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「営業支援」に関する裁判例(5)平成30年 4月10日 東京高裁 平29(ネ)4427号 損害賠償、損害賠償等反訴請求控訴事件

「営業支援」に関する裁判例(5)平成30年 4月10日 東京高裁 平29(ネ)4427号 損害賠償、損害賠償等反訴請求控訴事件

裁判年月日  平成30年 4月10日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ネ)4427号
事件名  損害賠償、損害賠償等反訴請求控訴事件
文献番号  2018WLJPCA04106003

裁判経過
第一審 平成29年 8月31日 東京地裁 判決 平27(ワ)10804号・平27(ワ)20771号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)

裁判年月日  平成30年 4月10日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ネ)4427号
事件名  損害賠償、損害賠償等反訴請求控訴事件
文献番号  2018WLJPCA04106003

東京都千代田区〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人(一審本訴原告兼一審反訴被告) X株式会社(以下「一審原告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 住田昌弘
小林洋介
佐藤宏和
埼玉県所沢市〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人(一審本訴被告兼一審反訴原告) Y1(以下「一審被告Y1」という。)
東京都渋谷区〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人(一審本訴被告) Y2株式会社(以下「一審被告Y2社」という。)
同代表者代表取締役 B
上記2名訴訟代理人弁護士 戸田泉
池田尚弘
角地山宗行
笠間健太郎

 

 

主文

1  一審原告の本件控訴に基づいて,原判決主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。
(1)  一審被告Y1は,一審原告に対し,903万6004円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  一審原告の一審被告Y1に対するその余の請求を棄却する。
2  一審原告の一審被告Y2社に対する本件控訴を棄却する。
3  一審被告Y1の本件控訴を棄却する。
4  訴訟費用は,第1,2審を通じて,一審原告に生じた費用の6分の1と一審被告Y1に生じた費用の3分の1を一審被告Y1の負担とし,一審原告及び一審被告Y1に生じたその余の費用並びに一審被告Y2社に生じた費用の全部を一審原告の負担とする。
5  この判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  一審原告
(1)  原判決を次のとおり変更する。
(2)  主位的請求
ア 一審被告Y1は,一審原告に対し,2585万5213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員(ただし,2585万5213円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,一審被告Y2社と連帯して)を支払え。
イ 一審被告Y2社は,一審原告に対し,一審被告Y1と連帯して,2585万5213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  予備的請求1
ア 一審被告Y1は,一審原告に対し,797万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員(ただし,797万4213円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,一審被告Y2社と連帯して)を支払え。
イ 一審被告Y2社は,一審原告に対し,一審被告Y1と連帯して,797万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)  予備的請求2
ア 一審被告Y1は,一審原告に対し,317万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員(ただし,317万4213円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,一審被告Y2社と連帯して)を支払え。
イ 一審被告Y2社は,一審原告に対し,一審被告Y1と連帯して,317万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5)  予備的請求3
一審被告Y1は,一審原告に対し,300万円及びこれに対する平成27年4月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)  仮執行宣言
2  一審被告Y1
(1)  原判決中,一審被告Y1の敗訴部分を取り消す。
(2)  上記部分につき,一審原告の請求を棄却する。
第2  事案の概要
1  一審原告は,電気通信関連の事業のほか,建設工事等の設計監理施工や一般労働者の派遣事業等を営む株式会社であり,一審被告Y1は,かつて建築関係の人材派遣会社を経営していたが,平成20年10月,経営難から建築人材派遣事業を一審原告に譲渡するとともに(その後,上記会社は破産手続を執った。),「顧問」として一審原告に迎えられ,一審原告の建築関係事業に従事する旨の契約(本件契約。平成25年秋頃以降は「業務委託契約書」(甲9,10,乙4,5)により文書化された契約。契約の性質に争いがある。)を締結し,建築関係事業の業務に従事し,平成24年4月,一審原告の社内組織の変更に伴い,「建築事業本部長」の肩書が与えられた。他方,一審被告Y2社は,建築工事の設計施工管理及び請負等を業とする株式会社であるが,平成25年8月15日付けで,一審被告Y1の取締役就任登記を経由し,一審被告Y1を副社長として遇していたところ,平成26年9月,上記事実を一審原告の知るところとなって,一審被告Y1が一審原告を退職した。
2(1)  本件のうちの本訴請求は,一審原告が,一審被告Y1との間で本件契約(労働契約又は準委任契約)を締結していたところ,一審被告Y1において,競業関係にある一審被告Y2社の役員に就任して競業行為を行い,一審原告の取引先を奪う等の有害業務によって,一審原告の建築関係事業の売上が著しく減少する等の損害を被ったと主張し,①主位的請求として,〈ア〉一審被告Y1に対し,労働契約の職務専念義務違反又は競業避止義務違反,あるいは準委任契約の善管注意義務違反,忠実義務違反,競業避止義務違反,重要事実及び不利益事実についての報告義務違反もしくは自己の重要な兼業の状況についての告知義務違反の債務不履行による損害賠償請求権に基づいて,損害金(平成25年4月から平成26年9月までに支給した報酬1260万円,経費17万4213円及び逸失利益の一部1308万1000円の合計額)2585万5213円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年5月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合(ただし,一審被告Y2社とは前記損害金及び前同日から支払済みまで年5分の割合の限度で連帯)による遅延損害金の支払を,〈イ〉一審被告Y2社に対し,一審被告Y1との(共同)不法行為による損害賠償請求権に基づき,一審被告Y1と連帯して,上記損害金及びこれに対する不法行為日の後である前同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②予備的請求1として,〈ア〉一審被告Y1に対し,準委任契約の報告義務違反もしくは告知義務違反の債務不履行による損害賠償請求権に基づいて,損害金(平成25年10月から平成26年9月までに支給した報酬780万円及び経費17万4213円の合計額)797万4213円及びこれに対する前同日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合(ただし,一審被告Y2社との連帯の範囲については前記と同じ)による遅延損害金の支払を求め,〈イ〉一審被告Y2社に対し,一審被告Y1との(共同)不法行為による損害賠償請求権に基づき,一審被告Y1と連帯して,上記損害金及びこれに対する不法行為日の後である前同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,③予備的請求2として,〈ア〉一審被告Y1に対し,準委任契約の報告義務違反もしくは告知義務違反の債務不履行による損害賠償請求権に基づいて,損害金(平成26年4月から同年9月までに支給した報酬300万円及び経費17万4213円の合計額)317万4213円及びこれに対する前同日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合(ただし,一審被告Y2社との連帯の範囲については前記と同じ)による遅延損害金の支払を求め,〈イ〉一審被告Y2社に対し,一審被告Y1との(共同)不法行為による損害賠償請求権に基づき,一審被告Y1と連帯して,上記損害金及びこれに対する不法行為日の後である前同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,④予備的請求3として,一審被告Y1に対し,労働契約又は準委任契約の詐欺による取消しに伴う不当利得返還請求権に基づいて,不当利得金(平成26年4月から同年9月までの報酬既払額)300万円及びこれに対する一審原告準備書面(9)が送達された日の後である平成29年4月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求めた事案である。
(2)  本件のうちの反訴請求は,一審被告Y1が,一審原告に対し,①準委任契約に基づく報酬請求権に基づいて,未払報酬(平成26年8月分)75万円及びこれに対する報酬支払日の翌日である平成26年9月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払と,②一審原告が一審被告Y1の所有するパーソナルコンピュータを返却せず,そこに保存していたプライベートの情報を含むデータを無断で閲覧されたことで,精神的苦痛を被ったと主張し,不法行為による慰謝料請求権に基づいて,慰謝料300万円及びこれに対する不法行為の後である同月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3  原審は,本訴請求について,一審原告と一審被告Y1の契約関係を準委任の性質を有する業務委託契約と認定した上,一審被告Y1に競業避止義務違反の行為又はそれによる損害が認められないとして,主位的請求及び予備的請求1は理由がないとして棄却したが,予備的請求2について,g社グループとの業務提携に関わる件は,重要な競合に関わる情報であって,本件契約の継続を判断するために必要な情報であったところ,一審被告Y1において,一審原告への報告を懈怠した債務不履行があり,その報告があれば,一審原告において,一審被告Y1との本件契約を継続することはなかったと判示し,平成26年4月から同年7月までに支給した報酬相当額300万円の限度で損害を認定し,一審被告Y1が一審原告に対し,損害金300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年5月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払うよう命じ,その余の請求を棄却する一方,一審原告の一審被告Y2社に対する請求は,一審被告Y2社の責任原因を認めることはできないとして,これを棄却した。
他方,反訴請求については,本訴請求に係る上記の理由によって,一審被告Y1の未払報酬請求は理由がないとしてこれを認めず,また,一審原告による一審被告Y1のパソコンの調査及びデータ閲覧は,一審被告Y1による本件契約の債務不履行との関係で,その関連性を判断するために不可避であるとして,不法行為の成立を否定し,一審被告Y1の反訴請求を棄却した。
そのため,これに不服がある一審原告及び一審被告Y1の双方がそれぞれ控訴をした(ただし,一審被告Y1は,本訴請求の一部認容部分のみに不服があり,反訴請求の棄却部分については不服を申し立てていないので,同部分は,当審における審判の対象から外れることになる。)。
4  前提事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,次の5で原判決を補正し,後記6で当審における当事者の新たな主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決5頁3行目から22頁初行まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
5  原判決の補正
(1)  原判決10頁19行目の「二大重点業務」の次に,「(一審被告Y1は,以下e社グループ向けに限らずこの「二大重点業務」を負っており,この義務を以下単に「二大重点業務」ということがある。)」と加える。
(2)  原判決20頁17行目から22頁初行までを削除する。
6  当審における当事者の新たな主張(競業避止義務に関する主張)
(1)  一審原告
仮に本件契約が準委任契約に当たり,一審被告Y1が一審原告の使用人ではなく,職務専念義務を有さない独立性の高い個人事業主であるとしても,一審被告Y1は,一審原告の事業上の秘密や得意先関係などの内部情報を知り又は入手しやすい地位にある者であったから,一審原告にとっての代理商(会社法16条),あるいは少なくとも代理商に準じてこれと同程度の競業避止義務を負うべきであり,一審原告の許可を受けなければ,自己又は第三者のために一審原告の事業の部類に属する取引をすること,一審原告の事業と同種の事業を行う他の会社の取締役,執行役又は業務を執行する社員となることは禁止される(同法17条1項)。そこで,一審原告は,一審被告Y1が一審被告Y2社から得ていた報酬又は賃金を損害として,会社法17条2項の適用又は準用することで,賠償を求めることができる。
また,一審被告Y1による一審原告の許可なく行われた競業行為は,取引関係を継続し難い不信行為であり,本件契約を解除することにつきやむを得ない事由(同法19条2項)があるとして,本件契約を解除して報酬の支払を止めることができたから,一審被告Y1が一審原告から受け取った報酬を基準として相当な損害額(民事訴訟法248条)の賠償を求めることができる。
(2)  一審被告ら
代理商とは,会社の取引の「代理又は媒介」をする者であるが,本件契約における委託業務の内容は,契約書を見ると,「関東地区の営業支援」,「その他,甲乙合意のうえ決定した業務」であり,また,「技術者派遣及び紹介,施工図受託,その他建設コンサルに関する業務,その他これに付帯する業務」であって,一審原告は,一審被告Y1に対し,その取引を「代理又は媒介」させようと考えていなかったことが明らかである。実際,一審被告Y1は,一審原告の代理人として,第三者との間で契約を締結することはなかったし,各種契約の仲介斡旋をすることもなかった。
そうすると,一審被告Y1は,代理商には該当せず,また,代理商に準じてこれと同程度の競業避止義務を負うこともない。
その他,会社法17条2項によって,会社の損害の額として推定されるのは,競業避止義務の違反者が個別具体的な案件で得た営業利益であって,一審被告Y1が得た報酬又は賃金は,かかる義務違反行為によって獲得された利益ではない。さらに,一審原告は,本件契約を解除することにやむを得ない事由があるとして,解除することが可能であると主張するが,一審原告が競業避止義務違反と主張する案件は,一審原告が受注できた相当程度の蓋然性が認められず,一審被告Y1の行為が競業行為とは認められないものばかりであるから,契約を解除できるやむを得ない事由は存在せず,報酬を基準として損害額を認定することも相当ではない。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所は,原審と一部異なり,本件契約は準委任契約の性質を有する業務委託契約であって,一審被告Y1は一審原告に対して善管注意義務(その一環としての競業避止義務)及び報告義務を負うところ,一審被告Y2社の取締役就任に際し,一審原告への報告義務に違反した本件契約の債務不履行があり,その就任登記が経由された日である平成25年8月15日から平成26年9月の本件契約終了時までに支給された報酬900万円(平成25年8月から平成26年7月までの12か月分。ただし,平成25年8月から平成26年3月までは月額80万円,同年4月以降は月額75万円。なお,平成25年8月分は上記報酬月額の半額となる。)及び経費3万6004円の合計903万6004円がその損害として認められるから,一審原告の本訴請求を903万6004円の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却するのが相当であると判断する。その理由は,次のとおりである。
2  判断の基礎となる事実関係
判断の基礎となる事実関係については,前掲の前提事実に加えて,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1(原判決22頁3行目から32頁17行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)  原判決22頁14行目の「これまでの」から16行目の「念頭において,」までを「これまでの取引先関係との人脈,さらには,年長者としての一般的な知識経験を活かせるものと期待して,」と改める。
(2)  原判決22頁23行目の「一方,」の次に「一審被告Y1とともに,c社から移籍して,」を加える。
(3)  原判決23頁14行目の「統括責任者」を「総括責任者」と改める。
(4)  原判決23頁20行目の「34,」を削除する。
(5)  原判決23頁24行目の「原告代表者本人」の次に「,一審被告Y1本人」を加える。
(6)  原判決24頁2行目の「報酬を得ていた。」を「報酬を得ていたが,建築事業の業績が低迷していたため,一審原告代表者と協議して,報酬の減額を合意し,」と改める。
(7)  原判決24頁10行目の「被告Y1は,」から12行目までを次のとおり改める。
「一審被告Y1は,平成21年4月16日,一審原告の株式の約4.7%を取得した(ただし,破産したc社の債務の個人保証の関係から自己の財産に対する差押えを懸念して,妻名義で取得した。)が,その後,平成26年3月4日に,その株式全部を他に売却して,一審原告の株主ではなくなった(甲8)。」
(8)  原判決24頁18行目の「e社グループ」から20行目までを次のとおり改める。
「一審被告Y2社の株式上場に向けての助言や,e社グループ向けプロジェクト(耐震診断業務)の工程管理を担当することになり,取引先にもその旨紹介され,同年8月15日,一審被告Y2社の取締役就任の登記が経由された。」と改める。
(9)  原判決24頁24行目の「甲15,16,82,」を「甲4,15,16,」と改める。
(10)  原判決24頁25行目から末行にかけての「被告Y2社の売上について,」を「一審被告Y2社の平成25年9月から平成26年8月期の年間収支計画を立案し,」と改める。
(11)  原判決25頁12行目の「建築構造士に関して」を「不動産や建築構造士の紹介の件で」と改める。
(12)  原判決26頁3行目の「告げた。」を「を伝えた。」と改める。
(13)  原判決27頁21行目の「認識していた。」を「認識し,これに関わるようになっていた。」と改める。
(14)  原判決28頁末行の「被告Y2社との間で」を削除する。
(15)  原判決29頁3行目の「成立し,」の次に「その直前の時期に,下部組織として一審原告を用いないことが決定されて,」を加える。
(16)  原判決29頁4行目の「被告Y1は,」の次に「同業務提携が成立した頃には,」を加える。
(17)  原判決29頁16行目の「報酬を得た。」を「売上を計上した。」と改める。
(18)  原判決31頁18行目の「認識し,」を「知り,」と改める。
(19)  原判決31頁19行目の「原告代表者に対し,」の次に「g社グループとの業務提携に参加できなかったことを報告し,併せて,」を加える。
3  本件契約の性質(争点(1))について
(1)  上記で引用した補正後の原判決が認定する事実関係によれば,一審被告Y1は,自己が経営していたc社の建築関係の人材派遣事業を一審原告へ譲渡するに伴い,一審原告における新規事業としての建築事業部門を統括する責任者として招かれ,同部門の事業執行に関して,一審原告代表者の具体的な指揮命令を受けることがなく,広範な裁量権を与えられていたこと,勤怠管理を受けておらず,就労場所も営業活動の関係から限定されておらず,一審被告Y1の業務予定は社内で共有されていたものの,スケジュールを組むに当たっては、一審原告代表者の指示や承認を一切要しないなど,場所的時間的な拘束がかなり緩やかであったこと,一審被告Y1の報酬は,一審原告の就業規則で定める給与規程によることなく,一審原告代表者との交渉によって定められ,当初は社内の最高額である一審原告代表者と同額の年額1000万円とされ,給与所得として源泉徴収されることなく,社会保険料も控除されず,一審被告Y1は事業所得として税務申告していたこと,その後の報酬は,一審原告代表者と一審被告Y1が協議の上,担当事業部門の低迷する業績を考慮して減額変更されたこと,その他,一審原告の株式約4.7%を与えられて,妻名義で保有していたこと,といった一審被告Y1の一審原告で与えられた地位,権限,待遇及び稼働状況その他の諸事情を総合して考慮すれば,一審原告と一審被告Y1との法律関係は,一審被告Y1が一審原告の支配下で使用されて労働し,その対価として報酬を得るという関係ではなく,一審被告Y1の専門的知識や経験,ノウハウと人脈を活かして,その自由な裁量によって業務を遂行して成果を挙げることを目的とし,かかる業務処理の対価として報酬を支払うことを内容とする準委任契約の性質を有する業務委託契約であったと認めるのが相当である。
したがって,一審原告による労働契約の主張は採用することができない。
(2)  なお,一審原告は,仮に本件契約が準委任契約であるとしても,一審被告Y1は,一審原告の事業上の秘密や得意先関係などの内部情報を知り又は入手しやすい地位にある者であったから,一審原告にとっては代理商か,あるいはこれに準ずる立場にあり,代理商と同様の法的地位にあると主張する。
しかしながら,先に示した一審被告Y1の一審原告における地位,権限,待遇及び稼働状況その他の諸事情に照らせば,一審被告Y1は,一審原告の取締役と同等の地位を与えられ,一審原告における1つの事業部門を束ねる総括責任者としての役割を果たしていたものであるから,会社の使用人ではないが,一審原告からは全く独立した個人事業主という立場で,その平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をするものでもなく,一審原告の名をもってその業務を執行しているものであるから,代理商又はこれに準ずる者として取扱うことは相当ではない。
したがって,一審原告の上記主張を採用することはできない。
4  一審被告Y1の本件契約の義務違反及びその損害(争点(2))について
(1)  本件契約に基づく義務について
前示した本件契約の性質を踏まえて,受任者である一審被告Y1が負うべき義務を検討するに,前記認定のとおり,一審被告Y1は,一審原告の建築事業部門を任され,その裁量をもって同部門の業務全般を統括し,自らも営業活動等の業務に従事していたが,勤怠管理を受けず,時間的場所的な拘束がかなり緩やかな稼働環境にあったことに加え,一審原告の株式を与えられ,報酬も当初は一審原告代表者と同額を支給されるなどの厚遇を受けていたこと,そして,一審原告代表者が一審被告Y1と本件契約を結んで一審原告に迎え入れたのは,一審原告がもともと通信関連事業を主要な事業としており,建築関連事業のノウハウがなかったため,c社から建築関係の人材派遣事業を譲り受けるに当たり,一審被告Y1の建築関係事業での知識経験や取引先関係との人脈,さらには,年長者としての一般的な知識経験を活かせるものと期待していた経緯があったことを考慮すれば,一審原告における一審被告Y1は,共同経営者に準じた役員待遇を受けて,一審原告の新規事業となる建築事業及びこれに関連した人材派遣業の運営を委ねられていたもので,実質的には取締役と同等の地位にあったということができる。
そうすると,準委任契約の性質を有する業務委託契約である本件契約において,受託者である一審被告Y1は,委託者である一審原告に対して,善管注意義務を負うことになるが(民法644条),正式に選任された取締役であっても,会社に対する忠実義務を負うものの(会社法355条),他の会社の取締役に就任することは一般的に禁止されていないので,本件契約における一審被告Y1も同様の立場にあるというべきであって,特段の定めがない以上,他の会社の取締役に就任することが,直ちに本件契約の善管注意義務に抵触することにはならない。しかしながら,取締役は,忠実義務あるいは善管注意義務の一環として,会社の利益の犠牲の下に自己又は第三者の利益を図ってはならない義務があり,会社法上,競業行為及び取締役・会社間の直接・間接取引を手続面で規制した競業避止義務(同法356条1項)が課せられている。そうすると,同様に一審原告の事業部門を任され,広範な裁量をもってその業務全般を統括し,実質的に取締役と同等の地位にある一審Y1においても,本件契約による善管注意義務の一環として,委任事務の処理として一審原告の業務を執行するに当たり,委任者たる一審原告の利益を犠牲にして,自己又は第三者の利益を図ってはならないというべきであり,自己又は第三者の利益を図る目的で,一審原告の事業の部類に属する取引を行う等の競業行為によって,一審原告の利益を害してはならないという競業避止義務を負うものと解される。そして,一審原告は,正式に取締役に選任されていないので,会社法に定める前記の競業規制の対象にはならないものの,一審原告と競業する他の会社の取締役に就任して,一審原告の事業の部類に属する取引を行い,一審原告の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ったものと認められる場合には,本件契約による競業避止義務違反として,債務不履行責任を負わなければならない。
また,本件契約によって一審被告Y1に与えられた一審原告での上記権限や地位等に照らせば,一審原告の競業会社の取締役に就任して,一審原告の事業の部類に属する取引を行う場合には,基本的に利益相反に当たるおそれがある場面が多くなり,客観的に見て,一審原告の利益を犠牲にして競業会社の利益を図る可能性を否定することができない。加えて,競業会社における取締役としての役割,例えば,単なる社外取締役に止まるのであればともかく,実際に業務を担当するという事情があると,一審原告から受任した事務処理に注力することができずに,一審原告における業務執行に影響が生ずるおそれがあることを考えれば,委任者たる一審原告にとって,その利害に大きく影響し,契約解除等の本件契約の帰趨にも関わる問題となり得ることから,競業会社の取締役就任については,重要な競業に関する情報として,一審原告へ報告すべき義務があり,これを怠った場合には,本件契約の債務不履行責任を負うものというべきである。
なお,一審原告は,仮に本件契約が準委任契約であるとしても,一審被告Y1は,一審原告にとっては代理商か,あるいはこれに準ずる立場にあり,代理商と同様の競業避止義務(会社法17条1項)を負うべきであると主張するが,一審被告Y1を代理商又はこれに準ずるものとして取り扱うことが相当でないことは,既に説示したとおりであって,控訴人の上記主張はその前提を欠いており,採用することができない。
(2)  個別案件における競業避止義務違反について
ア e社グループ向け業務について
一審原告は,e社グループ向け業務について,一審被告Y1が平成24年7月に一審被告Y2社を通さずに,一審原告の事業責任者の立場で直接取引の打診を受けていたにもかかわらず,一審原告に無断で平成25年5月に一審被告Y2社の取締役副社長の立場で,e社グループとの取引を行ったのであるから,競業避止義務に違反していることが明らかであると主張する。
そこで検討するに,上記で引用した補正後の原判決が認定する事実によれば,e社グループ向けの業務(耐震診断業務)については,一審被告Y2社代表者と株式会社f(以下「f社」という。)の担当部長との間に古くからの親交があって,平成19年5月頃から一審被告Y2社とf社の取引が始まり,平成22年10月には,計画・設計関連業務提携書(乙10)及び販売代理店契約(乙12)を取り交わして,以後は継続的に取引が行われていた経緯があり,その当時の年間取引額は最大で3億円を超えていたこと(乙16),一審原告は,平成23年12月から平成24年3月までの間,一審被告Y2社の下請けとして,e社グループ向けの業務に関与したことがあったが,その際,一審原告から再下請けをしたo社との間で,請負代金をめぐるトラブルが発生して,一審被告Y2社やf社を巻き込む事態となり,一審原告からは一審被告Y2社やf社に対して報告を兼ねたお詫びの文書を3度にわたって発出したことがあり(甲45,乙8,9),その後はe社グループ向け業務の取扱いがなかったことが認められる。そうすると,もともと一審被告Y2社がe社グループに関する商権を有していたのであり,一審原告はその下請けの立場にあったに過ぎず,一審被告Y1が,平成24年7月頃,e社グループから直接に耐震調査業務の発注打診を受けた旨を一審原告に報告し,f社に対して見積書(甲66の1から66の5)を提出したことがあるとしても,当時の状況に照らし,確実にf社から直接受注が得られる見込みがあったとはいえないし,ましてや一審被告Y1が,f社から発注打診のあった上記取引を一審被告Y2社に引き取らせて,いわゆる取引の横流しをしたと認めることはできず,その他,一審被告Y1において,e社グループ向け業務に関する営業活動に当たり,一審原告の営業上の利益を犠牲にして,自己又は一審被告Y2社の利益を図ったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,一審原告の上記主張を採用することはできない。
イ g社グループ向け業務について
一審原告は,g社グループ向け業務について,一審原告の業務として行っている旨を一審原告に報告していながら,その実は一審被告Y2社の取締役副社長として,一審原告の名称を記載しない業務提携資料を用いて交渉に当たり,実際に取引を行っていたので,競業避止義務に違反することが明らかであると主張する。
そこで検討するに,上記で引用した補正後の原判決が認定する事実に加えて,証拠(乙15,17,18,一審被告Y1本人,一審被告Y2社代表者本人)によれば,一審被告Y2社では,g社グループとの間で,建築技術者の人材育成と人材派遣を組み合わせた新たなビジネスモデルの構築を企画して,平成25年春頃から業務提携の交渉を始めていたところ,一審被告Y1は,一審被告Y2社の取締役副社長の立場で,同年秋頃から,上記交渉に加わっていたこと,上記の事業計画では,g社が育成した人材を,一審被告Y2社又はその下部組織となる会社が開拓したゼネコン等の建築事業者に派遣するという基本的なスキームを予定し,獲得した利益をg社グループと一審被告Y2社が折半するが,下部組織が加わる場合には,利益分配率をg社グループ及び一審被告Y2社が各30%,下部組織が40%とすることが検討されていたこと,一審被告Y1は,一審原告の幹部会等での報告の際には,g社との業務提携の枠組みを明確に示していなかったものの,一審被告Y2社の下部組織に入ることで業務提携の一角に加わろうと目論んでいたが,最終的には,一審原告に全国展開するための組織力がないこと等を理由として,下部組織に採用されなかったことが認められる。そうすると,一審原告は,当初からg社グループと直接の業務提携を行う可能性がなかったし,下部組織として参入できる可能性はあったものの,一審原告の組織力の点で採用されなかった事情がうかがわれるから,結果的に見れば,g社グループとの業務提携の実現は困難であったといわざるを得ない。そのため,g社グループとの交渉時に,一審原告の名称を記載しない業務提携資料を用いたか否かはともかく,一審被告Y1が一審被告Y2社の取締役副社長でなく,専ら一審原告の立場で交渉に臨んでいたとしても,一審原告がg社グループとの業務提携の件を受注できる相当程度の蓋然性は認められず,その他,一審被告Y1において,g社グループ向け業務に関する営業活動に当たり,一審原告の営業上の利益を犠牲にして,自己又は一審被告Y2社の利益を図ったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
ウ h社向け業務について
一審原告は,h社向け業務について,一審原告の主力事業に関する大口得意客からの引き合いであったにもかかわらず,一審原告の経営会議等で一切報告することなく,一審原告の元従業員が経営するi社に受注させてバックマージンを得たり,一審被告Y1が事実上支配するペーパーカンパニーのk社に受注させたりしたのであるから,競業避止義務に違反することが明らかであると主張する。
そこで検討するに,証拠(甲56,乙20[枝番を含む。],一審被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば,h社向け業務については,一審被告Y1がh社から人材紹介の発注を受けたものの,一審原告においてその希望条件に見合う人材を確保していなかったため,一審原告の元従業員で独立したCが経営するi社を紹介したり,k社を通じてj社の人材を派遣してもらったことが認められ,そもそも一審原告が受注することができない案件であったもので,個人的な伝手を使って,他社を紹介したことが直ちに競業行為に当たるとはいえない。そうすると,一審被告Y1において,h社向け業務に関し,一審原告の営業上の利益を犠牲にして,自己又は第三者の利益を図ったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,一審原告の上記主張を採用することができない。
エ その他の業務について
一審原告は,一審被告Y1に対し,二大重点業務を指示したにもかかわらず,各業務をせず,専ら一審原告にとって有害又は無価値な業務遂行に終始した旨を主張する。
そこで検討するに,証拠(甲6,7,一審原告代表者本人)によれば,一審原告の幹部会議事録には,一審原告代表者が,一審被告Y1に対し,二大重点業務指示を明示して具体的に指示を与えた事実を示す記載がなく,その他にかかる指示の存在を裏付ける客観的な証拠は見当たらない。また,業務予定表の記載や幹部会での報告によって,一審被告Y1が,pビルやl社の案件など,e社グループ向け以外の建築関係業務に関する打合せ等に多数関わっていて,二大業務以外の業務にかなりの時間を当てていた様子が分かるが,それでも一審原告代表者において,二大重点業務とするものに関して,特段の指示を与えていた形跡がない。そして,一審原告代表者は,原審での本人尋問でかかる指示をした旨を述べながらも,指示したという具体的な時期を示すことができず,結局のところ,一審原告Y1の担当する建築関係事業に関して,実際に二大重点業務に関する指示をしたのか疑問があるといわざるを得ない。
さらに,一審被告Y1の業務に関する成果については,上記のような営業活動の状況に加えて,前記認定に係る一審原告における建築関係事業部門の売上状況(甲11[枝番を含む。])を考慮すれば,一審被告Y1が一審原告の業績に全く貢献していなかったということはできない。
この点,一審原告は,平成24年度から平成25年度にかけて建築投資額が大幅に伸びた関係で,同業他社の売上が増加しているにもかかわらず,一審原告の建築関係事業の売上が減少しているのは,一審被告Y1が競業避止義務に違反して,専ら一審原告以外の業務に従事していたためであると主張する。しかしながら,同業他社といっても,一審原告とは組織の規模や人員構成はもとより,事業資源となる派遣用人材の確保という点でも各社で事情を異にしている上,一審原告では,平成25年3月に,一審被告Y1とともにc社から移籍して人材派遣事業を担当していたCが退職して独立した関係があって,営業組織の体制が変更されたといった内部的な事情があったことに照らせば,単純に他社の業績と比較して,一審原告の売上を評価することはできず,直ちに一審被告Y1が有害で無価値な業務のみを行っていたということの根拠にすることはできない。
したがって,一審原告の上記主張を採用することができない。
オ 小結
以上のとおり,一審被告Y1が関わった取引の個別案件においては,一審被告Y1が,本件契約の競業避止義務に違反し,一審原告の利益を犠牲にして,自己又は第三者の利益を図っていたことを認めるに足りる証拠はない。
(3)  報告義務違反について
ア 競業会社の取締役就任に伴う報告義務違反の有無について
(ア) 本件契約において,一審原告の取締役と同等の地位にあった一審被告Y1が,一審原告の競業会社の取締役に就任して,一審原告の事業の部類に属する取引を行う場合には,基本的に利益相反に当たるおそれがある場面が多くなり,客観的に見て,一審原告の利益を犠牲にして競業会社の利益を図る可能性を否定することができず,また,競業会社での役割によっては,一審原告から受任した事務処理に注力することが困難となり,一審原告における業務執行に影響が生ずるおそれもあり,一審原告にとって,その利害に大きく影響して,契約解除等の本件契約の帰趨に関わる問題となり得ることから,競業会社の取締役就任については,重要な競業に関する情報として,一審原告へ報告すべき義務があることは既に説示したとおりである。
そして,一審被告Y1は,平成20年10月,一審原告と本件契約を結んで,建築事業部門を任されてその業務全般を統括し,実質的に取締役と同等の地位にあったところ,平成25年3月頃から,一審被告Y2社の建築コンサルティング業務に関わるようになり,同年5月には,一審被告Y2社の取締役副社長に就任する旨が取引先に紹介され,同年8月15日,一審被告Y2社の取締役として就任登記が経由されたことは,前記で引用した補正後の原判決が認定するとおりである。そうすると,一審原告と同種の建築関係事業を営む一審被告Y2社の取締役に就任することは,前記のとおり,競業に関する重要な情報に当たり,一審原告の利害に大きく影響して,契約解除等の本件契約の帰趨に関わる問題といえるから,一審原告への報告義務があるというべきところ,一審被告Y1は,同年5月頃には,既に一審被告Y2社の取締役就任が内定し,その旨が取引先にも紹介されていたのであるから,遅くとも同年8月に正式に同取締役に就任するまでには,一審原告に対して,その旨を報告しなければならない義務があったといえる。
したがって,一審原告Y1は,一審被告Y2社の取締役就任に際して,その事実の報告を怠ったものとして,本件契約の報告義務に違反する債務不履行があったと認められる。
この点につき,一審被告Y1は,委任者への報告義務や告知義務を課すことは,受任者の新たな労働契約や委任契約の締結を制限するものであり,必要以上に職業選択の自由を制約するものであるから,明示の合意なくそのような義務は認められないと主張する。しかしながら,報告義務や告知義務があるからといって,直ちに,他と労働契約や委任契約を結ぶことが制限されるものではないし,受任された業務と競業する会社の取締役に就任して,受任業務と同一の部類に属する取引を行う場合には,基本的に利益相反に抵触する場面が多くなり,客観的に見て,委任者の利益を犠牲にして競業会社の利益を図る可能性を否定することができないし,競業会社での担当業務によっては,受任した事務処理に注力できずにその業務執行に影響が生ずるおそれがあって,あらかじめかかる事実を報告していなければ,委任者に不測の損害を被らせるおそれがあり,その利益を害する可能性がある以上,受任者として報告義務を負うのであり,その報告義務を負う結果,一審被告Y1が主張するような制約が事実上生じたとしても,それはむしろ委任者との間で締結した準委任契約に内在する制約というべきで,そのような制約が生じるからといって,上記報告義務を負うという判断を左右するものではない。
したがって,一審被告Y1の上記主張は採用することができない。
(イ) なお,一審原告は,一審被告Y1を代理商か又はこれに準じて,代理商と同程度の競業避止義務を負う結果として,「自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること」や「会社の事業と同種の事業を行う他の会社の取締役,執行役又は業務を執行する役員となること」について「許可」を得る前提としての報告義務,すなわち重要な競業に関する報告義務を負うというべきであるとした上,①平成25年3月から同種の事業を行う一審被告Y2社のために様々な建設コンサルタント業務に従事していた,②同年5月には,一審被告Y2社代表者から,一審原告の主要顧客であるゼネコンへ営業を行うよう命じられていた,③同じく同月には,一審被告Y2社の取締役副社長として,一審原告と競業する事業について,株式上場を目指した3か年計画の立案を命じられていた,といった各時期において,一審原告に対して許可を求める前提としての報告を一切せず,重要な競業に関する報告義務に違反したと主張する(なお,その余の④e社グループ向け業務,⑥h社からの受注に関しては,前記の個別案件の競業避止義務違反に関して判断したところからすると,そもそも競業が生じ得る状況にはなく,また,⑤のg社グループ関係,⑦のh社からの受注についての主張は,いずれも平成25年9月以降に関するものであるから,検討するに及ばない。)。
しかしながら,一審原告の上記報告義務の主張は,代理商あるいはこれに準ずる者として,競業行為に許可を要することを前提とするものであって,その前提を欠くことは既に説示したとおりである。また,本件契約における報告義務の内容については,前示のとおりに解されることから,その観点から検討すべきところ,上記①の点については,一審被告Y2社のためにコンサルティング業務に携わることで直ちに競業関係が生じ得るものではない。すなわち,上記で引用した補正後の原判決が認定するpビルの耐震工事関係では,取締役就任前の時点で先行的に一審被告Y2社のコンサルティング業務に関与していたが,他方,一審原告の業務として関与した結果,実際に同年9月にはその売上が計上されたのであるが,この間に,具体的に競業行為に該当し得るような業務に従事していたと認めるに足る証拠はない。上記②③の点については,これも取締役就任以前の時点で,事実上,先行的に業務指示を受けたものであったが,飽くまで一審被告Y2社内部での指示であり,今後の事業計画の立案を含め,直ちに営業活動や取引行為そのものに関わるものではなかったから,この時点では,重要な競業に関する情報として,報告義務が生ずるものとは認め難い。
したがって,一審原告の上記主張を採用することはできない。
(ウ) 他方,一審被告Y1は,平成26年3月時点での報告義務違反を認定した原審の判断を前提として,当審において,g社グループ向け業務につき,一審原告に対し,一審被告Y2社と業務提携し,その下部組織として一審原告が入る予定であることは報告しており,一審原告と一審被告Y1が本件契約の継続を合意した平成26年3月25日の時点では,g社と一審被告Y2社との間で下部組織を設けないことは決まっておらず,未だ一審原告が下部組織として参入し,g社との業務提携に加わる可能性があったから,この点に関する報告義務は発生していないと主張する。
しかしながら,既に説示したとおり,一審被告Y1は,一審被告Y2社の取締役就任に関する報告義務を怠った点において,その義務違反が認められるから,その後における業務上の報告義務違反を争うことは主張自体失当というほかない。その点は措くとしても,一審原告での打合せ議事録(甲6の15,6の17,6の18)によれば,一審被告Y1において,一審被告Y2社の名を出さず,g社との間で,直接の業務提携の交渉が進められている旨の報告がなされているように読み取れる上,一審被告Y2社代表者本人尋問の結果によれば,g社と一審被告Y2社が平成26年2月16日付け業務提携契約書(乙15)を締結した数日前の時期に,全国展開できる組織を有さない一審原告を下部組織として採用しないとの判断に至っていたことが認められ,一審被告Y2社の取締役副社長の立場にあり,g社との業務提携交渉にも直接関わっていた一審被告Y1もまた,同じ時期にその結論を知っていたものと推認されるから,この点についても,重要な競業に関する情報として,一審原告への報告義務を免れることはできない。
したがって,いずれにせよ,一審被告Y1の上記主張を採用することができない。
イ 報告義務違反による損害について
次に,報告義務違反による損害を検討する。
(ア) 報酬について
一審原告では,平成25年11月から平成26年1月にかけて,一審被告Y1から,g社グループとの業務提携交渉に関して報告がなされていたが,その後の交渉状況に関する報告が途絶えていたところ,平成26年9月,一審原告代表者が,一審被告Y2社のホームページを閲覧して,g社グループとの業務提携の事実を知るに至り,直ちに一審被告Y1を問い質すと,一審原告が業務提携に参加できなかったことと併せて,かねて一審被告Y2社の取締役としてその業務にも携わっていたことを打ち明けたため,本件契約を解除したという経緯のあることは,前記で引用した補正後の原判決が認定するとおりである。このような経緯やその他の諸事情を考慮すれば,一審被告Y1において,一審原告に対し,本件契約の報告義務に従って,一審被告Y2社の取締役就任の事実を報告していた場合には,一審原告が本件契約を解除して,一審被告Y1への業務委託関係を解消した蓋然性が高いというべきである。そこで,遅くとも平成25年8月15日に一審被告Y2社の取締役就任以降の期間における一審原告が支給した報酬については,一審被告Y1が本件契約の報告義務を果たしていたならば,発生することがなかった一審原告の損害に当たるということができる。
そうすると,一審被告Y1の報酬が平成26年3月分までは月額80万円,同年4月分から支給済みの同年7月分までは月額75万円であるから,本件契約の報告義務違反による債務不履行の損害に当たる報酬相当額は,次のとおり,900万円となる。
(算式)800,000×1/2+800,000×7+750,000×4=9,000,000円
(イ) 経費について
一審原告は,一審被告Y1に支給し,あるいは一審被告Y1のために負担した経費の損害として,①接待交際費9万6312円,②会議費7327円,③通信費5万3174円及び④福利厚生費1万7400円の合計17万4213円を主張する。
上記のとおり,平成25年8月15日以降については,一審被告Y1が報告義務を果たしていたならば,本件契約が終了していたと考えられるため,同日以降の経費についても,本来,支出する必要のなかった費用ということができるので,これも本件契約の債務不履行による損害に当たるというべきである。そこで,かかる観点から上記の各経費を見ていくこととする。
①接待交際費については,証拠(甲27)によれば,平成25年5月15日から同年10月17日までの支給分が計上されているところ,同年7月31日支給分までの接待交際費は損害に該当せず,また,同年8月31日支給分についても,同月15日以前の支出分が含まれている可能性があり,同日以降の支出分と峻別することができないので,その全額を損害として加えることはできない。したがって,同年9月17日,同月30日及び同年10月17日の各支給分の合計3万0782円(10,210+6,762+13,810=30,782)の限度で,損害として認めることができる。
②会議費については,証拠(甲28)によれば,平成25年5月15日から同年12月13日までの支給分が計上されているところ,同年5月15日支給分の会議費は損害に該当しないが,その余の同年11月29日(3回分),同年12月13日(2回分)及び平成26年1月31日の各支給分の合計5222円(1,000+420+2,000+439+572+791=5,222)は,その時期からして損害として認められる。
③通信費については,証拠(甲29)によれば,平成25年6月25日から平成26年8月28日までの支給分が計上されているところ,平成25年8月29日支給分までは,上記①と同様の理由によって損害とは認められない。また,その後の支給分についても,摘要欄には「Y1・C・E携帯料金」と記載されており,一審被告Y1だけの携帯電話料金でないことがうかがわれ,この中から,一審被告Y1が使用した携帯電話料金の金額を峻別して特定することができない以上,その支給分の全額をもって,損害と認めることはできない。
④福利厚生費については,証拠(甲30)によれば,平成26年2月28日未払金として,千代田診療所での一審被告Y1の一般健診費用として1万7400円が計上されているが,その摘要欄の記載から健診の時期が平成25年2月であるため,その時期からして,かかる費用を損害として認めることはできない。
以上によれば,経費のうちで損害に当たる部分は,接待交際費3万0782円及び会議費5222円の合計3万6004円(30,782+5,222=36,004)となる。
(ウ) なお,一審被告Y1は,一審原告が一審被告Y1から労務の提供を受けているから,その報酬相当額の損害を被っていないと主張する。
しかしながら,一審被告Y1は,一審原告に報告しなければならなかった一審被告Y2社の取締役就任の事実を報告せず,その報告がなされたならば,本件契約が終了して,当然に報酬を得られるはずがなかったのであるから,労務の提供があるからといって,本件契約の債務不履行による報酬の損害性を否定することはできない。しかも,本件契約は,準委任契約の性質を有する業務委託契約であることは前記のとおりであって,その報酬は,提供された労務の対価として支払うものではなく,委任した事務である建築事業部門の業務を執行し,その成果を挙げることへの対価として支払われるものであるところ,平成25年8月以降の業績を見ると,以前からの下降傾向が続いており,一審被告Y1が一審被告Y2社の取締役に就任してその業務にも従事するようになった影響があることは否定できないところであって,その期間,実際に委任の趣旨に沿った業務処理が行われたものと認めることもできない。
したがって,一審被告Y1の上記主張は採用することができない。
(エ) 以上のとおり,本件契約の債務不履行による損害は,報酬相当額900万円及び経費相当額3万6004円の合計903万6004円となる。
(4)  小結
以上によれば,一審原告は,一審被告Y1に対し,本件契約の報告義務に違反した債務不履行による損害賠償請求権に基づいて,損害金903万6004円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年5月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
5  一審被告Y2社の不法行為責任の成否(争点(3))について
一審原告は,一審被告Y2社代表者において,一審被告Y1が,一審原告の建築事業本部長として,人材派遣業と建築コンサルタント業務を行っていることを認識していながら,一審被告Y1に様々な建築コンサルタント業務を行わせ,ゼネコン営業による建築人材派遣業や建築コンサルタント業務を内容とする3か年計画の立案を命じ,株式上場という強い動機の下に取締役副社長に就任させるなど,一審原告の事業の部類に属する取引を積極的に行わせたものであって,これにより一審原告の事業に損害や不利益を生じさせる事態が発生することを認識し,又は極めて容易に認識し得たのであるから,一審被告Y1と通謀による(共同)不法行為が成立すると主張する。
しかしながら,他社の取締役を自社の取締役に選任すること自体は違法とはならないことはもとより,同業他社の取締役の場合には当該取締役の競業避止義務の問題が生ずるものの,そのことで取締役の選任行為が違法性を帯びるわけではない。まして一審被告Y1は,実質的には一審原告の取締役と同等の地位にあったとはいえ,正式に選任されていたものではないから,一審被告Y2社の取締役就任を妨げる事情はない。さらに,一審被告Y2社代表者による一審原告Y1に対する業務指示において,一審原告の内部情報等を利用するなどして,その商権を奪うような内容のものがあったことは認められないし,一審被告Y2社における一連の事業活動を見ても,一審原告の事業活動を妨げようとする積極加害の意図等はうかがわれず,その他に一審被告Y2社による不法行為の成立を基礎付ける事実関係を認めるに足りる証拠はない。
したがって,一審原告の一審被告Y2社に対する請求は理由がない。
6  結論
以上のとおり,一審原告の一審被告Y1に対する請求は,903万6004円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がなく,一審原告の一審被告Y2社に対する請求は理由がないところ,一審被告Y1との関係で,これと異なる原判決は失当であるから,これを変更して上記の限度で一審原告の請求を認容して,その余の請求を棄却し,一審被告Y2社との関係で,一審原告の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がなく,一審被告Y1の控訴も理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第19民事部
(裁判長裁判官 都築政則 裁判官 野本淑子 裁判官石垣陽介は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 都築政則)

 

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