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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(374)平成15年 7月25日 広島高裁 平13(ネ)338号 新株発行無効確認等請求、同附帯控訴事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(374)平成15年 7月25日 広島高裁 平13(ネ)338号 新株発行無効確認等請求、同附帯控訴事件

裁判年月日  平成15年 7月25日  裁判所名  広島高裁  裁判区分  判決
事件番号  平13(ネ)338号
事件名  新株発行無効確認等請求、同附帯控訴事件
裁判結果  原判決一部変更  文献番号  2003WLJPCA07259001

要旨
◆被控訴人らは、株主総会や取締役会の議事録等を偽造し、控訴人らが各役職から退任した旨登記手続を行い、また、正規の手続を経ないまま、新株を発行する等したため、控訴人は権利回復のため各種法的措置を採ることを余儀なくされたなどとして、控訴人が、被控訴人らに対し、損害賠償を求めた事案の控訴審において、適正な手続を経ずして新株発行を行った目的は、会社の経営権を確保することにあり、これを放置すれば、控訴人らの権利が侵害される結果となることは明白であるところ、控訴人らとしては、もはや個人的な協議という方法では本件を円満に解決することは困難な事態に立ち入っていたとみるのが相当であるから、訴訟のため支出を余儀なくされた弁護士費用のうち、相当と認められる範囲内のものは、不法行為と相当因果関係に立つ損害であるなどとして、原判決よりも高額の損害額を認定して、原判決を一部変更した事例

裁判経過
第一審 広島地裁 判決 平10(ワ)1093号

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
商法266条の3
商法278条
商法709条
商法719条1項

裁判年月日  平成15年 7月25日  裁判所名  広島高裁  裁判区分  判決
事件番号  平13(ネ)338号
事件名  新株発行無効確認等請求、同附帯控訴事件
裁判結果  原判決一部変更  文献番号  2003WLJPCA07259001

主文

1  控訴人Aの本件控訴をいずれも棄却する。
2  控訴人Bの本件控訴に基づき,原判決中同控訴人と被控訴人らに関する部分を次のとおり変更する。
「(1) 被控訴人Cは,控訴人Bに対し,その余の被控訴人らと連帯して,金90万円及びこれに対する平成10年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人Cを除く被控訴人らは,控訴人Bに対し,連帯して,金150万円(ただし,金90万円の限度で被控訴人Cと連帯して)及びこれに対する平成10年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 控訴人Bのその余の本件請求(当審において拡張された部分を含む。)をいずれも棄却する。」
3  被控訴人らの本件附帯控訴に基づき,原判決中被控訴人らと控訴人Aに関する部分の被控訴人ら敗訴部分をいずれも取り消す。
4  控訴人Aの本件請求をいずれも棄却する。
5  被控訴人らの控訴人Bに対する本件附帯控訴をいずれも棄却する。
6  訴訟費用は,控訴人Bと被控訴人らの間で生じた部分については,第1,2審を通じ,これを10分し,その2を被控訴人らの,その余を同控訴人の負担とし,控訴人Aと被控訴人らの間で生じた部分については,第1,2審を通じ,同控訴人の負担とする。
7  この判決は,第2項(1)及び(2)に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判
(控訴)
1  控訴人ら
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 被控訴人らは,各自,控訴人Bに対し,1626万1550円及びこれに対する平成10年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(当審において,控訴人Bは,最終的には,被控訴人Cに対するものを含めて請求元本を1626万1550円に増額して請求の拡張をした。)。
(3) 被控訴人らは,各自,控訴人Aに対し,500万円及びこれに対する平成10年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(当審において,控訴人Aは,最終的には,被控訴人ら4名に対する請求元本を1000万円から500万円に減額〔ただし,被控訴人Cに対しては当初より500万円〕して,請求の減縮をした。)。
2  被控訴人ら
本件控訴をいずれも棄却する。
(附帯控訴)
1  被控訴人ら
(1) 原判決のうち被控訴人ら敗訴部分を取り消す。
(2) 控訴人らの本件各請求(控訴人Bが当審で拡張した請求を含む。)をいずれも棄却する。
2  控訴人ら
本件附帯控訴をいずれも棄却する。
第2  事案の概要
1  本件は,株式会社D(以下「D」という。)の株主で代表取締役である控訴人B及びE株式会社(以下「E」といい,Dと併せて「本件各会社」ともいう。)の株主で取締役である控訴人A(以下控訴人Bと併せて「控訴人ら」という。)が,被控訴人らは,共謀の上,株主総会や取締役会の議事録等を偽造し,控訴人らが各役職から退任した旨登記手続を行い,また,発行済株式数の過半数を確保する目的で,正規の手続を経ないまま,D(700株)及びE(120株)の新株を発行する等したため,控訴人Bにおいて,権利回復のため各種法的措置を採ることを余儀なくされたとして,また,被控訴人らは,控訴人らの社会的信用を害し,名誉を侵害する数々の行為をしたとして,被控訴人らに対し,商法266条の3,278条,民法709条,719条に基づき,損害賠償(控訴人Bにつき1626万1550円,控訴人Aにつき500万円及びこれらに対する平成10年8月21日から支払済みまで民法所定の法定利率年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案である。
なお,控訴人Bは,原審においては,損害について,全額を慰謝料として請求していたが,当審において,前記主張に係る損害額1626万1550円のうち1126万1550円については前記権利回復のための法的措置に要した弁護士費用等相当損害額として,その余の500万円は慰謝料として,それぞれ請求する旨損害に関する主張を訂正している(控訴人Aは,原審におけると同様,損害については全額を慰謝料として主張している。なお,控訴人らが当審において,被控訴人らとの間で請求の拡張若しくは請求の減縮をしていること〔ただし,控訴人Aと被控訴人Cとの間を除く。〕は,前記のとおりである。)。
2  その余の事案の概要は,次のとおり補正するほかは,原判決「第2 事案の概要」に記載のとおりであるので,これを引用する(ただし,同3頁1行目の「F」を「訴外F」に,同頁8行目の「訴外F」を「F」に,それぞれ改める。
(1)  同3頁下から4行目の「上旬」を「下旬」と改める。
(2)  同4頁10行目の次に改行して次のとおり加える。
「(10)控訴人らは,原審においては,本件訴訟(原審平成10年(ワ)第1093号事件)について,本件損害賠償請求のほか,D及びEをも相手方として,本件各会社における①各決議等の不存在確認の訴え及び②前記各新株発行の不存在確認の訴えをも併せて求めていたところ,①については,平成12年4月4日,本件各会社が認諾したことにより終了し,また,②については,平成12年6月1日,請求原因が争いのない事実となったことなどから,本件各会社の新株発行の不存在を確認する旨の判決が言い渡され,各会社からの控訴もなく,同判決は,同月20日に確定した。」
(3)  同6頁6行目から同9行目までを次のとおり改める。
「ア 控訴人Bは,被控訴人らの前記(1)の行為により侵害された違法状態を是正し,権利を回復するため,弁護士に依頼し,刑事告訴や本件裁判をはじめ,各種の法的措置を採らざるを得ず,また,被控訴人らの提起した裁判に応訴するため,やはり弁護士に依頼せざるを得ず,その費用等を出捐したが,その合計額は1126万1550円となる。控訴人Bは,被控訴人ら各自に対し,この全額を請求する。
また,控訴人Bは,被控訴人らの行為により,信用及び名誉を侵害されたが,その慰謝料としては500万円(ただし,うち250万円は商法上のもの,残250万円は民法上のもの)が相当であるところ,被控訴人ら各自に対し,この全額を請求する。
イ 控訴人Aは,被控訴人らの前記(1)の行為により,信用及び名誉を侵害されたが,その慰謝料としては500万円(ただし,うち250万円は商法上のもの,残250万円は民法上のもの)が相当であるので,被控訴人ら各自に対し,同額を請求する。」
3  原審は,被控訴人らの新株発行手続には,商法で定められた正規の手続を経ていない等の違法があり,被控訴人らには取締役ないし監査役としての損害賠償責任が認められ,また,被控訴人Gの言動には,一部控訴人らの名誉を侵害するものがあったと認定し,その全体につき他の被控訴人らにも共同不法行為責任が認められるとして,控訴人らの請求を一部認容し,被控訴人らに対し,控訴人らそれぞれに各50万円(計100万円)の慰謝料を支払うよう命じた。これを不服として控訴人らから申し立てられたのが,本件控訴事件である。なお,被控訴人らは,これに対して前記のとおり,本件附帯控訴を申し立てた。
4  当審における争点は,原審と同様に,(1)不法行為の成否及び(2)損害額であるが,(2)のうち,控訴人Bについては,同控訴人が,被控訴人らのした新株発行等の行為に対し,権利回復のために各法的手続を採るのに要した手数料相当額(代理人である弁護士に支払った報酬等)が,同控訴人の被った物的損害といえるか否か,が当審において新たに争われている。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)「不法行為の成否」について
(1)  前提事実(いわゆる商法上の不法行為に関する事実)
前記争いのない事実等に,証拠(甲1ないし5,6の1ないし4,甲7,8,29ないし34,36,54,55,77,90,104,122,123,126,乙1ないし3,9ないし12,原審証人H,同I,控訴人B〔原審及び当審〕及び原審控訴人A各本人,同被控訴人G及び同C各本人)並びに弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められる。
ア 被控訴人Gは,昭和23年3月にK研究所を設立し,その代表者となった。昭和53年4月1日,J(被控訴人Gの夫であり,控訴人Bの父)が前記研究所を前身としてDを設立したが,実質的には,被控訴人GがD及び昭和61年12月17日に設立されたEの創業者であった。
イ 控訴人Aは,昭和54年に控訴人Bと婚姻し,昭和55年にDに入社し,同年1月に取締役となり,D付設の高等専門学校の副校長として,生徒の指導,呉服店への対応等に携わっていた。
昭和56年6月,控訴人Bは,広島市役所を退職してDの取締役に就任し,父Jが昭和57年11月に死亡したのに伴い,同人の保有するDの株式を相続した上,代表取締役に就任した。
なお,被控訴人L及びFはいずれも控訴人Bの実姉であり,被控訴人M及び同Nはいずれも被控訴人Gの実弟であり,被控訴人Cは被控訴人Mの子である。
ウ 昭和61年12月17日,Eが設立され,そのころ控訴人Bがその代表取締役に就任した。
平成元年1月,控訴人Bは,Dを全額出資者とするO有限公司を中国に設立した。
平成6年10月26日に被控訴人LがDの,平成7年9月30日にはFがEの各監査役にそれぞれ重任された。
エ 控訴人Bと同Aは,平成8年10月26日にDの,平成9年9月30日にはEの,各代表取締役(同B)及び同取締役(同A)にそれぞれ選任された(任期はいずれの会社についても各2年)。
オ Dは,平成9年11月28日の定時株主総会において,被控訴人Lを任期満了を理由に退任させ,被控訴人Nを監査役に,被控訴人Lを取締役に選任する旨の株主総会決議をし,その旨の登記を経由した。ただし,前記株主総会の開催通知は控訴人らに対してされなかった。
カ 控訴人らは,平成9年秋ころから,本件各会社の各代表取締役や取締役をそれぞれ辞任したい趣旨を漏らし始め,同時に同年9月ころ以降の本件各会社からの各取締役(代表取締役)報酬を受領しなくなった。
そして,控訴人らは,平成9年12月16日付けの「確認書」(乙3。以下「本件確認書」という。)と題する書面を作成したが,その要旨は,控訴人B家族が自宅を出て被控訴人Gと別居するに当たり,次のとおり確認する,と前置きした上,「控訴人らは,所有するD及びEの株式のすべての権利行使を被控訴人Gに委任し,同被控訴人が前記各株式を売却する場合には控訴人らはこれに同意する。」ことが記載されていたほか,被控訴人Gとの間の金員の授受の点をはじめとして前記別居に際しての同被控訴人に対する細々とした要望事項等をも内容とするものであった。控訴人らは,本件確認書を平成10年4月下旬ころ,被控訴人Gに提出した。
また,控訴人らは,平成10年3月31日付けの「辞任届および通知書」(乙1,2。本件辞任届)と題する書面を作成したが,その要旨は,「(ア)控訴人Bは,本件各会社の各代表取締役社長をいずれも辞任し,控訴人Aは,Dの取締役副校長及びEの取締役をいずれも辞任すること,(イ)控訴人らは,Dの株式73パーセントを,Eの株式62パーセントをそれぞれ所有する株主として,被控訴人Gを本件各会社の各代表取締役社長に選任することを要求するとともに,同各会社の代表取締役社長は同各会社を早急に清算することを最重要の仕事にすることを要求すること,(ウ)控訴人らは,前記要求事項を履行するため各会社の株主総会を開催する必要がある場合には,緊急に同総会を開催することを要求すること」などというものであった。控訴人らは,本件辞任届を平成10年4月下旬ころ,被控訴人Gに提出した。
キ 平成10年3月31日付けで作成されたDの取締役会議事録には,同日,同会社の全取締役6名が出席し,議長として退任代表取締役控訴人Bが議事を進めた結果,新代表取締役に被控訴人Gが選任され同被控訴人はこれを承諾したこと,控訴人Aは同会社の取締役を退任したことなどの記載がある。そして,被控訴人Gは,同議事録並びに控訴人B作成名義に係る同月16日付けの同会社の取締役(代表取締役兼務)を辞任したい旨の辞任届及び控訴人A作成名義に係る前同日付けの同会社の取締役を辞任したい旨の辞任届を添えて,同年4月24日,Pを代理人として,登記申請手続をした結果,申請どおりの登記が経由された。
また,Eについて,臨時株主総会で,監査役Fが同年3月31日に辞任したことを理由に,被控訴人Nを監査役に,控訴人らが同日辞任したことを理由に,Fを取締役に選任する旨の総会決議がされたとして,その旨の登記が経由された。
しかし,前記各取締役会及び株主総会はいずれも実際には開催されていない。
ク Dは,平成10年5月1日,代表取締役として被控訴人Gが開催し,取締役F,同L,同Mが出席した取締役会で全員一致の決議がされたとして,同月19日,700株の新株を発行する旨の手続をした。しかし,同新株発行手続においては,株主以外の者に発行する株式につき,株主総会の特別決議はされず,同月1日の取締役会も開催されなかった。
また,Eにおいても,同日(平成10年5月1日),代表取締役として被控訴人Gが開催し,取締役であるF,被控訴人L,同M及び同Cが出席した取締役会で全員一致の決議がされたとして,同月19日,120株の新株を発行する旨の手続をした。しかし,同取締役会は開催されていない。
ケ 控訴人らは,平成10年7月27日,本件訴状をもって,被控訴人ら5名に対して前記のとおりの損害賠償を求めた(前記「第2 事案の概要の1」記載のとおり)ほかに,本件各会社をも相手方として,(ア)同各会社における前記各決議等はいずれも存在しないのに控訴人らに無断で(代表)取締役辞任届等を偽造し取締役会議事録を作成するなどしたことなどを請求原因として,同各決議等が不存在であることの確認(ただし,当初は無効確認であったが,平成11年3月23日の第4回口頭弁論期日で,不存在確認が主位的請求として追加的に変更された。)を求めるとともに,(イ)新株発行に必要な株主総会の特別決議等が何もないのに前同各会社の経営権を控訴人らから奪う目的で,権限のない者が株主総会や取締役会の議事録を偽造して新株発行の登記を経由したものであるから不存在であり,そうでなくとも無効であることなどを請求原因として,新株発行の不存在確認(同前)をも求めた。
コ 控訴人らは,平成11年6月1日,本件各会社並びに被控訴人G及び被控訴人Lを相手取り,同各会社における取締役等の選任決議及び登記並びに選任決議の不存在等を保全の理由とし,前記新株発行手続やその旨の登記が経由されていることなどを保全の必要性として,本案(本件訴訟がこれに当たる。)判決確定に至るまで,被控訴人GはDの取締役兼代表取締役の職務を,被控訴人Lは取締役の職務をそれぞれ執行してはならないことなどを求めた上,職務執行停止期間中に職務代行者の選任を求める旨の仮処分命令の申立てを,広島地方裁判所に対してした(ただし,申立ての趣旨が前記のように訂正されたのは,同月4日である。甲56)。
これに対して同裁判所は,同年7月9日,前記申立てを相当と認め,控訴人らに,D,被控訴人G及び同Lのため150万円,E,被控訴人G及び同Lのため150万円の担保を立てさせて,前記申立てどおりの仮処分決定をし,併せて,Dの取締役の職務執行停止期間中の職務代行者として弁護士Qを,Eの取締役の職務執行停止期間中の職務代行者として弁護士Sをそれぞれ選任した(甲57)。
サ 控訴人らは,平成11年9月22日,E及び被控訴人Nを相手取り,同会社における前記取締役選任決議等が不存在であること,同会社が発行したとして登記されている新株は商法所定の株主総会における特別決議等を経ていない違法なものであること,被控訴人Gは同会社の実権を把握するため発行済株式の過半数を取得するべく,従来の株主に新株引受権を与えない方法である第三者割当ての方法により,しかも株式引受人のみを変更するためそれまで同会社の株式を有していなかった被控訴人Nに新株120株を引き受けさせたものであることなどを主張して,被控訴人Nは同年9月29日午後2時開催のEの株主総会で前記新株120株について議決権の行使をしてはならない,同会社は同総会で同被控訴人の同議決権の行使を許してはならないことを申立て内容とする議決権行使禁止の仮処分命令の申立てを,広島地方裁判所に対してした。
これに対して同裁判所は,同月28日,控訴人らに200万円の担保を立てさせた上,申立てどおりの仮処分決定をした(甲73)。
また,控訴人らは,平成11年11月17日,D及び被控訴人Nを相手取り,同会社における前記代表取締役選任決議等が不存在であること,同会社が平成10年5月19日にしたとされている700株の新株発行手続には商法所定の手続を経ていないという違法があり,不存在又は無効であることをはじめとして,前記E等に対するのと同様の主張(被控訴人Gは同会社の実権を把握するため発行済株式の過半数を取得するべく,従来の株主に新株引受権を与えない方法である第三者割当ての方法により,しかも株式引受人のみを変更するためそれまで同会社の株式を有していなかった被控訴人Nに新株700株を引き受けさせたものであることなどの主張)をして,被控訴人Nは同年11月25日午前10時30分開催のDの株主総会で前記新株700株について議決権の行使をしてはならない,同会社は同総会で同被控訴人の同議決権の行使を許してはならないことを申立て内容とする議決権行使禁止の仮処分命令の申立てを,広島地方裁判所に対してした(甲82)。
これに対して同裁判所は,同月24日,控訴人らに235万円の担保を立てさせて,申立てどおりの仮処分決定をした(甲86)。
シ Eについては,平成11年9月29日,控訴人Bが代表取締役に,控訴人Aが取締役にそれぞれ就任し,Dについては,同年11月25日,控訴人Bが代表取締役に,控訴人Aが取締役にそれぞれ就任した。
ス 本件訴状によってされた訴えのうち,前記ケの(ア)の請求(各決議等の不存在確認請求)については,平成12年4月4日,本件各会社が認諾したことにより終了した。そして,同月11日,控訴人らは,前記議決権行使禁止仮処分命令申立て事件(2件)について,控訴人らの立てた担保(200万円及び235万円)に対して被控訴人らに一定の期間内に担保権の行使をすべき旨催告された上で権利行使催告による担保取消しの決定を求める旨の申立てをし,翌12日,同仮処分命令申立て事件(2件)をすべて取り下げた。また,前記控訴人らからの担保取消しの申立てを受けた広島地方裁判所は,平成12年4月14日,前記各被控訴人らに対して,損害があったときは10日以内に担保権利者としての権利を行使(訴え提起)してその旨を裁判所に届け出るよう伝えるとともに,前期間内に権利の行使及び届出のないときは,権利を行使しなかったものと認め,担保取消しに同意したものとみなす旨の催告書を送付したところ,担保権利者である前記各被控訴人らからは権利行使も届出もなかったため,同裁判所は同年6月2日,担保取消決定をし,これは同月13日確定した(甲75,78,81,91,94)。
なお,前記ケのうち(イ)の訴え(新株発行不存在確認請求)については,同月1日,請求原因事実が争いのない事実となったことから,控訴人ら請求どおりの内容の判決が言い渡され,同判決は,本件各会社からの控訴もなく,確定した。
(2)  商法上の不法行為の主張について
ア 以上の認定事実によれば,被控訴人Gが,控訴人らの承諾を得ることなく,また,取締役会決議(商法280条の2第1項)はもちろんのこと,新株発行事項の公告又は通知手続(同280条の3の2)や,本件新株発行が第三者割当ての方法によっているにもかかわらず株主総会の特別決議(同280条の5の2)を経ることもなく,増資手続を行った行為は,前記商法の各規定に違反し,違法であって,控訴人らに対する不法行為を構成するといわざるを得ない(なお,前記のとおり,控訴人らは,所有する本件各会社の株式の権利行使を被控訴人Gに委任する旨等を内容とする本件確認書を同被控訴人に提出してはいるが,同確認書には,株式の権利行使に関する事項以外にも多数の事項が記載されている上,それらの事項と同権利行使との関係がどのようなものであるかも定かではなく,少なくとも無条件で前記株式の権利行使を被控訴人Gに委任するという単純なものではないのであって,本件確認書の提出をもって,前記新株発行手続の違法が治癒されるものとは認められないというべきである。)。
この点について,被控訴人らは,本件各会社においては,当初から株主総会,取締役会とも開催されていなかったもので,控訴人B自身が代表取締役であった際に株主総会及び取締役会を開催していないにもかかわらず,本件でその瑕疵を主張することは,禁反言の原則に反するとともに,権利濫用として許されない旨主張する。しかし,少なくとも,株主の権利関係に重大な影響を及ぼすことから,商法に慎重な手続規定が定められている新株発行の場合においては,そのように解することはできない。
イ なお,前記認定事実によれば,被控訴人Gは,平成10年4月ころ,控訴人らから平成10年3月31日付けの本件辞任届の提出を受けたのち,控訴人らの同意を得ることなく,日付を遡らせた上,控訴人ら作成名義の同月16日付けの(代表)取締役辞任届や3月31日付けの取締役会議事録等を作成するなどして,前記のとおりの取締役の変更に係る登記申請手続を行い,その旨の登記を経由したものであり,本件辞任届を除く控訴人ら作成名義の辞任届等の作成は,被控訴人Gにおいて控訴人らの明示の意思に基づいてのものではないのであるから,控訴人ら主張のように同被控訴人の偽造によるものとの疑いは残るところである。
しかしながら,そもそも同被控訴人が前記のような所為に及んだのは,控訴人らから本件各会社の(代表)取締役を辞任したいとの意思を表明した本件辞任届の提出を受けたことにあるのであって,同届上の意思を前提とした同被控訴人の前記所為が直ちに偽造であるとまで断定できるかについては躊躇せざるを得ない。もっとも,控訴人らは,本件辞任届には,前記のとおり,一定の条件ともいうべき前提事項が記載されているところ,被控訴人Gは同事項を踏まえることなく前記の所為に及んでいるから,違法である旨主張する。確かに,本件辞任届には控訴人ら主張に係る前提事項が控訴人ら辞任の条件ともいうべきものとして記載されてはいるが,これをもって控訴人ら辞任の前提条件とまでいえるかは定かでない上,本件辞任届全体の記載内容及びそのころの控訴人らの言動(本件各会社への関与に消極的となっていた状況等)をも併せ考慮すると,被控訴人Gが前記のような所為に及んだとしても無理からぬ面があったとも認められるのであり,したがって,控訴人ら作成名義の各書面等に係る被控訴人Gの所為について,少なくとも損害賠償請求を認めるに足りるだけの違法性を認めるまでには至らないというべきである。また,控訴人ら主張に係る前記各書面等及びこれらとともに作成された取締役会議事録等もまた実態に沿ったものでないことは事実であるが,本件各会社においては,従来,同族性の強いことから,取締役会や総会を開催しないままに形式的には開催されたかのような体裁が採られていたという実態(前掲各証拠並びに弁論の全趣旨により認められる。)をも考慮すると,これらはいわば形式的違法ともいうべき瑕疵であり,これに伴う慰謝料やこの形式的違法を回復するための弁護士費用を求めるに足りるまでの違法性のある不法行為であるとまでは認められないというべきである。
ウ 控訴人らは,前記認定に係る被控訴人らの行為による損害賠償(慰謝料)の請求根拠として,商法266条の3及び278条(取締役及び監査役の第三者に対する責任)を挙げるが,その主張の本旨は,被控訴人らが違法に控訴人らを本件各会社の取締役たる地位から外してその信用を傷つけたこと,及び権利回復のために弁護士費用等の物的損害を被ったというところにあるのであって,要するに被控訴人らの前記各違法行為によって被った損害の賠償を求めるというものであるから,被控訴人らに同条に基づく責任が認められるか否かの点はさておくとして,控訴人らは,一般法である民法709条の不法行為責任に基づく損害賠償(最高裁判所昭和44年11月26日判決・民集23巻11号2150頁参照)をも含めて請求しているものと善解することも許されると解すべきである。
(3)  民法上の請求について
ア この点についての控訴人らの個々の主張に対する当裁判所の判断は,原判決別紙「当裁判所の判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,同別紙1枚目の「1 原告B関係」第2項「当裁判所の判断」欄末行の次に改行して「仮に,控訴人らの名前が記載されたパンフレットが使用されたとしても,そのことをもって控訴人らの名誉が毀損されたとは認められない。」を加え,同3枚目の「2 原告A関係」第1項「原告らの主張」欄末行の「いる。」を削除し,同第2項「当裁判所の判断」欄6行目の「こと」から同欄末行までを次のとおり改める。
「ことが認められる。しかし,このことにより,直ちに控訴人Aが業界内における信用を失ったとまでは認定できない上,被控訴人Gの真意がどうであったにせよ,同被控訴人は,広島県和裁協会の顧問として,適当と思われる検定委員を推薦する権限を有していたのであるから,控訴人Aを推薦しなかったからといって,それが直ちに違法性を帯びるとは断定できないと解される。」
イ 以上の認定によれば,控訴人B関係では,被控訴人Gにおいて,実際に控訴人Bの信用ないし名誉を侵害した行為として認められるのは,平成10年6月中旬ころ,Dの事務所において,得意先である可部寅呉服店株式会社の社員であるT氏に対して,口頭で「(控訴人Bが)精神病院に入院した。」,「ほら,気違いが通りよる。」等の発言をしたとの点のみであり,控訴人A関係では全くないことになる。
2  争点(2)「損害額」について
(1)  弁護士費用相当損害金について
ア 前記認定事実及び証拠(甲56ないし58,69ないし73,82ないし86,105ないし107,109ないし122,124ないし126〔枝番を含む。〕,乙13及び14〔枝番を含む。〕,控訴人B〔当審〕)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 平成10年7月27日に,控訴人Bは,U弁護士に依頼して,被控訴人ら5名並びに本件各会社を相手方として,本訴(本件各会社に対する訴訟は原審において分離され,一部は本件各会社が認諾し,一部は同各会社が全面敗訴の判決言渡しとなった。)を提起するとともに,同年8月25日,被控訴人を有印私文書偽造・同行使(刑法159条,161条)等の罪で,広島地方検察庁に刑事告訴した(甲124の1)。ただし,同告訴に係る被疑事件は不起訴となった(同号証の2)。この費用として,控訴人Bは,同弁護士に対し,同年6月から7月にかけて,着手金70万円,実費5万円,費用9万円の合計84万円を支払った(甲106の1ないし4)。
(イ) 平成10年8月27日,被控訴人Gが代表者であった本件各会社から,控訴人Bに対して提起された営業妨害禁止等仮処分命令申立て事件(甲119の1,2)に応訴するため,同控訴人は,U弁護士に対し,着手金として15万円を支払った(甲105)。
(ウ) 平成10年12月24日,被控訴人Gから控訴人Bに対し,不当利得返還請求訴訟が提起され(甲121の1,2),これに応訴するため,本件の訴訟代理人であるV弁護士に委任した。
(エ) 平成11年1月7日,Dから,控訴人Bに対して提起された妨害排除等仮処分命令申立て事件(甲120の1,2)に応訴するため,同控訴人は,V弁護士に委任し,同月18日,上記(イ)及び(ウ)の事件と合わせて着手金として73万5000円を支払った(甲107の1,2)。
(オ) 平成11年6月1日,控訴人らは,V弁護士及びW弁護士に委任して,本件各会社,被控訴人G及び被控訴人Lに対して代表取締役・取締役職務執行停止決定等仮処分命令申立てを行い(甲56),申立てどおりの決定を得た(甲57。前記のとおり)。その着手金及び費用として,同月3日に,V弁護士に対し108万円を支払うとともに,同弁護士に対し,同年7月7日,前記決定の予納金として360万円を支払った(甲110。なお,同号証の金額は,同決定の担保金300万円と合算されている。)。その後,控訴人Bは,同弁護士に対して,同月,費用として12万円(6万円を2回)を支払った(甲111,112)。
(カ) 平成11年9月22日,控訴人らは,V弁護士らに委任して,E及び被控訴人Nを相手方として,また,同年11月17日,D及び同被控訴人を相手方として,議決権行使禁止の仮処分命令申立てを行い,申立てどおりの各決定を得た(甲69ないし73,82ないし86。前記のとおり)。
(キ) 平成11年9月29日,控訴人Bは,Eの代表取締役に,控訴人Aは,同社の取締役にそれぞれ就任し,同年11月25日に,控訴人Bは,Dの代表取締役に,控訴人Aは,同社の取締役にそれぞれ就任した(前記のとおり)。
(ク) 平成12年3月1日と同月3日に,控訴人Bは,V弁護士に対して,職務代行者の登記を抹消するための嘱託登記費用として,各6万円(計12万円)を預けた(甲113,114)。
(ケ) 平成12年3月3日,控訴人Bは,前記職務執行停止決定等仮処分の予納金として,30万円をV弁護士に預けた(甲115)。
(コ) 控訴人Bは,V弁護士に対して,職務執行停止,代行者選任及び議決権行使禁止仮処分等一連の事件の成功報酬として,平成12年6月2日に300万円(甲116),同月21日に67万5000円(甲117)を支払い,平成13年8月6日に本件控訴着手金(50万円)及び実費等として64万1550円(甲118)を支払った。
以上のとおり認められ,これを左右するに足る証拠はない。これによれば,控訴人Bは,前記一連の訴訟及び保全等の手続に関し,訴訟代理人弁護士に対して,計1126万1550円の手数料等を支払ったことが認められる。
イ ところで,株式会社において新株発行に通常必要な取締役会の決議や,第三者割当ての際などに求められている株主総会の特別決議が必要な場合において,これらの手続を経ずに,代表取締役が行った新株発行の効力については,通常有効と解されているが(最高裁判所昭和40年10月8日判決・民集19巻7号1745頁,同昭和46年7月16日判決・判例時報641号97頁各参照),必要な決議等の手続を欠く新株発行を有効とするのは取引の安全を考慮したことによるものであるから,これが問題とならない場合,すなわち,専ら組織法上従来の株主の株式比率を相対的に低下させ,新株発行を無効としても取引の安全を害さない特段の事情があるときには,従来の株主の利益を保護するために,有効な取締役会の新株発行決議等のないことは,新株発行無効の理由となると解するのが相当である。
そこで,これを本件についてみるに,D及びEはいずれもいわゆる同族会社であって株式も公開されておらず,本件において発行された新株は,いずれも当初は被控訴人Gがこれを引き受け,その払込みも完了したが,その後,同被控訴人は株主であるため,第三者割当てとはならないことが判明し,急きょ,被控訴人Nに割当てを行い,引受,振り込みを完了し(乙5,6),本件各会社の取締役会で承認したものであって(乙7,8),純然たる第三者の手には渡っていないことから判断すると,取引の安全を考慮する必要はない事例であると認められるから,本件においては,控訴人らは,取締役会決議等の必要な手続の欠缺を理由として,本件各新株発行の無効確認(不存在確認も)を求めることができると解するのが相当である。
ウ 次に,不法行為の被害者が,自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,前記不法行為と相当因果関係に立つ損害として認められるというべきである(最高裁判所昭和44年2月27日第一小法廷判決・民集23巻2号441頁参照)。
そこで,本件をみるに,前記認定のとおり,被控訴人らに損害賠償義務が認められる原因としては,被控訴人Gが,適正な手続を経ずしてD及びEの新株発行を行ったという点にあるが,その目的は,控訴人らに対抗するために被控訴人G側の所有株式数を増やし,本件各会社の経営権を確保しようというところにあると認められ,これを放置すれば,これらの違法な手続によって控訴人らの権利が侵害される結果となることは明白であるところ,控訴人ら及び被控訴人ら間の感情的軋轢をも考慮すると,控訴人らとしては,もはや個人的な協議という方法では本件を円満に解決することは困難な事態に立ち入っていたとみるのが相当であるから,自己の権利を防衛するため,控訴人らが法的手段に訴えたことはやむを得ない措置であったというべきである。そして,わが国の法制度上,いわゆる弁護士強制主義は採用されていないものの,前記訴えを提起し追行するためには高度の専門的知識を必要とし,一般人としては弁護士に委任しなければその目的を達成することがほとんど困難といってよいから,当該訴訟提起・追行のため支出を余儀なくされた弁護士費用のうち,諸般の事情に照らして相当と認められる範囲内のものは,前記不法行為と相当因果関係に立つ損害であると認めるのが相当である。
エ 以上の観点から控訴人Bが出捐した弁護士費用について検討すると,まず,上記(1)ア(ア)のうちの刑事告訴については,結局不起訴となっているところからみても,必要性は認められない。また,同(イ),(ウ)及び(エ)についても,被控訴人Gらからの裁判に対する応訴に伴う費用であるから,本件新株発行と直接的関係はないというべきであり,かつ,これらの提訴自体が訴権を濫用し,不法行為を構成するような不当なものであるとまで認めるに足りる的確な証拠はないから,やはり必要性は認められない。
次に,(オ)(代表取締役及び取締役職務執行停止等の仮処分命令申立て)及び(カ)(議決権行使禁止の仮処分命令申立て)について検討する。まず,(カ)については,これは,違法な本件新株発行が行われ,目前に迫った本件各会社の株主総会でこれに基づいた議決権の行使が行われることによって控訴人らの株主としての地位が脅かされることなどを保全の理由及び必要性とするものであるから,同保全手続に要した弁護士費用は本件不法行為(違法な新株発行)に関して採られた法的措置として適切なものと認められ,これに要した費用のうち後記認定のとおりの金額をもって相当因果関係内の損害と認めることができる。ところで,(オ)(代表取締役及び取締役職務執行停止等の仮処分命令申立て)については,本件不法行為(違法な新株発行)及びこれに基づく登記の経由の事実を当該保全申立ての保全の必要事由として主張しており,本件不法行為との関連性も認められなくはないが,当該保全申立ては,違法な取締役選任決議等及びこれに基づく登記の経由を保全申立て理由とするものであり,同違法は,前記のとおり,いわば形式的違法ともいうべきものである上,控訴人らが最終的に目的としていることは,控訴人らの株主権が被控訴人Gらによる違法な新株発行により相対的に少数派株主とされる結果,実質的な価値(本件各会社における多数派株主としての支配権)が失われることを阻止することにあるのであるが,これは前記(カ)の保全申立てによって達することが期待できるのであることなどを考慮すると,(オ)の申立てが本件新株発行の違法状態を回復するに必要不可欠なものであったとまでは認められないというべきである。
オ したがって,本件不法行為(違法な新株発行)を回復するために採られた法的措置として必要不可欠なものとしては,前記(ア)の本件訴訟のうち新株発行無効(不存在)確認請求に係るもの及び(カ)の議決権行使禁止の仮処分命令申立てのみであることとなる。
そして,前記のとおり,これらの法的措置を採るために要した弁護士費用のうち,諸般の事情を考慮し,相当と認められる範囲内のものを,本件不法行為と相当因果関係に立つ控訴人らの損害であると認めるのが相当であるので,検討することとする。
まず,控訴人Bは,前記(ア)のとおり,本件訴訟の提起及び刑事告訴について着手金分として計70万円を支出していることなどから,本件訴訟分,更にその中でも本件不法行為に係る分としては,30万円をもって相当因果関係にある弁護士費用と認めるのが相当である。次に,(カ)の議決権行使禁止仮処分命令申立てと相当因果関係にある弁護士費用についてみるに,同仮処分事件単独での弁護士費用に支払は行われていないことから相当とする明確な金額を算出することは必ずしも容易ではないが,控訴人Bは,(オ)の職務執行停止決定等の仮処分命令申立て事件分と併せて成功報酬金として委任弁護士に対して計367万5000円を支払っていることをはじめとする諸事情をも併せ考慮すると,議決権行使禁止仮処分命令申立てと相当因果関係にある弁護士費用としては,120万円をもって相当と認める。
したがって,本件不法行為に関して採られた法的措置について控訴人らに生じた相当因果関係にある弁護士費用としての損害としては,控訴人Bについて計150万円を認めるのが相当である。
なお,本件不法行為を中心となって行ったのは,被控訴人Gではあるが,被控訴人らはいずれも本件各会社の取締役又は監査役である上,互いに深い親族関係にある間柄であることなどから,被控訴人Gの本件不法行為をいずれも事前又は事後に承認ないしは黙認していたと認めるのが相当であり,被控訴人らは連帯して控訴人Bに対して損害金を支払うべきこととなる。ただし,被控訴人Cについては,Dの取締役でも監査役でもないのであるから,D独自の法的措置に係る弁護士費用分については同被控訴人にその負担を負わせることはできないというべきである。ところで,前記議決権行使禁止仮処分命令申立て事件に関しては,Dに係る弁護士費用とEに係るそれとはほぼ同額(各60万円)とみることができる(前掲各証拠)ので,結局,同被控訴人が負担すべき弁護士費用としては90万円をもって相当と認める。
(2)  慰謝料について
ア 控訴人らは,被控訴人らが,控訴人らの社会的信用ないし名誉を害する種々の発言や行動(前記議事録等の偽造及びこれに伴う退任登記等に基づく社会的信用等の侵害の点を含む。)を採っていると主張するが,前記1(3)に説示のとおり,控訴人Aに対するものは認められず,また,控訴人Bに対するものもごく一部に止まっている。そして,これまでの控訴人らと被控訴人Gとの間の経緯からは,被控訴人Gが,時折,周囲の者に控訴人Bの悪口をいうことがあったとしても,一定の無理からぬ状況があったと認められることを勘案すると,前記認定の被控訴人Gの言動をもって,控訴人Bに対する金銭的賠償を認めなければならないほどの違法性を有するものと認めることは困難であるといわざるを得ない。
イ したがって,控訴人らの被控訴人らに対する慰謝料請求については,いずれもこれを認めることはできない(なお,控訴人らは,本件新株発行という不法行為を原因とする精神的苦痛をも主張しているが,同新株発行については,前記のとおり,これが違法であることを前提としてその不存在を確認する判決が言い渡され,確定しているのであるから,これ以上に控訴人らに精神的苦痛が生じたとは認められないというべきである。)。
3  以上によれば,控訴人らの本件請求(当審で拡張された分を含む。)については,控訴人Bの被控訴人Cに対する90万円,同被控訴人を除くその余の被控訴人ら4名に対する150万円並びにこれらに対する本件不法行為の後で,訴状到達日の翌日である平成10年8月21日から支払済みまで民法所定の法定利率年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(被控訴人Cは前記90万円についてその余の被控訴人4名と連帯して,被控訴人Cを除くその余の被控訴人4名は前記150万円について連帯して,それぞれ控訴人Bに対して支払う義務がある。)を求める限度で理由があるが,控訴人Bのその余の請求及び控訴人Aの請求はいずれも理由がない。
よって,これと異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鈴木敏之 裁判官 松井千津子 裁判官 工藤涼二)
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