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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(364)平成16年 6月18日 東京地裁 平15(ワ)5443号 特許権侵害差止等請求本訴、損害賠償請求反訴事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(364)平成16年 6月18日 東京地裁 平15(ワ)5443号 特許権侵害差止等請求本訴、損害賠償請求反訴事件

裁判年月日  平成16年 6月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)5443号・平15(ワ)8228号
事件名  特許権侵害差止等請求本訴、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求棄却  文献番号  2004WLJPCA06189002

要旨
◆名称を「船舶の動揺軽減装置の制御方法」とする発明に係る特許権者及び独占的通常実施権者である原告らが、被告に対し、被告装置の製造・販売は、本件特許権侵害及び独占的通常実施権侵害に該当するとして、被告装置の製造・販売の差止め等を求めた事案において、被告方法は、構成要件B及びCをいずれも充足せず、本件特許発明の技術的範囲に属するものではないから、原告らの本訴請求は理由がないとして、請求を棄却した事例(本訴事件)
◆被告が、名称を「船舶の動揺軽減装置の制御方法」とする発明に係る特許権者及び独占的通常実施権者である原告らに対し、反訴として、原告らによる本件訴訟提起及び追行は不法行為に該当するとして、損害賠償を求めた事案において、原告らによる本件訴訟提起及び追行は、その主張に係る権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものであって、かつ原告らがそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起したなど、裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠くものとは認められないから、原告らによる本件訴訟提起及び追行は不法行為を構成するとはいえず、被告の反訴請求は理由がないとして、請求を棄却した事例(反訴事件)

裁判経過
控訴審 平成17年 2月28日 東京高裁 判決 平16(ネ)3686号 特許権侵害差止等損害賠償反訴請求控訴事件 〔船舶の動揺軽減装置の制御方法事件〕

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
特許法70条
特許法100条
特許法101条3号
特許法101条4号
特許法102条1項
民法709条

裁判年月日  平成16年 6月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)5443号・平15(ワ)8228号
事件名  特許権侵害差止等請求本訴、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求棄却  文献番号  2004WLJPCA06189002

平成15年(ワ)第5443号 特許権侵害差止等請求本訴事件
平成15年(ワ)第8228号 損害賠償請求反訴事件

原告(反訴被告) 株式会社スタビロ
原告(反訴被告) A
原告ら(反訴被告ら)訴訟代理人弁護士 窪田英一郎
同 柿内瑞絵
同復代理人弁護士 乾裕介
同補佐人弁理士 大木健一
同 吉田聡
同 相原正
被告(反訴原告) 旧商号エヌケーケー総合設計株式会社
JFEソルデック株式会社
訴訟代理人弁護士 吉原省三
同 小松勉
同 三輪拓也
同 竹田吉孝

 

主文

1  原告ら(反訴被告ら)の本訴請求をいずれも棄却する。
2  被告(反訴原告)の反訴請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを2分し,その1を原告ら(反訴被告ら)の負担とし,その余を被告(反訴原告)の負担とする。

事実及び理由

第1  請求
1  本訴
(1)  被告(反訴原告。以下,単に「被告」という。)は,別紙物件目録記載の動揺軽減装置を製造,販売してはならない。
(2)  被告は,原告(反訴被告)株式会社スタビロ(以下,単に,「原告スタビロ」という。)に対し,4800万円及びこれに対する平成15年3月25日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  反訴
原告ら(反訴被告ら。以下,単に,「原告ら」という。)は,被告に対し,連帯して600万円を支払え。
第2  事案の概要
1  訴えの要旨
(1)  本訴
原告(反訴被告)A(以下,単に,「原告A」という。)は,船舶の動揺軽減装置の制御方法の発明に係る後記特許権(以下「本件特許権」という。)を有しており,原告スタビロは,同特許権の独占的通常実施権者である。
原告Aは,被告が製造・販売する別紙物件目録記載に係る船舶の動揺軽減装置(以下「被告装置」という。)は,上記発明の技術的範囲に属する制御方法の使用にのみ用いる装置であるか(特許法101条3号),あるいは同発明の課題の解決に不可欠なものであるとして(同条4号),本件特許権の侵害を理由に,被告装置の製造・販売の差止め(第1,1(1))を求めている。
また,原告スタビロは,本件特許権の独占的通常実施権者として特許法102条1項の類推適用を主張し,損害賠償金の支払(同(2))を求めている。
(2)  反訴
これに対し,被告は反訴を提起し,被告は本件特許権と別の特許権に関する和解契約を原告らと締結した際,当時被告が製造・販売していた船舶の動揺軽減装置の一部の設計を変更した上,設計変更後の装置の動作図を原告らに交付しており,この動作図を検討すれば,被告装置の動作が本件特許権を侵害するものでないことは容易に理解できたのに,非侵害の事実を知りながら,あるいは過失によって知らないまま本訴(特許権侵害訴訟)を提起したものであると主張し,このような訴訟提起及び追行は不法行為に該当するとして,原告らに対し,弁護士費用相当額の損害賠償金600万円を連帯して支払うことを求めている(第1,2)。
2  前提となる事実(当事者間に争いがないか,あるいは,該当箇所に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1)  原告Aは,下記の特許権(本件特許権)を有している。
特許番号 第3125142号
発明の名称 船舶の動揺軽減装置の制御方法
出願日 平成10年6月1日
登録日 平成12年11月2日
また,原告Aが代表取締役を務める原告スタビロは,同特許権の独占的通常実施権者である(弁論の全趣旨)。
(2)  本件特許権に係る明細書(ただし,平成15年11月26日付け審決〔甲9〕による訂正後のもの。以下,「本件明細書」という。)における,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この請求項1記載に係る発明を「本件特許発明」という。本判決末尾添付の特許公報〔甲2〕及び上記審決〔甲9〕の各写し参照。なお,この公報及び審決を,以下それぞれ「本件公報」及び「本件審決」という。)。
「船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と,これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と,前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは,各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し,更に,船の横揺角を検知する傾斜センサー(1)と,その情報を解読させると共に制御信号を出力するコントロール部(2)と,コントロール部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて,傾斜センサー(1)から出力される船の横揺れ状況をコントロール部(2)で解読した船の平均揺動角度が,予め設定してある値との比較に基づき,横揺角が小さくタンク内の液体(17)が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は,復原力に悪影響を与えないように空気ダクト(14)のバルブ(15)を強制的に閉じて液体(17)を停止させ,また,横揺れ状況が変わり悪影響を与える恐れがないと判断した場合は,空気ダクト(14)のバルブ(15)を開き液体(17)の移動を自由にするという液体(17)の制動を自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。」
(3)  本件特許発明を構成要件に分説すれば,下記AないしDのとおりである(以下,分説した各構成要件をその記号に従い,「構成要件A④a」,「構成要件B」などという。)。
A① 船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と,
② これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と,
③ 前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは,各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し,
④a 更に,船の横揺角を検知する傾斜センサー(1)と,
b その情報を解読させると共に制御信号を出力するコントロール部(2)と,
c コントロール部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した
⑤ 液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて,
B 傾斜センサー(1)から出力される船の横揺れ状況をコントロール部(2)で解読した船の平均揺動角度が,予め設定してある値との比較に基づき,横揺角が小さくタンク内の液体(17)が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は,復原力に悪影響を与えないように空気ダクト(14)のバルブ(15)を強制的に閉じて液体(17)を停止させ,
C また,横揺れ状況が変わり悪影響を与える恐れがないと判断した場合は,空気ダクト(14)のバルブ(15)を開き液体(17)の移動を自由にするという
D 液体(17)の制動を自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法
(4)  被告は,別紙物件目録記載に係る船舶の動揺軽減装置(被告装置)を,本判決添付の別表1記載のとおり,少なくとも14の船舶に搭載するため,「MUP-ARTⅡ」等の名称で製造・販売した(甲3,4及び弁論の全趣旨。なお,同表における番号1~6の各船舶については,「システム変更日」欄記載の日付をもって,後記の被告方法が実施されるに至ったものである。)。
(5)  被告装置において実施されている船舶の動揺軽減装置の制御方法(以下「被告方法」という。)は,構成要件A①~⑤及びDをいずれも充足する。
(6)  ところで,本判決添付の別表1の番号1~6記載の各船舶に係る動揺軽減装置については,本訴提起に先立ち,原告Aから被告に対し,同原告の有する別の特許権(特許第3048865号。乙4の特許公報参照)を侵害するとの主張があり,平成14年3月4日,原告らと被告の間で和解契約が成立し,被告が上記各動揺軽減装置の設計を変更するとともに,原告らに対して和解金300万円を支払った。
この和解契約締結の際,被告は原告らに対し,上記設計変更後の動作を示す「MUP-ARTⅡ制御方法について」と題する書面を示し,設計変更後の動作は上記特許権を侵害するものではない旨を説明した。
(7)  上記和解契約に係る和解契約書においては,「互いに本和解の内容を不当な方法で営業に利用しない」旨の条項が存在するところ,原告Aは,被告のした特許出願(特願2000-282355号)に対し,平成14年7月29日付けで刊行物を提出した際,上記和解契約書の写しを添付書類として特許庁に提出した。
被告は,代理人を通じて原告Aに抗議したが,同原告は何らの回答もしなかった。
(8)  原告らは,被告が本件特許権を侵害していると主張して,平成15年3月12日に本件訴訟を提起した。
これに対し,被告は,原告らは被告装置の動作が本件特許権を侵害するものでないことを知りながら,あるいは過失によって知らないまま本訴(特許権侵害訴訟)を提起したものであり,このような訴訟提起及び追行は不法行為に該当すると主張して,同年4月15日に反訴を提起した。
3  争点
(1)  本訴(第1,1)について
ア 被告方法が構成要件B及びCを充足するか(争点1)。
イ 本件特許発明に無効事由の存することが明らかであり,本件特許権に基づく原告らの請求は権利の濫用に当たるものとして許されないか(争点2)。
ウ 原告スタビロの損害額(争点3)
(2)  反訴(第1,2)について
原告らによる本訴の提起及び追行が不法行為を構成するか(争点4)。
第3  争点に関する当事者の主張
1  争点1(構成要件B及びCの充足性)について
(原告らの主張)
(1) 被告方法の具体的構成を,本件特許発明の構成要件との対比に必要な限度で示すと,次のとおりである(以下,下記の各構成をその記号に従い,「被告方法構成ア④ⅰ」,「被告方法構成イ」などという。)。
ア① 船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク4a,4bと,
② これらウイングタンクの底部を連結して液体8を左右方向へ移動させる液体通路5a~5cと,
③ 前記の両ウイングタンク上部間に設けられ,コントロール部3からの指令によって制御可能なバルブ11を介して連通させる空気通路部(空気ダクト)6を有し,
④ⅰ 更に,船の横揺角を検知する横揺計10と,
ⅱ その情報を解読させると共に制御信号を出力するコントロール部3と,
ⅲ コントロール部3からの制御信号を基に前記バルブ11を遠隔駆動させるエアシリンダ12(開閉機器装置部)とを具備した
⑤ 液体8の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて,
イ 横揺計10から出力される船の横揺れ状況をコントロール部3で解読した情報が,横揺角1度以下を示すときには,空気通路部6のバルブ11を強制的に閉じて液体8を停止させ,
ウ また,横揺れ状況が変わり横揺角が2度を超える状態を示すときには,空気通路部6のバルブ11を開き液体8の移動を自由にするという
エ 液体8の制動を自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法
被告方法構成ア①~⑤及びエが,それぞれ構成要件A①~⑤及びDを充足することについては,当事者間に争いがない(第2,2(5))。
(2) そこで次に,被告方法構成イ及びウがそれぞれ構成要件B及びCを充足するかが問題になるが,ART内の液体(自由水)が船の復原力に影響を与えるのは公知の知見であるところ,ARTの減揺効果が認められる範囲においては,この自由水による影響は船の横揺角を減少させる方向に働くので復原力に対する悪影響はない。しかし,横揺角が減少し,凪のような状態になると,自由水の影響によるモーメントの悪影響のみが残り,船の本来の重心Gと自由水の影響を考慮した場合の重心G0との距離が大きくなって重心が高くなり,復原力に悪影響を及ぼす。
上述したところに照らせば,被告方法における「横揺角1度以下」(被告方法構成イ)の場合とは,凪などでほとんど揺れがなく,自由水が船の復原力にかえって悪影響を与える場合を指しており,逆に「横揺角が2度を超える状態」(同構成ウ)とは,ARTを作動させても船の復原力に悪影響を及ぼさない範囲のことにほかならない。すなわち,被告方法においては,「タンク内の液体‥‥が船の復原力に対し悪影響を与えている」(構成要件B)状態を横揺角が1度以下の時,「悪影響を与える恐れがない」(同C)状態を横揺角が2度を超える時と設定した上,これらの数値を媒介に復原力に悪影響を与えているか否かを判断しているのであって,同方法が構成要件B及びCを充足することは明らかである。
被告は,横揺角の測定・算出と船の復原力に悪影響を与えているかどうかの判断とは直接の関係はない旨を主張するが,被告方法が,横揺角を基準に被告装置の作動/非作動を切り替えるのは,まさに本件特許発明と同じ効果,すなわち,減揺水槽を装備した船舶において,同水槽内の液体の移動を自動制御することによって,比較的穏やかな海洋気象状況の中を航行しているとき,この液体の移動に由来する悪影響から船体の復原力が不安定となり,乗り心地が悪くなるという逆効果が生じるのを事前に防止するという効果を得るためであり,他の理由は考えられない。
(被告の主張)
(1) 船舶の横揺れを軽減するために,U字型のタンクを搭載して水等の液体をその中に入れ,その揺動と船舶の横揺れを相殺する技術は,ART(“Ant iRolling Tank”の略)と呼ばれ,古くから存在する公知技術である。また,特公昭46-39260号公報(乙3)には,側部タンクを連結した空気平衡管を開閉して制御することや,側部タンク間を流動する液体の流通通路の断面を変更して制御することが,既に開示されていることから分かるとおり,構成要件Aに相当するARTの構造及び基本的な操作方法は公知である。したがって,現在ARTに関して発明が成立するとすれば,いかなるデータに基づき,いかなる方法でARTを操作するかという点に進歩性が認められる場合以外にあり得ない。
この点,本件明細書の記載によると,本件特許発明は,従来技術(ART)においては,時化の時には満足できる横揺れ軽減効果を得られるが,凪などでほとんど揺れない時,また横揺角が小さく移動する液体の量が少ない時などに,最適な位相遅れを得ることができず,かえって船の復原力に悪影響を与え,不安定な動揺を誘発するという問題点があったことにかんがみ(本件公報2欄2行以下及び3欄45行以下),この問題点の解決のため,船の横揺角を検知する傾斜センサーと,その情報を解読するコントロール部と,空気ダクトのバルブを遠隔駆動し得る開閉機器装置の手段を備えた上,横揺角を検知することによって,タンク内の液体が減揺の手段として作動しているか,あるいは復原力に対し悪影響を与えているかを判断し,悪影響を与えていると判断した場合には,上記バルブを強制的に閉鎖し,タンク内の液体が自由に移動しないよう制動する一方で,船の横揺れ状況が変わりARTとして使用できると判断した場合には,自動的にバルブを開くものとされている(同公報4欄30行以下)。
上記によれば,本件特許発明は,船舶の傾斜角が小さくARTの液体移動量が少ない場合は,かえってARTが復原力に悪影響を与え,船に不安定な動揺を与えるので,傾斜角が小さいことをセンサーで感知し,そのことが悪影響を与えている旨の判断をした上,空気ダクトのバルブを閉じてARTの作動を停止することを技術思想とするものと解される。
(2) しかるに,被告方法は,ARTによって動揺軽減を図る範囲を予め設定し,その範囲ではバルブを開放してARTを作動させるが,範囲外ではバルブを閉じて作動させないというものであり,復原力に悪影響を与えるかどうかの判断を行っていない。
すなわち,船舶の横揺れについては,①横揺れ周期(1回の横揺れに要する時間),②横揺角(横揺れによる傾斜の角度),③ヒール角(貨物の片積み,給油,乗客の移動等による船体の傾斜角度)の3つの要素が関係するところ,被告方法は,これら3つの条件をそれぞれ別個に判断してARTの作動/非作動を決めている。俊鷹丸(別表番号7の船舶)で実施されている制御方法を例にとると,次のとおり設定されている。上記①の横揺れ周期との関係では,8秒以下と13.5秒以上でARTを停止し,8秒と13.5秒の間で作動する。上記②の横揺角との関係では,平均横揺角が1度以下になると停止し,2度を超えると作動する(1度と2度の間に間隔を設けているのはチャタリング防止のためである。)。上記③のヒール角との関係では,ヒール角が8度を超えると停止し,5度以下になると作動する(ここでも,5度と8度の間に間隔を設けているのは,チャタリング防止のためである。)。
したがって,被告方法においては,上記①~③の各条件がいずれも作動の範囲内にあればARTを作動させ,このうち1つでも停止の範囲内にあればARTを停止させることになる。
ここで,上記②の横揺角との関係を詳しくみると,平均横揺角が小さくなって1度以下になるとARTを停止させることにしているのは,このようにもともと横揺角が小さい場合には,あえてARTを作動させて減揺効果を得る必要がないという消極的理由と,横揺れが小さい状態でARTを作動させたままにしておくと,突風や荷重の偏りによりヒール角が急に大きくなった場合,ART内の液体の移動によって一方への傾斜が大きくなり危険なので(このことは,乙8として提出した「耐航性に関するシンポジウム」と題する冊子に掲載された論文に示されており,技術常識である。),これを未然に防止するという積極的な理由があるからである。
このように,被告方法においては,平均横揺角が一定の値以下である場合には,そのことが船の復原力に悪影響を与えているかどうかを判断することなく,上記の技術常識に基づき,一律にARTの作動を停止している。したがって,被告方法が構成要件B及びCを充足しないことは明らかである。
2  争点2(無効事由の存否)について
(被告の主張)
(1) 本件特許発明は,前述のとおり,従来技術であるARTの構造及び基本的な操作方法に加えて,構成要件B及びCの構成を備えたことを特徴とするものであり,この点に進歩性が認められて設定登録されたものである。
しかし,そもそも平均横揺角だけからARTを制御することは技術的に困難である。すなわち,ARTは,本来減揺すなわち横揺角を小さくすることを目的とする装置であるところ,機械が横揺角を自動計測する場所は通常船の上(ブリッジ)であるから,船の横揺角が小さくなったのは,ARTの効果が生じているからなのか,それとも波(水面)自体が穏やかになったからなのか,機械には判別できない。そこで,従来は人力によりARTの作動/非作動を制御していたわけであるが,これを機械で自動化して横揺角が一定の値以下の場合にARTを停止させるとなると,ARTの効果により横揺角が小さくなった場合でもARTを停止させることになり,ART本来の目的に反する結果となる。そこで,横揺角が小さいだけでは不十分で,そこに何らかの要件が加わらなければ発明とはなり得ず,それが「予め設定してある値との比較に基づき,‥‥‥タンク内の液体(17)が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は」(構成要件B)との要件であると考えられる。
しかるに,本件明細書の記載に照らしても,なぜ,予め設定してある値と比較すれば横揺角の小さいことが船の復原力に悪影響を与えていると判断できるのか明らかでなく,また具体的な判断方法についても十分な記載がない。したがって,本件特許発明には実施不能ないし開示不十分(特許法36条4項1号及び6項違反)の無効事由が存するというべきである。
(2) 上記の点をさておいても,本件特許発明は,本件明細書の記載自体等から,公知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであることが明らかである。
すなわち,本件特許発明は,要約すると,船の横揺れ状況のデータから平均横揺角度を算出し,これが予め定めた一定の値より小さい時には,ARTの作動を停止するというものである。
ところで,本件特許発明の出願当時,ART内の液体(自由水)が船の静的復原力に影響を与えることは公知の知見であり,どのような場合に船の安全性を害するかが研究されていた(前記乙8のほか,乙11「安全水槽を備えた船舶の安全性について」と題する論文等を参照)。そして,そのような場合の一例として,船の横揺角が小さい場合のあることが知られており,このような場合には,従来は手動でARTの作動を停止していた。そのことは,本件明細書の段落【0009】における,「ARTを設定した場合は,凪などの横揺れが少ない状況に於いて,自由表面二次モーメントの影響を鑑み,何時の時点でARTを作動するか,否かの判断と操作に人手を煩わせなければならないという対応に難点があった。」との記載や,出願経過で提出された平成12年8月25日付け意見書(乙1の7)3頁における,「凪の時にARTを作動するか,または,非作動にするかの判断と操作は人手を煩わすことなく自動的に行われる。」との記載に照らしても,明らかである。
そうすると,本件特許発明は,横揺角が小さい場合にARTを停止するという従来行われていたことを単に自動化したにすぎず,それ以外に格別の作用効果はないから,同発明は,当業者が従来技術から容易に発明できたものというべきである。
(3) さらに,本件特許発明は,公知文献である特公昭58-30196号(乙2)に記載された発明から,当業者が容易に発明できたものである(特許法29条2項違反)。
すなわち,上記公報の第2図(なお,この図を別紙参考グラフ図として本判決に添付した。)は,縦軸に横揺れ振幅を波振幅で除した数値(船が波の振幅の何倍横揺れするかを示している。)を取り,横軸に横揺れの周期(時間)を取って,その相関関係を表したグラフである。船は固有の横揺れ周期を持っており,その固有周期と波の周期が一致すると,共振現象により波の振幅よりもはるかに大きな横揺れが生じる。これが上記第2図のC点である。反対に,波の周期が船の固有周期とずれるほど,波の振幅に対する船の横揺れの割合は小さくなる。
ARTは上記C点で最大の減揺効果を発揮するように設定されているが,ART自体も固有の周期を持っている。したがって,波の周期がARTの周期とずれると(プラスにずれた場合は上記第2図の右方向に,マイナスにずれた場合には同図の左方向に,それぞれずれることになる。)減揺効果が低下し,横揺れが大きくなってくるが,その途中でARTが作動していない時の横揺れと同じになる瞬間がある。それが上記第2図におけるT1及びT2の点である。
上記第2図において,波周期の短い場合(図面の左側の場合)においては,波がないか,あっても周期が短く,いわば船が波をまたいでいる状態であるから,横揺れしないか,あるいはしにくい状態である。他方,波周期の長い場合(図面の右側の場合)は,いわば船が波の上に乗っている状態であり,外洋で津波に出会った時のようなもので,船は上下には動くが,横揺れはしにくくなる。
以上から分かるとおり,波の何倍の大きさで船が横揺れするか,すなわち船の横揺れの大きさには波の周期が関係している。そこで,上記第2図を基準に,ARTを作動させた方がさせない時よりも横揺れが小さくなる場合にのみARTを作動させ,逆に横揺れが大きくなる時にはARTを作動させないというのが乙2に記載された発明の着想である。その場合,ARTを作動させるかさせないかの分岐点が,上記T1及びT2の各点ということになる。
そうすると,横揺れが小さい時,つまり横揺角が小さい時にARTの作動を停止するということは,本件特許発明を待たずとも,乙2記載に係る発明も同じことをしているわけであり,同発明においては,どのタイミングで停止するかを波の周期によって判断しているにすぎない。そして,波の周期も船の横揺角も,算出の基礎となるデータは同じであり,算出のために格別の工夫も要しないから,乙2記載の発明における周期に換えて,横揺角をもって上記のタイミングを判断することは,当業者が容易に成し得ることである。
(原告らの主張)
(1) 被告は,本件特許発明に特許法36条4項1号及び6項違反の無効事由が存すると主張する。
しかし,同発明が横揺角が小さい時にARTを止めることを目的とするものであること及び横揺角が小さいかどうかは平均横揺角を予め設定した値と比較することにより可能であることは,いずれも本件明細書に明確に記載されている。本件特許発明の開示としては,基本的にかかる開示で十分であり,当業者がいかなる平均横揺角の数値を設定して同発明を実施するかは,各ARTの特性や船舶の特性等を勘案して当業者が選択する設計事項にすぎない。
よって,本件特許発明に実施不能ないし開示不十分の無効事由のあることが明らかとはいえない。
(2) また,被告は,本件特許発明は特公昭58-30196号(乙2)に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであると主張するが,以下に述べるとおり理由がない。
本件特許発明におけるARTは,2つのウイングタンクからなるが,これらのタンク間を液体が自由に行き来できる状態では,2つのタンクが全体として1つのタンクとして作用するため,液体の行き来を停止してタンクの個別性を確保した場合に比べ,自由表面二次モーメントが飛躍的に大きくなり,船の本来の重心Gと自由水の影響を考慮した場合の重心G0との距離が大きくなって重心が高くなり,復原力に悪影響を及ぼす。本件特許発明はこの点に着目し,船の横揺角を測定した上,横揺角の小さい凪などの状況でART作動の必要性がないと考えられる場合には,ART作動(すなわち,液体が行き来すること)により船の重心が高くなることを抑制し,復原力を確保しようとするものである。
これに対し,乙2記載の発明は,ARTが,これを搭載した船舶の固有の横揺れ周期に近い波との出会い周期で横揺れする場合は,その減揺効果を発揮するが,上記固有の周期と相当に異なる波との出会い周期で横揺れする場合には,逆に,減揺水槽のない場合よりも大きな横揺れを発生させてしまうことにかんがみ,このような場合にはARTを非作動にするというものである。本件特許発明が問題にする横揺角と乙2記載の発明が問題にする横揺れ周期の間に直接の関係はなく,例えば横揺角が小さい場合でも,船舶自体の固有周期を大きく外れるほど,ART搭載時の固有の周期が長くなることもあれば,短くなることもある。
したがって,乙2記載の発明は,凪などで横揺角が小さい場合にARTを非作動とする本件特許発明を何ら示唆するものではない。
(3) なお付言するに,被告が公知文献として提出する特公昭46-39260号(乙3)記載に係る発明も,本件特許発明を示唆するものではない。
なぜなら,乙3記載の発明は,振動する船の周波数とART内の液体質量の周波数が一致する時にARTがその最大効果を得るとの知見に基づき,その時に生じるタンク液角度と船の横揺角の位相差90度を常に保とうとする技術である。
したがって,本件特許発明のように横揺角そのものに着目するものではない上に,そもそも,ARTの効果を最大限に保つために一時的に閉鎖装置を制御して液体の移動を制限しようとするものにすぎず,ARTを非作動にするという発想は全く見られないからである。
3  争点3(原告スタビロの損害額)について
(原告スタビロの主張)
(1) 主位的主張
被告は,本件特許発明が登録された後,別表1記載の各船舶に搭載するために,少なくとも14台の被告装置を販売した(なお,同表番号1~6の各船舶については,同表「システム変更日」欄記載の日付をもって被告方法が実施されるようになったので,上記システム変更日を販売の日とみなすべきである。)。これらの被告装置は,すべて被告方法の使用にのみ用いる装置であり,その販売は本件特許権の間接侵害(特許法101条3号)を構成する。
ところで,被告の上記販売により原告スタビロは同種製品の販売の機会を奪われており,同原告が同種製品を販売することによって得られた利益は,装置1台当たり300万円を下らない。そして,同原告が上記台数程度の同種製品を受注・納品することは十分に可能であるから,特許法102条1項の類推適用により,同原告が被告に請求できる損害賠償金の額は,合計4200万円(300万円×14)を下らない。
また,原告らは,本件特許権の侵害について被告に警告し(甲5,6),代理人を通じて交渉を行ったが,被告が侵害の事実を認めなかったため,本件訴訟の提起を余儀なくされた。原告スタビロが訴訟追行に要する弁護士費用及び弁理士費用は600万円を下るものではなく,これも同原告が被告による本件特許権の侵害に基づき被った損害の一部を構成する。
よって,原告スタビロは,被告に対し,本件特許権の侵害に基づく損害賠償金として,合計4800万円を請求する。
(2) 予備的主張
仮に本件において特許法101条3号の適用がないとしても,被告装置は本件特許発明の課題の解決に不可欠なものであって,かつ,被告は遅くとも平成13年2月初めには同発明の存在を知り,被告装置が同発明の実施に用いられることを知りながら,上記のとおり,被告装置14台を販売した。
したがって,現行特許法101条4号の施行日である平成15年1月1日以後に販売された被告装置2台(別表1の番号13及び14の各船舶に搭載されたもの。)について間接侵害が成立するのはもちろんのこと,それ以前に販売された12台についても,被告の行為態様の悪質さからすれば,被告は被告装置を使用するユーザーと共同して本件特許権を直接に侵害した主体とみることができる。
よって,上記(1)と同様に,特許法102条1項の類推適用により,原告スタビロは被告に対し,損害賠償金4800万円の支払を求めることができる。
(被告の主張)
損害に関する原告スタビロの主張は,すべて否認ないし争う。
4  争点4(反訴請求の原因たる不法行為の成否)について
(被告の主張)
(1) 一般に,裁判を受けることは国民の権利であり,訴えの提起が当然に不法行為になるものではない。
しかしながら,権利(差止請求権)の不存在を知り,又は過失によって知らずに訴訟を提起し,あるいは営業妨害を目的として訴えを提起したときは,訴訟の提起自体が違法性を帯びる。また,権利の不存在を認識したのに訴訟を追行・維持する行為にも違法性が認められる。したがって,これらの行為は不法行為を構成するというべきである。
(2) これを本件についてみるに,前記のとおり,本件特許発明は,船の横揺れ状況のデータから平均横揺角度を算出し,これが予め定めた一定の値より小さい時には,ARTの作動を停止するというものであるが,これはそもそも,被告が本件訴訟において一貫して主張してきたとおり(平成15年10月23日付け被告準備書面(3),同年11月28日付け被告準備書面(4),平成16年2月9日付け被告準備書面(5)及び同日付け被告準備書面(6)),横揺角が船の復原力に悪影響を与えるという誤った理論に基づくものである。当業者である原告らが,そのことを理解できないはずはない。
また,第2,2(6)記載のとおり,本件訴訟に先立つ平成14年3月4日,被告は,原告らと別の特許権(特許第3048865号)につき和解契約を締結した際,上記特許権の侵害を疑われた別表1の番号1~6記載の各船舶の動揺軽減装置につき,任意に設計変更した後の動作を示す「MUP-ARTⅡ制御方法について」と題する書面を交付し,侵害の事実はない旨を説明した。上記書面及び説明に照らし,当業者である原告らは,上記各装置の販売が本件特許権を侵害するものでないことを容易に知り得たはずである。
さらに,第2,2(7)記載のとおり,上記和解契約に係る和解契約書においては,「互いに本和解の内容を不当な方法で営業に利用しない」旨の条項が存在する。それにもかかわらず,原告Aは,被告のした特許出願(特願2000-282355号)に対して刊行物を提出する際,上記和解契約書の写しを添付書類として提出し,公開せしめた。被告は代理人を通じて抗議したが,同原告は現在に至るまで何の回答もしていない。
上記の事実関係に照らせば,原告らによる本件訴訟の提起及び追行は,権利(差止請求権)の不存在を知り,又は過失によって知らずに訴訟を提起し,あるいは営業妨害を目的として訴えを提起したものとして不法行為を構成する。
仮に訴訟提起時において不法行為が成立しないとしても,原告らは,本件訴訟の維持が困難であることを自覚し,同訴訟係属中の平成15年10月7日に訂正審判を請求したのであるから,少なくともそれ以後の訴訟追行は不法行為を構成する(なお,原告Aは原告スタビロの代表取締役でもあるから,原告Aの故意・過失は,原告スタビロの故意・過失でもあると評価できる。)。
(3) 被告は,本件訴訟に応訴するため,平成15年4月30日に被告代理人に着手金300万円を支払うと共に,同訴訟が被告に有利に終了した場合,さらに300万円以上を支払う旨の約束をした。これらの金員は,原告らの上記不法行為(すなわち,本件訴訟の提起及び追行)により,被告が負担を余儀なくされたものである。
仮に本件訴訟の提起が不法行為を構成しないとしても,上記訂正審判請求時には同訴訟に理由のないことが分かったはずなので,それ以後に支出すべき上記300万円以上の成功報酬については,原告らは不法行為責任を免れない。
(4) よって,被告は,原告らに対し,不法行為による損害賠償金として600万円を連帯して支払うことを求める(なお,上記300万円以上の成功報酬についてはまだ支出しておらず,本件訴訟の終了と同時に支払義務が発生するので,上記着手金300万円を含めて遅延損害金は請求しない。)。
(原告らの主張)
(1) 上記(被告の主張)(2)記載の被告主張に係る事実関係のうち,①本件訴訟に先立つ平成14年3月4日の和解契約締結の際,被告が原告らに対し,別表1の番号1~6記載の各船舶の動揺軽減装置につき,設計変更した後の動作を示す「MUP-ARTⅡ制御方法について」と題する書面を交付し,侵害の事実はない旨を説明したこと,②上記和解契約に係る和解契約書に,「互いに本和解の内容を不当な方法で営業に利用しない」旨の条項が存在すること,③原告Aが,被告のした特許出願(特願2000-282355号)に対して刊行物を提出する際,上記和解契約書の写しを添付書類として提出したこと,④この件につき,被告から代理人を通じて抗議があったが,原告Aは回答していないこと,以上の各事実は認めるが,その余は否認ないし争う。
(2) 本件訴訟の提起及び追行が不法行為を構成するとの被告の主張については,争う。
前記和解契約の対象となったのは,あくまで本件特許権とは別の特許権(特許第3048865号)である。そのことは,原告スタビロが被告に対し,この和解契約の日付(平成14年3月4日)よりも前の日付(平成13年1月31日及び同年11月13日)で警告書(甲5,6)を送付した事実があるにもかかわらず,同契約においては本件特許権について一切触れられていないことからも明らかである。この和解契約の席上,本件特許権の扱いも話題に上ったが,被告から納得のいく説明が得られず,お互いの見解は平行線をたどったままであった。当時,被告は,裁判をやらざるを得ないならば,やって頂くしかないと述べていたものであり,訴訟による解決を望んだのはむしろ被告の方である。それを今になって,訴訟提起及びその追行自体が不法行為を構成するなどと主張されるのは,原告らにとって甚だ心外である。
以上のとおりであるから,いずれにせよ,本件において,被告が主張する不法行為の成立する余地はない。
第4  当裁判所の判断
1  争点1(構成要件B及びCの充足性)について
(1)  第2,2(3)記載のとおり,本件特許発明を構成要件に分説すれば,下記AないしDのとおりである。
A① 船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と,
② これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と,
③ 前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは,各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し,
④a 更に,船の横揺角を検知する傾斜センサー(1)と,
b その情報を解読させると共に制御信号を出力するコントロール部(2)と,
c コントロール部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した
⑤ 液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて,
B 傾斜センサー(1)から出力される船の横揺れ状況をコントロール部(2)で解読した船の平均揺動角度が,予め設定してある値との比較に基づき,横揺角が小さくタンク内の液体(17)が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は,復原力に悪影響を与えないように空気ダクト(14)のバルブ(15)を強制的に閉じて液体(17)を停止させ,
C また,横揺れ状況が変わり悪影響を与える恐れがないと判断した場合は,空気ダクト(14)のバルブ(15)を開き液体(17)の移動を自由にするという
D 液体(17)の制動を自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法
上記の各構成に照らせば,本件特許発明に係る船舶の動揺軽減装置の制御方法は,船舶の横揺れを軽減するために,U字型のタンクを搭載して液体をその中に入れ,その揺動と船舶の横揺れを相殺する従来技術(前記ART)を基本的な構成とした上(構成要件A①~⑤),傾斜センサーから得られるデータを基に算出した船の平均揺動角度を予め設定した数値と比較し,この数値より小さい場合には,タンク内の液体が船の復原力に対しむしろ悪影響を与えているものと判断し,空気ダクトのバルブを閉じて液体の移動を停止させ,もってARTを非作動とする(構成要件B)一方で,平均揺動角度が予め設定した数値より大きい場合には,悪影響を与える恐れがないと判断して,上記バルブを開いて液体の移動を自由にし,もってARTを作動させる(構成要件C)ものであると解される。
(2)  ところで,上記のような船舶の動揺軽減装置の制御方法が,「傾斜センサー‥‥から出力される船の横揺れ状況をコントロール部‥‥で解読した船の平均揺動角度が,予め設定してある値との比較に基づき,横揺角が小さくタンク内の液体‥‥が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は,復原力に悪影響を与えないように空気ダクト‥‥のバルブ‥‥を強制的に閉じて液体‥‥を停止させ」(構成要件B)る一方で,「横揺れ状況が変わり悪影響を与える恐れがないと判断した場合は,空気ダクト‥‥のバルブ‥‥を開き液体‥‥の移動を自由にする」(同C)という液体の自動制御を特徴とするものである(同D)といえるためには,コントロール部で解読した平均揺動角度と予め設定した数値を比較し,平均揺動角度がこの数値より小さい場合には必ず空気ダクトのバルブを閉め,この数値より大きい場合には必ず同バルブを開けるように作動するものでなければならない,すなわち,平均揺動角度と予め設定した数値を比較した結果が,バルブの開閉と一対一の対応関係にあるものでなければならないというべきである。
なぜなら,仮に何らかの理由により,平均揺動角度と予め設定した数値を比較した結果が,バルブの開閉と一対一の対応関係にないのであるならば(すなわち,平均揺動角度が予め設定した数値より小さいにもかかわらず,バルブを閉めない場合が存在したり,逆に予め設定した数値より大きいにもかかわらず,バルブを開けない場合が存在したりするのならば),それはもはやバルブの開閉を平均揺動角度に係らしめているとはいえず,特許請求の範囲の記載の解釈として,「横揺角が小さくタンク内の液体‥‥が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は,‥‥‥空気ダクト‥‥のバルブ‥‥を強制的に閉じて液体‥‥を停止」(構成要件B)させ,かつ,「悪影響を与える恐れがないと判断した場合は,空気ダクト‥‥のバルブ‥‥を開き液体‥‥の移動を自由にする」(同C)という液体の自動制御を特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法(同D)とはいえないと解されるからである。
(3)  しかるに,前記前提となる事実(第2,2(4))に,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告方法は,バルブを開閉してタンク内の液体の制動を自動的に制御するに際し,その開閉の判断を,①横揺れ周期(横揺れを繰り返すその一回の横揺れに要する時間),②横揺角(横揺れによる傾斜の角度),③ヒール角(貨物の片積み,給油,乗客の移動等による船体の傾斜角度)の3つの要素に係らしめ,これら3つの条件を独立に判断した上でバルブの開閉(ARTの作動/非作動)を決めるものであって,上記①~③の各条件を予め設定された数値と比較して,その結果いずれも作動の範囲内にあればARTを作動させ,逆に,このうち1つでも停止の範囲内にあればARTを停止させるものである(そのことは,原告らも争わない。)。
そうすると,被告方法においては,「平均揺動角度」(構成要件B)に相当する上記②の横揺角が,予め設定した2度よりも大きい数値を示し,これだけをみればバルブを開けてARTを作動すべき場合であっても,他の2つの要素(上記①の横揺れ周期及び同③のヒール角)のうち,どちらか(あるいは両方)の数値が非作動の範囲にあれば,バルブは開かずARTは作動しないことになる。
このような船舶の動揺軽減装置の制御方法が,平均揺動角度と予め設定した数値を比較した結果を,バルブの開閉(ARTの作動/非作動)と一対一に対応させているものでないことは明らかであるから,被告方法は,バルブの開閉を平均揺動角度のみにかからしめているとはいえず,「横揺角が小さくタンク内の液体‥‥が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は,‥‥‥空気ダクト‥‥のバルブ‥‥を強制的に閉じて液体‥‥を停止」(構成要件B)させ,かつ,「悪影響を与える恐れがないと判断した場合は,空気ダクト‥‥のバルブ‥‥を開き液体‥‥の移動を自由にする」(同C)という液体の自動制御を特徴とするものとはいえない。
よって,被告方法は構成要件B及びCをいずれも充足せず,本件特許発明の技術的範囲に属するものではない(なお,原告は,上記①の横揺れ周期及び同③のヒール角に基づく制御は,同②の横揺角に基づく制御との関係では付加的な構成にすぎず,本件特許発明の技術的範囲の属否とは関係ない旨を主張するが〔平成15年7月18日付け原告準備書面(2)7~8頁〕,上記(2)で判示したところに照らし,採用できない。)。
2  争点4(不法行為の成否)について
(1)  訴訟を提起及び追行するに際し,提訴者において,自己の主張しようとする権利又は法律関係の事実的,法律的根拠につき,高度の調査・検討が要請されるならば,裁判制度の自由な利用が阻害され,ひいては憲法(32条)が裁判を受ける権利を保障する趣旨にもとる結果となりかねず,妥当でない。
このような点を考慮すれば,訴えの提起及び追行が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限られると解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)。
(2)  これを本件についてみるに,前提となる事実(第2,2)に,証拠(甲1~9,乙4。ただし枝番号は省略。以下同じ。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件においては,①本件訴訟提起に先立つ平成14年3月4日,被告は,原告らと別の特許権(特許第3048865号)につき和解契約を締結した際,上記特許権の侵害を疑われた別表1の番号1~6記載の各船舶の動揺軽減装置につき,任意に設計変更した後の動作を示す「MUP-ARTⅡ制御方法について」と題する書面を交付し,侵害の事実はない旨を説明したこと,②上記和解契約に係る和解契約書には,「互いに本和解の内容を不当な方法で営業に利用しない」旨の条項が存在するが,それにもかかわらず,原告Aは,被告のした特許出願(特願2000-282355号)に対して刊行物を提出する際,上記和解契約書の写しを添付書類として提出したこと,③これに対し,被告は代理人を通じて抗議したが,同原告は現在に至るまで何の回答もしていないこと,④原告らは,平成15年3月12日に本件訴訟を提起したが,その係属中である同年10月7日に訂正審判を請求し,同年11月26日付け審決(甲9)により訂正が認められたことによって,本件明細書における特許請求の範囲の記載が,第2,2(2)記載に係る現在のものとなったこと,以上の各事実が認められる。
しかるに,他方において,本件で提出されたすべての証拠(甲1~11,乙1~18)及び弁論の全趣旨によれば,⑤本件特許発明は,要約すると,横揺れ状況のデータから平均横揺角度を算出し,これが予め設定した値より小さい時には,ARTの作動を停止し,大きいときにはARTを作動させるというものであるところ,横揺角が船の復原力に悪影響を与える場合があるか,あるいは,そもそも横揺角と復原力がどのような関係にあるかについては,理論上一概に決しきれない問題があり,少なくとも被告が主張するように,横揺角が船の復原力に悪影響を与えるというのは誤った理論であり,当業者ならば,そのことを容易に理解できるとはいえないこと,⑥したがって,本件訴訟提起時において,原告らが,本件特許権自体に,例えば無効事由が存在するなどの問題があることを知っていたか,あるいは容易に知り得たとはいえないこと,⑦上記⑤,⑥の事情に加え,上記和解契約の対象となった特許権(特許第3048865号)及び本件特許権の各内容に照らしても,和解契約締結の際に,被告が原告らに対し,別表1の番号1~6記載の各船舶の動揺軽減装置の設計変更後の動作を示す「MUP-ARTⅡ制御方法について」と題する書面を交付するとともに,侵害の事実はない旨を説明したことによって,原告らがこれら動揺軽減装置が本件特許権を侵害するものではないことを知っていたか,あるいは容易に知り得たとはいえないこと,⑧また,本件訴訟の経過を踏まえ,上記訂正審判請求前の特許請求の範囲の記載と現在の特許請求の範囲を比較・検討しても,この訂正請求は特許権者が特許権侵害訴訟提起中に請求するものとして(特許権者が,侵害訴訟で被告の立場に立たされた者から無効の主張がされたことなどを受けて,同訴訟係属中に訂正審判を請求することが少なくないのは,当裁判所に顕著な事実である。),他の訂正請求と特段変わるところのないものであり,原告らが上記審判請求時において,被告方法が本件特許権を侵害するものではなく,本件訴訟の追行・維持が困難であることを知っていたか,あるいは容易に知り得たとは認められないこと,以上の各事実が認められる。
上記⑤~⑧の認定事実に照らせば,同①~④の事実関係を前提としても,原告らによる本件訴訟の提起及び追行が,例えばその主張に係る権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであって,かつ原告らがそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起したなど,裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠くものとは認められない。
したがって,原告らによる本件訴訟の提起及び追行が,違法な行為として,民法709条所定の不法行為を構成するものとはいえない。
3  結論
上記1によれば,原告らの本訴請求はいずれも理由がなく,また,上記2によれば,被告の反訴請求もまた理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 吉川泉 )
裁判官 青木孝之は,退官のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 三村量一
 

別紙 第1図 省略

別紙 第2・3図 省略

別紙 別表1 省略

別紙 参考グラフ図 省略

 

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