【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(115)平成27年 3月25日 東京地裁 平25(ヒ)234号 各株式取得価格決定申立事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(115)平成27年 3月25日 東京地裁 平25(ヒ)234号 各株式取得価格決定申立事件

裁判年月日  平成27年 3月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  決定
事件番号  平25(ヒ)234号・平25(ヒ)236号・平25(ヒ)238号・平25(ヒ)241号・平25(ヒ)245号・平25(ヒ)246号・平25(ヒ)249号・平25(ヒ)250号・平25(ヒ)255号・平25(ヒ)256号
事件名  各株式取得価格決定申立事件
上訴等  即時抗告  文献番号  2015WLJPCA03256013

要旨
◆利害関係参加人株式の公開買付け実施後にされた同人による全部取得条項付種類株式の全部取得について、同人の株主であった申立人らが、保有する全部取得条項付普通株式(本件株式)の取得価格決定を求めた事案において、株主総会で議決権を行使できる株主を定める基準日等の後に本件株式を取得した申立人らの本件申立てが申立適格を欠くとはいえないなどとした上で、本件全部取得がなかったなら株主が享受し得る価値(客観的価値)及び本件全部取得後に増大が期待される価値のうち既存株主が享受すべき部分(増加価値分配価格)を考慮して取得価格を算定すべきところ、本件取得日における本件株式の客観的価値はTOPIX及び東証不動産インデックスの各終値の変動率による予測価格を基礎とすべきであり、増加価値分配価格は同客観的価値の2割相当とすべきとして、本件株式の取得価格を1株835円と定めた事例

裁判経過
抗告審 平成28年 3月28日 東京高裁 決定 平27(ラ)991号・平27(ラ)1737号 株式取得価格決定に対する抗告、同附帯抗告事件

出典
金商 1467号34頁

評釈
田中亘・ジュリ 1489号110頁
前田雅弘・ジュリ臨増 1492号111頁(平27重判解)
岩田合同法律事務所・新商事判例便覧 3171号(旬刊商事法務2079号)
鳥山恭一・法セ 735号111頁
谷本誠司・銀行法務21 788号67頁
谷本誠司・銀行法務21 798号94頁
和久野藍・広島法学 40巻1号39頁

参照条文
会社法172条1項
民法1条3項

裁判年月日  平成27年 3月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  決定
事件番号  平25(ヒ)234号・平25(ヒ)236号・平25(ヒ)238号・平25(ヒ)241号・平25(ヒ)245号・平25(ヒ)246号・平25(ヒ)249号・平25(ヒ)250号・平25(ヒ)255号・平25(ヒ)256号
事件名  各株式取得価格決定申立事件
上訴等  即時抗告  文献番号  2015WLJPCA03256013

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  申立人らが有していた利害関係参加人の全部取得条項付普通株式(対象となる各申立人の株式数は別紙申立人株式数等一覧表「申立株式数」欄記載のとおり。)の取得価格は、いずれも1株につき835円とする。
2  本件手続費用は各自の負担とする。

 

理由

第1  申立ての趣旨
各申立人が有していた利害関係参加人の全部取得条項付普通株式(各申立人の保有株式数は別紙申立人株式数等一覧表「申立株式数」欄記載のとおり。)の取得価格の決定を求める。
第2  事案の概要
1  本件は、東宝株式会社(以下「東宝」という。)による利害関係参加人を完全子会社化する取引の一環として利害関係参加人の株式(以下「参加人株式」という。)の公開買付け実施後にされた、利害関係参加人による全部取得条項付種類株式の全部の取得について、本件各事件の各申立人が、会社法172条1項に基づき、その保有していた利害関係参加人の全部取得条項付普通株式(以下「本件株式」という。)の取得価格の決定を求めた事案である。
2  前提事実(後掲の証拠及び審問の全趣旨により認められる。)
(1)  当事者等について
ア 利害関係参加人(昭和22年9月8日設立)は、土地、建物の所有及び賃貸借等を主たる目的とする資本金額27億9690万7985円の株式会社である。利害関係参加人の発行済普通株式総数は、平成25年5月27日当時、5568万8795株であり、参加人株式は平成25年6月25日まで株式会社東京証券取引所市場(以下「東証」という。)第一部に上場されていた。
(甲C2、3)
イ 東宝(昭和7年8月12日設立)は、映画の製作・売買及び賃貸等を主たる目的とする株式会社であり、平成25年1月8日(後記(2)の公開買付け公表日)当時、参加人株式3275万2506株を保有する株主であった。 (甲C4)
ウ 申立人らは、平成25年6月28日(後記(4)の全部取得条項付普通株式の全部取得の日)当時、別紙申立人株式数等一覧表「申立株式数」欄記載のとおり、それぞれ参加人株式を保有していた。
(甲A8、甲B6の1から3まで、甲C1の1から58まで、甲D3から5まで、9から16まで、甲E2、5、7、9、甲F4、甲G1、甲H6の2、7の2、甲I3、甲J1の1、2)
(2)  東宝による参加人株式の公開買付けの公表と実施について
ア 東宝は、平成25年1月8日、利害関係参加人を東宝の完全子会社とする取引(以下「本件完全子会社化」という。)の一環として、参加人株式の公開買付けを行うこと(以下「本件公開買付け」という。)、その買付期間を同年1月9日から同年2月21日まで(30営業日)とすること、参加人株式の買付価格を1株につき735円とすること(以下「本件公開買付価格」という。)、買付予定数を2269万0659株とすることを公表し、併せて、本件公開買付けにより発行済み普通株式の全てを取得できなかった場合には、平成25年5月に開催される利害関係参加人の定時株主総会及び種類株主総会において、参加人株式に全部取得条項を付すなどの議案を上程することを要請し、同議案に係る全部取得の結果、東宝以外の株主には現金が交付されることとなる一連の手続(以下「全部取得手続」といい、本件公開買付けと併せ「本件取引」という。)を実施する予定であることを公表した(以下「本件公表」という。)。 (乙全6)
イ 利害関係参加人は、平成25年1月8日、本件公開買付けに賛同意見を表明すること及び利害関係参加人の株主に対して本件公開買付けへの応募を推奨することを公表した。 (乙全7)
ウ 東宝は、平成25年1月9日、関東財務局長に対し、本件公表のとおりの内容の本件公開買付けを行う旨の公開買付届出書を提出した。 (乙全4)
エ 平成25年1月9日から同年2月21日までの間、東宝による本件公開買付けが実施され、その結果、本件公開買付けの公開買付報告書を提出した同月22日の時点において、東宝は、参加人株式999万0177株を取得し、同日における東宝の参加人株式に係る議決権の個数の、利害関係参加人の総株主等の議決権の個数(平成24年8月31日の時点)に占める割合は、77.09%に至った。 (甲C8)
(3)  本件公開買付けに至る経緯等
ア 利害関係参加人は、昭和22年に設立された株式会社であって、当初は京阪神急行電鉄株式会社(現在の阪急阪神ホールディングス株式会社)の傘下で電気工事、土木、建設等の事業を行っていたところ、ビル賃貸等の不動産業へ事業転換した後の昭和33年に東宝グループの関係会社4社と合併し、東宝を親会社とする不動産会社として事業を営んできた。
東宝と利害関係参加人は、親子会社の関係になった後もそれぞれ独自に不動産事業を営んできたところ、東宝の経営陣は、東宝グループが更なる成長・発展を目指すためには、東宝と利害関係参加人がそれぞれ独自に営んでいる不動産事業の戦略を一本化し、効率的な事業運営体制を確立することによって東宝グループの保有資産のより効率的な活用を図ることが必要不可欠であると判断し、平成24年9月頃、利害関係参加人に対し、利害関係参加人を東宝の完全子会社とすることを提案した。 (乙全4、5)
イ 利害関係参加人は、本件公開買付けに先立ち、本件公開買付けの価格に関する意見を決定するに当たり、フィナンシャル・アドバイザーとして三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社(以下「MUMSS」という。)を選任し、本件公開買付けを含む本件取引に係る審議を慎重に行い、利害関係参加人の取締役会の意思決定の公正性及び適正性を担保するため、リーガル・アドバイザーとしてa法律事務所(以下「a法律事務所」という。)を選定した。
また、東宝も、フィナンシャル・アドバイザーとして大和証券株式会社(以下「大和証券」という。)を、リーガル・アドバイザーとしてb法律事務所を選定した。 (乙全4、5)
ウ 利害関係参加人の取締役会は、平成24年11月1日、本件取引について、利害関係参加人の取締役会の意思決定過程における恣意性及び少数株主の不利益の排除を目的として、東宝及び利害関係参加人の取締役会から独立したJ(弁護士)、K(株式会社NHパートナーズの代表取締役)及びL(税理士及び公認会計士)の3名の委員によって構成される第三者委員会(以下「本件委員会」という。)を設置し、本件委員会に対し、①本件取引の手続面における公正性、本件取引の対価(本件公開買付けの価格及びその後に予定されている2段階目の買収における対価)の公正性及び妥当性並びに利害関係参加人の取締役会が本件取引に関する決議をすることの是非に関する意見を述べること、並びに②本件公開買付けの価格等の本件取引の条件に関する交渉並びにその経緯及び結果を利害関係参加人の取締役会に報告することを委嘱する旨の決議をした。 (乙全5)
エ 東宝は、大和証券に対し、参加人株式の価格の算定を依頼し、大和証券は、①利害関係参加人の有価証券報告書、四半期報告書、決算短信、適時開示資料等の公表資料、②利害関係参加人の事業計画、③利害関係参加人の事業及び財務に関する資料等、④東宝及び利害関係参加人に対するインタビュー等を通じて提供された情報等、⑤一般に公開されている資料、株式関連情報及びそのほかの情報等などの資料に基づき、平成25年1月7日付けで、次の内容の株式価値算定書(以下「大和証券算定書」という。)を作成し、これを東宝に交付した。
(ア) 市場株価法 442円ないし557円
(イ) DCF(Discounted Cash Flow)法 631円ないし765円 (甲C20、乙全4)
オ 利害関係参加人は、本件公開買付けに関する意見を決めるに当たり、MUMSSに参加人株式の価格の算定を依頼し、MUMSSは、①利害関係参加人の有価証券報告書、四半期報告書、決算短信等の公表された財務情報等、②利害関係参加人作成の事業計画書、③利害関係参加人及び東宝とのインタビューセッション、④東宝から利害関係参加人に対するデューデリジェンスにおけるインタビューセッション等に基づき、次の内容の平成25年1月7日付け株式価値算定書(以下「MUMSS算定書」という。)を作成し、これを利害関係参加人に交付した。
(ア) 市場株価法 441円ないし511円
(イ) 類似企業比較分析 565円ないし794円
(ウ) DCF(Discounted Cash Flow)法 645円ないし843円 (乙全5、59)
カ 本件委員会は、平成24年11月1日から平成25年1月7日まで、利害関係参加人担当者、MUMSSの担当者及びa法律事務所所属の弁護士から、東宝による利害関係参加人への提案内容、本件公開買付け及びその後に予定される一連の手続(いわゆる二段階買収に関する事項)、本件取引の目的やこれにより向上することが見込まれる利害関係参加人の企業価値の具体的内容等について説明を受け、これらの点に関する質疑応答を行うなどして、5回にわたり利害関係参加人の取締役会から諮問を受けた事項に関する検討を行った。
そして、本件委員会は、平成25年1月7日、利害関係参加人に対し、(ア)本件取引の意義及び目的についての利害関係参加人からの説明に不合理な点はなく、合理的な検討結果と認められること、(イ)本件公開買付けの価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等本件公開買付けの公正性等を担保するための措置として、a東宝における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得、b利害関係参加人における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得、c独立した法律事務所からの助言、d第三者委員会の設置、e利害関係参加人における本件取引に利害関係を有しない出席取締役及び監査役全員の承認、f価格の適正性を担保する客観的状況の確保などの措置が講じられていること、(ウ)本件公開買付けに応募しない株主に対する全部取得条項付種類株式の全部の取得による二段階買収の実施について、その際に交付されることになる金銭の額は本件公開買付けの価格に当該株主が保有していた株式の数を乗じた価格と同一になるように算定される予定である旨が明示されていることを踏まえ、本件取引は利害関係参加人の企業価値の向上を目的として行われるものであること、本件取引に係る交渉過程の手続は公正であること、本件公開買付けの価格を含む本件取引により少数株主に交付される対価は妥当であること、これらを前提にすると、本件取引は利害関係参加人の少数株主にとって不利益ではないと認められることを内容とする答申書を提出した。(乙全5、46の1から5まで)
キ 大和証券及びMUMSSの担当者は、平成24年11月29日から同年12月17日までの6回にわたり会合を持ち、利害関係参加人の事業計画、割引率の考え方、本件公開買付けの価格等について議論をした。この会合においては、両社の担当者は、それぞれ東宝と利害関係参加人の立場から、相手側の考える公開買付価格ないしその考え方に対して、大和証券側としては高すぎると、MUMSS側としては低すぎると主張して、認識を帰一するに至らなかった。その後、利害関係参加人、東宝の担当者及び各フィナンシャル・アドバイザー及びリーガル・アドバイザーは、同月25日、法律事務所の会議室において一堂に会し、本件公開買付けの価格の検討等を行なった。その際、利害関係参加人及び大和証券の担当者から5年経過後の事業計画や株式価値算定についての説明がなされ、東宝の担当者から本件公開買付けの価格を735円とする提案がなされ、これを利害関係参加人が持ち帰って検討することになった。 (乙全66の1から7まで)
ク 利害関係参加人の取締役会は、平成25年1月8日、取締役全員により、本件公開買付けに賛同意見を表明すること及び利害関係参加人の株主に対して本件公開買付けへの応募を推奨することを決議した。
上記の取締役会には、利害関係参加人の監査役のうち、東宝の代表取締役を兼務しているM及び東宝の連結子会社である東宝東和株式会社の代表取締役であるNを除く監査役全員が出席し、上記の決議の内容について異議がない旨の意見を述べた。上記M及びNは、本件取引について利害関係を有するとして、上記の取締役会における議案の審議及び決議に参加せず、また、利害関係参加人の立場で協議、交渉に参加しなかった。 (乙全5)
ケ 東宝は、本件公表の際、以下の事項を公表した。
(ア) 高い空き室率や低い賃料水準など不動産業を取り巻く事業環境は厳しさを増し、平成23年東北地方太平洋沖地震以降にビルの耐震性や省エネルギー性に対するニーズが高まるなかで、築年数を経た既存物件の競争環境も厳しい状況が続くことが想定されたことから、東宝は、東宝グループ全体の企業価値の向上及び継続的な発展を可能とするためには利害関係参加人を東宝の完全子会社とすることが最善の策であるとの結論に至った。
(イ) 東宝は大和証券に、利害関係参加人はMUMSSに、それぞれ参加人株式の価値算定を依頼しており、両社による参加人株式の価値評価の方法は市場株価法及びDCF法を基礎に置くものであり、両社による算定結果のレンジはそれぞれ前記エ及び同オのとおりであった。
(ウ) 利害関係参加人は、独立した法律事務所であるa法律事務所所属の弁護士から法的助言を受け、また、第三者委員会を設置して諮問を行った。
(エ) 本件公開買付けによって参加人株式(自己株式を除く。)及び利害関係参加人発行の新株予約権の全部を取得することができなかった場合には、東宝は、それら全部を取得して利害関係参加人を完全子会社化するため、利害関係参加人に対し、全部取得手続に係る議案が付議される定時株主総会等の開催を要請する予定であり、それらの手続が予定どおり実行された場合には、株主は、最終的には、参加人株式を全て失うとともに、本件公開買付価格を基準として算出される額の金銭の交付を受ける。
(オ) 全部取得手続に関して、株主は、株式買取請求や株式取得価格決定申立てを行うことが可能であり、その買取価格や取得価格は、最終的には裁判所が判断する。
(カ) 参加人株式は、本件公開買付け又はその後の手続によって上場廃止となる見込みである。
(乙全6)
コ 利害関係参加人は、平成25年1月8日、上記公表と同様の内容の情報を開示した。 (乙全7)
(4)  利害関係参加人による参加人株式の全部取得等
ア 利害関係参加人の定款には、毎年2月末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とするとの定めがある。
利害関係参加人は、平成25年2月13日、同年5月24日開催予定の普通株式を有する株主を構成員とする種類株主総会における議決権行使に係る会社法124条1項所定の基準日を平成25年2月28日と定める旨決定し(以下「本件基準日」という。)、同月14日、その旨公告した。 (甲C6、10)
イ 平成25年5月24日に開催された利害関係参加人の定時株主総会において後記(ア)から同(ウ)までの議案が、同日開催の普通株式を有する株主を構成員とする種類株主総会(以下、上記定時株主総会と併せて「本件株主総会」という。)において同(イ)の議案がそれぞれ提出された。
(ア) 種類株式発行に係る定款一部変更の件定款の一部を変更し、残余財産分配優先株式であるA種種類株式を発行する旨の定めを新設する。この定款変更の効力は、この議案を可決する旨の決議成立と同時に生ずるものとする。
(イ) 全部取得条項に係る定款一部変更の件
前記(ア)による変更後の定款を一部変更し、参加人株式を全部取得条項付種類株式(会社法108条1項7号)とする旨の定めを新設する。この定款変更の効力発生日は、平成25年6月28日とする。
(ウ) 全部取得条項付普通株式の取得の件
前記(ア)及び同(イ)による変更後の定款に基づき、利害関係参加人が、全部取得条項付種類株式である参加人株式の全部を取得し(以下「本件全部取得」という。)、これと引換えに、参加人株式を有する株主に対し、参加人株式1株につきA種種類株式1380万分の1株を交付する。その取得日は、平成25年6月28日とする(以下「本件取得日」という。)。 (甲C10)
ウ 平成25年5月24日開催の本件株主総会において、前記イ(ア)から同(ウ)までの議題を原案どおり可決する旨の各決議(以下まとめて「本件取得等決議」という。)が成立した。
本件株主総会のうち定時株主総会における出席株主(代理人又は議決権行使書面によって議決権を行使した株主を含む。以下同じ。)の議決権数は53万4271個であったところ、本件取得等決議に係る議案3件に賛成した株主の議決権数は45万3624個ないし45万3625個(出席株主の議決権数に対する割合はいずれも84.82%)であり、反対した株主の議決権数は7万9376個ないし7万9377個、棄権した株主の議決権数は1270個であった。
また、本件株主総会のうち普通株式を有する株主を構成員とする種類株主総会における出席株主の議決権数は53万4271個であったところ、本件取得等決議に係る議案1件に賛成した株主の議決権数は45万4185個であり、反対した株主の議決権数は7万8816個、棄権した株主の議決権数は1270個であった。 (甲C14)
(5)  本件各申立てに至る経緯
ア 申立人ら(別紙申立人株式数等一覧表「基準日前取得株式数」欄に株式数の記載のある申立人に限る。)は、本件株主総会に先立って、利害関係参加人に対し、同欄記載の株式について本件全部取得に反対する旨を通知し、本件株主総会においても、本件全部取得に反対する旨の議決権行使をした。
(甲A1、甲B5、甲C12の1から4まで、6から11まで、13から17まで、19から22まで、24から29まで、31、34から40まで、42から52まで、55から58まで、甲D19の1、甲E3、5、8、10、甲F11、甲H4の1、2、甲I1、甲J13の1、2)
イ 申立人らのうち別紙申立人株式数等一覧表「基準日後取得株式数」欄に株式数の記載がある各申立人は、同欄記載の株式を本件基準日後、本件株主総会前に取得した。
(甲B6の1、2、4、甲C1の1、5、7、11、12、18、19、21から25まで、30から33まで、36、39から41まで、45、47、52から54まで、58、甲D3から5まで、9から16まで、甲G1)
ウ A事件の申立人は平成25年6月4日に、B事件及びD事件の各申立人らは同月10日に、C事件の申立人らは同月6日に、E事件、F事件及びG事件の各申立人らは同月11日に、H事件の申立人らは同月12日に、I事件及びJ事件の各申立人らは同月13日に、東京地方裁判所に対し、本件全部取得の価格の決定の申立てをした。 (顕著な事実)
(6)  参加人株式の市場株価等
平成24年1月6日(本件公表の約1年前)から平成25年6月28日までの間の各日における、参加人株式の市場株価、東証株価指数(以下「TOPIX」という。)、日経平均株価(以下「日経平均」という。)及び業種別株価指数(33業種)不動産業(以下「東証不動産インデックス」という。)の各終値は、別紙市場株価一覧表記載のとおりであった。
(甲J25、56、顕著な事実)
3  主な争点
(1)  本件申立ての適法性
(2)  本件株式の取得価格
4  争点(1)(本件申立ての適法性)についての当事者の主張の要旨
(1)  利害関係参加人
会社法172条1項は、その意思に反して保有株式を強制的に取得される株主に対し経済的価値を補償することにより少数株主を救済することを立法趣旨とするものであり、その取得する株式が全部取得されることが確実な状況下で、かかる事実を十分に認識した上で殊更に株式を取得した株主は、同号所定の株主には当たらないというべきである。また、会社法172条1項2号の要件は、いわゆる議決権制限株式等を想定して設けられたものであり、単に株主総会における議決権行使の基準日後に株式を取得したために議決権行使が事実上不可能であるにすぎない株主は、同号所定の株主には当たらないと解すべきである。経営者又は多数株主の決定を監視し、非効率的な企業再編等を阻止し得ることといった公表日後又は基準日後に株式を取得した株主による株式価格の決定の申立てを認める見解の根拠は、本件公表後に株式を取得した株主には当てはまらないし、裁判例においても、濫用的な株式の価格の決定の申立てが制限されることがあると認められている。さらに、公表後取得株主について広く申立ての適格を認めると、効率的なスクイーズアウトの成立まで阻害されかねない。
以上のような事情に鑑みれば、本件公表後に取得された別紙申立人株式数等一覧表「公表後取得株式数」欄記載の株式に係る株主は、本件全部取得が数か月以内に実施され、その取得する株式が現金化されることを知りながら、株価下落リスクを負担することなく殊更に本件株式の買い集めを行ったものであり、会社法172条1項の趣旨に鑑み、また、明らかな権利の濫用(民法1条3項)として、当該株式についての価格決定の申立ての適格を欠くというべきであるし、少なくとも本件基準日後に取得された別紙申立人株式数等一覧表「基準日後取得株式」欄記載の株式に係る株主は、当該株式についての価格決定の申立ての適格を欠くというべきである。
(2)  申立人ら
公開買付けの公表日後に本件株式を取得した株主にも、会社法172条1項に定める取得価格決定の申立ての適格が認められることは明らかである。また、会社法172条1項に株式の取得時期により申立てを制限する旨の定めは置かれていないし、基準日後に取得された株式に係る株主であっても、その意思に反して保有株式を強制的に取得される株主に対して経済的価値を補償するという会社法172条1項の趣旨は妥当するから、基準日後に取得された株式に係る株主であっても会社法172条1項の要件を満たす株主には申立ての適格が認められる。
申立人らが機会主義的な利得を得る投機目的をもって、殊更に本件株式を取得したとの事実はなく、利害関係参加人の主張は事実に基づかない憶測によるものである。
なお、J事件申立人らの保有していた本件株式は本件公表日前に取得していたものである。
5  争点(2)(本件株式の取得価格)についての当事者の主張の要旨
(1)  申立人ら
ア 本件株式の公正な価格は純資産法により算定すべきこと
(ア) 全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立てにおいて、裁判所は、当該株式の取得日における公正な価格をその取得価格とすべきであり、公正な価格の算定においては、①取得日における当該株式の客観的価値に加えて、②強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額をも考慮すべきである。
(イ) 一般に、市場株価は、当該企業の資産内容、財務状況、収益力、将来の業績見通しなどが考慮された当該企業の客観的価値が投資家の評価を通して反映されているということができることから、上場された株式の客観的価値を算定するに当たっては、市場株価が当該企業の客観的価値を反映していないと認められる特段の事情がない限り、評価基準時点である取得日にできる限り近接した当該株式の市場株価を参照するのが相当であるとされている。
しかし、利害関係参加人は、土地、建物の所有及び賃貸借を主な業務とする不動産業者であり、その資産の大半が不動産であることから、資産の価値が企業価値に大きく影響していることが明らかであり、利害関係参加人の平成25年2月期の有価証券報告書によると、利害関係参加人が保有する賃貸オフィスビル(土地を含む。)、賃貸商業施設等(以下「利害関係参加人保有不動産」という。)の平成25年2月期における連結貸借対照表計上額は約249億円であるのに対し、利害関係参加人保有不動産の期末時価は約702億円(甲J4)であり、利害関係参加人の少数株主持分を除く純資産(連結ベース)約324億円をはるかに上回る約453億円もの極めて大きな額の含み益が存在している。
この多額の含み益は市場株価法による評価においては適切に反映されていないものといわざるを得ず、市場株価が当該企業の客観的価値を反映していないと認められる特段の事情が認められる。
(ウ) この点、時価純資産法は、企業が保有する資産の大部分が時価評価することのできる資産であり、事業の継続にとって不可欠なキャッシュフローがこれらの資産を源泉としている場合に適切な企業価値(株式価値)評価方法であり、企業価値評価ガイドライン(甲C21)も、ネットアセット・アプローチを採用することができる会社の例として「不動産・金融関係等、資産の評価が企業価値に大きく影響する会社」を挙げ、また、国税庁の財産評価基本通達189-4(甲C28)によれば、純資産のうち、不動産が高い比率を占める非上場会社の株式評価は原則として純資産方式で評価することとされている。
利害関係参加人の純資産に対する時価評価ベースの不動産の割合は、平成25年期末で77.9パーセントを占めているし、利害関係参加人は、平成25年6月25日に上場廃止となり、取得日の時点では非上場会社であったことから、上記国税庁の基本通達にいう純資産のうち不動産が高い比率を占める非上場会社に該当するし、利害関係参加人のキャッシュフローのほとんどが不動産賃貸事業から生じている。
したがって、本件株式の取得日における公正な価格は純資産法により算定すべきである。
なお、東宝は、平成20年7月23日から同年8月25日にかけて行ったコマ・スタジアムの完全子会社化取引(以下「コマ・スタジアム取引」という。)においては、公開買付価格の算定に際し、純資産法による算定結果を重視してコマ・スタジアムの株式価値を算定した。コマ・スタジアム取引と本件取引とでは、完全子会社化の対象となる会社の保有不動産に相当の含み益が存在していることなど共通点があるのであり、本件においても純資産法を重視すべきことを裏付けている。
(エ) 完全子会社の親会社は、完全子会社の保有する資産を効率的に運用して、完全子会社の企業価値の最大化を目指すことになり、親会社が完全子会社に対して完全なる支配権を有し、完全子会社の保有する資産をその意向のみによって処分することが可能であることを考慮すれば、完全子会社の資産の運用あるいは処分により実現される価値は、完全子会社の企業価値の最低限を画するというべきであり、この企業価値の算定方式である純資産法により算出される参加人株式の一株当たりの評価額は、本件完全子会社化後のあるべき参加人株式の価値の最低限を画することになる。
(オ) そして、純資産法により算定された本件株式の一株当たりの価値は、1537円(A事件申立人)、2400円(B事件申立人ら)、2588円又は2599円(C事件申立人ら)、2000円(D事件申立人ら)、1537円(E事件及びF事件申立人ら)、1399円(H事件申立人ら)、2409円(I事件申立人)、1833円(J事件申立人ら)を下回るものではないから、本件株式の取得価格はこれらの金額を下回ることはない。
イ 市場株価法により算定する場合の本件株式の取得価格について
(ア) 市場株価法による場合、本件取得日時点の本件株式の客観的価値を求める必要があるが、上記時点の市場株価は存在していないため、同種事案の裁判例においては、公開買付け公表前の一定時期の市場株価の平均値をもって取得日における客観的価値とみなされることがある。しかし、本件公表日から本件取得日までの間に、いわゆるアベノミクスの影響により、日経平均、TOPIX、東証不動産インデックスは大きく上昇した。そのため、本件公表日前の市場株価をそのまま本件取得日における客観的価値を反映したものとみるのは明らかに不適切であり、本件公表日から本件取得日までの市場の動向等も踏まえた上で本件取得日における本件株式の客観的価値が算定されなければならない。
アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシーのエグゼクティブディレクターであるO作成の意見書(甲J25、53、56、59。以下これらを併せ「アリックス意見書」という。)によれば、回帰分析という統計的手法により、本件公表日前の参加人株式の市場株価の値動きと、日経平均、TOPIX及び東証不動産インデックスの値動きとの相関性を統計的に分析し、当該相関性に基づいたマーケットモデルを作成した上で、本件公表がなければ本件取得日における参加人株式の市場株価が市場の動向等の影響を受けてどのように推移するのかを算定することができる(以下「本件株価補正」という。)。これによれば、本件取得日における参加人株式の予測株価は一株当たり729円であり、本件取得日前の直近1か月及び3か月間の予測株価の単純平均は、それぞれ696円、742円である。
また、日経平均の変動率から参加人株式の変動率を算出し、本件公表日以降の参加人株式の予想株価を算出した場合、本件取得日における参加人株式の予測株価は一株当たり744円である。
(イ) 市場で成立する株価は対象会社に対して何ら支配権を有していないことを前提として成立している株価であるため、対象会社に対して完全な支配権を有することを前提とした株価を算出する場合には、対象会社が保有する資産を自由に処分ないし有効活用できるとすれば一般的に実現する価値を考慮して、市場株価に基づき算定された価格にコントロール・プレミアムを上乗せすることが必要となる。
ところで、利害関係参加人の主要な資産は、取引相場があり客観的な価値を把握しやすく容易に売却することができる不動産であるため、利害関係参加人の完全子会社化により、親会社である東宝は、純資産法により算定される利害関係参加人の価値を資産の売却を通じて実現することが可能である。また、利害関係参加人が保有する資産を継続保有することを前提にしている場合であっても、上場コストの負担軽減等によるコスト削減も見込まれる上、効率的運用等によって大きな価値を生み出せるのであるから、完全子会社化により少なくとも純資産法に基づき算定される価値程度の価値を実現することが可能である。
したがって、コントロール・プレミアム加算後の価格である本件株式の取得価格は、少なくとも純資産法による評価額と同額を下回るものではない。
ウ 類似上場会社法により算定される本件株式の価値
類似上場会社法とは、上場会社の市場株価と比較して株式を評価する方法であり、当該方法による参加人株式の客観的価値は1380円又は1214円である。類似上場会社法においても、市場株価法と同様に完全子会社化によるコントロール・プレミアムを加算する必要があるところ、完全子会社化により時価純資産法に基づき算定される価値を実現することが可能であることに鑑みれば、コントロール・プレミアム加算後の類似上場会社法による評価額も、少なくとも時価純資産法による評価額と同額の1株当たり1833円とすべきである。
エ 本件公開買付価格の決定過程が公正とはいえないこと
本件公開買付価格の決定過程においては、次のような問題点が指摘できるのであって、その過程が公正であったとはいえない。
(ア) 本件公開買付けに当たって作成された大和証券及びMUMSSの株式価値算定書において利害関係参加人の株式価値の分析が十分にされたとはいえない。
(イ) 利害関係参加人は、上記株式価値算定書を入手した翌日には本件公開買付けへの賛同、推奨する旨の決議を行っており、東宝との間で真摯な交渉を行っていない。
(ウ) 本件委員会も、実質的に機能したのは利害関係参加人の上記株式価値算定書を入手した日の会合のみで本件公開買付価格の適正性を判断するために十分に機能していないし、MUMSSの担当者が純資産法に対する本件委員会の委員の言及を理由もなく否定するなど時価純資産法に関する検討は極めて不十分かつ不適切であった。また、本件委員会の委員は東宝の支配下にある利害関係参加人が選任することで、利益相反の問題が生ずることは不可避であり、委員の法的位置付けや責任の所在も曖昧である。本件委員会には交渉権がなく、独自のフィナンシャル・アドバイザーやリーガル・アドバイザーの選任や株式価値算定書の取得もしていない。
(エ) 利害関係参加人は、本件においてフェアネス・オピニオンを取得していないところ、これは、本件のような不適切な公開買付けとスクイーズ・アウトについて公正と評価する意見を述べる証券会社等が存在しなかったことを示している。
(オ) 本件取引の検討過程に参加していた利害関係参加人の当時の代表取締役であるPは、過去に東宝の取締役であった者であるほか、監査役4人のうち3人は東宝の関係者であり、これらの者を含む利害関係参加人の役員が、親会社である東宝の圧力や恣意性を排して客観的な判断をすることは期待できない状況であった。
また、利害関係参加人の役員は参加人株式を保有しておらず、買付価格を引き上げるインセンティブがなかった。
(カ) 企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針(甲C17。以下「MBO指針」という。)においては、株主意思の確認を尊重する見地から、公開買付けにおける下限を、利害関係を有する者以外の者が保有する株式の過半数や3分の2以上が応募しないと成立しないような水準に設定することを含め、高めの水準に設定することが指摘されているところ、本件公開買付けでは下限については何ら設定されていないし、実際にも利害関係を有する者以外の者が保有する株式の応募割合は30%程度であり、少数株主のうちの多数の賛同を得ていないにもかかわらず、完全子会社化が強行されており、MBO指針に沿った手続がなされているとは到底いえない。
(キ) 本件公表後、参加人株式の市場株価は、ほぼ一貫して本件公開買付価格を上回っており、株式市場も本件公開買付価格が適正ではないとの認識を示していたものといえる。
(ク) 東宝及び利害関係参加人は、申立人らの一部がした対抗的買収提案に対しても真摯に向き合わなかった。
(2)  利害関係参加人
本件株式の一株当たりの取得価格は、本件公開買付価格である735円を超えるものではない。
仮に、取得価格が本件公開買付価格を上回るものであるとしても、各申立人の買付価格を上回るものではない(予備的主張)。
ア 取得価格の意義
会社法172条1項は、保有株式を強制的に取得される株主に対し、経済的価値を補償することにより株主の保護を図ることを目的としている。このような趣旨に照らせば、裁判所が決定すべき取得価格とは、取得日における「公正な価格」であると解すべきである。そして、株主は、当該時点における株式の客観的価値を把握するとともに株式を保有し続けることにより株式価値が上昇する抽象的な期待を有しているところ、全部取得条項付株式を用いた一連の取引の結果、株式が有していた上記株式価値の上昇に対する抽象的な期待が一定の範囲で実現されている点に鑑みれば、取得日における「公正な価格」とは、①全部取得条項付株式を用いた一連の取引が行われなかったならば株主が享受しうる価値と、②全部取得条項付株式を用いた一連の取引の実施後に増大が期待される価値のうち既存株主が享受してしかるべき部分とを合算して算定するべきである。
イ 本件取引が行われなかったならば株主が享受し得る価値
(ア) 本件取引が行われなかったならば株主が享受し得る価値(ナカリセバ価格)は取得日における客観的価値と解されるところ、株式が上場されている場合は、①一般に、市場株価には当該企業の資産内容、財務状況、収益力、将来の業績の見通しなどが考慮された当該企業の客観的価値が投資家の評価を通して反映されており、②全部取得条項が行使されることに伴い上場廃止になる場合においても、制度上、上場廃止日と取得日とが3営業日しか離れないとされていることからすれば、取得日時点では市場株価が存在しないとはいえ、取得日時点の当該企業の客観的価値は、上場廃止日以前の当該企業の市場株価に反映されているといえるから、市場株価がその企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる特別の事情がない限り、その算定における基礎資料として市場株価を用いるべきである。
もっとも、公開買付けが前置されている二段階買収事案においては、公開買付けの公表後の市場株価は公開買付価格の影響を受けざるを得ない。したがって、公開買付けが前置されている二段階買収事案においては、公開買付けの公表日から上場廃止日までの株価を算定の基礎から除外し、公開買付けの実施の公表前の一定の期間についての市場株価を算定の基礎とすべきである。
そして、投資家による一定の投機的思惑や偶発的かつ短期的な市場株価の変動要素を排除するためには、通常1か月程度の期間を考慮すれば十分であること、及び企業を巡る市場環境が日々目まぐるしく変化しており、市場株価を参照する期間が取得日から離れれば離れるほど取得日時点の株価を反映していない可能性が高まってくることに鑑みれば、公開買付けの公表前1か月間程度の終値単純平均値を基礎にするのが相当である。
(イ) 参加人株式の本件公表日の前営業日である平成25年1月7日の東証における終値は557円、平成24年12月8日から平成25年1月7日までの過去1か月間の東証における終値の単純平均は522円、平成24年10月8日から平成25年1月7日までの過去3か月間の東証における終値の単純平均は464円、平成24年7月8日から平成25年1月7日までの過去6か月間の東証における終値の単純平均は442円であり、株価操作や不実開示等により市場株価がその企業の客観的価値を十分に反映していないことをうかがわせる事情は存在しない。
なお、本件公表日以後の市場株価は、本件公開買付けの実施が公表された影響を受けていることが明らかであるから、本件取得日における本件株式の客観的価値を算定するに当たり、本件公表日後の市場株価を考慮することは相当でない。
ウ 本件取引の実施後に増大が期待される価値のうち既存株主が享受してしかるべき部分(増加価値分配価格)
(ア) 親会社による上場子会社の完全子会社化取引においては、株式の買い手である親会社と、売り手である一般株主との間に構造的な利益相反関係があると考えられることから、完全子会社化取引の実施に当たっては、利益相反関係が抑制され、適正かつ公正な公開買付価格の提示がされているかという観点から、各種措置、交渉経過と交渉当事者の立場、完全子会社化手続の公正さ等を吟味する必要があり、この利益状況はいわゆるマネジメントバイアウト(MBO)案件と同じである。
現在の我が国の完全子会社化実務においてMBO指針が尊重されている点に鑑みれば、MBO指針に掲げられている措置等が当該事案における利益相反の程度を考慮の上、合理的な範囲で実施されており、その他公開買付価格の適正性を疑わせる特段の事情が存しない場合には、取得日における客観的価値と公開買付価格との差額が完全子会社化取引の実施後に増大が期待される価値のうち既存株主が享受してしかるべき部分として相当なものと認められるべきである。
(イ) MBO指針に沿った各種措置
本件取引では、下記のとおり、各種措置等が実施されており、本件公開買付価格には十分なプレミアムが含まれている。本件取得日における本件株式の客観的価値と本件公開買付価格との差額が、本件取引の実施後に増大が期待される価値のうち既存株主が享受してしかるべき部分として相当と評価されることは明らかである。
a 株主の適切な判断機会の確保
本件取引においては、株主に対し、適時に開示された書面等により、本件公開買付けの概要、本件公開買付けを実施するに至った背景、目的及び意思決定の過程並びに本件公開買付け後の経営方針等や公開買付要項のみならず、公開買付者である東宝の状況並びに東宝及びその特別関係者による株券等所有の状況及び取引の状況についても詳細に説明されていた。また、本件取引に反対する株主に対して価格決定申立権が保障されている全部取得条項付種類株式を用いた手法を採用した上、本件取引後に少数株主に交付される金銭を少数株主が保有していた参加人株式の数に本件公開買付価格を乗じた額と同額になるよう算定した上で裁判所に対して任意売却許可の申立てを行う予定である旨を事前に明示し、速やかに全部取得手続を行っていることなど、株主に対する強圧性が徹底して排除されている。このことからすれば、本件取引においては株主の適切な判断機会が十分確保されていた。
b 第三者算定機関からの株式価値算定書の取得
(a) 東宝は、利害関係参加人及び東宝から独立した第三者算定機関である大和証券から株価算定書を取得した。これによると、その一株当たりの価値の範囲は、市場株価法では442円ないし557円と、DCF法では631円ないし765円と算定されており、本件公開買付価格は、大和証券による市場株価法に基づく算定結果を大きく超え、DCF法による算定結果の中間値(698円)よりもかなり高い。
(b) 利害関係参加人は、利害関係参加人及び東宝から独立した第三者算定機関であるMUMSSから株価算定書を取得した。これによると、その一株当たりの価値の範囲は、市場株価法では441円ないし511円と、類似企業比較分析では565円ないし794円と、DCF法では645円ないし843円と算定されており、本件公開買付価格は、MUMSSによる市場株価法に基づく算定結果を大きく超え、類似企業比較分析による分析結果の中間値(679.5円)よりもかなり高く、また、DCF法による算定結果の中間値(744円)に近似している。
c 第三者委員会の設置及び同委員会による交渉
利害関係参加人は、平成24年11月1日、本件取引の公正性を担保し、少数株主の不利益を排除することを目的として、利害関係参加人及び東宝の取締役から独立した3人で構成される本件委員会を設置し、本件委員会に対し、本件取引の目的の正当性、手続面における公正性、少数株主に交付される対価の妥当性及びこれらを前提に本件取引が利害関係参加人の少数株主にとって不利益であるかに関する意見を述べることなどを諮問した。
これを受けて、本件委員会は、事業計画等の利害関係参加人からの開示資料を検証し、利害関係参加人の役職員に対するヒアリングを実施し、MUMSS及びa法律事務所から本件取引の目的等について説明を受け、MUMSSが作成した株式価値算定書を参考に平成24年11月1日から平成25年1月7日までの間で5回にわたり本件公開買付価格を含む本件公開買付けの諸条件に関して協議・検討をし、その結果、①本件取引の目的は正当であり、②その手続は公正であると認められる、③本件公開買付けの価格は合理的な範囲内の価格と認められ、④本件取引により少数株主に交付される対価は妥当であり、本件取引は少数株主にとって不利益ではないと認められる旨の意見を述べた。
d 独立した法律事務所からの助言
利害関係参加人は、本件取引に関する交渉及び検討に当たり、利害関係参加人及び東宝から独立したフィナンシャル・アドバイザーとしてMUMSSを、リーガル・アドバイザーとしてa法律事務所を選任し、本件公開買付けを含む一連の取引に係る利害関係参加人の取締役会の意思決定の方法及び過程等について法的助言を得た。
e 利害関係を有しない取締役及び監査役全員の承認
利害関係参加人の取締役会は、取締役の全員一致で本件公開買付けに賛同し、株主に応募推奨を行う旨の決議を行った。当該取締役会には、東宝及びその連結子会社の代表取締役社長を兼務する2人を除く利害関係参加人の全ての監査役が参加し、いずれも、当該決議事項について異議がない旨の意見を陳述した。なお、上記2人の監査役は、利益相反の疑いを回避する観点から、上記決議を含む本件取引に関する取締役会の審議に参加しておらず、その決議に対して意見を述べていない。
(ウ) 公正かつ慎重な価格交渉が実施されていること
実際に、本件取引の際には、利害関係参加人の取締役会において利害関係参加人の企業価値や株主共同の利益の観点から本件取引の是非等につき協議及び検討し、東宝との間で協議及び交渉を行った。また、利害関係参加人及び東宝間で、フィナンシャル・アドバイザーを介した交渉も含めて平成24年11月29日から平成25年1月7日までの間に合計7回にわたって真摯な交渉が実施され、本件公開買付価格が決定されるまでには、複数回の価格交渉が繰り返された。
(エ) 近年における公開買付価格の動向に比して高額なプレミアムであること
公開買付価格の市場株価に対するプレミアムの平均値は、平成20年50%、平成21年で48%、平成22年で35%、平成23年で39%、平成24年で28%と年々減少傾向にあるとの調査結果もあるところ、こうしたプレミアムの動向に比して、本件公開買付価格は、平成24年12月8日から平成25年1月7日までの過去1か月間の東証における参加人株式の終値の単純平均(522円)に約40.8%の、平成24年10月8日から平成25年1月7日までの過去3か月間の東証における参加人株式の終値の単純平均(464円)に約58.41%の、平成24年7月8日から平成25年1月7日までの過去6か月間の東証における参加人株式の終値の単純平均(422円)に約66.29%のプレミアムを付加した価格に相当するのであり、通常よりも高率である。
(オ) 小括
以上のとおり、本件公開買付価格は、MBO指針に沿った各種措置を実施し、限りなく利益相反関係が抑制され、公正性も担保された状況において、利害関係参加人及び東宝が真摯かつ慎重に協議・交渉を行った結果として形成されたものである。株主の適切な判断の機会が確保され、意思決定過程における恣意性を排除し、価格の適正性を担保する客観的状況が確保された状況において本件公開買付けが実施されていることからすれば、本件におけるプレミアムが強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を最大限評価した価格であり、本件取引の実施後に増大が期待される価値のうち既存株主が享受してしかるべき部分を下回るものでないことは明らかである。
エ 結論
以上のとおり、本件取引は、東宝と利害関係参加人がそれぞれ独自に展開している不動産事業の戦略を一本化し、効率的な事業運営体制を確立することによって、グループ保有資産のより効率的な活用を図るという正当な目的のもとに実施されたものである。本件取得日における本件株式の客観的価値は一株当たり422円ないし522円であり、MBO指針に沿った各種措置を実施し、限りなく利益相反関係が抑制され、公正性も担保された状況において本件公開買付価格が決定されるに至ったことからすれば、本件取得日における公正な価格は本件公開買付価格である735円を超えることはない。
オ 申立人らの主張に対する反論
(ア) 純資産法によるべきでないこと
a 純資産法は清算・解散を予定している場合に用いるべき評価方法であること
簿価純資産額は一定の前提条件をもとに適用される会計原則に従って計算された会社が所有する資産等の計算上の数字の合計額にすぎず、会社が解散した場合であっても、簿価純資産額に相当する金銭を株主に分配できることを意味するものではない。また、時価純資産額は、実際には処分されておらず、その予定もない資産について、第三者に処分し、換価したものと仮定してその価額を算出する必要があり、いくつもの仮定をおいた上での計算を伴うから、その算出を客観的一義的に行うことは事実上不可能である。
本件取引は、東宝と利害関係参加人がそれぞれ独自に展開している不動産事業の戦略を一本化し、効率的な事業運営体制を確立することによって、グループ保有資産のより効率的な活用を図ること等を目的として行われたものであり、利害関係参加人の解散や清算を予定して行われたものではない。したがって、本件株式の取得価格の算定においては、継続企業としての利害関係参加人の企業価値を評価すべきであって、純資産法による評価は実態に合わず、合理的でない。
b 本件取引はコマ・スタジアムの事案とは異なること
コマ・スタジアム取引においては、東宝及びコマ・スタジアムが別個に依頼した第三者算定機関のいずれもが、コマ・スタジアムの株式価値算定方式の一つとして純資産法を採用した。しかし、コマ・スタジアムは、コマ・スタジアム取引公表の数年前から深刻な業績不振に陥っており、コマ・スタジアム取引は、コマ・スタジアムの演劇事業を清算し、事業転換を図ることを予定していたものであること、また、事業転換を図るために約4年間は事業休止状態になり、DCF法等の一般的な株式価値算定方式を用いるのが困難であり、かつ、不適切であったことなどの事情があり、本件取引とは前提となる事実関係が異なる。したがって、本件取引をコマ・スタジアムの事案と同列に扱うことはできない。
c 企業価値評価ガイドラインに従っても純資産法によるべきでないこと
企業価値評価ガイドラインでは、継続企業について純資産法が採用された例としてコマ・スタジアム取引が紹介されているが、同ガイドラインは、「一般的に時価純資産法を適用するのに向いている会社は、継続企業ではない会社、すなわち倒産企業である。」「上場会社の場合は、取引所相場の時価があるので、その市場株価を用いる市場株価法を用いるのが一般的であり、株式の評価に市場株価法を用いずに時価純資産法のみを採用することは非常に稀であると考えられる。」と指摘している。
前記bのとおり、コマ・スタジアム取引は、実質的には東宝に資産を売却した上、コマ・スタジアムを清算・解散するのと同様の効果を生じさせることから、「非常に稀な例」として純資産法を採用したのであり、本件取引とは前提となる事実関係が全く異なる。
d 利害関係参加人保有不動産を路線価格等にて早期に売却することは極めて困難であること
利害関係参加人保有不動産は、いずれも第三者に賃貸されており、しかも、cビルは三菱地所株式会社が所有するdビルと躯体を共有しており、その再開発の際にはdビルのテナントのみならず三菱地所株式会社との間でも調整が必要になることに鑑みれば、路線価等にて早期に売却するのは事実上不可能である。
e 以上のとおり、本件株式の客観的価値の算定方式として、純資産法を採用するのは相当でない。
(イ) 本件株価補正を行うべきでないこと
a 現金を対価とする組織再編案件において、公開買付けの公表後取得日までの間に市場一般の変動があったにすぎない場合に、本件株価補正をすることは、市場全体が下落した場合には株価下落のリスクを負担することなく公表日時点における株価に一定のプレミアムが付された価値を取得できる一方で、市場全体が上昇した場合には市場一般の上昇に応じた利益を享受することができることになることから、株主に不当な投機の機会を与えることとなり、ひいては現金対価に係る再編等の決議に反対する誘因が強くなりすぎ、相当ではない。
b また、組織再編における反対株主による買取請求手続(会社法785条1項、797条1項、806条1項)における「公正な価格」は、組織再編取引等により企業価値の増加が生じる場合には、特段の事情がない限り取引の交渉が行われていた時点の事情を基にその価格を判断すべきであり、株価の補正を行うべきでないとされているところ、「取得の価格」(会社法172条1項)も基本的に同一の解釈が妥当すると解される。
本件取引は、本件公開買付けの価格において本件公表日時点における市場株価に対し相当のプレミアムが付されていることや東宝及び利害関係参加人が保有する不動産の一元管理により業務の効率化等が見込めることから、企業価値増加取引に該当すると認められる。また、前記ウで述べたとおり、本件取引はMBO指針等に従い、利益相反回避のための各種措置が幅広く実質的に講じられており、公正な手続を経て交渉が行われたものと認められる。
c したがって、本件において株価の補正を行う余地はない。
(ウ) アリックス意見書について
a アリックス意見書が採用する回帰分析結果の決定係数は0.2696であり、この算定結果はわずか27%の事象しか説明できていない。決定係数0.5以上の精度が必要との見解もあることに鑑みると、アリックス意見書における算定結果の精度は低く、その結果を信頼することは適切ではない。
b また、アリックス意見書では本件公表日前一年間の期間の株価を基礎資料として、本件公表日後である平成25年1月9日から同年6月28日までの約6か月間にわたる利害関係参加人の予測株価を算定しているところ、長期間にわたりマーケットモデルによる推計を行うことは、①当該期間の前後で企業の株価リスクが大きく変わる可能性があること、②信頼性が高くない推計期間を長期にする結果、より一層信頼性が低くなること、③推計期間の長期化により95%信頼区間が著しく広くなり、推計結果の誤差が大きくなること等の問題点があると指摘されている。
また、公表日前の一年間の前後に政権交代に伴ういわゆるアベノミクスの影響等により株式市場の動向に大きな変容があったことに鑑みれば、推計期間の前後でβ値が大きく変容している可能性があることから、過去の株式相場の推移をもとに長期間の市場株価の推移を推計するアリックス意見書の信頼性は極めて低い。
c 一般的に、強い相関性があったり、包含関係にあったりする複数の説明変数を同時に用いて回帰分析を行うと、説明変数を増加させることにより決定係数自体は高くなるものの解析結果の信頼性は極めて低くなる(多重共線性の問題)。
アリックス意見書が採用するマーケットモデルは、同一株式市場における株価推移を基にした指数であり包含関係にあるTOPIX及び東証不動産インデックスを説明変数として用いているところ、被説明変数の相関性は極めて高い(両者の相関性は約0.804)ことから、そのt値は、説明変数を一つしか用いていないモデルのt値と比較して著しく低くなっているなど、多重共線性の症状が確認できる。
d したがって、仮にアリックス意見書に基づいて本件取得日における本件株式の客観的価値を算定するとしても、アリックス意見書が採用するマーケットモデルを用いることは相当でなく、説明変数を一つしか用いていないモデル1ないし3のうち、最もt値が高いモデル3を用いるべきであり、この場合、本件取得日前1か月平均予測株価は約644.1円となる。
カ 予備的主張について
一部の申立人は本件公表日後殊更に本件株式の買い集めを行ったものであり、機会主義的な投資目的を持って本件株式を購入したことは明らかであるから、このような申立人の本件公表後に取得した株式について、本件取得日における取得価格は当該買付価格を上回ることはないというべきである。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(本件申立ての適法性)について
利害関係参加人は、本件公表後又は本件基準日後に取得された株式に係る申立ては申立適格を欠くか権利の濫用に当たり不適法である旨主張する。しかし、会社法172条1項は、株主総会の決議によって全部取得条項付種類株式の取得に関する事項を定めた場合には、「当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)」(1号)及び「当該株主総会において議決権を行使することができない株主」(2号)は、全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立てをすることができると定めるところ、同項1号にいう株主について取得価格決定の申立ての対象株式を基準日当時保有していたものに限定する旨の規定は存在せず、このように解すべき法令上の根拠も見当たらないし、同項2号にいう株主が文理上当然に議決権が制限された株式を保有する株主のみを意味するということもできない。
また、株式買取請求や買取価格決定の申立ては、会社の基礎に変更がある場合に株主に対して投下資本を回収して経済的救済を得る途を与えることを目的とする制度であり、必ずしも株主が議決権を有していることや議決権を行使したことを上記申立て等の前提としなければならない関係にあるわけではない。そこで、会社法の下では、当該株主総会において議決権を行使することができない株主も株式買取請求及び買取価格決定の申立てをすることができることとされ(116条2項、117条)、全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立てについてもこれと同旨の定めが置かれているのであって(172条1項)、平成17年法律第87号による改正前の商法下とは異なり、株式買取請求権や価格決定の申立権は議決権とは切り離された権利として規律されている。
このような会社法の諸規定や株式買取請求権及び価格決定の申立ての制度趣旨に加え、株主総会において全部取得条項付種類株式の全部を取得する旨の決議がされるまで、当該株式が取得されることも、当該株式を取得するのと引換えに交付される金銭等も確定しないことを考慮すると、公表後又は基準日後に取得価格決定の申立てに係る株式を取得したとしても取得価格決定の申立適格を欠くとは解されない。
したがって、本件公表後又は本件基準日後に本件株式を取得した各申立人の申立てが申立適格を欠くものとはいえず、利害関係参加人の指摘する諸事情を踏まえても、これらの申立てが権利の濫用に当たると認めるには至らない。
2  争点(2)(本件株式の取得価格)について
(1)  取得価格の算定方法
会社法172条1項は、全部取得条項付種類株式の全部取得に係る反対株主等に株式取得価格決定申立権を付与しているが、その趣旨は、当該全部取得によってその保有株式を強制的に取得されることになる反対株主等について、その保有株式の経済的価値を補償することにあると解される。かかる趣旨に照らせば、同項所定の「取得の価格」とは、取得日における公正な価格を意味するものというべきであり、具体的には、取得日における当該株式の客観的価値に加えて、強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を評価した価格をも考慮するのが相当であり、これを本件についてみると、本件全部取得が行われなかったならば株主が享受しうる価値及び本件全部取得後に増大が期待される価値のうち既存株主が享受してしかるべき部分(以下、これらを「客観的価値」及び「増加価値分配価格」という。)ということができる。
そして、裁判所による取得価格の決定は、客観的に定まっている過去の株価を確認するのではなく、新たに「公正な価格」を形成するものであり、その決定は裁判所の合理的な裁量に委ねられているものと解される(最高裁判所第一小法廷昭和48年3月1日決定)。
(2)  本件取得日における本件株式の客観的価値
ア 一般に、株式市場においては、投資家による一定の投機的思惑など偶然的要素の影響を受けながら、多数の投資家の評価を通して、企業を取り巻く経済環境下における、個別企業の資産内容、財務状況、収益力及び将来の業績見通しなどを考慮した企業の客観的価値が株価に反映されているということができる。したがって、市場株価のある株式の客観的価値を算定するに当たっては、異常な価格形成がされた場合等、当該市場株価がその企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情が存しない限り、算定基準時点にできる限り近接した市場株価を基礎として、当該株式の客観的価値を算定するのが相当である。
イ まず、別紙市場株価一覧表によれば、本件公表後の参加人株式の市場株価は、本件公開買付価格の前後で騰落を繰り返し、上場廃止前日の終値は733円となったことが認められるのであり、最終的には本件全部取得がされることを織り込んだ上で、本件公表の影響を受け、いわばこれに拘束されて形成されたものであることが明らかである。そうすると、本件公表後の参加人株式の市場株価については、利害関係参加人の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情があると認められ、これを基礎として本件取得日における本件株式の客観的価値を算定することは相当ではない。
ウ 他方、本件公表前の参加人株式の市場株価については、本件全資料によっても、利害関係参加人の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情があるとは認められない。
エ もっとも、別紙市場株価一覧表によれば、本件公表前の1か月間(平成24年12月10日から平成25年1月8日まで)における日経平均、TOPIX及び東証不動産インデックスの終値単純平均は、それぞれ1万0045.9円、831.9及び1036.8であったところ、本件取得日以前の1か月間(平成25年5月29日から平成25年6月28日まで)におけるそれらは、順に1万3209.7円(約31.49%上昇)、1097.3(約31.90%上昇)及び1431.3(約38.05%上昇)に上昇しており、本件公表日から本件取得日までの間、騰落はありつつも概ね上昇基調であったことが認められる。このような大幅な株価指数の上昇は、偶然的要素等による通常の騰落の範囲内の変動ではなく、株式市場全体あるいは不動産業界に係る株式市場を取り巻く社会経済情勢の全般的変動の一般的な価格変動要因によるものと認めるのが相当である。
そして、本件株式の客観的価値について、上記のような社会経済情勢の全般的変動による影響を受けていないとみるべき根拠は見当たらない。実際、アリックス意見書によれば、平成24年1月6日から本件公表日までの各日における参加人株式の市場株価の終値の変動率と、同じ日におけるTOPIX、日経平均及び東証不動産インデックスの各終値の変動率とを併せみると、両者は相当程度連動していたことがうかがわれる。
オ 上記の連動性は、以下に述べる回帰分析の結果によっても裏付けられている。
アリックス意見書及び審問の全趣旨によれば、次のとおり認められ、これを踏まえれば、TOPIX及び東証不動産インデックスの各終値の変動率と参加人株式の市場株価の終値の変動率との間には、統計的に有意な相関関係があるというべきである。
(ア) 回帰分析とは、変数間の相関関係を分析し、定量化する統計的手法であり、具体的には、説明変数x(本件においては各株価指数の変動率)と被説明変数y(本件においては参加人株式の市場株価の変動率)の組み合わせデータに基づいて、xとyの関係を最も適切に説明する(残差の2乗の総和が最小となる)一次関数「y=α(定数項)+β(回帰係数)×x」(回帰式)を導くものとされている。
(イ) 平成24年1月9日から平成25年1月8日までの各日における参加人株式の市場株価(y)、TOPIX(x1)及び東証不動産インデックス(x2)の各終値の変動率の組み合わせデータに基づく回帰分析により、「y(参加人株式の市場株価の終値の変動率)=0.00004+0.5743×x1(TOPIXの終値の変動率)+0.3696×x2(東証不動産インデックスの終値の変動率)」との回帰式(以下「本件モデル」という。)が導かれる。
(ウ) 本件モデルの自由度修正済決定係数(回帰式の当てはまりの度合い、すなわち当該説明変数xにより当該被説明変数yが説明される度合いを示すものとして「決定係数」があり、0が全く説明されないこと、1が完全に説明されることを意味するとされている。)が0.2696となり、これは、TOPIXのみを説明変数とした場合、日経平均のみを説明変数とした場合、東証不動産インデックスのみを説明変数とした場合並びに日経平均及び東証不動産インデックスを説明変数とした場合の各モデルの決定係数のいずれよりも高いものである。
(エ) 本件モデルにおける各回帰係数(0.5743及び0.3696)についての一定の統計的検定の値である「t値」は、それぞれ2.89及び3.20であり、これは本件において、当該説明変数x1、x2と当該被説明変数yとの間の相関関係が有意水準5%以下で統計的に有意である(当該説明変数と当該被説明変数との間に相関関係が存在しない確率(βが実際には0である確率)が5%以下である。)ことを示している。
カ 以上のとおり、本件公表前の参加人株式の市場株価は当時の参加人株式の客観的価値を反映していたと認められるものの、本件公表日から本件取得日までに半年弱の期間があり、その間、代表的な株価指数であるTOPIX及び東証不動産インデックスが株式市場全体あるいは不動産業界に係る株式市場を取り巻く社会経済情勢の全般的変動により大幅に上昇し、それらの株価指数の終値の変動率と参加人株式の市場株価の終値の変動率との間には統計的に有意な相関関係があり、その関係は本件モデルによって適切に示されるというのであるから、本件取得日における本件株式の客観的価値の算定においては、本件公表前の市場株価をそのまま参照して算定するよりも、本件公表日から本件取得日までの間のTOPIX及び東証不動産インデックスの各終値の変動率を本件モデルに当てはめることにより、本件公表及び本件全部取得がなかったと仮定した場合における本件公表後の各日の参加人株式の市場株価の終値を予測し、その予測価格を基礎として算定する方が、より高い合理性を有するというべきである。
キ アリックス意見書及び審問の全趣旨によれば本件公表日から本件取得日までの間のTOPIX及び東証不動産インデックスの各終値の変動率を本件モデルに当てはめることによって導かれる参加人株式の市場株価の終値の予測価格は、別紙予測価格一覧表記載のとおりであると認められる。
そして、当該予測価格の算定の基礎となるTOPIX及び東証不動産インデックスについても、投機的思惑等一定の偶発的な要素の影響を受ける面があることが否定できないから、そうした偶発的な要素による影響を排除し、又は影響を少なくするために、本件取得日における本件株式の客観的価値を認定するに当たり、本件取得日以前の1か月間における上記予測価格の平均値を用いることが合理的と考えられる。そうすると、本件取得日における本件株式の客観的価値を1株につき696円(小数点以下は切り捨てる。)と認めるのが相当である。
ク この点、利害関係参加人は、本件モデルは、決定係数が0.2696にすぎず、わずか27%の事象しか説明できていないこと、推定期間が長いこと、多重共線性の問題が生じていることなどを指摘して、本件モデルを用いるのは適当ではない旨を主張する。
しかし、アリックス意見書及び審問の全趣旨によれば、本件モデルの決定係数0.2696が、株価予測のためのマーケットモデルの決定係数として低きに失していることや、推定期間が長すぎてその結論の信頼性を失わせるものであるということはできず、多重共線性の問題についても、本件モデルの合理性を否定するに足るものとは解されない。前述のとおり、代表的な株価指数であるTOPIX及び東証不動産インデックスが株式市場全体あるいは不動産業界に係る株式市場を取り巻く社会経済情勢の全般的変動により大幅に上昇し、かつ、それらの株価指数の各終値の変動率と参加人株式の市場株価の終値の変動率との間に統計的に有意な相関関係があると認められる本件において、本件モデルによる補正を行うこと自体を否定すべき事情があるとはいえないのであって、利害関係参加人の上記主張は採用できない。
(3)  本件株式の増加価値分配価格
ア 親会社により対象会社を完全子会社化する取引の一環としてなされる全部取得条項付種類株式の全部取得手続においては、親会社の意向により選任された対象会社の経営者と対象会社の株主とは構造的な利益相反関係にあるから、本件株式の増加価値分配価格、すなわち、本件公開買付けを含めた本件取引の実施によって増大が期待される価値のうち株主が享受してしかるべき部分の算定に当たっては、本件完全子会社化の目的やその実施後の事業計画から予測される収益力や業績についての見通しのほか、本件公開買付価格が、経営者と株主との利益相反関係に十分に配慮し、これを抑制するための適切な措置が講じられた上で株主の利益を踏まえた真摯な交渉を経て決定されたか否か、本件公開買付けが適切な情報開示がされた上で株主の多数の賛成を得て成立したか否かなどを総合的に考慮するのが相当である。
イ 前提事実によれば、以下の諸点を指摘することができる。
(ア) 本件完全子会社化の目的は、不動産業を取り巻く事業環境が厳しさを増す中で、不動産事業の戦略を一体化し、効率的な事業運営体制を確立することによって、東宝グループ全体の企業価値の向上及び継続的な発展を可能にすることにあるものとされており、その目的は正当なものといえる。
(イ) また、利害関係参加人が作成した事業計画は、前記(ア)の目的に沿った本件公開買付けを含む本件取引を実施することを前提として作成されたものであり、その内容は大和証券やMUMSSが採用したDCF法による株式価値の算定にも反映されているものと認められるのであり、その算定が不合理であることはうかがわれないから、本件取引実施後の事業計画から予測される収益力や業績についての見通しは、MUMSS算定書及び大和証券算定書に反映されているものと認められる。そして、本件公開買付価格は、大和証券が行ったDCF法による評価レンジ(631円ないし765円)及びMUMSSが行ったDCF法による評価レンジ(645円ないし843円)の範囲内にあるのであり、このような大和証券及びMUMSSの算定結果との対比において、本件公開買付価格が不自然、不合理なものであるということはできない。
(ウ) 利害関係参加人は、リーガル・アドバイザーを選任して助言を受けるとともに、第三者算定機関に株式価値の算定を依頼した上、利害関係参加人の取締役や東宝と独立した委員で構成される本件委員会を設置して買付価格の妥当性等の審査を依頼し、これらに基づき、本件公開買付けに賛同したものであって、本件完全子会社化の手続においては、利益相反関係を抑制するための一定の措置が講じられていたということができる。
(エ) 東宝及び利害関係参加人の依頼したフィナンシャル・アドバイザーが相当回数にわたりミーティングの機会をもって議論ないし交渉をして、最終的に本件公開買付価格とすることに決まったところ、その過程は、両社の真摯な検討、交渉によるものと認められる。
(オ) 東宝及び利害関係参加人は、本件公開買付けに当たり、本件完全子会社化の趣旨・目的、買付価格の算定根拠、本件公開買付け実施後の完全子会社化の方針、残存株主は買付価格を基準として算出される額の金銭の交付を受けることや上場廃止の見込みなどを明らかにしており、本件取引の実施に当たっては、適切な情報開示が行われたものということができる。
そして、本件公開買付けに当たっては、相応の買付期間が確保され、公開買付者である東宝以外にも買付等をする機会を付与した上で実施されたものであり、これらは本件公開買付けの適正性を担保するものと認めることができる。その上で、東宝による本件公開買付けが実施され、その結果、東宝は、利害関係参加人の株式999万0177株を取得し、同日における東宝の利害関係参加人の株式に係る議決権の個数の平成24年8月31日の時点における利害関係参加人の総株主等の議決権の個数に占める割合は、77.09%に至ったのであるから、本件公開買付けが適切な情報開示がされた上で株主の相当数の賛成も得て成立したものということができる。
(カ) 本件公開買付価格(735円)は、本件公表日である平成25年1月8日の参加人株式の終値(552円)に約33.15%の、本件公表前1か月間(平成24年12月10日から平成25年1月8日まで)の市場株価の終値の単純平均(523.8円)に約40.32%のプレミアムを付加した価格に相当する。証拠(乙全69)及び審問の全趣旨によれば、近年の公開買付け事案におけるプレミアムの平均値は、平成20年で59%、平成21年で48%、平成22年で35%、平成23年で39%、平成24年で28%と年々減少傾向にあったと認められ、このような近年の同種事案の状況に照らしても、本件公開買付価格が低きに失するものとはいい難い。
ウ 以上検討したことからすれば、本件公開買付けを含む本件取引は、経営者と株主との利益相反関係を踏まえ、これを抑制するための相応の措置が講じられ、株主の利益を踏まえた交渉を経て決定されたものと認めることができる上、本件公開買付けも適切な情報開示がされた上で株主の多数の賛成を得て成立したものということができるのであり、これら諸事情を総合すると、本件公開買付価格(735円)は、本件公表日の時点においては、本件株式の増加価値分配価格を適切に織り込んだものであったというべきである。
エ(ア) この点、一部の申立人らは、前記第2の5(1)エのとおり述べ、本件取引に係る手続の公正性は確保されていない旨主張する。
(イ) しかし、本件取引が公正な手続において行われたことは前記第2の2の認定事実及びこれを踏まえた前記イにおける認定、説示のとおりであって、本件全資料によっても、参加人株式の価値の分析が十分に行われていないことや、当事者間における真摯な交渉がされていないことを認めることはできない。
また、MBO指針においても公開買付価格に下限を設けることが常に求められているわけではないし、証拠(乙全28)及び審問の全趣旨によれば、本件公表日の翌日から本件株主総会の前日までの間に参加人株式が多数売買されたこと、本件各申立てに係る申立人らのうち多数の者が本件公表日以降に本件株式を取得しており、本件公表日以降の本件株式の取得数は少なくとも5百数十万株に上ることが認められ、本件公表後利害関係参加人の市場株価が本件公開買付価格を上回って推移したことや少数株主の多数の賛同を得たとはいえないことが、直ちに本件公開買付価格の不適切性を推認させるものとなるということはできない。
その他申立人らが指摘する諸事情を考慮しても、前記本件取引における諸手続の公正性を否定するに足るものとはいえない。
(ウ) なお、E事件及びF事件の各申立人は、利害関係参加人がMUMSSとの間で締結したフィナンシャルアドバイザリー業務に関する契約に、本件公開買付けの成立を条件として報酬が支払われる条項が存在すること等により、MUMSSの利害関係参加人からの独立性に問題があり、ひいてはMUMSS算定書の内容の中立性及び信用性に問題があることを証明すべき事実として、当該契約に係る文書を対象として文書提出命令の申立てをする。
しかし、資料(平成26年3月28日付け利害関係参加人意見書添付の疎6及び7)によれば、企業の合併、買収案件に係るフィナンシャル・アドバイザーに対し、着手金に加えて成功報酬が支払われる契約内容となっていることが実務上一般的であると認められるのであって、これも踏まえれば、利害関係参加人がMUMSSとの間で締結した上記契約に本件公開買付けの成立を条件として報酬が支払われる条項があったとしても、そのことをもって、MUMSSの利害関係参加人からの独立性に問題があるということにはならず、MUMSS算定書の内容の中立性及び信用性に問題が生ずるということにもならないというべきである。よって、当該契約に係る文書を対象とする文書提出命令の申立ては、証拠調べの必要性を欠き、いずれも理由がない。
オ 以上のとおり、本件取得日における本件株式の客観的価値について本件公表前の市場株価から補正すべき事情がない場合であれば、本件公開買付価格は、上記株価を基礎として適切な増加価値分配価格が織り込まれた公正な価格と認めることができるものである。
もっとも、本件公開買付価格は当時の市場株価等を前提として定められたものであるところ、本件取得日における本件株式の客観的価値は、本件株価補正の結果696円と認められ、これは、本件公表日当日の市場株価の終値(552円)に比して約26%、本件公表前1か月間の市場株価の終値の単純平均(523.8円)に比して約33%高いものであり、本件公開買付価格の前提に重要な変更が生じたものといわざるを得ない。実際にも本件公開買付価格は、本件株価補正後の客観的価値との関係では約5.6%のプレミアムを付加したものとなるが、本件公表日の時点において本件公開買付価格に含まれていたプレミアムの割合が前記イ(カ)のとおり約33.15%ないし約40.32%であったことにも照らすと、5.6%のプレミアムはいささか低きに失するというほかなく、本件公開買付価格を、本件取得日当時の本件株式の増加価値分配価格を適切に織り込んだものと認めることはできない。
そこで、更に本件株式の増加価値分配価格について検討する。
カ 前記ウのとおり、本件公開買付価格は、本件公表日の時点においては本件株式の増加価値分配価格を適切に織り込んだものであったと認められるのであるから、本件公表日の時点において本件公開買付価格に含まれていたプレミアムの割合が前記イ(カ)のとおり約33.15%ないし約40.32%であったことは、その半年弱後の本件取得日の時点における本件株式の増加価値分配価格を算定するに当たっても、適切に参照すべきものと考えられる。
他方、上記のプレミアムを含む本件公開買付価格は、本件公表前の株価水準等を前提とする検討・交渉によって定められたものであるところ、それより大幅に高いと推測される本件取得日当時の株価水準(前記(2)参照)を前提として買付価格の検討・交渉が行われたとした場合に、そこで決定される買付価格に含まれるべきプレミアムの割合又は額は、本件公開買付価格に含まれるプレミアムの割合又は額と同じであるとは当然にはいえない。かえって、公開買付価格は、交渉当事者間において公開買付けの公表時以降(全部取得の際の取得日までの期間を含む。)の市場での株価変動による既存株主の利得に対する期待分を含むものとして決定されたものと評価できるのであるから、より高い株価水準等を前提とする検討・交渉が行われたとした場合に、その後の株価上昇による利得の期待分を含むものとして定められるであろうプレミアムの割合又は額は、他の条件が同じであれば、より低い割合又は額になるのが通常と考えられる。
以上の考え方を踏まえつつ、本件公表日から本件取得日までに半年弱が経過しており、本件株価補正の結果認定される本件取得日の本件株式の客観的価値(696円)が、本件公表日当日の市場株価の終値(552円)に比して約26%、本件公表前1か月間の市場株価の終値の単純平均(523.8円)に比して約33%高くなっていると認められることに加えて、前記イにおいて認定した諸事情、その他本件全資料から認められる一切の事情を考慮すれば、本件取得日における本件株式の増加価値分配価格は、同日における上記客観的価値の20%相当分、すなわち139円(小数点以下は切り捨てる。)と認めるのが相当である。
(4)  小括
以上によれば、本件取得日における本件株式の客観的価値は696円であり、本件株式の増加価値分配価格は139円であるから、本件株式の取得価格は1株当たり835円と認めるのが相当である。
(5)  申立人ら及び利害関係参加人の主張について
ア(ア) 申立人らは、本件株式の取得価格は純資産法で算出すべきであると主張し、その根拠として、①利害関係参加人の有価証券報告書によると、利害関係参加人保有不動産には極めて大きな含み益が存在しており、この多額の含み益は市場株価法による評価においては適切に反映されていないから、市場株価が当該企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情が認められ、本件株式の客観的価値を市場株価法で算定すべきでないこと、②コマ・スタジアム取引では、東宝が依頼した第三者算定機関による株式価値算定において時価純資産法が採用されていること、③企業価値評価ガイドライン等でも利害関係参加人のような会社の株式価値算定においては純資産法によるべきと考えられていること、④完全子会社化により親会社が子会社に対して完全な支配権を取得するのであるから、純資産法により算定される評価額は本件株式の価値の最低限を画することなどを指摘する。
(イ) 上記①については、利害関係参加人の事業内容や純資産額等は従前から開示されており、参加人株式の市場株価はそれらの情報も織り込みながら形成されていたものであるところ、当該含み益に関する情報が適切に反映されていなかったことを認めるに足りる証拠はないから、上記指摘は理由がない。
上記②については、証拠(乙全47の1、2)によれば、コマ・スタジアム取引においては、その主要事業であるコマ・スタジアムの演劇事業を清算し、事業転換を図るために約4年間は事業休止状態になることが予定されていたなど、純資産法をも踏まえて企業価値を算定することが適切であったといえる事情がうかがわれるのであり、そのような事情がうかがわれない本件取引において、コマ・スタジアム取引と同様に、純資産法をも踏まえて企業価値(株式価値)を算定すべきであるということはできない。
上記③については、企業価値評価ガイドライン(乙全48)においては、一般的に時価純資産法を適用するのに向いている会社は継続企業ではない会社(倒産企業)である、あるいは、上場会社の場合は取引所相場の時価があるのでその市場株価を用いる市場株価法を用いるのが一般的であり、株式の評価に市場株価法を用いずに時価純資産法のみを採用することは非常にまれであるともされているのであって、上記ガイドライン等が継続企業かつ本件公開買付け当時上場会社であった利害関係参加人について純資産法を採用すべき根拠になるとはいえない。
上記④については、前述のとおり、本件取得日当時において利害関係参加人の清算が予定されていたというような事情が認められない以上、完全子会社化を行う取引であるとの一事をもって、純資産法により算定される評価額が本件株式の価値の下限を画するなどということはできない。
(ウ) そして、本件全資料によっても、本件取得日当時において利害関係参加人の清算が予定されていたというような事情は認められず、かえって、前提事実によれば、本件取引は、東宝と利害関係参加人がそれぞれ独自に展開している不動産事業の戦略を一本化し、効率的な事業運営体制を確立することによって、グループ保有資産のより効率的な活用を図ること等を目的として行われたものであって、その業態、事業形態に照らし、利害関係参加人の企業価値は継続企業であることを前提として評価すべきものであるから、他に特段の事情がない限り、本件株式の取得価格を市場株価ではなく純資産額によって算定すべきであるということはできない。
よって、上記申立人らの主張は採用できない。
(エ) なお、C事件、E事件、F事件、H事件及びJ事件の各申立人は、本件株式の取得価格を純資産法により算定した場合の株式価格の証明に必要であるなどとして、利害関係参加人及びその連結子会社の所有する不動産についての不動産鑑定評価書等を対象とする文書提出命令の申立てをするが、上記のとおり、本件株式の取得価格の算定方式として純資産法を採用すべきであるとはいえず、上記文書は証拠調べの必要性を欠くというべきであるから、上記文書提出命令の申立ては、いずれも理由がない。
イ また、申立人らの一部は、本件株式の本件取得日における客観的価値は、類似上場会社法により算定すべきである旨も主張する(前記第2の5(2)ウ)が、上場会社であった利害関係参加人の株式価値の算定について、市場株価法ではなく類似上場会社法によって行うべき十分な根拠は見出せないから、上記主張は採用することができない。
ウ(ア) 利害関係参加人は、前記第2の5(2)オ(イ)のとおり述べ、本件株価補正をすべきでないと主張する。
(イ) しかし、評価基準時点にできる限り近接した市場株価を基礎として株式の客観的価値を定める場合、一般的には、当該近接した市場株価は概ね評価基準時点において想定される株価に近似しており、市場株価の指標や個別の株価の変動やその傾向があったとしても補正の必要性を認めるに至らない場合が多いと考えられるし、公開買付価格には相応の増加価値分配価格が含まれていると評価されるのが通常であることにも照らすと、一般的に補正を行うことにはならない。そうすると、株主において裁判所による補正を常に期待できるわけではなく、株式公開買付けやその後の全部取得の手続にあえて異を唱えることのコストにも鑑みれば、事後的な補正の可能性を認めることが直ちに合理的な経済行動を行う者の投機的な行動を誘発、助長するものとはいえない。
そして、株式公開買付けや全部取得を行う時期や具体的な取得価格等の細目について、一次的には買付者及び対象会社によって決定され、少数株主はこれを受け入れるか否かの選択肢しかないのが通常であること等にも照らすと、本件のように株式公開買付けの公表から株式の全部取得がされるまでの間にその株式の客観的価値が大きく上昇したと評価するのが相当である場合において、そのような全部取得の手続が行われたことにより、利害関係参加人の株主は上記のとおり変化したと考えられる参加人株式の株価変動による利益を得る機会を失ったというべきであり、これを少数株主の負担に帰することは相当とはいえない。利害関係参加人の指摘を踏まえても、なお、例外的に株式の客観的価値の補正を行い、当初の公開買付価格と異なる価格をもって公正な価格とする余地を認めることが不当とはいえないというべきである。
また、公正な手続を経て定められた公開買付価格が、当該株式の客観的価値を基礎として適切な増加価値分配価格が織り込まれた公正な価格であると評価される場合が多いものと考えられることは上記説示のとおりであるが、当該公開買付けがなかったとすればその公表日から取得日までの間に当該株式の市場株価が大幅に上昇したことが推測される事案において、当該公開買付価格の前提とされた市場株価をそのまま用いて取得日における当該株式の客観的価値を算定するのは相当でないというべきであって、このような場合においても補正を行うべきではないとはいえないから、利害関係参加人の主張は採用できない。
(ウ) なお、利害関係参加人は、本件公表後に取得した株式について定められるべき取得価格はその買付価格を上回らない旨も主張するが、そのように解すべき積極的な理由は認められず、上記主張は採用できない。
第4  結論
よって、本件株式の取得価格は1株につき835円と定めるのが相当であり、会社法172条1項を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小野寺真也 裁判官 秋吉信彦 和田将紀)

 

(別紙)当事者目録
A事件申立人 X1
B事件申立人 X2
同 X3
同 X4
C事件申立人 X5〈他57名〉
上記58名代理人弁護士 松尾明弘
同 瀧澤慎一
同 西廣陽子
同 鹿児嶋悠子
同 秋山直美
同 本多基記
同 古田充甫
同復代理人弁護士 眞鍋淳也
同 大沼洋一
同 中村春樹
同 福田俊彦
D事件申立人 X6
同 X7
同 X8
同 X9
同 株式会社ワカタケ
上記代表者代表取締役 X9
上記5名代理人弁護士 江藤洋一
E事件申立人 プロスペクト ジャパン ファンド リミテッド
上記代表者代表取締役 A
同 メロン バンク トリーティー クライアンツ オムニバス
口座保有者 ザ バンク オブ ニューヨーク メロン
上記代表者常務取締役 B
同 アールビーシー アイエスティー ロンドン クライアンツ アカウント
口座保有者 アールビーシー インベスター サービシーズ トラスト
上記代表者最高経営責任者 C
同 X10
上記4名代理人弁護士 西理広
同 神谷光弘
同 熊木明
F事件申立人 シティグループ グローバル マーケッツ リミテッド
上記代表者マネージングディレクター D
上記代理人弁護士 神山達彦
同 宮川賢司
同 茂木諭
同 松村葉子
G事件申立人 Black Clover 合同会社
上記代表者社員 E
上記代理人弁護士 山田広毅
同 村田晴香
H事件申立人 X11
同 弁護士法人X12法律事務所
上記代表者代表社員 X11
上記2名代理人弁護士 光岡健介
同 池田尚弘
同 百瀬井一
同 八田博司
同 磯野真
同 角地山宗行
同復代理人弁護士 笠間健太郎
I事件申立人 X13
J事件申立人 ロイヤル バンク オブ カナダ トラスト カンパニー(ケイマン) リミテッド
上記代表者 F
同 G
同 エフィッシモ キャピタル マネージメント ピーティーイー エルティーディー
上記代表者 H
上記2名代理人弁護士 檜山聡
利害関係参加人 東宝不動産株式会社
上記代表者代表取締役 I
上記代理人弁護士 髙山崇彦
同 齊藤拓史
同 池田賢生
同 尾藤正憲
同 林雄亮
同 石原慎一郎
同 本木啓三郎
(別紙)申立人株式数等一覧表〈省略〉
市場株価一覧表〈省略〉
予測価格一覧表〈省略〉

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296