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「営業支援」に関する裁判例(9)平成30年 2月22日 東京地裁 平26(ワ)13174号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(9)平成30年 2月22日 東京地裁 平26(ワ)13174号 損害賠償請求

裁判年月日  平成30年 2月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)13174号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2018WLJPCA02228026

要旨
◆被告Y1社による解雇が無効であるとして労働審判手続を申し立て、同社都合による退職の確認、解決金の支払等の内容の労働審判を確定させた原告が、同社の元従業員又は役員である被告Y2ないし被告Y4(被告3名)は原告の在職中に原告にパワハラを行い、また、被告Y1社は、同労働審判手続において虚偽の陳述をし、同手続終了後に原告に対して会社備品の返還を求め、必要書類等を交付せず、交付した書類にも不備があったなどと主張して、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、被告3名に業務上の指示や社会通念上許容される範囲を超えた不法行為法上違法な言動が存したことを認めるに足りる証拠はなく、被告Y1社にも不法行為法上違法と認められる行為はないとしたほか、原告に賠償すべき損害の発生は認められないと判断して、請求を棄却した事例

参照条文
民法709条
民法710条

裁判年月日  平成30年 2月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)13174号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2018WLJPCA02228026

東京都調布市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 井堀哲
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 Y1株式会社
同代表者代表取締役 A
東京都港区〈以下省略〉
被告 Y2
上記2名訴訟代理人弁護士 三上安雄
群馬県前橋市〈以下省略〉
被告 Y3
東京都練馬区〈以下省略〉
被告 Y4
上記2名訴訟代理人弁護士 増田陳彦
(以下,被告Y1株式会社を「被告会社」と,被告Y2を「被告Y2」と,
被告Y3を「被告Y3」と,被告Y4を「被告Y4」といい,
被告Y3と被告Y4を併せて「被告Y3ら」と,
被告Y3らと被告Y2を併せて「被告3名」という。)

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,原告に対し,各自200万円並びに被告会社及び被告Y3は平成26年7月17日から,被告Y2は平成26年7月22日から,被告Y4は平成26年7月24日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要等
1  事案の概要
本件は,被告会社による解雇が無効であるとして労働審判手続を申し立て,被告会社都合による退職の確認,解決金の支払等の内容の労働審判を確定させた原告が,さらに,被告3名が原告在職中に原告にパワハラを行ったこと,被告会社が上記手続において虚偽の陳述をしたこと,同手続終了後に原告に対し会社備品の返還を求め,必要書類等を交付せず,交付した書類にも不備があったことが原告に対する不法行為に当たり,財産的及び精神的損害を被ったと主張して,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償として,原告に生じた損害の一部として200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告会社及び被告Y3が平成26年7月17日,被告Y2が同月22日,被告Y4が同月24日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めていると解される事案である。
2  前提となる事実(証拠を付記したものを除き,当事者間に争いがない。以下,証拠の引用で枝番を全て含む場合は枝番の記載を省略する。)
(1)  当事者等
ア 被告会社は医療廃棄物の収集・運搬・処理およびそれらに付随するサービス等を業とする株式会社である。
イ 原告は,平成20年4月28日被告会社に採用され,主にa株式会社(以下「a社」という。)が医療廃棄物処理を受注する契約を締結できるように病院等にa社の医療廃棄物処理を紹介し,医療廃棄物処理契約締結を仲介する仕事及び医療廃棄物ゴミ箱ホルダー(ステップオンホルダー)の紹介や販売をする仕事に従事したが,平成23年2月17日,被告Y2から同月末付けで被告会社を解雇する旨通告された(甲22)。
ウ 被告Y3らはいずれも被告会社営業部の元従業員であり,被告Y3は平成20年2月に,被告Y4は平成21年10月に被告会社に入社した(丙1,丙2)。被告Y2は,平成22年6月から平成27年5月27日まで被告会社の代表取締役を務めていた。
(2)  労働審判
原告は,上記(1)イの解雇は要件を欠き無効であるとして,平成23年5月23日,被告会社を相手方として,原告が被告会社に対し労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金の支払等を求めて労働審判手続を東京地方裁判所に申し立てた(平成23年(労)第379号。乙4)。同年7月29日,同裁判所は,第3回労働審判手続期日において,次の主文の労働審判をした(甲24,乙7。以下「本件審判」という。)。原告及び被告会社は,本件審判に対して異議を申し立てなかったため,同年8月13日,本件審判は確定した(乙8)。
① 申立人(原告)と相手方(被告会社)は,平成23年2月28日限りで申立人が相手方を相手方都合により退職したことを相互に確認する。
② 相手方は,申立人に対し,本件解決金として570万円の支払義務があることを認め,これを平成23年8月末日限り,持参又は送金して支払う。
③ 申立人は,本件申立てに係るその余の請求を放棄する。
④ 申立人と相手方は,申立人と相手方との間に,本主文に定めるもののほかに両者間に一切何らの債権債務がないことを相互に確認する。
(3)  本件審判後の被告会社と原告とのやり取り
ア 被告会社は,平成23年8月17日頃及び同年9月6日頃には上記労働審判手続における原告代理人であるB弁護士(以下「B弁護士」という。)を介して,同年10月17日には直接に,原告に対し,貸与していた会社備品であるパソコン及び携帯電話(以下「本件備品」という。)の返還を求めた(甲25,26,乙9)。
イ 被告会社は,平成23年6月9日頃,ハローワークに原告の雇用保険被保険者離職証明書(以下「離職証明書」という。)を提出し,原告に交付すべき離職票を受け取ったものの交付しないままでいたところ,原告は,同年8月,自ら直接ハローワークに申請して離職票の再交付を受けたが,当該離職票(以下「本件離職票」という。)の「離職理由」欄には「重責解雇」に丸が付されていた(甲30,45,乙11)。
(4)  消滅時効
被告らは,原告に対し,平成26年10月23日の本件口頭弁論期日において,発生から提訴までに3年以上が経過している原告の損害賠償請求権について消滅時効を援用するとの意思表示をした。
3  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  被告3名による在職中のパワハラ
(原告の主張)
原告は被告会社に在職中,被告3名から次のようなパワハラを受けた(以下,アないしシの各行為を併せて「本件各行為」という。)。
ア 平成20年7月頃,被告Y3から,「首にしてやる。」,「出世のために自分が情報をコントロールする。」,「資格がある奴も英語の出来る奴も要らない。」などと言われた。
イ 平成21年5月,原告が被告会社に入社後初めて有給休暇を3日申請したところ,休暇後,被告Y3から,昼食に一切誘わず,業務上の指示を明確にせず,原告を営業会議から外し,原告に予告なくプレゼンを命令するなどの扱いを受けた。
ウ 平成21年7月頃,原告が被告Y3に年末までの営業スケジュールを質問すると「知ってどうするんだ。」と拒絶された。
エ 平成21年8月,被告Y3は「自分は情報をコントロールする。有能な部下の報告はねじ曲げて報告する。自分をよく見せるためにする人間の性だ。チームワークは必要ない。」などと原告を職場から追放すべく画策している旨を吐露した。
オ 平成21年9月,被告Y4が被告会社に入社したことにより,原告は疎外され,ますます孤立するようになった。
この頃,原告は,被告Y3から,b大学にコネクションをつけるように指示されたため,コネクションを取り付けるやいなや,被告Y3らから同大学への立ち入りを禁止された。また,原告は,栃木県内の他の病院でも,独自のルートで看護部長等に面会を取り付けたが,被告Y3らから立ち入りを禁じられた。
その他にも,被告Y3らは,原告の営業成果を全て被告Y3らのものとして報告したりするようになった。
カ 原告は,平成21年12月25日,被告Y3に身に覚えのないことで激高され,「認めろ!」などと激しい叱責を受けた。同日,原告が仕事を終えて帰宅すると,被告Y4から原告の携帯電話に電話があり,「Y3からの伝言だ。聞け。」と言われ,「(原告に対して)もう教育したくない。」,「上司なんだから従え。」,「生理的に合わない。」,「来年のことは自分たちで決める。」などと告げられた。
キ 平成22年5月,被告会社の当時の代表取締役であったC(以下「C」という。)が解任され,被告会社の事務所が閉鎖されたことに伴い,原告は,同年6月より,自宅に業務用備品を全て運び込むように指示され,自宅は会社備品により大幅に占拠されるようになった。
平成22年6月,Cに代わって被告Y2が新社長に就任したが,同月1日,被告Y2は原告に対し,「(Cについて)あんな亡霊のことは忘れてしまえ。」,「クリニカルは消滅した。」,「営業で成果を出さないとどうなるか分かっているんだろうな。」など脅しのような発言をした。
原告は,平成22年6月11日,被告Y2に面会を申し込み,上記カ記載の被告Y3の叱責について伝えた。被告Y2は,原告の訴えを取り上げるそぶりを見せたものの,結局何らの措置を講じることをせず,原告に対し,「好きなだけ休んでください。有給扱いにはしません。」と何らの理由もなく,休暇の取得を強要した。
ク 平成22年7月頃,被告Y3より「埼玉県の営業をしろ。」と命じられた。しかし,原告が営業方針や米国本社の方針を聞いても,被告Y3からは具体的戦略や会社としての方針など一切示されず「自分で考えろ。」とだけ指示された。また,被告Y4より,同人は原告の上司ではないにもかかわらず,「今日から自分が上司だ,従え。」と電話があった。
ケ 平成22年8月,原告は,被告Y2から,「こんな仕事面白くないだろ。」,「なぜ病院に戻らないのか。」,「優秀なのに,ゴミ会社なんかで働いて面白いのか?」などと,公衆の面前で退職勧奨とも侮辱ともいえる発言をされた。また,原告が被告Y2に「どのように成果は評価されるのか。」と聞いたところ,同被告は「成果は全てY4にやれ。」などと言った。
コ 平成22年9月,被告Y3は,原告がそれまで参加していた学会等に参加させない措置をとる一方で,被告会社の関連会社従業員までもこれらの一部に参加させていた疑いがあり,このように原告を業務から外してそのプライドを引き裂いた。
サ 平成22年10月,被告Y2は原告に対し,クリニカルプログラムのプレゼンテーションを実施してこれに専心するように指示し,同業務は外部監査役Dの指示に従うように命じた。しかし,被告Y3らは,従前は原告に対し「営業は無理,営業から外れろ。」と発言していたのに,このときは「原告は営業活動に不可欠な人物である。」と被告Y2に申し向け,原告をクリニカルプログラム業務から引き離し,再び病院への訪問を指示した。ところが,原告が指示に従って病院への訪問に従事すると,その直後に「もういい。」と中止を指示した。
さらに,被告Y4は,同年11月29日,「契約をやれ!」,「Y3に契約をやらせろと言われている。」,「いい加減に契約くらいやってもらわないと困るんですよ。」などと原告に契約締結業務を強要し,また,「D氏に従うな,あくまでもD氏は外部アドバイザーだ。Y3に従え。」などと被告Y2の指示を無視するよう嫌がらせを行った。
シ 平成22年12月,被告会社は関連会社等との合同忘年会を行ったが,原告にだけ声をかけなかった。
(被告らの主張)
被告3名によるパワハラなる主張はいずれも事実に反し,原告の主張は,被告会社における通常の業務上の関わりをとらえて,パワハラなどと著しく誇張するものである。被告Y3らが,原告の営業先を自分のものにしたかのような主張に関しては,そもそも原告の業務は営業支援であって,営業業務自体ではない。すなわち,原告が開業医や病院を訪問して営業支援活動を行い,その後の契約締結に至る営業業務は被告Y3らの担当であり,もともと役割分担が予定されていたのである。
仮に原告の主張するようなパワハラがあったのであれば,労働審判手続中に主張していてしかるべきであるのに,原告は同手続中にはそのような主張は一切していなかった。後になって在職中に被告3名からパワハラがあったと主張することはそれ自体著しく信用性が低いし,その根拠とされている原告のメモもいつ作成されたのか全く不明であって信用できない。
(2)  労働審判手続における虚偽主張
(原告の主張)
被告会社は,労働審判手続において,平成23年2月17日に被告Y2が原告に伝えた退職合意内容及びその他の会話内容,原告が在職中に従事した業務及びその成果等について虚偽の主張をし,同日以降,退職合意書を原告に送付し,「これにサインしろ。」等と毎日電話をかけて退職を強要していたことを否定するなどした。また,被告会社は,解雇理由を示さずに解雇理由証明書の発行を拒否していたにもかかわらず解雇理由証明書を出したと主張し,原告の解雇理由について資金繰りが厳しいなどと虚偽の主張をした。
(被告会社の主張)
労働審判手続における被告会社の主張は,全て被告会社の事実認識に基づき主張しているものであり,虚偽ではない。
(3)  本件審判後のハラスメント
ア 本件備品をめぐるやり取り
(原告の主張)
被告会社は,上記2(3)アのとおり,原告に対し,本件備品の返還を繰り返し請求し,応じない場合は法的措置を採る旨告知したが,本件審判において相互に債権債務なしとの確認がされたにもかかわらず直接自宅に内容証明郵便が届いたことによって,原告は精神的負担を覚えた。
(被告会社の主張)
被告会社は,本件審判に清算条項はあるにせよ,被告会社が原告に貸与した会社備品については信義上当然に返還してもらえるものと理解し,B弁護士に対して,原告への連絡を依頼したが,何ら原告の対応がなかったことから直接本人宛に連絡した。しかし,原告からの返還義務が一切ないとの主張を受け,それ以上の返還を求めなかったものである。
貸与していたものの返還を求めること及びそれを拒否された場合に法的な措置を申し添えて理解を求めることは正当な行為であり非難されるべきものではない。
イ 離職票交付をめぐるやり取り
(原告の主張)
被告会社は,労働審判手続が係属中である平成23年6月9日,既にハローワークに原告の退職を通知していたのに,原告に対する離職票の送付を怠っていたため,原告は離職票の再交付を申請せざるを得なかった。
同年8月26日,本件離職票が再交付されたが,離職理由が重責解雇と記載されており,同年9月6日,被告会社はこれを解雇に訂正したものの,虚偽記載について原告に対して謝罪等は一切なかった。また,訂正後の離職票は,再度「重責解雇」と記入した上で「解雇」に訂正する形で作成されている上,離職区分欄は「事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職」を意味する「3A」に丸がついており,同欄にまで虚偽記載が存在している。かかる本件離職票やその訂正の作成経緯等からすれば,被告会社が故意に虚偽記載を行ったか,仮に故意ではなかったとしても重大な過失があることは明らかである。仮に離職区分欄の記載はハローワーク職員が行うのだとしても,被告会社の意向を受けて行っていることは明らかである。
(被告会社の主張)
被告会社は,離職票作成の事務手続を税理士法人に依頼し,同税理士法人は,E社会保険労務士(以下「E」という。)に依頼して,Eが離職票を作成した。
被告会社は,平成23年6月9日にハローワークから原告に交付するべき離職票を受け取ったが,労働審判手続の審理中に原告に交付することは相当ではないであろうと交付をとどめていた。原告は,本件審判が確定し,被告会社が原告へ解決金を支払ったときから5日も経過しないうちに,被告会社に対して離職票の交付を求めることなく,ハローワークに対して離職票の再交付を求めたものであって,その間被告会社が交付していなかったことについて非難されることではない。
また,被告会社は,平成23年9月2日,当時の原告代理人から本件離職票に記載の誤りがあるとの指摘を受けて誤りに気付き,速やかに訂正を行っている。被告会社が虚偽記載をした事実はなく,Eも決して原告が重責解雇されたと誤解して記載したものではない。
原告は,被告会社が2度も重責解雇と記載したように主張するが,当該2枚は複写式の1枚目と3枚目であるため,いずれも重責解雇の欄に丸がついているのであり,訂正の際にあえて一旦重責解雇に丸をした上で訂正をしたというわけではないし,離職区分欄はハローワークの職員が記載する欄であって会社が記載するものではない。したがって,これらの事実から被告会社が故意に虚偽記載をしたということはできない。
ウ 源泉徴収票の交付をめぐるやり取り
(原告の主張)
被告会社は,確定申告期限を過ぎても原告に対して平成23年度の源泉徴収票を交付しなかったため,原告は,平成24年4月26日,被告会社に対して同票の交付を請求したところ,同年5月7日,送付されたものの,支払金額に解雇予告手当及び本件審判の解決金が含まれていなかった。原告が税務署に相談すると,解決金については退職所得として源泉徴収票の発行が必要との見解を得たので,被告会社に対して同年6月27日及び同年9月14日に再度源泉徴収票の交付を求めたが,被告会社は同月24日に解雇予告手当についての源泉徴収票を送付したのみで,解決金についての源泉徴収票の交付に応じることはなく,原告は収入証明の手段を奪われた。
なお,被告会社は,平成24年1月に平成23年度の源泉徴収票を発行したと主張しているが,当初は原告が請求するまで発行していなかったことを認めていたのであるから,自白が成立しており,撤回することは許されない。
(被告会社の主張)
(ア) 被告会社は,源泉徴収票の発行等を税理士法人に委託しているが,同法人は,会社の社員には年内に退職した者も含め,その対象年に給与を取得した者については,全員年末に源泉徴収票を作成し,翌年1月には送付しており,原告の平成23年度の源泉徴収票も平成24年1月には送付している。平成24年4月26日に原告代理人から源泉徴収票の交付を求められた際には,既に作成していた源泉徴収票を再度プリントアウトして交付したものである。
なお,原告は自白の撤回は認められない旨主張するが,被告会社は上記事実を知らずに誤った理解のもとに源泉徴収票を発行していなかったことを認めたのであり,事実に反しており,自白が錯誤によってなされたものであるから撤回は可能である。
(イ) 被告会社は,本件審判における解決金570万円は,解雇をめぐる慰謝料及び損害賠償として非課税であるとの理解に基づき,570万円から税金を控除せずに満額支給し,原告もこれを受領している。かかる理由により,解決金については源泉徴収票を交付しなかった。税務署等からも是正するようにとの指導はない。
エ 資格喪失等の手続について
(原告の主張)
被告会社による原告の解雇は実質的に無効であるにもかかわらず,被告会社が解雇を前提として原告の厚生年金及び健康保険の資格喪失手続を行い,離職票交付手続(雇用保険法施行規則7条より離職した日から10日以内に届け出なければならない)及び上記社会保険の資格喪失手続(健康保険法36条及び厚生年金法14条により資格喪失した日から5日以内に届け出なければならない)について,虚偽申告をしたこと及び届出期間を徒過させた違法性を秘して本件審判を成立させたことは不法行為に当たる。
また,被告会社が雇用契約に付随する信義則上の義務(労働者の社会保険,雇用保険の受給資格の資格取得・維持・継続に配慮する義務)を怠った一連の行為は,労働契約の債務不履行ないし不法行為を構成する。
(被告会社の主張)
解雇の効力は労働審判手続を経て本件審判で確定しているから,これを争うような原告の主張は失当である。資格喪失手続は原告を解雇したために行ったもので,これを労働審判手続において意図的に隠した事実もない。離職票交付手続及び資格喪失手続には法令上の届出期間が定められているが,その期間の徒過が直ちに不法行為における違法性を帯びるものではないし,その徒過により原告にいかなる損害が生じたのかも不明である。
(4)  原告に生じた損害及び損害額
(原告の主張)
被告らの在職中及び本件審判後のハラスメントにより,原告は肉体的・精神的苦痛を被り,その結果,精神的・財産的損害を被っており,その損害は200万円を下らないから,一部請求として200万円を請求する。
被告会社が労働審判手続中に原告を退職扱いにして社会保険からの資格喪失手続を行ったため,原告は社会保険の任意継続ができず,そのため傷病手当も適用できなかった(上記(3)エ)。また,被告会社が離職票を発行せず,かつ遅れて再発行された本件離職票に虚偽記載があったため,原告は国民健康保険の切替えを労働審判手続終了後数か月にわたり行うことができず,雇用保険の手続も遅滞した(上記(3)イ)。さらに,被告らの不法行為により,原告は健康状態が極端に悪化し,就労が困難な状況が続いて大きな精神的・経済的損害を被っている。原告は,平成24年2月3日に慢性疲労症候群,線維筋痛症と診断されたが,被告らのハラスメントは時間的な関連性からその影響があるとされており,被告らのハラスメントによって今でも慢性疲労症候群,線維筋痛症で苦しんでいる。
(被告らの主張)
否認ないし争う。慢性疲労症候群及び線維筋痛症の原因は医学的に不明であり,仮に原告が主張する一連のハラスメントなるものを前提としても,これらと上記症状との間の因果関係は認められない。原告が援用する診断書も,因果関係があると記載されているわけではなく,ストレスが影響した可能性を指摘しているにすぎず,因果関係の主張立証として不十分であるし,「本疾患発症の要因として,在職中やその後の労働審判におけるストレスは,時間的な関連性からその影響があると思われ,可能性を否定することは困難である」との記載は,平成28年2月26日付けで初めて付記されたもので,平成25年5月10日付けにはなく,原告の強い要望に基づき記載されたものであることが推認でき,信用性は極めて低い。
(5)  清算条項による遮断
(被告らの主張)
原告と被告会社の間で確定した本件審判には包括的清算条項が存在し,これにより,本件審判以前における原告と被告会社との関係では,何らの債権債務関係がないことは明らかである。
また,被告Y3らは本件審判の当事者ではないが,原告と被告会社の間で包括的清算条項が確定していることからすれば,本件審判以前の被告会社従業員との問題も含め包括的に清算されていると解すべきである。
(原告の主張)
ア 被告会社は,本件審判の確定後も清算条項があるにもかかわらず原告に対し会社備品の返還を執拗に求めていたから,自ら清算条項を無視した被告会社が清算条項を理由として本件請求を拒むことは信義則に反する。
イ 本件審判の清算条項は,労働審判手続において審理の対象となった事項に関して債権債務関係の清算を認めるものであって,審理の対象は,原告と被告会社の労働契約の存否であるから,本件審判の対象となっていない被告らによるパワハラは清算条項によって遮断されない。
ウ 被告Y3らはそもそも本件審判の当事者ではないから,清算条項によって,同人らに対する請求は遮断されない。
(6)  消滅時効
(被告らの主張)
本件提訴時点(平成26年5月27日)において3年以上が経過している被告らの行為を理由とする損害賠償請求については,消滅時効を援用する。
(原告の主張)
不法行為の損害賠償の起算点は,損害及び加害者を知ったときから3年であって不法行為時ではない。原告は,被告らのハラスメントによって現時点においても精神的肉体的苦痛を被っており,起算点を迎えていない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提となる事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば下記の事実が認められる。
(1)  被告会社在籍時
ア Cは,原告の前職が看護師であったため,看護師としての経験や知見を活かして被告会社のクリニカルサービス(医療廃棄物の収集周辺のサービスを提供すること)に従事させるために原告を採用した(Y2)。
イ 原告は,平成20年4月28日の被告会社入社後,クリニカルサービスにも従事したが,主に病院や開業医を回ってa社の医療廃棄物処理内容を紹介し,医療廃棄物処理契約の締結を仲介する仕事と,ステップオンホルダーを販売する仕事が多かった(甲2)。原告は,被告会社では,欧米に出張する等,英語力と看護師としての専門的知識を用いて世界中を飛び回るような仕事ができると考えていたため,当初の期待との隔たりを感じ(甲49),被告Y4入社後は,被告Y4に対しても,自分は英語ができるし,もっと海外に出ていきたいなどと話していた(Y4)。
ウ 平成21年10月,被告Y4が被告会社に入社し(丙2,Y3),その後は被告Y3が営業部の統括,被告Y4がセールスマネジャー,原告が営業支援という立場で(Y3,Y4)それぞれ病院等を回るが,病院等とa社との契約の締結は被告Y3らが行っていた(乙6,丙1)。なお,被告Y4は,遠方の営業先との契約締結について原告に頼んだこともあったが,原告はこれを断った(甲49,丙2)。
エ 平成21年12月25日頃,被告Y3は,原告に対し,業務に関して注意し,その後,被告Y4も,被告Y3から指示されて原告に電話し,被告Y3の言葉として,来年の営業のことは営業担当で決めるなどと話したことがあった(丙2,Y4)。
オ 平成22年6月,Cが辞任し,被告会社はクリニカルサービスを通じての営業支援を中止することとした。Cの後任で代表取締役になった被告Y2は,原告にクリニカルサービス以外の仕事を探し,翻訳業務等に従事させたが,同業務が多くないため,被告Y3の下で営業支援を行うこととなった。面談の際,被告Y2は,原告に対し,看護師として「上から目線」だから,被告Y3とやっていくためにへりくだった言葉を使うなど気を付けるようになどとアドバイスした(乙1,Y2)。
カ 平成22年12月,a社の忘年会が開催されたが,被告会社からは被告Y3らが参加し,原告は呼ばれなかった(Y3,丙1)。
(2)  解雇及び労働審判
ア 被告Y2は,平成23年2月14日,原告に対し,メールで面談を申入れ,同月17日,品川の被告会社本社で面談を行った。被告Y2は,被告会社の戦略転換により,同月末日をもって会社都合で退職してもらうこと,今後は営業等の活動は停止すること,給料及びボーナスを支払うこと及びその条件等を原告に伝えた(甲22,乙1)。
イ 原告は,前記第2の2(2)のとおり,労働審判手続を申し立てて解雇について争ったが,原告が同手続で求めたのは,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金の支払等であり,被告3名のパワハラに関しては全く主張していなかった(乙4,弁論の全趣旨)。
(3)  本件備品をめぐるやり取り
ア 本件審判確定後の平成23年8月17日,被告会社は,B弁護士に対し,本件審判の解決金支払先口座を尋ねるとともに,原告に貸与していた本件備品の返却を求めた。B弁護士は,同日,本件備品返却の件は原告本人に伝える旨連絡したが,原告からの応答はなく,被告会社は,同年9月6日頃,再度B弁護士に連絡したものの,やはり原告からの応答はなく,B弁護士からは,原告本人には既に伝えたが,労働審判手続は終わっており,もう原告の代理はできないとの話があったため,被告会社は,同年10月17日,原告本人に対して通知書を送った。同書には,本件備品の返却を求めるとともに,返却がない場合は,「官署への告訴,裁判所への訴訟提起等,被害救済のための刑事・民事上の法的措置を取らせていただきます。そのような事態に至ることは当社としても望むことではありませんので,どうかご理解のうえ,返却いただくことを望みます。」などと記載されていた(甲25,26,乙9,10,16,Y2)。
イ 平成23年11月4日頃,本件訴訟の訴訟代理人である井堀哲弁護士らが原告の代理人となり,被告会社に対し,本件審判の主文に包括的清算条項が存在するから,被告会社が本件備品の返還請求権を有さないことは明らかであるが,被告会社が真摯に反省し原告の意向を酌む協議・合意ができるのであれば請求に応じるなどと記載した書面を送付し,被告会社から同書面に対する明確な回答がなかったとして,平成24年4月26日頃,改めて回答を求める書面を送り,14日以内に連絡がなければ本件備品の所有権を放棄したものとみなして処分する旨を述べた。これに対し,被告会社は,同年5月22日頃,本件備品の返還請求は,法律的にはもとより,退職者が会社から貸与されたものを返還するという至極当然のものであり,原告と協議して返還いただくものではないとして,協議の要請を拒絶した(甲27ないし29)。
なお,以上のやり取りの後,被告会社はそれ以上に返還を求めておらず,現在まで本件備品は被告会社に返還されていない(弁論の全趣旨)。
(4)  離職票及び資格喪失手続をめぐるやり取り
ア 被告会社は,離職票作成手続及び各種保険手続を,c税理士法人を通じてEに依頼していたが,原告を解雇した当初は話合いによる解決を目指してこれらの手続は進めておらず,平成23年3月頃から同年4月18日頃までB弁護士との訴訟外のやり取りが続いたものの,交渉が決裂したため,同年5月9日,原告の社会保険及び厚生年金の資格喪失手続を行い,同年6月9日,品川のハローワークに離職証明書を提出した。なお,離職証明書は,ハローワークが保管する離職票の控えが間に入る形で,労働者に交付する離職票と併せて3枚複写になっており,離職証明書の記載が,そのまま離職票に複写されることになる(証人E,Y2,甲30,乙4,11)。
イ Eは,原告の離職に係る離職証明書を作成する際,「離職理由」の「事業主記入欄」で本来「解雇(重責解雇を除く)」に丸を付すべきところを誤って「重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)」に丸を付したが,具体的事情を記載する欄には「会社都合」と記載した。そして,ハローワーク職員は,離職区分欄の「3A」(事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職)に丸を付した(甲30,乙11,証人E,弁論の全趣旨)。
ウ 原告は,被告会社から離職票が交付されないことから,自らハローワークに離職票の再交付を申請し,ハローワーク職員は,平成23年8月26日までに,ハローワークに保管されていた離職票の控えを手書きで写した本件離職票を原告に交付した(甲45,証人E)。
エ 平成23年9月2日,原告は,被告会社に対して本件離職票の誤記を指摘し(乙12),被告会社は,c税理士法人を通じてEに誤記について連絡した。Eは,同月6日,品川のハローワークへ赴き,離職票の「重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)」の欄に記載された丸を赤字二重線で抹消し,「解雇(重責解雇を除く。)」の欄に赤字で丸をする形で補正した(甲30,乙11,証人E)。
(5)  源泉徴収票をめぐるやり取り
ア 原告は,平成24年4月26日付け通知書で,被告会社に対し,平成23年度の源泉徴収票が送付されていないと指摘し,被告会社は,平成24年5月7日,同源泉徴収票を送付した(甲28,31,32)。
イ 原告は,平成24年6月27日付け書面で,被告会社に対し,送付された源泉徴収票には解雇予告手当及び本件審判の解決金が含まれていないとして,善処を求めた。担当税理士は,解雇予告手当は退職所得として分離課税の対象で源泉徴収票に含めるものではなく金額も非課税の範囲内であり,解決金は退職所得ではなく損害賠償であるから源泉徴収せずに全額を支払ったとの理解の下に源泉徴収票を作成したものであったが,原告の重ねての要請を受け,被告会社は,同年9月,解雇予告手当分の源泉徴収票を原告に送付した(甲33ないし36,乙14)。
(6)  医師による診断等
霞が関アーバンクリニックのF医師は,平成25年5月10日,原告を慢性疲労症候群及び線維筋痛症と診断し,平成24年2月3日の初診時に診断基準を満たしていることを確認した,その後内服療法を行うも効果は認められない等と付記した診断書を作成し,平成28年2月26日,上記に加え,本疾患発症の要因として,在職中やその後の労働審判におけるストレスは,時間的な関連性からその影響はあると思われ,可能性を否定することは困難であると付記した診断書を作成し,同年11月18日,原告がこれらの疾患を発症した誘因として,在職中,労働審判中,労働審判後のエピソードが考えられる,一連の精神的なストレス後に発症していることから,これらの精神的ストレスと発症との時間的な関連性はあると思われる,などとする意見書を作成した(甲47,48,乙15)。
2  争点に対する判断
(1)  被告3名による在職中のパワハラ(争点(1))について
被告3名による在職中のパワハラが不法行為に当たるとの主張は,仮に不法行為の成立が認められるとしても,原告が損害及び加害者を知った時から提訴までに3年以上経過していることがその主張自体から明らかであるから,損害賠償請求権は時効により消滅したと解されそうなものである(争点(6)。原告は,現時点においても精神的肉体的苦痛を被っているから起算点を迎えていないと主張するが,独自の主張であって採用できない。)が,本件訴訟の審理経過等に鑑み,まず,不法行為該当性について判断することとする。
原告が主張する本件各行為に関する証拠は,原告が作成したメモ(甲11ないし14,20,21)及び陳述書(甲2,37,46,49)の記載のみであるところ,そもそもこれらは反対尋問を経ていない原告自身の一方的な供述的記載にすぎないから,その証拠価値は高くないといわざるを得ない。また,上記メモの記載自体を見ても,平成21年12月28日付けのメモに1年以上前の平成20年4月頃の出来事が記載されていたり,日付が「?」と記載されていたり(甲11),平成22年6月11日から同年8月26日までと記載され,具体的にいつの出来事であるのか不明であったりする(甲14)など,本件各行為があった日と近接した時期に逐次記載していたとは認め難いものとなっている。さらに,一般に職場内で業務に関連して行われた特定の言動が不法行為法上の違法性を有するパワハラに当たるかどうかの判断は,その当時の状況や前後の事実経過等により左右されることが少なくないと解されるところ,上記メモの記載内容からは,本件各行為当時の状況やそれに至る具体的な経緯等が全く不明である。これらに加え,原告は本件訴訟より本件各行為に近い時期に審理された労働審判手続においては,パワハラについて全く主張せず,上記メモの存在にすら言及しなかったこと(乙4,6,弁論の全趣旨),証拠として提出されている原告と被告3名との間のメール(甲8,9,15ないし18)においては,ごく通常の業務上の言葉遣いと内容のやり取りがされていること,被告3名がいずれもパワハラの事実を強く否定していること等に照らせば,原告の被告会社在職時に被告3名から原告に対してパワハラと評されるような行為があった事実は,これをにわかに認めることができない。
もっとも,上記1の認定事実によれば,原告が,被告会社に入社した際に期待していた仕事と現実に与えられた仕事との間に隔たりがあると感じていたこと(上記1(1)ア,イ),被告会社の営業部に所属していた3人のうち,営業を担当していた被告Y3らと営業支援であった原告との間で立場の違いがあり,原告が開拓した病院等の取引先についても,最終的な契約締結は原告ではなく被告Y3らが行っていたこと(上記1(1)ウ,エ,カ)などから,原告が,被告会社においては自己の能力に見合った仕事が与えられておらず,自己の仕事の成果が適切に評価されていないと感じていたことは認められ,また,被告Y2が原告に対し,被告Y3とうまくやっていくためのアドバイスをしていたこと(上記1(1)オ)に照らせば,少なくとも原告と被告Y3との関係は良好でなかったことがうかがわれる。かかる状況において,原告が被告3名から受けた注意その他の言動について不快に感じ,不満やストレスを募らせることがあったであろうことは否定できず,本件審判により原告にとって不本意な解雇が動かし難いものとなった段階で,改めて被告3名の言動が許容できないハラスメントであったと感じるようになり,本件訴訟を提起するに至ったとも推察されるが,いずれにせよ,被告3名に業務上の指示や社会通念上許容される範囲を超えた不法行為法上違法な言動が存したことを認めるに足りる証拠がないことは,上述のとおりである。
以上のとおり,原告が主張する被告らのパワハラは,いずれも前提となる事実が認められないか又はパワハラと評価することができないものであるから,原告の主張は理由がない。
(2)  労働審判手続における虚偽主張(争点(2))について
労働審判手続における被告会社の主張等に虚偽があったとの原告の主張は,そもそも仮にかかる手続における主張等の中に結果的に客観的真実と異なると判明した部分が存したとしても,それが直ちに相手方に対する不法行為となって損害賠償責任を負うなどとは考えられないし,本件において虚偽であったことを認めるに足りる的確な証拠もない(仮にこれらの中に原告の認識と異なる部分が存したとしても,直ちに被告会社が虚偽の主張等をしたということにならないことはいうまでもない)から,いずれの点からも失当である。
(3)  本件審判後のハラスメント(争点(3))について
ア 本件備品をめぐるやり取り
原告の主張は,本件審判に清算条項があるにもかかわらず,審判確定後に被告会社が本件備品の返還を求めたこと及びその際に法的措置を採る旨を告げたことが不法行為に当たると主張するものと解される。
しかしながら,本件審判に清算条項が存在するからといって,被告会社が本件備品に対して有する所有権を喪失するわけではない(原告自身も,上記1(3)イのとおり,平成24年4月26日付け書面において,「連絡がなければ本件備品の所有権を放棄したものとみなして処分する」と,被告会社の所有権の存在を前提とした連絡をしていた)から,原告に対し,所有権に基づき本件備品の返還を求めることが不法行為法上違法な行為であるとはいえず,現に,最初に被告会社から連絡を受けたB弁護士においても,要請を原告本人に伝えると応じただけで,それが違法ないし不当なものであると受け止めた様子は全くうかがわれない(乙10)。実際の連絡方法についても,本件審判の解決金の支払のためにB弁護士に連絡した際に本件備品の返却を求める原告への伝言を依頼したものの原告から応答がなく,その後B弁護士からもう原告の代理はできないと言われたため,原告に直接連絡したというものであり(上記1(3)ア),原告が拒絶の態度を明らかにしてからは返還を求めていない(上記1(3)イ)。さらに,法的措置を採る旨記載することが直ちに違法とはいえないし,本件通知書の具体的な内容(上記1(3)ア)に照らしても,正当な権利行使の域を脱する違法なものということはできないから,いかなる理由によっても本件備品の返還をめぐるやり取りが被告会社の不法行為に当たるということはできない。
イ 離職票の「重責解雇」の記載
Eは,原告の離職票等を作成する際,離職理由について複数の選択肢の中から適切なものに丸を付す際に「重責解雇」に丸を付したが,同時に具体的事情を記載する欄には「会社都合」と記載しており(上記1(4)イ),重責解雇を基礎付ける事情を記載しているわけではないこと,このように明らかに矛盾した記載がされている以上,通常であればハローワーク職員が受理の段階で気付き,窓口で訂正されていた可能性が高かったと考えられること,被告会社は原告から誤りを指摘されると直ちに訂正していること(上記1(4)エ)等に照らせば,「重責解雇」に丸を付したことが原告に対する嫌がらせ等の意図であったなどとは考えられず,E自身が供述するとおり(乙13,証人E),同人の単純な記載ミスであったものと認められる。したがって,被告会社によるハラスメントというべきものでないことは明らかである。
これに対し,原告は,訂正後の離職票が再度「重責解雇」に丸をつけてから訂正する形で作成されていることや,離職区分欄にも誤記があることなどから被告会社が故意又は重過失により虚偽記載をしたことは明らかであるなどと主張するが,前記認定事実(4)のとおり,Eが平成23年9月6日に離職票の誤記を訂正した際は,新しく離職票を作成したのではなく,同年6月9日に作成していた離職票の「重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)」の欄に記載された丸を赤字二重線で抹消し,「解雇(重責解雇を除く。)」の欄に赤字で丸をする形で訂正したのであるから,被告会社が訂正の際にもあえて一旦「重責解雇」に丸をつけてから訂正したなどとは認められない。また,離職区分欄の記載については,3枚つづりのうち被告会社作成に係る離職証明書(乙11)には同欄がないが,労働者用の控え(甲30,45)には同欄があることに照らせば,Eが供述するとおり,同欄はハローワークの担当職員が窓口で記載するものであると認められるから,同職員が離職証明書の「重責解雇」の記載に合わせて3Aに丸を付けてしまったと考えられ,被告会社が離職区分欄に虚偽の記載をしたとは認められない。したがって,原告の主張は採用できない。
ウ 源泉徴収票の不発行について
被告会社は解決金については損害賠償として支払ったという理解で税金を支払わず,原告に満額を支給したため,源泉徴収票を発行しなかったのであり(上記1(5)イ),原告がこれを退職金であると解しているとしても,そのとおり課税はされていないのであるから,単なる見解の相違にすぎず,被告会社のハラスメントと呼ぶべき違法な行為とは認められない。そもそも被告会社がかかる扱いをすることで原告にいかなる不利益が生ずるのかも明らかではなく,原告の主張は採用できない。
エ 各種手続の遅れについて
資格喪失手続に係る原告の主張はそもそも明確とはいい難いが,労働審判手続中に資格喪失手続を行ったことは,被告会社の立場によれば原告は解雇により資格を喪失しているのであるから,同手続を行うこと自体が不法行為となるものではない。また,離職票及び源泉徴収票の交付並びに資格喪失手続が法令の規定する期間を徒過したこと自体は争いがないが(源泉徴収票の交付時期については上記第2の3(3)ウのとおり争いがあるが,仮に被告会社主張のとおり平成24年1月に交付していたとしても,法定の期間を徒過していることには変わりがない。),これらの法定期間徒過は,当該法令に反するものではあっても,直ちに不法行為法上違法ということはできず,本件で被告会社が原告に対する嫌がらせの目的であえて懈怠したなど,不法行為法上の違法性を基礎づける事実を認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,離職票及び資格喪失手続については,原告と被告会社が訴訟外での話合いをしていたために話合いでの解決の可能性を考慮して手続をしなかったものである(上記1(4)ア)し,そもそも解雇の効力を争っていた原告において,当初の被告会社の解雇による離職日(平成23年2月28日)を基準として解雇を前提とした各種手続をとらないことが原告に対する不法行為となるという主張はそれ自体が理解し難く,採用できない。
(4)  原告に生じた損害及び損害額(争点(4))について
ア 以上のとおり,原告主張の被告らの行為は不法行為法上違法な行為とは認められないが,次のとおり,原告に対して賠償すべき損害が発生しているとも認められない。
イ まず,各種手続等の遅滞によって財産的損害が生じたと主張するものであると解しても,各種手続等がされないことで原告は社会保険の任意継続ができなかった,無保険者となったなどと述べるが(甲37,46),これらのことから具体的にどのような財産的損害が生じたかについては,当裁判所の釈明に対しても何ら主張立証しなかったものであり,原告の財産的な損害の発生は,本件全証拠によっても認めるに足りない。また,手続の煩雑を無形の損害として主張する趣旨であるとしても,本件全証拠をもってしても,手続がどの程度煩雑なものであったかに係る的確な証拠はなく,原告が被告会社の手続の不備等により一定の手続をとる必要があったとしても,それだけで直ちに原告の権利又は法律上保護される利益が侵害されたということはできないし,これらの手続の不備により原告に金銭をもって慰謝すべき損害が生じたとは認められず,本件において原告に物理的ないし精神的損害の発生を認めることはできない。
ウ また,原告は,被告らの行為により肉体的精神的苦痛を被り,その結果財産的損害及び精神的損害が発生したと主張して,慢性疲労症候群及び線維筋痛症の診断を受けた事実(上記1(6))を援用しているが,本件において証拠により認められる被告らの行為が上述のとおりであることにも照らせば,これらの行為は,仮に原告に与えた心理的負荷があったとしても,一般的・客観的に慢性疲労症候群や線維筋痛症を発症させることが予見される程度のものであったということはできないから,「時間的な関連性からその影響があると思われ,可能性を否定することは困難である」等のF医師作成の診断書等の記載を踏まえても,法律上の相当因果関係を認めることはできない。
エ 以上により,原告に賠償すべき損害の発生を認めることはできない。
第4  結論
以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第37部
(裁判長裁判官 上田哲 裁判官 辻由起 裁判官 森沙恵子)

 

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