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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(136)平成26年 7月 1日 東京地裁 平24(ワ)20373号 売買代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(136)平成26年 7月 1日 東京地裁 平24(ワ)20373号 売買代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

裁判年月日  平成26年 7月 1日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)20373号・平25(ワ)24743号
事件名  売買代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴一部認容  文献番号  2014WLJPCA07018011

要旨
◆原告が、被告に対し、原告は本件土地を被告に売却したと主張して、売買契約に基づき、売買代金の残額等の支払を求めるとともに、原告と被告は、原告が業者に発注した付替道路工事の代金を被告が負担する旨合意した等と主張して、工事代金相当額等の支払を求めた(本訴)のに対し、被告が、原告に対し、本訴の提起は被告に対する不法行為である等と主張して、会社法350条に基づき、損害賠償を請求するとともに、原告と被告は、本件土地の北側約半分のうちの北側部分に残置された地中杭の撤去費用を原告が負担する旨合意した等と主張して、同合意に基づき、撤去費用相当額等の支払を求めた(反訴)事案において、被告は本件売買代金の残額及び原告主張の工事代の供託を行ったことから、原告の請求を棄却し、被告の撤去費用相当額等の請求を認容する一方、原告の本訴請求が不法行為であるということはできないとして、被告の損害賠償請求を棄却した事例

参照条文
民法555条
民法709条
会社法350条

裁判年月日  平成26年 7月 1日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)20373号・平25(ワ)24743号
事件名  売買代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴一部認容  文献番号  2014WLJPCA07018011

平成24年(ワ)第20373号 売買代金等請求本訴事件
平成25年(ワ)第24743号 損害賠償請求反訴事件

横浜市〈以下省略〉
本訴原告(反訴被告) 株式会社X(以下「原告」という。)
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 安田隆彦
東京都新宿区〈以下省略〉
本訴被告(反訴原告) 株式会社Y(以下「被告」という。)
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 野島親邦

 

 

主文

1  原告の本訴請求をいずれも棄却する。
2  原告は,被告に対し,527万2575円及びこれに対する平成25年9月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,本訴・反訴を通じてこれを20分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
5  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴
(1)  被告は,原告に対し,1億9520万5797円及びこれに対する平成24年1月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  訴訟費用は,被告の負担とする。
(3)  仮執行宣言
2  反訴
(1)  原告は,被告に対し,1157万4826円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  原告は,被告に対し,527万2575円及びこれに対する平成25年9月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3)  訴訟費用は,原告の負担とする。
(4)  仮執行宣言
第2  事案の概要
1(1)  本件本訴は,原告が,被告に対し,①原告は,仙台市内に所在する7筆の土地(以下「本件土地」という。)を代金24億円で被告に売却したと主張して,売買契約に基づき,上記代金から既払金を控除した残額1億8570万3297円及びこれに対する引渡し後の日である平成24年1月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「本訴請求1」という。)とともに,②原告と被告は,原告が業者に発注した付替道路工事の代金を被告が負担する旨合意したなどと主張して,主位的には委任事務処理費用又は不当利得として,予備的には債務不履行に基づく損害賠償として,工事代金相当額950万2500円及びこれに対する弁済期後の日である平成24年1月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「本訴請求2」という。)事案である。
(2)  本件反訴は,被告が,原告に対し,①原告代表者は,本訴請求1の請求金額のうち少なくとも1億2248万4929円の部分については,その請求に根拠がないことを十分に知り又は知ることが極めて容易であったにもかかわらず敢えて請求に及んだもので,上記部分に係る本訴の提起は被告に対する不法行為であるなどと主張して,会社法350条に基づき,弁護士報酬相当額1157万4826円及びこれに対する不法行為(本件本訴の提起)後の日である平成24年8月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「反訴請求1」という。)とともに,②原告と被告は,本件土地の北側約半分のうちの北側部分に残置された地中杭の撤去費用を原告が負担する旨合意したなどと主張して,同合意に基づき,撤去費用相当額527万2575円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成25年9月25日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「反訴請求2」という。)事案である。
2  前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば容易に認められる事実)
(1)  当事者
ア 原告は,不動産の売買,仲介及び斡旋等を目的とする株式会社である。
イ 被告は,不動産の売買,賃貸借及び管理業等を目的とする株式会社であり,株式会社a(以下「a社」という。)の子会社である。a社は,仙台駅東口に既存店舗を開設していたが,新規に開設する店舗用建物(以下「新規店舗建物」という。)及び駐車場建物を建設するための土地を求めていた。
(2)  本件土地及び地上建物の買受け
ア 本件土地は,仙台駅東口に所在する別紙1物件目録記載第2の1ないし7の7筆の土地であり,その位置関係は別紙2「本件土地と付近土地の略図」のとおりである。
イ 本件土地上には,別紙物件目録記載第1の地上14階地下1階建ての建物が存在した(以下「本件建物」といい,本件土地と併せて「本件不動産」という。)。本件建物は,仙台駅東第一地区市街地再開発組合が所有しており,同組合からb株式会社(以下「b社」という。)に賃貸され,その一部がスーパーマーケットを営む合同会社c(以下「c社」という。)等のテナントに転貸されていた。
ウ 本件不動産には,b社を債務者とする共同根抵当権が設定されていたところ,平成20年12月24日,上記根抵当権に基づく担保不動産競売手続が開始された(仙台地方裁判所平成20年(ケ)第1245号。以下「本件競売手続」という。)。原告は,本件競売手続において本件不動産を競落し,平成22年12月6日,被告の出損に係る買受代金7億1162万9200円を納付して,その所有権移転登記を得た。
エ 被告は,上記買受代金相当額を出損するに当たり,原告との間で,要旨以下の内容の消費貸借契約書(以下「本件消費貸借契約書」という。)を取り交わした(甲5。契約の効力については争いがある。)。
(ア) 借入金額 7億1162万9200円
(イ) 資金使途 本件競売手続の買受代金払込み
(ウ) 借入日 平成22年12月6日
(エ) 利息 無利息
(オ) 最終弁済期限 平成23年8月31日
(カ) 遅延損害金利率 年20パーセント
(3)  本件土地の売買契約と当初内金の支払
ア 原告と被告は,平成22年12月6日,本件土地について,要旨以下の内容で売買契約を締結した(以下「本件売買契約」といい,同契約に係る契約書を「本件売買契約書」という。甲4)。
(ア) 原告は,被告に対し,平成23年8月31日までに,本件土地を更地(本件土地上及びその地下に建物,構築物又は構造物などが一切存在しない状態)にして引き渡す(1条)。
(イ) 売買代金(以下「本件売買代金」という。)は24億円とする(1条)。
(ウ) 本件売買代金の決済は次のとおり行う(4条)。
a 被告は,原告に対し,本件不動産について被告に対する所有権移転仮登記手続が完了し,その旨の登記事項証明書が取得できたときに,本件売買代金の当初内金8837万0800円を支払う(4条1項)。
b 被告は,原告に対し,原告が平成23年3月31日までに本件建物の全ての占有者を退去させて解体工事に着手できる状態にしたことを確認した場合,同年4月1日に本件売買代金の中間金8億円を支払う(4条2項)。
c 被告は,原告に対し,原告が平成23年8月31日までに本件土地を更地にし,同年9月1日に瑕疵のない完全な所有権で本件土地を引き渡し,かつ,本件土地の所有権移転本登記手続をするのと引き換えに,本件売買代金の残金15億1162万9200円を支払う。ただし,被告が原告に貸し付けた7億1162万9200円を上記残金の一部に対当額で当然に相殺充当し,残りの8億円を支払うものとする(4条3項)。
(エ) 本件土地の所有権は,最終決済の完了時に原告から被告へ移転する(10条1項)。
(オ) 本件土地について平成23年1月1日以降に原告名義で賦課された固定資産税,都市計画税その他の公の負担金は,引渡日までは原告が,引渡日の翌日以降は被告が日割計算で負担するものとし,最終決済時に清算する(12条2項)。
イ 原告は,平成22年12月6日,被告に対し,本件土地について,同日付け売買を原因とし,売買代金完済を条件とする条件付所有権移転仮登記手続,及び債務者を原告,債権の範囲を金銭消費貸借取引等,極度額を50億円とする根抵当権設定仮登記手続を,本件建物について,同日付け贈与を原因とし,平成23年9月1日を始期とする始期付所有権移転仮登記手続,及び上記と同様の根抵当権設定仮登記手続を行った(甲1,2の1~7)。
ウ 被告は,原告に対し,平成22年12月24日,本件売買代金のうち8837万0800円を支払った。
(4)  本件建物の解体工事
ア 原告は,平成23年3月21日,株式会社e(以下「e社」という。)との間で,代金2億5725万円(消費税を含む。),工事期間同年4月15日から同年8月末日までとの約定で,本件建物の解体工事に関する請負契約を締結した(ただし,上記請負契約に係る契約書の日付は同年3月11日付けとされた。甲6)。
イ 原告は,本件売買契約において,平成23年3月中に解体工事に着手することとされていたが,解体工事の着工が遅れたことから,同年4月1日,被告に対し,同月中に本件建物の解体工事に着工する予定であることを確認する旨の書面を差し入れた(乙2)。
ウ e社は,平成23年4月9日から同年11月26日までの間,本件建物の解体工事を行った(甲18)。
(5)  依頼書の差入れと本件売買代金の一部の支払
ア 原告は,平成23年6月28日,被告に対し,解体工事の進捗が遅れているとして,①本件土地を同年9月30日までに引き渡すこと,②引渡し遅延に対しては,同月1日から引渡済みまで1日当たり24億円に対する年15パーセントの割合により日割計算した遅延損害金(1日当たり約98万6300円)を本件売買代金から差し引かれるものとすること,③原告は,本件土地の所有権移転本登記に必要な書類を被告に預託するが,被告は原告に債務不履行がない限り上記書類を登記手続等に利用しないものとすること,④解体工事は同年9月30日までに完了することなどを約するとともに,本件売買代金のうち8億円を中間金として同年6月30日までに支払うよう依頼する旨の「依頼書(兼承諾書)」と題する書面(以下「本件依頼書1」という。)を差し入れた(乙3の1)。
イ 被告は,平成23年6月30日,原告に対し,本件売買代金のうち8億円を支払った。
(6)  d株式会社による工事
ア 被告は,平成23年8月,原告との間で,本件土地の北側約半分の部分(以下「北工区」という。)について,①被告は,仙台市との間で市道の付け替えを行う必要があるところ,北工区のうちの南側部分(別紙3の「杭位置現況図」の「市道付替用地」に相当する部分。以下「市道付替用地」という。)については,原告において地中杭(本件建物の基礎杭)の杭頭を処理した上で若干の埋戻し工事(以下,併せて「杭頭処理工事」という。)を行うことにより,地中杭の大半を残置することを認めること,②原告は,杭頭処理工事と共に,更なる埋戻しと整地,転圧工事(以下,併せて「整地転圧工事」という。)を行った上,被告に市道付替用地を引き渡すことなどを合意した(ただし,工事代金の負担については争いがある。)
イ 原告は,d株式会社(以下「d社」という。)に対し,平成23年9月11日,次のとおり代金合計950万2500円(消費税を含む。)の約定で,市道付替用地について,杭頭処理等の工事(以下「d社工事」という。)を発注し,d社はd社工事を行った(甲8の1~3)。
(ア) 杭頭処理工 代金346万5000円
(イ) 取付道路工事 代金420万円
(ウ) 山砂 代金183万7500円
ウ 北工区の北側部分(別紙3「杭位置現況図」の「店舗用地3」に相当する部分。以下「店舗用地」という。)は,新規店舗建物の敷地の一部となるものであったところ,被告は,平成23年8月,開発工事の許可を急ぐ必要があるとして,原告に対し,北工区(店舗用地と市道付替用地)を先行して引き渡すよう要請した。
(7)  依頼書等の差入れと本件売買代金の一部の支払
ア 原告は,平成23年9月16日,被告に対し,本件依頼書1のとおり引渡し遅延の責任があることを前提として,①北工区は同月30日までに被告の指示どおり埋め戻して被告に引き渡すこと,②本件土地の南側約半分の部分(別紙3「杭位置現況図」の「駐車場用地」に相当する部分。以下「南工区」又は「駐車場用地」という。)は,同年10月31日までに被告に引き渡すこと,③本件土地の所有権移転本登記手続を同年9月29日までに行うこと,④本件売買契約書のとおりに処理及び撤去できない工事分は本件売買代金から減額することなどを約するとともに,本件売買代金の残金15億1162万9200円のうち6億円を同月30日までに支払うよう依頼する旨の「依頼書(兼承諾書)」と題する書面(以下「本件依頼書2」という。)を差し入れた(乙4)。
イ 原告と被告は,平成23年9月29日,本件土地の所有権移転登記の時期及び所有権移転の時期をいずれも同日に変更することなどを内容とする変更契約を締結したところ,その変更契約書の中で原告の本件土地の引渡し遅延の責任が減免されないことが確認されている(乙5)。
ウ 被告は,平成23年9月30日,原告に対し,本件売買代金のうち6億円を支払った。
(8)  北工区の引渡しとf株式会社による新築工事
原告は,平成23年9月30日までに,被告に対して北工区を引き渡した。新規店舗建物の新築工事の請負業者であるf株式会社(以下「f社」という。)は,同年10月1月から,北工区において,新規店舗建物の新築工事に着手した。
(9)  同意確約書の差入れ
原告は,平成23年11月25日,被告に対し,駐車場用地の解体工事は未了だが,本件土地のこれ以上の引渡し遅延は原告の賠償責任を拡大するだけであるとして,不完全履行ながら同月28日までに本件土地を引き渡し,残存解体工事や土地補修工事などの瑕疵の補修費用及びその他の被告の損害並びに原告の違約金や遅延損害金等は,後日本件売買代金から控除するなど被告の処理に従うことを確約する旨を記載した同意確約書(以下「本件同意確約書」という。)を差し入れた(甲11)。
本件同意確約書においては,上記のほか,①駐車場用地は,別紙3「杭位置現況図」の赤色着色部分の地中杭を残置した状態で埋め戻し,平成23年11月28日までに被告に引き渡すこと,②本件売買代金の最終決済日は,原告が負担する債務や費用等(「杭を残置することの違約金(被告の将来の地中杭撤去費用分とする。)」,「新店舗建設工事につき,地中杭を含む地中残置物により追加発生する費用の全額」,「その他,本件売買契約書等に基づき原告が負担し又は被告に支払うべき一切の金額」)が確定した後に被告が決定する日とすることなどが記載されていた。
(10)  駐車場用地の引渡し
原告は,平成23年11月28日,被告に対し,別紙3「杭位置現況図」の赤色着色部分である10本の地中杭が残置された状態のまま駐車場用地を引き渡し,本件土地の引渡しを完了した。
(11)  被告による残代金の通知と原告による残代金の支払催告
被告は,原告に対し,平成23年12月9日,本件売買代金の残金9億1162万9200円から,①土地引渡し遅延損害金8778万0821円(本件売買代金24億円に対する平成23年9月1日から同年11月28日までの年15パーセントの割合による約定遅延損害金),②貸付元金7億1162万9200円,③貸付返済遅延損害金3470万4108円(上記貸付元金に対する平成23年9月1日から同年11月28日までの年20パーセントの割合による約定遅延損害金),④駐車場用地に残置された地中杭の解体費用5743万5000円及び⑤将来の地中杭撤去費用987万1208円を控除し,⑥固定資産税等の清算金25万5340円及び⑦d社工事の代金のうち被告が負担すべきものとして算定した383万2500円を加算すると,被告が原告に支払うべき残金は1429万6703円である旨通知するとともに,同月17日,上記残金の受領を催告した(乙12~14)。
これに対し,原告は,同月19日付けで,1429万6703円の受領を拒絶するとともに,同月26日,被告に対し,本件売買代金の残金2億円を同月30日までに支払うよう催告した(甲12)。
(12)  被告による供託と裁判上の和解
ア 被告は,平成23年12月26日,横浜地方法務局に対し,被告を供託者,原告を被供託者とし,原告がd社に対し工事代金を支払ってd社工事を完了させることを反対給付として,本件売買代金の残金1429万6703円を供託した(横浜地方法務局平成23年度金第9956号。以下「本件供託」という。甲13)。
イ 原告と被告は,平成26年1月15日,本件訴訟における第12回弁論準備手続期日において,本件供託について,原告が還付請求することを被告が承諾するとともに,原告が反対給付の履行の完了を確認する旨の裁判上の和解をした(顕著な事実)。
(13)  新規店舗建物と駐車場建物の完成
a社は,平成24年のゴールデンウィークに新規店舗をオープンすることを予定していたところ,同年3月26日頃には,地上8階地下1階建ての新規店舗建物と地上4階建ての駐車場建物が完成し,同年4月12日にはそれらの所有権保存登記を得て,予定どおり新規店舗をオープンした(甲3の1,2)。
3  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件売買代金から控除すべき金額はいくらか)について(本訴請求1)
(被告の主張)
被告は,原告に対し,以下の各債権を有しているところ,これらを自働債権として,本件売買代金債権と対当額で相殺する(原告との間の相殺合意又は原告に対して相殺の意思表示をしたことによる。)。また,原告と被告は,原告の本件売買契約の債務不履行に関し,以下の各債権を本件売買代金から控除する旨の和解契約を締結した。
ア 土地引渡し遅延損害金 8778万0821円
(ア) 原告と被告は,本件売買契約において,本件土地の引渡期限を平成23年8月31日と合意した上,本件依頼書1において,原告が本件土地の引渡しを遅延した場合には,平成23年9月1日から引渡済みまで24億円に対する年15パーセントの割合により日割計算した遅延損害金(遅延日数1日当たり約98万6300円)を支払うこと及び上記遅延損害金を本件売買代金から差し引く(相殺する)ことを合意した。
上記引渡期限の翌日である同年9月1日から本件土地の引渡しがされた同年11月28日までの89日間に発生した遅延損害金は,8778万0821円(2,400,000,000×0.15×89/365=87,780,821)であるから,同額を本件売買代金から控除すべきである。
(イ) 原告は,本件売買契約上,平成23年3月中に解体工事に着手する義務を負っていたところ,原告が実際に解体工事に着手したのは同年4月中旬頃であった。また,原告は,被告に対し,本件建物のテナントであるc社との間では,同年3月中に立ち退くことで話が着いていると説明していたが,実際に原告がc社との間で賃貸借契約を合意解約したのは同年4月21日であり,c社が退去したのは同年5月13日であった。したがって,解体工事の着工が遅れ,引渡しが遅れたのは,ひとえに原告の責任である。
原告は,東日本大震災のために解体工事が遅延したと主張するが,建物の解体工事は,費用を投じてより効率の良い工法をとることや多くの重機,人員を投入することで迅速化させることが可能である。したがって,解体工事が遅延したのは,単に原告の用いた手段が脆弱なものであったからにすぎず,原告が遅延の責任を免れる理由とはならない。なお,余震の時間はせいぜい数秒間から数分間にすぎず,安全点検を含めても多大な時間を要するものではない。
(ウ) 原告と被告は,本件同意確約書において,被告が,原告に対し,不完全履行ながらも地中杭が残置されたままの状態での本件土地の引渡しを認め,他方,原告が,被告に対し,本件土地の引渡しまでの間の履行遅滞に基づく責任を免責されず,その賠償や費用等の金額を本件売買代金から控除することを認める旨合意した。上記合意は,和解契約の性質を有するものであるから,原告は遅延の責任を否定することはできない。
イ 貸金の元金及び遅延損害金 7億4633万3308円
被告は,原告が本件競売手続において本件不動産を買い受ける費用に充てるため,原告に対し,平成22年12月6日,返済期限平成23年8月31日,遅延損害金利率年20パーセントの約定で,7億1162万9200円を貸し付けるとともに(以下「本件貸付金」という。),本件売買契約において,本件土地の引渡し時に上記貸金債権と本件売買代金債権とを対当額で相殺することを合意した(甲4の4条3項)。
本件貸付金に対する上記返済期限の翌日である平成23年9月1日から本件土地の引渡しがされた同年11月28日までの89日間に発生した約定遅延損害金は3470万4108円であるから(711,629,200×0.2×89/365=34,704,108),本件貸付金7億1162万9200円及び上記遅延損害金3470万4108円の合計7億4633万3308円を本件売買代金から控除すべきである。
ウ 駐車場用地の残置杭解体費用 5743万5000円
原告と被告は,本件依頼書2及び本件同意確約書において,駐車場用地に残置された地中杭の解体(破砕処理)費用を原告が負担すること及びその費用は本件売買代金から差し引く(相殺する)ことを合意した。被告は,f社に駐車場用地の地中杭の解体作業を発注したところ,その代金額は5743万5000円であったから,同額を本件売買代金から控除すべきである。
エ 駐車場用地の残置杭撤去費用 987万1208円
原告と被告は,本件依頼書2及び本件同意確約書において,駐車場用地に残置された地中杭を解体した後に残る杭の残部について,将来これを撤去する際に必要となる費用を原告が負担すること及びその費用は本件売買代金から差し引く(相殺する)ことを合意した。上記撤去費用は987万1208円を下らないから,同額を本件売買代金から控除すべきである。
(原告の主張)
ア 土地引渡し遅延損害金について
(ア) 解体工事の着工が遅れたのは,東日本大震災及びその余震が断続的に発生したためである。c社は,本来,平成23年3月中に退去する予定であったが,東日本大震災の発生を受けて,原告に対し,人道的見地から1か月程度は営業を継続する必要がある旨要請してきたため,原告はこれを認めたのであるが,このことは,原告の代理人であるC1ことC(以下「C」という。)から被告の担当者にも伝えていた。原告とe社は,c社が退去した同年5月8日以降に本格的に解体工事に取り掛かったが,c社の退去前から,c社の営業に支障のない範囲で解体工事に着手していたのであり,c社の退去の遅れは解体工事の遅延とは無関係である。
(イ) 解体工事を進めるには,各階の天井と床の間に支柱を設置して,建物自体の崩壊を防ぎながら作業を行う必要があるところ,比較的強度な余震があると,その都度,支柱にずれが生じていないかなどの安全点検が必要であった。東日本大震災後の仙台市内では,断続的に余震が発生していたため,通常よりもはるかに時間を要することとなったのである。
(ウ) 原告とe社の努力により,平成23年8月頃には,解体工事を早期に完了し,本件土地を引き渡す目途も出てきたが,その頃,被告の担当者であるD(以下「D」という。)は,Cに対し,突如として,付替道路工事と北工区の先行引渡しを求めた。すなわち,Dは,Cに対し,新規店舗建物の建築確認を急ぐため付替道路工事を行う必要があるところ,本件土地の登記名義人は原告であるから,原告の名で上記工事を発注するよう要請するとともに,新築工事の着工を最優先にしたいなどとして,北工区を先行して引き渡すよう要請した。北工区を先行して引き渡すと,解体のための重機が使用できなくなるなど,駐車場用地の解体工事に遅れが生じるおそれがあったが,Dは,北工区の引渡しを完了したら,駐車場用地には立体駐車場を建てるので,その工期は3か月で足り,最悪でも年内に駐車場用地の解体工事を終わらせればよいなどと説明したため,原告は,北工区の先行引渡しに応じたのである。仮に,北工区を引き渡さずに解体工事を継続していたとすれば,解体工事は,平成23年10月10日には終了し,原告は,被告に対し,地中杭を撤去した上,本件土地の全体を引き渡すことが可能であった。しかるに,被告の要請により北工区を先行して引き渡したため,f社による新築工事のため解体工事のスペースが限定されるなど,駐車場用地の解体工事に支障が生じることとなり,本件土地の引渡しが遅延したのである。
(エ) 以上のとおりであるから,本件土地の引渡しが遅延したことについて,原告に責めに帰すべき事由はない。なお,本件依頼書1や本件同意確約書は,宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)上の規制等を考慮して形式的に授受したものにすぎないのであり,これらが有効であることを前提とする被告の主張は失当である。
イ 貸付元金及び遅延損害金について
本件売買代金から7億1162万9200円を控除すべきことは争わないが,これは貸付金ではなく本件売買代金の一部として原告に交付されたものである。すなわち,原告は,本件競売手続において本件不動産を買い受けるに当たり,買受費用を金融機関からの融資で賄う予定でいたが,手違いにより融資を受けることができなくなった。そこで,原告は,被告に対し,本件売買代金の一部の前払を受けて本件不動産の買受費用に充てることにしたが,宅建業法上の手付金規制に抵触するおそれがあったことから,貸付けの形を採ることとして,形式的に本件消費貸借契約書を作成したのである。したがって,実際は消費貸借契約を締結したのではなく,遅延損害金の約定もあくまで形式的に契約書に記載されたものにすぎないのであるから,遅延損害金相当額の控除は認められない。
ウ 駐車場用地の残置杭解体費用について
地中杭の処理は,本件売買契約の当初から,原告と被告が協議して決めることとされていたところ,駐車場用地の地中杭は,被告及びf社が了解した上で地中に残置することになったのであって,原告に契約違反はない。また,本件同意確約書を差し入れた時点では,本件売買代金の残金のうち八,九割の支払は当然の前提とされており,被告が主張するような金額が控除されることなど全く想定されていなかった。原告と被告との従前のやりとりでは,控除されるとしてもせいぜい二,三千万円程度の金額が想定されていたのであって,被告主張の金額を控除することなど到底認められない。
エ 駐車場用地の残置杭撤去費用について
争う。前記ウのとおりである。
(2)  争点(2)(被告はd社工事の代金を負担する義務を負うか)について(本訴請求2)
(原告の主張)
原告と被告は,d社工事の代金を被告が負担することを合意した。d社工事は,被告が本件土地の所有権を有していないため,原告が被告に代わって発注者となったものであり,その工事代金は被告が負担する約束であった。d社工事の代金は合計950万2500円であるところ,原告は,d社から上記代金及びこれに対する平成24年1月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払の請求を受け,これを支払った。したがって,被告は,原告に対し,主位的には委任事務処理費用又は不当利得として,予備的には債務不履行に基づく損害賠償として,上記金額を支払うべきである。
(被告の主張)
原告と被告が,d社工事の代金を被告が負担することを合意したことは否認する。本来,原告は,被告に対し,本件土地の全体を更地化した上で引き渡す義務を負っており,地中杭を撤去することが必要であったところ,被告は,市道付替用地については,将来の撤去費用は原告負担とするものの,地中杭の杭頭を処理して埋め戻すことで,地中杭を残置することを認めることにより,原告の義務の軽減を図ったのである。したがって,d社工事は,主として原告が原告自身のために発注したものであるから,被告が工事代金を負担すべきものではない。
もっとも,d社工事には,上記の杭頭処理工事だけでなく,被告がすべき付替道路工事のために必要となる整地転圧工事が含まれるところ,これは被告が負担すべきものであることから,被告は,本件売買代金の残金に整地転圧工事分の代金383万2500円を加算して本件供託をしたのである。したがって,被告が負担すべき工事代金は既に原告に支払済みである。
(3)  争点(3)(原告は店舗用地に残置された地中杭の解体撤去費用を負担する義務を負うか)について(反訴請求2)
(被告の主張)
原告と被告は,本件依頼書2及び本件同意確約書において,店舗用地に残置された地中杭の解体撤去費用を原告が負担することを合意した。上記杭の解体撤去費用は,527万2575円を下らない。
(原告の主張)
北工区に残置された地中杭は,新規店舗建物の新築工事に支障を生ずるものではなかったし,新規店舗建物も駐車場建物も全て完成しており,本件土地の資産価値に何ら影響するものではない。このように,本件土地の資産価値に影響しない地中杭の撤去費用を請求する必要はないのであるから,撤去費用の負担に関する合意は,現実に被告側の行う新築工事等に支障がある場合を想定したものにすぎず,撤去の必要がなくなったことが判明した時点で,その意味を失ったというべきである。
したがって,原告は,被告に対し,北工区の地中杭の撤去費用について,支払義務を負わない。
(4)  争点(4)(本件本訴の提起が被告に対する不法行為となるか)について(反訴請求1)
(被告の主張)
ア 原告の本訴請求1のうち,本件土地の引渡し遅延による遅延損害金8778万0821円及び本件貸付金の返済遅延による遅延損害金3470万4108円の合計1億2248万4929円に相当する部分は,既に相殺により消滅している(前記(1)の被告の主張)。そして,原告代表者は,本件依頼書2及び本件同意確約書に自ら署名押印して被告にこれらを差し入れたのであり,本件土地の引渡し遅延や本件貸付金の返済遅延の責任を自認していたのである。
したがって,原告代表者は,本訴請求1のうち少なくとも1億2248万4929円の部分については,その請求に事実的,法律的根拠がないことを知り又は通常人であればそのことを容易に知り得たにもかかわらず,敢えてその請求に及んでいるのであって,上記請求に係る本訴の提起は,訴権を濫用するものとして,被告に対する不法行為となる。
原告代表者は,原告の職務に関して上記不法行為を行ったものであるから,原告は,被告に対し,会社法350条に基づき,被告が応訴のために被った損害を賠償する責任を負う。
イ 被告は,原告から本訴を提起されて応訴を強いられたことから,被告訴訟代理人に対し,日本弁護士連合会が定めていた旧報酬基準に従って算定した着手金732万3828円及び成功報酬1464万7657円の合計2197万1485円の支払を約して訴訟追行を委任したが,原告の本訴請求金額合計2億0950万2500円から上記1億2248万4929円を控除した残額8701万7571円を前提として相当報酬額を算定すると,着手金346万5553円及び成功報酬693万1106円の合計1039万6659円となる。
したがって,上記の差額である1157万4826円は,原告代表者の上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
ウ よって,被告は,原告に対し,会社法350条に基づき,1157万4826円及びこれに対する不法行為後の日である平成24年8月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(原告の主張)
原告は,本件売買代金から控除がされるとしても,98万円強の遅延損害金と地中に残置された杭の撤去等の費用であり,それらはせいぜい二,三千万円にすぎないと考えていた。そして,被告との従前のやりとりから,具体的な控除額は双方協議して決定するとの認識でいたのであって,1億8500万円強もの金額が控除されることなど一切想定していなかった。原告はだまし討ちにあったに等しいのであって,原告による本件本訴の提起が訴権の濫用ということはない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(本件売買代金から控除すべき金額はいくらか)について
(1)  土地引渡し遅延損害金について
ア(ア) 原告と被告は,本件売買契約において,本件土地の引渡期限を平成23年8月31日と合意していたところ,原告は,同年6月28日,被告に対し,解体工事の進捗が遅れていたことから,引渡期限を同年9月30日に延期するが,本件土地の引渡し遅延については24億円に対する同年9月1日から引渡済みまで年15パーセントの割合により日割計算した遅延損害金を支払うことなどを記載した本件依頼書1を差し入れ,その後も,上記遅延の責任を減免されない旨記載された同年9月16日付け本件依頼書2,同月29日付け変更契約書を被告に差し入れ,同年11月25日には,本件同意確約書により上記遅延の責任が存在することを前提にして,同責任を拡大させないため,不完全履行の状態で本件土地を引き渡すことを合意しているのである(前提事実(5)ア,(7)アイ,(9))。これは,損害賠償額の予定に係る合意と認められるところ,本件土地全体の現実の引渡しは,同年11月28日になったのであるから,原告は,被告に対し,本件土地の引渡義務の履行遅滞に基づく遅延損害金として,上記約定に従って算定された8778万0821円を支払う義務を負う。
(計算式) 2,400,000,000×0.15×89/365=87,780,821
(イ) そして,証拠(甲11,乙3の1)によれば,原告と被告は,土地引渡し遅延損害金について本件売買代金から差し引くことを合意したことが認められるから,本件売買代金債権と上記遅延損害金債権8778万0821円とは対当額で相殺されることになる。
イ 原告は,本件土地の引渡しが遅延したのは,東日本大震災及びその余震の影響で解体工事が遅れたためであるとか,被告から付替道路工事及び北工区の先行引渡しを要請されてこれに応じたためであり,原告に帰責事由はない旨主張するところ,証拠(甲18,19,23,証人C)によれば,東日本大震災及びその余震が解体工事の進捗に影響を及ぼしたことはうかがえるところである。
しかし,原告が本件依頼書1を差し入れたのは平成23年6月28日であり,地震が解体工事の進捗状況に影響を与え,又は与えるであろうことを認識し又は認識し得た時期であるにもかかわらず,何らの留保もなく同年9月1日からの遅延損害金の支払を約定し,その後も重ねて上記約定を確認していることに照らすと,原告と被告は,原告において引渡し遅延について帰責事由がないことも争えないとする趣旨で上記損害賠償額の予定をしたものと解することができる。また,仮にそのような趣旨の合意でなかったとしても,原告と被告は,平成23年11月25日,原告の債務不履行に関し,同月28日をもって不完全履行のまま本件土地の引渡しを受け,上記引渡し遅延による損害等原告の債務不履行により被告に生ずる損害を本件売買代金から控除する旨の和解契約を締結したものであるから,帰責事由が存在しない旨の原告の主張は採用することができない。
(2)  本件貸付金及び遅延損害金について
ア 原告と被告が,平成22年12月6日,被告が原告に対し返済期限平成23年8月31日,遅延損害金利率年20パーセントの約定で本件競売手続の買受代金7億1162万9200円を貸し付ける旨記載された本件消費貸借契約書を取り交わしたことは前提事実(2)エのとおりである。
イ 証拠(乙22の3,乙23,乙26~28,46の1~3,乙49,証人D,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告は,本件土地の売買代金を25億円とすることで合意していたこと,原告は,当初,本件競売手続の買受代金を湘南信用金庫から借り入れる予定でいたところ,Cの勧めで被告から本件売買代金の一部を先行して受領し,それにより買受代金を支払う方が費用の節約になるとして上記借入申込みを取り下げ,被告に申し入れたが,被告から拒絶されたこと,そこで,原告は,被告に対し,買受代金について借入れの申込みをし,被告からそれを受ける条件として24億円に減額することを求められ,これを受け容れたこと,また,被告の希望は利息年15パーセントの後払,遅延損害金利率年20パーセントであったが,原告は,無利息を希望し,被告も代金額が減額されることからこれを応諾したこと,原告と被告は,平成22年12月6日,極度額50億円として本件不動産に根抵当権を設定する契約を締結していることが認められる。
上記認定事実によれば,原告と被告との間で本件消費貸借契約書記載のとおりの消費貸借契約が締結されたことが認められる。なお,原告代表者及び証人Cは,本件消費貸借契約書について,宅建業法上の手付金規制を避ける目的で形式的に作成されたもので,実際は本件売買代金の前払を受けただけであり,遅延損害金の約定も形式的なものにすぎない旨供述するが,宅建業者である原告の宅建業法違反を回避する目的であるならば,7億1162万9200円のみならず本件売買代金の内金として支払われた平成22年12月24日の8837万0800円,平成23年6月30日の8億円についても消費貸借契約書が作成されるべきであるが,そのような消費貸借契約書が作成された形跡はないことに照らすと,上記供述は前掲証拠との対比において到底信用することができない。
ウ 原告と被告は,本件売買契約において,本件貸付金は本件売買代金残金に対当額で当然に相殺充当されることを合意していた(前提事実(3)ア(ウ)c)のであるから,本件売買代金債権は,本件貸付金7億1162万9200円及び遅延損害金3470万4108円の合計7億4633万3308円に係る債権と対等額で相殺された。
(計算式) 711,629,200×0.2×89/365=34,704,108
711,629,200+34,704,108=746,333,308
(3)  駐車場用地の残地杭の解体費用について
本件同意確約書には,「新店舗建設工事につき,地中杭を含む地中残置物により追加発生する費用の全額」を本件売買代金から控除する旨が記載されているところ,証拠(証人C,同D)によれば,上記費用は,本件土地上に新たに建設する建物の杭が地中杭に干渉する場合に,地中杭を解体する費用を原告が負担する趣旨を含むものとして定められたことが認められるから,原告と被告は,本件同意確約書により,駐車場用地に残置された地中杭の解体費用を原告が負担すること及びその費用相当額を本件売買代金から控除することを合意したものと認められる。
そして,証拠(乙7,32の1~3,乙53の1,2,証人D)によれば,駐車場用地に残置された10本の地中杭のうち6本が駐車場建物の基礎杭に干渉するものであったこと,a社は,f社に対し,駐車場用地の全ての地中杭の解体工事を代金5743万5000円で発注したこと,f社は,上記発注を受けて,地中杭と駐車場建物の基礎杭との干渉箇所を解消するなどの工事を施工したことが認められるから,上記合意に基づき,上記金額の解体費用を本件売買代金から控除するのが相当である。
(4)  駐車場用地の残置杭の撤去費用について
本件同意確約書には,「杭を残置することの違約金(被告の将来の地中杭撤去費用分とする。)」を本件売買代金から控除する旨が記載されているから,原告と被告は,本件同意確約書により,本件土地の地中杭の将来の撤去費用を原告が負担すること及びその費用相当額を本件売買代金から控除することを合意したことが認められる。
そして,証拠(乙8の1,2,45の1,2)によれば,専門業者は,駐車場用地の地中杭の撤去費用を987万1208円と算定したことが認められるところ,これに反する証拠は提出されていないから,上記合意に基づき,上記金額の撤去費用を本件売買代金から控除するのが相当である。
(5)  本件土地の引渡し時における本件売買代金の残金は9億1162万9200円であったところ,土地引渡し遅延損害金8778万0821円,本件貸付金7億1162万9200円及び返済遅延損害金3470万4108円,駐車場用地の残置杭の解体費用5743万5000円及び上記残置杭の将来の撤去費用987万1208円が対当額で相殺されたから,本件売買代金の残金は1020万8863円となる。そして,被告は,上記金額に,固定資産税等の清算金25万5340円及びd社工事の代金のうち被告が負担すべきものとして算定した整地転圧工事費用383万2500円を加算した1429万6703円を供託したから(前提事実(12)),本件売買代金に係る債権は既に消滅したものと認められる。
したがって,原告の本訴請求1は理由がない。
2  争点(2)(被告はd社工事の代金を負担する義務を負うか)について
(1)  原告は,原告と被告との間で,d社工事の代金を被告が負担する旨の合意があったと主張する。しかし,d社工事には,杭頭処理工事と整地転圧工事が含まれているところ(前提事実(6)ア),証拠(証人D,同C)によれば,整地転圧工事の分は被告が負担し,杭頭処理工事の分は原告が負担すべきものとされていたことが認められる。したがって,原告と被告は,d社工事のうち,整地転圧工事の代金についてのみ被告の負担とすることを合意したものと認められる。
そして,証拠(乙10の1,2)によれば,整地転圧工事の代金については,専門業者が383万2500円と算定したことが認められるところ,これを覆すに足る証拠はないから,整地転圧工事の代金は383万2500円であると認めるのが相当である。
そうすると,被告は,上記合意に基づき,原告に対し,整地転圧工事の代金383万2500円を支払うべきところ,被告は,本件売買代金の残金に上記383万2500円を加算して本件供託を行ったのであるから(前提事実(12)),被告が負担すべき上記工事代金は,既に原告に対し弁済されたものと認められる。
(2)  したがって,原告の本訴請求2は理由がない。
3  争点(3)(原告は店舗用地に残置された地中杭の解体撤去費用を負担する義務を負うか)について
(1)  原告と被告は,本件同意確約書により,本件土地の地中杭の将来の撤去費用を原告が負担すること及びその費用相当額を本件売買代金から控除することを合意している(前提事実(9))。
そして,証拠(乙45の1,2)によれば,専門業者が店舗用地に残置された地中杭5本の撤去費用を527万2575円と算定したことが認められるところ,これを覆すに足る証拠はないから,店舗用地の地中杭の撤去費用は,527万2575円であると認めるのが相当である。
したがって,原告は,被告に対し,上記合意に基づき,店舗用地の地中杭の撤去費用として,527万2575円を支払う義務を負う。
(2)  これに対し,原告は,店舗用地の残置杭は,新規店舗建物の建設に当たり何らの支障にもなっておらず,本件土地の資産価値に影響しないから清算の対象外である旨主張する。しかし,本件同意確約書の記載内容からは,店舗用地の残置杭を清算対象から除外する趣旨を読み取ることはできない。
また,証人Cは,北工区の杭は全部撤去した旨証言するが,e社の実施した工事工程に基礎解体(北)の表記がないこと(甲18)などに照らし,Cの上記証言は,証人Dの証言との対比においてたやすく採用することができない。
(3)  したがって,被告は,原告に対し,上記合意に基づき,527万2575円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成25年9月25日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるから,被告の反訴請求2は理由がある。
4  争点(4)(本件本訴の提起が被告に対する不法行為となるか)について
(1)  訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁,最高裁平成11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号85頁参照)。
(2)  原告の本訴請求1が事実的根拠を欠くものといわざるを得ないことは,前記1のとおりである。しかし,証拠(証人C,同D,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,被告の平成23年12月9日付け通知まで,被告の担当者から原告代表者及びCに対して,本件売買代金から控除される具体的な金額について説明されたことはなかったこと,Cは,本件土地の引渡し遅延の最大の原因は,東日本大震災の影響で解体工事が遅れたことにあると認識しており,控除金額はせいぜい2000万円ないし3000万円であると考えていたこと,原告代表者は,Cから,控除されるとしても2000万円程度である旨説明を受けていたことが認められる。これらの事実からすると,原告代表者において,本件売買代金の残金2億円からの控除金額はせいぜい2000万円程度であり,ほぼ全額の支払を受けることができると認識していたとしても,必ずしも不合理であるとはいえないから,原告代表者が,本訴請求1において主張した権利について,事実的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常人であれば容易に知ることができたのに,あえて本件本訴を提起したとまでは認めることができない。
したがって,原告による本訴請求1に係る訴えの提起は,いまだ裁判制度の趣旨に照らし著しく相当性を欠くものとはいえないから,被告に対する不法行為であるということはできない。
(3)  したがって,被告の反訴請求1は理由がない。
第4  結論
よって,被告の反訴請求2は理由があるから認容することとし,原告の本訴請求1,2及び被告の反訴請求1はいずれも理由がないから棄却し,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 足立哲 裁判官 川﨑聡子 裁判官 齊藤隆広)

 

〈以下省略〉

 

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