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「テレアポ 営業」に関する裁判例(1)平成31年 3月14日 東京高裁 平30(ネ)1426号 損害賠償等請求各控訴事件

「テレアポ 営業」に関する裁判例(1)平成31年 3月14日 東京高裁 平30(ネ)1426号 損害賠償等請求各控訴事件

裁判年月日  平成31年 3月14日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ネ)1426号
事件名  損害賠償等請求各控訴事件
裁判結果  一審被告の控訴に基づき原判決取消・請求棄却  上訴等  上告、上告受理申立て  文献番号  2019WLJPCA03146010

要旨
◆配転命令等について人事権の濫用が否定された例

裁判経過
第一審 平成30年 2月26日 東京地裁 判決 平27(ワ)32573号 損害賠償等請求事件

出典
労判 1205号28頁
労経速 2379号3頁

評釈
緒方彰人・労経速 2379号2頁

参照条文
民法415条
民法709条
労働契約法3条3項

裁判年月日  平成31年 3月14日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ネ)1426号
事件名  損害賠償等請求各控訴事件
裁判結果  一審被告の控訴に基づき原判決取消・請求棄却  上訴等  上告、上告受理申立て  文献番号  2019WLJPCA03146010

控訴人・被控訴人 一般財団法人あんしん財団(以下「一審被告」という。)
同代表者代表理事 A
同訴訟代理人弁護士 中野裕人
控訴人 甲1(以下「一審原告甲1」という。)
被控訴人 乙1(以下「一審原告乙1」という。)
被控訴人 乙2(以下「一審原告乙2」という。)
被控訴人 乙3(以下「一審原告乙3」という。)
被控訴人 乙4(以下「一審原告乙4」という。)
上記5名訴訟代理人弁護士 鵜飼良昭
同 嶋﨑量
同 西川治

 

 

主文

1  一審被告の控訴に基づき、原判決主文第1項を取り消す。
2  上記取消部分に係る一審原告乙1、同乙2、同乙3及び同乙4の各請求をいずれも棄却する。
3  一審原告甲1の控訴を棄却する。
4  訴訟費用は、一審原告乙1、同乙2、同乙3及び同乙4と一審被告との間に生じた費用は、原審と当審を通じ、同一審原告らの負担とし、一審原告甲1の控訴に係る控訴費用は、同一審原告の負担とする。
 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  一審被告
(1)  原判決中、一審原告乙1、同乙2、同乙3及び同乙4の各請求に係る一審被告の敗訴部分を取り消す。
(2)  上記取消部分に係る一審原告らの各請求をいずれも棄却する。
2  一審原告甲1
(1)  原判決中、一審原告甲1の敗訴部分を取り消す。
(2)  一審被告は、一審原告甲1に対し、334万3161円及びこれに対する平成28年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本件は、(1)認可特定保険業者である一審被告の職員である一審原告甲1が、平成27年4月1日付けで配置転換を命ぜられ(以下、同日付けで他の一審原告に発令された配置転換と併せて「本件配転命令」という。)、これと同時に降格して減給されたこと、その後休職して復職した際に管理職から一般職に降格して更に減給されたことがいずれも一審被告の不法行為に当たると主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、①減額された賃金に相当する財産的損害303万9237円及びその請求に係る弁護士費用30万3924円(合計334万3161円)並びにこれらに対する不法行為の日の後である訴えの変更申立書送達の日である平成28年10月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、②精神的苦痛に対する慰謝料500万円及びその請求に係る弁護士費用50万円(合計550万円)並びにこれらに対する本件配転命令の日である平成27年4月1日から支払済みまで前同様の割合による遅延損害金の支払を各求め、(2)同じく一審被告の職員である一審原告乙1、同乙2、同乙3及び同乙4(以下、これら4名を併せて「一審原告乙1ら」ということがある。)が、一審被告から、一審原告乙1、同乙2及び同乙3については平成25年7月1日付けで、一審原告乙4については同年9月ないし10月ころ、内勤の事務職から業務推進職(営業職)又は外勤職に職種を転換する旨の業務命令を受け、その後の営業成績不振を理由として平成27年4月の異動期に発令された転居を伴う配置転換(本件配転命令)及びこれに先立ち行われた配置転換の内示(いずれも同年3月18日にされたもの。以下「本件配転内示」ということがある。)並びに本件配転命令後の平成27年6月に受けた各降格処分(ただし、一審原告乙4を除く。)はいずれも退職強要を目的とした違法な人事権の行使であるなどと主張して、一審被告に対し、不法行為による損害賠償請求権(職種転換の業務命令については予備的に債務不履行(安全配慮義務違反)による損害賠償請求権)に基づき、①精神的苦痛に対する慰謝料各500万円及びその請求に係る弁護士費用各50万円並びにこれらに対する平成27年4月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、②精神疾患を発症して就労不能状態に陥ったことによる休業損害(一審原告乙1、同乙2及び同乙4においては各208万4440円、一審原告乙3においては255万7327円)、通院慰謝料(各172万円)及びその請求に係る弁護士費用(一審原告乙1、同乙2及び同乙4においては各38万0444円、一審原告乙3においては42万7733円)並びにこれらに対する平成28年10月27日から各支払済みまで前同様の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は、一審原告乙1らに対する本件配転命令は一審被告の人事権の濫用に当たるなどとして、精神的苦痛に対する慰謝料各100万円及びその請求に係る弁護士費用各10万円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で同一審原告らの請求を認容し、一審原告乙1らのその余の請求及び一審原告甲1の各請求をいずれも棄却し、一審被告及び一審原告甲1がそれぞれ敗訴部分を不服として控訴をした。
なお、一審原告甲1は、原判決が同一審原告の精神的苦痛に対する慰謝料及び弁護士費用合計550万円の請求を棄却した部分について、一審原告乙1らは、原判決が上記各業務命令及び上記各降格処分(原判決摘示の争点1―①及び同⑤)を原因とする損害賠償請求(上記各業務命令に係る請求については主位的請求及び予備的請求を含む。)並びに本件配転命令後の休業損害及び通院慰謝料に係る各請求を棄却した部分について、いずれも不服を申し立てていないため、これらの点は当審の審判対象に含まれない。
2  前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は、3項のとおり原判決を補正し、4項のとおり当審における補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし3のうち一審原告ら関係部分に記載のとおりであるから、これを引用する。なお、特に断らない限り、略称は原判決の例による。
3  原判決の補正
(1)  7頁22行目に「配属されたが、」とあるを「配属され、配置転換に伴い北東京支局での「M2」グレードから「M1」グレードに降格されたが、」と改める。
(2)  11頁12行目の「なお、」の次に「本件配転命令の発令に先立ち、同年3月18日、配置転換の内示(本件配転内示)が異動予定者に伝達されており、」と加える。
(3)  17頁15行目冒頭から次行末尾までを削り、同頁17行目の「本件配転命令」の次に「及びその内示(本件配転内示)」と加え、同頁22行目冒頭から次行末尾まで、同頁末行冒頭から次頁初行末尾までを、各削る。
(4)  18頁3行目冒頭から22頁6行目末尾までを削る。
(5)  22頁7行目の「本件配転命令」の次に「及びその内示(本件配転内示)」と、同頁11行目の「A代表理事が」の次に「、E前理事長の下で財団の業績改善を指導・牽引してきた幹部職員ら(北東京支局長の一審原告甲1を含む。)を要職から追放するため、」と、各加える。
(6)  25頁22行目冒頭から次頁8行目末尾までを次のとおり改める。
「 一審原告乙1らは、各採用時の労働契約において、勤務地は自宅から通勤可能な範囲に、職種は内勤の一般職にそれぞれ限定されていた。仮にそうでなかったとしても、一審原告乙1らを含め、業務推進職に職種転換した女性職員9名に対して同時に転居を伴う配置転換を発令するのは過去に例のないことであり、配置転換の内示を受けた女性職員の中から退職者が続出することが容易に想定される中で、支局長等に配置転換の目的等を説明させた形跡もないことなどからすれば、本件配転命令は、異動対象者である一審原告乙1らを退職に追い込むという不当な動機・目的に基づくものというほかなく、業務上の必要性はない。」
(7)  27頁20行目に「目的として行った」とあるを「目的とした」と改める。
(8)  36頁末行冒頭から38頁3行目末尾まで、39頁25行目冒頭から次頁11行目の「また、」まで、41頁16行目冒頭から25行目末尾まで、42頁11行目冒頭から次頁初行末尾までを、各削る。
(9)  41頁10行目冒頭の「本件配転命令」の次に「の内示(本件配転内示)を受けたこと」と加える。
4  当審における補充主張
(1)  一審原告ら
ア 一審原告甲1の主張
南九州支局への配置転換に伴うグレード級の降格は必然的に減給を伴い、労働契約上の地位の重要な不利益変更に当たるため、労働者の同意又は就業規則上の根拠を必要とするが、給与規程19条は減給について規定せず、降格の要件を定めた唯一の資料である「人事基盤整備計画~新人事制度・退職金制度~(案)」と題する書面(書証略)は会社説明会のプレゼンテーション用の資料であって、就業規則や給与規程と一体をなすものではない。したがって、減給に同意していない一審原告甲1のグレード級を降格させて減給したことは違法・無効である。
また、一審原告甲1の平成28年6月10日の職場復帰は精神疾患からの復帰であるから、復帰時には相応の配慮を要し、特段の事情がない限り、従前の職群(Mグレード)へ復帰させるのが原則であるべきところ、復職に当たり、主治医や産業医の診断等によって管理職(Mグレード)としての適格性を否定された事実はなく、一審原告甲1の同意を得ずに管理職から非管理職(G3グレード)へ降格させて減給したことは違法・無効である。
イ 一審被告の加害行為に関する一審原告乙1らの補充主張
(ア) 一審被告においては、配置転換の内示があると、その後突発的な事態が発生したような例外的場合を除いてそのまま配転命令が発令されること、配転命令の内容は内示後数時間のうちに公示されて全職員の知るところとなること、配置転換の内示から正式発令まで約2週間しかなく、発令日までに引継ぎと転居を済ませておく必要があり、正式発令は確認的な意義を有するにすぎないことなど、内示があれば配転命令の発令が確実であるから、本件配転内示は配転命令そのものである。
(イ) 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成7年法律第107号による改正前の題名は育児休業等に関する法律)の平成7年改正により介護休業制度が導入され、同じく平成13年改正により労働者の配置に関する配慮義務の規定(同法26条)が新設され、平成19年に制定された労働契約法は労働契約の締結、変更について仕事と生活の調和にも配慮を求めるなど(同法3条3項)、転居を伴う配置転換をめぐる社会情勢や法制度の変化に照らし、使用者の業務上の必要性の程度と比較して労働者に通常甘受すべき程度を超える不利益を負わせるものであるときは、当該配転命令は権利の濫用になるというべきである。
(ウ) 一審被告に一審原告乙1らの家族の状況等に配慮する用意があれば、同一審原告らの上司と情報を共有し、本件配転内示に先立ち、転居を伴う広域異動の可能性を告げて申告を促すなどして家族の状況等を詳細に知り得たにもかかわらず、一審被告は、そのような手続を怠ったまま、本件配転内示をした。
(2)  一審被告
ア 一審原告乙1らの慰謝料請求に関する主張
(ア) 一審被告は、一審原告乙1らに対し、平成27年3月18日に本件配転内示をし、同年4月1日、一審原告乙1らの社内メールアドレス宛てに本件配転命令に係る辞令を個別に送付したが、一審原告乙1らは、同年3月25日以降心療内科等を受診した後に欠勤・休職し、上記辞令が添付された電子メールを開封していない。
そして、一審原告乙1らに対する本件配転命令はいずれも同一審原告らに宛てて個別に郵送した同年7月24日付け辞令をもって撤回しており、同年4月1日付けの電子メールに添付された辞令は一審原告乙1らの目に触れることのないまま消去されたから、同一審原告らに対する加害行為となり得るのは本件配転内示のほかになく、本件配転内示は、上長である支局長から、他の支局員には内密にした上(ただし、一審原告乙1への内示には職員1名が立ち会っている。)、口頭で穏やかに伝達され、内示の受諾に向けた強制・強要等はなく、退職勧奨やこれに類する言動も伴わずに行われるなど、その態様に違法なところはない。
(イ) 平成24年3月に本件三事業を本部に集約した際、地方支局配属の女性事務職員の中には、本部への配置転換に伴い転居を要する者も多く出ている。一審被告の人事異動は全職員に公示され、労働組合との団体交渉の結果などを通じて職員に伝えられてもいたから、女性職員についても転居を伴う配置転換があり得ることは職員に周知されていた。
(ウ) 本件配転内示の当時、一審原告乙1ら自身が転勤を困難とする重篤な疾病にり患していた等の事情はなく、一審原告乙1らに配偶者や子はない。一審原告乙1らは家族介護の必要性をいうが、同一審原告らが実際にいかなる介護をしていたかに関する主張立証はなく、家族の心配や見守りは介護に当たらない。
なお、一審原告乙1の陳述書(平成27年5月7日付け、書証略)には、父に脳梗塞の既往がある旨の記載があり、一審原告乙2の祖母は抗うつ薬の処方を受けているようであるが、一審原告乙1の父母、一審原告乙2の祖母及び父、一審原告乙3の父母並びに一審原告乙4の母のいずれについても、診断書やカルテは証拠として提出されておらず、上記の家族が要介護状態にあることや要介護認定を受けていることに関する具体的な主張立証はない。
したがって、一審原告乙1らが、本件配転命令によって労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を受けることはなく、本件配転内示によって精神的苦痛を被ることもない。
(エ) 労働者の家族構成や本人及び家族の病状、家族介護の状況等は、高度にプライバシーに関わる情報であり、厚生労働省告示(平成16年告示第259号)等においてもその取得や取扱いについて極めて慎重な対応が求められている。そのため、一審被告は、自己申告書や介護休暇制度における「登録」等によって職員の申告を受け、配置転換の内示後、職員から具体的な根拠を示して転勤できない理由が提示されれば誠実に対応することとしており、このような対応が違法・無効とされる理由はない。
なお、一審被告は、内示の前に事実上配置転換の打診をしていた時期があるが、ほぼ全員に断られ、転勤を嫌がる職員の犠牲となって転勤の必要性がさほど高くない職員が異動するという不公平な事態を招き、また、KSD事件後の事業エリア拡大と職員数減少に伴って転勤する職員を確保できなくなったため、遅くとも平成20年2月以降は上記打診をしておらず、平成23年9月にはこれを廃止している。
イ 一審原告甲1の主張に対する反論
一審原告甲1の南九州支局への配置転換によるグレード級降格に伴う減給、休職後復職した際に管理職の任を解かれたことによる減給は、いずれも就業規則及び給与規程(人事基盤整備計画に基づく改定後のもの。以下、併せて「就業規則等」ということがある。)に基づく措置であり、一審原告甲1は就業規則等の改定に同意している。
一審原告甲1は、一審被告の降格権限やその基準・要件を十分に理解していなかったかのように主張するが、一審原告甲1は、就業規則等について十分な説明を受けているほか、人事基盤整備の際に実施された希望退職の募集に当たり、平成24年11月7日、北東京支局長として、同支局の職員に対し、「現在の財団の危機的な状況と新人事制度への移行を鑑みた上で、異動等によって現在の仕事が一変する可能性や降格規定が確立されたことによって今後さらに給与減額の可能性がある」などと説明しているのであるから、同一審原告が一審被告の降格権限やその基準・要件を理解していなかったはずはない。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所は、原審認容部分を含め、一審原告らの各請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、2項のとおり原判決を補正し、3項のとおり補足判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の1、3及び6のうち一審原告ら関係部分に記載のとおりであるから、これを引用する。
2  原判決の補正
(1)  50頁19行目の「乙15」を「乙154の1(書証略)」と改める。
(2)  58頁20行目の「K」を「K」と改める。
(3)  61頁初行冒頭から3行目末尾まで、同頁13行目冒頭から次行末尾まで、同頁20行目冒頭から次行末尾までを、各削る。
(4)  70頁5行目に「本件配転命令の内示」とあるを「本件配転内示」と改め、同行から次行にかけての「強い衝撃を受けて、」を削る。
(5)  71頁4行目に「診断を受けた。」とあるを「診断を受け、翌26日から同月31日まで有給休暇を取得し、同年4月1日以降は傷病欠勤とされた。そのため、同一審原告は、同年4月1日に本件配転命令の辞令を添付して送付された電子メールを開封していない。」と改め、同頁8行目の「甲G3及びG5」を「甲G1、3及び5、乙46(書証略)」と改める。
(6)  71頁16行目の「原告乙2の祖母は、」を「一審原告乙2は、祖母が」と改め、同頁19行目の「困難な状況にある」の次に「などと供述している」と、72頁13行目の「ことがあった」の次に「などと供述している」と、各加え、同頁14行目の「本件配転命令」から次行の「同月26日に」までを「本件配転内示を受けた後、平成27年3月25日ないし26日に」と、同頁17行目の「診断を受けた。」を「診断を受け、同年3月中は有給休暇を取得し、同年4月1日以降は傷病欠勤とされた。そのため、同一審原告は、同年4月1日に本件配転命令の辞令を添付して送付された電子メールを開封していない。」と、各改める。
(7)  73頁初行の「原告乙3は、」から次行末尾までを「一審原告乙3は東京都○○区内に単身居住し、埼玉県秩父市内の実家に両親が居住するところ、同一審原告は、両親が体調を崩したときは帰省し、その世話をしている旨を供述している。」と、同頁14行目の「本件配転命令の内示を受けた。」を「本件配転内示を受け、同月20日から体調不良を理由に欠勤し、同年4月1日以降は傷病欠勤とされた。そのため、同一審原告は、同年4月1日に本件配転命令の辞令を添付して送付された電子メールを開封していない。」と、各改め、次行の「甲I1」の次に「、弁論の全趣旨」と加える。
(8)  75頁18行目から次行にかけての「本件配転命令」から21行目の「配転命令の後、」までを「本件配転内示を受け、その後休職しており、同年4月1日に本件配転命令の辞令を添付して送付された電子メールを開封していない。同一審原告は、」と改め、同頁24行目の「J3」の次に「、弁論の全趣旨」と加える。
(9)  75頁24行目末尾に、改行の上、次のとおり加え、次行冒頭の項記号を「オ」と改める。
「エ 一審原告乙4は、労災保険法の規定に基づく療養補償給付の請求をしたが、所轄労働基準監督署長である札幌中央労働基準監督署長から同給付を支給しないとの処分を受け、これを不服として審査請求をしたところ、北海道労働者災害補償審査官は、平成29年4月26日、同一審原告の審査請求を棄却するとの決定をした。そこで、一審原告乙4は、同決定を不服として再審査請求をし、労働保険審査会は、平成30年8月29日、所轄労働基準監督署長の上記処分を取り消すとの裁決をした。
(書証略)」
(10)  83頁8行目に「業務命令」とあるを「業務停止命令」と改める。
(11)  94頁初行冒頭から97頁11行目末尾までを次のとおり改める。
「(イ) 他方、①一審原告乙1は、極度の人見知りでセールス電話が苦手であり、営業職になってから成績が出せない、自分なりに(テレアポを)必死にやっていたと思うものの、支局内ではテレアポの件数はかなり少ないほうだったと思う、営業成績は営業職員約150人のうち下から6番目である(証拠略)、②同乙2は、電話をかけて断られるのが辛く、テレアポ業務は強いストレスであった、成績はずっと下位のほうであり、平成26年度(4月ないし1月)の営業成績は154位(新人を除けば最下位)、平成27年1月中旬ころは全国営業ランキングで下から2番目であった(証拠略)、③同乙3は、営業職と内勤事務との兼務で営業職の仕事ができず、平成26年度上期(4月から9月)の評価は最低ランクであった、営業職がメインと言われながら派遣社員の対応に追われ、営業成績を上げることができなかった(書証略)、④同乙4は、保険営業の経験がなく、ペーパードライバーなので自動車での営業には同僚に運転を頼むほかなく、新規(会員)獲得には大変な苦労をした(書証略)などと各供述しており、これらの供述によれば、同一審原告らは、業務推進職に転換した後の営業成績が悪く、人事評価も劣位にあること(書証略)を認識していたものと認められ、平成27年3月の時点で、一審原告乙1が南東京支局に異動してから5年余が、同乙2が神奈川支局に異動してから3年余が、同乙3が埼玉支局に異動してから5年余が各経過していたこと、一審原告乙4は、一審被告の正規職員となった平成16年5月以降北海道支局から異動したことがなく、上司であるG支局長との人間関係が良好でなかったことなどを考慮すると、一審原告乙1らが業務推進職に職種を転換してから本件配転内示までに2年未満の期間しか経過していなかったとしても、一審原告乙1らが平成27年4月期における配置転換の可能性を全く念頭に置いていなかったとは想定し難く、現に、一審原告乙1は、本件配転内示について、遠隔地という部分では予想していなかったと供述するところである(人証略)。そうすると、一審被告が一審原告乙1らを平成27年4月期における異動対象者としたことは、業務上の必要性に基づいた措置といえ、一審原告乙1らにとっても全く予想外の人事であったわけではないものと認めるのが相当である。
(ウ) もっとも、労働契約法は、労働契約の締結又は変更に当たり仕事と生活の調和にも配慮することを要求しており(労働契約法3条3項)、転居を伴う配置転換は労働者の社会生活に少なからず影響を及ぼすところ、認定事実(1の(6)のエ)によれば、一審被告が平成27年4月期に計画した人事異動は専ら営業成績の向上を意図したものであり、一審原告乙1らに配偶者や子がないことを考慮したことのほかには、同一審原告らの社会生活、特に家庭の事情等に配慮した形跡はなく、自己申告書に介護を要する祖母がいる旨記載した一審原告乙2についてすら、異動の可否について社会保険労務士に相談したというのみで(書証略)、本件配転内示に先立ち所属長(神奈川支局長)のNと協議するなどして介護の必要等に関する最新の情報を入手しようとしたことを認めるに足りる証拠もないなど、転居を伴う遠隔地への配置転換が一審原告乙1らの社会生活に与える影響や仕事と生活の調和に配慮した様子はうかがわれず、同一審原告らが事実上配置転換を拒絶した後に改めて打診された配置転換案では、一審原告乙1は神奈川支局、同乙2は埼玉支局、同乙3は栃木支局、同乙4は旭川支所が各異動先とされていたこと(書証略)をも踏まえると、一審原告乙1らにおいて、一審被告が異動先としてあえて遠隔地を選択したとの疑念を抱くことには相応の理由があるといわざるを得ない。
また、一審被告が、専ら自らの事情によって平成26年末に異動に関する自己申告書を提出させないまま、本件配転内示を行ったことについて、広域異動を伴う本件配転命令によって一審原告乙1らに負わせる負担についてやや配慮に欠ける面があることは否定できない。」
3  補足判断
(1)  一審原告乙1らに対する本件配転内示の違法性等について
ア 前示のとおり、一審被告が平成27年4月の異動期に一審原告乙1らを異動対象者としたことが直ちに不法行為に当たるとはいえないものの、同一審原告らが、あえて遠隔地を異動先に指定されたとの疑念を抱くことには相応の理由があり、本件配転命令によって一審原告乙1らに負担を負わせることへの配慮にやや欠けることは前示のとおりであるから、このことが慰謝料請求権の発生原因となる余地を直ちに否定することはできない。
そこで検討するに、一審原告乙1らは、本件配転内示は本件配転命令そのものであるなどとして、配置転換の内示と発令を区別すべきでないと主張し、この主張は、本件配転命令及びこれに先立つ本件配転内示等が全体として一連一体の加害行為であるとの主張と解される。
しかしながら、本件配転命令は平成27年7月24日に撤回されているところ(原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2(1)イの(エ)ないし(キ)、8頁25行目から10頁25行目まで)、一審原告乙1らは、本件配転命令の発令に先立ち、有給休暇を取得した後に欠勤し、あるいは休職するなどして、平成27年4月1日付けの本件配転命令に係る辞令が添付された電子メールを開封しておらず、本件配転命令を閲覧する機会はなかったというのであり、一審原告乙1らの供述するところによっても、同一審原告らは、いずれも本件配転内示を受けたことで精神的苦痛を被ったとされているのであって、本件配転命令によって精神的苦痛を受けることはおよそ想定できない。
したがって、一審原告乙1らの主張を採用することはできず、本件において不法行為の成否を検討する必要があるのは、平成27年3月18日に行われた本件配転内示に限られるというべきである。
イ ところで、一般に、配置転換の内示は、使用者の労働者に対する人事権の行使としての配転命令に先立ち、転勤を受諾するかどうかについて検討する機会を与えるための事前の告知であり、これによって人事異動の効力を生ずるものではなく、その後に異動計画が撤回ないし変更される余地を残しているものと解されるから、本件配転内示により一審原告乙1らが受けたと主張する精神的苦痛は、本件配転命令が発令された場合、異動先の事業所(一審原告乙1は仙台市内、同乙2は金沢市内、同乙3は札幌市内、同乙4はさいたま市内)に通勤可能な場所へ転居するか、転勤を拒否し、懲戒処分等の対象となるかの選択を迫られることへの不安や恐怖などであったものと認められる。
しかるに、内示が配転命令の撤回ないし変更の可能性を留保したものであることは前示のとおりであり、一審被告においても、転居を要する内示を受けた職員が配置転換を拒否し、転勤を拒むことのできる正当な理由(就業規則16条1項)の有無を審査した事例や、転勤に対する配慮が検討された事例のあることが認められるから(書証略、弁論の全趣旨)、仮に、一審原告乙1らが本件配転内示後に転勤を拒むことのできる正当な理由を示して人事部、所属長等に相談すれば、上記の事例と同様の対応がされた可能性を否定できないところ、同一審原告らが所属長や人事部等に対して上記の相談等をした形跡はない(書証略、弁論の全趣旨)。
ひるがえって、一審原告乙1らは、一審被告から、KSD事件後の経営危機を克服し、認可特定保険事業を継続するため、年功序列を排して優秀な人材を積極的に登用し、人材育成の観点及び事故防止の観点からの配置やローテーションを行うこと、業務推進職の職員は男女を問わず転居を伴う配置転換の可能性があることを示唆されており、かつ、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の趣旨に則り、勤務地について専ら女性であることを理由とした優遇はしないとの告知を受けていたものと認められることからすれば(証拠略、弁論の全趣旨)、一審原告乙1らの自分が異動対象者になるとしても転居を伴う配置転換の内示を受けることはないとの期待に合理的な根拠があるとはいえない。
ウ 以上に加えて、前示のとおり、本件における一審原告乙1らの異動先の選択については、業務推進職としての業績低迷の原因が同一審原告らの置かれていた環境による部分もあったことを否定できない以上、同一審原告らの異動先の選択に合理性がないとまではいえず、一審被告に対し、平成25年度自己申告書に記載するなどして転居を伴う異動はできない旨の申告をしていたのは一審原告乙2のみであるところ、同一審原告の自己申告書の記載も、祖母がうつ(暴れる)であり、母は働きに出ていて、父は腰椎圧迫骨折のため過度な看護はできないという抽象的なものにとどまり(書証略)、要介護度や介護の状況等に関する具体的な記載はなく、他に同居の妹(無職・画家)がいること(証拠略)を加味すると、一審被告が、一審原告乙2に転居を伴う配置転換を命じても祖母の介護に支障を来すことはないと考えたとしても不自然不合理ではない。
そうすると、一審原告乙1ら全員に対して本件配転内示をしたことが一審被告による人事権の濫用として違法なものであると認めることはできない。
エ さらに、一審原告乙1らは、本件配転内示に先立ち、異動対象者に転居を伴う配置転換の可能性を告げて転勤を拒むことのできる正当な理由の申告を促すべきであったとも主張する。なるほど、一審被告が本件配転内示をするに当たって一審原告乙1らの社会生活や仕事と生活の調和への配慮に欠けるところがなかったとはいえないことは先に説示したとおりである。しかしながら、このような配慮に欠けるところがあったとしても、配置転換の内示は、労働者にこれを受諾するかどうか検討する機会を与える手続であり、正当な理由を示して内示どおりの配置転換を拒むことができることに変わりはなく、このような手順が踏まれず、かつ、本件配転命令が撤回され、一審原告乙1らが遠隔地に異動することもなかった本件において、本件配転内示が同一審原告らの一審被告に対する慰謝料請求権の発生原因になることはないとの判断は左右されない。
オ よって、その余の点につき判断するまでもなく、一審原告乙1らの主張は採用することができず、同一審原告らの一審被告に対する慰謝料請求は理由がない。
(2)  一審原告甲1の賃金等に係る損害賠償請求について
ア 本件配転命令の違法性について
一審原告甲1に対する本件配転命令が人事権を濫用した違法なものとはいえないことについては、引用に係る原判決(上記補正後のもの。以下同じ。)が理由中で説示するとおりである(81頁3行目から88頁初行まで)。
イ 南九州支局への配置転換に伴う降格及び減給について
一審被告が平成25年に策定した人事基盤整備計画(新人事制度・退職金制度)は、コスト削減、成果主義等の導入による経営効率の向上を主眼としており、改定後の給与規程(書証略)からも、人事考課の結果次第で、グレード級をまたぐ降格(19条、27条)や同一グレード級内での降給(22条3項、26条)があり得ることは、一審被告の職員において容易に理解し得るものと認めることができる。また、認可特定保険業者である一審被告の業務の性質上、職員の長期滞留を回避する必要があること、一審原告甲1の北東京支局長滞留が長期(5年超)にわたっていたこと、この間、同一審原告の人事考課の結果が低迷し、降格要件に該当していたことはいずれも引用に係る原判決の理由説示のとおりであり、支局の数は限られ、大規模な支局と中小規模の支局との間の異動が避けられない以上、職員の公平な処遇の観点からも、一審被告においては、規模を異にする支局間での異動は当然に予定されていたといえる。
そして、一審被告が人事制度改革等に関する職員向け説明に使用した「人事基盤整備計画~新人事制度・退職金制度」と題する書面及びその案文には「原則としてM2人材は部長・室長・大規模な支局長の役割を担い、M1人材は課長・中規模な支局長・小規模な支局長の役割を担う。」との記載があり(書証略)、これによれば、一審原告甲1は、当時配置されていた北東京支局(弁論の全趣旨から、同支局が大規模支局に該当することは一審被告の職員間で周知の事実であったことが認められる。)から転出して中小規模の支局へ異動する際にはM2グレードからM1グレードに降格し、減給されることを認識した上で、就業規則等の改定に同意したものと認めるのが相当である。
なお、一審原告甲1は、新人事制度は就業規則等の改定に取り入れられていないと理解していた旨供述するが(人証略)、就業規則等の改定当時、北東京支局長として部下の質問に答える立場にあった一審原告甲1が、上記書面の該当部分や就業規則等の改定が新人事制度の策定に伴うものであることの認識を欠いていたとは容易に想定し難く、現に、一審原告甲1は、平成24年の希望退職募集時において、部下の職員に対し、異動や配置転換、降格基準等について説明し、その際、新人事制度への移行によって降格規定が確立され、今後は、異なる職群に降格することで減給となる可能性がある旨を述べたというのであるから(書証略)、これに反する一審原告甲1の上記供述は採用することができない。
よって、一審原告甲1の南九州支局への配置転換に伴う降格及び減給処分が違法であるとはいえない。
ウ 復職時の降格及び減給について
復職時の給与については「復職にあたって旧職務と異なる職務に就いた場合は、職務の内容、心身の状況等を勘案して給与を決めることとする。」と定められており(給与規程12条)、平成27年4月1日から一審被告人事部長を務めるK支局長の陳述書(書証略)には、一審原告甲1の復職に当たっては、過去の管理職の復職の例にならい、管理職の役職を外し、負担を減らし復職させており、様子をみて同一審原告の管理職への再登用を検討することとしたとの供述記載があり、同陳述書別紙1記載の管理職(支局長)としての職責(平成28年9月1日付けのものであるが、平成27年当時、管理職の職務内容が大きく異なっていたと認めるに足りる証拠はない。)に照らし、K支局長の上記供述が事実に反すると認めるに足りない。そうすると、一審被告において、精神疾患を発症した職員が職場復帰する場合には、従前の地位への復帰が原則であったと認めることはできず、引用に係る原判決の理由説示(103頁22行目から104頁22行目まで)のとおり、復職の際の負担軽減をもって人事権の濫用ということはできない。
これに対し、一審原告甲1は、長らく管理職として就労していたため、自ら営業活動をすることによって極めて強い心理的負荷を受けた、営業成績が悪いと更に降格されるのではないかとの恐怖感があったなどと主張し、この主張に沿う供述をするが(人証略)、管理職として長く電話勧誘等の支援指導等をして営業活動に習熟しているはずの一審原告甲1が自ら営業活動をすることにさほどの困難を感ずることは考えにくく、降格を不名誉とする心情等のほかにこれといった心理的負荷の要因を認め難いことに照らせば、心疾患を抱え、かつ、不安障害による休職から復帰したばかりの一審原告甲1を一時的に降格させて管理職の職務に耐え得るかどうか評価を加えることが人事権の濫用に当たると認めることはできず、一審原告甲1の主張は採用できない。
よって、復職時の降格及び減給に違法不当なところはない。
エ 以上のとおりであり、一審被告の不法行為を原因とする一審原告甲1の賃金等に係る損害賠償請求はいずれも理由がない。
第4  結論
以上の次第で、原判決中、一審原告乙1らの各慰謝料請求を認容した部分は相当でないから、その限度で原判決を取り消し、一審原告乙1らの各請求をいずれも棄却し、一審原告甲1の控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第24民事部
(裁判長裁判官 村田渉 裁判官 一木文智 裁判官 建石直子)
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