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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(19)平成30年 3月 1日 さいたま地裁 平29(ワ)107号 損害賠償請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(19)平成30年 3月 1日 さいたま地裁 平29(ワ)107号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年 3月 1日  裁判所名  さいたま地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)107号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2018WLJPCA03016001

事案の概要
◇原告が、「必ず当たる競馬の情報を教える。」などと告げられてその旨誤信し、情報料として金員を支払ったいわゆる競馬情報詐欺の被害につき、情報料の振込先口座とされた合同会社の代表社員であった被告Y1、及び原告に対する欺罔行為の電話に使用された電話回線を貸与した通信機器のレンタルを業とする株式会社の当時の代表取締役であった被告Y2に対し、共同不法行為に基づく損害賠償請求として、振込金、振込手数料及び弁護士費用の合計221万9264円並びにこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案

裁判年月日  平成30年 3月 1日  裁判所名  さいたま地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)107号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2018WLJPCA03016001

埼玉県〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 福村武雄
同 山口翔一
同訴訟復代理人弁護士 宮野大翔
千葉県〈以下省略〉
被告 Y1
同訴訟代理人弁護士 村田純一
横浜市〈以下省略〉
被告 Y2

 

 

主文

1  被告Y1は,原告に対し,被告Y2と連帯して,97万8430円及びこれに対する平成29年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y2は,原告に対し,110万8430円(ただし,被告Y1と97万8430円の限度で連帯して)及びこれに対する平成29年1月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
5  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
被告らは,原告に対し,連帯して,221万9264円及びこれに対する被告Y1については平成29年1月31日から,被告Y2については同月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,「必ず当たる競馬の情報を教える。」などと告げられ,その旨誤信した原告が情報料として金員を支払ったいわゆる競馬情報詐欺の被害につき,原告が,情報料の振込先口座とされた合同会社の代表社員であった被告Y1(以下「被告Y1」という。)並びに原告に対する欺罔行為の電話に使用された電話回線を貸与した通信機器のレンタルを業とする株式会社の当時の代表取締役であった被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し,共同不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金(振込金,振込手数料及び弁護士費用の合計)221万9264円並びにこれに対する共同不法行為後である被告らに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(証拠により認定した事実には証拠番号を付す。)
(1)  当事者
ア 原告は,昭和15年○月○日生まれの男性である。
イ 訴外合同会社a(以下「a社」という。)は,平成27年6月12日に設立された合同会社であり,被告Y2は,同年7月頃,a社の代表社員であった者である。
ウ 被告Y2は,平成27年7月頃,分離前相被告株式会社b(以下「b社」という。)の代表取締役であった者である。
(2)  原告に対する欺罔行為及び原告による振込み
ア 原告は,平成27年7月頃,千葉に居住していると称するAから電話を受けた(この際に使用された電話番号は,「080-〈省略〉」であり,b社が貸し出した携帯電話回線の電話番号である。)。Aは,原告に対し,「お金は自分が払うからBに連絡して,当たり馬券の情報を聞いてほしい。」,「Bが教えてくれる当たり馬券の情報は絶対に当たる。」などと述べ,Bの連絡先として,「03-〈省略〉」の電話番号を告げた(この電話番号は,b社が貸し出したIP電話回線の電話番号である。以下,b社が貸し出した電話回線を「本件各電話回線」という。)。(甲2,3,38)
イ 原告は,その後,Bの連絡先に電話を架けたところ,Cと称する者が出て,原告に対し,情報料として130万円を支払うよう求めた。原告は,Bにその旨伝えたところ,Bから130万円を振り込んだ旨の連絡を受け,原告は,その旨をCに伝えた。(甲38)
ウ 原告は,平成27年8月頃,Aから電話を受けたところ,Aは,「Cが当たり馬券を教えるのにこんなに時間がかかるはずはない。」,「自分が原告の名前を使って電話してみる。」と述べるとともに,「俺はやくざもんだ。」などと述べた。さらに,原告は,Cから,「Aはやくざである。」,「130万円はもらっている。」,「情報を教えるには25万円足りない。」と告げられ,これをAに伝えたところ,Aから25万円を立て替えるよう依頼され,原告はやむなく手持ちの22万円を支払うこととした。(甲38)
エ 原告は,平成27年8月27日,分離前相被告D(以下「D」という。)名義の口座に,22万円を振り込んだ(甲4~7)。
オ 原告は,平成27年9月頃,自動車購入資金を稼ごうと考えて,Cに電話を架けたところ,Cから,馬券は必ず当たる,情報料として180万円が必要であると告げられた。
カ 原告は,平成27年9月24日,a社名義の口座に,64万9250円,49万8360円,64万9250円の合計179万6860円を振り込んだ(甲8~10)。
2  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  被告Y1の代表社員としての任務懈怠,故意又は過失の有無
(原告の主張)
いわゆる振り込め詐欺等の特殊詐欺事件において,他人名義の口座が悪用されるのは公知の事実である。また,犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯罪収益移転防止法」という。)28条2項によれば,他人になりすます目的を有する者に対する預金口座の通帳等の提供行為は犯罪行為であるところ,被告Y1は,a社と全く無関係な第三者であるE(以下,単に「E」という。)に対し,a社名義の預金口座の通帳等を交付している。Eがa社名義の口座の通帳等を所持し,同口座への入出金を管理することは,Eがa社又はその従業員になりすまして行うことに他ならないから,Eがなりすまし目的であったのは明らかであり,被告Y1には,違法な口座提供行為の故意が存在することが明らかである。
仮に,被告Y1に故意がないとしても,a社は,その事業遂行に当たり,犯罪行為その他の違法行為に加担してはならないとの注意義務を負っているところ,自己名義の口座を第三者に利用させること自体,上記のとおり,刑事罰の対象となる強い違法性を有する行為であるから,利用させた口座が詐欺行為に利用された場合には,不法行為に基づく損害賠償義務を負う。
仮に,被告Y1の行為が,犯罪収益移転防止法28条2項に該当しないとしても,被告Y1は,a社の代表社員として,その業務を適法かつ適正に遂行すべき立場にあるにもかかわらず(会社法593条1項,2項),a社において上記違法行為が組織的に行われていたのであり,被告Y1は,代表社員としての業務監督につき任務懈怠があり,かつ,任務懈怠に重大な過失があったことは明らかである。また,被告Y1は,a社名義で開設した口座全ての通帳等をEに交付しているところ,a社が行う事業について,全ての口座をEに預け,被告Y1自身が全く関知しないような業態自体,社会常識に照らしてあり得ないのであり,自己名義の預金口座を適切に管理すべき注意義務の懈怠という重大な過失があるのは明らかである。
なお,被告Y1の主張を前提としても,a社の目的に不動産に関する事業が挙げられていないこと,被告Y1が応募した求人には,会社の設立という何ら収益を生み出さないものを行うだけで20万円の報酬が得られるなどおよそ経済的合理性がなく,青色申告や消費税の納税義務などに関する虚偽の説明を含むものであって,不自然,不合理であるにもかかわらず,安易に手続を進めた結果,a社名義の預金口座が詐欺行為に利用されたのであるから,被告Y1に重大な過失又は任務懈怠があることは明らかである。
したがって,被告Y1は,原告の被った損害につき,民法709条又は会社法597条に基づく損害賠償責任を負う。
(被告Y1の主張)
被告Y1は,「○○」という求人サイトにおいて,時給2500円の在宅ワークというサイドビジネスの募集広告を見つけて興味を持ち,当該求人に応募したところ,株式会社c(以下「c社」という。)のEと名乗る人物から連絡があり,同人から,準備期間中は時給2500円であるが,準備完了後,月額報酬は1万円から100万円になる,相場より安価での不動産の購入,不動産会社側の金利や手数料を大幅に下げるスキームであり,被告Y1には,会社を設立し,その代表者となり,通常の取引に携わってもらう,会社設立費用はE側で負担するなどと説明したメールの送付を受け,さらに同人と面談した際には,ソーシャルメディアを利用した広告を行う会社を設立さえすれば被告Y1に金が入る,会社の設立費用はE側が負担するとの説明を受けた。被告Y1は,Eに指示され,会社の設立手続をし,開業届を提出したところ,Eから,a社の運営のため,同社名義の預金口座を複数開設する必要がある,具体的には,セミナーの運営等のために必要な入出金を行うために口座を作る必要があるが,金銭の管理はE側で行うなどと説明を受けたため,被告Y1は,平成27年7月から8月にかけて,a社名義の預金口座を開設し,当該口座の通帳及びキャッシュカードをEに交付した。その後,被告Y1は,現実に収入が得られるようになると思っていたところ,平成27年10月から11月にかけて,Eとの連絡が取りにくくなり,同月頃からは完全に連絡が取れなくなった。
被告Y1は,平成27年11月24日頃,愛知県内の弁護士から,a社の預金口座が詐欺事件に使用されたとして,損害賠償を求める旨の内容証明郵便を受領した。被告Y1は,直ちに地元の松戸警察署に相談し,担当刑事の助言を得て,a社の解散手続をし,同社名義の預金口座を解約した。
被告Y1は,a社の事業のために通帳等を使用させるという意図の下,同社のために活動していると認識していたEにa社名義の口座の通帳を交付したのであり,Eに対し,他人になりすまして通帳等を使用させるという故意はなかったから,被告Y1がEにa社名義の口座の通帳等を交付したことは,犯罪収益移転防止法28条2項には該当しない。
被告Y1は,被告Y1自身が設立したa社の運営のため,Eが金銭管理及び口座管理等を行うと信じて,同人に対し,a社名義の口座の通帳等を預けたものであり,上記求人サイトは社会的に広く周知されているものであるから,犯罪に関する求人広告がされていることを疑う理由はなく,Eが勤務しているとされたc社の本社にも何度か電話を架けたが同社を名乗る対応がされていたこと,Eは,会社設立に必要な資料を全て準備しており,法務局や税務署でも問題なく手続を行うことができたこと,Eは,被告Y1又はa社のために終始活動していたことからすれば,被告Y1が上記の認識を有したことについて過失はない。したがって,被告Y1の行為につき不法行為は成立せず,a社の業務監督上の任務懈怠や重大な過失もない。
(2)  被告Y2の任務懈怠の有無(本人確認義務を尽くしたか否か)
(原告の主張)
携帯電話や電話回線のレンタル業者は,貸し出した携帯電話や固定電話回線が振り込め詐欺等の詐欺行為の重要なツールとして利用される可能性があることは公知の事実であるから,貸出手続の際には,厳格な本人確認を行う注意義務を負う。b社が本件各電話回線を貸し出した際,本人確認のために使用したとされる運転免許証はいずれも偽造されたものであった。b社に残っている資料からすると,b社は,運転免許証の原本ではなく,写しを確認したことが強く疑われる。また,運転免許証が真正なものであるか否かは,券面事項等表示ソフトウェアやインターネットを利用すれば調査することが可能であるが,b社はこれらの手段も講じていないのであるから,b社がした本人確認は不十分なものであり,その結果,貸し出した電話が詐欺行為に利用された場合には,電話レンタル業者であるb社は,幇助による共同不法行為責任を負う。
被告Y2は,b社の代表取締役であったから,その業務を適法かつ適正に遂行する義務を負っているところ,被告Y2には,代表取締役としての業務監督について任務懈怠があり,かつ,重大な過失があったことは明らかであるから,被告Y2は,民法709条又は会社法429条1項により,原告に対し,損害を賠償する責任を負う。
(被告Y2の主張)
b社は,本件各電話回線の貸出手続の際,運転免許証の原本を確認したから本人確認義務を尽くしており,本件各電話回線が犯罪に利用されることを知りながら貸与したことはない。来店者と運転免許証の顔写真が一致している場合,運転免許証の原本が偽造されていることを想定するのは困難である。
(3)  過失相殺の適否
(被告らの主張)
原告は,「当たり馬券の情報は必ず当たる。」等の言葉を信用した結果,本件各振込をしたものであるが,本件各振込は,賭博目的,いわば「楽して儲ける」という目的の下で行われたものであり,いわゆる振込詐欺の事案とは決定的に異なる。しかも,本件では,本日中に振り込まなければ家族が会社等を首になる等の切迫した状況はなく,また一般人の常識からしても,確実に当たる馬券の情報が存在するはずがなく,その内容は一見して虚偽,不合理なものと理解できるものであるから,原告が,警察や弁護士,友人,家族等に全く相談することもなく,漫然と上記発言を信用して本件各振込を行ったことの不注意の程度は著しい。他方で,被告Y1による本件口座開設の経緯や本件各振込に使用された口座のa社の名称は,原告の詐欺被害に何ら寄与しておらず,本件口座の存在と原告の被害との間には事実的因果関係がなかったと評価することが出来る等の事情を考慮すると,原告には相当の過失相殺が認められるべきである。
(原告の主張)
本件は,いわゆる特殊詐欺の被害者であるところ,特殊詐欺は,いわゆる振り込め詐欺の形態に限定されるものではなく,第三者が自分の代わりに情報料の支払いを求めるいわゆる代理購入を求める劇場型詐欺を端緒とするものであり,原告には何ら落ち度はない。他方で被告Y1は,自らが開設した預金口座の通帳等を第三者であるEに交付し,自らの管理が及ばない状況を創出しており,預貯金口座の第三者への譲渡行為は刑罰をもって禁止されていることや,通帳等を第三者に交付すれば当該口座が不正に利用されること,社会問題となっているいわゆる振り込め詐欺等の特殊事案において,預貯金口座が騙取金の振込先となっていることは,被告Y1も認識し,又は認識し得たことからすると,被告Y1の過失は重大である。したがって,本件において,過失相殺はされるべきではない。
第3  当裁判所の判断
1  被告Y1の代表社員としての任務懈怠,故意又は過失の有無(争点(1))について
(1)  前提事実,末尾掲記の各証拠(ただし,下記認定に反するものを除く。)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア 被告Y1は,短大を卒業後,保険会社や税理士の事務所等で事務員として稼働したことがあり,平成20年から平成26年頃までの間,「○○」で求職してテレホンアポインターの仕事をしたことがあったが,宅地建物取引主任者又は宅地建物取引士の資格は有していない。事務員として稼働していた際の時給とテレホンアポインターの報酬を時給に換算した場合の金額は,いずれも1200円ないし1300円程度であった。(乙イ11,被告Y1本人)
イ 被告Y1は,平成27年5月頃,当時,無職であったため,「○○」で求人広告を見ていたところ,c社という会社の「時給2500円。在宅ワーク。高収入」というサイドビジネスの募集広告を見つけ,親の介護をしなければならなかったため興味を持ち,当該求人に応募した。当該求人の時給2500円は,○○に掲載された求人の中でも高額であった。(乙イ11,被告Y1本人)。
ウ 被告Y1は,平成27年5月20日,c社のEと名乗る人物から,氏名,年齢のほか,ネットワークビジネスなどの副業をしたことがあるか否か,銀行等からお金を借りているか否か等を尋ねるメールを受け取った。被告Y1は,上記メールに回答したところ,Eは,同月21日,被告Y1に対し,準備期間中は時給2500円であるが,事前準備完了後,臨時報酬が月額15万円から30万円前後になり,準備完了後以降は,月額報酬が1万円から100万円以上になる,準備期間中の作業分は日当報酬として支払われるが,待機期間を過ぎないとまとまった報酬が得られないとのメールを送信した(乙イ2)。
エ 被告Y1は,平成27年5月21日,Eに対し,被告Y1側で用意する費用等の有無を尋ねるメールを送信したところ,Eは,同日,仕事の内容は,相場より安価での不動産の購入,不動産会社側の金利や手数料を大幅に下げるスキームの実現により大きな収益が得られる案件に関与するという内容であり,同族会社ではなく第三者が設立した会社が関与すれば,税金が安くなる仕組みであるから,被告Y1には,会社を設立し,その代表者となり,通常の取引に携わってもらうことになり,会社設立費用はE側で負担する,最初の数か月は,税務署にマークされてしまうおそれがあるため,取引額を少なくし,会社設立完了時に,平均15万円前後の支払をしている,青色申告になるため,最初の2年間は税金がかからないが,通常は,2年後に会社を廃業という形をとらせてもらう,会社設立に関してのメリットは,① 1円も費用を掛けずに開始することができる,② 短期的に大幅な報酬がある,③ 最初の2年間は税金がかからない,の3つであり,デメリットは,2年間しか稼げないことであるなどと説明したメールを送信した。被告Y1は,翌22日,Eに対し,仕事をしてみたいと思うが,報酬は確定申告が必要か,急に収入が増えて税務署に目を付けられたくないし,国民健康保険料が上がってしまうと困ると尋ねるメールを送信したところ,Eは,同日,被告Y1に対し,実際に会って話をしようと持ちかけた。(乙イ3,4)
オ 被告Y1は,平成27年5月25日,Eと都内で面談し,その際に,Eは,「E」,「株式会社c」と記載された名刺を被告Y1に交付した。被告Y1は,その後,名刺に記載された電話番号に電話を架けたところ,女性が応対し,折り返し,Eから電話を受けたことがあった。(乙イ11,被告Y1本人)
カ 被告Y1は,平成27年6月9日にもEと都内で面談した。Eとの2回の面談の際,Eは,「ソーシャルメディアを活用したキャンペーン例」と題する書類を見せながら,被告Y1に対し,① 被告Y1が会社を設立する,② 設立した会社で士業等を初めとする自営業者に対し,フェイスブック等のソーシャルメディアを活用した広告等に関するセミナーを開催し,そのセミナー事業により収益を上げる,③ 最初は,c社がセミナーの企画,設営,講師の招聘,参加者の募集等を全て行うが,④ 事業がうまく回るようになったら,被告Y1が,c社から紹介される講師に依頼してセミナーを開催し,収益を被告Y1とc社とで折半するという内容と,単発的に同族会社間の不動産取引に被告Y1が設立した会社が第三者として関与するという内容であった。被告Y1は,Eの説明を聞いて,当該求人に応募することを決め,Eに対し,仕事をしたいと伝えると,Eは,被告Y1に対し,会社の設立や税務署への届出の各手続について説明し,必要な書類は全てEが準備すると述べた。(乙イ6,11,被告Y1本人)。
キ 被告Y1は,平成27年6月12日,Eと共に千葉地方法務局に出向き,a社の設立登記手続をした。また,Eは,同月29日,松戸税務署に対し,法人設立届出書を郵送で提出し,後日,被告Y1は,Eから写しを受領した。なお,a社には,他の社員又は従業員はいずれも存在しない。(乙イ7,11,被告Y1本人)
ク 被告Y1は,Eから,セミナー参加者から参加費を徴収する際,振込手数料が掛からない方が参加者のサービスになるため,できるだけ多くの金融機関においてa社名義の預金口座を複数開設する必要があるが,セミナー会場の選定,講師の決定,参加者の募集等は全てc社が行うため,参加費の徴収,会場使用料,講師謝礼等の金銭の管理をE側で行う必要があり,通帳とカードをEに預けるようにと指示を受けたため,平成27年7月2日及び同月11日,合計6つ又は7つの金融機関において,a社名義の預金口座を開設し,同年8月13日,当該口座の通帳及びキャッシュカードをEに交付した。なお,a社とc社との間での業務委託,業務提携等に関する契約書は作成されておらず,被告Y1は,上記口座について,インターネットバンキング等の手続はとらなかったから,Eに通帳等を交付した後は,当該口座における取引の状況を把握することはできない状態になった。(乙イ11,被告Y1本人)
ケ 被告Y1は,平成27年7月又は8月頃,Eから,1万円を受領した。(被告Y1本人)
コ その後,被告Y1は,現実に収入が得られるようになると思っていたが,平成27年10月から11月にかけて,Eとの連絡が取りにくくなり,同月16日,先方より慎重に進めていきたいとの連絡があり,同月末までにはなんとかするとのことなので,もうしばらく待ってほしいという内容のメールを受信して以降,Eと完全に連絡が取れなくなった(乙イ9,11)。
サ 被告Y1は,平成27年11月24日頃,愛知県内の弁護士から,a社の預金口座が詐欺事件に使用されたとして,損害賠償を求める旨の内容証明郵便を受領し,同じ頃,松戸警察署からも呼出しを受けた(乙イ10,11)。
シ 被告Y1は,松戸警察署で何度か取調べを受け,担当刑事の助言を得て,a社の解散手続をし,同社名義の預金口座を解約した(乙イ11)。
(2)  原告は,a社と全く無関係な第三者であるEがa社名義の預金口座の通帳等を所持し,同口座への入出金を管理することは,Eがa社又はその従業員になりすまして行うことに他ならないから,被告Y1が,Eに対し,a社名義の預金口座の通帳等を交付した行為は,犯罪収益移転防止法28条2項所定の預貯金通帳等の提供行為に該当する旨主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,被告Y1は,Eから,a社の業務運営上の必要性があるとの説明を受け,Eに対し,同社名義の預金口座の入出金を同社のために管理させる目的で,同社名義の預金口座の通帳等をEに交付したものと認められるから,被告Y1の行為は,犯罪収益移転防止法28条2項所定の預貯金通帳等の提供行為には該当しない。この点に関する原告の主張を採用することはできない。
(3)  任務懈怠の有無について
ア 合同会社の業務を執行する社員は,善良な管理者の注意をもって,その職務を行う義務を負い(会社法593条1項),業務を執行する有限責任社員(合同会社の社員は全員有限責任社員である。同法576条4項)がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは,当該有限責任社員は,これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(同法597条)。
イ この点,被告Y1は,被告Y1自身が設立したa社の運営のため,Eが金銭管理及び口座管理等を行うと信じて,同人に対し,a社名義の口座の通帳等を預けたものであり,上記求人サイトは社会的に広く周知されているものであるから,犯罪に関する求人広告がされていることを疑う理由はなく,Eが勤務しているとされたc社の本社にも何度か電話を架けたが同社を名乗る対応がされていたこと,Eは,会社設立に必要な資料を全て準備しており,法務局や税務署でも問題なく手続を行うことができたこと,Eは,被告Y1又はa社のために終始活動していたことからすれば,被告Y1が上記の認識を有したことについて過失はない旨主張する。
ウ 確かに,○○が社会的に周知された求人サイトであること,被告Y1がc社宛てに電話を架けた際に同社を名乗る対応がされたこと,Eが会社設立に必要な資料を全て準備し,法務局や税務署でも問題なく手続を行うことができたことが認められる。
しかしながら,被告Y1が見たとされる当初の求人案内は,「時給2500円。在宅ワーク。高収入」というサイドビジネスという程度にすぎず,その詳細は不明であるが,他の求人よりも高額な時給であったと認められる。また,実際に被告Y1が受けたとされるEの説明には,次のように不自然,不合理な点があると認められる。すなわち,Eのメールでは,当初は,準備期間中は時給2500円,事前準備完了の臨時報酬が月額15万円から30万円,準備完了後以降は,月額1万円から100万円以上と時期により報酬金額が大幅に変動する上,メールでは,相場より安価で不動産を購入し,同族会社間の不動産取引に被告Y1が設立した会社が関与することにより税金を安くするスキームであるとの説明であったが,面談の際には,士業等を初めとする自営業者に対し,ソーシャルメディアを活用した広告等に関するセミナーを開催して収益を上げるのが主たる業務であり,不動産取引への関与は単発的にすぎないという内容に変更されており,当初の「在宅ワーク」とはかけ離れた内容になっているにもかかわらず,Eからは,特段の説明はされておらず,被告Y1もこの点を問題にはしていない。さらに,Eのメールによれば,不動産取引は,設立後2年間のみ行うことができ,その後は,通常,会社は廃業するとされている(そもそも,正当な事業であれば,開業後わずか2年間で事業を停止しなければならない合理的な理由は見当たらない。なお,被告Y1は,セミナーについては,Eから,開業後2年に限定されない旨の説明を受けたと供述するが,あいまいな内容であって直ちに採用することはできない。)。セミナーについても,セミナーの企画,運営は最初はc社が行うというものの,開催するセミナーの規模や参加費,会場設営や講師の報酬等の費用,収益見込みの詳細について,Eは説明しておらず,被告Y1からこの点を確認した様子もうかがえない。Eの説明は,結局のところ,被告Y1が会社を設立する,それに要する費用はEが負担する,被告Y1は当面資金や労力を提供する必要がない,それにもかかわらず,被告Y1は一定の報酬を得られるという点では一貫しているが,このような求人は,不自然,不合理であるといえる。そして,予定されるセミナーの詳細が何ら明らかにされていないにもかかわらず,a社名義の預貯金等の口座を複数開設すること及びそれらの通帳等をEに交付するよう指示している点も,不自然,不合理であるといえる。
エ そうすると,被告Y1は,自己の従前の勤務経験や得ていた給料等の額に照らすと,上記の求人が不自然,不合理であって,本件のような特殊詐欺に関与する類いの違法な行為であることを認識すべきであったし,認識することが可能であったというべきである。そして,被告Y1は,インターネットバンキング等の取引内容を確認する手段を講じないままに,a社名義の預金口座の通帳等をEに交付し,その結果,同口座が原告に対する詐欺行為に利用されたのであるから,被告Y1には,その業務の執行を行うにつき善管注意義務の違反があり,重大な過失があることを免れない。
オ 以上によれば,被告Y1は,会社法597条に基づき,被害者である原告に対し,損害賠償責任を負う。
2  被告Y2の任務懈怠の有無(本人確認義務を尽くしたか否か),故意又は過失の有無(争点(2))について
(1)  前提事実,末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア 被告Y2は,平成25年頃,b社(当時の商号はb1社)の代表者に就任した(被告Y2本人)。
イ b社は,平成27年2月9日,株式会社d(以下「d社」という。)との間で,代理店契約を締結した。契約書上は,OEMシステムを利用したサービス提供に関する契約とされているが,実際には,b社は,d社から,IP電話を賃借していた。(甲24の1・2,被告Y2本人)
ウ b社は,平成27年3月2日,F(以下「F」という。)と称する者に対し,携帯電話回線を貸与した。同貸与の手続は,被告Y2又はb社の従業員が行い,Fに対し,運転免許証の交付を受けることにより本人確認をし,申込書及び電話回線利用契約書の提出を受けた。契約書には,「契約者名」として「F」の記載があるが,押印はされていない。実際には,Fなる人物は実在せず,上記運転免許証は,偽造されたものであった。(甲20,21の1・2,被告Y2本人)
エ b社は,平成27年4月29日,G(以下「G」という。)と称する者に対し,IP電話を貸与した。同貸与の手続は,被告Y2又はb社の従業員が行い,Gに対し,運転免許証の交付を受けることにより本人確認をし,申込書及び電話回線利用契約書の提出を受けた。契約書には,「契約者名」として「G」の記載があるが,押印はされていない。実際には,Gなる人物は実在せず,上記運転免許証は,偽造されたものであった。(甲19,21の1・2,被告Y2本人)
オ b社がd社から貸与を受けていた電話回線等は,NTTドコモ等の大手キャリアから直接借り受けた場合と比較すると,利用者が支払う利用料は高額となっている。また,被告Y2は,b社の代表者であった平成28年2月までの間に,顧客に貸与した電話回線等につき,警察署又は弁護士から照会を受けたり,警察署から電話回線を強制的に解約するよう求められたりしたことがあった。(被告Y2本人)
(2)  この点,原告は,b社が本件電話番号等を貸与した際の身分確認は,運転免許証の原本によらず,その写しによったはずであると主張し,運転免許証の原本を確認したのであれば,Gらとの契約書に添付された運転免許証の写し(甲19,20)は,より鮮明に写っているはずであると主張するが,被告Y2は,運転免許証の原本を確認した旨供述していることや,コピーされた文書の鮮明度合いは,コピーの取り方や機種等によっても異なると考えられることからすると,上記の点をもって被告Y2の供述の信用性を排斥することはできない。したがって,前記のとおり,認定するのが相当である。
(3)  株式会社の取締役は,法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し,株式会社のため忠実にその職務を行う義務を負い(会社法355条),株式会社の代表取締役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは,当該代表取締役は,これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(同法429条1項)。
しかしながら,前記のとおり,本件各電話回線の貸与の際に示された運転免許証は偽造されたものである上,本件のような特殊詐欺事案において,レンタルされた電話回線が用いられることは公知の事実であり,被告Y2自身も,警察署から,携帯電話等を強制的に解約する依頼を受けたこともあると認めているのであるから,電話回線等のレンタル業者としては,本人確認を行うことについて高度の注意義務を負っていると解すべきである。したがって,本人確認手続は厳密に行うべきであって,運転免許証の原本を単に目視により確認するだけでは不十分であり,総務省が公表している券面事項等表示ソフトウェア(甲33の1・2,34,35)やインターネットのサイト(甲36,37)を利用するなどして十分な本人確認義務を尽くすべきであるが,被告Y2又はその従業員はそれをしなかったというのであるから,b社においてされた本人確認手続は不十分なものといわざるを得ず,被告Y2又はその従業員には,過失があったというべきである。そして,その結果,Gらに貸与された本件各電話回線が原告に対する詐欺行為に用いられたのであるから,b社の業務執行は違法であったと認められる。そして,被告Y2は,上記のとおり,b社の業務に関連して,警察署から携帯電話等を強制解約する依頼を受けたこともあり,自社の電話回線が違法行為に用いられる可能性があることを認識しながら,従業員に対し,本人確認義務を充分に尽くすため,上記ソフトを利用するよう具体的な指示をしたりしていないのであるから,その業務の執行につき重大な過失があったものと認めるのが相当である。
したがって,被告Y2は,b社の代表者として,会社法429条1項に基づき,損害賠償責任を負う。
3  過失相殺の適否(争点(3))について
原告は,D名義の口座に22万円を振り込んだ後,約1か月経過してから,Bなる人物がCからの情報提供により,実際に当たり馬券を購入することができたか否かも確かめないまま,自らCに電話を架け,Cに騙されて180万円余りもの大金を振り込んだものである。そもそも,「確実に当たる馬券情報」それ自体,存在する可能性のないことが明らかである上,冷却期間が充分に存在したにもかかわらず,あえて自らCに接触した原告の行為は,軽率のそしりを免れないというべきである。その過失の内容を考慮すると,過失割合は5割と認めるのが相当である。この点に関する原告の主張を採用することはできない。
4  小括
(1)  被告Y1に対する請求について
ア 原告がa社名義の口座に送金した金額は,合計179万6860円であるから(前提事実),被告Y1の任務懈怠と相当因果関係のある損害は,179万6860円である(D名義の口座に送金した22万円については,被告Y1の行為との間に相当因果関係はない。)。
イ 損害額合計179万6860円につき,5割の過失相殺をすると,89万8430円となる。
ウ 本件事案の内容,訴訟の経緯等に照らすと,8万円をもって,被告Y1の任務懈怠行為と相当因果関係のある損害と認める。
(2)  被告Y2に対する請求について
ア 原告がD及びa社名義の口座に送金した金額は,合計201万6860円であるから(前提事実),被告Y2の任務懈怠と相当因果関係のある損害は,201万6860円である。
イ 損害額合計201万6860円につき,5割の過失相殺をすると,100万8430円となる。
ウ 本件事案の内容,訴訟の経緯等に照らすと,10万円をもって,被告Y2の任務懈怠行為と相当因果関係のある損害と認める。
5  結論
以上によれば,原告の被告Y1に対する請求は,97万8430円及びこれに対する不法行為後で被告Y1に対する訴状送達日の翌日である平成29年1月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告の被告Y2に対する請求は,110万8430円及びこれに対する不法行為後で被告Y2に対する訴状送達日の翌日である平成29年1月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で(なお,両名の債務は不真正連帯債務であるから97万8430円の限度で連帯する。)それぞれ理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
さいたま地方裁判所第4民事部
(裁判官 日暮直子)

 

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