
「営業支援」に関する裁判例(70)平成24年12月21日 東京地裁 平22(ワ)43540号 売買代金等請求本訴事件、不当利得返還等請求反訴事件
「営業支援」に関する裁判例(70)平成24年12月21日 東京地裁 平22(ワ)43540号 売買代金等請求本訴事件、不当利得返還等請求反訴事件
裁判年月日 平成24年12月21日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平22(ワ)43540号・平23(ワ)20917号
事件名 売買代金等請求本訴事件、不当利得返還等請求反訴事件
文献番号 2012WLJPCA12218004
事案の概要
◇原告が被告に対し、各電子カルテシステムを売却し、引き渡したこと、被告との間で各保守契約を締結して保守業務を行ったこと、また、被告との間で業務部管理委託契約を締結し委託業務を履行したことなどを主張して、各金員の支払を求めた(本訴)ところ、被告が原告に対し、(1) ①本件業務部管理委託契約が成立していないのに、原告が上記委託料名下に金員の支払を要求し、被告から支払を受けた、②原告が平成20年11月締結の業務委託基本契約(「本件業務委託契約」)を超えて金員の支払を請求して、被告から支払を受けた、③原告が平成20年11月締結の開発業務委託基本契約(「本件開発業務委託契約」)を超えて金員の支払を請求して、被告から支払を受けたのは、いずれも不当利得に当たると主張して、不当利得返還請求権に基づき、計1186万1709円及びこれに対する遅延損害金の支払、(2) 原告が旅費、交通費等の諸費用に消費税を付けて請求して受領した分は不当利得に当たると主張して、不当利得返還請求権に基づき、8万8092円及びこれに対する遅延損害金の支払、(3) 本件コンピューターを使用貸ししたが、その使用貸借契約が終了したと主張して、使用貸借契約の終了に基づき、本件コンピューターの引渡し、を求めた(反訴)事案
裁判年月日 平成24年12月21日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平22(ワ)43540号・平23(ワ)20917号
事件名 売買代金等請求本訴事件、不当利得返還等請求反訴事件
文献番号 2012WLJPCA12218004
平成22年(ワ)第43540号売買代金等請求本訴事件
平成23年(ワ)第20917号不当利得返還等請求反訴事件
栃木県小山市〈以下省略〉
(送達先 栃木県小山市〈以下省略〉)
本訴原告・反訴被告 株式会社イーメディック(以下「原告」という。)
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 杉山博亮
同 永田健一ほか
訴訟復代理人弁護士 岩嶋亜也子
同 平野優ほか
東京都中央区〈以下省略〉
本訴被告・反訴原告 株式会社マクロスジャパン(以下「被告」という。)
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 黒野德弥
同 瀬川千鶴ほか
主文
1 被告は,原告に対し,567万2914円及びうち21万円に対する平成22年4月1日から,うち150万円に対する同年5月1日から,うち150万円に対する同年6月1日から,うち150万円に対する同年7月1日から,うち96万2914円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の本訴請求を棄却する。
3 原告は,被告に対し,40万3092円及びうち31万5000円に対する平成23年6月25日から,うち8万8092円に対する平成24年2月3日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告は,被告に対し,別紙動産目録記載のコンピューターを引き渡せ。
5 被告のその余の反訴請求を棄却する。
6 訴訟費用は,本訴反訴を通じこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
7 この判決は,第1,3及び4項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1(本訴)
被告は,原告に対し,567万2914円及びうち21万円に対する平成22年3月1日から,うち150万円に対する同年5月1日から,うち150万円に対する同年6月1日から,うち150万円に対する同年7月1日から,うち96万2914円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2(反訴)
(1) 原告は,被告に対し,1194万9801円及びうち1186万1709円に対する平成23年6月25日から,うち8万8092円に対する平成24年2月3日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 主文4項と同旨
第2 事案の概要
1 本訴は,原告が被告に対し,
(1) 平成21年11月1日,電子カルテシステムMedic-HIを売り(以下「本件売買契約1」という。),これを引き渡したと主張して,売買代金等391万6605円,
(2) 同日,電子カルテシステムMedic-HIを売り(以下「本件売買契約2」という。),これを引き渡したと主張して,売買代金等211万0993円,
(3) 同日,本件売買契約1に係る保守契約(以下「本件保守契約1」という。)を締結して,保守業務を行ったと主張して,保守料63万円(平成21年12月分から平成22年2月分までの月額15万7500円3か月分と特別保守料金15万7500円との合計),
(4) 同日,本件売買契約2に係る保守契約(以下「本件保守契約2」という。)を締結して,保守業務を行ったと主張して,保守料15万7500円(平成21年12月分から平成22年2月分まで月額5万2500円3か月分),
(5) 被告との間で業務部管理委託契約(以下「本件業務部管理委託契約」という。)を締結して,委託業務を履行したと主張して,平成21年12月分の委託料と諸経費の計97万9557円,平成22年1月分の委託料と諸経費の計87万8259円,
(6) 本件保守契約1の平成22年2月分の保守料15万7500円と本件保守契約2の同月分の保守料5万2500円との合計21万円(以下「平成22年2月分保守料」という。)及びこれに対する同年3月1日から,
同年2月16日に上記(1)ないし(5)の金員の合計から平成22年2月分保守料を除いた846万2914円について支払期限延期合意をし,300万円の支払を受けたと主張して,その残金546万2914円及びうち150万円に対する弁済期の翌日である同年5月1日から,うち150万円に対する弁済期の翌日である同年6月1日から,うち150万円に対する弁済期の翌日である同年7月1日から,うち96万2914円に対する弁済期の翌日である同年8月1日から,
各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,
を求めるものである。
2 反訴は,被告が原告に対し,
(1) ①本件業務部管理委託契約が成立していないのに,原告が上記委託料名下に金員の支払を要求し,被告から支払を受けた,②原告が平成20年11月締結の業務委託基本契約(以下「本件業務委託契約」という。)を超えて金員の支払を請求して,被告から支払を受けた,③原告が平成20年11月締結の開発業務委託基本契約(以下「本件開発業務委託契約」という。)を超えて金員の支払を請求して,被告から支払を受けたのは,いずれも不当利得に当たると主張して,不当利得返還請求権に基づき,計1186万1709円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成23年6月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,
(2) 原告が旅費,交通費等の諸費用に消費税を付けて請求して受領した分は不当利得に当たると主張して,不当利得返還請求権に基づき,8万8092円及びこれに対する請求拡張申立書送達の日の翌日である平成24年2月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,
(3) 別紙動産目録記載のコンピューター(以下「本件コンピューター」という。)を使用貸ししたが,その使用貸借契約が終了したと主張して,使用貸借契約の終了に基づき,本件コンピューターの引渡し,
を求めるものである。
3 前提事実
以下の事実は当事者間に争いがないか,証拠により容易に認められる。
(1) 原告は,コンピューターのシステム設計等を主要な業務とする会社である。
被告は,情報処理に関するソフトウェア及びハードウェアの研究開発並びに販売等を目的とする会社である。
(2) 原告は,平成21年11月1日,被告に対し,次の物件を以下の約定で売り(本件売買契約1),これを引き渡した。
ア 物件 a病院オーダリングシステム
電子カルテシステムMedic-HI(導入作業を含む。)
イ 代金額 367万5000円(消費税を含む。)
ウ 特約 諸経費(交通費,宿泊費等)は買主の負担
原告は,平成21年11月30日,被告に対し,本件売買契約1に基づき,391万6605円(代金額と諸経費の合計)の支払を請求した。
(3) 原告は,平成21年11月1日,被告に対し,次の物件を以下の約定で売り(本件売買契約2),これを引き渡した。
ア 物件 bクリニック電子カルテシステム
電子カルテシステムMedic-HI(導入作業を含む。)
イ 代金額 198万4500円(消費税を含む。)
ウ 特約 諸経費(交通費,宿泊費等)は買主の負担
原告は,平成21年11月30日,被告に対し,本件売買契約2に基づき211万0993円(代金額と諸経費の合計)の支払を請求した。
(4) 被告は,平成22年2月16日,未払債務につき毎月末日限り150万円ずつの分割払いによる旨の支払期限延期の依頼をし(甲23の1・2),原告はこれを承諾した。
(5) 被告は原告に対し,上記支払期限延期合意に基づき,平成22年2月26日に150万円,同年3月31日に150万円をそれぞれ支払った。
(6) 原告は,別紙消費税過払金計算表記載のとおり,被告から,諸費用に消費税合計8万8092円を付したものを受領した。
(7) 原告は,反訴請求のうち,開発業務委託料について合計31万5000円が過払いになっていることを自認している。
(8) 原告に対する反訴状送達の日は平成23年6月24日である。
原告に対する反訴請求拡張申立書送達の日は平成24年2月2日である。
4 争点及び争点についての当事者の主張
(1) 本件売買契約1の内容及び履行の有無(争点1)
(原告の主張)
ア 原告と被告は,本件売買契約1締結の際,代金支払時期を請求後翌月末日払いと定めた。
イ 原告は,平成21年11月6日,本件売買契約1に基づき,Medic-HIの導入作業を完成させた。
ウ 原告は,平成21年11月頃,本件売買契約1に基づき,交通費・宿泊費等として24万2210円を支出した。
(被告の主張)
原告の主張のうち,ア及びイを否認し,ウは不知。
(2) 本件売買契約2の内容及び履行の有無(争点2)
(原告の主張)
ア 原告と被告は,本件売買契約2締結の際,代金支払時期を請求後翌月末日払いと定めた。
イ 原告は,平成21年11月6日,本件売買契約2に基づき,Medic-HIの導入作業を完成させた。
ウ 原告は,平成21年11月頃,本件売買契約2に基づき,交通費・宿泊費等として12万6810円を支出した。
(被告の主張)
原告の主張のうち,ア及びイを否認し,ウは不知。
(3) 本件保守契約1の成否及び履行の有無(争点3)
(原告の主張)
ア 原告は,平成21年11月1日,被告との間で次の内容の保守契約(本件保守契約1)を締結した。
(ア) 保守の対象 電子カルテシステムMedic-HI
(イ) 設置場所 a病院
(ウ) 保守の内容 故障内容の一次切り分け及び対応の報告
故障修理,復旧支援,問い合わせ対応
(エ) 保守料 年額189万円(消費税を含む。)
(オ) 保守料支払期 請求後翌月末日払い
(カ) 保守期間 平成21年11月1日から1年間
(キ) 特別保守 カスタマイズ(新規&追加機能作成,有償別途見積)
イ 原告は,平成21年12月に本件保守契約1に基づき保守業務を行った。
原告は同年12月30日,被告に対し同月分の保守料15万7500円を支払うよう請求した。
ウ 原告は,平成22年1月頃,本件保守契約1に基づき,上記カスタマイズとして検体検査結果取込プログラムの保守作業を行った。
原告は,平成22年1月13日,被告に対し特別保守料金15万7500円を支払うよう請求した。
エ 原告は,平成22年1月に本件保守契約1に基づき保守業務を行った。
原告は,同年1月30日,被告に対し同月分の保守料15万7500円を支払うよう請求した。
オ 原告は,平成22年2月に本件保守契約1に基づき保守業務を行った。
原告は,同年2月28日,被告に対し同月分の保守料15万7500円を支払うよう請求した。
(被告の主張)
否認する。
(4) 本件保守契約2の成否及び履行の有無(争点4)
(原告の主張)
ア 原告は,平成21年11月1日,被告との間で次の内容の保守契約(本件保守契約2)を締結した。
(ア) 保守の対象 電子カルテシステムMedic-HI
(イ) 設置場所 bクリニック
(ウ) 保守の内容 故障内容の一次切り分け及び対応の報告
故障修理,復旧支援,問い合わせ対応
(エ) 保守料 年額63万円(消費税を含む。)
(オ) 保守料支払期 請求後翌月末日払い
(カ) 保守期間 平成21年11月1日から1年間
イ 原告は,平成21年12月,本件保守契約2に基づき保守業務を行った。
原告は,同年12月30日,被告に対し同月分の保守料5万2500円を支払うよう請求した。
ウ 原告は,平成22年1月に本件保守契約2に基づき保守業務を行った。
原告は,同年1月30日,被告に対し同月分の保守料5万2500円を支払うよう請求した。
エ 原告は,平成22年2月,本件保守契約2に基づき保守業務を行った。
原告は,同年2月28日,被告に対し同月分の保守料5万2500円を支払うよう請求した。
(被告の主張)
否認する。
(5) 本件業務部管理委託契約の成否(争点5)
(原告の主張)
ア 原告は,平成21年2月頃,被告との間で,次のとおり業務部管理委託契約(本件業務部管理委託契約)を締結した。
(ア) 業務委託の内容 社員教育,営業支援,MAC24開発サポート
システム導入サポート
(イ) 委託料 月額84万円(消費税を含む。)
諸経費は実費支給
(ウ) 支払方法 毎月末締め翌月末日払い
イ 原告は,平成21年12月,本件業務部管理委託契約に基づく上記業務を提供し,その際に,諸経費(交通費,宿泊費等)として13万9540円を支出した。
ウ 原告は,平成21年12月30日,被告に対し上記業務部管理委託代金及び諸経費の合計97万9557円を支払うよう請求した。
エ 原告は,平成22年1月,本件業務部管理委託契約に基づく上記業務を提供し,その際に,諸経費(交通費,宿泊費等)として3万6438円を支出した。
オ 原告は,平成22年1月30日,被告に対し上記業務部管理委託代金及び諸経費の合計87万8259円を支払うよう請求した。
(被告の主張)
否認する。
(6) 本件業務部管理委託契約に係る不当利得の成否(争点6)
(被告の主張)
ア 被告は原告に対し,別紙過払金一覧表(ただし,メディカル事業部管理委託請求分)記載のとおり,本件業務部管理委託料名下に合計712万4800円を余分に支払った。原告の受領した上記金員は不当利得に当たる。
イ 原告は,上記事情について悪意である。
(原告の主張)
不当利得に当たるとの被告の主張を争う。
原告と被告は,平成21年2月に本件業務部管理委託契約を締結した。原告は,上記契約に基づき,委託された管理業務を行い,その報酬として上記金員を受領した。
(7) 本件業務委託契約に係る不当利得の成否(争点7)
(被告の主張)
ア 原告と被告は,平成20年11月1日付け業務委託基本契約書を取り交わし,もってWinMedical22入替,導入,サポート,全ての業務協力及び報告連絡相談業務をPM(プロジェクトマネージャー)1人1日3万円(税別),PM以外1人1日2万円(税別),請求後翌月末日払いとの約定で請負契約(本件業務委託契約)を締結した。
イ 原告従業員のC(以下「C」という。)はPM以外であり,1日2万円であった。
ウ 原告は,平成21年5月以降,入替業務をしていない日やWinMedical22の入替や導入作業をしていない病院で,あたかも業務をしたかのように装い,金員の支払を請求した。
エ 被告は原告に対し,別紙過払金一覧表(ただし,WinMedical22入替作業請求分)記載のとおり,上記業務委託料名下に合計102万8150円を余分に支払った。原告が受領した上記金員は不当利得に当たる。
オ 原告は,上記事情につき悪意であった。
(原告の主張)
被告の主張アを認めるが,その余は否認し,不当利得に当たるとの主張を争う。
ア 原告は,平成21年4月15日,被告に対し,同年5月からCの日当を3万円に変更してほしい旨述べ,被告から口頭で了解を得た(以下「本件日当変更合意」という。)。原告は本件日当変更合意に基づいて計算して上記金員を受領した。
イ 原告の受領した金員は,別紙過払金計算表1記載のとおりであり,過払額と不足額を差し引き計算すると,1万1350円の不足となっており,過払いは生じていない。
(8) 本件開発業務委託契約に係る不当利得の成否(争点8)
(被告の主張)
ア 原告と被告は,平成20年11月1日付け開発業務委託基本契約書を取り交わし,もって,WinMedical22の新規開発及びバグ修正の開発業務を月額60万円(税込み)で,月業務20日未満の場合は1日拘束3万円(税込み),請求後翌月末日払いとの約定で請負契約を締結した。
イ 原告は,平成20年11月1日以降,被告に対し,月額63万円(税込み)として請求した。
ウ 原告は,平成21年1月以降,月業務20日未満である場合でも,1日拘束3万円(税込み)でなく,月額63万円(税込み)で計算した。
エ 被告は原告に対し,別紙過払金一覧表(ただし,WinMedical22開発委託請求分)記載のとおり,上記開発業務委託料名下に合計51万3000円を余分に支払った。原告が受領した上記金員は不当利得に当たる。
オ 原告は,上記事情につき悪意であった。
(原告の主張)
被告の主張アのうち,原告と被告が開発業務委託基本契約書を取り交わしたことを認めるが,その余を否認する。イを認めるが,ウ,エ,オは否認する。不当利得に当たるとの主張は,次のイを除き,争う。
ア 開発業務委託基本契約書の「月額60万円(税込み)」は「月額60万円(税別)」ないし「月額63万円(税込み)」の誤記であり,月業務20日未満の場合の1日拘束「3万円(税込み)」は「3万円(税別)」の誤記である。
イ 原告の受領した金員については,別紙過払金計算表2記載のとおり,合計31万5000円の過払いが生じている。
(9) 非債弁済の有無(争点9)
(被告の主張)
ア 被告は原告に対し,売買代金,保守料,業務委託料等の残債務を負っていなかった。
イ しかるに,被告は上記残債務があるものと誤信して,原告に対し,平成22年2月26日に150万円,同年3月31日に169万5759円の合計319万5759円を余分に支払った。
ウ 原告は,上記事情につき悪意であった。
(原告の主張)
否認する。
(10) 本件コンピューターの使用貸借の成否(争点10)
(被告の主張)
ア 被告は原告に対し,本件開発業務委託契約に関連して本件コンピューターを使用貸しし,これを引き渡した。
イ 上記使用貸借は平成21年12月までに終了した。
(原告の主張)
否認する。本件コンピューターはD(以下「D」という。)の所有するものである。
第3 当裁判所の判断
1 事実関係
前記「前提事実」に証拠(甲1ないし88,乙1ないし123(各枝番を含む。),原告代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
(1) 原告は,コンピュータのシステム設計,ソフトウェアの設計,開発,保守,輸出入及び販売,コンピュータ利用に関する指導,教育及びコンサルティング業務等を目的とする会社であり,平成19年12月19日に設立された。A(以下「A社長」という。)が原告の代表取締役を務めている。
被告は,情報処理に関するソフトウェア及びハードウェアの研究開発並びに販売等を目的とする会社である。B(以下「B社長」という。)が被告の代表取締役を務めている。
(2) A社長は,大学卒業後,医療関係の株式会社ファインサーブに入社し,医療関係のパソコンのプログラマーを経て,平成14年株式会社日本メディカルバンクシステムに部長待遇で入社し,医療システムの開発,導入,補修,営業等の業務全般に従事していた。そして,平成17年頃同社の取引先である被告の代表者B社長と出会った。平成19年11月頃,株式会社日本メディカルバンクシステムが破綻状態となったため,A社長は,その社員であったE(以下「E」という。),F(以下「F」という。),C,G(以下「G」という。),Hら8名を引き連れて同年12月に原告を設立し,平成20年2月16日から営業を開始した。
A社長は,平成20年4月18日,被告のB社長に独立の挨拶をした。当時,被告はWinMedical,WinMedical22の営業を進めている案件があり,B社長がA社長に対し営業の手伝いを持ちかけ,A社長はこれに応ずることとした。その後,A社長は,同年5月30日,B社長から,WinMedical,WinMedical22を扱っている株式会社メディカルインフォメーションの代表取締役のDを紹介され,同年6月,原告の社員と共にDからWinMedical22についての勉強会を受けた。原告は,同年9月から,WinMedical22の開発パソコンを作成するために,開発機3台を製作した。
A社長は,WinMedical,WinMedical22が自社製品でなく慣れていないため,慣れるまでのサービスと思い,SE日当3万円,インストラクター日当2万円という金額で引き受けることとした。
(3) B社長は,こうした交渉過程を経て,平成20年11月4日,A社長宛に業務委託基本契約書と開発業務委託基本契約書のデータを送信した(甲42)。後日,原告と被告は,同年11月1日付け業務委託基本契約書(乙4)を取り交わし,もって本件業務委託契約を締結した。上記契約書には,業務委託内容として,WinMedical22入替,導入,サポート,全ての業務協力及び報告連絡相談とされ,期間は「平成20年11月1日~平成21年1月31日」,委託料は,PM1人1日3万円(税別),PM以外1人1日2万円(税別),請求後翌月末日払いとする旨の記載がある。
また,原告と被告は,同年11月1日付け開発業務委託基本契約(乙1)を取り交わし,本件開発業務委託契約を締結した。乙1には,開発の特定として,WinMedical22の新規開発及びバグ修正の開発業務とされ,基本顧問料は月額60万円(税込み)で,月業務20日未満の場合は1日拘束3万円(税込み),請求後翌月末日払い,契約期間は平成20年11月1日から3ヶ月,1年間の自動延長条項の記載がある。
(4) 原告の従業員であるCらは,平成20年11月以降,本件業務委託契約に基づく業務を行った。原告は,平成20年11月以降平成21年4月まで,本件業務委託契約に基づく委託料として月額2万円(税別)として計算した請求書を出し,被告から請求書どおりの支払を受けた。
また,原告の従業員であるEとHは,平成20年11月以降,本件開発業務委託契約に基づくWinMedical22の開発業務を行った。原告は,本件開発業務委託契約に基づく委託料として,平成20年11月は月額31万5000円(税込み)を請求し,平成20年12月以降平成21年9月まで毎月月額63万円(税込み)を請求して,被告からその請求書どおりに支払われてきた。
(5) A社長は,平成21年1月31日の本件業務委託契約及び本件開発業務委託契約の期間満了を間近に控え,同年1月24日にメール(甲47,49)によりB社長に対し,現状では採算が合わず仕事を続けるのは難しい旨申し入れ,同年2月2日にB社長と面談して契約について協議した。
(6) 原告は,上記協議を受けて,平成21年2月以降も引き続き本件業務委託契約及び本件開発業務委託契約に基づく委託業務を行うとともに,平成21年2月からA社長が被告のメディカル事業部の仕事に関与し,その会議にも幹部として出席した。
原告は,事業部管理委託料として同年4月分から同年11月分まで毎月月額84万円(税込み)の請求書を出し,被告から請求書どおりの支払を受けた。
(7) A社長は,平成21年4月,B社長に対し,同年5月以降のCの日当を3万円とするよう申し入れた。原告は,同年5月分から同年10月分まで毎月,Cの日当を3万円(税別)として計算した請求書を出し,被告から請求書どおりの支払を受けた。
(8) 被告は,平成21年9月,原告に対し,a病院に導入が決まっていたWinMedical22に代えて,原告の製品であるMedic-HIでの導入作業を依頼した。原告はこれを了承し,同年9月から同年11月までA社長が被告のPMとしてa病院の導入に参加し,各医療機関への連絡,不具合修正,サポートを行った(甲57)。
また,被告は同年9月,原告に対し,bクリニックでもMedic-HIを導入したいと話した。原告はこれを了承し,同年9月から11月まで原告の従業員2名を被告のPMとしてbクリニックに向かわせ,Medic-HIの導入作業を行い,各医療機関への連絡,不具合修正,サポートを行った。
(9) 原告と被告は,平成21年11月1日付けのa病院に係る売買契約書(甲1の2)を取り交わして本件売買契約1を締結した。上記売買契約書には,代金支払時期について「見積書の金額をリース会社から入金後即日支払う。」と記載されている。上記契約に係る原告作成の見積(注文)書(甲1の1)は,代金支払時期を「導入後月末請求,翌月末現金払い」と定めている。
(10) 原告と被告は,平成21年11月1日付けのbクリニックに係る売買契約書(甲4の2)を取り交わして本件売買契約2を締結した。上記売買契約書には,代金支払時期について「見積書の金額をリース会社から入金後即日支払う。」と記載されている。上記契約に係る原告作成の見積(注文)書(甲4の1)は,代金支払時期を「導入後月末請求,翌月末現金払い」と定めている。
(11) 原告と被告は,同年11月1日付け本件保守契約1(甲13)を取り交わした。
(12) 原告と被告は,同年11月1日付け本件保守契約2(甲19)を取り交わした。
(13) 平成21年11月分以降,被告の支払が停止した。そこで,原告は被告に対し上記各金員の支払を求めたところ,被告は平成22年2月16日付け(甲23の1・2)で,毎月末日限り150万円ずつの分割支払をする旨の回答をした。原告はこれを了承して,もってそのとおりの合意が成立した。しかし,被告は,同年2月26日に150万円,同年3月31日に150万円をそれぞれ支払っただけで,残金の支払をしない。
2 争点1(本件売買契約1の内容及び履行の有無)について
(1) 上記1認定の事実に,証拠(甲1の1・2,32,41,76,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア 原告と被告は,平成21年11月1日付けの売買契約書(甲1の2)を取り交わして本件売買契約1を締結した。上記売買契約書には,代金支払時期について「見積書の金額をリース会社から入金後即日支払う。」と記載されている。上記契約に係る見積(注文)書(甲1の1)は,代金支払時期を「導入後月末請求,翌月末現金払い」と定めている。
イ 原告は,同月6日,上記契約に基づきMedic-HIの導入作業を完成させた。
ウ 原告は,同月20日付けで上記電子カルテシステムの完成報告書に株式会社メディカルケア(以下「メディカルケア」という。)医療情報事業部次長のIから検印を受けた上で,被告に交付した。
エ 原告は上記契約履行のための交通費・宿泊費等として24万2210円を支出した。
オ 原告は,遅くとも平成21年12月からMedic-HIの保守業務を行った。
(2) 以上認定(1)の事実によれば,原告は同年11月6日本件売買契約1に基づきMedic-HIの導入作業を完成させたことが認められる。
(3) 被告は,原告が本件売買契約1のMedic-HIの導入作業を完成させたことを否認し,B社長はこれに沿う供述をし,乙123(B社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。しかし,B社長の上記供述等は,上記(1)の認定事実に照らし,たやすく採用することができない。他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
3 争点2(本件売買契約2の内容及び履行の有無)について
(1) 上記1認定の事実に,証拠(甲4の1・2,41,72,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア 原告と被告は,平成21年11月1日付けで売買契約書(甲4の2)を取り交わし,もって本件売買契約2を締結した。上記売買契約書には,代金支払時期について「見積書の金額をリース会社から入金後即日支払う。」と記載されている。上記契約に係る見積(注文)書(甲4の1)は,代金支払時期を「導入後月末請求,翌月末現金払い」と定めている。
イ 原告は,同月6日,上記契約に基づき,Medic-HIの導入作業を完成させた。原告は,bクリニック事務長のJに対し「電子カルテシステム完成報告書」を交付し,確認の押印をしてから返送してもらうこととした。しかし,Jが退職したため,原告にこれが返送されず,やむなくbクリニックの押印のない「電子カルテシステム完成報告書」を被告に提出した。
ウ 原告は,同月7日以降Medic-HIの保守業務を行った。
エ 原告は上記契約履行のための交通費・宿泊費等として12万6810円を支出した。
(2) 以上認定(1)の事実によれば,原告は同年11月6日本件売買契約2に基づきMedic-HIの導入作業を完成させたことが認められる。
(3) 被告は,原告において本件売買契約2のMedic-HIの導入作業を完成させていないと主張し,B社長はこれに沿う供述をし,乙123(B社長の陳述書)にもこれに沿う陳述記載部分がある。しかし,B社長の上記供述等は,上記(1)の認定事実に照らし,たやすく採用することができない。他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
4 争点3(本件保守契約1の成否及び履行の有無),争点4(本件保守契約2の成否及び履行の有無)について
(1) 証拠(甲13ないし22,32ないし40(枝番を含む。),乙7,原告代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 原告は,平成21年11月1日付けで,被告との間で保守契約書(甲13)及び保守契約書(甲19)を取り交わした。
イ 被告の従業員Kは,平成21年12月頃,A社長に対し,メール(乙7)で,「保守契約書の保守開始日を間違えてしまいました。」「誤り 平成21年11月1日」「正 平成22年5月1日」「後日,変更覚書を送付させていただきますのでよろしくお願いいたします。」と連絡したところ,A社長は,同年12月2日付けメールで,「了解しました。平成22年5月1日保守開始ですね。契約書も急ぐ必要はないかと思いますので,平成22年4月までに送って頂ければ大丈夫です。」と回答した。しかし,A社長は,被告の申入れでは,6か月間作業をしなければならず,社員の給料も当然払わなければならないことから,すぐに思い直し,同年12月21日付けメール(甲32)により,「保守契約開始日を平成21年12月1日にして,12月から保守料を請求する」旨申し入れた。
ウ 原告は,平成21年12月に本件保守契約1に基づき保守業務を行った。原告は同年12月30日,被告に対し同月分の保守料15万7500円を支払うよう請求した(甲14)。
エ 原告は,平成22年1月頃,本件保守契約1に基づき,上記カスタマイズとして検体検査結果取込プログラムの保守作業を行った(甲15)。原告は,平成22年1月13日,被告に対し特別保守料金15万7500円を支払うよう請求した(甲16)。
オ 原告は,平成22年1月に本件保守契約1に基づき保守業務を行った。原告は,同年1月30日,被告に対し同月分の保守料15万7500円を支払うよう請求した(甲17)。
カ 原告は,平成22年2月に本件保守契約1に基づき保守業務を行った。原告は,同年2月28日,被告に対し同月分の保守料15万7500円を支払うよう請求した(甲18)。
キ 被告はメディカルケアに対し,a病院の同年12月分の保守料金の請求書を出し,メディカルケアから支払を受けた(甲33の1・2)。
被告は,その後も毎月メディカルケアに対し,a病院の保守料金の請求書を出し,メディカルケアから金員の支払を受けている(甲34ないし40)。
ク 原告は,平成21年12月に本件保守契約2に基づき保守業務を行った。原告は,同年12月30日,被告に対し同月分の保守料5万2500円を支払うよう請求した(甲20)。
ケ 原告は,平成22年1月に本件保守契約2に基づき保守業務を行った。原告は,同年1月30日,被告に対し同月分の保守料5万2500円を支払うよう請求した(甲21)。
コ 原告は,平成22年2月に本件保守契約2に基づき保守業務を行った。原告は,同年2月28日,被告に対し同月分の保守料5万2500円を支払うよう請求した(甲22)。
(2) 以上(1)の認定事実,特に,原告と被告は,平成21年11月1日付け本件売買契約1及び2にそれぞれ対応する同日付け保守契約書を取り交わしたこと,原告は,同年12月以降それぞれの保守作業を行い,その分の保守料を請求したこと等を総合すると,原告と被告は,同年11月1日付けで本件保守契約1及び2を締結したことが認められる。なお,上記各保守契約書を取り交わした後,被告担当者がメールで,日付が平成22年5月1日の誤記であると連絡したのに対し,原告は平成21年12月2日付けメールによりいったんはこれを了解するとする旨の回答をしたことがあったことは前示のとおりであるが,他方,原告は,その後も引き続き保守作業を行うとともに,同年12月21日付け被告担当者宛てのメールにより,同年12月分からの保守料金を請求する旨連絡したことは前示のとおりであり,これに原告と被告間で後日上記保守契約書の改訂がされなかったことを併せ考慮すると,上記了解するとの原告のメールはいまだ確定的な意思表示とみることができず,メールでの上記やり取りがあったとの一事をもって,原告と被告間で本件保守契約1及び2の成立を否定することにしたとか,上記契約の成立時期を平成22年5月まで延期する旨の合意をしたなどということはできない。
(3) 被告は本件保守契約1及び2の成立を否認し,B社長は,「導入半年間は安定するまでに時間がかかるので,6か月後の平成22年5月開始であると聞いていた」と供述し,乙123(B社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。しかし,B社長の上記供述等は,上記(1)認定の事実に照らし,たやすく採用することができない。他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
5 争点5(本件業務部管理委託契約の成否),争点6(本件業務部管理委託契約に係る不当利得の成否)について
(1) 前記1認定事実に,証拠(甲24ないし31,41ないし56,60,80(枝番を含む。),乙1,4,20ないし27,121,123,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア 原告と被告は,平成20年11月,業務委託基本契約書(乙4)を取り交わして本件業務委託契約を締結し,かつ,開発業務委託基本契約書(乙1)を取り交わして,本件開発業務委託契約を締結した。
本件業務委託契約とは,原告のA社長以外の,原告の従業員であるC,Gらが,被告のメディカル事業に関する開発を含む技術面,ノウハウでのサポート等を行う契約である。
本件開発業務委託契約とは,原告のA社長以外の,原告従業員Eらが,MAC24の開発業務を行う契約である。
イ A社長は,これまでも原告の中で自らが中心となってB社長の指示に対応してきたが,社員が動いた日の日当しかもらえないため,この金額では採算が合わずやっていけないと考え,B社長に対し,契約内容の追加を相談することとした。A社長は,平成21年1月の契約期限満了に伴い,B社長に対し,同月24日付けメール(甲47,49)により,要旨次のとおり申し入れた。
「今まで基本2名の空きを用意して,平成20年11月から21年1月までWinMedicalの勉強を兼ねてやらせて頂きました。請求書を見ればおわかりになるかと思いますが,1人あたり,請求が20万円も行かない月もあり,スケジュール空きの部分は結果的に勉強代ならぬ,会社の持ち出しになってしまいました。私の予想では,この先も同じ状況が続くのかと思います。WinMedicalの事業として今の形でやってもスケジュールの空きができてしまい,結果的に会社の持ち出しになってしまいます。いうより,今の仕事内容だと八王子のメンバだけで消化できるものあるいは,そうしないと採算が合わないではと思われます。これからWinMedicalが従業員の人件費ぐらい稼げる事業になる見通しはかなり時間がかかるのではとみています。よって,会社としては仕方なく,他スケジュールを優先せざるを得なくなりました。現在決まっているスケジュール以外の日程に関してはご協力できないこともあるかと思います。」
これに対し,B社長は,メールで,「内容は理解しました。私も考えを持っていますので来週戻れなければ どちらにしても戻ってから話をしましょう。」と返信した(甲49)。
ウ A社長は,平成21年2月2日,被告会社を訪問し,B社長との間で,打ち合わせた。A社長は,この席上で,B社長に対し,別途契約をしてほしい,そうでなければこれ以上の仕事は受け入れられない旨申し入れた。これに対し,B社長は,被告はメディカル事業部を本格的に立ち上げたいので,A社長をトータルで面倒を見るから,A社長が自分の代わりになって管理してくれるよう要請した。そこで,A社長は,メディカル事業部全体の委託を受けるのであれば,月額最低80万円は欲しいとして,以下のとおり申し述べた。
(ア) 業務委託の内容 社員教育,営業支援,MAC24開発サポート,システム導入サポート
(イ) 委託料 月額84万円(消費税を含む。)
諸経費は実費支給
(ウ) 支払方法 毎月末締め翌月末日払い
このように,A社長の求めた本件業務部管理委託契約は,原告のA社長自身が,被告の社員教育,営業支援,MAC24開発サポート,システム導入サポート等について,月額84万円で総合的にサポートするというものであった。
エ A社長は,B社長との面談を受けて,同年2月から,本格的に被告メディカル事業部として,サポート組織作り,教育,ソフト開発,営業支援,システム入替作業などの業務を行うようになった。こうして同年4月から被告メディカル事業部は具体的な活動が始められるようになった。B社長は,同年4月8日付けメール(甲50)により,被告従業員のL(以下「L」という。)に対し,「Aさんも同行します。いずれAさんの指示で動くことになりますので 困ったことは Aさんに相談するとよいです。」また,メディカル事業部は,同年4月27日,同年6月19日,同年8月5日,同年8月18日の4回にわたって会議を開催し,その際に議事録を作成した(甲51ないし56)。これらの会議には,A社長も幹部として出席している。
原告は,平成21年4月から同年11月まで,A社長に係る業務報告書(甲24ないし31(枝番を含む。))を提出した。
オ A社長は,同年2月から本件業務部管理委託契約の委託料の請求をしたかったが,B社長から,もうちょっと待ってくれと懇願され,同年2月,3月分は請求しなかった。しかし,原告は,同年4月からは,メディカル事業部管理委託の費用の請求を始め,平成21年4月分から同年11月分までの委託料(諸経費を含む。)として毎月84万円(同年10月分は109万3155円,同年11月分は99万1645円)の請求書を出し,被告から請求書どおりの支払を受けた。これらの請求書には,日付の記載と共に「B」名義の押印がある(乙20ないし27)。
カ 原告は平成21年12月,本件業務部管理委託契約に基づく上記業務を提供し,その際に,諸経費(交通費,宿泊費等)として13万9540円を支出した。原告は,平成21年12月30日,被告に対し上記業務部管理委託代金及び諸経費の合計97万9557円を支払うよう請求したが,被告は支払わなかった。
キ 原告は平成22年1月,本件業務部管理委託契約に基づく業務を提供し,その際に,諸経費(交通費,宿泊費等)として3万6438円を支出した。原告は,平成22年1月30日,被告に対し上記業務部管理委託代金及び諸経費の合計87万8259円を支払うよう請求したが,被告は支払わなかった。
(2) A社長は,「平成21年2月,B社長に対し,本件業務委託契約とは別途本件業務部管理委託契約を申し入れたところ,B社長はこれを口頭で了承した」と供述し,甲41,80(原告代表者の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。A社長の上記供述等は,上記(1)認定の事実に整合しており,信用性が高い。A社長の上記供述等によれば,A社長は,平成21年2月,被告代表者B社長に対し,本件業務部管理委託契約の締結を申し入れたところ,被告社長はこれを口頭で了承し,もって本件業務部管理委託契約を締結したことが認められる。
(3) 被告は本件業務部管理委託契約の成立を否認し,B社長は「本件業務部管理委託契約を了解したことはない」旨供述し,乙123(B社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。しかし,B社長の上記供述等は,以下のとおり不自然,不合理であり,反対趣旨の証拠(甲41,原告代表者)と対比しても,たやすく採用することができない。他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
ア B社長は,「サポートセンターとA社長との関係は,サポートセンターがユーザーの声の代表で,A社長がそのプログラムの不具合や要望のプログラムの開発を行っている下請の開発者という関係にすぎない」と供述をし,乙123(B社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。しかし,B社長の上記供述等は,B社長が被告従業員のLに対し,メール(甲50)で「Aさんも同行します。いずれAさんの指示で動くことになりますので 困ったことは Aさんに相談するとよいです。」と指示していることや,A社長が被告メディカル事業部の会議に幹部として出席していることなどに照らし,不自然である。
イ B社長は,本件業務部管理委託契約を了解したことはないと供述する。しかし,そうであれば,被告は,原告による平成21年4月からの委託料請求を拒否してしかるべきである。しかるに,原告が平成21年4月分から同年11月分までの委託料(諸経費を含む。)として毎月84万円(同年10月分は109万3155円,同年11月分は99万1645円)の請求書を出したのに対し,被告は請求書どおりの支払をしており,しかも,これらの請求書には,日付の記載と共に「B」名義の押印がある。そうすると,B社長が原告からの上記契約の申入れを了解していないというのは不自然である。
ウ B社長は,上記支払をした理由について,「被告の会計は平成21年9月末日まではMが担当し,平成21年10月からはMとKが担当し,同年11月からはKのみが経理を担当した。Kは不正をしたため解雇した。このように被告の会計の態勢がずさんであり,そのために原告の請求書をチェックすることができず,平成21年4月分から同年11月分まで請求書どおりに支払った。」旨供述し,乙121(B社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。しかし,原告が本件業務部管理委託契約の委託料として月額84万円を請求したのは,平成21年4月であるところ,この時点での被告担当者はMであり,Mに問題はないから,B社長の述べる理由は合理的であるとはいい難い。
(4) 被告は,上記委託料名下で支払った合計712万4800円は不当利得に当たると主張する。しかし,上記のとおり原告と被告との間で本件業務部管理委託契約が成立して,A社長は上記契約に基づく委託業務を行ったのであるから,原告が上記金員を受領したのは上記契約に基づく委託料としてであり,法律上の原因があるから,不当利得に当たらない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
6 争点7(本件業務委託契約に係る不当利得の成否)について
(1) 前記1認定事実に,証拠(甲60,61,64,65,80,乙30,33,34,36,37,39,42,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア 原告と被告は,平成20年11月1日,業務委託基本契約書(乙4)を取り交わし,もってWinMedical22入替,導入,サポート,全ての業務協力及び報告連絡相談業務をPM1人1日3万円(税別),PM以外1人1日2万円(税別),請求後翌月末日払いの約定で請負契約を締結した。
イ Cは原告従業員であり,本件業務委託契約に基づき,御徒町事務所において,PM以外の委託された業務に日当2万円(税別)で従事していた。
ウ 被告は,平成21年4月当時,本社をより広いスペースのある階に引っ越しをすることとし,これに伴い,新たにN,O(以下「O」という。),Lを雇用することになり,OとLについてはA社長のほかCも直接指導することになった(甲61)。
A社長は,その際,Cが被告のサポートセンター業務に深く関わることになるし,日当2万円はもともとWinMedical22を勉強する形での安い値段設定にすぎなかったため,同年4月15日,被告の社内で,B社長に対し,同年5月からCの日当を2万円から3万円に変更してほしいと交渉した。
エ 翌16日,B社長からOの件について打合せをしたいというメールがきた(甲62)。同年5月11日から本社引っ越しの同年6月15日までの間,Oに対し,Cの就業していた御徒町の事務所で就業させることとなり,Cがサポートセンターの業務について指導することになった(甲61,乙31)。
オ 同年5月8日,Lが被告を退職することになり(甲63),同社での人手が足りなくなることと,サポートセンター所属のO,Pが,サポートセンターの業務について理解が不十分であったため,Cに,同社本社引越の終わる同年6月15日から約1か月サポートセンターに出向させ,常駐させることになった(甲64,65,乙34,37)。
カ このように,原告の従業員Cは,別紙過払金計算表1記載のとおり業務を行い(乙30,31,33,34,36,37,39,40,42,43,44,45),Gが1日働いている(甲68)。
キ 原告は,Cの日当に関し,同年5月分から同年10月分まで毎月,日当3万円を基準に請求し(乙30,33,36,39,42,44),被告はその請求書どおりに支払った。上記請求書には,日付の記載と共に「B」名義の印が押されている。
ク C等の報酬の過払額と不足額を差し引き計算すると,別紙過払金計算表1記載のとおり,合計で1万1350円の不足となり,過払いは生じていない。
(2) A社長は,「平成21年4月15日,B社長に対し,同年5月からCの日当を3万円に変更してほしい旨述べたところ,B社長から口頭で了解を得た。」と供述し,甲60(A社長の陳述書)に同趣旨の陳述記載部分がある。A社長の上記供述等は,上記(1)認定の事実と整合しており,信用性が高い。A社長の上記供述等によれば,A社長は,平成21年4月15日,B社長に対し,同年5月からCの日当を3万円に変更してほしい旨述べ,B社長から口頭で了解を得て,もって原告と被告間でCの日当を同年5月以降3万円に変更する旨合意(本件日当変更合意)をしたことが認められる。
(3) 被告は,①本件日当変更合意の成立を否認し,原告の従業員CはPM以外であり,Cの日当は1日2万円であった,②原告は,平成21年5月以降,入替業務をしていない日やWinMedical22の入替や導入作業をしていない病院で,あたかも業務をしたかのように装い,金員の支払を請求したと主張し,B社長はこれに沿う供述をし,乙123(B社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。
しかし,B社長の上記供述等は,上記(1)認定の事実(特に,A社長は原告の仕事が増えることになるのに対応するため,B社長に対しCの日当の変更を申し述べていること,原告は平成21年5月分から同年10月分まで日当3万円を基準とする請求書を出し,被告は請求書どおりに支払ったこと)に照らし,たやすく信用することができない。他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
(4) 被告は,上記委託料名下で原告に対し合計102万8150円を余分に支払ったのは不当利得が成立すると主張する。しかし,原告と被告との間で本件業務委託契約について本件日当変更合意が成立して,Cはこれに基づき平成21年5月以降委託業務を行っていること,過払額と不足額を差し引き計算すると,別紙過払金計算表1記載のとおり1万1350円の不足となり,過払いは生じていないことは前示のとおりであるから,不当利得に当たらない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
7 争点8(本件開発業務委託契約に係る不当利得の成否)について
(1) 前記1認定の事実に,証拠(甲69ないし71,80,81の1ないし6,乙1,50,52,53,55,58,61,63,65,67,69,72,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア 原告と被告は,平成20年11月1日,開発業務委託基本契約書(乙1)を取り交わした。乙1には,WinMedical22の新規開発及びバグ修正の開発業務を月額60万円(税込み)で,月業務20日未満の場合は1日拘束3万円(税込み),請求後翌月末日払いとの記載がある。
イ 本件開発業務委託契約では,開発業務担当はEとHが想定されていた。原告の従業員であるEとHは,別紙過払金計算表2記載のとおり,平成20年11月以降,本件開発業務委託契約に基づくWinMedical22の開発業務を行ってきた(甲69,70,71,乙50,52,53,55,58,61,63,65,67,69,72)。
ウ 原告は,本件開発業務委託契約に基づく委託料として,平成20年12月以降平成21年9月まで毎月,月額63万円(税込み)を請求し,被告からその請求書どおりに支払われてきた。原告が被告から受領した上記金員については,別紙過払金計算表2記載のとおり,合計31万5000円の過払いが生じている。
エ 原告と被告間の業務委託基本契約書,開発業務委託基本契約書,保守契約書等では,委託料,保守料等は全て消費税抜きで切りのいい金額として,別に消費税を付加した金額を請求しており,委託料については被告から請求書どおりに支払われてきた。
(2) A社長は,「契約の交渉段階から,委託料は月額60万円で税別であるとしてやりとりをしていた。上記契約書中の基本委託料『月額60万円(税込み)』との記載は『月額63万円(税込み)』の誤記である。本件訴訟に至るまで,上記契約書の記載が「月額60万円(税込み)」と記載されていることに気付かなかったので,当時上記契約書の記載の訂正を申し出ることはしなかった。」と供述し,甲41,80(A社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。これに上記認定の事実を併せ考慮すると,上記契約書に「月額60万円(税込み)」との記載は,「月額60万円(税別)」ないし「月額63万円(税込み)」の誤記であり,原告は,契約の交渉経過を含め契約時及び契約の履行の全過程を通じて月額60万円は税別であると認識しており,契約時の平成20年11月分は月額31万5000円(税込み)の請求書を出し,同年12月分から平成21年9月分まで月額63万円(税込み)の請求書を出していたことが認められる。他方,被告は上記請求書どおりに金員を支払ったこと,原告と被告間の他の契約書でも,全て消費税抜きで切りのいい金額として,別に消費税を付加した金額を請求しており,請求どおりに支払われてきたことは前示のとおりであるから,被告も月額60万円が税別であることを認識していたと推認される。
(3) 被告は,①本件開発業務委託契約の委託料は月額60万円(税込み)である,②原告は,平成21年1月以降,月業務20日未満である場合でも,1日拘束3万円(税込み)でなく,月額63万円(税込み)で計算したとし,その前提に立って,平成20年11月1日以降,被告に対し,月額63万円(税込み)として請求したために,被告は原告に対し合計51万3000円を余分に支払ったと主張し,B社長はこれに沿う供述をし,乙123(B社長の陳述書)にも同趣旨の陳述記載部分がある。しかし,B社長の上記供述等は,以下のとおり不自然であり,反対証拠と対比しても,たやすく信用することができない。
ア 被告は,契約書の記載どおり,月額60万円が税込みであると認識していたと供述する。しかし,そうであるとすると,被告は,原告からの契約時の平成20年11月分は月額31万5000円(税込み)の請求書,同年12月分から平成21年9月分まで月額63万円(税込み)の請求書どおりに金員を支払ってきたというのは不可解といわざるを得ない。原告と被告との間の他の契約書でも,全て消費税抜きで切りのいい金額として,別に消費税を付加した金額を請求しており,請求どおりに支払われてきたことに照らしても,被告は月額60万円が税込みであると認識していたとの供述部分は不自然である。
イ 原告のE及びHは上記契約に基づき別紙過払金計算表2記載のとおり業務を行っていた。原告が被告から受領した金員について,同表記載のとおり,合計31万5000円の過払いが生じていることは原告の自認するところであるが,そのほかには過払金が生じているとはいえない(なお,契約締結時である平成20年11月分については原告の業務報告書が欠損しているものの,前記(1)認定の事実に照らし,契約締結当初にEが開発業務を行っていなかったとは考え難い。)。
ウ B社長は,開発業務はこれまでD1人で月額25万円で済んでいたのであり,被告で依頼している開発も1人月額30万円くらいが相場であると供述し,乙123に同趣旨の陳述記載部分がある。しかし,B社長の上記供述部分等は,反対趣旨の証拠(甲78,80)と対比すると,不自然である。
(4) 被告は,上記委託料名下で原告に対し合計102万8150円を余分に支払ったのは不当利得が成立すると主張する。しかし,上記のとおり,委託料月額60万円は税別であること,原告のE及びHは上記契約に基づき別紙過払金計算表2記載のとおり業務を行っていたのであるから,原告の自認する合計31万5000円の限度では過払いが生じているけれども,それ以外の過払いは生じていない。
8 争点9(非債弁済の有無)について
被告は,原告に対し売買代金や保守料等の残債務を負っていなかったとし,その前提に立って,被告は原告に対し合計319万5759円(平成22年2月26日に150万円,同年3月31日に169万5759円)を余分に支払っており,不当利得が成立すると主張する。
しかし,原告は被告に対し,売買代金や保守料等の債権を有していたことは前示のとおりであり,原告が受領した合計300万円は,上記債権の弁済としてされたものであり,法律上の原因があるから,不当利得は成立しない。被告が原告に対し300万円のほか同年3月31日19万5759円を支払ったことを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
9 争点10(本件コンピューターの使用貸借の成否)について
証拠(乙123,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件開発業務委託契約に基づくWinMedical22の開発業務を遂行するために,本件コンピューターを原告に使用貸しし,これを引き渡したこと,上記開発業務は平成21年12月までに終了し,これに伴い本件コンピューターの使用貸借も終了したことが認められる。
原告は,本件コンピューターはDの所有物であると主張し,甲41(A社長の陳述書),甲78(Dの陳述書)にはこれに沿う陳述記載部分がある。しかし,本件コンピューターがだれの所有であるかと,被告が原告に本件コンピューターを使用貸ししたかどうかとは別個の問題であるから,甲41,78の上記各記載部分は上記認定を左右するものではない。
10 結論
以上によれば,当裁判所の判断は次のとおりとなる。
(1) 原告の本訴請求
ア 本件売買契約1については,原告がMedic-HIの導入作業を行っているから,その売買代金請求は,実費分を含め,理由がある。
イ 本件売買契約2については,原告がMedic-HIの導入作業を行っているから,その売買代金請求は,実費分を含め,理由がある。
ウ 原告と被告との間で本件保守契約1が成立し,原告が保守業務を行ったから,保守料1の請求は理由があるが,平成22年2月分の保守料15万7500円については,請求後翌月末払いであり,請求日は同年2月28日であるから,遅延損害金の始期は同年4月1日である。
エ 原告と被告との間で本件保守契約2が成立し,原告が保守業務を行ったから,保守料2の請求は理由があるが,平成22年2月分の保守料5万2500円については,請求後翌月末払いであり,請求日は同年2月28日であるから,遅延損害金の始期は同年4月1日である。
オ 原告と被告との間で本件業務部管理委託契約が成立し,原告がこれに基づき委託業務を行ったから,委託料請求は理由がある。
カ したがって,原告の本訴請求は,主文1項記載の金員を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
(2) 被告の反訴請求
ア 原告と被告との間で本件開発業務委託契約の委託料は月額60万円(税別)とする合意が成立し,原告がこれに基づき業務を行ったが,過払金31万5000円があるから,これに係る不当利得返還反訴請求は,上記過払金及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成23年6月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
イ 原告と被告との間で本件業務委託契約について本件日当変更合意が成立し,原告がこれに基づき委託業務を行ったから,これに係る不当利得返還反訴請求は理由がない。
ウ 原告と被告との間で本件業務部管理委託契約が成立し,原告がこれに基づき委託業務を行ったから,これに係る不当利得返還反訴請求は理由がない。
エ 原告の受領した旅費,交通費等の諸費用の消費税分合計8万8092円は不当利得に当たるから,被告の上記消費税分に係る不当利得返還反訴請求は理由がある。
オ 被告の本件コンピューターの返還反訴請求は理由がある。
(3) よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 畠山稔)
〈以下省略〉
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