び被告ジービーエイトは,原告ニュークリウスに対し,連帯して961万6648円及びこれに対する平成18年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  予備的請求
ア 被告Y1は,原告ニュークリウスに対し,544万6500円及びこれに対する平成18年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告ジービーエイトは,原告ニュークリウスに対し,417万0148円及びこれに対する平成18年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  甲事件反訴
原告ニュークリウスは,被告ジービーエイトに対し,201万5529円並びにうち65万1000円に対する平成18年12月1日から,うち130万0079円に対する平成19年8月17日から,うち6万4450円に対する同年9月11日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  乙事件
(1)  被告ジービーエイト及び被告Y2は,各自,原告ニュークリウスに対し,445万0659円及びこれに対する乙事件の訴状送達の日の翌日(平成24年5月31日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  被告ジービーエイト及び被告Y2は,各自,原告プラスティドに対し,52万4010円及びこれに対する乙事件の訴状送達の日の翌日(平成24年5月31日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
甲事件(本訴)は,原告ニュークリウスが弁護士である被告Y1及び不動産売買の仲介業者である被告ジービーエイトに対し,主位的には,上記両名の欺罔行為により,委任していない事務の手数料を支払わされたと主張して,共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,連帯して961万6648円及びこれに対する平成18年12月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的には,不当利得返還請求権に基づき,被告Y1に対し544万6500円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息,被告ジービーエイトに対し417万0148円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払を求める事案である。
甲事件(反訴)は,被告ジービーエイトが原告ニュークリウスに対し,同社がA(以下「A」という。)から買い受けた不動産の売買契約事務及び賃貸管理業務を原告ニュークリウスから委託されたと主張し,売買に関する上記業務委託契約に基づき,事務手数料65万1000円及びこれに対する平成18年12月1日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金,賃貸管理に関する上記業務委託契約に基づき,事務手数料130万0079円及びこれに対する平成19年8月17日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金,並びに同業務委託契約に基づき,立替金6万4450円及びこれに対する同年9月11日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
乙事件は,原告ニュークリウスが被告ジービーエイト及び同社の代表取締役である被告Y2に対し,被告Y2が委任契約上の善管注意義務に反して原告ニュークリウスの預金口座から被告ジービーエイトの口座に送金したとして,被告ジービーエイトについては不当利得返還請求権に基づき,被告Y2については委任契約の債務不履行による損害賠償請求権に基づき,各自445万0659円及びこれに対する乙事件の訴状送達の日の翌日(平成24年5月31日)から支払済みまで民法所定の年5分の利息又は遅延損害金を,原告プラスティドが被告ジービーエイト及び被告Y2に対し,被告Y2が善管注意義務に反して原告プラスティドの預金口座から被告ジービーエイトの預金口座に送金したとして,被告ジービーエイトについては不当利得返還請求権に基づき,被告Y2については委任契約の債務不履行による損害賠償請求権に基づき,各自52万4010円及びこれに対する乙事件の訴状送達の日の翌日(平成24年5月31日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息又は遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  当事者等(甲12,47,乙40)
ア 原告ニュークリウスは,同社の現代表取締役であるAが所有する物件で既に競売開始決定されていた不動産の任意売却を受ける受皿会社として,同人が代表者を務めるジーンアンドルミナス有限会社(以下「ルミナス」という。)から出資を受けて,平成18年8月7日に設立された株式会社である。
原告プラスティド(以下,原告ニュークリウスと併せて「原告各会社」という。)も,同社の現代表取締役であるAが所有する物件で既に競売開始決定されていた不動産の任意売却を受ける受皿会社として,ルミナスから出資を受けて,同年9月27日に設立された株式会社である。
イ 被告Y1は,弁護士である。
ウ 被告ジービーエイトは,不動産売買の仲介等を業とする株式会社である。
被告Y2は,被告ジービーエイトの代表取締役であり,被告Y1からAに紹介され,原告各会社の代表取締役に就任したが,その後,Aにその地位を交替した。
(2)  A所有の不動産に対する競売開始決定等(甲13[枝番号を含む。],乙10,15~17,41,丙62,63)
ア Aは,平成10年,①東京都港区南青山所在の土地及び建物(以下,これらの土地建物を「南青山物件」という。),②富山市所在の土地及び建物(以下,これらの土地建物を「富山物件」という。),③鹿児島県阿久根市所在の土地及び建物(以下,これらの土地建物を「阿久根物件」という。),④福岡県久留米市所在の土地及び建物(以下,これらの土地建物を「久留米物件」という。),⑤鹿児島市樋之口町所在の土地及び建物(以下,これらの土地建物を「樋之口物件」という。),⑥鹿児島県姶良郡加治木町所在の土地及び建物(以下,これらの土地建物を「加治木物件」という。)等の賃貸不動産,並びに株式会社りそな銀行(以下「りそな銀行」という。)を債権者とする8億円程度の債務を相続した。りそな銀行は,前記債務を担保するため,南青山物件に根抵当権を有していた。
イ りそな銀行は,Aが前記債務の弁済を滞るようになったことから,平成16年12月20日に富山物件,久留米物件及び加治木物件を,平成17年2月8日に樋之口物件をそれぞれ仮差押えた。
さらに,りそな銀行は,前記根抵当権に基づき南青山物件の競売を申し立て,同物件は,同年2月28日,東京地方裁判所により担保不動産競売開始決定を受けた。南青山物件の競売入札期間は,平成18年9月14日から同月21日までとされていた。
りそな銀行は,富山物件,久留米物件,樋之口物件及び加治木物件についてそれぞれ強制競売を申し立て,富山物件は平成17年11月21日に富山地方裁判所により,久留米物件は同月14日に福岡地方裁判所久留米支部により,樋之口物件は同月25日に鹿児島地方裁判所により,加治木物件は同日同裁判所加治木支部によりそれぞれ強制競売開始決定を受けた。富山物件の競売入札期間は,平成18年9月6日から同月13日までとされていた。
りそな銀行は,阿久根物件についても仮差押えをし,同物件は,同銀行の申立てにより強制競売が開始されていたが,剰余の見込みがなく開始決定は取り消された。また,同年7月の時点において,加治木物件も既に競売開始決定が取り消されており,久留米物件及び樋之口物件についても剰余の見込みがなく競売開始決定が取り消されることが予想されていた。
ウ また,Aが固定資産税等の支払を滞らせたため,東京都は平成17年6月2日に南青山物件,同年12月12日に加治木物件,同月26日に樋之口物件を,富山市は同月5日に富山物件をそれぞれ差し押さえた。
(3)  Aの被告Y1に対する委任
Aは,平成18年7月,被告Y1に対し,南青山物件等の前記(2)の競売による売却を回避するため,Aが実質的に出資する新会社に各物件を任意売却することを主な目的とし,りそな銀行等の関係機関との交渉,新会社の設立及びこれに関連する事務を委任し(以下「本件委任」という。),着手金として100万円を支払った。
(4)  新会社への任意売却等(甲6の1,6の2,13[枝番号を含む。],乙15~17,35~39[枝番号を含む。])
原告ニュークリウスは,南青山物件等を買い受けるため,平成18年8月7日に設立され,オリックス株式会社(以下「オリックス」という。)から3億2000万円の融資を受けて,同年9月14日,Aから南青山物件を3億0087万円(消費税込),富山物件を6000万円(消費税込)でそれぞれ買い受けた。原告ニュークリウスは,同日,被告Y1が調整した配当手続に従い,りそな銀行に合計3億2766万8044円を弁済し,これを受けた同銀行は,前記各物件の各競売申立てを取り下げ,南青山物件の根抵当権を放棄した(ただし,りそな銀行は,Aの残債務については免除していない。)。また,りそな銀行は,阿久根物件,樋之口物件及び加治木物件について,同日,仮差押えの取下げの対価として各物件につき50万円ずつの支払を受け,前記各物件の仮差押えをそれぞれ取り下げ,久留米物件についても,50万円の支払を受けるのと引き替えに,同年10月27日,仮差押えを取り下げた。
原告ニュークリウスは,Aから阿久根物件も譲受け,南青山物件,富山物件及び阿久根物件にオリックスを根抵当権者とする根抵当権を設定した。
滞納処分による差押えをしていた東京都及び富山市は,滞納していた未納税の一部弁済を受け,前記(2)ウの各差押えをそれぞれ解除した。
原告プラスティドは,同年9月27日に設立され,同年10月13日,Aから久留米物件,樋之口物件及び加治木物件を譲り受けた。
(5)  Aの原告ニュークリウスに対する送金等(甲1~4,9,10の3~10の5)
原告ニュークリウスは,平成18年11月28日,被告Y1から,売買契約の仲介手数料の名目で,南青山物件について943万円,富山物件について189万円を,同月29日,被告ジービーエイトから,南青山物件の賃貸借契約事務代行手数料87万3148円を支払うようそれぞれ請求され,Aは,同月30日,ルミナスの預金口座から原告ニュークリウスの預金口座に700万円を送金し,送金を受けた原告ニュークリウスは,同年12月1日,被告Y1に対し406万9500円,被告ジービーエイトに対し210万円及び87万3148円(合計297万3148円)をそれぞれ送金した。
さらに,Aは,同月15日,ルミナスの預金口座から原告ニュークリウスの預金口座に289万8000円を送金し,送金を受けた原告ニュークリウスは,同月22日,被告Y1に対し137万7000円,被告ジービーエイトに対し119万7000円をそれぞれ送金した。
2  争点
(1)  原告ニュークリウスの被告Y1に対する請求(甲事件本訴[主位的請求・予備的請求])
Aは,被告Y1との間で,本件委任の報酬として,不動産の仲介手数料相当額を支払う旨の合意をしたか。
原告ニュークリウス及びAは,被告Y1との間で,前記の報酬の清算方法として,原告ニュークリウスがAに支払うべき売買代金のうち前記仲介手数料相当額の金員を被告Y1に支払う旨の合意をしたか。
(2)  原告ニュークリウスの被告ジービーエイトに対する請求(甲事件本訴[主位的請求・予備的請求]),被告ジービーエイトの原告ニュークリウスに対する請求(甲事件反訴)
原告ニュークリウスないしAは,被告ジービーエイトに対し,南青山物件及び富山物件の売買契約に関する事務を委託したか。
原告ニュークリウスは,被告ジービーエイトに対し,南青山物件,富山物件及び阿久根物件の賃貸管理業務を委託したか。
原告プラスティドは,被告ジービーエイトに対し,久留米物件,樋之口物件及び加治木物件の賃貸管理業務を委託したか。
(3)  原告各会社の被告ジービーエイト及び被告Y2に対する各請求(乙事件)
被告Y2は,原告各会社の代表取締役として,善管注意義務に反し,原告各会社の預金口座から被告ジービーエイトの預金口座に送金したか。
3  当事者の主張
(1)  争点(1)(原告ニュークリウスの被告Y1に対する請求)について
(原告ニュークリウスの主張)
ア 不法行為による損害賠償請求(甲事件本訴[主位的請求])
被告ジービーエイト及び被告Y1は,原告ニュークリウスが前記被告らに南青山物件及び富山物件の売買契約事務及び賃貸借契約締結事務を委任しておらず,前記被告らが前記事務を行った事実がないにもかかわらず,被告Y1がAから別の事務を受任していたことを奇貨として,共同して,前記事務を行ったかの如く装って,平成18年11月28日に南青山物件の売買契約手数料として943万円,同日に富山物件の売買契約手数料として189万円,同月29日に南青山物件の2階,301号室及び302号室の賃貸借契約事務代行手数料として87万3148円をそれぞれ請求し,原告ニュークリウスに誤信させ,同年12月1日に704万2648円,同月22日に257万4000円をそれぞれ前記被告らに支払わせ,これを騙取した。これにより,原告ニュークリウスは961万6648円の損害を被った。
仮に,前記961万6648円全額が損害とならなくとも,被告Y1の合理的な報酬額は200万円を上回ることはないことから,961万6648円から200万円を控除した761万6648円が損害となる。
イ 不当利得返還請求(甲事件本訴[予備的請求])
被告Y1は,原告ニュークリウスから法律上の原因なく合計544万6500円を受領した。
すなわち,Aと被告Y1との間において,Aが被告Y1に対し不動産の仲介手数料相当額の報酬を支払うとの合意はなく,原告ニュークリウスがAに支払うべき仲介手数料相当額の売買代金の未払分を被告Y1に支払うとの清算合意もない。被告Y1は,原告ニュークリウスに対し,売買契約の手数料として請求したのであって(甲1,2),被告Y1,被告ジービーエイト及びAとの間に合意書や報酬に関する領収書,清算合意を裏付ける書面は存在しない。
また,原告ニュークリウスは本件委任時に設立されておらず,契約の主体とはなり得なかったのであるし,被告Y1も自認しているとおり,原告ニュークリウスと被告Y1との間には仲介契約は存在しないのであるから,被告Y1は原告ニュークリウスに仲介手数料等を請求することはできない。
なお,Aが仲介手数料相当額の支払義務があることを認めたと被告Y1らが主張する書面(乙2,丙2)は,Aの署名や押印がなく,ファックス送信履歴の記載もなく封書による送付かも不明なものであり,Aが作成したものではない。
また,原告ニュークリウスが被告Y1に送金した当時,原告ニュークリウス及び被告ジービーエイトの代表取締役はいずれも被告Y2であり,被告Y1が被告ジービーエイトの手数料分も請求する書面(甲1,2)を作成していることからも明らかなとおり,原告ニュークリウス,被告Y1及び被告ジービーエイトは,互いに利益を融通し合う関係にあったことから,原告ニュークリウスが被告Y1に合計544万6500円を送金したからといって,前記合意があったとの裏付けにはならない。
仮に,Aが被告Y1に委任した南青山物件等の任意売却について,Aに成功報酬を支払う義務があるとしても,200万円を超えて支払う合意はないし,仮に,同金額を超えて支払う旨の合意が成立していたとしても,被告Y1が行った事務処理は既定事項を遂行したにすぎないから,同金額を超える部分は暴利行為として無効となることから,少なくとも344万6500円は被告Y1の法律上の原因のない利得となる。
(被告Y1の主張)
被告Y1は,平成18年7月21日,Aから同人の債務整理及びこれに関連する同人所有の競売申立てされた各不動産の任意売却について委任を受けた。被告Y1は,Aとの間で,同委任契約の着手金について100万円,報酬について前記各不動産を任意売却できた場合に債権者であるりそな銀行が債権額から控除することを認めることを条件に,仲介手数料相当額(売買代金の3%に6万円を加えた額)とする旨の合意をした。なお,被告Y1がAから委任を受けた債務整理は,債務免除を主眼としたものではなく,資産と負債の関係を見直し,資産価値に相応する負債を負担して,各資産の賃料収入で各々負った負債を弁済することができる状態にするというものであった。
被告Y1は,前記委任契約に基づき,りそな銀行と交渉し,原告ニュークリウスが,南青山物件については3億0087万円,富山物件については6000万円でそれぞれ買い受け,前記売買代金から同銀行にAの債務を一部弁済するのと引き替えに競売申立てを取り下げさせた。また,被告Y1は,りそな銀行との交渉により,同銀行に支払うべき弁済金からAの引越費用として100万円,被告Y1に対する弁護士報酬等の費用として仲介手数料相当額,南青山物件の動産の撤去費用を控除させた。また,被告Y1は,東京都及び富山市と交渉し,滞納していた未納税の一部を支払って,滞納処分による差押えの解除をさせた。
被告Y1,A及び原告ニュークリウスは,同社がAに支払うべき売買代金のうち仲介手数料相当額を被告Y1及び被告ジービーエイトに支払う旨の合意をし,同合意に基づき,Aが原告ニュークリウスに資金を送金し,原告ニュークリウスが被告Y1及び被告ジービーエイトに送金をした。
(2)  争点(2)(原告ニュークリウスの被告ジービーエイトに対する請求,被告ジービーエイトの原告ニュークリウスに対する請求)について
(原告ニュークリウスの主張)
ア 不法行為による損害賠償請求(甲事件本訴[主位的請求])
前記(1)アと同じ。
イ 不当利得返還請求(甲事件本訴[予備的請求]・甲事件反訴に対する反論)
被告ジービーエイトは,原告ニュークリウスから法律上の原因なく合計417万0148円を受領した。
被告ジービーエイトは,原告ニュークリウスから売買契約の事務を委託されたと主張するが,売買契約の事務を委託したことを証する契約書等は作成されておらず,被告ジービーエイトが不動産売買に関する手数料等を請求した相手方は,当時原告ニュークリウスの代表取締役ではなかったA個人であって原告ニュークリウスではない(ただし,Aに支払義務があることを認めるものではない。)。また,南青山物件及び富山物件の売買契約を仲介したのは有限会社リライアンスであり,被告ジービーエイトではない(甲6の1,6の2)。仮に,被告ジービーエイトが何らかの売買契約事務を行ったとしても被告Y1の履行補助者又は下請けとしての事務であり,原告ニュークリウスに請求できるものではない。
また,被告ジービーエイトは,同社が原告ニュークリウスから南青山物件等の賃貸管理業務を委託されたと主張するが,契約書等は作成されておらず,提案書(甲8)にあるような管理業務委託契約は締結されていない。実際,南青山物件等の管理業務を行っていたのは,ルミナスであり,仮に,被告Y2らが何らかの賃貸管理業務を行っていたとしても,それは原告ニュークリウスの業務として行ったものであり,被告ジービーエイトの業務として行ったものではない。原告ニュークリウスの代表取締役であった被告Y2は,被告ジービーエイトの代表取締役でもあり,同社の従業員を原告ニュークリウスの役員として連れてきたのであるから,原告ニュークリウスのみでも賃貸管理業務を行うことは可能であったし,前記のとおり,南青山物件等の管理業務は従前からルミナスが行ってきたのであり,被告ジービーエイトに委託する必要性もなかった。また,被告ジービーエイトは,原告ニュークリウスに対し,平成18年11月29日付けで契約事務代行手数料の請求をしているが(甲3),当時,原告ニュークリウス及び被告ジービーエイトの代表取締役はともに被告Y2であり,原告ニュークリウスにおいて行った業務を名目上,被告ジービーエイトの請求書として発行したに過ぎない。なお,Aは,平成19年1月17日,「管理手数料として入金額の5%をお願いしたいと思います」との内容のファックス(丙5)をしているが,当時,Aは原告ニュークリウスの代表取締役ではなく,業務執行決定権限を有していなかった以上,法的意味を持たない。
(被告ジービーエイトの主張)
ア 業務委託契約に基づく報酬請求(甲事件反訴・甲事件本訴[予備的請求]に対する反論)
被告ジービーエイトは,債務整理を被告Y1に委任したAから要請され,平成18年7月,Aから,南青山物件,富山物件及び阿久根物件を任意売却するための調査支援業務,売却先の受皿会社の設立・管理運営等を受託した。任意売却及びこれに関連する業務の報酬は,被告Y1の分と合計し,売買代金の仲介手数料相当額とされた。
また,被告ジービーエイトは,同年10月10日までに,原告ニュークリウスとの間において,同社が買い受けた南青山物件,富山物件及び阿久根物件の各賃貸管理業務を受託した。賃貸管理業務の報酬について,被告ジービーエイトは各月賃料の10%とする提案をしたが,原告ニュークリウスを実質的に支配するAから5%とすることの申入れを受けており,被告ジービーエイトと原告ニュークリウスとの間において,少なくとも各物件の各月賃料の5%とする旨の合意がある。
したがって,南青山物件の売買契約事務の報酬は329万7000円,富山物件の売買契約事務の報酬は65万1000円,平成18年9月から平成19年7月分までの賃貸物件の管理業務の報酬は130万0079円(丙10),南青山物件の立替費用は3万1041円,阿久根物件の立替費用は3万3409円(丙11)であるから,既に支払を受けた329万7000円を控除した残金201万5529円の支払を求める。
イ 原告ニュークリウスの請求に対する認否等(甲事件本訴[主位的請求])
否認ないし争う。
(3)  争点(3)(原告各会社の被告ジービーエイト及び被告Y2に対する各請求[乙事件])について
(原告各会社)
原告各会社は,被告ジービーエイトに対し,原告各会社がAから買い受けた不動産の賃貸管理業務を委託していない。
にもかかわらず,被告Y2は,原告ニュークリウスの代表取締役の善管注意義務に違反し,正当な理由なく,平成19年3月から同年8月頃までの間,原告ニュークリウス名義の預金口座から合計445万0659円を,平成18年10月から平成19年8月頃までの間,原告プラスティド名義の預金口座から合計52万4010円を被告ジービーエイト名義の預金口座に送金した。
(被告ジービーエイト及び被告Y2)
送金の事実は認めるが,前記(2)のとおり,被告ジービーエイトは,前記各業務を受託し,各業務委託契約に基づく支払又は立替払の清算のため,原告各会社の預金口座から出金した(丙46~61)。
したがって,被告Y2に善管注意義務違反はなく,被告ジービーエイトに不当利得もない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
証拠(各項目に記載)及び弁論の全趣旨によれば,前記第2の1の前提事実に加え,次の事実を認めることができる。
(1)  Aが被告Y1に相談する以前の経緯(甲47~53[枝番号を含む。],乙6~10[枝番号を含む。],原告各会社の代表者Aの供述)
Aは,競売によって南青山物件等の所有権を失うことを回避するため,同人が実質的に出資する新会社に任意売却し,その売買代金を原資としてりそな銀行に弁済し,競売申立てを取り下げさせることを目的として,コンサルタント会社や弁護士に相談したり,りそな債権回収株式会社(以下,同社についても「りそな銀行」という。)やオリックスからの融資を斡旋するオリックス・アルファ株式会社(以下,同社についても「オリックス」という。)と交渉したりしていたが,望むように進展せず,平成18年3月頃,被告Y1とは別の弁護士に委任したものの奏功せず,同年7月,弁護士大観で調べ,被告Y1が所属する法律事務所の債務整理を得意とする弁護士に相談をすることにした。
(2)  被告Y1の受任時の説明等(甲14の1,14の2,47,乙2,41,丙2,原告各会社の代表者A及び被告Y1の各供述)
Aは,平成18年7月下旬頃,被告Y1が所属する法律事務所を訪れ,同人に対し,前記(1)と同じ目的で,本件委任をした。
その際,被告Y1は,委任契約書等を作成せず,Aに対し,南青山物件等を任意売却することができた場合には,仲介手数料相当額である不動産売買代金の3%を支払ってもらう旨を述べ,Aはこれを了承した。
(3)  被告Y1及び被告ジービーエイトの行った事務内容等(甲6[枝番号を含む。],14[枝番号を含む。],21,乙11~13,18~31[枝番号を含む。],33,丙12[枝番号を含む。],21,22,67~70,被告Y1及び被告Y2の各供述)
被告Y1は,Aに対し,南青山物件等を買い受ける受皿会社の代表取締役候補として,不動産業者である被告ジービーエイトの代表取締役である被告Y2を紹介し,被告Y2及び被告ジービーエイトとともに本件委任を遂行することを話した。また,被告Y1,A及び被告Y2との間において,受皿会社は,Aが実質的に出資して設立し,将来的にAが代表取締役となることが予定されていた。
被告Y1は,受任後,りそな銀行,オリックス及び税事務所等と交渉し,りそな銀行からは南青山物件を入札方式により任意売却する場合には,競売の取下げ及び根抵当権の放棄をする旨の約束を取り付けた。
その後,被告Y1は,任意売却の準備を進めると同時に,平成18年8月7日,被告ジービーエイトに指示して原告ニュークリウスを設立させ,Aの承諾を得て,同社の代表取締役に被告Y2を就任させた。
同月21日,南青山物件について私的入札を行ったところ,原告ニュークリウスが2億9010万8000円,他の買受希望者が3億0087万円で入札したが,他の買受希望者が資金を調達できなかったことから,りそな銀行は,被告Y1に原告ニュークリウスが3億0087万円で買い取ることを打診した。
被告Y1は,りそな銀行との間で,原告ニュークリウスが南青山物件を3億0087万円で買い受けるとともに,富山物件を6000万円で買い受けることの事実上の約束を取り付けた上で,りそな銀行,東京都及び富山市との間で配当の調整を行った。りそな銀行は,仲介手数料の名目で被告Y1の弁護士報酬分を売買代金から控除することに異議を述べなかった。
被告ジービーエイトは,被告Y1の指示に従い,りそな銀行及びオリックスとの交渉に必要な資料等を準備したり,オリックスの融資条件を調えるために,各物件を調査したり,南青山物件の屋上のプレハブ撤去費用等の見積りを手配するなどして,任意売却のための準備を行った。
原告ニュークリウスは,売買代金について,オリックスから3億2000万円(ただし,融資手数料672万円控除)の融資を受けるほか,不足分はAから資金調達を受けることを予定していた。
原告ニュークリウスは,同年9月14日,Aから,南青山物件について3億0087万円,富山物件について6000万円で買い受けた。各売買契約の仲介は,被告Y1が紹介した有限会社リライアンスが行い,手数料として21万円(消費税込)が支払われた。被告Y1は,事前にA及びりそな銀行を含む関係者の同意を得ていた配分表に基づき,同日又はそれ以前に,南青山物件及び富山物件の売買代金合計3億6087万円の中から,りそな銀行に対し南青山物件分2億7575万1639円,富山物件分5191万6405円,阿久根物件,加治木物件及び樋之口物件の仮差押え取下料合計150万円を,東京都に対し378万7380円を,富山市に対し282万4800円を,オリックスに対し融資手数料672万円をそれぞれ支払ったほか,登記手続費用合計748万5873円を支払った(合計3億4998万6097円)。消費税,入居者保証金,仲介料(被告Y1らの報酬相当分。南青山物件分943万0423円,富山物件分189万2933円),引越費用(Aが南青山物件から退去するための費用),測量費用,抵当権抹消費用及び撤去費用の合計3153万5156円は後日支出ないし相殺処理されるものとされた。
(4)  被告Y1らとAとの間の報酬をめぐるやり取り等(甲1~4,9,10[枝番号を含む。],22[枝番号を含む。],乙2,丙2,5,6,原告各会社の代表者A及び被告Y1の各供述)
ア Aは,本件委任時に被告Y1から売却不動産の仲介手数料相当額である売買代金の3%を支払う必要があると聞いており,平成18年8月24日,被告Y1に対し,原告ニュークリウスから3億円の3%である900万円を被告Y1の成功報酬として支払う旨を書面(乙2,丙2)で伝えた。
また,Aは,南青山物件の売買契約の仲介手数料として943万0423円を,富山物件の仲介手数料として189万2933円を支払う旨の記載のある有限会社リライアンス及び被告ジービーエイト宛の同年9月8日付けの支払約定書と題する書面(丙6,8)にそれぞれ署名押印した。
被告Y1は,同年11月28日,原告ニュークリウス宛に各請求書(甲1,2)を発行し,南青山物件の売買契約手数料として(被告ジービーエイト分を含む。)943万円を,富山物件の売買契約手数料として(被告ジービーエイト分を含む。)189万円をいずれも被告Y1名義の口座に振り込むよう請求した。また,被告ジービーエイトは,同月29日,原告ニュークリウス宛に請求書(甲3)を発行し,南青山物件の賃貸借契約事務代行手数料87万3148円を支払うよう求めた。
被告ジービーエイトは,同月29日,Aに対し,1132万円(南青山物件につき943万円,富山物件につき189万円)を原告ニュークリウスに送金するよう依頼した。
Aは,同月30日,ルミナスの預金口座から原告ニュークリウスの預金口座に700万円を送金し,原告ニュークリウスは,同年12月1日,被告Y1に対し406万9500円(源泉所得税の一部を控除した額),被告ジービーエイトに対し210万円及び87万3148円(合計297万3148円)を送金した。
被告ジービーエイトは,同月7日,Aに対し,南青山物件の売買手数料の被告Y1及び被告ジービーエイトの各報酬額の内訳を示した上で,289万8000円が未払であるから,同額の金員を原告ニュークリウスに送金するよう求めた。
Aは,同月15日,ルミナスの預金口座から原告ニュークリウスの預金口座に289万8000円を送金し,原告ニュークリウスは,同月22日,被告Y1に対し137万7000円(源泉所得税の一部を控除した額),被告ジービーエイトに対し119万7000円を送金した。
また,Aは,平成19年1月17日,被告ジービーエイトに対し,「例のりそな銀行の話し合いの残金を来週中になんとかしたいので計算をお願いします」と伝え,残金の支払の意向があることを示した。
イ なお,原告ニュークリウスは,前記アの平成18年8月24日付けの書面(乙2,丙2)はAが作成したものではないと主張するが,原告各会社の代表者Aは,本人尋問において,自分の署名がないのは不思議に思っていると述べつつも,近いものを作った可能性もあると述べており(原告各会社の代表者A・7,8頁),必ずしも作成を否定していないこと,Aは,本件委任時に被告Y1から仲介手数料を支払う必要があることを聞いたとは述べており(同A・6頁),前記書面の内容とも整合すること,また,被告Y1は,同文書は,りそな銀行の打合せ結果を受けてAが作成し被告Y1に送ってきたものだと思うと述べていること(被告Y1・8,9頁)を考慮すると,同書面は,Aが作成したものであり,前記アのとおり認定することができる。
また,原告ニュークリウスは,前記アの同年9月8日付けの各支払約定書は,りそな銀行に仲介手数料相当額の控除を求めるための資料として作成したものであり,被告ジービーエイトらに支払うことを認めたものではないと主張するが,作成の趣旨がそのようなものであったか否かにかかわらず,少なくとも,Aは,その頃までに南青山物件の及び富山物件の各仲介手数料の金額を明確に認識していたと認めることができる。
(5)  南青山物件等の管理業務等(甲3,7,8,15,18,23~34[枝番号を含む。],38,41,43~46[枝番号を含む。],丙3~5,11,14~16[枝番号を含む。],18~20,23~62[枝番号を含む。],70,原告各会社の代表者A,被告Y1及び被告Y2の各供述)
ア Aは,平成18年10月10日,被告Y2に対し,原告ニュークリウス及び原告プラスティドの実印等を渡した。
イ 被告ジービーエイトは,原告ニュークリウスが南青山物件,富山物件及び阿久根物件を譲り受けたのに伴い,各賃借人に対し,賃貸人の変更手続を行った。その際,原告ニュークリウスは,賃借人に対し,管理会社はルミナスであると告知し,原則として,従前からルミナスが行っていた管理業務は継続してルミナスが行うこととされた。ただし,ルミナスが賃借人からの補修等の要望に対応しなかったり,適切な補修や管理がなされていないとして,賃借人が原告ニュークリウスに苦情を述べたり,賃料の減免を求めたりすることが度々あり,その場合は,被告ジービーエイトが賃借人に対応し,補修費用を立て替えることもあった。
A及び被告Y2らは,当初,南青山物件の管理等について定期的に打合せの機会を持っていたが,しばらくして,Aは,打合せに参加しなくなった。また,Aと被告ジービーエイトの担当者は,物件の管理をめぐって意見が対立することもあり,Aは,被告ジービーエイトの担当者からの問合せに応答しないこともあった。
ウ 被告ジービーエイトは,同社が行う賃貸管理の報酬額について,原告各会社を実質的に支配するAとの間で取り決めていなかったことから,同年11月16日,Aに対し,法人管理及び南青山物件,富山物件及び阿久根物件の家主代行を当面1年間行い(久留米物件,樋之口物件及び加治木物件は当面2か月),家主代行手数料を毎月の家賃回収額の10%とすることなどを提案した。
これに対し,Aは,平成19年1月17日なって,被告ジービーエイトに対し,管理手数料は5%にしてほしいとした上で,樋之口物件及び阿久根物件の計算を求めた。
エ 被告ジービーエイトは,原告各会社の所有物件の賃料の回収・督促,賃借人の募集の手配,固定資産税の支払等の事務を行い,不動産業者である株式会社ケン・コーポレーションの仲介により,平成18年11月29日に締結した原告ニュークリウスと新賃借人との間の南青山物件の2階及び3階部分の賃貸借契約についても,賃貸人の事務は被告ジービーエイトの担当者が行った。被告ジービーエイトは,同賃貸借契約の事務を原告ニュークリウスに代わって行ったとして,同日,原告ニュークリウス宛の請求書(甲3)をもって,前記賃貸借契約の事務代行手数料87万3148円(賃料1か月分相当額)を請求した。
オ Aと被告Y2らとの関係は悪化し,Aは,平成19年2月頃から,被告Y2らに原告ニュークリウスの通帳等の返還を求めるようになり,同年5月,被告Y1を相手方として弁護士会の紛議調停を申し立て,明確に対立するようになった。
被告ジービーエイトは,同年8月22日,代理人を通じて,原告ニュークリウス及び原告プラスティドの実印,銀行届出印,預金通帳,南青山物件等の所有物件の権利証・賃貸借契約書等をAに引き渡し,Aと原告各会社の代表取締役を交替した。
2  争点(1)(原告ニュークリウスの被告Y1に対する請求)に対する判断
(1)  前記第2の1の前提事実及び前記1の認定事実のとおり,被告Y1は,本件委任を受ける際,Aに対し,南青山物件等が売却できた場合には仲介手数料相当額である不動産売買代金の3%を支払う必要があることを話していること,その後,Aは,被告Y1に対し,同人に対する成功報酬として,南青山物件の売買代金3億円の3%である900万円を原告ニュークリウスから被告Y1に支払う旨を書面で伝えていること,Aは,被告Y1が原告ニュークリウス宛に各請求書を発行し,被告ジービーエイトがAに原告ニュークリウスへの送金を依頼した翌日に原告ニュークリウスに700万円を,その後,被告ジービーエイトから南青山物件の売買契約に関し289万8000円が未払であるとして原告ニュークリウスへの送金の依頼を受けた後に同額の金員を原告ニュークリウスに送金したこと,Aは,その後も被告ジービーエイトに対し,南青山物件等の売却に関する報酬の残金を支払う意向を示していたことが認められること,他方,Aの前記各送金の金員が被告Y1らに対する報酬ではないとすると,Aは,被告Y1との関係では,本件委任の目的を達したにもかかわらず,報酬の請求を受けてもおらず支払もしていないことになること,Aは,弁護士報酬と仲介手数料とは別であると思っていたと供述しているが(原告各会社の代表者A・6頁),平成18年9月8日付けの各支払約定書に署名しているとおり,その金額を具体的に認識していたにもかかわらず,その金額の仲介手数料を南青山物件の売買契約の仲介業者である有限会社リライアンスには支払っていないことが認められ,これらの事実を前提に判断すると,本件委任時に,被告Y1及びAとの間において,南青山物件等が任意売却できた場合には,Aは被告Y1に対する報酬として仲介手数料相当額を支払う旨の合意をし,その後,被告Y1,被告ジービーエイト及びAとの間において,被告Y1の報酬と被告ジービーエイトの報酬(本件委任から生じた事務の分)を合計して前記仲介手数料相当額とする旨の合意が形成され,同年8月下旬ないし同年9月上旬頃までに,前記三者間及び原告ニュークリウスとの間において,原告ニュークリウスが,被告Y1及び被告ジービーエイトに対し,前記仲介手数料相当額を支払う旨の合意が成立したと認めることができる。
そうすると,弁護士は,原則として,受任時に報酬に関する事項を含む委任契約書を作成し(弁護士職務基本規程30条1項。甲35[枝番号を含む。]),弁護士報酬及び費用について,適切な説明をしなければならないとされているところ(同規程29条1項。甲35[枝番号を含む。]),本件委任の内容に流動的な側面があったとはいえ,被告Y1は報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しておくのが望ましかったとはいえるものの,被告Y1は,Aに対し,受任時に,少なくとも南青山物件等が任意売却できた場合には,被告Y1に対する報酬として,その売買の仲介手数料相当額を支払う必要があることを説明し,Aもこれを了解し,最終的に,被告Y1,被告ジービーエイト,原告ニュークリウス及びAとの間で,仲介手数料相当額を被告Y1及び被告ジービーエイトに対する報酬として,原告ニュークリウスから支払うことの合意が形成され,これに基づいてAは同社に送金し,同社は被告Y1及び被告ジービーエイトにそれぞれ送金したと認められることから,被告Y1が原告ニュークリウスから仲介手数料相当額を騙取したとか,被告Y1に不当利得があるという原告ニュークリウスの主張は採用できない。
(2)  また,原告ニュークリウスは,仮に被告Y1に対する報酬支払義務があるとしても,200万円を超える額は暴利行為として無効であると主張するので,この点について判断するが,被告Y1が着手金100万円に加えて,報酬として受領した総額は544万6500円(源泉所得税相当分を控除した額)であるところ,本件委任は,A所有の南青山物件等が競売により売却されるのを回避するため,Aが実質的に出資する新会社を設立して,同会社に任意売却することを目的とし,そのために,新会社が融資を受けられるよう南青山物件等の賃貸環境を調えることなども含まれていることからすると,複数の消費者金融業者からの借入れを整理するような債務整理や清算を目的とする倒産処理とは異なること,Aが被告Y1に本件委任をする前に依頼をした他の弁護士では奏功せず,Aも被告Y1が債務整理を得意とする弁護士であることを前提に依頼をし,前記のとおり仲介手数料相当額を支払うことに合意していること,債権者であるりそな銀行も仲介手数料相当額が被告Y1の弁護士報酬に相当するものであることを承知していたことなどからすると,被告Y1が相手方の無知や合理的に判断できない事情があることを利用して,著しく過大な利益を獲得し,又は相手方に著しく過大な義務を負担させたとはいえないことから,前記原告ニュークリウスの主張も採用できない。
3  争点(2)(原告ニュークリウスの被告ジービーエイトに対する請求・被告ジービーエイトの原告ニュークリウスに対する請求)に対する判断
(1)  南青山物件等の任意売却に関する事務の委託について
前記1(3)の認定事実のとおり,被告Y1は,Aに対し,受皿会社の代表取締役候補として被告Y2を紹介し,同人及び被告ジービーエイトとともに本件委任を遂行することを話したこと,被告ジービーエイトは,被告Y1の指示を受け,被告Y1がりそな銀行等との交渉に必要な書類を調えたり,オリックスの提示した融資条件を調える準備をするなどしたことが認められるところ,前記1(4)の認定事実のとおり,Aは,被告ジービーエイトから被告Y1と被告ジービーエイトの報酬内訳を示されて南青山物件の仲介手数料名目の支払を求められたのに対し,特段異議を述べることなく,未払と指摘された金額を原告ニュークリウスに送金していることなどからすると,被告ジービーエイトは,被告Y1の履行補助者又は下請けではなく,独立してAから委託を受けて,本件委任に関する事務を行っていたものと認めることができる。
そして,その報酬額については,前記2(1)のとおり,A,被告Y1及び被告ジービーエイトとの間において,被告Y1と被告ジービーエイトとの分を合計して南青山物件及び富山物件の売買契約の仲介手数料相当額とし,前記三者及び原告ニュークリウスとの間において,前記仲介手数料相当額を原告ニュークリウスから支払う旨の合意をしたことが認められる。
(2)  賃貸管理業務の委託について
前記第2の1の前提事実及び前記1の認定事実のとおり,原告ニュークリウスは,南青山物件の任意売却の受皿会社として設立され,将来的にAに代表取締役を交替することが予定されていた会社であり,不動産賃貸業の営業を行うことができる実態を備えていたわけではないことから,A,被告Y2及び被告ジービーエイトとの間において,原告ニュークリウスの代表取締役を被告Y2からAに交替するまでは,被告ジービーエイトにその業務を委託することが予定されていたと認められる。そして,被告ジービーエイトからの原告各会社に対する報酬提案について,Aは,賃貸管理業務を委託していることを前提として管理手数料を5%とするよう対案を出していること,Aは,現実に被告ジービーエイトの担当者と物件の管理方法等についてやり取りをしていることなどからすると,原告ニュークリウスは,被告ジービーエイトに対し,所有物件の賃貸管理を委託し,その報酬額について,少なくとも被告ジービーエイトが回収した賃料の5%とする限度で合意が成立していると認められる。
したがって,被告ジービーエイトに原告ニュークリウスが所有する物件の賃貸管理業務を委託していないと主張する原告ニュークリウスの主張は採用できない。
なお,原告各会社は,Aが被告ジービーエイトの報酬提案に対し対案を出した平成19年1月当時,原告ニュークリウスの代表取締役ではなかったことから,Aの回答は法的意味を持たないと主張しているが,原告ニュークリウスの当時の代表取締役であった被告Y2は,原告ニュークリウスの実質的な支配権を有していたAの意思を尊重して業務執行をしていたのであるから,被告Y2がAの意思を争わない限度において,Aの意思は,原告ニュークリウスの意思とみることができる。
(3)  原告ニュークリウスの未払額
ア 原告ニュークリウスは,南青山物件及び富山物件の仲介手数料相当額合計1132万円(消費税抜)を被告Y1及び被告ジービーエイトに支払う義務を負っていたところ,平成18年12月1日に被告Y1に406万9500円,被告ジービーエイトに210万円(87万3148円は南青山物件の賃貸借契約事務代行手数料としての支払),同月22日に被告Y1に137万7000円,被告ジービーエイトに119万7000円を支払ったことが認められる。
証拠(丙7,9)によれば,被告ジービーエイトの報酬は,南青山物件分が329万7000円,富山物件分が65万1000円と認められ,前記のとおり,原告ニュークリウスは既に被告ジービーエイトに対し329万7000円を支払っていることから残余の65万1000円の支払義務があることが認められる。
イ また,証拠(丙10)によれば,被告ジービーエイトは,原告ニュークリウスから委託された南青山物件,富山物件及び阿久根物件の賃料について,別紙賃貸収入月別入出金状況の各「賃料入金」欄記載のとおり集金したことが認められる。したがって,被告ジービーエイトが原告ニュークリウスの賃貸物件を管理していた平成18年9月から平成19年7月までの間に被告ジービーエイトが回収した賃料の5%相当額(各月の1円未満は切捨)は合計130万0079円と認められることから,原告ニュークリウスは,被告ジービーエイトに対し,130万0079円の支払義務があると認められる(なお,被告ジービーエイトは,同年8月15日,原告ニュークリウスに対し,賃貸管理業務の報酬として,130万0079円を請求した[丙10]。)。
ウ また,証拠(丙11)によれば,被告ジービーエイトは,南青山物件の管理に関し3万1041円,阿久根物件の管理に関し3万3409円(送金手数料400円を含む。)を立て替えたこと(最終の立替日は平成19年9月11日)が認められることから,原告ニュークリウスは,被告ジービーエイトに対し,合計6万4450円の支払義務があることが認められる。
エ したがって,被告ジービーエイトの原告ニュークリウスに対する請求は,201万5529円(本件委任に関する事務の未払報酬65万1000円,賃貸管理業務の未払報酬130万0079円及び立替費用6万4450円の合計)及びうち65万1000円に対する請求後の平成18年12月1日から,うち130万0079円に対する請求後の平成19年8月17日から,うち6万4450円に対する請求後の甲事件反訴状送達の日の翌日である平成22年12月3日から各支払済みまで,商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があると認められる。
4  争点(3)(原告各会社の被告ジービーエイト及び被告Y2に対する各請求)に対する判断
前記3(2)のとおり,原告ニュークリウスと被告ジービーエイトとの間において,原告ニュークリウス所有の各物件についての賃貸管理業務委託契約が認められ,また,前記第2の1の前提事実及び前記1の認定事実によれば,原告プラスティドと被告ジービーエイトとの間においても同様に,原告プラスティド所有の各物件についての賃貸管理業務委託契約を認めることができる。
被告Y2が,平成19年3月から同年8月までの間に,原告ニュークリウス名義の預金口座から被告ジービーエイト名義の預金口座に合計445万0659円を,平成18年10月から平成19年8月までの間に,原告プラスティド名義の預金口座から被告ジービーエイト名義の預金口座に合計52万4010円を送金したことは当事者間に争いがないが,被告ジービーエイトは,前記各契約の履行に伴い,原告ニュークリウス又は原告プラスティドが賃貸人又は所有者として支出すべき費用を立て替えていたことが認められ(丙46~61[枝番号を含む。]),被告Y2が原告ニュークリウスの代表取締役として,原告各会社から被告ジービーエイトへ送金したことが理由のないものとは認められない。そして,原告各会社は,具体的な原告各会社の損失又は被告ジービーエイトの利得を主張立証せず,原告ニュークリウス又は原告プラスティドの損失において,被告ジービーエイトに法律上の原因なく利得したと認めるに足りる証拠もない。
したがって,この点に関する原告各会社の主張は採用できない。
5  結論
以上によれば,甲事件の原告ニュークリウスの本訴請求及び乙事件の原告各会社の各請求はいずれも理由がないから棄却し,甲事件の被告ジービーエイトの反訴請求は201万5529円及びうち65万1000円に対する平成18年12月1日から,うち130万0079円に対する平成19年8月17日から,うち6万4450円に対する平成22年12月3日から各支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,訴訟費用は民事訴訟法64条ただし書,61条を適用し,よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 樋口真貴子)

 

〈以下省略〉

 

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