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「営業支援」に関する裁判例(92)平成22年12月28日 東京地裁 平19(ワ)34488号 システム開発代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

「営業支援」に関する裁判例(92)平成22年12月28日 東京地裁 平19(ワ)34488号 システム開発代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

裁判年月日  平成22年12月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)34488号・平20(ワ)11627号
事件名  システム開発代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求認容、反訴請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2010WLJPCA12288009

要旨
◆原告が、被告との間で、ソフトウェアの使用許諾、保守、導入支援業務及びアドオン開発業務の各契約を締結し、各種サービス等を提供した上、その後被告が新たに要求した追加支援業務についても、同様に提供したと主張して、被告に対し、各契約に基づく料金等の支払いを求めた事案(本訴)において、原告の請求が全て認められた事例
◆被告が、業務の効率化及びCRM(顧客関係管理)の基盤作りを行い、役員が被告の全業務を正確に把握し適切な経営判断を可能にすることを目的として、原告が被告の基幹情報システムの開発請負契約を締結したところ、原告開発のシステムには多数の不具合があったとして、原告に対し、債務不履行又は瑕疵担保責任に基づき損害賠償を求めた事案(反訴)において、被告主張の不具合はいずれも瑕疵に当たらないとされた事例

参照条文
民法415条
民法570条
民法632条
民法634条
商法512条

裁判年月日  平成22年12月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)34488号・平20(ワ)11627号
事件名  システム開発代金等請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求認容、反訴請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2010WLJPCA12288009

平成19年(ワ)第34488号 システム開発代金等請求本訴事件
平成20年(ワ)第11627号 損害賠償請求反訴事件

高松市〈以下省略〉
原告・反訴被告 株式会社STNet(以下「原告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 辛島睦
松山市〈以下省略〉
被告・反訴原告 ダイコー通産株式会社(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 菊地達也

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,3964万1028円及びこれに対する平成20年1月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告の反訴請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,全部被告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴請求
主文第1項と同旨
2  反訴請求
原告は,被告に対し,1814万5391円及びこれに対する平成20年5月9日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本訴事件は,情報システム開発等を業とする原告が,被告との間で,「SAP Business One」というパッケージソフトウェア(以下「SBO」という。)の使用許諾契約,保守契約,導入支援業務契約及びアドオン開発業務契約を締結し,各契約に基づいて,SBOの使用権を付与し,保守サービス,導入支援業務及びアドオン開発業務を提供・完成した上,その後被告が新たに要求した追加支援業務について,追加支援業務契約に基づいてこれを提供・完成したとして,被告に対し,使用許諾料,保守料,導入支援業務料,アドオン開発業務料及び追加支援業務料の支払を求める事案である。
反訴事件は,被告が,販売・購買業務の効率化及びCRM(顧客関係管理。Customer Relation Management)の基盤作りを行うとともに,役員が被告会社のすべての業務を正確に把握し適切な経営判断を行うことができるようにすることを目的として(以下,これらの目的をまとめて「本件目的」という。),原告との間で,原告が被告の基幹情報システムの開発を請け負う旨の請負契約を締結したにもかかわらず,原告が開発した基幹情報システムには多岐にわたる不具合(別紙2参照。以下,まとめて「本件不具合」という。)があったとして,債務不履行又は瑕疵担保責任に基づき,損害の賠償を求める事案である。
1  争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨に照らして,明らかな事実を含む。)
(1)  当事者
ア 原告は,電気通信事業法に定める電気通信事業,情報処理システム,通信システム及びこれらに関するソフトウェアの設計,開発,管理,運用,保守及び販売等を目的とする株式会社(設立昭和59年7月,資本金100億円)である。
イ 被告は,ケーブルテレビネットワーク・情報通信用ケーブル及び諸材料の製造及び販売等を目的とする株式会社(設立昭和50年6月,資本金4億0729万8000円)である。
(2)  SBOの概要等
SBOは,SAPアクツィエンゲゼルシャフト(ドイツ法人。以下「SAP社」という。)の開発した中小企業向けのパッケージソフトウェアであり,財務会計,販売管理,購買管理,取引先管理,銀行取引管理,在庫管理,管理会計,レポート,人材管理等の機能を提供する,いわゆる企業向け基幹業務システム(Enterprise Resource Planning。以下「ERP」という。)と呼ばれるものである。
なお,ERPとは,財務会計や販売管理,生産管理,購買管理,在庫管理など,企業の基幹業務の情報を一元的に統合管理するシステムのことであり,統合基幹業務システムとも呼ばれる。
SAPジャパン株式会社(以下「SAPジャパン」という。)は,SAP社100%出資の日本法人である。
(3)  導入の工程
SBO導入の工程は,次の8フェーズに分けられる。
ア 分析とデザイン
主にFit&Gap検証作業をする。Fit&Gap検証作業とは,パッケージソフトウェアであるSBOが提供する標準機能に,ユーザーの業務処理方法と適合(Fit)するか,差異(Gap)があるかを評価する作業である。差異があると評価された業務要件は,その見直しを行い,業務処理方法を変更してSBOの標準機能に合わせるか,それともSBOの機能の追加又は拡張(アドオン)に係る開発をするかを選択することとなる。
イ 開発
上記アでアドオン機能の開発をする旨の選択をしたものについて,その設計・開発をする(以下,これを「アドオン開発」という。)。
ウ インストール
エ システムセットアップ
オ データ移行
カ トレーニング
キ システムテスト・本番リハーサル
SBOの動作確認等をする作業である。
ク メンテナンス
システムデータのバックアップの準備等を行う作業である。
(4)  事実経過
ア 被告は,従来,会社の基幹情報システムとして,株式会社オービックビジネスコンサルタント製の中規模・中小企業向け基幹業務パッケージソフトウェアである「商奉行」(販売管理システム),「蔵奉行」(仕入在庫管理システム),「勘定奉行」(財務会計システム)を使用していたところ,平成16年ころから,取締役のC(役職は当時。以下「C取締役」という。)を中心にして,株式の上場を目指すため,基幹情報システムを刷新することを計画した。
イ 被告は,平成16年10月ころ,社内のアンケート結果を基に,SAPジャパンを含む数社に対し,それぞれのソフトウェア等の情報提供を求めたところ,SAPジャパンから原告を紹介された。
被告は,平成17年2月ころ,原告及び他のソフトウェア会社に対し,標準ソフトウェアの導入に関する見積書の提出を求めたところ,原告から,初期費用1660万7000円(うち導入費用(システム初期導入・移行支援作業費)500万円),年間運用・保守料215万5290円などと記載された同月24日付け「御見積書」(甲27)の提出を受け,そのころ,原告にシステム開発を委託する方向で,検討を進めることとした。
なお,上記見積書添付の「導入費用内訳」には,①分析とデザイン220万円,②開発0円(アドオン開発は含んでおりません。),③インストール50万円(クライアントセットアップ料金は含んでおりません。),④システムセットアップ80万円,⑤データ移行・マスタ・トランザクション50万円(移行ツールへの既存データ組込作業は含んでおりません。),⑥トレーニング80万円(教育・講演会は御本社での集合研修型で実施させていただきます。),⑦システムテスト0円(アドオン開発は含んでおりません。),⑧運用・保守20万円,などと記載されていた。
被告は,同年9月ころ,原告との間で,システムの切替え時期について協議・検討をした結果,被告の平成18年5月期の決算作業との重複を避けるため,新システムの稼動開始を同年3月1日とすることで,おおむね共通の理解が得られた。
ウ 原告は,平成17年10月6日ころ,被告に対し,初期費用1913万5500円(うち「システム初期導入・移行支援作業費」500万円,「追加機能(アドオン)開発費240万円),年間運用・保守料263万5290円などと記載された「御見積書」(甲28,29)とその見積内訳書(甲30)を提出した。その見積内訳書には,「追加開発要件一覧」として「総平均法による在庫評価プログラム」,「決算用単価テーブルの登録・メンテナンス」と記載されていた。
そして,原告の法人営業部のD(以下「D」という。)は,同月11日,C取締役に対し,「システム開発業務委託に関する基本契約書(案)」,「業務委託基本契約書に基づく個別契約書(案)」,「個別契約別紙(要件明細書案)」を添付した電子メール(甲4の1)を送信した。
これに対し,C取締役は,同月12日,Dに対し,資金計画上,リース会社経由で発注する旨の連絡をした(甲4の2)。
エ 平成17年10月24日,原・被告間で,「上場会社になるための業務効率向上プロジェクト」(以下「本件プロジェクト」という。)の計画書(甲6。以下「本件プロジェクト計画書」という。)が作成され,SBOの導入作業が開始された。
本件プロジェクト計画書には,(ア)「プロジェクトの目的」として,①「販売・購買業務の効率アップ」「CRMの基盤作り」,②「社長・役員に会社の全ての業務が正確に見える。=『見える経営』を行う。」と記載され,(イ)「プロジェクトの体制」として,①被告の「プロジェクトマネージャー兼プロジェクトリーダー」としてC取締役,「事務局」として総務課Eの名が記載され,②原告の「プロジェクト責任者」としてシステム開発部マネージャーF(以下「F」という。),「プロジェクト管理者」としてシステム開発部ERPソリューション第9TチームリーダーG(以下「G」という。),「現地リーダー」としてシステム開発部ERPソリューション第9TH(以下「H」という。)の名が記載されていた。
そして,プロジェクト期間は同日から平成18年2月末までと設定され,同年3月1日に本番運用を開始することとされた。
なお,原告は,平成17年11月1日,被告に対し,「『SAP Business One導入支援』業務の事前着手について」と題する書面(乙3)を送付し,「現在お話しを進めさせていただいております貴社向け『SAP Business One導入支援』業務につきまして,正式注文をいただけるまでに,一部の要件および機能が貴社納期のご希望に添うため,事前に着手する必要がございます。つきましては,『SAP Business One導入支援』業務の事前着手にあたり,まことに身勝手なお願いではございますが,ご承認をいただきたくお願い申し上げます。」などと依頼したところ,C取締役は,上記書面の「事前に着手することを承諾いたします。なお,要件・要望確定後すみやかに正式契約を締結することといたします。」と記載された部分に押印して原告に提出した。
オ Hは,平成17年10月25日,Fit&Gap検証作業を実施するため,被告の従業員に対するエンドユーザーヒアリングを開始した。
C取締役は,同年11月2日,Hが被告のエンドユーザーに質問して回答させるという方式から,被告のプロジェクト事務局が主体となって,Fit&Gap検証作業を実施する方式に変更することとした。
原告もこれを受け入れ,本件プロジェクト計画書のうち「分析とデザイン」フェーズを修正する旨の「分析とデザインフェーズの進め方(案)」(甲7)が作成された。
カ Fit&Gap検証作業は,平成17年11月末日ころに終了し,同年12月2日,本件プロジェクトの担当者により「分析とデザインフェーズ結果報告書」(甲8)が作成され,被告の承認を受けた。
そして,原告と被告は,上記報告書に基づき,アドオン開発の対象を確定し,原告は,同月14日,(ア)アドオン機能追加の費用を273万円(税込み)とする「御見積書」(甲31,乙4の1)を提出し,また,同月21日,(イ)ソフトウェア導入費1662万7800円(税込み)とする「御見積書」(甲32,乙4の2),(ウ)ソフトウェア保守料147万9114円とする「御見積書」(乙4の3)を提出した。
なお,上記(ア)の見積書には,「追加開発要件一覧」として①「出荷・仕入伝票同時計上」機能(受注確定後,発注処理を行い,商品が到着した時点で,購買請求書(仕入)と出荷/納入(出荷)のそれぞれの伝票を起票する。),②「消費税調整」機能(SAP Business Oneでは明細単位での消費税計算が標準機能だが,請求書単位の消費税計算を行う得意先があるため,請求書単位での消費税計算に修正するアドオンを作成する。)などと記載され,同(イ)の見積書添付の「導入費用内訳」は上記イの同年2月24日付け見積書添付のものと同内容であった。
キ 被告は,平成17年12月26日ころ,原告に対し,リース会社を東京リース株式会社(以下「東京リース」という。)とする旨を連絡した。
ク 原告と被告とは,平成18年1月16日ころ,被告が原告に委託するシステム開発業務について基本契約を締結する旨の平成17年10月20日付け「システム開発業務委託に関する基本契約書」(甲1。以下,「本件基本契約書」といい,この契約を「本件基本契約」という。)に記名押印し,平成18年2月2日ころ,原告が被告に対しSBOの使用を許諾する旨の平成17年12月28日付け「『SAP Business One』使用許諾契約書」(甲2。以下「本件使用許諾契約書」といい,この契約を「本件使用許諾契約」という。)及び被告が原告にSBOの保守サービスを委託する旨の同日付け「『SAP Business One』ソフトウェア保守契約書」(甲3。以下「本件保守契約書」といい,この契約を「本件保守契約」という。)に記名押印をした。
なお,本件基本契約書3条には,「甲(被告)が乙(原告)に委託する個々の業務の内容・開発期間・納期・報酬・その他の事項は,委託の都度本契約に基づき,別途個別契約書により定める。」との定めがあるが,本件基本契約に基づく個別契約書は作成されていない。
ケ(ア) 被告は,東京リースとの間で,平成18年1月13日ころ,SBOのサーバー及びソフトウェア(使用許諾及び導入支援)に係る平成17年12月28日付け「リース契約書」(乙1の1。月額33万0435円(税込)の60回払い。以下「本件リース契約書①」という。)を,平成18年3月7日,アドオン開発業務に係る同月10日付け「プログラム・プロダクトリース契約書」(乙1の2。月額4万6032円(税込み)の60回払い。以下「本件リース契約書②」という。)を,それぞれ交わした。
また,原告は,東京リースから,平成17年12月28日付け及び平成18年3月10日付け各「プログラム・プロダクト使用権注文書」(甲5の1の1,5の2の1)を受け,各同請書(甲5の1の2,5の2の2)を東京リースに交付した。前者の注文書・注文請書には「プログラム明細」として「ソフトウェア」と,代金1662万7800円(税込み)と記載され,後者の注文書・注文請書には「プログラム明細」として「ソフトウェア〔SAP Bisiness Oneアドオン機能追加〕 出荷・仕入伝票同時計上機能追加 消費税調整機能追加」と,代金273万円(税込み)と記載されていた。
(イ) 被告は,平成18年2月7日ころ,原告の要請を受けて,東京リースに対し,リース契約に係る借受証を交付した。
そして,C取締役は,同月28日付けで,ソフトウェア導入についての納入受領書(甲10の1の1),検収通知書(甲10の1の2)を,同年3月6日付けで,アドオン開発・導入についての納入受領書(甲10の2の1),検収通知書(甲10の2の2)に押印の上,原告に交付した。
コ 平成18年2月10日ころ,システムテスト作業が開始された。
しかしながら,同年3月1日からの本番稼動開始に移行することができなかったことから,同年6月1日の本番稼動開始を目指すこととした。
サ 被告は,平成18年3月3日及び同月6日から10日にかけて,SBOの不具合を発見したとして,原告に対し,合計5項目にわたる「SAP Business Oneの瑕疵の内容」を記載した同月8日付け「システム上瑕疵20060308」(甲11の1)及び同月10日付け「システム上瑕疵20060310-2」(甲11の2)を送付した。
また,被告は,いったん東京リースに交付した借受証を,この借受証が対象とするもののうちSBOに係るソフトウェアを除外した借受証に差し替えたほか,SBOに不具合が生じたなどとして,同月16日ころ,東京リースに対し,原告への支払を止めるように指示をした。
シ 被告は,平成18年4月4日,原告に対し,同年6月1日からの稼動開始を断念する旨を伝えるとともに,平成19年6月1日からの本番稼動を目指すこととした。
ス その後,平成18年4月24日から同月28日まで,同年8月21日から同月24日まで,同年9月19日から同月22日まで,同月25日,同年10月19日,同月20日,同月23日から同月26日まで,同月30日から同年11月1日までにかけて,被告がSBOの不具合を発見し,原告がそれへの対処方法を検討する作業が繰り返された。
そして,平成18年11月1日,帳票類のアウトプット等の一部を除く上記作業が終了した。
セ 原告は,平成19年1月29日,被告との会議において,原告が見積りの前提条件である最終的な解決方法について説明していたところ,被告の常務取締役I(以下「I常務」という。)は,その説明を遮り,金額の提示を求めたことから,原告が追加費用(転記日付順在庫評価計算アドオンとして400万円,返品伝票作成アドオンとして250万円,一部入出荷済み伝票検索クエリとして25万円,本番業務適用支援として170万円等)の記載のある概算見積(甲14)を提出した。すると,I常務は,「この金額では受け入れられない。今後は,第三者を通じて話合いをする。」と言い,話合いを打ち切った。
ソ 被告は,平成19年2月26日ころ,弁護士菊地達也(被告代理人)に委任して,原告に対し,SBOに係る不具合を同年3月31日までに解決し,業務を完了するよう求めるとともに,同日を徒過した場合は,業務の未完了を理由として,各契約を解除する旨を通知した。
原告は,同年5月25日ころ,被告に対し,使用許諾料1140万6150円,保守料295万8228円,導入支援業務料525万円,納品済みアドオン開発業務料273万円及び追加支援業務料1732万5000円(合計3966万9378円)の支払を催告したが,被告はこれらを支払わなかった。
2  主要な争点及び当事者の主張
(1)  被告の代金支払義務の有無(争点1)
(原告の主張)
ア(ア) 原告は,平成17年10月ころ,被告との間で,被告におけるSBOの導入作業を支援するとともに,導入支援業務料として525万円の支払を受ける旨を合意した(以下,この合意を「本件導入支援業務契約」という。)。
(イ) 原告は,平成17年12月ころ,被告との間で,Fit&Gap検証作業の結果を基に,①「出荷・仕入伝票同時計上」機能,②「消費税調整」機能に係るアドオン開発をするとともに,アドオン開発業務料として273万円の支払を受ける旨を合意した(以下,この合意を「本件アドオン開発業務契約」という。)。
(ウ) 原告は,平成17年12月21日ころ,被告との間で,被告に対し「SAP Business One プロフェショナルユーザー」を35ライセンス,「SAP Business One CRMセールスユーザー」を65ライセンス付与するとともに,使用許諾料として1137万7800円の支払を受ける旨を合意した(本件使用許諾契約)。
イ 被告がリース会社の利用を選択したのは,被告がファイナンス・リースの利点,すなわち,長期分割払いの方法で代金を支払うことができる利益を享受することにあるから,被告がリース業者を利用しないときは,被告は,本件使用許諾契約,本件導入支援業務契約及び本件アドオン開発業務契約上の義務として,原告に対し代金支払義務を負う。
(被告の主張)
使用許諾料,導入支援業務料及びアドオン開発業務料については,被告と東京リース間で本件リース契約書①,②が交わされており,被告が,東京リースに借受証を交付することを前提として,東京リースからの請求を受け,東京リースに対して支払うこととなっているのであるから,上記業務の未完了を理由に借受証を交付していない本件では,原告から被告に対し直接代金を請求する権利が発生する余地はない。
(2)  本件業務の完成の有無(争点2)
(被告の主張)
ア 本件目的の達成に係る合意
(ア) システム開発業務委託の性質
被告は,本件目的を達成するために,システム構築の専門業者である原告に対して,基幹情報システムの開発(以下,これを「本件業務」という。)を委託したものであり(以下,この委託契約を「本件業務委託契約」という。),原・被告間の契約関係は,本件基本契約書3条3項に明記されているとおり,請負契約である。SBOの導入支援業務は本件業務の一部にすぎない。
そして,本件使用許諾契約及び本件保守契約は,いずれも本件目的を達成するために締結されたものである。
(イ) 本件業務の内容
本件業務の内容は,本件プロジェクト計画書の記載から明らかなとおり,下記①の本件目的を達成するためのシステム開発であり,それぞれ下記②のとおり目標値が設定されている。
また,本件目的が達成できるか否かの評価に当たっては,現行システムとの比較の観点を捨象することができないのは当然である。
なお,上記(ア)のとおり,被告は本件目的を達成するために,システム構築の専門業者である原告に対して,基幹情報システムの開発を委託したものであるから,現行システムと同レベルの機能やERPとして標準的な機能については,被告と原告間で特段の合意がない限り,開発要件となると解すべきである。
① 本件目的
a 販売・購買業務の効率化及びCRMの基盤作りを行う。
b 役員が被告会社のすべての業務を正確に把握し,適切な経営判断を行うことができるようにする。
② 目標値
a 上記①aの目標値
(a) 品質
ⅰ ゼロ番コードを廃止し,仕入・売上での重複入力を削減する(ゼロ番コードとは,特定の商品に割り振られていない商品コード(不特定の商品のための汎用コード)のことをいう。ゼロ番コードを使用すると,同一の商品であっても担当者によって異なる商品名及びコード番号で伝票に登録されることがあるため,重複入力が生ずる原因ともなる。)。
ⅱ 営業の社内業務を減らし,顧客との接点を増やす。
(b) コスト
帳簿在庫数量と実地在庫数量を合わせ,棚卸減耗をゼロにする。
(c) 時間
ⅰ 伝票入力時間を50%削減し,事務職の労力を内部統制・営業支援に振り分ける。
ⅱ 顧客セグメント別に販売価格を設定し,見積作成時間を50%削減する。
b 上記①bの目標値
(a) 品質
ⅰ 経理業務(売上集計,粗利計算,請求書照合,回収予定表,輸入など)の負担軽減。
ⅱ 売上予想がより正確にできる。
(b) コスト
過度な売上値引を抑制する。
(c) 時間
ⅰ 月次決算のスピードアップ(翌月10営業日遵守)。
ⅱ 法定開示(商法・証券取引法の開示資料)が法定日数内に行える。
イ 債務不履行責任
(ア) 原告は,SBOに不具合が多数発見されたことなどが原因で,システムテスト及び本番リハーサルを完了することができなかったことから,被告から原告に対し,平成19年3月31日までに本件業務を完了するよう催告するとともに,同日を徒過した場合は,本件業務の未完了を理由として,本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約を解除する旨通知したにもかかわらず,同日までに本件業務を完了しなかったものである。
(イ) したがって,① 本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約は,原告の債務不履行を原因として,平成19年3月31日の経過により解除されたものであり(本訴),また,② 原告は,被告に対し,本件目的を達成するためのシステム開発を完成しなかったという債務不履行に基づく損害賠償義務を負う(反訴)。
(原告の主張)
原告が被告から受託したのは,SBOの使用許諾,保守,導入支援業務及びアドオン開発業務であり,SBOの導入によって被告主張の「本件目的」や「目標値」が達成できるなどと約束したことはない。
ア 業務の性質
一般に,システム開発契約は,ユーザーの主体性が要求される要件定義・外部設計の局面では準委任的な解釈・運用が,内部設計・コーディングなどの局面は請負的な解釈・運用が妥当とされ,本件導入支援業務契約及び本件アドオン開発業務契約はいずれも準委任的な性格を有する無名契約である。
イ 本件プロジェクト計画書
本件プロジェクト計画書は,被告が社内各部門を結集しプロジェクトをキックオフするために作成した文書であり,それ自体が契約の性質を有するものではない。
ウ 被告の「本件目的」
被告の主張する「本件目的」は,「役員が会社のすべての業務を正確に把握し,適切な経営判断を行うことができるようにする」などという抽象的かつ曖昧なものである。SBOは,購買,営業,在庫,物流,財務の業務のカバーを目的とした,複数の中小企業に共通の業務を想定したパッケージソフトウェアであるが,企画,総務,人事・給与・労務,生産といった被告のすべての業務をカバーするものではない。
エ 被告の「目標値」
SBOは,被告の掲げる「目標値」の達成を約束するソフトウェアではなく,「目標値」は,被告の目標,理想であるかもしれないが,被告の経営全体としての努力が必要な目標であって,原告がその達成を約束したこともない。
(3)  本件目的を達成できない瑕疵の存在(争点3)
(被告の主張)
ア 本件目的を達成することのできない瑕疵の存在
本件業務の内容は,上記(2)(被告の主張)ア(イ)記載のとおり,本件目的を達成するためのシステム開発であり,それぞれ目標値が設定されているほか,本件目的を達成できるか否かを評価するに当たって,現行システムの機能,業務フロー等をしんしゃくしなければならないものである。
ところが,仮に原告が本件業務委託契約で予定されていた最後の工程まで終了したと評価されるとしても,原告の提供した本件業務の目的物であるシステムには,多岐にわたる不具合があり,到底,本件目的を達成できるものではない。
イ 解除通知
被告は原告に対し,瑕疵の内容を特定した上で,平成19年3月31日までに不具合を解決(瑕疵を修補)するよう催告するとともに,同日を徒過した場合は,本件業務の未完了(瑕疵の未修補)を理由として,本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約を解除する旨通知したにもかかわらず,原告は同日までに上記不具合を解決(瑕疵を修補)しなかった。
したがって,瑕疵担保責任に基づき,①本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約は,平成19年3月31日の経過により解除されたものであり(本訴),また,②原告は,被告に対し,損害賠償義務を負う(反訴)。
(原告の主張)
否認する。
上記(2)(原告の主張)記載のとおりである。
(4)  本件各個別業務の履行・完成の有無(争点4)
(原告の主張)
ア 原告は,被告との間で,①平成17年10月ころ,本件導入支援業務契約を,②同年12月2日ころ,本件アドオン開発業務契約を,③同月21日ころ,本件使用許諾契約及び本件保守契約を,それぞれ締結した。
イ 原告が被告から受託したのは,SBOの使用許諾,保守,導入支援作業及びアドオン開発(以下,これらを併せて「本件各個別業務」という。)であるところ,原告は,平成18年2月28日までに,本件使用許諾契約,本件保守契約,本件導入支援業務契約及び本件アドオン開発業務契約(以下,これらを併せて「本件各個別契約」という。)に基づくすべての義務を履行した。
ウ(ア) 本件保守契約,本件導入支援業務契約及び本件アドオン開発業務契約については,準委任的な性質を有する契約であるので,原告は完成義務を負わない。
仮に本件アドオン開発業務契約が請負契約であるとしても,原告は合意したアドオン開発業務を完成している。
(イ) 本件使用許諾契約は請負契約ではないから,原告は,被告にソフトウェア等を提供すれば足り,完成義務を負わない。原告は,ドキュメンテーションによって定義されるソフトウェアにバグが発見された場合にソフトウェアの仕様どおりに修正することを保証するのみであって,被告の業務処理方法に合わせてカスタマイズする義務を負うものではない。
エ 導入支援業務の具体的な内容と原告による履行状況は別紙1「原告の主張(作業内容)」「原告の主張(履行状況)」欄記載のとおりであり,被告の主張に対する反論は「原告の反論」欄記載のとおりである。
オ 原告及びSAPジャパンは,SBO導入の工程の全期間にわたり,電話・FAX・メールによる問い合わせに応じる体制を採るなど,保守サービスを提供した。
(被告の主張)
仮に,原告が被告から受託したのが本件各個別業務であるとしても,原告は,これらを履行・完成させていないから,債務不履行責任を負う。
ア(ア) 原・被告間では,本件プロジェクト計画書記載のとおり,大別して,①導入準備,②分析とデザイン,③開発,④インストール,⑤システムセットアップ,⑥データ移行,⑦トレーニング,⑧システムテスト,⑨本番リハーサル,⑩メンテナンスという工程が予定されていた。
(イ) 請負人が仕事を完成させたか否かは,当初の請負契約で予定していた最後の工程まで終えているか否かを基準として判断されるところ,原告は,システムの不具合が多数発見されたことなどが原因で,システムテスト及び本番リハーサルを完了することができなかった。
イ 導入支援作業の内容と履行状況に係る被告の主張は,別紙1の「被告の反論」欄記載のとおりであり,これへの原告の反論に対する被告の反論は,「被告の再反論」欄記載のとおりである。
ウ(ア) 原告は,本件業務をいまだ完成させておらず,また,SBOが本件不具合により業務上使用できる状態にはないのであるから,原告は,本件保守契約5条に定める保守サービスを提供できる状態にはなかったものである。
(イ) 本件保守契約5条では,原告が被告に提供する保守サービスは以下の内容とするとされているが,被告が原告からこのような保守サービスを受けたことはない。
① 原告は被告からの操作及び障害の問合せに対して電話,FAX,メールなどでサポートを行う。
② 原告は,「ソフトウェア」の新「リリース」を被告に引き渡す。
③ 原告は,「サービスパック」を被告に提供する。
エ(ア) 原告は,SBOに不具合が多数発見されたことなどが原因で,システムテスト及び本番リハーサルを完了することができなかったことから,被告から原告に対し,平成19年3月31日までに本件業務を完了するよう催告するとともに,同日を徒過した場合は,本件業務の未完了を理由として,本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約を解除する旨通知したにもかかわらず,同日までに本件業務を完了しなかったものである。
(イ) したがって,①本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約は,平成19年3月31日の経過により解除されたものであり(本訴),また,②原告は,被告に対し,本件業務を完成しなかったという債務不履行に基づく損害賠償義務を負う(反訴)。
(5)  追加支援業務契約の成否及び履行(争点5)
(原告の主張)
ア 被告においては,本件プロジェクトの事務局が,Fit&Gap検証作業を,社内のユーザー部門の十分な関与・納得を得ないまま行ったため,原告が契約上の債務を履行・完成した後,被告社内のユーザー部門から事務局に対し,SBOの標準機能と被告の業務処理方法との差異及びプロジェクト事務局の対応についての不満が寄せられた。
そこで,C取締役は,社内ユーザー部門を参画させてFit&Gap検証作業を行うこととし,原告に対し,Fit&Gap検証作業により抽出された差異への対応方法を検討の上,提案するという支援を要求したことから,原告は,この要求に応じることとした(以下,この合意を「本件追加支援業務契約」という。)。
イ 原告は,平成18年3月1日から平成19年1月にかけて,追加支援サービスを提供した(ただし,平成18年3月1日から同月10日までの間に提供された追加支援サービスは無償である。)。
ウ これらの追加支援サービスに関しては,料金について明確な取り決めをしなかったが,原告は,被告のプロジェクト遂行の意思と支払の意思を信頼していたので,原告のシステムエンジニアの作業人月に応じた合理的な料金の支払を受けられることを前提に,追加支援サービスを提供した。
(被告の主張)
否認する。
原告は,「追加支援サービス」の料金を請求しているが,平成18年3月以降に行われたのは同年2月から継続して行われていたシステムテストである。そして,被告が原告に対して要求したのは,システムテストの過程で発見されたシステムの不具合の解決であり,本件業務そのものであって,追加支援などではない。
したがって,原告と被告間に,原告が主張するような「追加支援サービス」について何ら契約は成立しておらず,当該業務について新たに報酬等が発生する余地はない。
(6)  本件不具合に係る瑕疵の存在(争点6)
(被告の主張)
仮に,原告が被告から受託したのは本件各個別業務であるとしても,以下のとおり,原告の本訴請求は棄却されるべきであり,被告の反訴請求は認容されるべきである。
ア 本件不具合の存在
本件不具合の内容,本件不具合に対する原告からの提案,被告の主張は,別紙2記載のとおりである。
イ 瑕疵担保責任(請負契約)
別紙2記載の本件不具合のうち項目18の不具合については,原告の仕事の目的物に重大な瑕疵が存在すると評価されるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件業務委託契約(請負契約)に基づく瑕疵担保責任を負う。
ウ 瑕疵担保責任(使用許諾契約)
(ア) 本件不具合のうち項目16,18以外の各不具合は,本件使用許諾契約書の対象であるSBOの瑕疵であるから,原告は被告に対し,本件使用許諾契約書14条に基づく瑕疵担保責任を負う。
(イ) 本件基本契約書,本件使用許諾契約書及び本件保守契約書は,その目的が相互に密接に関連付けられ,社会通念上,本件使用許諾契約に解除事由がある場合には契約を締結した目的が全体としては達成されないから,本件使用許諾契約のみならず,すべての契約を解除することができると解すべきである。
エ 被告は原告に対し,瑕疵の内容を特定した上で,平成19年3月31日までに本件不具合を解決(瑕疵を修補)するよう催告するとともに,同日を徒過した場合は,本件業務の未完了(瑕疵の未修補)を理由として,本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約を解除する旨通知したにもかかわらず,原告は同日までに本件不具合を解決(瑕疵を修補)しなかった。
したがって,瑕疵担保責任に基づき,①本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守契約は解除されたものであり(本訴),また,②原告は,被告に対し,損害賠償義務を負う(反訴)。
(原告の主張)
否認ないし争う。
ア 被告が不具合と主張する32項目は,SBOの標準機能と被告の業務処理方法との間の差異にすぎないことは,別紙2記載のとおりである。
イ SBOはパッケージソフトウェアであるから,一般ユーザー企業も容認できないような不具合でない限り瑕疵とはいえない。
被告の主張する本件不具合のうち項目18は,新たな開発要求であり,その他の本件不具合はいずれも単なる被告の業務方法との差異にすぎない。差異につきSBOの仕様を受容しないのであれば,原告にアドオン開発を発注すべきである。
ウ 各契約間に被告が主張するような牽連性があるため,本件使用許諾契約の解除は,原告が提供したアドオン開発等の有償サービスに対する被告の支払義務を免れさせるとの被告の主張は争う。
すべての契約は情報システムの稼動を目的としているという意味で関連はしているが,一つの契約の終了が他の契約の遡及的解消をもたらすような牽連性(条件関係)はない。
(7)  損害(争点7)
(被告の主張)
ア 履行利益
被告は,原告の債務不履行ないし目的物の瑕疵の存在により,下記のとおり,合計1814万5391円の損害を被った。
(ア) 増員した従業員の人件費
被告は,原告に開発を委託した基幹情報システムが稼動しなかったため,従業員を増員せざるを得なかったが,この従業員の増員により増加した人件費は,その期間を平成19年4月から平成20年3月まで(既発生分)と少なめに見積もっても,合計3119万0691円である。
(イ) 現行システムのバージョンアップ及びライセンス数追加費用
新システムを稼動させることができなかったため,現行システムのバージョンアップ及びライセンス数を追加する必要が生じ,当該費用及び年間保守契約料として131万2500円の費用が発生した。
(ウ) 無形の損害
原告の債務不履行ないし目的物の瑕疵の存在により,新システムを稼動させることができなかったため,①販売・購買業務の効率化及びCRMの基盤作り,②役員が会社のすべての業務を正確に把握し,適切な経営判断を行うことができるようにするという本件目的が達成できず,また,株式上場の準備作業等にも大きな影響を与えた。
これらの無形の損害は,少なめに見積もっても500万円を下回らない。
(エ) 本件業務の代金相当額の控除
被告は,本件業務の代金相当額を支払っていないので,本件業務の代金相当額合計1935万7800円を上記損害額から控除する。
イ 信頼利益相当額(予備的主張)
被告が原告の債務不履行ないし目的物の瑕疵の存在により上記アの損害を被ったことは明らかであるが,万が一,立証責任の負担により,民訴法248条の適用によっても,下記の信頼利益相当額を下回る損害額しか認定できない場合には,被告は予備的に下記の信頼利益相当額合計1688万1331円を損害額として主張する。
(ア) 本件プロジェクトに従事した従業員の人件費
1404万9496円である。
(イ) 使用していないサーバーに関する費用
被告は,SBOを導入するためにサーバーを2台購入した上で,当該サーバーを管理,運用するために原告との間で平成18年1月31日付け「データセンター・ハウジング契約書」(乙18の1)を交わしたが,新システムを稼動させることができなかったため,上記サーバーのうち1台は全く使用していない。
したがって,以下のとおり,サーバーの購入費用及び上記「データセンター・ハウジング契約書」に基づくサービス料金のうち,5割相当額である283万1835円が被告の損害である。
① サーバー購入費用の5割相当額 162万3810円
被告と東京リース間の平成17年12月28日付けリース契約書(乙1の1)の対象であるサーバーのリース料相当額300万5100円(乙19)に同日付けリース契約書(乙20)のリース料総額24万2520円(4042円×60回)を加算した金額(324万7620円)の5割相当額。
② 「データセンター・ハウジング契約書」(乙18の1)に基づくサービス料金 120万8025円
電源・ネットワーク監視設定工事費用21万6300円(乙18の2)及び平成18年2月から平成20年3月までの基本サービス料金219万9750円(乙18の2,3)の合計額(241万6050円)の5割相当額。
(原告の主張)
否認ないし争う。
ア 原告は,SBO導入により人件費が削減されるという約束をしたことはない。
本件プロジェクトに従事した被告の従業員は,被告本来の業務に従事していたのであり,その人件費を被告の損害という主張は認められない。
イ 被告がサーバーの一部を使用しなかったとしても,システム資源の活用法に関する被告の経営管理上の判断に基づくものであって,原告の行為による損害ということはできない。
ウ 被告はサーバーをデータセンターから被告事業所に移設することができるのであるから,データセンター・ハウジング料金を被告の損害ということもできない。
第3  当裁判所の判断
1  前記争いのない事実等に証拠(甲1~12,14,25,27,31,47,48,53の1,61,73,74,103~107,乙1,5,6,16,22,58,60,65,証人H,同D,同G,同C。枝番のある書証は枝番を含む。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。
(1)  SBOの概要等
ア 一般に,企業が社内情報システムを構築する方法として,自社独自のソフトウェアを開発する方法と,ソフトウェア会社が製品として提供しているパッケージソフトウェアを利用する方法がある。
パッケージソフトウェアは,ソフトウェア会社において一般のユーザーが標準的に必要とする業務処理方法をプログラム化したものであり,ユーザーがこの処理方法をベースとして導入することにより,コンピュータ・プログラムのすべてを独自に自前で開発するカスタムソフトウェアの場合に比べ,効率的にシステムを完成でき,システム完成後の基幹ソフトウェアの保守及び改良についてもパッケージソフトウェア会社から効率的なサービスを受けることができるというメリットがある。
したがって,パッケージソフトウェアを利用した情報システム開発を円滑に進めるためには,パッケージソフトウェアの導入を支援するベンダーと社内業務処理に精通したユーザーが共同で,パッケージソフトウェアの標準的な業務処理方法とユーザーの社内業務処理方法との差異を明確にし,この差異を解決するために,ソフトウェアの機能を変更,追加すべきか,社内業務処理方法を変更すべきかを,差異毎に検討し,決定することが必要である。
イ SBOは,SAP社の中小企業向けのパッケージソフトウェアであり,ERPと呼ばれるものである。
ERPとは,財務会計,販売管理,生産管理,購買管理,在庫管理など,企業の基幹業務の情報を一元的に統合管理するシステムのことであり,統合基幹業務システムとも呼ばれる。
ERPパッケージソフトウェアの大きな特長としては,統合データベースによるデータの一元管理が挙げられる。例えば,部門別システム(個別システム)では,その部門の業務に合わせてデータベースが設計されていることから,部門の業務に対しては効率的なデータベースであるが,他部門の複数のデータベースを照会・参照したり,リアルタイムに更新したりすることは困難である。これに対し,ERPパッケージソフトウェアは,部門ごとに構築されているデータベースを一元管理し,情報を全社で共有することにより企業の基幹業務を管理するソフトウェアである(このようなデータベースを統合データベースと呼ぶ。)。
統合データベースでは,入力の都度,データがリアルタイムに更新されるため,関連する他の部門に情報を照会,参照する必要がなく,時間を節約することができる。また,多面的なデータの検索や加工をすることができ,様々な切り口からデータの解析をすることが可能となる。
業務に関するデータを一元的に管理し共有することで,データの重複入力やそれに伴う入力ミスを防ぎ,他部門の情報をリアルタイムに参照することができることから,他部門に配慮した判断や顧客の要求に対し,正確で迅速な対応が可能となる。
また,リアルタイムの情報による分析を通じて,正確かつ迅速な経営判断をすることが可能となるため,人,物,金,情報などの経営資源を有効活用することができるとされる。
ウ SAP社は,ERPの分野では世界有数の会社であり,SAP社のR/3と呼ばれるパッケージソフトウェア(SAP ERP)は,大企業・中堅企業を中心に導入されており,販売,在庫,購買,財務会計のほか,人事給与,プロジェクト管理,生産,固定資産,管理会計等の多数の業務機能を統合したソフトウェアで,導入費用は販売,在庫,購買,財務会計機能だけでも数億円以上にのぼる。
他方,SBOは,中小企業向けに,販売,在庫,購買,財務会計など必要最小限の業務全体をコンパクトに統合し一元的に管理するERPパッケージソフトウェアで,データ入力の重複,入力ミス,業務コストの削減が期待でき,上記R/3と同様,経営者が会社・事業全体の状況をリアルタイムに把握するために,多くの管理情報を販売・購買業務などの情報発生時点で入力する,すなわち全体最適というERPの設計思想に基づいて開発された製品であるが,上記R/3と比較して提供される業務機能が限定されているため,比較的安価に導入することができる。
SBOは,全世界で2万3000社,国内で400社(平成21年1月)の導入実績がある。
エ 小樽商科大学ビジネススクールほか編「MBAのためのERP」(甲104)には,「ERP導入の失敗例」として,次のとおり記載されている。
「失敗の第1の要因は,『ERPの導入目的が全社で不明確』ということである。経営者もユーザー部門もシステム管理部門も,目的を正しく認識せず,何となくERP導入を行っているケースである。この場合,改革・改善の議論はされるが,各々の部署が自分の部署の都合を優先し,最終的に現状が維持され,部分的な改革のみに留まってしまうケースが多い。部署間の調整も,積極的に改革していこうという姿勢が希薄であるため,後ろ向きの発言が多くなり,仕様の確定に時間がかかり,新しい業務要件が決まらず,標準化ができない,といった状況になることもある。
改革・改善には何らかの痛みを伴う。ERPの導入目的が明確でないと,保守的な意向が優先されてしまい,結果的に,改革・改善に対して現場が抵抗し,現状プロセスの継承を優先させるため,追加開発が増大するなどの状況に陥ってしまう。
第2の要因としては『明確な経営戦略とスコープなし』,『現場レベルでの業務プロセス改革止まり』が考えられ,第1の要因と同様の結果を招く。具体的な改革・改善項目が明確でないため,いざ改革・改善を実施しようとすると,枝葉末節の課題に目先を奪われてしまうからである。
第3の要因は現場が『現システムの使い方に固執』している場合である。この場合も,第1,第2の要因から発生する結果と同様になる。
第4の要因は『現場の参画と現場への啓蒙・教育が不十分』である。経営者層はERP導入の目的を理解し,トップダウンで現場に指示を出すが,その指示の意図が十分に伝わらない場合である。この場合は,第1,第2の要因から発生する結果に加え,物の動きとデータの動きが合っていない,システムのデータが使えない,使いにくいという状況に陥る。」
(2)  Fit&Gap検証作業
Fit&Gap検証作業とは,SBOが提供する標準機能にユーザーの業務処理方法が適合(Fit)するか,差異(Gap)があるかを評価する作業である。Fit&Gap検証作業の結果,差異が判明した場合には対応が必要となる。この作業の手順については次のとおりである。
ア ユーザーは,業務処理方法をSBOの標準機能に合わせるか否かを検討する。この段階でユーザーが標準機能を受容すれば,ベンダーはSAPジャパンやSAP社に対し質問も開発要求もしないこととなる。
イ これに対し,ユーザーが従来の業務処理方法の継続を選択した場合には,ベンダーは,①標準機能による運用を再確認することによって,ベンダーが知る方法以外の運用方法の有無を確認する,②アドオンでの対応方法について確認する,③SBOの次期バージョンでの対応予定の有無を確認する,④ユーザーから開発要求があることを伝えるという目的で,FAQシートを作成し,SAPジャパンに提出する。
ウ ベンダーは,SAPジャパンからの回答を受けて,ユーザーに再度対応方法を説明する。ユーザーは,①標準機能での運用を受容するか,②アドオン機能を追加するか,③SAP社が次期バージョンでの対応を予定している場合,対応まで標準機能で運用するかを検討する。
エ ベンダーは,SAP社が次期バージョンで対応することが判明している場合,又は,ベンダー自身の経験やSAPジャパンの情報に基づいて,FAQシートによる要求が採用されないことが明らかである場合を除き,SAP社に対してDRQ(Description of requirements。開発要求)を提出する。
SAP社でDRQが採用された場合,ユーザーは,アドオン機能を追加することなく現行の業務処理方法を継続することができる。
(3)  事実経過
ア 被告は,従来,会社の基幹情報システムとして,「商奉行」,「蔵奉行」,「勘定奉行」を会社の経理等のシステムとして使用していたところ,平成16年ころから,C取締役を中心にして,基幹情報システムを刷新することとして,同年9月ころ,社内でアンケートを取り,「基幹システムで改良したい点」と題する書面(乙2。以下「本件アンケート結果」という。)にまとめた。
被告は,同年10月ころ,本件アンケート結果を基に,SAPジャパンを含む数社に対し,それぞれのソフトウェア等の情報提供を求めたところ,SAPジャパンから,四国で初めての特約店として原告を紹介された。
被告は,同月19日ころから数度にわたり,原告の法人営業部のJ(以下「J」という。)ほかの訪問を受け,そのころ,原告に本件アンケート結果を渡した。
イ(ア) Hは,平成16年11月26日ころ,被告に対し,SBO体験版CD-ROM(以下「評価版CD-ROM」という),「SBOセットアップ手順」と題する書面等を送付した。なお,Hは,その送付文書である「SAP BUSINESS ONE 体験版送付のご案内」と題する書面(乙58の1)に,「是非とも『SAP BUSINESSONE』をご試用いただき,リアルタイム会計やワークフローをご体験ください。」「評価版CD-ROMは弊社原本となりますので同封の返信用封筒にてインストール後,ご返送いただきますようお願い申し上げます。」などと記載した。
(イ) C取締役は,SBO体験版をパソコンにインストールして使用した上で,平成16年12月17日ころ,Hに対し,「昨日,J様にSAPのデモCDをお返ししました。 自分のパソコンにインストールしましたが,いまいち使い方がよくわかりません。 標準的な業務,つまり,①受注発注同時入力→仕入入力→売上入力→入金入力→支払入力と②会計仕分入力の簡単なマニュアルがあれば送ってもらいたいので,よろしくお願いします。」と記載した電子メール(甲73の1)を送信した(なお,被告は,手順書に従ってインストールを行ったにもかかわらずインストールができなかったと主張するが,上記電子メールの記載内容にかんがみれば,この主張を採用することはできない。)。
(ウ) Hは,平成16年12月20日,C取締役に対し,「ご希望のマニュアルですが,SAP標準の資料ではご希望の操作方法があまり詳しく記載されておりませんでした。 ですので手順を画面ショットも含めた形で弊社にて作成いたしますのでお時間をいただけますでしょうか。」と記載した電子メール(甲73の2)を送信した。
(エ) C取締役は,被告のシステムニーズごとにピー・シー・エー株式会社のパッケージソフトの機能とSAP社のパッケージソフトの機能とを比較し「追加質問」を記載した一覧表(甲61の3)を作成し,平成17年1月13日,Jに対し,これを電子メール(甲61の1)で送信した。
なお,上記一覧表には,「×アドオン必要。」などの記載がある。
(オ) C取締役は,平成17年1月20日,Jに対し,「本日はありがとうございました。SBOについての主たる機能はだいぶ理解が進みました。しかしながら,後から細かい疑問が出てくるので,追加質問させてもらいます。」「①標準機能の出荷伝票,納品書の印刷について」「②次バージョンでは,ターミナルサービスのみでもクライアントは動きますか?」「今日帰られた後に判明したのですが,以前に頂いたSBOデモ版が期日が来た為もう使えなくなりました。デモ版試用期間の延長は可能でしょうか?」と記載した電子メール(甲74の1)を送信した。
(カ) Jは,平成17年1月24日,C取締役に対し,評価版CD-ROMとアンインストール手順書を送付した(乙58の2)。
(キ) C取締役は,上記評価版CD-ROMの再インストールを試みたものの,「データベースが作成されません」とのエラーメッセージが表示され,インストールすることができなかったことから,Hに対し,その旨を連絡した。
(ク) Hは,上記エラーの原因について,新たに評価版CD-ROMをインストールするには,既にインストールした評価版ソフトをアンインストールする必要があるのに,完全にアンインストールされた状態になっていなかったため,インストールができなかったものと考え,平成17年2月7日,C取締役に対し,「SAP Business One評価版でのインストール時のエラー『データベースが作成されません』は,こちらでも現象を調査しましたところ,データベースファイルが残っているため発生しているものと分かりました。お手数をお掛けしますが再度,MSDE,SBOの両方を削除いただきまして,以下のフォルダにあるファイルをすべて削除し,その後再インストールを行っていただきますようお願いします。」と記載した電子メール(乙58の3)を送信した。
(ケ) その後,C取締役は,平成17年2月7日から同年3月3日までの間,評価版CD-ROMでインストールしたソフトウェアを用いて,SBOの機能を体験した。
ウ 被告は,平成17年2月ころ,原告及び他のソフトウェア会社に対し,標準ソフトウェアの導入に関する見積書の提出を求めたところ,原告から,初期費用1660万7000円(うち導入費用(システム初期導入・移行支援作業費)500万円),年間運用・保守料215万5290円などと記載された同月24日付け「御見積書」(甲27)の提出を受けた。
なお,上記見積書添付の「導入費用内訳」には,①分析とデザイン220万円,②開発0円(アドオン開発は含んでおりません。),③インストール50万円(クライアントセットアップ料金は含んでおりません。),④システムセットアップ80万円,⑤データ移行・マスタ・トランザクション50万円(移行ツールへの既存データ組込作業は含んでおりません。),⑥トレーニング80万円(教育・講演会は御本社での集合研修型で実施させていただきます。),⑦システムテスト0円(アドオン開発は含んでおりません。),⑧運用・保守20万円,などと記載されていた。
被告は,そのころ,原告にシステム開発を委託する方向で,検討を進めることとした。
被告は,同年9月ころ,原告との間で,システムの切替え時期について協議・検討をした結果,被告の平成18年5月期の決算作業(被告の事業年度は毎年6月1日から翌年5月31日まで)との重複を避けるため,新システムの稼動時期を平成18年3月1日とすることで,おおむね共通の理解が得られた。
エ 原告は,平成17年10月6日ころ,被告に対し,初期費用1913万5500円(うち「システム初期導入・移行支援作業費」500万円,「追加機能(アドオン)開発費」240万円),年間運用・保守料263万5290円などと記載された「御見積書」(甲28,29)とその見積内訳書(甲30)を提出した。その見積内訳書には,「追加開発要件一覧」として「総平均法による在庫評価プログラム」,「決算用単価テーブルの登録・メンテナンス」と記載されていた。
そして,Dは,同月11日,C取締役に対し,「システム開発業務委託に関する基本契約書(案)」,「業務委託基本契約書に基づく個別契約書(案)」,「個別契約別紙(要件明細書案)」を添付した電子メール(甲4の1)を送信した。
これに対し,C取締役は,同月12日,Dに対し,資金計画上,リース会社経由で発注し,ソフトウェア代金及び導入支援・カスタマイズ費用のすべてを一つの契約としてリースを組むことにする旨のメール(甲4の2)を送信した。
Dは,本件プロジェクトの開始までに本件基本契約書の記名押印をし,SAP社にSBOの使用許諾を発注するまでに本件使用許諾契約書及び本件保守契約書の記名押印をする予定であったが,被告が,複数のリース会社から見積りを取るなど,リース会社の選定に時間がかかったため,各契約書の記名押印が遅れることとなった。
オ 平成17年10月24日,原・被告間で,本件プロジェクト計画書が作成され,SBOの導入作業が開始された。
本件プロジェクト計画書には,(ア)「プロジェクトの目的」として,①「販売・購買業務の効率アップ」「CRMの基盤作り」,②「社長・役員に会社の全ての業務が正確に見える。=『見える経営』を行う。」と記載され,(イ)「プロジェクトの体制」として,①被告の「プロジェクトマネージャー兼プロジェクトリーダー」としてC取締役,「事務局」として総務課Eの名が記載され,②原告の「プロジェクト責任者」としてシステム開発部マネージャーF,「プロジェクト管理者」としてシステム開発部ERPソリューション第9TチームリーダーG,「現地リーダー」としてシステム開発部ERPソリューション第9THの名が記載されていた。
そして,プロジェクト期間は平成17年10月24日から平成18年2月末までと設定され,同年3月1日に本番運用を開始することとされた。具体的なSBO導入スケジュールは,①平成17年10月24日から同年12月2日にかけて分析とデザイン作業(Fit&Gap検証作業)をし,②同日から同月下旬にかけて開発作業(在庫評価:総平均法対応)を,同月2日から同月中旬にかけてインストール作業(本番用サーバーの設定など)を,同作業終了後から平成18年1月16日にかけてシステムセットアップ作業をするとともに,これらと並行して,平成17年12月初旬から平成18年3月1日にかけてデータ移行作業をし,③同年1月中下旬(4日間)にトレーニング作業(操作教育)を,その終了後から同年2月上旬にかけてシステムテスト作業(操作に慣れるとともに,業務遂行に問題ないことを確認)を,その終了後から同年2月末日にかけて本番リハーサル作業(1月末の残高を移行し,リハーサルを実施する。)を行った上で,④同年3月1日に本番運用を開始するというものであった。なお,メンテナンス(バックアップ)は,同年1月中に行うこととされ,保守は同年3月から行うこととされていた。
また,この時点では,本件基本契約書等の記名押印はされていなかったが,このころ,原告と被告の間で,原告が,被告に対し,SBOを導入するため,①分析とデザイン,②インストール,③システムセットアップ,④データ移行,⑤トレーニング,⑥システムテスト・本番リハーサル,⑦メンテナンスの各工程について,代金525万円(税込み)で導入支援を行う旨の契約(本件導入支援業務契約)が成立した。
原告は,平成17年11月1日ころ,契約書の正式な調印をする前に被告にサービスを提供することとなることから,正式注文を受ける前に導入支援業務を事前に着手することへの承認を受ける旨記載された同日付け「『SAP Business One導入支援』業務の事前着手について」と題する書面(乙3)を被告に交付し,被告から押印を受けた。
カ(ア) Hは,平成17年10月25日,Fit&Gap検証作業を実施するため,「SAP Business One業務調査兼Fit&Gap分析シート」(乙24)を用いて,被告の従業員に対するエンドユーザーヒアリングを開始した。
(イ) しかしながら,Hが,エンドユーザーの質問に即答できないことがあったことや,即答した後に後日回答の誤りが判明したものがあったことなどもあって,C取締役は,Hが被告のエンドユーザーに質問して回答させるという方式から,C取締役自身が「SAP Business One業務調査兼Fit&Gap分析シート」を用いてエンドユーザーの要望を聞き,それを実現するにはSBOのこの機能で対応できるのではないかとHに問いかけ,Hから回答を受領する方式に変更することとして,その旨を原告に伝えた。原告もこれを受け入れ,平成17年11月2日,変更後の方式を記載した「分析とデザインフェースの進め方(案)」(甲7)を作成した。
そして,C取締役は,自身でFit&Gap検証作業を実施するために,Hからスキル・トランスファー(SBOの機能説明)を受けることとなった。
(ウ) Hは,平成17年11月7日から同月17日までの間,合計5日間にわたり,C取締役に対し,スキル・トランスファーを実施した。
このスキル・トランスファーは,Hが,C取締役ら被告のプロジェクト事務局のメンバーに対し,Fit&Gap検証作業に必要な操作方法と画面の説明をするという方法で実施された。そして,C取締役は,同日,「SAP Business Oneスキルトランスファー完了確認書」(甲63)に承認印を押捺した。
キ Fit&Gap検証作業は,平成17年11月末日ころに終了し,同年12月2日,本件プロジェクトの担当者により「分析とデザインフェーズ結果報告書」(甲8)が作成され,被告の承認を受けた。
原告と被告は,上記報告書に基づき,アドオン開発の対象を確定し,原告は,同月14日,アドオン機能追加の費用を273万円(税込み)とする「御見積書」(甲31,乙4の1)を提出し,同日ころ,原告と被告との間で,アドオン開発業務料を273万円(税込み)として,下記①,②の機能に係るアドオン開発をする旨の契約(本件アドオン開発業務契約)が成立した。
なお,上記見積書には,「追加開発要件一覧」として①「出荷・仕入伝票同時計上」機能(受注確定後,発注処理を行い,商品が到着した時点で,購買請求書(仕入)と出荷/納入(出荷)のそれぞれの伝票を起票する。),②「消費税調整」機能(SAP Business Oneでは明細単位での消費税計算が標準機能だが,請求書単位の消費税計算を行う得意先があるため,請求書単位での消費税計算に修正するアドオンを作成する。)などと記載されていた。
ク Dは,平成17年12月21日ころ,被告から,SBOのライセンス数が決定した旨の連絡を受けたことから,被告に対し,①「SAP Business One プロフェショナルユーザー」を35ライセンス,「SAP Business One CRMセールスユーザー」を65ライセンスとする場合のソフトウェア導入費1662万7800円(税込み)とする「御見積書」(甲32,乙4の2),②ソフトウェア保守料147万9114円(税込み)とする「御見積書」(乙4の3)を提出した。なお,上記①の見積書添付の「導入費用内訳」は上記イの同年2月24日付け見積書添付のものと同内容であった。
そして,そのころ,原告と被告の間で,使用許諾料を1137万7800円(税込み)とする本件使用許諾契約及び1年間の保守料を147万9114円(税込み)とする本件保守契約が成立した。
Dは,同年12月26日ころ,C取締役から,リース会社が東京リースに決まった旨の連絡を受けたことから,東京リースに連絡を取り,ソフトウェアパッケージの契約書類は東京リース指定の注文書及び注文請書となる旨,保守サービスについてはリース対象外で被告と原告との直接契約となる旨,支払条件はユーザーの検収(すなわち借受書の提出によるリース開始)となる旨を確認した。
Dは,同月27日ころ,SAPジャパンにライセンスを発注し,被告に対するSBOの使用許諾を受けた。
原告は,同月28日付けで,東京リースから,使用者を被告として,ソフトウェア(本件使用許諾契約に基づくライセンス及び本件導入支援業務契約に基づく導入支援業務)に対する非独占的使用権をリース契約の対象とする旨の「プログラム・プロダクト使用権注文書」(甲5の1の1。本件使用許諾契約の料金及び本件導入支援業務契約の料金合計1662万7800円に係るもの)の送付を受けたことから,東京リースに対し,「プログラム・プロダクト使用権注文請書」(甲5の1の2)に押印の上返送した。
ケ 被告は,東京リースとの間で,平成18年1月13日ころ,サーバー及びソフトウェアに係る平成17年12月28日付け「リース契約書」(本件リース契約書①)を交わした。
原告と被告は,平成18年1月16日ころ,本件基本契約書に記名押印した。本件基本契約書の日付は,本件プロジェクトの開始日以前の日付である平成17年10月20日とされた。
原告と被告は,平成18年2月2日ころ,本件使用許諾契約書及び本件保守契約書に記名押印をした。本件使用許諾契約書及び本件保守契約書の日付は,被告に対するSBOの使用許諾を受けた平成17年12月28日とされた(なお,本件使用許諾契約及び本件保守契約は,上記ク記載のとおり,平成17年12月21日時点で既に成立しており,本件使用許諾契約書及び本件保守契約書の調印は,形式を整えるために作成されたにすぎないものと認められる。)。
被告は,平成18年2月7日ころ,原告の要請を受けて,東京リースに対し,リース契約に係る借受証を交付したが,その後,この借受証を,この借受証が対象とするもののうちSBOに係るソフトウェアを除外した借受証に差し替えた。
コ 原告がSBO導入作業等を行うには,被告が調達することとなっていたハードウェア(サーバー)及びサーバー設置場所から被告までの接続回線が必要であり,このインストール作業は,平成18年1月17日ころに完了する予定であったものの,被告は約束の期日までに調達できず,サーバーが調達されたのは同月23日,接続回線が調達されたのは同年2月17日となったことから,SBO導入作業に遅れが生じた。
原告は,サーバーや回線を無償で貸し出すなどの方法により,SBO導入作業を進め,同月3日ころにインストール作業を完了させるとともに,同月9日ころまでに,被告による稼動検証作業を除くセットアップ作業を完了させた(甲9の1~6)。
サ 平成18年2月10日から,システムテスト作業が開始された。
しかしながら,SBO導入に係る一連の作業は,上記コのとおり,本件プロジェクト計画書で定められたスケジュールどおりに進めることができず,同年3月1日からの本番運用開始に移行することができなかった。
被告は,このシステムテスト作業中,受注購買発注画面において,アイテム価格の小数点が四捨五入されてしまう現象や,原告の開発したアドオンにおいて単価が0円以下の小数点が発生する場合にはアドオンが対応していないという現象などが生じたことから,同年2月15日,原告との打合せにおいて,原告に問い合わせた。
シ 原告は,平成18年2月28日,「『SAP Business One』導入支援について,下記のとおり検収したことを確認いたします。」「業務名:『SAP Business One』導入支援」「業務内容:ソフトウェア導入 他」「業務期間:平成17年10月24日から平成18年2月28日」「完了日:平成18年2月28日」と記載された「検収通知書」(甲10の1の2)に,C取締役の署名及び被告の社印を受けた。
ス C取締役は,平成18年2月28日,次の記載のある「SAP Business One GoingLive Checkシート(判定基準)」(乙16)において,「システムテスト」及び「本番リハーサル」を除く次のすべての項目について承認者として確認欄にチェックを入れた。
(ア) プロジェクト
① 議事録がすべて承認されていること。
② 問題点管理一覧表の問題点がすべて解決していること。
(イ) 適用分析ミーティング
① F&G分析表のGAP項目の回避策について,調整,確認がすべて完了していること。
② 新業務フローが作成されていること。
③ 新業務フローの検証が完了していること。
④ 必要なユーザ定義項目・フォーマット検索・アラート機能・権限設定・ユーザークエリが適切に設定されており,業務上,問題なく機能すること。
⑤ 必要な帳票が適切に作成されており,表示項目(特に金額)が正しく表示されていること。
⑥ マスタ設定の確認が終了していること。
⑦ マスタメンテナンス方法のスキルトランスファーが完了していること。
⑧ データ移行方針・スキルトランスファー確認書・要求機能仕様が承認されていること。
(ウ) アドオン
① 必要な追加開発要件が承認されていること。
② 追加開発要件が外部設計書により承認されており,要件通りに開発されていること。
③ 追加開発機能が,業務上,問題なく機能すること。
(エ) インストール
サーバー設定・クライアント設定が承認されていること。
(オ) システムセットアップ
① システム設定が漏れなく設定されていること。
② システム設定定義書が承認されていること。
③ コード化設計書が承認されていること。
(カ) データ移行
旧システムからSBOに移行するデータが承認されていること。
(キ) トレーニング
エンドユーザートレーニングが各業務担当者に適切に行われていること。
(ク) メンテナンス
① メンテナンス手順書の承認
② バックアップ計画書の承認がされている。
セ 原告は,平成18年3月6日,「『SAP Business One』アドオン開発・導入について,下記のとおり検収したことを確認いたします。」「業務名:『SAP Business One』アドオン開発・導入」「業務内容:アドオン機能の開発・導入」「業務期間:平成17年12月1日から平成18年3月6日」「完了日:平成18年3月6日」と記載された「検収通知書」(甲10の2の2)に,C取締役の署名及び被告の社印を受けた。
ソ 被告は,東京リースとの間で,平成18年3月7日にアドオン開発に係る同月10日付け「プログラム・プロダクトリース契約書」(本件リース契約書②)を交わした。
原告は,同月15日,東京リースから,ソフトウェア(アドオン開発業務)に対する非独占的使用権をリース契約の対象とする旨の「プログラム・プロダクト使用権注文書」(甲5の2の2。料金273万円に係るもの)の送付を受けたことから,東京リースに対し,「プログラム・プロダクト使用権注文請書」(甲5の2の2)に押印の上返送した。
Dは,同月20日,東京リースから,「C取締役より,いったん支払に同意した原告への支払を凍結してもらいたいとの申し入れがあった。当事者間で話をつけてほしい。」との連絡を受けた。
(4)  不具合の主張
ア C取締役は,平成18年3月3日及び同月6日から10日にかけて,SBOの不具合を発見したとして,次のとおり合計5項目の「瑕疵」を記載した「システム上瑕疵20060308」と題する書面(甲11の1)及び「システム上瑕疵20060310-2」と題する書面(甲11の2)を作成し,「以上の瑕疵の修正完了期限は2006年3月31日とする。」と付記して,それぞれ同月8日及び同月10日に原告に送付した。
(ア)「受注発注同時を使うとき受注は過去日付で登録できるが,発注伝票はシステム日付のままである。」
(イ)「よって,月が変わると受注発注同時が使えない。」
(ウ)「小数点が表示されない。」
(エ)「売掛請求書クレジットメモで,システム日付よりも前の過去日付で(1日でも前でも)伝票登録したら,締日が出ない。また,システム日付で伝票登録すると,その得意先の締日ではなく,システム日付が締日となる。そうなると,請求書の締め処理に正確に乗らなくなる。」
(オ)「数量を入力し,価格は飛ばして,合計を入力すると,価格は割り切れない場合は小数点以下第3位で端数処理される。そこで,税コードを変えると,合計がその『端数処理された割り切れない単価』×数量で再計算され,当初入力した合計が変わってしまう。」
イ 原告は,被告が指摘した現象について,SAP社に問い合わせた上で,平成18年3月16日,Fから被告に対し,「『業務効率向上プロジェクト』課題の対応状況ご報告」と題する書面(乙5)を用いて,上記現象に対するSAP社から原告への回答を説明するとともに,原告によるアドオン開発やパッチの適用などを提案した。
また,Fは,同月23日,被告に対し,「御社『業務効率向上プロジェクト』課題の対応状況ご報告と今後のプロジェクト推進について」と題する書面(甲12)を用いて,SAPジャパンの対応状況と解決案等を説明した。
なお,同書面には,「尚,パッケージ製品であるSAP Business Oneの標準機能を上回る追加開発につきましては,費用対効果を考慮し,ご判断下さいますようお願い申し上げます。」と記載されていた。
ウ その後,原告は,被告に対し,上記アの(ア)~(オ)について,① アドオンを開発して納入する,② SAPジャパンから修正プログラムを入手して動作確認をする,③ 入力や設定の順番を変更するなどの方法を提案した。
エ 被告,原告及びSAPジャパンの担当者は,平成18年3月27日,打合せを行い,「システムテスト課題管理一覧」(乙6)を使用して,課題解決に向けた協議をした。SAPジャパンの担当者Kは,その際,「平成18年6月からの本番稼動は困難である。」旨を述べた。
オ F,G,D,Hほかは,平成18年4月4日,被告の代表取締役B(以下「B社長」という。),同監査役L(以下「L監査役」という。),C取締役らと打合せを行った。被告側は,この打合せにおいて,原告側に対し,同年6月1日からの本番稼動を断念する旨を伝え,平成19年6月1日からの本番稼動開始を目指すこととしたほか,次のやりとりが交わされた。
(ア) Fが「被告の要望である平成19年6月本番化も視野に入れ,被告が最終的に総合判断できるよう,検討の支援を進めたい。」旨を述べたところ,B社長は,「既に決定したSBO導入を中止する考えはない。平成19年6月本番化に向けて,被告,原告,SAPジャパンが協力して前向きに取り組んでほしい。」と述べた。
(イ) Fが,「被告から要望を受けた『重要課題(5項目)』については,対応方法の目処が立ち,原告及びSAPジャパンにて鋭意対応中である。」旨を述べ,SAPジャパンのMマネージャーが「これらの課題は,製品の不具合である。」などと述べた。
(ウ) Fが,「その他の課題につきましては,製品の標準仕様である。ERPパッケージソフトウェアの性質を理解した上で,製品の標準機能で利用するか,標準機能を上回る要件については費用対効果を考慮して追加開発要否を含めた判断をお願いしたい。」旨を述べたところ,L監査役は,「当社独自の業務に適合させるための当社要望による機能追加分については,アドオンの対応でも問題ない。」旨を述べた。
(エ) SBOが被告の業務に適合するかどうかの再確認について,原告及びSAPジャパンの支援の下で,被告が平成18年5月中までに再確認をすることとなった(なお,これらの作業は,被告が「不具合」(その内容は,SBOの標準機能と被告の業務処理方法との差異)を発見し,原告に指摘して,原告に解決策を提案させるものであって,実質的には再度のFit&Gap検証作業であると認められる。)。
カ(ア) 被告が,別紙2の(要求日)欄の括弧内の年月日に,「内容」欄記載の現象を指摘したことから,原告は,SAPジャパンに対し,「SAPへの開発要求」欄記載のとおり,必要に応じて開発要求等を行い,被告に対し,「原告の提案」欄記載のとおり対応した。
(イ) 被告は,平成18年3月3日から同年10月30日に至るまで,原告に対し,別紙3の「発生(判明)の時期」欄記載の年月日に「内容」欄記載の現象を指摘したところ,原告から,「原告からの提案等」欄記載の提案や説明等を受けたことから,「被告の対応等」欄記載のとおり,原告の提案等を承認するなどした。
キ その後,原告と被告は,平成18年4月27日,同月28日,同年5月16日,同年6月19日,同年10月6日,同月19日,同月24日など,繰り返し打合せを行った。
そして,同年11月,再度のFit&Gap検証作業は,最終確認作業を残すのみという段階まで進んだ。
ク Hは,平成19年1月11日,被告に対し,バージョンアップしたらクエリやアドオン機能が作動しなくなる可能性がある旨を伝えた。
ケ 原告は,平成19年1月29日,被告との会議において,原告が見積りの前提条件である最終的な解決方法について説明していたところ,被告のI常務は,その説明を遮り,金額の提示を求めたことから,原告が追加費用(転記日付順在庫評価計算アドオンとして400万円,返品伝票作成アドオンとして250万円,一部入出荷済み伝票検索クエリとして25万円,本番業務適用支援として170万円等)の記載のある概算見積(甲14)を提出したところ,I常務は,「この金額では受け入れられない。今後は,第三者を通じて話合いをする。」と言い,話合いを打ち切った。
コ 被告は,平成19年2月26日ころ,被告代理人に委任して,原告に対し,SBOの不具合を同年3月31日までに解決し,業務を完了するよう求めるとともに,同日を徒過した場合は,業務の未完了を理由として,各契約を解除する旨を通知した。
(5)  リース契約に係る規定
ア 上記(3)ク,ソの「プログラム・プロダクト使用権注文書」の記載
上記「プログラム・プロダクト使用権注文書」(甲5の1の1,5の2の1)には,次の規定がある。
(ア)「この契約は,使用権取得者が使用権設定者から注文請書を受領したときに成立します。」(付帯条項2)
(イ)「買主(東京リース(株))と借主との間にリース契約が締結されない場合は,この注文書(注文請書)は無効とします。」(特約事項)
イ 本件リース契約書
本件リース契約書①,②(乙1の1,1の2)には,以下の規定がある。
(ア)「乙(東京リース)は,甲(被告)が指定する別表1記載のリース物件(以下物件という)を,甲が指定する別表2記載の売主(原告)から買受けて甲にリースし,甲はこれを借受けます。」(1条1項)
(イ)「リース料は,別表6記載のとおりとし,その支払日および支払方法は,別表7(第1回:借受日,第2回~第60回:各月5日)記載のとおりとします。」(3条)
(ウ)「甲(被告)は,(中略)瑕疵のないことを確認次第,直ちに物件の借受証を乙(東京リース)に交付します。」(5条2項)
(エ)「借受証の交付によって,物件は甲(被告)に引き渡されたものとします。」(5条3項)
(オ)「甲(被告)が不当に物件の引渡しを拒みまたは遅らせた場合には,甲は,第16条第2項の規定に基づき,この契約を解除されても異議を申し出ないものとします。この場合,売主から請求があったときは,甲は,売主に対して損害賠償の責に任じます。」(5条4項)
2  争点1(被告の代金支払義務の有無)について
(1)  上記1認定事実によれば,原告は,被告との間で,① 平成17年10月24日ころ,導入支援業務料を525万円とする本件導入支援業務契約を締結し,② 同年12月14日ころ,アドオン開発業務料を273万円とする本件アドオン開発業務契約を締結し,③ 同年12月21日ころ,使用許諾料を1137万7800円とする本件使用許諾契約及び1年間の保守料を147万9114円とする本件保守契約を締結したことがそれぞれ認められ,これらの事実に照らせば,被告は,原告に対し,上記各契約に基づき,各代金の支払義務を負うものと認められる。
(2)ア  被告は,使用許諾料,導入支援業務料及びアドオン開発業務料については,東京リースに対して支払うこととなっているのであるから,業務の未完了を理由に借受証を交付していない本件では,原告から被告に対し直接代金を請求する権利が発生する余地はないと主張する。
イ  そこで,検討するに,上記1認定事実によれば,① 被告と東京リースとの間で,ライセンス,導入支援業務及びアドオン開発業務に係るプログラム・プロダクト(以下,併せて「リース対象物件」という。)の各代金に係るリース契約が締結されたこと,② 原告は,このリース契約に基づく東京リースからの発注を受けて,東京リースとの間で,リース対象物件に係る使用権設定契約を締結したことが認められ,これらの事実に照らせば,東京リースは,いったん,原告に対し,リース対象物件に係る代金支払義務を負うこととなったものと解される。
しかしながら,上記1認定事実によれば,① 上記使用権設定契約には,「買主(東京リース(株))と借主との間にリース契約が締結されない場合には,この注文書(注文請書)を無効とする」との定めがあること,② 上記リース契約には,被告がリース料を借受けの日から支払う旨の定めがあること,③ リース会社の利用を申し出たのは被告であって,その理由は資金計画上のものであったこと,④ 本件基本契約には,「乙(原告)は,甲(被告)の検収を受けた業務について,委託料金および消費税等相当額を,甲(被告)に請求する。」(6条1項)と規定されており,リース会社の関与がない場合の原告,被告間の関係については,本件基本契約成立当時の当事者の意思解釈によって決すべきものであると解されることなどを併せ考慮すれば,本来,リース業者にリース対象物件を買い受けてもらう努力は,分割弁済という利益を受ける被告がすべきものであるから,被告が上記利益を享受する意思を有しないことが明らかとなった場合には,契約上の義務として,被告は,原告に対し,直接代金の支払義務を負うものと解するのが相当である。
そして,上記1認定事実によれば,被告は,① リース契約の成立後,SBOに係るソフトウェアを除外した借受証に差し替えたこと,② 東京リースに対し,原告への支払を止めるよう指示したことが認められ,これらの事実のほか,後記のとおり,被告の債務不履行,瑕疵担保に係る主張に理由のないことなどを併せ考えると,上記①,②により,被告が分割弁済の利益を享受する意思を有しないことが明らかとなったものと認めるのが相当であるから,被告は,本件使用許諾契約,本件導入支援業務契約及び本件アドオン開発業務契約に基づいて,原告に対し,代金支払義務を負うものというべきである。
3  争点2,3(本件業務の完成の有無,本件目的を達成できない瑕疵の存在)について
(1)  ① 争点2において被告の主張する債務不履行責任は,原告が本件目的を達成するシステムの開発を請け負ったにもかかわらず,原告が導入支援したSBOでは本件目的を達成(本件業務)することができないことから,本件業務が完成していないことを主張するものであり,② 争点3において被告の主張する瑕疵担保責任は,要するに,原告が特に本件目的を達成するシステムの開発を請け負ったにもかかわらず,原告の提供したシステムには本件目的を達成する性能を具備しないことが瑕疵に当たると主張するものと解される。
(2)  そこで,検討するに,上記1認定事実に証拠(甲14,27)及び弁論の全趣旨を総合すれば,① 被告が導入を決めたSBOはパッケージソフトウェアであって,アドオン開発する機能を除き,基本的には被告がSBOの標準仕様による業務処理方法を受容する性質のものであること,そして,C取締役は,SBO導入を検討するに当たり,アドオン必要の有無を検討していたこと,② 原告は,本件プロジェクト計画書作成前に,「ソフトウェアの提供」や「導入支援業務」に係る費用を見積書(甲27)に記載の上,被告に示していること,その導入支援業務に係る費用の見積書には,「アドオン開発費は含まれておりません」との記載があり,また,「総平均法による在庫評価プログラム」等につきアドオン開発費240万円とする見積書が作られたこと,さらに,Fit&Gap検証作業後にアドオン開発の対象を「出荷・仕入伝票同時計上」「消費税調整」と確定して,アドオン開発費273万円とする見積書が作成されたこと,③ 原告は,被告との間で,本件基本契約書のほか,本件使用許諾契約書,本件保守契約書を作成していること,④ 平成19年1月29日付け「SAP Business One本番業務適用に関わる概算につきまして」と題する書面(甲14)には,「SBOライセンス料」「ライセンス保守料」「導入支援費用」「納品済アドオン費用」との記載があることが認められることなどの事情を総合すれば,原告が受託したのは,本件使用許諾契約,本件保守契約,本件導入支援業務契約及び本件アドオン開発業務契約に基づく,SBOの使用許諾,保守サービスの提供,導入支援業務及びアドオン開発業務であると認めるのが相当である。
(3)ア  被告は,本件目的の達成を原告に委託した旨を主張する。
イ  そこで,検討するに,前記争いのない事実等,上記1認定事実及び証拠(甲6,27,90,91の1,93の1,2,乙59の1~6,67)によれば,次の事実を認めることができる。
(ア) 原告は,平成17年2月24日,被告に対し,「SAP Business One導入 に対し,下記のとおり御見積り致します」「1 ソフトウェア」「2 導入費用」「3 ハードウェア」「4 IDC」と記載された御見積書(甲27)を提出した。
(イ)a C取締役は,平成17年10月4日,Hに対し,「ERPプロジェクト目標を定めました。大きく2つにしかなりませんでしたが,この2大目的を中心にプロジェクトを進めたいと思います。」と記載された電子メール(甲90)に「ERPプロジェクト目標.xls」というファイルを添付して送付した。
b Hは,平成17年10月13日,C取締役に対し,「③目的・方針 C様より頂きました「導入の目的.xls」を元にこちらで記入いたしました。ご確認をよろしくお願いいたします。」などと記載された電子メール(甲91の1)に「プロジェクト計画書.ppt」と題するファイルを添付して送付した。
c Gは,平成17年10月21日,C取締役に対し,「プロジェクト計画書及び,アジェンダ(最終版)を送付しました。ご確認をお願いいたします。来週月曜日は,よろしくお願いいたします。」と記載された電子メール(甲93の1)に「プロジェクト計画書final.ppt」と題するファイル等を添付して送付した。
(ウ) 平成17年10月24日,被告の本社において,本件プロジェクトのキックオフミーティングが実施され,C取締役及びGは,それぞれ本件プロジェクト計画書について説明した。
(エ) 本件プロジェクト計画書には,次のとおり記載されている。
a 本件目的
① 販売・購買業務の効率化及びCRMの基盤作りを行う。
② 役員が会社のすべての業務を正確に把握し,適切な経営判断を行うことができるようにする。
b 目標値(上記a①に係るもの)
① 品質
(a) ゼロ番コードを廃止し,仕入・売上での重複入力を削減する。
(b) 営業の社内業務を減らし,顧客との接点を増やす。
② コスト
帳簿在庫数量と実地在庫数量を合わせ,棚卸減耗をゼロにする。
③ 時間
(a) 伝票入力時間を50%削減し,事務職の労力を内部統制・営業支援に振り分ける。
(b) 顧客セグメント別に販売価格を設定し,見積作成時間を50%削減する。
c 目標値(上記a②に係るもの)
① 品質
(a) 経理業務(売上集計,粗利計算,請求書照合,回収予定表,輸入など)の負担軽減。
(b) 売上予想がより正確にできる。
② コスト
過度な売上値引を抑制する。
③ 時間
(a) 月次決算のスピードアップ(翌月10営業日遵守)。
(b) 法定開示(商法・証券取引法の開示資料)が法定日数内に行える。
(オ) 原告被告間で締結した本件基本契約,本件使用許諾契約及び本件保守サービス契約に係る各契約書には,上記(エ)の本件目的,目標値等に係る記載はない。
(カ) 平成17年10月25日付け,同月26日付け,同年11月7日付け,同月8日付け,同月9日付け,同月15日付け,同年12月2日付け各「打合せ議事録」(乙59の1~6,67)には,いずれも上記(エ)の「本件目的」に係る記載はない。
ウ  そして,上記イ及び上記1認定事実及び弁論の全趣旨によれば,① 原告は,C取締役から電子メールで送付されたファイル等の記載を基にして,本件プロジェクト計画書を作成したこと,② C取締役とGが,本件プロジェクトのキックオフミーティングにおいて,それぞれ本件プロジェクト計画書の説明をしたことが認められ,これらの事実等を併せ考慮すれば,本件プロジェクト計画書は,被告の説明を基に原告が作成したものであると推認されるものの,このことから直ちに,本件目的の達成が原・被告間の契約の内容になっていたものと認めることはできない。
そして,上記イ及び上記1認定事実,証拠(甲6,67,乙59の1~6,67)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件目的は「業務の効率アップ」「CRMの基盤作り」「『見える経営』を行う」など抽象的なものであり,目標値も,「顧客との接点を増やす」「事務職の労力を内部統制・営業支援に振り分ける」「売上予想がより正確にできる」「過度な売上値引を抑制する」など,抽象的なものが多い上,「入力時間を50%削減する」「見積作成時間を50%削減する」「法定開示が法定日数内に行える」などという目標値は,SBO導入後の被告の経営管理や業務方法の在り方にかかっているものであって,パッケージソフトウェアの導入を支援するシステム開発会社である原告が,その達成を請け負うことができる性質のものではないこと,② 本件プロジェクトのキックオフ後の打合せ議事録には,本件目的や目標値の達成について具体的に話し合った旨の記載がないこと,③ 本件プロジェクト計画書には,「上場会社になるため」など,それ自体が契約の性質を有するものとはいえない表現が用いられていること,④ 「Implementation Guide for SAP Business One 導入ガイド」(甲67)には,「Project Kick-off」の項に「プロジェクトのKick-offには,責任者の任命,実現レベルの設定,大枠のスケジュール作成,および導入段階のスケジュールの作成とプレゼンテーションを含む必要があります。プロジェクトの目的と成果についてパートナとお客様で共通認識を得ることが重要です。お客様とビジネス目標をサーベイしてください。」との記載があること,⑤ ERP導入の失敗例として,『ERPの導入目的が全社で不明確』であることが挙げられていることなどの事情を考慮すれば,原告が被告の説明を基に本件プロジェクト計画書において本件目的の記述を作成したのは,本件プロジェクトが失敗しないようにするため,本件プロジェクトの目的と成果について共通認識を得るためのものであったと認められ,被告が,原告に対し,本件目的を達成するためのシステム開発を委託したものとまで認めることはできない。
エ  被告は,① 原告が平成18年2月18日に被告に押印を求めた納入受領書(甲10の1の1)に,納入物件として「プロジェクト計画書」との記載がある,② 原告自身,プロジェクト計画書を納入した,③ 本件プロジェクト計画書は原告所定の書式であって,仮にひな型作成例を提供されても,被告において作成できるものではない,④ SBOの導入ガイド(甲67)でも適切な指標をすべて含むプロジェクト計画書を作成することとなっているなどと主張するが,これらの事実は,いずれも被告の説明を基にして原告が本件プロジェクト計画書を作成したものであることを推認させるものにすぎず,上記認定を左右するものではない。
(4)  したがって,原告が被告から本件目的を達成するためのシステム開発を請け負ったものとは認められないから,争点2,3の被告による債務不履行責任及び瑕疵担保責任の主張はいずれも理由がない。
4  争点4(本件各個別業務の履行・完成の有無)について
(1)  上記2(1)認定事実のとおり,原告は,被告との間で,① 平成17年10月24日ころ,導入支援業務料を525万円とする本件導入支援業務契約を,② 同年12月14日ころ,アドオン開発業務料を273万円とする本件アドオン開発業務契約を,③ 同年12月21日ころ,使用許諾料を1137万7800円とする本件使用許諾契約及び1年間の保守料を147万9114円とする本件保守契約をそれぞれ締結したものと認められ,原告が受託したのは,これらの契約に基づく,SBOの使用許諾,保守サービスの提供,導入支援業務及びアドオン開発業務であると認められる。
そこで,それぞれの契約に基づく業務ごとに履行・完成の有無を検討する。
(2)  本件使用許諾契約
ア 証拠(甲2)によれば,本件使用許諾契約3条1項柱書には「本契約に基づき乙(原告)は,甲(被告)に対し日本国内における『生産的使用』及び『非生産的使用』のために日本国内の特定の場所において『ソフトウェア』,『ドキュメンテーション』,『第三者データベース』及びその他の『SAP』の『専有情報』(但し,『ソフトウェア開発キット開発バージョン』を除く)を『使用』する非独占的,譲渡不能,永久(第19条により本契約が終了した場合を除く)の『使用』権を許諾する。」と定められており,また,同2条16項には「『ソフトウェア』とは,(1)『SAP』により,又は『SAP』のために開発された本契約により特定され,甲に引渡されるSAP Business Oneソフトウェア」と,同21項には「『使用』とは,直接又は間接を問わず,『ソフトウェア』のロード,アクセス,実行,使用,利用,ストア又はディスプレイを行うことをいう。」と定められていることが認められ,これらの事実に照らせば,原告は,被告に対し,本件使用許諾契約に基づき,SBOのロード,アクセス,実行,使用,利用,ストア又はディスプレイを行う権利を付与する債務を負担したものと認められる。
イ 上記1認定事実によれば,Dは,平成17年12月27日又は28日,SAPジャパンにライセンスを発注し,被告によるSBO使用の許諾を受け,これを被告に付与したものと認められるから,原告は,上記アの債務を履行したものと認められる。
(3)  本件導入支援業務契約
ア 上記1認定事実及び証拠(甲1,6,27,乙23,証人H)によれば,(1) 原告が被告に送付した平成17年2月24日付け「御見積書」(甲27)には,導入費用500万円の内訳として,①分析とデザイン220万円,②開発0円(アドオン開発は含んでおりません。),③インストール50万円(クライアントセットアップ料金は含んでおりません。),④システムセットアップ80万円,⑤データ移行・マスタ・トランザクション50万円(移行ツールへの既存データ組込作業は含んでおりません。),⑥トレーニング80万円(教育・後援会は御本社での就業研修型で実施させていただきます。),⑦システムテスト0円(アドオン開発は含んでおりません。),⑧運用・保守20万円,などと記載されていること,(2) 本件プロジェクト計画書及び平成17年10月24日付け「要件確認書」(乙23。以下「本件要件確認書」という。)には,作業項目として,①分析とデザイン,②開発,③インストール,④システムセットアップ,⑤データ移行,⑥トレーニング,⑦システムテスト/本番リハーサル,⑧メンテナンス,⑨Going Liveと記載されていることが認められ,これらの事実に照らせば,原告は,被告に対し,(ア)分析とデザイン,(イ)開発(ただし,本件導入支援契約自体には,アドオン開発業務は含まれない。),(ウ)インストール,(エ)システムセットアップ,(オ)データ移行,(カ)トレーニング,(キ)システムテスト/本番リハーサル,(ク)メンテナンスの工程を経て,これを終了させる債務を負担する合意をしたものと認められ,上記債務の内容及び本件基本契約書3条3項には「請負形態による業務とする」との記載があることなどの事情を併せ考慮すれば,当初予定された最後の工程まで一応終了した場合には,導入支援業務が完成したといえる。
この場合,注文者である被告は,仕事が完成して目的物の引渡があったときは,単に仕事の目的物に瑕疵があるというだけの理由で直ちに報酬金の支払を拒むことはできず,担保責任を追及する方法によるべきである。
イ 上記1認定事実及び弁論の全趣旨によれば,① C取締役は,平成18年2月28日,「SAP Business One Going Live Checkシート(判定基準)」(乙16)において,「システムテスト」及び「本番リハーサル」を除く確認欄にチェックを入れて原告に交付したこと,② 被告は,システムテストの段階に至って,本件不具合を発見した旨を原告に通知し始めたことがそれぞれ認められ,これらの事実にかんがみれば,本件導入支援業務契約において当初予定されていた工程は,システムテスト・本番リハーサルを除いて平成18年2月28日までにおおむね終了したものと認められるところ,証拠(甲6,乙23の1,証人H)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件プロジェクト計画書及び本件要件確認書には,「システムテスト」の項目において,被告の担当の欄には主担当を意味する「◎」印が記載されているのに対し,原告の担当の欄には「○」印が記載されており,また,備考欄に「お客様に実施していただきます。 STNetはテスト実施における問合せ対応」「システムテスト:1日 本番リハーサル:2日」と記載されていることが認められ,これらの事実に照らせば,システムテスト・本番リハーサルは被告が主担当として行うべき作業であって,かつ,合計3日程度で終了する作業であったこと,② 原告は,平成18年2月10日ころ,被告からテストシナリオを受領し,確認するとともに,同月20日ころ,被告がテストを実施したことを確認し,原告は,被告のシステムテストの問合せ対応を同月28日まで行ったことが認められ,これらの事情にかんがみれば,原告が本件導入支援業務契約上担当する作業は一応終了したものといえるから,システムテスト・本番リハーサルが終了していないとしても,当初予定された最後の工程まで一応終了したものといえる。
ウ 被告は,別紙1のとおり,各工程のうち,一部の作業が終了していない旨を主張するものの,上記1認定事実及び弁論の全趣旨によれば,SBOの導入は,最終的に各工程を経てシステムテストの段階に至ったものと認められ,被告の主張によって上記認定が左右されるものではないから,上記主張を採用することはできない。
エ したがって,原告は,導入支援業務を完成させたものということができる。
(4)  本件保守契約
ア 証拠(甲3)によれば,原告は,被告に対し,本件保守契約に基づき,契約期間を平成18年1月1日から同年12月31日まで(4条。ただし,契約期間満了の3か月前までに原告被告いずれか一方から何らかの申し出がないときは,更に1年間契約を延長するものとする。),保守料を年額147万9114円(税込み)として,① 被告からの操作及び障害の問合せに対して電話,FAX,メールなどでのサポートを行う,② 「ソフトウェア」の新「リリース」(製品の発行単位)を被告に引き渡す,③ 「サービスパック」(製品の瑕疵対応及び機能改良を含む。)を原告に提供するという債務を負担するものと認められる。
イ 上記認定事実に証拠(甲106,D証人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,① Dが,平成17年12月27日又は28日,SAPジャパンにライセンスを発注し,被告によるSBO使用の許諾を受け,これを被告に付与したことから,このころから保守サービスの提供が必要になるものと認められること,② SBOに不具合があるとの被告の申出を受けて,SAP社に対して開発依頼を行い,被告にSAP社からサービスパックの提供をしたこと,③ SAP社に対して問い合わせを行い,被告に対し,SAP社からの回答を伝え,改善提案をしたこと,④ 原告は,平成18年12月8日,被告に対し,2005Bバージョンを提供可能である旨を伝えたこと,⑤ 本件保守契約は,平成19年1月1日以降も,4条ただし書により延長されたことなどの事実が認められ,これらの事実に照らせば,原告は,平成18年1月1日から平成19年12月31日まで,被告に対し,上記債務を履行したものと認められる。
ウ なお,上記1認定事実によれば,被告は,平成19年2月26日ころ,原告に対し,SBOの不具合を同年3月31日までに解決し,業務を完了するよう求めるとともに,同日を徒過した場合は,業務の未完了を理由として,各契約を解除する旨を通知したものと認められるものの,原告はその解除の効力を争っており,このことから直ちに,同年4月1日以降の履行がされていないものとまで認めることはできない。
(5)  本件アドオン開発業務契約
ア 上記認定事実及び証拠(甲9の3,31)によれば,原告は,平成17年12月ころ,SBOに対する出荷仕入伝票同時計上機能及び消費税調整機能の各アドオン機能追加に係る開発業務を請け負ったものと認められるところ,原告は,平成18年3月6日,SBOアドオン開発・導入について検収したことを確認する旨の「検収通知書」(甲10の2の2)に,C取締役の署名及び被告の社印を受けたものと認められることからすれば,原告は,同日,上記業務を完成させたものと認められる。
イ 被告は,上記アドオンには不具合があると主張するが,この点は原告が作成した成果物に係る瑕疵の有無の問題であって,上記認定を左右するものではないから,上記主張は失当である。
(6)  以上によれば,原告は,被告に対し,上記のとおり,本件各個別契約に係る債務を履行・完成させたものと認められる。
したがって,原告は,被告に対し,① 本件導入支援業務契約に基づいて,525万円の支払請求権を,② 本件使用許諾契約に基づいて,1137万7800円の支払請求権を,③ 本件保守契約に基づいて,295万8228円の支払請求権を,④ 本件アドオン開発業務契約に基づいて,273万円の支払請求権を,それぞれ有するものと認められる。
5  争点5(追加支援業務契約の成否及び履行)について
(1)  証拠(証人D)によれば,Dは,被告に対し,平成18年3月以降の作業(以下「本件対象作業」という。)については,特定の時点から先は有償になる旨の説明をしたことがないものと認められ,この事実に照らせば,追加支援業務に係る代金の確定的な合意はされていないものと認められる。
しかしながら,上記1,4認定事実に証拠(甲27)及び弁論の全趣旨を総合すれば,Fit&Gap検証作業は,原告がSAP社に回答を求め,又は開発要求をした上で,それらを踏まえて被告に対し対応策を提案するという作業であり,準委任としての性質を有するものであるところ,① 有償の導入支援業務にはFit&Gap検証作業が含まれており,Fit&Gap検証作業自体も本来有償のサービスであること,② 平成18年3月以降の作業は,被告が不具合を発見し,原告に指摘して,原告に解決策を提案させるものであるから,実質的にはFit&Gap検証作業に当たること,③ 原告は,同年2月28日,Fit&Gap検証作業を含む導入支援業務を完成させていたことがそれぞれ認められ,また,被告は,原告に対し,特に追加支援業務料を支払わない旨の説明をしたものとは認められないことなどの事情を考慮すれば,被告は,同年3月1日以降のFit&Gap検証作業の必要が明らかになった時点で,原告に対し,追加支援業務料を負担する意思がないことを明らかにしないまま,本件不具合等を原告に指摘し,原告に対応策を提案させたといえるから,このころ,原告と被告の間で,原告が被告に相当額の報酬をもって追加支援業務を提供する旨の合意(本件追加支援業務契約)が成立したものと認められ,当事者間に代金の確定的な合意がされていない場合であっても,被告は追加支援業務についての相当の報酬を支払う義務を負うものと解するのが相当である(本件においては,原告被告が共に株式会社であることからも同様の結論となる(商法512条))。
(2)  上記1認定事実によれば,原告は,被告に対し,平成18年3月以降も,被告からの要求に係る「不具合」の解決方法を提案したものと認められるから,追加支援業務を履行したものと認められる。
そして,証拠(甲106,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,原告従業員のうち,H,Gほか2名が平成18年3月1日から平成19年1月29日まで追加支援業務に従事し,合計で14.7人月の時間をかけたこと(ただし,原告が無償で追加支援業務を提供したと主張する平成18年3月1日から同月10日までの間を除く。),原告のSBOのシステムエンジニアの平均単価は1人月当たり120万円であること,出張費用55万3177円が生じていることなどが認められ,上記追加支援業務の報酬相当額は,少なくとも1732万5000円であると認められる。
(3)  被告は,本件対象作業はシステムテスト作業であってFit&Gap検証作業ではないと主張する。
そこで,検討するに,証拠(甲12)によれば,「システムテスト管理課題」との表題があることから,本件対象作業は「システムテスト」と呼ばれていたことが推認されるものの,上記(2),上記1認定事実によれば,(ア) Fit&Gap検証作業とは,ユーザーが従来の業務処理方法の継続を選択した場合,ベンダーが,① 標準機能による運用を再確認することによって,原告が知る方法以外の運用方法の有無を確認する,② アドオンでの対応方法について確認する,③ SBOの次期バージョンでの対応予定の有無を確認する,④ ユーザーから開発要求があることを伝えるという目的で,FAQシートを作成し,SAPジャパンに提出するとともに,SAPジャパンからの回答を受けて,ユーザーに再度対応方法を説明するというものであるところ,(イ) 本件対象作業は,被告が不具合(SBOの標準機能と被告の業務処理方法との差異)を発見し,原告に指摘すると,原告がSAP社に問い合わせるなどした上で,被告に解決策を提案するものであることにかんがみれば,実質的には,Fit&Gap検証作業であると認められるから,被告の上記主張を採用することはできない。
(4)  したがって,原告は,被告に対し,本件追加支援業務契約に基づき,追加支援業務料1732万5000円の支払請求権を有するものと認められる。
6  争点6(本件不具合に係る瑕疵の存在)について
(1)  被告は,別紙2「内容」欄記載の本件不具合が瑕疵に当たると主張し,原告はいずれも被告の業務処理方法との差異であるなどと主張する。
(2)  項目18
項目18は,原告が納入した「出荷・仕入伝票同時起票」アドオンを使用した場合,入力可能期間の設定がないことから,自由な日付で伝票入力が可能となってしまうという現象が,瑕疵に当たると主張するものである。
しかしながら,証拠(甲40,107,乙4の1,証人H)によれば,① 本件アドオン開発業務契約の締結当初は,入力可能期間を設定することが契約の内容となっていたことが認められるものの,② その後,原・被告間における「出荷・仕入伝票同時起票」アドオンの外部設計レビューの際に,「デフォルト表示は当日の日付を表示する。変更したい場合にはその都度手入力する」という要件が示されたものと推認されることに照らせば,入力可能期間を設定することが,「出荷・仕入伝票同時起票」アドオンの納品後も引き続き必須の要件になっていたものとまでは認められないから,これを瑕疵に当たるものということはできない(なお,上記1認定事実に証拠(甲45の1,2)及び弁論の全趣旨を総合すれば,HのC取締役に対する平成19年1月17日付け電子メール(甲45の1)のファイル(甲45の2)において,検討結果欄に「アドオンから現在の会計期間を取得して,伝票の登録範囲を限定することは可能です。」との記載があり,承認内容欄に「アドオンのプログラム修正により対応する。」との記載があることが認められ,これらの事実に照らせば,上記現象は,アドオンのプログラムを修正し,動作検証をすれば解決するものと認められる。)。
(3)  その他の項目
上記3,4のとおり,原告が受託したのは,本件使用許諾契約,本件保守契約,本件導入支援業務契約及び本件アドオン開発業務契約に基づく,SBOの使用許諾,保守サービスの提供,導入支援業務及びアドオン開発業務であって,本件目的を達成するためのシステム開発を受託したものではないところ,被告の主張する各不具合(項目18を除く。)は,いずれも被告の業務処理方法とSBOの標準機能との差異をいうものと認められる。
そして,上記1認定事実に証拠(甲61の3)及び弁論の全趣旨を総合すれば,① SBOは,全世界で2万3000社,国内で400社(平成21年1月)の導入実績がある中小企業向けのパッケージソフトウェアであること,② パッケージソフトを導入する際には,Fit&Gap検証作業が必要となり,Fit&Gap検証作業によって業務処理方法との差異があると判断された業務要件は,要件の見直しを行い,SBOの標準機能に合わせるか,作り込み(アドオン開発)を行うか,又はシステム化しないか(運用で対応する)のいずれかを選択することとなること,③ そのため,アドオン開発を行わない場合には,SBOの仕様に合わせるべく,現場の業務の改革・改善が必要となるものであり,その反面,自社独自のソフトウェアを開発する方法に比べて,ソフトウェアを安価に導入できることなどが認められ(なお,被告の主張するこれらの「不具合」がおよそERPソフトウェアとして通常備えるべき性能を欠くものと認めるに足りる証拠もない。),これらの事実に照らせば,上記被告の業務処理方法とSBOの標準機能との差異が瑕疵に当たるものと直ちに認めることはできない。
(4)  被告は,現行システムと同レベルの機能やERPとして標準的な機能については,被告と原告間で特段の合意がない限り,開発要件となると解すべきであると主張するが,上記1認定事実に照らせば,被告は,被告の業務処理方法と差異のある業務要件を特定した上で,原告に対しアドオン開発契約の申込みをするか,それとも被告の業務処理方法をSBOの標準機能に合わせるかを選択する必要があるものであることを受容していたものと認められるから,上記主張を採用することはできない。
(5)  したがって,被告の主張する本件不具合は,いずれも瑕疵に当たるものとは認められない。
7  結論
以上によれば,原告は,被告に対し,本件各個別契約及び本件追加支援業務契約に基づき,使用許諾料,保守料,導入支援業務料,アドオン開発業務料及び追加支援業務料に係る合計3964万1028円の代金支払請求権及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年1月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求権を有するものと認められる。
よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の本訴請求は,いずれも理由があるからこれを認容し,被告の反訴請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松並重雄 裁判官 伊丹恭 裁判官 國原徳太郎)

 

〈以下省略〉

 

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