【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(466)昭和59年 3月26日 大阪地裁 昭51(ワ)5495号 損害賠償請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(466)昭和59年 3月26日 大阪地裁 昭51(ワ)5495号 損害賠償請求事件

裁判年月日  昭和59年 3月26日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭51(ワ)5495号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容(控訴)  文献番号  1984WLJPCA03260005

要旨
◆履行補助者による大型プロジェクトの契約締結準備交渉の結果、契約が締結にまで至らなかつた事案につき、「契約締結上の過失責任」が、原告主張の約八か月間の右履行補助者の各種の行為につき、所謂契約締結上の過失責任における注意義務違反が存したか否か、及び原告主張の右各種行為により原告が信じたとする契約成立の見込みを逐次検討のうえ排斥し、右履行補助者の契約締結準備交渉が上司の決裁をうることなく継続したことにつき不作為による不法行為を肯定して、使用者責任を認容した事例

出典
判タ 526号168頁
判時 1128号92頁

評釈
本田純一・判タ 543号109頁
半田吉信・ジュリ 829号92頁
松田典浩・判例Check 契約締結上の過失 168頁(加藤新太郎編,新日本法規,平成16年)

参照条文
民法1条
民法415条
民法709条
民法715条

裁判年月日  昭和59年 3月26日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭51(ワ)5495号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容(控訴)  文献番号  1984WLJPCA03260005

原告 高橋ビルディング株式会社
右代表者 高橋清良
右訴訟代理人 増井俊雄
太田忠義
堀弘二
被告 株式会社ナショナル商品センター
右代表者 坂垣内将泰
右訴訟代理人 高橋武
原井龍一郎
占部彰宏
若原俊二
速水弘

 

主文
一  被告は、原告に対し、金六〇〇万円及びこれに対する昭和五一年一一月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二  原告の主位的請求及び予備請求のその余の請求を棄却する。
三  訴訟費用は五分し、その三を原告の、その余を被告の負担とする。
四  この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実《省略》

理由
第一  主位的請求(契約締結上の過失責任)について
一  まず事実関係をみる。
1  請求原因1の事実、同2のうち、(二)の、原告と森本との間で本件計画をめぐる交渉が重ねられたものの原被告間に本件契約が締結されるには至らなかつたとの外形的事実、森本が昭和五〇年四月二三日同人の偽造にかかる本件覚書を高橋に交付したこと、井槌が同五一年一月二七日、同年二月九日及び同月二七日に原告代表者と面会したこと、経過表(原告)と経過表(被告)との符号する限度での事実は、いずれも当事者間に争いがないが、同2のその余のほとんどの事実関係については争いがあるので、以下の順序で検討する。
2  本件計画をめぐる背景事情について
右争いのない事実に加え、〈証拠〉を総合すれば、次の事実が認められる。
(一)(1) 原告は、請求原因2(一)の主張どおりの日時、経過、代金額、そのうち一一億七〇〇〇万円を年利9.75パーセント、分割払、最終弁済期日昭和四九年五月二日、遅延損害金日歩八銭の約によるトーメンからの借入れにより、当初から具体的処分方法は未定のまま、自己の営業である不動産賃貸業のなかでできるだけ付加価値をつけるための客体として、とにかく買い求め、将来の処分に備え売主フジタ工業名義のままで引渡しを受け、そのままトーメンに対し右借入金の担保として提供した。
(2) ところが、買受け直後の昭和四八年秋、いわゆるオイルショックが起こり、爾後日本経済は急激長期にわたる不景気に見舞われ不動産の価格が下落するほどの深刻さとなり、原告が当初漠然と考えていた本件土地による高付加価値追求策はたちまち期待できなくなつた。すなわち、対トーメン金利と公租公課の累積により、この累積額と代金額との合計額である本件土地の買受け費用(以下「買受け原価」という。)は上昇の一途をたどり、昭和四九年春には約一三億円となりなおも上昇を続けたのに、同五二年一月一八日ころの本件土地の価格はわずか一一億〇七三〇万円と評価鑑定されるに至つたほどであり、原告が試みた本件土地の処分案は、最初の分譲マンション建設計画が、完売の見込みが立たないため買取りの直後の昭和四八年秋ころには断念せざるを得なくなり、次のビルを建設して全部をスーパーマーケット業者に賃貸する計画も、右業者が誘致に応じてくれないため同四九年春ころにいつたん断念せざるを得ず、後に同五一年後半にも再度試みたが同じ理由で失敗に帰した。このような状況のため、原告は、右高付加価値追求策と併行し、同四九年春より後は、対トーメン金利と公租公課の支払を一日も早く免れるため単純転売計画も考え、買手を捜したところ、右同ころにおいて既に原告の買受け原価は一三億円にも達していたのに対し、買手の提示額は高くて一一億円どまりにすぎず、相当額の買受け原価割れの売却しか期待できなくなり、転売に踏み切れないまま対トーメン借入金の最終弁済期を徒過した。その後、原告は、採算のとれる転売先の見付からないまま経過し、同五〇年七月以降は、トーメンに対し遅延利息を支払うとともに残借入元金約八億九〇〇〇万円前後の額の手形の書替を一箇ごとに要請しつつ、むしろ本件計画の早急な実現を期待したが、期待どおりの進捗を見なかつたところ、他方、同五〇年四月ころの買受け原価は既に一五億円弱となつていたのに対し、長引く不況のためこれを右原価割れにならない価額で買う買手は容易に見当たらず、さりとて分割転売方法も、同年秋ころに既に担保権者トーメンの同意が得られず採り得なくなつており、結局、原告は、買受け原価割れが避けられないとしても、その額を可及的に少額に抑えられる本件土地全部の適当な買手を捜し求めたが、同五二年一月一八日に至り、当時経営不振の原告を管理指導していた訴外安田信託銀行の指導により、トーメンに対し、当時の借入元金及び遅延損害金合計九億〇六九一万一五四二円の無清算代物弁済として、本件土地全部を移転せしめられた。
(3) 原告は、昭和四九年末ころ、本件計画を、後記第一設計の赤石から高橋に対し持ち込まれ、高橋は、折から本件土地の転売先に窮し、他方、適当な本件土地の処分計画も見出し得ないままに対トーメン借入元利金の返済策にも困窮していたため、本件計画を、原告にとつて絶好のものであるのみならず、被告にとつても同時に松下グループの物流の集約化ができコストダウンの利益につながるものと考え、その実現に乗り気となり、赤石と一体となつて、同人に原告の採算のとれる計画内容、条件の計算、立案の依頼ないしは指示をなし、本件計画に関して、被告との間で、原告が建築する倉庫の竣工引渡を始期とする賃貸借契約若しくは同予約を結び、これを借入れ資料に使つて取引銀行から右建築資金を借り入れ、賃料収入により対トーメン借入元利金を長期月賦で支払つていくことを狙い、このための採算をできるだけ高率にするため、倉庫面積を容積率の許す限り広くし、賃料単価もできるだけ高額とし、賃料の一部前払と保証金の徴収を希望し、右希望をできるだけかなえられる本件計画の早期実現を熱望し、同五〇年八月には森本とその家族を白浜へゴルフ旅行に招待するなどまでした。
(4) 原告代表者は、本件土地買受け後、その有効適切な処分をなすべき権限と責任を、当時原告企画部長の地位にあり、原告会社の事業展開、企画開発の責任者であつた高橋に与え、高橋は、本件土地の処分対策に特に腐心し、前記各種処分計画及び本件計画を担当し、本件計画の推進においては原告側の一人として原告を代理した(以下「原告側」というときは高橋及び赤石を含む両者をさす。)。
(二) 第一設計は、その株式の二十パーセント強を原告が保有する原告の関連企業グループの一つで、従来から原告との間で数多くの設計、監理の注文取引をなし、赤石は、昭和五〇年当時は第一設計の取締役であり、かつ、一級建築士の資格を持ち、主に同社の設計の総括的責任者であつた。ところで、赤石は、同年一月二二日、訴外MKグループ専務こと訴外有田健二(以下「有田」という。)より、被告が三〇〇〇坪の倉庫用地として本件土地を気に入つている由であるから、この情報を寄せた訴外春日設計事務所長こと訴外山口晃(以下「山口」という。)と共同で、本件土地上に倉庫を建築して被告に賃貸してはどうかとの示唆を受け、これがきつかけで、本件計画が成功すれば自らは莫大な設計監理報酬が得られる上に、原告にとつても前(一)項(3)掲記の利益が期待できるものと考え、仮称高槻倉庫プロジェクトとして、さつそく原告の立場に立つた本件計画の利益試算をなし、これを高橋に持ち込んだ。そして、高橋が本件計画に乗り気となつて直接参加して来ることとなつた同月二五日以降は、赤石は、本件計画の持込み者として、その成功のために、高橋の意に副うべくほとんどの機会に同人に同伴し、単独では同人の使者として若くは代理権を与えられて、原告側の一員となり、発案、試算、設計図の作成、関係機関の調査、森本らとの交渉をなし、そこで自発的かつ積極的に尽力し、原告に対する説明等のために詳しい業務日誌(甲二二号証)を特にまとめて作成することまでしている。
(三)(1) 被告は、昭和四七年三月、資本金二億円を松下本社が全額出資する同社の子会社で、松下グループの物流関係(商品保管、荷役、輸送等)担当を業として、摂津市東別府に本社事業所を置いて設立され、自己使用倉庫としては、松下本社から右被告本社所在地に約五〇〇〇坪を、訴外旭洋勧業株式会社(以下「旭洋」という。)から守口市に約三〇〇〇坪(以下「守口倉庫」という。)を、各賃借し、他に二、三箇所の寄託場所を持つて、専ら松下本社の事業部の商品の保管業務をなし、人的組織としては、ほとんどが松下本社からの出向社員で組織する管理部と、請負契約に基づき被告の荷役現場作業の担当するシンワ運輸ほか四社の在籍出向社員で組織する業務部とを有し、前者が後者を指揮監督して業務が運営され、幹部構成は、代表者には松下本社の専務取締役が、非常勤専務取締役には松下本社の物流推進本部長である宅間が、常勤常務取締役兼業務部長には井槌が、各あてられていた。
(2) 被告業務部では、シンワ運輸等からの出向社員のみによつて運営されていた業務部の業務である荷役現業及び倉庫に空きが生じたときの荷主の注文取り等の営業活動について、右井槌が、森本ら出向社員の指揮、監督、統轄をなし、森本が、その直近直属の下僚として、井槌を通じ被告より業務部次長の役職名を付与されて、井槌の指揮監督のもとに同部の右業務に従事し、また、森本ら同部の業務に従事する他社からの出向社員も、被告会社従業員であることを示す被告会社役職名、所属部課名を肩書に付した名刺を被告より支給され、その使用を許され、被告会社内や外部との連絡においても右肩書呼称の使用が容認されていた。次いで、昭和四九年末ころより取扱いの松下本社の商品が大幅に減少しだし、守口倉庫の埋まりが悪くなつたため、広く松下グループ内より貨物を集める目的で、同五〇年一月二一日、業務部は開発部に発展的に編成変えされるとともに営業課が新設され、その後同部は従来の被告の摂津営業所から守口倉庫に移転され、併せて被告には不況対策委員会が設置され、爾後の人員整理を含めた各倉庫事務所の合理化、能率向上対策の検討が始いられ、森本は、そのまま開発部次長として新開発部が引き継いだ従前こ事実上の後記((四)(1))役割に従事せしめられ、右委員会の常任委員の一人に加えられた。
(3) 他方、被告は、松下本社の自家倉庫とみなされ倉庫業法による営業許可は不要と考えていたが、大阪の倉庫業者のつきあげによる海運局の行政指導があり、同四八年六月ころ、やむなく守口、摂津、茨木を事業所(使用倉庫)とする倉庫業の営業許可(以下「本件営業許可」という。)の申請手続(以下「本件申請」という。)をなしたところ、手続不備のため受理されず、その後同じ内容の訂正申請を同五〇年六月に提出したが再び受理に至らず、ようやく同五一年五月二〇日付申請が受理され、同年八月六日港倉第八一号で許可を得た(なお、右申請手続は、既に昭和四九年末ころには森本が担当していた。)。しかしながら、松下本社傘下には別に同三一年設立の倉庫業を主業とする訴外松下倉庫株式会社(以下「松下倉庫」という。)が存し、しかも被告は松下本社の完全子会社であるため、松下本社の松下グループにおける物流政策に関する最高判断及び稟議を仰がずして、営業の基本政策を松下倉庫と競合するようなものに変様することは、およそ不可能であつたところ、被告は、本件申請に伴つて、従来の松下本社、不況対策委員会設置後は松下グループ内会社以外にまで荷主を求めて一般倉庫営業をなす意思は、終始持つていなかつた。因みに、その後松下本社の最高判断の結果、同五二年五月三一日、被告は右許可にかかる倉庫営業の全部を松下倉庫に譲渡している。
(4) ところで、本件計画は、本件覚書記載の規模のものとすると、森本の試算によつても、被告としては、差し当たり、パレット、フォークリフト等で約六億円、最終的には一五億円程度の新設備投資を要し、その倉庫面積や、冷凍庫も含む点等を加味すれば、資本金二億円月商約八億円の被告の企業規模に照らし、新会社設立に近い壮大な新規事業計画というべきものであつた。
(四)(1) シンワ運輸は、松下グループの物流関係を担当してきたもので、被告摂津営業所建物の一部に事務所を借り受け、被告との契約に基づき四〇名近くの従業員を被告業務部に在籍出向せしめて、被告事務所倉庫内荷役及び関連作業を請け負い、年間約三億円の取引をなしてきていた。他方、森本は、昭和四八年四月、自己経営の荷役請負業目的の会社をシンワ運輸に合併し、それ以降同社の常務取締役となり、部下である沢田らとともに被告業務部に出向し、その役員報酬はシンワ運輸から受領していたものの、前記((三)(2))のとおり被告より業務部(のちに開発部)次長の役職名を与えられ、井槌の直近直属の部下として被告管理部と現業とのパイプ役を果たし、業務部現場作業の事実上の最高責任者の役割を担つて来た。
(2)ところで、森本は、前記((三)(2))のとおり松下本社から被告に対する荷物量が減少し不況対策委員に任命された同五〇年以降は、被告の荷受量が減少すればシンワ運輸からの出向者の人員整理減少を招来することになるため、この面からも被告の荷受量増加に無関心ではおれない立場にあり、被告開発部次長として、松下グループ会社に限つてではあるが新荷主の開拓に努力しており、他方、そのころ被告は不況対策として旭洋に対し賃借期限を同五三年四月一九日とする守口倉庫の坪当り月額賃料金二五〇〇円の減額交渉を試みたが失敗に終つていたところ、右倉庫の賃貸借契約上期限前解約も可能であつたので、より安い賃料の代替倉庫があることは被告にとつても望ましいことであつたため、森本も、この代り替えに関心を抱いていた。
(3) このような状況下で、森本は、同四九年暮ころ、井槌より、松下本社の管轄庁から危険物扱いされているトランス置場用地を捜すことを指示され、同用地として約一〇〇〇坪の土地を捜すうち、かねての知己である山口より本件土地を紹介され、その利用方を勧められたのがきつかけで、本件計画を持ち込まれたところ、右計画内容が前記関心に副い被告にとつて採算に乗るものならば被告の利益となるから守口倉庫を借り替えてもよいものと独り軽率な判断をなし、しかも、本件計画が成功すれば被告における自己の功績にもつながるため、当初から前向きに本件計画に対処し、後記3、4認定のように、原告側の本件計画の熱心な売り込みと推進作業に対し、本件営業許可あるまで内密裡の慎重な推進を要請しつつ、沢田とともに、特に急ぐことはしないが積極的な姿勢で同調参加し、右作業が進むにつれて、将来本件計画の具体化ができ森本の目からみて確実な事業計画として完成した暁においてなお万一被告最高幹部又は松下本社の決裁がおりなかつたとしても、そのときは自らシンワ運輸の方に持ち込み同社が被告と肩代りして賃借の上倉庫営業をなしていくことも十分可能であるとの内心の独断のもとに、同五〇年六月ころには山口から原告が経営状況悪く本件土地を売りに出している旨聞きながら、また、本件営業許可も遅々としておりずのままになつているにもかかわらず、なおも原告側の本件計画推進の姿勢に同調参加し、右計画の実現に期待をかけていた。
(4) そして、森本は、後記3、4認定の、本件計画をめぐる有田、原告側等直接間接の関係者との折衝を、終始一貫、被告業務部(のちに関発部)次長の資格で、その名刺を使用して行動していたもので、相手方も同趣旨に理解して対応し、森本の右身分資格につき特に疑問をさしはさむこともなかつた。
以上のとおり認めることができる。そして、右認定に副わない〈証拠〉は到底採用できず、他に右原告主張を認めるに足る証拠もない。したがつて、右請求原因2(一)は、右の点を除いて理由があり、右被告の反論は理由がない。
3  本件覚書の意味及びその交付の経過と効果
(一) 〈証拠〉を総合すれば、次の事実を認めることができる。
(1) 昭和五〇年一月二五日、本件計画のうち設計、調査を担当すべき赤石の提唱で、前2項認定の経過で本件計画に関わりを持つた関係者である原告側、森本並びに両者の間に介在した有田及び山口が原告本店において初顔合わせをなし、ここでは、本件計画に関する漠たる思惑等が話題にされ、高橋からは、被告側では延べ三〇〇〇坪程度所要の由だが原告の採算上容積率満杯の一万二〇〇〇坪程度の賃貸面積でないと話にならない旨の希望意見が出され、一応原被告双方前向きに検討してみよう程度のことで終わつた。同月三〇日、山口を除く前記関係者と沢田が原告本店に参集し、その席上、森本から、賃借面積につき、採算が合えば九〇〇〇坪程度ならば借りてもよい旨の発言があり、他者からも、原告側希望容積の残部三〇〇〇坪は管理棟や有田の関係するガソリンスタンド、レストランで埋めればよいとの意見が出され、次いで、一度図面を作つてみることとなり、これにつき、被告側より、被告が借りる場合の条件として、賃料相場は坪当り月額二三〇〇円であり、本件計画で建築後被告が借りる予定の本件倉庫は倉庫業法の営業許万を要する営業倉庫で、しかも一部トランスを入れる関係上危険物倉庫となる予定、できるだけ一階三〇〇〇坪延べ九〇〇〇坪の一棟にすること、必要な室の種類等の設計仕様等の教示がなされた。しかし、赤石は、試算の結果右賃料額では到底原告の採算に合わないため、森本に対し賃料増額の要望を持ちかけ、同人からは、冷凍冷蔵庫を組み入れ、この部分の賃料を上げて一般倉庫部分の賃料を抑える方策の提案があり、更に、本件計画規模の倉庫ではコンピューター導入が必要である旨の教示(一月三一日)、続いて右コンピューターリース代原告負担の申入れ(二月四日)があり、原告側は右いずれにも賛成して、本件倉庫の基本設計及び原告の利益試算をやり直してみることとなつた。また、本件計画実現の前提として荷主の集約が是非とも必要であるが、それは今後原被告側間で双方が相互に協力して捜そうとも話し合われていた。
(2) その後、原告側と森本あるいはその意を受けた沢田との間で相互に事務所を訪ね合い、本件計画内容の具体化が進められた。すなわち、まず、原告側は、冷凍倉庫を組み込んだ基本設計図を作成するにつき、赤石が、採算をよくするため、独断で容積率一杯になるよう一般倉庫部分の面積を延べ九九七八坪に拡大して試作(甲四号証)し、その後被告側からの助言を受けて右図面のステージ部分を変更して作図(甲五号証)したうえ、二月一三日には森本を訪ね被告営業所に赴いて右変更図面を交付し、同人からは、被告会社の業況説明と、本件計画における被告の投資予定額が最終的には一五億円となる旨の説明を受けるとともに、原告の利益試算に基づき、採算上、賃貸期間は二〇年以上とし、賃料を更に増額し、その一部前払と松下本社の保証をとることを求めた(二月八日、一三日、一九日)ところ、森本は、長期契約以外の右原告側の要求を拒否しつつも、本件計画自体は手許に留めおきたい様子の前向き姿勢を保持し、次いで、三月初めころ、原被告両者の協議により本件計画から有田を排除し、赤石は、その分だけ冷凍倉庫部分の面積をふやして一九八八坪に変更した基本設計図(甲六号証)を作成して、同月三日これを被告側に交付した。
(3) ここにおいて、原告側は、一般倉庫賃料額についての森本の提示額坪当り月二三〇〇円と原告側希望額との差額の問題は、冷凍倉庫面積の拡大組み込み、及び森本が応諾しそうであつた三年ごと一五パーセントの賃料増額により将来的に解消可能であり、買受け原価割れで本件土地を転売するよりは、前記甲六号証表示面積による本件計画を成功させる方が得策と考え、森本の前向き姿勢とあいまつて、本件計画を是非とも被告に売り込みたいものと期待をかけるに至つたところ、同月五日、経過表(原告)同日欄記載のとおり、森本から、松下グループ内荷主の確保に役立てたいからとの理由で、原告が過去において使用し現在も使用中の松下製品の一覧表、本件倉庫で使用可能な松下製品の目録及び概算見積書並びに今後原告がビルを建設する際には被告を通じて松下製品を優先的に使用する旨の誓約書(以下まとめて「製品リスト等」という。)を提出するように求められ、その際、本件申請を手続中であると告げられたり、荷主候補の会社名が話題に出たりした。ところで、高橋は、本件土地処分の権限と責任とを原告代表者から与えられていたものの、対トーメン金利の支払に追われ本件土地の早急な処分に迫られていたのに一向に進展せず、原告代表者との間でつらい立場に立たされていた社内事情のもとにあつて、今後原被告間で、なお多くの条件の詰めや、荷主の集約等の前提条件の具備のために相当期間の作業を要する本件計画の推進に取り組むには、社内より反論が出るおそれもあるので、原告代表者にその旨を説明してその稟議若しくは了解を得ておかねば、社内での自己の立場がなくなることになりかねず、自己の立場を守るためには、原告代表者に対する説明材料となし得る、少なくとも原被告間で本件計画の具体的内容に関する商談が進行中であることを示す、被告作成名義の有印文書が必要であり、同時に、同文書は荷主集約作業にも役立て得る有用なものであると考えていた。そこで、高橋は、森本から求められた前記製品リスト等の提出を承諾すると同時に、森本に対しても、今後原告側が本件計画に関する商談を進めていくについて、前記の趣旨で必要かつ有用な文書として、原告が本件倉庫を建設した際は被告において間違いなくこれを賃借する旨の覚書の交付を求めておいた。
(4) そして、高橋は、赤石に指示を与えて必要な調査を行わせたうえ右製品リスト等を作成させ、また、高橋は本件計画を知つたころより原告の採算につき本件土地の買受け原価を一貫して一五億円として赤石に種々内部試算をさせていたが、最終段階の右試算に基づき坪当り月額賃料につき採算上の希望額として考えていた一般倉庫部分二五〇〇円、冷凍倉庫部分一万円の各数値を独断で記入した、請求原因2(二)(1)末尾記載の①ないし④の条項(以下右条項を本件覚書条項①等という。)を記載した被告あての代表者名表示の原告名義の覚書(甲一号証。以下「原告側覚書」という。)一通と、原告あての代表者名表示の被告名義の覚書(以下「本件覚書原案」という。なお、後者にのみ、賃料支払条件、本件契約の締結予定期限の記載があつた。)一通をタイプで作成し、三月一八日、森本を訪ねて右作成した製品リスト等(甲八、九、二三号証)及び両覚書を交付したうえ、被告の方でも本件覚書原案と同様のものを作成して後日原告に交付するよう求めた。森本は、右本件覚書原案が、前(3)項で要求のあつた文書として自ら理解していたメモ書き程度のものとは違い、契約書めいたものであつたため、右交付要求を拒否することとして、沢田をして本件覚書原案を返却せしめたところ、高橋から、本件覚書の趣旨、必要とする理由及び有用性は前(3)項の末段のとおりであつて、他意がなく、高橋個人が保管するものであるから、是非とも被告の有印文書が欲しい旨執拗に懇請され、やむなく、高橋の右説明にかかる趣旨の文書として、本件覚書原案から被告代表者名と本件契約の締結予定期限部分とを削除したものに改めてタイプさせたものを持参させ、これに、被告経理課長が不知の間に、同人が保管する被告会社名の角印を冒捺(この点当事者間に争いがない。)して本件覚書(甲二号証)を作成し、四月二三日、原告本店において、これを高橋に交付した。
以上のとおり認めることができ〈る。〉
(二)(1) 以上の認定事実、本件基本事項合意の成立が認められない点及び前2項の背景事情を総合して、請求原因2(二)(2)中段、後段に関し、本件覚書の文書としての意味ないし趣旨内容、その交付の趣旨と効果を検討する。
原告主張の「総論」は、その意味が判然としないが、その主張どおりならば、細目の合意を残すにすぎない予約又は不確定期限付合意の内容を意味するところ、本件覚書は、その文言を素直に読むならば、正に賃貸借の予約ないし不確定期限付賃貸借契約の約定が記載されている文書ということができるにすぎない。それでも、あえて、原告主張のとおり、右文言の意味が真実ではなく、他の意味を持つ文書である(原告は当初右賃貸借の予約等の主張をなしていたが本訴後半でこれを撤回し、結局その点は当事者間に争いがなくなつた。)として、そこに表現されている意味、ないしは、解釈され又は文書の持つ文章文言外の意味を探ると、以下のとおりである。前(一)項認定の本件覚書交付の要求の動機、目的、経過及び交付当時の本件計画内容案の詰めの進行状況に照らせば、本件覚書は、原告側覚書とあいまつて、少なくとも、そこに記載されている本件覚書条項①ないし④を内容とする計画案につき、原被告が現に商談中であることの事実確認と、原被告双方が右計画案実現に向けて相互に協力していこうという意思確認とを、その代表者の記名又は署名捺印はないとしても、被告会社として表示しているものということができる。したがつて、本件覚書は、当然原告主張(請求原因2(二)(2)中段)の⑤の性質を持つものということはできるが、この限度に尽き、それ以上に、本件覚書が、同主張①ないし④の事実ないし意思確認、義務負担の意思表示、判断の表示をも含み、若しくは同主張②の義務と責任とを伴うものと認めること、またそのように解釈することは、通常の経験則からも、また、他に特段の事情も認められない点からも、到底できないというほかはない。すなわち、まず、本件覚書は、その条項内容(そのうちどこまでが合意としてまとまつているかは別として)に照らし、右原告主張⑤の各種作業の前提としてまず合意すべき事項が記載されているから、その意味ではあえて「総論」合意文書といえなくもないが、基本事項合意の成立は認められないのであるから、原告が主張するような基本事項合意の文書ということはできず、つぎに、法人である被告会社作成名義の文書であることは明らかであるから、当然その作成は代表者等の作成権者自身により又はその承認のもとになされるべきではあるが、だからといつて、本件覚書の前記真実の意味に照らしても、右作成についての作成権者の承認事実から直ちに、そこで商談対象とされている計画を推進する意思という別個の意思、しかも被告最高責任者の意思を読みとることは到底できず、右原告主張①は飛躍にすぎ、同②は、前記計画実現に向けて協力していこうという程度の抽象的意思確認から、直ちに法的具体性ある行為としての努力義務を負担するという法的成熟性を有する契約(合意)とまで意思解釈することは、本件覚書の文言からも、その作成の背景事情からも無理であり、同③も、本件覚書の真実の意味ないし趣旨が前記認定のとおりである限り、原告主張の見込みの判断とは直接関係がなく、直ちに右判断を読みとることは到底無理であり、同④は、前記のとおり同①及び同③の解釈ができないのであるから、その前提を欠き、無理というほかはない。
(2) したがつて、また、本3項(一)及び2項の全認定事実関係を総合しても、原告側は、前記のような意味ないし趣旨内容しか持たない本件覚書を、その意味ないし趣旨内容を知りながら交付を受けているのであるから、前認定の本件覚書による本件計画の実現への期待を高めることはあつたとしても、同覚書によつて直ちに本件計画に相当程度の実現の見込みがあるとの判断を原告が得たと推認することは、他に特段の事情も認められないから、到底できないというほかはない。さらに、右判断をなし、そのために原告は本件土地の単純売却方針を捨てた旨の〈証拠〉は、前記本件覚書の意味ないし趣旨内容、その交付経過及び前2項(一)の背景事情に照らし到底採用しがたく、他に、原告が本件覚書により本件計画に相当程度実現の見込みがあると判断し、ために本件土地単純売却の方針を捨てたことを認めるに足る証拠もない。
よつて、請求原因2(二)(1)、(2)のうち、本件覚書の記載事項と、その交付があつた点とを除くその余の主張及び七〇パーセントの荷主集約義務は原告が負担していたもので、本件計画に対する森本の関与は倉庫事業一般論からの助言、教示に終始していたものである旨の被告の反論は、いずれも理由がない。
4  その後の交渉経過と本件計画をめぐる関係者の理解
以上2、3の認定事実関係及び判断に加え、〈証拠〉を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 本件覚書交付が要求された段階においては、原告側と森本間には、本件覚書条項のうち、一般倉庫部分約九〇〇〇坪、坪当たり月賃額料二三〇〇円、賃借期間二〇年間以上の長期間、備付けコンピューター費用月額約五〇〇万円は原告負担の、各限度での了解が得られていたが、それ以上の部分は森本の向意が得られないままの状況であり、また、原告側は、森本との話合いのなかで、本件計画の実現のためには本件営業許可が下りること及び荷主の集約が相当程度できることが必要であることは既に知つており、被告が松下本社の完全子会社の関係にあるため、松下本社の稟議と決裁(以下「本社稟議」という)。も当然必要となることも予知していた。しかし、原告側は、本件覚書を受け取つたことにより、それまでの交渉や作業とは異なり、被告としても、起案者森本段階どまりの単なる商談売り込みの事前打診段階を越え、会社自体として、その決裁系統を通過して、いよいよ本件計画商談を正式に受理し、本気で応接してくれているものと判断し、それまでの本件覚書条項のうち、賃貸面積、賃料等合意未了の部分は、賃料については、森本に要求中の将来の賃料三年ごと一五パーセント増額約定の取付けにより、荷主の集約は、森本の努力に大半は依存しつつも原告側でも協力して捜せば、将来解決でき、そうなれば賃貸面積についても、被告の背後には大規模な物流を持つ松下グループが控えている関係上、なんとかなり、本件営業許可も簡単に下りると考え、かくして、高橋は、本件計画の実現、成功により、当時既に買受け原価を割らねば本件土地を処分し得なかつた当面の困難から転じ、当初理想としていた本件土地による高付加価値追求が可能になるものと期待し、また、赤石は、本件倉庫建設の設計監理の完遂により多額の報酬が得られるものと期待し、他方、森本は、本件計画の成功により被告において自己の功績をあげられるものと期待し、右三者はそれぞれの思惑と利害とに基づき、高橋が原告代表者に本件覚書の受領を報告して本件計画推進の了解を得たあと、本件計画の実現を目指して積極的に協力同調態勢をとり、右推進のための諸作業を本格的に進めていつた。
(二) その後の原告側と森本との主な交渉は、以下のとおりである。
(1) 原告側は、赤石が高槻市役所に出向いて予め開発関係の調査を行い(昭和五〇年三月一四日)、建設計画の概要書(甲一〇号証)及び建設計画書(甲一一号証)を森本に提出し(四月一四日)、十三高槻側にも出入口を設置してほしい旨の森本の要望(五月二日)に応えて変更した基本設計図を同人に交付し(同月六日)、五月二〇日には、経過表(原告)どおりの参集者による総合会議が持たれ、その席上、森本より、本件計画の具体的詰め、打合せのため毎週金曜日に定例会議を開催するよう要求があり、原告側もこれに賛同して今後同会議を持つこととなり、また、森本より、十三高槻線のわかる都市計画地図の提出、本件営業許可が六月中旬に下りる予定のため、それまでに建築確認申請書等本件倉庫が間違いなく建設されることがわかる書類の提出が要求され、赤石より、前記高槻市役所での調査の報告書及び本件倉庫工程計画書(甲一二号証)が提出されるとともに、原告側計画では建築確認申請は早くても同年一一月ころになる予定である旨の説明がなされ、五月二三日右要求のあつた地図が提出された。次いで、森本の関与と指示のもとに設計細部の打合せ会議が持たれ(五月二八日、六月一〇日)、倉庫見学(五月末)とこれによる図面訂正がなされ(六月六日ころ)、森本の要求(五月二九日)により他の現存倉庫位置を明示した近畿一円の地図の作成提出がなされ(六月一八日)、赤石より自発的に最終図面(甲一三号証)の作成交付がなされた(同月三〇日)。
(2) 一方、本件計画推進に森本が参加し始めたころから、森本より原告側に対し、本件申請手続での聴聞会が終わるまでは、他同業者の反撥のおそれがあるので、部外者には本件計画を秘密にし、他業者や金融筋への働きかけを待つようにとの要求がなされていたが、その旨が確認され(七月一一日、同月二九日)、他方、高橋より森本に対し、かねて、本件倉庫の仮賃貸借契約を予め結ぶことを雑談程度で求めていたところ、同人から、それは本件営業許可が下りてからのことである旨告げられていたが、高橋より、右許可の遅れのため本件計画担当者として社内的社外的信用問題にかかわるとして、森本に対し、将来建設されるべき本件倉庫について早急に仮賃貸借契約を締結するよう再々要請がなされた(同月一一日、同月二九日、八月六日、一〇月二九日等その後も。)。
(3) また、森本より、コンピューターはIBM製を採用するようにとの指示(七月二九日)及び地下水規制を調査するようにとの指示(八月六日)(その調査報告は九月二日になされた。)があり、本件計画における本件倉庫賃貸借契約には本社稟議が必要であり、本件申請においては本件倉庫は含まれていない旨の説明がなされ(八月六日)、その後、本件計画の実現について、本件申請中の現守口庫用として集約した荷主を本件倉庫にまわすことになる予定が説明され、また、当初から話題とされていた荷主について、一般、冷凍両倉庫部分を含め、七〇パーセントの集約ができなければ本件倉庫仮賃貸借契約の締結はできない旨が説明された(九月一八日)。
(4) 次いで、原告側は、参考資料として森本より守口倉庫の賃貸借契約書写しをもらい受け(九月二五日)、これにより本件倉庫の賃貸借契約書草案(甲一七号証)を提出したが、森本より時期尚早として返却され(一〇月三日)、その後、森本より、被告との契約による倉庫建設資金の融資をそんなに急ぐのであれば、むしろ原告の方で独自に倉庫業の営業許可を取り、被告に貸してくれてはどうかとの示唆及び申請書目次(甲一八号証)による申請手続の教示がなされ(同月七日、同月一五日)、これに対し、赤石は、むしろ当初からの本件計画の早急な実現を求めて、爾後の契約成立に至るまでの被告側の予定表を提出するよう要望し(一〇月七日)(結局予定表は提出されなかつた。)、さらに、原告側は、本件計画に対する松下本社稟議用書類のうち、原告で準備すべき書類として予め森本に検討させるための書類一式(甲一九号証の一ないし七、同二〇、二一号証)を提出した(一〇月二〇日)。
(5) その後、森本は、高橋より、本件計画の実現の遅れのため原告社内で困つているとして、原告代表者に直接に事情を説明することを求められ、原告代表者に対して本件計画の経過説明をなし、営業許可や本社稟議が下りた場合の本件倉庫仮賃貸借契約締結予想期日にも言及し(一一月六日、一二月四日、同月一五日)、また、原告側に対し、本件計画実現の際には守口倉庫の契約が解約となるため、同所で不要となつたエレベーターのキャンセル費をある程度負担するよう要求したりしていた(同月六日)。
(6) 以上の間、森本は、原告側との話合いの中で、問われるままに、本件営業許可の下りる時期の見込み(五月二〇日、七月二九日、八月六日、九月一八日、昭和五一年一月九日)や、本件契約締結可能時期の見込み(前同日のほか、昭和五〇年一〇月一五日、同月二九日、一一月六日、一二月一日、同月一五日)に言及して来たところ、当時原告は、前認定(2(一)(2))のとおり、対トーメン借入金の返済期延期懇請を繰り返してトーメンの納得を得るのに困つていたため、森本は、トーメンに対し本件計画の推捗状況を説明するよう求められ、昭和五一年一月九日、トーメン担当者及び原告側に対し、「本件計画推進の前提である営業許可申請は二月上旬に許可が下りそうな見込みであつて、そうなれば被告も荷主集約の動きができるが、営業倉庫の建前上松下グループ以外からの新荷主の開拓が是非とも必要であり、本件計画の早期実現のためには、トーメンや原告らの協力が是非必要である。」旨の説明と協力依頼をなし(この点赤石は特に記録を残している。)、原告では、これを受けて、幹部が冷凍倉庫荷主として二社との交渉に当たることとなつた。
(7) しかしながら、原告は、対トーメン借入元利金の手形書替に追われ、本件計画の進展の遅いのにいら立つとともに、交渉窓口としての森本に不信感を抱くようになり、幹部会談により本件計画の今後の処理若しくは決着をつけたい旨望み、その結果、昭和五一年一月二七日及び二月九日に、原告代表者らと井槌との会談が行われた。そして、井槌は、ここで初めて本件計画を知り、早速宅間の指示を仰いだところ、被告には、現在、その経験、地位等に照らし、本件計画のような一万二〇〇〇坪もの大規模の倉庫営業を運営する意思、方針は全くなく、それだけの力もなく、また、荷主も未だ集約し得ていないのに、急いで本件計画の商談を推進することは、採算を検討するまでもなく、現状では到底無理である、との結論となり、同年二月二七日、井槌は右結論を原告代表者に通告し、ここに本件計画に関する商談は打ち切られ(以下「最終決着」という。)、結局本件契約は不成立に帰した。なお、その直後より、原告代表者から被告に対し、本件土地を松下グループで一五億円にて買い取ることの仲介をなすよう依頼があり、井槌及び宅間において松下グループに打診してみたが、買取り先がなく右依頼は断られた。
(二) 前(一)項認定の本件覚書交付以後の原告側及び森本の理解のその後の推移は次のとおりである。
(1) まず、客観的には、本件計画が実現して本件契約が締結されるためには、その前提として、被告に対する本件営業許可が下り、荷主が一般及び冷凍両倉庫部分を含め約七〇パーセント以上契約でき、本社稟議が下りること、が必要不可欠の条件であつたところ、原告側及び森本とも、右の概略を知り、本件覚書交付のころは、集約すべき荷主のパーセントまでは明瞭でなかつたものの、暗黙の了解事項として、本件計画推進作業をなして来たが、その後前(二)項認定の経過を経て、右パーセントも含め明瞭となり、右三条件の具備を期待しつつ作業を続けて来たものである。
(2) そのなかで、赤石は、前認定((二)(2))のように、森本から本件営業許可が下りるまで対外的な動きを止められているため、集約に協力できず、右許可が下りてから具体的に集約のための協力行動を起こそうと考えて右許可があるのを心待ちにし、本社稟議は、本件計画は松下グループの物流の中核的なものとなる旨の森本の説明を信じて、容易に取れるものと、また、荷主の集約条件は、やむを得ないものではあるが、これも、森本が常に松下本社を「天下の松下」と誇示していたことから、被告の親会社である松下本社の力に頼れば容易に集約できるものと、甘く考えていたものの、同時に、右本社稟議が下りないときは、結局本件計画は実現不可能となるべきものであることは、忘れずに認識していたものであり、そして、自ら担当すべき本件倉庫の開発申請及びこれに続く建築確認申請を結局なしていないが、その理由を、これは荷主の関係で冷凍倉庫部分の収容数量が不詳のため不可能なのである旨森本及び高橋に説明し、また、昭和五〇年六月三日、訴外旭化成の社員に対し、本件計画のネックは、被告側では、計画だけで現存しない建物に対する仮賃貸借契約が困難であること、原告側では、この契約がなければ本件倉庫建設資金の対銀行折衝が困難であることである旨説明している。一方、高橋は、前記の共通の理解に立ち、森本の説明により、本件営業許可が下りて以後に本件契約締結が可能との認識を持つていたものの、トーメンとの関係で本件計画の実現を急いだが右許可が下りないためどうにもならず、専ら右許可の早期実現及びその協力方を森本に対して働きかけて来たにもかかわらず、右許可待ちのまま本件最終決着に至つたとみている。
(3) 他方、森本は、本件計画推進について同調していたものの、もともと原告側ほどその実現を急ぐべき差し迫つた必要もなかつたため、被告が他の倉庫同業者の突き上げにより、積極的な新規倉庫営業拡大の目的や企画もないままに、やむなく申請していた本件営業許可がまず下りた後に、これを材料として、原告側と協力して、一般及び冷凍両倉庫の荷主の集約を、自らは主に前者を担当して行い、その結果七〇パーセントの荷主の集約ができれば、残りの三〇パーセントは守口倉庫分を振り替えれば、一応採算上荷主の集約は満足できるものと心積もりし、加えて、原告側が森本の教示した設計仕様による本件倉庫の開発許可及び建築確認許可を取つてそろえてくれば、本件契約の賃料等の条件を詰めて合意案をまとめ、併せて、被告内部及び松下本社の各稟議を取るのに必要なものとして既に原告側に作成準備させた基本設計図、各種調査報告書、地図その他の書類(甲一七号証、一九号証の一ないし七、同二〇、二一号証等)を自己の手許で一括して実現確実な事業計画案にまとめ、ここで初めて自己の上司に報告しても遅くなく、その決裁を得たうえで松下の本社稟議にかけ、ここで採用されることを期待して、ゆつくり構えていた。のみならず、かえつて、原告側が早く動きすぎて本件計画が外部にもれ、ために被告内部の自己の立場が悪くなるとともに本件計画も駄目になることを恐れ、前認定のように、本件営業許可があるまでは、本件計画推進作業を原告側のみでなしうる限度にとどめさせ、自らも内部的にも外部的にも積極的に動こうとせず、前認定((二)(4))のように、急ぐ原告側に対し、原告の自営倉庫としての営業許可申請を示唆して、原告側の不信感を招いた。
以上(一)ないし(三)のとおり認めることができる。〈中略〉
よつて、請求原因2(二)(3)、同(4)は、前記認定の限度で理由があるが、その余は理由がない。
二  そこで、前一項認定の事実関係に基づき、被告が請求原因3(一)の契約締結上の過失責任を負うか否かを、以下検討する。
1 本訴で問題とされているような契約締結のための交渉は、もともと、契約上の合意の可能性、その細目、契約締結の実現の可能性などについてはつきりさせるという目的で行われるものであつて、そこでの期待には不安定さがつきまとうものであるから、通常、各交渉当事者が契約締結前に契約成立を期待して出費をなすときは、自己の危険と責任とにおいて出費することとなる。しかし、他方、契約法を支配する信義誠実の原則(民法一条二項)は、契約締結の準備段階においても妥当するというべきであり、将来契約当事者となるべき者が、自ら若しくは履行補助者により、契約の申込み又は申込みの誘引をなし、相手方がこれに基づきこれを受容して契約締結を指向した行為を始め、いわゆる商談が開始された場合には、この事実と右信義則とに基づき、右契約締結を指向し他方の利益に介入しうる領域に入り込んだ者としての特別の相互信頼に支配される法律関係(以下「締結準備交渉関係」という。)が成立するものというべきである。そして、この締結準備交渉関係においては、信義則に基づき、各交渉当事者は、相互に、指向する契約締結に関してこれを妨げる事情を開示、説明し、問い合わせに応じて締結意思決定に明らかに重大な意義を有する事実について適切な情報提供、報告をなし、専門的事項につき調査解明し、相手方の誤信に対し警告、注意をなす等、各場合に応じ相互信頼を裏切らない行為をなすべき注意義務を負うものというべく、故意、過失により右注意義務を怠り、右信頼を裏切つて相手方に不測の損害を与えたときは、これを賠償すべき右締結準備交渉関係に基づく義務を負うというべきである。以下、これを本件についてみる。
2(一)  まず、本件覚書の前記(一3(二)(1))趣旨に照らし、少なくともそれが交付された昭和五〇年四月二三日以降、被告と森本との前記(一2(三)(2)、同(四)(1)、(4))関係から、履行補助者森本により、被告と原告との間に締結準備交渉関係が成立したものということができる。
(二)  ところで、基本事項合意の成立が認められず、前記(一3(二))のとおり、本件覚書の意味が、本件覚書条項(1)ないし④を内容とする計画案につき原被告が現に商談中である事実及び原被告双方が右計画案実現に向けて相互に協力していこうという意思の各確認にすぎず、本件覚書及びその交付により原告が本件計画の実現を強く希望期待したことは確かであるが、同覚書は本件計画実現の何らかの見込みを表わしたり、右見込みを他人に与えたりする意味、効果を持つものでもなく、しかも、その交付要求の趣旨も、原告代表者に商談内容を説明して本件計画推進の稟議を得るためであつて、右交付により原告が本件計画の実現に相当程度の見込みを持つに至つたものではないとすると、原告主張のような、本件計画の実現の見込みを検討し、相当の見込みがあるときに限り本件覚書交付の要求に応ずべき注意義務が被告にあるとは到底いえず、他に被告の右注意義務を肯定すべき事情は見当たらない。
(三)  つぎに、本件覚書交付後の一連の交渉における原告側と森本の前記(一4(二))の各行為は、そのうち(5)及び(6)の各予測見込み告知を除き、原告側にとつては、本件覚書交付要求前の相互交渉(前記一3(一)に認定のとおり)と本件覚書交付とにより独りで抱いた本件契約に対する切なる期待に基づく、本件計画の売り込み活動の一環として、本件契約における被告の承諾を得るための予備ないし準備作業として自発的に森本の表示を引き出しながらなした行為であり、森本にとつては、右原告側の売り込みを受けてこれに賛同したため、被告側窓口、起案者として、自己の判断により、被告最高幹部及び松下本社の稟議が円滑に下りて本件契約締結が可能になるための諸条件、諸資料の根回し的調整、準備のために必要と考える作業としてなした、各種教示、要求行為である。他面、原告側の右行為は、原告側にとつて是非とも本件契約成立にこぎつけたい切なる期待を持つての積極的な姿勢であつたとしても、本件計画の実現(本件契約の成立)の相当程度の見込み判断を抱かなければなしえない、すなわち、通常の商談売り込み程度ではなすはずもないような性質の行為(たとえば、本件契約の履行行為を予めなしたり、過剰な準備行為をなすなど)と評価すべきほどのものではなく、むしろ、前記(一2(三)(4))のように本件計画の規模が相当大きいものであることに照らせば、その推進作業としては通常なされるべき程度にまで至つていないというほかない。そして、右のうち、森本がなした前記各行為は、前同(5)及び(6)を除き、いずれも、原告側に本件計画表現の見込みを新たに与えたり、原告側が前記(一2(四))被告と松下本社間の親子会社関係等他の事情に基づいて独り何らかの程度の本件計画実現の見込みを抱いていたとしても、これを強めたりする性質のものとは到底認めがたく、したがつて、森本の右各行為により、原告側が本件計画実現につき新たな見込みを持つたとか、既に抱いていた見込みを強めたとか推認することはできない。ただ、一4(二)(5)及び同(6)の見込み告知は、一応それ自体は、右見込みを新たに与えたり、強めたりする性質のものといえなくもないが、もともと仮定の話題としてなされたものであり、他方、本件契約締結のためには、前記(一4(三)(1))のとおり、本件営業許可が下り、荷主が七〇パーセント以上集約でき、本社稟議が得られることが必要不可欠の前提条件であつたところ、このことを既に知り、またそのいずれもが当時の不景気の時期に容易に成就できそうにもないことを十分知り得た練達の者というべき原告側に対し、右三条件ともが未成就の時になされたものであり、しかも右三条件はいずれも森本にとつて全く自己の支配圏外の事柄であるから、同人がその成就の可能性につきある程度確実な予測をなし得た関係にあつた事情について特段の主張立証もない本件においては、右(5)及び(6)の見込み告知の性質から直ちに、これが原告側に対し本件計画実現の見込を新たに与えたり、強めたりしたということは到底できない。そして、原告側が、森本の行為以外の原因により本件計画実現(本件契約締結)の見込みを抱いたり、誤信したり、又は既に抱いていた見込み判断を強めたり、以上の原因となるべき何らかの行為を森本が他になしたことは、全証拠によるもこれを認めるに足りない。
そうだとすると、右本件覚書交付後最終決着までの間に森本がなした行為について、前記締結準備交渉関係に基づく信義則上の注意義務違反と評価すべきものはなく、他に右注意義務に基づきとるべき前記各種の行為義務を認めるべき事情も証拠上認められない。
(四)  次いで、前記のとおり、本件計画は本件覚書交付後最終決着まで約一〇箇月を経過しても、前記三条件が具備されず進展しなかつたところ、この本件計画実現までの所要期間についてみるに、全証拠によるも、交渉の初めから、原告側より森本に対し、いつまでに実現すべき計画として、予め期限を示して検討を求めたり、実現を急ぐにしても原告側がいつごろと期待し、森本がこれを知り得る事情にあつたりしたことは認めることができない。そして、前認定(一3、4)によれば、本件計画の推進手順において、本件契約は、その内容のすべてについて合意が成立すべき詰めができたとしても、少なくとも本件営業許可後でないと締結手続がなされないものであり、このことは原告側も森本から告げられやむを得ないこととして了解していたのであり、他方、原告側の昭和五〇年三月一四日付計画工程書(甲一二号証)によれば、倉庫営業許可を度外視しても、本件倉庫の建築確認は同年一一月以降で、建設完成はその後六ないし七箇月かかるとされており、原告側は、本件計画はもともと順調に進んでも本件最終決着時のころには本件契約の締結に至りそうにもなかつたことを予想し得たのであり、また、原告側は、同年一〇月七日には、森本より、急ぐのなら原告の方で独自に自営倉庫業の許可申請をしてはどうかとの示唆を受けながら、これに応じることをせず、さりとて本件計画を放棄することもせず、専ら本件営業許可待ちの本件計画に期待をかけて、右許可を待つていたものである。また、本件において、原告側が自由に本件計画を取り下げないしは放棄するのに妨げとなる事情並びに本件営業許可後の前記荷主の集約及び本社稟議が困難となるべき事情の変化が予め生じたことは、証拠上認められない。そうすると、以上の事実関係のもとにあつては、森本につき、原告側に対し最終決着までの間に本件計画の進捗の見込みについて特段の何らかの警告、注意をなすべき作為義務が、前記締結準備交渉関係上の信義則に基づいて発生するものということは到底できず、右作為に出なかつた森本の所為をもつて右締結準備交渉関係上の注意義務違反ということはできない。なお、原告は、最終決着を、本件計画の放棄通告であるとし、そうせざるを得ない特別の事情がない限り右注意義務違反となると主張するが、前認定(一4(二)(7))のとおり、いつたん被告会社として採用した商談の事後の事情による放棄ではなく、交渉権限者として当初から商談としては受理し交渉し得ない旨の告知であるから、主張の基礎を異にし、理由がない。
3 以上のとおりで、結局、原告側は、本件計画を持ち込むにあたり、当初からその実現につきそれなりの見込みを抱き、これを熱望して推進作業に取り組んできたのであるが、右実現の見込み判断は、本件覚書交付による締結準備交渉関係成立以後の森本の行為によるものではなく、それより前において、前記(一2(三)、同(四))被告における森本の地位、被告と松下本社との関係、本件計画の一方的売り込み段階での森本の反応等諸般の事情により独自になしたものであつて、更に前記(一2(一)、同(二))の原告の窮状と高橋及び赤石の思惑とがからまつて、本件計画推進における原告側の期待と積極性とを高めたものということができ、つぎに、前記(一4)事実関係によれば、本件覚書交付後の計画推進の過程で、次第に、原告側にも、右見込み判断に、実現の時期、手順の点で誤りがあり、期待はずれ(以下両者を「見込み判断の誤り等」という。)であつたことが判明して来たものと推認することができる。
ところで、一般商取引界においてある事業計画を売り込む者は、その実現の見込みと期待を持つて売り込みをなすのが当然であり、また、その後に右見込み判断の誤りや期待はずれの生じ得ることも当然であつて、右見込み判断の誤り等による責任と危険は、締結準備交渉関係が成立した後においても、右関係を支配する信義則に違反した相手方の行為によつて生じたのでない限り、右売り込み者自身が負担し処理すべきものとすることが、自己責任の原則をその一内容とする私的自治の原則に適うところというべく、締結準備交渉関係成立前からの見込み判断の誤り等の是正を、特別関係たる締結準備交渉関係上の相手方に対し、右関係上の注意義務として要求できるのは、一般不法行為を支配する信義則の理念とは異なつた、右関係を支配する信義則の理念に照らして放置し得ないような特別の場合に限るというべきである。すなわち、たとえば、見込み判断の誤り等が重大な事実誤認に基づくようなものであつて、しかも本人がそれにつき善意で交渉を継続しているのを知りながら、相手方がこれを放置して自己の志向する契約の締結に臨もうとする場合のように、締結準備交渉関係に入つた者として相互に持つ信頼を著しく裏切るものとしてそれの是正義務を課するのが右関係を支配する信義則の要請に合致する場合に限るというべきである。これを本件についてみるに、原告が本件覚書交付後も対トーメン借入元利金の支払に日を追つて窮し、本件土地を、転売又は本件計画の早期実現の方法により処分することを急いでいたことは、前認定のとおりであるが、他方、前記原告側の当初の見込み判断、期待、右本件計画の実現の急ぎ方は、いずれも、その具体的内容を認めるに足る証拠がなく、極めて抽象的なものであつたというほかなく、加えて、前記背景事情(一2(一)(2)、同(3))と、原告側の態度推移(一4(四)中段)とに照らせば、右原告が急いでいたこと及びこれを森本が当初から知つていたとしても、この両者から直ちに、前記原告側の見込み判断の誤り等が、具体的な事実誤認に基づく重大なものとは、到底いうことができない。のみならず、前記(一4)交渉経過と原告側態度推移とによれば、原告側は、本件計画推進過程で次第に判明して来た前記見込み判断の誤り等を、遅くとも昭和五〇年八月六日後は察知しつつ、他に適切な本件土地の処分方法も見付からぬまま、本件計画の実現に期待をかけて、森本に付き合つて来たと推認するに難くない。したがつて、いずれにしろ、原告側が本件覚書交付前に抱いていた本件計画の実現の見込み判断の誤り等につき、森本が本件最終決着に至るまでの間に、何らこれを是正する措置をとらなかつたことをもつて、締結準備交渉関係上の注意義務違反ということは、到底できない。
よつて、被告履行補助者たる森本には何ら契約締結上の過失はないというべく、請求原因3(一)は理由がない。したがつて、主位的請求に関するその余の双方の主張につき考えるまでもなく、原告の主位的請求は理由がない。
第二  予備的請求(森本の不法行為による使用者責任)について
一1  請求原因3(二)は、(1)のうち、森本が本件覚書を偽造してこれを高橋に交付したこと及び爾後の本件計画推進作業への関与につき被告最高責任者の承認を得ていないことは当事者間に争いがないが、その余は争いがあるので、以下検討する。
2  森本自身の不法行為について
(一) まず、請求原因3(二)(1)のうち、本件覚書の記載文言に反し、もともと原告側と森本との間に基本事項合意は成立しておらず、原告代理人高橋が本件覚書を要求した趣旨目的は、本件計画推進作業をなすにつき原告代表者の了解をとる説明等のために、本件覚書条項①ないし④を内容とする計画案につき原被告が現に商談中であり、双方が今後その具体化に向けて協力していく旨の確認文書が欲しいということであり、森本が本件覚書を高橋に交付したのも、本件覚書の意味も右同様の趣旨であり、したがつて、本件覚書は、その交付により原告に対し本件計画の実現につき何らかの見込みを与える性質のものではなく、原告側も右受領により本件計画実現の見込みを誤信したものではないこと、本件覚書条項①ないし④を内容とする本件事業計画は、被告にとつては新会社を設立するに等しい大規模なものであつたこと、本件覚書交付後最終決着までの間の本件計画推進作業のなかで森本が井槌等上司の承認を得ないでなした一連の行為(以下「本件独断専行」という。)の意図と判断は、被告開発部の新規事業起案者として、主に原告側に、倉庫建設に関する諸申請手続、作図、調査等の諸作業や、被告最高責任者及び松下本社の稟議用必要書類のまとめをさせ、本件営業許可後に双方協力して荷主を七〇パーセント以上集約し、契約条件の残部の詰めをなしたうえ、自己の手許で本件計画を完全な事業計画案としてまとめた後に、これをもとにして初めて自己の上司に報告し決裁を仰げば足りるとの考えであつたこと、本件独断専行のなかで、森本が経過表(原告)記載の虚言を弄する等の欺罔行為をなしたことは認められないこと、は前示(第一の一2(三)(2)及び(4)、同2(四)(3)及び(4)、同3(一)(4)、同3(二)、同4(二)、同4(三)(3)、同4末段)のとおりである。
(二) つぎに、前記(第一の一2(四))被告の背景事情、前(一)項に加え、〈証拠〉によれば、次の事実が認められる。
(1) 被告会社において本件計画のような規模の計画を進める場合には、森本にはその権限がなく、開発部長である井槌が、当初から、決裁権者である宅間に事前に報告相談したうえで、その指示のもとに自分自身で交渉にあたるのが、本来のあるべき事務処理の規準的方法であつた。
(2) 然るに、森本は、本件覚書を偽造してこれを高橋に交付し、その後最終決着に至るまでの間も前(1)項の事務処理規準に従わず、決裁権者である上司の決裁をとることは終始なく、また右未決裁の事実を告知することもなくして、無権限で本件独断専行を敢行し、しかも、昭和五〇年一〇月ころからは原告側より原被告最高幹部間の会談を求められながら、なおも上司の決裁を得ることをしないままで、むしろ、早期に起案者の頭越しに交渉がなされたのでは森本の属する開発部のメンツにもかかわり、かえつて本件計画推進にとつて不利益となりかねないから同人を信頼して同人を窓口とする従前の交渉を継続することを求めて、右会談を渋つた。
(3) これに対し、原告側は、本件覚書の成立の真正を誤信し、さらに、本件覚書が一応被告作成名義の文書であること、その前記意味ないし趣旨、業務部(のち開発部)次長という森本の肩書等から、少なくとも同覚書交付後は、森本の本件独断専行を、被告会社の交渉窓口として決裁権限ある上司の承認決裁を得た同会社開発部担当起案者としての組織行為であるものと、信じて全く疑うことなく、前(2)項の幹部会談を求めたのも、森本を窓口とする交渉の進捗の悪さに耐えかねてその早急な促進をはかるためであつたところ、最終決着において初めて、本件覚書条項①ないし④を内容とする本件計画は被告としては元来推進し得るものではなく、森本の本件独断専行は当初から承認決裁の余地のないものであつたことが判明し、よつて、原告は、それまでの間の本件計画推進作業が全くの徒労であつたこととなり、右作業に取り組んでいる間の営業を妨害され、その間の時間と費用の無駄を強いられ、ひいては、本件土地の他の処分方法に取り組む自由な営業活動を妨害される結末となつた。
(4) 一方、原告において、森本から交付された本件覚書が偽造文書であり、右交付後の本件独断専行による交渉行為が、被告決裁権者の承認決裁を経ていない、交渉権限のない単なる窓口社員としての森本どまりの行為にすぎないことが判明しておれば、判明した時点以後なおも森本を通じて本件計画をその上司へ売り込んだり、このための本件計面の推進交渉、特に森本の指示、助言を求めての各般の行動の継続をなすはずもなく、このことは、森本にも当初から容易に予測し得る事柄であつた。
(5) 原告側が、本件覚書交付時及びそれ以後最終決着までの間に、森本を通さずに、井槌又はその上司に対し、直接本件覚書条項①ないし④からなる本件計画を売り込んだり、森本が、右の間に、右井槌らに対し右本件計画の推進交渉に応ずることの決裁を求めたとしても、被告決裁権者は、前認定(第一の一4(二)7)の最終決着時に述べたと同じ理由により、右売り込みを辞退し、森本に対し決裁を与えなかつたであろうことは、右期間中いつでも容易に推測しうる事柄であり、このことは、森本にとつても右期間中容易に予測し得た事柄であつた。
以上のとおり認めることができ〈る。〉
(三) そこで、前記(一)、(二)の事実関係に基づき森本の行為の違法性の有無及びその程度につき考える。
(1)  森本は、高橋から本件覚書を要求されるに際し、前認定(第一の一3(一)(3)、同(4))のとおりその必要な理由の説明を受けており、同人が交付した右覚書が右要求どおりの作成名義と趣旨内容のものであつたのであるから、特段の事情の認められない本件において、交付を受けた原告側が本件覚書を同作成名義と趣旨内容どおりのものと認識するのは当然のことである。したがつて、森本が本件覚書を偽造したこと及びこれを原告代理人高橋に交付し、よつて本件覚書の真正と被告が本件計画商談に会社として乗つて来た旨誤信せしめたことは、故意による違法な欺罔行為というべきこと明らかである。
(2)  次いで、森本が前記趣旨内容の本件覚書を交付したこと及びその後の右交付を前提とした本件最終決着に至るまでの、決裁を得ず、その旨も告知せずに継続した独断専行についてみるに、右独断専行の内容をなす各商談交渉行為は、右交付を除き、そのなかで虚言等の違法行為が認められないことは前記((一)末尾)のとおりであるから、それ自体は通常の許された私法上の取引行為として違法視すべきものではないが、他方、本件計画が新規に倉庫を建設して倉庫業をなす大規模なものであることに照らし、その計画具体化の準備推進作業には、原被告双方とも、その実現の成否にかかわらず、多額の費用と時間的拘束とを要するものであること、また、それが交渉相手の錯誤による不本意な作業ならば、そのために費用と時間の浪費を強いられる結果となり、相当程度の自由な営業活動の妨害となることも、経験則上明らかであり、しかも、前記趣旨内容の本件覚書を交付し、これを前提として、前記被告会社内の肩書を持つ森本が本件独断専行を構成する各種の指示、要求等を継続すれば、原告側が前記((二)(3)中段)の組織行為に関する錯誤を持続するであろうことは、容易に推測し得る事柄であること、及び前記(二)(4)、同(5)の事業関係並びに通常商取引における信義則を総合すれば、森本は、少なくとも、自ら偽造にかかる本件覚書の交付をなし、かつ、同覚書の交付を前提として、既に売り込まれていた本件計画商談に応答して、自ら本件独断専行を継続するについては、被告内部のみならず、取引交渉の相手方である原告との間においても、前記信義則に基づき、予め、前記(二)(1)の規準に従つて上司の決裁をとり、途中においても常に、同決裁をとつてかかるべき、及び決裁未了の間はその旨を告知しておくべき作業義務を継続して負うものというべきである。したがつて、森本が前記趣旨内容の本件覚書を交付し、続いて、同覚書を前提として最終決着に至るまで本件独断専行を継続するについて、改めて決裁権限ある上司の承認決裁をとらず、その後も結局とらず、さらに右決裁未了の事実を告知せずじまいに終わり、よつて、この間原告に継続して前記(二)(3)中段の森本の組織行為についての錯誤を生ぜしめて、これを持続せしめた継続的不作為は、前記作為義務違反による違法な組織行為の仮装行為(以下「本件仮装行為」という)というべきである。
(3) さらに、前記原告の本件覚書交付要求の趣旨、目的、森本の独断専行に及んだ前認定(第一の一4(三)(3))の背景の意図、動機、前記(二)(2)後段の森本の態度、前同(4)(5)、被告及びシンワ運輸におけるる森本の地位、業務内容及び経歴並びに一般経験則を総合すれば、森本は、本件仮装行為をなすことにより、原告に対し、同人の組織行為に関する誤信及びこれによる相当程度の営業妨害を与えるかもしれないと知りつつあえて右行為をなし、ないしは右両結果を与うべきことを容易に予見しえたにもかかわらず予見をしなかつたものと推認でき、さらに、以上の判示と信義則とに照らせば、当然右予見すべき注意義務を負つていたものというべきである。したがつて、森本には未必の故意又は少なくとも過失があつたというべきである。
そうだとすると、森本の本件覚書偽造と本件仮装行為は、一体として原告に後記4認定の財産上の損害を与えたものであるから、故意過失による不法行為(以下「森本の本件不法行為」という。)を構成するというべきである。
(四) 以上の次第で、原告主張の本件計画実現の見込みの誤信の点は、前示のとおり右見込みを欺罔したことが認められないのであるが、この見込みの誤信にかかわりなく有印文書の偽造、偽造文書である本件覚書の交付及び本件仮装行為は不法行為を構成するというべく、予備的請求原因3(二)(1)(2)は、この限度で理由があり、原告のその余の主張は認められない。
3  つぎに、前記(第一の一2(三)、同(四))のとおり、森本はシンワ運輸の在籍出向社員として、被告との間で雇傭契約こそ結んでいなかつたが、前記森本の本件不法行為当時、被告より被告開発部次長の肩書を与えられ、被告不況対策委員の一人にも任ぜられ、右肩書を明示した名刺の使用も許されて、被告の同部長井槌の直属の部下として、その指揮監督を受けて、同開発部の現業及び営業活動に従事して来たものであり、次いで、前記の被告の本件営業許可申請、不況対策委員会設置による企業活動拡大対策下における被告の業務内容の外形に照らせば、本件計画の推進商談をなすこと、その経過の中で右商談中である等の確認文書である本件覚書を作成交付することは、右被告の外形的業務内容に関連するものというべきである。
そうだとすると、森本の本件不法行為は、被告の被用者である同人が被告の事業の執行に付きなしたものというべきである。よつて、請求原因3(二)(3)、(4)は理由がある。
4  損害(請求原因4)について
(一) 基本設計料等報酬損
〈証拠〉によれば、原告は、第一設計との間で、請求原因4(一)のとおり、本件計画の当初から最終決着までの間に第一設計が原告のためになしたすべての作業に対する報酬の支払を約していたところ、昭和五一年三月二〇日、第一設計より右報酬金として金二四〇〇万円の支払を受けて右同額の支払義務を負うに至つたことが認められ、右に反し、右約束は成功報酬約束であつて、本件では本件計画が不成功に終わつたから右支払義務を負わないかのような趣旨を窺わせる前掲乙三号証記載並びに証人森本及び同手倉森将夫の各証言部分は、右赤石及び高橋の各証言に照らして採用できず、他に右認定を履すに足る証拠はない。
そして、被告は右報酬額算出が予定請負金額を基礎としている点を非難するところ、なるほど前掲甲二七号証によれば被告主張の報償加算実費式による算出方法もあることが認められ、前記約定は、本件計画推進作業に対する報酬約定の定め方として必ずしも適切とはいえない面もなくはないが、現実には前記認定の約定しか存しないから、右約定による報酬額に従つた義務負担損と、本件不法行為との相当因果関係及びその限度を考えるほかなく、被告の主張は採用できない。そして、前記森本の本件不法行為の継続的態様に照らせば、右報酬義務負担損が、右不法行為と相当因果関係にある損害であると認めるべきである。次いで、同不法行為と相当因果関係にあるべき損害額を算定するに、甲二六号証記載の算定方式と内訳のなかから、森本の本件覚書交付後の独断専行を基礎とし、第一設計が赤石らにより原告のためになした前記(第一の一4(二))認定の各種調査、図面訂正及び書類作成の費用並びに約一〇箇月の所要期間の拘束をも考慮に入れた各種営業経費を勘案して、裁量により算定するほかない。ところで、甲二六号証内訳中実作業費の大半は、本件覚書交付前になされているものとみるべく、結局、本件覚書交付後の第一設計の報酬請求基礎項目となるべきものは、実作業費としてはむしろわずかであつて、これは簡単な労力で可能な調査、書類作成作業であり、主なものは本件計画交渉のために長期間にわたり森本らとの折衝等で時間をとられたことによる営業経費とみられる点から勘案すれば、結局一〇〇〇万円と算定するのが相当と考える。
(二) 公租公課損
原告主張のように公租公課の負担が、森本の本件不法行為と相当因果関係にある損害といえるためには、もし右不法行為がなかつたならば、本件覚書交付の翌日である昭和五〇年四月二四日から最終決着の日である翌五一年二月二七日までの間に、何時でも原告が本件土地の転売をなし得て、よつて、右負担を免れ得たことが必要であるところ、この点については、前認定(第一の一2(一)(2)、同4(二)(7))の背景事情等のとおり、当時の不動産市場は不況を極め、他方本件土地の買受け原価は高騰する一方で、本件計画における試算でも既に一五億円に達し、本件最終決着後松下グループにおいても買い取る気にならなかつたものであり、転売し易い分割売却も、同五〇年秋には既に債権者トーメンが売れ残りを懸念して同意してくれない状況にあつたこと、さらに、前掲乙第三号証、前掲証人森本の証言及び前判示(前同2(四)(3))によれば、原告は、本件覚書受領後も本件計画のみに没頭して本件土地の売却案に全く無関心であつたわけではなく、同五〇年六月ころには本件土地売却話がなかつたわけでもないことが認められ、また、前認定(前同2(一)(2))のとおり、原告は、最終決着後も、本件土地をトーメンにより大幅の買受け原価割れ価格で代物弁済としてとられるまでは、採算に合う価格、たとえ当時の買受け原価最低額一五億円を割るにしても、その差額の可及的に少額ですむ買主を求めていたものであること等の事情が存し、加えて、仮に本件計画がなかつたとしても、本件覚書交付後最終決着日までの間に、原告が応じうる本件土地全部又は分割売却の方法による買主が現われ、本件土地の売却をなし得たであろう事情については、〈証拠〉によれば、昭和五〇年三月ないし五月に総面積一〇〇〇坪ほどの土地分割売却例が認められるが、これから直ちに、前記本件土地の売却が可能であつた事情を推認することは到底できず、他に、全証拠によるも右事情を認めるに足りないのである。したがつて、その余の双方の主張につき考えるまでもなく、本件損害は認められない。
(三) 遅延利息負担損
これはもともと、原告が本件土地代金支払のための借入金等元金債務をトーメンに対して負担している事実に基づき生ずる負担であつて、本件不法行為とは何ら関係のない負担というべく、原告が本件土地の売却による以外に右元金債務を弁済する能力がないほどに資力がなかつたとすれば、本件不法行為による特別損害となりえないでもないが、その場合においても、前(二)項同様に本件覚書交付後最終決着までの間に原告が、仮に本件計画がなければ本件土地を処分することができ、その代金によつて右対トーメン元金債務を弁済し得た事情がなければならないというべきところ、右事情が認められないことは前(二)項判示のとおりであるから、いずれにしても本件損害は認められない。
(四) そうだとすると、本件不法行為と相当因果関係にある損害とその額は、結局(一)の金一〇〇〇万円につきるというべく、請求原因二4は、右限度で理由があり、その余は理由がない。
二  過失相殺について
前記(一2(二)、(三))のとおり、本件は、原告代理人の高橋が、本件覚書の真正及び森本の正式の組織行為性を誤信して長期間本件計画推進作業のために徒労をせしめられ営業妨害を受けたものである。ところで、他方、前記(第一の一2(三)(4)、同3(一)(4)、同3(二)、同4(三)(2))認定事実関係によれば、もともと本件覚書の体裁や形式は、わざわざ代表者名とその捺印欄を削除したものであり、被告作成名義文書としては不完全で、不確かな感じを禁じえないものであつたのであり、原告は、昭和五〇年一〇月七日に上司との会談を申し出るまでの間被告の窓口であつた森本を通ずるのみで、その上司に挨拶すらなさずに、本件計画のような大規模な事業計画の推進作業を行なつて来たものであり、もし、早期に、被告幹部に一言なりとも挨拶をなせば、森本の独断専行性が、直ちに判明したことは明らかであるにもかかわらず、前同申出まで、森本のみに頼り、右会談申出後も、前記(一2(二)(2))のように開発部のメンツを理由に渋られて果たさずじまいであり、原告側で森本に不信感を抱いたという同年一二月一日ころ以降も右同様であり、さらに、被告会社における森本の地位、権限についても、右不信感を抱いた時期の前後を問わず、何らの調査、照会をもなした形跡がないのである。そして、全証拠によるも、原告が早期に森本の上司に挨拶等の接触を持つたり、森本の地位、権限を調査したりすることにつき、支障となるべき事情は何ら認められない。以上のところよりすれば、原告の右態度は、前認定のとおり、本件計画が被告会社の資本、営業規模にとつて相当大規模なものであり、そのために被告としても最終的に約一五億円程度の設備投資を要するものであることを森本から聞いて熟知していた点と通常の商取引上の経験則とに照らせば、相当の不注意というほかない。右原告の不注意による過失は、前記認定の原告の受けた損害の発生、程度に相当程度寄与しているというべきである。
よつて、本件賠償額の算定にあたつては、右原告の過失を考慮して原告の損害に四割の過失相殺をするのが相当である。
三  以上のとおりであるから、被告が民法七一五条により原告に賠償すべき金額は、前記(一4(一))の金一〇〇〇万円に四割の過失相殺をなした金六〇〇万円及びこれに対する森本の本件不法行為終了後である昭和五一年一一月五日以降支払ずみまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金というべきである。
よつて、原告の予備的請求は前項の限度で理由があり、その余は理由がない。
第三  結論〈省略〉
(杉本昭一 森真二 石田裕一)

経過表〈省略〉
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