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「営業支援」に関する裁判例(46)平成27年 2月25日 東京地裁 平26(ワ)8350号 契約代金請求事件

「営業支援」に関する裁判例(46)平成27年 2月25日 東京地裁 平26(ワ)8350号 契約代金請求事件

裁判年月日  平成27年 2月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)8350号
事件名  契約代金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2015WLJPCA02258017

要旨
◆被告と集客支援サービスに係る本件契約を締結した原告が、債務の履行ないし提供をしたとして同契約に基づく契約代金残金の支払を求めたところ、被告が詐欺及び契約解除を主張して争った事案において、被告は、本件契約締結時に「テーブルコタツ」のキーワード有用性につき質した被告に対し、原告担当者がキーワードは多い方がよい旨告げて被告を欺いたとして詐欺を主張するものの、同キーワードでトップページのランクインが見られるなどした以上、同主張は理由がなく、また、特段の反証のない本件では原告が本件契約に基づく債務の履行をしたといえるのに対し、被告は一方的にパスワード変更を行って原告による債務の履行をできない状態にしたから、原告が債務不履行責任を負うことはないとした上、被告主張の契約解除については証拠がないとして退け、請求を認容した事例

参照条文
民法96条1項
民法412条
民法414条
民法540条

裁判年月日  平成27年 2月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)8350号
事件名  契約代金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2015WLJPCA02258017

東京都新宿区〈以下省略〉
原告 クレイトエージェンシー株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 野間啓
名古屋市〈以下省略〉
被告 株式会社エツカインターナショナル
同代表者代表取締役 B

 

 

主文

1  被告は、原告に対し、34万7130円及びこれに対する平成26年4月12日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は、被告の負担とする。
3  この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は、契約代金残金34万7130円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成26年4月12日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実(当事者間に争いのない事実並びに弁論の全趣旨及び括弧内に掲げた証拠によって容易に認定できる事実)
(1)  原告及び被告は、株式会社である。
(2)  被告は、原告に対し、平成25年11月26日、原告が提供する楽天市場専用集客支援サービス「○○」を、次の約定により、契約期間を12か月、税込利用代金を37万8000円(月額3万1500円の12回)として申し込み、原告は、これを承諾した(以下「本件契約」という。なお、上記契約期間及び次のエないしカの事実については、甲1により認定した。)。
ア このサービスは、楽天市場内において顧客がショップを検索する検索機能において、予め指定された用語(以下「キーワード」という。)が入力された場合、依頼された商品が検索結果の上位に表示されるよう営業支援を行う商品である。
イ このサービスは、検索結果上での表示位置、表示そのもの、売上等一切の成果を保証するものではない。
ウ 支払期日を過ぎても入金が確認できない場合はサービスを停止する。この場合、契約者は直ちに契約期間に対応するサービス料金全額の支払義務を負う。
エ キーワードは、「こたつ」、「こたつ 激安」、「こたつ 105」、「こたつ 丸型」、「こたつ布団 長方形」、「コタツ 長方形」、「テーブル コタツ」とする。
オ 契約開始後1か月以内にトップページ45商品(以下「トップページ」という。)以内に1キーワードもランクインしない(増加しないという意)場合は、契約期間を1か月とし、受領した代金全額を返還する(以下「本件解約条件」という。)
カ 代金支払期日は、当初2か月につき、平成25年11月29日及び同年12月25日、3か月目(平成26年1月)以降につき毎月27日とする。
(3)  被告は、原告に対し、平成25年11月29日、楽天が開設する通信販売サイトの商品管理ページ(以下「楽天RMS」という。)へのログインに必要な被告のログインID及びログインパスワードを教えた。
しかし、被告は、同年12月25日、上記ログインパスワードを他のものに変更した(以下「本件パスワード変更」という。乙12の2)。
2  争点
(1)  詐欺
(被告の主張)
原告担当者は、本件契約の締結に際し、被告から、基準となるキーワードに「テーブルコタツ」といった、特にほとんど使われていないキーワードを加えることは、本件解約条件を成就させにくくするだけではないかと質されても、キーワードは多ければ多いほど多くの商品がトップページに現れると告げて被告を欺き、そのように信じさせて、本件契約を締結させた。
(原告の主張)
否認する。
原告は、上記契約に基づき、楽天市場内において、契約上合意された用語で検索された場合に被告の商品が上位に掲載されるよう対策を講じ、その結果、サービス開始前に全てのキーワードがランクインしなかったところ、平成25年12月13日、「こたつ 激安」で1商品、「テーブルコタツ」で2商品がトップページにランクインしてキーワードの増加が見られ、本件解約条件は、不成就が確定した。
(2)  債務の履行ないしその提供
(原告の主張)
原告は、楽天RMSへのログインに必要なパスワードを被告が変更したことにより、対策のためにログインすることができなくなった。
原告は、平成26年1、2月にかけて、2、3日おきにアクセスを試みたが、パスワードが異なるため作業を行うことができず、被告にメールで繰り返し新たなパスワードを連絡するよう要請したが、被告は、これを無視し続けた。
(被告の主張)
被告は、原告が本件契約に基づく作業を行わなかったことから、平成25年12月25日、その受け入れを止めるため、楽天RMSログインパスワードを変更した。
ところが、原告は、被告に対し、平成26年1月7日、平成25年12月25日及び同月27日も、作業した旨の虚偽の報告をした。
(3)  契約解除
(被告の主張)
被告は、原告に対し、平成25年12月25日、本件契約を解除するとの意思表示をした。
(原告の主張)
争う。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)(詐欺)について
(1)  証拠(甲4、甲5の1ないし7、甲6の1ないし7)及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件契約前、トップページへのランクインが零であったキーワードにつき、平成25年12月13日、「こたつ 激安」で1商品、「テーブルコタツ」で2商品がトップページヘランクインしてキーワードの増加が見られたとの事実が認められるところ、この認定を左右すべき証拠はない(なお、被告は、甲4(メール)が被告に届いていないと主張するが、乙3の1は、その証拠としては不十分である上、仮にそれが不着であったとしても、上記ランクインの認定が左右されるものではない。)。
(2)  したがって、「テーブルコタツ」とのキーワードだけではなく、「こたつ激安」とのキーワードでも、トップページへのランクインが見られた以上、「テーブルコタツ」との用語をキーワードに加えることが、本件解約条件を成就させにくくするだけの虚偽の説明であるかどうかを論じるまでもないことから、詐欺を言う被告の主張については、原告担当者の説明内容が被告主張のとおりであったか否かを論じるまでもなく、理由がないということになる。
2  争点(2)(債務の履行ないしその提供)について
(1)  上記1(1)の事実に証拠(甲7、29、乙6)及び弁論の全趣旨を総合すれば、楽天が開設する通信販売サイトにおいては、楽天との間の契約により契約事業者(本件では被告)が商品管理ページである楽天RMSを管理することとなっているところ、本件契約に基づいて原告が提供するサービスは、原告が被告から開示されたパスワードを用いて被告の楽天RMSにログインし、そのページの商品紹介のコメントなどを変更する手法によりその業務を行うものであること、原告においては、ログインした月日を記録し、最低月1回、顧客に報告する運用になっていたこと、原告社内には、原告担当者が、平成25年12月の2、4、6、10、13、16、17、20、24、25及び27日、被告の楽天RMSにログインした旨の履歴が残っており、原告は、被告に対し、平成26年1月7日、前月の作業日を上記各日とした報告を行ったこと、しかしながら、上記各日のうち、12月25日については、時間的先後関係によりけりではあるが、少なくとも同月27日については、本件パスワード変更後であることが明らかだから、従前のパスワードではログインできなかったはずであること、なお、楽天のログイン記録については、楽天との契約関係にある当該事業者であれば楽天から入手可能であるが、その保存期間は3か月に限られていることの事実が認められる。
そうすると、原告の記録が12月27日をログイン日としたことについては、明らかな誤りであるが、原告においては、ログインした月日を記録し、最低月1回顧客に運用する運用が取られていたところ、仮に事実と異なるログイン日を記録したとした場合、その虚偽は、楽天の契約事業者である顧客において、報告を受けた後1、2か月程度の間、楽天に照会するならば、容易にその相違が露見してしまう性質の事柄であるところ、原告の従業員において、このような容易に判明しうる虚偽の記載をしたこと窺わせる証拠も存しないところだから、上記アクセス記録については、誤りが一部あったことは否定できないが、だからといって、特に反証もないまま、その全体が虚偽記載として否定されるようなものであったとは認められない。
したがって、特段の反証のない本件においては、原告は、被告に対し、平成26年12月2日から、同月24日又は同月25日までの間、被告が管理する楽天RMSにアクセスし、本件契約に基づく債務の履行をしたものと認められることになる。
(2)  前提事実(3)の事実に証拠(甲7ないし29)及び弁論の全趣旨を総合すれば、被告は、平成25年12月25日、本件パスワード変更を行い、原告が本件契約に基づく債務の履行ができない状態とし、原告は、その後である平成26年1月6日以降、本件契約に基づく作業を行うことができず、このため、同年2月21日までの間、被告に対し、既に被告が原告に伝えていたログインパスワードを変更していたら、連絡するよう求めるメールを重ねて送信していた。
(3)  これらの事実によれば、被告が行った本件パスワード変更は、一方的なものである一方、原告は、平成26年1月6日以降、その債務の履行を行える状態として、その履行に協力するよう通知していたとの事実が認められるから、原告は、その債務の不履行による責任を負うものではない。
3  争点(3)(契約解除)について
争点(3)については、証拠がない。むしろ、上記2(2)の事実に照らすと、被告主張の申し出やそれに対する原告の承諾があったとは認められない。
4  結論
以上によれば、原告の請求は、理由がある。なお、被告の仮執行免脱宣言の申立ては、相当でないから却下する。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 松井英隆)

 

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