【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業 スタッフ」に関する裁判例(12)平成23年 6月 9日 東京地裁 平21(ワ)2557号 損害賠償請求事件

「営業 スタッフ」に関する裁判例(12)平成23年 6月 9日 東京地裁 平21(ワ)2557号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成23年 6月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)2557号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2011WLJPCA06098002

要旨
◆新車販売店のフランチャイザーである被告F社との間でフランチャイジーとして加盟店契約を締結し、店舗を開店したものの、赤字経営により閉店した原告が、被告F社及び加盟店加入の勧誘等を行った被告L社に対し、信義則上又は加盟店契約上の説明義務違反ないし情報提供義務違反を理由に損害賠償の支払を求めた事案において、被告F社の履行補助者としての被告L社が銀行向けに作成した新車販売台数のシミュレーションは合理的根拠を欠くもので、説明義務違反が認められるなどとして、被告らの損害賠償義務を認めた上で、原告にも過失があるとして7割の過失相殺をし、請求を一部認容した事例

参照条文
民法415条
民法709条
民法719条
民法722条2項

裁判年月日  平成23年 6月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)2557号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2011WLJPCA06098002

栃木県真岡市〈以下省略〉
原告 株式会社シーズニング
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 嶋田雅弘
同 鈴木良
京都市〈以下省略〉
被告 エフシステム株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 藤井正大
東京都中央区〈以下省略〉
被告 株式会社エル・シー・エーホールディングス
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 川戸淳一郎

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して,1360万円及びこれに対する平成18年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用はこれを4分し,その3を原告の,その余を被告らの各負担とする。
4  この判決は,第2項を除き,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,原告に対し,連帯して,5081万0164円及びこれに対する平成18年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,新車販売店のフランチャイザーである被告エフシステム株式会社(以下「被告エフシステム」という。)との間で,フランチャイジーとして加盟店契約を締結し,栃木県宇都宮市内で新車販売の店舗を開店したものの,赤字経営により1年5か月程で閉店した原告が,被告エフシステムと,同社との業務提携契約に基づく加盟店募集業務の一環として,原告に対する加盟店加入の勧誘等を行った被告株式会社エル・シー・エーホールディングス(以下「被告LCA」という。)に対し,被告らには,加盟店契約締結前から店舗開店前までの時期における,信義則上又は加盟店契約上の説明義務違反ないし情報提供義務違反等のの不法行為又は債務不履行(ただし,被告LCAに対しては不法行為のみ)があり,その結果原告は,真実を知らされていれば契約しなかったはずの加盟店契約を締結して加盟金等を支払い,真実を知らされていれば負担するはずのなかった店舗開店費用等を負担するなどして損害を被ったと主張して,その賠償金の連帯支払を求めた事案である。
第3  前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨(詳細は本文中の丸括弧内に表示し,争いのない事実であっても基本的書証については参照として〔〕内に表示する。)によって容易に認定することができる。
1  原告は,飲食店等を経営する株式会社である。
2  被告エフシステムは,自動車販売フランチャイズチェーン「Fシステム」(以下「Fシステム」という。)の本部を運営する株式会社である。
3  被告LCAは,企業経営全般に渡るコンサルティング業務を行う株式会社である。
被告LCAは,平成14年11月20日,被告エフシステムとの間で,被告LCAが,被告エフシステムから,同被告が運営するFシステムの加盟店募集業務及びスーパーバイジング業務(以下「SV業務」という。)を受託する旨の業務提携契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結した。同契約の契約期間は3年であり,1年間毎の自動更新特約が付されてはいたが,被告エフシステムは被告LCAに対し,平成17年9月26日ころ,同年11月19日の期間満了後の更新はしない旨の意思表示をし,本件業務委託契約は同日の満了をもって終了した(乙1,5)。
4  原告は,平成16年3月20日,被告エフシステムとの間で,同被告をフランチャイザー,原告をフランチャイジーとする加盟店契約(以下「本件契約」という。)を締結した(なお,本件契約の契約書上の作成年月日は同年4月1日である。)〔甲5〕。
ただし,本件契約上,原告が被告エフシステムに支払うべき加盟金及び開業準備金(以下「加盟金等」という。)の支払期限は,契約締結から2週間以内と定められていたが,実際に原告が被告エフシステムに対して加盟金等を支払ったのは,加盟金等の支払原資とするための銀行融資が得られた後である平成16年9月3日であった〔甲7の1,2〕。
5  原告は,平成17年4月2日,栃木県宇都宮市内において,Fシステム○○店(以下「本件店舗」という。)を開店したが,開店当初から赤字経営が続き,平成18年8月31日には閉店した。
なお,原告は,本件契約締結から本件店舗の閉店までの間に原告に生じた損失額の合計は,5081万0164円にのぼると主張して本訴を提起したが,最終的な立証対象損害額については,4525万9500円に絞ると主張している。
第4  争点
1  被告LCAの不法行為の存否
(原告の主張)
(1)本件契約締結前の説明義務・情報提供義務違反
ア およそフランチャイズ契約では,フランチャイザーは出店予定者に対し,フランチャイズ契約を締結してフランチャイジーになるかどうかの判断材料たる情報(特に対象店の売上げや収益の予測に関するもの)を,適時,適切かつできる限り正確に,提供すべき信義則上の義務がある。
イ 被告LCAは,本件業務委託契約に基づきフライチャイザーたる被告エフシステムから,Fシステムの加盟店募集業務を受託した者として,出店予定者に対し,フランチャイザー同様の信義則上の義務を負う。
ウ 被告LCAは,具体的な説明義務・情報提供義務として,以下のとおりの義務を負っていたにもかかわらず,以下のとおりこれに違反した。
(ア)「新車販売フランチャイズ〈Fシステム〉加盟店全国最終募集のご案内」と題されたパンフレット(以下「勧誘パンフレット」という。)(甲3の1)上における収支シミュレーションとして,本来であれば,自動車販売の未経験者による店舗開店であることを前提に,合理的かつ十分な資料に基づく販売台数を記載すべき義務があるにもかかわらず,これに反して,実際にはFシステム加入前から自動車販売業を行っていた経験のある会社が経営する,Fシステム上田店における平成15年度の単年度売上実績のみを参考に,初年度の販売台数を222台とする収支シミュレーションを作成した上,平成16年3月5日ころ,かかる勧誘パンフレットを原告に交付した。
(イ)前記勧誘パンフレット(甲3の1)を原告に交付するにあたり,そこに記載されている収支シミュレーション上の初年度の販売台数が,自動車販売の経験のあるFシステム上田店における平成15年度の実績だけを基準として作成されたものであることを説明すべき義務があるのに,これを説明しなかった。
(ウ)フランチャイザーである被告エフシステムがフランチャイジーのために行うという商品の仕入体制の整備の内容とは,実際には日本興亜損保代理店D氏の個人的人脈に基づき,同人と共に個人的付き合いのあるディーラーを訪問して,仕入れについて依頼するという程度のものでしかなかったから,被告LCAは,かかる仕入体制の不十分さを原告に説明すべき義務を負っていたのにこれを行わず,むしろ「仕切先確保は本部スタッフが店舗開業時に適切な仕切値で全メーカー車種の仕入を行えるようにサポートさせて頂き,仕切先を確保いたします。」(甲3の3頁等)等と説明した。
(エ)被告エフシステムの紹介する外注工場は,実際には被告エフシステムの要求する手数料の額が高額に過ぎることを理由に,鈑金や修理の仕事は受け付けなかった。被告LCAは,かかる外注工場体制の不十分さを原告に説明すべき義務を負っていたのにこれを行わず,むしろ「外注先の確保は,開業時に本部スタッフがサポートさせて頂いております。基本的には出店地域近隣のディーラー,ロータス加盟整備工場などを中心として外注先の確保を行います。」(甲3の3頁等)等と説明した。
(2)本件契約締結後,店舗開店前の説明義務・情報提供義務違反
ア 加盟店契約締結後のフランチャイザーは,フランチャイジーに対し,特に対象店の売上げや収益の予測に関する判断材料たる情報を,適時,適切かつできる限り正確に,提供すべき義務がある。
イ 被告LCAは,被告エフシステムからFシステムの加盟店募集業務を受託した者として,フランチャイジーに対し,フランチャイザー同様の義務を負う。
ウ 被告LCAは,具体的な説明義務・情報提供義務として,以下のとおりの義務を負っていたにもかかわらず,以下のとおりこれに違反した。
(ア)被告LCAは,原告が,加盟金等や本件店舗の開店資金を銀行融資で賄うつもりだったことを知っており,融資の是非の検討資料として金融機関(常陽銀行)に収支シミュレーションを提出する以上,合理的かつ十分な根拠に基づいて作成,交付すべき義務があるのに,これに反して,合理的根拠もないのに,平成16年4月26日付及び同年5月1日ころに銀行提出向けのものとして作成した収支シミュレーション(甲1の4の2,甲1の5の2,以下「銀行向けシミュレーション」という。)において,初年度における単店舗の新車販売台数を,いずれも222台と記載し,そのころこれらを原告に交付した。また,被告LCA従業員E(以下「E」という。)は,原告が常陽銀行に対し融資申請に出向いた場に同席の上,銀行担当者から売上見込み等について質問されると,「過去の実績を考慮すれば,・・十分可能である。」等と述べた。
(イ)被告LCAは,本件店舗の開店後の見通しについて,原告が適切に検討することができるようにするため,本件店舗開店前に収支シミュレーションを交付するにあたっては,合理的かつ十分な根拠に基づき作成したものを交付すべき義務があるのに,これに違反し,被告LCA従業員F(以下「F」という。)が,平成17年2月24日から同年3月15日にかけて,初年度の新車販売台数を,220台から187台へ,さらに175台へと,次第に下方修正させた複数の収支シミュレーションを作成提示したものの,そのいずれのシミュレーションも,本件店舗における平成17年度の実際の販売台数41台(平成17年4月2日開店から平成18年8月31日閉店までの1年5か月間の合計販売台数53台)とは大きくかけ離れた過大なものでしかなかった。
(ウ)被告LCAは,被告エフシステムがSV業務につき大きく被告LCAに依存していることを知りうる立場にいたから,被告LCAがFシステムのSV業務から離脱する予定,もしくはその可能性がある場合,当該事実を原告に説明する義務を負っていたのに,これを説明しなかった。
(被告LCAの主張)
(1)本件契約締結前の説明義務・情報提供義務違反について
ア 勧誘パンフレット(甲3の1)上に初年度の販売台数222台とあるのは,過去の平均的なFシステムの実績に基づいた標準的な収支モデル上の販売台数を示したものに過ぎず,パンフレット下欄には「※ 上記は標準的な営業プランでの収支シミュレーション。シミュレーションは条件により異なることをご了承ください。」という注意書きもあるのであり,これが売上や収益の予測を意味するものでないのは明白である。
なお,標準的な営業プランでの収支シミュレーションにおいて,初年度の販売台数を222台と記載したことにも合理的な根拠がある。被告LCAは被告エフシステムから本部直営店舗「フジサンオート宇治店」「フジサンオート カドノ店」の2店舗における販売台数情報の提供を受け(例えば上記宇治店の平成14年の注文発行データでは年間206台,同じく宇治店の平成15年における年間販売台数は年間231台,カドノ店の平成14年の注文発行データは年間250台であった),これを元に複数年度にわたる販売台数をシミュレートして標準モデルを作成した。
また本件契約締結当時,本件店舗の出店場所は確定していないものの,宇都宮地区で開店することは決定していたため,標準モデルを修正すべきかを検討し,平成15年8月開店の加盟店であるFシステム上田店(長野県上田市内)の現実の販売台数と比較したところ,同店の平成15年度の販売実績は,8月7台,9月26台,10月26台,11月21台,12月12台と標準モデルを上回っていた。被告LCAが市場調査(人口,需要及び購買力動向等の調査)を行ったところ,宇都宮市の需要及び購買力動向等は上田市に劣らず,人口は上田市より宇都宮市の方が多く,広範な商圏が期待できたから,宇都宮地区で開店すれば,上田店における販売台数程度の売上を達成する可能性は十分見込まれ,その後の銀行融資向けシミュレーションでも標準モデルの修正の必要を認めなかった。
なお,「標準的な営業プラン」に達するためには,店舗立地による集客力のみならず,商談力が必要なのであり,それが伴わない限り標準的な営業プランでの収支シミュレーションに記載のような販売台数が保証されるものではないし,そのことは原告に十分説明済みである。
本件店舗での販売台数が著しく低かったのは,原告が雇用し本件店舗に配置した店長及び営業スタッフ各1名に,十分な商談力が備わっていなかったことが原因である。原告のスタッフは,Fシステム本部が実施する初期研修の合格レベルにすら達することができないほど,著しく営業上の能力が欠如しており,Fシステムでは営業スタッフの研修合格が義務づけられているため開店自体が危ぶまれる程であったが,スタッフのうち1名が,その後補充研修を終了したため,ようやく開店が可能になったもので,原告は適切な人員の補充等に尽力しないまま見切り発車的に本件店舗を開店したものである。
イ なお,原告代表者は,平成16年3月20日に本件契約を締結するにあたり,そもそも販売台数についての明確な意識を持っていなかったのであって,勧誘パンフレット記載の収支シミュレーションどおりの収支を期待したために本件契約締結を決めたものではない。
ウ 本件契約では,そもそも仕切先の確保や外注工場の確保はフランチャイジーが行うべきことであり,フランチャイザーはその確保ができるよう努力義務を負うに過ぎないことは明記されている。
なお,Fシステムにおける車の仕入れは,各メーカー系列のディーラーからの新車購入によって行うが,ディーラーと新規に取引を開始した時点から好条件で仕入れを行うことは一般的に不可能である。
本件店舗では,新車の仕れ先は現に10社以上の取引先が確保されていたし,鈑金や修理の仕事も実際には引き受け手がいたのであって,原告は,単に取引先や外注工場の開拓に苦労したと指摘しているに過ぎない。
(2)本件契約締結後店舗開店前の説明義務・情報提供義務違反について
ア 本件契約締結後,原告が銀行に提出した事業計画書や銀行向けシミュレーションは,まさに銀行向けの説明用資料であって,本件店舗における売上や収支を予想したものではないし,原告が銀行から融資を得られるように,Eが原告と相談しながら,その確認を得て作成したものである。
銀行向けシミュレーションにおいても,「標準的な営業プラン」について算出される数値を修正する必要がなかったことは前示のとおりである。
そもそも原告は,平成16年3月20日時点で既に本件契約の締結を決めていたのであり,契約締結後に作成された銀行向けシミュレーションの内容が,あたかも原告の同契約締結前の意思形成過程に影響を与えたかのように主張することは不当である。
イ 被告エフシステムは,平成16年ころから自社のSV部門を拡充して外部委託を解消する方針を立て,同年3月末ころに同年11月中をもって被告LCAとの業務提携を解消することを決定した。被告LCAは,スーパーバイザー(以下「SV」という。)が交替することが決まると,直ちに原告にその旨を連絡し,後任である被告エフシステムのG・SVへの引継を行っており,SV業務からの撤退の経緯について被告LCAに責任はないし,その点についての説明義務違反もない。
2  被告エフシステムの不法行為,債務不履行
(原告の主張)
(1)本件契約締結前の説明義務・情報提供義務違反
ア 被告エフシステムは,フランチャイザーとして,出店予定者であった原告に対し,フランチャイズ契約を締結してフランチャイジーになるかどうかの判断材料たる情報(特に対象店の売上げや収益の予測に関するもの)を,適時,適切かつできる限り正確に,提供すべき信義則上の義務がある。
イ 被告エフシステムは,本件業務提携契約をもって,その加盟店募集業務を被告LCAに委託したものであるから,自らもしくは被告LCAを通じてその信義則上の義務を尽くしていない以上は,不法行為責任を負う。
ウ 前記1(1)記載のとおり,被告LCAは本件契約締結前の説明義務・情報提供義務違反行為を行っており,被告エフシステムも同様の責任を負う。
(2)本件契約締結後,店舗開店前の説明義務・情報提供義務違反
ア 本件契約締結後は,被告エフシステムは,同契約に基づくフランチャイザーとして,フランチャイジーである原告に対し,対象店の売上げや収益の予測に関する判断材料たる情報を,適時,適切かつできる限り正確に,提供すべき義務がある。
イ 被告エフシステムは,本件業務提携契約をもって,その加盟店募集業務を被告LCAに委託したものであるから,自らもしくは被告LCAを通じてその説明義務・情報提供義務を尽くしていない以上は,本件契約上の債務不履行責任を負う。
ウ 前記1(2)記載のとおり,被告LCAは本件契約締結前の説明義務・情報提供義務違反行為を行っており,被告エフシステムも同様の責任を負う。
(3)仕入先及び外注工場の不確保,整備体制不足
被告LCAは,被告エフシステムがFシステムの知名度を生かして,全車種につき好条件での新車の仕入れを必ず確保すると説明していたにもかかわらず,実際にはFシステムのメリットを生かした仕入れは全くすることができず,単に日本興亜損保代理店D氏の個人的人脈に基づき,ディーラーを訪問して,仕入れを依頼する以外は,被告エフシステムから何の支援もなされなかった。
また修理,鈑金のための外注工場は,被告らからの紹介先では点検やオイル交換等が行われただけで,修理,鈑金業務は引き受けてもらえず,原告の従業員が,知人の経営する工場に依頼してようやく確保できたのであり,何ら適切な支援はなかった。
(4)SV業務の不完全履行
原告は,本件契約締結の動機として,被告LCAによるSV業務に期待していた点が大きかったにもかかわらず,被告LCAがSV業務を担当したのは平成17年の初めころまでであって,本件店舗開店後は被告LCAによるSV業務の支援は全くなくなった。
代わって被告エフシステムの担当者がSV業務を行ったものの,その内容は全く不十分なものであって,本件店舗の経営改善には全く寄与しなかった。
(被告エフシステムの主張)
(1)被告エフシステムは,本件業務提携契約により,加盟店募集業務は全面的に被告LCAに委託していたから,各種収支シミュレーションの作成根拠を始め,具体的な勧誘時の説明内容については知らないが,被告LCAの加盟店募集業務において,具体的な説明義務,情報提供義務の違反行為があったことは争う。
(2)被告エフシステムが,そもそも商品の仕入先や外注工場を,実際に確保すべき法的義務を負っていたことは争う。被告エフシステムは,これらについては本件契約上努力義務しか負っていない。
また被告エフシステムは,仕入先や外注工場の確保に向けて,十分支援をしたのであって,その努力義務には何ら反していない。
(3)また被告エフシステムは,本件店舗の担当スーパーバイザーとして,G(以下「G」という。)を派遣し,同人は本件店舗の開店当初の1週間程を本件店舗で過ごしたほか,その後も必要に応じて本件店舗に出向き,改善点として営業スタッフの商談力アップが不可欠であることの提案をするなどし,折に触れて指導を続けており,十分なSV業務を履行した。
3  原告の損害と因果関係の存否
(原告の主張)
(1)被告らが,適時に適切な説明義務,情報提供義務を尽くしていれば,原告は,本件契約を締結することはなかった。
(2)また,そもそも本件契約締結時には,加盟金等は銀行融資が得られた後に入金することが予定されていて,銀行融資が得られず加盟金等が入金されなければ同契約は無効扱いとすることが了解されていた。
したがって,本件契約締結後も,銀行融資を得て加盟金等を被告エフシステムに送金する以前に,被告らが,適時適切な説明義務,情報提供義務を尽くしていれば,原告は,本件契約上の加盟金等を含め,本件店舗開設費用相当額を負担することはなかった。
(3)原告は,本件契約を締結し,また本件店舗を開店させるために,以下のとおりの費用を負担し,少なくともその合計額4525万9500円相当の損害を負った。
ア 加盟金 840万円
(本件契約に基づき被告エフシステムに平成16年9月3日送金)
イ 開店準備金 157万5000円
(本件契約に基づき被告エフシステムに平成16年9月3日送金払)
ウ リース代金 598万5000円
(被告エフシステムの指示により,本件店舗開店に必要な設備として,IBM社製のパソコン2台及びソフトにつき,株式会社アプラスとの間でリース契約を締結させられた。当該リース契約に基づく負債は平成22年4月まで継続され,総額598万5000円に及んだ。これらのパソコン及びソフトは,本件店舗閉店後は全く不要なものであった。)
エ 店舗設計費用等 806万3000円
(本件店舗開店のために,被告らの指定業者である株式会社イー・エス・リンクに対し,店舗等の設計を依頼し支払った①店舗設計費用62万8950円,②店舗設計管理費用27万4050円,③サイン工事代金400万円,④サイン追加工事代金32万5000円,⑤指定家具・什器代金283万5000円の合計額)
オ 店舗工事費用 2071万1500円
(本件店舗開店のため株式会社小金建設に依頼し支払った内外装工事請負代金2047万5000円及び追加工事代金24万1500円の合計額)
カ 仲介手数料 52万5000円
(本件店舗開店のための建物賃借に伴い,仲介業者である大和ハウス工業株式会社に支払った仲介手数料にして賃料1か月分相当)(甲21)
(被告らの主張)
原告の主張は争う。
なお,原告は,平成16年3月20日には本件契約に締結していたのであり,加盟金等や本件店舗開店費用は,本件契約に伴って原告が負担することとなったものなのであるから,少なくとも平成16年3月20日以降に被告らが行ったとする行為とは相当因果関係がない。
また原告は,本件店舗の設計費用として806万円余,工事費用として2071万円余もの費用を負担しているが,これは被告LCAが提示した収支シミュレーションにおける1店舗初期投資の店舗改装費2450万円より427万円以上も高額の費用である。これは原告自身の判断で,標準よりも高額な初期投資を行ったものであり,本件店舗のために賃借した建物2階部分で,原告が本件店舗とは全く別のフランチャイズ学習塾を開業したことに伴って増加した費用と考えられるから,原告主張の不法行為又は債務不履行との因果関係はない。
4  過失相殺の当否
(被告らの主張)
仮に被告らにおいて説明義務,情報提供義務の違反行為があったとしても,原告が本件契約を締結した際の判断には大きな過失があり,しかも商談力の著しく低い営業スタッフを雇用し,何ら販売実績を上げることのできない営業スタッフに退職勧告等をすることもないまま放置したという原告自身の営業判断の誤りや努力不足に大きなものがあることを考えれば,原告の過失は重大であり,相当高度の過失相殺を免れない。
(原告の主張)
被告らの主張は争う。
原告に過失はない。Fシステムは,自動車販売業という特殊な形態のフランチャイズであり,原告にかかる業態の経験は一切ないから,原告には,Fシステムについての被告らによる説明の当否を検証する能力はなかった。また被告らは,原告が融資を受ける際の銀行向けシミュレーション等の資料を,自ら積極的主体的に作成しているのであって,その作成資料が合理的根拠の乏しい杜撰なものであったことを考えると,それによって生じた損害を原告に負わせることはいかにも不合理である。
第5  認定事実
前提事実,証拠及び弁論の全趣旨(本文中に示す。)によれば,以下の事実が認められる。
1  原告は,もともと飲食店を中心とするフランチャイズチェーンの経営を複数店行っており,平成16年3月当時,少なくともコンビニエンスストアのフランチャイズチェーン「サンクス」1店舗,飲食店フランチャイズチェーン「牛角」3店舗及び同じく「ふらんす亭」1店舗をそれぞれ経営しており,さらに学習塾フランチャイズチェーン「ITTO個別指導学院+7つの週間J」の開業を予定していた。なお,平成16年3月以前には,「セブンイレブン」1店舗も経営していたことがあった(弁論の全趣旨〔被告LCA準備書面(1),原告準備書面〕,原告代表者)。
ちなみに,原告が本件店舗開店のために賃借した建物は2階建てで,その1階部分で本件店舗を,2階部分では原告が経営するフランチャイズ学習塾の2軒目を開業していたが,学習塾経営でも赤字を計上し,現在ではその経営権も他に譲渡して撤退している(原告代表者)。
2  被告エフシステムは,平成元年2月に設立されているが,もともとは京都において,中古車,新車を含めた自動車販売業を約40年行ってきた株式会社フジサンオート(以下「フジサンオート」という。)が母体となって設立した会社である(H証人)。
被告エフシステムは,平成12年11月から新車販売事業としてのFシステムのフランチャイズ事業を開始するようになったが,平成14年11月に被告LCAとの本件業務提携契約を締結してからはフランチャイズの本格的全国展開を図るようになり,平成15年12月現在では,直近の1年足らずで加盟契約を締結したフランチャイジーが全国で250店を超えた旨の記載がその勧誘パンフレット上になされているが,他方で原告に提示,交付された平成15年3月末現在時における法定開示書によれば,平成13年事業年度末現在での加盟店の店舗数は11店,うち同事業年度中の新規出店数が10店,平成14年事業年度末時点での加盟店の店舗数は16店,うち同事業年度中の新規出店数が6店,契約解除された店舗数が1店とされていた(甲1の5の2,甲3の1,甲6)。
なお被告エフシステムのその後の主張によれば,平成14年の事業年度内の新規契約社数は12件,同年度末時点での加盟店店舗数は15店,うち同事業年度中の新規出店数が14店,契約解除された店舗数が0店,平成15年の事業年度内の新規契約社数は36件,同年度末時点での加盟店店舗数は38店,うち同事業年度中の新規出店数が24店,契約解除された店舗数が1店,以下同様に,事業年度中の新規契約社数,同年度末時の加盟店店舗数,うち同年度内の新規出店数,同年度内の解除店数の推移が,それぞれ平成16年度については「25,61,26,3」,平成17年度が「1,77,17,1」,平成18年度が「14,100,28,5」,平成19年度が「17,125,26,1」,平成20年度が「36,160,28,2」となっていて,本件以外にフランチャイジーとの間の提訴事件は存在せず,Fシステムによる店舗数は現在も順調に増加していると主張している(乙6,被告エフシステム準備書面(3))。なお,前示のとおり,被告エフシステムが現在主張する平成14年事業年度末時点での加盟店の店舗数や同年度中の新規出店数,契約解除店数についての数値は,先に原告に交付した法定開示書の数値とは異なるものとなっているが,その相違が何を原因とするものかは不明である。
また平成23年4月現在,被告エフシステムでは,株式会社フジサンオート経営のものを含めて,少なくとも3店舗の直営店を有している(証人H)。
3  被告らが,フランチャイズ展開の柱と主張している「Fシステム」の特徴は,顧客に新車をクレジットで販売するにあたり,その時点で,3年後における同車両の買取り価格を決定し,保証する(ただし,走行距離の長短,事故の有無等,標準の例と比べて車両の状態に善し悪しが生じた場合には,一定の基準に則り,当初買取保証金額から実際の買取価格は上下する。)という点にあり,顧客は,今後6年間で購入代金を返済する予定のクレジットを組むものの,3年後には,現在提示する一定の金額をもって,フランチャイジーが顧客から当該車両を買い取ることを約束し,その買取金額を,3年後のクレジット残債務額とをほぼ等しくなるように設定することで,顧客は3年後にはクレジット残債務をゼロにし,その時点で再度新たなクレジットを利用することで新車を購入することができるという制度(以下「買取保証型クレジット」という。)であって,顧客が3年毎に新車を乗り換えられること,月々の支払負担額を軽くすることができることをセールスポイントとしている(被告LCA準備書面(4),丙2の5,乙16,甲3の2~3)。
なお,新車販売においては,従前も「残価設定型クレジット」という方式で,新車をクレジット販売することは広く行われていたが,買取保証型クレジットでは,低金利(年利4.3%),6年払(72回払)のクレジットを,36回利用した段階で残額一括返済することを予め予定しているのに対して,通常の残価設定型クレジットでは,前半3年の金利は固定でも,後半3年の金利が高額になることが予定されているなど,全体として金利の負担が重く,3年後の買取り価格が保証されていないので,3年後の査定時の車両価格が下がった場合にトラブルになる等の問題が生じやすく,「残価設定型クレジット」と買取保証型クレジットでは性質が異なると主張している(丙2の5)。
また,被告エフシステムは,一定の条件の下に,フランチャイジーが買取保証した金額のさらに90%で,同車両を買い取ることを保証することになっていた(ただし,車両の陸送費はフランチャイジーの負担)(甲3の2)。
被告エフシステムの主張によれば,Fシステムで採用しているビジネスモデルについては,平成12年ないし13年当時から2種類のビジネス特許を申請中とのことであるが,担当弁理士の不手際により審査が遅れているとの理由で,いずれにしても未だ特許は取得できていない(乙16)。
4  またFシステムでは,自動車メーカーの系列毎のディーラーとは異なり,全メーカーの全車種を販売対象とすることをセールスポイントとしているが,その代わり商品(新車)の仕入れは,フランチャイジーの近くにある他のメーカー系列ディーラーから買い付けることを予定していたため,もともと大幅な安値で買い取ることには大きな困難が伴い,顧客が現金買取りを希望した場合でも,それを理由にした新車の値引き販売をすることは困難であった。ただし,Fシステム自体は,顧客に対し,クレジット利用により月々の負担金額を抑える形で新車を定価販売することを想定した制度であるため,値引き販売ができない,もしくは困難であることは買取保証型クレジットによる販売では問題とならず,むしろFシステムの各店舗では値引き販売は原則として一切しないこととし,値引き販売がないということは,新車の値崩れを嫌う他のディーラーからの新車の仕入れの際には有利に働く事情になり得るという考え方を取っている(甲3の3)。
5  原告は,平成15年ころ,その経営する焼肉店「牛角」がBSE問題による不況の影響を受けたことから,他業種の経営に関心を持ち,Fシステムを紹介され,平成16年2月19日には,宇都宮市内で被告LCAのJ取締役と面談した。そして原告代表者及びその弟である専務取締役I(以下「I専務」という。)が,同年3月4日と5日,Fシステム加盟店の見学ツアーに参加して,横浜長津田店,上田店及びいわき鹿島店を見学し,各店長から話を聞くと共に,JやEから,販売台数や本部によるサポート体制等につき記載された資料(甲3の1~5)を受け取り,その内容の説明を受けた(弁論の全趣旨〔訴状〕,証人E,原告代表者)。
6  平成16年3月5日当時,原告に交付された資料中には勧誘パンフレットもあり,そのうちの「高収益を実現する高い販売効率」と題された欄には,1年目の販売台数が222台と記載された収支シミュレーションが掲載されていた。ただし,その最下部には「※ 上記は標準的な営業プランでの収支シミュレーション。シミュレーションは条件により異なることをご了承ください。」という注意書きが付されている(甲3の1)。
また,同時に原告に交付された資料の中には「Fsystem 本部サポート体制のご案内」と題した書面(以下「ご案内書」という。)があり,その中では,Fシステムにおける買取保証型クレジットのシステムの概要の説明がなされているほか,仕切先確保については「本部にて仕入体制の整備を全面サポート」「仕切先確保は本部スタッフが店舗開業時に,適正な仕切値で全メーカー車種の仕入を行えるようにサポートさせて頂き,仕切先を確保いたします。」等と記載されている一方,「Fsystemの新車販売では基本的には各店舗の近隣ディーラーから仕入れて頂く」「基本的に仕入れは“実績”重視になっておりますので,開店当初の3~6ヶ月程度が最も条件が厳しい期間となることはご了承ください。この期間では下記2点についてハードルが発生する場合があります。①仕入れ値が悪い ②近隣ディーラーより仕入れができない」,特に「厳しいのがトヨタ系列です(他のメーカー系列車種の仕入れが問題になることはまれ)。特に高級車を扱うトヨタ店,トヨペット店の仕入れが最も厳しいようです。・・新規店舗には当初卸して頂けないケースがあります。・・ただし,この2系列の車種をFsystemで販売することは非常に少なく,また高級車中心のため利幅が大きいので本部仕入れを利用してもある程度利益は期待できます。」といった記載がある。また外注工場の確保については,「本部にて外注工場の確保を全面サポート」「基本的には出店地域近隣のディーラー,ロータス加盟整備工場などを中心として外注先の確保を行います。」といった記載がある(甲3の2,3)。
7  平成16年3月13日には,原告代表者及びI専務は,Eと共にFシステム上尾店を訪ね,同所に来店中であった被告エフシステムの代表者たるBとも面談した(弁論の全趣旨〔訴状〕,原告代表者)。
8  そして平成16年3月20日,原告代表者は,Eを介して,被告エフシステムとの間の本件契約を締結した。
本件契約では,骨子として,以下のような条項が定められている。なお,当該契約書中における加盟金は,500万円(消費税別)と記載されているが,これは実際には800万円(消費税別)であった。
(1)被告エフシステムは,原告に対し,契約期間中,出店予定枠の記載区域内において,原告が,Fシステムのチェーン店舗1店を自ら開設する権限を付与する。
(2)原告は被告エフシステムに対し,加盟金500万円(消費税別)及び開業準備金150万円(消費税別)を,契約締結後2週間以内に支払う。
(3)原告は被告エフシステムに対し,本チェーンの商標・ノウハウの継続的使用及び本部による経営指導を受けるための費用として月額27万円(消費税別)のロイヤリティを支払う。
(4)被告エフシステムは,スーパーバイザーを通じて,原告に対し,電話や電子メール等を使用して店舗運営の全般にわたる指導を行う。
(5)原告は,契約締結日から12ヶ月以内に,出店枠内において,本チェーンの内容にふさわしい開店場所として1物件を確保するものとする。
(6)被告エフシステムは,原告に対し,ノウハウを記載したマニュアルを無償で貸与する。
(7)被告は,契約店舗の開店に先立ち,原告に対し加盟研修を実施し,原告は本チェーンの理念を実現するために最低限必要となる技術及び知識を習得するものとする。
原告は,原告代表者又は本件店舗の運営に専属で従事する従業員のうち3名以内について無料で受講する権利を有し,少なくとも店長1名,従業員1名,計2名を受講させる義務を負う。
原告は,被告エフシステムから加盟研修の終了認定を受けることを条件として,契約店舗を開店することができるものとし,原告の契約店舗に関する運営能力が,本チェーン全体の水準に比して著しく劣り,契約店舗の運営に支障を来す可能性がある場合には,原告は被告エフシステムが指定する各種の補修研修・再研修を原告の費用で受講してこれを修了するものとする。
加盟研修後においても,被告エフシステムは,原告に対し,必要に応じて研修を実施し,原告は被告エフシステムの指示に従い当該研修を受講するものとする。
(8)原告は,Fシステム利用にかかる自動車(新車)の仕入・販売,納車,アフターサービス,買取設定等の諸業務については,自らの責任において実施する。
上記諸業務の構築・整備のため,原告は被告エフシステムに対してその支援を求めることができるものとし,被告エフシステムは次のとおりこれに応じられるよう努力するものとする。
ア 仕入先確保
被告エフシステムは原告に対して,契約店舗の開業時において適正な仕切値で国内自動車メーカーすべての車種の仕入れが可能となるように仕切先の確保に努める。ただし,仕入れ条件は加盟エリアや実績等に応じて変動する場合がある。
イ 自動車供給サービス
被告エフシステムは,独力で希望する車種の仕入れが困難な原告に対して,原告の費用負担(陸送費用,登録手数料など)のもとに,原告が希望する車種を仕入れ,これを提供できるように努める。ただし,仕入れ条件は加盟エリアや実績等に応じて変動する場合がある。
ウ 外注工場確保
被告エフシステムは,自社整備工場を保有せず,点検・修理・板金等のサービスを実施することができない原告に対して,近隣の整備工場との業務提携等によりこれを外注工場とできるように努める。ただし,業務提携等の内容については加盟エリアや実績等に応じて変動する場合がある。
エ 被告エフシステム買取保証システム
被告エフシステムは,買取保証システムにより原告が顧客より買い取った自動車を,さらに買い取ることができる。この場合に被告エフシステムが保証する買取価格は,原則として被告エフシステム提供のデータに基づき買取保証した額の90%とする。この買取保証システムは,原告が被告エフシステムに申請し,陸送費,その他諸経費を負担した上で,被告エフシステムに車両を届けることを条件とする。
9  ところで,原告は,本件店舗出店に要する費用を銀行融資によって充てることを予定しており,その旨をEに説明したが,Eからは,加盟金の支払も含めて銀行から融資を受けた後に支払うことで構わないし,融資を受けられなければ契約は白紙にしてもらってよいこと,現在契約しておけば本件店舗出店のための出店区域枠を確保できること等を説明されて,早期の契約締結を勧められたため,加盟金等の支払も含めて銀行からの融資金で賄うこと,仮に融資が実行されなければ,本件契約は無効もしくは無条件解約となるものと考えて,本件契約締結に至ったものであった。
なお被告らは,本件契約に,融資不能時の解除条件が付されていないこと等を指摘して,Eがかかる発言をしたことを否定し,証人Eもこれに添う供述をするが,証人Eも原告が銀行融資によって加盟金等を支払うつもりであること自体は承知していたこと,原告が本件契約を締結したのは平成16年3月20日(契約書上は同年4月1日)だが,加盟金等の支払期限であるはずの2週間が経過した後も,被告らから原告に早期の加盟金等支払を督促した様子は全くないこと,被告エフシステムの取締役の一人であるH証人も,加盟契約を締結しても加盟金等の支払が現実になされなければ契約は無効扱いになる旨述べていること,そして被告らは,平成15年12月時点で加盟契約数が250件を突破した旨をその勧誘パンフレットにも記載しておきながら,現在の主張としては,平成15年の事業年度の新規契約社数は36件,平成16年の事業年度の新規契約社数は25件などと,「加盟契約数250件」という勧誘パンフレット上の数字とは全く異なる数値を述べているし,実際の開店店舗数は平成15事業年度末において38店(うち当年度の新規出店数が24店),平成16年事業年度末において61店(うち当年度の新規出店数が26店),平成17年事業年度末において77店(うち当年度の新規出店数が17店),平成20年事業年度末においてもなお160店(うち当年度の新規出店数が28店)と主張しているのであるから,かかる主張によっても,加盟店契約を締結したとしても,その後実際に店舗開店にまで至った例は,相当程度少ないことが明らかなのであり,その間,契約締結に応じた多数の加盟店が,高額の加盟金等を支払ったまま,数年にわたって開店することもできず,他方で被告らとのトラブルや訴訟沙汰になることもなく加盟契約を維持継続しているとは到底考えがたいことを考慮すると,平成16年3月当時の被告らは,契約書にサインを得て形の上では加盟店契約を締結したとしても,実際に加盟金等が支払われなければ,加盟店契約自体を無効扱いとするという取扱を,実際に多数行っていたものと考えるのが相当であり(そうでないなら,平成15年12月末で加盟契約数250を突破,と書かれている勧誘パンフレット上の表記は真っ赤な嘘であったということになる。),これを否定する被告らの主張や前記E証言は信用できない。
10  Eは,原告が銀行から加盟金等や本件店舗開店資金の融資を受けられるよう,平成16年4月下旬から5月初めにかけて,銀行提出向けシミュレーションを複数作成して原告に交付したり,その後も原告代表者と共に銀行まで出向いて,Fシステムの業態や,売上の見込み等について説明をした。
その際,Eが作成した銀行向けシミュレーションでも,単店舗展開の場合の新車の販売台数は,初年度を年間222台,次年度には264台などと記載されていた(甲1の4の1~2,甲1の5の1~2)。
11  原告は,平成16年8月下旬,常陽銀行からの融資が下りたことから,同年9月3日,被告エフシステムに対し,加盟金840万円と開設準備金157万5000円の合計997万5000円を支払った(前提事実)。
12  その後原告は,本件店舗を出店するための物件を探したが,当初の出店予定区域内では物件を見つけられず,隣接する区域内で希望物件を見つけて,被告LCAによる立地診断を受けたところ,平成16年12月6日,立地診断総合評価で,出店可能とされる4つのランクのうち上から2番目の「B 出店可能」,「平日フリー来店数/月 10組以上20組未満」とする診断がなされたことから,同月9日には,本件契約に基づく出店予定区域を当初予定区域から隣接区域へと変更した上で,本件店舗の出店準備に取りかかった(甲1の10,甲8)。
13  原告は,平成17年2月8日には本件店舗のための建物を賃借し,同月11日には内装工事の請負契約を締結するなどして,本件店舗を開店するための費用として,平成17年5月ころまでに,以下の合計2929万9500円を支払った(甲9,10,17~21)。
(1)店舗設計費用等 806万3000円
(2)店舗工事費用 2071万1500円
(3)賃貸借仲介手数料 52万5000円
14  また原告は,25名前後の応募者の中から,本件店舗に配置する人材として,平成17年2月13日付で店長としてK,営業スタッフとしてLを雇用し,平成17年3月には,同人らを被告エフシステムが延べ14日間の予定で実施する初期研修に参加させたが,両名とも不合格となった。ただし,同月30日,31日に東京で実施された補充研修で両名とも合格の判定を受け,本件店舗は予定どおり同年4月2日から開店できることとなった(乙7の1~2,乙10,12の4,弁論の全趣旨〔被告LCA準備書面(1)〕)。
15  一方,当時本件店舗のSV業務を担当していた被告LCAのFは,具体的な出店場所の状況に加えて,現在の営業スタッフのスキルを加味して収支シミュレーションを修正したとして,平成17年2月24日から同年3月15日にかけて,3度にわたり本件店舗における収支シミュレーションを作成し,そのころ原告に送付したが,その際の収支シミュレーションでは,以下のとおり,初年度の新車販売台数が,わずかな間に220台から175台にまで下方修正されていた(甲1の11,甲1の12,甲1の13の1~2)。
(1)平成17年2月24日
販売台数 初年度220台,2年度240台,3年度260台
(2)平成17年2月28日
販売台数 初年度187台,2年度240台,3年度264台
(3)平成17年3月15日
販売台数 初年度175台,2年度210台,3年度242台
もっとも,原告代表者は,これらの収支シミュレーションを確認した後も,被告らに対して,特に異議を述べたり抗議したりしたことはなかった(原告代表者)。
16  平成17年4月2日,本件店舗は開店したが,その後売上はほとんど上がらず,平成17年5月17日にはK店長が自主退職し(乙9の3),その後原告は,新しく中古車販売経験のあるMを雇用したが,同人も同年7月に受検した初期研修には合格しなかった。
本件店舗では,最終的にその開店から平成18年8月31日の閉店までの約1年5か月間の間に,新車53台しか販売できず,その間,本件店舗は赤字を計上し続けた(弁論の全趣旨〔訴状〕)。
17  一方,平成17年4月の開店前ころからは被告エフシステムの従業員であるGが本件店舗のSV業務を担当するようになり,オープンから1週間位は本件店舗に詰めたほか,その後も少なくとも月に1度2~3日程度の日程で本件店舗に来店し,特に初期の時期の問題点としては,営業スタッフの商談力アップが最重要の課題である旨を度々指摘していた(乙9~12〔枝番含む〕)。
18  なお,原告は,本件店舗開店に伴い,被告エフシステムの指示に応じてパソコン2台とソフトをリースし,平成17年4月から平成22年2月までの間に合計598万5000円のリース料を支払った(甲14の1,2)。
第6  判断
1  被告LCAの説明義務・情報提供義務違反の当否(仕入体制整備及び外注工場に関する説明)について
(1)およそフランチャイズ契約において,新規フランチャイジーを募集しようとするフランチャイザーは,信義則上,出店予定者に対し,フランチャイズ契約を締結してフランチャイジーになるかどうかの判断材料となるべき情報(特に対象店の売上げや収益の予測に関するもの)を,適時,適切に,かつできる限り正確に,提供すべき義務があるといえる。
そして被告LCAは,原告にとってのフランチャイザーでこそないものの,被告エフシステムとの間の本件業務提携契約に基づき,その加盟店募集業務を全面的に受託していた者として,いわばフランチャイザーに準ずる立場の者なのであるから,やはりその出店予定者に対し,フランチャイザー同様の信義則上の義務を負うというべきである。
(2)原告は,被告LCAの説明義務・情報提供義務違反行為の一つとして,Fシステムにおいて被告エフシステムが提供するサービスの中の,商品の仕入と,修繕板金等の外注工場の整備を巡る問題について,これらがいずれも実際には十分なバックアップ体制がないことについての説明が不足しており,義務違反にあたると主張する。
(3)しかしながら,認定事実のとおり,本件契約においては,そこに提示された被告エフシステムとしての義務内容自体が,仕入先や外注工場の確保については被告エフシステムの努力義務を定めるものに過ぎないことが明らかである上,特に自動車の仕入れに関しては,原告が,本件契約締結前の平成16年3月5日ころに交付されたご案内書の中でも,「適正な仕切値で全メーカー車種の仕入を行えるようにサポート」するとはあっても,その具体的なサポートの内容を特定して記載しているわけではない一方,「Fsystemの新車販売では基本的には各店舗の近隣ディーラーから仕入れて頂く」,「基本的に仕入れは“実績”重視になっておりますので,開店当初の3~6ヶ月程度が最も条件が厳しい期間となることはご了承ください。この期間では下記2点についてハードルが発生する場合があります。①仕入れ値が悪い ②近隣ディーラーより仕入れができない」,特に「厳しいのがトヨタ系列です」等といった記載が列挙されているのであって,仕切先それ自体はフランチャイジーが自ら行う必要があること,その仕入れ自体,特に開店当初は取引できずに困ることもあること等が十分理解できる内容となっている。そして原告の主張や原告代表者の供述を前提としても,被告エフシステムが紹介した日本興亜損保代理店D氏は,原告従業員と共にディーラー訪問をするなどして,原告自身も,開店当初はともかく,やがては10社以上のディーラーと取引をすることができるようになったことを認めており,一方で,例えばいつごろどのような種類の車を仕入れることができずに取引の機会を逃したとか,被告エフシステムに対して,フライチャイザーとしての自動車の供給を求めたというような具体的エピソードは何も示されていないし,その他本件店舗の営業期間中に,仕入れができないことについて原告から被告エフシステムに対するクレームを述べたと認めるに足る証拠もないのであるから,実際にも被告エフシステムは,契約上求められている程度の努力義務は尽くしたものと認められるところである。
Eは,基本的に原告に対し,ご案内書等の資料に基づいてFシステムの説明をしていたと認められるから,Eが,本件契約や,原告に事前に交付してあったご案内書の記載内容以上に,原告が被告エフシステムから過大なサービスの提供を受けられるような説明をしたとは容易に認めがたいし,また原告自身,事前にご案内書等の資料を受領していたのであるから,仮にそのような事実をEから口頭で説明されたからといって,それだけを安易に信じたとも認めがたいのである。とすれば,結局仕入体制確保に不備があることについて,被告LCAに,説明義務違反行為があったと認めることはできない。
(4)また外注工場については,そもそも原告自身,被告エフシステムから紹介された工場があったことを自認しているほか,当該外注工場でも,少なくともオイル交換や点検業務は実施してもらっていたことを認めている。修理や鈑金の実施を断られたという点については,その理由が判然としないながら,結局のところは仕事の対価の問題と考えられるところ,外注工場の確保をうたったご案内書中でも,その報酬の件などについては何ら触れられていないのであるから,一定程度の報酬金額を支払わない限り仕事を断られるという事態は通常の取引であっても起こりうることなのであり,原告自らの努力によって,その後より安値で仕事を引き受けてくれる外注工場を獲得できたのであればそれは良いことであったが,だからといって,それ故に被告エフシステムにおいて,何らかの義務違反があったことを示すものでもない。
結局この点についても,被告LCAに説明義務違反行為があったとは認められない。
2  被告LCAの説明義務・情報提供義務違反の当否(勧誘パンフレット上の収支シミュレーション)について
(1)一方原告は,被告LCAが作成し,原告に交付した勧誘パンフレット中の収支シミュレーションについて,その記載内容に合理性がなく,あるいはその説明が不十分であることに説明義務違反,情報提供義務違反行為があると主張する。
一般的に,フランチャイズへの加入を検討する者としては,最も関心が高いのはまさに出店した後の店舗における売上高や収支の問題であろう。フランチャイザーやこれに準ずる者としては,契約締結に際して,別段そのような予測値を出店予定者に提示する義務があるとはいえないが,仮に出店予定者やフランチャイジーに対して,具体的な売上予測や,これを推測させる資料を提示する場合には,特段その内容を保証する必要はないし,結果的に予測と実績が異なったからといって,それだけでは当然にその責を負うものではないにせよ,予測値としての提示をする以上は,そのような予測を行った根拠については,相応に合理的な理由を示すことができなければならず,特段の根拠もないのに安易な売上の予測値を提示した場合などには,これを信用した出店予定者もしくはフランチャイジーに対して,相当の責任を問われる可能性があるというべきである。
(2)ところで証拠(甲3の1)及び弁論の全趣旨によれば,勧誘パンフレットとそこに掲載された収支シミュレーションは,被告エフシステムから情報提供を受けた被告LCAが,「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」と称して作成したものであると認められる。
被告LCAは,そこに示された収支シミュレーションは,加盟店に対する売上を保証するものでないのはもちろん,別段,売上の予測や収支の予想をするものでもなく,一方でそれ自体は,「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」を示すものとしての十分な合理性を有する指標であったと主張する。
確かに「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」というのは,それ自体として個別の店舗の売上を保証したものでないことは十分理解し得るし,およそこれから加盟契約を締結しようとするすべての加盟予定者に対し,一般的に提示しているパンフレットに載せられた資料に過ぎないのだから,その体裁や表題を考えただけでも,これがフランチャイジーによる具体的な出店予定店舗における具体的売上予測値であると考える者も,むしろ少ないことであろう。
しかしながら,「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」という表現は,むしろ一般人にとっては,通常の準備と通常の経営努力をすれば通常は手にすることのできる,一般的な収支シミュレーションであると理解されても当然の表現なのであって,それを具体的な出店予定店舗に関する売上予測とまで受け止めることはないとしても,フランチャイジーとしての出店を決めた場合における,他の加盟店における平均的な売上高に近いシミュレーションなのであろうと受け取められることは十分あり得る。
(3)ところで被告LCAの説明によれば,そこで記載した初年度販売台数222台の根拠となったのは,被告エフシステムの直営店2店(宇治店,カドノ店)における平成14年ないし平成15年の注文実績ないし販売実績が,年間206件から250件であったためであること,また平成15年8月にFシステムのフランチャイジーとして新規開店したFシステム上田店の初年度の販売台数実績が,222台であったことが分かったため,特に修正の必要がなく,十分合理的な根拠のある数字であるというのである。
しかし,認定事実のとおり,フジサンオートは,もともと40年近い自動車販売の実績のある会社なのであって,その直営店であれば,営業スタッフの経験や能力,長年の顧客との付き合いやそれに裏付けられた信頼関係,安定的な仕切先及び外注工場の確保等といった,自動車販売を強力に推進していく上で重要な様々な要素において,既に多くの知識経験ノウハウを持ち,各店舗それ自体として独自に高い販売能力を有していると考えるのがむしろ通常である。その販売台数の実績が,勧誘パンフレットに掲載する「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」を試算する原データとして,適切であるとは到底認めがたい。というのも,この勧誘パンフレットは,自動車販売業としての知識経験の全くない素人相手であっても,十分その経営に耐えうるものとして,Fシステムのフランチャイジーを募集するための資料にほかならないから,そこで示される収支シミュレーションについても,当然そのような経験のない者が店舗経営をする場合のシミュレーション結果を掲載するのが,基本であろうと解されるからである。また平成15年8月に新規出店したFシステム上田店も,実際には,もともと燃料の販売会社であったものが,被告エフシステムにフランチャイズ化される3年前から,スズキ系列の自動車販売店として営業していたところ,平成15年8月に新たにFシステムのフランチャイジーとして加入した店舗だったというのであるし,しかも複数あるフランチャイジーの中でも常にトップクラスの実績を上げ続ける会社であるというのである(甲3の5)。同社の販売実績と,前記シミュレーションにおける販売台数の数値とが,たまたま合致していたからといって,それが素人参入も予定しているFシステムの勧誘パンフレットにおける「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」の数値として適切なものであるということもできない。
むしろ認定事実のとおり,被告エフシステムは,平成12年11月から既に新車販売事業としてのフランチャイズ事業を展開しており,そのフランチャイズの加盟店自体も平成13年に既に11店,平成14年には16店存在したというのであるから,「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」の作成を目指す以上は,これら新規のフランチャイジーによる出店店舗について当然にその調査を行い,その結果を踏まえた収支シミュレーションを検討,作成するのが当然のことと解される。そして,被告エフシステム自身が,自動車販売業のような事業は,少なくともその開業当初は赤字も覚悟する必要があるとか,その経営が安定するまで3年位かかる等と指摘が通常だと指摘するほどであるから,前示のように新規に開店したフランチャイジーを調査し,その結果も含めてシミュレートしたならば,前記収支シミュレーション自体が,相当程度悪化した内容になった可能性が相当に高いのである。
被告LCAは,平成14年当時被告エフシステムが独自に展開していたフランチャイズは,買取保証型クレジットの仕組みを被告エフシステムと各加盟店とが共有するのみで,いわゆる店舗パッケージ型フランチャイズにあるような研修制度や顧客への説明ツール等が整備されておらず,既存の加盟店店舗からは,今回被告LCAが展開を想定している店舗パッケージ型フランチャイズと近似した前提条件を有するデータを抽出することが困難であったから,平成14年当時買取保証型クレジットの専業店舗として活動していた直営店2店のデータだけを基礎に,「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」を作成したなどと主張する。しかし,前示のとおり直営店であれば,フランチャイズ化して新しくノウハウを学び取らせるまでもなく,当該店舗自体が十分に買取保証型クレジットのノウハウを保有していたと解されるから,むしろ全く新規に買取保証型クレジットによる販売ノウハウを学ばせた上で店舗を出店する場合の標準的なモデルとなり得ないのは当然だし,もともと自動車販売業としての長年の実績が存在する以上,そもそも当該直営店自体が,「買取保証型クレジットによる販売」というメリットを新規に導入しなくとも,一般的に十分多数の新車販売をすることが可能な能力を持っていた可能性も高いのである。そうである以上,むしろ「買取保証型クレジットによる販売」の方法に特化していない店舗における販売実績を調査したり,せめて直営店であっても「買取保証型クレジットによる販売」制度を取り入れる以前の時期における販売実績等を広く収集して,「買取保証型クレジットによる販売」制度導入の前後もしくはその浸透度等によって,実際の販売実績がどのように変わるのか等を分析してみないことには,そもそも「買取保証型クレジットによる販売」というノウハウ自体が,これをあえてフランチャイズ化し,その習得のために高額の加盟金やロイヤリティを支払い続ける価値がある程に,新車の販売方法として,優れて高度な販売力を生み出しうるノウハウなのかということ自体を,検証することができないのではないかと解される。
しかも被告らは,自動車販売業には,営業スタッフの「商談力」が重要だと強く主張し,原告の営業成績が悪かったのは,ひとえに原告が雇用した営業スタッフに,その「商談力」がなかったことが原因であるかのように主張するところ,確かに自動車販売業のような高級商品の販売においては,販売員の熱意,会話力,商品に対する知識,顧客に対する説明能力の高さ,顧客の資力趣味志向生活スタイルその他の情報の収集能力の高さや分析力,事前及び事後のきめ細かなサービス,その他,営業マンがとしての多くの能力が大切であると考えられる。しかし,被告らが提唱するFシステムは,その「商談力」に関しても,営業スタッフに対する14日間の初期研修等その他の研修を実施することにより,システム的にその「商談力」を高める方法があることを前提に,Fシステムを設計したはずなのであって(現に原告が雇用した営業スタッフにしても,最初の初期研修にこそ不合格となったものの,その後の補充研修では合格しており,被告ら自ら,本件店舗の営業スタッフとしての能力はあると認めていたはずである。),被告らが提唱するFシステムの制度によって,営業スタッフの「商談力」を高めるためのノウハウが,十分に機能しているのかどうかを検証,確認する意味でも,フランチャイザーの直営店や,過去にも自動車販売業の経験を有していたフランチャイジーによる店舗の営業実績のみならず,新規参入したフランチャイジーの営業する店舗についての調査を尽くすことが重要だったと解されるのである。
被告エフシステムが独自に行っていたというフランチャイズ化事業を,自ら店舗パッケージ型フランチャイズとして新しく構築したことを自負する被告LCAが,そのような観点からの独自の調査検討もすることなしに,たまたま「買取保証型クレジットによる販売」の販売方法を完全実施しているという直営店2店での,直近2年程度の販売実績を調査しただけで,Fシステムフランチャイズチェーンにおける加盟店店舗における「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」なるものを作成し,その数値について合理的根拠がある等ということは,到底受け入れがたい主張というべきである。
そうすると,被告LCAが,「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」として,その初年度の販売台数222台等とする数値を含むシミュレーションを提示した行為は,その数値算出の根拠をも併せて詳しく説明しない限り,その内容を信じた出店予定者に対して,適切な説明義務,情報提供義務を尽くしたものとはいえないというべきである。
(4)もっとも,認定事実のとおり,原告は,本件契約を締結した当時には,加盟金等を支払わない限り同契約は無効になるか無条件解除になるものと考えて同契約を締結し,被告LCAもこれを了承していたものというべきである。また原告代表者自身,その当時,勧誘パンフレット上の収支シミュレーションについて,その意味内容や,正確性の裏付けがあるか否か等について,Eに,何らかの質問を行ったことがあったとも認められない。ごく一般的なパンフレットに記載されていた「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」が,当時出店場所すら決まっていなかった本件店舗についての具体的な売上を予想する資料として原告に受け止められたとは考えられない。そればかりか,原告が,前記シミュレーションを,加盟店店舗における平均的な収支シミュレーションであると考えたとか,それ故にこそ本件契約を締結するに至ったものと解することもできない。
とすれば,結局被告LCAには,仮に勧誘パンフレットにおける「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」の作成提示もしくはその説明内容の点における説明義務・情報提供義務に違反する行為があり得たとしても,それを理由に原告が本件契約を締結したものとはいえないし,そうであれば,原告が,本件契約締結に伴って生じたと主張しているその損害と,被告LCAの前記違法行為については,相当因果関係があるとはいえないのであって,結局この点についての被告LCAの義務違反行為が,具体的不法行為責任につながるものとは認められない。
3  被告LCAの説明義務・情報提供義務違反の当否(銀行提出用事業計画書中の収支シミュレーション)について
(1)とはいえ,次いで原告は,Eが,銀行への提出用に作成した銀行向け収支シミュレーションについて,説明義務,情報提出義務違反があると主張する。この銀行向けシミュレーションは,本件契約が締結された後である平成16年4月から5月ころにかけて,原告が,加盟金等その他の開店準備資金を,常陽銀行から借り入れるべく努めていた時期に,Eが,当該銀行宛に提出する予定の資料の一環として作成し,銀行提出用の収支シミュレーションとして原告に交付したものである。その中には,やはり初年度の販売台数が222台,次年度が264台等と記されていた。
(2)なお,本件契約が締結された後のフランチャイザーたる被告エフシステムは,フランチャイジーたる原告に対し,同契約上の説明義務・情報提供義務を負うというべきであるし,被告エフシステムから加盟店募集業務を委託された被告LCAも,同様の義務を負うと認められる。
(3)被告LCAは,銀行向けシミュレーションは,まさに銀行向けの説明用資料に過ぎず,売上や収支を予想したものではないと主張する。
確かに,一般的にいえば,銀行に対する事業説明用の収支シミュレーションというのは,その提出者が,まさに銀行からの融資実行という目的を果たすために提出する資料なのであるから,一般的には,融資実行が危うくなりかねないような事業内容のリスクの記載についてはなるべく避け,融資金の回収可能性が高いことを示すための,一定程度楽天的な収支シミュレーションが作成されがちだという傾向が生じることは理解できる。しかもこの時点(平成16年4月ないし5月)では,原告による本件店舗の出店場所は具体的には何も決まっておらず,もちろん営業を担当するスタッフも未定なのだから,個々の立地条件や業務体制や人材に対する評価等をも考慮に入れた,個別具体的な店舗に対する売上予測などは,もとよりできようはずもないのである。その限りでは,確かにこの銀行向けシミュレーションも,本件店舗の存在を具体的に想定した上での,明確な売上予測や収支予測をしたシミュレーションであるともいいがたい。
(4)しかしながら,事業計画書やこれに添付する収支シミュレーション自体は,本来銀行に対して,融資の当否を判断させるための重要な資料となるはずのものであるから,当然ながら銀行に対する信義則上の義務としては,可能な限り正確で確実な収支シミュレーションを作成提示すべきことが期待される文書である。そうである以上,その内容自体が虚偽であるとか,何の根拠も実現可能性もなく,実体と大きくかけ離れるような形で作成されて良い性質の文書であるとはいえないであろう。
しかも,この時点での原告のように,新たに融資金を受けて全くの新規事業を立ち上げようとする者が,その段階で期待する事業計画書や収支シミュレーションというものは,例えば既に多額の負債を抱えた者が当該債務の繰り延べを希望したり,新たな借換資金を得るために弁済計画を練る場合のように,何をおいても融資実行という目的を果たすのを最優先として作成される類の事業計画とは違う。この時点での原告は,仮に事業内容についての見通しが不良であり,返済計画に無理が出るようならば,そもそも新規事業への参入自体を取り止めて,融資を諦めるという選択をすることが十分可能である。他方で,もしその段階で,実体と異なる見通しの甘い事業計画を提示され,安易に新規事業に参入した後に,実際の事業収支が悪化した場合には,一人自分だけが多額の負債を抱え込む結果となりかねないのである。その限りで,原告としては,自らが借金をしてでも参入しようとする新規事業が,本当に持続的に経営可能な事業であるのか,確実な売上予測とまではいかないにせよ,借金の返済計画に必要な返済原資以上の収益を,本当に当該事業によって得ることができるのかについては,切実にその見通しを知りたいと考えるはずである。すなわち,当時の原告が提出を望んでいた収支シミュレーションというのは,将来自分が出店を決めた場合の当該店舗が,実際に得ることのできる収支シミュレーションに,可能な限り近い形でのシミュレーションであると解されるのである。
そして,様々なフランチャイズの支援事業を手がける立場にあった被告LCAの従業員たるEも,このような場面で原告が期待する事業報告書や収支シミュレーションがどのような性質の文書であるのかについては,十分に知っていたか,少なくともこれを知り得たものと解される。
そうであるならば,Eとしては,銀行向けシミュレーションを作成するにあたり,仮にそれが銀行からの融資を受けるため,意図的な虚偽とまではいえないにせよ,相当程度,見通しの甘い事業計画や収支シミュレーションを作成したとか,さらに必ずしも見通し自体は甘いはいえないとしても,事業計画の基となった資料自体が相当程度不確かで,その実現を期待することが合理的とはいえないようなシミュレーションを作成した場合には,そのシミュレーションが必ずしも正確なものとはいえないということを知らせる意味で,かかるシミュレーションの作成過程や,作成の基となった原資料の内容についても詳しく説明するなどして,提示した収支シミュレーションの内容につき,どの程度の確実性や実現可能性があるのかにつき,原告自身が理解,検討し得るように,説明を行う必要があるというべきである。
(5)Eによれば,この時の銀行向けシミュレーションというのは,先に作成したモデルプラン,すなわち勧誘パンフレットに記載した「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」にキャッシュローンの算式を加えた形のものを作成したというのであるが(証人E),その「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」として算出されたモデル自体が,Fシステムの新規フランチャイズにおける「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」としては,まさしく不適切なものというほかないのは,前示のとおりである。
そうすると,当時のEには,原告に対し,少なくとも銀行向けシミュレーションにおいて用いられた販売台数等のデータが,いかなる資料に基づき,いかなる理由で試算された数値なのかという点について,事実に基づき,より詳細な説明をすべきだったといえるのであり,その点の説明を尽くしたとはいえないEには,義務違反行為があったと認められる。
その雇用者である被告LCAは,当然その使用者としての責任を免れるものではない。
4  原告の損害と相当因果関係について
(1)原告は,銀行向けシミュレーションについて,被告LCAが適切な説明をしていたならば,原告は銀行から融資を受けることなく,本件契約に基づく本件店舗の出店もしていなかったと主張する。
原告は,平成16年3月20日の時点では,既に本件契約を締結していたのであるが,その契約締結時において,銀行融資が受けられずに加盟金等を支払うことができなければ,本件契約自体を白紙にしてもよい旨をEが約束していたという点は,認定事実で示したとおりである。
したがって,原告が平成16年8月の段階で融資を得ていなければ,原告と被告エフシステムとの本件契約自体が合意解約扱いされ,原告は加盟金はもちろん本件店舗出店に伴って支出した費用を負担しなかったものと考えられる。
そしてEが,銀行向けシミュレーションで用いられた初年度販売台数222台という数値が,実際には新しくフランチャイジーとして出店した新規店舗における標準的な収支シミュレーションではなく,長年の自動車販売実績を有する直営店2店の,最近の売上実績のみを参考にした数値であって,フランチャイズ店自体の収支はそれほど良いとは言えないものであること,特に,被告エフシステムが自認し(被告エフシステム準備書面(8)),証人E自身も認めているように,Fシステムのような自動車販売事業においては,その業態自体の性質からして,定着するのに3年程度はかかるとか,当初の1,2年は他の加盟店でも大なり小なり苦労しているとか,そのような事実が実態として十分原告に理解されており,少なくとも最初の1,2年は黒字どころか相当程度の赤字になることも覚悟しなければならないということが,予め知らされていたならば,原告は確かに,本件契約自体を白紙撤回して,Fシステム事業から撤退していたものと考えられる。
なお原告は,平成17年2月から3月ころにかけて,被告LCAのFから,本件店舗についての最終的なシミュレーションとして,初年度販売台数を175台とし,初年度の収益が赤字となるようなシミュレーションを受領した後も,実際の出店を取り止めてはいないが,平成17年2月,3月ころは,まさに原告が本件店舗での出店を直前に控え,既に店舗用建物の賃貸借契約をしたほか,内装工事に多額の費用を負担するなどしていた時期であるから,この時期にシミュレーションが変更されたとしても,今更出店を取り止めることは困難であったと解される。また修正されたシミュレーションにおいても,2年目,3年目以降は黒字化するとの予想が記載されていたのであるから,この時点での原告が,あえて被告らに抗議をせず,出店の予定を中止しなかったからといって,それ以前の原告が,本件店舗における売上予想や収支のシミュレーションについて無関心だったということにはならない。
そうすると,平成16年4月ないし5月当時に銀行向けシミュレーションを受け取った原告が,これについての適切な説明がなかったために本件契約を白紙撤回する機会を失い,その後の加盟金等の支払や本件店舗の開店に至り,そのために負担した費用は,原告にとって,被告LCAの不法行為と因果関係のある損害にあたるということができる。
(2)認定事実によれば,原告は,平成16年9月3日に加盟金等997万5000円を被告エフシステムに支払ったのを始め,本件店舗の設計費用,店舗工事費用,建物賃貸借契約の仲介手数料等の合計2929万9500円,リース料の負担金合計598万5000円など,総合計4525万9500円については,原告の損害になると認められる。
なお被告らは,本件店舗の内装工事費が,シミュレーションで算出された店舗に対する初期投資費用額よりも427万円余り高額であることをもって,その費用の一部は建物2階部分で原告が営んでいた学習塾事業のために使用されたものと主張するが,その点の主張は憶測に過ぎないものであって,採用することができない。
5  被告エフシステムの債務不履行責任の当否
一方被告エフシステムは,自らのFシステムフランチャイズ事業において,加盟店募集業務を,全面的に被告LCAに委託していたものである。
自らの履行補助者というべき被告LCAが,被告エフシステムのための事業の一部を被告エフシステムに代わって行い,その過程でその故意過失によって本件契約の相手方である原告に損害を負わせた以上,被告エフシステムもまた,当然に本件契約上の債務不履行責任を負うというべきである。
6  過失相殺の当否について
被告らは,原告には相当多大な過失があるから,その損害賠償請求については相当な過失相殺が必要であると主張する。
そして確かに,被告LCAが作成,提示した銀行向けシミュレーションは,その内容自体合理的根拠を欠くものであったが,原告自身もまた,かかるシミュレーションについて相当の疑念を持ち得るだけの要素は十分に存在したところである。すなわち,銀行向けシミュレーションでは,初年度の販売台数が222台などと記載されていたが,その台数は,まさしく勧誘パンフレットにおいて,「標準的な営業プランでの収支シミュレーション」として表示されていた台数と全く同じものであって,これを原告についての事業計画に,そのまま当てはめたかのような数値設定が,精度の高い売上予測や収支を導くものであるとは通常考えにくいと解される。そもそも,新車販売というその事業形態からして,類型的に,その販売は,営業スタッフにおける顧客や仕入先との交渉力など,マニュアル化したり,簡単に素人が身につけることは困難な,様々な能力を持った人材を活用できるかどうかが,売上向上の大きな鍵となるであろうことは,容易に理解できることであるが,原告自身,銀行向けシミュレーションにおける販売台数の数値について,それがいかなる根拠に基づいて作成されたものであるのかを,Eに詳しく説明させようとした様子はない。
また,Eが作成した銀行向けシミュレーションについては,これを検討した銀行担当者自身も,その販売予定台数を若干割り引いて検討していたと見られるほどであり(原告代表者),前示のとおり,当該シミュレーション自体が,まさに銀行融資を受けることを目的に作成されたものなのであるから,原告代表者自身もまた,そこに記載された内容が,将来的な確実な収支の予測をするものであると安易に信じ込んだとは考えがたい。
かかる事情を総合的に考慮すれば,原告には,その被った損害のうち,7割相当の過失相殺をするのが相当というべきである。
7  結語
以上の次第で,被告らには,原告が事業資金融資を受けるにあたり,銀行提示用に作成した銀行向けシミュレーションにつき,もともと合理的根拠に基づくことなくその内容を作成した上に,かかる状態のシミュレーションを,適切な説明もないままに原告に交付して,原告に本件契約から早期に離脱する機会を失わせ,以後店舗開店に向けた費用を負担させたという点で,本件契約上,もしくは同契約におけるフランチャイザーに代わり当該業務の一部を担当する者の信義則上の説明義務,情報提供義務に違反するものとして,債務不履行又は不法行為責任があると認められ,これによって原告に生じたと認められる損害額から,過失相殺約7割分を控除した残金1360万円について,連帯してその賠償を行うべき義務があるものと認める。原告の被告らに対する請求は,その限度において理由がある。
(裁判官 荻原弘子)

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296