【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業 スタッフ」に関する裁判例(2)平成30年 3月29日 東京地裁 平28(ワ)26305号 損害賠償請求事件

「営業 スタッフ」に関する裁判例(2)平成30年 3月29日 東京地裁 平28(ワ)26305号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)26305号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA03298006

要旨
【判例タイムズ社(要旨)】
◆労働組合の組合活動に,使用者や管理職者の名誉を毀損する行為があったとしても,正当な組合活動であるとして,不法行為の成立を否定した事例

裁判経過
控訴審 平成30年10月 4日 東京高裁 判決 平30(ネ)2571号 損害賠償請求控訴事件

評釈
植村新・ジュリ臨増 1531号226頁(平30重判解)
名古道功・法時 91巻6号118頁

参照条文
民法709条

裁判年月日  平成30年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)26305号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA03298006

原告 株式会社X1(以下「原告X1社」という。)
同代表者代表取締役 A
原告 X2(以下「原告X2」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士 髙山崇彦
近藤圭介
那須勇太
原田紗衣
被告 Y1ユニオン(以下「被告ユニオン」という。)
同代表者執行委員長 Y2
被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士 棗一郎
今村幸次郎
新村響子
細永貴子

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。
 

事実及び理由

第1  請求
1  被告ユニオンは,原告X1社に対し,500万円及びこれに対する平成28年8月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告らは,原告X2に対し,連帯して500万円及びこれに対する平成28年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要等
1  事案の概要
本件は,原告X1社が,その労働組合である被告ユニオンに対し,原告X1社の社会的評価を低下させる記事をホームページに掲載したことが名誉毀損に当たるとして,不法行為に基づき,無形的損害500万円の賠償及びこれに対する不法行為の後である平成28年8月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,原告X1社の執行役員兼営業本部長である原告X2が,被告ユニオン及びその執行委員長である被告Y2に対し,被告ユニオンがホームページに原告X2がセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という。)をしたとの事実を掲載したこと及び被告Y2が原告X1社の株主総会で原告X2がセクハラをしたと発言したことがいずれも名誉毀損に当たるとして,共同不法行為に基づき,慰謝料500万円及びこれに対する不法行為の後である平成28年8月27日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで前同様の遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者等
ア 原告X1社は,衣料品,化粧品,健康食品等の開発及び販売等を行う株式会社であり,平成28年10月3日時点の従業員数は,420人である。
(争いがない)
イ 原告X2(昭和40年生の男性)は,原告X1社の執行役員兼営業本部長である。原告X1社の営業本部長は,営業部門のトップとして,セクハラ防止に取り組み,部下の営業社員らを指導・監督すべき立場にあり,1名のみが配置されている。(争いがない)
ウ 被告ユニオンは,平成23年に結成された原告X1社の労働組合である。(争いがない)
エ 被告Y2は,平成4年に原告X1社に入社し,営業スタッフ等として勤務してきた社員であり,被告ユニオンの結成以来,執行委員長を務めている。(乙26)
オ 原告X1社には,被告ユニオンの他に,代理店(原告X1社の商品を販売する個人等)を組合員とするa代理店ユニオン(以下「代理店ユニオン」という。)がある。(争いがない)
(2)原告X1社の販売組織等
ア 原告X1社は,自社の商品販売について,代理店(原告X1社のビジネスパートナーとして特約店等に対する卸売りやエンドユーザーに対する訪問販売を行う個人又は会社をいう。平成28年10月末時点で1474人である。)との間で代理店契約を締結し,代理店が原告X1社から購入した商品を一般消費者に直接販売したり,代理店の傘下にいる特約店(原告X1社のビジネスパートナーとしてビジネスメイトに対する卸売りやエンドユーザーに対する訪問販売を行う個人又は会社をいう。同月末時点17万1838人である。以下,単に「代理店」,「特約店」という場合は,上記の原告X1社の代理店,特約店を指す。)を経由して,エンドユーザー(ビジネスメイトと呼ばれる顧客や一般消費者)に販売するという形態をとっている。このように,原告X1社の商品販売は,代理店や特約店の存在抜きには成り立たない構造となっており,また,代理店及び特約店の大半は女性である。(争いがない)
イ 原告X1社の営業スタッフは,直接的には,代理店に対して,売上拡大及び組織拡大(代理店や特約店を増やすこと)の経営支援を現場に出て行うことを職務としている。(争いがない)
ウ B(昭和29年生の女性)は,平成元年9月から特約店となり,平成8年からば,「○○屋」という屋号を使用して,原告X1社の商品販売を行う代理店となった者であり,代理店ユニオンの組合員である(以下,同人を「B」という。「○○屋」がB個人を意味することがある。)。(争いがない)
エ 原告X1社と各代理店との間の代理店契約では,原告X1社からの仕入れ額が年間600万円未満であることが,代理店契約の解除事由となっていたものの,解除権行使の統一性がとれていない状況にあった。そこで,原告X1社は,解除権行使の運用基準を明確にするため,次の方針を採ることにした。すなわち,代理店の年間仕入額が600万円に満たなかったとしても,更に1年間の猶予期間を設け,それでも600万円に再度満たなかった場合は,更に半年間の猶予期間を設け,当該半年間の仕入額が300万円に満たなかった場合又は当該半年間の仕入額が300万円を満たしたとしても,更にその後の半年間で仕入額が300万円に満たなかった場合に限って,代理店契約を解除することとした(以下,この内容の方針を「600万円方針」という。)。これに対し,代理店ユニオンは,600万円方針の撤回を求めて,原告X1社と交渉していたが,平成27年6月24日,東京都労働委員会に不当労働行為救済を申し立てた。(争いがない)
オ 原告X1社の従業員は代理店や特約店の女性と宴席をともにすることがあるところ,原告X1社は,平成5年2月,営業社員に対し,「営業スタッフ心得・マナー 女性が男性と酒席を同席して不快と感じる行為(特にビジネスにおいて)」と題する書面を交付して,酒席で慎むべき行為を指導していた。同書面には,厳に慎むべき行為として,「女性に必要以上に接近する。」ことが挙げられており,「45cm以内の接近は密接距離(夫婦,親子,恋人の領域)である。腕を組む,肩に手をまわす等過度な接近は厳禁。接近された本人はもとより,まわりの人たちにも不快感を与える。」と記載されていた。(甲31から33まで,甲38から41まで,乙23)
(3)セクハラ問題に関する交渉経緯
ア 原告X1社は,平成28年3月4日から同月12日(以下,(3)において月日のみの記載は全て平成28年の事象である。)まで,米国ハワイ州への褒賞ツアー(以下「本件ツアー」という。)を企画し,原告X1社からの商品購入金額で順位をつけ,入賞した代理店及び特約店を招いて特別セミナーを開催した。Bは,傘下の特約店が入賞したため,その親代理店として同月6日から同月11日にかけての本件ツアーに参加した。(争いがない)
イ 被告ユニオンは,3月18日,原告X1社に対し,団体交渉の協議事項として,原告X2が本件ツアー中である同月8日の夜にBの身体に触る等したセクハラ事件(以下,行為態様は別として,この出来事を「本件セクハラ事件」という。)について追加するように求めた。(争いがない)
ウ 被告Y2は,3月22日,原告X1社の東京支店長に対し,本件セクハラ事件の内容について,「ハワイツアーの際,レストランを出た所で酔っ払った勢いでX2執行役員が,話もしたことのない○○屋(代)(600未満(代))の肩をいきなり複数回にわたり抱いたことで,(代)がショックを受けたという事件です。」と記載した電子メールを送信した。(甲15)
エ 被告ユニオンは,3月30日,原告X1社との団体交渉において,本件セクハラ事件の事実確認と誠意のある対応を求めた。(争いがない)
オ 原告X1社のC執行役員(以下「C役員」という。)及びD執行役員(以下「D役員」という。)は,4月4日,Bの下を訪れ,B及び目撃者である代理店及び特約店から本件セクハラ事件の状況を聴取した(以下「本件聴取」という。)。
(争いがない)
カ 被告ユニオンは,4月19日,原告X1社と団体交渉を行い,当面は,結果を静観しているので善処願いたいと発言し,原告X1社も了解した。
(争いがない)
キ 原告X1社は,5月25日,Bに対し,コンプライアンス委員会の審議の結果,原告X2の行為はセクハラに当たらないとの結論になったことを伝えた。(争いがない)
ク 被告ユニオンは,5月31日,原告X1社に対し,本件セクハラ事件後の経過,対応等について報告を求めたところ,原告X1社は,Bに対しての説明等は行っており,法的な観点からもセクハラの事案とは判断していないと回答した。これに対し,被告ユニオンは,一般的に,男性上司が部下の女性に対し,その意に反して体を触る行為はセクハラであり,複数の目撃証言もあり事実として間違いない,上場会社の一般事例では,こういう場合は懲戒解雇か降格が一般的である,現実的に代理店の間では噂は広まっており,支店の営業担当者は代理店からこの件について質問されて困っている,代理店はステークホルダーであり,誠実に対応すべきである,明らかに職場環境の劣化であり,義務的交渉事項であるなどと主張したが,両者の交渉は決裂した。(争いがない)
ケ 被告ユニオンは,6月20日,本件セクハラ事件に関する原告X1社の対応が不誠実団体交渉に当たるとして,東京都労働委員会に対し,不当労働行為救済申立てを行った。(争いがない)
コ Bは,6月21日,原告X1社に対し,代理人弁護士名義で,原告X2がセクハラ(「X2氏は,左腕をBの右腕にからめて腕を組み,右手でBの左肩から胸の上のあたりを撫でました。続けてX2氏は,両手でBの片手を握り,Bに体を寄せて耳元に口を近づけ「特約店より代理店のほうが大事だよ」とささやきました。その後,X2氏は一旦手を離したものの,直後に再びBの後ろから両手でBの両肩を抱き,肩や胸の上のあたりを撫でまわしました」)をしたこと,これについて真摯に検討し,原告X2に対してしかるべき処分を行うこと,慰謝料200万円を支払うように求めることなどを内容とする通知書(以下「本件通知書」という。)を送付した。(甲6)
(4)名誉毀損の対象行為
ア 被告ユニオンは,自身が管理する「Y1ユニオン」と題するホームページの平成28年○月○日の欄に「△営業本部長のセクハラ発覚(以下「本件見出し①」という。),会社隠ぺい(以下「本件見出し②」といい,本件見出し①と併せて
「本件見出し」という。)」という見出しを掲載した。(甲1の1)
本件見出しの下には,「本件セクハラ事件の公表にあたり,補足をさせていただきます。(中略)交渉の場で会社は,真摯に対応するので公表しないでほしいと組合に要請し,組合も本件による多方面への影響を鑑みてそれを受入れました。しかし,その後の団体交渉で報告を求めたところ,コンプライアンス委員会での結論をもって会社はセクハラにはあたらないと結論付けたと明言し,説明を求めても義務的交渉事項ではない,の一点張りで一方的に話を遮ってしまう状況になってしまいました。組合としても,営業のトップによるセクハラ行為が間違いであってほしいと願っていましたが,はからずも目撃者の中には代理店だけでなく特約店も存在していました。会社の人間が代理店の体に意図的に触れ,不快な思いをさせたのであれば,きちんとそれを認め,会社が厳正に対処するのは当然と組合は考えます。しかし,会社はセクハラにはあたらないと結論付けました。繰り返しになりますが,意図的に女性の体に触れ,不快な思いをさせているにもかかわらず,セクハラではないと会社は明言しています。この会社の判断を組合は看過できません。そもそもそのような行為をしていないといっているのであれば,被害者・目撃者の証言と大きく食い違います。また,このような行為があったと言っているのならば,その行為がセクハラではないと明言する根拠が不明です。いずれにしても今の状況は明らかに職場環境の劣化につながるもので,当然この件は義務的交渉事項と組合は考えます。以上の経緯から,組合は本件セクハラ事件について,このままでは被害者がいるにもかかわらず,何も無かったこととする姿勢は社会的に許されるはずもなく,よい会社となるべく内々で交渉しようとしましたが,それも打ち切られてしまったので,早期改善を願い止むを得ず公表に至った次第です。」と掲載されている。(甲1の1)
イ 本件見出しの横には,「詳しくはこちら」とのリンクを貼られた部分があり,そのリンク先には,「X1社の△営業本部長が今年3月のハワイセミナーのある日の晩,酔っ払ってツアーに参加していた某代理店の体を数回触り,セクハラ行為を行ったのです(以下「本件記載」という。)。当ユニオンにおいては,被害者代理店から相談を受けたため,事前確認を行ったところ,複数の代理店や特約店から証言を得られたため,3月30日の会社との団体交渉において事実を伝え,早急に厳正な処分を求めました。(中略)その後,4月初めに会社の執行役員が被害者代理店にヒアリングを行い,その際目撃者からの証言もヒアリングしたとのことです。ところが,先月5月31日の団体交渉時に会社に報告を求めたところ,①本件は会社と代理店間の事由でありユニオンとの義務的交渉事項ではない②会社として当該代理店に対し,説明等の対処は行っており,法的な観点からも,セクハラとしての事案とは判断していないというとんでもない回答をしてきました。当ユニオンからは①上場会社の一般事例では,複数の目撃証言もあり,こういう場合は懲戒解雇か降格が一般的である(中略)旨主張しましたが,会社は自説に固執し,交渉は決裂しました。(後略)」と掲載されている。(甲1の1及び2)
ウ 被告Y2は,平成28年6月29日に実施された原告X1社の株主総会において,「私は社員でもあり,Y1ユニオンの委員長もやっております。」,「X1社の執行役員でもあり,営業本部長でもあるX2氏は本年の3月のハワイツアー中に目撃者が何人もいる中で某代理店にセクハラ行為,まあ,酔っ払った加害者が3回に渡って,被害者の腕や肩から胸にかけての部分を触った(以下,この発言部分を「本件発言」といい,本件見出し及び本件記載と併せて「本件見出し等」といい,これらの掲載及び発言行為を併せて「本件見出し等の掲載等」という。)ということなんですが,こういう行為を行って被害者が裁判所に提訴すると聞いています。また,X1社のコンプライアンス委員会は本行為をセクハラには当たらないとしたことも聞いています。被害者からの相談により,我々Y1ユニオン独自でも調査しましたけれども,目撃証言もあって,セクハラ行為を疑う余地はないです。ここで聞きたいのは,何故コンプライアンス委員会はそれをセクハラに当たらないとしたのか,これが本当なのか。本当だとすればなぜ,セクハラに当たらないとしたのかコンプライアンス委員会の委員長のE氏に伺いたい」との質問をした。これに対し,被告X1社のコンプライアンス委員会のE委員長は,「直接当社の方からのヒアリングも実施しました資料も合わせて検討した結果ですね,当時の状況などから判断しまして,性的嫌がらせというのには該当しないだろうといった判断に至りました。(中略)コンプライアンス委員会については基本的に非開示ということになっておりますので,細かい詳細については差し控えたいと思います。」と回答した。(甲2の1及び2)
(5)本件訴訟の提起
原告らは,平成28年8月5日,本件訴訟を提起し,Bは,同年9月16日,原告らに対し,本件セクハラ事件について,損害賠償を求める別件訴訟を提起した(当庁平成28年(ワ)第31531号)。
(当裁判所に顕著な事実)
第3  争点及び争点に関する当事者の主張
1  争点(1)(本件見出し等の掲載等の名誉毀損該当性)
(原告らの主張)
一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,本件見出し①は,原告X2のセクハラが発覚したという事実を,本件見出し②は,原告X2のセクハラについて原告X1社が隠ぺいしたという事実を,本件記載は,③原告X1社に所属する原告X2が,平成28年3月のハワイセミナーが行われたある日の晩,酔っ払って,ハワイセミナーのツアーに参加していた代理店の体を数回触り,セクハラを行ったという事実を,本件発言は,④原告X1社の執行役員であり,営業本部長である原告X2が,平成28年3月のハワイツアー中に,酔っ払い,代理店に対し,3回にわたって,その腕や肩から胸にかけての部分を触るセクハラを行ったという事実を,それぞれ摘示するものである。
そして,これら①から④までの摘示事実は,いずれも原告らの社会的評価を低下させるものである。
(被告らの主張)
本件見出し①及び本件記載は,「△営業本部長」とイニシャルで表記しているから,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,原告X2を指していることは分からないので,同人の社会的評価を低下させるものではない。本件見出し②は,その後に記載されている事実も併せて,一般の読者の普通の注意と読み方をすれば,原告X1社がセクハラの事実を否定したということを意味するものにすぎず,原告X1社の社会的評価を低下させるものではない。本件発言は,株主総会という特定の関係者しか出席していない場における発言であり,伝播の可能性は低いこと,本件発言と併せて,「X1社のコンプライアンス委員会は本件行為をセクハラには当たらないとしたことも聞いています」との発言もしていること,原告X1社も,本件発言の直後にコンプライアンス委員会の見解として,性的嫌がらせというのには該当しないとの判断に至ったと回答していることからすれば,本件発言は原告X2の社会的評価を低下させるものではない。
2  争点(2)(本件見出し等の掲載等の正当な組合活動該当性)
(被告らの主張)
本件見出し等の掲載等は,セクハラの被害者救済,再発防止等を求める労働組合の組合活動の一環として行われた行為である。組合活動の一環としての情宣活動については,その内容が使用者の名誉,信用を毀損するものであっても,(1)摘示事実の真実性,(2)表現内容の相当性及び(3)表現活動の目的,態様,影響等の一切の事情を総合考慮し,正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものである場合には,違法性が阻却される。仮に本件見出し等の掲載等が名誉毀損に当たるとしても,本件における以下の(1)から(3)までの事情を総合考慮すると,正当な組合活動として違法性が阻却されるから,被告らに不法行為は成立しない。
(1)原告X2によるセクハラの真実性
原告X2は,平成28年3月8日,本件ツアーの夕食時にBと同じレストラン「b」(以下「本件レストラン」という。)内にいたところ,一足先に同レストランを出たBを追い,同レストラン前の路上にいたBに対し,その意に反して,自分の左腕をBの右腕にからめて腕を組み,腕を組んだまま右手で胸の上あたりを撫で,いったんBから体を離した後,両手でBの片手を包み込むように握り,左手を背中に回しながら右斜め後ろから耳元に口を近づけ,「特約店より代理店のほうが大事だよ。」と小声でささやいた。さらに,Bが原告X2を避けるように背中を向けたところ,その後ろから両手で両肩を抱きしめ,その手を前に回し,肩や鎖骨の上,胸の上部を撫で回した。これは明らかにセクハラに該当する行為であるから,本件見出し等は,客観的な真実であるセクハラの事実を摘示したものである。
(2)表現内容の相当性
本件見出し等は,原告X2を「△営業本部長」と表現したり,原告X1社側の見解も併せて触れるなどしており,その表現内容は相当である。
(3)表現の目的等
被告らは,当初,原告X1社の自主的な解決に期待し,外部への公表を差し控えていたが,原告X1社がセクハラの存在自体を否定し,企業内解決の途が断たれたことから,被告らは,本件セクハラ事件による被害の救済及び再発防止を目的として本件見出し等の掲載等を行った。
(原告らの主張)
原告X1社の代理店は,原告X1社と代理店契約を締結しているビジネスパートナーであり,原告X1社の労働者ではない。そのため,Bは,代理店ユニオンの構成員にすぎず,被告ユニオンの組合員ではないため,Bに関する本件セクハラ事件は,代理店ユニオンの組合活動に関係するとはいえても,被告ユニオンの組合活動とは無関係であって,本件見出し等の掲載等は,組合活動の一環であるとはいえない。仮にこの点を別としても,次のとおり,被告らによる本件見出し等の掲載等は,正当な組合活動として違法性を阻却されるものではない。
(1)原告X2によるセクハラの真実性
原告X2は,平成28年3月8日,本件レストラン前の路上において,後ろ向きに立っていたBの右側から近づき,自らの存在に気付かせるため,自らの左手でBの右腕に3回ほど軽く触れて注意を引き,「来てくれてありがとうございました。」と述べ,Bが「皆が頑張ってくれているおかげ。」と述べると,原告X2は,「それは代理店(B)が頑張ったおかげですよ。」と返答し,Bに感謝の意思を表すために両手で握手をした。
以上の事実経過に反するBの供述,とりわけ,被告ら代理人作成の本件通知書には,原告X2が右手でBの左肩か胸の上あたりを撫でた旨の記載があるにもかかわらず,証人尋問では,左肩ではなく右肩を撫でたと証言しており,核心部分で内容が変遷しているなど信用性は認められないから,原告X2によるセクハラという事実の真実性は認められない。
(2)表現内容の相当性
「セクハラ」や「隠ぺい」という激情的かつ過激な表現を使用し,原告らを攻撃するかのような形でされた本件見出し等は,表現内容自体が相当ではない。
(3)表現の目的等
被告らは,事実に反する激情的な表現に及んでいることからして,原告らを貶める目的を有していた。また,仮に被告らに職場環境の改善を図る目的があったとしても,不特定多数の第三者が閲覧し得るインターネット上で本件記載をしたり,株主総会で本件発言をするという表現活動の態様は,上記目的に照らして著しく不均衡である。本件見出し等の結果として,原告X2は,営業本部長として必要な活動ができなくなっており,原告らの事業活動に大きな影響が生じている。
3  争点(3)(損害の額)
(原告らの主張)
本件見出し等の掲載等により,原告X2は精神的苦痛を被り,原告X1社は信用を毀損されて無形的損害を被った。その損害は,少なくとも原告らにつき各500万円を下らない。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
第4  争点に対する判断
1  争点(1)(本件見出し等の掲載等の名誉毀損該当性)
(1)ホームページに掲載された記事の意味内容ないし株主総会での発言が人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,当該記事や当該発言についての一般の読者ないし出席者の普通の注意と読み方ないし聞き方を基準として判断すべきである。
(2)本件見出し①について
本件見出し①は,一般の読者の普通の注意と読み方を基準とし,本件見出し①の下にある記事全体を併せて読めば,原告X2が行ったセクハラが発覚したとの事実を摘示するものであり,読者に対し,原告X2は,セクハラに該当する行為をしているとの印象を与えるものであると認められるから,原告X2の社会的評価を低下させるものといえる。
これに対し,被告らは,本件見出し①は,原告X2のことを「△営業本部長」とイニシャルで表記しているので,原告X2の社会的評価を低下させるものではないと主張する。しかしながら,前提事実で摘示したとおり,原告X1社は営業本部長として原告X2の1名のみを配置しており(前提事実2(1)イ),原告X1社の関係者であれば,「△営業本部長」が原告X2を指すものと理解できるものであって,原告X1社の従業員,代理店及び特約店等その関係者は17万人以上に上ることからすれば(同2(2)ア),伝播可能性も認められ,原告X2の社会的評価を低下させるものといえる。したがって,被告らの上記主張は採用できない。
(3)本件見出し②について
本件見出し②は,一般の読者の普通の注意と読み方を基準とし,本件見出し②の下にある記事全体を併せて読めば,原告X2が行ったセクハラを原告X1社が隠ぺいしたとの事実を摘示するものであり,読者に対し,原告X1社は,営業本部長である原告X2のセクハラに該当する行為を故意に隠しているとの印象を与えるものであると認められるから,原告X1社の社会的評価を低下させるものといえる。
これに対し,被告らは,本件見出し②は原告X1社がセクハラの事実を否定したということを意味するものにすぎないから,原告X1社の社会的評価を低下させるものではないと主張する。確かに,本件見出し②の下には,「会社はセクハラにはあたらないと結論付けたと明言し」との記載があり,原告X1社がセクハラの事実を否定したことを意味する記載があるが,「隠ぺい」とは,単に何らかの事実を否定する意味ではなく,故意に物事を隠すという意味であるから,当該記載があるからといって,読者が,原告X1社が単にセクハラの事実を否定したにすぎないとの印象を持つにとどまるとみることはできない。したがって,被告らの上記主張は採用できない。
(4)本件記載について
本件記載は,一般の読者の普通の注意と読み方を基準とし,本件記載の前後記事を併せて読めば,原告X2が,酔っ払って,セミナーに参加していた代理店の体を数回触り,セクハラを行ったとの事実を摘示するものであり,読者に対し,原告X2は,セクハラに該当する行為をしているとの印象を与えるものであると認められるから,原告X2の社会的評価を低下させるものといえる。
(5)本件発言について
本件発言は,一般の出席者の普通の注意と聞き方を基準とし,本件発言の前後の発言を併せて聞けば,原告X2が,酔っ払って,セミナーに参加していた代理店の体を数回触り,セクハラを行ったとの事実を摘示するものであり,出席者に対し,原告X2は,セクハラに該当する行為をしているとの印象を与えるものであると認められるから,原告X2の社会的評価を低下させるものといえる。
これに対し,被告らは,株主総会という特定の関係者しか出席していない場における発言であり伝播の可能性は低く,原告X1社は,本件発言後,即座にセクハラに該当しないとの判断に至ったと回答しているのであるから,本件発言は原告X2の社会的評価を低下させるものではないと主張する。しかしながら,株主総会という特定の関係者が参加する会議であったとしても,株主総会の出席者から原告X1社の従業員,代理店及び特約店等17万人以上の関係者に伝播する可能性はあると認められる。また,被告Y2が本件発言と併せて,原告X1社側の見解も紹介したことや本件発言後に原告X1社側が自己の見解を回答したことを考慮しても,出席者において,原告X2がセクハラに該当する行為をしたわけではないとの印象を持つと認めることはできない。したがって,被告らの上記主張は採用できない。
(6)小括
以上のとおり,本件見出し等の掲載等により,原告らの名誉を毀損したことが認められる。
2  争点(2)(本件見出し等の掲載等の正当な組合活動該当性)
(1)認定事実
前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア レストラン内での状況
(ア)原告X2は,平成28年3月8日(以下,ア及びイにおいて,時刻のみを記載した事象は同日のものである。),原告X1社の代理店である有限会社cの代表者Fとその傘下の代理店や特約店のグループ(以下「c社グループ」という。)と一緒に夕食をとるため,本件レストランに向かった。午後8時半頃,原告X2及びc社グループの合計8人がレストラン2階のテーブル席に着いたところ,隣のテーブルに,原告X1社の代理店である株式会社d(平成26年に行われた代理店セミナーにおいて,「40周年記念代理店特別功労賞」の全国19位として表彰され,平成27年に行われた代理店セミナーにおいても,累積ポイント30億円として表彰された大手代理店であり,代理店ユニオンに所属している。)の代表者とその傘下の代理店や特約店のグループら合計約25人(以下「d社グループ」という。)が座っており,既に食事を始めていた。(争いがない,乙7,32,33,弁論の全趣旨)
(イ)原告X2は,テーブルに着いた際,隣のテーブルにd社グループがいること,その中にB及び原告X1社の従業員であり代理店ユニオンの執行委員でもあるGがいることに気付いたが,d社グループに挨拶に行くことはせず,c社グループとの食事及び飲酒を始めた。(甲18,原告X2)
(ウ)原告X2は,本件セクハラ事件の約16年から17年前,原告X1社の横浜営業所の社員として働いており,その管轄の代理店にBが含まれていたため,原告X2とBは互いの顔は知っていた。しかし,その後,本件セクハラ事件時まで,二人が言葉を交わしたことは一度もなかった。(甲18,乙27,証人B,原告X2)
(エ)d社グループは,本件レストラン内で集合写真を撮影し,c社グループよりも先に食事を終え,同レストランの外に出て行った。(争いがない,乙7)
イ レストラン外での状況
(ア)原告X2は,午後9時半頃,d社グループの後を追って席を立ち,本件レストランの外に出て行った。(争いがない)
(イ)本件セクハラ事件時のB(当時61歳)の服装は,長袖のワンピースに薄手の長袖のカーディガンを羽織ったものであった。(乙7)
(ウ)原告X2は,本件レストラン前の路上にいたBに対し,同人の片手を両手で握り,耳元に口を近づけて,代理店よりも特約店の方が大事である旨ささやき,いったん離れた後で再び近づき,Bの背後から両肩を掴むようにして自分の両手を乗せ,その手でBの肩や鎖骨の部分を複数回触った(以下「本件行為」という。)。このとき,Bは,原告X2に対し,本件行為を止めるように言うなど本件行為を拒否する言動を取ることはなかったものの,不快感を覚えていた。なお,d社グループの約10名の女性が周囲にいたが,原告X2を注意することはなかった。(甲5の1及び2,乙7,9ないし11,15,22,24,27,証人B,証人H(以下「H」という。))
(エ)本件レストラン前の路上には,Bの他にd社グループの者が複数名いたが,原告X2が握手するなどして個別に挨拶をした代理店等は,B以外にはいなかった。(原告X2)
ウ Bの被害申告状況
(ア)Bは,上記イの出来事の後,同室であった特約店のI(以下「I特約店」という。)に対して本件行為が不快であった旨を伝え,日本に帰国後,同代理店からBの親代理店であるd社代理店のJ社長(以下「J社長」という。)に話が伝わり,J社長と代理店のK(以下「K」という。)が,平成28年3月18日,被告Y2と会食した際,本件セクハラ事件について伝えた。(乙22,26,27,証人B,被告Y2)
(イ)被告Y2は,平成28年3月19日,Bに電話し,本件行為の内容について確認した。(乙26,27)
(ウ)被告Y2は,平成28年3月30日に予定されていた被告ユニオンと原告X1社との間の団体交渉の議題として本件セクハラ事件を取上げ,被告ユニオンは本件セクハラ事件の確認と誠意ある対応を求めた。(乙26)
(エ)a原告X1社のC役員及びD役員らは,平成28年4月4日,B,J社長,K,I特約店らから本件セクハラ事件の状況を聴取した(本件聴取)ところ,Bは次のとおりの説明をした。
原告X2は,レストラン前の路上にいたBに対し,自分の腕をBの腕にからめて腕を組み,いったんBから体を離した後,両手でBの片手を包み込むように握り,左手を背中に回しながら右斜め後ろから耳元に口を近づけ,「特約店より代理店のほうが大事だよ。」と小声でささやいた。さらに,原告X2がBの後ろから両手でBの両肩を抱いてきて,その手を前に回して肩や鎖骨周辺部分を押さえるようにしたが,胸のふくらみのある部分に手を触れることはなかった,何度も触られて嫌な気分になった。
b I特約店は,本件聴取において,原告X2がBの説明するような行為に及んだことを見ており,Bは原告X2の行為をおそらく嫌がっていると自分(I特約店)も感じていた旨を述べた。
c 本件聴取の際,被告ユニオンの話や600万円方針の話は全く話題にならなかった。
(甲5の1及び2,乙22,26,27,証人B)
(2)認定事実についての補足説明
ア 原告X2は,本件レストラン前の路上において,後ろ向きに立っていたBの右側から近づき,自らの存在に気付かせるため,自らの左手でBの右腕に3回ほど軽く触れて注意を引き,「来てくれてありがとうございました。」と述べ,Bが「皆が頑張ってくれているおかげ。」と述べたのに対し,原告X2は「それは代理店(B)が頑張ったおかげですよ。」と返答し,Bに感謝の意思を表すために両手で握手をした旨主張し,その旨供述する。
そこでBの本件行為についての被害申告状況をみるに,Bは,本件ツアーのホテルで同室であり,本件行為を目撃していたI特約店に不快感を伝え,そこから別の代理店等を通じて被告Y2に伝わり,本件行為から11日後の平成28年3月19日,被告Y2に対して,本件行為とそれによる不快感を伝えたこと,本件行為から27日後の同年4月4日,前記1(1)ウ(エ)で認定したとおり,本件聴取において,原告X2に両手で握手をされたり,肩を抱かれ,手で押さえられたことについて説明し,何度も触られて不快感を覚えたことを述べている。このように,Bは,本件行為直後から不快感を訴え,数日後にはJ社長に話が伝わって,その後被告側の知るところとなっているが,その申告過程に不自然な経緯は見当たらず,Bが本件行為について,その直後から不快感を訴えていたことは,真に不快な行為があったことを推認させる。また,Bは,本件行為の時点まで,原告X2とは一度も会話したことがないことは前判示のとおりであり,本件聴取の際に,被告ユニオンのことや,600万円方針の話が全く出ていないことに照らしても,少なくとも,本件行為の直後からその27日後の本件聴取の時点において,原告X2との関係において,原告X2を陥れたり,被告ユニオンの立場強化等のために,本件行為について虚偽の事実を述べたことをうかがわせるに足りる状況は見当たらない。これらの事情に加えて,I特約店は,本件聴取において,Bが原告X2の行為を不快に感じているように見えた旨述べていることも総合すると,原告X2は,単にBと両手で握手したにとどまらず,少なくとも本件行為を目撃していたI特約店から見ても不快に感じるような行為に及んだというべきであり,Bが本件聴取において明確に供述している内容である原告X2がBの肩を抱き手で押さえて肩や鎖骨周辺部分を触ったことが認められる。
イ 原告らの主張
(ア)これに対し,原告らは,Bは本件事情聴取時には,肩から胸の上あたりを触られたことを明確に否定していたが,平成28年6月21日の本件通知書の時点で,これを初めて述べるに至ったものであり,供述が核心部分で変遷している旨主張する。
しかし,Bは,本件事情聴取においても,原告X2に背後から肩を抱かれたことは明確に述べており,原告らが指摘する「これはなかったです。」との発言は,証拠(乙22,証人B)及び弁論の全趣旨によれば,胸のふくらみのある部分を直接触ったことを否定したものであり,鎖骨付近に触れたことを否定したものではないというべきである。したがって,Bの供述について,その核心部分で変遷があったということはできない。
(イ)原告らは,BやHのようにd社グループに属する者は,原告X1社の600万円方針に強く反発していたこと,原告X2が本件レストランにおいて,後から来た同グループに全く挨拶しなかったことに強い不満を感じていたことからすると,上記反発や原告X2に対する不満等から,原告X2に不利益な内容の虚偽の陳述をする動機がある旨主張する。
しかし,代理店ユニオンが原告X1社の600万円方針に反発していたことは前提事実摘示のとおりであるものの(前提事実1(2)エ),代理店ユニオンが600万円方針に反対であったとしても,600万円方針は,原告X1社において,どの程度の規模の代理店を通じて事業を行っていくかという全体の経営方針に直接関わる問題であって,原告X2個人をセクハラの加害者であるとして貶めることによって,直ちに600万円方針の正当性に疑問が生ずるという関係にあるとも考えられず,本件聴取の際に被告ユニオンや600万円方針が全く話題にならなかったことは前判示のとおりであることも考慮すると,原告ら主張の事実をもって,d社グループが虚偽の陳述をする動機があるということはできない。また,証拠(乙14,15,証人H)によれば,d社グループの中には営業本部長である原告X2が挨拶に来ないことに不満を持っていた者がいることが認められるものの,そのことをもって,複数のd社グループの者が虚偽の供述をしてセクハラ事件を作り上げる動機になったとみることにも飛躍があり,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。
(ウ)原告らは,d社グループの者が作成した陳述書(乙12から18まで)は,被告Y2による記載内容の指示に従って作成されたものであり,その内容も本件行為を明確に裏付けるものではない旨主張する。
なるほど,証拠(甲16の1及び2)によれば,被告Y2は,陳述書のひな形を作成し,同ひな形に「その時起きたこと,目撃したことを書いてください。また目撃時に感じたことも書いて下さい。通知書と齟齬がないようお願いします。」と記載していたことが認められる。
しかしながら,d社グループに属する者の陳述書の内容をみると,「後ろから両手で肩を抱き,肩や胸の上辺りを撫で回しました。」(乙12),「肩をしっかり抱きながら,顔を寄せ,親しげにしばらく話しかけられていました。」(乙13),「肩をよせたりし始めた。そして手を握り耳打ちしたりまた両手で肩を抱くような仕草」(乙14),「Bさんの後ろにいて,肩に手を置いたり,胸元のあたりまで手をまわしている様に見えました。とても密着していました。」(乙15),「肩に手をまわし,親しげに話しかけていました。」(乙16)となっており,前記認定に係る本件通知書に記載された行為の記載内容と完全に一致しているわけではなく,その記載内容からみて,各々が目撃した内容を陳述したものと認められるから,被告Y2から送付された陳述書の書式に「通知書と齟齬がないようにお願いします。」との記載があるとしても,各人の陳述内容が被告Y2の指示した内容であるとは認められず,被告Y2の上記指示があったからといって,それだけで直ちに記載内容の信用性がないということはできない。ただし,d社グループに属する者の陳述書(乙12から乙18まで)のうち,証人として証言したHの陳述書(乙15)
以外の陳述書を度外視したとしても,前記2(1)イ(ウ)に掲記の各証拠により,本件行為を前記認定の限度で認定できるのであるから,いずれにしろ,この点に関する原告らの主張は,理由がない。
(エ)原告らは,原告X2において,d社グループは,被告ユニオンの執行役員であるGが担当しており,原告X1社と対立関係にある代理店ユニオンのメンバーであると認識していたのであるから,そのようないわば四面楚歌の中でセクハラに及ぶことは経験則上ありえない旨主張する。
しかしながら,原告X2は,本件行為当時,相当に酒に酔っていた可能性もあり,周囲の状況にかまわず,本件行為に及んだ可能性がある。仮にそうでないとしても,原告X2は,殊更女性の身体に触ろうという性的な意図をもって,本件行為に及んだものではなく,慰労する趣旨で本件行為に至った可能性もあり,そうだとすると,代理店ユニオンのメンバーが周囲にいることを認識していたとしても,本件行為に及ぶことが経験則上ありえないということはできない。
また,そもそも,原告X2は,本人尋問において,相手の女性が明示的に拒絶していない場合であれば,相手方との関係性によっては,腕や肩に触ることも許され,セクハラには当たらないとの認識を示していることからすれば,前記認定に係る本件行為の接触程度であれば,代理店ユニオンのメンバーの存在にかかわらず,また酒酔いの程度にかかわらず,本件行為に及ぶことに抵抗がなかった可能性もあるところである。したがって,いずれにせよこの点に関する原告らの主張は採用することができない。
(3)正当な組合活動該当性について
本件見出し等の掲載等が原告らの名誉を毀損する違法な行為であるとしても,本件見出し等によって摘示された事実が真実であるか否か,真実と信じることについて相当な理由が存在するか否か,本件見出し等の掲載等の目的及び態様等の一切の事情を総合考慮し,正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものである場合には,本件見出し等の掲載等の違法性は阻却されるものと解するのが相当である。
ア 原告X2によるセクハラの真実性
(ア)セクハラとは,一般的には相手方の意に反する性的な言動をいうところ,前記のとおり,職場又は業務上の関係者間のセクハラについては,被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも,職場等の人間関係や業務上の取引関係の悪化を懸念して,加害者に対する抗議や抵抗等を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることから(前掲最一小判平成27年2月26日参照),業務上の関係を有する男性の女性に対する身体的接触を伴う言動が被害者の意思に反するセクハラに該当するか否かは,接触の態様,程度及び目的,被害者の不快感の程度,上下関係を含む当事者間の従前の職務における関係,当該行為時の時間的,場所的状況等を総合して,社会通念上許される限度を超えるか否かによって決するのが相当である。
(イ)これを本件についてみるに,原告X2は,Bの背後からBの両肩を掴むようにし,肩に乗せた両手を動かし,その際,Bの鎖骨付近を複数回触ったことは前記2(1)イ(ウ)で認定したとおりである。
前記認定のとおり,Bは,原告X2の本件行為について,不快感を抱いたものの,その場では何らの異議等を述べていないところ,Bは原告X1社の代理店であるのに対して,原告X2は原告X1社の営業部門のトップであるという業務上の関係があること,Bは平成28年3月12日にハワイから帰国後数日内に被告ユニオンに本件セクハラ事件について相談していることに,前判示の職場又は業務上の関係者間のセクハラの特質等を考慮すると,本件行為後直ちに異議を述べなかったことをもって,Bが不快感を感じなかったことの根拠とすることはできない。
以上の事情に加え,Bと原告X2とは,十数年ぶりに再会したものであり,その間一度も会話をしたことがない程度の関係であり,夕食が終了した午後9時半ころの時間にd社グループの約10名の女性が周辺にいる状況において,業務上の関係にある会社の男性幹部社員である原告X2が,背後から,両肩に手を置いて,その手を動かし,女性であるBの肩や鎖骨付近を複数回触ったことは,Bに羞恥心や不快感を覚えさせるに足りるものといえ,Bの意に反する性的言動としてセクハラに当たるというべきである。
したがって,原告X2によるセクハラを摘示した本件見出し等は,真実であると認められる。
イ 表現内容の相当性について
(ア)「隠ぺい」という表現
「隠ぺい」とは,物事を隠すことを意味するところ,原告X1社は,当事者及び関係者らから事情聴取を行い,コンプライアンス委員会の判断も踏まえて,本件行為は認められず,原告X2にセクハラに該当する行為はなかったとの結論に至ったものであり(前提事実2(3)),本件行為を故意に隠したことを認めるに足りる証拠はないから,その表現の適切性について疑問を差し挟む余地がある。
しかしながら,原告X1社が,セクハラに該当する本件行為が存在しないとの判断を出した時点において,被害者であるBの供述及びそれに沿う内容の複数の目撃者供述が存在したことに加え,本件行為が前判示の限度で真実として認められることに照らせば,被告らとしては,原告X1社の上記判断が事実をねじ曲げて隠したものであると受け止めたとしても,合理的な理由があるというべきである。
したがって,被告らにおいて,原告X1社による隠ぺいが真実であると信じたことについて相当な理由があったと認められる。
(イ)表現態様について
被告ユニオンは,本件見出し及び本件記載とともに,原告X2の行為はセクハラに当たらないという原告X1社側の見解も併記していること,被告Y2は,本件発言の際,原告X1社側の上記見解も紹介していること,労働組合がホームページを通じて情宣活動をすることは一般的な活動であるといえること,本件見出し①及び本件記載は,原告X2について,「△営業本部長」というイニシャルで表記しているため,原告X1社の関係者以外の者が閲覧したとしても,「△営業本部長」が原告X2であると直ちに特定できないこと,株主総会では,原告X1社の幹部社員によるセクハラという問題の性質上,セクハラをした個人を特定して質問する必要があったといえることなどの事実を総合考慮すれば,本件見出し等の掲載等は,表現態様も相当なものというべきである。
ウ 表現の目的等
前提事実2(3)及び(4)に摘示した各事実に照らせば,被告らは,本件セクハラ事件の被害者救済及びセクハラの再発防止等を求める労働組合の組合活動の一環として本件見出し等の掲載等を行ったことが認められる。
これに対し,原告らは,Bは,被告ユニオンの組合員ではないから,本件セクハラ事件は,被告ユニオンの組合活動とは無関係であり,組合活動の一環とはいえないと主張する。
しかしながら,前提事実に摘示したとおり,原告X1社の代理店及び特約店の大半は女性であり,原告X1社の営業社員はこれらの女性と宴席をともにすることがあるため,原告X1社は営業社員に対して女性と酒席を共にする場合のマナーについて指導していたこと(前提事実2(2)オ),営業本部長は営業職員に対してセクハラ防止を指導する立場にあること(同2(1)イ)などの事実に鑑みれば,原告X2が代理店の女性に対して,セクハラをしたか否かという問題は,営業本部長としての適格性の問題のみならず,部下である原告X1社の営業社員の職場環境に関わる問題であるといえるから,被告ユニオンの組合活動の範囲に含まれるというべきである。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
エ 小括
以上のとおり,原告X2によるセクハラについて真実性が認められること,隠ぺいという表現について真実相当性が認められること,本件見出し等の摘示等は,労働組合の組合活動の一環として被害者救済及びセクハラの再発防止等を目的としてされたものであり,その表現態様も相当なものであること,被告ユニオンは,当初,本件セクハラ事件の解決を原告X1社内の自主的解決に委ね,非公表のまま交渉を進めていたこと(前提事実2
(3))などの事情を総合考慮すれば,本件見出し等の摘示等は,正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものであり,その違法性が阻却されるから,不法行為は成立しないというべきである。
よって,原告らの被告らに対する(共同)不法行為に基づく各請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
第5  結論
以上によれば,原告らの被告らに対する各請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長春名茂 裁判官 石川真紀子 裁判官 堀田秀一)
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