【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(150)平成26年 2月17日 東京地裁 平24(ワ)34202号 損害賠償請求事件、損害賠償反訴請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(150)平成26年 2月17日 東京地裁 平24(ワ)34202号 損害賠償請求事件、損害賠償反訴請求事件

裁判年月日  平成26年 2月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)34202号・平25(ワ)2942号・平25(ワ)6492号
事件名  損害賠償請求事件、損害賠償反訴請求事件
裁判結果  A事件本訴請求棄却、A事件反訴請求棄却、B事件請求棄却  文献番号  2014WLJPCA02178005

要旨
◆原告会社が、同社の経理を担当していた被告Oに対し、同社の預金口座から同被告の姉名義の口座に振り込む等の方法により、権限を逸脱して不法に金員を取得したとして、不法行為に基づく損害賠償を求めた(A事件本訴)のに対して、被告Oが、原告会社及び同社の代表取締役であるB事件被告Nに対し、A事件本訴の提起は不当訴訟であり、被告Oに対する原告会社らの共同不法行為に該当するとして、損害賠償を求めた(A事件反訴、B事件)事案において、被告Oの姉名義の口座への振込み等が、B事件被告Nの了解なしに無断で行われた横領行為とは認められないと判断するとともに、A事件本訴の提起は、未だ裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとまでは解されないと判断して、A事件本訴及びA事件反訴並びにB事件に係る各請求をいずれも棄却した事例

参照条文
民法709条
民法719条

裁判年月日  平成26年 2月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)34202号・平25(ワ)2942号・平25(ワ)6492号
事件名  損害賠償請求事件、損害賠償反訴請求事件
裁判結果  A事件本訴請求棄却、A事件反訴請求棄却、B事件請求棄却  文献番号  2014WLJPCA02178005

平成24年(ワ)第34202号 損害賠償請求事件(A事件)
平成25年(ワ)第2942号 損害賠償反訴請求事件
平成25年(ワ)第6492号 損害賠償請求事件(B事件)

東京都世田谷区〈以下省略〉
A事件原告(反訴被告) 株式会社k(以下「原告会社」という。)
同代表者代表取締役 N
東京都世田谷区〈以下省略〉
B事件被告 N(以下「被告N」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 常澤隆史
同 中川尚之
東京都中央区〈以下省略〉
A事件被告(反訴原告)・B事件原告 O(以下「被告O」という。)
同訴訟代理人弁護士 川目武彦
同 松本知世
同 原田茂喜
同 松永翔
同訴訟復代理人弁護士 大塚晃央

 

 

主文

1  原告会社の請求を棄却する。
2  被告Oの請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は全事件を通じて,原告会社に生じたものは原告会社の負担とし,被告O及び被告Nに生じたものは被告Oの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  A事件本訴
(1)  被告Oは,原告会社に対し,1721万1094円を支払え。
(2)  被告Oは,原告会社に対し,別紙支払表の「支払日」欄記載の各日の翌日から,各支払日に対応する「支払金額」欄の金員の支払済みまで,同欄記載の金員に対する年5分の割合による金員を支払え。
2  A事件反訴
原告会社は,被告Oに対し,399万4246円及びこれに対する平成24年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  B事件
被告Nは,被告Oに対し,399万4246円及びこれに対する平成24年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
A事件本訴は,原告会社の預金口座から被告Oの姉名義の口座に振り込む等の方法により原告会社の金員合計1721万1094円を被告Oが取得したことに関し,原告会社が,同金員は原告会社の経理を担当していた被告Oが権限を逸脱して不法に取得したものであると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として,上記金員相当額及び各振込み等がされた日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。
A事件反訴及びB事件は,A事件本訴の提起が不当訴訟であり,被告Oに対する原告会社及び被告N(以下,両者を併せて「原告会社ら」という。)の共同不法行為に該当するとして,被告Oが,原告会社らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,A事件本訴に関する弁護士費用299万4246円及び慰謝料100万円並びにこれらに対する不法行為のなされた日(A事件本訴提起日)から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提となる事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨から容易に認められる。)
(1)  当事者
ア 原告会社は,テレビ用番組・コマーシャルフィルム・ビデオコマーシャルフィルムの企画制作を主たる業とする株式会社であり,被告Nは,原告会社の代表取締役である。
イ 被告Oは,平成8年頃から少なくとも平成20年10月まで,原告会社の従業員として経理を担当していた者であり,平成12年12月に設立されたテレビ番組,映画,ドキュメンタリーその他の録音録画物の企画,制作,配給等を業とする株式会社aの代表取締役を務める者である。
(2)  平成13年12月27日から平成19年8月15日までの間,別紙支払表記載のとおり,70回にわたり,原告会社の預金口座から「A」名義の預金口座に,「調査研究費」あるいは「制作協力費」の名目で,合計1721万1094円が振り込まれた(ただし,平成18年5月2日の10万円は,現金で被告Oが受領した〔被告O〕。以下「本件各振込み等」という。)。
(3)  Aは,被告Oの姉であり,昭和49年5月にフランス国に住所を定め,以降同国に居住している者である。原告会社がAに対し調査研究や制作協力を依頼したことはない。
(4)  本件各振込み等は,全て被告Oが作成した原告会社の総勘定元帳に記載されていた。
(5)  原告会社は,平成24年12月3日,A事件本訴を提起した。
2  争点
(1)  本件各振込み等が,被告Oによる原告会社の金銭の不法な取得として不法行為を構成するか否か
(原告会社の主張)
ア 原告会社は,名目の如何を問わず,被告Oに対し,Aへの金員支払を指示したり,支払を許可したことはない。したがって,本件各振込み等は,被告Oが原告会社から経理担当者として与えられていた権限を逸脱して行った不法行為である。
イ 被告Nは,平成12年12月から被告Oの給与を増額した後,被告Oと同人の給与額について話したことはなく,同人の給与を増額したこともない。原告会社の規模のテレビ番組制作会社において,経理担当に過ぎない被告Oに月額50万円もの給与を支払うことはあり得ず,平成13年頃からは経理担当として元銀行員であるBを雇用したことで経理担当の人件費が増加していたことからしても,被告Oの給与を月額50万円に増額するとの合意をすることはない。
また,本件各振込み等が行われていた当時,原告会社は建物の4階部分と5階部分を賃借し,4階部分に制作関係,5階部分に経理その他事務関係の従業員が配置されていたから,制作部門のスタッフが経理部門に顔を出すことはほとんどなく,経理書類を見ることはなかったから,被告Oの給与について口座を分散させる技巧的手段をとる必要はなかったのであり,被告Nが被告Oに対し給与振込口座の分散を指示したことはない。
ウ 被告Nは,原告会社の経理を被告Oと担当税理士に任せており,本件各振込み等が記載された会計帳簿に目を通したことはなかった。また,本件各振込み等が違法不当な支払であるか否かは,税理士が目を通す資料からは判断できなかった。そのため,原告会社が本件各振込み等を認識したのは,被告Oが原告会社の経理に関与しなくなり,別の税理士が原告会社の帳簿を調査した平成23年1月以降である。
(被告Oの主張)
ア 被告Oは,平成13年11月中旬頃,離婚が決まったことを契機として,被告Nに対し月額50万円の給与を安定して得られるよう依頼したところ,被告Nはこれを承諾した。その上で,被告Nは,被告Oのみ給与が上がると他の従業員が不満を抱く可能性があるので,被告O名義の口座のほかに第三者名義の口座を作り,被告Oの給与を複数の口座に分けて振り込むよう指示した。本件各振込み等は,被告Nの上記承諾及び上記指示に基づき,被告Oの給与の一部の支払として行われたものであり,不法行為を構成しない。
イ 本件各振込み等は,すべて被告の会計帳簿に記載されているところ,被告Nは,原告会社の支払状況を毎月被告Oに直接確認し質問しており,本件各振込み等の記載を認識していた。その中で長期間にわたり行われていた本件各振込み等は,被告Oの横領行為ではない。
(2)  A事件本訴の提起が,原告会社らの被告Oに対する不法行為を構成するか否か及びその損害額
(被告Oの主張)
ア A事件本訴における原告会社の主張は,経理を担当していた被告Oが,原告会社に無断で自己の親族に金員を支払い,原告会社の金員を横領したというものであるが,本件各振込み等は,争点(1)に関して主張したように,原告会社代表者である被告Nの承諾及び指示に基づき,被告Oの給与の一部の支払として行ったものである。原告会社らは,本件各振込み等に関し被告Oに問い合わせをすることもなく,A事件本訴が事実的,法律的根拠を欠いていることを認識しながら,被告Oが行った原告会社関係者に対する被害届や告訴を取り下げさせるために,上記承諾や指示がないとの虚偽の事実を主張してA事件本訴を提起した。このような訴訟の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らし著しく相当性欠いており不法行為を構成する。
なお,原告会社は休眠状態の法人であり,同社によるA事件本訴提起の判断は,被告Nの判断でなされたものであるから,A事件本訴の提起は,原告会社と被告Nの共同不法行為である。
イ 損害額
(ア) A事件本訴の応訴に要した弁護士費用 299万4246円(着手金99万8082円及び成功報酬199万6164円)
(イ) 慰謝料 100万円
(原告会社らの主張)
争点(1)に関し主張したように,被告Nが被告Oに対し月額50万円への給与増額を承諾したり,振込口座の分散を指示したことはない。本件各振込み等は被告Oが原告会社の金銭を横領したものであり,その賠償を求めるA事件本訴の提起が不法行為を構成することはない。
また,原告会社らは,被告Oが原告会社の経理を突如辞めた後に原告会社の会計帳簿を税理士に検討してもらったところ原告会社が認識していないAに対する不審な送金が発覚したことを契機として調査を行い,原告会社がAに対し業務を依頼することがあり得ないことが確認できたことからA事件本訴を提起したのであり,同訴訟の提起に関し故意や過失はない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
上記前提となる事実,証拠(甲1~8,11,13,乙1~16,19~21,原告会社代表者兼被告本人N,被告本人O)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
(1)  原告会社は,放送局等から番組制作を請け負い,被告Nが営業担当兼プロデューサーとして中心的に活動していた会社であるところ,その経理業務は,当初は被告Nが,その後は従業員のCが担当し,税理士のD(以下「D税理士」という。)と顧問契約を締結して,税務申告等の業務を依頼していた。被告Oは,同被告の配偶者が経営し,同被告が経理業務を担当していたb株式会社が原告会社にビデオ制作を依頼したことから,被告Nと面識を持ち,平成8年頃からアルバイトとして週3日程度,原告会社の経理業務に関与していた。
(2)  被告Oの原告会社への出勤日数は徐々に増加していたが,Cが平成12年2月末で原告会社を退職することとなり,その後は被告Oが原告会社に毎日出勤して経理業務を担当するようになった。被告Oの給与は,同年2月までは月額16万円(手取額。以下において同じ。)であったが,同年3月から19万円に増額された。なお,退職前のCの給与は月額18万円(ただし,同年3月分の給与は16万円)であった。
(3)  被告Oは,平成12年11月頃,被告Nに対し,給与の増額を依頼し,被告Nがこれに応じたことから,同年12月からの被告Oの給与は月額32万円となった(以下「平成12年増額」という。)。
また,被告Nは,平成13年頃,原告会社の従業員としてBを採用し,Bは平成18年頃に出向するまで原告会社の経理にも関与していた。
(4)  被告Oは,平成12年12月頃,テレビ番組,映画,ドキュメンタリーその他の録音録画物の企画,制作,配給等を業とするa社を設立し,代表取締役に就任した。なお,被告Oが原告会社と目的を同じくするa社を設立し,代表取締役に就任することは被告Nも了解していた。
被告Oは,a社設立後も原告会社の経理業務を担当していた。
(5)  本件各振込み等の実行
ア 被告Oは,平成13年12月27日から平成19年8月15日までの間,別紙支払表の「支払日」欄記載の各日(ただし,平成18年5月2日を除く。)に,原告会社の東都中央信用金庫(後に「さわやか信用金庫」に商号変更)東京港支店の普通預金口座(口座番号〈省略〉。以下「本件信金口座」という。)あるいは株式会社みずほ銀行六本木支店の普通預金口座(口座番号〈省略〉。以下,「本件みずほ口座」という。)から別紙支払表の「振込金額」欄記載の金員をA名義の三井住友銀行青山支店の預金口座(口座番号〈省略〉。以下「A名義口座」という。)に振り込んだ。また,被告Oは,平成18年5月2日,同被告が管理していた原告会社の現金から10万円を取得した。
イ 平成13年12月から平成20年10月まで,被告Oは,本件各振込み等とは別に,自己名義の預金口座に振込みを受ける方法で原告会社から月額32万円の給与の支給を受けていた。
ウ 被告Oは,本件各振込み等に関し,Aに対し,平成13年9月から毎月22万2222円の調査研究費支払債務が発生したものとし(ただし,平成15年3月及び同年4月には制作協力費支払債務が発生したものとしている。),うち20万円をA名義口座に振り込み,残額2万2222円は源泉所得税として原告会社の預り金とした。なお,平成18年5月以降は,発生する調査研究費支払債務の額が毎月33万3333円とされ,うち30万円がA名義口座に振り込まれ,残額3万3333円は源泉所得税として原告会社の預り金とされた。これらの源泉所得税は原告会社により納税された。
エ 平成13年9月1日から平成16年8月31日までの期間に関する原告会社の総勘定元帳(甲1~3)の「調査研究費」の項目には,原告会社が調査研究を依頼した業者等に対する調査研究費が計上されていたが,その件数は1月あたり多くとも5件程度であり,支払先の多くが法人であった上,毎月同額の調査研究費が発生している業者等は存在しなかった。なお,上記期間において,Aに対する調査研究費支払債務が発生したと記載された日付と本件各振込み等がされた日付は異なっていた。
平成16年9月1日から平成19年8月31日までの期間に関する原告会社の総勘定元帳(甲4~6)の「調査研究費」の項目には,ほぼAに対する調査研究費支払債務の発生だけが記載されており,同債務が発生したとされる日付と本件各振込み等がされた日付は同一であった。
オ 本件信金口座からATMを利用して本件各振込み等を行うと,同口座の預金通帳(甲7)には,振込先として「A」と印字された。また,本件信金口座からは,平成14年5月以降,インターネットバンキングを利用した振込みが行われていたが,平成16年1月までは金融機関による通帳への振込先の印字がされなかったため,被告Oあるいは原告会社において経理に携わっていた者が手書きで「A」あるいは「A」と記載していた。同年2月以降は,本件信金口座においてインターネットバンキングを利用した場合でも,金融機関における記帳時に振込先が印字されるようになり,本件各振込み等の振込先が「A」と印字された。
本件みずほ口座の通帳(甲8)も,金融機関において振込先が印字された。
なお,本件信金口座は,cテレビやdテレビ等からの支払が入金され,多くの取引先への支払が払い出されていたほか,証書貸付の返済の引き落としもされていた。
(6)  被告Nは,原告会社への入金や出金の状況について,被告Oが作成した月ごとの支払一覧を確認し,被告Oから月ごとの入金額や支払額,預金残高について,口頭で報告を受けていた。
(7)ア  原告会社の平成18年9月分から平成19年8月分の給与台帳(甲13)には,被告N及び被告Oを含む従業員の給与額(控除後の手取額で交通費を除くもの)として,以下の記載がされていた。
(ア) 被告N 80万円(平成18年9月から同年11月分は未払いである旨記載されている。)
(イ) 被告O 32万円
(ウ) E 26万円
(エ) F 27万円。ただし,平成19年3月分給与から30万円
(オ) G 50万円(なお,Gはチーフディレクターであった。)
(カ) H 22万円。ただし,平成19年3月分給与から25万円(なお,Hは,経理業務に関与していた。)
(キ) I 23万円。ただし,平成19年3月分給与から27万円(同年6月分以降は記載がない。)
イ  原告会社は,平成19年3月30日,日本郵政公社(当時)に同社名義の貯金口座(記号番号〈省略〉。乙21)を開設し,同月から平成21年1月までの間に20回にわたり1回10万円あるいは20万円の金員を,同月から同年9月までの間には7回にわたり,42万円から94万円を超える金員を,被告Nの配偶者の父であるJ名義の口座に送金した。なお,Jが原告会社において稼働したことはないが,平成21年1月以降の送金分については,通帳(乙21)に「給与」やクレジットカード代金の支払資金である旨が手書きで付記されていた。さらに,同貯金口座からは,同年10月以降,被告Nに対し,同様の送金がされていた。
(8)  原告会社は,株式会社e(以下「e社」という。)と取引をしていたが,平成19年11月,テレビ番組「○○」の制作を依頼された。しかしながら,原告会社の経営が苦しくなったことから,被告Nと被告Oは,平成20年9月頃,原告会社における番組制作業務をa社に移行し,同社の業績を上げて銀行融資を受けることとした。これにより原告会社は同年11月頃から休眠状態となり,被告Nは,a社との間でa社が制作する番組の制作プロデューサーとして稼働するとの契約を締結し,原告会社が行っていた番組制作業務に引き続き携わった。
被告N及び被告Oは,原告会社及びa社の事務所をfビルに置き,協力して番組制作業務等を行っていた。また,平成17年8月4日に被告Nを代表取締役として設立された映像制作等を業とする株式会社gは,平成22年7月頃には,Kが代表取締役を務めており,原告会社及びa社と同じfビルの事務所(以下「本件事務所」という。)において業務を行っていた。
(9)  a社は,業績が上がらず,銀行融資も十分に得られなかったことから,平成22年頃から経営状態が悪化していたが,同年7月頃,被告Nと被告Oの関係も悪化した。そこで,被告Oは,その頃,被告Nに対し,両被告が協力してa社で行ってきた番組制作事業に関し,g社が「○○」及び「△△」と題する番組の制作業務を担当し,a社が「□□」と題する番組の制作業務を担当することを提案した。
以後,被告Oは,Kと業務の割り振り等について協議したが,Kが同年10月以降,原告会社あるいはg社が担当することになる番組の制作費についてもa社が負担するよう主張したこと,Kが被告Oに対し,a社の営業をg社に譲渡する旨を記載した営業譲渡契約書に押印を求めたが,被告Oが応じなかったこと等から,協議はまとまらなかった。
なお,g社は,平成22年10月25日,商号を株式会社g1に変更した(以下「g1社」という。)。
(10)  Kは,平成22年11月初旬,a社がe社から委託を受けて制作した同年8月放送分の番組制作代金の振込先をa社からg1社に変更するとして,被告Oに対し,債権譲渡合意書に捺印を求めたが,被告Oはこれに応じなかった。しかしながら,被告Nがe社代表者に振込先の変更を連絡し,Kがa社名下の押印のあるa社とg1社間の債権譲渡合意書(乙2。以下「本件合意書」という。)を提出したことから,e社は,同月10日,上記制作代金をg1社に支払った。
(11)  a社は,平成22年11月13日頃,本件事務所を退去した。その際,被告Oは,本件事務所内に原告会社の総勘定元帳,給与台帳,預金通帳等をロッカー等に残したままとした。
(12)  被告Oは,e社がg1社に制作代金を支払ったことを知り,被告O代理人弁護士を通じて,e社から本件合意書の写しを入手した。被告Oは,本件合意書を作成したことがなく,a社の印として押捺されている印影が同社の印影とは異なっていた(なお,本件合意書上のa社の印については,警察による科学鑑定により,同社の実印と異なると判定されている。)ことから,平成22年11月18日,警視庁に対し,g1社を被告訴人として,被害届を提出した(乙4)。
また,a社は,平成22年中に,東京地方裁判所に対し,e社を被告として,請負代金請求訴訟(同裁判所平成22年(ワ)第45540号。以下「別件請負代金訴訟」という。)を提起した。
(13)  g1社及び被告Nは,他の5名とともに,平成22年12月21日,a社について,債権者破産の申立てを行った(東京地方裁判所平成22年(フ)第21501号。以下「本件破産申立て」という。)。同申立書には,被告Nがg1社において部長待遇の幹部として勤務していると記載されていたほか,破産債権として,被告Nが同人の配偶者であるLの母所有の不動産を担保に株式会社jから借り入れた3300万円をa社に貸し付けたことによる債権(ただし,被告Nは同年11月15日に第三者に債権譲渡したとされている。),Lが被告OにLのクレジットカードを貸し与え被告Oが同カードを利用したことによる債権等が記載されていた。
また,本件破産申立ての代理人である弁護士M(以下「M弁護士」という。)は,同日,a社の事務所及び被告Oの自宅に,本件破産申立ての申立書をFAk送信するとともに,同申立てが受理された旨,及び「誰かのアイデアによるものですが,Kさんは元はOさんと親しくしていたのだから,他にやりようはなかったのかしらと言っています。もしお話があるのであれば,代理人である私も事務的に冷たく全然聞かないと言うこともありません。何か考えるところがお有りになればご連絡ください。」と記載した書面(乙5)を送信した。
さらに,Kは,同月24日頃,M弁護士が被告O個人の破産申立てを行うよう助言しているが,Kの意向でまだ手続を行っていないこと,被告OがM弁護士に連絡をとらない場合,被告Oについて破産申立てをすることになるが「弁護士が破産申立てをするということは,それ相応の証書と証拠がないと実行し」ない旨,a社と被告Oの「同時破産が私たちの出した結論」である旨,「事の重大さを十分考慮」し,M弁護士に連絡を取るのが「得策」である旨を記載した文書(乙6)をFAk送信したが,被告Oはこれに応じなかった。
(14)  a社は,平成22年12月29日,麻布警察署長に対し,g1社を被告発人・被告訴人として,有印私文書偽造,同行使及び詐欺の罪で告発,告訴した(乙7)。
(15)  Kは,平成23年1月中旬頃,g1社名義で,a社の取引先であり,被告Oが理事を務めるh大学危機管理学研究室内の学術社団i学会の理事長宛てに,被告Oとの間の業務委託契約に基づく企画制作費(月額30万円)の支払がされていないこと,g1社がa社の債務を立替払いしたが返済がされないこと,a社がg1社の取引先に対し訴訟を起こし営業妨害となっていること,被告Oと連絡が取れないため本件破産申立てを行ったこと等を記載し,同学会のホームページ等の使用差止めを求める警告書(乙10)を送付した。
(16)  被告Nは,平成23年2月23日,原告会社代表取締役として,a社及び被告Oに宛てて,被告Oが平成20年11月に原告会社の顧客を奪おうと企て,原告会社の銀行借入金を引き受けるとの営業譲渡契約を締結し,被告Nをa社の契約社員に切り替えたのに,被告Nに月々の給与を支払わず,銀行借入金も支払わないとして,2億円を支払うよう求める文書(乙11)を送付した。
さらに,被告Nは,同年3月14日,原告会社代表取締役として,a社及び被告Oに対し,先に請求した2億円の支払がないことから営業譲渡契約が解除されたとして,平成20年11月1日以降に原告会社と取引のあった企業等から得た売上金相当額の損害賠償を請求すること,及び上記解除の事実を取引先に通知する旨を記載した文書(乙12)を送付した。
(17)  被告O及びa社は,本件破産申立てが不法行為に該当するとして,平成23年4月7日頃,g1社,K及び被告Nほかに対し,合計400万円の損害賠償を請求する訴訟(東京地方裁判所平成23年(ワ)第11630号)を提起した。
(18)  原告会社,被告N,g1社,Kは,平成23年7月19日,M弁護士を代理人として,a社,被告O,被告Oの訴訟代理人である弁護士川目武彦及び同弁護士所属の弁護士法人を被告として,請求額1億円の損害賠償請求訴訟を提起したが,訴え提起手数料を納付しなかったことから,同年11月24日,同訴訟の訴状は却下された。
また,g1社及び被告Nを含む本件破産申立ての申立人らは,同月28日,本件破産申立てを取り下げた。
(19)  被告Nは,別件請負代金訴訟の証人尋問において,e社との番組制作請負契約は,a社が当事者ではなく,被告N個人が当事者である旨供述したが,同供述は採用されず,平成24年11月22日,a社の請求を認容する第1審判決が言い渡された。
2  争点(1)(本件各振込み等に関する被告Oの不法行為の成否)について
(1)  被告Oが,原告会社の預金あるいは金員により行われた本件各振込み等により,別紙支払表記載の「支払日」記載の各日に,合計1721万1094円を取得したことは当事者間に争いがない。そして,本件各振込み等は被告Oの姉であるAに対する調査研究費あるいは制作協力費の支払として行われているが,原告会社がAに対し調査研究や制作協力を依頼したことはないことも当事者間に争いがない。
以上の事実に関し,原告会社は,本件各振込み等は被告Oが原告会社の財産を横領した不法行為であると主張するのに対し,被告Oは,平成13年11月頃,被告Nとの間で被告Oの給与を月額50万円に増額するとの合意をし,かつ,被告Nから増額分の給与については第三者名義の口座に分けて入金するよう求められたことから,本件各振込み等を行ったと主張して,不法行為に該当することを争うので検討する。
(2)  被告Oの給与に関する平成12年増額が,被告Oの申入れにより,被告Nと被告Oとのやりとりで行われたことについては,被告Nと被告Oの供述等は一致している。
もっとも,被告Nが平成12年増額の理由について,被告Oが離婚のため経済的に困難となるためであったと供述等するのに対し,被告Oは,平成12年増額は,被告Oが原告会社の銀行融資の段取りや以前は税理士に委託していた起票業務等を担当するようになり業務量が増加したため,毎日午後から出社して勤務時間を増加させる分,それに応じた給与を支払うよう求めたのであり,離婚を理由として増額を申し入れたのは平成13年11月であるとの供述等をする。
被告Oは,平成10年頃から配偶者との離婚が問題になっており,平成14年に離婚しているが(乙19,被告O),この状況の下では,平成12年11月あるいは平成13年11月のいずれにおいても,被告Oの離婚による経済状況の変動が給与増額の理由となる可能性はあったと推認されるが,離婚時期に近接した平成13年11月のほうが同理由による増額を求めた可能性がより高いと解される。
もっとも,被告Oの前任者として経理業務を担当していたCの給与が月額18万円であったこと,被告Oは,Cの退職した平成12年3月以降は既に平日毎日出勤していたこと(上記1(2))からすると,平成12年増額の理由が業務量の増加による勤務時間の増加であったとの被告Oの供述等にも疑問がある。加えて,被告Oは,被告Nと給与増額について協議したのは平成13年11月が最後である旨の供述をしながら,本件各振込み等の額が平成18年5月から30万円となっている事実を指摘されると,その頃,再度,被告Nに対し給与の増額を申し入れたと供述を変遷させていること,当該増額理由は原告会社の代表者である被告Nが自己の給与を増額したので従業員である自己の給与の増額も要求したとするものであることからしても,被告Nとの給与増額交渉に関する被告Oの供述にも十分な信用性を認めることは困難である。
本件においては,他に,平成13年11月や平成18年5月に被告Nと被告Oとの間で被告Oの給与を増額することが取り決められたと的確に認めるに足りる証拠はない。
(3)ア  しかしながら,本件各振込み等は,6年近くにわたり毎月行われていたところ,原告会社の預金通帳にはAへの振込みであることが金融機関による印字あるいは被告Oを含む原告会社の経理担当者による手書き文字により記載されていたこと(上記1(5)オ),本件各振込み等は原告会社の総勘定元帳にも記載されており,その原因としてAに対する調査研究費支払債務の発生も記載されていたところ,原告会社において調査研究費は発生件数の少ない費目であり,特定の個人について固定額で発生していたのはAに対するものだけであったこと,特に平成16年9月以降はAに対する以外には調査研究費はほとんど発生しておらず,Aに対する調査研究費は,債務発生日と支払日を同じくする経理処理がされていたこと(上記1(5)エ),被告Oは本件事務所を退去した際,上記記載のある原告会社の総勘定元帳や預金通帳を被告Nが容易に発見し得る態様で残していったこと(上記1(11)。なお,被告Nは,被告Oが退去する前に経理資料やデータを廃棄していたと陳述するが,これを認めるに足りる証拠はないし,上記認定事実とも矛盾し採用できない。),本件各振込み等が行われていた期間,原告会社では継続的に被告Oの経理業務を補助する従業員を雇用していたところ,同従業員らは本件各振込み等に関する経理業務に関与していたと推認されること(被告N,被告O)からすると,原告会社で経理担当をしていた被告Oが本件各振込み等の存在について,原告会社の他の従業員や被告Nに対し隠蔽しようとの意思を有していたとは認められない。この事実は,本件各振込み等の実行が被告Oによる横領行為であるとの事実と矛盾するものである。
イ  また,被告Nは,本件各振込み等が行われていた期間,Aへの振込みである旨の記載のある預金通帳や総勘定元帳を見ていないが,それは被告Oがこれらを鍵の掛かるロッカー等に保管していたからであるとの趣旨の供述等をする。しかしながら,被告Oは預金通帳及び総勘定元帳の保管場所には鍵は掛かっていなかった旨の供述をしてこれを否定している上,被告Nも預金の残高や番組制作の発注先からの入金,固定費の支払等については把握していた旨の供述をし,被告Oから入出金等について報告も受けていたこと(上記1(6))をも併せ考えると,原告会社において,総勘定元帳等の会計帳簿が代表者である被告Nの閲覧できない状態で保管されていたとは認められない(もっとも,被告Oも,主張においては預金通帳はテンキーにより鍵の掛かる場所に保管していたとしながら,本人尋問においては,鍵を掛けずに保管していた旨供述しており,同被告の保管場所に関する供述等の信用性にも一定の疑問はある。)。
加えて,原告会社は,被告Oが事前に何の申入れもなくa社を本件事務所から退去させ,これにより原告会社の経理状況が不明となったため,税理士に総勘定元帳等の分析を依頼したとの主張をし,被告Nはこれに沿う供述等をするが,原告会社は平成20年11月からは休眠状態にあった上(上記1(8)),上記1(9)から(11)で認定したところに照らせば,被告Nと被告Oは,平成22年10月末頃を目途に,原告会社及びg1社とa社の業務を分け,a社が本件事務所を退去することを予定としていたと認められるのであり,これに反する被告Nの供述等は採用できない。
以上のように,原告会社が本件各振込み等を認識するに至った経緯や被告Nが本件各振込み等を認識していなかった事情等についての被告Nの供述等が採用できないことに照らすと,平成13年11月に被告Oの給与を増額したことはないとの同被告の供述等の信用性についても同様に疑問がある。
ウ  さらに,被告Nは,平成19年3月から,原告会社で稼働したことのない同被告の配偶者の父であるJ名義の口座に送金する方法により,原告会社における自らの給与の一部を受領していたこと(上記1(7)イ)からすると,被告Nが被告Oの増額分の給与の振込口座を第三者名義とするよう指示した可能性も否定できない。
(4)  なお,被告Oは,原告会社の経理に関与していたD税理士から,経理処理の項目を調査研究費にするように指示を受けた旨の供述等をするところ,D税理士の事実実験公正証書(甲12)には,D税理士が被告Oに対する指示を否定する趣旨の発言をしたことが記載されている。しかしながら,D税理士は昭和5年○月○日生まれであり,同公正証書作成までに脳梗塞3回を発症して記憶障害があるとも発言していること(甲12)からすると,同公正証書に記載された内容を根拠に,本件各振込み等が被告Oの横領行為であると推認することはできないというべきである。
(5)  以上で説示したところを総合考慮すれば,本件各振込み等が被告Nの了解なしに無断で行われた横領行為であると認めることはできないといわざるを得ず,被告Oに原告会社に対する不法行為は成立しない。
したがって,A事件本訴における原告会社の請求は理由がない。
3  争点(2)(A事件本訴の提起が原告会社らの不法行為か否か)について
(1)  上記2で認定説示したように,休眠会社である原告会社が代表者である被告Nの判断により提起したA事件本訴における原告会社の請求は理由がない。
被告Oは,A事件本訴は,被告Nが本件各振込み等が同被告の承諾と指示に基づくものであり,原告会社の請求に理由がないことを知りながら提起した不当訴訟であり,不法行為が成立すると主張する。
この点,訴えの提起が違法でそれ自体が不法行為であるというためには,その訴訟の提起が,当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人がそのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなどの裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合であることを要する。
以下,A事件本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に該当するか否か検討する。
(2)  上記1で認定したように,被告Nと被告Oとの関係は平成22年7月頃から悪化し,同年10月末から同年11月初旬頃には,原告会社及びg1社とa社との間でa社が請け負ってきた番組制作業務の今後の分配や費用負担,報酬の受領等に関し紛争が生じるようになったが,被告NはKと共にg1社の利益を図る行動をとっており,Kがe社に対し,a社の実印とは異なる印によりa社名下の押印がされた本件合意書を交付したことに対し,被告Oが警察への被害届の提出を行った後には,a社に対し自らも債権者となって本件破産申立てを行い,平成23年2月末頃にはa社及び被告Oに対し2億円の支払を求める文書を送付した上,同年7月,損害賠償請求訴訟を提起している。そして,本件破産申立ての申立書,2億円の支払を求める上記文書や上記損害賠償請求訴訟の内容に,M弁護士及びKが被告Oや同被告が理事を務める学会に送付した文書の内容,被告Nが別件請負代金訴訟においてe社との番組制作請負契約は被告N個人が当事者である旨供述していることに照らすと,被告NはKとともに,本来はa社に対し支払われるべき番組制作代金をg1社において確保することを意図して,本件破産申立てや損害賠償請求訴訟の提起等を行っていたものと推認される。
被告Nが平成22年10月以降,上記のような意図を有していたことからすれば,平成24年12月に行われたA事件本訴の提起も原告会社ひいては被告Nが利益を得,被告Oに損失を被らせるとの不当な目的により提起されたものであるとも思われる。
(3)ア  しかしながら,本件各振込み等はAに対する調査研究費等の支払として行われているが,原告会社がAに対し調査研究等を依頼したことは全くなかったこと,被告Oの主張する被告Nとの給与増額の合意に関する証拠は被告Oの供述等しかなく,原告会社の給与台帳を含めた会計書類には被告Oの給与は月額32万円である旨記載されていたこと,本件各振込み等が行われた期間,原告会社において経理業務を行っていたのは被告Oであり,被告Oは本件各振込み等に係る金員を現実に取得していること等の客観的事実が存在すること,加えて,平成18年及び平成19年当時の原告会社の他の従業員の給与額に照らすと,被告Oの経理業務に対する被告Nの評価が高かったとしても,月額50万円あるいは60万円の給与額は高額過ぎるとも思われることからすれば,A事件本訴の提起が全く事実的,法律的根拠を欠くものであるとまでは断定できない。
イ  また,本件各振込み等は被告Oによる横領行為であるとは認められないものの,上記2における認定説示のとおり,平成13年11月以降の給与増額に関する被告Oの供述等は証拠等から認定できる他の事実と齟齬する部分や変遷があり,必ずしも明確で信用性が高いものとは言えず,被告Nと被告Oとの間に明確な給与増額の合意があったと認定することもまた困難である。
被告Nが増額分の振込口座を第三者名義とするよう指示したとの点についても,被告N自身がJ名義の口座への振込みにより給与の一部を受領していたものの,これが開始されたのは原告会社が郵政公社における貯金口座を開設した平成19年3月からであると推認され(この点に関し,平成18年頃から行われていたとの趣旨の被告Oの供述は,同供述がされた経緯に照らし採用できない。),被告Oが被告Nから指示を受けたとする時期より5年以上後である。被告Oは,被告Nから原告会社では他人名義の口座に振り込んだり,口座を借りたりする方法で経理操作をしていると聞いていたため,第三者名義の口座に振り込む場合もあるのだと思う程度であったと陳述する(乙19)が,仮に被告Nに関する上記事実以外にそのような経理操作があれば,長年原告会社の経理業務を行っていた被告Oとしては具体的な事実を把握していたと推認するのが合理的であるにもかかわらず,他に具体的な経理操作についての指摘はされていない。また,被告Oは,陳述書(乙19)においては離婚する際,被告O名義の口座に財産があると財産分与において不利になると考えたことから,平成12年3月28日にAの許可を得てA名義口座を開設し管理していたと陳述するのに対し,本人尋問においては,増額分の給与を受領するために第三者名義の口座が必要となったことからAに相談して開設してもらったとの趣旨の供述をしており,A名義口座の開設の経緯に関する同被告の供述等には齟齬がある。これらに照らすと,被告Nが被告Oに第三者名義の口座の利用を指示したとの点についても,被告Oの供述等の信用性は高いものとはいえず,被告Nの指示を明確に認定することには疑問がある。
ウ  被告Oは,本件各振込み等は原告会社の総勘定元帳,預金通帳等に記載されていたのであるから,被告Nは同振込み等が行われていた当時からこれを認識していたと主張する。
この点,原告会社の総勘定元帳等の会計帳簿について,被告Nが閲覧し得ない状態にあったと認められないこと等は上記2(3)イにおいて認定説示したとおりである。しかしながら,原告会社の経理業務は被告Oが全面的に行っており,被告Nは営業や番組制作を行っていたことからすると,被告Nの本件各振込み等の発覚の経緯に関する供述が信用性を欠くことを考慮しても,同被告が本件各振込み等を認識しながら異議を述べることがなかったとまでは断定できない。
したがって,被告Nが本件各振込み等が行われていた当時からこれを認識していたのに,認識していなかったとの虚偽の事実を主張してA事件本訴を提起したとまでは認められない。
エ  加えて,被告Nの本人尋問における供述からは,同被告が各事実の生じた時期に関し,極めて曖昧な記憶しか有していないことがうかがわれることに加え,被告Nと被告Oとの間のやり取りがA事件本訴の提起より10年以上前に生じた事実であることからすれば,被告Nは,被告Oと同被告の離婚を原因とする給与の増額について話した時期について誤った記憶を有している可能性が否定できない。
(4)  以上で説示したところを勘案すれば,原告会社らがA事件本訴提起前に被告Oに対し問い合わせをしたことがないこと(被告N)を考慮したとしても,A事件本訴の提起は,未だ裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとまでは解されない。したがって,被告Oの原告会社らに対する請求も理由がない。
4  結論
よって,原告会社のA事件本訴における請求,被告Oの原告会社らに対する請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 倉地真寿美)

 

〈以下省略〉

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296