「テレアポ 営業」に関する裁判例(13)平成26年10月27日 東京地裁 平26(ワ)16555号 発信者情報開示請求事件
「テレアポ 営業」に関する裁判例(13)平成26年10月27日 東京地裁 平26(ワ)16555号 発信者情報開示請求事件
裁判年月日 平成26年10月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平26(ワ)16555号
事件名 発信者情報開示請求事件
文献番号 2014WLJPCA10278021
裁判年月日 平成26年10月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平26(ワ)16555号
事件名 発信者情報開示請求事件
文献番号 2014WLJPCA10278021
大阪市〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 神田知宏
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 五島丈裕
主文
1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告が,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条に基づき経由プロバイダである被告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
1 争いがない事実等
(1) インターネットの「2ちゃんねる」において,氏名不詳者による別紙投稿記事目録記載の投稿記事に係る各投稿(以下「本件投稿」という。)がされた(甲1,4,5)。
本件投稿は,プロバイダ責任制限法2条1号の「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信」である「特定電気通信」に当たる(争いがない。)。
(2) 本件投稿は,被告を経由プロバイダとして投稿された(争いがない。)。
本件投稿が投稿の際に経由したリモートホストや電気通信設備一式は,プロバイダ責任制限法2条2号の「特定電気通信の用に供される電気通信設備」である「特定電気通信設備」に当たる(争いがない。)。
(3) 被告は,上記の「特定電気通信設備」を用いて本件投稿の投稿と閲覧を媒介し,又は特定電気通信設備をこれら他人の通信の用に供する者であり,プロバイダ責任制限法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に当たる(争いがない。)。そして,被告は,プロバイダ責任制限法4条1項の「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」に当たる(争いがない。)。
(4) 被告は,通信ログとして,本件投稿に使用されたIPアドレス,その割当日時,投稿者が接続したインターネットアドレス等の記録及び契約者情報として上記IPアドレス使用者の住所氏名,メールアドレス等の情報を保有している(争いがない。)。
2 争点及び当事者の主張
(1) 権利侵害の明白性(プロバイダ責任制限法4条1項1号)について
【原告の主張】
ア 同定可能性について
本件投稿で指摘されている「株式会社X」は原告の商号であり,「大阪市〈以下省略〉」は原告の本店所在地であり,原告の取引先,顧客等には同定可能である。
イ 権利侵害について
別紙投稿記事目録記載1の投稿は「テレアポのババー」「無言電話すな」「5糞くらい無言電話のまま」,同目録記載2の投稿は「勧誘を断ると,腹いせに,5分くらいの無言電話かけよる」,同目録記載3の投稿は「むげに断ると腹いせに無言電話」,同目録記載4の投稿は「勧誘断ったら,無言電話してくるやんけ」と指摘しており,原告又は原告の電話営業委託先の従業員が,電話での営業を断ると嫌がらせに無言電話を5分ほどかけるような不当な行為(特商法に違反し,違法となる可能性もある。)をする印象を与えるものであり,原告の営業方法に関し,原告の社会的評価を低下させ,原告の名誉信用を侵害するものである。
ウ 違法性阻却事由等について
原告は,電話営業を委託・外注しておらず,全て自社で実施しているところ,原告の従業員は無言電話などしていない(5分も無言電話をするくらいなら別の電話をする方が合理的である。)。本件投稿については,違法性阻却事由をうかがわせる事情はない。
【被告の主張】
本件投稿における5分間も無言であるという指摘は,電話の相手方が5分間も無言の電話を切らずに応答しているという点でにわかに信用できる内容ではなく,本件投稿の閲覧者は,本件投稿の発信者が原告の電話勧誘に立腹しているという印象を持つとしても,これを超えて実際に原告が違法な電話勧誘をしているという印象まで持つものではないので,本件投稿は,原告の社会的評価を低下させるものとはいえない。
仮に,本件投稿が原告の社会的評価を低下させるものであるとしても,業者による違法な勧誘は,一般消費者の利害に関係するものであって(事実の公共性),本件投稿は,一般にこれを知らせて違法や不正を是正し,又は今後のトラブルを未然に防ぐための注意喚起を意図するもの(目的の公益性)と解することができるから,真実性又は真実相当性がうかがわれる事情がある場合には,違法性が阻却される可能性も否定できない。
(2) 開示を受けるべき正当な理由(プロバイダ責任制限法4条1項2号)について
【原告の主張】
原告は,本件投稿の発信者に対し,不法行為に基づく損害賠償請求,差止請求等をする予定であるが,かかる権利を行使するためには,被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要がある。
第3 当裁判所の判断
1 権利侵害の明白性(プロバイダ責任制限法4条1項1号)について(争点(1))について
(1) 同定可能性について
証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,本件投稿で指摘されている「株式会社X」は原告の商号であり,「大阪市〈以下省略〉」は原告の本店所在地であるから,同定可能性に欠けるところはないといえる。
(2) 権利侵害の明白性
証拠(甲1)によれば,別紙投稿記事目録記載1の投稿は「テレアポのババー」「無言電話すな」「5糞くらい無言電話のまま」,同目録記載2の投稿は「勧誘を断ると,腹いせに,5分くらいの無言電話かけよる」,同目録記載3の投稿は「むげに断ると腹いせに無言電話」,同目録記載4の投稿は「勧誘断ったら,無言電話してくるやんけ」と指摘していることが認められる。これによれば,原告又は原告の電話営業委託先の従業員が,電話での営業を断ると嫌がらせに無言電話を5分ほどかけるような不当な行為(特商法に違反し違法となる可能性もある。)をする印象を与えるものであり,原告の営業方法に関し,原告の社会的評価を低下させ,原告の名誉信用を侵害するものであることは明白である。
被告は,本件投稿は,無言電話を5分間切らずに応答しているという点で,にわかに信用できないものであるから,本件投稿が原告の社会的評価を低下させるものではないと主張する。
しかし,無言電話を5分間切らずに応答するということ自体が直ちに信用できないものとも断じ難いし,本件投稿においては「5分間」という具体的な時間の長さに余り意味があるものではなく,原告が,勧誘を断った顧客に対して一定の時間の無言電話をかけることに意味があるのであるから,本件投稿は原告の社会的評価を低下させるものであるというべきである。
(3) 違法性阻却事由等について
証拠(甲2)によれば,本件投稿は真実ではないものと認められるから,違法性阻却事由はないものということができる。
なお,真実と信じるについての相当な理由については,責任阻却事由として位置付けられるものであるし,開示請求者に上記の相当な理由の不存在についての主張立証責任を負わせることは,開示請求者に過大な負担を与えるものであって,相当ではない。したがって,原告は,真実と信じるについての相当な理由についての主張立証責任を負うものではない。
2 開示を受けるべき正当な理由(プロバイダ責任制限法4条1項2号)について(争点(2))について
証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件投稿の発信者に対し,不法行為に基づく損害賠償請求,差止請求等をする予定であることが認められ,原告には,被告が保有する本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が認められる。
第4 結論
よって,原告の請求は,理由がある。
東京地方裁判所民事第34部
(裁判官 上村考由)
〈以下省略〉
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