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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(3)平成30年11月 6日 東京地裁 平29(ワ)18420号 詐害行為取消等請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(3)平成30年11月 6日 東京地裁 平29(ワ)18420号 詐害行為取消等請求事件

裁判年月日  平成30年11月 6日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)18420号
事件名  詐害行為取消等請求事件
文献番号  2018WLJPCA11068007

裁判年月日  平成30年11月 6日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)18420号
事件名  詐害行為取消等請求事件
文献番号  2018WLJPCA11068007

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 アビリオ債権回収株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 曽我部豪
東京都台東区〈以下省略〉
被告 株式会社リコオテクノ
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 中村博明

 

 

主文

1  訴外利康商事株式会社が平成28年5月26日に被告との間で行った別紙記載の事業譲渡契約を取り消す。
2  被告は,原告に対し,金1億円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は,被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
主文と同旨
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,原告が有する貸付金返還請求権の債務者である訴外利康商事株式会社と被告との間で行われた事業譲渡契約が原告に対する詐害行為に当たると主張して,民法424条1項に基づき,同契約の取消しを求めるとともに,価格賠償金1億円及び本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(当事者間に争いがないか各末尾掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)  当事者等
ア 原告は,債権管理回収等を目的とする株式会社である。
イ 被告は,医療理化学分析機械・器具及び合成趣旨製品の製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である。
ウ 訴外利康商事株式会社(以下「利康商事」という。)は,医療理化学分析機械・器具及び合成樹脂製品の製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である。
(2)  原告の利康商事に対する債権1
ア 訴外株式会社富士銀行(以下「富士銀行」という。)は,昭和44年7月9日,利康商事との間で,銀行取引約定書を取り交わして金融取引を開始し,その後,合併により富士銀行の契約上の地位を承継した株式会社みずほ銀行(以下「みずほ銀行」という。)は,平成22年12月24日,返済期日を平成23年1月31日として,手形貸付の方法により,利康商事に対し,3億6119万円を貸し付けた(甲1ないし甲3,以下,この貸付により生じた債権を「本件貸付債権1」という。)。
イ 利康商事は,本件貸付債権1の支払期限である平成23年1月31日までに,みずほ銀行に対して本件貸付債権1にかかる債務の弁済を怠ったため,平成23年1月31日の経過をもって,支払期限は経過した。
ウ みずほ銀行は,平成28年6月28日,本件貸付債権(当時の残元金の額は,2億7162万6114円であった。)を原告に債権譲渡し,同月29日,同月28日付けの内容証明郵便により,利康商事に対し,同債権譲渡を通知した(甲4の1及び2)。
(3)  原告の利康商事に対する債権2
ア 株式会社八千代銀行(以下「八千代銀行」という。)は,平成20年7月3日,以下の内容で,3000万円を貸し付けた(甲5,以下「本件貸付債権2」という。)。
利率を3.325パーセント
最終弁済期 平成22年6月30日
返済方法 平成20年7月以降最終弁済期まで,毎月末日限り125万円を支払う。
遅延損害金利率 年18パーセント(年365日の日割計算)
イ 利康商事は,本件貸付債権2の支払期限である平成26年12月31日までに,八千代銀行に対して,本件貸付債権2にかかる債務の返済を怠った。そのため,利康商事は,同日の経過をもって,期限の利益を喪失した。
ウ 八千代銀行は,平成28年3月28日,本件貸付債権2(当時の残元金の額は,1150万5064円であった。)を原告に債権譲渡し,同年6月6日,同月3日付けの内容証明郵便により,利康商事に対し,同債権譲渡を通知した(甲7の1及び2)
(4)  利康商事は,前記(3)ウの債権譲渡がされた平成28年3月28日以降,原告に対して,一切の弁済を行っていない。
(5)  事業譲渡
利康商事は,平成28年5月26日,被告との間で,利康商事が営んでいた「医療機器・理化学機器の輸入販売事業のうち,医薬品医療機器等法上の許認可に係る事業一切」(以下「本件事業」という。)を譲渡代金1億0500万円で被告に譲渡するとの事業譲渡契約を締結した(甲8,以下「本件事業譲渡契約」という。)。
3  争点及び当事者の主張
本件における主要な争点は,①本件事業譲渡契約が詐害行為に当たるか,②被告が詐害行為であることについて悪意であったか,③価格賠償請求が認められるかどうか,であり,これらの争点についての当事者の主張の要旨は次のとおりである。
(1)  争点①(本件事業譲渡契約が詐害行為に当たるか。)
(原告の主張)
本件事業譲渡契約に基づく代金の支払いはされておらず,無償で行われている。
仮に被告が主張する金員の交付が行われていたとしても,これは,本件事業譲渡契約締結前にされているのであるから,この契約に基づく代金の支払ではない。また,当該金員の交付により,被告が利康商事に対して立替金返還請求権などを有するに至ったとしても,一般債権である上,利康商事の事業を承継するために設立され,本店所在地も同一という被告の成り立ちからすると,被告は,当然利康商事の経営状況等を熟知していたはずであるから,本件事業譲渡契約を根拠として,代物弁済又は相殺合意をすることは優先的な債権の回収を図ることになるから,実質的な偏波弁済にあたり,詐害性を満たす。
利康商事は,本件事業譲渡契約締結時から現在まで,原告に対し,本件貸付債権1及び同2に対する返済を全く行っておらず,利康商事に資力がないことは明らかである。
以上のとおり,本件事業譲渡は実質無償で行われ,これにより利康商事は無資力になっているから,詐害性・詐害意思は明らかである。
(被告の主張)
利康商事は,構造的な固定経費の増加に悩まされ,営業上の赤字を抜本的に見直すための方策として,別会社に本件事業を譲渡することにより,固定経費の大幅削減と知名度や得意先を生かして本件事業に注力することとした。そのような経緯で,被告が設立され,本件事業譲渡契約が締結された。
被告は,利康商事に対し,平成28年3月9日から同年7月8日まで合計17回の分割で代金1億0571万7820円を支払っており,無償行為ではない。また,被告が本件事業譲渡契約の前に利康商事に支払った金員は,利康商事の運転資金をまかなうためのものであり,これがないと本件事業の価値を維持できなかった。本件事業譲渡契約はその清算も兼ねるものであるから実質偏波弁済に当たることもない。
本件事業の価値についてみても,その資産である売掛金債権,商品在庫などの積極財産の合計が4985万8946円であるのに対し,買掛金債務等の消極財産の合計が1億0107万5275円であって,トータルでみるとマイナスであり,ノウハウやのれんなどを考慮しても1億円を超える価値はない。
利康商事が無資力となったという事実は争う。
(2)  争点②(被告が詐害行為であることについて悪意であったか。)
(被告の主張)
本件事業譲渡契約は,本件事業による会社の生き残りをかけたやむを得ない方策であって,被告に詐害意思はなく,詐害行為であるとの認識もなかった。
(原告の主張)
被告は,利康商事と通謀の上,本件事業譲渡契約を締結したと考えられ,善意であったとは考えられない。
(3)  争点③(価格賠償請求が認められるか。)
(原告の主張)
本件事業は一体として被告に移転しており,もとに戻すことは困難であるから,現物の返還に代えて事業価値に相当する価格の賠償を求めることができる。
本件譲渡代金の金額からすれば,本件事業の価値は1億円を下ることはない。
(被告の主張)
原告の主張は争う。本件事業の価値は1億円もない。
第3  当裁判所の判断
1  事実関係
証拠(乙ニ22,証人C及び各末尾掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)  本件事業譲渡契約の内容
利康商事と被告は,平成28年5月26日付けで,以下の内容を含む事業譲渡契約書を作成した(乙ニ1)。
ア 指定事業の譲渡
利康商事と被告は,利康商事が被告に対して,「利康商事が行う医療機器・理化学機器の輸入販売事業のうち,医薬品医療機器等法上の許認可に係る事業の一切」を譲渡することに合意した。なお,本契約締結時点において,「利康商事が行う医療機器・理化学機器の輸入販売事業のうち,医薬品医療機器等法上の許認可に係る事業の一切」とは,以下の事項及びそれらに関係する事業の全てを含むものとし,利康商事が行う「医薬品・医療機器等法上の許認可に係らない事業」は除くものとする。
譲渡対象事項:
(ア) 利康商事が日本における代理店としての業務を行っている海外メーカーの代理店及び保守点検サービス提供者としての地位と業務の一切
(イ) 利康商事が日本国内に構築した全ての販売店に対する取扱医療機器・理化学機器の卸業者及び保守点検サービス提供者としての地位と業務の一切
(ウ) 被告が選択・指名する「利康商事が雇用している前記(ア),同(イ)を行うための各種許認可申請等に必要な有資格者・人員」等,及び一切のノウハウ等(但し,当該有資格者・人員の同意を条件とする。)
(エ) 利康商事が保有する前記(ア),同(イ)を行うために必要な一切の機材,施設,設備等
(オ) 利康商事が保有し維持する一切の取引先,顧客,潜在的顧客等についての情報とそれらに対する製品供給者としての地位と業務
(カ) 利康商事が保有する当該事業に係る全ての在庫商品
(キ) その他,前各項に附帯関連する一切の事項
イ 譲渡の時期
本契約によって合意された事業譲渡の時期は,被告の医薬品医療機器等法上の各種の許認可の取得の時期により,利康商事と被告の協議の上別途定めるときとする。
ウ 売掛金・買掛金
(ア) 被告は,利康商事から,前記イに定める事業譲渡時において,利康商事が有する全ての売掛金を譲り受けるものとする。
(イ) 被告は,利康商事から,前記イに定める事業譲渡時において,利康商事が有する全ての買掛金を譲り受けるものとする。
エ 利康商事に残存する事業
被告は,本件事業譲渡の結果,利康商事に残存し利康商事が引き続き行う事業及び利康商事が将来新たに行う事業について利康商事から要請があった際には,利康商事,被告間で別途協議の上定める対価等諸条件の下で,利康商事の事業活動に協力するものとする。
オ 譲渡の対価
被告は,本件事業譲渡の対価として,利康商事に対して,総額金1億0500万円を支払うこととする。但し,その支払方法,支払条件等の詳細については,利康商事と被告間で別途協議の上決定することとする。
(2)  利康商事は,平成28年1月15日ころ,被告に対し,概要次の内容が記載された同日付けの申入書を交付した(乙ニ19)。
協議,検討を重ねている本件事業譲渡契約について,利康商事としては,自身の生き残りのためにも,当該事業の継続のためにも是非実行していただきたい。ついては,本件事業譲渡完了までの間,利康商事と当該事業存続のために,後に事業譲渡代金に振り替えることを前提に,利康商事の固定費・仕入代金他の建てかえ等について協力を求める。利康商事代表者であるD所有の利康商事の株式97000株を協力者に譲渡する意向もある。
(3)  被告から利康商事への送金の経緯
被告は,利康商事に対し,以下のとおりの日時に各送金を行い,その合計は1億0571万7820円となった。
ア 平成28年3月9日 591万2019円(乙ニ2)
イ 同年3月10日 635万円(乙ニ3)
ウ 同年3月11日 54万9719円(乙ニ4)
エ 同年3月16日 705万9667円(乙ニ5)
オ 同年3月29日 907万9200円(乙ニ6)
カ 同年3月30日 964万1554円(乙ニ7)
キ 同年4月1日 861万4787円(乙ニ8)
ク 同年4月1日 49万2700円(乙ニ9の2)
ケ 同年4月15日 829万6767円(乙ニ10)
コ 同年4月15日 432万3580円(乙ニ11)
サ 同年5月2日 2000万円(乙ニ12)
シ 同年5月6日 694万7802円(乙ニ13)
ス 同年5月6日 163万4700円(乙ニ14の2)
セ 同年5月24日 329万2344円(乙ニ15)
ソ 同年6月2日 880万6706円(乙ニ16)
タ 同年6月8日 11万2063円(乙ニ17)
チ 同年7月8日 460万4212円(乙ニ18)
(4)  利康商事と被告は,平成28年5月26日ころ,本件事業譲渡契約について,以下の内容が記載された同日付けの合意書を作成した(乙ニ20)。
前記(3)のアからセまで(ただし,同クとスを除く。)の被告から利康商事への立替金・貸付金等の被告の利康商事に対する債権(合計9006万7439円)を,前記(1)オの本件事業譲渡契約が定める譲渡の対価の一部として相殺する。
(5)  利康商事と被告は,平成28年5月31日ころ,本件事業譲渡契約について,以下の内容が記載された同日付けの合意書を作成した(乙ニ21)。
ア 利康商事は,利康商事が行った医薬品医療機器等法に基づく許認可等の取得・移行,登録の変更に係る書類等の作成について不備があったため,行政書士に委託する業務が大幅に増加し,行政書士業務委託料が当初想定額を大きく上回ったこと,及び許認可の取得・移行,登録の変更の期日が当初想定から遅延したことを認める。
イ 上記アに鑑み,以下に掲げる「せたがや行政法務事務所への支払(医薬品医療機器等法に基づく許認可の取得・移行等に係る法務費用の支払)」については,利康商事と被告の協議の結果,本件事業譲渡契約に定める原則に拘らず,利康商事が支払うこととし,被告による当該立替金を前記(1)オの本件事業譲渡契約が定める譲渡の対価の一部として相殺する。
ア 前記(3)のクの49万2700円
イ 前記同スの163万4700円
2  争点①(本件事業譲渡契約が詐害行為に当たるか。)について
(1)  本件事業譲渡契約に基づく代金の支払はされていないこと
前記第3,1(1)オのとおり,本件事業譲渡の代金は1億0500万円と定められていた。しかし,純粋に事業譲渡の対価としての金員が被告から利康商事に交付された事実はない(争いがない。)。
(2)  被告主張の相殺合意ないし代物弁済合意は代金の支払と評価できないこと
被告は,前記第3,1(4)及び(5)による,相殺合意ないし代物弁済合意により,本件事業譲渡契約に基づく代金の支払は履行されたことになる旨主張する。
しかし,証拠(乙ニ22,証人C),前記第3,1(2)の事実及び弁論の全趣旨によれば,前記同(3)の被告から利康商事に対する各送金は,本件事業譲渡契約とは直接関わりのない,利康商事の固定費・仕入代金等の支払に充てるためにされたものと認めることができ,被告による利康商事に対する貸し付けないし立替払いと評価すべきものといえる。
そうすると,被告主張の相殺合意ないし代物弁済の合意は,結局,本件事業を被告に移転することと引換に被告の利康商事に対する貸金債権又は立替金返還債権を消滅させるものに過ぎず,本件事業の価値に相当する被告の責任財産は補填されていない。
したがって,原告を含む利康商事の債権者との関係において本件事業譲渡の詐害性について見るとき,被告は,本件事業を対価の支払いをせずに本件事業を取得したと評価すべきといえる。
(3)  被告は,被告が本件事業譲渡契約の前に利康商事に支払った金員は,利康商事の運転資金をまかなうためのものであり,これがないと本件事業の価値を維持できなかった旨主張するが,そのような事情,目的があったとしても,本件事業の価値に見合う対価の支払いがされ,利康商事の責任財産の均衡が保たれたことはないのであるから,詐害性を否定する理由にはならない。
被告は,前記第2,2(1)(被告の主張)のとおり,他にも詐害行為にあたらない理由を主張し,証人Cをこれに沿う証言をしているが,上記(1)及び(2)の客観的事実に基づく認定,評価を覆すものとはいえない。
3  争点②(被告が詐害行為であることについて悪意であったか。)について
前記第3,2のとおり,本件事業譲渡契約については,当該契約及びその代金の支払状況を客観的に評価すれば詐害性が肯定される。被告は,詐害行為にあたることについて悪意ではなかったと主張する。しかし,証拠(乙ニ22,乙ニ25の1ないし5,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,利康商事の財務状況を詳細に調査した上で,本件事業譲渡契約を締結したこと及びその調査の過程で,利康商事においては決算上赤字であり,粉飾決算もされていたという状況を確認していたことを認めることができる。また,前記第2,1(4)のとおり,利康商事は,前記同(3)ウの債権譲渡がされた平成28年3月28日以降,原告に対して,一切の弁済を行っておらず,事実上支払停止に陥っていたといえる。さらに,被告と利康商事の本店所在地は同一であり(争いがない。),証拠(証人C)及び弁論の全趣旨によれば,被告は本件事業譲渡契約ための受け皿会社として設立され,本件事業譲渡契約締結後,利康商事の従業員が被告に移籍していること,利康商事の代表者の親族が被告の取締役に就任していることが認められ,これらの被告と利康商事間に認められる客観的一体性からすれば,本件事業譲渡契約締結の時点で,利康商事には本件事業以外にめぼしい財産は存在せず,被告はそのことを了知していたと推認することができる。
被告は,利康商事の事業のうち,本件事業以外のものについては事業価値が認められ,本件事業譲渡契約により利康商事は無資力になったとはいえない旨主張する。しかし,利康商事の事業のうち本件事業以外のものの事業価値について鑑定結果等の客観的証拠は提出されておらず,前記第2,1(3)イのとおり,利康商事は,本件貸付債権2について,平成26年12月31日の経過により,期限の利益を喪失し,前記同(4)のとおり,利康商事は,平成28年3月28日以降,原告に対して,一切の弁済を行っていないことからすれば,利康商事の本件事業以外の事業が収益を上げていたとは到底考えられず,事業価値の存在を肯定することはできないというべきである。
証人Cは,被告が悪意ではなかった旨の証言をしているが,上記客観的事実に基づく認定を覆すに足りないというべきである。
したがって,被告において,前記第3,1(2)の利康商事の申し入れに従い,被告の利康商事に対する貸金債権ないし立替金返還債権の弁済の事実上充当するために本件事業の譲渡を受けることは,原告を含む他の債権者の利益を害すると認識していたと合理的に認めることができ,被告は本件事業譲渡契約の詐害性について悪意であったと認めることができる。
4  争点③(価格賠償請求が認められるか。)について
証拠(乙ニ22,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件事業譲渡契約締結に際し,本件事業における管理医療のライセンスに対して約5000万円,利康商事の業歴に対し約5000万円,売掛金と買掛金の差額に約500万円を併せた価値があると評価していたと認められ,前記第2,1(5)のとおり,実際に本件事業譲渡契約における売買代金も1億0500万円と定められていること及びその後の本件事業の価値が下落したことの具体的な主張立証がされていないことからすれば,本件口頭弁論終結時においても,本件事業は,同額の価値を有していると認めることができる。
前記第3,1(1)アで認定の本件事業の内容及び弁論の全趣旨によれば,本件事業は,有機的に一体をなすものとして利康商事から被告に移転し,その後被告において一定期間この事業の運営がされていると認められ,前記第3,3で指摘したとおり事実上の支払い停止に陥っている利康商事において本件事業の現物返還を受けた後にこれを維持・継続できるとは考えにくいことから,本件事業の一体性を維持したまま被告から利康商事に対して現物返還を実現するのは不可能ないし著しく困難であると認めることができる。
第4  結語
以上の検討のとおり,原告の請求には理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部
(裁判官 早山眞一郎)

 

別紙
1 対象事業 訴外利康商事株式会社が行う医療機器・理化学機器の輸入販売事業のうち,医薬品医療機器等法上の許認可に係る事業の一切
2 譲渡代金 総額1億0500万円

 

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