【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(64)平成25年10月17日 東京地裁 平24(行ウ)638号 所得税更正処分等一部取消請求事件

「営業支援」に関する裁判例(64)平成25年10月17日 東京地裁 平24(行ウ)638号 所得税更正処分等一部取消請求事件

裁判年月日  平成25年10月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(行ウ)638号
事件名  所得税更正処分等一部取消請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  確定  文献番号  2013WLJPCA10178007

事案の概要
◇原告が、平成20年分及び平成21年分の所得税の確定申告及び修正申告において、事業所得の金額の計算上、① 原告が居住する住宅に係る地代家賃、② 本件住宅に係る水道光熱費、③ 原告の長男に係る義務教育代行費用及び④ 原告の長男に関する係争に係る弁護士費用の各支出の一部を必要経費に算入して申告したのに対し、立川税務署長から、それらの支出はいずれも所得税法45条1項1号に規定する家事上の経費に該当し、事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきではないとして、原告の平成20年分及び平成21年分の各所得税について更正処分及び各過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため、処分行政庁である立川税務署長の属する国を被告として、上記①ないし④の支出の一部は事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきであると主張し、本件各更正処分等の一部の取消しを求めた事案

評釈
熊谷洋平・税経通信 73巻10号28頁

裁判年月日  平成25年10月17日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(行ウ)638号
事件名  所得税更正処分等一部取消請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  確定  文献番号  2013WLJPCA10178007

東京都国立市〈以下省略〉
原告 X
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
代表者法務大臣 A
処分行政庁 立川税務署長 B
指定代理人 大口紋世ほか別紙1指定代理人目録のとおり

 

 

主文

1  立川税務署長が平成22年12月10日付けで原告に対してした平成21年分の所得税の更正処分のうち,総所得金額につき503万4557円,納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)11万4889円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち4万2000円を超える部分を取り消す。
2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  立川税務署長が平成22年12月10日付けで原告に対してした平成20年分の所得税の更正処分のうち,総所得金額につき212万4189円,納付すべき税額につき6万1100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち6000円を超える部分を取り消す。
2  立川税務署長が平成22年12月10日付けで原告に対してした平成21年分の所得税の更正処分のうち,総所得金額につき324万7256円,納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)39万4389円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち1万4000円を超える部分を取り消す。
第2  事案の概要
1  本件は,原告が,平成20年分及び平成21年分の所得税の確定申告及び修正申告において,事業所得の金額の計算上,① 原告が居住する住宅(以下「本件住宅」という。)に係る地代家賃(以下「本件地代家賃」という。),② 本件住宅に係る水道光熱費(以下「本件水道光熱費」という。),③ 原告の長男に係る義務教育代行費用(以下「本件教育費用」という。)及び④ 原告の長男に関する係争に係る弁護士費用(以下「本件弁護士費用」という。)の各支出の一部を必要経費に算入して申告したのに対し,立川税務署長から,それらの支出はいずれも所得税法45条1項1号に規定する家事上の経費(以下「家事費」ということもある。)に該当し,事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきではないとして,原告の平成20年分及び平成21年分の各所得税について更正処分(以下,平成20年分の所得税の更正処分を「平成20年分更正処分」,平成21年分の所得税の更正処分を「平成21年分更正処分」といい,平成20年分更正処分及び平成21年分更正処分を併せて「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税の賦課決定処分(以下,平成20年分の過少申告加算税の賦課決定処分を「平成20年分賦課決定処分」,平成21年分の過少申告加算税の賦課決定処分を「平成21年分賦課決定処分」といい,平成20年分賦課決定処分及び平成21年分賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各更正処分等」という。)を受けたため,処分行政庁である立川税務署長の属する国を被告として,上記①ないし④の支出の一部は事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきであると主張し,本件各更正処分等の一部の取消しを求める事案である。
2  関係法令の定め
別紙2のとおり
3  前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者
ア 原告は,本件住宅(駐車場部分を含む。)を賃料月額17万円で賃借し,夫のC(以下「C」という。),長男(平成9年生まれ)及び二男と共に,本件住宅に居住している。
本件住宅は2階建てであり,1階に約15畳のリビング・ダイニングキッチンと洗面所,トイレ及び浴室があり,2階に約6.5畳,5.5畳,5.7畳の合計3室の洋室がある。(甲10,12,乙1)
イ 原告は,平成20年及び平成21年当時,夫Cと共同で,① a株式会社の代理店として同社の生命共済商品及びサービス等の販売並びに多段階での傘下代理店の募集・教育・育成,② b生命保険株式会社の代理店として同社の生命保険商品の販売及び傘下代理店の募集,③ 株式会社cの代理店として同社の運営サイトを紹介するカードの配布の各業務(以下,これらの各業務を併せて「本件各業務」という。)をしていた。
ウ 夫Cは,平成21年3月24日付けで,D弁護士(以下「D弁護士」に対し,本件弁護士費用30万円(消費税込みで31万5000円)を支払った(支払の趣旨については争いがある。)。(甲8)
(2)  所得税の確定申告
原告は,法定申告期限内に平成20年分及び平成21年分の所得税について確定申告書を提出した。(甲6)
(3)  原告に対する所得税の確定申告の内容確認の調査(以下「本件調査」という。)
立川税務署長は,平成22年6月,原告の平成20年分及び平成21年分に係る所得税の調査を実施した。(甲6)
(4)  所得税の修正申告
原告は,平成22年11月25日,平成20年分及び平成21年分の各所得税に係る修正申告書(以下「本件各修正申告書」という。)を提出して各修正申告をした。
なお,原告は,上記各修正申告に係る所得税額等の計算において,次の各金額を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して所得税額等を算出した。(甲1の1及び2)
ア 地代家賃
本件地代家賃を,夫Cと2分の1ずつに按分した金額
イ 水道光熱費
本件水道光熱費の2分の1に相当する金額を,夫Cと2分の1ずつに按分した金額
ウ 義務教育代行費用(平成21年分のみ)
本件教育費用を,夫Cと2分の1ずつに按分した金額
エ 支払手数料(平成21年分のみ)
本件弁護士費用を,夫Cと2分の1ずつに按分した金額
(5)  本件各更正処分等
立川税務署長は,本件調査に基づき,平成22年12月10日付けで,原告の平成19年分以降の所得税に係る青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色申告承認取消処分」という。)をするとともに,上記(4)のアないしエの各金額は,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとして,本件各更正処分等をした。(甲2の1及び2,甲6)。
(6)  不服申立て
ア 原告は,平成23年1月31日付けで,立川税務署長に対し,本件各更正処分等を不服として,異議の申立てをした。(甲4,6)
なお,原告は,本件青色申告承認取消処分については,異議申立てをしていない。
イ 立川税務署長は,平成23年3月31日付けで,上記アの異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲4)
ウ 原告は,平成23年4月26日,上記イの異議決定を不服として審査請求をした。(甲6)
エ 国税不服審判所長は,平成24年3月13日,上記ウの審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲6)
オ 本件各更正処分等の経緯は,別紙3及び別紙4のとおりである。
(7)  本件訴えの提起
原告は,平成24年9月11日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)
4  被告が主張する本件における各課税処分の根拠等
本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張は別紙5のとおりである。
5  争点
本件の争点は,本件地代家賃,本件水道光熱費,本件教育費用及び本件弁護士費用の一部を原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができるか否かである。
6  争点に関する当事者の主張の要旨
(被告)
ア 所得税法45条1項は,「居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は,その者の(中略),事業所得の金額(中略)の計算上,必要経費に算入しない。」とした上で,同項1号は,「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」と規定している。そして,所得税法施行令96条は,「法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は,次に掲げる経費以外の経費とする。」とし,同条1号は,「家事上の経費に関連する経費の主たる部分が(中略),事業所得,(中略)を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費」と規定している。
そして,家事費とは,衣服費・食費・住居費・娯楽費・教養費等のように,個人の消費生活上の費用のことであり,家事上の経費に関連する経費(以下「家事関連費」という。)とは,必要経費と家事費の性質を併有している費用であるところ,① 衣服費・食費・住居費・娯楽費・教養費等のように,個人の消費生活上の費用である家事費は,事業所得の金額の計算上必要経費にすることはできず,② 必要経費と家事費の性質を併有している費用である家事関連費は,その主たる部分が業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明確に区分できる場合に,その部分に限って事業所得の金額の計算上必要経費に算入されることになる。
イ(ア) 本件地代家賃及び本件水道光熱費について
原告は,本件各業務を行うに際し,本件住宅の一部を使用している旨主張していることから,本件地代家賃及び本件水道光熱費は,事業所得に係る必要経費の要素と家事費の要素が混在しており,家事関連費に該当する。そうすると,本件地代家賃及び本件水道光熱費について,原告の事業所得の金額の計算上,必要経費に算入することができるというためには,その主たる部分が業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明確に区分できる場合であることが必要である。
しかしながら,そもそも,本件住宅が原告とその家族の生活の本拠であることからすると,原告が本件各業務の専用スペースであると主張するリビング,ダイニング・キッチンのシンクを除く部分,洗面,1階のトイレ及び2階の洋室1室を本件各業務のみに使用していると認めることはできない。また,原告が本件住宅を本件各業務に使用している部分を明確に区分する証拠は見当たらない。かえって,原告が本件地代家賃のうち事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきと主張する金額は,確定申告から不服申立てに至る経緯において変遷し,かつ,原告が本訴において主張する本件地代家賃の事業使用割合は60%であるが,本件水道光熱費の事業使用割合は50%であり,本件地代家賃と本件水道光熱費の事業使用割合が異なることについて原告は何ら合理的な説明をすることができていない。
以上のとおり,本件地代家賃及び本件水道光熱費は,その主たる部分が業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明確に区分できる場合に当たらないから,本件地代家賃及び本件水道光熱費を原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
(イ) 本件教育費用について
本件教育費用は,原告の長男に係る学習塾の費用や模擬試験の受験料等の支出であるところ,これらは,原告の長男に関する費用であって,原告の事業所得を生ずべき業務について生じた費用でないことは明らかである。また,一般教育は,本人の知識・教養の涵養,人格形成などを目的とし,かつ,父兄の負担で支弁されることが多いことから,教育費の支出は,家事費である性格が強いと解されており,本件教育費用は家事費に該当し,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
(ウ) 本件弁護士費用について
本件弁護士費用は,原告の長男が小学校の担任教師から暴行を受けたことに関して国立市教育委員会を訴えるために夫Cが弁護士に支出した費用であって,そもそも,原告の事業の収益が減少したことによる損害賠償を請求するために支払ったものと認めることはできない。
仮に,本件弁護士費用が,原告の本件各業務に係る売上げ減少による損害賠償と,本件教育費用に相当する額の損害賠償を求めるために弁護士に支出した費用であるとしても,上記(イ)のとおり,本件教育費用は,家事費であって,家事費に該当する損害賠償を求める部分に係る弁護士費用は,家事費に該当するから,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。仮に,本件弁護士費用のうち,売上げ減少による損害賠償を求める部分が事業所得の必要経費の要素を有しているとしても,本件弁護士費用は,事業所得に係る必要経費の要素と家事費(本件教育費用)の要素が混在する家事関連費に該当するため,本件弁護士費用を原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができるというためには,その主たる部分が業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明確に区分できる場合であることが必要である。しかしながら,本件弁護士費用が原告の事業の遂行上必要であることについて具体的な根拠を示しておらず,必要である部分についても明確に区分していないため,その主たる部分が業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明確に区分できる場合に該当しない。
(原告)
ア 本件地代家賃及び本件水道光熱費について
本件住宅のうち,本件各業務に使用する場所は明確に区分され,毎日,会議,食事会や,パーティー・ミーティングのために使用しているから,時間的にも家族団らんの場所として使用することは不可能である。本件住宅のうち1階のリビングルームに見立てた部屋は,ビジネス専用の集会場であり,置かれている家具什器類は,代理店や顧客に対して,原告が優雅な生活を送っている様子を見せるための高級なものであって,本件各業務のために購入したものであり,生活のためではない。本件住宅のうち2階の事務所スペースは,事務作業及び個別の打合せをするためのものであり,原告自身が寝室として使用するのは年1,2回しかない。そして,本件住宅の総面積87m2のうち,事業用として使用している部分の面積の合計は53m2であるから,本件住宅のうち本件各業務に使用している割合を60%と算定した。公認会計士も,本件住宅の使用状況を実際に確認した上で,原告の主張する使用割合が正しい旨の意見を述べている。また,近隣の駐車場使用料の相場は1万5000円から1万8000円であるため,1万円を駐車場使用料として算定した。
本件水道光熱費は,本件住宅の本件各業務に使用している割合と同率の60%が相当である。
イ 本件教育費用について
原告の長男は,小学校の担任教諭の暴力行為により心的外傷後ストレス障害(以下「PTSD」という。)を発症したが,国立市は憲法に規定されている原告の長男に義務教育を受けさせる義務を怠ったため,国立市に代わって原告の長男に義務教育に代わる教育を受けさせる必要が生じたが,原告自身が原告の長男を教育するとすれば,本件各業務により売上げを上げることができないことが明らかであったため,原告は,民間企業に依頼して原告に教育を受けさせた。本件教育費用を支払わなければ,原告は売上げを確保することができなかったから,本件教育費用は,売上げを上げるための営業支援費用であり,本件各業務の遂行上必要なものであるから,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。
ウ 本件弁護士費用について
原告の長男がPTSDを発症したことにつき,国立市が何の手当もしなかったために,原告は平成21年度の売上げが減少する損害を受けた。そのため,原告は,国立市に対し本件各業務に係る売上げの減少による損害賠償を求める訴訟を提起することを弁護士に委任した。本件弁護士費用は,そのために支払った着手金であるから,事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。
第3  当裁判所の判断
1ア  所得税法37条1項は,その年分の不動産所得の金額,事業所得の金額又は雑所得の金額(中略)の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨定め,同法45条1項は,「居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は,その者の(中略),事業所得の金額(中略)の計算上,必要経費に算入しない。」とした上で,同項1号は,「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」と規定している。そして,所得税法施行令96条は,「法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は,次に掲げる経費以外の経費とする。」とし,同条1号は,「家事上の経費に関連する経費の主たる部分が(中略),事業所得,(中略)を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費」と規定している。
イ  所得税法45条1項は,衣食住費,教養費,養育費,趣味娯楽費等のような家事費は,事業所得等に係る収入を得るために直接必要な費用ではなく,個人が消費生活を送る上で必要な費用を支出するいわば所得の処分とみるべきものであることから,事業所得等の金額の計算上必要経費への算入を認めないこととしているものと解される。そして,家事関連費は,事業所得等を生ずべき業務と関連して支出する費用という性質と上記家事費としての性質とを併せ持つものであるところ,上記のとおり,家事費については必要経費への算入を認める余地がないことから,所得税法施行令96条1号において,家事関連費を事業所得等の必要経費へ算入するためには,家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき収入を得るための業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明確に区分することができることが必要であると規定しているものと解される。
ウ  そして,家事関連費の支出について事業所得等を生ずべき業務の遂行上の必要性があるというためには,当該家事関連費の支出が上記業務の遂行との間に何らかの関連性があるというのみでは足りず,また,単に事業主が主観的に必要であると判断することだけでなく,その必要性が客観的にみて相当であることを要するというべきである。
エ  なお,所得税法施行令96条1号は,家事関連費について,その主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明確に区分することができる場合に,その部分に限って事業所得等の金額の計算上必要経費に算入されることとして,家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であることを必要経費に算入するための要件としているところ,所得税基本通達45-2は,所得税法施行令96条1号に規定する「主たる部分が不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは,その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとするが,当該必要な部分の金額が50%以下であっても,その必要である部分を明らかに区分することができる場合には,当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えないこととし,家事関連費のうち主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要でない場合についても必要経費への算入を認めることとしている。所得税基本通達45-2が設けられた理由は,所得税法施行令96条では,同条1号において,主たる部分が業務の遂行上必要であることを要件としている一方で,同条2号においては,「前号に掲げるもののほか,青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち,取引の記録等に基づいて,不動産所得,事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額に相当する経費」を必要経費に算入することができることとして,いわゆる青色申告者について家事関連費の主たる部分が業務の遂行上必要であるという要件を課していないところ,必要部分を区分することができる場合には,いわゆる白色申告者であるからといって必要経費の算入を認めないこととするのは不合理であるためと説明されており,家事関連費のうち必要経費への算入を認めるためには,当該金額が家事関連費の主たる部分を占めることが必ずしも必要であるとは解されていない。したがって,家事関連費のうち必要経費に算入することを認めるためには,当該金額が① 事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であること,及び,② その必要な部分の金額が明確に区分されていることの二つの要件を満たしていれば足りるものとして,以下検討することとする。
2(1)  本件地代家賃及び本件水道光熱費について
ア 本件調査の際の聴取書(乙1)によれば,本件地代家賃は,原告及びその家族が居住する本件住宅(駐車場部分を含む。)の賃料であり,本件水道光熱費は,本件住宅に係る水道・下水道代,電気代及びガス代の支払額の合計であると認められるところ,前提事実(1)ア,イのとおり,原告及びその家族は本件住宅を生活の本拠としている一方,原告は,本件各業務の遂行のために,事務所等を賃借しておらず,本件各業務を本件住宅において行っているものと認められるから,本件地代家賃及び本件水道光熱費は,家事関連費に該当する。したがって,本件地代家賃及び本件水道光熱費のうち,本件各業務の遂行上必要であり,その必要な部分の金額が明確に区分されている部分に限り,必要経費として算入することができることになる。
イ 前提事実(1)イのとおり,本件各業務の内容は,生命共済商品又は生命保険商品の販売や,傘下代理店の募集等であって,「1階部分の利用実績表」と題する平成21年分の手帳(甲11)によれば,原告は,夫Cと共同で,本件住宅において,代理店や顧客を招いて,商品説明やセミナー等を開催していたことが認められる。
この点,原告は,平成20年及び平成21年時点において,原告と夫Cは,本件住宅の1階の洗面所,トイレ,リビング・ダイニングキッチン(シンク部分を除く。)並びに2階の洋室のうちの1部屋(以下「リビング等」という。)を本件各業務の専用スペースとして常時使用していた旨主張し,これを裏付けるものとして,1階ダイニングキッチンを「セミナールーム」「テーブルプレゼンテーションルーム」,リビングを「食事会,軽いパーティー,酒宴,茶会」「来客用パーティールーム」「来客用おもちゃ 絵本 ゲーム・DVD置場」,2階5.7畳の洋室を「事務所」「仕事用衣装置場」「主要Agとのミーティングルーム」と記載した本件住宅の間取り図(甲12)及び本件住宅内の写真(甲13),本件住宅の使用状況を現認したという公認会計士の意見書(甲7)を提出する。
しかしながら,前提事実(1)アのとおり,本件住宅は,全体として居住の用に供されるべき3LDKの2階建て住宅であり,その構造上,本件住宅の一部について,居住用部分と事業用部分とを明確に区分することができる状態にないことが明らかであり,原告がその家族と共に本件住宅に居住していることを併せて考えると,平成20年及び平成21年時点において,原告と夫Cが,本件住宅のリビング等を本件各業務の専用スペースとして常時使用し,それ以外の用向きには使用していなかったとは考えられず,むしろ,居宅である本件住宅において,原告が家族と共に家庭生活を営みつつ,本件各業務及びこれに関連する業務などを行っていたものと認めるのが相当である。
したがって,本件住宅のうちのリビング等が,本件各業務のためのいわば専用スペースとして使用されていたことを前提として,本件地代家賃のうち本件住宅の全面積にリビング等が占める割合に相当する部分を本件各業務の遂行上必要な金額であるという原告の主張を採用することはできない。
エ また,原告は,代理店や顧客を招いて,商品説明やセミナー等を毎日のように開催し,その間はリビング等を個人的に使用することはできなかった旨主張し,その根拠資料として顧客等の氏名を記載した「1階部分の利用実績表」と題する平成21年分の手帳(甲11)を提出する。
しかしながら,甲11は,手帳らしきものに時刻と顧客名と思われるものが記載されているにすぎず,甲11の記載からは,原告が開催したという商品説明やセミナー等の内容や開催に要した時間の詳細は不明である。したがって,仮に,原告が主張するとおり,商品説明やセミナー等のためにリビング等を使用し,当該時間中は,リビング等を原告ら家族の家事のために使用することができないため,当該時間中はリビング等が本件各業務専用に使用されていたことがあったとしても,本件地代家賃のうちで本件各業務の遂行上必要な部分を明確に区分することができないものといわざるを得ない。
オ さらに,原告は,本件地代家賃のうち,近隣の駐車場使用料の相場相当額についても必要経費に算入することができる旨主張するところ,前提事実(1)アのとおり,本件住宅に附属する駐車場部分の利用代金は,本件地代家賃に含まれているものであるが,本件各業務の内容に照らすと,本件各業務の遂行に当たり,原告が所有する車両を使用する必要があるのか不明である。仮に,本件各業務の遂行のために原告が所有する車両を使用する機会があるとしても,本件住宅が原告らの自宅であり,それに附属する駐車場に駐車する当該車両が本件各業務の遂行のみに使用されるものとは考え難く,原告の主張に照らしても,当該車両を本件各業務の遂行に使用する頻度や時間も明らかではないから,本件地代家賃のうちの駐車場代金相当額について,本件各業務の遂行上必要なものとして明確に区分することができるということはできず,当該相当額を事業所得の必要経費へ算入することはできないものといわざるを得ない。
カ 本件水道光熱費についても,本件地代家賃についてと同様に,本件住宅のうち本件各業務の遂行のために必要であり,その部分を明確に区分することのできる場合には必要経費に算入することができるものと解すべきところ,上記のとおり,本件住宅のうち本件各業務の遂行のために使用されるいわば専用スペースとして使用されていた部分はなく,リビング等が本件各業務に使用されていた実態も明らかではないから,本件水道光熱費についても,本件各業務の遂行のために必要な部分として明確に区分することができるものはなく,必要経費に算入することはできないというほかない。
(2)  本件教育費用について
本件調査の聴取書(乙1)によれば,本件教育費用は,長男の学習塾の費用や模擬試験の受験料等であると認められるところ,これらの費用は,長男の教育費用という個人の消費生活上の費用そのものであって,家事費に該当する。したがって,本件教育費用を必要経費に算入することはできない。
なお,診断書(甲10)によれば,原告の長男は,平成20年12月,同年4月頃に生じた心的外傷によりPTSDに罹患していると診断されていることが認められ,小学校に通学することができなかった期間があることが推認されるものの,これらの事実関係のみからは,本件教育費用と本件各業務との関連性が明らかではない。
この点,原告は,本件教育費用を支払わなければ原告は売上げを確保することができなかった旨主張するが,原告の主張は,抽象的な必要性を指摘するにすぎず,具体的な根拠に乏しいから,本件教育費用の支出について客観的な必要性を根拠付けるものとはいえない。
(3)  本件弁護士費用について
ア 所得税法37条1項によれば,その年分の事業所得の金額の計算上,総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額は,必要経費に算入すべきこととされているところ,一般に,事業を行う者が,事業所得による収益の補填を目的として,事業所得の減少分に係る損害賠償請求訴訟を提起することを弁護士に依頼した場合には,その費用は,総収入金額を得るため直接に要した費用ということができるから,その金額は必要経費に算入することができるというべきである。
イ 原告は,本件弁護士費用は,国立市に対し,本件各業務に係る売上げ減少による損害賠償を求める訴訟を提起することを弁護士に委任した際の着手金である旨主張し,第2回口頭弁論期月において,弁護士に委任したのは休業損害の損害賠償に関する交渉のみであって,長男が被った損害の損害賠償請求に関する交渉は弁護士に委任していない旨述べ,「弁護士事務所の確認書」と題する書面(甲8)には,夫Cが,平成21年3月24日,D弁護士に対し,国立市に対する事業の休業損害賠償請求訴訟を予定した交渉案件の着手金として30万円(税別)を支払ったことにつき,事実関係に相違ない旨のD弁護士による記名押印がされていることが認められる。
この点,被告は,本件弁護士費用は,原告の長男が小学校の担任教師から暴力を受けたことに関して国立市教育委員会を訴えるために弁護士に支出した費用であって,本件各業務の遂行上生じた紛争又は本件各業務の用に供されている資産につき生じた紛争を解決するために支出した費用には該当せず,必要経費に算入することはできない旨主張し,その根拠として,本件調査時の聴取書(乙2)によれば,夫Cは,本件調査時に,本件弁護士費用は,原告の長男が小学校の担任教師から暴力を受けたことに関して国立市教育委員会を訴えるために弁護士に支出した費用である旨述べていること,国立市教育委員会に対する照会・回答書(乙4)によれば,国立市教育長は,東京国税局長からの照会に対し,原告から事業収益が減少したことによる損害賠償請求を受けたことがない旨回答していること,乙4に添付された国立市教育委員会に送付された平成21年7月7日付けのD弁護士作成に係る質問書によれば,D弁護士の原告からの受任事項として,平成20年4月又は5月に,原告の長男が担当教師から暴力的な態度や不適切な発言をされたために,精神的苦痛を受けた件と記載されており,収益の減少による損害賠償請求の記載がないことを指摘する。
しかしながら,審査請求時の担当審判官からの釈明書に対する回答書(乙5)によれば,夫CとD弁護士は,訴訟提起前に,担当教師が原告の長男に対して行った行為を確認し,国立市教育委員会に対し,原告の長男のPTSDの原因が担当教師による暴力行為であったことを認めさせることをまず予定していたものと認められるから,国立市教育委員会に対して送付された上記質問書に,事業収益の減少に伴う損害賠償請求をする旨の記載がなかったとしてもあながち不自然であるとはいえない。また,原告は,実際には国立市を被告とする事業収益の減少に伴う損害賠償請求訴訟を提起してはいないところ,原告及び夫C作成に係る平成22年11月25日付けの立川税務署長宛ての書面(乙6)によれば,担当教師に対する事情聴取が終わった段階で,原告と国立市教育委員会との間の交渉は終了したことが推認され,その後は,国立市に対し,具体的な金額を提示した損害賠償請求がされなかった可能性が高いから,原告がD弁護士に委任した事項が事業収益の減少に伴う損害賠償請求訴訟の提起を内容とする交渉であったとしても,上記乙4の照会・回答書の記載内容とは必ずしも矛盾するものとはいえない。むしろ,平成22年11月25日付けの立川税務署長宛ての書面(乙6),異議申立書(甲3)及び審査請求書(甲5)によれば,原告は,本件修正申告時から本件訴訟まで一貫して,D弁護士に委任したのは,事業収入の減少に伴う損害賠償請求訴訟提起である旨主張していることに照らすと,本件調査時の聴取書(乙2)における本件弁護士費用は,原告の長男が小学校の担任教師から暴力を受けたことに関して国立市教育委員会を訴えるために弁護士に支出した費用である旨の記載は,不正確なものといわざるを得ない。
ウ 以上によれば,本件弁護士費用は,原告が主張するとおり,国立市に対し,本件各業務に係る売上げの減少による損害賠償を求める訴訟を提起すること及びそのための事前交渉を弁護士に委任した際の着手金である旨認めるのが相当であり(なお,裁決書(甲6)によれば,国税不服審判所長も裁決において同様の認定をしている。甲6の9,12,13頁参照),本件調査の際の聴取書(乙2)によれば,原告と夫Cは,本件各業務に関する必要経費を原告名義又は夫C名義で支払っていることが認められるから,本件弁護士費用の2分の1に相当する額については,原告の必要経費と認めるのが相当である。
3  本件各更正処分等の適法性
(1)  平成20年分の所得税について
ア 本件地代家賃及び本件水道光熱費は,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないことになるから,原告に課すべき平成20年分の所得税の額は,別紙5の1(1)のとおりとなる(なお,平成20年分更正処分において必要経費に該当しないとされたその他の経費のうちの携帯電話使用料金の過大計上額については,本訴において,原告は必要経費に該当する旨主張しておらず,証拠上も,これを必要経費に該当すると認めることはできない。)。したがって,原告の平成20年分の所得税の額は,平成20年分更正処分における納付すべき税額と同額であると認められるから,平成20年分更正処分は適法と認められる。
イ 原告が平成20年分更正処分により新たに納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実が平成20年分更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについては,国税通則法65条4項に定める正当な理由があるとは認められないから,新たに納付すべきこととなった所得税の額については,過少申告加算税が課されることになる。したがって,原告に課すべき過少申告加算税の額は,別紙5の3(1)のとおりとなり,この金額は,平成20年分賦課決定処分の額と同額であるから,平成20年分賦課決定処分は適法であると認められる。
(2)  平成21年分の所得税について
ア 本件地代家賃,本件水道光熱費及び本件教育費用は,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないが,本件弁護士費用の2分の1に相当する額は必要経費に算入すべきことになるから,原告に課すべき平成21年分の所得税の額は,別紙6のとおりマイナス(還付金の額に相当する税額)11万4889円となる(なお,平成21年分更正処分において必要経費に該当しないとされたその他の経費のうちの携帯電話使用料金の過大計上額及び平成21年分更正処分において減額された所得控除の額のうちの医療費控除の額については,本訴において,原告はこれらを争う旨の主張をしておらず,証拠上も,その他の経費のうちの上記金額が必要経費に該当すると認めることはできず,医療費控除の額が平成21年分更正処分における額を上回るものと認めることはできない。)。そして,この金額は,平成21年分更正処分における所得税の額マイナス(還付金の額に相当する税額)8万3489円を下回るから,平成21年分更正処分は所得税の額マイナス11万4889円を超える部分について違法となる。
イ 原告が平成21年分更正処分により新たに納付すべきこととなった税額のうち,上記アの金額以下の部分(マイナス11万4889円-マイナス53万6789円=42万1900円)については,その計算の基礎となった事実のうちに平成21年分更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められないから,平成21年分更正処分により納付すべきこととなった所得税の額のうち上記アの金額以下の部分(42万1900円)については,同条1項に基づいて過少申告加算税が課されることになるところ,原告に課すべき過少申告加算税の額は,別紙6のとおり4万2000円となり,この金額は,本件賦課決定処分の過少申告加算税の額である4万5000円を下回るから,平成21年分賦課決定処分のうち同金額を上回る部分は違法となる。
第4  結論
よって,原告の請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 川神裕 裁判官 内野俊夫 裁判官 日暮直子)

 

別紙1
指定代理人目録〈省略〉

〈以下省略〉

 

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