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「テレアポ 営業」に関する裁判例(6)平成30年 2月26日 東京地裁 平27(ワ)32573号 損害賠償等請求事件

「テレアポ 営業」に関する裁判例(6)平成30年 2月26日 東京地裁 平27(ワ)32573号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成30年 2月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)32573号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA02266007

事案の概要
◇認可特定保険業者である被告の職員である原告X1ないし原告X7が、被告の原告らに対する平成27年4月1日付けの各配転命令又は降格処分、人事考課若しくは職種を変更する旨の業務命令等は退職強要の目的で行われた違法なものであり、これらによって精神的苦痛を受けた等と主張して、被告に対し、不法行為等に基づく損害賠償請求として、慰謝料等及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案

裁判経過
控訴審 平成31年 3月14日 東京高裁 判決 平30(ネ)1426号 損害賠償等請求各控訴事件

評釈
千野博之・季刊労働法 263号172頁

裁判年月日  平成30年 2月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)32573号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA02266007

千葉県鎌ケ谷市〈以下省略〉
原告 X1
千葉県市原市〈以下省略〉
原告 X2
さいたま市〈以下省略〉
原告 X3
千葉市〈以下省略〉
原告 X4
横浜市〈以下省略〉
原告 X5
東京都豊島区〈以下省略〉
原告 X6
札幌市〈以下省略〉
原告 X7
原告ら訴訟代理人弁護士 A
同 B
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 一般財団法人Y財団
同代表者代表理事 C
同訴訟代理人弁護士 D

 

 

主文

1  被告は,原告X4,原告X5,原告X6及び原告X7に対し,それぞれ110万円及びこれに対する平成27年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2  原告X1,原告X2及び原告X3の請求並びに原告X4,原告X5,原告X6及び原告X7のその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用については,原告X1に生じた費用と被告に生じた費用の100分の15を原告X1の負担とし,原告X2に生じた費用と被告に生じた費用の100分の11を原告X2の負担とし,原告X3に生じた費用と被告に生じた費用の100分の10を原告X3の負担とし,原告X4に生じた費用と被告に生じた費用の100分の16を10分し,その9を原告X4の負担とし,その余を被告の負担とし,原告X5に生じた費用と被告に生じた費用の100分の16を10分し,その9を原告X5の負担とし,その余を被告の負担とし,原告X6に生じた費用と被告に生じた費用の100分の16を10分し,その9を原告X6の負担とし,その余を被告の負担とし,及び原告X7に生じた費用と被告に生じた費用の100分の16を10分し,その9を原告X7の負担とし,その余を被告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告X1(以下単に「原告X1」という。)に対し,884万3161円並びにうち550万円に対する平成27年4月1日から,及びうち334万3161円に対する平成28年10月27日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告X2(以下単に「原告X2」という。)に対し,721万0310円並びにうち550万円に対する平成27年4月1日から,及びうち171万0310円に対する平成28年10月27日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告X3(以下単に「原告X3」という。)に対し,550万円及びこれに対する平成27年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
4  被告は,原告X4(以下単に「原告X4」という。)に対し,968万4884円並びにうち550万円に対する平成27年4月1日から,及びうち418万4884円に対する平成28年10月27日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
5  被告は,原告X5(以下単に「原告X5」という。)に対し,968万4884円並びにうち550万円に対する平成27年4月1日から,及びうち418万4884円に対する平成28年10月27日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
6  被告は,原告X6(以下単に「原告X6」という。)に対し,1020万5060円並びにうち550万円に対する平成27年4月1日から,及びうち470万5060円に対する平成28年10月27日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
7  被告は,原告X7(以下単に「原告X7」という。)に対し,968万4884円並びにうち550万円に対する平成27年4月1日から,及びうち418万4884円に対する平成28年10月27日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
(1)  本件は,認可特定保険業者である被告の職員である原告らが,被告が原告らに対してした平成27年4月1日付けの各配転命令(以下当該各配転命令又はその総称を「本件配転命令」という。)又は降格処分,人事考課若しくは職種を変更する旨の業務命令等が退職強要の目的で行われた違法なものであり,これらによって精神的苦痛を受けた等と主張して,被告に対し,不法行為(当該業務命令については予備的に債務不履行(安全配慮義務違反))に基づく損害賠償請求として,慰謝料等及びこれに対する民法(明治29年法律第89号)所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
なお,本件訴訟は,原告ら並びに本件配転命令の当時に被告の本部業務開発部長であったE(以下「E部長」という。)及び同業務推進部長であったF(以下「F部長」という。)が被告を相手方として申し立てた労働審判手続に係る労働審判事件が労働審判法(平成16年法律第45号)第24条第1項の規定により終了したことに伴い,同条第2項において読み替えて準用する同法第22条第1項の規定により訴えの提起が擬制されて当裁判所に係属したものであり,その後,E部長に係る訴えについては平成28年2月4日付けで,F部長に係る訴えについては平成29年1月25日付けでそれぞれ訴えの取下げの書面が提出され,終了した。
(2)  原告ら各自の請求の具体的な内容は,次のとおりである。
ア 原告X1の請求(上記第1の1の請求)
本件配転命令及び本件配転命令に伴いされた降格処分並びに平成28年6月に復職した際にされた降格処分等が不法行為に当たることを理由とする慰謝料500万円及びその請求に係る弁護士費用50万円(合計550万円)並びに当該各降格処分によって生じた賃金の減額分303万9237円及びその請求に係る弁護士費用30万3924円(合計334万3161円)並びに当該合計550万円については不法行為の日である本件配転命令の日(以下「本件不法行為日」という。)から,及び当該合計334万3161円については不法行為の後の日である訴えの変更申立書の送達の日である平成28年10月27日(以下「本件不法行為後日」という。)から各支払済みまでに生ずる遅延損害金の請求
イ 原告X2の請求(上記第1の2の請求)
本件配転命令及び平成26年度下期の人事考課が不法行為に当たることを理由とする慰謝料500万円及びその請求に係る弁護士費用50万円(合計550万円)並びに当該人事考課によって生じた賃金の減額分155万4827円及びその請求に係る弁護士費用15万5483円(合計171万0310円)並びに当該合計550万円については本件不法行為日から,及び当該合計171万0310円については本件不法行為後日から各支払済みまでに生ずる遅延損害金の請求
ウ 原告X3の請求(上記第1の3の請求)
本件配転命令及び平成26年度下期の人事考課が不法行為に当たることを理由とする慰謝料500万円及びその請求に係る弁護士費用50万円(合計550万円)並びにこれについての本件不法行為日から支払済みまでに生ずる遅延損害金の請求
エ 原告X4,原告X5,原告X6及び原告X7(以下これらの4名を「原告X4ら」という。)の各請求(上記第1の4から7までの各請求)
平成25年7月から同年10月までに行われた業務推進職(ないし営業職又は外勤職。以下同じ。)へ職種を変更する旨の業務命令,本件配転命令及び平成27年6月のグレード級の降格処分(原告X7を除く。)が不法行為に当たることを理由とする慰謝料500万円及びその請求に係る弁護士費用50万円(合計550万円)並びに当該業務命令及び本件配転命令によって精神疾患を発症し,就労することができない状態に陥ったことによる休業損害(原告X4,原告X5及び原告X7にあっては各合計208万4440円,原告X6にあっては合計255万7327円)及び通院慰謝料(各172万円)並びにこれらの請求に係る弁護士費用(原告X4,原告X5及び原告X7にあっては各38万0444円,原告X6にあっては42万7733円)並びに当該合計550万円については本件不法行為日から,及びその余については本件不法行為後日から各支払済みまでに生ずる遅延損害金の請求
2  前提事実(括弧内において掲記する証拠又は弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実等)
(1)  当事者
ア 被告
被告は,中小企業における特定保険業を実施するとともに,災害防止活動を促進し,福利厚生事業を実施し,もって中小企業の健全な発展と福祉の増進に寄与することを目的とし,当該目的を達成するために中小企業における特定保険業等を行う一般財団法人であり,厚生労働省から特定保険業の認可を受けている認可特定保険業者である。
被告は,「財団法人a事業団」との名称(その略称は,「a事業団」とされた。)の財団法人であったが,平成15年5月に「財団法人a1福祉財団」に名称を変更した後,平成27年2月16日の一般財団法人への移行に伴い,現在のものに名称を変更しており,その本部を主たる事務所の所在地である東京都新宿区に置くとともに,北海道地方から九州地方まで,全国にその営業拠点として20の支局を開設している。
被告に加入する会員の数は,平成12年3月末には約107万人であったが,平成12年10月頃に発覚したいわゆるa事業団事件を機に減少し,平成16年3月末には49万人程度まで減少した。その後,当該会員の数は,増減を経た後,営業戦略の見直し等による業務改革を行ったことなどからその業績が持ち直し,平成27年3月末には,約52万人となった。
被告の代表者は,平成22年9月から平成25年7月頃まではG(以下「G元理事長」という。)が,同月頃から平成27年1月30日まではH(以下「H前理事長」という。)がそれぞれ務めた後,同年2月16日から現在までC(以下「C代表理事」という。)が務めている。
(乙1,2の1及び2の2並びに弁論の全趣旨)
イ 原告らは,いずれも,被告の職員であり,被告との間で期間の定めのない労働契約を締結している。当該労働契約に基づく原告らの被告における職歴等の概要は,次のとおりである。(甲C1,E1,F1,G1,H1,I1,I2及びJ1並びに弁論の全趣旨)
(ア) 原告X1について
原告X1は,昭和33年○月生まれの男性であり,昭和57年に大学を卒業し,他企業において販売営業や経理業務等に従事した後,被告と労働契約を締結し,平成4年4月に被告の職員となった。
原告X1は,a事業団b会経理部に配属された後,平成5年4月1日に同経理部主任,平成6年4月に同経理部係長となり,平成8年4月にa事業団本部経理部に配属され,平成11年4月に同経理部課長補佐,平成13年4月に同経理部主事となり,同年8月に千葉支局主事として配属され,平成14年4月に同支局課長,平成15年4月に同支局次長となった。その後,平成16年8月に茨城支局長に,平成20年2月に東北支局長に,平成22年2月に北東京支局及び南東京支局の各支局長にそれぞれ配属され,平成24年4月からは北東京支局長の専任となった。
原告X1は,本件配転命令により,平成27年4月1日付けで南九州支局長として配属されたが,同年8月1日に事務統括本部の人事部に異動し,同年9月17日から休職した。その後,原告X1は,平成28年6月10日に復職したが,その際,休職前の「M1」グレードから「G3」グレードに降格となった。
(イ) 原告X2について
原告X2は,昭和37年○月生まれの男性であり,昭和60年に大学を卒業し,他企業において自動車及び自動車保険の販売の業務に従事した後,被告と労働契約を締結し,平成2年9月に被告の職員となった。
原告X2は,a事業団b会業務推進部に配属され,平成3年4月に東京支局総務部総務課に異動し,同支局事業部事業課,事業部第一課等に勤務した後,平成14年6月に九州支局長に,平成19年2月に静岡支局長に,平成20年2月に本部法人担当部副部長に,平成22年2月に北東京支局副支局長に,平成24年4月本部業務推進部副部長に,平成25年10月に本部業務研修部研修課(後の業務開発部)課長に配属された。
原告X2は,本件配転命令により,平成27年4月1日付けで北海道支局業務推進課長として配属され,現在も,同課長として勤務している。
(ウ) 原告X3について
原告X3は,昭和43年○月生まれの男性であり,平成5年に大学を卒業し,生命保険会社において内勤や法人営業等に携わった後,被告と労働契約を締結し,平成16年10月に被告の職員となった。
原告X3は,南東京支局推進1部推進2課に配属された後,同支局業務課等における勤務を経て,平成23年9月から本部業務推進部業務推進課に異動し,同課において「S2」グレード,「G3」グレードへと順次昇進した。
原告X3は,本件配転命令により,平成27年4月1日付けで北海道支局旭川支所業務推進課に配属されたが,同年6月30日から人事部付となって休職し,同年7月24日に私傷病による就労不能のため本件配転命令が撤回された。
(エ) 原告X4について
原告X4は,昭和48年○月に千葉県において出生した女性であり,短期大学を卒業した後,被告と労働契約を締結して,平成6年4月に被告の職員となった。
原告X4は,本部広報室広報課,総務部総務課,管理部管理課等における勤務を経て,平成18年4月に主任となり,平成22年2月から南東京支局総務課に勤務し,同課において「S2」グレードに昇進した。
原告X4は,平成25年7月1日付けで同支局業務推進課に異動するとともに,業務推進職に職種を変更した後,本件配転命令により,平成27年4月1日付けで東北支局業務推進課に配属され,同年6月12日付けで「G2」グレードから「G1」グレードに降格となったが,同月30日から人事部付となって休職し,同年7月24日に私傷病による就労不能のため本件配転命令が撤回された。
(オ) 原告X5について
原告X5は,昭和53年○月に横浜市において出生した女性であり,大学を卒業した後,被告と労働契約を締結して,平成13年4月に被告の職員となった。
原告X5は,神奈川支局総務課に配属された後,平成18年4月に主任となり,会員管理部事務管理課,神奈川支局総務課等における勤務を経て,平成25年4月に「S2」グレードに昇進し,同年7月1日付けで同支局業務推進課に異動するとともに,業務推進職に職種を変更し,「G2」グレードとなった。その後,本件配転命令により,平成27年4月1日付けで北陸支局業務推進課に配属され,同年6月12日に「G1」グレードに降格となったが,同月30日から人事部付となって休職し,同年7月24日に私傷病による就労不能のため本件配転命令が撤回された。
(カ) 原告X6について
原告X6は,昭和48年○月生まれの女性であり,平成6年9月にオーストラリアの大学を卒業した後,被告と労働契約を締結して,平成7年4月に被告の職員となった。
原告X6は,東京支局総務部総務課,a事業団b会組織管理部,東京支局,北東京支局総務課等における勤務を経て,平成18月4月に主任となり,その後,南東京支局総務課,埼玉支局総務課等における勤務を経て,平成25年4月に「S2」グレードに昇進し,同年7月1日付けで同支局業務推進課に異動するとともに,業務推進職に職種を変更し,「G2」グレードとなった。その後,本件配転命令により,平成27年4月1日付けで北海道支局業務推進課に配属され,同年6月12日に「G1」グレードに降格となったが,同月30日付けから人事部付となって休職し,同年7月24日に私傷病による就労不能のため本件配転命令が撤回された。
(キ) 原告X7について
原告X7は,昭和50年○月生まれの女性であり,平成8年3月に短期大学を卒業し,他企業において事務職等の業務に従事した後,被告と労働契約を締結して,平成14年6月に被告のパートタイム職員となり,平成16年5月に被告の正規職員となった。
原告X7は,パートタイム職員として北海道支局に勤務し,正規職員となった後も,同支局総務課に勤務し,平成18年4月に主任となり,平成25年4月1日に「S2」グレードに昇進した後,平成25年9月ないし10月頃に同支局業務推進課に異動するとともに,業務推進職に職種を変更し,「G2」グレードとなった。その後,本件配転命令により,平成27年4月1日付けで埼玉支局業務推進課に配属され,同年6月30日から人事部付となって休職し,同年7月24日に私傷病による就労不能のため本件配転命令が撤回された。
(2)  本件配転命令の発出等
被告は,平成27年4月1日,原告らに対し,上記(1)イのとおり,北東京支局(東京都新宿区所在)の支局長であった原告X1を南九州支局(熊本市所在)の支局長に,本部業務開発部に勤務していた原告X2を北海道支局(札幌市所在)業務推進課に,本部業務推進部に勤務していた原告X3を北海道支局旭川支所(北海道旭川市所在)業務推進課に,南東京支局(東京都新宿区所在)業務推進課に勤務していた原告X4を東北支局(仙台市所在)業務推進課に,神奈川支局(横浜市所在)業務推進課に勤務していた原告X5を北陸支局(金沢市所在)業務推進課に,埼玉支局(さいたま市所在)業務推進課に勤務していた原告X6を北海道支局業務推進課に,北海道支局業務推進課に勤務していた原告X7を埼玉支局業務推進課にそれぞれ異動させる旨の本件配転命令を発令した。
なお,本件配転命令の発令と同時に,原告ら以外の29名の被告の職員に対しても,配転命令が発令されており,本部業務開発部長であったE部長は,本部業務推進部教育担当部長への異動を命じられた。
(甲A4及び乙1並びに弁論の全趣旨)
(3)  被告の就業規則(以下「本件就業規則」という。)の定め
原告らを含む被告の職員について適用される本件就業規則には,次のとおりの定めがある。(甲A1の1)
「(転勤・職種変更)
第16条 財団は、職員に対し業務上の必要性により、転勤または職種変更を命じることがある。職員は、正当な理由がない限りこれを拒むことができない。
2  財団は、前項の命令を発する場合、原則として命令の2週間前までに通知する。ただし、業務上やむを得ない場合、通知期間を短縮したり、事前通知を行わない場合もある。
(昇進)
第18条 財団は、職員に対し業務上の必要性がある場合、上位職位に昇進を命じることがある。
2  (略)
(解任)
第19条 財団は、職員に対し業務上の必要性がある場合、その職位を解任(降職)することがある。
(業務引き継ぎ)
第22条 職員は、休職、解雇、退職となったときおよび転勤、職種または職場の変更、役職の解任等があった場合には、業務引き継ぎを確実に完了させるとともに、指定された日までに着任しなければならない。これに違反し引き継ぎを怠った場合および不完全な引き継ぎを行った場合等は、懲戒処分を科すことがある。
(賃金)
第79条 職員の賃金は、別途給与規程により定める。」
(4) 被告の給与規程(以下「本件給与規程」という。)の定め
上記(3)の本件就業規則の第79条の定めに基づく本件給与規程には,次のとおりの定めがある(第19条に定める「別表1」は別紙のとおりであり,以下同条中のグレード定義を「本件グレード定義」という。)。(甲A1の2及び弁論の全趣旨)
「(基本給)
第18条 基本給は、グレード給と調整給をあわせたものとする。
(グレード給)
第19条 グレード給は、職員の職務遂行能力を勘案し、別表1のグレード定義によりグレード格付けをおこない、これに対応する別表2のグレード給表による金額を月額として支給する。
(調整給)
第20条 調整給は、次の場合に限り支給する。
(1) 賃金制度の改正によって、従来の賃金との差額を調整する場合。
(2) 中途採用者で、調整を必要とする場合。
(3) その他調整を必要とする場合。
(昇給の時期)
第22条 (略)
2  昇給は財団の業績と職員の勤務成績を総合的に考慮して行う。
3  人事考課の結果、必要なときに降給を行うことがある。
4  前項の場合、財団は事前に充分な説明を職員に行う。
(昇給資格者)
第23条 昇給資格者は、採用された日又は前回昇給した日から6ヶ月以上勤務した者とする。(以下略)
(昇格・降格の場合の取扱い)
第27条 昇格または降格した場合のグレード給は、昇格または降格したグレードのグレード給下限額とする。
2 降格した場合のグレード給の減額が10%を超える場合には、第20条を適用し、調整する。
(昇給等の場合のクレード給の計算方法)
第28条 昇給、昇格または降格によってグレード給の額が変動した場合は、発令の日に属する月分の最初の計算日を基準日とし、その日から増額、または減額した金額とする。」
(5) 平成25年頃までの被告の状況
ア 被告は,平成元年以降,加入会員の倍増,会員300万人体制の実現をスローガンに掲げ,その会員の増大を図るため,東日本地方及び九州地方において信用金庫,信用組合,銀行等の金融機関との提携を進め,平成7年6月に北海道支局及び東北支局を,平成10年3月に九州支局(福岡市所在)及び九州支局長崎支所(長崎市所在)を,同年4月に北東北支局(盛岡市所在)を,同年10月に熊本支所(熊本市所在)をそれぞれ開設し,その事業エリアを拡大した。この事業エリアの拡大に伴い,平成8年度(なお,被告において用いられている年度の期間は,当年4月1日から翌年3月末までである。)末に393名であった正規職員の数が,平成11年度末には437名に増加した。(乙1及び2の1から2まで並びに弁論の全趣旨)
イ 平成12年10月頃,当時の被告の理事長がc大学の設立構想に関して不正な政界工作を行う等したとする汚職事件(いわゆるa事業団事件である。以下単に「a事業団事件」という。)が発覚した。
被告の会員の数は,平成12年3月末の時点で約107万名であったが,a事業団事件が発覚した後に減少し,平成18年3月末の時点では約52万7000名となった。これに伴い,会員が納入する会費による収入も,平成11年度に約245億6184万円であったが,平成17年度には約124億2124万円まで半減した。
また,a事業団事件の発覚を契機として,被告の職員が相次いで退職し,平成12年3月末の時点で437名であった被告の正規職員の数が,平成18年3月末の時点では362名まで減少した(割合にして約17%の減少)。さらに,当該発覚により,上記アの金融機関との提携による会員の獲得のための仕組みも停止することとなり,被告の職員が当該金融機関を経由して営業活動を行うことができなくなったことから,職員において,金融機関に代わる業務代理所を開発するという職務も担当することとなった。
(乙2の1及び2の2並びに弁論の全趣旨)
ウ 平成21年7月に被告の理事長の交代があったが,当時,被告の一部の役員は,特定の営利企業と癒着し,過大な業務委託費を支出して,被告の利益を害する等していた。被告の内部には,このような癒着を是正しようとする動きがあったものの,規約の一部変更に係る評議員会の招集通知を一部の評議員に対して行わなかったり,寄附行為に定められた手続を履行しなかったり等といった当該動きを阻害するための工作が行われたことから,その結果として,平成22年3月31日には厚生労働省から規約が保険法に適合していないことを理由とする業務停止命令を受けるに至った。
さらに,被告は,同年6月18日,同省から,当該業務停止命令による業務停止期間中であったにもかかわらず,被共済者の増員手続業務を行ったことを理由として,更なる業務停止命令(栃木支局,茨城支局,神奈川支局及び山梨支局の一部業務について1か月の業務停止を内容とするもの)を受けるとともに,被告において法令等遵守が徹底されていないこと等,その法令遵守体制及び内部管理体制に重大な問題が認められたことを理由として,次の内容の業務改善命令を受けるに至った。
(乙3,4及び93並びに弁論の全趣旨)
(ア) 法令等遵守体制の抜本的な見直し,改善を図ること(役職員に対する研修の実施も含む。)。
(イ) 災害補償共済の加入手続等の状況を的確に把握し,適切な対応,指示を行い得るような経営管理体制及び内部管理体制を構築すること(内部監査体制の改善,強化を図ることを含む。)。
(ウ) 上記の業務停止命令及び業務改善命令に至った問題等を検証し,その責任の所在を踏まえ,役職員の責任を明確化すること。
(エ) 上記(ア)から(ウ)について,具体的な内容及び実施時期を明記した業務改善計画を同年7月9日までに提出し,以後,改善計画の実施完了までの間,その実施状況を3か月ごとに報告すること。
エ 被告は,同年8月31日,厚生労働省に対し,上記ウの業務改善命令によって命じられた業務改善計画書の提出を行い,同年12月21日,その調査報告書を提出した。また,被告は,同年9月に被告の理事長に就任したG元理事長の下で,平成23年1月25日,経営管理体制の改革,内部管理体制強化による組織の改革,法令等遵守体制確立に向けた役職員の意識改革,会員募集体制(業務推進方法等)の抜本的改革等を約束することを内容とする「Y財団調査報告書の報告を受けて」と題する文書を公表した。
しかし,被告は,同年12月28日には,同省から,法人の会計処理等(業務運営),特定の営利企業との取引,資産の処分,会員募集のための業務代理所との委任契約,事業の改善等について,改善勧告を受けるに至った。
(乙5及び93並びに弁論の全趣旨)
オ 以上の業務停止命令等を受けたことにより,被告の平成24年3月末の時点における会員の数が約49万人まで減少し,平成23年度の会費による収入が119億円となった。また,被告の会計は,平成20年度から平成22年度まで3期連続の赤字であった。(乙2の1及び2の2並びに弁論の全趣旨)
カ 平成22年の改正保険業法の施行に伴い,被告は,平成25年11月25日までに,特定保険業の認可の申請を行う必要があった。また,平成18年の公益法人制度改革関連三法案の成立に伴い,平成25年11月末日までに,一般財団法人に移行するための申請を行う必要もあった。被告は,これらの対応のため,その主要な業務である災害補償共済事業を黒字化するとともに,災害防止事業又は福利厚生事業についても,これらの事業による損失を災害補償共済事業又は被告の内部留保から補填をすることが禁止されていたことから,黒字化する必要があった。さらに,特定保険業の認可を得るためには各種準備金の積立てが必要であり,具体的には,平成24年度中に17億円の積増しをする必要があった。(乙6から8の2まで,14及び93並びに弁論の全趣旨)
(6) 本件訴訟において,原告らの訴えの変更申立書は,平成28年10月27日に被告に送達されている。(当裁判所に顕著な事実)
(7) 被告は,平成29年11月16日の第3回口頭弁論期日において,原告X4らに対し,後記第2の3(2)ク(ア)の主張を前提として,原告X4らが主張する業務推進職への職種を変更する旨の業務命令が不法行為に当たることを原因とする損害賠償請求権につき,消滅時効を援用する旨の意思表示(以下「本件時効援用の意思表示」という。)をした。(当裁判所に顕著な事実)
3  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  本件における主な争点は,次のとおりである。
ア 原告らの主張する不法行為等の成否に関し,本件配転命令等の当該主張に係る被告の原告らに対する次の各行為が違法なものであるかどうか(争点1)
(ア) 原告X4らに対する業務推進職に職種を変更させる旨の業務命令(争点1-①)
(イ) 原告らに対する本件配転命令(争点1-②)
(ウ) 原告X1に対する本件配転命令に伴うグレード級の降格処分(争点1-③)
(エ) 原告X2及び原告X3に対する平成26年度下期の各人事考課(争点1-④)
(オ) 原告X4,原告X5及び原告X6に対する平成27年6月のグレード級の各降格処分(争点1-⑤)
(カ) 原告X1に対する職場復帰時のグレード級の降格処分等(争点1-⑥)
イ 原告らの損害の有無及びその額いかん(争点2)
ウ 上記ア(ア)の業務命令につき不法行為が成立するとした場合の当該不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の成否(争点3)
(2)  上記(1)の各争点に関する当事者の主張は,以下のとおりである。
ア 争点1-①(原告X4らに対する業務推進職に職種を変更させる旨の業務命令が違法なものであるかどうか)に関する当事者の主張
(ア) 原告X4らの主張
a 原告X4らが被告の職員となった当時,被告の職員が総合職と一般職に分かれており,総合職には男性職員のみが,一般職には女性職員のみがそれぞれ就いていて,一般職である女性職員は,その全員が被告の本部ないし支局において事務職を担当していた。平成18年4月から被告の職員が総合職に一本化されたが,従来の一般職である女性職員の職務内容や処遇等に変化はなかった。ところが,平成24年5月頃から,産休明けの女性職員や早期希望退職制度の募集に応じない女性職員が事務職から業務推進職への職種の変更を伴う異動を命じられるようになり,平成25年以降には,被告の新人事政策に基づき,原告X4らを含む女性職員に対し,次々と事務職から業務推進職への職種の変更を伴う異動命令が発出された。
業務推進職は,中小企業の経営者若しくは従業員又は個人事業主(多くは年配の男性である。)をその営業の対象とし,営業の手法もいわゆる飛び込み営業が中心であり,日常的な人脈作りも必要とされるなど,その業務の遂行に際しては,新規の顧客を開拓するノウハウ,営業ルートの承継,被告の商品を販売するための知識及び話術といった営業スキルの習得等が不可欠である。したがって,専ら事務職に従事し,業務推進職の経験が皆無であった原告X4らを含む女性職員について,本人の意思や適性を考慮することなく,業務推進職に職種を変更させることは,通常あり得ないことである。また,被告は,当該職種の変更を命ずるに際し,原告X4らを含む女性職員に対して,十分な研修やトレーニングを行うこともなかった。その結果,平成24年から平成26年までの間に事務職から業務推進職への職種の変更を伴う異動命令を受けた女性職員合計28名のうち約75%の女性職員が退職又は休職を余儀なくされている。
b 上記aの経緯に加え,次のとおりの原告X4らの個別事情に鑑みると,原告X4らに対する業務推進職に職種を変更させる旨の業務命令は,被告の人事権を濫用したものとして,違法なものである。
なお,不法行為に基づく損害賠償請求権の全部又は一部について消滅時効が成立する場合には,原告X4らは,被告による安全配慮義務違反による損害賠償請求を予備的に主張する。当該業務命令は,使用者として果たすべき原告X4らの健康確保のための安全配慮義務に違反するものである。
(a) 原告X4について
原告X4は,平成6年4月に被告の職員となった後,平成25年7月に当該業務命令を受けるまで,19年間にわたって事務職業務に従事してきた。原告X4には,大変な人見知りであるというその性格や上記の経歴等から業務推進職への適性がなく,業務推進職への職種の変更は想定外の出来事であった。また,職種の変更に当たっては,原告X4の意向の確認や研修等も行われていない。
(b) 原告X5について
原告X5は,平成13年4月に被告の職員となった後,平成25年7月に当該業務命令を受けるまで,12年間にわたって事務職業務に従事してきた。原告X5にも,その性格や上記経歴等から業務推進職の適性がなく,業務推進職への職種の変更は想定外の出来事であった。また,原告X5についても,職種の変更に当たっての意向の確認や研修等は行われていない。
(c) 原告X6について
原告X6は,平成7年4月に被告の職員になった後,平成25年7月に当該業務命令を受けるまで,18年間にわたって事務職業務に従事してきた。また,原告X6は,当該業務命令後も,内勤業務を兼務しなければならないために達成困難であった過大な営業ノルマを課されていた。
(d) 原告X7について
原告X7は,平成14年6月にパートタイム職として被告の職員になり,平成16年5月に正規職員となったが,平成25年10月に当該業務命令を受けるまで,北海道支局の事務職業務に従事してきた。平成24年12月頃以降,被告の新人事政策によって,北海道支局の内勤職員3名のうち2名が希望退職制度に応じて退職したため,原告X7は,外部からの問合せの電話や来客の対応に追われることになり,平成25年3月中旬頃には,疲労を感じて仕事を休むこともあった。そして,業務推進職への職種の変更を命じられるかもしれないという強い不安を抱き,同年6月には,精神科を受診し,不安状態と診断されるに至った。そのような中で,同年10月に当該業務命令を受けたものであり,原告X7にとっては,業務推進職への職種の変更は全くの想定外の出来事であり,また,職種の変更に当たっての意向確認や研修等もほとんど行われなかった。原告X7は,業務推進職への異動の衝撃と派遣職員への引継ぎ等の処理に追われたストレスによって,平成25年12月8日に下血,腹痛等の症状で医療機関を受診し,ストレスによる虚血性大腸炎と診断された。
(イ) 被告の主張
被告の正規職員は,本部採用として採用され,職種の限定や勤務地の限定はなかった。また,本件就業規則において,被告が職員に対して業務上の必要性により転勤又は職種の変更を命ずることがあり,正当な理由がない限り当該職員がこれを拒むことができない旨が定められていて,原告X4らも,本件就業規則の変更に際して当該変更に同意する等しており,この内容を認識していた。
被告は,平成22年に2度にわたる業務停止命令及び業務改善命令を受けたことから,経営の改革及び合理化,営業の強化を図ることになり,原告X4らを業務推進職に職種を変更させたものである。すなわち,被告においては,上記の経営改革等の過程で,平成24年3月から,従前は支局においても担当していた災害補償共済事業,災害防止事業及び福利厚生事業の三事業を本部に集約して行うことになり,その結果,支局が業務推進業務に特化することとなり,支局における事務職業務はノンコア業務として派遣職員が担当することになった。その際,支局総務課に所属していた職員のうち,上記の三事業についての十分な経験及び知識を有し,事務処理能力に優れ,東京都に所在する本部に勤務可能である等の条件を満たした者については,本部に集約された当該三事業を担当する事務職員として選抜することとなったが,対象とならなかった支局の事務職員は,業務推進業務を担当することが必須であった。そして,原告X4らは,本部への異動の対象とはならなかった。
また,被告においては,その営業の手法について,平成23年以降は,個人の資質による従前の手法を改め,本部の主導による効率・効果を考慮した統一的な手法が徹底されることになり,そのための教材を作成し,徹底した研修,指導を行っている。また,本部や支局長からのバックアップもあったことや,新規会員の加入を一気に獲得することができるチャンスがあるEL保険(顧客が被告に加入すると自動的に無料で付帯される使用者賠償責任保険を内容とする保険サービスをいう。以下同じ。)も導入されていたことからすると,原告X4らの研修等がなかった旨の主張は,妥当しない。現に,職種を変更した女性職員の中には,業務推進職として活躍している者もおり,退職した者がいるとしても,当該職種の変更が原因であるということはできない。
したがって,原告X4らに対する業務推進職に職種を変更する旨の業務命令は,被告の人事権を濫用したものではなく,違法なものには当たらない。
イ 争点1-②(原告らに対する本件配転命令が違法なものであるかどうか)に関する当事者の主張
(ア) 原告らの主張
a 本件配転命令は,平成27年1月30日に被告再建の陣頭指揮を執っていたH前理事長が急逝し,後任であるC代表理事が独断専行で行った異常な人事である。この人事異動の特徴は,被告の業績改善を推進してきた本部の二つの部署のうち,業務開発部を廃止し,業務推進部を事実上解体した上で,これらの部署に所属していた幹部職員を異動させ,その影響力を一掃するというものである。すなわち,当該部署の幹部のうち,廃止される業務開発部では,E部長を部下のいない業務推進部教育担当部長に,原告X2を北海道支局業務推進課長に,解体される業務推進部では,F部長を南九州支局鹿児島支所長に,原告X3を北海道支局旭川支所にそれぞれ異動させることによって,その影響力を排除するという目的があった。そもそも,業務開発部と業務推進部は密接に関連する部門であったが,これらが併存することによって実務上の不都合や指揮命令の混乱は生じておらず,むしろ両部署が連動することによって大きな成果を挙げていたのであるから,これらの廃止や解体には理由がない。
このような異常な人事異動を内容とする本件配転命令は,被告がその人事権を濫用したものとして,違法なものである。
b また,次のとおりの原告らの個別事情に照らしても,本件配転命令が人事権の濫用であることは,明らかである。
(a) 原告X1について
原告X1は,全国の20支局のトップクラスの支局である北東京支局の支局長の地位に在ったにもかかわらず,事前に何らの業務上の必要性も示されることなく,転居を伴う遠距離の南九州支局への異動を命じられた。被告は,業績の向上を期待していた等と主張しているが,原告X1がこれまで茨城支局長や東北支局長等を歴任し,中小支局について豊富な経験を有していたのであるから,仮に業績の向上を期待するのであれば,グレード級を「M2」から「M1」に降格させ,その就労意欲を低下させてまで,異動を強行する必要はなかった。また,原告X1は,被告が主張する南九州支局の大支局への昇格の可能性については,被告から事前に説明されなかった。
本件配転命令により,原告X1の賃金は,グレード給が55万7000円から43万1000円に,役職手当が10万円から7万5000円に,地域手当が4万4560円から1万7240円に下がり,合計17万8320円の減額となった。現在は,給与激変緩和措置によって約7万円の調整給が支給されているものの,この措置も,毎年減額され,3年後には消滅する。
原告X1には,同居はしていないものの,要支援と認定され,デイサービスに通う高齢の義母がおり,原告X1の妻が週に1回程度その実家に行き,義母の面倒をみている。また,原告X1と同居している現在27歳の長男は,無職である。したがって,家族帯同での赴任は困難であるが,被告は,原告X1からの単身赴任手当の支給を認めてほしい旨の申出すら拒絶したのである。
(b) 原告X2について
本件配転命令に際しては,被告からの事前の説明が行われないまま,異動の2週間前に内示がされており,内示の後の説明も一切なく,従前の人事慣行とは大きく異なるものであって,退職を目的としたものである。原告X2の異動先である北海道支局は,本件配転命令の直前の3年間にわたって被告の20支局中トップの実績を上げる営業力を備えた支局であり,営業の研修の必要性はなく,本部で営業研修を担ってきた原告X2を同支局にあえて配転する必要性はなかった。また,当時,北海道支局では,帯広支所の開設のため,帯広支所長となるべきI職員を課長に昇進させる予定であり,H前理事長の内諾も得ていたが,原告X2が支局課長に命じられたため,I職員が課長職を経験しないまま帯広支所に赴任することになったものであり,原告X2が北海道支局への異動を命じられる合理性はない。
本件配転命令によって,原告X2の賃金は,調整給2万0160円がなくなり,地域手当3万4480円が8620円に減額されたため,合計4万6020円の減額となった。他方で,単身赴任手当等が認められたものの,北海道における家賃及び光熱費,月2回の帰宅によって実質的には約1万2000円の赤字となり,税金の増額分も含めると毎月実質約2万円の赤字となっており,多大な経済的不利益を被っている。
原告X2には,身体障害者4級の高齢の父,身体障害者3級で常時介護が必要な妹及び高齢で病弱な母がおり,本件配転命令により,原告X2の妻及び母も,精神的苦痛や不安を抱えている。
(c) 原告X3について
原告X3が異動を命じられた北海道支局旭川支所は,現状3名体制の過剰な人員配置となっており(その後,現に人員が減少されている。),マーケットが小さく,今後の事業拡大も見込めず,一年程度で廃止する方向で検討されていたことからすると,当時の北海道支局長であるJ(以下単に「J支局長」という。)も同様の見解を述べているように,原告X3の異動には,業務上の必要性がなかった。また,原告X3は,本件配転命令の当時,本部業務推進部の実務を一手に引き受けており,原告X3の異動によって業務推進部の機能が奪われ,その業務に著しい支障が生ずることになるため,人員選択の合理性もなかった。
原告X3は,本件配転命令により,二重生活を強いられることで支出が増え,地域手当の減額や調整給の支給が停止されたことにより,単身赴任手当が支給されたとしても,実質8723円の増加に過ぎず,上記の支出を賄うことは不可能であった。
また,原告X3には,高校受験を控えた長男や,定期的に様子を見に行く必要のある高齢の両親及び義母がおり,過去の被告に対する自己申告書においても,家族帯同による転勤ができない旨を明記していた。そもそも,原告X3は,父が平成13年に胃がんを患ったことを機に,全国転勤のあった当時の勤務先から転勤のない企業への転職を考え,被告の職員となったものである。しかるに,被告は,本件配転命令に際し,原告X3に対し,事情を一切聞かなかった。
(d) 原告X4らについて
本件配転命令は,原告X4らに退職を強いる不当な動機・目的で行われたものである。すなわち,従前から,被告における女性職員の勤務態勢が転居を伴う配転が行われないものであったにもかかわらず,被告は,本件配転命令により,原告X4らを含む9名の女性職員に対し,事前の打診すらせず,異動命令の目的も告げずに,転居を伴う長距離の配転を強行し,現に原告ら以外の5名の女性職員が直ちに退職に追い込まれた。本件配転命令の前まで,原告X4は東京都内に,原告X5は横浜市内又は東京都内に,原告X6は埼玉県内又は東京都内に,原告X7は北海道内にそれぞれ配属されており,本件配転命令で指定された異動先について,原告X4らはいずれも地縁がなかったものであり,転居を伴う異動命令によって原告X4らが退職を決意しなければならないほどの状況に追い込まれることを被告が認識していたことは,明らかである。
被告は,本件配転命令について,原告X4らの営業成績が不振であったため,異動によりその環境を改善することを目的としていた旨を主張している。しかし,仮に,被告にそのような目的があったのであれば,異動の前後に原告X4らに直接問い合わせたり,その上司と意見交換を行ったりすることにより,異動の意図を伝えるはずであるが,本件ではこのような対応が一切されていない。また,本件配転命令は,原告X6と原告X7とを入れ替える人事であるが,このような入れ替えについて,業務上の必要性も,人員選択の合理性も,認められない。
さらに,本件配転命令には,原告X4らの家族の状況からも,重大な不利益を生じさせるものであった。すなわち,原告X4の父は,平成25年に脳梗塞を患い,目に後遺障害が残るなど家族の見守りが必要な状態にあり,母も,ここ数年,疲労やストレスの蓄積により年に一,二回,1週間ほど寝込む状態にあったところ,原告X4は,両親と同居する姉に代わり,車で両親の病院の送迎をしていた。原告X5は,これまで横浜市以外の場所で生活したことがなく,体調に問題を抱えた父や家族の介護なしには食事を一人でとることもできない祖母等,原告の助力を必要とする家族を抱えていた。原告X6の両親は,埼玉県内で二人暮らしをしており,母は体調を崩すことも多く,埼玉県に近い豊島区に住む原告X6がその看病や病院への送迎をしていた。原告X7は,これまで北海道以外で生活をしたことがなく,1年間入退院していた母が平成27年4月に退院して自宅療養中であり,年金により生活している父と共に母の介護をしなければならない状況にあった。被告は,本件配転命令に伴って原告X4らの給与増が見込まれる旨を主張しているが,その試算には全く根拠がなく,平成27年6月12日付けで原告X4,原告X5及び原告X6が降格され,減額されていることすら反映されていないものであるし,馴れない異動先での営業活動が成果を上げる見込みもない。
(イ) 被告の主張
a 被告には,本件就業規則の第16条第1項の定めに基づき,原告らに対して職種の変更を伴う異動を命ずる権限があるところ,本件配転命令は,業務推進体制の整備と更なる強化(本部の業務推進部と業務開発部の統合による指揮命令系統の一本化,これらの部署に所属する職員の成績優秀支局への補強等),キャリアパス制度(ジョブローテーションによる能力開発)の本格運用(本部と支局間,支局と支局間の人材育成を目的とした異動),業務職員のうち成績低迷者(C・Dクラス)の底上げ強化を目的として行ったものであるから,業務上の必要性があり,権利を濫用したものとはいうことはできず,違法なものには当たらない。
また,本件配転命令に伴い,原告らには,支度料30万円等が支給されており(降格を伴う原告X1には,調整給も支給される。),賃金増が見込まれる者もおり,物価の違い等も勘案すれば,原告らに生ずる経済的な不利益は大きくはなかった。
b さらに,次のとおり,原告ら個別の事情をみても,本件配転命令が人事権の濫用に当たるものではない。
(a) 原告X1について
本件配転命令は,滞留時間が長い北東京支局長(原告X1),静岡支局長,南九州支局長,本部人事部長の4人をジョブローテーションの対象にしたものであり,その業務上の必要性があった。原告X1の評価は,平成25年度上期から「丁」評価が続くなど,やや低迷しており,大支局の「M2」グレードの支局長としては下位の成績であったため,本件配転命令により,比較的新しい出店エリアで,マーケットも広く,勢いもある優秀な南九州支局に異動して,高評価を回復することが期待されていた(なお,静岡支局職員が提起していた人事案件訴訟があることを考慮し,静岡支局長と人事部長を交代させることとしたため,原告X1を静岡支局に異動させることは困難であった。)。原告X1は,これまでも地方への転勤の経験を有しており,被告には,原告X1に対して退職を強要する目的はない。そして,本件配転命令の当時,南九州支局は,「M1」グレードの中支局であったものの,実績次第で大支局への昇格も十分見込まれ,現に平成28年4月1日をもって大支局に昇格している。大支局に昇格することにより,原告X1のグレード給も自動的に「M2」となる予定であった。
本件配転命令に伴い,原告X1には,一定の賃金減が見込まれたものの,支度料30万円等が支給される上,東京都と熊本県との物価の違い等も勘案すれば,その不利益は大きくなく,その必要性の高さに照らして,やむを得ないものであった。
また,原告X1が平成26年1月に提出した自己申告書には,介護を要する家族がいる等の記載はなかった。
(b) 原告X2について
本件配転命令において,被告は,本部の業務推進部と業務開発部の統合と併せて,それぞれに属する職員を成績優秀支局の補強及びそのノウハウ吸収を目的とした育成のために成績優秀支局に配転することとしたものであり,原告X2に対する本件配転命令には,このような業務上の必要性があった。従来の業務開発部における原告X2の業務は,専らE部長のスケジュール調整及びアシスタント業務が中心となっており,原告X2の能力を十分に発揮し,活用することができているとはいい難かった。そこで,営業のベテランである原告X2に,支局における営業面での活躍をさせることが今後の有為な人材活用であると判断された。そして,異動先である北海道支局は,実力のある保険業OBが支局長を務め,業績も好調で,被告としても強化エリアとしている支局である上,旭川支所には,管理職はいるものの札幌から距離があり,支局にはナンバー2の管理職が不在で,非管理職職員が支局長代行を務めるなど,早急に改善する必要があった。そこで,原告X2に支局長の経験があるため,支局長代行の適任者でもあり,次期支局長とするべく,結果を期待して異動させたのである(なお,当時,仮に北海道支局において帯広支所長に予定されていたI職員を課長職とする希望があったとしても,C代表理事及び人事担当理事であるK(以下単に「K理事」という。)は,そのような希望を知らなかった。)。
原告X2は,過去に地方(九州支局及び静岡支局)勤務も経験しており,平成26年1月に原告X2が提出した自己申告書にも,介護を要する家族がいる等の申告はなかった。
(c) 原告X3について
原告X3に対する本件配転命令にも業務上の必要性が認められることは,原告X2と同様である。北海道支局旭川支所長は,被告で最も実績を上げている優秀なL(以下単に「L支所長」という。)が務めており,原告X3については,本部と支局との間のキャリアパスの一環として,L支所長の下で学ぶことにより,今後の昇進とインセンティブ手当の増加が十分に見込めると判断され,幹部候補生として,人材育成を目的とした異動の対象となった。L支所長は,原告X3より年少であるものの,被告において上司の年齢が部下の年齢よりも下である例は,多数存在する。さらに,旭川支所は,北見,帯広等の広大なマーケットを担当しており,本件配転命令の当時から,帯広の支所化について要望があり,実際,平成27年10月1日から帯広支所が開設されている。本件配転命令の後,旭川支所への増員ができなかったのは,被告の人員不足が理由であり,旭川支所の市場性が枯渇したからではない。
また,原告X3が平成26年1月に提出した自己申告書には,介護を要する家族がいる等の記載はなかった。
(d) 原告X4らについて
被告は,本件配転命令により,業務推進職へ職種を変更した職員について,派遣職員に対する度重なる補助業務の負担によって本来業務に集中することができず,成績が低迷している環境から脱却させ,新たな環境で能力の向上及び開発をする機会を提供し,業務の推進に注力させるための環境の改善を図ることとしたものである。原告X4らは,業務推進職に職種を変更したものの,各支局において,派遣職員が定着しないこと等から,総務業務の補助を余儀なくされていたなどの事情があり,業務推進業務の成績が伸び悩んでいた。
そこで,被告は,原告X4らの環境を変え,その成績を向上させるため,原告X4については派遣職員が比較的安定し,ロールモデルとして中途採用の女性業務職員が活躍している東北支局を異動先とし,原告X5については派遣職員が比較的安定し,3県を3人で担当し,少数精鋭の支局として現在業績を上げているものの,業務職員が不足している北陸支局を異動先とし,原告X6については首都圏の大きいマーケットを抱える埼玉支局において伸び悩んでいたため,比較的新しいエリアにおいて保険業OBの支局長や同時に異動となる顔見知りの原告X2の指導の下で知識の習得やレベルアップを図ることにより実績を向上させることを期待して北海道支局を異動先とし,原告X7については人間関係が良好でなかったJ支局長の下から別の地域に移すとともに,首都圏の大きいマーケットの経験を積ませ,いずれは北海道に戻って地場貢献してもらうというキャリアパスの基本方針の下で埼玉支局を異動先とした(なお,埼玉支局には,本部の元総務部から異動したベテラン女性業務職員がおり,4人の新人女性業務職員もいるため,原告X7が孤立することもない環境にある。)ものである。原告X4,原告X5及び原告X6の異動先を首都圏内としなかったのは,首都圏内の支局において当該支局の管轄外における営業が行われていたため,その範囲内で異動しても環境が顕著に変わらず,通勤に時間を要することでかえって負担が大きいと判断したからである。
原告X4らは,いずれも,独身であり,被告に提出されたそれぞれの自己申告書にも介護等を要する家族の記載がないか,あっても他の家族による対応が可能と考えられるなど,本件配転命令による不利益は大きくはない。
ウ 争点1-③(原告X1に対する本件配転命令に伴うグレード級の降格処分が違法なものであるかどうか)に関する当事者の主張
(ア) 原告X1の主張
被告におけるグレード級の降格は,必然的に給与の減額という重大な不利益変更を伴うものであるから,労働者の同意又は就業規則上の根拠が必要である。しかるに,本件配転命令に伴う原告X1のグレード級の降格は,これらを欠くものであり,違法である。すなわち,本件就業規則には,降格の要件が記載されておらず,むしろ,その定めからすれば,基本的に勤務継続により給与が上昇することが前提とされた給与体系であるということができる。これに対し,被告が指摘する「人事基盤整備計画~新人事制度・退職金制度~(案)」は,単なる案であり,従業員に対して周知もされておらず,本件就業規則と一体となったり,その解釈を補完するものではない。また,被告の指摘する平成26年3月19日付けの社内通達は,就業規則とは異なる性質のものである上,降格要件についての記載もない。さらに,本件給与規程についても,グレード級の上限及び下限が定められるにとどまり,降格の要件までは定められていない。
実質的にみても,本件配転命令の前に原告X1が支局長を務めていた北東京支局の営業成績は,新規事業所開発が対目標比150%達成,獲得被共済者が対目標比137%達成と目標となる数値を大きく上回るものであり,賃金の大幅減額となる降格に値するような営業成績ではない。被告における人事評価が相対評価であるから,相対評価の結果として人事査定が下がることはあり得るとしても,これを根拠に賃金を減額することは,目標を達成していて何ら落ち度がないにもかかわらず,周囲の成績が良いことを理由に不利益な扱いを受けることにつながり,合理性がない。
(イ) 被告の主張
被告においては,本件給与規程上,グレード級に対応したグレード給が支給されるとされているところ,「人事基盤整備計画~新人事制度詳細設計~(案)」記載のとおり,部長,室長及び大支局長の役職と「M2」グレードが連動し,課長,中支局長及び小支局長の役職と「M1」グレードが連動する。したがって,中支局長又は小支局長から大支局長に異動となった場合はグレード級が「M1」から「M2」になり,逆に大支局長から中支局長又は小支局長に異動となった場合にはグレード級が「M2」から「M1」になる。この点は,被告の平成26年3月19日付けの社内通達により,確認され,周知されているところであるし,グレードの異なる支局間で支局長として異動した場合にそのグレード級が変更になることは,本件給与規程の第19条がもともと予定しているところである(なお,本件給与規程の第22条第3項には,降給に関する規定があるが,これは人事考課の結果としての降給であり,異動に伴うグレード級の変更は,降格ではなく,「異動」と表現されている。)。
また,平成25年度から実施された被告の新人事・考課制度においては,昇格及び降格の基準が明確化され,直近4回の半期の人事考課で「C」(5段階評価で上から4段目)以下を2回取得すると降格要件を満たすとされている。原告X1の評価は,平成25年度上期から平成26年度上期までの3期連続で「丁」(5段階評価で上から4番目)であり,「M2」グレードの者の中でも最下位の評価であった。
以上のとおり,原告X1については,降格の要件も満たしているものであるから,本件配転命令に伴う原告X1のグレード級の変更は,違法なものではない。
エ 争点1-④(原告X2及び原告X3に対する平成26年度下期の各人事考課が違法なものであるかどうか)に関する当事者の主張
(ア) 原告X2及び原告X3の主張
a 原告X2の主張
原告X2は,平成26年度下期の人事考課において「戊」と評価されたが,当該評価の基となる平成26年10月から平成27年3月までの支局全体の業績は,対前年比150%以上という好成績であった。平成26年度上期の原告X2の評価が「乙」であったことを考慮すれば,下期のこの評価は,不当といわざるを得ず,原告X2を退職に追い込む目的でされたものであるから,人事権を濫用したものとして,違法なものである。
被告の主張する原告X4の電子メールは,原告X4が本件配転命令によって体調不良となったことについて,E部長から体調が悪いならとにかく病院に行くようにというアドバイスがあったため,同様の境遇にあった同僚に対しても,無理をしてはいけない,自分の体調が一番大切であるという趣旨で送信されたものである。原告X2は,突然の本件配転命令によって女性職員らの体調が悪化することを防ぐために,体調が悪いのであればまずは病院にいくようにという管理職として当然のアドバイスをしたものにすぎず,「戊」という評価の理由となるものではない。
b 原告X3の主張
原告X3は,平成26年度下期の人事考課において「戊」と評価されたが,平成26年度は,年間を通じて同じ業務を行い,同様の実績を上げてきたにもかかわらず,上期が「乙」評価であったのに,下期を「戊」とする合理的な理由がない。このような人事考課は,原告X3に対する本件配転命令が原告X3に退職を強いる目的であったことを裏付けるとともに,人事権を濫用したものとして,違法なものとなる。
被告は,原告X3が時間外労働をしていたことを問題として指摘しているが,原告X3の総労働時間数については争わないものの,これは原告X3の業務量が多かったことによるものであり,残業を削減する要請も受けていないのであるから,これを負の評価とすることは許されない。すなわち,本部業務推進部は,平成23年9月に発足して以来,常に人手不足の状況にあり,原告X3にその業務が集中していた。具体的には,提案書作成システムの構築,はがきサイズの圧着ダイレクトメールの発送,チラシの作成,支局及び業務推進部の経費予算の管理,表彰規程の作成と表彰式の開催,広告の掲載,進発式(被告において年度初めに行われる営業決起大会をいう。以下同じ。)の開催,業務用携帯電話の契約管理,稟議書及び通達の作成,支局からの問合せの対応,被告の一般財団法人への移行に関する対応業務等であった。
(イ) 被告の主張
原告X2及び原告X3に対する平成26年度下期の各人事考課の理由は,次のとおりであって,いずれも人事権の濫用には当たらない。
a 原告X2について
原告X4の電子メールによれば,E部長がC代表理事を認めず,本件配転命令の発令前から争いを起こし,その争いを有利にするために,原告X4を通じ,女性職員に対し,心療内科に行って診断書を取得し,被告に提出して,これを理由に休職することによって本件配転命令に抵抗する旨を指示したこと,当該指示がE部長と原告X2の共謀によることが明らかである。本件配転命令の当時は,H前理事長の急逝という緊急時であり,被告の職員が一致団結して業務を推進しなければならないという状況下にあって,経営の中枢の管理職であるE部長及び原告X2がこのように被告を混乱させる行動をとったことは,被告にとっては,明らかな規律違反行為と判断せざるを得ないものであった。そのため,被告は,この事情を平成26年度下期の原告X2に対する人事考課における重要なマイナス要素としてしんしゃくした。そして,被告における管理職に対する人事考課が相対評価であるところ,他の支局長等にマイナスの考課材料がない以上,原告X2の評価が最低の評価とならざるを得なかったのである。
b 原告X3について
被告は,監督官庁から業務停止命令,業務改善命令及び改善勧告を受け,法令遵守体制の抜本的見直し,改善を強く求められており,コンプライアンス体制の強化及び徹底の取組みを進めていたところ,無駄な残業や長時間労働を減らすため,平成26年2月25日付けで「労働時間等の管理について」と題する人事部長通達を発し,さらに,これを徹底するため,同年6月9日付けで「『時間外・休日勤務命令書』の運用について」と題する人事部長通達を発し,本部の部署においては,時間外労働及び休日労働を命令書に基づき行わせることとした。これにより,本部の各部署の時間外労働が顕著に減少することになったが,顕著な業務量の増大があったわけでもない業務推進部については,時間外労働の削減等の改善がされず,特に原告X3の長時間労働が顕著であり,平成26年度の総時間外労働時間が272.55時間と突出していた。このことは,上記の各人事部長通達に係る時間外労働の削減の要請を適切に理解し,従おうとした行動ではないものと判断せざるを得ず,被告は,平成26年度下期の人事考課を厳格に相対評価することとしたものである。本件配転命令の後である平成27年4月以降の業務推進部の時間外労働時間が顕著に減少していることからすると,業務推進部が人手不足であったとの原告X3の主張には理由がなく,原告X3が指摘する業務の内容についても,原告X3の時間外労働を正当化するものではない。
オ 争点1-⑤(原告X4,原告X5及び原告X6に対する平成27年6月のグレード級の各降格処分が違法なものであるかどうか)に関する当事者の主張
(ア) 原告X4,原告X5及び原告X6の主張
平成27年6月に原告X4,原告X5及び原告X6のグレード級が「G2」から「G1」に降格したことについては,これらの原告が同意しておらず,本件就業規則にも降格の規定がないことからすると,法律上の根拠を欠く,違法なものである。原告X4,原告X5及び原告X6は,所属する各支局の派遣職員が定着せず,なかなか仕事を覚えられなかったことから,その問合せの対応に追われ,業務推進業務に専念することができなかった。これによって,評価の対象となる架電件数等が伸びず,成約に至る数も少なかった。平成27年6月の各降格は,これらの原告X4,原告X5及び原告X6の状況を考慮せずにされたものであり,評価の方法にも合理性がない。したがって,降格の根拠を欠く上,評価の方法にも合理性がないことから,被告の原告X4,原告X5及び原告X6に対する平成27年6月のグレード級の各降格処分は,違法なものである。
(イ) 被告の主張
被告が平成27年6月に原告X4,原告X5及び原告X6のグレードを「G2」から「G1」に降格したのは,これらの原告の顧客獲得実績(営業実績)が平成26年度上期及び下期の2期連続で低迷し,いずれも「戊」評価となったことによるものであり,平成25年の新人事・給与制度の改定に基づく措置である。原告X4,原告X5及び原告X6は,同様に業務推進職に異動した女性職員と比較しても,新規獲得数等の面において劣るばかりでなく,その意欲,積極性等においても劣っていたのであるから,「戊」評価は妥当であるし,降格を回避することも難しかった。原告X4,原告X5及び原告X6は,派遣職員の指導等に時間を取られた等と主張しているが,これらの原告の低いアポ率からすると,その点のみを過大にしんしゃくすることはできず,派遣指導を口実とする営業からの逃避を疑われてもやむを得ない状況であった。
カ 争点1-⑥(原告X1に対する職場復帰時のグレード級の降格処分等が違法なものであるかどうか)に関する当事者の主張
(ア) 原告X1の主張
原告X1は,平成28年6月10日に復職した際,「M1」グレードから「G3」グレードへと再度降格された。この降格によって,原告X1の賃金は,更に月額約14万円減少することになった。原告X1が当該降格に同意しておらず,本件就業規則にも降格の定めがないことからすると,当該降格は,法律上の根拠を欠く違法なものである。また,原告X1は,この復職以前に精神疾患を患っていたため,復職時には配慮が必要であり,特段の事情がない限り,従前どおりの管理職として復帰させることが求められていた。しかるに,被告は,原告X1について,管理職としての復帰に支障がなかったにもかかわらず,現場の一般職として復帰させ,慣れない職務により極めて強い心理的負荷をかけた。さらに,原告X1の復帰先の埼玉支局は,原告X1の自宅から通勤に1時間30分程度を要する遠方にあり,通勤による過度な負担がかかる上,埼玉支局の受入態勢も不十分であった。
これらにより,原告X1は,不安障害を再発させ,再度休職せざるを得なくなったものであり,以上の被告による原告X1の復職時の降格や対応は,いずれも違法なものである。
(イ) 被告の主張
被告の支局における「M1」グレードの職員は,いわゆる管理職として,「M1」支局の支局長,支所長,支局課長又は団体開発課長の役職を務めることとなるが,いずれの職責も重いことから,精神疾患による休職からの復職者にその職責を負わせることは,その心理的負荷が大きいものとなる。そのため,被告は,当該復職者が管理職であった場合には,暫定的にグレードを一つ落として復職させることとしており,同様の前例が平成22年1月及び平成25年3月にもあった。この降格は,飽くまで暫定措置であるから,復職後3か月程度が経過し,「M1」グレードの職責を負わせることが可能と判断されれば,人事異動の定例期等に「M1」グレードに戻すことを当然に想定しており,原告X1についても,経過が良好で管理職復帰が可能であると判断されれば,平成28年10月等に「M1」グレードに戻すことが十分にあり得た。
また,原告X1の復職先の検討に当たっては,北東京支局,南東京支局,千葉支局及び埼玉支局を検討したところ,北東京支局及び南東京支局については,通勤ラッシュ時の上り線を利用することになること等,その身体的負担が大きく,千葉支局についても,平成28年6月当時,別の精神疾患による休職からの復職者の配属が予定されていたという事情があったことから,埼玉支局をその復職先としたものである。埼玉支局は,通勤時間は長くなるものの,通勤時に利用する電車で着席することができる可能性が高く,また,原告の元部下がほとんどおらず,営業エリアが広く業務推進がしやすいことも,復職に当たって考慮した事情である。
以上のとおり,原告X1に対する平成28年6月10日付けの降格処分等は相当であり,違法なものではない。
キ 争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)に関する当事者の主張
(ア) 原告らの主張
a 原告X1の主張
原告X1は,本件配転命令の内示を知らされ,予期しなかった降格及び遠隔地への配転に愕然とし,納得することができる説明もなかったことや,引継ぎ,引越しの負担等による精神的ストレスや肉体的疲労が重なり,冠攣縮性狭心症,不安障害を発症するに至った。原告X1には,心臓疾患や精神障害の既往症はなく,本件配転命令の内示の後に発症していることや,その発作のタイミング等からすれば,本件配転命令による精神的ストレスがその主たる要因であることが明らかである。上記イ(ア)a及びb(a),ウ(ア)並びにカ(ア)の被告による違法行為によって原告X1が受けた精神的・肉体的苦痛等を加味すると,これらの違法行為による慰謝料の額は500万円を下らず,この慰謝料額に照らして弁護士費用相当額50万円も相当因果関係を有する損害である。
また,原告X1は,上記ウ(ア)の本件配転命令に伴う降格処分及びカ(ア)の降格処分によって賃金を減額されており,当該各降格処分による財産的損害の額は賃金減額分の303万9237円であり,この1割である30万3924円の弁護士費用も相当因果関係を有する損害である。
b 原告X2の主張
本件配転命令によって,原告X2のみならず,その妻及び母にも精神的苦痛,不安等を生じている。上記イ(ア)a及びb(b)並びにエ(ア)aの被告の違法行為によって原告X2が受けた精神的苦痛等による慰謝料の額は500万円を下らず,この慰謝料の額に照らして弁護士費用相当額50万円も相当因果関係を有する損害である。
また,原告X2は,上記エ(ア)aの平成26年度下期の人事考課によって賃金が減額されており,当該人事考課による財産的損害の額は賃金減額分の155万4827円であり,この1割である15万5483円の弁護士費用も相当因果関係を有する損害である。
c 原告X3の主張
原告X3は,本件配転命令及び平成26年度下期の人事考課によって精神的にストレスを感じ,平成27年3月には心療内科において「抑うつ,不安,不眠といった症状強く,通院治療と60日間の自宅療養を要す」との診断を受け,同年4月1日から病気欠勤となり,現在も休職を強いられている。上記イ(ア)a及びb(c)並びにエ(ア)bの被告の違法行為によって原告X3が受けた精神的苦痛にその経済的損失を加味すると,その慰謝料の額は500万円を下らず,この慰謝料の額に照らして弁護士費用相当額50万円も相当因果関係を有する損害である。
d 原告X4らの主張
本件配転命令によって,原告X4らは,いずれも医療機関を受診するなどし,休職に至った。上記ア(ア),イ(ア)a及びb(d)並びにオ(ア)の違法行為(上記オ(ア)の違法行為については,原告X7を除く。)によって原告X4らが受けた精神的苦痛等による慰謝料の額はいずれも500万円を下らず,この慰謝料の額に照らして弁護士費用相当額各50万円も相当因果関係を有する損害である。
また,原告X4らは,上記ア(ア)の業務命令及び同イa及びb(d)の本件配転命令によって遅くとも平成27年4月以降は就労不能となり,医療機関への通院を余儀なくされており,これらの違法行為による損害の額は平成28年10月までの19か月分の休業損害(原告X4,原告X5及び原告X7にあっては各208万4440円,原告X6にあっては255万7327円。ただし,いずれも労災保険給付として見込まれる額を控除している。)及び通院慰謝料(各172万円)であり,これらの1割に相当する弁護士費用(原告X4,原告X5及び原告X7にあっては各38万0444円,原告X6にあっては42万7733円)も相当因果関係を有する損害である。
(イ) 被告の主張
上記(ア)の原告らの主張は,いずれも否認し,又は争う。
原告X1に対する本件配転命令は,平成27年8月1日に原告X1が人事部付となったことによって事実上撤回しており,原告X3及び原告X4らに対する本件配転命令も,いずれも同年7月24日頃に撤回している。
原告X1,原告X3及び原告X4らが主張する私傷病と不法行為との間に因果関係はなく,とりわけ原告X1については,本件配転命令の前の健康診断において高コレステロール血症等が認められるとともに,医師から禁止されていた喫煙を続けていたといった事情があり,本件配転命令との間に相当因果関係はない。
ク 争点3(争点1-①の原告X4らに対する業務命令につき不法行為が成立するとした場合の当該不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の成否)に関する当事者の主張
(ア) 被告の主張
仮に,原告X4らに対する業務推進職に職種を変更させる旨の業務命令が不法行為に当たり,被告が原告X4らに損害賠償義務を負うとしても,被告が原告X4,原告X5及び原告X6を業務推進課に異動させたのが平成25年7月1日であり,原告X7を同様に異動させたのが同年9月5日であることからすると,原告X4らが当該損害賠償請求権を行使する旨の訴えの変更をした平成28年10月27日の時点において,既に3年の消滅時効期間が経過している。したがって,当該損害賠償請求権は,本件時効援用の意思表示により,いずれも消滅した。
(イ) 原告X4らの主張
被告の不法行為である当該業務命令は,業務推進職への職種の変更のみならず,変更後の業務推進職としての就労実態をも含む行為であり,消滅時効の起算点は,業務推進職としての就労が止まったときであるから,3年の消滅時効期間は,いまだ経過していない。
第3  争点に対する判断
1  括弧内において掲記する証拠又は弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)  G元理事長の就任等
被告においては,上記第2の2(5)アからオまでの前提事実のとおりの状況を踏まえ,平成22年9月に弁護士の資格を有するG元理事長がその理事長の地位に就任することとなり,G元理事長の下で,その業務の改善を図るとともに,認可特定保険業を行い,また,一般財団法人への移行等を行うことになった。(乙66,94,証人J及び証人K)
(2)  被告における経営改革等
ア G元理事長は,その就任後,特定の営利企業との随意契約によっていた被告の広報誌「○○」の発行に関する業務委託契約を競争入札制度に改めることにより,その業務委託費を約4億円低減させ,その他の随意契約約20件についても解約するなどした。(乙66,93及び弁論の全趣旨)
イ 被告は,平成24年3月から,その事業である災害補償共済事業,災害防止事業及び福利厚生事業(以下これらを併せて「本件三事業」という。)を改革するため,本件三事業の運営を本部に集約することとした。この集約化は,本件三事業の遂行が支局の負担となっていたため,本部に集約することにより,支局の負担を軽減するとともに,支局が業務推進業務(ないし営業業務又は外勤業務。以下同じ。)に注力することができるようにすることを目的とするものであった。被告は,その職員らに対し,職員向けの広報誌「△△」の同年4月2日号の記事により,本件三事業を本部に集約化することによって会員サービスを向上する方針を伝えた。
本件三事業の本部への集約化に伴い,同年3月1日付けで,支局において本件三事業に携わっていた職員等を本部の本件三事業を運営する部署に異動させる内容の人事異動が発令された。この人事異動において,静岡支局総務課に所属していた女性職員が本部に異動となったが,当該女性職員は,転居が難しかったことから新幹線で本部に通勤することになり,その後の同年12月28日に人事部付となって,平成25年1月31日に被告を希望退職した。また,静岡支局においては,当該女性職員のほか,平成24年3月1日付け及び平成25年7月付けでそれぞれ他の2名の女性職員に本部の本件三事業の運営部署への人事異動が発令されたものの,当該2名は,この異動に応じず,平成24年8月及び平成25年9月にそれぞれ被告を退職するに至った。
(乙6,115の1,122,証人M及び証人N)
ウ 被告は,平成24年頃,一般財団法人への移行及び認可特定保険業者としての存続のために必要な人事基盤について外部のコンサルタントによる定量分析を実施したところ,被告の人員が過剰であり,人件費の単価が高い職員が多いために総人件費が高くなっていること,事業規模に照らして部及び課の数が過剰であり,管理職のために本来必要のない役職を作ることが常態化していて,非効率な組織体制となっていること,昇格をしなくとも昇給があり,職員に業績をアップさせなければならないとの意識が十分でないこと,給与制度が成果に直結しておらず,成果を上げることに対するインセンティブが十分でないこと,外部の保険会社等よりも給与水準が低く,有能な人材の新卒採用や中途採用が困難となっていること等の問題点の指摘を受けた。
また,これに先立つ平成23年末には,九州支局の職員3名が5年間にわたって対応していた災害防止事業助成金に係る申請書類の担当業務に関し,領収書を改ざんしたり,申請書を代筆し,加筆修正したりするなどして,不当に特定の会員の利益を図ったことにより,懲戒処分等を受けるという出来事があった。
そこで,被告は,必要な人員の削減,組織体制・役職の整理を行うとともに,昇格・降格制度の整備,業績・成果を直接的に給与に反映させる賃金制度への改定等を行うこととし,このうち人員の削減については,50名を目標とし,45歳から63歳までの正規職員の全員について,希望退職制度を実施することとした。
(乙13,93及び113の1から113の3まで)
エ 平成25年になり,被告は,それまでの人事制度及び賃金制度の問題点を踏まえ,各部門・部署の役割を整理した上で,組織構造の見直しを行うこと,事業計画の達成に必要な適正な人員の数及び構成を算定し,人材ポートフォリオを見直すこと,収益状況に応じた総人件費のコントロールを可能とすること,役割と成果に応じたメリハリの効いた処遇を実現すること,事業計画の達成に必要な人材を育成することができる仕組みを構築することを方針とした上で,具体的には,以下の内容を有する新人事・賃金制度(以下この制度を全体として「新人事制度」という。)を策定した。(乙15及び16)
(ア) 従前において管理職,総合職及び専任職に区分され,役職との対応も明確ではなかった人事体系を変更し,職種を上位から順に「M2」,「M1」の管理職層と上位から順に「G/S3」(なお,「G」は業務職群であり,「S」は業務支援職群である。),「G/S2」,「G/S1」の非管理職層とに区分し,管理職層については,原則として,部長,室長及び大支局長の役職と「M2」のグレード級とを連動させ,課長,中支局長及び小支局長の役職と「M1」のグレード級とを連動させるものとする。
(イ) 賃金制度について,被告の業績に連動した人件費の配分の在り方を見直し,貢献スタイル,職務,能力レベル,勤務地別の処遇適正化を図るため,考課を上位から「S」,「A」,「B」,「C」及び「D」の5段階とし,「B」考課を標準とする前提で,昇格の基準として,直近4回の半期の人事考課で「A」以上を2回取り,かつ,「C」以下を取っていないこと,「G/S2」から「G/S3」への昇格には原則として部又は支局を2か所以上経験していること,「G/S3」から「M1」への昇格には原則として業務職及び業務支援職のどちらも経験していること,「M1」から「M2」への昇格には原則として課長又は支局長を2か所以上で経験していること等を要するものとするとともに,降格の基準として,「M2」から「M1」又は「M1」から「G/S3」への降格には直近4回の半期の人事考課で「C」以下を2回取ったこと,「G/S3」から「G/S2」又は「G/S2」から「G/S1」への降格には直近4回の半期の人事考課で「D」以下を2回取ったことを要するものとする。
(ウ) 地域手当を新設し,賃金レンジにグレード間での格差を設け,業務職職員に対して歩合制を導入するものとする。
(エ) 新グレード級においては,各グレードの賃金レンジ(月額)を「G/S1」が21万5000円から25万1000円まで,「G/S2」が26万5000円から31万円まで,「G/S3」が31万8000円から36万6600円まで,「M1」が43万1000円から49万7700円まで,「M2」が55万7000円から63万2000円までとし,従前のグレード級における賃金レンジとは異なり,グレード間の賃金レンジが重複することがなく,管理職と非管理職との間では,時間外手当(15時間分)を含めても賃金が逆転することがないものとする。
(オ) 人事考課制度として,考課の体系を見直し,考課の結果が適正に処遇に反映される仕組みを構築するとともに,考課者会議を実施するなどして考課の精度の向上も図り,考課制度を通じて人材の育成を促進するものとする。業務職の職員については,バリュー考課として,期待される行動をとれたかどうか(被告の求める価値観を理解し,実践する人物であるかどうか)を考課した上で,算出された係数を昇格,昇給及び賞与に反映させ,行動考課として,高い業績を上げている職員の行動特性(コンピテンシー)をモデル化し,それを考課基準(グレードに応じて期待レベルを設定する。)として考課した上で,昇格及び昇給に反映させ,MBO考課として,期初に設定された部門目標に基づいて成果を考課し,これを昇格,昇給及び賞与に反映する仕組みを採用するものとする。
オ 被告は,新人事制度の実施に当たり,職員に対し,所属の支局長を通じるなどして,平成24年9月11日頃に「人事基盤整備計画の実施について」と題する書面を,同年11月1日頃に「人事基盤整備計画~新人事制度詳細設計~(案)」と題する書面(以下「新人事制度詳細設計書」という。)を,平成25年3月13日頃に「人事基盤整備計画~新人事制度・退職金制度(案)」と題する書面をそれぞれ配布した。あわせて,被告は,平成24年10月15日,本部において部署長及び支局長を対象として人事基盤整備計画説明会を実施し,同年11月1日には,職員を対象として新人事制度詳細設計書を用いた新人事制度の概要説明及び雇用調整の公示を行った(なお,同日の説明等は,本部並びに北東京支局及び南東京支局の職員については午前及び午後の2回に分けて実施され,その他の支局の職員については本部から発信されたG元理事長のメッセージを視聴させた上で,各支局長から行われた。)。さらに,被告は,平成25年3月13日,本部において午前と午後の2回,職員に対する就業規則及び給与規程の改定に関する説明会を開催し,支局においても同時間にテレビ会議システムを利用して説明会を開催した。当該説明会においては,説明後に質疑応答が行われ,その内容が被告のイントラネットの掲示板に掲載され,説明会後の質疑応答の内容も当該掲示板に掲載された。(乙13,15から18まで,93及び証人M)。
上記の新人事制度詳細設計書の配布による雇用調整の公示に係る希望退職の募集に応じた職員は,最終的には,当時の被告の全職員数の約2割に相当する74名であった。被告は,平成24年12月17日頃,職員に対し,73名の希望退職者がいたこと,今後,被告の業務内容を精査し,コア業務とノンコア業務に分類し,正規職員と派遣職員を含む非正規職員との業務の振り分けの実施,外勤職員のバランス調整等をする予定である旨を伝えた。上記の希望退職の実施に伴い,平成24年度中には,欠員を補充するために9名の職員が本部から支局に異動した。また,同年12月21日には,本部総務部で総務業務に従事していた女性職員(以下「訴外女性職員」という。)が埼玉支局の業務推進課に異動した。
(乙109,115の3及び証人M)
カ 原告らは,平成25年3月末頃,G元理事長宛てに事業所ごとに作成された「平成25年4月1日施行の給与規程を含む就業規則の内容を確認の上、同意した」旨が記載された同意書に署名及び押印をし,被告に提出した。
被告は,毎年末から毎年度末にかけて,職員に被告作成のひな型による異動に関する自己申告書を提出させていたところ,平成25年度の自己申告書のひな型には,転居を伴う異動に関する説明として,被告には人事権があり,本件就業規則上,職員が正当な理由なく異動又は出向を拒否したときには,諭旨解雇又は懲戒解雇の対象となること,一般財団法人への移行に向けて,男女雇用機会均等法の遵守(逆差別等の排除)はもちろんのこと,業務上の必要性に照らし,権利の濫用にならない範囲において,合理的な人選の上,今後も認可特定保険業者として事業を継続することができる体制となるように,段階的に転居を伴う異動を実施することが記載されていた(なお,被告は,一般財団法人への移行作業等によって繁忙であったこともあり,平成26年末には,職員に当該自己申告書を提出させることがなかった。)。
(乙21の2から21の8まで,33の1,33の3から33の8まで及び証人K並びに弁論の全趣旨)
キ 被告においては,新人事制度の下での新たな人事考課制度が始まり,平成25年度以降,上期(当年の4月から9月まで)については当該年度中の秋頃に,下期(当年の10月から翌年の3月まで)については当該年度終わりの春頃に,それぞれ人事考課を行うこととなった。被告は,平成25年10月30日に,本部の部署のみを対象として,平成25年度上期の人事考課のための考課者会議を実施した。この考課者会議は,同日午前9時頃から開始したが,同日午後9時を過ぎても終わらず,結局,翌日の午後3時頃に終了した。また,平成26年5月7日には,支局の業務推進関係を対象として,平成25年度下期の人事考課のための考課者会議を実施した。この考課者会議は,同日の午前10時から午後9時まで行われたが,仮に終了しない場合には翌日にも続行する予定とされていた。
平成26年3月当時,被告の本部には,業務部,業務推進部(部長はF部長である。)及び業務開発部(部長はE部長である。)があり,業務部は会員募集及びコンプライアンス関係の業務を,業務開発部は業務推進の対外的な支援業務(研修の実施等)を,業務推進部は営業企画(営業計画,支局目標数,社内キャンペーンの企画及び実施),営業支援(ダイレクトメールの発送,チラシ等の営業ツールの作成)及び業績管理(獲得実績及び予算の管理)をそれぞれ担当していた。被告は,同年10月26日に平成26年度上期の考課者会議(以下「本件考課者会議」という。)を行った。E部長は,本件考課者会議の冒頭で,性別の区別なく,獲得人数の比較のみで相対評価を行うべきであると主張し,この方針に基づいて考課が行われた結果,本件考課者会議が30分程度で終了した。
ところで,被告が同年3月6日頃に行った同年度の進発式において,業務推進職の職員のうちの2年目の新人及び総務課から異動した者については,月当たり平均10人の新規獲得人数が目標値とされ,チャレンジ目標として月当たり平均15人と設定されていたが,その他の業務推進職の職員については,月当たり平均25人の新規獲得人数が目標値とされ,チャレンジ目標として月当たり平均30人と設定されていた。ところが,本件考課者会議においては,上記のとおり,総務課から異動した者かどうかを考慮することなく,一律に,獲得人数の多寡によって考課が行われることになった。本件考課者会議の冒頭では,総務課から異動した者の新規獲得人数の目標値について,F部長が想定する人数とE部長の想定する人数が異なっていたが,最終的には,E部長の主張した人数に落ち着いた。当時,被告の人事担当理事であったK理事は,本件考課者会議の終了した後,C代表理事(当時は,副理事長の地位に在った。)に対し,E部長の提案で考課のやり方が変わり,短時間で本件考課者会議が終了したこと,途中から参加したH前理事長が考課のやり方についてE部長に注意をしたが,E部長が聞き入れなかったこと等の経過を報告した。C代表理事は,この報告により,業務推進部と業務開発部の統合等,今後の被告の組織再編が必要であるとの認識を抱いた。
(甲B13,甲F1,乙15,71,94,116,122,証人K及び被告代表者本人)
ク 被告では,平成26年度から,内部オペレーションの効率化及び職員の健康の保持のため,職員の時間外労働時間を徹底して削減する旨の方針を採り,平成26年2月25日には,幹部職員宛ての人事部長通達により,労働時間等の管理に関し,関係法令の周知とともに,勤怠システムにより管理職を除く職員の現状を確認した上で,業務委託等を含めた業務内容や担当の見直し等によって労務指揮をすることを要請した。さらに,職員の労働時間の管理を徹底するため,同年6月9日には,同様の人事部長通達により,時間外・休日勤務命令書をもって時間外・休日労働を行う旨の制度を導入し,時間外労働ごとに,当該職員には実働時間を,当該職員の管理職には時間外労働の発生原因,業務内容,実施成果及び効果等を記載させることとした。被告では,現在も,月1回の部長会及び役員の連絡協議会において,部署ごとの残業時間を把握した上で,無駄な時間外労働が行われている部署についての管理職への指導を行っている。
上記のとおり,時間外労働の削減が通達されたことによって,各部署の時間外労働が減少したものの,原告X3の時間外労働は減少せず,本部の職員のうち平成26年4月1日から平成27年3月31日までの時間外労働時間数が200時間を超えていた者は,運転業務に携わっていた総務課職員(324時間45分)の他は,原告X3(272時間55分)のみであった(なお,当時,本部業務推進部において時間外労働時間を把握されていた者は原告X3を含めて3名であったところ,当該3名の残業時間の合計は,397時間20分であった。)。そのため,K理事及び人事部長であったM(以下単に「M人事部長」という。)は,原告X3の上司であるF部長に対し,原告X3の残業時間が長いことについての注意喚起をした。
なお,原告X3の後任者は,ほとんど時間外労働を行っておらず,平成27年4月及び5月の本部業務推進部(業務開発部と統合された後の部署である。)に属する職員(時間外労働を把握されていた者は2名であった。)の時間外労働時間は,全体として35時間01分(4月分)又は3時間48分(5月分)である。
(乙58から60まで,62,94及び証人M)
(3)  被告における業務推進職の職員に対する教育等
ア 被告は,平成22年に業務停止命令を受けた(上記第2の2(5)エの前提事実)とき以降,ガバナンス体制の確立並びに内部管理体制及び職員へのコンプライアンスの醸成の構築を優先し,職員に対し,多くの業務推進活動の停止又は自粛を求めていた。しかし,平成23年7月頃になり,新体制の確立ないし新組織体制の構築,ハンドブック等を通じたコンプライアンス教育等により体制が整ったと判断したことから,ダイレクトメール等による業務推進活動を解禁することとした。(乙82)
イ 被告は,上記アの業務停止命令を受けた後,業務推進活動に関し,業務推進スキルの向上及びセールストークの標準化に向けたDVDビデオを作成して各支局に配布したり,本部業務推進部において,顧客の訪問を想定した問答集,テレアポ(電話による営業を意味する。以下同じ。)用問答集,EL保険用の問答集等を作成したりするなどし,具体的な業務推進に際し,顧客とどのようなやりとりが想定され,職員がどのように顧客に説明すればよいのかを示す資料を作成した。このうち,テレアポ用問答集については,7名の新入職員がこれを用いたところ,顧客に対する架電数(以下「コール数」という。)が680件に達し,そのうち有効通話数が201件で,日時を指定しての顧客とのアポイントメント数が12件であり,コール数に対するアポイントメント数の比率(以下「アポ率」という。)が約1.8%となった。(乙83から89まで)
ウ 被告は,業務推進職の評価・指導の手法又は行動指針として,プロセスコントロールと称する手法を重視している。この手法は,業務推進の行動過程を視覚化し,管理職員が当該行動過程の内容から業務推進職の職員の課題を指導し,当該職員が指摘された課題を改善するという循環を繰り返すことによって,有効面談(顧客の決定権者と対面で商談したことをいう。以下同じ。)数を増やし,ロールプレイングを通じて商談の技能を向上することと相まって,結果として獲得実績が向上する成功の過程を取得することを目的としたものである。このプロセスコントロールに基づく指導のため,被告においては,まず,業務推進職の職員からの報告により,プロセスコントロール報告書と称する報告書(コール数,そのうちの有効通話数,顧客と面会することができた件数(以下「アポ数」という。),有効面談数(再訪の件数と初訪の件数),有効面談に至った訪問のきっかけ(ダイレクトメール,テレアポ,代理所の紹介のいずれによるものなのか等によって分類される。)を記載する。)を作成し,有効面談数のうち初訪した件数が月に10件に達しているかどうかを確認する。その際には,コール数が確保されているか,アポ率が低くないか,訪問のきっかけが何か等を確認するとともに,面談の内容等を確認する。これらに基づき,各支局長が職員ごとの課題を分析し,当該職員に応じた指導(アクションプランの策定)を行う。被告は,プロセスコントロールにおける具体的な行動目標として,初訪の件数を月に10件と,初訪の面談時間を最低60分と,コール数を月に240件以上(ただし,アポ率が低い場合には,240件よりも多い件数が設定される。)等と設定しており,被告においては,アポ率が5%であれば優秀と評されていた。(甲A10,乙14及び91並びに弁論の全趣旨)
(4)  被告の支局総務課の廃止及び異動職員に対する営業研修等
ア 被告は,外部のコンサルタントから,支局の事務が派遣職員による対応が可能なものであり,支局の職員がグレードよりも軽易な業務を担当していて,無駄が生じている旨の業務分析を受けたこと(上記(2)ウの認定事実)から,人材を有効活用するため,平成25年7月1日に支局総務課(ないし総務部門。以下同じ。)の一部の職員を業務推進課に異動させた上で,同年9月5日をもって支局総務課自体を廃止することとした。その結果,支局総務課の廃止時に同課に所属していた女性職員も業務推進課の所属となり,同時に,当該女性職員の代替として派遣職員が配置されることになった。また,支局総務課の女性職員のうち本件三事業について十分な知識及び経験を有し,事務処理能力に優れ,かつ,本部に出勤ないし転勤が可能な一部の者については,本部に集約された本件三事業を担当する事務職員として,本部に異動させた。
なお,平成29年1月に被告において試算した結果によれば,派遣職員一人当たりの人件費が1年間で約344万6712円であり,「S1」から「S3」までの被告の正規職員(非管理職層)の年間の平均の人件費が約525万6755円であった。
(乙24,25の1,25の2,92,93及び証人M)
イ 被告の本部業務推進部長は,各支局長に対し,平成25年9月5日付けの事務連絡を発出し,派遣職員への引継期間が平成26年3月31日までであり,各支局の運営に支障が生じないように派遣職員への引継ぎを確実に行うこと,総務課から業務推進課に異動となる職員については,同年4月1日から業務推進課の職員として本格稼働することができるように引継業務と並行してロールプレイング話法の実施,テレアポスキル向上等の営業の教育を行うこと等を指示した。(乙25の1)
ウ 被告は,平成25年7月1日に業務推進課に異動した職員(原告X4,原告X5,原告X6を含む7名の職員)に対し,同月17日及び18日に本部業務推進部において営業に関する研修を行い,また,業務推進部長において,各支局長に対し,同月19日付けの事務連絡により,上記の各職員から派遣職員への引継ぎについては各支局の状況に応じて引継期間を設けること,上記の各職員については早急な獲得実績を追求せず,派遣職員への引継状況を踏まえながら当該職員の能力に即した十分な営業の教育を行うこと,本部業務推進部への職員の個別のプロセスコントロールの報告や見込みの報告が当面の間は不要であること等を指示した。(乙26の1)
エ 被告は,本部において,平成26年3月27日及び28日,総務課から業務推進課に異動した職員(原告X4らを含む19名の職員)を対象として同年4月から本格的に業務推進活動を行うための研修を実施し,同年4月21日にも,当該職員を対象として研修を実施し,さらに,同年6月12日及び同月13日にも,当該職員を対象として営業の研修を実施した。また,同年12月19日,平成27年1月23日,同年2月13日及び同年3月20日には,本部において,総務課から業務推進課に異動した職員(原告X4を含む7名の職員)を対象とする営業の研修を実施した。(乙26の3から26の6まで)
オ 被告に在籍する派遣職員の数は,平成29年4月25日現在で全支局合計28名であり,そのうち北海道支局には1名が,埼玉支局には2名が,南東京支局には1名が,及び神奈川支局には2名がそれぞれ在籍している。被告は,派遣職員を対象とした顧客からの電話に対する受付及び会員管理業務に関するマニュアル等を作成し,派遣職員の業務の円滑な遂行を図った。(乙99及び103から106まで)
カ 被告は,平成25年度末からEL保険を実施し,それまで使用者賠償責任保険がないことを理由に断られていた大口の顧客を獲得することができるようになった。EL保険は,労災保険の対象外となる怪我等について一定額の補償をするという従来からの補償の内容に加え,加入した事業者が安全配慮義務違反等として従業員に対して損害賠償義務を負担した場合には2億円までの保険金と弁護士費用を補償することを内容としており,被告の業務推進に資するものであった。(乙87及び93)
(5)  業務推進職に職種を変更した女性職員の退職等
ア 上記(4)アのように,支局総務課において総務業務を担当していた総務職(ないし内勤職又は事務職。以下同じ。)の女性職員が順次業務推進職に職種を変更する旨の業務命令を受けていたところ,当該女性職員のうち19名の職員が退職した(うち4名は,その後の本件配転命令と同時期に,原告X4らと同様の転居を伴う異動を命じられていた。)。(甲A17及び乙115の2)
イ 平成26年度のプロセスコントロールによると,支局の総務職から業務推進職に職種を変更した女性職員16名のうち,最も新規契約獲得数の多かった者(以下「最多獲得職員」という。)のコール数は936件であり,そのうち304件の有効通話があって,そのアポ率は7.3%であった。また,最多獲得職員の有効面談のうち148件が初訪(テレアポ数は46件で,再訪は124件である。)であり,459件の新規契約を獲得した。最多獲得職員の平成26年度上期における新規契約獲得数は「G2」の業務推進職の職員62名(同年に採用された職員を除く。)中22番目に多く,同期におけるその人事考課は「乙」であった。また,最多獲得職員の平成26年度中の4月から1月までの月平均の新規契約獲得数は35.1件であり,全グレードの業務推進職の職員155名中75番目に多かった。
同年度における原告X4のコール数は2820件であり,607件の有効通話があり,アポ率は0.1%で,有効面談のうち37件が初訪(テレアポ数は3件で,再訪は7件である。)であり,149件の新規契約を獲得した。
同年度における原告X5のコール数は1826件であり,アポ率は0.3%で,607件の有効通話があり,有効面談のうち11件が初訪(テレアポ数は5件で,再訪は2件である。)であり,50件の新規契約を獲得した。この原告X5の同年度における新規契約獲得数は,総務職から業務推進職に職種を変更した女性職員16名中で最下位であった。
同年度における原告X6のコール数は1997件であり,アポ率は1.5%で,564件の有効通話があり,有効面談のうち49件が初訪(テレアポ数は37件で,再訪は21件である。)であり,85件の新規契約を獲得した。
同年度における原告X7のコール数は2901件であり,アポ率は2.1%で,1075件の有効通話があり,有効面談のうち111件が初訪(テレアポ数は69件で,再訪は65件である。)であり,181件の新規契約を獲得した。この原告X7が同年度において初めて訪れた顧客に有効面談を行った人数は,総務職から業務推進職に職種を変更した女性職員16名中で3番目に多かった。
平成26年度中の4月から1月までの月平均の新規契約獲得数で比べると,全グレードの業務推進職の職員155名中,原告X7が143番目,原告X4が146番目,原告X6が153番目,原告X5が154番目であり,訴外女性職員は128番目であった。
(甲A11,乙90及び91)
(6)  本件配転命令の発令に至る経緯等
ア 被告では,例年,4月期の人事異動については,その年の1月下旬頃から,役付三役の理事(当該理事に人事担当理事が含まれない場合にあっては,人事担当理事が加わる。)が幹部職員(「M1」グレード以上の職員)の人事案及び人事異動の方針を決定し,当該人事方針を受けて人事部において更に人事案を作成していたが,平成27年4月期においては,同年1月30日にH前理事長が急逝したことや,一般財団法人への移行の認可が同年2月12日(同月16日に正式移行)となったことから,例年よりも遅くなり,同月17日に人事異動の方針の決定等が行われ,同月18日に人事担当理事であるK理事からM人事部長にその方針が伝えられ,同年3月18日に異動の対象となる職員に内示がされた。
本件配転命令における人事異動の方針(以下「本件人事方針」という。)は,本部の業務推進部及び業務開発部を統合し,これらの部に所属していた職員を成績優秀支局に配置転換し,指揮命令系統を一本化するとともに,成績優秀支局の補強及びそのノウハウを吸収すること,成績に応じて支局長を昇降格し,滞留の長い支局長をローテーションすること,滞留の長い本部の幹部職員(部長)を支局に配置転換すること(ただし,保険金支払サービス等の対外的業務を担当する部署の部長については,同月16日の一般財団法人への移行に伴う業務が残っていたため,異動の対象外とされた。),本部の内勤職員を支局に配置転換するなど,教育的ローテーションを実施すること,性別を問わず営業成績の低迷している業務推進職の職員に新たな環境で能力の向上及び開発をする機会を提供し,業務推進に注力させるために環境の良い支局へ異動させること等であった。
(乙93,94,証人M及び証人K)
イ 原告X1及び原告X2についての人事案は,平成27年2月17日の役付三役の理事及びK理事の協議によって方向性が決められた。具体的には,次の考慮により,配転先が決められた。(甲A4,乙30の2,30の3,73,93,94,証人K及び証人J)
(ア) 原告X1については,業務推進のベテランであるが,東京の支局勤務が長いこと,東京の支局における成績が低迷し,降格の要件にも当たることから,降格を伴う南九州支局長に配転することとした。
本件配転命令の当時,同一支局における勤務が長い支局長ないし本部の部長として,北東京支局長であった原告X1(南東京支局長を兼任していた時期も含めて約5年間の勤務をしていた。)のほか,静岡支局長であったN(約6年間の勤務をしていた。以下「N支局長」という。),南九州支局長であったO(次長であった時期も含めて約7年間の勤務をしていた。以下「O支局長」という。)及びM人事部長(約7年間の勤務をしていた。)がおり,本件配転命令によって,この4名をローテーションの対象とすることとされた。そして,本件配転命令の当時,静岡支局の職員と被告との間に人事に関する訴訟が係属していたことから,N支局長とM人事部長を交替させることとし,さらに,O支局長を東京に異動させて東京の支局のてこ入れを図るとともに,上記のとおり,原告X1を降格を伴う南九州支局長とすることとされた。
なお,南九州支局は,平成28年4月1日に中支局から大支局に格付けが変更されているが,この格付けの変更は,被告の内部において約1年間程度にわたる検討がされた結果を受けたものであり,本件配転命令の当時には,既にこの検討が始まっていた。
(イ) 原告X2については,本部の業務推進部及び業務開発部を統合し,これらの部に所属する職員を配転させるという方針の下,原告X2が従前から支局に対する指導を行っていたため,引き続き支局において部下の業務推進の指導を行わせることとされた。
本件配転命令の当時,北海道支局は,J支局長の下,平成25年度から平成27年度までの3年間,営業成績が全国1位であり,この間には,旭川支所及び帯広支所が開設されるなどした。被告は,北海道支局には課長職に当たる者がおらず,支局長を補佐しながら部下を指導して成績を上げるという点において原告X2が適任であると考え,原告X2を北海道支局業務推進課長に配転することとした。
なお,J支局長は,平成27年10月の帯広支所の開設に向けて,平成26年末頃から平成27年にかけて,H前理事長に対し,北海道支局の職員であったI職員を帯広支所長にするため,I職員に事前に課長職を経験させることを打診していた。しかし,本件配転命令によって原告X2が課長として北海道支局に赴任し,I職員が課長職の経験がないまま帯広支所長となることとなった。
ウ 原告X3に対する人事案については,本部の業務推進部及び業務開発部の職員を成績優秀支局に異動させ,その補強及びノウハウの吸収並びに教育的ローテーションを実施することという本件人事方針に基づき,K理事及びM人事部長が協議して,具体化した。被告は,原告X3が将来的に幹部職員となるためには支局における業務推進業務の経験が必要である(「M1」への昇格要件でもある。)と考え,原告X3を支局で勤務させることとした(なお,原告X3の後任については,長野支局で好成績を収め,被告が今後の育成の観点から本部での業務経験を積ませたいと考えていた職員を異動させることとした。)。
本件配転命令の当時,旭川支所には,L支所長ほか2名の職員がいた。L支所長は,原告X3よりも10歳程度年少ではあったものの,平成26年9月から同年11月までの間に,新規被共済者を359名獲得し,当該期間において全国2位の業績を挙げ,被告から表彰されるなどしており,旭川支所の平成27年度の新規獲得数も,全国の支所のうち2番目に多かった。旭川支所が担当する被共済者数は,平成27年3月には5314名であったが,平成29年3月には6997名に増加した。平成28年2月から平成29年3月までは,L支所長ともう1名の職員が業務推進業務を担当している。
(甲A4,乙30の1,93,118,証人K及び証人J)
エ 原告X4らに対する人事案についても,業績の低迷する業務推進職の職員について新たな環境で能力の向上及び開発の機会を提供し,業務推進に注力させるという本件人事方針に基づき,K理事及びM人事部長が協議して,作成した。その際には,以下の各事情が考慮された。(甲J1,乙33の6,93,100,証人J及び証人K)
(ア) 原告X4については,北東京支局及び南東京支局の派遣職員が定着しない中で,支局内の総務業務を事実上手助けせざるを得ず,業務推進の成績が低迷していたことから,派遣職員が比較的安定して勤務しており,業務推進職の特定の中途採用の女性職員が活躍している東北支局に異動させることにより,成績の向上を期待した。
なお,首都圏(1都3県)に所在する支局については,当該支局の管轄外においても営業を行うことが通常となっていたことから,その範囲内での異動では営業の環境の改善が見込まれないと判断した。
(イ) 原告X5についても,神奈川支局の派遣職員が定着しない中で,支局内の総務業務を事実上手助けせざるを得ず,業務推進の成績が低迷していたことから,派遣職員が比較的安定して勤務しており,少数精鋭の支局として業績を上げているものの,3人で北陸三県を担当し,業務推進職の職員が不足していた北陸支局に異動させることにより,成績が向上することを期待した。また,原告X5が自己申告書に介護を要する祖母がいて,転居を伴う異動が難しい旨を記載していたものの,当該記載を踏まえても,原告X5の家族構成等に照らして転居に支障がないものと判断した。
なお,原告X5を首都圏内で異動させても営業の環境の改善が見込まれないと考えたことは,原告X4についてと同様であった。
(ウ) 原告X6については,比較的市場が大きい埼玉支局で業務推進の成績が伸び悩んでいたことから,比較的新しい地区であり,保険業に従事した経歴を有する支局長及び本件配転命令によって同時に配属となる原告X2(原告X6と原告X2は,知り合いであった。)の指導の下での成績の向上を期待して,北海道支局に異動させることとした。
なお,首都圏内で異動させても営業の環境の改善が見込まれないと考えたことは,原告X6についても同様であった。
(エ) 原告X7は,業績が伸び悩み,J支局長からの評価も芳しくなかったことから,人間関係を含めた環境を変えて,業務推進に注力することを目的として,埼玉支局に異動させることとした。北海道支局では,平成25年7月に旭川支所が開設されたことに伴って事務の仕事が徐々に増えているため,平成26年7月8日頃にJ支局長が人事部に対して派遣職員1名の増員を依頼していたが,その際に,原告X7が派遣職員に協力しないという状況も伝えられていた。
オ 本件配転命令に伴い,被告は,原告らに対し,支度料,赴任旅費,引越費用等を支給することとしたが,その金額は,次のとおりであった。(乙31及び32)
(ア) 原告X1について
支度料30万円,赴任旅費3万0550円,引越費用20万1636円,赴任者家賃手当月額8万5000円
(イ) 原告X2について
支度料30万円,赴任旅費4万2061円,引越費用27万1464円,赴任者家賃手当月額8万7000円,単身赴任手当月額3万円(平成27年4月は2万円),帰宅交通費月額7万5680円
(ウ) 原告X3について
支度料30万円,赴任旅費4万5900円,引越費用27万3024円,赴任者家賃手当6万5000円
(エ) 原告X4について
支度料30万円,赴任旅費1万1200円,引越費用18万9432円,赴任者家賃手当7万7000円
(オ) 原告X5について
支度料30万円,赴任旅費1万4550円,引越費用24万5288円,赴任者家賃手当6万5000円
(カ) 原告X6について
支度料30万円,赴任旅費4万0110円,引越費用26万5788円,赴任者家賃手当7万7000円
(キ) 原告X7について
支度料30万円,赴任旅費4万0110円,引越費用26万5788円,赴任者家賃手当10万5000円
(7)  原告X1の状況等
ア 原告X1の家族には,非正規雇用として働く妻のほか,20歳代の同居の長男及び別居の長女がいるところ,義母(妻の母)が要支援認定を受け,デイサービスに通っているため,妻が週に1回程度の頻度で義母の世話をするために実家に通っている。原告X1は,平成26年1月6日に被告に提出した平成25年度の自己申告書において,転居を伴う異動に関し,上記の家族の介護の状況等について,特段の記載をしていなかった。(甲C1及び乙33の1)
イ 原告X1の平成25年度上期から平成26年度上期までの3期の人事考課は,いずれも「丁」(上位から順に,「甲」,「乙」,「丙」,「丁」及び「戊」の5段階である。)であったところ,被告の「M2」グレードの職員の中で平成26年度上期において「丁」の評価を受けた者は原告X1だけであり,最下位であった。(乙67の1から67の3まで)
ウ 原告X1は,平成27年3月18日に,人事部の担当者からの電子メールにより,本件配転命令の内示を受けた。また,原告X1は,同月20日頃,K理事から,本件配転命令による異動に際し,単身赴任手当及び帰宅旅費の対象外である旨を告げられた。
原告X1は,異動先である南九州支局に着任するため,内示を受けた後,社宅の候補先を探したり,南九州支局の引継ぎをしたりしたため,睡眠時間が減少した。原告X1は,同年4月1日の午前に半日休を取って朝4時に起床し,飛行機に乗って南九州支局に着任した後,翌2日には,同月3日に東京で開催される支局長会議に出席するため,午後に半日休を取って再び上京し,翌3日の午前10時半頃,被告の本部に赴いた。
原告X1のグレード級は,南九州支局長への異動に伴って,従前の「M2」から「M1」に降格されたため,同年4月の給与が前月の給与と比べてグレード給が12万6000円,役職手当が2万5000円それぞれ減少し,地域手当も2万7320円減少した。ただし,激変緩和措置として,最初の1年間は月額7万0300円の調整給(その後,2年間は減額されて支給される。)が支給されることとされた。
(甲C1から3まで及び原告X1本人)
エ 原告X1は,同年3月20日頃から,就寝中に胸に強い痛みを覚えるようになり,同月中に3回,4月中に3回程度,この痛みを覚えることがあった。同年5月25日頃からは,強い頭痛を感じるようになり,同月29日及び同月30日には,冷や汗を伴う強烈な胸部の締め付けを感じたことから,同年6月1日にd医療センターを受診し,その後,同年6月17日から同月19日までの間,検査及び加療のため入院し,同月22日には,冠攣縮性狭心症のために今後他の病院において内服加療を継続する方針である旨の診断を受けた。また,原告X1は,同月25日,e病院において,不安障害であり,今後1か月間の自宅療養を必要とする旨の診断を受けた。
なお,原告X1は,平成26年9月16日に受診した健康診断において,高コレステロール血症を認め,悪玉コレステロールが高く,動脈硬化比が高値であり,中性脂肪が増加しており,精密検査が必要であるとの診断を受け,食事量を減らし,タバコを禁ずる旨の注意を受けたが,その後も喫煙をやめることができなかった。
(甲C4から7まで,乙65及び原告X1本人)
オ 原告X1は,平成28年3月14日頃,被告に対し,復職を申し出た。
被告は,この申出を受け,過去の管理職の復職の例に倣い,管理職の役職を外すことによって負担を軽減し,復職させることとした。被告の支局長は,支局の毎月の目標獲得数の達成の責任を負っており,支局業務推進課の職員のプロセスコントロールを行わなければならず,また,職員に月間新規訪問件数12件以上を達成させるために,テレアポの指導,同行営業等を行うほか,他支局との訪問先の調整,代理所の開拓,適正な保険募集管理,その他の総務及び労務管理といった幅広い業務を担当しており,負担がかなり重いものであった。そして,被告は,本件配転命令を受ける前の原告X1の部下が北東京支局や南東京支局におり,また,千葉支局には他に精神疾患による休職からの復職を予定していた女性職員がいたことから,これらの支局に原告X1を配属することは適切でないと判断し,原告X1の自宅から混雑のない電車によって通勤することができることや,原告X1の元部下等がほとんどおらず,かつ,その営業エリアが広く,業務推進上も不利益が少ないこと等の事情を考慮して,埼玉支局に配置することとした。これに伴い,原告X1のグレードが「G3」グレードとなった。
(乙95及び原告X1本人)
(8)  原告X2の状況等
ア 原告X2の家族には,身体障害者4級(心筋梗塞による社会での日常生活活動が著しく制限される心臓機能障害)の父,狭心症及び大腸がんを発症したことのある母,身体障害者3級(脳血管障害による体幹,右上下肢機能障害及び言語機能障害)及び療育手帳Aの1を持つ妹,非正規雇用で週に3回程度勤務しつつ,原告X2の両親及び妹の世話をしている妻,20歳代の長女(本件配転命令当時は別居していた。)並びに20歳代の長男(本件配転命令当時は大学生で同居していた。)がいる。原告X2は,平成25年12月17日に被告に提出した平成25年度の自己申告書において,転居を伴う異動に関し,上記の家族の介護の状況等について,特段の記載をしていなかった。(甲E1及び乙33の3)
イ 原告X2は,平成27年3月18日に,本件配転命令を知った。本件配転命令による異動によって,原告X2のグレード給及び役職手当に影響はなかったが,地域手当が2万5860円減少し,同年6月からは,調整給(平成25年4月の人事制度改定に伴って支給されていたものであり,おおむね1年から3年の間に解消されているもの)2万0160円が支給されなくなった。ただし,新たに家賃手当8万7000円,単身赴任手当3万円及び帰宅旅費7万5680円が支給されることになった。(甲E1から2の2まで)
(9)  原告X3の状況等
ア 原告X3が被告の職員となる前に勤務していた保険会社においては全国転勤があったが,原告X3は,首都圏に所在し,かつ,転勤のない企業への転職を考えて,被告の職員となった。
原告X3は,専業主婦の妻並びに10歳代の長男(本件配転命令当時は高校受験を控えていた。)及び長女と同居しており,両親が千葉県鴨川市に,義母(妻の母)が埼玉県上尾市にそれぞれ居住している。原告X3は,二人兄弟であったが,弟が全国転勤を伴う仕事に従事しているため,自らにおいて両親の世話をする必要があった。また,原告X3の妻は,月に2回程度,義母の様子を見るために埼玉県上尾市を訪問している。
なお,原告X3は,平成26年1月10日に被告に提出した平成25年度の自己申告書において,転居を伴う異動に関し,上記の家族の介護の状況等について,特段の記載をしていなかった。
(甲F1及び乙33の4)
イ 平成26年度下期における原告X3の業務は,おおむね次のとおりであり,時間外労働が恒常化している状況にあった。(乙74,76及び弁論の全趣旨)
(ア) 従前原告X3が作成した提案書(見積書)作成システムの表記の変更(9か所)を行った。
(イ) はがきサイズの圧着ダイレクトメールの発注業者を価格基準により選定し,システム部から受領した加工済みデータをCDに移して発注業者に渡し,デザインについて業者と打ち合わせるとともに,平成26年度下期中の11月に2回ダイレクトメールを発送した。発送後は,平成27年1月29日に稟議書を起案し,本部の事務職員等が集計したデータを基に,獲得実績の集計を行った。
(ウ) 過去のチラシのデザインを使用し,業者と共にチラシを作成した。
(エ) 各支局が入力した執行済み予算について確認し,執行予定の予算について各支局に問い合わせて確認した。
(オ) 進発式の会場の手配,弁当の手配,セミナー担当講師の手配,発表を行う被告職員の指名等を行った。
(カ) 平成26年9月29日に業務用携帯電話の契約更新及び機種変更に関する稟議書の起案を行った。
(キ) 20件の稟議書の起案を行い,19件の通達を発信し,1件の業務部の通達を代行して作成した(なお,平成26年度下期における被告の人事部課長名の稟議書の起案数は,89件であった。)。
(ク) 平成26年11月19日に被告に対する業務改善命令が解除された後,平成27年2月16日に一般財団法人に移行するまでの間,支局からの問合せが増大し,この問合せに対応した。
ウ 原告X3は,平成27年3月18日にF部長から本件配転命令の内示を受け,同月20日には,旭川における住居の下見を同月24日にするための航空券の手配をした。
原告X3は,旭川への異動に対する不安等から,同月21日及び同月22日にほとんど眠ることができなかったため,同月23日,fクリニックを受診し,抑うつ状態であり,通院治療と60日間の自宅療養が必要である旨の診断を受けた。さらに,原告X3は,同月24日及び同月25日,体調不良を理由に休暇を取得した後,同月26日に,後任者への引継ぎのために午後2時頃に被告の本部に出勤した。
被告は,同月27日頃,原告X3を2か月間の傷病欠勤とすることを決定し,人事部から原告X3にその旨を告げた。
(甲F1,3及び原告X2本人)
(10)  原告X4の状況等
ア 原告X4は,自らがかなりの人見知りであり,かつ,極度のあがり症であると認識していたため,被告の職員となる際に,内勤のできる職務を希望した。原告X4は,これまで,現住所以外の場所で生活をしたことがなく,独身で,脳梗塞の後遺症によって目が不自由な父,疲労やストレスによって年に一,二回,1週間程度を寝込んでしまう母,姉と生活しており,自動車の運転をして両親を各所に送迎するなどしている。
なお,原告X4は,平成26年1月7日に被告に提出した平成25年度の自己申告書において,転居を伴う異動に関し,上記の家族の介護の状況等について,特段の記載をしていなかった。
また,被告は,正規職員を採用する際には,その性別を問わず,本部において一括して採用しており,支局における採用を行っていない。原告X4を含む原告らを採用した当時の被告における職員の採用辞令には,「本事業団の職員に採用する」と記載されており,職種を限定した職員の採用も行われていない。
(甲G1,乙33の5,97の1,証人M及び原告X4本人)
イ 原告X4は,平成25年6月頃,C代表理事(当時は,人事部担当の専務理事であった。)から,総務職は派遣職員が担当すれば十分であり,これからは派遣職員を増やすこと,原告X4についても今後は総務職への異動が難しいこと,派遣職員を受け入れるために総務職のコア業務とノンコア業務を分けてほしいこと等を告げられ,同月の1か月間の自らの職務内容をまとめて人事部に提出したことがあった。
原告X4は,南東京支局長から,同年7月に同支局の総務職の職員の全員が業務推進職になり,原告X4も業務推進職に職種を変更する旨の説明を受けた。原告X4は,当該支局長に対し,業務推進職はできない旨を述べたが,当該支局長から,やってみないとわからない,被告を辞めるのではなく,とりあえずやってみたらどうかとのアドバイスを受けた。原告X4が業務推進課に異動した頃,被告の南東京支局及び北東京支局には,派遣職員1名がそれぞれ新規に雇い入れられた。原告X4は,同月頃から半年間程度の期間,総務業務の引継ぎを行っていたが,途中で支局長から引継ぎをしなくてよいから業務推進職に専念するようにとの指導を受けたため,平成26年4月頃からは業務推進職に専念することになった。
原告X4は,上記(4)エのとおり,同年4月頃までに本部で行われた座学での営業話法中心のロールプレイングによる営業の研修を二,三回受講し,その後も,同年6月に本部で行われた業務推進課に異動した女性職員19名を対象とした研修,同年12月19日,平成27年1月23日,同年2月13日及び同年3月20日に本部で行われた業務推進課に異動した女性職員に対する研修等に参加した。
原告X4の営業活動はテレアポが中心であったが,相手から用件も聞いてもらえずに電話を切られることがあり,原告X4は,電話をかけることを躊躇し,支局内での営業成績も他の業務推進職と比べて低く,平成26年4月から平成27年1月までの間の成績が全国の業務推進職の職員の中でも下から10番目(新人及び当該期間の途中から業務推進職となった者を除くと,下から6番目)の成績であった。原告X4の上司の支局長であったP(以下単に「P支局長」という。)は,原告X4に対し,テレアポ数を増やす等のプロセスコントロールの手法により,業務推進の教育を行っていた。P支局長は,平成26年度頃には,原告X4には積極性が欠けており,このまま南東京支局で勤務を継続しても成績が上昇することは見込めないと考えていた。
(甲A11,G1,乙26の3から26の6まで,証人P及び原告X4本人)
ウ 原告X4は,平成27年3月18日に本件配転命令の内示を受け,強い衝撃を受けて,同月20日に本部で行われた営業の研修で泣き崩れたため,研修の冒頭の1時間から1時間半程度の時間,他の研修参加者と共に,原告X2に話を聞いてもらうということがあった。
原告X4は,同月24日,同僚の女性職員に対し,「私は、休職しようと思っています。E部長を信じてみませんか?」,「20日の女性研修の時に「今回の女性の異動は、自分達の争いに巻き込んですまん。この件は少し時間がかかるけど何とかする。俺を信じろ。自分の最終目的は、私たちを元の事務職に戻す事。その先は、自分は何処の会社に行ってもやっていける」って言われたの。自分を犠牲にしてまで徹底的に戦うと言ってくれたので、信じてみようと思いました。」,「これからの事の指示をE部長から受けて私から皆さん1人1人に流していこうと思っています。また、この指示は今回の異動女性以外誰にも話してほしくないの」,「今日の夕方、E部長とX2さんと話をした内容をお伝えしますね。」,「まだ辞めたくないと考えているなら、やっぱり休職が一番の手立てなので、早くに病院に行き診断書を取り提出しなさい。来月になったら、財団にとって良い情報があるから、それをもって1ヶ月の内に徹底的にやる。長くても6月迄には決着を付ける。私達が休む事によって、有利にもなる。内容は、今は伝えられないけど、こちらに傾くはず。女性の場合は、身を隠しておいた方が良い。部長は弱い者いじめが大嫌いなので、Cを絶対に許さないと言っていました。私は明日の午後に心療内科に行ってきます。」との内容の電子メールを送信した。
(甲G1,3,乙36,原告X4本人及び原告X2本人)
エ 原告X4は,平成27年3月25日にgクリニックを受診し,適応障害であり,抑うつ症状が認められ,同日から約3か月間の休職が必要との診断を受けた。原告X4は,この診断の結果を受け,労働者災害補償保険法(昭和22年4月7日法律第50号。以下「労災保険法」という。)の規定に基づく療養補償給付の請求をしたものの,所轄労働基準監督署長から不支給の決定を受けたため,当該決定の取消しを求める旨の訴えを提起した。(甲G3及びG5並びに弁論の全趣旨)
オ 原告X4に対する人事考課は,平成25年度上期及び下期がいずれも「丁」で,平成26年度上期及び下期がいずれも「戊」であり,平成27年6月12日付けで「G1」グレードから「G2」グレードに降格された(なお,原告X4や後記(11)エの原告X5及び同(12)オの原告X6のほか,数名の職員が同日付けで同様に降格された。)。(甲A6及び乙63)
(11)  原告X5の状況等
ア 原告X5は,出生して以来,その家族と共に横浜市内に居住してきており,独身で,両親,妹及び祖母と同居している。原告X5の祖母は,老人性うつ病により要介護3と認定されており,日常的な家族による見守りや食事の世話が必要な状態にあり,父は腰を痛めて手術をしたことがあるため,祖母が暴れた場合に家族が押さえることが困難な状況にある。
原告X5は,平成26年1月9日に被告に提出した平成25年度の自己申告書に,介護の対象者として同居の祖母がおり,欝(暴れる)の状態で適時看護・介護が必要であること,同居の父は腰椎圧迫骨折の状態で,母も働いており,祖母の過度な看護ができず,自らの転勤があると一家が破綻し,又は被告を退職せざるを得なくなることから,10年程度は転居を伴う異動に応ずることができない旨を記載していた。
(甲H1,乙33の6及び原告X5本人)
イ 原告X5は,平成25年6月中旬頃,同年7月から業務推進課へ異動となる旨の内示を神奈川支局長から受けた。原告X5は,初めての業務推進職の仕事に非常に不安を覚えたものの,派遣職員に引継ぎを行いながらも,業務推進課に異動した。神奈川支局では,平成26年4月(1名),同年5月(2名),同年8月(2名),平成27年2月(2名)及び同年3月(1名)に派遣職員がそれぞれ退職し,又は解雇されるなどしており,派遣職員が頻繁に交代していた。そのため,原告X5は,新たな派遣職員が配属される度に引継ぎを行うことになり,業務推進職に集中することができなかった。(甲H1及び原告X5本人)
ウ 原告X5は,上司から業務推進職に集中することができておらず,営業成績が伸びていないことを叱責されるなどしたことから,平成26年夏頃からは,神奈川支局の事務所のある建物の7階から飛び降りたら楽になるなどと考えることがあった。
原告X5は,本件配転命令を知った後,平成27年3月25日から出社することができなくなり,同月26日にhクリニックを受診し,適応障害であり,情動不安定,不安,疲労感等の症状が認められ,今後3か月間の自宅療養が必要であるとの診断を受けた。さらに,同年6月23日には,i診療所において,適応障害であり,職場ストレスを契機に不眠,抑うつ気分,イライラ,意欲低下等が認められ,今後約3か月間の休養及び通院加療を要するとの診断を受けた。
(甲H1,3及び4)
エ 原告X5に対する評価は,平成25年度上期及び下期がいずれも「丁」で,平成26年度上期及び下期がいずれも「戊」であり,平成27年6月12日付けで「G1」グレードから「G2」グレードに降格した。(甲A6及び乙63)
(12)  原告X6の状況等
ア 原告X6は,独身であるが,両親が高齢で体調を崩すことがあり,専ら原告X6がその世話をしている。
なお,原告X6は,平成26年1月9日に被告に提出した平成25年度の自己申告書において,転居を伴う異動に関し,上記の家族の介護の状況等について,特段の記載をしていなかった。
(甲I1及び乙33の7)
イ 原告X6は,平成25年6月頃,当時所属していた埼玉支局の支局長から,総務課から業務推進職へ同年7月に異動となる旨の内示を受け,派遣職員との引継ぎのため,当面はその支援と業務推進職の両立をするように指示を受けた。埼玉支局には,派遣職員が常時2名程度いたものの,退職する者も多く,原告X6が業務推進職へ異動した後も,頻繁に原告X6に総務業務の問合せがあった。
原告X6は,平成27年3月18日,埼玉支局長から,同年4月から北海道支局業務推進課に配転となる旨の本件配転命令の内示を受けた。
(甲I1)
ウ 原告X6は,平成27年4月23日,jクリニックにおいて,抑うつ状態であり,同月26日から1か月程度の自宅療養(就労不可)が必要であるとの診断を受けた。(甲I2)
エ 原告X6は,労災保険法の規定に基づく療養補償給付の請求を行ったところ,平成28年3月29日,所轄労働基準監督署長であるさいたま労働基準監督署長は,原告X6の疾病が業務災害であると認定した。その理由の要旨は,以下のとおりである。(甲I4から6まで)
(ア) 原告X6は,平成25年8月頃に「F43.2 適応障害(抑うつ状態)」を発病し,以降遷延していたものであり,平成27年3月18日以降にある程度の症状の変化が認められるが,自然経過の範囲内である。
対象疾病の発病に係る業務による心理的負荷に関し,労災保険に係る認定基準上の「特別な出来事」は認められなかった。
(イ) 平成25年7月に,それまで18年間内勤業務であったにもかかわらず,業務推進職への異動を命じられており,これは上記の認定基準の「④役割・地位の変化等」項目21「配置転換があった」に該当し,平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」であり,本件についても心理的負荷の強度は「中」と評価される。
原告X6の業務推進職としてのノルマが他の業務推進職と同様に電話が最低月240件,相手の会社に行って営業の話をする初訪が月10件から12件,新規の会員の獲得数が4件で30名以上であり,内勤業務と並行して担当していることが考慮されず,厳しい評価を受けることになったと申述していることについては,認定基準の「②仕事の失敗,過重な責任の発生」項目8「達成困難なノルマが課された」に該当し,平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」であり,本件については,重いペナルティの予告とまでは判断することはできないものの,これに準ずる状態にあり,心理的負荷の強度は「強」に近い「中」である。
(ウ) 上記のとおり,二つの出来事が認められ,複数の出来事が関連して生じたものではなく,それぞれ「中」の出来事が別々に複数生じており,その一つは「強」に近い「中」であることから,業務による心理的負荷の全体評価は「強」であり,業務以外の心理的負荷や個体側要因は確認されなかったことから,業務上とするのが適当である。
オ 原告X6に対する人事考課は,平成25年度上期が「丁」で,同年度下期から平成26年度下期までがいずれも「戊」であり,平成27年6月12日付けで「G1」グレードから「G2」グレードに降格した。(甲A6及び乙63)
(13)  原告X7の状況等
ア 原告X7は,独身であり,両親と同居しているが,母がうつ病を患っていることから,原告X7と父においてその介護及び家事を分担している。父は勤め先を定年退職しており,原告X7と両親は,原告X7の被告からの収入と両親の年金収入により生活している。
なお,原告X7は,平成26年1月7日に提出した平成25年度の自己申告書において,転居を伴う異動に関し,上記の家族の介護の状況等について,特段の記載をしていなかった。
(甲J1及び乙33の8)
イ 原告X7は,平成25年9月ないし10月に業務推進職への職種の変更を命じられ,平成26年3月まで営業ロールプレイングの訓練等を受け,同年4月から業務推進職として本格的に稼働するようになった。また,平成25年10月頃から平成26年3月までは,新たに採用された派遣職員に対し,従前の業務の引継ぎを行った。
原告X7は,自動車の運転免許を有していたものの,いわゆるペーパードライバーであり,自動車を運転しての営業活動ができなかったため,テレアポによって約束を取り付けた事業所に加入推進活動のために赴く際にも,同僚の運転に頼らざるを得なかった。
(甲J1)
ウ 原告X7は,平成27年3月18日に埼玉支局への異動を内容とする本件配転命令の内示を受けたことから,衝撃を受け,休職(上記第2の2(1)イ(キ)の前提事実)をした後は,人と会うことが困難となった。原告X7は,本件配転命令の後,kクリニックに通院し,同年6月19日には,不安状態であり,同年7月1日から同月31日まで通院加療及び自宅安静を要する旨の診断を受けた。
(甲J1,J3)
エ 原告X7の人事考課は,平成25年度上期及び下期がいずれも「丁」で,平成26年度上期及び下期がいずれも「戊」であった。(乙63)
2  上記第2の2の前提事実及び上記1において認定した事実に基づき,まず,争点1-①(原告X4らに対する業務推進職に職種を変更させる旨の業務命令が違法なものであるかどうか)について,判断する。
(1)  使用者は,労働者との間の労働契約に基づき,その業務上の必要に応じて人事権の行使としてその裁量により労働者の担当する業務を決定することができると解すべきところ,本件就業規則の第16条第1項の定めにも,被告が職員に対して業務上の必要性により職種の変更を命ずることがあり,職員が正当な理由がない限りこれを拒むことができない旨が定められている(上記第2の2(3)の前提事実)から,被告は,原告X4らを含む職員に対し,業務上の必要に応じて,総務職から業務推進職への職種の変更を命ずることができる。
この点に関し,原告X4らの上記第2の3(2)ア(ア)aの主張は,原告X4らが総務職に限定して被告に採用されたものである旨を主張するものと解することができるところ,原告X4及び原告X5は,その本人尋問において,これに沿う内容の陳述をしている。しかしながら,上記1(10)アにおいて認定したとおり,被告における原告X4らを含む正規職員の採用に際しては,その職種が限定されておらず,現に原告X4らに対する辞令上もそのような限定は付されていなかったのであるし,本件全証拠を精査しても,原告X4らと被告の間の労働契約が総務職にその職種を限定した契約であったと認めるに足りる客観的な証拠はない。そうすると,原告X4らが業務推進職への職種の変更を命じられるまでの間,多くの被告の総務職の女性職員について他の職種への職種の変更が行われていなかったとしても,それは事実上の運用によるものにすぎないといわざるを得ないから,原告X4らの上記の主張を採用することはできない。
(2)  そこで,原告X4らに対する業務推進職への職種の変更を被告が命じたことについて,本件就業規則の第16条第1項の定める業務上の必要性を認めることができるかどうかについて,検討する。
上記第2の2(1)ア及び(5)エからカまでの前提事実のとおり,被告は,公益法人制度改革関連三法による改正前の民法(明治29年法律第89号)の規定による公益法人としての財団法人であったものであるが,平成22年に厚生労働省から2度にわたる業務停止命令及び業務改善命令を受けるなどし,法令遵守体制の抜本的な見直し等の業務の改善を迫られたことから,G元理事長の下で一定の業務改革を進めたものの,同年12月には同省から改善勧告を受けるに至ったため,更なる業務の改善を迫られる状況となり,しかも,上記の業務停止命令等によって,加入会員の数が減少し,会費による収入も減少したことから,平成20年度から平成22年度まで3期連続の赤字となっていて,平成25年11月までに特定保険業の認可の申請を行うために,本件三事業の全てを黒字化する必要があり,平成24年度中には17億円の準備金の積み増しも必要であったという状況にあったものである。
そこで,被告は,上記1(2)イにおいて認定したように,平成24年3月から本件三事業を本部において集約して取り扱うこととし,これにより,本件三事業を改革するとともに,支局が業務推進業務に注力することができる体制を構築した。あわせて,平成12年のa事業団事件の発覚を契機として平成17年頃までにはその職員数が約17%減少していた(前記第2の2(5)イの前提事実)ところ,外部のコンサルタントによる本件三事業の黒字化に向けた定量分析の結果,業務の量及び質に見合った人員数となっておらず,また,単価の高い職員が多いために総人件費が高くなっている旨の指摘を受けた(上記1(2)ウの認定事実)ことから,被告は,上記1(2)オ及び(4)において認定したように,平成24年末頃から平成25年中頃までにかけて,職員を50名程度削減するために45歳以上の職員に対して希望退職制度を実施して74名の職員の退職を実現した上で,支局には業務推進業務を中心に担当させることとして支局総務課を廃止し,人員を適正に配置するために,支局の総務業務を派遣職員に担当させることとした。
以上のとおり,被告が原告X4らを業務推進職にその職務を変更したことは,自らの組織改革を迫られる中で,各部門ないし部署の役割を整理した上で,適正な人員を配置することによって,その業務を適正化しようとしたことの一環としてされたものである(上記1(4)アなお書きの認定事実によれば,派遣職員が支局の総務業務を担当することにより,年間のコストとして一人当たり100万円以上が削減されることをうかがうことができる。)し,正規職員である原告X4らについて,それぞれが所属する支局において担当していた業務が廃止され,又は派遣職員の担当とされることに伴い,業務推進職にその職種を変更すること自体は,原告X4らの雇用を確保するという面からもやむを得ないものであり,その業務上の必要性は高かったということができる。
したがって,原告X4らに対する業務推進職への職種の変更を被告が命じたことについては,本件就業規則の第16条第1項の定める業務上の必要性の存在を肯定することができる。
(3)  もっとも,上記(1)のとおり使用者が労働者に対して職種の変更を命ずることができるとしても,これを濫用することは許されない(本件就業規則の第16条第1項後段も,正当な理由があれば職員が職種の変更を拒むことができる旨を定めている(上記第2の2(3)の前提事実)。)。したがって,職種の変更を命じられる個々の職員の状況等に鑑み,当該職員に職種の変更を命ずることが人事権の濫用に当たる場合には,被告が当該職種の変更を命ずることが許されないと解されるから,さらに,この観点から,原告X4らに対する業務推進職への職種の変更を命じたことが被告の人事権の濫用に当たるものかどうかについて,検討する。
まず,上記(2)において説示したとおり,被告は,全国の支局において一律に総務課を廃止し,派遣職員にその業務を担当させるとともに,当該業務を担当していた正規職員を業務推進職に職種を変更したものであって,原告X4らの職種の変更もその一環としてされたものであるから,被告が恣意的に原告X4らに対して当該職種の変更を命じたということはできない(なお,一部の支局総務課の職員については,その後に本部において総務業務を担当しているものの,その知識及び経験に照らした人員の選択が行われており,本件全証拠によっても,この人員の選択において原告X4らが恣意的に排除されたという事情は認めることができない。)。
次に,原告X4らは,上記第2の2(1)イ(エ)から(キ)までの前提事実のとおり,いずれも,業務推進職の経験を有しなかったものの,被告の職員としての勤務年数が長いことに鑑みると,被告の対外的な業務の内容やその商品等に関する知識を一定程度は有していたものと推認することができる。また,上記1(3)イにおいて認定したように,被告は,平成22年に業務停止命令を受けた後,新たに,職員向けの業務推進活動に関する業務スキルの向上及びセールストークの標準化に向けたDVDビデオや顧客の訪問を想定した問答集を作成したりするなどしており,原告X4らにおいても,これらの資料等を参照することにより,業務推進に際して顧客とどのようなやり取りが想定され,どのように説明すればよいのかを具体的に学ぶことができたものである。さらに,上記1(4)イからエまでにおいて認定したように,被告は,原告X4らを含む業務推進職に職種を変更した職員らに対し,本部業務推進部においてロールプレイング等の研修を行い,各支局長に対しても,ある程度の引継期間を設けた上で当該職員の能力に即した十分な営業の教育をし,早急な獲得実績を追求しない等の配慮をするように指示をするなどしたのであるから,当該職員に対し,実践的に業務推進職に関する知識を伝達し,その円滑な移行に一定の配慮もしていたものということができる。
確かに,原告X4らのこれまでの職歴からすれば,原告X4らが業務推進職の職務を行うに際して相当な苦労を伴うことになるであろうことは,否定し難いところである。しかしながら,被告の業務の内容(上記第2の2(1)アの前提事実)に加え,平成25年度末からEL保険が導入されたことによって大口の顧客を獲得することができる機会ができたこと(上記1(4)カの認定事実)や,現に総務職から業務推進職に職種を変更した女性職員の中には,従前からの業務推進職の職員と遜色のない成果を上げている者もいたこと(同(5)イの認定事実)をも考慮すると,総務職に従事していた職員において業務推進職を行うことがおよそ困難であったとは,いうことができない。
以上に説示したところに加え,本件全証拠によっても,被告が原告X4らに対して退職を促すために業務推進職への職種の変更を命じたなどの濫用的な意図があったものと認めることができないことや,上記(2)のとおり組織改革の観点から支局総務課の担当職員に対して業務推進職への職種の変更を命ずる業務上の必要性が高かったことに照らせば,原告X4らに生ずる困難等を考慮しても,なお当該職種の変更を命ずることが人事権の濫用に当たるとまではいうことができない。
(4)  上記(1)から(3)までにおいて検討したところによれば,原告X4らに対する業務推進職に職種を変更させる旨の業務命令は,違法なものには当たらないというべきである。
なお,当該検討したところによれば,当該業務命令が被告の原告X4らに対する安全配慮義務に違反するものとも,いうことはできない。
したがって,当該業務命令が違法なものであることを前提とする原告X4らの不法行為ないし債務不履行に基づく損害賠償請求は,争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)(不法行為に基づく損害賠償請求にあっては,及び争点3(当該業務命令につき不法行為が成立するとした場合の当該不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の成否))についての判断を経るまでもなく,いずれも理由がないということになる。
3  次に,争点1-②(原告らに対する本件配転命令が違法なものであるかどうか)及び争点1-③(原告X1に対する本件配転命令に伴うグレード級の降格処分が違法なものであるかどうか)について,併せて判断する。
(1)  上記2(1)において説示した職種の変更と同様に,使用者は,労働者との労働契約に基づき,業務上の必要に応じて人事権の行使としてその裁量により労働者の勤務場所を決定することができると解すべきところ,本件就業規則の第16条第1項の定めにも,被告が職員に対して業務上の必要性により転勤を命ずることがあり,職員が正当な理由がない限りこれを拒むことができない旨が定められている(上記第2の2(3)の前提事実)のであるから,被告は,原告らを含む職員に対し,その業務上の必要に応じて転勤を伴う異動を命ずることができる。
この点に関しては,被告が各支局において職員を採用するのではなく,本部において一括して職員を採用しており(上記1(10)アの認定事実),また,本件全証拠を精査しても,原告らと被告の間で原告らの勤務地を限定する旨の合意がされたことを認めるに足りる証拠はないから,原告らと被告との間の労働契約において個別に勤務地が限定されていたということはできない。
なお,上記第2の3(2)ウ(ア)のとおり,原告X1は,本件配転命令に伴うグレード級の降格処分を本件配転命令から独立した被告の違法な行為として主張している(争点1-③)が,新人事制度の下では,グレード級が役職と連動するものとされていて,支局長については支局の規模に応じて支局のグレードと支局長のグレードとが明確に対応しているのである(上記1(2)エ(ア)の認定事実)から,原告X1が問題とする当該降格処分は,本件配転命令によって必然的に生ずるものということになるため,原告X1に対する本件配転命令が違法なものであるかどうかを検討する際の一つの要素として考慮するのが相当である。
(2)  そこで,まず,本件配転命令に関し,原告らに対するものに共通する業務上の必要性を認めることができるかどうかについて,検討する。
特定保険業者の監督について金融庁が作成した特定保険業者向けの総合的な監督指針においては,特定保険業者の監督に当たっての評価項目の中に,認可特定保険業者の役職員が正確な事務を怠ったり,事故,不正等を起こしたりすることによって認可特定保険業者が損失を負うという事務リスクについて,内部管理体制を適切に整備する必要があり,業務の健全かつ適正な運営に努める必要があるとされ,監督の着眼点として,職員教育において職業倫理が盛り込まれていることや,人事管理に当たっては,職員を長期間にわたり同一業務に従事させることなくローテーションを確保するよう配慮されていることが望ましいとされている(乙111)。また,金融庁が検査官による保険会社の検査の際に用いる手引書として作成した保険検査マニュアルにおいても,事務リスク管理体制に関するチェックリストの中に,事務リスク管理部門の管理者が,事故防止の観点から人事担当者等と連携し,特定の職員を長期間にわたって同一部署の同一業務に従事させないように,適切な人事ローテーションを確保しているか,やむを得ない理由により長期間にわたり同一部署の同一業務に従事している場合には,他の方策により事故防止等の実効性を確保しているかといった項目が挙げられている(乙112)。これらによれば,特定保険業者に対しては,その業務の性質上,事務リスクを回避し,職務の公正及び適正を確保するため,適切な人事ローテーションを行うことが本来的に要請されているということができる。とりわけ,上記1(2)ウにおいて認定したとおり,被告においては,平成23年に,九州支局において5年間にわたって特定の会員からの申請に当たって提出される領収書を改ざんするなどして当該会員の便宜を図ったという事案が発生するなど,職員が長期間同じ勤務先で同じ業務を担当することによって特定の会員と癒着する危険性が現実化していたのであるから,職務の公正及び適正を確保するため,適切な人事ローテーションを実施する必要性が高かったということができる。
また,被告においては,外部のコンサルタントによる経営の定量分析の結果を受けて,新人事制度を策定して,事業計画に必要な人材を育成することができる仕組みを構築することとし,教育的ローテーションを実施することとする旨の本件人事方針もその延長として位置付けられるものと考えられるところ(上記1(2)ウ及びエ並びに(6)アの認定事実),複数の部署を経験させることによって人材の育成を図ることの有用性は広く一般に知られていることと考えられるから,その実施は,合理的なものということができる。さらに,被告が平成22年に二度の業務命令を受けるなどし,その加入会員の数が減少し,平成20年度から平成22年度まで3期連続で赤字となる中で,一般財団法人に移行し,認可特定保険業者として存続する前提として,本件三事業の黒字化,準備金の積増し等が不可欠とされていたこと(第2の2(5)エからカまでの前提事実)に鑑みると,被告においてこのような方針を実施していく必要性は高かったということができる。そして,早期退職者の募集によって被告の正規職員数が減少しており(上記1(2)オの認定事実),限られた正規職員を適正に配置するために全国転勤を伴う配転を命ずることも,やむを得ないもの評することができる。
以上に加え,被告が全国各地にその営業拠点である20の支局を有していること(上記第2の2(1)アの前提事実)をも併せて考えれば,原告らに対する本件配転命令に共通する一般的な業務上の必要性は,高かったものと認めることができる。
(3)  上記(2)において説示した一般的な業務上の必要性が高かったことに加え,原告ごとの個別の事情をも加味した上で,本件配転命令に関し,被告がその人事権を濫用したということができるかどうかについて,検討する。
ア 原告X1について
(ア) 原告X1は,本件配転命令の当時,北東京支局長の地位に在り,南東京支局長と兼任していた時期を含め,約5年間にわたって在勤していたところ,本件配転命令によって,在任期間が長い静岡支局長,南九州支局長及び本部人事部長との間でローテーションをさせるとの方針の下で,南九州支局長との交替になったものである(上記第2の2(1)イ(ア)の前提事実及び上記1(6)イ(ア)の認定事実)。
上記(2)において説示したとおり,被告において職員を定期的に異動させる一般的な業務上の必要性を是認することができるところ,原告X1の支局長という地位は,広い権限を有するものであり,一般の職員の地位に比べても,職務の遂行に当たっての公平性が強く求められるものであると解されるから,定期的な異動の必要性がより高いものと考えることができる。また,原告X1の平成25年度上期から平成26年度上期までの人事考課がいずれも「丁」であり,更に平成26年度下期においては「M2」グレードの支局長の中でも最下位にあったというのである(上記1(7)イの認定事実)から,被告が原告X1を異動させることにより,北東京支局の業績の改善を図ると同時に,原告X1の環境を変え,南九州支局の業務推進の拡大を図ろうと考えたことには,一定程度の合理性を是認することができる。
また,被告は,原告X1が冠攣縮性狭心症及び不安障害を発症した後に,平成27年8月1日付けで原告X1を人事部付とし,本件配転命令を撤回した上で,その休職を認めていること(上記第2の2(1)イ(ア)の前提事実)をも併せて考慮すると,被告が本件配転命令によって原告X1の退職を企図したなどの濫用的な意図があったということもできない。
(イ) もっとも,原告X1に対する本件配転命令は,大支局である北東京支局から中支局である南九州支局への異動を命ずるものであり,これに伴い,大支局長のグレードである「M2」から中支局長のグレードである「M1」に降格するものであることから,このような降格処分の有効性についても,併せて検討する必要がある。
この点に関し,上記第2の3(2)ウ(ア)の原告X1の主張は,原告X1と被告の間の労働契約において,被告には職員を降格する権限がない旨を主張するものと解することができる。しかしながら,本件就業規則に基づいて定められた本件給与規程の第19条には,被告が職員の職務遂行能力を勘案して本件グレード定義によってグレード格付けを行う旨が定められており(上記第2の2(4)の前提事実),この定めはその文言から職員の能力に応じた格付けをする旨を定めたものと解されるから,昇格に限定されるものではなく,降格も当然に予定した定めであると解するのが相当である。また,当該前提事実のとおり,本件給与規程の第27条及び第28条には,昇格に限らず,降格の場合のグレード給の額の定め方も規定されていることも,上記の解釈を裏付けるものということができる。したがって,上記の原告X1の主張を採用することはできず,被告は,原告X1に対し,本件給与規程の定めに基づき,その職務遂行能力を勘案して,本件グレード定義に基づく降格をすることができるということになる。
また,本件配転命令に伴う降格は,担当職務の変更に伴うものであって,人事考課による降格ではないものの,上記1(2)エの認定事実のとおり,被告は,新人事制度において,役職とグレードを連動する仕組みを採用することとし,グレード定義上,管理職の「M」グレードと一般職の「S/G」グレードに分けた上で,それぞれの職務の種類,内容,職掌の範囲やその重要性,責任の大小,要求される専門性の高さ等に応じて細分化したグレードを設定し,個々のグレードに対応する基本給の基準額とその範囲を定め,これを基礎として給与及び賞与その他の処遇を定めたものである。そうすると,新人事制度の導入に当たって作成された本件給与規程におけるグレード格付けには,上記のような担当職務の変更に伴う昇格又は降格も含まれていると解するのが相当である(なお,原告X1は,本件給与規程によれば,昇給日から6か月以上勤務すると昇給資格者となり,昇給資格者は自動的に昇給するから,基本的に勤務の継続により給与が上がっていく前提である旨も主張しているが,グレード格付け(昇格又は降格)と給与の昇給又は降給とは,制度を異にするものであるから,当該主張が上記のグレード格付けの解釈に影響を及ぼすものではない。)。
そして,上記1(2)オ及びカの認定事実のとおり,新人事制度を導入するに当たって,被告が職員を対象とする説明会を数回開いており,原告X1もこれに参加し,新人事制度を前提とした本件就業規則及び本件給与規程の改定に同意していたのであるから,新人事制度に基づく本件就業規則及び本件給与規程は,被告と原告X1との間の労働契約の内容を成していたものと認めることができる。
したがって,被告は,原告X1に対し,労働契約に基づき,本件配転命令に伴う降格処分を行うことができる。そして,新人事制度においては,「M2」から「M1」への降格の基準として,直近4回の半期の人事考課で「C」以下を2回取ったことが定められており(上記1(2)エ(イ)の認定事実),原告X1が3期にわたって「丁」の評価であったというのである(上記1(7)イの認定事実)から,当該基準を満たすものということになる。
そうすると,本件配転命令に伴う降格処分についても,その適法性に疑義が生ずるものではない。
(ウ) さらに,上記第2の3(2)イb(a)のとおり,原告X1は,本件配転命令の適法性に関し,原告X1が被る経済的不利益等の存在を考慮すべき旨を主張している。
確かに,上記1(7)ウにおいて認定したとおり,本件配転命令に伴う原告X1のグレード級の降格により,月額で,グレード給が12万6000円,役職手当が2万5000円,地域手当が2万7320円それぞれ減少することになるから,転居自体が関東地方から九州地方への長距離の移動を伴うものであることの負担も併せて考えると,本件配転命令が原告X1に経済的不利益を生じさせるものであることは否定し難い。
しかしながら,このような経済的不利益については,被告により,激変緩和措置として1年にわたって月額7万0300円(その後2年間も減額して)調整給が支給されること(上記1(7)ウの認定事実)や,赴任に係る費用自体についても合計60万円を超える手当等が支給されること(上記1(6)オ(ア)の認定事実)など,一定程度の措置が施されている。また,南九州支局は,平成28年4月1日から大支局に変更されており,本件配転命令の当時もこの変更について検討がされていた(上記1(6)イ(ア)の認定事実)ところ,大支局に変更されれば,支局長である原告X1のグレードも昇格するのであるから,上記の経済的不利益は限定的なものであったということができる。
さらに,原告X1には,支援を必要とする義母がおり(上記1(7)アの認定事実),その支援に原告X1自身も一定程度の関与をしているものと推認することができるから,原告X1が転居を伴う異動をすることにより,原告X1又はその家族に一定程度の負担が生ずることは否定し難いものの,原告X1の家族構成(上記1(7)アの認定事実)や支局長の職責に照らせば,これらが本件配転命令において殊更に配慮すべき負担となるとまではいうことができない。
(エ) 上記(ア)から(ウ)までにおいて検討したところに加え,上記(2)において説示したとおり本件配転命令の一般的な業務上の必要性が高いことをも考慮すれば,本件配転命令が原告X1に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとまでいうことはできないから,原告X1に対する降格を伴う本件配転命令が被告の人事権を濫用した違法なものであるともいうことができない。
イ 原告X2について
(ア) 原告X2に対する本件配転命令は,本部の業務推進部及び業務開発部の統合とこれらの部署に所属する職員の成績優秀支局への異動などを行う旨の本件人事方針に基づいて,行われたものである(上記1(6)ア及びイ(イ)の認定事実)。
上記第2の3(2)イ(ア)aのとおり,原告らは,本部の業務推進部及び業務開発部の統合について,これらの部署がその職務を異にし,双方の部署が連携して業務推進を行うことで成果が得られていたのであるから,当該統合の必要はなく,原告X2に対する本件配転命令も必要がなかった旨を主張している。しかしながら,そもそも,団体の内部組織をどのように構築すべきかという事柄は,その性質上,経営責任を負うべき使用者に専権がある上,現に,本件考課者会議において考課の基準についてのF部長とE部長の見解が異なり,支局に混乱が生じたため,被告の役員に組織再編の必要性を認識させたことが認められるのである(上記1(2)キの認定事実)から,この統合自体が必要性のないものということはできない(なお,原告らは,この本件考課者会議において混乱が生じたこと自体を争っているが,K理事は,その証人尋問において,本件考課者会議においてE部長が当初予定されていた評価の方法を本件考課者会議の場で急遽変更し,本来的に業務推進の目標を設定する部署である業務推進部の部長であるF部長との間でその点についてのそごが生じ,静岡支局長であるN支局長等から問題視された旨を陳述しているところ,当該陳述の内容は,N支局長の証人尋問における陳述の内容とも,おおむね合致するものである。また,K理事の当該陳述は,平成26年度の進発式においては,業務推進職に職種を変更した職員と従前から業務推進職であった者との間に評価の差を設けるとされていたにもかかわらず,本件考課者会議においては,契約数で一律に評価を行うこととされたものであり(上記1(2)キの認定事実),かつ,本件考課者会議の前にその変更について各支局長に伝達されたことが認められないこととも整合するものであるから,その信用性を肯定することができる。)。したがって,原告らの上記の主張を採用することはできないし,この点に関する原告らのその他の主張をしんしゃくしても,上記の判断が左右されるものではない。
加えて,業務推進職への教育等,支局の業務推進職を支援するための部署である本部の業務推進部及び業務開発部の職員に成績優秀支局の業務推進職を担当させることによって,成績優秀支局のノウハウを学ぶなどすることについても,業務上の必要性を否定することはできない。
そうすると,原告X2に対する本件配転命令についての業務上の必要性も,肯定することができる。
(イ) この点に関し,J支局長は,その証人尋問において,本件配転命令の前に北海道支局でI職員を課長にする人事構想が進められており,H前理事長においてもこれを了解済みであった旨を陳述し,J支局長が当時作成していたとするスケジュール帳(甲A14及び15)にも,これに沿う内容の記載がある。
しかしながら,仮に,当該陳述のとおりにH前理事長とJ支局長の間でI職員を課長に昇進させる旨の話があったとしても,上記1(6)アにおいて認定したとおり,被告における幹部職員の人事は,役付三役の理事(その中に人事担当理事が含まれない場合にあっては,人事担当理事が加わる。)が協議して決めることとされていたものであって,本件全証拠によっても,当時の人事担当理事であったK理事がこのような人事異動を了解していたことやM人事部長がこれを知っていたことも認めることはできない(むしろ,K理事及びM人事部長は,いずれも,その証人尋問において,当該人事異動の話を聞いたことがない旨を陳述している。)から,被告の組織としての意思決定手続としては,そのような人事異動が決定されていたとまで認めるには足りない。そうすると,被告が既に決まっていた人事異動を殊更に覆し,あえて原告X2に対して本件配転命令を行ったということはできない。
したがって,上記のJ支局長の陳述は,この点の判断に当たって影響を及ぼすものではない。
(ウ) また,上記第2の3(2)イ(ア)b(b)のとおり,原告X2は,本件配転命令の違法性に関し,本件配転命令によって原告X2に生ずる種々の不利益の存在を考慮すべき旨を主張している。
確かに,原告X2には身体障害者4級の父や同3級の妹等の介護を要する家族がおり(上記1(8)アの認定事実),原告X2自身も,家族と共に一定程度の介護に携わっていたことを推認することができるし,北海道地方への長距離の転勤及び単身赴任となることにより,経済的にも一定の不利益が生ずることも推認することができる。しかしながら,原告X2の家族構成(上記1(8)アの認定事実)のほか,赴任に当たって合計60万円程度の赴任旅費や単身赴任手当等が支給されること(上記1(6)オ(イ)の認定事実)などに照らすと,上記の不利益については一定程度の対応も可能であり,また,補てんがされるということができるから,その課長としての職責に照らすと,これらが本件配転命令において特段の配慮をすべき負担となるとまではいうことができない。
(エ) 上記(ア)から(ウ)までにおいて検討したところに加え,上記(2)において説示したとおり本件配転命令の一般的な業務上の必要性が高いことをも考慮すれば,本件配転命令が原告X2に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとまでいうことはできないから,原告X2に対する本件配転命令が被告の人事権を濫用した違法なものであるともいうことができない。
ウ 原告X3について
(ア) 原告X3に対する本件配転命令も,本部の業務推進部及び業務開発部の統合と両部署の職員の成績優秀支局への補強及びノウハウの吸収等のために行われたものである(上記1(6)ア及びウの認定事実)ところ,この業務上の必要性については,上記イ(ア)において説示した原告X2に対する本件配転命令についてと同様である。
また,新人事制度の下で管理職として昇進するためには,業務職の経験も必要とされる(上記1(2)エの認定事実)ところ,原告X3は,採用以来,本部において業務支援職として勤務してきたものであり(上記第2の2(1)イ(ウ)の前提事実),業務推進職としての具体的な経験が不足していたものということができる。
そして,本件配転命令の当時,L支所長は,被告の業務推進職の中でも高い成果を収めており(上記1(6)ウの認定事実),成績優秀支局からのノウハウの吸収という観点からも,原告X3に業務推進職を経験させるという観点からも,原告X3を旭川支所に配属する本件配転命令については,その業務上の必要性を肯定することができる(なお,本件配転命令の後,旭川支所には人員が補充されていないものの,旭川支所の業績は伸びており(当該認定事実),原告X3が主張するように,旭川支所のマーケットが小さく,今後の事業拡大も見込めず,一定期間で廃止する方向で検討されていたとは認めることができない。)。
(イ) この点に関し,L支所長が原告X3より10歳程度年下であることを認めることができる(上記1(6)ウの認定事実)ものの,被告において部下よりも年下の上司の存在がまれであるとの事実をうかがうことはできないし,本件配転命令の後に原告X3が体調を崩したことに伴い,被告が原告X3を人事部付とした上で,本件配転命令を撤回していること(上記第2の2(1)イ(ウ)の前提事実)などに照らすと,被告が原告X3の退職を意図するなどの濫用的な目的により本件配転命令を行ったと認めるには足りないから,このことによって,上記の業務上の必要性が否定されるものではない。
(ウ) また,上記第2の3(2)イ(ア)b(c)のとおり,原告X3は,本件配転命令によって二重生活を強いられることで支出が増えることや,高校受験を控えた長男がいることなどの事情があり,当該事情を考慮すべき旨を主張している。
しかしながら,原告X3の家族構成(上記1(9)アの認定事実)や,合計60万円以上の赴任旅費等が支給され(上記1(6)オ(ウ)の認定事実),経済的な不利益がある程度緩和されることなどに照らすと,当該主張に係る事情をもって,これらが本件配転命令において特段の配慮をすべき負担となるとまでは認めることができない。
(エ) 上記(ア)から(ウ)までにおいて検討したところに加え,上記(2)において説示したとおり本件配転命令の一般的な業務上の必要性が高いことをも考慮すれば,本件配転命令が原告X3に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとまでいうことはできないから,原告X3に対する本件配転命令も,被告の人事権を濫用した違法なものであるということはできない。
エ 原告X4らについて
(ア) 原告X4らに対する本件配転命令は,成績が低迷している業務推進職の職員について,その環境を変えて能力の向上及び開発の機会を提供し,業務推進に注力させるという本件人事方針の目的の下で,行われたものである(上記1(6)ア及びエの認定事実)。
そこで,当該目的に則して原告X4らの状況をみると,上記1(5)イにおいて認定したとおりであって,原告X4については,平成25年に業務推進職に職種を転換した後,本格的に稼働した平成26年4月から平成27年1月までの間の平均した新規契約獲得数が業務推進職の職員155名中の146番目と低迷し,そのプロセスコントロールの内容をみてもアポ率が0.1%と低く(この数値は,テレアポ用問答集を用いて新入職員が業務推進活動を行った場合の平均値1.8%(上記1(3)イの認定事実)よりも低い。),その上司からは,積極性を欠いており,このまま南東京支局において勤務を継続しても成績の上昇が見込めないとの評価を受けていたものである。また,原告X5については,上記の新規契約獲得数が業務推進職の職員155名中の154番目であるなど,その業績が著しく低いといわざるを得ず,原告X5自身も,派遣職員からの問合せの対応に追われており,支局長から十分に指導を受けられないと感じていた(原告X5本人)ものである。さらに,原告X6についても,上記の新規契約獲得数が業務推進職の職員155名中の153番目であるなど,広いエリアを担当する埼玉支局に所属していた(上記1(6)エ(ウ)の認定事実)にもかかわらず,その業績が著しく低く,伸びていなかったものである。そして,原告X7については,上記の新規契約獲得数が業務推進職の職員155名中143番目であるなど,業務推進業務について伸び悩んでいたことに加え,J支局長との人間関係にも問題を抱える(上記1(6)エ(エ)の認定事実)等の状況にあったものである。このように,原告X4らは,いずれも,その業績が低迷していたものであり,しかも,その要因としては,原告X4ら自身が主張するように,派遣職員に対する引継業務の負担といった当時の原告X4らの置かれていた環境による部分もあったことを否定することができない。
したがって,原告X4らについて,上記の目的の下に行われた本件配転命令には,この点においては,合理性があり,その業務上の必要性を否定することもできない。
(イ) そして,原告X4らの本件配転命令による異動先についてみると,上記1(6)エにおいて認定したとおり,被告は,原告X4,原告X5及び原告X6については,首都圏内に所在する支局の間の異動では,その業務推進のエリアが重なることから,圏外の異動先を選定することとした上で,原告X4については,派遣職員が比較的安定して勤務しており,中途採用の業務推進職の女性職員が活躍している東北支局に,原告X5については,派遣職員が比較的安定して勤務しており,少数精鋭の支局として業績を上げているものの,3人で北陸三県を担当し,業務推進職の職員が不足していた北陸支局に,原告X6については,比較的新しい地区であり,保険業に従事した経歴を有する支局長及び同時に本件配転命令によって異動となる原告X6の旧知の原告X2から指導を期待することができる北海道支局にそれぞれ異動させることとし,また,原告X7については,原告X6の後任として埼玉支局に異動させることとしたものである。
以上の異動先の選択についても,原告X4らの業務推進の環境を変えるという本件配転命令の目的自体には合致するものと一応考えることができる。
(ウ) もっとも,原告X4らは,いずれも,被告の職員となってから本件配転命令を受けるまでの間,転居を伴わざるを得ないような広域の異動を経験したことが全くなく(上記第2の2(1)イ(エ)から(キ)までの前提事実),従来から,原告X4ら以外の女性職員についても,本件配転命令の時までに転居を伴う配転命令が行われたことがほとんどなかった(被告は,この点について明示的に争っていないし,K理事も,その証人尋問において,本件配転命令の以前に,転居を伴う遠隔地への配転が一,二件あった旨を陳述していることから,このように認定することができる。)というのである。このような原告X4ら女性職員に対する従前の配転に関する被告の取扱いを前提とした上で,上記1(10)から(13)までにおいて認定したように,原告X4らに介護等を要する家族がいることなどの事情をも勘案すれば,原告X4らがいずれも独身であることを考慮したとしても,原告X4らにとっては,転居を伴う広域の異動が,相当程度に大きな負担を生じさせるものであったことは,明らかである。また,上記1(2)イにおいて認定したように,平成24年3月には,静岡支局総務課から本部に異動となって新幹線通勤をしたものの,結局,退職することになった女性職員がおり,同じ頃にも,同支局から本部への異動を拒んだ女性職員が複数いたことなどをも併せて考えれば,転居を伴う広域の異動が原告X4らに大きな負担を生じさせるであろうことは,被告にとっても十分に予測することができた事柄である(C代表理事自身も,その被告代表者尋問において,本件配転命令によって女性職員が辞めるということがあり得ることを認識していたことを陳述しているが,このことは,女性職員にとって転居を伴う広域の異動による負担が大きいことを被告自身が認識していたことを裏付けるものと評することができる。)。
このような事情に鑑みると,使用者である被告としては,労働者である原告X4らに対する本件配転命令に当たり,原告X4らの個々の具体的な状況に十分に配慮し,事前にその希望するところを聴取等した上で(このような聴取等を行うことにより,過去に提出された自己報告書に介護等を要する家族がいる旨の記載がなく,又はその記載が十分なものでなかったとしても,原告X4らの家族の状況等の具体的な内容,ひいては本件配転命令が原告X4らに及ぼす具体的な影響が被告にも容易に判明したと考えられる。),本件配転命令の業務上の必要性や目的を丁寧に説明し,その理解を得るように努めるべきであったといわなければならない(労働契約法(平成19年法律第128号)第3条第3項参照)。
確かに,被告の職員の採用に当たっては,性別の区別なく,勤務地も限定されていなかったものであり(上記1(10)ア及び上記(1)の認定事実),被告が指摘するように,新人事制度の導入によって性別の区別なく広域異動する方針となって,平成25年度に被告が職員に提出させた自己申告書のひな型にもその旨の記載があったという事情は認められるものの,これらの事情をもってしても,原告X4らに対し,被告が本件配転命令の内容とされた転居を伴う広域の異動があり得ることを十分に周知したとは解し難い。また,原告X4らの業務推進の成績が低迷していたとはいえ,原告X4らが業務推進職に職種を転換したのが平成25年7月ないし10月であり(上記1(10)から(13)までの認定事実),本件配転命令までに2年未満の期間しか経過していなかったのであるから,原告X4らが,成績の低迷によって広域の異動を内容とする配転命令の対象となることについて具体的に予測していたとも,解することはできない。そして,本件全証拠によっても,被告が,事前に,原告X4らに広域の異動の可能性を示唆しつつ,その業務の改善を指導したことや,本件配転命令の業務上の必要性や目的について丁寧に説明し,本件配転命令についての理解を得ようとしたこと等の事情も認めることができない。
このように,原告X4らに対する本件配転命令は,原告X4らの個々の具体的な状況への配慮やその理解を得るための丁寧な説明もなくされたものであり,かつ,被告側の事情によって平成26年末に原告X4らから異動に関する自己申告書を提出させずに(上記1(2)カの認定事実),例年よりも異動日との余裕がない日程によって告知されたものである(上記1(6)アの認定事実)から,その業務上の必要性の大きさを考慮しても,これを受ける原告X4らに予期せぬ大きな負担を負わせるものであることやこれに応じて執るべき手続を欠いていたことという点において,その相当性を著しく欠くものといわざるを得ない。
(エ) 上記(ア)から(ウ)までにおいて検討したところによれば,原告X4らに対する本件配転命令は,原告X4らに通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものといわざるを得ないから,被告の人事権の濫用に当たるものとして,違法なものというべきである。
(4)  以上によれば,本件配転命令のうち原告X4らに対するものは,違法なものであり,また,その余の原告に対するものは,違法なものということができない。
したがって,本件配転命令(原告X1にあっては,本件配転命令に伴う降格処分を含む。)が違法なものであることを前提とする原告X1,原告X2及び原告X3の不法行為に基づく各損害賠償請求は,争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)についての判断を経るまでもなく,いずれも理由がないということになる。
4  さらに,争点1-④(原告X2及び原告X3に対する平成26年度下期の各人事考課が違法なものであるかどうか)について,判断する。
(1)  原告X2に対する人事考課について
ア 被告は,上記第2の3(2)エ(イ)aのとおり,原告X2に対する平成26年度下期の人事考課における評価の理由として,原告X2が,E部長と共にC代表理事を敵対視し,職員に対して本件配転命令に違反する行為を取らせて,被告に混乱を生じさせようとしたこと等を主張している。
そこで,当該主張の当否について検討すると,上記1(10)ウにおいて認定したとおり,原告X4が,本件配転命令ないし同様の配転命令の対象となった女性職員に対し,本件配転命令の内示の直後にE部長及び原告X2と話した内容として,被告を辞めたくないと考えているのであれば休職が最も効果的な方策であり,早期に病院に行って診断書を取ってくること,E部長及び原告X2が1か月のうちにC代表理事らと徹底的に戦うこと,原告X4やその他の女性職員が休むことが原告X2らの側に有利になることなどを伝える内容の電子メールを送信している事実を認めることができる。この事実によれば,どの程度まで主体的に関与したのかの点は措くとしても,被告の主張するとおり,原告X2において,C代表理事と対峙するため,E部長と共に,当該女性職員らを休職させ,それを自らの側に有利に利用しようとしていたものと評するほかない(なお,原告X4は,その本人尋問において,E部長又は原告X2から指示があったことは覚えておらず,当該電子メールを錯乱して大袈裟に記載した旨を陳述しているものの,当該電子メールの文面の説明としてはおよそ不自然なものであり,当該陳述を採用することはできない。)。また,原告X2がこのような行動に関与した時期は,平成27年1月30日にH前理事長が急逝し,同年2月12日に一般財団法人への移行の認可を受けた時期(上記1(6)アの認定事実)の直後に当たり,被告としては,新たに就任したC代表理事の下で,一体となって業務を遂行していく必要があった時期であり,このような被告の状況については,原告X2も当然十分に承知していたというべきであるから,被告がこのような原告X2の関与について人事考課上の負の要素として評価したことが不当なものであるということはできない。そして,被告における人事考課が相対評価である以上,原告X2の平素の業務上の業績と他の考課対象者の業績が同じ程度であれば,他の考課対象者に負の要素がない場合に原告X2が低い評価を受けることは,当然のことである(なお,相対評価であること自体が人事権の濫用を基礎付けるものとも解し難い。)。
イ したがって,原告X2に対する平成26年下期の人事考課について,被告の裁量権の逸脱や濫用があるとは,認めることができない。
そうすると,当該人事考課が違法なものであることを前提とする原告X2の不法行為に基づく損害賠償請求は,争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)についての判断を経るまでもなく,理由がないということになる。
(2)  原告X3に対する人事考課について
ア 被告は,上記第2の3(2)エ(イ)bのとおり,原告X3に対する平成26年度下期の人事考課における評価の理由として,原告X3が,同年度に長時間の時間外労働を行ったことを相対評価において不利益に判断した旨を主張している。
そこで,当該主張の当否について検討すると,上記1(2)クの認定事実のとおり,被告においては,同年度より,内部オペレーションの効率化及び職員の健康の保持のため,職員の時間外労働時間を徹底して削減する方針を取り,平成26年2月25日には,内部の通達により,幹部職員に対し,労働時間の管理等について,関係法令を周知するとともに,勤怠システムによって労務時間を把握して労務指揮を行うことを要請し,時間外・休日勤務命令書をもって時間外労働を行う制度を導入しているところ,これらの被告の方針は,原告X3を含む職員に周知されていたと認めることができる。そして,当該認定事実のとおり,この通達の発出後に各部署の時間外労働が減少したにもかかわらず,原告X3の時間外労働は減少せず,平成26年度の本部職員のうち200時間を超えて時間外労働を行っていた職員が原告X3及び運転業務に携わっていた総務課職員の2名のみであったというのである。そうすると,上記の被告の方針にもかかわらず,原告X3は,他の職員に比べて極めて長時間に及ぶ時間外労働を行っていたということができる。
この点に関し,原告X3は,上記第2の3(2)エ(ア)bのとおり,当時の原告X3が担当していた業務が過重であり,時間外労働が避けられないものであった旨を主張している。しかしながら,原告X3の後任者は,ほとんど残業をしておらず,平成27年4月及び5月の本部業務推進部の全体の時間外労働時間も,2か月の合計でも40時間にも満たないこと(上記1(2)クの認定事実。なお,本件全証拠によっても,本部業務推進部の担当する業務が同年4月以降に特に減少したという事情をうかがうことはできない。),原告X3が各種の業務を担当していた(上記1(9)イの認定事実)とはいえ,時間外労働を削減するために自らが業務の改善を図ったことをうかがわせる立証も特にないこと,同時期に他の部署においては時間外労働が削減されていること(上記1(2)クの認定事実)等の事情からすれば,原告X3の上記の主張を採用することはできない。
そうすると,原告X3が長時間時間外労働を行っていたことは,内部オペレーションの効率化及び職員の健康の保持という観点から職員の時間外労働の削減を徹底していた被告の業務方針に合理的な理由もなく反するものであり,他の大部分の職員が当該業務方針に従った業務遂行をしていたことからしても,その人事考課において負の要素として考慮され,ひいては相対評価である人事考課において低い評価を受けることも,やむを得ないものというほかない。
イ したがって,原告X3に対する平成26年度下期の人事考課について,被告の裁量権の逸脱や濫用があるとは,認めることができない。
そうすると,当該人事考課が違法なものであることを前提とする原告X3の不法行為に基づく損害賠償請求は,争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)についての判断を経るまでもなく,理由がないということになる。
5  続いて,争点1-⑤(原告X4,原告X5及び原告X6に対する平成27年6月のグレード級の各降格処分が違法なものであるかどうか)について,判断する。
(1)  上記3(3)ア(イ)において説示したとおり,本件給与規程が,被告において本件グレード定義に基づいて職員の職務遂行能力を勘案してグレード格付けを行い,これに対応するグレード給表に基づいて月額のグレード給を支給するものと定める(第19条)とともに,昇格又は降格の場合のグレード給の取扱い及び計算方法を定めている(第27条及び第28条)ことからすれば,被告は,本件給与規程の定めにより,職員の職務遂行能力に応じた昇格又は降格を含んだグレード格付けを行うことができるものと解される。そして,上記1(2)オ及びカにおいて認定したとおり,新人事制度の導入に当たり,被告が職員にその概要に関する資料を送付するとともに,説明会を開くなどしており,原告X4,原告X5及び原告X6も,新人事制度の下での本件就業規則及び本件給与規程に同意しているのであるから,上記の本件給与規程の定めは,これらの原告と被告との間の労働契約の内容となっているものである。したがって,被告は,当該労働契約上,これらの原告の職務遂行能力を勘案し,降格処分を含むグレード格付けを行うことができるものというべきである。
(2)  そして,被告の新人事制度においては,「G2」から「G1」への降格の基準について,直近4回の半期の人事考課で「D」以下の評価を2回以上取ったときと定められている(上記1(2)エ(イ)の認定事実)ところ,原告X4及び原告X5が平成26年度上期及び下期にいずれも「戊」の評価を,原告X6が平成25年度上期から平成26年度下期にかけて3期連続でいずれも「戊」の評価をそれぞれ受けている(上記1(10)オ,(11)エ及び(12)オの認定事実)のであるから,当該基準を満たしていたものである。
この点に関しては,被告が業務推進職の評価・指導の手法又は行動指針としてプロセスコントロールを重視しているにもかかわらず,本件考課者会議においては,E部長の主張により,獲得人数の多寡のみによって考課が判断されることになり,また,その目標値についても,従前から業務推進職に従事していた職員と同様の基準が用いられたこと(上記1(2)キの認定事実)から,原告X4,原告X5及び原告X6の降格処分の前提となった平成26年度上期の人事考課の結果の正当性については,疑念が全く生じないわけではない。しかしながら,業務推進職への職種の変更の当初においては,従前から業務推進を行って顧客との関わりを有している職員と比して業務推進活動に不利な面があることは否定することができないとしても,被告においては,業務推進職への職種の変更に当たり,数回の講習を行うとともに,各支局にも営業の教育を行うように指示をするなどし(上記1(4)イからエまでの認定事実),業務推進の技術を獲得することができるように支援していたものであるし,また,EL保険の導入(上記1(4)カの認定事実)もあり,現に,業務推進職に職種を変更した職員の中には,従前から業務推進に従事している職員以上の業績を上げている者もいたのである(上記1(5)イの認定事実)。これらの事情に鑑みれば,職種を変更した職員の評価について従前から業務推進職に従事してきた職員と異なる評価を恒久的に行うということも相当ではなく,職種を変更した職員についても,その具体的な業績や業績に至るプロセスを踏まえた評価を受けること自体は,やむを得ないものということができる。そして,上記1(5)イ及び(10)イにおいて認定したとおり,平成26年度のプロセスコントロールの数値によると,原告X4,原告X5及び原告X6のいずれについても,他の業務推進職に転換した職員と比べてアポ率が低く(原告X4については,業務の遂行自体に関する積極性等について上司から否定的な評価がされていた。),獲得人数の少なさという業績の結果にとどまらず,当該結果に至るまでの業務のプロセスにも,課題があったものとうかがうことができる。そうすると,本件考課者会議による考課結果が殊更に不当であるということはできず,これを降格処分の判断材料とすることに特段の問題が生ずるものではない。
また,原告X4,原告X5及び原告X6は,上記第2の3(2)オ(ア)のとおり,総務業務を担当する派遣職員の問合せに対応する必要があり,業務推進職に集中することができなかったことが低い業績につながっている旨を主張している。しかしながら,上記1(5)イにおいて認定したとおり,平成26年度のアポ率について最多獲得職員の7.3%と比べると,原告X4は0.1%,原告X5は0.3%,原告X6は1.5%といずれも著しく低いことからすると,契約獲得につながる初訪件数が少なかった一因として,これらの原告には,コール後に訪問までつなげる業務のプロセス自体に問題があったことがうかがわれるものであり,業績の低さは,必ずしもコール数の少なさのみに起因するものとも断ずることはできないから,上記の主張は,この点の判断を左右するものではない。
(3)  加えて,原告X4,原告X5及び原告X6が降格された際には,他にも数名の職員が降格されており(上記1(10)オの認定事実),その他本件に現れた一切の事情を考慮しても,被告が原告X4,原告X5及び原告X6に対して退職を強要する目的で降格を行ったものと認めることはできない。
(4)  上記(1)から(3)までにおいて検討したところによれば,原告X4,原告X5及び原告X6に対する平成27年6月のグレード級の各降格処分は,被告の降格の基準に基づいてされたものであって,前提となる評価の内容及び方法についても不当なものとは認めることができないから,被告がその人事権を濫用した違法なものであるということもできない。
そうすると,当該各降格処分が違法なものであることを前提とするこれらの原告の不法行為に基づく損害賠償請求は,争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)についての判断を経るまでもなく,いずれも理由がないということになる。
6  進んで,争点1-⑥(原告X1に対する職場復帰時のグレード級の降格処分等が違法なものであるかどうか)について,判断する。
(1)  上記3(3)ア(イ)において説示したとおり,被告は,原告X1に対し,労働契約上,その職務遂行能力を勘案して,降格処分を含むグレード格付けを行うことができるものである。そして,被告は,9か月弱程度の期間を休職していた原告X1(上記第2の2(1)イ(ア)の前提事実)について,上記第2の3(2)カ(イ)のとおり,一時的に3か月程度の期限付きで一般職員として復職させ,その後の経過次第では元のグレードに戻す予定であった旨を主張しており,証拠(乙95)には当該主張に沿う内容のものがあるところ,一般的に,精神的な疾患に罹患して休職した労働者を職場に復帰させる場合に一時的に軽易な業務に服させるということは広く行われていることであるから,上記の被告の主張を排斥することはできない。
そうすると,原告X1を一時的に一般職としたことに伴って原告X1のグレード級が「G3」に降格されたとしても,そのことをもって被告の判断が不当なものということはできないし,これによって生ずる降給の不利益(なお,復職後の経過が順調であれば,管理職に戻り,これに応じてグレード級が昇格することもあり得た。)や,その他の原告X1が指摘する種々の事情を考慮しても,当該降格について,被告に人事権の濫用があったと認めることはできない。
(2)  また,原告X1は,上記第2の3(2)カ(ア)のとおり,被告が自宅から遠方となる埼玉支局に復職させたことが違法である旨も主張しているほか,その受入態勢が不十分である旨の指摘もしている。
しかしながら,被告は,原告X1の円滑な復職のため,通勤経路や職場の人的関係等も考慮しつつ,埼玉支局に復職させることとしたものであり(上記1(7)オの認定事実),その他,原告X1が指摘する種々の事情を考慮しても,原告X1の復職に当たり,被告に人事権の濫用があったとは,認めることができない。
(3)  したがって,原告X1に対する職場復帰時(平成28年6月10日)のグレード級の降格処分等が違法なものであるとは,認めることができない。
そうすると,当該降格処分等が違法なものであることを前提とする原告X1の不法行為に基づく損害賠償請求は,争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)についての判断を経るまでもなく,理由がないということになる。
7  最後に,争点2(原告らの損害の有無及びその額いかん)について,判断する。
上記3(争点1-②に対する判断)において判示したとおり,原告X4らに対する本件配転命令は,違法なものであるので,これによって原告X4らに生じた損害について,検討する。
原告X4らは,本件配転命令によって適応障害等を発症し,休業せざるを得なくなったことを前提として,その逸失利益が生じたことをも主張している。しかしながら,原告X4らに生じた適応障害等(上記1(10)エ,(11)ウ,(12)ウ及び(13)ウの認定事実)が本件配転命令によって生じたことを裏付けるに足りる医証等の的確な証拠はない(なお,原告X6の適応障害(抑うつ状態)については,上記1(12)エにおいて認定したとおり,所轄労働基準監督署長から労災保険法上の業務災害に当たる旨の認定を受けているものであるが,上記1(12)エ(ア)において認定したように,この業務災害の認定においても,その発症が平成25年8月頃とされており,かつ,平成27年3月18日(同イの認定事実のとおり,原告X6に対する本件配転命令の内示の日である。)以降の症状にある程度の変化が認められるものの,自然経過の範囲内であるとされているのである。)。
そうすると,本件配転命令によって原告X4らに生じた損害としては,その精神的苦痛についての慰謝料として評価するほかはなく,本件配転命令の経緯や本件配転命令が原告X4らに与えた負担の大きさ,その後に短期間のうちに本件配転命令がいずれも撤回されたこと(上記第2の2(1)イ(エ)から(キ)までの前提事実)等,本件に現れた原告X4らに関する一切の事情を総合して考慮すると,その慰謝料の額としては,原告X4らそれぞれについて100万円と認めるのが相当である。
そして,原告X4らが弁護士である訴訟代理人を選任して本件訴訟を追行していることが当裁判所に顕著であるところ,本件配転命令と相当因果関係のある弁護士費用相当額は,上記に認定した慰謝料の額の10%である10万円をもって相当と認める。
第4  結論
以上によれば,原告らの請求のうち,原告X4らの本件配転命令が不法行為に当たることを原因とする損害賠償請求のうち上記第3の7において認定した額を求める限度(慰謝料の額100万円及び弁護士費用相当額10万円並びにこれらに対する本件不法行為日から支払済みまでに生ずる年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度)のものはいずれも理由があり,その余の請求及びその余の原告らの請求はいずれも理由がない。
よって,原告X4らの請求を当該限度においていずれも認容するとともに,その余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
なお,仮執行免脱宣言は,相当でないから,付さないこととする。
東京地方裁判所民事第36部
(裁判長裁判官 江原健志 裁判官 船所寛生 裁判官 大野眞穗子)

 

〈以下省略〉
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