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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(110)平成27年 7月 1日 東京地裁 平24(特わ)290号 証券取引法違反、金融商品取引法違反、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(認定罪名:証券取引法違反幇助、金融商品取引法違反幇助、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反)被告事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(110)平成27年 7月 1日 東京地裁 平24(特わ)290号 証券取引法違反、金融商品取引法違反、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(認定罪名:証券取引法違反幇助、金融商品取引法違反幇助、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反)被告事件

裁判年月日  平成27年 7月 1日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(特わ)290号・平24(特わ)459号・平24(刑わ)627号・平25(特わ)850号
事件名  証券取引法違反、金融商品取引法違反、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(認定罪名:証券取引法違反幇助、金融商品取引法違反幇助、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反)被告事件
裁判結果  有罪  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA07017002

要旨
◆①A会社代表取締役らが連結会計年度2期にわたり,連結純資産額を過大計上(1178億円余)した行為について,被告人Y1,Y2,Y3の3名らが,同社の事業投資ファンドや簿外ファンドを維持・管理することなどにより幇助し(証券取引法違反,金融商品取引法違反),②被告人Y1,Y2が知人の会社社長に対し,①の犯行に関連して設立された新事業3社の事業価値や新株式の株価の適正等について欺罔し,新株式払込金名目で3億4855万円を詐取し(詐欺),③被告人3名が,①の犯行の報酬合計22億円余につき,架空の契約書を用意したり送金するなどして,犯罪収益等の取得を仮装して,隠匿した(組織犯罪処罰法違反)事案。有価証券報告書の粉飾は非常に大きく,証券取引市場の公正に対する信頼を大きく揺るがせ,極めて多額の報酬も得ており,態様も悪質であるなどとして,被告人らを懲役4年ないし2年(Y3につき執行猶予4年)及び各罰金並びに被告人らに対し8億8399万4335円の追徴金を科した事例

新判例体系
公法編 > 産業経済法 > 証券取引法〔昭和二三… > 第八章 罰則 > 第一九七条 > ○罰則 > (一)虚偽記載有価証… > B 該当事例
◆P会社代表取締役らが連結会計年度二期にわたり、連結純資産額を過大計上(一一七八億円余)した行為について、被告人Y1、Y2、Y3の三名らが、同社の事業投資ファンドや簿外ファンドを維持・管理することなどにより幇助した証券取引法違反、金融商品取引法違反等の行為につき、被告人らを懲役四年ないし二年(Y3につき執行猶予四年)に処した上、各罰金並びに被告人らに対し八億八三九九万四三三五円の追徴金を科する。

 

裁判経過
控訴審 平成28年 9月29日 東京高裁 判決 平27(う)1616号 証券取引法違反,金融商品取引法違反、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、詐欺被告事件

参照条文
証券取引法197条1項1号(平18法65改正前)
証券取引法24条1項1号(平18法65改正前)
証券取引法207条1項1号(平18法65改正前)
金融商品取引法197条1項1号(平20法65改正前)
金融商品取引法24条1項1号(平20法65改正前)
金融商品取引法297条1項1号(平20法65改正前)
刑法246条1項
組織犯罪処罰法

裁判年月日  平成27年 7月 1日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(特わ)290号・平24(特わ)459号・平24(刑わ)627号・平25(特わ)850号
事件名  証券取引法違反、金融商品取引法違反、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(認定罪名:証券取引法違反幇助、金融商品取引法違反幇助、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反)被告事件
裁判結果  有罪  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA07017002

判決目次

主文 …… 266
理由 …… 266
(罪となるべき事実) …… 266
第1 (証券取引法違反,金融商品取引法違反) …… 266
第2 (詐欺) …… 267
第3 (組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反) …… 268
(証拠の標目)〈省略〉 ……
(事実認定の補足説明) …… 268
第1 争点 …… 268
1 判示第1の事実(被告人3名の証券取引法違反,金融商品取引法違反) …… 268
2 判示第3の事実(被告人3名の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律〔以下「組織犯罪処罰法」という。〕違反) …… 268
3 判示第2の事実(被告人Y1及び同Y2の詐欺) …… 268
第2 前提事実 …… 268
1 被告人3名の関係等 …… 269
2 A社の損失隠しの状況等 …… 269
3 A社の損失隠しスキームの構築状況等 …… 269
4 C1による新事業3社株買取りスキーム …… 271
5 東京国税局の調査 …… 272
6 平成18年5月頃までの報酬の計算とその後の手続 …… 272
7 新事業3社子会社化スキーム …… 273
8 平成18年10月頃までの報酬の計算とその後の口座開設,送金等 …… 273
9 被告人3名等側が得た主な利益 …… 274
第3 判示第1の事実(被告人3名の証券取引法違反,金融商品取引法違反)の争点に対する判断 …… 274
1 被告人3名におけるA社の損失及び各スキームの認識 …… 274
2 被告人3名の虚偽有価証券報告書提出の認識 …… 278
3 虚偽有価証券報告書提出の事実に関する共謀共同正犯の成否 …… 278
第4 判示第3の事実(被告人3名の組織犯罪処罰法違反)の争点に対する判断 …… 279
1 C2からG社に送金された12億5925万円及びJ社からK社に送金された9億5000万円(前記第2の8)の犯罪収益性 …… 279
2 C2・G社間,G社・H社間の各契約の架空性(仮装行為)及び被告人3名の故意・共謀 …… 279
3 J社・K社間及びK社・L社間の各契約の架空性(仮装行為)及び被告人3名の故意・共謀 …… 281
4 隠匿行為 …… 281
5 結論 …… 281
第5 判示第2の事実(被告人Y1及び同Y2の詐欺)の争点に対する判断 …… 281
1 前提事実 …… 281
2 D1証言 …… 282
3 本件勧誘文言の虚偽性 …… 284
4 結論 …… 286

主文

被告人Y1を懲役4年及び罰金1000万円に,被告人Y2を懲役3年及び罰金600万円に,被告人Y3を懲役2年及び罰金400万円に処する。
未決勾留日数中,被告人Y1に対しては800日を,被告人Y2に対しては800日を,被告人Y3に対しては650日を,それぞれその懲役刑に算入する。
被告人3名においてその各罰金を完納することができないときは,金2万円を1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。
被告人Y3に対し,この裁判が確定した日から4年間その懲役刑の執行を猶予する。
被告人3名から別紙債権目録記載の預金債権を没収する。
被告人3名から金8億8399万4335円を追徴する。
 

理由

(罪となるべき事実)
第1(証券取引法違反,金融商品取引法違反)
〈正犯者らの行為〉
分離前の相被告会社A株式会社(以下,平成15年10月1日の商号変更以前のA’株式会社を含め,単に「A社」という。)は,東京都渋谷区〈以下略〉に本店を置き,顕微鏡,写真機,精密測定器その他光学機械の製造販売等を目的とする会社であって,その発行する株券を株式会社東京証券取引所市場第一部に上場しているもの,分離前の相被告人A3(以下「A3」という。)は,平成13年6月28日から平成23年3月31日までA社の代表取締役社長であったもの,同A4(以下「A4」という。)は,平成16年6月から平成19年6月までA社の取締役常務執行役員,同月から平成21年6月までA社の取締役専務執行役員であったもの,同A5(以下「A5」という。)は,平成18年6月29日から平成21年6月25日までA社の取締役執行役員であったものであるが,A3,A4,A5らは共謀の上,A社の業務及び財産に関し
1  A社の平成18年4月1日から平成19年3月31日までの連結会計年度につき,同年6月28日,さいたま市中央区新都心1-1所在の関東財務局において,同財務局長に対し,A社の連結会計年度における連結純資産額が約2324億5900万円であったにもかかわらず,損失を抱えた金融商品を簿外処理するなどの方法により,「純資産合計」欄に3448億7100万円と記載するなどした連結貸借対照表を掲載した有価証券報告書を提出し,もって,重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。
2  A社の平成19年4月1日から平成20年3月31日までの連結会計年度につき,同年6月27日,前記関東財務局において,同財務局長に対し,A社の連結会計年度における連結純資産額が約2500億2900万円であったにもかかわらず,損失を抱えた金融商品を簿外処理するとともに架空ののれん代を計上するなどの方法により,「純資産合計」欄に3678億7600万円と記載するなどした連結貸借対照表を掲載した有価証券報告書を提出し,もって,重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。
〈幇助行為〉
被告人Y1(以下「被告人Y1」という。)は,経営に関するコンサルティング業務等を目的とする株式会社Z1(以下「Z1社」という。)の代表取締役,被告人Y2(以下「被告人Y2」という。)及び被告人Y3(以下「被告人Y3」という。)は,それぞれ同社の取締役であったものであるが,A3らが,前記重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書をそれぞれ提出することを認識しながら,各年度の有価証券報告書の提出までの期間に,A4,A5らと協議の上,前記正犯者らの各行為について,それぞれ,被告人3名が経営するZ2Limited(以下「Z2社」という。)において,A社が簿外損失を集約していたB1CO.(以下「B1社」という。)に資金を供給するなどしていた簿外の事業投資ファンドであるC1L.P.(以下「C1」という。)及びC2L.P.(以下「C2」という。)の各ジェネラルパートナー(運用責任者。以下「GP」という。)として,両ファンドを維持,管理したり,資金の移動を行うなどして前記正犯者らの1,2の各行為を容易にさせてこれらをそれぞれ幇助した。
第2(詐欺)
被告人Y1は,Z1社の代表取締役であるとともに,感染性医療廃棄物処理装置及び処理機械の開発並びに製造販売業務等を目的とする株式会社Z3(以下「Z3社」という。)及び担子菌その他の菌類の有効成分抽出及び抽出物の処理及び販売等を目的とする株式会社Z4(以下「Z4社」という。)の取締役であったもの,被告人Y2は,Z1社の取締役であるとともに,Z3社,Z4社及び電子レンジ用調理容器の製造及び販売等を目的とするZ5株式会社(以下「Z5社」という。なお,Z3社,Z4社及びZ5社の3社をまとめて,以下「新事業3社」という。)の取締役であったものであるが,被告人Y1及び同Y2は,共謀の上,かねて被告人Y1と面識のあったD1(以下「D1」という。)が代表取締役を務めるD株式会社(以下「D社」という。)から新株式払込金の名目で金員を詐取しようと企て,真実は,A社が巨額の金融商品の損失を簿外処理している上,新事業3社の株式の取引を同損失の隠ぺいに利用するなどしており,かつ,新事業3社の株価の算定根拠となる事業計画はそのとおりの業績を上げる見込みがなく,新事業3社の株価は何ら新事業3社の事業価値を反映したものではなかったにもかかわらず,その情を秘し,A社及び新事業3社に関して前記損失の隠ぺい等の事情は存せず,かつ,新事業3社は同事業計画どおりの業績を上げる見込みであり,新事業3社の株価は,同事業計画に基づいて算出されたものであって新事業3社の事業価値を適正に反映したものであるかのように装い,平成18年3月27日頃,群馬県高崎市〈以下略〉所在のD社本社において,D1に対し,そのとおりの業績を上げる見込みがない同事業計画及び新事業3社の事業価値を何ら反映していない同株価等を記載した資料を見せながら,新事業3社の事業内容について同資料に記載のとおりである旨説明した上,「この事業計画は,A社の取締役会で承認されている。」「A社の公認会計士であるE事務所が,1株当たりの価格は妥当な価格であるというふうに述べている。したがって,この株価は1円たりとも負けることはできない。」「A社は,内視鏡の事業が主体で海外での売上げが8割であるから,どうしても国内事業を作っていかなければならないという中で,3社の事業について是非力を入れていきたいと考えている。」「A社が出資するが,香港にある同社の100パーセント子会社から3社に出資したい。」「1社1億,計3億お願いします。」「配分はまだ細かいところが動くところがあるので,私に任せてもらえないか。」旨申し向けるとともに,同年4月下旬頃,D1に電話を掛け,Z5社につき20株の合計8900万円,Z3社につき20株の合計1億1580万円,Z4社につき10株の合計1億4375万円の新株式の引受け方を勧誘し,D1をして,その旨誤信させ,同月24日及び同年5月16日,D社本社で開催された同社取締役会で,Z3社株式20株を合計1億1580万円で,Z4社株式10株を合計1億4375万円で,Z5社株式20株を合計8900万円で,それぞれ引き受けることを提案,可決決議させ,よって,同月22日,D社従業員をして,同市問屋町3丁目10番3号株式会社群馬銀行高崎支店に開設されたD社名義の当座預金口座から,東京都新宿区西新宿1丁目7番1号株式会社三井住友銀行新宿西口支店に開設されたZ3社名義の預金口座に1億1580万円を,同支店に開設されたZ4社名義の預金口座に1億4375万円を,東京都千代田区九段南1丁目3番1号株式会社あおぞら銀行本店に開設されたZ5社名義の預金口座に8900万円を,それぞれ振込送金させてその交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた。
第3(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反)
被告人3名は,財産上の不正な利益を得る目的で犯した前記第1の幇助行為の報酬として得た現金の取得につき事実を仮装し,同現金を隠匿しようと企て,共謀の上,
(1)前記第1の幇助行為の報酬として被告人3名に支払われることとなった現金12億5925万円を,平成20年9月11日頃,A社が出資し,被告人3名が経営するZ2社が管理するC2名義のFリヒテンシュタイン銀行(以下「F銀行」という。)の預金口座から,被告人Y3において,パナマ共和国籍の会社GS.A.(以下「G社」という。)
名義のF銀行預金口座に送金し,かつ,これについて,C2及びG社の間の架空の契約書を用意するなどして,両者間の契約に基づく正当な報酬の支払であるかのように装い,
(2)G社名義の前記預金口座に入金した前記12億5925万円のうち10億9740万円を,同月29日頃,G1(以下「G1」という。)を介して,英領ヴァージン諸島籍の会社HLtd(以下「H社」という。)名義のFリヒテンシュタイン銀行シンガポール(以下「Fシンガポール」という。)預金口座に送金させ,かつ,これについて,G社及びH社の間の架空の契約書を用意するなどして,両者間の契約に基づく正当な報酬の支払であるかのように装い,
(3)前記第1の幇助行為の報酬として被告人3名に支払われることとなった現金9億5000万円を,A社の実質的な子会社である英領ケイマン諸島籍の会社J名義のF銀行預金口座から,同年12月19日頃,A5を介して,パナマ共和国籍の会社KS.A.(以下「K社」という。)名義のF銀行預金口座に送金させ,かつ,これについて,J社及びK社の間の架空の契約書を用意するなどして,両者間の契約に基づく正当な報酬の支払であるかのように装い,
(4)K社名義の前記預金口座に入金した前記9億5000万円のうち9億3000万円を,同月24日頃,G1を介して,英領ヴァージン諸島籍の会社L Ltd(以下「L社」という。)名義のFシンガポール預金口座に送金させ,かつ,これについて,K社及びL社の間の架空の契約書を用意するなどして,両者間の契約に基づく正当な報酬の支払であるかのように装い,
(5)平成21年3月5日頃,信託会社F Trust(Singapore)Ltdの担当者を介して,H社名義の前記預金口座に入金した前記10億9740万円のうち10億9637万9761円及びL社名義の前記預金口座に入金した前記9億3000万円に他の金員が混和した10億7326万7218円の合計21億6964万6979円について,両口座から,F Trust (Singapore)Ltd as Trustee of the M Investment Unit Trust名義のFシンガポール預金口座(以下「M口座」という。)を経由させ,かつ,同口座にあった23万3089円を加えた上,内10億8494万34円をリヒテンシュタイン公国籍の財団N1 Foundation名義のF銀行預金口座に,内6億5096万4020円を同国籍の財団N2 Foundation名義のF銀行預金口座に,内4億3397万6014円を同国籍の財団N3 Foundation名義のF銀行預金口座にそれぞれ送金させ,もって犯罪収益等の取得につき事実を仮装するとともに,犯罪収益等を隠匿した。
(証拠の標目)〈省略〉
(事実認定の補足説明)
第1  争点
1  判示第1の事実(被告人3名の証券取引法違反,金融商品取引法違反)
争点は,被告人3名の故意・共謀の有無である。
2  判示第3の事実(被告人3名の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律〔以下「組織犯罪処罰法」という。〕違反)
争点は,犯罪収益性,仮装行為(契約の架空性),隠匿行為及び被告人3名の故意・共謀の有無である。
3  判示第2の事実(被告人Y1及び同Y2の詐欺)
争点は,欺罔行為並びに被告人Y1及び同Y2の故意・共謀の有無である。
第2  前提事実
関係証拠によれば,以下の事実が認められるを単に「証言」「供述」などと表記する。)。
1  被告人3名の関係等
被告人Y1は,昭和53年にO株式会社(以下「O社」という。)に入社し,東京第二事業法人部に在籍したり,浜松支店次席,高崎支店長などを務めるなどしたが,平成10年6月頃にO社を退社し,経営コンサルティングを主たる業務とするZ1社を設立して代表取締役に就任した。
被告人Y2は,昭和63年に,同Y3は,昭和59年に,それぞれO社に入社し,同Y1と交流があったものであるが,同Y2においては,平成10年6月頃,同Y3においては,同年11月頃,それぞれO社を退社してZ1社に参加した。被告人3名は,いずれもZ1社に出資して同社を共同経営する立場にあったが,他の取締役が順次退任するなどして,平成12年以降は3名のみが共同経営者となった。
2  A社の損失隠しの状況等
(1)A社における損失拡大に至る経緯等
A社は,医療機器,光学機械の製造販売等を目的とする株式会社であり,代表取締役社長は,昭和59年から平成5年までA1(以下「A1」という。),同年から平成13年までA2(以下「A2」という。),同年から平成23年までA3がそれぞれ務めた。
A社は,平成2年頃のバブル経済の崩壊に伴い,資産に多額の含み損を抱えた。そこで,当時,同社においては,特定金銭信託及び特定金外信託を併せて「特金」と称し(以下,「特金」というときはこの意味で用いる。),信託財産を構成する個別の資産全体をまとめて1個の資産とみなした上で,その全体の価額が取得価格の50パーセントを下回らない限りは,取得価格を基準に資産計上が可能な「バスケット方式原価法」を採用していたところ,特定金外信託については,契約終了時には株式等の有価証券で資産が返却され,これを簿価で評価することが可能で,含み損の表面化を避けられたことから,その割合を増加させることにした。また,利益を先取りできる決算対策商品を購入したり,決算期末に含み損を抱えた不良資産を一時的に売却して買い戻す(期末の飛ばし)などした。
これらの方法によっても,含み損は増大し,平成4年3月期末頃は,約480億円,平成8年頃には,約900億円にまで膨らんだ。
A社で資金運用等を担当する経理部資金(財務)グループに所属していたA4及びA5は,外資系証券会社に勤務していたP(以下「P」という。)に相談し,Pの協力の下,平成8年頃から9年頃にかけて,ケイマン諸島に,B2Corporation(以下「B2社」という。)及びB1社というSPC(特定目的会社)をA社の簿外ファンドとして,それぞれ設立した上で,これらのSPCに,A社等が特金等で保有していた国債等の債券を貸し付け,同SPCが,同債券を売却して現金化し,A社の不良資産を買い受けるなどして損失計上を免れた(損失の簿外ファンドへの飛ばし)。
(2)A4から被告人Y1への相談状況
被告人Y1は,昭和六十二,三年頃,O社の東京第二事業法人部でA社を担当していた際に,A4と知り合い,いわゆるブラックマンデーでA社が抱えた損失(約100億円程度)についてA4から相談を受け,その損失を回復するなどして,A社の幹部らの信頼を得ていた。また,浜松支店に勤務していた平成4年頃,A4から,A社に資産の含み損があることを打ち明けられ,その処理の方策等を相談された。被告人Y1は,その際,メモ用紙に,特金を含むファンドごとの含み損等を一覧表にしてまとめたり,「前期末含み損 200✓ 今期増加分 200✓」「過去からの持ち越し分は表に出したくない。」「公認会計士へのスタンス すべての処理をやってしまってから(期をこえてから),その根拠を説明し了解を得るしかないし,過去もすべてそのスタイルでやってきている。」「CITIT/Bの特金について 帳簿にのせていない。(存在自体を明らかにしていない)」「今期経常予想 150✓ →最終的に100✓はキープしたい。」と記載するなどした(甲487)。そして,被告人Y1は,A4に対し,損失は公表すべきである旨述べたが,A社はそれを公表せず,決算対策商品の購入等で,約103億7900万円の経常利益を計上した。
3  A社の損失隠しスキームの構築状況等
(1)F銀行ルート
A4らは,前記2(1)のように,国債等の債券を簿外ファンドに貸し付けて損失を付け替えていたところ,会計監査等でこれが発覚するおそれがあった。そこで,秘密保持の徹底した外国銀行から資金を調達して簿外ファンドに供給する方法の検討を始めた。
そのような中,A4,A5及びA社のA6(以下「A6」という。)は,平成9年末ないし平成10年初め頃,東京都内の六本木の飲食店において,被告人Y1及び同Y2同席の下,同Y1のO社在籍当時の部下であったF銀行東京駐在所長のF1(以下「F1」という。)と会食をした。同会食後,A社及びその関連会社は,平成10年8月頃までに,F銀行に預金口座を開設し,合計約380億円を預金した上,B2社は,F銀行から合計300億円の融資の実行を受けた。この資金を利用して,簿外損失の多くはB2社に集約される形となった。
(2)シンガポール・ルート,C1ルート及びW-Oルート
ア 特金解消の必要性等
A社では,平成9年頃,監査法人から,近い将来に時価会計制度が導入される見込みであり,それに伴い,特定金外信託内の資産についても時価で評価されることになるので,特定金外信託を計画的に解消しておいた方が望ましい旨のアドバイスや,平成10年3月期の会計監査の際,平成13年3月期には時価会計制度が導入されるので,特定金外信託への対処を検討すべきである旨の指導を受けるなどした。また,平成10年6月頃,日本経済新聞等において,「A社が財テク失敗で巨額損失を抱えている」旨の報道がされ,その頃,株価も急落するなどしたことから,同年7月頃,前記監査法人の会計監査を受け,特金の解約等を行うよう指導された。
そこで,A社は,平成13年3月期末までには特金を解約することにしたが,損失を抱えた債券(仕組債)を帳簿から外そうとしたことが監査法人に発覚したこともあり,更に指導を受け,1年前倒しの平成12年3月期までに特金を解約しなければならない状況となった。A2は,約1000億円の損失を全て公表することは困難であると判断してこれを隠すことを決め,A社は,平成12年3月期中間決算において,海外の簿外SPC(ファンド)への飛ばしに係る損失相当額の引当金として約170億円を計上するにとどめた。なお,A社がこのように巨額の損失を抱えていることは極秘事項とされ,社内でこのことを知っていたのは,A1,A2,A3,A4,A5,A6らに限られていた。
以上の経緯で,A社は,解約することとなった特金に代わり,資金運用による損失を簿外に隠したりそれを維持したりするためのスキームを構築する必要に迫られた。
イ シンガポール・ルート
A4らは,Pから,コメルツ銀行シンガポール支店に勤務していた人物を紹介され,その仲介で,平成11年10月から同年12月にかけて,同行にA社名義の預金口座を開設した上で約3億米ドルを預金し,これを担保提供するなどして,簿外のSPC等に資金を供給した。そして,同SPC等に,多額の含み損が出ていた金融資産を買い取らせ,同金融資産が,含み損とともに同SPC等に付け替えられる形となった。
ウ C1ルート及びW-Oルート
(ア)C1ルート
A社においては,新事業を発掘,育成すべき経営課題もあったことから,A4らは,公表上の事業投資ファンドを設立してベンチャー企業を発掘・育成するとともに,他方で,簿外の事業投資ファンドも設立して,同ファンドへ公表上の事業ファンドから資金の一部を回したり,そこで取得したベンチャー企業の株式のキャピタル・ゲインなどを利用して,簿外損失を解消する方法をとることにした(甲72,A4証言,A5証言)。
被告人3名は,平成12年2月,C1のGPとする目的で,ケイマン諸島にZ2社を設立し,同年3月,公表上の事業投資ファンドであるC1を同地に設立した。その組成契約上,Z2社がC1のGPとなり,A社以外にも出資者が存在することを装うためにA4らがPに依頼して設立したQLtd.(以下「Q社」という。)がリミテッドパートナー(Limited Partner。ファンドの出資者。以下「LP」という。)となった。
A社は,C1に対し,同年3月14日に自己名義で300億円,同月16日にQ社名義で50億円,合計350億円を出資し,そのうちの320億円については,C1の組成後間もなく,B1社に送金された(なお,20億円については,直後に返済された。)が,この資金等を利用して,簿外損失の多くをB1社にも集約した。なお,この送金は,被告人Y1が署名したF銀行に対する送金指示書によって実行された。
被告人3名は,A社との間で,C1の組成契約とは別に,A社の短期現金運用については,B1社を使用すること,Z2社は,B1社に対して一切のデュー・ディリジェンスを行うことなく,その要求を受け入れること,B1社に対する資金移動については,Z2社はA社の指図に従うが,Z2社はB1社との関係に起因する一切の責任等について免責されることなどを約した契約を締結した。
このようなC1の投資を検討するため,A社側とZ1社との間では,定期的にミーティングが開かれていた。
(イ)W-Oルート
A4らは,Wと称するクラスファンドを購入し,これを担保提供して得た融資金を簿外ファンドに供給するスキームを検討した。A1やA5らが,平成12年2月末頃から同年3月初旬頃までの間,Wの購入の依頼やA社の新規事業の提案等を目的として,リヒテンシュタイン公国のF銀行を表敬訪問し,これに被告人Y2が同行した。ところが,同地において,F銀行側から突如Wの購入を断られたことから,A社は,それに代わる資金の供給スキームを検討し,F銀行と交渉の末,W-O(JPY)(以下「W-O」という。)という投資信託を組成することになった。その後,A4らは,C1で発掘・育成する事業のうち,将来解消に充当できそうなベンチャー会社の株式をA社の簿外ファンド名義で予め廉価で取得し,その資金供給が監査法人に発覚しないスキームを検討し,そのための簿外ファンドを設立することにした。
被告人Y2は,平成12年3月8日頃から12日頃まで英領ケイマン諸島を訪問したが,その訪問中の同月10日頃には,簿外ファンドのJ社が,同月15日頃には,簿外ファンドのC2が,それぞれ同地で設立された。両ファンド設立についてのA社の目的は,簿外損失を集約していたB1社への資金供給に利用することに加え,C1で育成するベンチャー会社の株式を予め廉価で取得し,そのキャピタル・ゲインによって損失隠しスキームを解消することにあった。このような目的のため,C2には,簿外の裏ファンドとして,損失解消に用いる株式を保有する役割が,J社には,監査を受けた際に,W-Oの資金供給先であるC2の存在が,直ちに明るみに出ないためのブラインドとなる役割が,それぞれ担わされた。J社とZ2社との間において,C2の組成契約が締結され,C2のGPにはZ2社が就き,被告人3名は,C2の署名権者となった。また,J社とZ2社との間において,B1社への資金供給に関し,前記(ア)のC1ルートの場合と同様に免責を受ける旨の契約が締結された。そして,A社は,同年3月,W-Oを組成し,同月21日,350億円を投資する一方で,Z1社は,F銀行との間で,アドバイザリー契約を締結した。
平成12年3月21日,W-OにおいてJ社の債券を購入したことにより,A社がW-Oに投資した前記350億円のうち310億円がJ社に流れ,翌22日には,そのうちの300億円が,J社からC2に流れた(同310億円の送金については,被告人Y1が署名した送金指示書によって実行された。)。
このように,C2に供給された300億円を原資として,同月23日には,C2から後記ITVに101億円,同月24日には,C2からB1社に194億円がそれぞれ送金されたところ,その194億円のうち190億円の送金については,被告人Y2が署名したF銀行に対する送金指示書によって実行された。
(ウ)ITVの設定及びITVによるR2社株の取得被告人Y1は,平成11年12月頃,A社に対し,当時のR1株式会社(以下「R1社」という。)がその情報関連の事業部門を子会社として分社化したR2株式会社(以下「R2社」という。)の株式の取得を勧めた。A4らは,平成12年3月頃,100億円分をA社の簿外ファンドで引き受けることにし,F銀行のクラスファンドとしてF Class Fund IT Ventures(JPY)(以下「ITV」という。)を組成した(甲502捜査報告書資料1,F1証言)。Z1社は,このITVについて,F銀行との間でアドバイザリー契約を締結した(甲505,F1証言)が,その契約書については,被告人Y1が,その規則(レギュレーション。「Z1社がF銀行のアドバイザーとして行為する。」旨の内容。甲502捜査報告書資料1)については,被告人Y1と同Y2が,それぞれ署名した。このITVの設定に関する手続は,被告人Y3が行った。また,ITVからR1社への99億9988万420円の送金指示書には,被告人Y1が署名した(甲675)。
(エ)C1ルート及びW-Oルート構築後の状況
被告人Y1らは,C1の設立後,A社の投資委員会において,投資対象等について定期的に報告をするなどしていた。
また,平成12年から18年にかけてのC1の決算期末頃(12月末頃)には,B1社からC1に対して,資金を移動し,決算期後に再びC1からB1社に資金を移動する手続を繰り返し,C1の決算期末頃には,A社が出資した金員から新規事業の候補先に投資された後の残高のほぼ全額が,C1の預金口座に維持されている状態が作り出された。そして,このような資金の移動手続は,平成18年3月にC1とB1社との間の資金関係が解消されるまでの間,被告人Y3が行っていた。
(3)損失隠しスキーム完成後の状況等
前記(1)及び(2)のとおり,A社は,簿外損失をB2社及びB1社に集約する損失隠しスキームを完成させたが,簿外損失額は,平成15年3月末には,約1176億6000万円までに増大していた。
4  C1による新事業3社株買取りスキーム
(1)新事業3社への投資
ア 前記3(2)ウのとおり,A4らは,A社の新規事業の開拓と損失処理に利用できる投資先を探しており,新規事業の投資先の選定を被告人3名に委ねていた。そして,C1の設立に合わせて,A社社内では,事業投資委員会(当初は事業投資審査委員会と呼称)が設置され,多くの場合,被告人Y1らZ2社側も出席し,投資先の選定状況等について説明するなどしていた。
イ 被告人3名は,A4らに対し,平成16年頃から,判示第2の新事業3社を,A社の新規事業として重点的に投資を行う対象として推薦した。
その結果,A4及びA5らは,新事業3社を重点投資先とすることにし,平成17年頃からは,A社の社員を新事業3社に出向させるなどして,被告人3名による事業立ち上げを支援した。なお,A4は,平成17年9月30日,A社から翌10月1日付けでZ5社の代表取締役会長に派遣され,後に新事業3社の総括責任者となる予定であったA7(以下「A7」という。)に対し,叱咤激励する内容のメール(甲513)を送信した際,同メールを元にして,これに被告人3名宛ての「A3もA4も,皆さんの心労十分理解,感謝しております。」「いずれにせよ時間がありません,頑張りましょう,気合いを入れて,仕上げたいと思います,益々のご支援を」との文章を付加したメールを作成し,これを被告人Y2に送信するなどした。
ウ しかし,平成18年頃の新事業3社の業況はいずれも芳しくなかったため(Z5社においては,平成18年2月期で約2.7億円の,Z3社においては,同年3月期で約1.4億円の,Z4社においては,同年12月期で約2.1億円の,各純損失を計上した。),A4らは,新規事業を発掘,成長させることは容易ではなく,時間も要すると考え,A社が,簿外のSPC等から株式を高値で買い取り,その価格と本来の株価との差額を架空ののれん代として計上し,時間を掛けてこれを償却するスキームを検討し,新事業3社をその候補とすることでA3の了承を得た。
エ 被告人Y2は,平成18年2月頃,A社側とZ1社側とのミーティングの場で,A社側から,新事業3社の事業計画を作り直してほしい旨の要請を受け,これを了承し,A6の指示を踏まえ,売上,利益などを上方修正した事業計画を作成した。なお,この事業計画は,後記(2)アのとおり,同年3月に新事業3社株の売買がされた際の株価算定にも使用された。
(2)C1による新事業3社株買取りスキームの実行
ア A社では,簿外損失が発覚しないようにするため,C1からB1社との関係を切り離すとともに,将来的には,新事業3社を子会社化して育成するため,①C1が,C2とITVから,新事業3社株の一部を高額で買い取る,②その際の株価は,C1からC2等に流すべき金額を先決し,その金額を3社に割り振るという内容の新事業3社株買取りスキームを実行することにし,そのために,C2からB1社,B1社からC1,C1からC2やITV,C2やITVからB1社などの流れで資金を2回循環させる形での資金移動を行った。
そして,A4らは,前記②の株価について,C1とB1社の資金関係を解消するのに必要な金額から逆算する形で決定したが,その中で,被告人Y2が取りまとめた新事業3社の事業計画を参考にするなどした。
イ 被告人Y1らは,平成17年9月頃に開催されたA社の事業投資委員会に出席し,新事業3社の事業内容等について説明したほか,平成18年3月9日に開催された同委員会に出席し,新事業3社を重点的な投資先として提案するなどした。
A社では,社内における審査の結果,前記アのとおり,C1が新事業3社株を取得することになった。
ウ 平成18年3月,新事業3社株の買取りが実行され,B1社からC1に対して,前記アの資金移動が行われ,その結果,C1がB1社に供給していた資金がC1に償還されてC1・B1社間の貸借関係が解消された。
被告人Y3は,これら一連の送金手続のうち,C2からB1社に対する125億円の送金並びにC1からC2及びITVに対する各送金手続を担当した。
また,Z2社として,新事業3社株の売買契約書の作成に加え,付随する事務手続も行った。
エ そして,C1は平成19年中に中途解約されたが,同年8月に,A社とZ2社との間において,C1解約に関する資産の配分,Z2社の報酬等に関する合意を行った。なお,この報酬額については,C1が,平成17年頃に新事業3社の増資で取得した株式(5万円から20万円)について,平成18年の前記アによる株価(500万円から1400万円)で評価して,その評価益も報酬として算定され,Z2社に支払われた。
5  東京国税局の調査
A社は,平成18年から同19年にかけて,東京国税局による税務調査を受けたが,その際,C1やF銀行の取引を重点的に調査され,Z1社やZ2社にもその反面調査が及んだ。被告人3名は,A4らとの打合せの中で,C2やJ社の属性を告げないように求められ,被告人Y3は,東京国税局に対し,そのように対応した。
6  平成18年5月頃までの報酬の計算とその後の手続
(1)報酬の計算
被告人Y3は,平成18年5月頃までに,C2の組成契約(前記3(2)ウ(イ))に係るC2からのコンサルティングフィーについて9億2000万円と計算した(なお,被告人Y3は,C2の帳簿においても,同計算額に近い9億2175万円を「その他未払い金」として計上していた。)上,これを新会社の預金口座で受け入れ,被告人3名のそれぞれの会社3社で5対3対2の割合で分配する旨の図(甲769)や同年3月の新事業3社株売買については,成功報酬の90パーセントを,将来の3社株売買については,その80パーセントを,被告人らが受け取る成功報酬とする旨記載された「成功報酬」と題する計算シート(甲765)を,それぞれ作成した(この報酬の中には,C2だけではなく,ITVによる新事業3社株売買の分も含まれていた。)。
(2)C2のGP業務の権限委譲被告人3名は,平成18年五,六月頃,F銀行のF2と相談した上,C2のGP業務を,G1が設立する新会社G社に委譲することにした。
そして,C2とG社との間の委任状(「POWER OF ATTORNEY」)や,G社がC2のGP業務の委任を受けるという内容(以下「GPの権限委譲」という。)の平成19年6月1日付け委任契約書
(「MANDATE AGREEMENT BETWEEN C2,L.P. AND G S.A.」)が,それぞれ作成され,被告人Y3が同委任状に署名した。
また,GPの権限委譲に際して,「Confirmation and Indemnification」という文書が作成され,被告人3名とA社のA5が連署した。
その後,被告人Y3は,C2からB1社に対する平成20年3月27日に304億円の,C2からJ社に対する同年4月30日の約181億円の各送金手続を実行するなどした。
(3)口座開設等
Fバンク・イン・リヒテンシュタイン・ケイマン・リミテッド(F銀行の関連会社)とZ1社との間において,平成19年7月1日付けで,同社が受け取る報酬の変更に係る修正契約が締結され,同月23日頃,H社及びL社の預金口座(以下それぞれ「H社口座」「L社口座」という。)がFシンガポールに開設されたが,その際,被告人3名がそれぞれ署名登録を行った。そして,Z2社に対するC2の報酬の振込先は,Z1社口座からL社口座に変更され,その後,同年10月から平成20年8月までの間,4回にわたり,前記F銀行関連会社からL社口座に合計1億8563万6093円が送金された。
7  新事業3社子会社化スキーム
(1)A社の経営執行会議における報告
平成19年9月21日に実施されたA社の経営執行会議において,被告人Y2は,Z4社につき,事業展開状況と今後の事業計画について報告を行い,同月28日に実施された経営執行会議において,被告人Y1は,Z5社につき,事業展開状況と今後の事業計画について報告を行った。
(2)会計監査への対応状況等
C1においては,監査法人に任意の会計監査を委託したが,平成19年九,十月頃,C1の最終決算期である同年8月期の会計監査に関し,会計士から,新事業3社株を減損すべきとの指摘がされた。これに対し,被告人Y3は,かかる処理を回避するための説得をし,さらに,同会計士に対し,新事業3社の株主の地位は全てA社が引き取る予定である旨を記載した確認書面をA6と共にそれぞれ提出し,C1の同年8月期における新事業3社株の減損処理を免れた。
(3)新事業3社子会社化スキームの実行
平成20年2月開催のA社の取締役会において,A社が新事業3社株を総額186億1200万円ないし613億7900万円で買収して子会社化する旨の承認決議がされた。
A社は,平成20年3月,総額470億8500万円をITV及びC2に支払い,新事業3社株を取得した。その際の各株価は,C1による新事業3社株取得の際と同様に,簿外損失を解消するのに必要な金額から逆算する形で決定された。
次に,A社の香港にある子会社(A FinanceHong Kong Limited)は,同年4月,新事業3社株を取得し,総額137億1000万円をS1(以下「S1」という。)及びS2(以下「S2」という。)に拠出して,F銀行やW-Oに借入金を返済した。
同資金移動のうち,平成20年3月におけるC2からB1社への304億円の送金及び同年4月におけるC2からJ社への約182億円の送金は,いずれも,被告人Y3が署名したF銀行に対する送金指示書によって実行された。
前記一連の資金移動により,F銀行及びW-Oを利用した損失隠しルートが解消された。
8  平成18年10月頃までの報酬の計算とその後の口座開設,送金等
被告人Y3は,遅くとも平成18年10月頃までに,同年3月の新事業3社株の売買価格等を参考に,G社がC2から受け取る成功報酬を23億3245万円と計算した。
一方,被告人3名は,平成19年9月初め頃までに,Fトラスト・シンガポールが取り扱うユニット・トラスト(持分型の投資信託)を組成した。
これを受けて,同月3日頃,Fシンガポールに,M口座が開設された。
被告人Y1は,同月5日頃,自己名義のF銀行預金口座から4万3581.69米ドルを,被告人Y2は,自己名義のF銀行預金口座から2万6149.02米ドルを,被告人Y3は,自己名義のF銀行預金口座から1万7432.68米ドルをM口座に各送金した。
被告人3名は,G社からH社への資金移動に関して,平成20年4月,G1の協力も得て,両者間のアドバイザリー契約書を作成した。この契約書には,G1と被告人Y3が署名した。
被告人3名は,Mから資産配分を受けるために,リヒテンシュタイン公国の財団(Foundation)制度を利用することとし,平成20年4月に,被告人Y1がN1を,被告人Y2がN2を,被告人Y3がN3を開設した(以下これらの財団を総称して「3財団」という。)。この手続は,被告人Y3がとりまとめた。
その上で,被告人3名は,各自のM口座に対する持分を,5対3対2の割合で,それぞれ各自の財団に移転した。
平成20年9月11日頃,現金12億5925万円が,F銀行のC2名義の口座から,同銀行のG社名義の口座に,被告人Y3により送金された。
同年12月19日頃,現金9億5000万円が,F銀行のJ社名義の口座から,F銀行のK社名義の預金口座に送金された。
9  被告人3名等側が得た主な利益
A社との関係で,被告人3名ないしその関係会社(Z1社,Z2社)が得た主な利益は,次のとおりである。
① C1に関し,Z2社において,組成時に支払われるイニシャル・マネジメント・フィー(当初管理手数料)5億2500万円(LPの出資金350億円の1.5パーセント。ただし,うち1億円は,Z2社のC1に対する出資金と相殺)及び解約に至るまでの間の毎年支払われるマネジメント・フィー(管理手数料。年率で純資産価値の1パーセント)と成功報酬
② C2の関係でZ2社が得た,組成時のイニシャル・マネジメント・フィー4億5000万円(J社からの出資額300億円の1.5パーセント)及び平成19年6月頃までの毎年支払われたマネジメント・フィー(管理手数料。年率で純資産価値の1パーセント。後に0.5パーセントに改訂)などの合計約12億8700万円
③ W-O及びITVの関係で,A社からZ1社に支払われたマネジメント・フィー(W-Oの出資額350億円の1パーセント,ITVへの出資額101億円の0.05パーセント)等合計約27億8798万円
④ 平成18年の新事業3社の増資の際の各株価(500万円から1400万円)で評価した評価益
⑤ A社とZ1社との間のコンサルティング契約締結時である平成20年5月から,契約解除時である平成23年5月頃までの間の同契約に係る報酬年額7350万円
第3  判示第1の事実(被告人3名の証券取引法違反,金融商品取引法違反)の争点に対する判断
1  被告人3名におけるA社の損失及び各スキームの認識
(1)関係証拠等から推認される被告人Y1の認識
ア 平成4年頃のA4からの告知
前記第2の2(2)記載のとおり,被告人Y1は,平成4年頃,A4から,A社に資産の含み損があることを打ち明けられている。また,その際に被告人Y1が記載したメモの内容などからすると,同被告人は,特金等に関し,A社には約400億円程度の簿外損失が存在し,同社がこれを隠すという判断をしたことを把握したと認められる。そして,被告人Y1は,その簿外損失の公表を進言したものの,A社は,その後も損失を公表しない状態が続き,簿外損失がなくなったことを同被告人が確認ないし認識したと認められるような事情も存しない。そうすると,以上のような点のみからしても,本件当時においても,被告人Y1のA社の簿外損失の存在についての認識は続いていたとみるのが自然である。
被告人Y1は,前記メモについて,A4が,電話で一方的に話したことをその場でメモし,後で清書しただけで内容を特に意識していたわけではない旨弁解する。しかしながら,それ以前から仕事上の関わりがあったA社の前記のような重要な内容について,特に意識もせずに聞き流したというのは,それ自体不自然である上,よく整理され,対応策まで書かれた当該メモの体裁・内容(甲487)とも整合しない。また,被告人Y1自身,その際に損失を公表するようにアドバイスをしたことは認めているのである。以上によれば,同被告人の前記弁解は信用できない。
イ 被告人Y1の損失隠しスキームへの関与
また,被告人Y1は,Z1社及びZ2社の代表者として,前記第2の3,4のとおり,A社の損失隠しスキームとの関係において,同スキーム構築時には,Z2社をC1やC2等のGPとし,同被告人名義で重要な送金を行い,同被告人自身が,A社内部での説明を行うなどしているのであり,A社の損失隠しスキームの構築及び同解消の一連の流れに強く関与している。
ウ 検討
前記ア,イのみからしても,被告人Y1が,本件当時,A社の簿外損失の存在を認識しつつ,同損失を隠すために各スキームが構築され,その後解消に至ったことを認識していたことは相当程度推認することができるというべきである。
(2)関係証拠等から推認される被告人Y2及び同Y3の認識
ア 被告人Y1との関係等
前記第2の1のとおり,被告人Y2及び同Y3は,いずれも,同Y1との間において,O社に在籍中から交流があり,同社を退社してまで,同被告人が立ち上げたZ1社(小規模で,株主構成や経営陣の入れ替わりもほとんどない会社であり,経営者らの個性が色濃く反映している会社と認められる。)に参加し,平成12年以降は被告人3名のみが共同経営者となって,同社を運営していたのであるから,3名の間には,相互信頼を基礎とする結び付きの強い関係があったとみるのが自然であり,また,いわば運命共同体的な側面もあったといえる。そして,同社にとっては,A社は取引先として最も重要な位置を占めていたと認められる(被告人Y1の公判供述)ことから,A社の経営に大きな問題が生じれば,Z1社に大きな影響が及ぶ関係にあったのであるから,被告人Y1が,A社の簿外損失について被告人Y2及び同Y3に知らせないことは,両被告人に対して背信的とさえいえる。この点,仮に,A4が,被告人Y1に対し,簿外損失のことを被告人Y2及び同Y3には告げないように口止めをしていたというのであれば理解できなくはないが,そのような口止めの形跡も一切見当たらない。さらに,被告人Y2及び同Y3が後記イのとおり損失隠しに関連した重要な取引等に関わっている以上,諸々の取引等が円滑に実行されるためにも,また,そのような取引等による資金の流れや裏ファンドの存在等を両被告人が不用意に他言しないためにも,両被告人においても,A社の簿外損失の存在についての認識がある方が望ましかったといえる。
以上のような点からすると,前記1(1)のような認識を有していた被告人Y1が,同Y2及び同Y3に対して,その認識を伝えないということは,通常考え難いというべきである。
イ 被告人Y2及び同Y3のA社の損失隠しスキームへの関与状況等
また,被告人Y2及び同Y3は,A社の損失隠しスキームについて,次のような関与をしている。
(ア)損失隠しスキーム構築への関与
Fルート関係については,平成9年末ないし平成10年初め頃,F銀行のF1らとA社のA4らが顔を合わせる際に,被告人Y1と共に,同Y2もその場に居合わせている(前記第2の3(1))。C1ルート関係については,被告人Y2のみならず同Y3も,同Y1と共に,同年2月にZ2社やC1を設立し,同設立後,A社の投資委員会において,投資先の選定状況等について定期的に報告をするなどしている(前記第2の3(2)ウ(ア),同4(1)ア)。
W-Oルート関係等については,W-Oの組成後,Z2社が,C2のGPに就任し,被告人Y2及び同Y3は,同Y1とともにC2の署名権者になるなどしている(前記第2の3(2)ウ(ウ))。さらに,被告人Y2は,Z1社が,ITVについて,F銀行との間でアドバイザリー契約を締結した際に,その規則(レギュレーション)について署名するなどもしている(前記第2の3(2)ウ(ウ))。被告人Y3は,平成12年から18年にかけてのC1の決算期末頃(12月末頃)に,B1社からC1に対して,資金を移動し,決算期後に再びC1からB1社に資金を移動する手続を繰り返すことを担当している(前記第2の3(2)ウ(エ))。
(イ)損失隠しスキーム解消への関与
被告人Y2及び同Y3は,同Y1同様A社の新規事業の開拓と損失処理に利用できる投資先の選定を委ねられていたほか,多くの場合,A社の事業投資委員会にも出席し(前記第2の4(1)ア),新事業3社の事業立ち上げに関わっている(前記第2の4(1)イ)。また,A4が,Z5社の代表取締役会長に派遣され,後に新事業3社の総括責任者となる予定のA7を叱咤激励する内容のメールを送り,このメールの内容に更に被告人3名に対する謝意などを付加したメールをZ1社側に送信する際には,同メールを被告人3名中の被告人Y2に送信している(前記第2の4(1)イ)。さらに,被告人Y2及び同Y3は,平成17年9月頃に開催されたA社の事業投資委員会に出席し,新事業3社の事業内容等について説明し,平成18年3月に開催された同委員会にも,被告人Y1と共に出席し,新事業3社を重点的な投資先として提案するなどしている(前記第2の4(2)イ)。被告人Y2は,同年2月頃,A社側とZ1社との間のミーティングの場で,A社側からの要請を受け,新事業3社の事業計画を再作成するなどもしている(前記第2の4(1)エ)。平成18年3月のC1の新事業3社株の買取りを利用した資金移動に当たっては,被告人Y3が,重要な送金手続を担当し,Z2社として,新事業3社株の売買契約書の作成に加え,付随する事務手続も行っている(前記第2の4(2)ウ)。
そして,被告人Y3は,C1ルートが解消された後の平成18年から19年にかけて,Z1社が,東京国税局による反面調査を受けた際には,C2やJ社の属性を告げないという対応をしている(前記第2の5)。その後,被告人Y3は,C1の平成19年8月期の会計監査に関し,会計士から,新事業3社株を減損すべきとの指摘がされたことに対し,会計士を説得したり,書面を提出して,C1の同決算期における新事業3社株の減損処理を免れさせるなどもしている(前記第2の7(3))。
また,新事業3社が子会社化される際には,その資金移動のうち,平成20年3月におけるC2からB1社への304億円の送金及び同年4月におけるC2からJ社への約182億円の送金が,被告人Y3の署名によるF銀行に対する送金指示書によって実行されている(前記第2の7(3))。
ウ 検討
被告人Y2及び同Y3は,前記イのとおり,A社の損失隠しのスキームに具体的に関わっている。
しかも,その手続を進める過程で,A社側とZ1社との間のミーティング(前記第2の3(2)ウ(ア))
等に参加していた被告人Y2及び同Y3において,仮に,損失隠しのスキームであることについての認識がなかったとしたらそれ故に生ずるような疑問点についての発言や筋違いな発言などがなされた形跡も一切見当たらない。また,被告人Y3については,少なくとも前記第2の6(1)の報酬の計算の段階では,その時点で,A社が新事業3社株を将来高値で取得することにより,C2とITVに600億円相当のキャピタル・ゲインを発生させることの認識を有していたことが推認される。
このような点に,前記アで述べた被告人Y2及び同Y3の同Y1との関係等を併せて考慮すれば,被告人Y2及び同Y3についても,本件当時,A社の簿外損失の存在を認識しつつ,その簿外損失を隠すために各スキームが構築され,その後解消に至ったことを認識していたことは相当程度推認することができる。
(3)A4証言を加えて認められる事実
ア A4証言の内容
A4は,公判で,①平成9年頃にも,被告人Y1に対して,A社の特金の中に含み損があり,その額が約400ないし500億円程度であることを告げたこと,②特金の解消のため,簿外ファンドに対して資金を融通し,守秘義務を遵守する海外の金融機関の紹介を被告人Y1に依頼した結果,同被告人がF銀行のF1を紹介してくれたものであること,③平成12年3月期末までに特金を解消する必要が生じた際,特金に代わる簿外ファンドへの資金供給方法を被告人Y1らに相談したところ,同被告人ら側から,事業投資ファンドを設立して出資し,出資金の一部を簿外ファンドに供給すると同時に,前記事業投資ファンドで新事業を発掘・育成し,そのキャピタル・ゲインによって簿外の損失を解消するスキームの提案を受け,これが,C1及びC2の設立につながったこと,④平成12年の3月か5月頃,被告人Y1から,A社の損失がいくらになっているか聞かれた際に,600億円くらいにふくれてしまった旨話したこと,⑤Wについては,被告人Y1らとの打合せの中でW-Oを組成し,そこからJ社を介してC2に資金供給することになったものであること,⑥ITVの組成やR2社株式取得(損失隠しの目的があった。)に関しては,被告人Y1から,裏ファンドから出資することによって相当の回復が見込める旨告げられたこと,⑦損失隠しスキームの解消に関しては,被告人3名が新事業3社を発掘してくれたこと,⑧被告人Y1らとは,最低月1回,多くて週に2回くらいは打合せを行っていたこと,⑨前記第2の4(1)イの被告人3名宛ての謝意を示したメールを被告人Y2に送信したことには,A社の損失に関して世話になっていることに謝意を示す趣旨もあったこと,⑩C1ルート解消に関しては,C1による新事業3社株取得の計画や,その趣旨がB1社をC1から切り離すものであることを,被告人Y1側に説明したこと,⑪C1ルート解消のための取引は,A社のファンドであるC2,ITVから,同じく同社のファンドであるC1が新事業3社株を高値で取得するという経済合理性のないものであり,かつ,このスキームは複雑であったため,それについては被告人Y1らに直接話をしたこと,⑫新事業3社の子会社化の趣旨については,Z1社側に,新事業3社を子会社化して損失約600億円を解消したいこと,それを平成20年3月期までには終了させたいことなどを直接説明したこと,⑬新事業3社の子会社化を利用して資金を流すことは,被告人Y1らに節目節目で話をしていたことなどを証言している。
イ A4証言の信用性
A4証言は,証言の中に表現がやや曖昧な点などがあるが,その基本的な内容は,前記第2の事実関係や前記(1),(2)で述べた点によく符合する上,A5,A6,A8(以下「A8」という。),F1の関係証言とも根幹部分で基本的に整合している(部分的に異なる点は,時間的経過による記憶の減退,混同等によるものとして理解が可能である。)。
また,A4は,証言時には,既に判示第1の正犯者らの行為の関係で,有罪判決が確定しており,自己の刑事責任を軽くするために共犯者を引き込む危険性は認められない。また,A4と被告人Y1は,同被告人がO社でA社を担当していた昭和六十二,三年頃からの付き合いであるところ,証言時までに被告人3名との間で特段あつれきが生じたような事情もうかがわれない。A4は,公判において,自己の責任を他人に転嫁するような態度をとっておらず,むしろ,被告人3名らを事件に巻き込んで申し訳なかった旨謝罪の言葉を述べるなどもしている。このようなことから,A4が被告人Y1らに殊更不利な証言をする動機は見当たらない。
以上によれば,前記A4証言は十分に信用できるというべきである。
ウ A4証言をも踏まえた認定
前記イによれば,前記アのA4証言に係る事実が認められ,同事実も併せると,被告人3名の認識について前記(1)ウ及び前記(2)ウで述べた点は,より一層明確に認めることができる。
(4)弁護人の主張に対する判断
ア 被告人3名の各弁護人は,各被告人は,C1ルートに関する損失隠しの認識に関し,C1は,新事業の創生を目的とした事業投資ファンドであり,損失隠しに用いる意図はなかった旨主張する。
しかしながら,C1を新事業の創生に用いながら,同時に損失隠しに用いることも十分可能であるから,前記のような目的を有することが,C1を損失隠しに用いる意図がなかったという理由にはならない。
イ 被告人3名の各弁護人は,各被告人は,C1による新事業3社株の取得について,損失隠しスキームの解消を行っているとの認識はなかった旨主張し,その根拠として,①前記第2の4(1)イのA4からA7へのメール(甲513)に,損失解消とは無関係なI社についても記載されている点(被告人Y1の弁護人),②A社の損失の認識を直接うかがわせるメールが証拠として出てきていない点(被告人Y3の弁護人),③新事業3社株売買の資金移動については,単なる機械的送金にすぎず,その仕組みを理解する必要まではない点(被告人Y1及び同Y2の各弁護人),④新事業3社株の売買の前に,S1とS2とが高値で取引をしていたことなどから,新事業3社株の売買価格も不自然には思われなかった点(被告人Y1の弁護人)などを指摘する。
しかし,①のメールは,もともとは,損失隠しの事情を知らないA7に発破を掛ける趣旨で送信されたものであり,これが被告人Y2に転送されたにすぎないから,I社が含まれていても不自然とはいえない。また,②については,A社側と被告人3名は,メール以外にも,ミーティング等で直接打合せをするなどして意思疎通をしていたことが認められるのであり,認識に係る点は,あえてメールでやり取りをする必要性が低かったとみることができる。③については,確かに,それぞれの指示を受ければ,全体像の認識がなくても,個別の資金移動を行うことは可能であるが,前記第2の4(2)アにみられる点など,取引等が経済的合理性を欠くもので,それに直接関与している以上,単なる資金移動にとどまると認識していたというのは不自然である。④については,S1とS2とが高値で取引していることを認識していても,それのみで,新事業3社株の取引に経済合理性がないことの被告人Y1の認識(前記(3)ア⑪のA4の説明を受けたことによる認識)が覆るものとはいえない。
ウ 被告人Y2及び同Y3の各弁護人は,被告人3名は,Z2社という同一の会社でC1とC2の双方のGPに就き,しかも,その会社の名称をZ1社との関係を容易に判明させるものとしたことや,C1とC2のGPであるZ2社の株主を,T社からZ1社の子会社に変更するなどしたことが,被告人3名がA社の損失隠しを認識していたことと矛盾する旨主張する。しかし,損失隠しの発覚防止のために様々な偽装(C2を用いて秘密裏に損失を解消しようとしていることの発覚が容易でないように,通常のビジネスであるかのように装う偽装)を施しており,損失隠しが容易に発覚しないと考えていたとみれば,特に矛盾しているとはいえない。
エ 被告人Y3の弁護人は,各被告人は,それれ,金銭的に困っていなかったのであるから,A社の損失隠しに加担するような動機はなかった旨主張する。
しかし,損失隠しに加担するようになった当時,Z1社は,設立から1年以上経過していたが,保険代理店業務を譲渡するなど,柱となる事業の確立を模索していた段階にあった(甲440)ところ,同社が,C1及びC2のGPを引き受けることにより,10年ないし12年の契約期間中は,毎年,C1については,純資産価値の1パーセント,C2については,1パーセント(後に0.5パーセントに改訂)の管理手数料(C1への出資額351億円及びC2への出資額300億1000万円を前提とすれば,合計5億105万円)の支払を保証され(前記第2の9),しかも,GPとして,A社という有名な大企業の事業投資ファンドの運営を担当することができることになっている。また,Z1社は,W-O及びITVのアドバイザーに就任することにより,毎年,W-Oについては1パーセント,ITVについては0.05パーセントの管理手数料(W-Oの出資額350億円及びITVへの出資額101億円を前提とすると,合計3億5505万円)の支払を保証される立場になっている(前記第2の9)。
このような点からすれば,A社の損失隠しを認識しつつもそれに加担する動機は十分にあったといえる。
(5)結論
以上によれば,被告人3名が,A社の簿外損失や,その損失隠しスキームを認識して,それに関わるC1やC2を維持,管理するなどしていたことは優に認定できる。
2  被告人3名の虚偽有価証券報告書提出の認識
前記のとおり,被告人3名は,A社の簿外損失を認識しながら,損失隠しスキームに関与していたものである。そして,同スキーム構築の背景には,前記第2の3(2)アのとおり,A社が,監査法人から,平成12年3月期までに,特金の解消を迫られたという事情がある。特金の利用は,会計帳簿外に抱えた資産の含み損の発覚を隠ぺいすることを目的とするものであり,それは,現実に発生している損失を,発生していないかのように対外的に偽ることを意味し,最終的には,会計帳簿(A社のような一部上場公開会社では有価証券報告書)の虚偽記載に行き着くものである。特金に代わるスキームを相談された被告人3名側(前記1(3)ア③)が,このような点について理解せずに,複数のスキームの構築,維持に関わっていたとは到底考えられないから,少なくとも,会計帳簿において,有価証券等の評価につき虚偽の記載がされた上で提出されることについての認識を未必的に有していたことは十分に推認できる。
3  虚偽有価証券報告書提出の事実に関する共謀共同正犯の成否
前記1のとおり,被告人3名は,簿外損失の発覚が困難となるスキーム作りや,損失を簿外にとどめておくための運用,管理等に具体的に関与し,かつ多額の報酬を受け取っている。
しかし,そもそも,虚偽の記載のある有価証券報告書の提出が処罰されるのは,有価証券報告書の開示によって投資家に対する継続的な情報提供を行う際に,その情報に虚偽が存すると,投資家らの判断を誤らせることから,情報の発信者に適正な情報を発信させることを目的とするものと解されるところ,被告人3名は,情報の発信面に関与したわけではなく,A社の社外で,簿外損失の発覚が困難となるようにする面に関与していたものである。
また,被告人3名は,平成19年3月期及び平成20年3月期の各決算との関係で,A社側から,簿外損失の総額や,被告人3名が維持,管理に関わったファンド以外の損失の状況,Pらのシンガポール・ルート(前記第2の3(2)イ)の存在等を含め損失隠しの全容等を知らされず,A4らからは,全体の一部の処理について,利用されている立場にあったということができる。
さらに,被告人3名は,損失隠しやそのスキームの具体的内容をA社側に積極的に売り込んだことまでは認められない。むしろ,関係証拠によれば,損失隠しに係る資金移動のほとんどは,A社側が,資金の回し方について全体の構図を描き,重要な個別の送金についてその都度被告人3名側に指示を出していたことが認められる。
加えて,被告人3名においては,虚偽の有価証券報告書を提出すること自体についての直接の利益(A社の対外的信用を偽ることによる直接の利益)は帰属していない。被告人3名の得た利益は,あくまでも前記の被告人3名の役割に対するものであり,本件では,報酬が多額であることが直接正犯性につながるものともいえない。
以上によれば,被告人3名は,自己の犯罪として,虚偽有価証券報告書の提出に関与したとまではいえない。よって,平成19年3月期及び平成20年3月期の各虚偽有価証券報告書の提出について,被告人3名には,いずれも,共謀共同正犯は成立せず,幇助犯が成立するにとどまるというべきである。
第4  判示第3の事実(被告人3名の組織犯罪処罰法違反)の争点に対する判断
1  C2からG社に送金された12億5925万円及びJ社からK社に送金された9億5000万円(前記第2の8)の犯罪収益性
前記第3の3のとおり,被告人3名は,A社が虚偽の有価証券報告書を提出するに当たってこれを幇助したと認められるところ,A4は,C2からG社,J社からH社への前記各送金のいずれについても,被告人3名に対するA社の損失隠しに協力してくれたことについての報酬的な意味があった旨証言している。
この証言は,①平成18年3月及び平成20年3月の新事業3社株の各売買は,いずれも,損失隠しスキームの維持や解消の目的で,そのために必要となる資金額等から株価を設定している(前記第2の4(2)ア,7(3))ところ,これは,本来の事業価値と比較すると高額であって,そのような価格での各株式の取引は,およそ経済合理性を欠くものであったこと,②前記各売買によってC2やITVに発生した売却益とされるものは,実質的には,現に発生していたとは認められず,その利益を前提に算出された成功報酬は,少なくとも運用益等,ファンドの正当な対価とは認められないことなどに照らして,十分に合理的である。また,前記証言は,被告人Y3が,報酬を計算していたC2の会計帳簿(甲618,乙13)において,支払金額について交渉があったことをうかがわせる「決着」というシート名を使用していることや,報酬の趣旨である可能性を肯定するA5の証言とも整合しており十分信用できる。
よって,C2からG社及びJ社からH社への前記各送金は,いずれも被告人3名の幇助に対する報酬の趣旨が含まれたものであり,犯罪収益であると認められる。そして,前記第3の1で述べたところから,被告人3名にもその認識はあったと推認される。
2  C2・G社間,G社・H社間の各契約の架空性(仮装行為)及び被告人3名の故意・共謀
(1)各契約(書)の架空性(仮装行為)
関係証拠によれば,被告人3名は,C2のGPの権限委譲の際,平成19年6月1日付けのC2・G社間の委任契約書(甲479資料1,甲502資料3,甲683)及びC2・G社間の委任状(甲479資料Ⅲ,甲607番号2),並びに平成20年4月17日付けのG社・H社間の助言契約書(甲479資料Ⅳ,甲640番号30)を作成しているところ,それらの内容を総合すると,①G社がC2のポートフォリオ管理(複数の投資用資産全体の管理)のコンサルタントになるとともに,C2から代理権を授与され,②G1は,G社の代理人となり,A5の指示に従って行為をし,③被告人Y3は,H社の被雇用者の立場をとりながら,C2のポートフォリオ管理を引き続き行い,④G社及びG1は,C2に生じる損失について免責されることになっている。このように,G社に権限が移転する体裁をとりながらも,最終的な指示権限はA5に留保され(①,②),被告人Y3が権限移譲前と変わらずに,同管理を行い(③),権限を有した場合には責任も伴うはずであるG社が,常に免責されていること(④)などからすると,権限の移譲には,その実体が伴っていなかったとみるのが自然である。
実際上も,G1は,平成20年3月の新事業3社株の売買の際,C2の代表として契約書に署名するなどしているものの,売買価格(株価)等の重要事項の決定などについては,A4らがこれを行っており,G1は実質的な権限を行使していない(A5証言)。むしろ,C2にGPの権限を委譲した後も,被告人Y3が,帳簿の作成や送金業務等の管理業務を従前と同様に行っているのである(甲655)。また,C2のGP交替の時点では,特段の新規投資は予定されていなかった(A5証言)のであるから,そこに,外国人であり,日本の投資市場に通暁していたとも認められないG1が,GPの実質的な権限者として入るというのは,やや理解しにくい面がある。さらに,C2及びITVにおいて,保有していた新事業3社株をA社自身が高値で取得することで損失隠しスキームを解消することが予定されていた状況の下で,被告人3名が,A社の損失隠しを知らないG1が設立したG社に対し,裏のファンドであるC2のGPの実質的な権限を移譲したとすれば,機密保持の観点からしても,A社にとって危険性の高い行為であり,不自然不合理である。
以上の点からすると,C2・G社間,G社・H社間の前記委任契約(書)は,いずれも実体を有しない架空のものであったと認められる。
被告人Y2の弁護人は,G社へのGPの権限移譲は,東京国税局への対応等を目的として行われたものであり,架空のものではない旨主張する。しかし,東京国税局への対応を目的とすることは,直ちにその権限が実質的にも移譲されたことを意味するものではない上,GPの権限移譲を装って,成功報酬をG社やH社を介して受領することで,前記国税局への対応になると同時に,犯罪収益を隠匿することも可能なのであるから,前記主張は採用できない。
(2)被告人3名の故意・共謀
ア 被告人Y3は,C2のGPの権限移譲に先立つ,平成18年5月18日頃までに,同年3月の新事業3社株の売買によってC2及びITVで発生する成功報酬を9億2175万円と算定した上,これを被告人3名の新会社に5対3対2の割合で分配することを検討している(甲616,764,765,769,被告人Y3供述)。また,C2の平成20年2月期の第1四半期(平成19年3月ないし5月)の会計帳簿において,新たに「成功報酬」と題するシートに,平成18年3月の新事業3社株売買の際の成功報酬として,「以前の分」として前記9億2175万円を入力した上で,C2及びITVが当時保有していた新事業3社株が前記売買の際の株価,その2倍又は2.5倍で売却されれば生じるであろう売却益や,その売却益を前提とした成功報酬を計算している(甲764)。さらに,その成功報酬のうち10パーセント及び将来の新事業3社株売買における成功報酬のうち20パーセントをG社に交付し,その余をU社等に,5対3対2の割合で分配した場合の金額を計算するなどしている(甲765,被告人Y3供述)。
さらに,被告人Y3は,GPの権限を移譲するに当たって,「ユニット・トラストを設立して,それをFシンガポールが管理をするのはわかりました。実際上,PS(W)等のフィーをもらうのはこのUTですか。」「また,ファンドの成功報酬をG社からもらうのもこのUTでいいのですか。それともその下に会社を作る必要があるのですか。」「C2 Coが出てますが,この位置づけはなんでしょうか?シンガポールのUTの下にぶら下げる会社?UTではフィーを受け取れないので,この会社を作る必要がある?」(甲771)など,G社からファンドの成功報酬を受領するため,ユニット・トラストを設立することや,そこで受領できない場合には,さらにその下に会社を設立することなどを検討するやり取りを関係者との間で行っている。また,GPの権限移譲の直後においても,シンガポールにおけるユニット・トラスト設立に関する提案書を平成19年6月19日付けで作成する(甲823)などして,M組成の準備をし,同年7月には,H社口座を開設している(被告人Y3供述,甲424資料3-3)。
加えて,被告人Y3は,同被告人が新会社に雇用されてC2の資産管理の会計担当を務めるとともに,G社の業務を全面的に支援すること,G1にはC2に関する損害を一切負担させないことなどを内容とした「Confirmation and Indemnification」と題する書面にも署名している(前記第2の6(2))。
このように,被告人Y3は,報酬の計算をしたり,C2の成功報酬をG社やH社を経由してMに送金するスキームの構築に関する具体的なやり取りを行い,しかも,成功報酬の移転に関する実務に関わる旨の書面に署名しているのであるから,C2・G社間及びG社・H社間の架空の契約関係に基づく資金移動を経て,Mに送金する仕組みを理解し,認識していたことは優に認められる。
イ 被告人Y1及び同Y2は,前記アの「シンガポールにおけるユニット・トラスト設立に関する提案」と題する書面の作成や,M組成の準備,H社口座の開設に関わったほか,前記アの「Confirmation and Indemnification」と題する書面に,被告人Y3やA5と並んで署名している。
また,被告人Y1及び同Y2は,①前記アの「シンガポールにおけるユニット・トラスト設立に関する提案書,②H社を開設するに当たって,署名権者を登録する平成19年7月23日付けのH社の署名登録カード(甲424資料3-3,436番号11),③Mのユニットを取得するに当たって,同年9月5日付けのM口座への送金指示書(甲654資料1ないし3)や同月6日付けのユニット発行申請書(甲820ないし822),④MのユニットをN1やN2に譲渡するに際して,平成20年9月5日付けのユニット譲渡書(甲817ないし819)に,それぞれ署名している。そして,G社に送金された現金は,G社からH社,H社からM,MからN1やN2へと順次移動していることからすると,前記各書面は,いずれも,このような現金の流れの関係で重要な意味を持つものであるから,被告人Y1及び同Y2がその趣旨を理解せずに署名するということは容易に考え難い。被告人Y3も,C2の成功報酬をG社やH社を経由してMに送金するスキームの構築については,自分1人で勝手に資金を動かすことは通常はないので,被告人Y1及び同Y2にも全て説明していると思う旨述べている。このような点に,このスキームがC2の成功報酬の受領に関わる重要事項であることや,成功報酬の金額の大きさ,Mには,C2の成功報酬を受け取る以外の役割がうかがわれないことなども併せ考えると,被告人Y1及び同Y2は,C2・G社間及びG社・H社間の架空の契約関係に基づく資金移動を経て,Mに送金する仕組みを理解し,認識していたと推認される。
被告人Y1は,H社やMという名称は聞いたことがなく,平成一八,九年頃にG1が来日した際に,C2の成功報酬を財団で受領することを知った旨弁解する。また,被告人Y2は,C2の報酬を受け取るスキームがどのように決まったかは分からないが,被告人Y3がF銀行と相談して決めたのだと思う,C2の報酬を財団で受領することは聞いているが,H社,M及びL社という名称は記憶にないなどと弁解する。
しかしながら,前記各弁解は,前記のとおり,被告人Y1及び同Y2が,C2の成功報酬をMで受領するために必要な各種の契約書類に署名している点と整合しない。また,報酬の受け取りという重要な事項に関して,被告人Y3から何も知らされていなかったというのも不自然である。
よって,前記各弁解は,信用することができない。
ウ 以上の点などからすれば,被告人3名が,GPの権限移譲の頃から,その成功報酬をG社,H社などを介して受領しようとしていたと認められ,そのような目的で,架空の契約書を作出し,事実を仮装する故意・共謀があったと認められる。
3  J社・K社間及びK社・L社間の各契約の架空性(仮装行為)及び被告人3名の故意・共謀
(1)各契約の架空性(仮装行為)
G1は,K社の設立目的について,A社とZ1社の追加のパフォーマンス・フィーの交渉が行われ,その処理のためにはG社を復活させるよりも,新会社を設立させる方が簡便であったからである旨述べている(甲611,635)。また,J社・K社間及びK社・L社間の各契約に基づく報酬の支払は,C2・G社間及びG社・H社間の実体を伴わない各契約に基づくC2の成功報酬の支払形態に非常に類似した形になっている。しかも,平成20年十一,二月当時,J社は既にW-Oに債券を償還しており,今後の活動などが想定されないにもかかわらず,「J社・K社間及びK社・L社間において,K社がJ社の未公開株式投資に関する分析助言を行い,K社がこれに関連する一切の権利・義務をL社に移譲する。」という内容の契約関係が作出されている。このような点からすれば,各契約(書)は架空のものであったと推認される。
(2)被告人3名の故意・共謀
関係証拠によれば,前記K社・L社間の資金移動は,その後,G社・H社間の資金移動と同様,Mにつながっていることが認められる。そして,Mは,前記2(2)ア,イのとおり,被告人3名が組成から直接関与しており,C2の成功報酬を受け取る以外の役割がうかがわれないことなどからすると,被告人3名は,追加で支払われることになったC2の報酬について,架空の契約関係を介してMまで資金移動することになることを認識していたと認められ,以上の点などから仮装行為についての故意・共謀が認められる。
4  隠匿行為
以上の点に関係証拠を併せれば,被告人3名は,C2の成功報酬をZ2社で受領せず,C2及びJ社から,パナマ国籍のG社及びK社や英領ヴァージン諸島籍のH社及びL社を経由させ(複数のタックスヘイブン国・地域を経由),その後,一旦シンガポール共和国の投資信託であったMに集約し,さらに,被告人3名がそれぞれ創設者であり,潜在的受益者であったリヒテンシュタイン公国の3財団に分配してこれを受領したことが認められ,しかも,その資金移動のうち,①C2からG社,G社からH社への資金移動,②J社からK社,K社からL社への資金移動においては,前記2,3のとおり,いずれも架空の契約関係を利用している。
これらの資金移動は,C2の成功報酬を捕捉することを著しく困難にするものであって,犯罪収益の隠匿に当たり,前記2,3によれば,被告人3名は,このような点についても当然に認識していたと認められるのであり,隠匿行為の故意・共謀が認められる。
5  結論
以上から,判示第3の事実の犯罪収益性,仮装行為(契約の架空性),隠匿行為及び被告人3名の故意・共謀が認められる。
第5  判示第2の事実(被告人Y1及び同Y2の詐欺)の争点に対する判断
1  前提事実
関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)被告人Y1は,Z5社の事業立ち上げに深く関与するとともに,Z3社及びZ4社の取締役に就任し,被告人Y2は,中心となってZ4社を経営し,かつ,新事業3社のいずれにおいても取締役に就任するなどした。このように,被告人Y1及び同Y2は,いずれも実質的に新事業3社の経営に当たっていたが,新事業3社にはそれぞれ資金需要があったことから,被告人Y1及び同Y2は,複数の会社等に出資を勧誘していた。
(2)平成18年2月9日,D社のD1が,Z1社を訪問し,同月28日には,被告人Y1及び同Y2が,D社の本社を訪れ,Z5社の試食会を開催するなどした。
(3)同年3月27日,被告人Y1及び同Y2は,D1に対して,新事業3社への投資を提案した。
その際,被告人Y1がZ5社について,同Y2がZ3社,Z4社について,それぞれパワーポイント資料を使って説明をした。その後,投資提案審議資料(平成18年3月のC1による新事業3社株買取りに利用するために被告人Y2がとりまとめた事業計画を前提としてA社が作成したもの)が,D社側に渡された。
(4)D1は,同月末から4月初め頃,部下に対し,投資提案審議資料の検討を指示し,同月24日のD社の取締役会においては,新事業3社について投資提案審議資料の内容に基づいた説明をした上で新事業3社に対する出資を提案した。そして,同年5月16日のD社の取締役会の直前頃,同社社員のD2(以下「D2」という。)に対し,新事業3社各社において新株式発行の決議がされた際の取締役会議事録や株式申込証と共に新事業3社ごとの増資提案資料を交付した。
(5)同年5月16日,D1は,新事業3社株を合計約3億5000万円で引き受ける旨を取締役会で提案した上,その承認決議を成立させ,同月22日,新株払込金名目で新事業3社の預金口座に金員を払い込んだ。
(6)同年11月から翌19年10月頃にかけて,D1は,被告人Y2らから新事業3社の事業状況の報告を受けるなどしたが,D社の株式引受け後も新事業3社の業績が全く上がらず,監査法人からも新事業3社株の減損を強く指導されるなどしたため,平成20年3月期以降,順次,新事業3社株を簿価1円とするなどの減損処理を行った。
2  D1証言
(1)D1証言の内容
D1は,本件欺罔文言の内容や,新事業3社への出資を勧誘されてから,D社の内部手続を経て,実際に出資をするまでの経緯等について,要旨,次のとおり証言している。
平成18年3月27日,被告人Y1及び同Y2が,両被告人が用意してきた新事業3社ごとの投資提案審議資料とプレゼンテーション用の資料を用いてその事業内容等について説明し,出資を勧誘してきた。被告人Y1は,投資提案審議資料に記載された事業計画や,その株価の妥当性等について,「この事業計画は,A社の取締役会で承認されている。」「A社の公認会計士であるE事務所が,1株当たりの価格は妥当な価格であるというふうに述べている。したがって,この株価は1円たりとも負けることはできない。」「A社は,内視鏡の事業が主体で海外での売上げが8割であるから,どうしても国内事業を作っていかなければならないという中で,3社の事業について是非力を入れていきたいと考えている。」「A社が出資するが,香港にある同社の100パーセント子会社から3社に出資したい。」「1社1億,計3億お願いします。」「配分はまだ細かいところが動くところがあるので,私に任せてもらえないか。」「3社の全部が全部うまくいくかどうか分からないが,私に任せてください。」などと述べた。私は,A社が,社内でフィージビリティースタディー(実行可能性の検討)を行い,実現可能な方法を考え出したからこそ承認したのであろうと考えた。投資提案審議資料に記載された新事業3社の株価については,事業が達成されれば妥当だと思った。また,被告人Y1が任せてくださいと言うのは,損はさせないという意味に捉えた。D社では,当時,年間8億円や10億円を掛けて商品開発をしており,高度成長が望めるBtoCビジネス(一般消費者向けのビジネス)との関係で,A社の手法を見ることは有益と思い,社内でチェックして問題がなければ,出資してもいいというような前向きな気持ちとなったが,その場では即断できないので,経理部門でチェックしてから回答する旨答えた。そして,同年4月24日の取締役会の約一,二週間前,被告人Y1から電話があり,D社に対する新事業3社株の割り振りを言われ,具体的には,Z5社については20株で8900万円,Z3社については20株で1億1580万円,Z4社については10株で1億4375万円であり,合計3億4855万円という実際の出資額と同じ内容を伝えられた。
被告人Y1に対し,取締役会の承認を取るために,正式な書類を求めたところ,増資提案資料が同月24日の取締役会から同年5月16日の取締役会までの間に送付されてきた。その後,取締役会での承認を得るなどの社内的な手続等を進め,新事業3社の株式を取得した。
(2)D1証言の信用性
D1証言は,同人が,平成18年3月末から4月初め頃,部下に対し,投資提案審議資料の検討を指示し,同月24日のD社の取締役会においては,新事業3社について投資提案審議資料の内容に基づいた説明をした上で新事業3社に対する出資を提案し,同年5月16日のD社の取締役会の直前頃,D2に対し,新事業3社各社において新株式発行の決議がされた際の取締役会議事録や株式申込証と共に新事業3社ごとの増資提案資料を交付したという前記1の経緯によく整合する。
また,平成18年3月27日の被告人Y1及び同Y2とのやり取りについての証言部分は,D1が,同年4月24日の取締役会(前記1(4))で発言した内容(これは同取締役会に出席したD2が作成したメモ〔甲597資料1〕並びに同人の捜査段階の供述調書の同意部分〔甲355〕及び証言等によって認められる。)によって相当程度裏付けられているといえる。
前記投資提案審議資料に関しては,D社保管版(甲525資料6,甲526資料2,甲527資料1,甲181資料5ないし7)とA社保管版(甲181資料1ないし3)の2種類が存するところ,事業価値に関する各「外部算出数値(E会計事務所算定)」の数字について,E1会計士が同年3月下旬頃までにA社のA8の指示に従って作成した同年3月16日付け「ベンチャー会社事業価値試算」(甲296資料1)の数字と比較すると,A社保管版については,Z3社とZ4社について,金額が一致しているが,D社保管版の投資提案審議資料は,3社とも大きく異なっていることからすれば,D社は,最終版であるA社保管版の投資提案審議資料の作成途中のものを渡されたと考えるのが自然である。そして,出資に対して主体的に動いていたのは被告人Y1及び同Y2の方であること,被告人Y3が任意提出したUSBメモリーに増資提案審議資料のデータが保存されていること,増資提案審議資料においては,投資提案審議資料とは異なり,被告人Y2宅から押収されたUSBメモリー及び被告人Y3宅から押収されたメモリースティックに保存されていた新事業3社の事業計画が採用されていることに照らせば,増資提案審議資料はZ1社において作成されたものと認められ,この点も,被告人Y1及び同Y2が増資提案資料を送ってきたというD1証言の裏付けとなる。
さらに,被告人Y1の勧誘文言中,株価は合計3億円であるが,新事業3社の会社ごとの配分は,動くところがある旨述べている点についても,株価については,C1ルート解消に当たって移動させる資金額等から逆算する形で決定されている関係上,株価総額を値引くことはできない反面,新事業3社の個別の株価はそれほど重要ではなかったこと,A社が,実際に公認会計士(E1会計士)に株価の妥当性を検討させていること,A社の内視鏡依存体質,D社側に渡された投資提案審議資料やプレゼン資料には,前記の事業計画が記載され,被告人Y1及び同Y2は,これを使用してD社に売り込んでいること(両被告人も,この点は肯定している。)等とよく整合している。
加えて,D1の証言内容は,ベンチャー会社への投資の勧誘を受ける際の文言や,勧誘を受け,投資による会社へのメリット等をも考慮して最終的に投資するに至った経過などが具体的に語られており,合理的かつ自然な内容となっている。
確かに,D1において,自己の投資判断の誤りを被告人Y1らへの責任に転嫁する可能性がないとはいえないが,社の内外を問わず,D1の投資判断についての責任追及がなされている事実は認められず,D1において殊更に虚偽の供述を行う動機があるとは考えにくい。
以上によれば,D1証言の信用性は十分に高いということができる。
(3)被告人Y1及び同Y2の弁解
被告人Y1は,要旨,平成18年3月27日の件については,Z5社の試食会の結果を聞くのが目的であって,新事業3社の話をしたか記憶はない,新事業3社の資料を持参して,それに基づいて説明をした記憶もない,D1が証言するような勧誘文言を述べた記憶もない,新事業3社の投資提案審議資料は,見たことがない,この日にD1に会った後,新事業3社の増資がされるまでの間,D1と連絡を取っていない,増資提案資料は,私は作成しておらず,D社に送ったり渡したりしたこともない,D社が出資してくれることになったのは,出資金の払込後に誰かから聞いて初めて知った旨弁解している。しかし,同弁解は,前記1の事実経緯に照らして,不自然であり,D1に対し,平成18年3月27日,新事業3社への投資の提案をした旨の後記被告人Y2の供述とも矛盾する。
また,被告人Y1の前記弁解を前提にすると,当時,資産運用について堅実に行う方針をとっていたD社(D3証言,甲367)が,さしたる勧誘もされていないのに積極的に新事業3社への出資を行ったことになり,その点でも不自然である。よって,被告人Y1の前記弁解は信用できない。
被告人Y2は,要旨,平成18年3月27日,Z3社やZ4社のパワーポイントの資料(甲525資料2,甲526資料1)を使用してD1に新事業3社の説明をしたと思う,投資提案審議資料(甲525資料6,甲526資料2,甲527資料1)については,D社の手元にあるのであれば何らかの形でD社に交付したものと思うが,同日に交付した可能性は極めて低い。Z3社の投資提案審議資料の社名の誤り(株式会社Z3かZ3株式会社かの点)も,自分であればそのようなことはしない,他人が作成した投資提案審議資料を見ながら新事業3社のプレゼンテーションを行うことはあり得ず,絶対にしていないと思う,その後,A社が稟議に使う資料を求められたことから,投資提案審議資料と増資提案資料とを入手してD社に送付したという記憶がある,新事業3社について,有望な会社であること,A社が外部に株価のチェックをしてもらったことなどは話したと思うが,取締役会の承認を得ているという話などはしていない,事業計画について説明をしたかについては覚えていない旨弁解している。
しかしながら,投資提案審議資料を平成18年3月27日に交付した可能性が極めて低い旨の弁解は,さして説得力のある根拠に基づくものでもない上,投資提案審議資料等の資料を使用せずに新事業3社の説明を行うことはむしろ不自然といえる。また,他人が作成した資料を使用してプレゼンテーションを行うこともあり得ないとはいえない。さらに,出資側にとって,出資先の事業計画(の実現可能性)は,重要な判断要素の一つであると考えられ,この点は,出資を勧誘する側も当然意識するところであろうから,その点について説明をしたか覚えていないというのは,かなり不自然である。よって,被告人Y2の前記弁解は信用できない。
(4)結論
以上によれば,D1証言が信用でき,同証言中の本件勧誘文言が認定できる。
3  本件勧誘文言の虚偽性
(1)事業計画の実現見込みと株価の適正についての虚偽性
ア Z5社
E1会計士は,A8から提供された事業計画を前提として,平成18年3月16日付け「ベンチャー会社事業価値試算」を作成しているが(甲296),被告人Y2宅から押収されたUSBメモリーに保存されていたZ5社の事業計画(被告人Y2に対する質問で示された甲656資料④参照)の数値は,同ベンチャー会社事業価値試算に掲載された事業計画(損益計算書部分)やZ5社の増資提案資料(甲527資料2)に掲載されている事業計画の数値と,それぞれ一致(ただし,後者については,営業利益までの一致)している。この点に,A6が,投資提案審議資料を作成するに当たって,Z1社に相談せずに事業計画を下方修正したなどと証言していることを併せると,被告人Y2らは,前記USBメモリーに保存されていたZ5社の事業計画をA社側に提供したのであり,投資提案審議資料の事業計画の数値は,A6が,同被告人らから受領した同USBメモリーに保存されていたものを修正したものと認められる。
前記USBメモリーに保存されていたZ5社の事業計画は,「基盤事業」(スーパーに容器とソースとレシピのセットを販売する事業),「チルド事業」(容器とレシピとソースに食べ物を加えて,中身を入れて売る事業)及び「単品事業」(容器のみを販売する事業)に区分した内容となっているところ(X1(以下「X1」という。)の証言),平成18年3月当時は,Z5社は,チルド事業や単品事業を本格的に始めておらず,いまだ目標値を掲げる段階に過ぎなかった。また,レストランチェーンや食品メーカーのような大手業者との提携についても,具体的に話が進んでいる段階ではなかった(A7証言)。しかるに,前記USBメモリーに保存されていた事業計画は,「ローソンは現在販売されているキンレイの冷凍麺の代替え」「ローソンに次いで別のチェーンが参加すると仮定した」など,いずれも,実現の裏付けとなる具体的な根拠がない仮定を前提としている。また,実績としても,平成17年6月から平成18年2月までの売上げは,596万円強にすぎなかった。
以上の点に,被告人Y1自身も,平成19年2月に自分が社長になった時には,まだ事業が立ち上がる前の段階であった旨供述していること,A6が,Z5社が投資提案審議資料を作成するに当たって,同事業計画を下方修正した点について,Z1社には相談せずにやった,新事業3社の事業価値に流動性ディスカウントを施して,購入代金を約110億円に近づけたが,そのディスカウント比率には根拠がなかった旨証言していることなどを併せ考えると,Z5社の事業計画は,平成18年3月当時,実現可能であることの具体的な根拠を有していなかったと認められる。
以上によれば,Z5社の事業計画は,そのとおりの業績を上げる現実的な見込みはなかったと認められる。
イ Z3社
E1会計士は,Z5社と同様,平成18年3月16日付け「ベンチャー会社事業価値試算」を作成しているところ(甲296資料1),A6が作成したZ3社の投資提案審議資料(甲181資料1,甲525資料6),被告人Y1及び同Y2が平成18年3月27日D1に交付したZ3社のプレゼン資料(甲525資料2),Z3社の増資提案資料(甲525資料7)にそれぞれ掲載されていたZ3社の事業計画の数値は,被告人Y2宅から押収されたUSBメモリーに保存されていたZ3社の事業計画の数値(被告人Y2に対する質問で示された甲656資料①参照)と一致している。このようなことから,Z3社の投資提案審議資料の事業計画の数値は,A6が,被告人Y2らから受領した同USBメモリーに保存されていた事業計画のものを使用したと認められる。
また,同メモリーに保存されていたZ3社の事業計画は,そもそも,産業廃棄物の許可を不要とする事業モデルを前提としているところ,許可の要否等に関するZ3社側の質問に対して,秋田県から,平成17年12月16日付け及び平成18年1月5日付けでそれぞれ許可を受ける必要がある旨の回答がなされている上(甲248),その後,同年3月までにおいて,いかなる自治体からも産業廃棄物の許可が不要であるという回答は得られておらず(甲239),事業モデルの根幹ともいうべき点が整っていなかった(甲517,518)。また,同事業計画は,市場シェアを一定の割合で獲得し続ける内容となっているが,その想定に具体的な根拠があったとは認められない。
以上によれば,Z3社の投資提案審議資料及び被告人Y1らがD1に交付したZ3社のプレゼンテーション用の資料に掲載された事業計画が,そのとおりの業績を上げる現実的見込みはなかったと認められる。
ウ Z4社
Z5社及びZ3社と同様に,E1会計士作成の前記事業価値試算(甲296資料1),Z4社の増資提案資料(甲526資料3), 被告人Y1らが平成18年3月27日にD1に交付したZ4社のプレゼン資料(甲526資料1)にそれぞれ掲載されていたZ4社の事業計画の数値は,被告人Y2宅から押収されたUSBメモリーに保存されていたZ4社の事業計画の数値(被告人Y2に対する質問で示された甲656資料②参照)と概ね一致している。この点に,A6が,投資提案審議資料を作成するに当たって,Z1社に相談せずに事業計画を下方修正した旨証言していることを併せると,被告人Y2らは,同USBメモリーに保存されていたZ4社の事業計画をA社側に提供したものであり,投資提案審議資料の事業計画(甲526資料2)は,同USBメモリーに保存されていたZ4社の事業計画をA6が修正したものと認められる。
Z4社の投資提案審議資料の事業計画は,「直販(直接販売)」の売上げが,平成18年には合計約5億円強,平成22年には合計約320億円強となっている。しかしながら,同社は,平成18年3月頃には,A社以外には,いまだ顧客がいない状態で(X2証言),主要な販路は,ホームページやA社の社内販売等にとどまっていたのみならず,薬事法(当時)上,効能・効果の宣伝には制約があり,A社の販売協力も限定的で,その後の実際の年間売上げも,最大で9億円弱にとどまっている。しかも,A6は,Z4社の投資提案審議資料を作成するに当たって同事業計画を下方修正した点について,C1ルート解消に当たって移動させる資金額等から導かれる株価に事業価値を合わせるための下方修正をしたとしながらも,平成20年には100億円を超える売上げを達成するとするような,現実から大きくかい離した内容のものとしており,さらに,下方修正は感覚で行ったと証言しているのであるから,およそ確実な根拠のないものであったことが明らかである。
このような点からして,Z4社の投資提案審議資料に記載された事業計画は,そのとおりの業績を上げる見込みがあったとは到底認められない。
エ 株価の適正の虚偽性
以上によれば,D社が新事業3社の株式を取得した際の株価は,そのとおりの業績を上げる見込みがあったとは認められない事業計画を前提に算定されており,新事業3社の事業価値をおよそ適正に反映していないものであったといえる。
(2)A社において,巨額の損失を簿外に隠している上,新事業3社株の取引を同損失隠しに利用するなどしていることを秘して,新事業3社への出資を勧誘した点の虚偽性
前記2のとおり,被告人Y1及び同Y2は,D1に対し,新事業3社への出資を勧誘したことが認められるところ,その際,A社において,取締役会の承認を得たことや,新事業3社に対して,資本的な関係も含めて力を入れて行くことなど,A社の強い関わりを前提とした勧誘を行っていることが認められる。そして,勧誘を受けたD1においても,A社の関わりが出資を決めた大きな理由となっている旨証言している。
このような当事者の合理的な意思解釈として,大企業であり,信用のあるA社が背後に付いていることが本件出資を行う上での重要な前提要素となっていたと認められる。そのA社が,巨額の損失を簿外に隠している上,新事業3社株の取引を同損失隠しに利用するなどしているという事情は,その前提を覆すような決定的な事項であると認められるから,このような点を秘して,それが存在しないかのように装って出資を勧誘した点にも取引の重要な要素となる点についての虚偽性が認められる。
(3)虚偽性についての被告人Y1及び同Y2の認識
被告人Y2は,平成18年3月当時,新事業3社全ての取締役を務めており,Z5社の定期的な幹部会に出席し,あるいは,決算期の節目には,事業報告を受けたりしており(X1証言),X3(以下「X3」という。)及びX4(以下「X4」という。)と共にZ3社の事業に取り組み,Z4社についても,中心的に取り組むなどしていたことから,新事業3社の業況を把握していたと認められる。なお,Z3社の前記(1)イにおける秋田県の回答については,許可が不要という回答は得られていない点について,X3,X4が,被告人Y2に報告していた旨証言しており,被告人Y2も苦戦していることは承知していた旨供述していることから,その状況は把握していたものと認められる。
被告人Y1は,Z5社については,X1から定期的に報告を受けて状況を把握していたと認められる(X1証言)。また,被告人Y2がZ1社の中心人物としての被告人Y1を補佐して,両被告人でベンチャー会社の発掘,育成に当たっていたという立場にあったことからすると,Z3社及びZ4社についても,被告人Y1は,同Y2から,事業の状況についてある程度報告を受けていたものと推認できる。
そして,前記第3の1(3)のとおり,被告人Y1及び同Y2は,平成18年3月の新事業3社株の売買が,損失隠しスキームを構成するC1とB1社との資金関係を解消する目的で行われることを認識していたと認められる上,それまで5万円ないし20万円程度であった株式が,445万円ないし1437万円にまで高騰した株価で売却されており,その点も両被告人が認識していたと認められるから,このような面からも,株価が適正でないことは認識していたと推認される。
以上の点からすると,被告人Y1及び同Y2は,前記(1)の虚偽性を認識していたと認められる。
また,両被告人が前記(2)の虚偽性を認識していたことは前記第3で述べたところから明らかである。
4  結論
以上の点などから,判示第2の事実の欺罔行為と被告人Y1及び同Y2の故意・共謀が認められる。
(法令の適用-特記したものを除き,被告人3名共通)

罰条
判示第1の正犯者らの行為1及びそれに対する幇助行為 刑法65条1項,62条1項,平成18年法律第65号附則218条により同法による改正前の証券取引法197条1項1号,24条1項1号,207条1項1号
判示第1の正犯者らの行為2及びそれに対する幇助行為 刑法65条1項,62条1項,平成20年法律第65号附則40条により同法による改正前の金融商品取引法197条1項1号,24条1項1号,207条1項1号
判示第2の行為
被告人Y1及び同Y2について
判示第3の行為 刑法60条,246条1項判示第3の行為刑法60条,平成23年法律第74号附則8条により同法による改正前の組織犯罪処罰法10条1項前段(判示第3の行為は,犯罪報酬として得た財産を隠匿する目的で行われたものであり,包括一罪として評価)
刑種の選択
判示第1の各幇助の罪,判示第3の罪 いずれも懲役刑及び罰金刑を選択
法律上の減軽(従犯)
判示第1の各幇助の罪 刑法63条
懲役刑について,刑法68条3号
罰金刑について,刑法68条4号

併合罪の処理
被告人Y1及び同Y2について 刑法45条前段
懲役刑について,刑法47条本文,10条(最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
罰金刑について,刑法48条1項,2項(懲役刑と併科し,判示第1の各幇助,判示第3の罪所定の罰金の多額を合計)

被告人Y3について 刑法45条前段
懲役刑について,刑法47条本文,10条(最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
罰金刑について,刑法48条2項(判示第1の各幇助,判示第3の罪所定の罰金の多額を合計)

未決勾留日数の算入 刑法21条
労役場留置 刑法18条
刑の執行猶予
被告人Y3について 刑法25条1項
没収 平成23年法律第74号附則8条により同法による改正前の組織犯罪処罰法13条1項1,2号,14条,15条1項本文,平成18年法律第65号附則5条
追徴 組織犯罪処罰法16条1項本文
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書

(没収及び追徴について)
1  犯罪収益性
前記(事実認定の補足説明)第4の1で述べたとおり,被告人3名がF銀行のG社口座(①12億5925万円)及び同行のK社口座(②9億5000万円)で取得した合計22億925万円は,判示第1〈幇助行為〉の犯行の報酬であって,組織犯罪処罰法上の「犯罪収益」に当たる。
2  各口座における混和及び流出等
(1)前記1①の12億5925万円がG社口座からM口座に至るまでの混和及び流出等
G社口座において,その残高が100万6129円の状態でC2口座から前記1①の12億5925万円の入金を受け,12億6025万6129円の混和財産となっている。そして,その中から合計7540万2000円が出金され,残高が11億8485万4129円の状態で,10億9740万円がH社口座に送金されている。前記7540万2000円については,不法財産に由来する財産と認めるべき事情はないことから,前記10億9740万円の全額が没収対象である不法財産となる(なお,C2口座からH社口座に送金されなかった1億6185万円については,G1の報酬として流出し,没収不能になったと認められる。)。そして,H社口座において,その残高が0円の状態でG社口座から前記10億9740万円が送金され,その後の出金(102万239円)後の残高10億9637万9761円が,M口座に送金されている。よって,同金額は,全額が没収対象である不法財産となる。
(2)前記1②の9億5000万円がK社口座からM口座に至るまでの混和及び流出等
K社口座において,その残高が0円の状態でJ社から前記1②の9億5000万円が入金され,そのうちの9億3000万円が,L社口座に送金されている(残額の2000万円については,G1の報酬と認められ,流出して,没収不能になったと認められる。)。そして,L社口座において,その残高が1億4327万6274円の状態で,K社口座から前記9億3000万円の入金を受け,混和財産10億7327万6274円を生じている。その後の出金 (9056円。これを特に不法財産と認めるべき事情はない。)後の残額10億7326万7218円がM口座に送金されていることから,前記9億3000万円が没収対象である不法財産となる。
(3)M口座における混和及び流出等
前記(1),(2)のとおり,M口座においては,H社口座から10億9637万9761円(全額が没収対象となる不法財産)が,L社口座から10億7326万7218円(9億3000万円が没収対象となる不法財産)が,それぞれ入金されており,没収対象となる不法財産は,20億2637万9761円となる。そして,この入金時に,M口座には,23万3089円の残高があったことから,21億6988万68円の混和財産が生じている。その後,同財産のうち,10億8494万34円がN1口座に,6億5096万4020円がN2口座に,4億3397万6014円がN3口座に,それぞれ送金されている。
(4)N1口座に入金した混和財産
N1口座では,その残高が0円の状態で,前記(3)のとおりM口座から混和財産のうち10億8494万34円の送金を受けている。その後,特に入金がない状態で,円預金口座からドル預金口座への振替,W Balancedの購入,各種引落し等の出金がされており,同口座の平成25年10月15日現在の残高は,7億2430万9245円となっている。これらの各出金については,いずれも流出して特定・追跡ができなくなり,没収不能となったと認められる。
(5)N2口座に入金した混和財産
N2口座では,その残高が0円の状態で,前記(3)のとおりM口座から6億5096万4020円の送金を受けている。その後,特に入金がない状態で,円預金口座からドル預金口座への振替,W Balancedの購入,各種引落し等の出金がされており,同口座の平成25年10月15日時点での残高は,4億1149万9592円となっている。これらの各出金については,いずれも流出して特定・追跡ができなくなり,没収不能となったと認められる。
(6)N3口座に入金した混和財産
N3口座において,その残高が0円の状態で,前記(3)のとおりM口座から4億3397万6014円の送金を受けている。また,日本円口座において,株式の配当金として合計67万6389円が,さらに,中国元預金口座やユーロ預金口座において,利息として,2万3108.2元及び839.62ユーロが,それぞれ入金されている。同配当金は,混和財産の対価である株式の保有によって取得した財産であり,同混和財産の果実である。他方,現金の払戻し,Z8社口座への9859万5797円の送金,株式の購入,W Balancedの購入,各種引落し等の出金がされている。その結果,同口座の平成25年10月15日時点での残高は,4985万2469円,404万8708.69元及び2034.27ユーロとなっている。これらの各出金については,Z8社口座への送金分以外は,いずれも流出して特定・追跡ができなくなり,没収不能となったと認められる。
(7)N3口座に入金した混和財産の追跡
ア Z8社のF銀行口座
Z8社のF銀行口座においては,残高が0円の状態で,N3口座から前記9859万5797円の対価としてシンガポールドル建てに変更された151万シンガポールドルが送金され,その後,入出金のない状態で,そのうちの150万シンガポールドルがZ9社のF銀行口座へ送金されている。そして,同送金後,各種引落しがされ,Z8社のF銀行口座の平成25年10月15日現在の残高は,1214.72シンガポールドルとなっているところ,これはN3口座の混和財産の対価として得た財産であって,同口座に由来する財産であり,不法財産と認められる。
イ Z9社のF銀行口座
Z9社のF銀行口座においては,平成23年3月1日,Z8社口座からの150万シンガポールドル(N3口座由来財産)の送金や,F1が管理する会社であるV社からの150万シンガポールドルの送金により,300万シンガポールドルの混和財産が生じている。その後,入出金のない状態で,同300万シンガポールドルのうち合計299万シンガポールドルがZ9社のDBS口座へ送金されている。
そして,前記299万シンガポールドルのうち,前記V社由来の150万シンガポールドルはF1に帰属していたものであって,その余の149万シンガポールドルがN3に由来する財産であったと認められる。ところで,Z9社のF銀行口座の前記混和財産は,Z9社のDBS口座への前記送金の結果,1万シンガポールドルになり,その後平成25年10月15日時点では,5243.14シンガポールドルになっている(前記1万シンガポールドルとの差額分は,流出して特定・追跡ができなくなり,没収不能となったと認められる。)。
ウ Z9社のDBS銀行口座
Z9社のDBS銀行口座においては,平成23年4月26日から平成24年1月10日にかけて,合計3回にわたり,Z9社のF銀行口座から,N3由来財産の149万シンガポールドル及びV社由来財産の150万シンガポールドルの合計299万シンガポールドルの送金を受けているが,最初の送金時の残高は,11万4253.94シンガポールドルであった。この残高の原資は,①平成22年11月15日に入金された25万1000シンガポールドル及び②平成23年2月22日に入金された25万シンガポールドルであり,①は,被告人Y3名義の口座から送金されたもので,②は,F銀行からF1に支払われるべきものであった。そして,F1は,V社からZ9社のF銀行口座に入金された150万シンガポールドル及びF銀行からZ9社のDBS銀行口座に入金された25万シンガポールドルにつき,自己の財産として全て費消・回収していることから,同DBS銀行口座の残高については,F1の財産との混和は解消されている。また,Z9社のDBS銀行口座において,Z9社のF銀行口座からの前記送金以降は,N3由来の前記149万シンガポールドル及びその果実並びに被告人Y3の一般財産である25万1000シンガポールドルとその果実が混和したのみである。一方,平成23年4月26日にZ9社のF銀行口座から最初の送金を受けて以降,Z9社のDBS銀行口座から被告人Y3のDBS銀行口座に対し合計46万4000シンガポールドルが送金等されているが,これに平成25年3月31日時点のZ9社のDBS銀行口座の残高(89万4582.23シンガポールドル)を合計しても135万8582.23シンガポールドルであり,N3口座由来の149万シンガポールドル未満の金額となっている(その不足分については,いずれも流出して特定・追跡ができなくなり,没収不能となったと認められる。)。したがって,Z9社のDBS銀行口座の残高全額及び被告人Y3のDBS銀行口座に送金された46万4000シンガポールドルは,N3由来財産と認められる。
エ 被告人Y3のDBS銀行口座
被告人Y3のDBS銀行口座においては,残高が9万9758.36シンガポールドルの状態で,Z9社のDBS銀行口座からN3由来の財産として合計46万4000シンガポールドルや,詳細が不明な合計462.08シンガポールドルの入金を受け,さらに,これに対して,果実(利息)1154.68シンガポールドルが発生していると認められ,これらの混和財産は,合計56万5375.12シンガポールドルとなる。ところで,平成26年8月31日現在における被告人Y3のDBS銀行口座の残高は49万3399.5シンガポールドルであり,前記56万5375.12シンガポールドルとの差額分は,流出して特定・追跡ができなくなり,没収不能となったものと認められる。そして,N3由来の財産が最終的に入金された平成24年4月20日以降,被告人Y3のDBS銀行口座の残高は常に46万4000シンガポールドルを上回っているから,同残高には,N3口座由来である46万4000シンガポールドルが含まれている。
3  各口座の預金債権の帰属
(1)3財団の口座の預金債権
3財団の口座は,それぞれ,リヒテンシュタイン公国の財団名義の口座であり,形式的には,各財団に預金債権が帰属しており,各財団には,管理者としてファウンデーション・ボードが置かれている。しかしながら,管理者は,設立者(潜在的受益者)の意思を尊重して運用を行うことになっている。本件においても,被告人3名は,それぞれその意思で,W Balancedを購入したり,現金を引き出したり,株式を購入するなどしている反面,管理者の意思や裁量で取引を行うなどした形跡が見当たらない。したがって,各財団の預金債権は,実質的には,各設立者(潜在的受益者) に帰属しているものと認められ,N1口座については,被告人Y1に,N2口座については,被告人Y2に,N3口座については,被告人Y3に,それぞれ帰属していると認められる。
(2)Z8社のF銀行口座の帰属
Z8社は,英領ヴァージン諸島籍の株式会社であるが,その実態は,被告人Y3が,N3口座の資産をZ9社のF銀行口座に移動させるために用意したペーパー・カンパニーであり,そのZ8社のF銀行口座の登録上も,被告人Y3が実質的預金者(actual depositors)とされていた。このZ8社のF銀行口座では,N3口座から,平成23年2月17日,151万シンガポールドルが入金され,同年3月1日,150万シンガポールドルがZ9社のF銀行口座に送金されている。Z8社のF銀行口座は,この送金以外には目立った運用実績はないことからして,同口座からZ9社のF銀行口座に資金を供給する目的で設けられた口座であると推認される。以上によれば,Z8社のF銀行口座の預金債権は,実質的には被告人Y3に帰属しているものと認められる。
(3)Z9社のF銀行及びDBS銀行の各口座Z9社は,平成22年10月7日,被告人Y3を一人株主として設立されたシンガポールの会社である。そして,N3において,被告人Y3が,そのファウンデーションの創設者であると同時に,Z9社の受益者とされていること,Z9社のF銀行口座において,平成23年3月1日に送金を受けた合計300万シンガポールドル中,299万シンガポールドルが,同年4月26日から平成24年1月10日にかけて,順次,Z9社のDBS銀行に入金されているものの,それ以外には特段の取引がされていないこと,Z9社のDBS銀行口座においても,平成22年12月20日から平成24年4月20日にかけて,被告人Y3に対し,合計40万4000シンガポールドルが,F1に対し,平成22年12月20日から平成25年3月27日にかけて差引き合計137万6000シンガポールドルが,それぞれ送金されている以外は特段の取引がされていないことなどからして,Z9社の両銀行口座は,被告人Y3及びF1が,それぞれの資金を供給する目的で使用していたにすぎないと認められる。また,Z9社の両銀行口座のいずれにおいても,F1の財産との混和状態は解消され,その残高は,専らN3由来財産となっている。以上によれば,Z9社のF銀行及びDBS銀行の各口座の預金債権は,実質的には,被告人Y3に帰属していると認められる。
(4)被告人Y3のDBS銀行口座の帰属
被告人Y3のDBS銀行口座は,形式的にも,実質的にも,被告人Y3に帰属するものと認められる。
4  各口座の没収額
各口座の円換算の残高は,別紙債権目録番号1ないし3の残高欄及び番号4ないし9の円換算欄各記載のとおりであり,その合計額は13億2525万5665円となる。したがって,没収対象となる預金債権の額は,13億2525万5665円となる (なお,N3口座における日本株の配当金及び利息,Z9社のDBS銀行口座の利息,被告人Y3のDBS銀行口座の利息のうちの一部は,不法財産の果実あるいは不法財産の保有に基づき得た財産であり,仮装・隠匿に係る犯罪収益とは別のものとして没収可能であるものの,その額の特定は困難であることから,没収対象財産としないことにした。)。
5  結論
以上から,13億2525万5665円が没収対象額となるところ,犯罪収益である22億925万円との差額8億8399万4335円については,没収不能であることから,これを追徴することとする。
(量刑の理由)
本件は,(1)A社の代表取締役を含む正犯者らにおいて,連結会計年度の連続2期にわたり,それぞれ連結純資産額を約1178億円余り過大計上した行為について,被告人3名が,同社の事業投資ファンドや簿外ファンドを維持,管理することなどによって幇助をした証券取引法違反,金融商品取引法違反(判示第1),(2)被告人Y1及び同Y2が,同Y1の知人の会社社長に対し,(1)の犯行に関連して設立された新事業3社の事業価値,新株式の株価の適正等について欺罔し,新株式払込金名目で合計3億4855万円を詐取した詐欺(判示第2),(3)被告人3名が,(1)の犯行の報酬合計22億円余りにつき,架空の契約書を用意したり,送金するなどして,犯罪収益等の取得につき事実を仮装するとともに,犯罪収益等を隠匿した組織犯罪処罰法違反(判示第3)からなるものである。
(1)の犯行については,正犯者らは,連結会計年度の連続2期にわたり,前記のとおりの巨額の過大計上をするなどしたもので,有価証券報告書の粉飾の程度は非常に大きい。また,これらは,平成4年頃から,組織的,継続的に行われてきた粉飾の一環として敢行されたものである上,損失隠しのために複数の海外ファンドを利用したスキームを構築するなど手口も巧妙であって悪質である。A社が,東京証券取引所第一部に上場し,連結会計ベースで当時の年間売上高が1兆円を超える規模の会社であることをも併せると,我が国の証券取引市場の公正に対する信頼を大きく揺るがせたものである。被告人3名は,前記スキームの中核をなす簿外ファンド等の維持,管理等を行うなどして,正犯者らの犯行を容易にしたものであり,関与の程度は相当に大きい上,極めて多額の報酬も得ている。しかし,被告人3名は,A社が抱えている損失の全容は知らされておらず,同社側から利用される立場にあり,簿外ファンドに係る資金の具体的な移動も,同社からの指示によるものであったことなどを被告人3名に有利に考慮する必要がある。また,幇助行為について,被告人Y1は,被告人3名の中心となって関わっており,被告人Y2は,それを補佐する形で関わっているが,被告人Y3は,事務面を中心に関わっているにとどまる。
(2)の犯行については,被告人Y1及び同Y2が,被害会社社長の被告人Y1への信頼を逆手に取り,新事業3社の事業計画や,株価の適正について,A社の強い関与を告げつつ,言葉巧みに騙したものであり,態様は悪質である。また,被害額は,前記のとおり非常に多額に上っており,被害弁償も一切なされていない。被告人Y1が中心となって敢行したものであるが,同Y2も,実行行為の一部を行っている。このようなことからすると,新事業3社は,それぞれ,実体を有し,事業を伸ばすための努力もしていたことから,架空の事業に投資させるような事案とは類型を異にすることなどの点を考慮しても,(2)の犯行の行為責任は相当に重いというべきである。
(3)の犯行については,タックスヘイブン地に設けた法人や架空の契約関係を用いたり,守秘義務に厳格な銀行の口座間を転々と送金させて投資信託に集約し,さらに財団で分配するなど,大掛かりにして巧妙なものである。偽装・隠匿した金員は前記のとおり極めて多額に上る。同金額のうち約半分が被告人Y1に係るものであり,3割程度が被告人Y2に係るものであり,2割程度が被告人Y3に係るものである。
そして,被告人Y1及び同Y2については,(1)の犯行が幇助犯にとどまり,(3)の犯行はその罪の法定刑が比較的軽いことから,(2)の犯行の罪(詐欺罪)が処断罪となるところ,その被害額の大きさを中心とする行為責任の重さに,(1),(3)の犯行の犯情を併せて考慮すると,両被告人に前科前歴がないことをしん酌しても,それぞれ主文の刑はやむを得ないと判断した。
被告人Y3については,(1),(3)の犯行のみの関与であり,いずれについても被告人3名の中では,非難すべき程度は比較的軽いといえること,前科前歴がないことなども考慮して,主文の刑を科した上,懲役刑については刑の執行を猶予するのが相当と判断した。
(検察官海保一恵,同望月健司,被告人Y1の弁護人内野経一郎,同内野令四郎,同田渕朋子,被告人Y2の弁護人新谷紀之,同武藤功,同牧野盛匡,同粂井範之,被告人Y3の弁護人中村隆夫,同古澤昌彦各出席)
(求刑 被告人Y1につき懲役6年及び罰金1200万円,被告人Y2につき懲役5年及び罰金800万円,被告人Y3につき懲役3年及び罰金600万円,被告人Y1に帰属する金7億2430万9245円の預金債権,被告人Y2に帰属する金4億1149万9592円の預金債権,被告人Y3に帰属する金4985万2469円,2034.27ユーロ,404万8708.69元,1214.72シンガポールドル,5243.14シンガポールドル,89万4582.23シンガポールドル,46万4000シンガポールドルの各預金債権の各没収,被告人3名につき金8億8399万4335円の追徴)
(裁判長裁判官 芦澤政治 裁判官 野村充 裁判官 奥村由佳)

別紙債権目録〈省略〉
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