【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「成果報酬 営業」に関する裁判例(42)平成26年 7月18日 神戸地裁 平24(ワ)1654号 損害賠償請求事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(42)平成26年 7月18日 神戸地裁 平24(ワ)1654号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成26年 7月18日  裁判所名  神戸地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)1654号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA07186015

要旨
◆原告が原告車(普通自動二輪車)を運転して進行していたところ、対向進行してきた被告運転の被告車が路外にある資材置場に出ようとして原告の走行車線に右折侵入したため、これに気づいて急制動の措置を取った原告が、路上に転倒した上、被告車と衝突した本件事故につき、原告が、被告に対し、損害賠償を請求した事案において、被告には、原告車の進路を妨害した過失がある一方、原告にも、最高速度を15キロ以上上回る速度で漫然と走行してきた過失があるとして、原告と被告の過失割合を1対9と認定した事例

出典
交民 47巻4号915頁
自保ジャーナル 1933号87頁

評釈
交通事故損害賠償データファイル(消極損害)
交通事故損害賠償データファイル(過失相殺)

参照条文
民法709条
民法722条2項
自動車損害賠償保障法3条本文

裁判年月日  平成26年 7月18日  裁判所名  神戸地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)1654号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA07186015

原告 X
被告 Y

 

 

主文

一  被告は、原告に対し、九一三万九〇七二円及びうち九〇六万〇四七七円に対する平成二一年七月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  原告のその余の請求を棄却する。
三  訴訟費用はこれを六分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第一  請求
被告は、原告に対し、五三六一万〇四九九円及びうち五三五三万一九〇四円に対する平成二一年七月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二  事案の概要
本件は、原告運転の普通自動二輪車(以下「原告車」という。)と、被告運転の普通貨物自動車(以下「被告車」という。)とが衝突した事故(以下「本件事故」という。)について、原告が、被告に対し、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条、民法七〇九条に基づき、同事故により原告が被った人的損害の賠償及び弁護士費用並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
一  前提事実
(1)  交通事故の発生(甲一、弁論の全趣旨)
次の交通事故(本件事故)が発生した。
ア 日時 平成二一年七月二日午前一〇時三〇分ころ
イ 場所 兵庫県加古川市八幡町野村六二五番地先路上(以下「本件事故現場」という。)
ウ 関係車両① 普通貨物自動車(ナンバー〈省略〉、被告車)
運転者 被告(昭和二三年○月○日生、当時六〇歳)
エ 関係車両② 普通自動二輪車(〔ナンバー〈省略〉〕、原告車)
運転者 原告(昭和三八年○月○日生、当時四六歳)
オ 事故態様 原告が原告車を運転して本件事故現場付近道路を西進していたところ、折から上記道路を対向してきた被告運転の被告車が、本件事故現場の南側路外にある資材置場に出ようとして原告の走行車線に右折進入したため、これに気付いて急制動の措置を取った原告が、路上に転倒した上、被告車と衝突した(後記のとおり、具体的な事故態様につき、当事者間に争いがある。)。
(2)  本件事故現場付近の状況(甲二、二五の一~二二、弁論の全趣旨)
ア 本件事故現場付近の状況は、別紙「交通事故現場見取図(原図)」(甲二。以下「別紙図面」という。)に記載のとおりであり、本件事故現場は、概ね東西に通じる片側一車線の道路(東から西に向けやや右カーブになっている。以下「本件道路」という。)上であり、本件事故現場の南側路外には、資材置場(以下「本件資材置場」という。)が設けられている。
イ 本件事故現場付近の本件道路の最高速度は、時速四〇kmである。
ウ 本件事故当時の天候は晴れで、路面は乾燥していた。
(3)  被告の責任原因(争いなし)
被告は、原告に対し、自賠法三条、民法七〇九条に基づき、本件事故によって生じた損害を賠償すべき責任がある。
(4)  本件事故後の原告の通院経過
ア a病院(甲三の一~三、乙一)
傷病名 頚椎捻挫、右上肢打撲、両下腿打撲、頭部打撲、全身擦過創(四肢・体幹部)、右肩関節捻挫、挙上障害等
通院 平成二一年七月二日~同年九月七日(実通院日数二二日)
イ b整形外科(甲五、乙二)
傷病名 右肩腱板断裂疑い
通院 平成二一年九月二日及び同月九日(実通院日数二日)
ウ c病院(以下「c病院」という。甲七の一~五、乙三)
傷病名 右肩腱板断裂、頭部外傷
通院 平成二一年九月一〇日~平成二二年一月七日(実通院日数三三日)
エ d病院(甲九の一・二、乙四の一・二)
傷病名 右肩腱板断裂、右肩関節拘縮
通院 平成二一年九月二五日~平成二三年一月二四日(実通院日数三四日)
入院 平成二二年一月一九日~同年三月八日(入院四九日)
オ e接骨院(甲一一の一~九)
通院 平成二二年四月一三日~同年一二月一四日(実通院日数五四日)
負傷名 右肩腱板断裂
(5)  症状固定診断及び後遺障害事前認定手続
ア 原告は、①a病院において、頭部打撲、全身打撲擦過傷につき、右上肢に八×五cmの色素沈着を認め、平成二三年三月一四日に症状固定したとの診断を受けた(甲一二)。また、②d病院において、右肩腱板断裂につき、右肩の結帯動作、水平内転して制限を認めるとの自覚症状を残し〔ただし、右肩関節可動域(他動値)は、健側(左肩関節)可動域角度(他動値)の四分の三以下に制限されていない。〕、同年一月二四日に症状固定したとの診断を受け(甲一四)、③c病院において、右肩腱板断裂につき、右肩痛及び可動域制限の自覚症状を残し〔右肩関節可動域(他動値)は、健側(左肩関節)可動域角度(他動値)の二分の一以下に制限されている。〕、同年四月二八日に症状固定したとの診断を受けた(甲一三)。
イ 原告は、自賠責保険の後遺障害事前認定において、右肩関節の機能障害及び右肩の醜状障害につき、いずれも自賠責保険における後遺障害に該当しないとの判断を受け(甲一五)、異議申立てを行ったが(甲一六)、次のとおり、自賠法施行令別表第二第一四級四号(以下、後遺障害等級につき、単に「一四級四号」などという。)に該当するとの認定を受けた(甲一七)。原告は、さらに異議申立てをしたが(甲一八)、結果は変わらなかった(甲一九)。
(ア) 右上肢の色素沈着につき、「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」として一四級四号に該当する。なお、右肩の手術痕については、自賠責保険における後遺障害に該当しない。
(イ) 右肩関節の機能障害につき、右肩腱板断裂が本件事故によるものと捉えるのは困難であること、また、右肩関節可動域は、d病院とc病院の計測値に大きな差異が認められ、c病院での肩関節可動域角度をもって評価するのは困難であることなどから、自賠責保険における後遺障害には該当しない。
(6)  損害の填補
原告は、平成二三年八月五日に自賠責保険から七五万円の支払を受け、また、被告の加入する任意保険会社(以下「被告側」という。)から合計一七九万〇七二八円の支払を受けた(争いなし)。
二  本件の争点及び当事者の主張
(1)  本件事故態様及び過失相殺
【被告の主張】
ア 本件事故は、路外に出ようと右折した被告車に対し、直進してきた原告車が急制動をかけて転倒し接触したものであるところ、被告車は、右折の前にはほぼ停止した状態となり、被告は、対向車線を確認の上、右折の合図を行い、時速五km程度で右折を開始した。そして、原告車を発見すると同時に急制動の措置を取り、被告車は停止したが、停止後、原告車が接触した(本件事故)。なお、実況見分調書上、警察官から強く求められたために、被告が指示してしまった「後方確認に気を取られた地点」というものがあるが、実際には、そのような地点は存在しなかった。
イ 他方、原告車は、本件道路の最高速度が時速四〇kmに制限されているのに、三〇km以上の速度超過で進行してきたものであること、両車両の衝突地点手前において、被告車は、既に右折を完了したに近い状態(いわゆる既右折の状態)であったことなどに照らすと、本件事故の発生につき、原告には少なくとも四〇%の過失が認められるべきである。
【原告の主張】
ア 原告は、原告車を運転し本件道路を西進していたところ、被告が、右折の合図もしなければ、徐行することもなく、後方確認に気を取られて前方不注視のまま、突然センターラインを超えて対向車線(原告車走行車線)に被告車を進入させた結果、本件事故が発生した。
イ 原告に速度超過はなく、被告車が既右折の状態にあったともいえず、原告につき、過失相殺は一切なされるべきではない。
(2)  原告の後遺障害の内容及び程度
【原告の主張】
ア 原告には、本件事故による右肩腱板断裂後の右肩関節の可動域制限が残存しており、特に、主要運動の一つである外転・内転(他動)が問題となるところ、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」(以下、単に「関節可動域表示ならびに測定法」という。)に準拠して測定を行っているc病院での右肩関節可動域の測定値は、外転・内転が九〇度・〇度(合計値で評価する。)であり、健側(左肩)の外転・内転が一八〇度・〇度であることと比較すると、右肩関節の外転・内転の可動域が健側の二分の一以下に制限されているから(90度÷180度=1/2)、これは「一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」として一〇級一〇号に該当する。
イ これに対し、d病院の右肩関節可動域の測定値は、外転・内転が一一〇度・〇度であり、健側(左肩)の外転・内転が一三〇度・〇度であるから、右肩関節の外転・内転の可動域が健側の四分の三以下に制限されていないものとなっており(110度÷130度≒0.85)、後遺障害の等級認定基準に至らないことになる。d病院の測定方法は、「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠しておらず、一般に承認されているものでもなければ、各医療機関において普遍的に実施されているものでもなく、原告の健常な左肩関節につき、普通に側方挙上できれば外転の参考可動域角度である一八〇度と測定されなければならないものが、一三〇度に止まっている。後遺障害の程度については、画一的な基準によって公平中立にその等級認定がなされるべきであるから、「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠していないd病院の測定値を採用すべきではない。
ウ 結局、原告の後遺障害は、上記右肩関節の機能障害と一四級四号に該当する右上肢の色素沈着とを併せて併合一〇級に該当する。
【被告の主張】
ア 原告の右肩関節の可動域については、肩関節の治療歴を豊富に有する先進的な医療機関であるd病院で測定された結果に基づいて後遺障害の有無を評価すべきであり、それによれば、右肩関節の外転・内転の可動域が健側の四分の三以下に制限されておらず、後遺障害の等級には該当しない。
イ 原告の後遺障害は、一四級相当の醜状痕(右上肢の色素沈着)のみである。
(3)  原告の損害
【原告の主張】
本件事故により、原告の被った損害は次のとおりである。
ア 治療費 一七七万九四二八円
(ア) a病院 二〇万七四一七円
(イ) b整形外科 二万三五六一円
(ウ) c病院 三四万四八二〇円
(エ) d病院 一〇二万一二三〇円
(オ) e接骨院 一八万二四〇〇円
イ 文書料(診断書料及び弁護士会照会費用) 二万三九八〇円
ウ 装具費(ヘッドギア代) 四二五〇円
エ 入院雑費(一五〇〇円×入院四九日) 七万三五〇〇円
オ 通院交通費 三〇万四七二四円
(ア) a病院(片道二〇km×二二日×ガソリン代一km当たり三〇円×二) 二万六四〇〇円
(イ) b整形外科(一八km×二日×三〇円×二) 二一六〇円
(ウ) c病院(三km×三三日×三〇円×二) 五九四〇円
(エ) d病院(六五km×三四日×三〇円×二+高速道路料金片道一九〇〇円×三四日×二) 二六万一八〇〇円
(オ) e接骨院(二・六km×五四日×三〇円×二) 八四二四円
カ 休業損害 五四九万九五八五円
原告は、本件事故当時、有限会社f(以下「本件会社」という。)の代表取締役として稼働し、平成二〇年には年額一三一二万円、日額にして三万五九四五円〔1312万円÷365日=3万5945円(円未満切り捨て、以下同じ)〕の所得(役員報酬)があった。原告の役員報酬は、全額が労務の対価であり、利益配当部分はない。
原告は、本件事故のため、①本件事故当日の平成二一年七月二日から同月二〇日までの一九日間、②同月二一日以降、a病院、b整形外科、c病院及びe接骨院に通院する際は半日、d病院に通院する際は終日、③d病院に入院中の平成二二年一月一九日から同年三月八日までの四九日間は、いずれも休業を余儀なくされた。
したがって、原告の休業損害を算定すると、次のとおりとなる。
①3万5945円×19日+②3万5945円×〔(22-9日)+2日+33日+54日〕÷2+3万5945円×34日+③3万5945円×49日=549万9585円
キ 後遺障害逸失利益 三五〇一万三四八四円
原告は、本件会社の代表取締役として稼働し、平成一九年には年額七六九万二〇〇〇円、平成二〇年には年額一三一二万円の所得があったので、その平均値である年額一〇四〇万六〇〇〇円を基礎収入とし、労働能力喪失率を二七%(併合一〇級相当)、労働能力喪失期間を症状固定の四七歳から六七歳まで二〇年(ライプニッツ係数一二・四六二)として、原告の後遺障害逸失利益を算定すると、次のとおりとなる。
1040万6000円×27%×12.462=3501万3484円
ク 慰謝料
(ア) 入通院慰謝料(重傷、入院四九日、実通院日数一四五日) 三〇〇万円
(イ) 後遺障害慰謝料(一〇級相当) 五五〇万円
ケ 確定遅延損害金 七万八五九五円
自賠責保険金相当額七五万円に対する本件事故日である平成二一年七月二日から保険金支払日である平成二三年八月五日までの民法所定の年五分の割合による確定遅延損害金は、次のとおりとなる。
75万円×(2年+35日/365日)×5%=7万8595円
コ 損害の填補 ▲二五四万〇七二八円
サ 弁護士費用 四八七万三六八一円
シ 損害額合計 五三六一万〇四九九円
ス 被告による素因減額の主張は、いずれも争う。
【被告の主張】
ア 原告による損害の主張のうち、確定遅延損害金及び損害の填補は認め、その余は、いずれも否認し争う。
イ c病院の治療費につき、本件事故によるものとは認められない脳梗塞や頸動脈狭窄症に関する検査費用や治療費が含まれており、これらは相当因果関係を有する損害とは認められない。
ウ 休業損害につき、原告の役員報酬は、本件会社の利益に比例し、年度によって大きく変動しているから、その大半は成果報酬(利益配当部分)であるといえ、損害算定の基礎収入として認められる労働報酬(労務対価部分)は、本件会社の他の取締役の平均報酬額である四四三万八五七六円程度とすべきである。
エ 後遺障害逸失利益につき、原告の後遺障害は、一四級相当の醜状痕のみであり、これが原告の仕事内容に影響するものではないから、逸失利益は認められない。また、原告の基礎収入については、上記ウのとおりである。
オ 素因減額について
(ア) 原告は、本件事故後の平成二一年八月二九日、右肩に痛みを感じていながら、プレジャーボートを運転し、右肩に負担をかけた結果、右肩腱板断裂が悪化し、挙上障害にも影響を及ぼした。したがって、仮に原告の右肩関節可動域制限について、被告に何らかの責任が認められるとしても、素因減額が考慮されるべきである。
(イ) 原告は、本件事故後に、脳梗塞及び頸動脈狭窄症を発症して治療を受けており、そのため本件事故による治療が長引いたり、d病院の手術時期や薬剤等に影響があった可能性がある。したがって、本件事故による治療費や慰謝料等の算定において、素因減額が考慮されるべきである。
第三  当裁判所の判断
一  争点(1)(本件事故態様及び過失相殺)について
(1)  前提事実(2)の事実、証拠(甲一、二、二五の一~二二、三九、乙六~八、一一、一二、原告本人、被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。上記証拠中、下記認定に反する部分は採用しない。なお、以下の凡例は、別紙図面記載の例による。
ア 原告は、本件事故当時、仕事の取引先に向かうため、原告車を運転して時速五五km以上で本件道路の西行車線を西進し、 ’地点付近で、前方の東行車線から右折する被告車に気付き、直ちに急制動の措置を取った。しかし、原告車はそのまま 地点を通って進行した後、原告は、路上に転倒して三~四m滑走し、 地点(= 地点)で停止していた被告車と衝突した(本件事故)。
なお、原告車の速度について、原告が自認する被告車の発見地点( ’地点付近)から衝突地点( 地点)まで約四二・五mであること、通常、乾燥路面の場合、時速五〇kmの車両の制動距離が約二八m、時速七〇kmの車両の制動距離が約四六・五m程度であること(弁論の全趣旨)などに鑑み、原告車の急制動前の速度は、時速五五km以上であったことが推認されるが、時速七〇kmに達していたとまでは認められない。
イ 被告は、本件事故当時、被告車を運転して時速約五〇kmで本件道路の東行車線を東進し、①地点で、本件資材置場に進入して方向転換しようと考え、時速三〇km程度に減速し、②地点で、停止に近い状態となり、前方を確認して右折の指示器を出した。被告は、②地点で西行車線に車両を認めなかったため、徐行で右折を開始したが、約七・三m進行した③地点に至って、初めて 地点の原告車に気付き、直ちに急制動の措置を取ったところ、④地点で被告車が停止し、停止直後、 地点(= 地点)に、転倒・滑走してきた原告が衝突した(本件事故)。
なお、被告車の速度について、被告が自認する原告車の発見地点(③地点)から被告車停止地点(④地点)まで約二・七mであることなどに鑑み、原告車の急制動前の速度は徐行程度であったと推認される。また、被告本人尋問の結果に鑑み、被告車が合図をしないまま右折したとは認められず(ただし、合図遅れはある。)、②地点で後方確認に気を取られたことがあったとは認められない(ただし、理由は違うとしても、原告車の発見遅れはある。)。
ウ 本件事故後、まもなく、原告及び被告立会いのもとで警察官による実況見分が実施され、本件道路上における被告の見通し状況が確認されたところ、 地点のときに、四八・〇m右前方である ’地点まで見通すことが可能であった。
(2)  上記(1)の認定事実によれば、被告には、東行車線から路外の本件資材置場に右折進入するに当たり、西行車線の車両の有無及び動向を十分確認し、その進路を妨害しないようにして、交通安全を図るべき注意義務があるのに、これを怠り、西行車線を西進してきた原告車の進路を妨害した過失があるといえる。特に、 地点のときに、四八・〇m右前方である ’、地点まで見通すことが可能であったのに、②地点で西行車線を確認したのみで、その後は、③地点に至るまで西行車線上の原告車に気付かなかったのであるから、被告の上記注意義務違反の程度は大きいといえる(なお、被告には右折合図の開始が遅れた問題点もあるが、原告は、被告車を発見でき、実際に発見した地点〔 ’地点付近〕において、既に右折を開始している被告車を見たのであるから、本件事故の発生についての過失割合を考慮する上で、被告の合図遅れは殊更重視しない。)。
他方、原告についても、西行車線を西進するに当たり、最高速度を遵守して、交通安全を図るべき注意義務があるのに、これを怠り、最高速度を一五m以上上回る速度で漫然と走行してきた過失があるといえる(なお、原告は、被告車が右折を開始した直後にこれに気付いて制動措置を取っており、被告車がいわゆる既右折の状態にあったとはいえない。)。
そして、双方の過失の態様及び程度、本件道路の状況、本件事故態様など本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、本件事故の発生についての過失割合は、原告一〇%に対し、被告九〇%と認めるのが相当である。
二  争点(2)(原告の後遺障害の内容及び程度)について
(1)  前提事実(4)及び(5)の事実に証拠(枝番号を含む。甲三、五、七、九、一一~二〇、三六、三九、乙一~五、一〇、原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。上記証拠中、下記認定に反する部分は採用しない。
ア 原告は、平成二一年七月二日の本件事故発生後、警察官による実況見分に立ち会った後、a病院を受診して治療を受けた。原告は、本件事故時に身体の右側を路面に擦りつけるかたちで転倒しており、右側半身中心に打撲、擦過創あり、頚部痛あり、意識障害なし、嘔気なし、四肢腱反射正常、右肩から前腕外側にかけて腫脹あり、右膝内側に腫脹ありなどの身体的所見が見られた。そして、包装材で右腕を巻かれて包帯で固定する処置を受け、安静を指示された。原告は、上記の固定が外され、平成二一年七月一三日からリハビリを開始したが、右肩に痛みなどがあることに気付き、翌一四日に担当医師にその旨報告した。
原告は、a病院で通院加療を受けていたが、平成二一年八月二九日、年中行事としているプレジャーボートに乗った際、短時間、船のハンドル操作をしたところ、その後、右肩痛が悪化し、挙上障害が認められ、a病院の担当医師から、精査のため、b整形外科を紹介された。
イ 原告は、b整形外科において右肩腱板断裂の疑いと診断され、さらにc病院を紹介された。そして、平成二一年九月一〇日からc病院へ通院し、右肩可動域は屈曲一〇〇度、外転九〇度で疼痛があり、ドロップアームサイン(下垂手徴候)が陽性であり、右肩MRI検査を経て、右肩腱板断裂の診断を受け、同月二四日、観血的加療が必要であればその実施を依頼するため、肩関節の治療歴を豊富に有するd病院を紹介された。
なお、原告は、c病院において、本件事故後、頭の検査をしていないため不安を訴え、同年一〇月、頭部MRI検査及び頚動脈エコー検査を受けたところ、脳梗塞、頚動脈狭窄症の診断を受け、投薬治療を受けたが、同月二九日、本人の希望によりg脳神経外科への紹介となった。
ウ 原告は、平成二一年九月二五日、d病院を受診し、右肩可動域(自動)屈曲六〇度、外転五〇度、棘上筋腱テスト陽性であり、右肩MRI検査を経て、右肩腱板断裂、右肩関節拘縮の診断を受け、拘縮があるため、しばらくc病院で可動域訓練をするよう指示された。そして、平成二二年一月六日までの約三か月間、c病院で理学療法を受けた。
エ 原告は、平成二二年一月八日、d病院を再受診し、右肩可動域(自動)屈曲一〇五度、外転七五度、棘上筋腱テスト陽性であり、手術を受けることになった。そして、同月一九日〔同日の両肩可動域(他動)屈曲右一一〇度/左一四五度、外転右八〇度/左一三〇度、内転右〇度/左〇度。乙四の一・一〇八頁〕から入院し、同月二一日に右肩関節形成術を受け、同月二五日から右肩のリハビリを開始し、同年三月八日に退院した。手術後退院までの経過は順調であり(乙四の二)、退院直後の平成二二年三月一〇日は、結帯方向の制限が残存し、挙上筋力低下、可動域訓練後は挙上困難という状態だったが(乙四の一・三二頁)、その後、通院してリハビリを受け、同年四月二六日〔同日の両肩可動域(他動)屈曲右一一〇度/左一四〇度、外転右一一〇度/左一二五度。乙四の一・六四頁〕には、担当医師が、右肩可動域は改善しており、今後、結帯以外の可動域及び筋力低下も改善するとの見込みを示し(乙四の一・六三、六四頁)、手術後六か月以降は、結帯方向の制限と後方の硬さは残存しているものの、自動挙上は良好であり、筋力も徐々に改善する傾向にあった(乙四の一・六七頁以降)。
なお、原告は、d病院退院後の平成二二年四月一三日から同年一二月一四日までの間、右上肢のむくみや痛みを訴えて、e接骨院にも通い、施術を受けているが、挙上障害があるとの訴えは見られなかった(乙五)。
原告は、d病院において、右肩腱板断裂につき、右肩の結帯動作、水平内転して制限を認めるとの自覚症状を残して平成二三年一月二四日に症状固定したとの診断を受けた。両肩可動域の計測結果は、他動で、屈曲右一二五度/左一五〇度、外転右一一〇度/左一三〇度、内転右〇度/左〇度であった(甲一四)。
オ 原告は、平成二三年二月二一日、d病院に電話し、後遺障害が認められなかったと告げ、後日、再受診したが、担当医師から可動域については訂正できないとされた(乙四の一・七一頁)。
カ 原告は、平成二二年一月六日以来通院していなかったc病院を受診し、同病院において、右肩腱板断裂につき、右肩痛及び可動域制限の自覚症状を残して平成二三年四月二八日に症状固定したとの診断を受けた。両肩可動域の計測結果は、他動で、屈曲右一四〇度/左一八〇度、外転右九〇度/左一八〇度、内転右〇度/左〇度であった(甲一三)。
キ 原告は、平成二四年五月二一日、原告代理人弁護士とともに、d病院を再受診し、左肩の屈曲、外転の可動域はもっと大きいのではないかと質問し、担当医師から、肩甲上腕関節の可動域を測定しているのでみかけの可動域よりは小さい値が出る旨の説明を受けた。原告は、この日、再度、両肩可動域の計測を受け、その結果は、他動で、屈曲右一二〇度/左一四〇度、外転右九五度/左一三〇度、内転右〇度/左〇度であった(乙四の一・一〇九、一一一頁)。
ク d病院の担当医師は、原告代理人弁護士の申請に基づく弁護士法二三条の二に基づく照会に対し、平成二四年六月八日、次の内容を含む回答をした。
(ア) 平成二三年一月二四日測定の関節可動域は、脊柱の代償運動(注記)が起こらないようにして計測した肩複合体としての可動域である。したがって、肩甲骨や鎖骨の動きを含む。
注記:肩の関節可動域を計測する時に起こる脊柱の代償運動とは、後屈(伸展)、前屈(屈曲)、左右への側屈等を指す。例えば肩の屈曲(前方挙上)可動域を測定する際、脊柱で三〇度の後屈が起これば、一五〇度しか屈曲できない人でも見かけ上、一八〇度の屈曲が可能となる。
(イ) 平成二三年一月二四日測定の屈曲の可動域が一五〇度であり、通常、健側の参考値が一八〇度とされているのと比べて測定値が小さいが、計測したのは肩複合体としての可動域であり、脊柱の代償運動を阻止して肩の屈曲可動域を測定した場合、正常者においても一八〇度に満たないことは度々見受けられる。
(ウ) d病院における肩関節可動域の測定は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会の測定要領を基準に、脊柱の代償運動が極力起こらないようにするために、測定肢位に工夫(注記)を行った方法で計測している。
注記:①外転(側方挙上)を計測する時の工夫 測定肢位は仰臥位で、予め反対側の上肢を挙上しておくことで、計測する側の肩を外転した時に起こる脊柱の側屈を打ち消す。脊柱に側屈の代償運動が起こっていないことを確認して計測。②屈曲(前方挙上)を計測する時の工夫 測定肢位は計測する方の肩を上にした側臥位で、予め脊柱を軽く前屈することで、肩を屈曲した時に起こる脊柱の後屈を打ち消す。脊柱に後屈の代償運動が起こっていないことを確認して計測。③伸展(後方挙上)を計測する時の工夫 測定肢位は計測する方の肩を上にした側臥位で、予め脊柱を軽く後屈することで、肩を伸展した時に起こる脊柱の前屈を打ち消す。脊柱に前屈の代償運動が起こっていないことを確認して計測。④内外旋については、脊柱の代償運動と肩甲骨の動きを止めて計測。
(2)  原告には、本件事故の受傷により、右上肢の色素沈着(醜状障害)が残存し、これは一四級四号に該当する(争いなし)。
原告は、他に、右肩腱板断裂後の右肩関節の可動域制限が残存しており、その程度については、画一的な基準によって公平中立に後遺障害の等級認定がなされるべきであるから、「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠していないd病院の測定値によるのではなく、上記測定法に準拠しているc病院の測定値によるべきであり、それによれば右肩関節の外転・内転の可動域が健側の二分の一以下に制限されているから、一〇級一〇号に該当する旨主張する。
しかし、上記認定事実によれば、①d病院における原告の右肩腱板断裂の手術後の症状経過は良好であり、右肩関節の可動域制限は経時的に改善していること、原告が手術後に通院した接骨院でも挙上障害の訴えは見られなかったこと、②確かに、d病院の測定方法は「関節可動域表示ならびに測定法」に忠実に従っているものではないが、肩関節の治療を熟知している同病院担当医師の説明によれば、あくまでも上記測定法を基準に、脊柱の代償運動が極力起こらないようにするための工夫を行っているとのことであり、より厳密かつ丁寧に肩関節の計測を行っているものと評価できること、③実際、d病院での計測方法によれば、原告の左肩(健側)の外転の可動域(他動)は手術前後とも一三〇~一二五度でほぼ一貫しており、「関節可動域表示ならびに測定法」の参考可動域一八〇度より小さいものの、脊柱の代償運動を阻止して肩の可動域を測定した場合、正常者においても一八〇度に満たないことは度々見受けられるとの説明は十分了解可能であるといえること、④他方、右肩の外転の可動域(他動)について、d病院の手術前は八〇度だったものが、症状固定時には一一〇度まで改善したものの、その後、原告がc病院で受けた計測値は、左肩(健側)が一八〇度であるのに対して、右肩は九〇度、平成二四年のd病院での再度の計測値も右肩は九五度と、いずれもd病院の症状固定時の計測値一一〇度よりも悪化しており、その理由は明らかではないことなどが認められる。
これらの事情を総合考慮すれば、原告の肩関節可動域については、d病院の症状固定時の測定値をもって相当と認められ、右肩の外転・内転が一一〇度・〇度であり、健側(左肩)の外転・内転が一三〇度・〇度であるから、右肩関節の外転・内転の可動域が健側の四分の三以下に制限されていないものとなっており(110度÷130度≒0.85)、原告には、後遺障害の等級認定基準に至らない、軽度の右肩関節の可動域制限が残存しているものと認められる。
三  争点(3)(原告の損害)について
前記二の認定・判断に基づき、原告の損害についての当裁判所の判断は、次のとおりであり、これに反する当事者の主張はいずれも採用できない。
(1)  治療費 一七四万六七八八円
ア a病院 二〇万七四一七円
証拠(甲四の一~三)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故による原告の受傷に対するa病院での治療につき、上記の治療費を要したことが認められ、これは相当因果関係のある損害といえる。
イ b整形外科 二万三五六一円
証拠(甲六)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故による原告の受傷に対するb整形外科での治療につき、上記の治療費を要したことが認められ、これは相当因果関係のある損害といえる。
ウ c病院 三一万二一八〇円
証拠(甲八、乙三・九頁)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故による原告の受傷に対するc病院での治療につき、私病である脳梗塞の薬代三万二六四〇円(甲八・二頁、診療内容内訳、番号二一の薬代合計一六三二点×二〇円)を控除した上記の治療費を要したことが認められ、これは相当因果関係のある損害といえる。なお、原告は、自動二輪車で横転するという本件事故により、a病院でも頭部打撲の診断がなされており、頭部の検査に要した費用も相当因果関係のある損害といえる。
エ d病院 一〇二万一二三〇円
証拠(甲一〇の一~五)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故による原告の受傷に対するd病院での治療につき、上記の治療費を要したことが認められ、これは相当因果関係のある損害といえる。
オ e接骨院 一八万二四〇〇円
証拠(甲一一の一~九)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故による原告の受傷に対するe接骨院での施術につき、上記の施術料を要したことが認められ、これは相当因果関係のある損害といえる。
(2)  文書料 二万三九八〇円
証拠(甲二一、二二、二六)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故による原告の受傷についての診断書料及び弁護士会照会費用として、上記の文書料を要したことが認められ、これは相当因果関係のある損害といえる。
(3)  装具費 四二五〇円
証拠(甲二六、乙四の一・二七頁)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故による原告の受傷に対するd病院での装具費(ヘッドギア代)として、上記の費用を要したことが認められ、これは相当因果関係のある損害といえる。
(4)  入院雑費 七万三五〇〇円
原告は、本件事故による右肩腱板断裂の治療のためにd病院に四九日間の入院を要したもので、入院雑費として一日当たり一五〇〇円を認めるのが相当である。
一五〇〇円×四九日分=七万三五〇〇円
(5)  通院交通費 二一万六九六二円
ア a病院 一万三二〇〇円
原告は、a病院(片道二〇km、弁論の全趣旨)に二二日間の通院を要したもので、ガソリン代として一km当たり一五円を認めるのが相当である。
片道二〇km×二二日×一五円×二=一万三二〇〇円
イ b整形外科 一〇八〇円
原告は、b整形外科(片道一八km、弁論の全趣旨)に二日間の通院を要したもので、ガソリン代として一km当たり一五円を認めるのが相当である。
片道一八km×二日×一五円×二=一〇八〇円
ウ c病院 二九七〇円
原告は、c病院(片道三km、弁論の全趣旨)に三三日間の通院を要したもので、ガソリン代として一km当たり一五円を認めるのが相当である。
片道三km×三三日×一五円×二=二九七〇円
エ d病院 一九万五五〇〇円
原告は、d病院(片道六五km、弁論の全趣旨)に三四日間の通院を要したもので、ガソリン代として一km当たり一五円、高速道路料金として片道一九〇〇円(弁論の全趣旨)を認めるのが相当である。
片道65km×34日×15円×2+片道1900円×34日×2=19万5500円
オ e接骨院 四二一二円
原告は、e接骨院(片道二・六km、弁論の全趣旨)に五四日間の通院を要したもので、ガソリン代として一km当たり一五円を認めるのが相当である。
片道二・六km×五四日×一五円×二=四二一二円
(6)  休業損害 二七八万六七四二円
ア 基礎収入について
証拠(枝番号を含む。甲二三、二七~三三、三九、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、①原告は、平成三年ころから運送業を営む有限会社に勤務し、平成一二年ころから同社の雇われ社長となり、平成一七年六月時点(四二歳)の月給は四五万円(年収にすると五四〇万円となる。)であったこと、②原告は、上記会社を退職し、平成一七年一〇月三日、自ら代表取締役となって運送業とアルミ製品の加工仕上げ等を営む本件会社を設立し、同社は資本金三〇〇万円で、工場を賃借し、正社員が一〇名、パート従業員が二五名程度稼働していること、③役員は、原告の他に一五歳若い取締役一名(以下「本件取締役」という。)がおり、原告は、営業や各種取引の金額決裁を行い、運送業の現場仕事も行うなどして業務全般を取り仕切り、本件取締役も現場仕事を行うほか営業も行うが、最終決定権は原告にあること、④ⅰ本件会社の第二期(平成一八年一〇月一日~平成一九年九月三〇日)の売上高は一億二八四〇万円余り、当期純利益は一一二八万円余り、平成一九年分の原告の報酬は七六九万二〇〇〇円であったこと、ⅱ本件会社の第三期(平成一九年一〇月一日~平成二〇年九月三〇日)の売上高は八九六八万円余り、当期純損失は四一一万円余り、平成二〇年分の原告の報酬は一三一二万円、本件取締役の報酬は二七二万円であったこと、ⅲ本件会社の第四期(平成二〇年一〇月一日~平成二一年九月三〇日、同年七月二日に本件事故発生)の売上高は五二三六万円余り、当期純損失は一二五四万円余り、平成二一年分の原告の報酬は六三六万円、本件取締役の報酬は三三〇万円であったこと、原告によると、本件会社の業績が悪いと原告の報酬は下がるが、本件取締役の報酬が下がることはないことなどが認められる。
これらの事情に照らすと、本件会社の業績及び原告の報酬は年度によって変動が大きく、本件取締役の報酬はほぼ全額が労務の対価であることが推認される反面、原告の報酬全額が労務の対価であるとは直ちに認められず、原告の基礎収入としては、平成二一年(本件事故当時)賃金センサス企業規模計・学歴計・年齢別四五~四九歳・男性労働者平均賃金六六四万八三〇〇円、日額にして一万八二一四円(664万8300円÷365日=1万8214円)と認めるのが相当である。
イ 休業期間等について
前提事実(4)の事実、証拠(甲三九、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故のため、①本件事故当日の平成二一年七月二日から同月二〇日までの一九日間、②同月二一日以降、a病院、b整形外科、c病院及びe接骨院に通院する際は半日、d病院に通院する際は終日、③d病院に入院中の平成二二年一月一九日から同年三月八日までの四九日間は、いずれも休業を余儀なくされたことが認められる。
ウ したがって、原告の休業損害を算定すると、次のとおりとなる。
①1万8214円×19日+②1万8214円×〔(22-9日)+2日+33日+54日〕÷2+1万8214円×34日+③1万8214円×49日=278万6742円
(7)  後遺障害逸失利益 三七二万六八九五円
ア 労働能力喪失率及び労働能力喪失期間について
原告の後遺障害のうち、右上肢の色素沈着(醜状障害)が労働能力の喪失をもたらすものとは認められない。
しかし、原告の右肩については、後遺障害の等級認定基準には至らないものの、軽度の可動域制限(110度÷130度≒0.85)が残存しており、その回復の見込みはないとされていること(甲一四)、原告は、本件事故前に比べ、重い物が持てなくなり、パソコン操作や運転操作をするに当たって右肩が異常に凝るなどして、仕事に支障が出ていること(原告本人)などが認められ、これらの事情に照らすと、原告の労働能力喪失率は五%、労働能力喪失期間は症状固定の四七歳から六七歳までと認めるのが相当である。
イ 基礎収入について
上記(6)アのとおり、原告の報酬全額が労務の対価であるとは直ちに認められず、原告の基礎収入としては、①症状固定の四七歳から六〇歳までの一三年間は平成二三年(症状固定時)賃金センサス企業規模計・学歴計・年齢別四五~四九歳・男性労働者平均賃金六六二万五五〇〇円、②その後五年間は同賃金センサス六〇~六四歳平均賃金四一三万四四〇〇円、③その後二年間は同賃金センサス六五~六九歳平均賃金三六三万七八〇〇円と認めるのが相当である。
ウ したがって、原告の後遺障害逸失利益をライプニッツ方式により年五分の中間利息を控除して算定すると、次のとおりとなる。
①662万5500円×5%×9.393(13年に対応するライプニッツ係数)+②413万4400円×5%×〔11.689(18年に対応するライプニッツ係数)-9.393〕+③363万7800円×5%×〔12.462(20年に対応するライプニッツ係数)-11.689〕=372万6895円
(8)  慰謝料
ア 入通院慰謝料 二三〇万円
原告の入通院期間、実通院日数、原告の受傷内容及び程度などに照らし、入通院慰謝料として、二三〇万円を認めるのが相当である。
イ 後遺障害慰謝料 一一〇万円
原告の後遺障害の内容及び程度、前記のとおり後遺障害等級としては一四級に相当すると判断されることなどに照らし、後遺障害慰謝料として、一一〇万円を認めるのが相当である。
(9)  (1)ないし(8)の合計額 一一九七万九一一七円
(10)  過失相殺減額
前記一(2)のとおり、本件事故の発生につき、原告には一〇%の過失があるから、上記(9)の損害額からこれに相応する金額を控除すると、一〇七八万一二〇五円(1197万9117円×〔1-0.1〕)となる。
(11)  素因減額
被告は、原告が、本件事故後に、①プレジャーボートを運転し、右肩に負担をかけた結果、右肩腱板断裂が悪化し、挙上障害にも影響を及ぼした、②脳梗塞及び頸動脈狭窄症を発症して治療を受けており、そのため本件事故による治療が長引いたり、d病院の手術時期や薬剤等に影響があった可能性があるとして素因減額の主張をするが、いずれも抽象的な可能性を指摘するに過ぎず、原告の損害賠償額を定めるに当たり斟酌すべき特段の事情の立証があるとまではいえない。
したがって、本件において、素因減額を考慮するのは相当ではない。
(12)  損害の填補(残損害額)
原告は、被告側から一七九万〇七二八円、自賠責保険から七五万円(合計二五四万〇七二八円)の支払を受けているから(争いなし)、残損害額は、八二四万〇四七七円(一〇七八万一二〇五円-二五四万〇七二八円)となる。
(13)  弁護士費用
本件事案の内容、審理経過及び本件認容額に照らすと、本件事故と相当因果関係があると認めるべき弁護士費用の額は、八二万円が相当である。
(14)  (12)及び(13)の合計額 九〇六万〇四七七円
(15)  確定遅延損害金
原告が受領した自賠責保険金相当額七五万円について、本件事故日から自賠責保険金支払日までの民法所定の年五分の割合による遅延損害金が七万八五九五円発生している(争いなし)。
四  以上によれば、原告の請求は、被告に対し、九一三万九〇七二円(前記三(14)及び(15)の合計額)及びうち九〇六万〇四七七円(前記三(14)の金額)に対する平成二一年七月二日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判官 田中智子)

 

別紙〈省略〉

 

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