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「営業支援」に関する裁判例(52)平成26年12月16日 東京地裁 平24(ワ)28083号 損害金等請求事件

「営業支援」に関する裁判例(52)平成26年12月16日 東京地裁 平24(ワ)28083号 損害金等請求事件

裁判年月日  平成26年12月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)28083号
事件名  損害金等請求事件
裁判結果  請求認容  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA12168001

評釈
小田弘昭・金法 2019号84頁
土岐孝宏・法セ 726号127頁
浅井弘章・銀行法務21 786号57頁
浅井弘章・銀行法務21 798号40頁

参照条文
民法90条
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項5号イ
銀行法施行規則13条の7

裁判年月日  平成26年12月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)28083号
事件名  損害金等請求事件
裁判結果  請求認容  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA12168001

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 株式会社三菱東京UFJ銀行
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 近藤基
同 遠藤直子
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 ミュージアム一九九九株式会社
同代表者代表取締役 Y1
東京都練馬区〈以下省略〉
被告 Y1
東京都練馬区〈以下省略〉
被告 Y2
被告ら訴訟代理人弁護士 成海和正

 

 

主文

1  被告らは、原告に対し、連帯して1億5582万7804円及びうち1億3989万5674円に対する平成24年9月1日から、うち797万2058円に対する同月11日から、各支払済みまで年14パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。
2  訴訟費用は、被告らの負担とする。
3  この判決は、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は、原告が、被告ミュージアム一九九九株式会社(以下「被告会社」という。)と締結した、固定金利と変動金利を交換してその差額を決済する金利スワップ取引(以下「本件金利スワップ取引」という。)に係る平成18年9月28日付け契約(以下「本件契約1」という。)及び平成19年3月29日付け契約(以下「本件契約2」といい、本件契約1と併せて「本件各契約」という。)に基づき、被告会社に対し、①本件契約1に係る上記差額の未収金4239万8904円及び同契約の中途解約による損害等9749万6770円の合計1億3989万5674円、②上記差額未収金に対する確定遅延損害金619万2081円、③上記①に対する本件契約1解約日の翌日である平成24年9月1日から支払済みまで約定の年14パーセントの割合(年365日の日割計算)による遅延損害金、④本件契約2に係る上記差額の未収金797万2058円、⑤上記差額未収金に対する確定遅延損害金176万7991円並びに⑥上記④に対する最終の相殺計算実行日の翌日である同月11日から支払済みまで約定の年14パーセントの割合(年365日の日割計算)による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告会社の上記各債務を連帯保証した被告Y1(以下「被告Y1」という。)及び被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し、各保証契約に基づき、①から⑥までと同額の連帯保証債務の履行を求めた事案である。
1  争いのない事実等
以下の事実は、証拠(書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められるか、当事者間に争いがない。なお、争いのない事実については認定根拠を摘示しない。
(1)  当事者
ア 原告は、銀行法に基づき銀行業を営む銀行である(甲1。なお、原告は、平成18年1月1日に商号を「株式会社東京三菱銀行」から現在の商号に変更している。)。
イ 被告会社は、飲食店の経営等を目的とする株式会社である(甲2)。
ウ 被告Y1は、平成14年7月1日に被告会社の取締役に就任し、平成17年1月11日から被告会社の代表取締役を務めている者である(甲2)。
エ 被告Y2は、平成14年4月8日に被告会社の取締役に就任し、同年9月3日から平成19年7月17日まで被告会社の代表取締役を務め、同日に被告会社の取締役を辞任した者である(甲2の2)。
(2)  ホテル事業計画
被告会社は、平成14年に東京都新宿区○○a丁目24番4及び同番33所在の土地(以下「本件土地」という。)を購入し(乙2)、同土地上に建物(以下「本件建物」という。)を建設し、本件建物を一括賃貸してその賃借人がホテル事業等を行う事業計画(以下「○○計画」という。)を有していた。
原告(取引店恵比寿支店)は、被告会社から、○○計画に関する融資の依頼を受けていた。当初の事業計画では、建物建築代金は約12億円と予定されており、うち7億円は原告からの借入れにより調達し、その余の約5億円については被告会社の自己資金(被告会社ないしその関連会社が所有する他の不動産の売却を予定していた。)で調達することとなっていた。なお、事業計画では、原告からの融資総額は20億円となることが想定されていた。また、当該貸付けへの返済原資は、被告会社の建物賃借人(ホテル事業者)からの賃料収入を予定していた。
(3)  銀行取引約定
被告会社は、平成17年12月8日、原告との間で、以下の内容を含む銀行取引約定(以下「本件銀行取引約定」という。)を締結した(甲3)。
ア 適用範囲(1条)
原告・被告会社間の手形貸付、手形割引、証書貸付、当座貸越、支払承諾(保証委託取引等)、外国為替、金融等デリバティブ取引、保証取引その他被告会社が原告に対して債務を負担することとなる一切の取引
イ 損害金(3条4項)
被告会社は、原告に対する債務を履行しなかった場合には、その支払うべき金額に対し年14パーセントの割合(年365日の日割計算)による損害金を支払う。
ウ 期限の利益喪失(5条2項1号)
被告会社が原告に対する債務の一部でも履行を遅滞したときは、原告からの請求によって、被告会社は、原告に対する一切の債務について期限の利益を失う。
エ 相殺(7条1項、3項)
期限の到来、期限の利益の喪失、買戻債務の発生、求償債務の発生その他の事由によって、被告会社が原告に対する債務を履行しなければならない場合には、原告は、その債務と被告会社の預金その他原告に対する債権とを、その債権の期限のいかんに関わらず、いつでも相殺することができる。この場合、債権債務の利息、割引料、清算金、損害金等の計算については、その期間を計算実行の日までとする。
(4)  手形貸付
原告は、平成17年12月15日、被告会社に対し、手形貸付の方式により13億円を貸し付けた。被告会社は、本件土地を担保に東芝ファイナンス株式会社(以下「東芝ファイナンス」という。)から資金を借り入れていたところ、原告からの上記13億円の借入金で東芝ファイナンスからの借入れを返済した。
同日、原告は、上記手形貸付債権を含む被告会社との銀行取引に基づく債権を担保するため、本件土地について、極度額14億円の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)の設定を受けた(乙2)。また、同日、被告会社は、原告に対し、本件建物を新築した場合には、本件建物を竣工と同時に遅滞なく追加担保として原告に差し入れ根抵当権設定登記を行う旨の念書を差し入れた(乙3)。
(5)  社債発行
被告会社は、平成17年12月29日、原告を総額引受人として、総額13億円の社債(適格機関投資家限定無担保社債、償還期日平成19年12月28日。以下「本件社債」という。)を発行した。本件社債の利息は変動金利により計算することとされており、具体的には、第1回利息期間の利率は年0.21パーセント、以降は基準金利(利息基準日における東京時間の午前11時時点のTELERATE画面上の58143頁に提示される“TOKYO INTERBANK OFFERD RATE-JAPANESE YEN DEPOSIT”の“BTM”の期間6か月物の国内円オファードレート)に年率0.1パーセントを加えた利率とされていた。
(以上につき、甲4)
被告会社は、本件社債の発行により得た資金で上記13億円の手形貸付による借入金を返済し、被告会社の原告に対する借入れは、上記手形貸付から本件社債へとシフトされた。なお、本件社債は、被告会社が本件社債の償還期日に原告から更に借換えを行い、本件土地上の建物が完成した後に長期貸付にシフトすることが予定されていた。
(6)  本件契約1
ア 原告恵比寿支店の行員であるB(以下「B」という。)及びC(以下「C」という。)は、平成18年9月26日、被告会社の本社を訪問し、被告Y2に対し、期間10年、想定元本10億円、年4.15パーセントに金利を固定化することを内容とする本件契約1を提案した(甲8)。本件契約1の取引期間が10年とされたのは、上記(5)のとおり、○○計画に関する借入れの返済期間が10年以上の長期となることが予定されていたためである。
イ 原告及び被告会社は、同月28日、以下の内容を含む金銭の相互支払契約(本件契約1)を締結した(甲5~8)。
(ア) 想定元本金額
10億円
(イ) 取引期間
平成18年10月2日から平成28年9月30日まで
(ウ) 原告の支払
原告は、被告会社に対し、各支払日に、以下の方法により算出した金額を支払う。なお、3か月円TIBOR(T-58143)とは、各計算期間について、当該計算期間初日の2東京銀行営業日(東京において銀行が営業を行い、かつ銀行間取引市場が開かれている日)前における東京時間午前11時現在の金利として、TELERATE画面上の“58143”頁に提示される“TOKYO INTERBANK OFFERED RATE-JAPANESE YEN DEPOSIT”の原告の期間3か月物の円金利(年率)を意味する(以下同じ。)。
a 第1回支払日
想定元本金額×2.095パーセント×当該計算期間の実日数÷365
b 第2回以降の支払日
想定元本金額×(3か月円TIBOR(T-58143)+1.685パーセント)×当該計算期間の実日数÷365
(エ) 被告会社の支払
被告会社は、原告に対し、各支払日に、以下の方法により算出した金額を支払う。
想定元本金額×4.15パーセント×当該計算期間の実日数÷365
(オ) 支払日
平成18年12月31日を第1回とし、以降平成28年9月30日までの毎年3月、6月、9月及び12月の各末日。ただし、これらの日が銀行営業日でない場合は、直前の銀行営業日とする。
(カ) 支払方法
原告及び被告会社が、同一の支払日に同一の通貨で支払債務を相互に負う場合には、取引確認書に別段の定めがない限り、差引計算してその差額を決済する。
(キ) 解約
原告又は被告会社について本件銀行取引約定5条2項各号(ただし、原告については5号を除く。)の事由が1つでも生じた場合には、相手方は請求によって解約できる。
(ク) 解約による費用等の負担
取引の解約により生じた費用、手数料及び解約当事者の被る損害(以下「中途解約損害等」という。)については、あらかじめ書面により別段の取り決めをしない限り、全て不履行当事者がこれを負担し、解約当事者が別途支払日を合理的に定める場合を除き、直ちに支払う。
中途解約損害等は、3つの方法のうちから解約当事者が選択したものにより算定する。上記方法の1つは、解約当事者が選んだ市場参加者との間で、解約がなかったならば存続したであろう本件契約1の残存期間につき代替の契約を締結するか又は締結すると仮定した場合に要する一切の費用、手数料及び損害を算定する方法(以下「本件計算方法」という。)である。
(ケ) 遅延損害金
原告又は被告会社が相手方に対して支払うべき金額の支払を遅延した場合で、当該金額が円貨のときには、支払を行うべき日から遅延した支払を全て履行した日までの期間につき、原告又は被告会社は相手方に対して支払うべき金額に対する年14パーセント又は相手方の指定の銀行(原告が相手方である場合には原告を含む。)の調達レートに年2パーセントを加算した割合のうち、いずれか高い割合を乗じて算出した損害金を支払う。この場合の計算方法は、年365日の日割計算とする。
(7)  工事請負契約
被告会社は、平成18年12月20日、日本国土開発株式会社との間で、本件建物建築の工事請負契約(以下「本件請負契約」という。)を代金14億7000万円(消費税相当額込み)で締結した(乙21)。
(8)  証書貸付
原告は、本件請負契約代金の着手金支払を資金使途として、平成18年12月21日、被告会社に対し、最終弁済期限を平成19年12月28日と定めて、証書貸付の方式により2億円を貸し付けた(以下「本件証書貸付」という。甲29、30)。なお、本件証書貸付に係る証書(甲29)には、利率として年2.125パーセントと記載されていた(甲29)。
原告及び被告会社は、平成18年12月21日、本件根抵当権の極度額を22億5000万円に増額することを合意した(乙2)。
(9)  本件契約2
ア 原告は、平成19年2月27日頃、被告会社に対し、期間10年、想定元本5億円、年3.965パーセントに金利を固定化する内容の金利スワップ取引を提案したところ(乙10)、被告会社(被告Y2)は、これを断った。
イ B及びCは、同年3月28日、被告会社の本社を訪問し、被告Y2に対し、期間5年、想定元本3億7000万円、年3.705パーセントに金利を固定化することを内容とする本件契約2を提案した(甲10)。
ウ 原告及び被告会社は、同月29日、以下の内容を含む金銭の相互支払契約(本件契約2)を締結した(甲5、6、9、10)。
(ア) 想定元本金額
3億7000万円
(イ) 取引期間
平成19年4月2日から平成24年3月30日まで
(ウ) 原告の支払
原告は、被告会社に対し、各支払日に、以下の方法により算出した金額を支払う。
a 第1回支払日
想定元本金額×2.375パーセント×当該計算期間の実日数÷365
b 第2回以降の支払日
想定元本金額×(3か月円TIBOR(T-58143)+1.715パーセント)×当該計算期間の実日数÷365
(エ) 被告会社の支払
被告会社は、原告に対し、各支払日に、以下の方法により算出した金額を支払う。
想定元本金額×3.705パーセント×当該計算期間の実日数÷365
(オ) 支払日
平成19年6月30日を第1回とし、以降平成24年3月30日までの毎年3月、6月、9月、12月の各末日。ただし、これらの日が銀行営業日でない場合は、直前の銀行営業日とする。
(カ) 支払方法及び遅延損害金
本件契約1と同じ。
(10)  一部返済
被告会社は、平成19年3月30日、原告に対し、本件証書貸付に係る借入金の弁済として1億2700万円を返済した(弁論の全趣旨)。
(11)  手形貸付
原告は、被告会社に対し、平成19年4月4日に1100万円(弁済期日同年12月28日)、同年11月29日に1億4700万円(弁済期日同年12月28日)、平成20年1月31日に1300万円(弁済期日同年3月31日)を、いずれも本件請負契約代金の一部の支払を資金使途として、手形貸付の方法により貸し付けた(乙16~18)。
なお、原告及び被告会社は、平成19年12月26日、当時における被告会社の原告に対する残債務総額15億3100万円を1本の手形貸付に切り替え(弁済期日平成20年3月31日)、借入利率を変動金利(短期プライムレート連動長期基準金利)とする旨合意した(乙19)。また、同日、当時における被告会社の原告に対する残債務総額15億4400万円を1本の手形貸付(弁済期日同年6月30日)に切り替え、借入利率を変動金利(短期プライムレート連動長期基準金利(3年超))とする旨合意した(乙11)。
(12)  追加融資の拒否
原告は、平成20年11月6日、被告会社からの○○計画に関する追加融資の申出を断った。
(13)  本件建物の完成
本件建物は、平成20年11月17日に新築され、原告は、同年12月10日、本件建物につき追加担保の提供を受け、本件根抵当権の共同担保とした(乙4)。
(14)  連帯保証契約
ア 原告及び被告Y1は、平成20年12月5日、書面をもって、被告Y1が本件銀行取引約定に基づく被告会社の原告に対する一切の債務について、21億円を極度額として連帯保証する旨の連帯保証契約を締結した(甲11)。
イ 原告及び被告Y2は、同日、書面をもって、被告Y2が本件銀行取引約定に基づく被告会社の原告に対する一切の債務について、21億円を極度額として連帯保証する旨の連帯保証契約を締結した(甲12)。
(15)  全額返済
ア 原告及び被告会社は、平成22年1月29日まで、上記残債務総額につき、6か月以内の期間内で借入更新(最終更新の弁済期日は平成22年7月30日)を繰り返した(乙25)。
イ 被告会社は、同月28日、中國信託商業銀行をアレンジャーとするシンジケートローンにより35億円を利息を変動金利として借り入れ(甲24、乙14)、同日、原告に対し、残債務全額を返済した。
(16)  本件各契約の不履行等
被告会社は、平成22年9月30日以降、本件各契約に基づく債務の履行を行わなかった。
本件各契約の約定に従って、同日以降の各支払日(ただし、本件契約1については平成24年6月支払分まで、本件契約2については取引終了日まで)において原告が支払う変動金利と被告会社が支払う固定金利とを計算すると、本件契約1について別紙1金利スワップ取引受払金額一覧記載のとおり、本件契約2について別紙2金利スワップ取引受払金額一覧記載のとおり、各「受払日欄」記載の支払日に対応する「お客さま受取利息」(原告が支払う変動金利)及び「お客さま支払利息」(被告会社が支払う固定金利)記載の各金額となり(甲20)、これらを差引計算すると、被告会社が原告に対し、本件契約1につき4239万8904円、本件契約2につき1064万1301円の各差額金を支払うこととなる。
(17)  解約及び相殺の意思表示
ア 原告は、被告会社に対し、平成24年7月25日、本件契約1に基づく債務の履行を催告したが(甲13)、被告会社が履行しなかったので、同年8月31日、本件契約1を解約する旨の意思表示をした(甲14)。
イ 原告は、同月30日、被告会社に対し、本件契約2に基づく差額の支払債務(1064万1301円)と、被告会社の原告に対する預金債権3万0878円とを、同月29日を計算実行日として対当額で相殺する旨の意思表示を行った(甲15)。
原告は、同月30日、被告Y1に対し、本件契約2に基づく差額の支払債務(1064万1301円)についての原告の被告Y1に対する保証債務履行請求権と被告Y1の原告に対する預金債権122万7028円とを、同月29日を計算実行日として対当額で相殺する旨の意思表示を行った(甲16)。
ウ 原告は、同月30日、被告Y2に対し、本件契約2に基づく差額の支払債務(1064万1301円)についての原告の被告Y2に対する保証債務履行請求権と被告Y2の原告に対する預金債権121万1337円とを、同月29日を計算実行日として対当額で相殺する旨の意思表示を行った(甲17)。
エ 原告は、同年9月11日、被告Y2に対し、本件契約2に基づく上記イ及びウの相殺後の残債務(817万2058円)についての原告の被告Y2に対する保証債務履行請求権と被告Y2の原告に対する預金債権20万円とを、同月10日を計算実行日として対当額で相殺する旨の意思表示を行った(甲18)。
(18)  約定遅延損害金
本件各契約に従った場合、遅延損害金利率は年14パーセント(年365日の日割計算)であり(甲3)、本件契約1の差額未収金に対する解約日である平成24年8月31日までの確定遅延損害金は、別紙3損害金計算書1記載の確定損害金合計欄記載のとおりとなる。また、同じく本件契約2の差額未収金に対する最終の相殺の計算実行日である同年9月10日までの確定遅延損害金は別紙3損害金計算書2記載の確定損害金合計欄記載のとおりとなる。
(19)  中途解約損害等
本件契約1の解約に伴う中途解約損害等の算定方法につき、原告は、本件計算方法を選択し、将来の未履行部分について、被告会社の支払う固定金利を算出し、原告の支払う変動金利は、各支払日ごとに解約時点の市場数値に基づいて算出される理論値を用いて算出し、両金額について割引率を使用して現在価値に引き直した結果、中途解約損害等の額は9749万6770円と算定される(甲19、弁論の全趣旨)。
2  争点及びこれに対する当事者の主張
(1)  本件各契約が原告による20億円の融資の不実行を解除条件とするものかどうか(争点(1))
ア 被告らの主張
原告と被告会社との間では、○○計画に関して原告が被告会社に対して総額20億円の融資を実行することが合意されていたところ、本件各契約は、同融資がされないと確定することを解除条件として締結された。そして、原告が、平成20年11月6日、○○計画に関する被告会社からの追加融資の申出を断り、同条件が成就したことにより、本件各契約は効力を失った。
イ 原告の主張
原告は、被告会社から○○計画に関する融資の依頼を受け、当初の事業計画どおりに事業が進行するのであれば、事業の進捗に応じて総額20億円の融資を前向きに検討することも可能であることを被告会社に伝えていたにとどまり、総額20億円の融資を実行することを合意又は約束した事実はないから、それを前提とした解除条件の合意も成立していない。
(2)  本件各契約が原告の優越的地位を濫用して締結された公序良俗に違反する無効なものかどうか(争点(2))
ア 被告らの主張
(ア) 本件各契約締結時、本件土地には極度額14億円又は22億5000万円の根抵当権が既に設定されており、本件建物は建築工事着工前又は進行中であったから、被告会社が○○計画を進めるための資金を他の銀行から調達することは、およそ不可能な状況にあった。被告会社にとって、原告から20億円の融資を受けられないことは○○計画の破綻ひいては被告会社の経営危機に直結し、原告は、被告会社に対し、融資取引上の優越的地位にあった。
(イ) そして、本件金利スワップ取引は被告会社にとって必要も利益も全くなかったにもかかわらず、原告担当者らが頻繁に被告会社を訪問するなどして激しい売り込みを行った。被告会社は、本件金利スワップ取引を拒否したときに被る不利益を恐れて、本件各契約の締結に応じざるを得なかった。
(ウ) このように本件各契約は、原告が、被告会社に対する優越的地位を利用して、正当な商慣習に照らして不当に締結したものであるから、独占禁止法2条9項5号イに該当する。そして、原告は、本件金利スワップ取引で約2億5000万円もの莫大な利益を見込み、その反対局面として被告会社が同額の損害を被ることを認識していたか、又は認識することができたにもかかわらず、これを秘匿して本件各契約を締結しており、その違法性の程度は悪質・重大であるから、本件各契約は、公序良俗に反するものとして無効である。
イ 原告の主張
原告は、○○計画に関する融資が長期借入れとなることが予定されていたことから、変動金利による金利上昇のリスクをヘッジするために本件金利スワップ取引を提案した。そして、被告会社も上記リスクを危惧していたことから、本件金利スワップ取引の内容及びリスクをよく理解した上で、本件各契約を締結したのであって、本件金利スワップ取引の導入には十分な合理性があった。また、被告会社は、原告以外の銀行とも借入取引を行っており、原告からの融資を受けられない場合に、他行からの融資を受けることは決して困難ではなかった。
したがって、本件各契約は、原告が優越的地位を濫用したことによって締結されたものではない。
(3)  本件各契約の締結に当たり、原告に、①交換対象である固定金利及び変動金利の設定根拠、②被告会社に予想される損失見込額及び利益見込額並びに③本件各契約の解約時の清算金見込額について説明義務違反があり、本件各契約が無効であるかどうか(争点(3))
ア 被告らの主張
原告は、金融取引の専門家であり、被告会社を本件金利スワップ取引に誘引し交換金利を一方的に指定した者の責任として上記①から③までについて説明義務を負う。これは、銀行が顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえて重要な事項を顧客に説明すべき義務を負い(銀行法施行規則13条の7参照)、金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針」にも銀行の説明義務が定められていることからも導かれる。
そうであるにもかかわらず、原告は、本件各契約の締結に際し、上記①から③までについて説明をしなかった。
被告会社は、本件各契約を締結すべきか否かの判断の前提となる重要な情報について説明を受けることがないまま、本件各契約を締結したことにより莫大な損失を被っており、原告の説明義務違反は重大であるから、本件各契約は無効となる。
イ 原告の主張
本件金利スワップ取引に当たり、原告に上記①から③までについて説明する義務はない。
また、仮に上記①から③までについて説明義務が存在するとしても、上記③について、原告は説明義務を果たしている。
そもそも、仮に上記①から③までについて説明義務違反があったとしても、そのために本件各契約が無効となることはない。
(4)  被告会社が原告に対する借入金債務を全額返済したことにより、本件金利スワップ取引が終了したかどうか(争点(4))
ア 被告らの主張
本件各契約は、被告会社が原告からの借入金の変動金利を実質的に固定することを目的として、原告から提案され、被告会社がこれを信用して締結されたものであるから、原告と被告会社の間には、本件金利スワップ取引を被告会社の原告からの借入金が返済等により消滅するのと同時に消滅させる明示又は黙示の合意があった。
イ 原告の主張
原告と被告会社との間に、被告らの主張するような合意は明示的にも黙示的にも存在しない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
上記争いのない事実等に加えて、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1)  被告Y2の経歴等
ア 被告Y2は、昭和62年から平成7年まで、北海道拓殖銀行で勤務し、営業店舗での業務及び本部での営業支援業務に従事していた。被告Y2は、北海道拓殖銀行に勤務していた当時から、金利スワップ取引の存在について認識していた。
(以上につき、被告Y2本人)
イ 被告会社は、株式会社りそな銀行に対する長期借入金債務を負担していたところ、その変動金利を実質的に固定化させるため、被告Y2は、平成17年3月、被告会社の代表者として、同銀行と想定元本5億円、取引期間10年間の金利スワップ契約を締結した。上記契約に基づく取引は本件各契約を締結した当時も存続していた。
(以上につき、乙8、被告Y2本人)
ウ 原告の担当者らは、本件契約1を締結するに当たり、被告Y2が北海道拓殖銀行に勤務していたこと及び被告会社の代表者として原告以外の銀行と金利スワップ契約を締結したことがあることを認識していた(甲31の2)。
(2)  ○○計画及びこれに基づく借入れの交渉状況等
ア 被告Y2及び同Y1は、本件銀行取引約定が締結された平成17年12月8日付けで、書面をもって、原告に対し、被告会社の原告に対する債務につき16億6800万円を極度額として根保証をしていた(乙1、弁論の全趣旨)。
イ 上記争いのない事実等のとおり、○○計画では、当初、東芝ファイナンスの借換債務13億円及び本件建物建築資金(約12億円)の一部7億円の合計20億円について原告から融資を受けることが想定されていた。そして、被告Y2が、平成18年9月5日頃、原告に提出した事業収支計画書(乙8)の「借入金」欄には、「三菱東京UFJ○○私募債~長期(○○建物)」との項目で、平成17年実績が13億円、平成18年見込みが15億円、平成19年見込みが20億円と記載されていた(乙8、証人C、被告Y2本人)。
ウ 原告の担当者らは、平成18年9月8日頃、被告Y2と共に、本件建物の賃借人となる三井不動産を訪問した(証人C、被告Y2本人)。
また、その頃、原告の担当者ら及び被告Y2は会食をすることがあった(証人B、被告Y2本人)。
エ B及びCが同月26日に本件金利スワップ取引の提案をした後、原告の内部で使用する目的で作成された情報ノート(甲31の2)には、「追加支援については未確定ながら」、「本件スワップ導入後に当社の信用状態に大きな変化がないとの前提で、追加借入(建設資金7億円部分)できないということはないですよねとの社長発言に対しては、支社担当より、スワップのみを導入して頂く前提でのご提案話はないが、貸出についての正式決定はあくまでこれからと入念。」と記載されていた(甲31の2、証人C)。
オ Cは、同年12月13日、被告Y2に対し、【ご融資条件案】と題する同日付け書面(乙5)を交付し、○○計画に関する今後の融資についての提案をした(乙5、証人C)。上記書面には、資金使途を建物建築資金(設計料含む)とし、着手金支払時(平成18年12月頃)に証書貸付の方法により2億円を返済期限平成19年12月28日(私募債償還日)として貸し付けるとの案が記載されており、金利については、長期基準金利+0.000%(現状2.125%・短期プライムレート連動)とされていた。また、「担保:①既存根抵当権を1,400百万円→2,250百万円(*1)に増額」、「②Y1様・Y2社長様の連帯保証を1,668百万円→2,100百万円(*2)に増額」、「(*1)金利スワップの市場性与信250百万円分も含んでおります。」、「(*2)1,750百万円(私募債1,300M+着手金200M+市場性与信250M)×1.2倍=2,100M」と記載されていた(乙5)。
カ 被告会社が日本国土開発株式会社と請負代金14億7000万円で本件建物の工事請負契約を締結した平成18年12月20日は、本件建物の建築工事の地鎮祭があり、B及びCを含む原告の従業員4名が参列した(乙9)。
キ 本件証書貸付の実行及び本件根抵当権の極度額の変更がされた同月21日、被告Y1及び被告Y2は、上記アの根保証の極度額を16億6800万円から21億円に変更した(乙1)。なお、上記争いのない事実等のとおり、平成20年12月5日に改めて連帯保証契約が締結された。
ク 原告及び被告会社は、平成19年4月3日、本件証書貸付の利率に関して「借入利率の決定および変更方法に関する特約書」(甲30)を作成し、本件証書貸付の利率について、平成19年4月3日から短期プライムレート連動長期基準金利(3年超)を適用することを合意した。なお、同日における同基準金利は年2.375パーセントであった。
(以上につき、甲30)
ケ 被告会社は、原告から○○計画に関する追加融資を断られた後の平成20年12月10日、タイヘイ株式会社から12億6000万円を最終弁済期限平成21年8月7日、利息年5.5パーセント、遅延損害金年21.9パーセントの約定で借り入れる旨の金銭消費貸借契約を締結した(乙12)。
被告会社は、平成20年12月10日、完成した本件建物の所有権保存登記手続をし、原告は、本件建物に極度額を22億5000万円とする1番根抵当権を設定し、タイヘイ株式会社は、本件建物に極度額15億2000万円とする2番根抵当権を設定したが、同日、原告及びタイヘイ株式会社は合意により根抵当権の順位を同順位に変更した(乙4)。
(3)  本件契約1締結前後の状況
ア B及びCは、平成18年9月26日、被告Y2に対し、「円金利スワップのご案内」と題する書面(甲8)を示しながら、本件金利スワップ取引を提案した。上記書面には、本件契約1に係る取引内容、スキーム図、シミュレーション、メリット(変動金利の固定化)、デメリット(リスク)、重要事項に関する説明(市場リスクによる損失発生の可能性、中途解約の制限及び中途解約の場合の清算金の算出方法の考え方に関する記載を含む。)並びに留意点の記載があった。デメリットについては、3か月円TIBORが年2.40816パーセントを下回る時に、被告会社の支払金利が原告からの受取金利よりも高くなることや、借入金の金利を実質的に固定化することになるため、変動金利が下がった場合でも、被告会社は金利低下のメリットを受けることができないことの記載があった。被告Y2は、これらの記載内容について理解した上で、上記書面の記載内容につき説明を受けたことを示す署名押印欄に記名押印した。
(以上につき、甲8、31の2、証人C、証人B、被告Y2本人)
イ 翌27日付けで原告の内部において使用する目的で作成された情報ノート(甲31の2)の【顧客反応】には、「・部分ヘッジに考え方についても了解。借入については極力前倒しで内入れしたいがスワップのみ残ることは避けたい、過去他行で借入完済後に残ったスワップを他の変動金利借入に対するヘッジとして継続したこともあるが会計士の理解を得るのが大変だったため。」、「・期間10年、想定元本10億円であれば、無理のない範囲と考える。13億円まで必要がどうかはよく検討したい。」と記載されている(甲31の2)。
(4)  本件契約2締結前後の状況
ア B及びCは、本件契約1の締結前と同様、平成19年3月28日、被告Y2に対し、「円金利スワップのご案内」と題する書面(甲10)を示しながら、本件金利スワップ取引を提案した。上記書面には、本件契約2に係る取引内容、スキーム図、シミュレーション、メリット(変動金利の固定化)、デメリット(リスク)、重要事項に関する説明(市場リスクによる損失発生の可能性、中途解約の制限及び中途解約の場合の清算金の算出方法の考え方に関する記載を含む。)並びに留意点の記載があった。被告Y2は、これらの記載内容について理解した上で、上記書面の記載内容につき説明を受けたことを示す署名押印欄に記名押印した。
(以上につき、甲10、証人C、証人B、被告Y2本人)
イ 原告の内部で使用する目的で作成された活動報告(甲32の2)には、同日の活動内容として、期間と被告会社支払金利の点で違いのある4パターンの金利スワップ取引(本件契約2に係る取引を含む。)を提案したとの記載や、「当社は将来の金利上昇リスクをヘッジしておきたいとのニーズ有り、長期金利が比較的落ち着いている現在のタイミングは悪くないとの相場観有り。既存で期間10年で固定化していることから、期間を分散する観点から、期間5年で導入を前向き検討したいとの反応。最終的には顧問会計士に確認し回答したいとの由。」との記載がある(甲32の2)。
ウ 本件契約2が締結された同月29日の活動報告(甲32の3)には、「円金利スワップのご案内」と題する書面(甲10)の記載内容について改めて説明したこと、前日(同月28日)に顧問会計士に相談し了承が得られたこと、本件契約2の内容で契約が成立したこと等が記載されている(甲32の3)。
2  争点(1)(本件各契約が原告による20億円の融資の不実行を解除条件とするものかどうか)について
(1)  被告らは、原告と被告会社との間で○○計画に関して原告が被告に対して総額20億円の融資を実行するとの合意が成立したと主張し、被告Y2もその旨供述する(被告Y2本人)。確かに、上記争いのない事実等及び認定事実のとおり、○○計画では総額20億円の融資が想定されており、被告Y2は、平成18年9月5日頃原告に対し事業収支計画書を提出し、同月8日頃原告の担当者らと共に本件建物の賃借人予定者を訪問し、その頃原告担当者らと会食するなど、○○計画に関する借入れについて原告と交渉していたことがうかがわれる。また、C及びBにおいても、○○計画が当初の事業計画どおりに進行するのであれば、事業の進捗に応じて総額20億円の融資が可能であるとの内部承諾を得て、その旨被告Y2に伝えていたことを認めている(証人C、証人B)。しかしながら、この当時、20億円のうち本件社債の13億円を除く7億円については具体的な融資の実行時期、返済期限や利率等の契約条件が決まっておらず(被告Y2本人)、銀行である原告が将来における合計7億円という多額の貸付けを具体的約定が決まらないうちに合意したと認めることは困難である。むしろ、上記認定事実のとおり、同月26日にC及びBが本件金利スワップ取引を提案した際の情報ノートには、追加支援が未確定であることを確認した旨の記載があることからすれば、上記合意には至っていないことがうかがわれる。また、上記争いのない事実等及び認定事実のとおり、同年12月21日に本件根抵当権の極度額が22億5000万円に変更され、被告会社の原告に対する債務についての被告Y1及び被告Y2の根保証の限度額が21億円へと変更されている。しかしながら、証人Cは、本件根抵当権の極度額の変更につき、被告Y2から○○計画の進捗状況に応じて極度額を変更すると登記の費用がかかるので一気に増額をしたいと提案されたことから、上記のような変更になったと供述しており(証人C)、上記極度額の変更をもって同日以前に20億円の融資の合意が成立していたと認めることはできない。また、根保証の限度額の変更についても、Cが同月13日に被告Y2に示した【ご融資条件案】の21億円の根拠に関する説明(上記認定事実(2)オ)は、上記融資の合意の成立を前提としないものであるから、上記限度額の変更をもって上記合意が成立していたと認めることもできない。
よって、総額20億円の融資については、せいぜい原告からその内諾を得ていたというにとどまるというべきであるから、その不実行が本件各契約の解除条件となるほど確実なものであったとはいい難く、上記に関する被告らの主張を採用することはできない。
(2)  そして、被告会社は、想定元本10億円の本件契約1の締結時、原告を総額引受人とする13億円の本件社債(変動金利)を発行済みであり、想定元本3億7000万円の本件契約2の締結時には、本件社債13億円に加え同じく変動金利の本件証書貸付2億円の合計15億円(本件契約2締結日の翌日である平成19年3月30日の一部弁済後もなお13億7300万円)の借入金債務を負担していた。すなわち、本件各契約の想定元本は、借入金の範囲内に設定されているのであって、本件各契約がその時点での借入金変動金利を固定化するために締結されたことが認められる。他に、本件各契約において原告から被告会社に対して20億円の融資が全部実行されることを条件にしたことをうかがわせるような事情は認められない。
なお、上記争いのない事実等のとおり、本件証書貸付に係る証書(甲29)には、利率として年2.125パーセントとのみ記載されているものの、本件証書貸付に先立ちCが被告Y2に対して示した平成18年12月13日付け融資条件案(乙5)には、本件証書貸付の金利を変動金利とする旨の記載があること(上記認定事実(2)オ)、本件契約2締結直後の平成19年4月3日に本件証書貸付の利率について変動金利を適用すること及び同日における利率が年2.375パーセントである旨の特約書(甲30)が作成されたこと(上記認定事実(2)ク)並びに低利率の水準では貸付金額と返済期間が同一であれば固定金利の利率の方が変動金利の利率よりも高いのが通常であり、上記特約書作成時に年2.375パーセントの変動金利であるのに、本件証書貸付の実行時に固定金利が年2.125パーセントであるとは考え難いことからすれば、本件証書貸付の利率は、貸付当初から変動金利であったと認められる。
したがって、被告らの20億円の融資の不実行を解除条件とする上記主張は採用できない。
3  争点(2)(本件各契約が原告の優越的地位を濫用して締結された公序良俗に違反する無効なものかどうか)について
(1)  上記争いのない事実等のとおり、原告を総額引受人とする13億円の本件社債は、利息を変動金利とするものであり、かつ、その償還期日には原告から更に借換えをし、本件建物の完成後は長期借入れになることが予定されていた。そして、本件契約1は、原告が支払う変動金利と被告会社が支払う固定金利とを交換する内容の契約であるから、これにより、被告会社は、長期借入金の金利を実質的に固定化し、将来における変動金利の上昇リスクを抑えるというメリットがあるものと認められる。
また、本件証書貸付は上記のとおり変動金利で、その借入金の使途は、本件建物の建築代金の一部であり、本件建物の完成後、その賃料収入をもって長期にわたり返済することが○○計画において想定されていたことは上記争いのない事実等のとおりである。そうすると、本件契約2は、被告会社にとって、当時被告会社が原告に対し負担していた15億円の債務(本件社債の償還債務13億円と本件証書貸付に係る借入金債務2億円)から、本件契約1で金利が実質的に固定化されていた本件社債の償還債務10億円と本件契約2の締結直後に弁済された本件証書貸付に係る借入金債務2億円のうちの1億2700万円を差し引いた3億7300万円のうち3億7000万円について変動金利を実質的に固定化し、将来における金利の上昇リスクを抑えるというメリットがあるものと認められる。
(2)  そして、上記認定事実(3)ア及び(4)アによれば、被告会社は、本件金利スワップ取引について上記のようなメリットがあること及びデメリット(リスク)があることを認識した上で本件各契約を締結したことが認められ、また、被告会社は、本件契約2を締結する前に、原告から提案を受けた期間10年、想定元本5億円、年3.965パーセントに金利を固定化する内容の金利スワップ取引については断っており(上記争いのない事実等(9)ア)、必ずしも原告の提案をそのまま受け入れていたわけではない。
(3)  以上によれば、被告会社が、原告から○○計画に関して融資を受けており、今後も融資を受けることが想定されていたこと等を考慮したとしても、原告が優越的地位を濫用したと認めることはできないから、被告らの上記主張は採用できない。
4  争点(3)(本件各契約の締結に当たり、原告に、①交換対象である固定金利及び変動金利の設定根拠、②被告会社に予想される損失見込額及び利益見込額並びに③本件各契約の解約時の清算金見込額について説明義務違反があり、本件各契約が無効であるかどうか)について
(1)  被告らの主張する説明義務違反が本件各契約の無効事由になるとはいい難く、上記は主張自体失当というべきである。
(2)  加えて、本件金利スワップ取引は、将来の金利変動の予測が当たるか否かのみによって結果の有利不利が左右されるものであって、その基本的な構造ないし原理自体は単純で、少なくとも企業経営者であれば、その理解は一般に困難なものではなく、当該企業に対して契約締結のリスクを負わせることに何ら問題のないものである。そして、被告会社の代表者であった被告Y2は、かつて銀行に勤め、その当時から金利スワップ取引の存在を認識し、被告会社の代表者になった後、本件各契約を締結する前に原告以外の銀行と金利スワップ取引を締結したことがあり、原告の担当者もそのことを認識していた(上記認定事実(1))。
原告は、本件各契約締結に先立ち、被告会社に対し、取引内容、スキーム図、シミュレーション、メリット(変動金利の固定化)、デメリット(リスク)、重要事項に関する説明(市場リスクによる損失発生の可能性、中途解約の制限及び中途解約の場合の清算金の算出方法の考え方に関する記載を含む。)並びに留意点が記載された書面を交付し、被告会社もその内容を十分に理解した上で、本件各契約を締結したのであり(上記認定事実(3)ア及び(4)ア)、被告Y2が本件各契約を締結するに当たり原告の担当者らに対して①から③までに関する説明を求めたというような事情は認められないことからすれば、原告は、本件金利スワップ取引で求められる説明義務を尽くしていたというべきであって、被告らが主張する①から③までに関する説明義務を負うものではないというべきである。したがって、被告らが主張する説明義務違反は認められない。
5  争点(4)(被告会社が原告に対する借入金債務を全額返済したことにより、本件金利スワップ取引が終了したかどうか)について
(1)  本件金利スワップ取引は、借入金債務の変動金利を実質的に固定化する効果があり、想定元本は実際の借入金債務に見合ったものとされているが、本件各契約は原告からの融資とは別個の契約として締結され、本件各契約に係る案内文書(甲8、10)には、借入金債務の消滅と連動する旨の記載はない。かえって、同文書には、原則として中途解約が制限されることが明記されているほか、利息についても、借入金の利率と条件が不一致の場合、利率変動の不一致からくるリスクがあることの記載があり、借入金に係る契約と本件各契約とが連動するものではないことを前提にした注意喚起がされている。
(2)  そして、本件契約1の提案をした後、原告の内部で使用する目的で作成された情報ノートの記載(上記認定事実(3)イ)、被告Y2が本件金利スワップ取引について、途中解約が制限されることの説明を受けたこと(上記認定事実(3)ア及び(4)ア)並びに被告Y2が、被告会社が○○計画に関する原告に対する借入金を返済した時には本件金利スワップ取引のみが残ることを認識していたと供述していること(被告Y2本人)からすれば、被告Y2においても、本件各契約を締結するに当たり、本件金利スワップ取引が○○計画に関する原告からの借入金債務の消滅により終了するものではないことを認識していたと認められる。なお、○○計画における借入金債務の返済資金は本件建物の賃料収入とされており、原告から他社に借換えをすることはあっても長期借入金債務自体が直ちに消滅すると想定されていたわけではない。実際、被告会社はシンジケートローンによる長期借入金債務を負担している。よって、原告からの借入金債務の存在と本件金利スワップ取引とが存続上の関連性を有するものではなく、被告らの主張は採用できない。
第4  結論
以上によれば、原告の請求は、全部理由があるから認容することとして主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山田明 裁判官 浅岡千香子 裁判官 今澤俊樹)

 

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