【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(346)平成18年 5月29日 東京地裁 平16(ワ)23041号 職務発明対価請求事件 〔エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ職務発明事件〕

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(346)平成18年 5月29日 東京地裁 平16(ワ)23041号 職務発明対価請求事件 〔エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ職務発明事件〕

裁判年月日  平成18年 5月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平16(ワ)23041号
事件名  職務発明対価請求事件 〔エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ職務発明事件〕
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA05290008

要旨
◆従業員等が使用者等に対して在職中になした職務発明の対価の支払を求めた事案で勤務規則等の対価の支払時期が定められているときには当該定めによる支払時期が消滅時効の起算点となることを前提に、当該勤務規則等で相当の対価につき特許権の存続期間中、一定の期間ごとに特許発明の実施の実績に応じた額を支払う旨の定めがある場合には、当該特許発明の実施に対応する分ごとに消滅時効の起算点となる旨判示した事例
◆本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の額について、「相当の対価」の算定方法は「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」、「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」さらには使用者等が現実に利益を受けた場合には使用者等が当該利益に貢献した程度といった諸般の事情を総合的に考慮して算定することができるとした上で、事案に当てはめて詳細に「相当の対価」について認定判示した事例

新判例体系
公法編 > 産業経済法 > 特許法〔昭和三四年法… > 第二章 特許及び特許… > 第三五条 > ○職務発明 > (四)消滅時効
◆特許法(平成一六年法律第七九号による改正前のもの)第三五条に基づく職務発明の相当の対価の請求は、勤務規則等において、特許権の存続期間中、一定の期間ごとに特許発明の実施の実績に応じた額を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがされている場合においては、各期間の特許発明の実施の実績に応じた額の支払時期が、相当の対価の支払を受ける権利のうち、各期間における特許発明の実施に対応する分の消滅時効の起算点となると解すべきであるから、本訴提起の時点において、支払時期から民法所定の一〇年を経過していた部分については、消滅時効が完成したというべきである。

 

出典
裁判所ウェブサイト
判タ 1250号305頁
判時 1967号119頁
新日本法規提供

評釈
生田哲郎=森村晋・発明 103巻8号76頁
寺田明日香・知財管理 56巻10号1573頁
牧野知彦・パテント 62巻3号71頁

参照条文
特許法35条(平16法79改正前)
特許法35条1項
特許法35条3項
特許法35条4項
民法166条1項

裁判年月日  平成18年 5月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平16(ワ)23041号
事件名  職務発明対価請求事件 〔エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ職務発明事件〕
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA05290008

原告 X
同訴訟代理人弁護士 津山齊
同訴訟復代理人弁護士 吉田誠
同 菊地将人
被告 エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
同代表者代表取締役 石川宏
同訴訟代理人弁護士 光石忠敬
同 光石俊郎

主  文

1  被告は、原告に対し、金1222万0428円及びこれに対する平成16年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は、これを8分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4  この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する平成16年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は、被告の従業員であった原告が、被告に対し、別紙1(特許目録)記載1の特許権(以下、別紙1(特許目録)記載1ないし10の各特許権を、同目録中の番号に従って「本件特許権1」などといい、本件特許権1ないし10を併せて「本件各特許権」という。)に係る発明(以下「本件発明1」という。)、本件特許権2、6、8及び10に係る発明(以下「本件発明2」という。)、本件特許権3に係る発明(以下「本件発明3」という。)並びに本件特許権4、5、7及び9に係る発明(以下「本件発明4」という。)が特許法35条1項所定の職務発明に当たり、それらの発明について特許を受ける権利を被告に承継させたとして、被告に対し、同条3項に基づき、各特許を受ける権利の相当の対価のうち、一部請求として、各特許を受ける権利につき、それぞれ2500万円(遅延損害金を含む。)の支払を求めた事案である。
1  前提となる事実(括弧内に証拠を掲示したもの以外は、当事者間に争いがない。)
(1)  当事者
ア 原告
原告は、昭和24年3月、a工業専門学校(現b大学)を卒業後、同年5月、電気通信省電気通信研究所の職員となった(甲30、乙2、弁論の全趣旨)。
原告は、昭和27年8月1日、旧日本電信電話公社法(昭和59年法律第85号による廃止前のもの。以下「旧公社法」という。)の施行により、日本電信電話公社(以下「公社」という。)の職員となった。
原告は、昭和52年1月、公社を退職し、被告に入社した。
原告は、被告において、花弁形タイプホイールプリンタの研究等に携わり、平成11年、被告を退職した。
イ 被告
被告は、昭和51年に設立され、日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)等の保有技術の技術移転及び保有特許等の普及活用のあっせん、電子・通信・情報処理・部品・材料等の技術に関連する技術協力、調査研究・コンサルティング・試験、ハードウェア・ソフトウェアの設計・製作並びに商品・製品の販売等を目的とする株式会社である。
被告の設立当時の商号は「日本通信技術株式会社」であった。
被告の商号は、昭和60年、公社の民営化に伴い、「エヌ・ティ・ティ技術移転株式会社」に変更され、平成2年、現在の商号に変更された(以下、商号変更の前後を区別せず、単に「被告」という。)。
ウ 公社及びNTT
昭和27年8月1日、旧公社法が施行され、同日、公社が成立した(旧公社法附則)。
昭和59年、日本電信電話株式会社法(平成9年法律第98号による改正前のもの。以下「NTT法」という。)が施行され、昭和60年4月1日、NTTが成立した。公社は、NTTの成立の時において解散し、その一切の権利及び義務は、その時においてNTTが承継した(NTT法附則1条、3条10項、4条1項)。
(2)  原告の発明
原告は、被告に在職中、本件発明1ないし4(以下、本件発明1ないし4を併せて「本件各発明」という。)をした。
本件各発明は、その性質上被告の業務範囲に属し、かつ、本件各発明をするに至った行為は、被告における原告の職務に属するものであるから、本件各発明は、特許法35条1項所定の職務発明に当たる。
本件各発明は、カセット型花弁形タイプホイールを使用する印字装置(プリンタ)に関する発明である。
花弁形タイプホイール印字装置は、活字の選択を高速化するために、タイプホイールと呼ばれる円盤の円周に沿って多数の活字を一体成型し、タイプホイールを活字選択モータによって自在に選択し、適時に適切な活字部分を印字すべき位置に移動させ、その活字部分をハンマで打撃し、もって紙に印字する装置である。花弁形タイプホイール印字装置においては、通常、多種類の活字の印字に対応できるように、複数のタイプホイールを交換する必要がある。そのため、交換に要する空間を圧縮し、かつ、交換に要する時間を短縮しつつ、タイプホイールの着脱操作性を高めることが求められる。それと同時に、印字の正確性を期するため、タイプホイールの回転方向位置とタイプホイールを回転駆動するモータ軸の回転方向位置とを精密に位置合わせすることも求められる。本件各発明は、その課題を技術的に解決したものである。
(3)  特許を受ける権利の譲渡及び設定登録
原告は、被告に対し、本件各発明に係る特許を受ける権利を譲渡し、被告は、別紙1(特許目録)記載のとおり、我が国(本件特許権1ないし4)のほか、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)(本件特許権5及び6)、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(以下「英国」という。)(本件特許権7及び8)及びドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」という。)(本件特許権9及び10)において特許出願し、設定登録を受けて、本件各特許権を取得した。
(4)  従業員の発明に関する被告の定め
被告は、昭和52年1月8日に社員発明考案取扱規程(甲11)を制定施行した。その内容は、別紙2記載第1のとおりである(ただし、抜粋である。)。その後、実施補償金の上限は、平成元年度支払分より、150万円から200万円に増額された。また、実施補償金の支払方法は、平成2年度(以下、「年度」という場合は、当該年の4月1日から翌年の3月31日までをいう。)から、各年度ごとの支払から権利存続期間中の3年ごとの支払に改められた。被告は、平成11年4月1日に同規程を改正し、施行した(甲12)。これらの内容は、別紙2記載第2のとおりである(ただし、抜粋である。以下、被告の社員発明考案取扱規程を、その時期を問わず、「被告規程」という。)。
(5)  被告の実施状況等
ア 被告は、本件各発明を自ら実施していない。
イ 被告は、本件特許権を被告とともに保有していた株式会社リコー(以下「リコー」という。)とともに、ブラザー工業株式会社(以下「ブラザー工業」という。)、シャープ株式会社(以下「シャープ」という。)、松下電器産業株式会社(以下「松下電器」という。)及びシルバー精工株式会社(以下「シルバー精工」という。)に対し、本件各特許権の通常実施権を許諾した。
各実施料算定期間ごとのライセンシー及び被告が得た実施料は、次のとおりである。

実施料算定期間 ライセンシー 被告が得た実施料
昭和58年度から
昭和60年度まで
ブラザー工業 7500万円
昭和61年度 ブラザー工業 4330万5154円
昭和62年度 ブラザー工業 4490万1243円
昭和63年度 ブラザー工業 4219万9100円
シャープ 3339万3931円
昭和64年(平成元年)度 ブラザー工業 4361万3799円
シャープ 1060万3543円
松下電器 1000万円
平成2年度から平成4年度まで ブラザー工業 9322万3190円
シャープ 812万4225円
松下電器 2699万6947円
シルバー精工 484万0678円
平成5年度から平成7年度まで ブラザー工業 2690万6439円
シャープ 133万2916円
松下電器 542万5328円
シルバー精工 12万2779円
平成8年度から平成10年度まで ブラザー工業 1541万2532円
シャープ 10万7955円
松下電器 3486円
合計 4億8551万3245円

ウ 上記イの実施料収入への本件各発明の寄与度は、いずれも同等であり、本件各発明により被告が得た実施料収入は、次の計算式のとおり、各発明につきそれぞれ1億2137万8311円である(円未満切り捨て)。
485,513,245円÷4=121,378,311円
(6)  実施補償金等の支払
被告は、原告に対し、被告規程に基づき、本件各発明に関し、譲渡補償金4000円、登録補償金1万2000円を支払ったほか、次のとおり、実施補償金を支払った。

支払った時期 支払った実施補償金の額
昭和61年7月ころ 414万円
昭和62年8月ころ 229万5258円
昭和63年7月ころ 149万7000円
平成元年7月ころ 200万円
平成2年9月ころ 200万円
平成5年9月ころ 200万円
平成7年 131万3000円
平成12年3月ころ 126万円
合計 1650万5258円

(7)  本件各発明の共同発明者ら
本件各発明の共同発明者であるA(以下「A」という。)、B(以下「B」という。)及びC(以下「C」という。)は、いずれもリコーの従業員である。
(8)  本件各発明に関する表彰等
原告は、平成4年3月13日、本件各発明に関し、被告から表彰を受けた(甲15の3、弁論の全趣旨)。
2  争点
(1)  本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の額
(2)  本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の請求権は時効により消滅したか。
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の額)について
(原告の主張)
ア 本件各発明の経緯
(ア) 開発の経緯
a 原告は、昭和52年10月から昭和59年6月までの間、プリンタメーカーであるリコーに技術コンサルタントとして随時出張し、リコーのエンジニアと共同してプリンタの開発・商品化のための研究等を行った。
b プリンタの開発プロジェクトの遂行期間は、昭和52年第3四半期から昭和59年第2四半期までの約7年間であった。原告は、その期間のうち、毎週1回月曜日の午前8時20分から午後5時30分までの昼休みを含む9時間10分を、本件各発明に関する研究等に費やした。
c 開発組織は、リコーのD専務の直属組織であり、E企画部次長、F部長(以下「F」という。)、原告、G課長(以下「G」という。)、B、C及び他の部員約20名からなっており、原告のみが被告の従業員であった。
d 開発の場所は、東京都大田区c1丁目3番6号所在のリコー大森事務所であった。
(イ) 作業内容
全体作業を機能別に各作業ユニットに分けて開発が進められた。作業ユニットは、〈1〉全体設計、〈2〉印字部の設計、〈3〉印字ハンマの設計、〈4〉スペーシングの設計(リニアモータの開発、リニアモータを使用したプリンタの性能・適用設計のための米国における出張調査)及び〈5〉全体の電子制御部の設計であった。ユニット分けは、F、G及び原告の合議によって決められた。
原告は、この作業ユニットについて、世界の技術動向を参照しつつ、問題点の解決、提案及び指導をした。原告は、とりわけ、印字部、印字ハンマ、スペーシングの各部設計に努力し、印字部については、花弁形タイプホイールのプラスチック材料の耐衝撃特性を向上させるため、材質の選定及び形状の決定を行い、花弁形タイプホイールのカセット化の提案及びその機構設計を検討し、印字ハンマについては、小型軽量化を検討し、スペーシングについては、リニアモータの採用による動作特性の改善等について検討した。
(ウ) 開発研究の目標
開発の当時、IBMやオリベッティが欧米のプリンタ(タイプライターを含む。)市場を事実上独占(寡占)していた。開発を主導してこれに後発参入するに当たっての原告の目標は、他社にない特徴、低価格及び使い勝手の良さを実現し、競争力を獲得することであった。当時のプリンタを操作して美麗・正確な文書を迅速に作成するために、ユーザには高度な熟練と技能を求められていたから、専門のタイピストでなくても容易に操作が可能なように、ユーザの使い勝手を飛躍的に向上させる必要があった。
そのため、原告は、ユーザの具体的な使用場面を詳細に検討し、分析した。
欧米では、英字の大文字・小文字だけでなく、ピリオド、カンマ、クエスチョンマークなどの各種記号、斜体文字、ギリシャ文字等の多様な活字が使用されるが、当時最先端の花弁形タイプホイールでも64文字程度までしか収容できず、多様な文字を使用するためにはユーザが作業中に随時タイプホイールを交換する必要があった。しかし、この交換作業は、面倒で時間を要し、極めて非能率的であった。そこで、多様な文字・記号を使用頻度の高いものから順に分類し、頻度順に複数のカセットに収め、かつ、各カセットの交換を容易かつ迅速に行えるようにすれば、文書作成作業における多大な技術革新が期待できた。
原告は、これを実現すべく、創意工夫をこらしたのである。
(エ) 開発研究の内容
カセット化された花弁形タイプホイールは、常時ホームポジションを保持していなければならない。そうでなければ、適時に適所に適切な文字や記号を印刷できない。そのため、プリンタにセットすると花弁形タイプホイールは、選択モータで確実に保持されるようにすることが必要であった。
また、花弁形タイプホイールカセットの着脱操作は、簡便でなければならない。そこで、ラジカセのカセットのように、レバーを手前に引けばカセットが手で取り出せ、向こう側に戻せば正しくセットされるように構成される必要があった。
カセットの着脱性能を向上させるためには、カセット及び選択モータが、一体として、ユーザから見て前後にスムーズに滑動するように構成する必要があった。
これらの技術的課題を解決したのが本件各発明である。
イ 原告の貢献度
(ア) 原告は、リコーへ随時出張していた期間中に本件各発明をしたものであり、被告の施設や機材を一切使用していない。被告は、本件各発明に関し、何らの研究設備や実験設備も用意せず、何らの特別の参考資料やデータも提供せず、何らの費用の負担もしていない。かえって、上記期間中に、被告は、原告によるコンサルティング、技術移転、オペレーションサポートの役務提供の対価として、合計1億9000万円の売上げを得ている。
(イ) 原告以外の本件各発明の共同発明者は、すべてリコーの従業員であり、被告は、原告以外の本件各発明の共同発明者らに対し、何らの特別の給付をしていない。
(ウ) 本件各発明の母胎となる技術やノウハウは、原告が研究し、創出したものであり、被告には、本件各発明の母胎となる技術やノウハウの蓄積がなかった。
被告は、本件各発明は出願当時に公社が開発していたプリンタと同様の基本的構成を有していると主張するが、公社のプリンタは、タイプホイールのカセット化さえなされておらず、従来のタイプホイールプリンタと比較して、タイプホイールの交換作業は何ら改善されていなかった。それを画期的に単純化することに成功し、文書作成作業を飛躍的に効率化した本件各発明と、公社のプリンタとは、技術的思想が異なる。
(エ) 原告は、本件各発明をするに当たり、共同発明者らの中で、主導的な働きをした。本件各発明の基本部分は、原告が実質的に単独で創作したものである。
(オ) 本件各発明に係る特許明細書の原稿を起案したのは、原告であり、明細書の技術的内容については、ほとんど訂正されることなく、被告及びリコーによって特許出願された。本件各特許権に係る出願、登録、維持、ライセンス契約の締結等に要する労力及び費用は、すべてリコーが負担し、被告は、実施料を受領するのみで、何ら特別な出捐をしていない。
(カ) 被告は、原告の出張期間中の給与及び補償金を支払ったのみで、原告に対し、他に何ら特別の給付をしていない。そもそも、リコーへの出張自体も原告の人脈に基づくものであり、被告は、単にそれを許可したのみである。
(キ) 被告は、日本のみならず、米国、英国及びドイツにおいても特許出願をし、本件各発明が優れていることを認めている。また、被告による本件各発明に係る特許出願は、すべて登録された。
(ク) 原告は、本件各発明に関し、被告から複数回の表彰を受けている。
(ケ) 被告は、公社と被告とが実質的に同一体であるから、原告が公社においてプリンタ関連の業務に従事し、技術者としての教育を受けていたという事情や、原告が被告においてプリンタ分野の技術移転業務等を行うことにより公社保有の技術情報を利用することができた等の事情は、被告の本件各発明への貢献として考慮されるべきとの趣旨の主張をする。
しかし、被告は、技術移転業務だけでなく、公社の研究開発遂行上必要な特許・文献等の技術情報・需要動向等の外部情報の調査等を受託する「オペレーションサポート業務」や、一般企業に対する電気通信分野の「技術コンサルティング業務」等をも行っていたのであり、公社に代わって「技術移転業務」を行うことのみが被告の存在意義であったのではない。また、公社と被告とは全く別の法人格であり、原告が本件各発明をした昭和53年当時、公社は、被告の株式を全く有していなかった。さらに、被告の設立当初の役員や従業員の大部分が公社出身者であったとしても、法人の実体は、その構成員によって影響を受けるものではない。
したがって、被告は、形式的にも実質的にも、公社とは別個独立の存在であり、実質的に同一体であると評価することはできない。
(コ) 被告は、本件各発明が、公社において技術者として教育を受けた原告の職責上担当していた技術分野に属するものであると主張するが、原告は、公社においてプリンタ分野についての教育を受けたことはない。
(サ) 上記(ア)ないし(コ)の各事情を総合考慮すると、原告の本件各発明への貢献度は80%を下らない。
ウ 相当の対価の額
本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価については、本件各発明ごとに算定すべきものであるが、その額は、以下のとおりである。
本件各発明により被告が得た利益は、上記1(5)ウのとおり、各発明につきそれぞれ1億2137万8311円であり、原告の本件各発明への貢献度は、上記イ(サ)のとおり、80%を下らないから、本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の額は、次の計算式のとおり、各発明につきそれぞれ9710万2648円である(円未満切り捨て)。
121,378,311円×0.8=97,102,648円
原告は、上記1(6)のとおり、被告から各種補償金として合計1652万1258円を受領しており、本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価のうち支払済みの金額は、次の計算式のとおり、413万0314円ないし413万0315円である。
16,521,258円÷4=4,130,314円(円未満切り捨て)
したがって、支払済みの金額を控除した相当の対価の額は、次の計算式のとおり、各発明につきそれぞれ9297万2334円ないし9297万2333円である。
97,102,648円-4,130,314円=92,972,334円
本件訴訟では、上記対価の額の一部として、各発明につきそれぞれ2500万円を請求する。
エ 「原告に対する特別の待遇(後記「(被告の主張)」イ)について」
被告は、本件各発明を評価して、原告に対し、昭和53年から平成3年までの間に、他の同時期入社の同年代社員に比して年末賞与を合計約500万円多く支給したと主張する。
しかし、原告に対して高額の年末賞与が支払われていたとしても、それは、単に、原告の本来の職務である技術移転業務、技術コンサルティング業務、オペレーションサポート業務等の実績が、他の従業員よりも高く評価されていたからにすぎない。Hの陳述書(乙2)には、昭和53年の原告の年末賞与は他の同期社員のそれと比較して約80万円多く支給された旨の記載があるが、仮にこれが真実であったとしても、この時点では、本件発明1、2及び4に係る特許出願がされたばかりであり、本件発明3については出願すらされていなかったのであるから、当該年末賞与が本件各発明と対価関係にあるとは到底いえない。
また、被告は、本件各発明により被告が特許料収入を得ていることを理由に、原告を企画推進部事業計画担当の統括部長に抜擢し、原告に対し、他の同時期入社の同年代社員に比して約800万円多く給与を支給したと主張する。
しかし、被告の主張する人事は、原告を当該役職に就かせることが被告にとって利益になると評価されたからであり、特許料収入をもたらしたとの理由のみで、企画推進部事業計画担当の統括部長というポストを任せたとの主張は、不自然かつ不合理である。
また、被告は、平成4年に原告に支払った褒賞金100万円が、本件各発明の対価として支払われたと主張するが、これは、原告の日頃の業務精励に対する感謝金にすぎない。
したがって、被告が原告に対して与えたとされる約1400万円分の「特別の待遇」は、いずれも、本件各発明に対する対価とは評価し得ない。
(被告の主張)
ア 被告の貢献度
(ア) 被告と公社との実質的同一性
a 被告の設立趣旨
被告は、日本電信電話公社電気通信研究所(以下「公社研究所」という。)を中心に実施されてきた研究開発の成果を技術移転し、調査・試験等の業務を受託実施する法人として、昭和51年12月17日に設立された。設立の目的は、公社研究所の研究開発の成果を、公社の事業のみならず、広く一般産業界に普及・活用することにより、日本の技術水準を高め、日本国民の福祉の向上に寄与することにあった。
b 旧公社法下の制約
公社は、旧公社法により設立された法人であり、公社の業務は旧公社法3条で法定されていた。また、公社が事業に投資する場合には、業務運営上の必要性及び郵政大臣の認可が必要とされ、投資できる事業の範囲は政令で定めることとされていた(旧公社法3条の4)。
公社の性格上、自らが業務を行うには制約があったことから、被告を設立し、公社に代わって技術移転を代行させることとした。
c 被告の役員人事及び従業員の採用
被告の発足当時、役員6名中4名は公社研究所の出身者であり、その後も主要な常勤役員は、公社研究所の出身者であった。主要業務を行う従業員25名も、すべて公社研究所の出身者であり、その後も主要な業務を行う従業員は、公社研究所の出身者であった。
d 被告の株主
被告の設立当時の株主は、通信機器メーカー、電線メーカー及び銀行の計10社並びに公社研究所出身の被告の設立当時の代表取締役1名、常務取締役1名及び取締役1名であり、被告が設立された当時、公社は、被告の株式を有していなかった。
昭和55年に被告が7000万円の増資を行った際、公社は、郵政大臣の認可を受けて被告に出資し、公社が保有する被告の株式がその発行済株式の総数に占める割合は、28.6%となった。
昭和60年、被告の資本の額は1億7000万円となり、NTTが保有する被告の株式がその発行済株式の総数に占める割合は、41.2%となった。
被告は、平成2年3月、増資を行って資本の額を4億7006万3800円とし、平成8年、NTTが保有する被告の株式がその発行済株式の総数に占める割合は、60.7%となった。
平成13年、NTTは、被告の発行済株式の総数を保有することとなり、現在に至るまで、被告の発行済株式の総数を保有している。
NTT法の成立により、被告が、株式の上でも本来あるべき姿になったものであり、被告は、設立当初から公社と実質的に同一体であるというべきである。
(イ) 公社による教育
原告は、昭和24年3月、a工業専門学校を卒業後、同年5月、電気通信省電気通信研究所の技術員として、方式実用化部電信方式課に配属された。その後、原告は、勤務の傍ら、d大学法学部に入学し、同大学を卒業している。
原告は、昭和27年8月1日に公社の職員となった後、公社研究所において電信課や精密工作研究室に配属された。
原告は、昭和42年9月、宅内機器研究部の精密機械研究室において、入出力機器担当研究調査専門員として、フライング印字プリンタの研究、マルチヘッドタイプの研究、高速ラインプリンタの実用化等の設計試作を行った。その後、昭和47年1月から入出力機器担当研究専門調査役としてマーケティング調査を行い、その結果に基づき、昭和51年、キーボードプリンタの研究試作を行った。
このように、原告は、研究を専門に行う役職にあり、公社を退職するまでの約10年間にわたり、プリンタ関連の研究開発業務を職務上担当し、プリンタにおける専門の技術を習得した。
原告が昭和52年1月に被告に入社した際も、被告は、原告を、プリンタ等端末機器についての研究調査の要員とし、また、主要な特許情報の選択的提供(特許SDI)のプリンタ分野における要員とした。
原告は、被告において、花弁形タイプホイールプリンタのほか、プリンタとの関連が非常に深い業務の技術移転、技術協力等の業務を行っていた。そのため、原告は、被告に入社した後も、公社から花弁形タイプヘッドプリンタに関する技術情報等を相当程度得ていた。このことは、被告において、原告がプリンタ機構関係の技術移転の担当者であったことからも裏付けられる。
このように、本件各発明は、被告と実質的に同一体であった公社において技術者として教育を受けた原告が、その職責上担当していた技術分野に属するものである。
(ウ) 本件各発明は原告に当然に期待されていたものであること
被告とリコーとの技術協力契約においては、印字品質の面でIBM Selectricプリンタと同等なプリンタの開発・実用化を行うこと及びその具体的な仕様が定められていた。本件各発明は、そのように具体的に定められた仕様に基づくプリンタの実用化の目的で生まれたものであり、原告は、被告の担当者として本件各発明を行うことが当然に期待されていたものである。
(エ) 本件各発明は公社が開発したプリンタと基本的な構成を同じくするものであること
本件各発明は、いずれも、出願当時に公社が開発していた花弁形タイプヘッドプリンタと同様の基本的構成を有し、主に実用機としての操作性向上を図るために、同じく出願当時に技術水準として知られていたタイプヘッド・カセット等の構成部材をこれに組み合わせて、一部変更し、それに伴う構成部材の付加や改変を行ったものである。
(オ) 被告とリコーとの契約及び本件各発明についてのライセンス契約は被告及び公社の実績及び信頼性があって初めて可能となったものであること
被告とリコーとの技術協力契約(甲16の1)及び「技術協力契約書に関する覚書」(甲16の2)は、V3-2プリンタという開発・商品化目標に沿う技術知識及び信頼を被告及び公社が蓄積していたことにより、初めて締結されたものである。
また、本件各発明についてのライセンス契約は、本件各発明の分野における被告及び公社の長年にわたる実績及び高い信頼性がなければ締結できなかったものである。
(カ) 原告の待遇
被告は、原告が本件各発明をしたことから、地位の面で同期の者に比して破格の待遇を行った。すなわち、被告は、平成2年、本件各発明による特許料収入があるという原告の実績から、特別契約社員でありながら企画推進部事業計画担当の統括部長に抜擢した。
(キ) 以上の各事情を総合すれば、被告の貢献度は、少なくとも97%である。
イ 原告に対する特別の待遇
(ア) 昭和58年から平成3年までの年末賞与(12月支給)は、同時期入社の他の同年代社員に比して、支給月数の割合にして0.5ないし1.8月、支給額にして20万ないし100万円高い処遇を行い、その結果、被告は、原告に対し、同年代の他の社員と比較して、合計約500万円多く年末賞与を支給した。
(イ) 原告は、平成2年3月にいったん被告を退職し、同年4月、上記ア(カ)のとおり、特別契約社員として採用され、企画推進部事業計画担当の統括部長に抜擢された。
その結果、被告は、原告に対し、同時期入社の他の同年代社員に比して、2倍、約800万円多い額の給与を支払った。
(ウ) 被告は、原告に対し、平成4年3月13日、同日の社長表彰に際し、褒賞金として100万円を支払った。社内褒賞金の額は、通常、5000円である。
(エ) このように、被告は、原告が本件各発明をしたことについて、給与等の面で、同時期入社の他の同年代社員に比して、合計約1400万円の特別の待遇を行った。
ウ 相当の対価の額
被告が、原告に対し、本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡の対価として既に支払った額は、上記1(6)の補償金1652万1258円及び上記イ(エ)の1400万円の合計3052万1258円である。
そして、上記アによれば、本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価は、被告が既に支払った3052万1258円で十分に足りる。
(2)  争点(2)(本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の請求権は時効により消滅したか。)について
(被告の主張)
ア 消滅時効の起算点
被告規程によれば、平成元年度までは、各年度ごとに実施補償金が支払われ、その支払時期は、翌年度末である。平成2年度以降は、3年度ごとに実施補償金が支払われ、その支払時期は、権利存続期間の3年、6年、9年及び12年を経過した日の属する年度の翌年度以降であるから、該当する翌年度の4月1日である。
すなわち、各実施料算定期間ごとの実施補償金の支払時期は、次のとおりである。

実施料算定期間 支払時期
昭和58年度から昭和60年度まで 昭和62年3月31日
昭和61年度 昭和63年3月31日
昭和62年度 平成元年3月31日
昭和63年度 平成2年3月31日
昭和64年(平成元年)度 平成3年3月31日
平成2年度から平成4年度まで 平成5年4月1日
平成5年度から平成7年度まで 平成8年4月1日
平成8年度から平成10年度まで 平成11年4月1日

被告規程のように、相当の対価を分割支払として、特許権の存続期間中、一定の期間ごとに特許発明の実施の実績に応じた額を使用者から従業者に支払う旨の定めがされている場合、相当の対価のうち分割された各期間における特許発明の実施に対応する分については、それぞれ当該分割金の支払時期が到来するまでその支払を求めることができないのであるから、相当の対価の支払を受ける権利について、分割された各期間における特許発明の実施に対応する分ごとに、当該支払時期から消滅時効が進行する。
イ 消滅時効期間
相当の対価の請求権は、特許法35条3項によって認められた法定の債権である。この請求権は、商行為である権利の承継契約の締結がなければ生じないから、この意味で商行為により生じた請求権である。すなわち、会社が職務発明と認定した場合でも、それが会社の事業にとって利益になる発明か否かについて判断した上で、その裁量により権利の承継を決定しているのであり、必要がなければ承継しないこともできるのであるから、相当の対価の請求権は、会社の営業のための行為としての承継契約があって初めて具体的に発生する請求権である。
したがって、相当の対価の請求権の消滅時効期間は、商法522条により、5年である。
ウ 相当の対価の請求権の消滅
本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の請求権は、譲渡補償、登録補償及び実施補償を基礎付ける事実について認められる相当の対価の支払時期から既に5年の時効期間が経過しており、消滅時効が完成している。
被告は、平成17年3月10日の本件第1回弁論準備手続期日において、上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
仮に、消滅時効期間についての上記イの主張が認められず、消滅時効期間が10年であるとしても、上記1(5)イの表の「昭和58年度から昭和60年度まで」の項から「平成2年度から平成4年度まで」の項までの実施料算定期間に係る相当の対価の請求権は、譲渡補償、登録補償及び実施補償を基礎付ける事実について認められる相当の対価の支払時期から既に10年の時効期間が経過しており、消滅時効が完成している。
被告は、平成17年3月10日の本件第1回弁論準備手続期日において、上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
エ 「時効の中断」(後記「(原告の主張)」ウ)について
原告は、被告が原告に対して実施補償金を支払ったことが民法147条3号所定の「承認」に該当すると主張する。
しかし、本件において、原告は、被告が各実施料算定時期に対応して支払った実施補償金が特許法35条3項所定の相当の対価の一部に該当し、不足する額に相当する対価の額の支払を求めているものであるところ、被告は、当該不足する額に相当する対価の支払を一切行っていないのであるから、民法147条3号所定の「承認」に該当しないことは明らかである。
(原告の主張)
ア 消滅時効の起算点
被告は、本件のように勤務規則等に一定の期間ごとの実施に応じた実施補償金が数回にわたって支払われると規定されている場合には、各支払時期から各期間に対応する相当の対価の請求権の消滅時効が進行すると主張する。
しかし、相当の対価の請求権の消滅時効は、実施補償金の最終支払時期から進行し、このことは、実施補償金の支払に関する規定が分割払とされているか一括払とされているかによって変わるものではないと解すべきである。理由は、次のとおりである。
(ア) 最高裁判所の判決との整合性
被告の上記主張は、最高裁判所の判決(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁、以下「最高裁平成15年判決」という。)と整合しない。すなわち、上記判決は、従業員である発明者が、勤務規則の定めに基づき、既に、昭和53年1月に出願補償金として3000円、平成元年3月に登録補償金として8000円、平成4年10月に実績補償金として20万円の合計21万1000円の支払を受けていたが、さらに、その不足分の相当の対価の支払を使用者に請求したという事案において、発明についての相当の対価の額を250万円と算定し、不足分として228万9000円の請求を認めた原判決を支持した上で、上記実績補償金が支払われるべき時期が到来するまではその権利の行使につき法律上の障害があるとして、当該支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると判示している。被告の上記主張によれば、上記判決の事案において、出願補償金の支払時期が到来すると、相当の対価のうち出願補償金の対象期間に対応する分については、その支払を受ける権利の行使につき法律上の障害が解消されることになり、その結果、当該権利について消滅時効が進行することになるはずである。これに対し、上記判決は、実績補償金の支払時期が、相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると述べており、それとは別に、相当の対価の一部の支払を受ける権利につき出願補償金又は登録補償金の各支払時期からそれぞれ時効が進行するという考え方はとっていない。仮に、そのように考えたとすれば、相当の対価のうち出願補償金の対象期間に対応する分については、10年の経過により消滅時効が完成するから、認容額は228万9000円より小さくなるはずである。
出願補償金も登録補償金も実績補償金も、相当の対価の一部として支払われるという意味においては、それぞれの間に何ら差異はない。そして、上記判決の事案と、本件とは、実績補償金の支払が一括でされるか分割でされるかという点において相違があるものの、勤務規則等の定めにより相当の対価の一部としての各種補償金が数回にわたって支払われるという点で何ら相違はない。実施補償金が分割で支払われるからといって、最後の補償金の支払時期が到来する前に、相当の対価の請求権の一部につき法律上の障害が解消され、その部分については請求することが可能になると解さなければならない合理的な理由はない。
(イ) 相当の対価の請求権の一体性
特許法35条3項の相当の対価の請求権は、特許を受ける権利という1個の権利を譲渡したことについての対価の支払を受ける権利であって、特許を受ける権利を使用者に承継させた時に発生する実体法上1個の請求権である。そして、同条4項(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)によれば、その対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額を考慮して算定され、ここにいう「利益」とは、使用者等が現実に受けた利益ではなく、使用者等が当該権利承継により取得し得るものの承継時における客観的価値を指すものとされており、承継の時において一定の額として算定し得るものであると解されている。
このような相当の対価の請求権の性質からすれば、ある一定期間に対応する相当の対価の請求権というものはそもそも観念し得ないというべきである。権利承継時の客観的価値を事実審の口頭弁論終結時において評価する際、過去における一定期間ごとの実績を積算してその対価を算出することはあるが、これはあくまで対価の算定の手段にすぎず、相当の対価の請求権の上記性質と矛盾するものではない。したがって、勤務規則が補償金の支払方法についてどのように定めていようとも、相当の対価の請求権の消滅時効は、ある一定の時点から一体として進行するのであり、その各部について別々に消滅時効が進行することは全く想定されていない。
(ウ) 請求権の行使の期待可能性
継続的に補償金の支払を受けている従業員である発明者にとっては、使用者の支払う意思のある補償金の総額が最終的にどの程度になるのかが明らかでない状況において、受領済みの対価の額が特許法35条4項の対価の額に満たないと判断することは不可能である。勤務規則等は、通常、たびたび改訂されるため、支払を受けるべき補償金の総額を予想することもできない。また、使用者の支払う意思のある補償金の総額を判断することが可能であったとしても、使用者から補償金の支払を継続的に受けている状況において、使用者に対して不足分を請求すれば、相当の対価どころか将来支払われる予定の補償金の支払すら中止されるおそれがあるから、使用者に対して不足分を請求することを従業員である発明者に期待するのは酷である。このような状況において、相当の対価の請求権を行使しない従業員である発明者を、権利の上に眠る者と評価することはできない。
イ 消滅時効期間
被告は、職務発明の相当の対価の請求権の消滅時効期間は5年であると主張する。
しかし、職務発明の相当の対価の請求権は、特許法35条により従業者に認められた法定の権利であって、商行為により生じた債権ではないから、消滅時効期間は10年である。
ウ 時効の中断
仮に、相当の対価の請求権の消滅時効が各実施補償金の支払時期から進行するとしても、本件において、被告は、昭和61年から平成11年までの間、相当の対価の一部である実施補償金を継続して支払っており、これらの一部弁済は、民法147条3号所定の「承認」に該当する。被告が最後に原告に補償金を支払ったのは平成12年3月15日であるから、原告が本件訴えを提起した平成16年10月29日においては、相当の対価の請求権についての消滅時効は未だ完成していない。
第3  争点に対する判断
1  事実関係
証拠(甲1の1・2、2の1ないし3、3の1ないし3、4の1ないし7、11、12、14の1・2、15の1ないし3、16の1・2、21の1ないし8、29、30、乙2ないし4、7、11)及び上記前提となる事実並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。
(1)  原告の経歴、職務内容等(甲14の1・2、15の1ないし3、30、乙2、弁論の全趣旨)
ア 原告は、昭和24年3月、a工業専門学校(現b大学)を卒業後、同年5月、電気通信省電気通信研究所の職員となった。
原告は、昭和27年8月1日、旧公社法の施行により、公社の職員となり、公社研究所の電信課及び精密工作研究室に配属され、電信用気送管や通信機等の研究及び実用化、電報中継の機械化、中継席の研究及び実用化、データ伝送用端末、テープリーダ及びテープパンチャの研究及び実用化等に携わった。
昭和41年1月、電気通信工業の分野において、従前外国からの技術導入に依存していた端末機や機構部品技術の研究開発能力の充実を目的として、公社研究所に宅内機器研究部が新設された。原告は、昭和42年、宅内機器研究部の精密機械研究室に研究主任として配属され、同年9月から昭和44年1月まで、入出力機器担当研究専門調査役として、フライング印字プリンタの研究、中速度ラインプリンタに用いるマルチヘッドタイプの研究、DIPS用高速ラインプリンタの実用化等の設計試作を行った。
原告は、昭和44年1月、機構部品研究室室長補佐となり、昭和47年1月から、入出力機器担当研究専門調査役として、携帯形音響結合簡易プリンタの需要把握等のマーケティング調査を行い、その結果に基づき、昭和51年、サーマル印字音響結合携帯形キーボードプリンタの研究試作を行った。
原告は、昭和51年10月23日、高速ラインプリンタの実用化により事業の発展に寄与したとして、公社総裁の表彰を受けた。
このように、原告は、公社において、電気通信分野の入出力機器の研究開発等に携わり、昭和52年1月、公社を退職した。
イ 原告は、昭和52年1月7日、そのプリンタ分野における専門知識や技能等を評価され、被告に入社し、技術調査部システム開発部次長を命じられた。
被告の主な業務の1つである特許SDI業務(公社に対する選択的特許情報の提供業務)の対象分野は、7つあり、そのうちの1つがプリンタ分野であった。被告は、昭和51年12月17日に設立された会社であるところ、特許SDI業務については、7つの技術分野ごとに、専門の技能を持つ者を担当者として配置することが当初から予定されており、プリンタ分野については、被告の設立計画段階から、原告が候補として挙げられていた。また、被告の他の主な業務である調査研究業務に関しても、公社研究所における研究途上の試作品について、各種の業務形態のユーザーによる試用を実施し、端末機の機能に対するユーザーの評価、効用を調査する「新端末機器の効用調査」の担当者として、被告の設立計画段階から、原告が候補として挙げられていた。
原告は、被告において、情報機器開発部技術部長、同部主席技術部長を歴任し、主にプリンタ分野における技術移転業務(公社の技術の一般企業に対する移転)、技術協力業務(一般企業に対する技術的な指導・勧告・助言等)、オペレーションサポート業務(公社に対する市場調査・実験支援・データ処理等のサポート)、特許SDI業務等の業務に従事した。昭和55年には、公社から受託したデータ端末用インクリボンの評価の業務、昭和56年には、公社から受託した市販プリンタの印字品質調査の業務を行うとともに、昭和54年から昭和58年までの間、特許SDI業務として、入出力機器の機構に関する特許の調査の業務を担当していた。また、技術協力業務として、主にリコー及びその関連会社に対し、「情報処理システム用入出力機器に関する技術」、「TP-1プリンタの開発」等の技術協力を行うとともに、ブラザー工業に対し、「情報機器に関する技術」の技術協力を行った。
原告は、昭和61年7月1日、デイジーホイルプリンタ等に関する多くの発明を行い、その商品化に寄与したとして、被告代表取締役による表彰を受けた。
原告は、平成2年3月に被告を退職し、同年4月、特別契約社員として被告に採用された。原告は、その後、企画推進部事業計画部門統括部長、企画推進部事業計画部門部門部長を歴任し、被告に最適な管理会計システムの立案・導入等の業務に携わった。
原告は、平成4年3月13日、優良特許により被告の事業の収益に多大な貢献をしたとして、被告代表取締役による表彰を受けた。
原告は、平成11年3月、被告を退職した。
(2)  プリンタ技術の開発における公社の位置付け(乙11)
公社は、我が国における技術の先導役として、自ら多くの研究開発に取り組み、公社研究所の研究開発は、電気通信技術に関する多くの技術分野で寄与してきた。
公社は、昭和28年10月に「第1次5カ年計画」を策定してから、順次計画を策定し、昭和45年8月には「電信電話拡充7カ年計画」を、昭和47年8月には「第5次5カ年計画」を、それぞれ策定した。昭和45年8月に策定された「電信電話拡充7カ年計画」においては「データ通信、画像通信の拡充・開発」が公社の主要方針として掲げられた。この主要方針にのっとり、公社研究所においても、「研究実用化第4次5カ年計画」が策定され、研究実用化の重点を置くものとして、「通信サービスの向上に資する情報・通信用入出力機器、記憶装置、画像通信方式、移動通信方式」が掲げられた。
このころ、公社は、公衆サービス用又は為替通信用のキーボードプリンタや、金融業務用の専用端末等の各種データ宅内装置及び入出力機器を実用化した。これと並行して、公社は、公衆データ送信システムの端末として汎用的に使用できる装置の実用化を進め、昭和43年ないし昭和44年に、データ宅内装置を実用化した。もっとも、同装置に用いられているキーボードプリンタは、大型で重く、騒音が大きい等の欠点があったため、昭和45年ころから、小型・軽量化、低騒音化等を目標として研究を進めていた。
(3)  被告の設立の経緯等(乙2ないし4、弁論の全趣旨)
ア 公社の研究開発の強化に伴い、公社の有する技術的成果の蓄積は、広範な分野にわたって極めて大きなものとなり、昭和50年ころには、我が国の技術水準の向上及び国民の福祉の向上の観点から、公社の技術的成果の一般産業界への普及及び活用を図ることが強く要望されていた。もっとも、公社の保有する技術の分野は広範で、技術移転を受ける企業の理解の程度も多様であり、また、技術移転には、技術指導に附帯する契約書の作成、支払業務、特許料徴収業務といった業務が多い等の事情があり、公社の性格上、これらの業務を積極的に推進することは困難であった。
また、公社における研究実用化の先進化、多様化に伴い、特許・文献等の技術情報、需要動向等の外部情報の調査が重要性を増していたため、それらの調査を強化充実する必要があり、さらに、通信システムの高度化及び複雑化に伴い、信頼性等に関する調査・試験業務が一層増加する傾向にあったところ、これらの実施には、外部機関を利用して効率化を図る必要があると考えられていた。
このような社会の要請及び公社の動向に対応するため、昭和51年12月17日、被告が設立された。
イ 〈中略〉
ウ 被告の設立当初の株主は、通信機器メーカー、電線メーカー、銀行等の10社であり、公社は、被告の設立当初の株主には含まれていなかった。
被告が設立された当初、公社が事業に投資することは、旧公社法3条の4により制限を受けていた。すなわち、公社は、国際電信電話株式会社の株式を保有し、又は宇宙開発事業団に出資することができるほか、「その業務の運営上必要がある場合には、郵政大臣の認可を受けて、予算で定めるところにより、公社の委託を受けて公衆電気通信業務の一部を行なうことを主たる目的とする事業及び公社の公衆電気通信業務の運営に特に密接に関連する業務を行なうことを主たる目的とする事業に投資することができる」(同条1項)こととされ、同項の規定により公社が投資することができる事業の範囲は、政令で定めることとされていた(同条2項)。
昭和55年6月2日、旧日本電信電話公社法施行令(昭和60年政令第31号による廃止前のもの。)の一部改正により、旧公社法3条の4第2項の委任を受けた同令の規定が改正されて、公社が被告の事業に投資することが可能となり、公社は、同月25日、同条1項の郵政大臣の認可を受けて、同年7月18日、被告に4000万円の出資をした。
その後、被告は、昭和60年3月、平成2年3月、平成7年10月、平成13年7月及び同年12月に増資を行い、NTTがその発行済株式の総数を有する会社となった。
エ 被告の設立当初の役員6名のうち、非常勤取締役を除く4名すべてが、公社研究所の出身者であり、主要な業務を行う従業員約25名も、すべて公社研究所の出身者であった。
(4)  本件各発明に至る経緯(甲16の1・2、29、30)
ア プロジェクトの企画
リコーは、昭和52年ころ、新たな海外市場戦略を構築しており、その一環として、欧米のプリンタ市場に参入する計画を立案していた。当時、欧米では、IBMのSelectricプリンタが主流となっており、市場への参入を成功させるには、Selectricプリンタと同等又はそれ以上に使い勝手がよく、かつ、低価格のプリンタを開発する必要があった。そこで、リコーは、欧米向けプリンタの開発・商品化を目的とするプロジェクトを企画し、当時、プリンタ開発部部長であったFがプロジェクトリーダーとなった。
上記プロジェクトは、当初、リコー単独のプロジェクトとして企画されていたが、Fは、IBMやオリベッティに対抗できるようなプリンタの開発・商品化を成功させるには、外部から積極的に新しい知識・ノウハウ等を取り入れる等の工夫が必要と考え、以前からFと親しい原告にプロジェクトに参加してもらうことを提案した。その結果、リコーと被告との間で、昭和53年3月1日、技術協力契約(以下「本件技術協力契約」という。)が締結された。
イ 技術協力契約
本件技術協力契約の内容は、概要次のとおりである。
(ア) 目的
被告は、リコーの希望を受けて、その所有しているV3-2プリンタの開発に関する技術知識を開示し、リコーに技術的助言、勧告等の技術協力を行う。
(イ) 技術協力の申込み
リコーは、上記(ア)の技術協力を希望する場合には、技術の名称、内容その他別に定める必要事項を記載した文書により申し込むものとする。
(ウ) 技術協力の実施
リコーは、別に定める条件で被告の技術協力を受けるものとし、リコーの事業所内に被告の職員又は被告の指名する者の派遣を求めることができる。
(エ) 技術協力料等
リコーは、上記(ウ)に基づく技術協力の対価として、月額85万円を支払う。また、リコーの希望に基づく被告の職員の旅費及び技術協力に要した材料、資料等の購入等の協力直接費は、リコーの負担とする。
(オ) 契約期間
契約期間は、昭和53年3月1日から昭和55年2月28日までとし、契約を延長するときは、期間満了の1か月前までにリコー及び被告が協議して定めるものとする。
(カ) 工業所有権
被告が行った技術協力に密接に関連して、本件技術協力契約の期間内又は期間満了後1年以内に、被告若しくはリコーが単独で、又は被告及びリコーが共同で、発明をしたときの取扱いは、次のとおりとする。
a 被告又はリコーが発明をしたときは、その発明については、被告又はリコーが単独で特許権を取得することができるものとする。この場合において、被告又はリコーの一方が単独で取得した特許権について、他方は、通常実施権を得るものとする。
b 被告及びリコーが共同でした発明については、被告及びリコーが共同で特許権を取得することができるものとする。
ウ 技術協力契約書に関する覚書
リコー及び被告は、昭和53年3月1日、本件技術協力契約に関し、概要次のとおりの「技術協力契約書に関する覚書」(以下「本件覚書」という。)を締結した。
(ア) 技術協力の実施
上記イ(ウ)に基づく技術協力は、次のとおり実施されるものとする。
a 場所
東京都武蔵野市e町1-27-1号(被告)及び東京都大田区c1丁目3番6号(リコー)
b 期間
昭和53年3月から昭和55年2月までの2年間において、300日を限度とする。
c 担当者
被告システム開発部次長である原告及びリコー技術開発本部電子技術センター技師であるB
(イ) 技術内容
上記イ(ウ)に基づいて技術協力を受けるV3-2プリンタの開発技術の内容は、次のとおりとする。
a M/TWの分野に参入するため、印字品質の面で、IBM Selectricプリンタと同等なV3-2プリンタを目標として開発実用化を行う。
b V3-2プリンタの目標製品仕様は、次のとおりである。
(a) 印字方式
96字種Daisy Wheel使用インパクト印字方式
(b) SP、LF及び分解能
プロポーショナル及びハーフピッチ可能であること。
(c) 大きさ及び重量
高さ170×幅500×奥行き260,5kg以下
(d) 騒音
70db以下
(e) MTBF
1000H(Duty30%)
(f) 価格
本体5万円以下(電源カバー除く)
(g) その他
印字圧調整、カセットリボン使用など。
(ウ) 協力条件
a 上記(イ)を実現するため、プロジェクトの方針設定指導を行う。
b プロジェクトの打合せ、検討資料の提供等は、必要に応じて行う。
c プロジェクトにおける機能、設計、技術及び量産試作並びに評価実験測定は、リコーが行う。
d 被告からリコーへの成果は、プロジェクト進捗状況報告、技術上の成果及び目標とした実用化V3-2プリンタとする。
(エ) 技術協力の目標
本件技術協力契約による技術協力の目標は、上記(イ)の目標性能を具備したV3-2プリンタの開発実用化とする。
(オ) 成功報酬
上記(イ)の目標性能を具備したV3-2プリンタの開発実用化が成功し、その製品化が可能であるとリコーが判断した場合には、リコーは、被告に対し、成功報酬として、1000万円を現金で支払う。
(カ) 覚書の効力
本件技術協力契約の全部又は一部の効力が存続する限り、本件覚書の効力もまた存続するものとする。
エ プロジェクトの遂行
(ア) 本件技術協力契約及び本件覚書に基づき、「ETWプリンタの開発及び入出力機器に関する技術」というプリンタ共同開発プロジェクト(以下「本件プロジェクト」という。)が発足し、被告からリコーに対し、原告が派遣された。
本件プロジェクトにおいて開発・商品化の目標とされたプリンタは、いわゆる花弁形タイプホイールプリンタというインパクト印字方式のプリンタであった。
(イ) 開発作業は、全体の作業を機能別に分類し、各作業ユニットに分けて進められた。具体的には、〈1〉全体設計、〈2〉印字部(タイプホイール部分)の設計、〈3〉印字ハンマの設計、〈4〉スペーシングの設計、〈5〉全体の電子制御部の設計という分類で、このユニット分けは、F、G及び原告の3人の合議で決定された。
原告は、各ユニットについて総合的な技術的指導、提案等をする役割を任され、例えば、印字部の設計に関し、タイプホイールのカセット化を提案したり、印字ハンマに関し、小型軽量化を提案したりし、それらの実現のために各担当者と入念な打合せをするなどした。
(ウ) 原告がETWプリンタの開発において重要な要素であると考えたのは、タイプホイールの交換作業の単純化であった。
欧米では、英字の大文字及び小文字、各種記号(ピリオド・カンマ等)、特殊文字、特殊字体文字(イタリックタイプ等)等の多種多様な文字が使用されるが、タイプホイールに備えることができる活字の数には限界があった(通常は64字程度)ため、タイピストは、タイプ作業中、頻繁にタイプホイールを交換しなければならなかった。当時のプリンタの構造上、この交換作業には時間と労力を必要とし、文書の作成中にこの交換作業を行わなければならないのは非効率的であった。
そこで、原告は、このタイプホイールの交換作業を簡便に行うことができるプリンタを開発できれば、文書作成作業の能率が飛躍的に向上すると考えた。
原告は、昭和53年3月ころから、タイプホイール交換作業の単純化のための方策を考え始め、まず、タイプホイールのカセット化を提案した。タイプホイールを収容したホイールカセットをプリンタに装着する仕組みとすれば、プリンタへの装着作業自体は格段と容易になる上、タイプホイールに直接触れることによる手や衣服の汚損又はタイプホイールの破壊を防ぐことができると考えられたからである。
しかし、当時のプリンタの構造上、タイプホイールのカセット化のみでは、タイプホイール交換作業の能率を飛躍的に向上させるものではなかった。なぜなら、通常、タイプ作業中のホイールカセットは、その中心に活字選択モーターが接続されている上、その上部がプラテンと印字ハンマとに挟まれているため、その状態のままでは取り外すことができなかったからである。そこで、原告は、プリンタ内部の構造に何らかの工夫を加えることで、簡単にホイールカセットをプリンタから取り外しやすい位置に移動させることができないか、検討を重ね、同年8月ころ、プリンタに備えた着脱レバーを回動させることにより、ホイールカセットを引き抜きやすい位置(取替位置)へ移動させ、また、それを逆回動させることにより、挿入したホイールカセットを取替位置からプラテンに隣接する位置(作業位置)へ移動させることができる構造を発明した(本件発明4)。
原告は、これと並行して、カセット内のタイプホイールのホームポジション保持の仕組みについても検討した。通常、タイプホイールに活字選択モーターを係止する際、その都度、両者の相対的な位置合わせを手動で行わなければならなかったため、改善を加える必要があった。着脱レバーの操作によってカセットホイールを簡単にプリンタに装着できたとしても、装着後、毎回カセット内のタイプホイールと活字選択モーターとの位置合わせを手動で行わなければならないのでは、非効率的だからである。そこで、原告は、ホイールカセットの構造に工夫を加えることで、この位置合わせ作業を不要とすることができないか検討し、その結果、ホイールカセットの側面にホームポジション保持スプリングを設け、これによってカセット内のタイプホイールを固定してその基準位置を常に一定に保ち、ホイールカセットと活字選択モーターとの面倒な位置合わせを不要とする構造を発明した(本件発明2)。
次いで、本件発明2及び4をもとに、開発グループにおいて検討を重ね、原告、A及びBは、タイプホイールの中心部に溝を形成することにより、タイプホイールと活字選択モーターとの接続を容易にするとともに、タイプホイールと活字選択モーターとの位置合わせを光学的手段により行う方法を発明した(本件発明1)。
さらに、原告、B及びCは、ホイールカセットを変移可能に収容するカセット収容部を備えることにより、ホイールカセットの交換を容易にするとともに、ホイールカセットを適切な印字作業位置に位置決めすることにより、安定した印字を可能にする方法を発明した(本件発明3)。
(エ) 本件覚書においては、上記ウ(ア)aのとおり、技術協力の実施の場所は、東京都武蔵野市e町1-27-1号(被告)及び東京都大田区c1丁目3番6号(リコー)とされていたが、実際には、本件プロジェクトの方針設定指導、打合せ、資料提供、量産試作、評価実験測定等は、いずれもリコーにおいて行われ、被告の施設が利用されたことはなかった。
また、被告は、本件プロジェクトの遂行について特別な支出をしていない。
(4)  本件各発明の意義(甲1の1・2、2の1ないし3、3の1ないし3、4の1ないし7、乙7)
プリンタは、文字等を紙等の印字媒体上に形成する印字装置であり、その文字等の形成方式(印字方式)等により、各種のものがあった。
花弁形タイプホイールプリンタは、母型の活字体を用いた逐次印字方式のインパクトプリンタの一種である。花弁形タイプホイールプリンタをはじめとする活字形逐次印字方式のインパクトプリンタは、〈1〉タイプヘッド(活字体)、〈2〉タイプヘッドを選択的にインパクト(打撃)する印字機構部、〈3〉プラテン、〈4〉タイプヘッドと印字機構部を搭載してキャリッジ軸上をプラテンに沿って往復走査させて印字動作するタイプキャリッジ及び〈5〉インキリボンを基本構成とする。
花弁形タイプホイールプリンタは、そのタイプヘッドに特徴がある。中央のハブから放射状に形成された弾性を有するスポークの先端に、同心円状に一組の母型活字を成形した活字ホイールをタイプヘッドとし、この活字ホイールを中央のハブ部で回転させ、活字部を選択的に後方からプラテンに向けて印字ハンマーで打撃し、この活字を、インキリボンを介してプラテン上にセットされた紙等の印字媒体上にインキを付着させることにより、印字するものである。
本件各発明は、いずれも、花弁形タイプホイールプリンタ、特に、タイプホイールをカセットに収容したカセット型タイプホイールを使用する花弁形タイプホイールプリンタに関する発明であり、花弁形タイプホイールプリンタにおけるカセット型タイプホイールの着脱に伴う操作性を向上させ、又は相対位置合わせ等を容易にするための構成を提供するものである。
ア 本件発明4
本件発明4は、別紙1特許目録4の「特許請求の範囲」記載のとおり、印字装置の花弁形タイプホイールのカセット化に関する発明であり、花弁形タイプホイールのカセットを、簡単かつ確実に着脱できる構成とし、特に、所定の厚みを有するカセットの交換を容易にした発明である。
本件発明4に係る特許出願がされた昭和53年9月18日当時、花弁形タイプホイールプリンタの基本構成及びタイプホイールカセットを用いる構成は、同年10月21日発行の特開昭53-120921号公報(乙7参考資料3、以下「本件公知公報」という。)の対応ドイツ特許出願である同年8月17日公開のドイツ公開特許第2803433号明細書により公知であった。
また、タイプホイールカセットを用いた花弁形タイプホイールプリンタにおいて、カセットをガイド部材に着脱可能とするとともに、解除レバーの操作によりカセットを駆動モータの回転軸に設けた駆動継手手段に対して接離可能とし、接離に合わせてタイプホイールの連結部と駆動モータの回転軸の駆動継手手段とを連結し、又は解除する構成も、上記明細書により公知であった。
さらに、花弁形タイプホイールプリンタにおいて、ハンドル操作によりタイプホイール駆動モータをプラテンに対して接離可能とし、タイプホイールの着脱を容易にした構成は、昭和51年3月発行のIBM Technical Disclosure Bulletin18巻10号3356頁「半自動プリントホイール装填機」により公知であった。
したがって、本件発明4は、駆動モータ及びこれと一体的に移動する印字ハンマーの移動量をホイールカセットの移動量より大きく定めることにより、ホイールカセットの抜取りを容易に行うことができるようにした点にその技術的意義がある。
イ 本件発明2
本件発明2は、別紙1特許目録2の「特許請求の範囲」記載のとおり、印字装置に関する発明であり、タイプホイールがカセット化された花弁形タイプホイールプリンタにおいて、タイプホイールに中心穴を設けるとともに、タイプホイールを収容するカセットに中心穴と係合する突起を有する可動部材を設けることにより、タイプホイールを駆動するための軸と、カセット内に収容されたタイプホイールとの結合を行う際の相対的位置決めを容易にした発明である。
本件発明2に係る特許出願がされた昭和53年12月7日当時、花弁形タイプホイールプリンタの基本構成及びタイプホイールカセットを用いる構成が公知であったこと並びにタイプホイールカセットを用いた花弁形タイプホイールプリンタにおいて、カセットをガイド部材に着脱可能とするとともに、解除レバーの操作によりカセットを駆動モータの回転軸に設けた駆動継手手段に対して接離可能とし、接離に合わせてタイプホイールの連結部と駆動モータの回転軸の駆動継手手段とを連結し、又は解除する構成が公知であったことは、上記アのとおりである。
また、本件公知公報には、タイプホイールカセットを用いた花弁形タイプホイールプリンタにおいて、タイプホイールカセットのタイプホイール駆動手段側の壁に対向して設けられたリーフばね支持クリップに可動部材であるばね指部を形成し、その先端の自由端部がタイプホイールの中心部をカセットの内側に押圧し、タイプホイールに設けられた中心溝にタイプホイール駆動手段の軸が挿入される際には、その軸が自由端部を押してタイプホイールが自由に回転駆動される構成が開示されているが、上記ばね指部及び自由端部は、タイプホイールの中心を特定の位置に定めるものではない。
したがって、本件発明2は、カセットに設けた可動部材の突起により、タイプホイールの中心穴の位置を特定の位置に定め、カセット装着時に駆動モータの軸との係合を容易に実現することができるようにした点にその技術的意義がある。
ウ 本件発明1
本件発明1は、別紙1特許目録1の「特許請求の範囲」記載のとおり、カセット型タイプホイールを使用する印字装置に関する発明であり、花弁形タイプホイールを使用する印字装置において、タイプホイールに設けた溝とタイプホイールの駆動手段に設けた係合手段により、カセット内に収容されたタイプホイールとタイプホイールの駆動手段との位置合わせを簡易かつ確実に行い、また、カセットに開口部を設け、カセット内に収容されたタイプホイールの基準位置を光学的検出手段により正確に検出可能とした発明である。
本件発明1に係る特許出願がされた昭和53年11月21日当時、花弁形タイプホイールプリンタの基本構成及びタイプホイールカセットを用いる構成が公知であったこと並びにタイプホイールカセットを用いた花弁形タイプホイールプリンタにおいて、カセットをガイド部材に着脱可能とするとともに、解除レバーの操作によりカセットを駆動モータの回転軸に設けた駆動継手手段に対して接離可能とし、接離に合わせてタイプホイールの連結部と駆動モータの回転軸の駆動継手手段とを連結し、又は解除する構成が公知であったことは、上記アのとおりである。
また、花弁形タイプホイールプリンタにおいて、タイプホイールの基準位置を光学的に検出することは、上記アの「半自動プリントホイール装填機」により公知であった。
したがって、本件発明1は、タイプホイールに設けた溝部及びタイプホイールの駆動手段に設けた係合手段の構成により、タイプホイールカセットを印字装置に取り付ける際に、その都度タイプホイールの回転方向位置とタイプホイールの駆動手段の回転方向位置とを位置合わせすることを不要とし、着脱操作を容易にした点にその技術的意義がある。
エ 本件発明3
本件発明3は、別紙1特許目録3の「特許請求の範囲」記載のとおり、印字ホイールを収容し、印字機構に対し着脱可能に用いられる印字ホイールカセットを使用するプリンタに関する発明であり、印字ホイールカセットを変移可能に収容する空間を有する印字ホイールカセット収容部をキャリッジに設け、印字ホイールカセットの着脱を容易にし、印字の際に印字ホイールカセットをプラテンに接近した位置に位置決めすることを可能とした発明である。
本件発明3に係る特許出願がされた昭和54年9月20日当時、花弁形タイプホイールプリンタの基本構成及びタイプホイールカセットを用いる構成が公知であったことは、上記アのとおりである。
また、花弁形タイプホイールプリンタにおいて、ハンドル操作によりタイプホイール駆動モータをプラテンに対して接離可能とし、タイプホイールの着脱を容易にした構成が公知であったことは、上記アのとおりである。
したがって、本件発明3は、文字を選択するためのセレクションモータが第2の位置(印字ホイールカセットを交換するための位置)から第1の位置(印字のためのプラテンに接近した位置)へ移動した際に、印字ホイールカセット収容手段に挿入された印字ホイールカセットをプラテンに接近した位置へ位置決めさせるために、キャリッジ上で移動可能であり、かつ、印字ホイールカセットと当接する当接手段を設け、これにより、印字の際に印字ホイールカセットをプラテンに接近した位置に位置決めすることができ、安定した印字を行うことを可能とした点にその技術的意義がある。
(6)  本件各発明の権利化の過程(甲29、30、乙2)
ア 本件特許権2及び4の特許出願
原告が、本件発明2及び4をした後、Fは、これらの発明について特許出願をしようと考え、原告から特許出願書類の草案の提出を受けた。
その際、本件プロジェクトの構成員の間では、誰を発明者として特許出願をするかの問題が生じた。なぜなら、原告のみを発明者として特許出願をすると、本件技術協力契約によれば、その発明に係る特許権は被告が単独で取得し、リコーは通常実施権を取得することになるが、プロジェクトの人員は原告以外はすべてリコーの従業員であり、開発場所も専らリコーの事業所が使用されていたにもかかわらず、被告のみが特許権を取得することになるのは均衡を失すると考えられたからである。そこで、Fは、本件発明2及び4について、リコー及び被告が共同で特許出願をすることができるようにするため、リコーの技術者であるAを共同発明者として追加することとし、原告の了解を得て、原告及びAを共同発明者とし、被告及びリコーを共同出願人とした特許出願書類をリコーの特許部に提出した。そして、リコーの特許部において技術の特許性を審査した上で、特許出願を行うに至った。
イ 本件特許権1ないし4の権利化の過程
(ア) 本件特許権4について
本件特許権4の出願経過は、次のとおりである。
昭和53年9月18日 特許出願(特願昭53-113585)
昭和55年3月24日 出願公開(特開昭55-41205)
昭和60年3月11日 出願審査請求、手続補正書提出
昭和60年7月30日 拒絶理由通知
昭和60年7月30日 手続補正書提出
昭和60年9月17日 出願公告決定
昭和60年11月29日 出願公告(特公昭60-54186)
昭和61年1月24日ないし29日 特許異議申立て
昭和61年9月12日 手続補正書提出
昭和62年5月19日 特許異議決定(異議理由あり)
昭和62年5月19日 拒絶査定
昭和62年6月1日 拒絶査定不服審判請求
昭和62年6月29日 手続補正書提出
平成2年11月30日 拒絶理由通知
平成2年11月30日 手続補正書提出
平成3年3月1日 審決(登録審決)
平成3年7月30日 登録
(イ) 本件特許権2について
本件特許権2の出願経過は、次のとおりである。
昭和53年12月7日 特許出願(特願昭53-150502)
昭和55年6月11日 出願公開(特開昭55-77577)
昭和58年12月2日 出願審査請求、手続補正書提出
昭和59年9月18日 拒絶理由通知
昭和59年10月29日 手続補正書及び意見書提出
昭和60年7月31日 拒絶理由通知
昭和60年7月31日 手続補正書提出
昭和60年9月17日 出願公告決定
昭和60年11月29日 出願公告(特公昭60-54187)
昭和61年1月29日 特許異議申立て
昭和61年3月3日 特許異議申立て取下げ
昭和61年5月13日 登録査定
昭和61年8月14日 登録
(ウ) 本件特許権1について
本件特許権1の出願経過は、次のとおりである。
昭和53年11月21日 特許出願(特願昭53-142844)
昭和55年5月26日 出願公開(特開昭55-69461)
昭和60年3月11日 出願審査請求、手続補正書提出
昭和60年7月30日 拒絶理由通知
昭和60年7月30日 手続補正書提出
昭和60年9月24日 出願公告決定
昭和60年12月4日 出願公告(特公昭60-55308)
昭和61年5月13日 登録査定
昭和61年8月14日 登録
(エ) 本件特許権3について
本件特許権3の出願経過は、次のとおりである。
昭和54年9月20日 特許出願(特願昭54-120107)
昭和56年4月23日 出願公開(特開昭56-44659)
昭和58年1月5日  出願審査請求
昭和58年11月29日 拒絶理由通知
昭和59年1月9日  手続補正書及び意見書提出
昭和59年5月15日 拒絶理由通知
昭和59年6月25日 手続補正書及び意見書提出
昭和60年7月31日 拒絶理由通知
昭和60年7月31日 手続補正書提出
昭和60年9月17日 出願公告決定
昭和60年12月2日 出願公告(特公昭60-54872)
昭和61年1月31日 特許異議申立て
昭和61年3月3日  特許異議申立て取下げ
昭和61年5月13日 登録査定
昭和61年8月14日 登録
ウ 本件特許権5及び6(米国特許)、本件特許権7及び8(英国特許)並びに本件特許権9及び10(ドイツ特許)の権利化の過程
本件特許権5は、別紙1(特許目録)記載5のとおり、昭和57年1月12日に登録され、本件特許権6は、別紙1(特許目録)記載6のとおり、昭和58年10月11日に登録された。
本件特許権7は、別紙1(特許目録)記載7のとおり、昭和58年6月29日に登録され、本件特許権8は、別紙1(特許目録)記載8のとおり、同年12月7日に登録された。
本件特許権9は、別紙1(特許目録)記載9のとおり、昭和61年8月7日に登録され、本件特許権10は、別紙1(特許目録)記載10のとおり、平成2年4月12日に登録された。
エ 被告の関与
本件各発明の特許出願に関する事務手続は、主としてリコーの特許部が行い、被告は、原告を通じて報告を受けるのみであった。
(7)  本件各特許権の行使(甲21の1ないし8、29)
昭和60年ころ、ブラザー工業が開発したプリンタについて本件各特許権侵害の疑いがあるとして、ブラザー工業との交渉の機会が持たれ、リコー及び被告がブラザー工業に対し、本件各発明の実施を許諾し、ブラザー工業がリコー及び被告に対して実施料を支払うことで合意が成立した。この際のブラザー工業との交渉は、主としてリコーが行い、被告は、リコーから報告を受けるのみであった。ブラザー工業が被告に支払った実施料は、上記第2の1(5)イのとおりである。
リコー及び被告は、シャープ、松下電器及びシルバー精工に対しても、本件各特許権の実施を許諾し、上記第2の1(5)イのとおり、各実施料を得た。
(8)  原告の処遇(甲15の3、乙2、弁論の全趣旨)
被告は、原告に対し、昭和53年度から平成3年度までの年末賞与(12月支給)として、原告と同時期に被告に入社した同年代の従業員よりそれぞれ20万ないし100万円を多額に支払った。給与に対する賞与の支給月数の割合は、原告と同時期に被告に入社した同年代の従業員に比して、0.5ないし1.8月分増加している。被告が原告に支払った昭和53年度、昭和58年度及び昭和61年度から平成3年度までの年末賞与の合計を、原告と同時期に被告に入社した同年代の従業員3名の同時期の年末賞与の合計を平均したものと比較すると、492万1334円の増収となる。
また、原告は、平成2年3月、当時60歳で被告を退職したが、被告は、同年4月、原告を特別契約社員として採用した上、企画推進部事業計画部門統括部長を命じた。再雇用された特別契約社員を、被告の事業運営を左右する重要な地位に就かせることは異例であったが、上記の人事は、多額の特許料収入を被告にもたらしたという原告の実績にかんがみ、被告の当時の更田博昭代表取締役社長の事業計画及び月次経理を重視する方針の下に行われたものである。
被告が原告に対して支払った平成2年度及び平成3年度の原告の給与の合計は、1665万6000円であり、原告と同時期に被告に入社した同年代の従業員3名の同時期の給与の合計を平均したものと比較すると、830万4000円の増収となる。
被告は、原告に対し、平成4年3月13日、優良特許により被告の事業の収益に多大な貢献をしたとして、上記代表取締役による特別表彰を行うとともに、100万円の褒賞金を支払った。
原告は、平成11年3月、69歳で被告を退職した。
(9)  被告規程と原告に対する補償金の支払(甲11、12)
昭和52年1月8日に施行された被告規程(甲11)の内容は、概要別紙2記載第1のとおりである。
その後、被告規程の実施補償金の上限(別紙2記載第1の第11条)は、平成元年度支払分から、150万円から200万円に増額された。
さらに、実施補償金の支払方法(別紙2記載第1の第10条)は、平成2年度から、各年度ごとの支払が、権利存続期間中の3年ごとの支払に改められた。
平成11年4月1日に改正された後の被告規程(甲12)の内容は、概要別紙2記載第2のとおりであり、同改正後の被告規程は、同日、施行された。
被告は、原告に対し、上記第2の1(6)のとおり、被告規程に基づき、本件各発明について、譲渡補償金、登録補償金及び実施補償金を支払った。
2  争点(2)(本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の請求権は時効により消滅したか。)について
勤務規則等により職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等は、当該勤務規則等に、使用者等が従業者等に支払うべき対価に関する条項がある場合においても、これによる対価の額が特許法35条4項)の規定に従って定められる対価の額に満たないときは、同条3項の規定に基づき、その不足する額に相当する対価の支払を求めることができるものと解するのが相当である(最高裁平成15年判決参照)。
したがって、本件において、原告が、本件各発明の対価として、被告から少なくとも合計1652万1258円の支払を受けたことは当事者間に争いがないが、その支払を受けた額が特許法35条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは、原告は、被告に対し、その不足する額に相当する対価の支払を求めることができるというべきである。
もっとも、本件において、被告は、仮に原告が何らかの対価請求権を有していたとしても、既に時効により消滅したと主張するので、事案の内容にかんがみ、まず争点(2)から判断する。
(1)  消滅時効の起算点
ア 職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨を定めた勤務規則等がある場合においては、従業者等は、当該勤務規則等により、特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに、相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法35条3項)。対価の額については、同条4項の規定に従って、勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるのであるが、対価の支払時期についてはそのような規定は設けられていない。したがって、勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは、勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は、相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして、その支払を求めることができないというべきである。そうすると、勤務規則等に、使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には、その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年判決参照)。
イ そして、本件のように、勤務規則等において、相当の対価につき、特許権の存続期間中、一定の期間ごとに特許発明の実施の実績に応じた額を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがされている場合には、相当の対価のうち、各期間における特許発明の実施に対応する分については、それぞれ当該期間の特許発明の実施の実績に応じた額の支払時期が到来するまでその支払を求めることができないのであるから、各期間の特許発明の実施の実績に応じた額の支払時期が、相当の対価の支払を受ける権利のうち、当該期間における特許発明の実施に対応する分の消滅時効の起算点となると解するのが相当である。
ウ 原告は、これに対し、最高裁平成15年判決の事案においては、相当の対価250万円から、昭和53年1月に支払われた出願補償3000円、平成元年3月に支払われた登録補償8000円及び平成4年10月に支払われた工業所有権収入取得時報償20万円の合計21万1000円を控除した228万9000円について、工業所有権収入取得時報償支払時期からの消滅時効の成否を検討しており、出願補償の支払時期から消滅時効が進行するという考え方はとっていないから、上記イの判断は、最高裁平成15年判決と整合しないと主張する。
しかし、最高裁平成15年判決は、勤務規則等において、使用者が従業者の職務発明につき第三者から工業所有権収入を継続的に受領した場合には、受領開始日より2年間を対象として、上限額を100万円とする1回限りの工業所有権収入取得時報償を行う旨の定めがされていた事案、すなわち、特許発明の実施の実績に応じた対価の支払は1回限りとされていた事案に関するものであると解し得るから、上記イの判断は、最高裁平成15年判決に抵触するものではない。
したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
エ 原告は、また、特許法35条3項の相当の対価の請求権は、実体法上1個の請求権であり「使用者等が受けるべき利益」は特許を受ける権利の、承継の時において一定の額として算定し得るものであるから、ある一定期間に対応する相当の対価の請求権というものは観念し得ず、相当の対価の請求権の消滅時効は、ある一定の時点から一体として進行すると主張する。
しかし、実体法上1個の請求権を部分に分け、その各部の支払時期を異なるものとすることができることは明らかであり、その場合における支払時期の定めは、対応する部分についての権利行使における法律上の障害となるのであるから、消滅時効は、各部分について、各支払時期から進行することも明らかである。また、相当の対価のうち、ある一定期間の特許発明の実施に対応する部分を観念できないとする合理的理由はない(仮に、原告が主張するように、ある一定期間に対応する相当の対価の請求権というものを観念することができないとすれば、特許法35条3項との関係では、勤務規則等において、相当の対価につき、特許権の存続期間中、一定の期間ごとに特許発明の実施の実績に応じた額を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがあったとしても、その内容を具体的に確定することができず、使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項はないといわざるを得ない。そうすると、従業者等は、勤務規則等の定めにかかわらず、勤務規則等に定められた支払時期が到来する前であっても、特許を受ける権利の承継の時に相当の対価の全額の支払を求めることができ、その時から消滅時効が進行することとなりかねず、このような結論は、かえって従業者等に不利益な状況ともなり得るし、勤務規則等を定めた使用者等の合理的意思にも反するものというべきであって、不合理であるといわざるを得ない。)。
したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
オ 原告は、継続的に補償金の支払を受けている従業員である発明者に、使用者に対して対価の不足分を請求することを期待するのは酷であるとして、相当の対価の請求権を行使しない従業員である発明者を、権利の上に眠る者と評価することはできないとして、相当の対価の請求権の消滅時効は、実施補償金の最終支払時期から進行すると主張する。
しかし、原告が主張するように、相当の対価の請求権の消滅時効が実施補償金の最終支払時期から進行するとすることは、実施補償金の最終支払時期が到来するまでの間は、相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があること、すなわち、実施補償金の最終支払時期が到来するまでは、従業者等が対価を請求できないことを意味するのであり(多くの場合、最終支払期日は、特許権の存続期間の満了後となるものと想定されるから、従業者等が発明をしてから20年以上経過しなければ、相当の対価の支払を受ける権利を行使することができないこととなる。)、かえって従業者等に不利益な状況となり得るのであるから、勤務規則等の上記定めを原告の上記主張のように解すべき合理的な根拠はないというべきである。
したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
カ 上記第2の1(3)のとおり、原告は、被告に対し、本件各発明に係る特許を受ける権利を承継させたものである。
また、上記第2の1(4)のとおり、平成元年度までの被告規程においては、被告が特許を受ける権利を承継した発明について、被告に実施料収入があった場合には、被告は、その発明をした従業員に対し、毎年度1回、前年度の実施料収入の額に応じて、1件ごとに実施補償金を支払うものとされていたのであり、証拠(乙1)及び上記第2の1(4)ないし(6)の事実並びに弁論の全趣旨によれば、各年度の特許発明の実施料収入に応じた実施補償金の支払時期は、翌年度末であると認められる。そして、上記第2の1(4)のとおり、平成2年度以降の被告規程においては、被告が特許を受ける権利を承継した発明について、実施の実績が認められたときは、被告は、その発明をした従業員に対し、権利存続期間の3年を経過した日の属する年度の翌年度以降に、出願日から権利存続期間の3年を経過した日の属する年度の末日までの期間に得られた実施の実績に応じた実施補償金を、権利存続期間の6年、9年及び12年を経過した日の属する各年度の翌年度以降に、直前の実施補償金の対象期間の最終年度の翌年度から権利存続期間の6年、9年及び12年を経過した日の属する各年度の末日までに得られた実施の実績に応じた実施補償金を、権利満了日の属する年度の翌年度以降に、権利存続期間の12年を経過した日の属する年度の翌年度から権利満了日までの期間に得られた実施の実績に応じた実施補償金を、それぞれ支払うものとされていたのであり、証拠(乙1)及び上記第2の1(4)ないし(6)の事実並びに弁論の全趣旨によれば、各期間の特許発明の実施についての実施補償金の支払時期は、各期間の最終年度の翌年度の4月1日であると認められる。
したがって、本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価のうち、実施補償金部分の支払を受ける権利の支払時期、すなわち、消滅時効の起算点は、本件各発明のいずれについても、次のとおりであると認められる。
(ア) 昭和58年度から昭和60年度までの実施料収入に応じた分
昭和62年3月31日
(イ) 昭和61年度の実施料収入に応じた分
昭和63年3月31日
(ウ) 昭和62年度の実施料収入に応じた分
平成元年3月31日
(エ) 昭和63年度の実施料収入に応じた分
平成2年3月31日
(オ) 昭和64年(平成元年)度の実施料収入に応じた分
平成3年3月31日
(カ) 平成2年度から平成4年度までの実施の実績に応じた分
平成5年4月1日
(キ) 平成5年度から平成7年度までの実施の実績に応じた分
平成8年4月1日
(ク) 平成8年度から平成10年度までの実施の実績に応じた分
平成11年4月1日
(2)  消滅時効期間
職務発明に係る相当の対価の請求権は、特許法35条により従業者に認められた法定の権利であるから、商行為によって生じた債権には当たらず、消滅時効期間は10年と解すべきである。
被告は、これに対し、相当の対価の請求権は、特許を受ける権利の承継契約の締結がなければ生じないものであり、使用者である被告は、職務発明が事業にとって利益になる発明か否かを判断し、その裁量により権利の承継を決定しているのであるから、特許を受ける権利の承継契約の締結は会社の営業のための行為であって商行為に当たるとして、消滅時効期間は5年であると主張する。
しかし、特許法35条3項に基づく相当の対価の請求権は、勤務規則等に、使用者等が従業者等に支払うべき対価に関する条項がある場合においても、これによる対価の額が同条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは、その不足する額に相当する対価の支払を求めることができるものである(最高裁平成15年判決)から、特許を受ける権利を承継させる旨の契約によって生じたものとはいえず、商行為によって生じた債権に当たるということはできない。
したがって、被告の上記主張は、採用することができない。
(3)  時効の中断について
原告は、被告による実施補償金の支払が時効の中断事由である「承認」に該当すると主張する。
しかし、民法147条3号所定の「承認」とは、時効の利益を受ける当事者が、時効によって権利を失う者に対し、その権利の存在していることを知っている旨を表示することをいう。本件において、被告は、原告に対し、被告規程に基づいて実施補償金を支払ったものであるところ、被告が、実施補償金の支払をした際に、原告が、特許法35条3項に基づいて、本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の支払を求める権利を有すること、すなわち、被告規程による上記補償金額が同条4項の規定に従って定められる額に満たないことを知っていたとは認められないから、被告による実施補償金の支払は、民法147条3号所定の「承認」に当たるということはできない。
したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
(4)  消滅時効の成否
原告は、平成16年10月29日に本件訴訟を提起したものであるところ、上記(1)及び(2)によれば、本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価のうち、昭和58年度から平成4年度までの期間における特許発明の実施に対応する分(上記(1)カ(ア)ないし(カ))については、遅くとも平成15年4月1日の経過により、時効により消滅したものというべきである。
これに対し、平成5年度から平成10年度までの期間における特許発明の実施に対応する分(上記(1)カ(キ)及び(ク))については、本件訴訟の提起の日である平成16年10月29日までに消滅時効期間が経過しておらず、消滅時効は完成していない。
3  争点(1) (本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価の額)について
(1)  「相当の対価」の算定方法について
特許法35条4項は、同条3項所定の「相当の対価」の額について、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない」と規定している。したがって、特許を受ける権利の承継についての相当の対価を定めるに当たっては、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」及び「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」という2つの要素を考慮すべきであるが、これのみならず、使用者等が特許を受ける権利を承継して特許を受けた結果、現実に利益を受けた場合には、使用者等が上記利益を受けたことについて使用者等が貢献した程度、すなわち、具体的には発明を権利化し、独占的に実施し、又はライセンス契約を締結するについて使用者等が貢献した程度その他証拠上認められる諸般の事情を総合的に考慮して、相当の対価を算定することができるものというべきである。
そこで、上記1認定の事実を基礎として、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」及び「使用者等が貢献した程度」について、以下、検討する。
(2)  「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」について
被告が、ブラザー工業、シャープ、松下電器及びシルバー精工に対し、本件各特許権の実施を許諾し、合計4億8551万3245円の実施料を得たことは、上記1(7)のとおりである。このうち、平成5年度から平成10年度までの期間における特許発明の実施に対応する分は、4931万1435円である。
したがって、被告が受けるべき利益の額(平成5年度から平成10年度までの期間における特許発明の実施に対応する分に限る。)は、4931万1435円となる(なお、本件発明2及び4により被告が受けるべき利益の額について、本件特許権5ないし10の外国特許権によるものを含めて算定すること、上記実施料収入に対する本件各発明の寄与度が同等であることは、いずれも当事者間に争いがない。)。
(3)  「使用者等が貢献した程度」について
ア 上記1で認定したとおり、原告は、そのプリンタ分野における専門知識や技能等を評価されて被告に入社した者であり、本件各発明が行われたのは、原告がリコーに派遣されていた時期であるところ、原告の派遣は、被告とリコーとの間に締結された本件技術協力契約及び本件覚書に基づき、リコーへの技術協力を行うために行われたものであり、その際、技術協力の目標となる、プリンタの製品仕様も定められたのであるから、原告は、本件各発明を行うことが期待される地位にあり、そのための職場での支援環境が整えられていたということができる。このことは、原告のリコーへの派遣が、原告のプロジェクト参加を希望したリコーのFからの提案によるものであるとしても、被告において、上記のとおり、制度的な枠組を整えたものであり、これに対する上記の評価が変わるものではない。また、原告は、昭和24年から昭和52年まで、公社に勤務し、プリンタの研究に携わっていたのであり、公社は、我が国における技術の先導役として多くの研究開発に取り組んできた機関であって、原告のプリンタ分野における専門知識や技能は、そのような公社において養成されてきたということができるところ、被告は、公社との間に技術指導基本契約を締結しており、個別契約を締結して技術指導料を支払うことにより公社から技術指導を受けることのできる地位にあったのであるし、公社と被告との密接な関係からすれば、原告も公社研究所の出身者として、公社研究所在籍の研究者等との交流や意見交換の機会を設けることが通常以上に可能であると考えられるのであって、こういった恵まれた研究環境の享受は、被告の従業員であったことによるところが大きいということができる。さらに、被告は、原告に対し、給与、賞与等として、原告と同時期に被告に入社した同年代の従業員より1400万円以上多額の金員を支給していたものであり、待遇の面でも、原告が研究開発に専念できる環境を整備していたといえる。これらのことからすれば、被告は、本件各発明について、相当程度の寄与があったといえる。
しかし、他方、本件プロジェクトの企画は、専らリコーによって行われ、被告は関与しておらず、また、本件プロジェクトには、被告の施設は用いられることなく、原告以外の被告の従業員も直接関与せず、被告は原告に対する給与等の支給以外何らの支出もしていないのであり、かえって、被告は、本件技術協力契約により、リコーから月額85万円を得ることとされており、技術協力の目標性能を具備したプリンタの開発実用化が成功し、その製品化が可能であるとリコーが判断した場合には、リコーから1000万円の成功報酬を得ることとされていたものである。さらに、本件各発明の特許出願に関する事務手続は、主としてリコーが行い、被告は、原告を通じて報告を受けるのみであり、本件各特許権に関するブラザー工業等との交渉や実施許諾契約の締結も、主としてリコーが行い、被告は、リコーから報告を受けるのみであった。したがって、被告は、本件各発明に係る研究開発に関し、新たな設備投資や人員配置を行うことなく推移しており、当該開発研究の成否についてのいわゆるリスクを負担したものとは認められず、また、本件各特許権の権利化等に関しても、積極的な寄与を認めることはできない(なお、この点に関するリコーの果たした役割を被告による寄与と同視できるような事情は認められない。)。
以上の諸事情を総合的に考慮すると、被告が本件各発明がされるについて貢献し、又は上記(2)の利益を受けるについて貢献した程度としては、全体の70パーセントと認めるのが相当である。
イ 被告は、被告と公社とは実質的同一体であると主張し、本件各発明に関して公社が貢献した程度は、被告が貢献した程度と同視すべきであると主張する。
しかし、本件各発明がされた当時、公社は、事業への投資について旧公社法3条の4に基づく制限を受けており、被告の株式を全く有していなかったのであるから、被告が公社と実質的同一体であるということは到底できない。
このことは、本件各発明がされた後、公社又はNTTが被告の株式を段階的に取得し、平成13年には、NTTが被告の発行済株式の総数を保有することとなった事情を踏まえても同様である。
被告は、この点を指摘して、被告は設立当初から公社と実質的同一体であったところ、株式の上でも本来あるべき姿になったものであると主張するが、本件各発明がされた昭和53年ないし昭和54年当時において、公社は、旧公社法及び旧公社法の委任を受けた政令の規定上、被告が行っていた事業への投資を許されておらず、法令で必要とされていた予算の定めも郵政大臣の認可もなかったのであるから、被告の業務を公社の業務と同視することはできず、被告と公社が実質的同一体であったということは到底できない(上記の法令に基づく規制が、公社に対する不当な制約といえないことは当然である。)。
被告は、さらに、被告と公社とが実質的同一体であることの根拠として、被告の設立当初の役職員のほぼ全員が公社研究所の出身者であることを挙げるが、役職員のほぼ全員が公社研究所の出身者であるからといって、被告と公社とが、別個の事業を行い、別個の人員構成を有する法人であることに変わりはないのであって、被告と公社とを実質的同一体であると解すべき合理的根拠はない。
したがって、被告の上記各主張は、採用することができない。被告が貢献した程度を判断する上で、プリンタ技術の開発における公社の位置付けその他の公社の役割は、被告が、公社の職員であった原告のプリンタ分野における専門知識や技能等を評価して原告を採用したこと、及び公社との間で技術指導基本契約を締結し、公社から技術指導を受けることのできる地位にあったこと等の事情を通じて、上記のとおり、間接的に考慮されるにとどまるものと解すべきである。
(4)  「相当の対価」の額
ア 上記(1)ないし(3)によれば、本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡の「相当の対価」の額(平成5年度から平成10年度までの期間における特許発明の実施に対応する分に限る。)の合計は、被告が受けるべき利益の額4931万1435円から被告が貢献した程度70%を控除した1479万3430円となる(円未満切り捨て)。
49,311,435円×(1-0.7)=14,793,430円
イ 上記1(9)のとおり、原告は、被告から、被告規程に基づき、本件各発明に関し、257万3000円(平成5年度から平成10年度までの期間における特許発明の実施に対応する分に限る。)の実施補償金の支払を受けたことが認められ、これは、「相当の対価」の一部の支払に当たる(なお、本件各発明に係る特許を受ける権利の相当の対価のうち、上記2のとおり、平成4年度以前の期間の特許発明の実施に対応する分が時効消滅したことにかんがみ、この期間に被告より支払われた実施補償金等は、平成5年度以降の期間における特許発明の実施に対応する相当対価の算定に当たって、考慮しないこととする。)。
被告は、原告に対し、原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して合計約1400万円の特別の待遇を行ったから、この額は、「相当の対価」に含まれると主張する。
しかし、給与等が、原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して高額であったとしても、それは、原告の行う労務を評価した上でのこれに対する対価であって、本件各発明の対価とは到底認められない。また、原告が平成2年に被告を退職した後、被告が、特別契約社員として原告を採用し、人事上厚遇した上で比較的高額な給与を支払ったことも、同様に労務の対価であって、本件各発明の対価といえないことは明らかである。原告や他の従業員に支払われる労務の対価が、提供され、又は提供されることが期待される労務の質及び量によって変動するのは、むしろ当然であり、原告と同時期に入社した同年代の従業員の給与に比して、原告の給与が高額であったことは、原告が提供し、又は提供することが期待された労務の質及び量が原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して優れていたことを意味するのであって、被告が本件各発明の対価を支払ったことを意味するものではない。この点も、上記のとおり、使用者等による待遇面における貢献の程度として考慮されるにとどまるというべきである。
したがって、被告の上記主張は、採用することができない。
ウ そこで、上記アの「相当の対価」の額から上記支払済みの金額を控除すると、「相当の対価」の不足額は、1222万0430円となる。
14,793,430円-2,573,000円=12,220,430円
そして、本件各特許権の実施の許諾により得た実施料収入への本件各発明の寄与度がいずれも同等であることは、上記第2の1(5)ウのとおりであるから、相当の対価の額を本件各発明ごとにみると、それぞれ305万5107円となる(円未満切り捨て)。
12,220,430円÷4=3,055,107円
そうすると、それらの合計は1222万0428円となる。
第4  結論
以上によれば、原告の請求は、1222万0428円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年11月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容することとし、その余は棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 清水節 裁判官 山田真紀)

 

裁判官東崎賢治は、転補のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官 清水節

(別紙1)
特許目録
1 日本国特許第1331016号
発明の名称 印字装置
出願日   昭和53年11月21日
出願番号  特願昭53-142844
登録日   昭和61年8月14日
特許権者  リコー及び被告
発明者   B、原告及びA
特許請求の範囲
1 活字を設けた複数のフインガーを有するタイプホイールと、プラテンと、前記活字を打撃するための印字ハンマとを有する印字装置において、
タイプホイールを収容するためのホイールカセットと、
タイプホイールを駆動させるための駆動手段と、タイプホイールに放射状に配置されかつタイプホイールのフインガーの数に対し整数比で対応する数だけ設けられた複数の溝部と、前記駆動手段に設けられ任意の前記溝部と係合する係合手段と、タイプホイールに設けられた基準位置指示部と、該基準位置指示部を検出するための光学的検出手段と、
該光学的検出手段から発せられた光をタイプホイールに設けられた基準位置指示部に到達させるためにホイールカセットに設けられた開口部とを具備し、印字動作の開始にあたつては、前記タイプホイールに設けられた基準位置指示部を前記光学的検出手段により検出するまで前記駆動手段により前記タイプホイールを駆動することを特徴とする印字装置。
2 前記基準位置指示部は貫通した穴であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の印字装置。
2 日本国特許第1331017号
発明の名称 印字装置
出願日   昭和53年12月7日
出願番号  特願昭53-150520
登録日   昭和61年8月14日
特許権者  リコー及び被告
発明者   原告及びA
特許請求の範囲
1 活字を設けた複数のフインガーを有するタイプホイールと、プランテンと、前記活字を打撃するための印字ハンマーと、前記タイプホイールを駆動するための軸を有するタイプホイール駆動手段とからなる印字装置において、
前記タイプホイール駆動手段の軸を挿入するために前記タイプホイールに設けられた中心穴と、
前記タイプホイールを収容するカセツトと、該カセツトの前記タイプホイール駆動手段側の壁に前記タイプホイール駆動手段の軸を前記タイプホイールの中心穴に挿入しうるように設けられた第1の開口部と、
該第1の開口部が設けられた壁に対向した壁に設けられた第2の開口部と、
前記タイプホイールの中心穴付近に設けられた前記第2の開口部にあそびをもつて差し込まれる突出部と、
前記第1の開口部の設けられた壁に対向して設けられ一部が前記カセツトに固定された可動部材と、
該可動部材に前記カセツトの内側の方へ突出し前記タイプホイールの中心穴に入るように設けられた突起とを設け、
前記タイプホイールに設けられた中心穴に前記タイプホイール駆動手段の軸が挿入されるとき、この軸が前記可動部材に設けられた時を直接押して該突起を移動せしめ、前記軸を前記タイプホイールに設けられた中心穴から引き抜いたときは、前記突起が前記タイプホイールに設けられた中心穴に復帰することを特徴とする印字装置。
3 日本国特許第1331027号
発明の名称 プリンタ
出願日   昭和54年9月20日
出願番号  特願昭54-120107
登録日   昭和61年8月14日
特許権者  リコー及び被告
発明者   B、C及び原告
特許請求の範囲
1 印字ホイールを収容し印字機構に着脱可能な印字ホイールカセツトと、文字を選択するためのセレクシヨンモータと、文字を印字するための印字ハンマーと、該印字ハンマーに対向したプラテンと、
前記セレクシヨンモータを印字の為のプラテンに接近した第1の位置と該第1の位置よりプラテンから離れた印字ホイールカセツトを交換するための第2の位置との間で移動可能に担持するキヤリツジと、
該キヤリツジ上において印字ホイールカセツトを出入れ可能に設けられるとともに、印字ホイールカセツトの下方向への位置決めをおこなう第1の位置決め部と印字ホイールカセツトのプラテン側への移動を制限する第2の位置決め部と印字ホイールカセツトのプラテンから離れる方向への移動を制限するための第3の位置決め部とからなり、かつ第2の位置決め部と第3の位置決め部との間で印字ホイールカセツトを変移可能に収容する空間を有する印字ホイールカセツト収容手段と、
前記セレクシヨンモータが前記第2の位置から第1の位置へ移動した時に前記印字ホイールカセツト収容手段に挿入された印字ホイールカセツトをプラテンに接近した印字のための位置へ位置決めさせる為に、前記キヤリツジ上において移動可能に設けられかつ印字ホイールカセツトと当接する印字ホイールカセツト当接手段とを有し、
前記セレクシヨンモータが前記第2の位置にある時、セレクシヨンモータと印字ホイールとの結合が解除されるとともに印字ホイールカセツトは前記印字ホイールカセツト当接手段によるプラテンに接近した印字のための位置への位置決めから解除されて前記印字ホイールカセツト収容手段内で変移可能であることを特徴とするプリンタ。
4 日本国特許第1612416号
発明の名称 印字装置
出願日   昭和53年9月18日
出願番号  特願昭53-113585
登録日   平成3年7月30日
特許権者  リコー及び被告
発明者   原告及びA
特許請求の範囲
1 プラテンと、該プラテンの軸線に対して平行に移動する移動体と、活字を有するタイプホイールと、移動可能な印字ハンマーとを有する印字装置において、前記タイプホイールを収容するとともに所定の厚みを有するホイールカセツトと、前記移動体上に設けられ前記タイプホイールを駆動するための軸を有する駆動手段と、前記移動体上に設けられ前記ホイールカセツトを前記駆動手段の軸の軸方向を横切る方向に抜き差し可能に案内する案内部を有するカセツトホルダーと、前記駆動手段を保持する駆動手段保持部材と、該駆動手段保持部材をプラテンに対し接離可能に案内する案内手段とを設け、前記駆動手段は駆動手段の軸が前記タイプホイールと係合する印字装置と駆動手段の軸と前記タイプホイールとの係合がはずれる取替位置との間を前記駆動手段保持部材を介して前記案内手段により案内されて移動可能であるとともに、前記ホイールカセツトは前記移動体上においてプラテンに近接した印字のための位置とこの位置よりプラテンから離れた位置との間で移動可能で、前記駆動手段およびこれと一体的に移動する前記印字ハンマーの移動量は前記ホイールカセツトの移動量より大きく定められており、前記駆動手段が取替位置にあるとき前記ホイールカセツトは印字のための位置よりプラテンから離れた位置において前記カセツトホルダーから前記駆動手段の軸の軸方向を横切る方向に抜き取ることが可能であることを特徴とする印字装置。
5 米国特許第4,310,225号
基礎出願   上記2及び4の出願
優先権主張日 上記4の出願日
登録日    昭和57年(1982年)1月12日
内容     上記4の特許権に係る発明(後記6の出願を分割)
特許権者   リコー及び被告
発明者    原告及びA
6 米国特許第4,408,909号
基礎出願   上記2及び4の出願
優先権主張日 上記4の出願日
登録日    昭和58年(1983年)10月11日
内容     上記2の特許権に係る発明(上記5の出願から分割)
特許権者   リコー及び被告
発明者    原告及びA
7 英国特許第2031806号
基礎出願   上記2及び4の出願
優先権主張日 上記4の出願日
登録日    昭和58年(1983年)6月29日
内容     上記4の特許権に係る発明(後記8の出願を分割)
特許権者   リコー及び被告
発明者    原告及びA
8 英国特許第2111436号
基礎出願   上記2及び4の出願
優先権主張日 上記4の出願日
登録日    昭和58年(1983年)12月7日
内容     上記2の特許権に係る発明(上記7の出願から分割)
特許権者   リコー及び被告
発明者    原告及びA
9 ドイツ特許第2937678号
基礎出願   上記2及び4の出願
優先権主張日 上記4の出願日
登録日    昭和61年(1986年)8月7日
内容     上記4の特許権に係る発明(後記10の出願を分割)
特許権者   リコー及び被告
発明者    原告及びA
10 ドイツ特許第2954404号
基礎出願   上記2及び4の出願
優先権主張日 上記4の出願日
登録日    平成2年(1990年)4月12日
内容     上記2の特許権に係る発明(上記9の出願から分割)
特許権者   リコー及び被告
発明者    原告及びA

(別紙2)
第1  社員発明考案取扱規程(昭和52年1月8日施行、抜粋)
(権利の譲渡)
第6条 前条の規定により、発明が職務発明と認定され、かつ会社が権利の承継を決定したときは、当該発明をした社員は特許を受ける権利を会社に譲渡しなければならない。
ただし、会社と外部機関との契約により、特許を受ける権利を当該外部機関に譲渡することが定められているときはこの限りでない。
(譲渡補償金)
第8条 第6条により会社が権利を承継したときは、会社は社員に譲渡補償金を支払うものとしその額は1件につき1、000円とする。
2 (略)
(登録補償金)
第9条 権利を承継した発明について、会社が特許権を取得したときは、会社は社員に次の登録補償金を支払うものとする。
(1) 特許権については1発明につき3、000円
(2) (略)
(実施補償金)
第10条 権利を承継した発明について、会社に実施料収入があったときは、会社は社員に対して毎年度1回前年度の実施料収入の額に応じ、1件ごとに次の区分により実施補償金を支払うものとする。

実施料収入 補償金
30万円に達するまで 該当額の30%
30万円を超え50万円に達するまで 30万円を超える額の20%に9万円を加えた額
50万円を超え100万円に達するまで 50万円を超える額の10%に13万円を加えた額
100万円を超えるもの 100万円を超える額の5%に18万円を加えた額

2 (略)
(補償金の限度)
第11条 第8条から第10条までに規定する補償金の総額は毎年度1名につき150万円を限度とし、それ以上の金額については切捨てるものとする。
(退職又は死亡の取扱)
第13条 発明者が退職又は死亡した場合の補償金は次により支給する。
(1) 退職した場合
第8条から第10条までの各補償金を発明者に支給する。
(2) (略)
第2  社員発明考案取扱規程(平成11年4月1日施行、抜粋)
(権利の譲渡)
第6条 前条の規定により、発明が職務発明と認定され、かつ会社が権利の承継を決定したときは、当該発明をした社員は特許を受ける権利を会社に譲渡しなければならない。
ただし、会社と外部機関との契約により、特許を受ける権利を当該外部機関に譲渡することが定められているときはこの限りでない。
2~4 (略)
(出願補償金)
第8条 第5条により会社が特許を受ける権利を承継したときは、会社は社員に譲渡補償金を支払うものとし、その額は1件につき4、000円とする。
2・3 (略)
(登録補償金)
第9条 特許を受ける権利を承継した発明について、会社が特許権等を取得したときは、会社は社員に次の登録補償金を支払うものとする。
(1) 特許権については1発明者につき10、000円
(2)・(3) (略)
2~4 (略)
(実施補償金)
第10条 権利を承継した発明について、実施の実績が認められたとき、会社は、社員に対して表1に示す時期に実施補償金を支払うものとし、その額については、別に定める「特許等実施補償金算定基準」に基づき表2に定める金額を決定する。
表1

回数 補償の時期 補償の対象
第1回 権利存続期間の3年を経過した日の属する年度の翌年度以降 出願日から権利存続期間の3年を経過した日の属する年度の末日までの期間に得られた実施の実績
第2回 権利存続期間の6年を経過した日の属する年度の翌年度以降 第1回補償の対象期間の最終年度の翌年度から権利存続期間の6年を経過した日の属する年度の末日までの期間に得られた実施の実績
第3回 権利存続期間の9年を経過した日の属する年度の翌年度以降
ただし、実用新案権は権利満了日の属する年度の翌年度以降
第2回補償の対象期間の最終年度の翌年度から権利存続期間の9年を経過した日の属する年度の末日までの期間に得られた実施の実績
ただし、実用新案権は第2回補償の対象期間の最終年度の翌年度から権利満了日までの期間に得られた実施の実績

第4回 権利存続期間の12年を経過した日の属する年度の翌年度以降 第3回補償の対象期間の最終年度の翌年度から権利存続期間の12年を経過した日の属する年度の末日までの期間に得られた実施の実績
第5回 権利満了日の属する年度の翌年度以降 第4回補償の対象期間の最終年度の翌年度から権利満了日までの期間に得られた実施の実績

ただし、平成元年度までの実施実績に基づき平成2年度まで1年毎の実施補償金支払対象となっていた発明に対する取扱は、表1に示す考えと同様に3年毎の時期に3年間の実施実績を対象として、表2に基づいて補償金額を決定するが、具体的な補償の時期及び補償の対象は次のとおりとする。
補償の時期:平成2年を起算年として3N(N=1、2、・・・)年を経過した年(権利満了日を経過した最初の該当年まで)の翌年度以降
補償の対象:平成2年度から権利満了日までの期間を3年間を単位として区分したそれぞれの期間(最終の期間は権利満了日まで)
表2

等級 補償金
特級 75万円を超える額
(50万円に実施料収入2000万円毎に25万円加算する)

1級 50万円
2級 40万円
3級 25万円
4級 15万円
5級 6万円

2 2以上の特許等に対して実施の実績があり、各特許等に対する実施料見合額等の配分の根拠が明らかでない場合は、各特許等に対して均等に配分することができる。
(補償金の限度)
第11条 前条の規定にかかわらず、社員1人についての実施補償金の総額を制限することができるものとする。
(退職又は死亡の取扱)
第13条 発明者が退職又は死亡した場合の補償金は次により支給する。
(1) 退職した場合
第8条から第10条までの各補償金を発明者に支給する。
(2) (略)

 

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