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「営業 スタッフ」に関する裁判例(8)平成26年 4月11日 名古屋地裁一宮支部 平23(ワ)764号 未払賃金等請求(第一事件)、地位確認等請求(第二事件)、損害賠償請求(第三事件)事件

「営業 スタッフ」に関する裁判例(8)平成26年 4月11日 名古屋地裁一宮支部 平23(ワ)764号 未払賃金等請求(第一事件)、地位確認等請求(第二事件)、損害賠償請求(第三事件)事件

裁判年月日  平成26年 4月11日  裁判所名  名古屋地裁一宮支部  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)764号・平24(ワ)182号・平24(ワ)443号
事件名  未払賃金等請求(第一事件)、地位確認等請求(第二事件)、損害賠償請求(第三事件)事件
裁判結果  第一事件一部認容、第二事件一部認容、第三事件一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA04116004

要旨
◆被告Y1社の従業員であった原告らが、被告Y1社に対し、未払賃金等の支払を求めた事案(第一事件)において、被告Y1社の原告らに対する未払割増賃金につき、その状況、被告Y1社の姿勢等から、未払割増賃金と同額の賦課金の支払を命ずる等し、原告らの請求の一部を認容した事例
◆原告らが、被告Y2社に対し、同被告は被告Y1社と実質的に同一でありその商号を続用して事業を継続しているとして、被告Y1社が負うべき上記未払賃金等の支払を求めるとともに、被告両社の代表取締役であった被告Y3が被告Y2社と共同してした原告らに対する解雇は違法解雇であるとして、被告Y3及び被告Y2社に対し、不法行為に基づき慰謝料の支払を求めた事案(第二事件)において、被告Y3は、不当労働行為の意思及び債務免脱の目的をもって違法に被告Y1社を解散し原告らを解雇する一方、被告Y1社と実質上同一である被告Y2社を存続させて被告Y1社の事業を継続したものであり、被告Y1社の解散は、違法な目的をもってなされた会社制度の濫用であって、被告Y2社は、原告らに対し、信義則上、被告Y1社と別人格であることを主張できないとした事例
◆原告らが、被告Y3に対し、悪意重過失による任務懈怠によって、未払賃金等の債権を回収することが事実上不可能になったとして、損害賠償を請求した(第三事件)事案において、被告Y3の悪意重過失による任務懈怠を認定する一方、被告両社の残余財産から原告らの債権の支払に充てることが可能であった額が、被告Y3の任務懈怠と相当因果関係のある損害であると認定した事例

新判例体系
公法編 > 労働法 > 労働基準法〔昭和二二… > 第二章 労働契約 > 労働契約 > ○労働契約 > (八)労働契約の承継 > B 承継を認めた事例
◆従前の使用者会社が解散して従業員が解雇された場合、判示の事実を踏まえるときは、従前の使用者会社とその代表者が設立した別会社とは実質的に同一であるから、法人格否認の法理を適用し、別会社が従前の労働契約関係を承継し、慰謝料等の支払債務を負担する。

公法編 > 労働法 > 労働基準法〔昭和二二… > 第四章 労働時間、休… > 第三七条 > ○超過勤務の割増賃金 > (四)その他
◆使用者会社が残業手当を支払わずに放置した行為は不法行為を構成し、時間外割増賃金額相当額の損害賠償を支払う義務があり、また、賃金額を恣意的に変更した等の行為等も不法行為を構成し、慰謝料を支払う義務がある。

 

出典
判時 2238号115頁
労判 1101号85頁

評釈
山下徹哉・旬刊商事法務 2074号4頁(上)
慰謝料請求事件データファイル(労働関係)

参照条文
労働基準法93条
労働基準法115条
労働組合法7条1項
労働契約法12条
民法1条3項
民法644条
民法709条
会社法355条
会社法330条
会社法429条1項

裁判年月日  平成26年 4月11日  裁判所名  名古屋地裁一宮支部  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)764号・平24(ワ)182号・平24(ワ)443号
事件名  未払賃金等請求(第一事件)、地位確認等請求(第二事件)、損害賠償請求(第三事件)事件
裁判結果  第一事件一部認容、第二事件一部認容、第三事件一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA04116004

第一ないし第三事件原告 X1(以下「原告X1」という。)〈他1名〉
上記二名訴訟代理人弁護士 伊藤大介
第一事件被告 株式会社Y1(以下「被告Y1社」という。)
同代表者代表清算人 Y3
第二事件被告 株式会社Y2(以下「被告Y2社」という。)
同代表者代表清算人 Y3
第二及び第三事件被告 Y3(以下「被告Y3」という。)
上記三名訴訟代理人弁護士 草野勝彦
同 平野好道
同 丹羽正明
同 河合伸彦
同 古賀照平
同 服部祥子

 

 

主文

一(1)  被告Y1社は、原告X1に対し、被告Y2社と連帯して九四万八四八三円及びうち五二万二四八三円に対する平成二三年九月三〇日から、うち四二万六〇〇〇円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(2)  被告Y2社は、原告X1に対し、一〇五万七四一四円及びうち五二万二四八三円に対する平成二三年九月三〇日から、うち一〇万八九三一円に対する平成二四年三月二六日から、うち四二万六〇〇〇円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員(ただし上記(1)の限度で被告Y1社と連帯して)を支払え。
二  被告Y1社及び被告Y2社は、原告X1に対し、連帯して三二五万八六三四円及びうち二七九万九八八九円に対する平成二三年九月三〇日から、うち四五万八七四五円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
三  被告Y1社及び被告Y2社は、原告X1に対し、連帯して三二五万八六三四円及びこれに対するこの判決が確定した日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四  被告Y1社及び被告Y2社は、原告X1に対し、連帯して四七万九四九六円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五  被告Y1社及び被告Y2社は、原告X1に対し、連帯して八〇万円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
六  被告Y2社及び被告Y3は、原告X1に対し、連帯して二〇〇万円及びこれに対する平成二四年四月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七(1)  被告Y1社は、原告X2に対し、被告Y2社と連帯して一一九万八八六六円及びうち一〇四万一一〇三円に対する平成二三年九月三〇日から、うち一五万七七六三円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(2)  被告Y2社は、原告X2に対し、一二六万五五九〇円及びうち一〇四万一一〇三円に対する平成二三年九月三〇日から、うち六万六七二四円に対する平成二四年三月二六日から、うち一五万七七六三円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員(ただし上記(1)の限度で被告Y1社と連帯して)を支払え。
八  被告Y1社及び被告Y2社は、原告X2に対し、連帯して五九万二五三〇円及びうち四三万八七三二円に対する平成二三年九月三〇日から、うち一五万三七九八円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
九  被告Y1社及び被告Y2社は、原告X2に対し、連帯して五九万二五三〇円及びこれに対するこの判決が確定した日の翌日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一〇  被告Y1社及び被告Y2社は、原告X2に対し、連帯して八〇万円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一一  被告Y2社及び被告Y3は、原告X2に対し、連帯して二〇〇万円及びこれに対する平成二四年四月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一二  被告Y3は、原告X1に対し、二二五万二五五四円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一三  被告Y3は、原告X1に対し、四二万円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一四  被告Y3は、原告X2に対し、八五万七四四六円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一五  被告Y3は、原告X2に対し、二八万円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一六  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
一七  訴訟費用は、第一事件ないし第三事件を通じ、原告らに生じた費用の一〇分の三、被告Y1社及び被告Y2社に生じた費用の一〇分の一並びに被告Y3に生じた費用の二五分の一七を原告らの負担とし、原告らに生じた費用の一〇分の六並びに被告Y1社及び被告Y2社に生じた費用の一〇分の九を被告Y1社及び被告Y2社の連帯負担とし、原告らに生じた費用の一〇分の一及び被告Y3に生じた費用の二五分の一八を被告Y3の負担とする。
一八  この判決は、第一項、二項、四ないし八項、一〇ないし一五項に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第一  請求
一  第一事件
(1)  (雇用契約に基づく賃金請求)
被告Y1社は、原告X1に対し、九六万〇四八三円及びうち五三万四四八三円に対する平成二三年九月三〇日から、うち四二万六〇〇〇円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(2)  (労働基準法三七条に基づく時間外割増賃金請求)
被告Y1社は、原告X1に対し、三二九万一二六〇円及びうち二八二万一四一四円に対する平成二三年九月三〇日から、うち四六万九八四六円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(3)  (労働基準法一一四条に基づく付加金請求)
被告Y1社は、原告X1に対し、三二九万一二六〇円及びこれに対するこの判決が確定した日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(4)  (不法行為に基づく割増賃金相当額の損害賠償請求)
被告Y1社は、原告X1に対し、四九万〇〇八八円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(5)  (取締役強要等に基づく慰謝料請求)
被告Y1社は、原告X1に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(6)  (雇用契約に基づく賃金請求)
被告Y1社は、原告X2に対し、一二三万八五七九円及びうち一〇六万九二一六円に対する平成二三年九月三〇日から、うち一六万九三六三円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(7)  (労働基準法三七条に基づく時間外割増賃金請求)
主文八項と同旨
(8)  (労働基準法一一四条に基づく付加金請求)
主文九項と同旨
(9)  (取締役強要等に基づく慰謝料請求)
被告Y1社は、原告X2に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  第二事件
(1)  (雇用契約に基づく賃金請求)
被告Y2社は、原告X1に対し、一〇六万九四一四円及びうち五三万四四八三円に対する平成二三年九月三〇日から、うち一〇万八九三一円に対する平成二四年三月二六日から、うち四二万六〇〇〇円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(2)  (労働基準法三七条に基づく時間外割増賃金請求)
被告Y2社は、原告X1に対し、三二九万一二六〇円及びうち二八二万一四一四円に対する平成二三年九月三〇日から、うち四六万九八四六円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(3)  (労働基準法一一四条に基づく付加金請求)
被告Y2社は、原告X1に対し、三二九万一二六〇円及びこれに対するこの判決が確定した日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(4)  (不法行為に基づく割増賃金相当額の損害賠償請求)
被告Y2社は、原告X1に対し、四九万〇〇八八円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(5)  (取締役強要等に基づく慰謝料請求)
被告Y2社は、原告X1に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(6)  (違法解雇に基づく慰謝料請求)
被告Y2社及び被告Y3は、原告X1に対し、連帯して、三〇〇万円及びこれに対する平成二四年四月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(7)  (雇用契約に基づく賃金請求)
被告Y2社は、原告X2に対し、一三〇万五三〇三円及びうち一〇六万九二一六円に対する平成二三年九月三〇日から、うち六万六七二四円に対する平成二四年三月二六日から、うち一六万九三六三円に対する平成二四年三月三〇日から各支払済みまでそれぞれ年六分の割合による金員を支払え。
(8)  (労働基準法三七条に基づく時間外割増賃金請求)
主文八項と同旨
(9)  (労働基準法一一四条に基づく付加金請求)
主文九項と同旨
(10)  (取締役強要等に基づく慰謝料請求)
被告Y2社は、原告X2に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成二三年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(11)  (違法解雇に基づく慰謝料請求)
被告Y2社及び被告Y3は、原告X2に対し、連帯して、三〇〇万円及びこれに対する平成二四年四月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三  第三事件
(1)  (会社法四二九条一項に基づく損害賠償請求)
被告Y3は、原告X1に対し、九一四万八五九九円及びこれに対する平成二四年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(2)  (会社法四二九条一項に基づく慰謝料請求)
被告Y3は、原告X1に対し、三〇〇万円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(3)  (会社法四二九条一項に基づく弁護士費用請求)
被告Y3は、原告X1に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(4)  (会社法四二九条一項に基づく損害賠償請求)
被告Y3は、原告X2に対し、三四八万二四六一円及びこれに対する平成二四年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(5)  (会社法四二九条一項に基づく慰謝料請求)
被告Y3は、原告X2に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(6)  (会社法四二九条一項に基づく弁護士費用請求)
被告Y3は、原告X2に対し、五〇万円及びこれに対する平成二四年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二  事案の概要
第一事件は、被告Y1社の従業員であった原告らが、被告Y1社に対し、労働契約に基づく未払賃金、労働基準法三七条に基づく時間外割増賃金及び同法一一四条に基づく付加金(以下、これらを併せて「未払賃金等」という。)の支払を求めるとともに、不法行為に基づき、原告X1において、被告Y1社から支払を受けられなかった時間外割増賃金相当額の賠償、及び、原告らにおいて、被告Y1社による恣意的な賃金支払行為等により精神的苦痛を被ったことによる慰謝料の支払を求める事案である。
第二事件は、原告らが、被告Y2社に対し、同被告は被告Y1社と実質的に同一でありその商号を続用して事業を継続しているとして、法人格否認の法理又は会社法二二条一項に基づき、被告Y1社が負うべき上記未払賃金等、時間外割増賃金相当額の賠償及び慰謝料の支払を求めるとともに、被告Y3及び被告Y2社に対し、被告Y1社及び被告Y2社(以下、併せて「被告両社」という。)の代表取締役であった被告Y3が被告Y2社と共同してした原告らに対する解雇は不当労働行為の意思に基づく違法解雇であるとして、不法行為に基づき慰謝料の支払を求める事案である。
第三事件は、原告らが、被告両社の代表取締役であった被告Y3に対し、同人の経営改善努力の欠如や不当労働行為意思に基づく解散行為などの悪意重過失による任務懈怠によって、第一事件及び第二事件で支払を求めている未払賃金等、時間外割増賃金相当額の賠償及び慰謝料の債権を回収することが事実上不可能になったとして、会社法四二九条一項に基づき、未払賃金等、割増賃金相当額の賠償及び慰謝料の相当額、並びに、これら(付加金を除く)に対する平成二三年九月三〇日から平成二四年二月二九日までの遅延損害金相当額の損害賠償、加えて、慰謝料及び弁護士費用の支払を求める事案である。
各事件における原告らの被告らに対する請求の内訳並びに遅延損害金の始期及び利率は、別紙請求一覧表に記載のとおりである。
一  争いのない事実等(末尾に証拠を摘示した事実の他は、当事者間に争いがない。)
(1)  原告ら
ア 原告X1は、平成二〇年二月一八日、被告Y1社に雇用され、同被告において、労働者派遣事業に関する営業等の業務に従事し、平成二一年四月頃以降はIT事業に関する業務にも従事するようになったが、平成二四年二月二〇日、同日付けで被告Y1社から解雇の通知を受けた。
また、原告X1は、平成二三年三月八日に被告Y2社が設立された際、同社の取締役に就任し、同社の業務にも従事していたが、同年八月二九日に取締役を辞任しており、翌平成二四年二月一〇日付けでその旨の登記がされている。
イ 原告X2は、平成一七年五月二三日、被告Y1社にパートタイマーとして雇用され、経理、労務、決算等のほか、同社の行う労働者派遣事業における種々の事務に従事していたが、平成二四年二月二〇日、同日付けで被告Y1社から解雇の通知を受けた。
また、原告X2は、平成二三年三月八日に被告Y2社が設立された際、同社の取締役に就任し、同社の業務にも従事していたが、同年八月二九日に取締役を辞任しており、翌平成二四年二月一〇日付けでその旨の登記がされている。
(2)  被告ら
ア 被告Y1社は、労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業等の業務を目的とする株式会社である。
同被告は、平成三年七月二三日に設立されたが、平成二四年二月二〇日に解散した。
イ 被告Y2社は、被告Y1社と本店所在地、代表取締役及び目的を同じくして平成二三年三月八日に設立された株式会社であるが、平成二四年二月二九日に解散した。
ウ 被告Y3は、被告両社において、各設立当初から代表取締役を務めていたが、被告両社解散後はその代表清算人の地位にある。
(3)  原告らと被告Y1社との労働契約の内容
ア 原告X1は、平成二〇年二月一八日、被告Y1社との間で雇用契約を締結し、要旨、以下を内容とする同日付け雇用契約書を取り交わした。
(ア) 雇用期間は、一か月区切りとし、当初三か月は試用期間とする。試用期間終了後双方が希望する場合は自動的に更新される。
(イ) 労働に関する条件は、本契約に定めるものの他、就業規則に定めるところにより、それに従う。
(ウ) 就業時間は、午前九時から午後六時までとし、この間一時間の休憩を与える。
(エ) 給与は、月額二二万円(基本給)とし、その他の手当等については賃金規則の定めるところによる。
イ 原告X2は、平成二〇年一月二五日、被告Y1社との間で雇用契約を締結し、要旨、以下を内容とする同日付け雇用契約書を取り交わした。なお、原告X2は、被告Y1社に雇用された平成一七年五月二三日以降、平成二〇年一月二五日まで、三回にわたって同旨の雇用契約を締結しており、時間給は当初の一三〇〇円から毎回五〇円ずつ増額されている。
(ア) 雇用期間は、一か月区切りとし、当初三か月は試用期間とする。試用期間終了後双方が希望する場合は自動的に更新される。
(イ) 労働に関する条件は、本契約に定めるものの他、就業規則に定めるところにより、それに従う。
(ウ) 就業時間は、午前九時から午後三時までとし、この間一時間の休憩を与える。
(エ) 給与は、時間給一四五〇円とし、その他の手当等については賃金規則の定めるところによる。
ウ 被告Y1社における平成一一年九月八日作成の就業規則には、「従業員の賃金は、別に定める賃金規程により支給する。」(四一条)と定められている。
エ 被告Y1社における平成一一年九月八日制定の賃金規則には、要旨、以下を内容とする規定がある。
(ア) 賃金の構成(二条)
賃金は、基本給、諸手当及び割増賃金から構成される。諸手当は、役付手当、精皆勤手当、家族手当及び通勤手当から、割増賃金は、時間外勤務割増賃金、休日勤務割増賃金及び深夜勤務割増賃金から、それぞれ構成される。
(イ) 役付手当(一〇条)
役付手当は、職務上責任の重い管理的地位にある者に対し支給し、取締役に対しては月額五万円を支給する。
(ウ) 精皆勤手当(一一条)
精皆勤手当は、毎賃金締切期間中の欠勤・遅刻・早退のない者に対して月額五〇〇〇円を、欠勤・遅刻・早退一日の者に対して月額三〇〇〇円を支給する。
(エ) 家族手当(一二条)
家族手当は、従業員が扶養する配偶者がある場合にその従業員に対して月額八〇〇〇円を、従業員が扶養する一八歳未満の子がある場合にその従業員に対して子一人につき月額四〇〇〇円を支給する。
オ 賃金の支払方法は、毎月二〇日締め、当月二五日払である。
カ 所定休日は、土曜日、日曜日、祝祭日、お盆、年末年始と定められ、具体的な休日は会社カレンダーにより特定されていたところ、これによると、年間所定労働日数は、平成二一年が二三八日、平成二二年及び同二三年が各二三九日、平成二四年が二四四日である。
(4)  原告らへの給与支払状況
被告Y1社ないし被告Y2社から原告らに支払われた給与の金額及び名目は、別紙三の一給与支払状況(原告X1)及び別紙三の二給与支払状況(原告X2)に記載のとおりであった。なお、各月の給与支払対象期間は、各前月二一日から各当月二〇日までである。
(5)  原告らに時間外手当(割増賃金)を支払うべき場合の計算方法
原告らに支払われるべき割増賃金額は、労働基準法三七条に基づき、以下の計算方法により算出される。
ア 基礎賃金は、基本給のほか精皆勤手当及び役付手当である。
イ 一か月当たりの所定労働時間数は、平成二一年が一五八・六七時間(二三八日×八時間÷一二か月)、平成二二年及び同二三年が一五九・三三時間(二三九日×八時間÷一二か月)、平成二四年が一六二・六七時間(二四四日×八時間÷一二か月)である。
ウ 原告らの一時間当たりの残業割増賃金額(以下「残業単価」という。)は、法定時間外労働につき、「基礎賃金÷一か月当たりの所定労働時間数×一・二五」、法定休日労働につき、「基礎賃金÷一か月当たりの所定労働時間数×一・三五」、深夜労働につき、「基礎賃金÷一か月当たりの所定労働時間数×〇・二五」である。ただし、原告X2の基礎賃金のうち基本給が時間給である場合には、これに上記各割増率を乗じた額が、基本給分についての残業単価となる。
なお、法定時間外労働とは、休憩時間を除いて一日に八時間を超えて労働した場合及び一週間に四〇時間を超えて労働した場合をいい(労働基準法三二条)、法定休日労働とは、一週間に一日の法定休日に労働した場合をいうところ(労働基準法三五条)、被告Y1社における法定休日は日曜日として計算するのが相当である。
エ 以上を前提に、割増賃金額は、「法定時間外労働の残業単価×法定時間外労働時間数」、「法定休日労働の残業単価×法定休日労働時間数」、「深夜労働の残業単価×深夜労働時間数」によりそれぞれ算出される。
(6)  被告Y2社設立後の経緯
ア 被告Y1社の代表取締役であった被告Y3は、平成二三年三月八日に被告Y2社を新たに設立すると、原告らに対し、被告Y1社における労働者派遣事業の取引先及び派遣労働者の一部を被告Y2社との契約に移行するよう指示し、被告Y1社におけるIT事業を被告Y2社にそのまま譲渡した。その後、被告Y1社は労働者派遣事業を、被告Y2社は労働者派遣事業とIT事業を行っていた。
イ 原告らは、平成二三年七月一九日、労働組合であるaユニオン(以下「本件組合」という。)に加入し、本件組合は、同年八月以降、原告らの未払賃金等の支払を求める団体交渉の申入れを行うなどした。
ウ 原告らは、同年九月一五日、被告Y1社を被告として第一事件を提起し、本件組合は、原告らに対する未払賃金の支払等を求めて、被告Y1社との間で同月一五日及び平成二四年一月一一日の二回にわたって団体交渉を行った。
エ 被告Y1社は、同年二月二〇日、株主総会の決議により解散し(以下「本件解散」という。)、同月二七日、その旨の登記をした。また、被告Y1社は、解散に伴い、同月二〇日、原告らを解雇した(以下「本件解雇」という。)。
オ 原告らは、同年三月二八日、被告Y2社及び被告Y3を被告として第二事件を提起した。
カ 被告Y3は、同年四月二三日、株主総会の決議により同年二月二九日に被告Y2社を解散したとしてその旨の登記をした。
キ 原告らは、同年八月九日、被告Y3を被告として第三事件を提起した。
二  争点
(被告Y1社に対する請求について)
(1) 原告X1による未払賃金請求の成否
(2) 原告X2による未払賃金請求の成否
(3) 原告らによる時間外割増賃金請求の成否
(4) 原告X1は管理監督者か(割増賃金請求の可否)
(5) 原告らによる付加金請求の成否
(6) 原告X1による割増賃金相当額の損害賠償請求の成否
(7) 原告X1による所定休日における割増賃金対象外の未払賃金請求の成否
(8) 原告らによる慰謝料請求の成否
(原告らから被告Y2社及び被告Y3に対する請求について)
(9) 被告Y2社は被告Y1社の債務について責任を負うか
(10) 被告Y2社及び被告Y3に対する慰謝料請求の成否
(11) 原告らは会社法四二九条一項の「第三者」に当たるか
(12) 取締役である被告Y3の悪意重過失による任務懈怠の存否
(13) 任務懈怠と損害との間の相当因果関係の有無
三  争点に対する当事者の主張
(1)  原告X1による未払賃金請求の成否
ア 原告X1の主張
(ア) 賃金に関する労働契約の内容
原告X1と被告Y1社との平成二〇年二月一八日付け雇用契約において、原告X1の賃金は、雇用契約書及び賃金規則の定めにより、基本給月額二二万円、家族手当月額一万六〇〇〇円(原告X1は配偶者と一八歳未満の子二人を扶養している。)、精皆勤手当月額五〇〇〇円とすることが合意された。
その後、前記争いのない事実等(4)のとおり、原告X1に対する賃金支払において、その項目及び金額がめまぐるしく変転しているところ、原告X1と被告Y1社との間では、以下のとおりの合意があったものと解釈するのが合理的である。
a 平成二〇年六月分(前月二一日から当月二〇日までの分。以下同じ。)以降
基本給が名目上月額一六万円に減額され、別途、特別手当名目で月額五万円、物価手当名目で月額一万円が支給されるようになったが、これは、従前と同じく基本給月額二二万円としての支払である。
b 平成二一年五月分以降
物価手当名目の賃金が月額三万円に増額されたが、これは、基本給が月額二四万円に昇給したものである。
c 平成二三年三月分以降
役付手当として月額五万円が支給されるようになったが、役付手当は賃金規則に記載があり、かつ、従前の賃金項目については金額を変更すべき理由はないので、これは、従前の基本給月額二四万円に、新たに役付手当月額五万円が加算されたものである。
d 平成二三年五月分以降
被告Y1社から基本給名目で月額一六万円のほか、同年三月八日に設立された被告Y2社から基本給名目で月額一〇万円が支給されるようになったが、これは、被告Y1社から支給されるべき基本給が月額二六万円に昇給したものである。すなわち、原告X1は、被告Y1社との労働契約において一方的に基本給等を減額されるべき理由はなく、被告Y2社との間で労働契約を締結した事実もないが、被告Y2社の業務に並行して従事するよう指示されて従事したことからすると、原告X1のY2社の業務への従事は、被告Y1社からの出張と同様に解され、他の手当について減額ないしカットされる理由もないから、上記のとおり、被告Y1社から支給されるべき基本給が月額二六万円に昇給したものと合理的意思解釈されるべきである。
e 平成二三年七月分以降
被告Y1社から基本給名目で月額二〇万円のほか被告Y2社から基本給名目で月額八万円が支給されるようになったが、これは、上記dと同様の理由により、基本給が月額二八万円に昇給したものである。
(イ) 家族手当
前記(ア)のとおり、原告X1と被告Y1社との労働契約において、原告X1に対し家族手当月額一万六〇〇〇円を支給することが合意されていたにもかかわらず、被告Y1社は、別紙一の一未払賃金(家族手当)一覧表(原告X1)記載のとおり、平成二一年八月分から平成二三年二月分まで月額一万円しか支払わず、同年五月分及び同年七月分から平成二四年二月分まで支払をしなかったため、家族手当として合計二五万八〇〇〇円が未払である。
(ウ) 精皆勤手当
前記(ア)のとおり、原告X1と被告Y1社との労働契約において、原告X1に対し精皆勤手当月額五〇〇〇円を支給することが合意されていたにもかかわらず、被告Y1社は、別紙一の二未払賃金(精勤手当)一覧表(原告X1)記載のとおり、平成二一年八月分から平成二三年二月分まで及び同年七月分から平成二四年二月分まで支払をせず、平成二三年五月分は一〇〇〇円しか支払わなかったため、精皆勤手当として合計一三万九〇〇〇円が未払である。
(エ) 役付手当
前記(ア)cのとおり、原告X1と被告Y1社との労働契約において、平成二三年三月分以降、新たに役付手当月額五万円を支給することが合意されていたにもかかわらず、被告Y1社は、同年七月分以降その支払をしなかった。原告X1が役付手当をカットすることに同意したことはなく、賃金カットを正当化すべき根拠もないので、同年七月分から平成二四年二月分までの役付手当として合計四〇万円が未払である。
(オ) 被告らの主張に対する反論
被告らが主張するように賃金を総額で合意をした事実はない。被告らが主張する合意内容は賃金規則の記載と真っ向から矛盾しているし、原告X1は、雇用された当初、就業規則や賃金規則を見せられていないので、賃金規則で定められた諸手当を含めての話合いをすることなどはあり得ない。また、賃金規則の定めは、就業規則として規範的効力、直律的効力があるから(労働基準法九三条、労働契約法一二条)、原告X1との合意をもって賃金規則の定めによる諸手当の支払を免れようとする被告らの主張は失当である。
イ 被告らの主張
(ア) 原告X1の主張はいずれも争う。
(イ) 原告X1の賃金に関する合意の経緯は、以下のとおりである。
a 平成二〇年三月分以降
原告X1と被告Y3は、原告X1の雇用にあたって、雇用後三か月の試用期間における給与について、家族手当や精皆勤手当などの賃金規則で定められている諸手当等を含めて総額で月額二二万円とすることを合意した。
b 平成二〇年六月分以降
原告X1と被告Y3は、試用期間経過後の給与について話し合い、同月分以降の給与について、家族手当や精皆勤手当などの賃金規則で定められている諸手当及び特別手当を含めて総額で月額二三万円とすることを合意した。なお、特別手当は、被告Y3が当時八〇歳と高齢であり、被告Y1社の実務にほとんど関与せずに原告X1に任せていたことから、その地位と責任に対する対価として、特別手当の項目を設けて毎月五万円を支給したものである。
c 平成二一年五月分以降
原告X1から昇給を希望する申出があったため、被告Y3は、原告X1が同年四月から特にIT事業の分野で大きな責任をもって業務に従事していることを評価して、総額で月額二万円を昇給させることとし、原告X1との間で、翌五月分以降の給与について、家族手当や精皆勤手当などの賃金規則で定められている諸手当及び特別手当を含めて総額で月額二五万円とすることを合意した。
d 平成二三年三月分以降
被告Y3は、原告X1の昇給を認めて、原告X1との間で、同月分以降の給与について、家族手当や精皆勤手当などの賃金規則で定められている諸手当及び特別手当を含めて総額で月額二六万一〇〇〇円とすることを合意した。
(ウ) 原告X1は、平成二一年五月分以降の給与について、基本給の昇給があったと合理的意思解釈するべきである旨主張するが、原告X1と被告Y3は、基本給の昇給について話し合ったことは一度もなく、そのように解することはできない。また、平成二三年五月分及び同年七月分以降の給与について、それぞれ基本給を月額二六万円及び二八万円に昇給する旨話し合ったことはないから、基本給をそのように解することはできない。
原告X1は被告Y1社の取締役ではなかったから、役付手当月額五万円の支給は、賃金規則とも整合しない。
(2)  原告X2による未払賃金請求の成否
ア 原告X2の主張
(ア) 精皆勤手当
原告X2と被告Y1社との平成二〇年一月二五日付け雇用契約において、賃金規則の定めに従って原告X2に対し精皆勤手当月額五〇〇〇円を支給することが合意されていたにもかかわらず、被告Y1社は、別紙二の一未払賃金(精勤手当)一覧表(原告X2)のとおり、平成二一年八月分から平成二三年二月分まで及び同年七月分から平成二四年二月分までその支払をしなかったため、精皆勤手当として合計一三万五〇〇〇円が未払である。
(イ) 基本給
原告X2と被告Y1社との平成二〇年一月二五日付け雇用契約において、原告X2の賃金は、基本給を時間給一四五〇円に基づき算定すると合意されていたにもかかわらず、被告Y1社は、一方的に、平成二一年六月分以降の時間給を一三〇〇円に減額し、平成二三年七月分以降は基本給を時間給に基づかずに月額一五万円とした上、それに加えて被告Y2社から基本給月額六万円を支給するようになった。原告X2が時間給を減額することに同意したことはなく、時間給を月給にしたり、被告Y2社と恣意的な給与支払の振分けをしたりするなど労働契約内容を一方的に不利益変更されるべき根拠もないから、平成二一年六月分以降も基本給を時間給一四五〇円とする従前の合意内容に変更はない。したがって、別紙二の二未払賃金(基本給差額)一覧表(原告X2)のとおり、平成二一年八月分から平成二四年二月分までの基本給のうち既払額を控除した差額合計一一〇万三五七九円が未払である。
イ 被告らの主張
(ア) 被告Y3は、原告X2に対し、基本給を破格の時間給一四五〇円とするが賞与や手当がないことを伝え、原告X2もこれを了承したから、原告X2による精皆勤手当の請求には理由がない。
(イ) 原告X2の基本給が、平成二〇年一月当時時間給一四五〇円であったこと、平成二一年六月分以降から時間給一三〇〇円に減額していることは認めるが、時間給を一三〇〇円に減額した点については、同年五月頃、原告X2から勤務時間を延長したい旨の申出があった際に、被告Y3が、被告Y1社の経営状態からすると時間給一四五〇円の高額で時間延長をすることはできないので一三〇〇円で我慢してほしいと説明し、原告X2の了解を得ている。現に、原告X2の勤務時間は、同年六月以降午前九時から午後五時までとなった。したがって、平成二一年六月分以降の時間給は一三〇〇円であり、原告X2による基本給差額金の支払請求には理由がない。
(3)  原告らによる時間外割増賃金請求の成否
ア 原告らの主張
(ア) 原告X1は、被告Y1社に入社後、労働者派遣事業での営業活動等、すなわち取引先との折衝、取引先からのクレーム処理、派遣スタッフ(以下「スタッフ」という。)対応、スタッフからのクレーム処理、スタッフ送迎、スタッフのシフト管理等に従事し、平成二一年四月頃以降は、加えてIT事業(ホームページ制作事業)を担当し、平成二二年五月以降は、退職したA課長(以下「A課長」という。)が担当していた営業関連業務も一人でこなさなければならなくなった。原告X1は、これらの業務を行うため、早朝残業、居残り残業をしていたのであり、その実態は業務日報から明らかである。そして、被告Y2社の設立にあたっては、日常業務に加えて、事務所レイアウトの変更作業や被告Y1社の取引先を被告Y2社に移行させる作業(取引先の了解の取付け、スタッフとの雇用契約締結等)を行う必要があった上、同被告設立後は、なし崩し的に同被告の業務に従事することを余儀なくされた。
(イ) 原告X2は、労働者派遣事業における事務職として被告Y1社に入社したが、当初の業務に加え、平成一八年五月以降は行政機関へ提出すべき書類管理を、B(以下「B」という。)が退職した平成二一年一月以降は取引先・登録社員からの苦情受付、登録社員の一次面接等を、A課長が退職した平成二二年五月以降は原告X1の営業業務の補助や労働者派遣報告書など官公庁関連書類の作成等も担当するようになり、その結果、経理、労務、総務、庶務、営業事務、営業アシスタントという広範な業務に従事していた。原告X2は、これらの業務を行うため、時間外労働等をせざるを得なかったのであり、その実態は業務内容を記載した書面からも明らかである。そして、被告Y2社の設立にあたっては、日常業務に加えて、会社設立登記手続や特定労働者派遣事業届出手続を行い、原告X1とともに事務所レイアウトの変更作業を行ったほか、取引先の移行に関連する書類作成やスタッフ移籍に伴う年金事務所・職業安定所での手続及び対応などを行い、同被告設立後は、なし崩し的に同被告の業務に従事することを余儀なくされた。
(ウ) 上記の過酷な業務実態を背景に、原告らは、平成二一年七月二一日から平成二四年二月二〇日まで、それぞれ別紙一の三の一の一ないし三一労働時間表(原告X1)及び別紙二の三の一の一ないし三一労働時間表(原告X2)の各残業時間欄記載のとおり、法定労働時間を超えて被告Y1社の業務に従事したものである。
(エ) 被告Y1社における労働時間管理は、平成二三年三月までは、勤務実績通知書により行われ、同月のタイムカード導入後は、タイムカードとそれを転記した勤務実績通知書により行われたため、上記労働時間表の始業欄及び終業欄記載の各時刻はこれらの記録に基づく。
勤務実績通知書は、原告X2が記載入力し、毎月被告Y3に提示して報告していたものであり、タイムカードは、一宮労働基準監督署(以下「一宮労基署」という。)からの勧めを受け、平成二三年三月頃に被告Y3の了解を得て導入されたもので、原告らが、被告Y3から、同月の賃金締日からタイムカードを打刻するよう命じられたものである。
なお、被告らが提出する出勤簿は、時刻の記載欄もなく、原告X2の引出しに保管されていたにすぎないので、労働時間管理方法とはなり得ない。また、被告らは、被告Y3が平成二三年四月一六日と同年五月二三日に、被告Y1社の終業後に会社事務所を使用して経営相談を受けていたが、原告らは同事務所にいなかったなどと主張して、これを裏付けるメモを提出するが、いずれの日も被告Y3が予定を記入していたカレンダーにそのような記載がなく、上記メモはいずれも作成の真正及び内容の真実性が疑われるものである。
(オ) 前記(ア)、(イ)のとおり、原告らが従事した業務は、取引先やスタッフとの対応を要する業務であって、いずれも一定の期間内に行う必要があり、これを処理するには残業を回避することはできなかったから、被告Y1社による黙示の残業命令があったことは明らかである。なお、被告らは残業許可願などと題する書面があったと主張するが、原告らはそのようなものを見たことがなく、訴訟係属後に用意された虚偽のものである。
(カ) 前記争いのない事実等(5)の計算方法により、原告らの割増賃金額合計を算出し、既払額を控除すると、各月の未払割増賃金額は、別紙一の三の二割増賃金計算一覧表(原告X1)及び別紙二の三の二割増賃金計算一覧表(原告X2)の各未払額欄記載のとおりであり、その合計額は、原告X1につき三二九万一二六〇円、原告X2につき五九万二五三〇円である。
イ 被告らの主張
(ア) 次の事情によれば、被告Y1社には原告らの残業が必要なほどの業務量はなく、原告らが残業に従事した事実はない。
a 平成一三年頃の被告Y1社において残業は必要ない状況であったところ、原告X1雇用後の被告Y1社では、平成一三年当時に比べ、従業員数は多いか同じである一方、取引会社数・派遣社員数・売上金額は大幅に減少していることに伴い、業務量も大幅に減少している。
b 労働者派遣業務における書類は定型的なものが大部分であり、各書式はパソコンに保存されているため、その作成は極めて容易である。被告Y1社の派遣先企業は一三社であり、契約更新が必要な企業は一か月当たり一ないし三社程度であって、契約更新時の書類作成に要する時間は最大で一時間程度である。
c スタッフの給与計算は、給与振込システムを使用した定型的業務にすぎない。スタッフ一名当たりの入力時間は一〇分ないし一五分で十分であり、スタッフは三〇名程度であるから総所要時間は一〇時間に満たない。
d IT事業については、ホームページ作成につき単に取次業務をしていたにすぎず、取引会社も四社程度であり、業務量は非常に少ない。
(イ) 次の事情によれば、原告らが主張する勤務実績通知書及びタイムカードは、原告らの始業・終業時刻を裏付ける客観的な根拠とはならず、これを補強する証拠もない。
a 被告Y3は、原告らの始業・終業時刻について勤務実績通知書への記載を命じたことはなく、原告らから勤務実績通知書の提出及び報告を受けたこともない。このことは、勤務実績通知書に被告Y3の確認印が押されていないことから明らかである。
b 原告X2は、労働時間等調査票に「労働時間把握の方法」として出勤簿とタイムカードに丸印をつけたが勤務実績通知書を挙げていなかった。
c 勤務実績通知書の出勤日や就業時間は、出勤簿の出勤日と整合していないし、給与支給明細書の出勤時間とも整合しておらず、原告らの出勤日や就業時間を正しく反映したものとはいえない。
原告X2は、子どもの学校の役員をやっており遅刻早退をすることが多かったが、大半は無申告であった。
d 被告Y3は、平成二三年四月一六日と同年五月二三日、被告Y1社の事務所を使用して経営相談を受けていたが、その際原告らの姿を見ていないので、同各日に就業していたと記載してある勤務実績通知書は事実を反映したものとはいえない。
e タイムレコーダーは、原告らが被告Y3に無断で購入し、使用し始めたものである。
(ウ) 仮に、原告らがその主張どおりの時間に就労をしていたとしても、被告Y1社は、原告らに対し、原告ら主張の時間外労働等に関する業務命令を発していない。すなわち、被告Y1社は平成二〇年二月以降赤字の経営状態が続いており、原告らに対して時間外労働等に対する金員の支給をすることは困難であったから、被告Y1社が時間外労働等に関する業務命令を発することはあり得ない。
また、被告Y1社には「残業許可願」があったが、原告らがこれを提出したことはない。
(4)  原告X1は管理監督者か(割増賃金請求の成否)
ア 被告らの主張
(ア) 被告Y1社が原告X1を雇用した平成二〇年において、被告Y3は、八〇歳と高齢になっていたため、被告Y1社の業務にはほとんど関与せず、同年六月頃からは、労働者派遣業務についての女性従業員・スタッフの管理及び営業全般について、原告X1に一切を任せていた。
また、原告X1は、平成二一年三月頃、IT事業に参入すべきであると提案をし、平成二二年五月にA課長が退職してからは、唯一の男性従業員として、労働者派遣業務及びIT事業全般についての営業・労務管理の一切を任され、他のパートタイム従業員を直接間接に統括管理していた。
(イ) 原告X1の出退勤時間は同原告の裁量に任されており、原告X1は、被告Y3へ報告することなく、営業先等から直接帰宅することもよくあった。
(ウ) 原告X1に対する待遇は、原告X1の地位と責任に対する対価としての特別手当、家族手当、精皆勤手当などの諸手当を含めて二三万円ないし二五万円であり、賞与は二〇万円ないし二二万円であったが、恒常的に赤字となっていた被告Y1社の経営状態からすると、管理監督者としてふさわしい待遇であったといえる。
(エ) したがって、原告X1は、労働基準法四一条二号の管理監督者に該当し、時間外割増賃金等の支給を受ける立場にない。
イ 原告X1の主張
(ア) 被告らの主張は、争う。
(イ) 次の事情によれば、原告X1は管理監督者に当たらない。
a 被告Y1社において、取引先との派遣契約の締結、スタッフとの雇用契約の締結、IT関連顧客との契約締結、各契約における金額、労働基準監督署や職業安定所などの官公庁への届出などについては、全て被告Y1社の代表者である被告Y3の決裁が求められ、原告X1は、それらの決裁の都度、被告Y3から業務遂行に関して指示があればそれに従う立場で業務を遂行していたのであり、原告X1が自己の判断で業務計画・行動計画を立案する権限などは全くなかった。
原告X1は、被告Y3から直接、あるいは上司であったA課長から指揮命令を受けていたし、原告X1に部下はいなかった。
b 原告X1に出退勤、休憩等の自由は全くなかった。
c 原告X1に現実に支払われた賃金額は、総額で月額二二万円ないし二五万円であり、管理監督者としてふさわしい待遇などと評価することは到底不可能である。
(5)  原告らによる付加金請求の成否
ア 原告らの主張
被告Y1社は、原告らの業務実態を詳細に認識し、原告らが残業に及んでいることを明確に認識しながら、長期にわたって労働基準法三七条に基づく残業割増賃金の支払を懈怠し、原告らから再三支払を求められても支払をせず、平成二三年二月頃に一宮労基署から呼出しを受け賃金の支払について指導を受けたにもかかわらず、同年四月分ないし六月分について残業割増賃金の一部を支払ったのみで再び支払をしなくなったものであり、極めて悪質である。
よって、被告Y1社に対しては、未払割増賃金額と同額の付加金の支払を命ずるのが相当であり(労働基準法一一四条)、原告X1は三二九万一二六〇円の、原告X2は五九万二五三〇円の各支払を求める。
イ 被告らの主張
原告らの主張のうち、被告Y1社が原告らに対し、平成二三年四月分ないし六月分の残業割増賃金の支払をしたことは認めるが、その余の事実は否認し、評価は争う。
(6)  原告X1による割増賃金相当額の損害賠償請求の成否
ア 原告X1の主張
原告X1は、平成二一年一月二一日から同年七月二〇日まで、別紙一の四の一の一ないし六労働時間表(原告X1)の残業時間欄に記載のとおり、法定労働時間を超えて被告Y1社の業務への従事を余儀なくされた。
被告Y1社は、原告X1の残業が発生することを容易に把握できたにもかかわらず、漫然とこれを放置し、原告X1に対して残業手当請求を行わせるべき注意義務を懈怠した。したがって、被告Y1社は、原告X1に対し、民法七〇九条に基づく損害賠償義務を負う。そして、ここにいう損害は、労働基準法三七条に基づき計算される未払割増賃金相当額であるから、その金額は、上記争いのない事実等(5)の計算方法により、別紙一の四の二損害金計算一覧表(原告X1)のとおり、合計四九万〇〇八八円となる。
イ 被告らの主張
争う。
(7)  原告X1による所定休日における割増賃金対象外の未払賃金請求の成否
ア 原告X1の主張
原告X1は、別紙一の三の一ないし三一労働時間表(原告X1)の備考欄に「八h」と記載がある日については、所定休日に被告Y1社の業務に従事させられたにもかかわらず、賃金が一切支払われていない。その賃金額は、一時間当たりの労働単価(基礎賃金を所定労働時間数で除した金額)に当該労働時間数を乗じて算出されるところ、別紙一の五未払賃金(所定休日における割増賃金対象外)一覧表(原告X1)のとおり、合計一六万三四八三円となる。
イ 被告らの主張
原告X1の主張は、争う。
原告X1に対して、所定休日に業務に従事することを命じたことはない。
(8)  原告らによる慰謝料請求の成否
ア 原告らの主張
被告Y3は、被告Y1社の代表取締役として、原告らに対し、恣意的な賃金操作により恣意的な待遇を継続的に行い、また、指示に従わなければ解雇するなどと強迫し原告らを被告Y2社の取締役に就任させた。これらは、いずれも故意又は過失により他人の権利を侵害したものとして不法行為を構成するところ、これにより原告らが受けた精神的苦痛に対する慰謝料額は、それぞれ一〇〇万円を下らない。
イ 被告らの主張
原告らの主張のうち、原告らが被告Y2社の取締役に就任したことは認めるが、その余の事実は否認し、評価は争う。
(9)  被告Y2社は被告Y1社の債務について責任を負うか
ア 原告らの主張
(ア) 法人格濫用
被告Y1社と被告Y2社は、いずれも被告Y3が設立し代表取締役を務める会社であって、事業目的、本店所在地・事業所及び従業員も同一であるところ、被告Y3は、平成二四年二月二〇日に被告Y1社を解散(本件解散)して原告らを解雇(本件解雇)する一方、被告Y1社と実質的に同一である被告Y2社を存続させて同一事業を継続した。そして、本件解散及び本件解雇は、原告らの本件組合加入及びその活動を嫌悪して原告らを会社から排除しようという不当労働行為の意思、原告らが第一事件を提起したことに対する報復的意図、及び、原告らに対する未払賃金等の債務負担を免れようという目的をもって行われたのであり、これは、「解雇に至る要因」と題された書面の記載内容などから明白である。
したがって、被告Y1社による本件解散及び本件解雇については法人格濫用による法人格否認の法理が適用され、被告Y2社は、信義則上被告Y1社と別異の法人格であることを主張できず、原告らに対し、被告Y1社が負うべき既発生の未払賃料等債務及び不法行為に基づく損害賠償債務、並びに、原告らと被告Y1社との間の労働契約に基づき発生する賃金債務について責任を負うというべきである。
よって、被告Y2社は、原告X1に対し、第一事件において被告Y1社が負うべき未払賃金等債務及び不法行為に基づく損害賠償債務合計九〇三万三〇九一円と、本件解雇の日である平成二四年二月二〇日から被告Y2社が解散した同月二九日までの月額賃金(日割計算)一〇万八九三一円を支払う義務を負う。
また、被告Y2社は、原告X2に対し、第一事件において被告Y1社が負うべき未払賃金等及び不法行為に基づく損害賠償債務合計三四二万三六三九円と、本件解雇の日である平成二四年二月二〇日から被告Y2社が解散した同月二九日までの月額賃金(日割計算)六万六七二四円を支払う義務を負う。
なお、被告らは、被告Y1社の解散理由として赤字経営であったことを主張するが、被告Y1社の決算書類で毎年赤字が累積していたのは、被告Y3が、多額の役員報酬を得ていたのみならず、自己の遊興のために会社財産を経費名目で費消し続けていたためであり、経営状態の悪化が主たる原因ではないことは明らかである。
(イ) 商号続用者責任
被告Y2社は、被告Y1社の事業を譲り受けた会社であり、その商号を引き続き使用したと評価できる。そして、被告Y1社が原告らに対して負担すべき未払賃金等債務及び不法行為に基づく損害賠償債務はすべて「事業により生じた債務」に当たるから、原告らは、被告Y2社に対し、会社法二二条一項に基づき、原告X1においては九〇三万三〇九一円の支払を、原告X2においては三四二万三六三九円の支払を求めることができる。
イ 被告Y2社の主張
(ア) 法人格濫用について
原告らの主張は、争う。
被告Y1社を解散した理由は次のとおりであり、不当労働行為の意思や第一事件を提起されたことに対する報復的意図に基づくものではないから、本件解散及びその必然的結果である本件解雇について、法人格否認の法理は適用されない。
すなわち、被告Y3は現在八六歳と高齢で認知症の兆候が出ている上、多くの病気を抱え通院を続けていること、被告Y1社は平成一四年九月度から赤字が累積した状態であったこと、被告Y3は被告Y1社に貸付けをすることで赤字を填補し経営を継続してきたが資金が尽きてしまいこれ以上の貸付けが不可能となったこと、被告Y3は第一事件により精神的肉体的に追い詰められ経営を継続する気力がなくなったこと、以上の点を総合的に考慮した結果、被告Y3は、被告Y1社の経営を継続することはできないと判断し、本件解散をしたものである。
なお、原告らは、「解雇に至る要因」と題する書面の記載内容を理由に、本件解雇は不当労働行為意思に基づく解散である旨主張するが、上記書面は、被告Y3が自ら経営する会社の唯一の従業員である原告らと裁判で争う状況になってしまったことや原告らから出社時や退社時に挨拶がないことを残念に思う気持ちを記載したものにすぎない。また、被告Y3は、本件組合との団体交渉にも応じており組合嫌悪の事実はない。
(イ) 商号続用責任について
原告らの主張は、争う。
被告Y2社は、被告Y1社と全く同一の商号をそのまま使用したものではないし、取引通念上、従前の商号と同一の商号を継続して使用したとみられる場合でもないから、会社法二二条一項にいう商号の続用の要件を充たさない。また、原告らは、被告両社の従業員又は取締役として被告Y1社から被告Y2社への事業譲渡の内容も承知しているから、外観を信頼した債権者といえず、同条項で保護すべき者に当たらない。
(10)  被告Y2社及び被告Y3に対する慰謝料請求の成否
ア 原告らの主張
前記(9)ア(ア)のとおり、本件解雇は、不当労働行為の意思による違法解雇であり、被告Y3が行ったものであるから、被告Y3は、原告らに対し、民法七〇九条に基づく損害賠償義務を負う。
また、本件解雇及び本件解散による原告らの排除は、被告Y1社と実質的に同一の会社である被告Y2社が被告Y3と共同して完遂したものであるから、被告Y2社も、民法七〇九条、七一九条により被告Y3と連帯して損害賠償義務を負う。
原告らは、本件解雇により雇用機会を喪失して著しい精神的苦痛を受けたものであり、これに対する慰謝料額は、それぞれ三〇〇万円を下らない。
イ 被告Y2社及び被告Y3の主張
原告らの主張は、争う。
被告Y1社を解散した理由は、前記(9)イ(ア)のとおりであり、被告Y3は、被告Y1社の株主として同社を解散する自由を有している以上、解散の必然的結果である解雇について不当労働行為が問題となる余地はなく、本件解雇は違法ではない。
(11)  原告らは会社法四二九条一項の「第三者」に当たるか
ア 原告らの主張
原告らは、事実上経営担当者として被告両社の経営の一端を担うべき者であったとはいえないから、会社法四二九条一項の「第三者」に当たる。
イ 被告Y3の主張
被告Y1社において、原告X1は、前記(4)アのとおり、労働者派遣業務及びIT事業の営業全般の一切を行っていたし、原告X2も、労働者派遣業務及びIT事業の経理等の一切を行っていた。また、原告らは、被告Y2社においても、取締役として被告Y3と共に経営にあたっていた。したがって、原告らは、被告両社の経営の責任の一端を担う実質上の経営責任者であったから、会社法四二九条一項の「第三者」に当たらない。
(12)  取締役である被告Y3の悪意重過失による任務懈怠の存否
ア 原告らの主張
取締役は会社に対して忠実義務を負うところ、会社が赤字経営であればそれに対する改善策を講じること、多額の取締役報酬や会社財産の浪費で会社経営を悪化させないこと、及び、不当労働行為などの違法行為に及ばないことは、忠実義務の重要な内容である。しかるに、被告Y3は、赤字経営であった被告両社において、経営改善努力を一切行わず、職務実態がないのに多額の取締役報酬を得たり、ゴルフ、個人旅行、絵画教室等個人的な遊興のために多額の会社財産を費消したりして経営を悪化させ、さらに不当労働行為の意思に基づき原告らに対する未払賃金等及び不法行為に基づく損害賠償の支払義務を免れるために被告両社を解散させたのであり、これらについて被告Y3には悪意重過失による任務懈怠がある。
イ 被告Y3の主張
原告らの主張は、争う。
被告Y3は、平成一三年以降、営業活動は全面的に営業スタッフに委ねつつ、地元企業とのつながりを続けるためにゴルフの集まりであるb会を主催するなどの側面的な営業活動をしたほか、平成一四年から平成二四年の間に名刺を四五〇枚注文して営業活動を行い、被告Y1社から被告Y2社への取引先の移行を検討して取引先への挨拶文の原案を作成するなど、職務を行っていた。また、被告Y3は、被告Y1社の業績が低下してからは自己の役員報酬を減額するとともに、自己資金を貸し付けて被告両社の資金繰りを行ったのであり、会社財産を浪費するどころか個人資金を投入して経営を存続させてきた。したがって、被告Y3に被告両社に対する忠実義務違反の行為はない。なお、原告らは、被告Y3がゴルフ、旅行等の遊興に耽っていたと主張するが、いずれも取引関係者と一緒に行ったもので、被告Y1社の営業活動の一環である。
さらに、被告Y3は被告両社の株主として営業の自由に基づき解散する自由を有している上、前記(9)イ(ア)のとおり、不当労働行為の意思に基づき被告Y1社を解散したわけでもなく、また、被告Y2社を解散したのも次の経緯によるのであって、解散したこと自体に任務懈怠はない。すなわち、被告Y3は、被告Y2社における平成二四年二月度の決算が赤字であったこと、本件組合がスタッフの直接雇用化の働きかけをしたことで、同年四月には派遣先及びスタッフ数が急減し、事業として継続することが不可能となったこと、被告Y3の自己資金が尽きて被告Y2社に貸付けをすることができなくなったこと、被告Y3が高齢であり、本件訴訟で精神的肉体的に限界となって被告Y2社の経営を継続する気力がなくなったことから、被告Y2社を同月二三日に解散するに至ったものである。
(13)  被告Y3の任務懈怠による損害及び任務懈怠と損害との間の相当因果関係の有無
ア 原告らの主張
被告Y3の上記(12)アの任務懈怠により、被告両社が解散した結果、被告両社には見るべき残余財産もなく、原告らが第一事件及び第二事件で支払を求めていた未払賃金等の債権を回収することが事実上不可能になったのであるから、原告らには、被告両社が原告らに支払うべきであった未払賃金等、不法行為に基づく損害賠償及びこれらに対する平成二三年九月三〇日から被告Y2社が解散した平成二四年二月二九日までの遅延損害金のほか、被告Y3の任務懈怠行為により上記債権が回収不能となったことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料、並びに、第三事件の提起を余儀なくされたことによる弁護士費用相当額の損害が生じた。
そして、前記任務懈怠の内容に照らせば、同任務懈怠と上記損害との間に相当因果関係があることは明らかである。
よって、被告Y3は、原告X1に対しては、被告両社が同原告に支払うべきであった九一四万八五九九円、慰謝料三〇〇万円及び弁護士費用一〇〇万円の支払義務があり、原告X2に対しては、被告両社が同原告に支払うべきであった三四八万二四六一円、慰謝料一〇〇万円及び弁護士費用五〇万円の支払義務がある。
イ 被告らの主張
原告らは、被告両社の解散によって損害を受けた旨主張するが、仮に、被告Y3の職務実態がなかったことや被告Y3が遊興に耽っていたことが認められ、かつ、それらが任務懈怠であると認められたとしても、前記(9)イ(ア)及び(12)イのとおり、それによって被告両社を解散したわけではないから、上記任務懈怠と原告らに生じた損害との間の相当因果関係が直ちに認められるものではなく、原告らは上記相当因果関係について何ら主張立証をしていない。
また、仮に、被告両社が解散をせずに営業を継続していたとしても、原告らの未払賃金等を支払うことはできなかったから、任務懈怠と損害との間には相当因果関係がない。
第三  争点に対する判断
一  争点(1)(原告X1による未払賃金請求の成否)について
(1)  賃金に関する合意内容について
ア 入社直後の平成二〇年三月分以降
前記争いのない事実等のとおり、原告X1は、平成二〇年二月一八日、被告Y1社との間で雇用契約を締結し、その際、基本給を月額二二万円とし、その他の手当等については賃金規則の定めるところによると記載された雇用契約書を取り交わしたこと、現に、その後の給与支払において基本給名目で月額二二万円が支給されていたこと(別紙三の一給与支払状況(原告X1))からすると、上記雇用契約においては、同契約書に記載されたとおり、基本給として月額二二万円を支給し、別途、賃金規則に定められた諸手当を支給するという合意が成立したものと認めるのが相当である。
被告らは、原告X1と被告Y3は雇用後三か月の試用期間における原告X1の給与について、家族手当や精皆勤手当などの賃金規則で定められている諸手当等を含めて総額で月額二二万円とすることを合意した旨主張し、証拠(乙三五、被告Y3)中には、これに沿う部分がある。
しかし、証拠(甲一二三、原告X1)中には、これを否定する部分があり、雇用契約書の明文にも反するから、上記主張事実を認めるに足りない。
イ 平成二〇年六月分以降、平成二一年五月分以降
別紙三の一給与支払状況(原告X1)のとおり、被告Y1社から原告X1に対し、試用期間経過後の平成二〇年六月分以降の給与において、基本給名目分が一六万円に減額され、新たに特別手当名目で月額五万円、物価手当名目で月額一万円及び家族手当名目で月額一万円が支給されるようになったこと、及び、平成二一年五月分以降の給与において物価手当名目分が月額一万円から三万円になったことは、当事者間に争いがない。
そして、被告Y1社の賃金規則に特別手当及び物価手当の定めがないこと、並びに、基本給、特別手当及び物価手当の合計額が月額二二万円であり、従前の基本給月額と一致することを併せ考えると、特別手当及び物価手当は、賃金規則上の基本給の一部と考えるのが合理的である。そうすると、平成二〇年六月分以降の給与は、基本給が月額二二万円であって従前と変わらず、平成二一年五月分以降の給与において物価手当が月額一万円から三万円に増額されたのは、基本給の昇給として基本給を月額二四万円と変更したものであり、他方、賃金規則に定められた諸手当を支給する旨の合意に変更はないものと解するのが相当である。
被告らは、平成二〇年六月分以降の給与について諸手当を含め総額で月額二三万円とする合意が成立した旨主張し、証拠(乙三五、被告Y3)中には、これに沿う部分がある。
しかし、上記主張事実を裏付ける客観的な証拠はなく、原告X1は、試用期間経過後の賃金額について話し合ったことはなく、基本給を減額することについて事前に説明はなかった旨陳述していること(甲一二三、原告X1)、及び、総額二三万円では、これに家族手当一万六〇〇〇円及び精皆勤手当五〇〇〇円が含まれているとすれば、基本給が二二万円から二〇万九〇〇〇円に減額されたことになり、試用期間経過後にそのような減額をするのは不合理であることに鑑みると、上記主張事実を認めるに足りない。
ウ 平成二三年三月分以降
別紙三の一給与支払状況(原告X1)のとおり、平成二三年三月分以降の給与において、被告Y1社から原告X1に対し、特別手当月額五万円が支給されなくなり、新たに役付手当月額五万円が支給されるようになったことは、当事者間に争いがないところ、前記争いのない事実等のほか、証拠(甲一二三、原告X1)によれば、役付手当については賃金規則に定めがあり、職務上責任の重い管理的地位にあることが支給要件とされていること、原告X1は、平成二一年四月以降、労働者派遣事業の営業業務に加えて新規のIT事業について中心となって業務を行っており、平成二二年五月二〇日にA課長が退職した後は、両業務を一手に引き受けていたこと、原告X1は、そのような業務内容から、平成二三年三月分以降に支給された五万円については賃金規則上の役付手当として支給されたものと理解していたことが認められ、原告X1の基本給を減額しなければならないような事情は見当たらない。これらのことに照らせば、原告X1の同月分以降の給与については、基本給は従前どおり月額二四万円としたまま、新たに月額五万円の役付手当を支給することが黙示に合意されたものと認めるのが相当である。
なお、被告らは、諸手当を含め総額で月額二六万一〇〇〇円とする合意が成立した旨主張し、証拠(乙三五)中にはこれに沿う部分があるが、反対趣旨の証拠(甲一二三、原告X1)に照らして採用できない。
エ 平成二三年五月分以降、同年七月分以降
別紙三の一給与支払状況(原告X1)のとおり、原告X1に対し、平成二三年五月分の給与において、被告Y1社から基本給名目で月額一六万円、被告Y2社から基本給名目で月額一〇万円が支給されたこと、同年七月分以降の給与において、被告Y1社から基本給名目で月額二〇万円、被告Y2社から基本給名目で月額八万円が支給されるようになったこと、同年一〇月分以降の給与において、被告Y2社のみから基本給名目で月額二八万円が支給されるようになったことは、当事者間に争いがない。
前記争いのない事実等のほか、証拠〈省略〉によれば、平成二三年三月八日に被告Y1社と本店所在地、目的及び代表者を同一とする被告Y2社が設立され、原告らが取締役に就任して同社の業務にも従事したこと、原告X1が同被告の取締役に就任したのは被告Y3から取締役に就任しないと被告Y1社を辞めてもらうなどといわれたためであったこと、原告X1が被告Y2社の業務に従事したのは、被告Y1社の労働者派遣事業の一部及びIT事業が被告Y2社に事業譲渡されたためであったこと、原告X1と被告Y2社との間に雇用契約関係はなく、取締役報酬について取り決めも支払もなかったことが認められる。
これらの事実に加え、被告らが準備書面(4)及び同(6)において、被告Y2社から給与を支払ったのは被告Y1社が資金不足であったからなどと主張していることを考え併せると、被告Y2社による基本給名目での支払は、被告Y1社が支払うべき基本給の第三者弁済であると解するのが相当であり、被告両社による基本給名目の月額合計が従前の基本給月額二四万円から増額されたのは、原告X1と被告Y1社との間で、平成二三年五月分以降の給与について基本給を月額二六万円とすること、同年七月分以降の給与について基本給を月額二八万円とすることが黙示に合意されたからであると認めるのが相当である。
(2)  以上を前提に、以下、平成二一年八月分から平成二四年二月分までの期間について、原告X1への給与支払における未払賃金の有無及び額を検討する。
ア 家族手当について
前記争いのない事実等(3)のとおり、被告Y1社における平成一一年九月八日制定の賃金規則には、家族手当は、従業員に扶養する配偶者や一八歳未満の子がある場合、その従業員に対して配偶者につき月額八〇〇〇円、子一人につき月額四〇〇〇円を支給する旨定められているところ、証拠〈省略〉によれば、原告X1は、配偶者と一八歳未満の子二人を扶養していることが認められるから、原告X1に支払われるべき家族手当は月額一万六〇〇〇円である。
ところが、被告Y1社は、別紙三の一給与支払状況(原告X1)記載のとおり、上記期間分のうち、平成二一年八月分から平成二三年二月分まで月額一万円しか支払わず、同年五月分及び同年七月分から平成二四年二月分までその支払をしていない(前記争いのない事実等(4))から、合計二五万八〇〇〇円が未払である。
したがって、被告Y1社は、原告X1に対し、同原告との雇用契約に基づき、未払家族手当二五万八〇〇〇円及びうち平成二一年八月分から平成二三年八月分までの一六万二〇〇〇円に対する各支払日の後である同年九月三〇日から支払済みまで、うち同年九月分から平成二四年二月分までの九万六〇〇〇円に対する各支払日の後である同年三月三〇日から支払済みまで、それぞれ商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
イ 精皆勤手当について
上記争いのない事実等(3)のとおり、被告Y1社における平成一一年九月八日制定の賃金規則には、精皆勤手当は、毎賃金締切期間中の欠勤・遅刻・早退のない者に対して月額五〇〇〇円を、欠勤・遅刻・早退一日の者に対して月額三〇〇〇円を支給する旨定められており、原告X1の就業時間は所定休日を除く午前九時から午後六時までであるところ、証拠〈省略〉によれば、原告X1は、平成二一年八月以降、同月に一日欠勤したこと、平成二二年一月に七日欠勤したこと、同年二月に二日欠勤したこと、及び、それ以外は有給休暇を取得しない欠勤・遅刻・早退をしていないことが認められるから、原告X1に支払われるべき精皆勤手当は、平成二一年八月分につき月額三〇〇〇円、平成二二年一月分及び二月分については支給なし、それ以外につき月額五〇〇〇円である。
そうであるのに、被告Y1社は、別紙三の一給与支払状況(原告X1)記載のとおり、上記期間分のうち、平成二三年三月分、四月分及び六月分と同年五月分のうち一〇〇〇円を支払ったにすぎない(前記争いのない事実等(4))から、合計一二万七〇〇〇円が未払である。
なお、原告らは、精皆勤手当について一律月額五〇〇〇円を支払うべき合意があった旨主張するが、賃金規則に定められた支給要件は上記のとおりであり、一律支払合意があったことを認めるに足りる証拠はないから、原告らの上記主張は採用できない。
したがって、被告Y1社は、原告X1に対し、同原告との雇用契約に基づき、未払精皆勤手当一二万七〇〇〇円及びうち平成二一年八月分から平成二三年八月分までの九万七〇〇〇円に対する各支払日の後である同年九月三〇日から支払済みまで、うち同年九月分から平成二四年二月分までの三万円に対する各支払日の後である同年三月三〇日から支払済みまで、それぞれ商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
ウ 役付手当について
前記(1)ウに認定したとおり、原告X1の平成二三年三月分以降の給与について月額五万円の役付手当を支給することの合意があったにもかかわらず、被告Y1社は、別紙三の一給与支払状況(原告X1)のとおり、平成二三年五月分及び同年七月分から平成二四年二月分までの支払をしていない(前記争いのない事実等(4))から、合計四五万円が未払である。
したがって、被告Y1社は、原告X1に対し、同原告との雇用契約に基づき、少なくとも未払役付手当四〇万円及びうち平成二三年八月分までの一〇万円に対する各支払日の後である同年九月三〇日から支払済みまで、うち同年九月分から平成二四年二月分までの三〇万円に対する各支払日の後である同年三月三〇日から支払済みまで、それぞれ商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
二  争点(2)(原告X2による未払賃金請求の成否)について
(1)  賃金に関する合意内容について
ア 原告X2の基本給が、平成二〇年一月当時時間給一四五〇円であったことは、当事者間に争いがない。
イ 被告らは、平成二一年五月頃、原告X2から勤務時間を延長したいとの申出があった際に、被告Y3と原告X2が同年六月分以降の給与について時間給を一四五〇円から一三〇〇円に減額することに合意した旨主張し、証拠(乙三五、被告Y3)中には、これに沿う部分がある。
しかし、証拠(甲一四の一~三二、一二五、原告X2)によれば、同年一月ないし五月の原告X2の一日の平均勤務時間数は、一月が六・四七時間、三月が五・八九時間であり、その余は六時間であったこと、及び、平成二二年六月を除き平成二一年六月以降の原告X2の一日の平均勤務時間数は、いずれも六時間を超えていないことが認められ、これらの事実に鑑みると、被告らの上記主張は、前提事実を欠くものであって、被告Y3の上記供述を直ちに信用することはできない。そして、他に被告らの上記主張を認めるに足りる証拠はない。
そうすると、同年六月分以降も原告X2の基本給は何ら変更されることはなく、時間給一四五〇円のままであったと認められる。
ウ 別紙三の二給与支払状況(原告X2)のとおり、平成二三年七月分以降の給与において、基本給が時間給に基づかずに月額一五万円とされ、さらに被告Y2社から基本給名目で月額六万円が支給されるようになったこと、及び、同年一〇月分以降の給与において、被告Y2社のみから基本給名目で月額二一万円が支給されるようになったことは、当事者間に争いがなく、原告X2の基本給を時間給から月給に変更することについて、被告Y3が原告X2の同意を得た事実を認めるに足りる証拠はなく、基本給の支給形態及び額という労働者にとって重要な事項を使用者が一方的に変更することは許されないから、原告X2の基本給は、同年七月分以降も時間給一四五〇円のままであったというべきである。
また、前記争いのない事実等のほか、証拠〈省略〉によれば、同年三月八日に被告Y1社と本店所在地、目的及び代表者を同一とする被告Y2社が設立され、原告X2が同被告の取締役に就任して同被告の業務にも従事していたこと、原告X2が同被告の取締役への就任を承諾したのは被告Y3から取締役に就任しないと被告Y1社を辞めてもらうなどと言われたためであったこと、原告X2が被告Y2社の業務に従事したのは、被告Y1社の労働者派遣事業の一部及びIT事業が被告Y2社に事業譲渡されたためであったこと、原告X2と被告Y2社との間に雇用契約関係はなく、取締役報酬についても特に取り決めがなかったことが認められ、これらの事実を総合すると、被告Y2社による基本給名目での支払は、被告Y1社の支払うべき基本給の第三者弁済であると解するのが相当である。
(2)  以上を前提に、以下、平成二一年八月分から平成二四年二月分までの期間について、原告X2への給与支払における未払賃金の有無及び額を検討する。
ア 精皆勤手当について
前記争いのない事実等(3)のとおり、原告X2は、平成二〇年一月二五日、被告Y1社との間で、その他の手当等については賃金規則の定めるところによるとする条項の含まれる雇用契約書を取り交わしたこと、被告Y1社における平成一一年九月八日制定の賃金規則には、精皆勤手当は、毎賃金締切期間中の欠勤・遅刻・早退のない者に対して月額五〇〇〇円を、欠勤・遅刻・早退一日の者に対して月額三〇〇〇円を支給する旨が定められていること、原告X2の就業時間は所定休日を除く午前九時から午後三時までであることが認められるところ、証拠〈省略〉によれば、原告X2は、平成二一年八月以降、同月、平成二二年八月及び平成二三年一月にそれぞれ一日ずつ欠勤したこと、同年四月に一日早退したこと、それ以外は有給休暇を取得しない欠勤・遅刻・早退をしていないことが認められるから、原告X2に支払われるべき精皆勤手当は、平成二一年八月分、平成二二年八月分、平成二三年一月分及び同年四月分につき月額三〇〇〇円、それ以外につき月額五〇〇〇円である。
そうであるのに、被告Y1社は、別紙三の二給与支払状況(原告X2)記載のとおり、上記期間のうち、平成二三年三月分ないし六月分に各五〇〇〇円を支払ったにすぎず(前記争いのない事実等(4))、合計一二万九〇〇〇円が未払である。
したがって、被告Y1社は、原告X2に対し、同原告との雇用契約に基づき、未払精皆勤手当一二万九〇〇〇円及びうち平成二三年八月分までの九万九〇〇〇円に対する各支払日の後である同年九月三〇日から支払済みまで、うち同年九月分から平成二四年二月分までの三万円に対する各支払日の後である同年三月三〇日から支払済みまで、それぞれ商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
イ 基本給について
後記三(1)イで認定するように、被告Y1社における労務管理は、平成二三年三月以前は、専ら勤務実績通知書により、同三月以降は、勤務実績通知書及びタイムカードにより行われていたところ、証拠〈省略〉によれば、平成二一年八月から平成二四年二月までの基本給支払の対象となる原告X2の労働時間は、別紙五の三の一の一ないし三一労働時間表(原告X2)の割増賃金の対象となる残業時間を除いた時間数欄に記載のとおりであると認められる。なお、同表は、原告ら主張の別紙二の三の一の一ないし三一労働時間表(原告X2)の同欄について、平成二二年一二月二〇日の記載を訂正し、一週間に四〇時間を超えて労働した場合も時間外労働の対象とすべきであることを前提に(労働基準法三二条)、平成二三年四月三〇日、同年五月二一日、同年七月九日の各記載を削除し、休日労働の対象となる同年九月一八日の記載を削除したものとなっている。
そうすると、原告X2に支払われるべき基本給の額は、上記認定した労働時間に時間給一四五〇円を乗じた額となるが、被告Y1社は、上記期間分において、時間給一三〇〇円に基づいて算定した額もしくは月額二一万円を支払ったにすぎないので、別紙五の二未払賃金(基本給差額)一覧表(原告X2)の未払基本給額欄に記載のとおり、合計一〇六万九八六六円が未払である。
したがって、被告Y1社は、原告X2に対し、同原告との雇用契約に基づき、未払基本給一〇六万九八六六円及びうち平成二一年八月分から平成二三年八月分までの九四万二一〇三円に対する各支払日の後である同年九月三〇日から支払済みまで、うち同年九月分から平成二四年二月分までの一二万七七六三円に対する各支払日の後である同年三月三〇日から支払済みまで、それぞれ商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
三  争点(3)(原告らによる時間外割増賃金請求の成否)及び争点(4)(原告X1は管理監督者か)について
(1)  上記争いのない事実等に加え、証拠〈省略〉によれば、次の事実が認められる。
ア 原告らの業務内容
(ア) 原告X1
原告X1は、平成二〇年二月一八日、被告Y1社に入社後、A課長の指導を受けながら、労働者派遣事業に関する営業活動等の業務に従事するようになった。当時、被告Y1社の従業員(スタッフを除く。以下同じ。)は、原告らを含めて五人であったが、営業活動等の業務を主に担当していたのは、同年三月八日以降、A課長と原告X1の二人だけであり、平成二二年五月二〇日にA課長が退職した後は原告X1のみであった。
原告X1が行った労働者派遣事業における営業活動等の業務は、取引先との折衝、取引先からのクレーム処理、スタッフのフォロー、スタッフからの相談対応、スタッフからのクレーム処理、スタッフの送迎、問題が生じた時の取引先への謝罪、短期派遣の場合のスタッフへの賃金支払、スタッフのシフト管理、取引先に提出する見積書の作成及び受注書の作成などであり、具体的には、①取引先からスタッフの派遣依頼を受け、ヒアリングを行って、詳細な要望内容を把握する、②被告Y1社の登録スタッフの中から、要望に合致する人物がいないか調査し、いない場合には広告を出す、③B又は同人退職後は原告X2が、広告に応募してきた派遣希望者の受付、登録、電話の取次ぎを行い、原告X1が面接を行って採否を決定する、④取引先とスタッフの労働条件を詰め、原告X2が労働契約書を作成して被告Y3の決裁を得る、という流れで業務を行ったほか、月に一度は取引先を訪問し、必要に応じてスタッフとの電話連絡を行うなどした。また、取引先から、スタッフの送迎時刻を指定されると、早朝や夜に送迎業務を行わなければならなかった。
被告Y1社の労働者派遣事業における取引先数及びスタッフ数は、平成二一年九月には二六社及び六三人、平成二二年九月には二〇社及び六三人、平成二三年九月には被告Y2社と合わせて一四社及び二六人であった。
さらに、原告X1は、前職でホームページ制作業務等に携わっていたところ、平成二一年一月頃、リーマンショックの影響で業績が急激に下降しているのを危惧したA課長から、IT事業立上げの提案を受けたことから、A課長の許可を得た上、自宅等でシステムの構築や設計など必要な準備作業をしながらIT事業部開設に関する提案書を作成し、同年三月一〇日頃、同提案書を被告Y3に提出した。そして、被告Y3がこれを承認したことから、さらに準備を重ねて、同年五月、被告Y1社の事業としてIT関連業務が正式にスタートさせた。
原告X1は、同年四月頃以降、上記労働者派遣事業における営業活動等の業務に加えて、IT事業における業務(主としてホームページ制作業務)を行うようになった。具体的には、①顧客からの見積依頼を受け、メールないし対面で要望をヒアリングする、②従前のホームページがある場合には、そこから要望に添った修正追加等が可能か検討した上、顧客の要望に添ったレイアウト図面を作成して、図面に応じた見積書を作成するとともに、楽天やヤフーの管理システムに対応できるかどうかのテストを行う、③以上の業務を五日ないし一〇日程度の営業日で行って、顧客から正式な制作の依頼が入れば、提携会社に外注する、④その後、提携会社から提出されたデータ等の精査、検証などを経て制作を完了する、という流れであった。顧客から午後六時以降に相談のメールや電話があれば応じるほかなく、正式依頼後は顧客から各工程における納期を指定されるため、それに間に合うよう制作を進めなければならなかった。
原告X1が成約させたIT事業における制作契約の件数は、平成二一年六月一日から平成二三年四月二八日までの間に合計一九件、保守契約を含めると合計二五件あった。さらに、原告X1は、成約件数の三、四倍の件数の見積もりを行った。
なお、被告Y2社設立後、被告Y1社のIT事業はそのまま被告Y2社に譲渡されたが、引き続き原告X1が同業務に従事した。
(イ) 原告X2
原告X2は、平成一七年五月二三日、パートタイマーとして被告Y1社に入社し、以後、労働者派遣事業における経理(入出金の管理、月次精算表の作成、給料計算、請求書の発行等)、労務(スタッフの雇用得喪書類の作成、年末調整の計算、保険の計算・申告等)、決算書類の作成、労働者派遣契約手続関連業務(取引先との契約書の作成、契約更新時の書類作成、台帳管理、職業安定所に提出する報告書の作成等)などに従事した。入社後は、Bと二人で上記業務を担当し、平成二一年一月二〇日に同人が退職した後は、他の従業員と二人で従事することが多かったが、平成二三年九月三〇日以降は、他の従業員が退職し、一人で担当するようになった。また、Bの退職後、同人が担当していた派遣希望者の受付、登録、電話の取次ぎのほか、b会という名称の被告Y3が主催するゴルフの会に関する業務(コンペの招待状や式次第の作成、宛名シールの作成等)も行うようになり、平成二二年五月二〇日にA課長が退職した後は、原告X1の営業業務の補助、労働者派遣報告書など官公庁等へ提出する書類の作成及び提出、法改正があった場合にはその変更手続なども行うようになった。
また、IT事業立上げ後は、IT事業に関する契約書の発送、請求書の作成及び発送、見積もり依頼に対する返信、取次ぎの業務、電話の応対などの業務にも従事するようになった。
(ウ) 被告Y2社設立に伴い発生した業務
平成二三年三月八日に被告Y2社が設立されると、愛知労働局から事業目的と本店所在地が同じなので壁で仕切って入り口を別にするよう指導を受けたため、原告らは、同年のゴールデンウィーク期間中に、事務所の改装及び什器備品の大がかりな運搬移動作業を行った。
また、原告らは、同年四月頃、被告Y3から被告両社の売上げが半分ずつになるよう取引先を振り分けるように指示され、原告X2が、過去一年間の売上げなどを記載した一覧表と振分案を作成し、被告Y3の意見に従い作成し直すことを繰り返し、原告X1もこの振分案の作成に協力した。そして、被告Y2社に振り分ける取引先が決定すると、同年四月二〇日前後頃までの短期間に、原告X1は、同取引先とスタッフにそれぞれ面会して事情を説明し、それぞれの同意を取り付け、原告X2は、新たな契約書その他の書類を作成し、スタッフの社会保険、雇用保険、その他の諸手続を行った。
イ 被告Y1社における労働時間の管理について
(ア) 原告X2は、自己の出退勤時刻を勤務実績通知書に記載し、原告X1の出退勤時刻についても原告X1に口頭で確認して勤務実績通知書に記載した上、被告Y3に対し、毎月、原告らを含む従業員及びスタッフの分をまとめて提出する形で報告した。原告らの勤務実績通知書の記載内容について、被告Y3が異議を述べるなどしたことはなかった。なお、原告X2が原告X1の出退勤時刻を勤務実績通知書に記載するようになったのは、IT事業の立上げに伴い、原告X1が自宅勤務をするようになったことを契機に、会社が把握すべき原告X1の労務時間をメモするようになったのが始まりである。
(イ) 原告X2は、出勤簿にも「出」印を押すなどしていたが、これは前任者から、給与明細書に記載する出勤日数及び出勤時間は出勤簿の「出」印の数を数えて行うなどと説明され、給与計算をするための資料として作成していたにすぎず、現実の労働日時を反映するものではなかった。
(ウ) 平成二三年三月にはタイムレコーダーが導入され、原告X2は、同月二一日以降、原告らのタイムカードに記録された時刻を勤務実績通知書に記載して、これを被告Y3に提示して報告した。タイムレコーダー導入の経緯は、平成二三年三月三日頃、一宮労基署から被告Y1社代表者宛てに、同被告における賃金、労働時間、健康管理等に関する調査を行うため、同月九日に来署するよう求める通知書が届いたため、原告X2が被告Y3の指示を受け給与明細等を持参して同署へ赴いたところ、監督官から、より正確に労働時間を管理すべくタイムレコーダーを設置するようにとの指導があり、報告を受けた被告Y3もこれを了解したことから、タイムレコーダーを設置することになったというものである。
(エ) また、原告X1は、被告Y3から作業日報を提出するよう指示されたため、平成二三年九月頃以降、これを提出して被告Y3に業務内容及び業務時間を報告していた。
ウ 被告Y1社による割増賃金の支払
(ア) 平成二二年一一月及び一二月における原告X2ほか事務職の残業が多かったため、これを見かねた原告X1が、被告Y3に対し、原告X2が書類事務で忙しいから残業代を支払ったらどうかと進言したところ、被告Y3はこれを受け入れ、被告Y1社は、平成二三年一月分及び二月分の給与において、原告X2に対し、別紙三の二給与支払状況(原告X2)のとおり、残業代の一部を支払った。
(イ) また、原告X2が平成二三年三月九日に一宮労基署を訪れた際、監督官は、従業員の残業が発生していることや給与明細に記載された賃金項目について関心を示し、届出のある規則どおりに残業代及び手当を支払うようにとの指導をした。原告X2が上記指導について被告Y3に報告したところ、被告Y1社は、同年三月分ないし六月分の給与において、原告X1に対し、別紙三の一給与支払状況(原告X1)のとおり、精皆勤手当月額五〇〇〇円、家族手当月額一万六〇〇〇円及び残業代の一部を(ただし、五月分については家族手当の支給がなく精皆勤手当も一〇〇〇円の支給に止まった。)、原告X2に対し、別紙三の二給与支払状況(原告X2)のとおり、精皆勤手当月額五〇〇〇円及び残業代の一部を支払った。
(2)  被告らは、被告Y3が勤務実績通知書の提出及び報告を受けたことはない旨主張し、証拠(乙二五、被告Y3)中には、これに沿う部分がある。
また、被告Y3は、本人尋問において、「勤務実績通知書は、被告Y1社では使っておらず、本件訴訟が提起された後に初めて見た。」旨供述している。
しかし、原告らは、第一事件訴状において、「勤務実績通知書は、スタッフ用の書式を利用して作成していた。」旨主張し、証拠(甲一二三、一二五、原告X2)中には、これに沿う部分がある。
そして、労働者派遣事業を営む被告Y1社において、スタッフの勤務時間の管理は必須の業務であり、被告Y1社の人員態勢からみて、スタッフの勤務時間の管理業務を行う原告X2が代表取締役である被告Y3にその報告を行うことは当然であると思料される。
ところが、被告Y3は、上記のとおり、本件訴訟において、勤務実績通知書の書式の存在自体を否定しているものと解され、そのような応訴態度から見ると、被告Y3の上記供述はにわかに信用できず、そうであれば、被告の主張に沿う前掲各証拠は、採用できない。
(3)  以上認定した事実によれば、被告Y1社においては、原告X2が、日常業務として、勤務実績通知書に自己及び原告X1の出退勤時刻を記載し、これを毎月まとめて被告Y3に提出し報告する形で労務管理が行われていたこと、平成二三年三月以降は、一宮労基署の勧告により被告Y3の了解を得てタイムレコーダーが導入され、タイムカードに打刻された原告らの出退勤時刻を原告X2が勤務実績通知書に転記した上、毎月まとめて被告Y3に提出し報告する形で労務管理が行われていたことが認められ、他方、出勤簿には出退勤時刻の記載がないなど、他に原告らの労働時間を管理する方法として他に相当なものが見当たらない。そして、原告X1については、前記(1)ア(ア)及び(ウ)に認定したとおりの業務内容に照らすと、原告X1が勤務実績通知書及びタイムカードに記載されたとおりに時間外労働をしたとしても不自然ではない。また、原告X2についても、前記(1)ア(イ)及び(ウ)に認定したとおりの業務内容に照らすと、原告X2が勤務実績通知書及びタイムカードに記載されたとおりに時間外労働をしたとしても不自然ではない。
これらのことに鑑みると、原告らの労働時間は、勤務実績通知書及びタイムカードの記載に基づいて認定するのが相当である。
そうすると、平成二一年七月二一日から平成二四年二月二〇日までの期間における原告らの労働時間は、別紙四の三の一の一ないし三一労働時間表(原告X1)及び別紙五の三の一の一ないし三一労働時間表(原告X2)に記載のとおりであったと認められる。
そして、前記(1)イ及びウに認定したとおり、被告Y3は、原告X2から勤務実績通知書の提出を受け、平成二三年九月頃以降は作業日報の提出を受けていたこと、現に、一宮労基署からの指導等を受けて残業代の一部を支払っていたことからすると、被告Y3は原告らの勤務状況及び残業の発生を認識し、少なくとも容易に認識しえたといえるから、原告らが従事した法定時間外労働は、被告Y3による黙示の業務命令に基づくものであったと認めるのが相当である。
(4)  これに対し、被告らは、残業が必要なかった平成一三年当時と比較して取引会社数や売上金額等が大幅に減少しているから上記期間において残業は必要なかった旨主張するが、平成二一年以降はIT事業が新たに加わるなどしており、その業務内容は平成一三年当時と同じとはいえない上、そもそも平成一三年当時に残業の必要性ないし事実がなかったことを認めるに足りる的確な証拠がないから、上記主張は採用できない。
また、被告らは、勤務実績通知書に原告らが残業をしたと記載されている時間帯に被告Y3が被告Y1社の事務所で経営相談を受けていた際に原告らの姿を見ていないことを理由として、勤務実績通知書の記載内容が信用できない旨主張し、被告Y3もこれに沿う供述をするとともに、経営相談を受けていた旨が書かれた第三者作成のメモを提出する。
しかし、被告Y3の供述及び当該メモの記載内容は、被告Y3の予定が記載されていたカレンダーの記載と整合せず、直ちに信用することができない上、仮にこれが真実であったとしても、当該メモは、記載日時に被告Y1社事務所において被告Y3が経営相談を受けていたことを示すに止まり、その際、原告らが同事務所内で残業していなかったことまでも直ちに認めるに足りるものではない。
よって、被告らの上記主張は採用できない。
さらに、被告らは、原告らが残業許可願を提出していないので残業命令に基づく労働ではない旨主張するが、被告Y3は、本人尋問において、残業をするときに同許可願を提出するよう原告らに指示をしたことはないことを自認しており、残業許可願の提出がないことは、黙示の残業命令あったことを否定する理由にはならない。
(5)  原告X1は管理監督者かについて
ア 労働基準法四一条二号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい、管理監督者か否かは、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである(昭和二二年九月一三日発基第一七号等参照)。そして、管理監督者に該当するためには、①職務内容に照らし、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること、②部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、③管理職手当等の特別手当等が支給され、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、及び、④自己の出退勤について裁量権を有することが必要であると解される。
イ 本件についてこれをみると、前記争いのない事実等のほか、証拠〈省略〉によれば、被告Y1社において、取引先との派遣契約の締結、スタッフとの雇用契約の締結、IT関連顧客との契約締結、各契約における金額、労働基準監督署や職業安定所などの官公庁への届出などは全て被告Y3が決裁しており、原告X1が決裁を任されるようなことはなかったこと、原告X1は、平成二二年五月までは上司であったA課長の指揮命令を受けていたのであり、A課長が退職した後も原告X1に部下がいたことはなかったこと、原告X1は、出退勤時間を記載した勤務実績通知書を原告X2が被告Y3に報告する形で労務管理を受けていたこと、現に、休日以外は所定労働時間である午前九時前に出勤し午後六時以降に退勤しており、出退勤の自由を享受しているような事情はなかったこと、及び、原告X1に支払われていた賃金は月額二二万円ないし二八万円であって、経営者である被告Y3に支払われていた役員報酬月額相当約五〇万円に比べて格段に低額であり、原告X1に月額五万円の役付手当が支払われるべきであることを考慮しても、後記認定のとおり、平成二一年八月分から平成二四年二月分までの割増賃金額が合計三六三万三七六八円となり、一か月平均で一一万七〇〇〇円余になることと対比すると、時間外手当が支給されないことを十分に補った待遇であるとは評価できないことが認められる。
以上の事実に照らすと、原告X1について、上記アの①ないし④はいずれも認められない。
ウ したがって、原告X1は管理監督者であったとはいえない。
(6)  割増賃金額について
上記(1)ないし(5)を前提に、前記争いのない事実等(5)による計算方法に基づいて、平成二一年七月二一日から平成二四年二月二〇日までの期間における原告らの割増賃金額を算出し、そこから既払額を控除すると、別紙四の三の二割増賃金計算一覧表(原告X1)及び別紙五の三の二割増賃金計算一覧表(原告X2)に記載のとおり、原告X1に対する未払額は合計三二五万八六三四円、原告X2に対する未払額は合計六七万四七六一円となる。
したがって、被告Y1社は、原告X1に対しては、割増賃金三二五万八六三四円、及び、うち平成二一年八月分から平成二三年八月分までの二七九万九八八九円に対する各支払日の後である平成二三年九月三〇日から支払済みまで、うち同年九月分から平成二四年二月分までの四五万八七四五円に対する各支払日の後である平成二四年三月三〇日から支払済みまで、それぞれ商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務があり、原告X2に対しては、割増賃金六七万四七六一円のうち請求金額である五九万二五三〇円、及び、うち平成二一年八月分から平成二三年八月分までの四三万八七三二円に対する各支払日の後である平成二三年九月三〇日から支払済みまで、うち同年九月分から平成二四年二月分までの一五万三七九八円に対する各支払日の後である平成二四年三月三〇日から支払済みまで、それぞれ商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
四  争点(5)(付加金請求の成否)について
上記三の認定判断によれば、被告Y1社は、労働基準法三七条に違反して、平成二一年七月二一日から平成二四年二月二〇日までの期間に発生した割増賃金のうち、原告X1に対しては合計三二五万八六三四円の、原告X2に対しては合計六七万四七六一円の未払があり、その不払は一年半以上の長期に及んでいること、被告Y1社は、一宮労基署から指導を受けたにもかかわらず、一部支払をしただけで数か月後には再び不払となったことが認められるほか、後記八(2)に認定するとおり、その後、原告らないし本件組合から支払を再三求められたにもかかわらず支払を拒否し、被告Y3においては、本件組合との団体交渉の場において、赤字会社が法律に従って給料を支払っていたら経営が成り立たないなどと発言した上、本件訴訟においても、被告Y1社は、原告らの時間外労働の事実自体を争い、被告Y3は、本人尋問において、従業員の労働時間の管理は従業員を信頼して任せていたなどと供述するなど、そもそも従業員の労働時間を管理して適正に賃金を支払おうとする姿勢が全くみられない。
このような本件の事案に照らすと、本件においては、被告Y1社に対し、請求額の限度で、原告らに支払われるべき未払割増賃金額と同額の付加金の支払を命ずるのが相当である。
五  争点(6)(原告X1による割増賃金相当額の損害賠償請求の成否)について
原告X1は、平成二一年一月二一日から同年七月二〇日までの期間において、残業に従事することを余儀なくされ、そのことを被告Y1社が容易に把握できたにもかかわらず、漫然とこれを放置して、残業手当請求を行わせるべき注意義務に違反した旨主張する。
そこで検討するに、使用者は、労働基準法上、従業員の労働時間管理を適切に行う責務を負っており、このような労務管理の中で、従業員に残業が発生していることを認識し、又は認識し得た場合には、当然適正な残業手当を支払う義務を負うところ、これを支払わず漫然と放置した場合において、違法性が認められる場合には、単に債務不履行となるだけでなく不法行為を構成するものと解される。
これを本件についてみると、前記三(1)イにおいて認定したとおり、被告Y1社における労働時間の管理は勤務実績通知書により行われていたところ、原告X1は、従前と同じ業務に従事しながら、平成二一年一月頃にA課長からIT事業立上げの提案を受け、以後、A課長の許可を得た上で、自宅等でシステムの構築や設計など必要な準備作業をしながらIT事業部開設に関する提案書を作成し、被告Y3の承認後は、さらに準備を重ねて、同年五月頃以降、本格的にIT事業における業務を一人で行うようになったのであり、その業務内容に照らすと、原告X1が勤務実績通知書に記載されたとおりに時間外労働をしたとしても不自然ではない。
これらのことに鑑みると、原告らの労働時間は、勤務実績通知書の記載に基づいて認定するのが相当である。
そうすると、前記期間における原告X1の労働時間は、別紙一の四の一の一ないし六労働時間表(原告X1)に記載のとおり(ただし、平成二一年五月二〇日の残業時間のうち時間外労働欄に「八:〇〇」とあるのを「二:三〇」に訂正し、その合計欄に「四三:一五」とあるのを「三七:四五」に訂正する。)であったと認められる。そして、上記三(1)イに認定したとおり、被告Y3は、原告X1の勤務時間について勤務実績通知書の提出により報告を受けていたところ、証拠〈省略〉によれば、同通知書には原告X1の所定労働時間の終了時間である午後六時を大幅に超える終了時間が多数記載されているほか、「前日徹夜」などの記載があることが認められるから、被告Y3において原告X1に長時間にわたる残業が発生していることを認識することは容易であったといえる。それにもかかわらず、被告Y3は、残業代を支払わなかったのであり、前記四で認定した平成二一年八月分以降における割増賃金の不払状況及び被告Y3の態度からすると、平成二一年七月以前も同様であったと推認されるから、被告Y3が、原告X1に対して残業手当を支払わずこれを放置したことには違法性が認められ、不法行為を構成するというべきである。
そうすると、原告X1は、不法行為に基づき、平成二一年一月二一日から同年七月二〇日までの間における未払割増賃金相当分を請求できるところ、上記認定した原告X1の労働時間数を前提に、前記争いのない事実等(5)による計算方法に基づいて原告X1の未払割増賃金額を算出すると、損害金額は、別紙四の四の二損害金計算一覧表(原告X1)に記載のとおり、合計四七万九四九六円となる。
したがって、被告Y1社は、原告X1に対し、不法行為に基づく損害賠償金四七万九四九六円及びこれに対する不法行為の後である平成二三年九月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
六  争点(7)(原告X1による所定休日における割増賃金対象外の未払賃金請求の成否)について
前記三(3)に認定したとおり、平成二一年七月二一日から平成二四年二月二〇日までの期間における原告X1の労働時間は、別紙四の三の一の一ないし三一労働時間表(原告X1)に記載のとおりであるところ、同表の備考欄に「八h」と記載がある日については、各八時間につき所定休日に法内時間外労働として被告Y1社の業務に従事していたことが認められ、証拠〈省略〉によれば、被告Y1社からこれに対する賃金が一切支払われていないことが認められる。そして、法内時間外労働の賃金に関する当事者の意思を合理的に解釈すると、被告Y1社は、原告X1に対し、当該時間数に一時間当たりの労働単価(基礎賃金を所定労働時間数で除した金額)を乗じた賃金額を支払う義務を負うとするのが相当であるから、その具体的な未払賃金額は、別紙一の五未払賃金(所定休日における割増賃金対象外)一覧表(原告X1)のとおり、合計一六万三四八三円となる。
したがって、被告Y1社は、原告X1に対し、雇用契約に基づき、未払賃金一六万三四八三円及びこれに対する各支払日の後である平成二三年九月三〇日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
七  争点(8)(原告らによる慰謝料請求の成否)について
(1)  前記一(1)及び二(1)に認定したとおり、被告Y1社は、原告らに対する賃金支払において、原告X1については平成二〇年六月以降、原告X2については平成二一年五月以降、その賃金項目や額、支払元を原告らの同意を得ることなく一方的に変更することを繰り返していたところ、このような被告Y1社による恣意的な賃金支払行為は、雇用契約ないし賃金規則に基づき適正な賃金支払を受けることができるという原告らの労働者として基本的な権利を著しく侵害したものとして、不法行為に当たるというべきである。
(2)  また、前記一(1)エ及び二(1)ウに認定したとおり、被告Y3は、平成二三年三月頃、原告らに対し、新たに設立する被告Y2社の取締役に就任しなければ被告Y1社を辞めてもらうなどと言って原告らを被告Y2社の取締役に就任させ、報酬も支払わずに同社の業務に従事させたのであり、このように被告Y3が解雇権を盾に、取締役という会社等に対する損害賠償義務すら発生しうる重い責任を伴う地位に就くことを原告らに強要した行為は、原告らの労働者としての地位を著しく脅かす悪質なものといえ、不法行為に当たるというべきである。
(3)  そして、原告らが、上記各不法行為により、賃金支払や地位についての不安を感じるなど精神的苦痛を被ったことが明らかであるところ、これに対する慰謝料は、それぞれ八〇万円と認めるのが相当である。
(4)  したがって、被告Y1社は、原告らに対し、各不法行為に基づき、慰謝料各八〇万円及びこれに対する各不法行為の後である平成二三年九月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
八  争点(9)(被告Y2社は被告Y1社の債務について責任を負うか)について
(1)  原告らは、法人格否認の法理により、被告Y2社が被告Y1社の債務について責任を負う旨主張するので、検討する。
(2)  前記争いのない事実等に、証拠〈省略〉を併せると、次の事実が認められる。
ア 被告Y2社設立の経緯及び被告Y1社との関係について
(ア) 被告Y3は、消費税の節税策として、新会社を設立して被告Y1社の売上げを二社に分けようと考え、平成二三年一月頃、原告らに対し、新会社設立と、原告らをその取締役にすることなどの考えを伝えた。取締役就任について、原告らが難色を示すと、被告Y3は、「それなら被告Y1社を辞めてもらうしかない、それで会社は潰れるがスタッフにも原告らが辞めたから会社が潰れたと説明する。」などと言って、原告らに取締役に就任することを求めたため、原告らは、やむを得ずこれを承諾した。
(イ) 同年三月八日、被告Y2社が設立され、被告Y3が代表取締役に、原告らが取締役に就任した。被告Y2社は、代表者のみならず、事業目的及び本店所在地も被告Y1社と同一であり、事務所も被告Y1社の事務所内に置かれたところ、愛知労働局から、事業目的と本店所在地が同じなので壁で仕切って入り口を別にするようにとの指導を受けたため、上記事務所内に仕切りが設けられた。もっとも、被告Y2社の具体的な業務を行う従業員は、被告Y1社の従業員らのほかにいなかったから、原告ら従業員は、仕切りに関係なく双方のスペースを使いながら被告両社の業務を並行して行うという状況であった。
なお、被告Y1社については一般労働者派遣事業の許可を受けていたが、被告Y2社については特定労働者派遣事業の届出が行われた。
(ウ) 被告Y3の指示により、被告Y1社のIT事業は被告Y2社にそのまま譲渡され、被告Y1社の労働者派遣事業における取引先のうち三分の二程度が被告Y2社に引き継がれるとともに、同取引先へ派遣されていたスタッフも被告Y2社に移籍した。
イ 原告らの本件組合加入及びその後の交渉経過等
(ア) 被告Y3の指示により、平成二三年五月分の原告らへの給与支払は、総額が変わらないまま被告Y1社と被告Y2社の二社に基本給が振り分けて支払われた。また、同年七月頃には、被告Y3が同年六月まで支払われていた残業代を今後は支払わないなどと発言し、その後、実際に支払われなくなった。
そのため、原告らは、原告ら自身によって問題を解決することは困難であると判断し、本件組合に被告Y1社の状況について相談し、同年七月一九日、本件組合に加入した。
(イ) 本件組合は、同年八月二九日、被告Y3に対し、原告らに対する未払賃金を直ちに支払うこと、給与は全て被告Y1社から支払うことなどを求めるとともに、これらを議題とする団体交渉の開催を申し入れた。また、本件組合は、原告ら作成の被告Y2社の取締役辞任届を添付した上、被告Y3に対し、速やかに辞任の登記手続を行うことを求めた。
(ウ) 同年九月一五日、本件組合と被告Y1社との間で第一回団体交渉が行われたが、被告Y3は、未払賃金等を支払う金はないなどと発言して、その支払を拒否した。また、被告Y3は、「原告らとの関係が悪化している状態が続くのであれば会社を廃業ないし売却するなどして経営を止めたいというのが正直な気持ちだが、スタッフのことを考えると簡単に止められず、混乱した状態である、ただし今後も原告らが被告Y1社で働きたいのであれば、資金繰りが苦しい時も一緒にやっていきたい。」などと述べた。
なお、原告らは、同日、被告Y1社を被告とする第一事件を提起し、その訴状は、同月二九日、被告Y3へ送達された。
また、原告らの取締役辞任届については、平成二四年二月一〇日に至って、平成二三年八月二九日をもって取締役を辞任した旨の登記がされた。
(エ) 原告らは、平成二三年九月二六日、被告Y3から、同月二〇日付けで被告Y2社に移籍した旨口頭で通告され、被告Y1社の退職届を提出するよう要求されたため、本件組合は、同月二八日、被告Y3に対し、移籍後の賃金など原告らの労働条件について確認を求める要求書を送付した。これに対し、被告Y3は、同年一〇月七日、原告らの賃金について、資金不足や赤字経営から、基本給すら遅配する可能性があり諸手当は支給不可能である、今後減額することを考えている旨回答し、原告らに対しても、同年一〇月分給与の無期限遅配と二〇%の給与切下げを口頭で通告した。
(オ) 原告らは、同年一〇月一七日、代理人弁護士作成の書面により、被告Y2社への移籍について疑義を呈するとともに被告Y1社の退職届を提出しないことを被告Y3に告げた。
本件組合は、同日、被告Y3からの上記回答に対し、労働基準法違反及び労働契約違反に当たるとして抗議するとともに、賃金の遅配及び切下げ通告の撤回や被告両社と原告らとの雇用関係等を議題とする団体交渉の開催を申し入れた。
(カ) しかし、団体交渉の日程調整が難航したことから、本件組合は、一〇月分給与支払日の前日である同年一〇月二四日、改めて賃金遅配に対する抗議を行い、重ねて、上記議題による団体交渉の開催を申し入れたが、同月二五日、被告Y1社から同月分の給与支払はなかった。
(キ) 原告らは、同年一〇月二七日、一宮労基署に賃金支払がないことを申告したところ、被告Y3は、同署から呼出しを受け、同月三一日、同署に出頭した。被告Y3は、監督官に対して、同年一二月二〇日に会社を閉める、今月も来月も給与は支払えないなどと述べたため、監督官から是正勧告書を交付された。
さらに、監督官が電話による指導を行い、本件組合も同年一一月九日に給与を直ちに支払うことを求める書面を送付したが、一〇月分の給与は支払われなかった。その後、被告Y3は、同年一一月一四日に再度同署監督官から指導を受けてようやく一〇月分の給与を支払ったが、その内容は、原告X1に対しては被告Y2社から基本給二八万円のみ、原告X2に対しては被告Y2社から基本給二一万円のみというものであった。
なお、被告Y1社の事務所は、同年一〇月二五日に盗難被害を受けたが、給与支払に影響はなかった。
(ク) 本件組合は、同年一一月二〇日、団体交渉の開催を求めて、被告Y3の自宅前等でメガホンやビラ配布による情報宣伝活動を概要とする争議行為を行った。そして、同年一二月一四日、被告Y3に対し、改めて給与額の確認、未払賃金の支払及び同月二〇日に会社を廃業する旨の発言についての説明を要求するとともに、団体交渉の開催を求める書面を送付したところ、平成二四年一月一一日に第二回団体交渉が行われた。
第二回団体交渉において、被告Y3は、頑なに原告らの基本給は月額一六万円であり、残業するほどの仕事はなかったと主張し、さらに、「赤字会社が法律に従って給料を支払っていたら経営が成り立たない、経営意欲をなくしたため昨年一〇月か一一月に廃業したかったがスタッフの引受先となる派遣会社を探しているところで時期が延びている、引受先がなければ派遣先に直接雇用してもらうしかない、昨年一二月一六日に被告Y1社に貸し付けた二四〇万円のうち二〇〇万円は知人からの借入金であり自己資金も尽きてしまった、今月二〇日にも整理廃業をする予定でいる、今後原告らを採用し続けて会社を続けるつもりはない、原告らが未払賃金等の支払を求めて訴訟を起こしたり本件組合に加入して団体交渉を求めたりしていなければ従前どおり自己資金を投入してでも会社を続けていた、今までうちの会社から給料をもらって仕事をしていた者が訴訟提起や組合加入をしたことで人間不信になった。」などと発言した。
(ケ) その後、被告Y3は、平成二四年二月一日頃、他の労働者派遣会社代表者に対し、被告Y1社の事業を承継するか承継してくれる会社を紹介してほしいと依頼したが、経営状態や訴訟を提起されていることなど問題が大きく承継は無理であるとの返答を受けた。
ウ 被告Y1社の解散及び原告らに対する解雇通告
(ア) 被告Y3は、原告らに対し、平成二四年二月二〇日、被告Y1社を廃業するとして、口頭で即日解雇する旨告知し、同月二二日、整理廃業するため労働基準法二〇条により解雇通知する旨記載された解雇通知書を交付するとともに、月額給与に同月二一日及び二二日の二日分の給与を上乗せした原告X1につき二九万八六六〇円、原告X2につき二二万四〇〇〇円を解雇予告手当として支払った。
(イ) 被告Y3は、同月二二日、原告らに対し、退去命令と題する書面及び解雇に至る要因と題する書面をそれぞれ交付した。前者の書面には、「平成二四年二月二〇日付けで解雇したにより、以後は社内に留まることを禁ず。①留まり続ける場合は、社屋不当侵入罪で訴る。②平成二四年二月二二日以降は、社内に留まっても、業務進行行為とは認めず不法居すわりと断ずる」と被告Y3の自筆で記載されており、後者の書面には、「平成二四年二月二〇日を以って(株)Y1は諸問題の累積から整理廃業の法的手続きをした。(株)Y1整理廃業のため社員の解雇は止むを得ない。それ以前に、(株)Y1の社員であるのにaユニオンに加入し、会社に対し不当にも問題を起こし、(株)Y1に対し一〇〇〇万円を超す要求をし、且つ裁判にまで進行させて、大損害を与えようとしていること。」などと被告Y3の自筆で記載されていた。
(ウ) さらに、被告Y3は、同日、原告らに対し、「平成二三年九月二一日より、(株)Y1より、(株)Y2へ出向を指令します。」と記載された同日付け指令と題された書面と、「平成二四年二月二〇日をもって、(株)Y1より、(株)Y2への出向を終了にします。」と記載された同日付け通告と題された書面を、それぞれ交付した。
(エ) 被告Y1社は、同月二七日、同月二〇日株主総会の決議により解散したとして、解散登記を経た。
(3)  上記認定事実によれば、被告Y3が被告Y2社を設立したのは、消費税の節税策のために被告Y1社の売上げを二社に分けようと考えたためであったこと、新たに設立された被告Y2社は、事業目的、本店所在地、事務所、代表者及び従業員が被告Y1社と同一で、原告ら従業員が被告両社の業務を並行して行うという状況であったこと、被告Y2社は被告Y1社と異なり特定労働者派遣事業の届出を行ったが、労働者派遣事業における実際の取引先は、いずれも被告Y1社から引き継がれたものであり、IT事業も被告Y1社からそのまま譲り受けたものであったことが認められ、以上のことからすると、被告両社の実態は、本来被告Y1社一社で行うことのできる業務を形式的に二社に分けて行っていたにすぎないとみるのが相当であるから、被告両社は実質上同一であったと認められる。
そして、上記認定の本件解散及び本件解雇に至るまでの経緯、第二回団体交渉における被告Y3の発言内容、退去命令と題する書面及び解雇に至る要因と題する書面の記載内容に鑑みると、被告Y3が被告Y1社を解散して原告らを解雇した行為は、組合活動を行って未払賃金等支払を求めている原告らを会社から排除しようという不当労働行為の意思、及び、原告らに対する未払賃金等の債務を免れる目的による違法な行為であったと認めるのが相当である。
そうすると、被告Y3は、不当労働行為の意思及び債務免脱の目的をもって違法に被告Y1社を解散し原告らを解雇する一方、被告Y1社と実質上同一である被告Y2社を存続させて被告Y1社の事業を継続したものとみることができるから、被告Y1社の解散は、違法な目的をもってなされた会社制度の濫用であって、被告Y2社は、原告らに対し、信義則上、被告Y1社と別人格であることを主張できず、被告Y1社が解散するまでに負っていた未払賃金等の債務について責任を負うとともに、原告らと被告Y1社との間の労働契約関係をそのまま承継するというべきである。
被告らは、本件について法人格否認の法理の適用がない旨主張し、本件解散に及んだ理由につき、被告Y3の体調や被告Y1社の赤字経営、貸付資金が尽きたこと、経営を継続する気力がなくなったことを総合的に考慮した結果であったと説明するが、仮にこれらの事情が認められたとしても、これらはいずれも前記認定の解散及び解雇の目的と両立し得るものであり、結果的に原告らを排除して、被告Y1社の事業は被告Y2社に継続させたことは否定できないから、法人格否認の法理の適用がないとの被告らの主張を採用することはできない。
(4)  以上により、被告Y2社は、原告らに対し、上記一ないし七で判示したとおりの第一事件において被告Y1社が負うべき未払賃金等のほか、本件解雇日から被告Y2社が解散した平成二四年二月二九日まで九日分の日割り計算による月額賃金を支払う義務を負う。
前記争いのない事実等のほか前記一及び二で認定した原告らの月額賃金額を前提に、被告Y1社解散後の日割り賃金の具体的な金額を算出すると、原告X1については、基本給二八万円、家族手当一万六〇〇〇円、精皆勤手当五〇〇〇円、役付手当五万円の合計三五万一〇〇〇円に九/二九を乗じた一〇万八九三一円、原告X2については、時間給一四五〇円に所定労働時間一日五時間及び九日を乗じ、精皆勤手当五〇〇〇円に九/二九を乗じて日割り計算をし、これらを合計した六万六八〇一円となる。
したがって、被告Y2社は、被告Y1社と連帯して(但し、原告X1につき未払賃金一〇万八九三一円を除き、原告X2につき未払賃金六万六七二四円を除く)、原告X1に対しては、上記一ないし七で判示したとおりの第一事件において被告Y1社が負うべき未払賃金等、すなわち家族手当二五万八〇〇〇円、精皆勤手当一二万七〇〇〇円、役付手当四〇万円、割増賃金三二五万八六三四円、損害賠償金四七万九四九六円、所定休日分一六万三四八三円、慰謝料八〇万円の合計五四八万六六一三円及び付加金三二五万八六三四円並びにこれらに対する各遅延損害金、さらに、被告Y1社解散後九日分の未払賃金一〇万八九三一円及びこれに対する弁済期の翌日である平成二四年三月二六日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務があり、原告X2に対しては、原告X1と同様、精皆勤手当一二万九〇〇〇円、基本給差額一〇六万九八六六円、割増賃金五九万二五三〇円、慰謝料八〇万円の合計二五九万一三九六円及び付加金五九万二五三〇円並びにこれらに対する各遅延損害金、さらに、前記認定した被告Y1社解散後九日分の未払賃金のうち請求額である六万六七二四円及びこれに対する弁済期の翌日である平成二四年三月二六日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
九  争点(10)(被告Y2社及び被告Y3に対する慰謝料請求の成否)について
上記八で認定したとおり、本件解雇は、被告Y1社の代表者である被告Y3が不当労働行為の意思及び債務免脱の目的で本件解散に伴い行った違法な行為である。そして、これは、本来被告Y3と被告Y1社による共同不法行為というべきであるが、上記八で認定したとおり、被告Y2社は、原告らに対し、信義則上、被告Y1社と別人格であることを主張できないから、本件解雇により原告らが被った精神的損害について、被告Y1社が負うべき不法行為に基づく損害賠償を負う。
そして、解雇という行為態様及び本件解雇が不当労働行為意思及び債務免脱という違法な目的でなされたことなどを勘案すると、原告らに対する慰謝料としてそれぞれ二〇〇万円を認めるのが相当である。
したがって、被告Y2社及び被告Y3は、原告らに対し、連帯して、各二〇〇万円及びこれらに対する第二事件の訴状送達の日の翌日である平成二四年四月一一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
一〇  争点(11)(原告らは会社法四二九条一項の「第三者」に当たるか)について
前記三(1)及び(5)の認定判断によれば、被告Y1社において、原告らが管理監督者ないし実質的経営者であったとは認められない。また、前記一(1)エ及び二(1)ウに認定したとおり、原告らが被告Y2社の取締役に就任したのは被告Y3から強要されたからであって、原告らは被告Y1社におけるのと同様の立場で被告Y2社の業務に従事していたにすぎないから、原告らが被告Y2社の実質的経営者であったとは認められない。
したがって、原告らは会社法四二九条一項の「第三者」に当たる。
一一  争点(12)(取締役である被告Y3の悪意重過失による任務懈怠の存否)について
(1)  前記争いのない事実等に、証拠〈省略〉を併せると、次の事実が認められる。
ア 被告Y3の勤務状況及び職務実態
(ア) 被告Y3は、通常、午前九時三〇分頃出社し、午前一一時三〇分頃から午後一時三〇分頃まで外出し、午後四時までに退社していた。
また、被告Y3は、週に一回程度、b会と称する被告Y3主催のゴルフ会(毎月第二ないし第三火曜日開催)又は個人でゴルフをするため出社せず、毎週木曜日は午前中に絵画教室へ通っていたため午後一時三〇分頃に出社していた。
(イ) 被告Y3は、出社すると、契約書などの書類の決裁を行うほかは、主に会社業務とは関係がないゴルフ等に関する事務を行っていた。
すなわち、被告Y3は、原告X2にも手伝わせながら、b会の会員に対する案内通知の作成及び発送をしたり、ゴルフプレイ後に会員に対して講演する内容を考えこれをメモしたり、コンペの申込書やメンバー表を作成して景品発注をしたり、エージシュート(ゴルフの一ラウンド(一八ホール)を自分の年齢以下の打数でホールアウトすること)達成パーティーの式次第を作成したりするなどしてb会関連行事の事務を行っていたほか、新聞やゴルフ雑誌に載せるための記事を作成して売込みをしたり、掲載された記事を人に配るために切り抜いたりしていた。なお、被告Y3が掲載していた記事は、b会会員募集や絵画展広告など趣味に関するものばかりで、被告Y1社や労働者派遣事業に関する記述はなかった。
(ウ) 被告Y3は、b会の趣旨について、とにかく楽しくゴルフをしましょうという会であるなどと説明して会員を募集しており、ゴルフプレイ後に行っていた講演の内容も、経済情勢や株の動向、健康に関するものが中心であった。b会の会員に被告両社の取引先経営者ないし従業員はおらず、b会の会員から三社ほど取引先の紹介を受けたこともあったが、各取引先に派遣されたスタッフは一名程度にすぎず、その売上げは全体売上げの二%程度にすぎなかった。
イ 被告両社の経営状況
被告Y1社は、平成一四年頃から赤字経営に陥っていたところ、平成一六年一〇月一日以降、被告Y1社における毎決算時(毎年九月三〇日)及び被告両社の各解散時(以下、併せて「毎決算時等」という。)の売上額、当期損失額、被告Y3に支給した役員報酬額、被告Y3からの借入金の累計額及び当期分は、別紙六売上等一覧表のとおりであった。
ウ 被告Y3による経費計上
(ア) 被告Y3は、ゴルフクラブの年会費、b会主催コンペの景品代、b会での食事代、ゴルフ場へ行く際のガソリン代や高速料金について、被告Y1社ないし被告Y2社の経費として計上しており、平成一二年一〇月一日以降の毎決算時等までの期間における各合計額は、下記のとおりであった。

平成13年9月30日 六一万〇四八六円
平成14年9月30日 四六万六八二二円
平成15年9月30日 九九万九一六八円
平成16年9月30日 七一万六八六八円
平成17年9月30日 七九万三三二七円
平成18年9月30日 七八万二八四二円
平成19年9月30日 七六万五三九九円
平成20年9月30日 五〇万七二二七円
平成21年9月30日 四七万〇七一七円
平成22年9月30日 五七万八九九八円
平成23年9月30日 五六万〇九九一円
平成24年2月20日 一〇万三八〇七円
(イ) 被告Y3は、少なくとも平成一三年一〇月以降、ゴルフに関する上記費用のほか、会社業務と関係がないにもかかわらず、個人旅行の代金、ライオンズクラブ費、個人使用の携帯電話料金などを被告両社の経費として計上し続けた。このうち金額の大きなものについて挙げると、平成一四年には被告Y3が個人名義で購入した車両の代金二〇五万八一五五円、平成二〇年四月二一日には被告Y3が個人名義で購入した車両の代金及び関連費用二一六万四七〇五円がある。また、平成二三年八月三一日には、知人男性から、ミスをして勤務先に三〇〇万円の損害を生じさせたという相談を受け、同人に貸し渡すため、被告Y1社から二〇〇万円、被告Y2社から一〇〇万円を引き出し、被告Y3に対する貸付金として被告両社で合計三〇〇万円を計上した。
以上により、被告Y3が計上した平成一二年一〇月一日以降の毎決算時における個人旅行及びその他の各合計額は、下記のとおりであった。

(個人旅行) (その他)
平成13年9月30日
七二万六九二六円 四五万五三七三円
平成14年9月30日
〇円 二八〇万五五五一円
平成15年9月30日
二一万五〇七六円 五九万四一四五円
平成16年9月30日
一九万五四二九円 八七万八四三二円
平成17年9月30日
二七万〇六二〇円 六三万〇四四八円
平成18年9月30日
一八万七一六三円 五一万六六八二円
平成19年9月30日
一九万四七一五円 三五万四三四五円
平成20年9月30日
一八万六七四六円 二八五万九九六八円
平成21年9月30日
二二万九四五三円 六三万〇〇一四円
平成22年9月30日
一九万二三七九円 六三万〇九〇四円
平成23年9月30日
一一万六三四五円 三五六万二六四八円
平成24年2月20日
〇円 一一万七二六三円
(ウ) 上記(ア)及び(イ)により、被告Y3が会社財産を私的に費消した年間総額は、下記のとおりとなる。

平成13年9月30日 一七九万二七八五円
平成14年9月30日 三二七万二三七三円
平成15年9月30日 一八〇万八三八九円
平成16年9月30日 一七九万〇七二九円
平成17年9月30日 一六九万四三九五円
平成18年9月30日 一四八万六六八七円
平成19年9月30日 一三一万四四五九円
平成20年9月30日 三五五万三九四一円
平成21年9月30日 一三三万〇一八四円
平成22年9月30日 一四〇万二二八一円
平成23年9月30日 四二三万九九八四円
平成24年2月20日 二二万一〇七〇円
エ 被告Y2社解散の経緯
(ア) 平成二四年二月二〇日に被告Y1社が解散し原告らが解雇されると、本件組合は、被告Y3に対し、同月二三日、原告らへの解雇通知を直ちに撤回することを求めるとともに、同年三月一六日には、団体交渉の開催を申し入れたが、受け入れられなかったため、原告らは、同月二八日、被告Y2社及び被告Y3を被告として、被告Y2社における労働契約上の地位の確認及びこれに基づく賃金の支払、並びに、第一事件で被告Y1社に対して請求していた未払賃金等の支払を求めて、第二事件を提起した。
なお、原告らは、平成二五年一二月四日、被告Y2社に対する労働契約上の地位確認請求を取り下げた。
(イ) 被告Y2社の解散
第二事件の訴状は平成二四年四月一〇日に被告Y2社及びY3代理人へ送達されたところ、被告Y3は、同月二三日、被告Y2社は同年二月二九日株主総会の決議により解散したとして、解散登記手続を行った。
(2)  以上に認定したとおり、被告Y1社は、平成一四年頃から赤字経営に陥り、平成一七年九月の決算時以降は、毎決算時に赤字を計上し、特に、平成二一年九月の決算時以降、同年に約五三七万円、平成二二年に約六三七万円、平成二三年に約一四一七万円という赤字を計上している状況であったにもかかわらず、被告Y3は、赤字経営改善に向けて経費削減等の具体的な対策を何ら講じず、それどころか、平成一四年頃から平成二四年二月二〇日までの期間において、被告Y1社から年間にして約五〇〇万円ないし六〇〇万円の役員報酬を受給し続けた上、ゴルフに関連する費用や、個人的な旅行代金その他会社経営とは関係がない費用を会社経費として計上し、車両購入費用を除いても年間およそ一二〇万円から一八〇万円程度の会社財産を費消し続けたのであり、このような被告Y3の行為は被告Y1社に対する忠実義務違反(会社法三五五条)ないし善管注意義務違反(会社法三三〇条、民法六四四条)に当たるというべきである。そして、その期間の長さ、費消金額等に照らすと、被告Y3には悪意又は重大な過失による任務懈怠があったと認められる。
被告Y3は、自らの資金を被告Y1社に貸し付けてその資金繰りを行い経営を存続させてきたのであるから、被告Y1社に対する忠実義務違反行為はないなどと主張する。
確かに、前記(1)イに認定した事実によれば、被告Y3は、役員報酬を得て会社経費を浪費する一方で、平成一九年度以降は毎年一三〇万円ないし五三〇万円を被告Y1社へ貸し付けていたことが認められるものの、別紙六売上等一覧表から認められる貸付累計総額二二七八万八七〇〇円(被告両社分)は、前記(1)ウに認定した会社財産の私的費消の総額二三九〇万七二七七円に及んでいないし、上記貸付けによって、被告Y1社の財務内容が改善したわけではないから、被告Y3の主張は採用できない。
(3)  また、前記八及び九で認定したとおり、被告Y3は、被告Y1社について、不当労働行為の意思及び債務免脱の目的により本件解散及び本件解雇という違法行為に及び、原告らに対する損害賠償債務等を負うという損害を与えているから、この行為についても悪意による任務懈怠が認められる。
そして、前記八で認定したとおり、本件解散が、組合活動を行う原告らを被告Y1社から排除しようという不当労働行為の意思及び原告らに対する未払賃金等の債務免脱の目的によるものであったところ、上記(1)エに認定したとおり、被告Y1社解散後に、被告Y2社を被告とする第二事件が提起され、その請求が、被告Y2社における原告らの労働契約上の地位確認や第一事件で請求していた未払賃金等の支払を求めるものであったこと、その訴状送達がなされた後に被告Y2社の解散登記がなされているという経緯に照らすと、被告Y3による被告Y2社の解散行為も、本件解散と同様の趣旨で行われたとみるのが合理的であるから、この行為についても悪意による任務懈怠を認めるのが相当である。
なお、証拠〈省略〉によれば、被告Y1社解散後、早期の職場復帰がかなわなかった原告らないし本件組合が、平成二四年三月一六日、被告Y2社の取引先に対して、業務処理の続行が不可能になった事情ないし経過を報告し、本件訴訟の裁判傍聴を案内する書面をFAXで送信したところ、その後、取引先による契約解除が相次いだことが認められるものの、被告Y2社の解散の日付けが上記FAXの送信日より前の同年二月二九日とされていることからすると、上記事実は、被告Y2社の解散行為が不当労働行為の意思及び債務免脱の目的によるものであったことを否定する事情とはならないというべきである。
一二  争点(13)(任務懈怠と損害との間の相当因果関係の有無)について
(1)  弁論の全趣旨によれば、原告らは被告両社が解散した際、被告両社に対して有していた本訴請求にかかる債権を何ら回収しておらず、以後これらの債権は回収不能となって、同額の損害が発生したものと認められる。
ところで、被告Y3の悪意重過失による任務懈怠により原告らに損害が生じた、すなわち、任務懈怠と損害との間に相当因果関係があるというためには、任務懈怠がなければ回収することができた原告らの債権が、任務懈怠により回収することができなくなったといえることが必要であると解されるので、以下検討する。
まず、証拠〈省略〉によれば、被告Y1社は、解散時点において、貸借対照表上、普通預金が約一六二万円、売掛金が約四四万円あったものの、未払費用が約一二四万円あり、なお出資金として七〇〇万円が計上されているものの、これには実質的な価値はなかったこと、及び、被告Y2社は、解散時点において、貸借対照表上、普通預金が約一四九万円、売掛金が約一六七万円あったものの、未払費用が約一一一万円あったことが認められ、上記事実に、被告両社には多額の借入金があったものの、原告らの労働債権は一般債権に優先されるべきこと及び売掛金については回収可能であるか明らかでないことを考慮すると、被告両社は、その残余財産から、被告Y1社については少なくとも一六二万円、被告Y2社については少なくとも一四九万円について、原告らの債権の支払に充てることが可能であったと認められる。そうすると、上記金額相当の損害は、被告Y3の任務懈怠と相当因果関係がある。
次に、被告両社が事業を継続することで売上げ等の中から回収し得たかを検討すると、前記一〇(1)イ(別紙六売上等一覧表を含む。)に認定した事実によれば、被告Y1社の年間の売上額は、平成二一年九月の決算期以降、平成二一年が約一億二六七五万円、平成二二年が約一億〇八二九万円、平成二三年が約六五五二万円と年々大幅に減少しており、平成二三年については、平成二三年三月に設立された被告Y2社の売上額の月割分を加算しても約八〇〇六万円まで落ち込んでいたことが認められ、前記のとおり、被告Y1社は、平成二一年九月の決算時以降、同年に約五三七万円、平成二二年に約六三七万円、平成二三年に約一四一七万円という赤字を計上していたのであるから、仮に、前記認定の役員報酬を半減させ、前記認定の私的な費消がなかったとしても、平成二一年には約一〇四万円の、平成二二年には約一九七万円の、平成二二年には約七七〇万円の赤字となっていた計算となるから、上記認定のような売上額の減少傾向や、事業を継続するためには売上原価や固定費等の必要不可欠な経費を要することをも考慮すると、被告両社が事業を継続することで売上げ等の中から原告らの債権の支払に充てることができた可能性は極めて低いといわざるを得ない。
そうすると、被告両社を解散したことで、事業を継続すれば回収可能であった債権が回収不可能となったとは認められないから、被告Y3による解散という任務懈怠行為と原告らの損害との間には、相当因果関係があるとは認められない。
次に、被告Y3は、原告X1の割増賃金相当額の損害賠償請求権が発生した平成二一年二月以降、前記認定のとおり、被告Y1社の資産について、平成二一年九月決算時までに年間約一三三万円、平成二二年九月決算時までに年間約一四〇万円、平成二三年九月三〇日決算時までに年間約四二三万円、合計約六九六万円を私的に費消している一方、被告Y1社に対し、平成二一年九月決算時までに年間二八〇万円、平成二二年九月決算時までに年間一三〇万円、平成二三年九月三〇日決算時までに年間五三〇万円、合計九四〇万円を貸し付けたことが認められる。そして、仮に、上記費消行為が無かったとすれば、被告Y3は上記貸付けのうち、上記費消金額に相当する貸付けをする必要がなく、被告Y3の貸付残高が減少するだけで被告Y1社の資産を増加させるわけではなかった可能性が高いから、被告Y3の私的な費消という任務懈怠がなければ、原告らにおいて上記費消金額相当額の支払を受けることができたとは認められないというべきである。
よって、被告Y3の会社財産の費消という任務懈怠と原告らの損害との間に相当因果関係があるとは認められない。
以上によれば、被告Y3の前記任務懈怠と相当因果関係のある損害額は、三一一万円となる。
そこで、上記金額を、原告X1の請求金額九一四万八五九九円と原告X2の請求金額三四八万二四六一円で按分して、原告X1に生じた損害のうち二二五万二五五四円及び原告X2に生じた損害のうち八五万七四四六円が被告Y3の任務懈怠との間に相当因果関係があるというべきである。
よって、被告Y3は、会社法四二九条一項に基づき、原告X1に対しては、二二五万二五五四円及びこれに対する第三事件の訴状送達の日の翌日である平成二四年八月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告X2に対しては、八五万七四四六円及びこれに対する第三事件の訴状送達の日の翌日である平成二四年八月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払義務がある。
(2)  さらに、原告らは、慰謝料及び弁護士費用相当額の損害が生じた旨主張するので検討する。
会社法四二九条一項に基づく責任は、会社に対する任務懈怠を理由とするものであるが、任務懈怠が会社に対するものであると同時に請求者に対する違法行為であると評価できる場合には、慰謝料及び弁護士費用も損害の範囲に含まれると解するのが相当である。
これを本件についてみると、前記認定判断のとおり、被告Y3には、赤字経営改善のための対策を講じず、会社財産を費消し続けたこと、及び、不当労働行為意思及び債務免脱目的で本件解散及び本件解雇をしたことの任務懈怠が認められ、そのうち、前者は原告らに対する違法行為とは評価できないが、後者は原告らに対する違法行為と評価することができる。
ところで、前記九のとおり、当裁判所は、不当労働行為意思及び債務免脱目的で本件解散及び本件解雇をしたことについて、被告Y3の不法行為を認め、原告らにつき各二〇〇万円の慰謝料を認容するものであるから、会社法四二九条一項に基づく請求に対しても、原告らにつき各二〇〇万円の慰謝料を認容しうる。しかし、同項に基づく請求権と上記不法行為に基づく慰謝料請求権は、請求権競合の関係にあり、本訴における併合形態は、選択的併合であると解されるから、会社法四二九条一項に基づく慰謝料請求は、取り下げられたものというべきである。
次に、同項に基づく弁護士費用の請求については、その余の損害の認容額が、上記のとおり原告X1につき二二五万二五五四円、原告X2につき八五万七四四六円であることに、上記のとおり、慰謝料として各二〇〇万円が発生していることを考慮して、原告X1につき四二万円、原告X2につき二八万円を本件と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
よって、被告Y3は、会社法四二九条一項に基づき、原告X1に対しては、四二万円及びこれに対する第三事件の訴状送達の日の翌日である平成二四年八月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告X2に対しては、二八万円及びこれに対する第三事件の訴状送達の日の翌日である平成二四年八月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払義務がある。
第四  結論
以上によれば、原告らの各請求は上記の限度で理由があり、その余は理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 舟橋恭子 村井みわ子 裁判長裁判官倉田慎也は差支えのため署名押印することができない。裁判官 舟橋恭子)

 

別紙 請求一覧表〈省略〉
別紙一の一 未払賃金(家族手当)一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙一の二 未払賃金(精勤手当)一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙一の三の一 労働時間表(原告X1)〈省略〉
別紙一の三の二 割増賃金計算一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙一の四の一 労働時間表(原告X1)〈省略〉
別紙一の四の二 損害金計算一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙一の五 未払賃金(所定休日における割増賃金対象外)一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙二の一 未払賃金(精勤手当)一覧表(原告X2)〈省略〉
別紙二の二 未払賃金(基本給差額)一覧表(原告X2)〈省略〉
別紙二の三の一 労働時間表(原告X2)〈省略〉
別紙二の三の二 割増賃金計算一覧表(原告X2)〈省略〉
別紙三の一 給与支払状況(原告X1)

払日 基本給 特別
手当
物価
手当
役付
手当
家族
手当
精皆勤
手当
被告Y2社
からの支払
(基本給)
小計 残業
手当

平成20年3月 H20.3.25 220,000             220,000
平成20年4月 H20.4.25 220,000             220,000
平成20年5月 H20.5.25 220,000             220,000
平成20年6月 H20.6.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成20年7月 H20.7.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成20年8月 H20.8.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成20年9月 H20.9.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成20年10月 H20.10.26 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成20年11月 H20.11.27 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成20年12月 H20.12.28 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成21年1月 H21.1.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成21年2月 H21.2.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成21年3月 H21.3.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成21年4月 H21.4.25 160,000 50,000 10,000   10,000     230,000
平成21年5月 H21.5.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成21年6月 H21.6.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成21年7月 H21.7.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成21年8月 H21.8.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成21年9月 H21.9.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成21年10月 H21.10.26 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成21年11月 H21.11.27 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成21年12月 H21.12.28 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年1月 H22.1.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年2月 H22.2.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年3月 H22.3.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年4月 H22.4.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年5月 H22.5.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年6月 H22.6.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年7月 H22.7.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年8月 H22.8.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年9月 H22.9.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年10月 H22.10.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年11月 H22.11.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成22年12月 H22.12.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成23年1月 H23.1.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成23年2月 H23.2.25 160,000 50,000 30,000   10,000     250,000
平成23年3月 H23.3.25 160,000   30,000 50,000 16,000 5,000   261,000
平成23年4月 H23.4.25 160,000   30,000 50,000 16,000 5,000   261,000 124,009
平成23年5月 H23.5.25 160,000         1,000 100,000 261,000 113,628
平成23年6月 H23.6.25 160,000   30,000 50,000 16,000 5,000   261,000 137,497
平成23年7月 H23.7.25 200,000           80,000 280,000
平成23年8月 H23.8.25 200,000           80,000 280,000
平成23年9月 H23.9.25 200,000           80,000 280,000
平成23年10月 H23.10.25             280,000 280,000
平成23年11月 H23.11.25             280,000 280,000
平成23年12月 H23.12.25             280,000 280,000
平成24年1月 H24.1.25             280,000 280,000
平成24年2月 H24.2.25             280,000 280,000

別紙三の二 給与支払状況(原告X2)

支払日 時間給 基本給 基本給
2
基本給
3
被告Y2社
からの支払
(基本給)
基本給
合計
特別
手当
役付
手当
家族
手当
精皆勤
手当
その他
手当
残業
手当

平成20年2月 H20.2.24 1,450
平成20年3月 H20.3.25 1,450
平成20年4月 H20.4.25 1,450
平成20年5月 H20.5.25 1,450
平成20年6月 H20.6.25 1,450
平成20年7月 H20.7.25 1,450
平成20年8月 H20.8.25 1,450
平成20年9月 H20.9.25 1,450
平成20年10月 H20.10.26 1,450
平成20年11月 H20.11.27 1,450
平成20年12月 H20.12.28 1,450
平成21年1月 H21.1.25 1,450
平成21年2月 H21.2.25 1,450
平成21年3月 H21.3.25 1,450
平成21年4月 H21.4.25 1,450
平成21年5月 H21.5.25 1,450
平成21年6月 H21.6.25 1,300
平成21年7月 H21.7.25 1,300
平成21年8月 H21.8.25 1,300 145,600       145,600
平成21年9月 H21.9.25 1,300 144,300 9,500     153,800
平成21年10月 H21.10.26 1,300 145,600 4,500     150,100
平成21年11月 H21.11.27 1,300 163,800 8,100     171,900
平成21年12月 H21.12.28 1,300 148,200       148,200
平成22年1月 H22.1.25 1,300 124,800 7,500     132,300
平成22年2月 H22.2.25 1,300 163,800 5,000     168,800
平成22年3月 H22.3.25 1,300 148,200 14,500     162,700
平成22年4月 H22.4.25 1,300 163,800       163,800
平成22年5月 H22.5.25 1,300 140,400       140,400
平成22年6月 H22.6.25 1,300 191,100 12,500 3,300   206,900
平成22年7月 H22.7.25 1,300 218,400 4,000     222,400
平成22年8月 H22.8.25 1,300 208,000 4,000     212,000
平成22年9月 H22.9.25 1,300 197,600       197,600
平成22年10月 H22.10.25 1,300 208,000       208,000
平成22年11月 H22.11.25 1,300 218,400 5,000     223,400
平成22年12月 H22.12.25 1,300 208,000       208,000
平成23年1月 H23.1.25 1,300 175,500       175,500 5,000 6,500       25,187
平成23年2月 H23.2.25 1,300 208,000       208,000           11,375
平成23年3月 H23.3.25 1,300 187,200       187,200   4,400 20,800 5,000   6,093
平成23年4月 H23.4.25 1,300 222,300       222,300   5,000   5,000   56,875
平成23年5月 H23.5.25 1,300 84,175     100,000 184,175       5,000   116,431
平成23年6月 H23.6.25 1,300 216,775       216,775       5,000   63,910
平成23年7月 H23.7.25   150,000     60,000 210,000
平成23年8月 H23.8.25   150,000     60,000 210,000         4,000
平成23年9月 H23.9.25   150,000     60,000 210,000         5,000
平成23年10月 H23.10.25         210,000 210,000
平成23年11月 H23.11.25         210,000 210,000
平成23年12月 H23.12.25         210,000 210,000
平成24年1月 H24.1.25         210,000 210,000
平成24年2月 H24.2.25         210,000 210,000

別紙四の二 未払賃金(精皆勤手当)一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙四の三の一 労働時間表(原告X1)〈省略〉
別紙四の三の二 割増賃金計算一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙四の四の二 損害金計算一覧表(原告X1)〈省略〉
別紙五の一 未払賃金(精皆勤手当)一覧表(原告X2)〈省略〉
別紙五の二 未払賃金(基本給差額)一覧表(原告X2)〈省略〉
別紙五の三の一 労働時間表(原告X2)〈省略〉
別紙五の三の二 割増賃金計算一覧表(原告X2)〈省略〉
別紙六 売上等一覧表

売上 当期損失 役員報酬 被告Y3からの借入金
Y1社       累計 当期分
H16.10.1~H17.9.30 168,391,789 -2,691,526 6,000,000 3,976,000
H17.10.1~H18.9.30 154,939,375 -728,181 4,970,000 3,976,000
H18.10.1~H19.9.30 161,704,699 -2,623,805 6,000,000 5,476,000 1,500,000
H19.10.1~H20.9.30 153,582,282 -647,682 6,000,000 8,976,000 3,500,000
H20.10.1~H21.9.30 126,756,713 -5,371,443 6,000,000 11,776,000 2,800,000
H21.10.1~H22.9.30 108,294,981 -6,372,595 6,000,000 13,076,000 1,300,000
H22.10.1~H23.9.30 65,521,850 -14,172,527 4,450,000 18,376,000 5,300,000
H23.10.1~H24.2.20 7,508,025 -3,196,970 600,000 20,276,000 1,900,000
Y2社
H23.3.1~H24.2.29 24,938,540 -1,258,811 3,300,000 2,512,700 2,512,700

 

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