【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(45)平成27年 2月27日 東京地裁 平22(ワ)14182号 売掛代金事件

「営業支援」に関する裁判例(45)平成27年 2月27日 東京地裁 平22(ワ)14182号 売掛代金事件

裁判年月日  平成27年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)14182号
事件名  売掛代金事件
裁判結果  主位的請求一部認容、予備的請求一部認容  文献番号  2015WLJPCA02278011

要旨
◆本件破産会社の破産管財人である原告が、本件破産会社は、プロサッカーチームのファンクラブ会員を認証する本件システムの開発に関し、被告会社との間で基本契約とは別に追加開発の請負契約を締結し、仕事を完成させたにもかかわらず、被告会社は請負代金を支払わないとして、被告会社に対し、主位的に、請負契約に基づく報酬請求権として、未払請負代金合計1億8889万0800円等の支払を求め、予備的に、商法512条に基づき、本件破産会社が行った作業に対する相当な報酬として同額の支払を求めた事案において、一部業務に関し、原告主張に係る契約の成立を認めて、合計1330万1400円の請負契約に基づく報酬請求権を認定するとともに、一部業務に関し、商法512条の適用を認めて、合計1860万4915円の同条に基づく報酬請求権を認定するなどし、主位的請求及び予備的請求をそれぞれ一部認容した事例

参照条文
民法632条
商法512条

裁判年月日  平成27年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)14182号
事件名  売掛代金事件
裁判結果  主位的請求一部認容、予備的請求一部認容  文献番号  2015WLJPCA02278011

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 破産者株式会社インデックス破産管財人X
同訴訟代理人弁護士 熊谷明彦
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 ウェルネット株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 小澤幹人

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,1330万1400円及びうち499万8000円に対する平成20年12月1日から,うち497万7000円に対する平成21年1月1日から,うち332万6400円に対する平成22年5月7日から,各支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
2  原告の,その余の主位的請求を棄却する。
3  被告は,原告に対し,1860万4915円及びこれに対する平成22年5月7日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
4  原告の,その余の予備的請求を棄却する。
5  訴訟費用は,これを6分し,その5を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
6  この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求(主位的請求及び予備的請求)
被告は,原告に対し,1億8889万0800円及び内金499万8000円に対する平成20年12月1日から,内金497万7000円に対する平成21年1月1日から,その余の金員に対する平成22年5月7日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,破産者株式会社インデックス(以下「破産者」という。)が,プロサッカーチームのファンクラブ会員を認証するシステム(以下「本件システム」という。)の開発に関し,被告との間で基本契約とは別に追加開発の請負契約を締結し,破産者は仕事を完成させたにもかかわらず,被告が請負代金を支払わないとして,破産者の破産管財人である原告が,被告に対し,①主位的に,請負契約に基づく報酬請求権として,未払請負代金合計1億8889万0800円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成22年5月7日)から支払済みまで約定の利率年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求め,②予備的に,商法512条に基づき,破産者が行った作業に対する相当な報酬として同額の支払を求めた事案である。
これに対し被告は,①追加開発の請負契約は成立していない,②破産者が行った作業は無償で行う旨の合意が成立しており商法512条の適用はない等と主張して争っている。
1  争いのない事実等
(1)  当事者等
ア 社団法人a(以下「a社」という。)は,サッカーリーグの主催・運営業務を行っており,同社が運営するプロサッカーリーグ(Jリーグ)にはJ1(18チーム),J2(18チーム)を合わせて36チームが加盟している。
株式会社b(以下「b社」という。)は,a社の関連団体であり,試合運営支援業務を行っている。
イ 被告は,代金決済・電子決済システム等の開発・提供等を目的とする株式会社であり,b社に対して決済システムを提供している。
本件当時,A(以下「A」という。)は,被告の取締役であり,Jリーグのプロジェクトを担当していた(乙35)。
ウ 破産者は,モバイルソリューション事業等を目的とする株式会社であり,被告から,b社が用いる決済システム(本件システム)の開発等を受託した。
平成20年から同21年当時,B(以下「B」という。)は,破産者のソリューションビジネス局局長という役職に就いており,C(以下「C」という。)は破産者の営業担当者であった(甲92)。
破産者は,平成26年7月31日,破産手続開始決定を受け,原告が破産管財人に選任された。
(2)  本件システムの概要
本件システムは,概ね,①Jリーグに加盟する各サッカークラブのファンクラブの会員情報を管理する機能(以下「会員管理機能」という。),②ユーザーが年間スタジアム入場券を購入する機能(以下「チケット販売機能」という。),③サッカースタジアムに入場する会員の情報を把握するスタジアム入場者の認証機能(以下「スタジアム認証機能」という。)を有する。①及び②は,被告が設置したサーバー(ワンタッチパス基幹システム)により提供される機能であり,③は,各スタジアムに設置されたスタジアム端末により提供される機能である。
(3)  本件システム開発に至る経緯
a社は,年間の総観客動員数を平成22年には1100万人にすることを目的としたプロモーション活動等を展開するプロジェクトを立ち上げ,同プロジェクトの一環として,本件システムを導入することとなった。b社は,平成20年春頃,本件システムを被告から導入することを決定した。
(4)  破産者,被告間の契約締結
ア 基本契約
破産者と被告は,平成18年8月1日,概ね以下の内容の業務委託基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した(甲3)。
【適用関係】(2条)
本件基本契約は,業務の受託・委託に関する基本的な取引条件を定めたものであり,破産者,被告間で締結される個別契約の全てに適用される。
【個別契約】(3条)
個別契約は,次の各号のいずれかにより成立するものとする(以下「本件契約成立条項」という。)。
① 破産者と被告の双方が記名押印した書面を取り交わしたとき。
② 被告より注文書を破産者に交付し,これに対し破産者が承諾したとき。
【支払遅延】(5条)
被告が個別契約に定める支払期限までに個別業務にかかる委託料及びその消費税相当額を支払わない場合,破産者は被告に対し,支払期限の翌日より実際の支払日までの日数に応じ,委託料に対し年利14.6%を乗じた金額を支払遅延損害金として請求できる。
【瑕疵担保責任】(13条)
成果物に隠れた瑕疵があり,これが破産者の責に帰すべき事由による場合,成果物の納入の日から90日以内に被告から書面によりその旨の通知があったときは,破産者は,破産者の選択と負担により,当該瑕疵の修補又は代替物との交換を行うものとする。
イ 基本個別契約
被告は,本件システムの開発に係る業務を破産者に委託し,平成20年6月10日頃,同年4月1日付で,概ね以下の内容の契約を締結した(甲4の1,4の2,60。以下「本件基本個別契約」という。)。
【具体的業務内容】(2条)
被告は,破産者に対し,以下の業務を委託し,破産者はこれを受託する。なお,本条に定める個別業務の詳細は,本契約に添付されるか又は別途被告及び破産者が確認した仕様書等に定める。
① 営業支援活動等について次に定める個別業務
(1)  既存システムの検証作業及び有効利用の提案等
(2)  顧客獲得のための営業支援活動等
(3)  上記(1)及び(2)の附帯業務
② PC端末及び携帯電話端末に対応した「チケット販売・会員管理システム」に関する以下の個別業務等
(4)  要件定義書作成業務
(5)  上記(4)のプロジェクト管理業務
(6)  プログラムの開発業務
(7)  テスト業務
(8)  上記(6),(7)のプロジェクト管理業務
【成果物の納入】(3条)

業務No. 成果物 納期
(4) 要件定義書 平成20年10月31日
(5) 業務完了報告書 平成20年6月25日
(6) プログラムソース一式 平成20年10月31日
(7) テスト仕様書,テスト結果報告書 平成20年10月31日
(8) 業務完了報告書 平成20年10月31日

【委託料及び支払等】(5条)

業務No. 委託料 支払期限
(1)~(3) 2100万円(税込) 平成20年6月30日
(4)~(8) 4200万円(税込) 平成20年10月31日

(5) 納品の遅滞
本件システムのサービス開始予定日は平成20年11月20日とされていたが,破産者は,サービス開始予定日から2週間遅れて本件システムを被告に対し納品した。
(6) 被告による代金支払
被告は,破産者に対し,平成20年6月30日に2100万円を支払い,平成21年3月31日に3570万円を支払った(乙2の1,2の2)。
(7)  Jリーグ開幕
平成21年3月7日,Jリーグが開幕し,同年12月に閉幕するまでの間,合計306試合が行われた(弁論の全趣旨)。
2  争点
(1)  追加開発等の契約の成否及び仕事完成の有無(争点1)
(2)  商法512条適用の有無及び相当な報酬額(争点2)
3  争点に対する当事者の主張
(1)  争点1(追加開発等の契約の成否及び仕事完成の有無)について
(原告の主張)
ア 本件基本個別契約の清算
平成21年1月29日に開かれた会議(以下「本件会議」という。)にて,BとAは,本件基本個別契約の機能のうち双方協議で開発の対象から外した一部機能に対応する金額の交渉を行った。Bは,別紙2の資料を提出して交渉し,Aは,代金を値引きした上で開発範囲を縮小した本件システムを平成21年2月末に検収することに同意した。これにより,破産者は変更後の業務を全て実施した上で成果物を被告に納品し,被告は値引き後の代金5670万円を支払うことで,本件基本個別契約については清算することとなった。
イ 本件各契約の締結
破産者と被告の間には,本件基本個別契約以外に,別紙1「仕事の内容」欄記載の作業を行う契約(以下「本件各契約」という。)が成立している。本件各契約の合意の根拠等については,別紙1「合意成立の根拠及び履行状況」欄及び「代金の計算根拠」欄記載のとおりである。本件基本個別契約については清算済みである以上,原告は本件各契約に基づき,合計1億8889万0800円の報酬を請求できる。
ウ 被告の主張に対する反論
Bは,ソリューションビジネス局が担当する営業活動及びそれに伴う契約締結権限を付与されており,本件システムに関する一切の裁判外の行為をする権限を有する商業使用人に当たる。Cは,Bの部下のチームリーダーとして稼働しており,本件システムに関する被告との交渉や契約締結に関する業務に従事していたのであるから,本件システムに関する一切の裁判外の行為をする権限を有する商業使用人に当たる。
(被告の主張)
ア 本件基本個別契約の清算について
破産者が開発した本件システムは,完成度が著しく低く,平成21年3月には到底検収できない状態であった。Aは,Bから,業務委託費が入金されないと本件システムの開発継続等が不可能となると懇願されたため,やむを得ず本件基本個別契約に基づく業務委託費を前倒しで支払うこととした。
本件システムの検収の際,Aは,Bに対し,①破産者の債務不履行のペナルティとして業務委託費を500万円減額すること,②検収後もプロジェクトに必要な開発の継続,保守・運用及び瑕疵修補を無償で実施すること(以下「本件無償実施合意」という。)を約束をさせた。よって,本件各契約は全て無償であり,被告は支払義務を負わない。
イ 本件各合意の不成立
本件基本契約においては,個別契約は破産者と被告の双方が記名押印した書面を取り交わしたとき等に成立すると規定されているが(本件契約成立条項,甲3,3条2項),原告が主張する本件各契約につき,被告が認める一部の契約を除き合意書面又は注文書は存在しない。上場企業のコンプライアンス上,約2億円という大きな金額の契約関係につき契約書がないことはあり得ないし,破産者も被告も本件各合意が存在しないことを前提に会計処理をしている。
原告が主張する本件各契約の合計代金は約2億円であり,このような大きな契約につき,一社員にすぎないBが締結権限を有していたとはいえない。
以上より,本件各契約は成立しておらず,被告は代金支払義務を負わない。本件各契約に関する個別の主張については別紙1「被告の主張」欄記載のとおりである。
(2)  争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
(原告の主張)
別紙1「代金の計算根拠」欄記載の請求金額は相当な報酬である。
(被告の主張)
別紙1「被告の主張」欄記載のとおり。
第3  争点に対する判断
1  前提事実
(1)  要件定義書の納入
破産者は,被告に対し,平成20年6月24日頃,「ASPチケットサービスシステム要件定義書」(以下「要件定義書」という。)を納入した。同書には概ね以下の記載がある(甲78,弁論の全趣旨)。
ア 業務要件
(ア) 会員情報管理
各クラブ単位で管理されていた会員情報を,本件システムにより一元管理することでJリーグ全体の会員動向の掌握ができる。会員ごとのJリーグの楽しみ方や観戦スタイルをタイムリーに把握し,会員ごとのニーズに適した案内や提案を行うことが可能となる。
(イ) 会員ICカード
非接触ICカードを会員カードとして発行し,会員の観戦履歴を,全スタジアムのゲートにおいて自動的に記録・データベース化し,会員サービスの向上に活用する。
(ウ) 票券管理
全スタジアムの座席割りデータをアリーナ管理システムに登録する。チケット販売に当たっては直販分のシートエリアをアリーナ管理システムに登録し,会員が携帯電話またはパソコンからチケット購入時に空席確認を行って座席確定できるようにする。
(エ) 来場認証
会員が,スタジアムのゲートで会員ICカードをリーダーにタッチすることで,入場が自動認証・記録される。
イ 移行要件
(ア) システム移行要件
現行システム(ケータイチケット)から本件システムへの移行は行わない。本件システムは,平成20年11月からフェーズ1(会員管理・年間シート予約・会員年度更新案内・年間シート更新案内業務)を稼働する。フェーズ2(入場管理・自動ポイント付与・入場履歴管理・チケット譲渡・CRM機能)は平成21年2月から稼働する。
(イ) データ移行要件(移行対象データ)
移行対象データは,各クラブで管理している会員情報とする。データ件数は,初期10万件程度を想定している。移行データの名寄せやデータの整合チェックは被告が行い,破産者は移行ツールおよびチェックツールの作成を行う。
ウ 運用要件
(ア) 安全対策(個人認証のセキュリティ対策)
・システムレベルでのユーザーID/パスワードによる個人単位の利用者認証を行う。
・携帯電話の認証では,UID(個体識別情報)で認証を最初に行い,UIDで取得できない場合は,UTN(機器固有番号)による認証を行う。
・会員ICカードの認証は,IDm(製造番号)による認証を行う。
・会員QRカードの認証は,QRコード内に登録した認証コードにより行う。
(イ) 運用管理
a 破産者保守窓口の対応内容
ヘルプディスクまたは被告からの破産者への問合せは,平日の朝9時30分から18時まで保守窓口対応を行う(保守契約による。)。
b マニュアル管理
・初版のマニュアル作成は,破産者が担当する。
・運用開始後のマニュアル変更については,被告が担当する。
エ 個別システム化機能要件(甲74の1)
別紙3のとおり。
オ マスタスケジュール(甲82)
本件システムの開発の全体工程は,平成20年10月から同年11月にかけてリリースする機能の開発(フェーズ1)と,平成21年2月にリリースする機能の開発(フェーズ2)に分かれており,フェーズ1は,平成20年5月から基本計画策定を行って同年11月上旬に運用テストを完了させ,フェーズ2は,同年5月から基本計画策定を行って平成21年1月に運用テストを完成させると予定されている。
(2)  データ移行作業
ア 作業内容等
(ア) 各クラブチームは,会員データをエクセル形式や紙媒体など独自の方法で管理していたため,本件システムで使用する共通フォーマット形式に移行するためのデータ整備・入力作業(以下「本件移行作業」という。)が必要となった(争いなし)。本件移行作業の主な内容は,①被告が各クラブチーム保有の会員データをb社経由で入手した上,破産者が作成した共通フォーマットにデータを入力し,②破産者が当該データを整備し,本件システムに登録するというものであった(弁論の全趣旨)。
(イ) 平成20年6月6日頃から,破産者と被告の間で,会員データの名寄せ項目をどうするのかにつき検討され,破産者は,同年8月1日,共通のフォーマットを被告に提供した(甲84,弁論の全趣旨)。
(ウ) 被告は,b社に対し,平成20年8月4日,会員データの名寄せ項目を共通フォーマットのとおりにしたいと要求したところ,b社は,全てのクラブチームで共通フォーマットを適用することはできないと回答した。そこで,共通フォーマットを適用できないクラブチームの会員データについては,クラブチームが独自のフォーマットで入力した会員データを被告に送付し,被告が同データを共通フォーマットに変換することとなった(甲91②)。
イ 本件移行作業の遅延
(ア) 平成20年8月20日,会員データを共通フォーマットに加工する作業が予想以上に手間がかかり,現状の作業人数ではJリーグ開幕に間に合わないことが判明したため,本件移行作業の人員追加が検討された(甲91③)。
(イ) 平成20年9月4日,全てのクラブチームから会員データの提供を得られるのが同年11月となることが判明したため,本件移行作業は現時点で得られている13チーム分で一旦完了とすることとなった(甲84)。
(ウ) 平成20年10月17日,4クラブチーム分の会員データのチェックが完了したが,コンバート内容が決まっていなかったため,本件移行作業を完了させることができず,アリーナ側の情報設定(試合予定日時,各会場の座席シートの情報等)も遅延していた(甲84)。
(エ) 平成20年11月7日の段階でも,アリーナ側の情報設定が遅延しており,本件移行作業は完了しなかった(甲84)。
(3)  本件システムの納品
本件システムのサービス開始予定日は平成20年11月20日であったが,破産者は,被告に対し,同日から2週間遅れて本件システムを納品した(争いなし)。
同年12月,本件システムの一部の先行サービスとして,Jリーグ開幕に先立って,一部のクラブチームの既存会員に対して年会費の支払継続を案内する仕組みがフェーズ1としてリリースされた(甲92)。
(4)  本件会議等
ア 破産者と被告の間で,平成21年1月29日,本件会議が開かれた。同会議にて,Bは,Aに対して,別紙2を呈示し,①フェーズ1を同年2月末までに検収してほしいこと,②フェーズ2については別途要件が確定次第破産者から見積りを提出すること等を伝えた(甲92,弁論の全趣旨)。
イ 同会議の終了後,Aは,Bに対し,被告の取締役会で承認を得たいので,別紙2と同じ書面をデータで送るよう要請した。これを受けてBは,Aに対し,平成21年1月30日,別紙2の一部を修正したものをメールにて送付した(甲87,92)。
(5)  平成21年2月17日の会議
破産者と被告の間で,平成21年2月17日,会議が開かれた。破産者は,Aに対し,未検収の作業に関する見積書,発注書,納品書,検収書を交付したが,被告による押印はされなかった(甲64)。
(6)  本件移行作業の更なる遅延
平成21年2月23日の時点においても,13チーム分の本件移行作業が未了であり,うち3チームについてはスケジュールが未確定であった(甲86)。
(7)  フェーズ1の検収
被告は,破産者に対し,平成21年2月28日,フェーズ1に関し,合計金額を3570万円とした検収書を発行した(甲67)。
(8)  Jリーグ開幕,開幕後の状況
ア 平成21年3月7日,Jリーグが開幕したが,同日の時点でも本件移行作業が完了しなかったため,一部の会員にチケットが発送できなかった(争いなし)。
イ b社のDは,被告及び破産者に対し,平成21年3月8日,①各会場は順調に管理モードで稼働しており,ソフトウェア,ハードウェア的には問題がなく,おもにセットアップの問題と考えていること,②同月7日,一部の会場で認証が行えなかったが,これは,単純な原因によるものであり,対応方法ははっきりしていること等を内容としたメールを送付した(甲62)。
ウ 平成21年3月25日に実施された試合にて,初回入場の会員が入場する際,「入場済み」と表示される事象が複数の会場で発生した(乙12の1)。
同年4月11日に実施された試合にて,会員63件につき入場の際「不明なカード」と表示されるエラーが発生した(乙12の2)。
(9)  被告による代金支払
本件基本個別契約において被告が支払うべき代金は6300万円(消費税込)とされていたが,本件システムの開発が遅延したことに対するペナルティとして,代金を5670万円(消費税込)に減額することとなった(甲73)。被告は,破産者に対し,平成21年3月31日,当該代金の残金3570万円(2100万円については平成20年6月30日に支払済み(前記第2の1(6)))を支払った。
(10)  破産者内部の決裁
破産者は,平成21年4月6日,本件システムに関する購入稟議を行い,内部決済を行った。当該稟議において,法務部門から,本件の受注金額の大きさから受注を証する書面が必要であり,発注書の取得がいつになるかを明らかにし計画に沿った進捗確認をするようにとのコメントが付された(甲73)。
(11)  破産者によるデータ等の納品
破産者は,被告に対し,平成21年4月16日ころ,フェーズ1に関するデータ等を納品した(甲85,弁論の全趣旨)。
(12)  第三者機関による本件システムの評価
ア 訴外株式会社c(以下「訴外c社」という。)は,b社に対し,平成21年4月23日,本件システムの要件定義書に関する以下の評価を説明した(乙3の2)。

項目 評価点数
(100点満点)

環境 80
業務処理 88
システム機能 67
データ 45
相互作用 25
インタフェース 24
非機能A 33
非機能B 50
総合得点 51

イ 訴外c社は,b社に対し,平成21年6月18日,本件システムの品質に関する以下の評価を説明した(乙28)。
・現在の品質は運用レベルに達していない。
・規模,故障発生率から凡そ結合試験工程の品質レベルであるため,対策が必要である。
・発生したインシデント中,軽度な故障,操作性の改善が必要なもの,調査中のものまで含めると28件であるが,この内早急な対応が必要なものは6件となる。
・インシデントの総数を見た場合,運用フェーズに入り期間が経過したシステムとしては障害が明らかに多い。
・ただし,早急な対応が必要なレベルの指摘はそれほど多くないことから,問題箇所(弱点)を特定し,集中的に品質強化を行うことで,運用上のトラブルを未然に回避することも可能と考えられる。
(13)  被告のb社に対する賠償
ア 被告とb社は,平成21年6月30日,本件システムに関して各クラブチーム等に発生した一切の損害等を賠償するために,被告がb社に対して6000万円を支払う旨の合意を締結した(乙42の2)。
イ b社は,被告に対し,同日付けで,6000万円を請求した。被告は,b社に対し,平成21年7月15日,6500万円の損害金を支払った(乙4,42の1)。
(14)  平成21年8月3日の会議
破産者と被告の間で,平成21年8月3日,会議が開かれた。同会議にて,破産者は,Aに対し,未検収の作業に関する見積書,発注書,納品書,検収書を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
被告は,破産者に対し,被告の破産者に対する損害賠償請求権と,破産者の被告に対する正当な業務対価等を相殺した上で精算したいと伝えた(乙5)。
(15)  その後の経緯
ア 破産者は,被告に対し,平成21年9月1日,同日以降,運用業務を停止すると通知した(乙7,弁論の全趣旨)。
イ b社は,Jリーグが閉幕する平成21年12月まで本件システムを使用した後,本件システムを廃棄した(弁論の全趣旨)。
2  製品販売等(番号1,2)について
(1)  認定事実
ア 被告は,破産者に対し,平成20年10月20日付けで,でこぽんを代金499万8000円で,エリクサーを代金497万7000円で発注した。これらの代金の支払日は,納品月末締め翌月末振込とされている(甲5,7)。
破産者は,被告に対し,でこぽんの注文請書については同月21日付けで,エリクサーの注文請書については同月22日付けで交付し,でこぽん及びエリクサーを開発した(甲65,弁論の全趣旨)。
イ 破産者は,被告に対し,でこぽんについては平成20年10月29日に,エリクサーについては同年11月17日に納品した(甲6,8,弁論の全趣旨)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
以上の事実からすれば,破産者と被告の間で,でこぽんを代金499万8000円で,エリクサーを代金497万7000円で開発する旨の請負契約が成立していると認められる。破産者は,でこぽん及びエリクサーに関する仕事を完成させた上,被告に納付しており,でこぽんの代金支払日は平成20年11月30日,エリクサーの代金支払日は同年12月31日であると認められる。よって,破産者は,被告に対し,でこぽんに関する499万8000円の報酬及び平成20年12月1日から約定利率年14.6%(本件基本契約5条)の遅延損害金並びに,エリクサーに関する497万7000円の報酬及び平成21年1月1日から約定利率年14.6%の遅延損害金の請求権を有していると認められる。
3  開発業務①(番号3~6)について
(1)  認定事実
ア 本件会議において,破産者のBは,被告のAに対し,フェーズ1以降に行う追加開発については,別途要件が確定してから見積りをすると説明した(甲92,弁論の全趣旨)。
イ 破産者は,平成21年4月~同年8月にかけて以下の機能等を開発し,同月までに,被告に送付した(甲9~43,弁論の全趣旨)。

項目 機能等
お知らせ機能 管理サイトから会員へのお知らせ情報登録機能,会員サイトからのお知らせ情報参照機能
緊急通知機能 メールによる会員への通知を可能とする機能
支払管理機能 年会費・シーズンシート代金の支払期限管理機能
マスタ管理機能 主にアリーナと連携したマスタを照会・変更・削除する機能
ポイント管理機能 クラブ毎に定められたポイント計算ルールに基づきポイントを計算・管理する機能
来場履歴管理機能 来場履歴を生成管理する機能
招待券発行機能 クラブ担当者が管理サイトから試合・席種毎に招待券を発行する機能
レポート機能 管理サイトより試合毎に来場者数等を照合する機能等
メール配信機能 来場者に対するThank youメールや会員に対する各種お知らせメールを配信する機能
ポイント交換インターフェース セキュアサイトよりクラブ担当者がポイント交換端末向けデータを取り込めるようセンターサーバーから該当データを生成し配信する機能等
会員抽出機能強化 指定した会員項目に該当する会員のみ抽出して表示する絞り込み検索機能
IDi/IDm編集不可対応 会員サイトからIDi/IDmの編集ができないようにする機能
マイページ会員代行機能追加要件対応 代行操作時にメール送出ができないようにする機能等
マイページ画面修正要望対応 マイページ表示項目等のレイアウト修正
ダイレクトメールオプトイン対応 特定電子メール法改正に準拠するための要件変更対応
年度更新キャンセルバッチ 年度更新対象者のうち期限までに更新しなかった会員のステータスを変更する機能
ポイント有効期限管理機能 ポイント有効期限をクラブ毎に設定可能とする機能
フッタのダブルネーム対応 パソコンサイトのコピーライト箇所をクラブとダブルネームにするよう変更
譲渡画面文言修正 譲渡時に登録メールアドレスが無い場合に警告を表示する機能

ウ Bは,Aに対し,平成21年8月3日,開発業務①(番号3~6)に関する見積書,発注書,納品書,検収書(作成日は平成21年3月1日等とバックデートされている。)を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
原告は,BがAに対し,平成21年4月12日の会議にて,開発業務①(番号3~6),運用業務(番号17),保守業務(番号20)に関する具体的作業内容を説明し,Aがこれに口頭で了承したと主張するが,同事実を認めるに足る証拠はない。かえって,前記認定事実のとおり,また,後記9(1)エ及び11(1)イで認定するとおり,破産者は,被告に対し,これらの作業に関する見積書等を同年8月3日に交付しているにもかかわらず,被告はこれに押印等しておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,原告主張の契約は成立していないものというべきである。
(3)  争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
ア 本件基本個別契約2条では,個別業務の詳細は別途破産者と被告が確認した仕様書等に定めると規定されているところ,要件定義書は「仕様書等」に該当すると認められる。要件定義書に添付された別紙3に記載された具体的な機能は破産者と被告の間の合意内容となっており,破産者は本件基本個別契約に基づき別紙3に記載された機能を開発する義務を負っていたということができる。また,要件定義書のうちシステム移行要件の項目やマスタースケジュールにおいては,本件システムの開発工程としてフェーズ1とフェーズ2が記載されており,フェーズ1とフェーズ2双方の代金が合計6300万円であるとの合意が破産者と被告の間で成立していたということができる。
開発業務①(番号3~6)の作業は,本来フェーズ2における作業として想定されていたものであるといえ,本件基本個別契約で規定された業務の範囲内であるということができる。なお,破産者が開発した機能(前記(1)イ)には,マイページのレイアウト修正や,法改正に準拠するための要件変更対応等,別紙3に明確に記載されていないものもあるが,これは単に要件定義というシステム開発の上流工程では明確に定義されていなかったにすぎないということができ,このことをもって,当該作業が本件基本個別契約の範囲外であると認めることはできない。原告の開発業務①(番号3~6)に関する商法512条に基づく請求は理由がない。
イ これに対し原告は,本件会議等を経て,破産者と被告の間では,フェーズ1を5400万円に減額した上で検収し,フェーズ2については別途要件確定後,破産者が見積を提示して代金を定める旨の合意が成立しているから,開発業務①(番号3~6)は本件基本個別契約の範囲外であり,商法512条が適用されると主張している。確かに,本件会議では別紙2をもとに交渉が行われ,同別紙には原告の主張に沿った内容が記載されている。しかし,フェーズ2を本件基本個別契約の範囲外とした場合,被告は同契約で定められた代金6300万円とは別に相当の金額を支払う必要があるところ,この様な重要な内容につき明確に規定された契約書などは作成されておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,原告主張の合意が成立していたと認めることはできない。
また,原告は,被告に納品したフェーズ1に関するデータ等(甲85)が本件基本個別契約2条の「仕様書等」に当たると主張するが,同データ等は成果物にすぎず,破産者と被告の間の合意内容を基礎付けるものであるとはいえない。原告の主張は採用することができない。
4  開発業務①(番号7)について
(1)  認定事実
ア 被告は,破産者に対し,平成21年8月18日,開発業務①(番号7)を代金294万5250円で発注する旨の発注書を交付した(乙6)。
イ 破産者は,dチーム向けのマイページ特別仕様機能を開発し,被告は,平成21年8月31日に検収を行った(甲44,弁論の全趣旨)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
前記認定事実からすれば,破産者と被告の間で,開発業務①(番号7)に関する請負契約が成立していたと認められ,破産者は同業務に関する仕事を完成させたと認められる。原告は,被告に対し,開発業務①(番号7)に関する294万5250円の報酬請求権を有していると認められる。
5  開発業務②(番号8~10)について
(1)  認定事実
ア 被告は,本件基本個別契約の締結当時,会員管理機能及びチケット販売機能に関する開発業務については破産者に発注することとし,スタジアム認証機能に関する開発業務については被告が準備した端末及び開発会社により開発する計画を立てていた(弁論の全趣旨)。
イ 被告は,スタジアム認証機能を開発するに当たってはQIT端末を用いようと考えていたが(甲74の1),本件システムの開発が進められていくうちに,同端末の容量が不足していることが判明した。Aは,破産者に対し,スタジアム認証機能に関する開発業務を打診し,平成20年6月4日,破産者が開発業務を担当することとなった(甲91①)。
ウ 本件会議にて,Bは,Aに対し,以下の説明をした(甲92,弁論の全趣旨)。
(ア) 開発業務②(番号8)の代金は,でこぽん及びエリクサーの代金と併せて2248万円である。これらを平成21年3月末までに検収してほしい。
(イ) 開発業務②(番号9)の代金は555万円(税抜)であり,運用業務(番号14)の代金955万円(税抜)及び運用業務(番号15)の代金490万円(税抜)と合わせて2000万円である。これらを平成21年3月末までに検収してほしい。
エ Bは,Aに対し,平成21年2月17日に開かれた会議にて,開発業務②(番号8,9)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった。なお,開発業務②(番号8)の見積書の内訳は以下のとおりとされている(甲64)。

名称 数量(人月) 単価(円) 金額(円)
要件定義,設計
・機能設計
・仕様書レビュー
3 1,500,000 4,500,000
開発
・プログラム製造
・単体テスト
・結合テスト
・現地テスト立会い作業
・試験仕様書レビュー
9 1,200,000 10,800,000
計 15,300,000

オ 破産者は,スタジアム端末を開発するとともに,発見機能を追加したり,認証ロジックを変更する等の対応を行い,平成21年7月26日までにデータを被告に送信した(甲45~58,64,65,弁論の全趣旨)。
カ Bは,Aに対し,平成21年8月3日に開かれた会議にて,開発業務②(番号8~10)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
原告は,遅くとも本件会議にて,開発業務②(番号8~10)の作業範囲及び代金に関する確定的な合意が成立したと主張するが,同事実を認めるに足る証拠はない。かえって,前記認定事実のとおり,破産者は,被告に対し,これらの作業に関する見積書等を交付しているにもかかわらず被告はこれに押印等しておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,原告主張の契約は成立していないと認められる。
(3)  争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
ア 商法512条の適用の有無
(ア) 前記(1)イで認定した事実からすれば,本件基本個別契約においては,スタジアム認証はQIT端末で行うことが予定されていたということができ,同契約にスタジアム端末の開発が含まれているとは認められない。開発業務②(番号8~10)の作業は,本件基本個別契約で規定された作業の範囲外であるといえ,原告は相当な報酬額を請求できると認められる。
(イ) これに対し被告は,スタジアム端末の完成度が低かったため,スタジアム端末の開発作業は本件基本個別契約の範囲内のものとして扱うこととなったと主張し,それに沿うAの陳述書(乙35)があるが,Aの陳述書の記載は前記認定事実に照らし信用できず,他に被告主張の事実を認めるに足る証拠はない。
また,被告は,破産者との間で本件無償実施合意が成立していると主張しているが,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,本件無償実施合意が成立していると認めることはできない。被告の主張は採用することができない。
イ 相当な報酬額
(ア) 単価について
原告は,相当な報酬額の算出根拠として,システムエンジニアの単価を150万円,プログラマーの単価を120万円と主張している。しかし,開発業務②(番号8~10)の単価を原告主張のとおりとする旨の合意が成立していることを認めるに足る証拠はない。また,開発業務②(番号8)の見積書では,要件定義や,仕様書レビュー等が見積項目として記載されているところ,破産者が被告に対し,要件定義書やスタジアム端末の機能一覧等を納品したことを認めるに足る証拠はなく,破産者が同見積書記載の作業につき全てを完了させているとはいえない。Jリーグ開幕後もスタジアム認証機能に関するエラーが生じており(前記1(8)),訴外c社による本件システムの評価は,Jリーグ開幕後である平成21年6月18日の時点においても相当低いこと(前記1(12)イ)等を考慮すると,原告主張の単価は高額にすぎるといえ,単価は,システムエンジニアについては39万円,プログラマーについては31万円が相当というべきである(弁論の全趣旨)。
この点に関し原告は,相当な報酬額には原価相当分だけではなく合理的な利益も含まれるべきであると主張するが,前記のとおり,破産者が作業を全て完了したとはいえず,本件システムの評価も低いこと等を考慮すると,原価相当額に加えて破産者の利益をも勘案することは相当ではなく,原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 工数について
原告は,開発業務②(番号8~10)の開発に要した工数につき別紙1「代金の計算根拠」欄記載のとおり主張しており,同工数相当の作業が実施されたことは認められる(甲90,97)。しかし,前記認定事実((1)オ)及び弁論の全趣旨(第28回弁論準備手続調書参照)によれば,破産者がスタジアム端末を開発して被告にデータを送信し終えたのは平成21年7月26日であるところ,この時点でシーズンはほぼ半分が終了しており(Jリーグは同年3月から同年12月まで開催される),試合数からみても,全306試合のうち171試合と約半分が実施済みであったことが認められる上,前記のとおり,本件システムは,同年6月の時点における訴外c社の評価が低かったこと(前記1(12)イ)から1シーズンで破棄されているものと推認できるのであり,これらのことを考慮すると,原告主張の工数全てに対応する報酬を被告が支払うべきとするのは相当とはいえず,その半分の工数を支払うのが相当というべきである。
なお,スタジアム端末の開発が著しく遅れ,シーズンが約半分終了した時点で納品となっていることを考慮すると,原告主張のプロジェクト管理費につき被告が支払うべきとするのは相当とはいえない。
(ウ) 以上より,開発業務②(番号8~10)に関する相当な報酬額は,別紙4「計算根拠」欄記載のとおり,合計516万2325円(=207万9000円+75万7575円+232万5750円)であると認められる。
6  開発業務②(番号11)について
(1)  認定事実
ア 被告は,破産者に対し,平成21年8月18日,開発業務②(番号11)を代金38万1150円で発注する旨の発注書を交付した(乙6)。
イ 破産者は,券面表示レイアウトの変更作業を行い,平成21年9月29日,被告にデータを送信した(弁論の全趣旨)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
前記認定した事実からすれば,破産者と被告の間で,開発業務②(番号11)に関する請負契約が成立していたと認められ,破産者は同業務に関する仕事を完成させたと認められる。原告は,被告に対し,開発業務②(番号11)に関する38万1150円の報酬請求権を有していると認められる。
7  開発業務③(番号12)について
(1)  認定事実
ア 破産者は,平成20年6月頃までに,以下の機能を開発し,被告に送付した(弁論の全趣旨)。

項目 機能
印刷会社へのデータ送信 印刷会社向けICカード,QRカード,紙チケット綴りの元データ作成機能
入金消込 オンライン販売分以外について入金が確認できた場合に,管理サイトよりステータスを入金済みに変更する機能
更新案内作成 翌年に向けてシーズンシート,ファンクラブ会員の継続的な申込みを促すための印刷会社向け元データ作成機能
7チーム個別対応 京都サンガ等の7チームに関する,Myページへの個別対応
ファイル送受信 システムの運営に必要な会員情報等の受け渡しを,セキュアなサイト上で行う機能

イ Bは,Aに対し,本件会議にて,開発業務③(番号12)に関する費用はトラブル対応により被告に生じた損害と相殺する旨の説明をした(甲92,弁論の全趣旨)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
原告は,被告から,平成20年6月頃,開発業務③(番号12)の実施を依頼されたと主張するが,同事実を認めるに足る証拠はない。破産者と被告の間に,原告主張の契約が成立していたと認めることはできない。
(3)  争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
前記(1)アで認定した破産者の作業内容は,要件定義書のうち票券管理(業務要件)や安全対策(運用要件)等に関連するものであることがうかがえ,本件基本個別契約で規定された業務の範囲外であることを認めるに足る証拠はない。原告の開発業務③(番号12)に関する商法512条に基づく請求は理由がない。
8  運用業務(番号13)について
(1)  認定事実
ア Aは,破産者に対し,テストケースとして幾つかのクラブチームの会員データを用い,破産者が作成したフォーマットに入力する作業(以下「テストデータ登録作業」という。)を依頼したところ,破産者は,平成20年8月19日,同作業の見積書を送付するとともに,同作業を実施するためのスペースの確保を依頼した(甲63,弁論の全趣旨)。
当該見積書には,運用業務(番号13)の見積を以下のように算出したとされている。
【計算式】
単価1950円×工数1040時間×消費税1.05=2,129,400円
工数1040時間=営業日数13日×8時間/日×10人
イ Bは,Aに対し,平成20年8月3日に開かれた会議において,運用業務(番号13)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
ウ 被告は,テストデータ登録作業を行うスペースを確保し,破産者は,平成20年8月25日~同年9月10日の間,同作業を実施した(弁論の全趣旨)。
エ Bは,Aに対し,平成21年8月3日に開かれた会議にて,運用業務(番号13)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
原告は,運用業務(番号13)に関し,テストデータ登録作業を開始した平成20年8月25日の時点で,見積書どおりの契約が成立したと主張する。確かに,被告は,破産者の依頼に基づき同作業を行うスペースを確保しており,同作業を破産者が行うことにつき積極的に承認してはいるものの,破産者から交付された同作業に関する見積書等に被告は押印等しておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,同作業に関する契約が成立したと認めることはできない。
(3)  争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
ア 商法512条の適用の有無
要件定義書において,移行データの整合チェックは被告が行うものとされているところ,運用業務(番号13)の内容は本件移行作業の準備作業と認められるから,当該業務は被告が行うべき作業であるということができる。運用業務(番号13)の作業は本件基本個別契約の範囲外の作業であると認められ,原告は,被告に対し,同作業に関し相当な報酬額を請求できると認められる。
イ 相当な報酬額
運用業務(番号13)の作業は,用意されたフォーマットに会員データを登録するという極めて単純な作業であり,アルバイトによる対応が可能であることを考慮すると(弁論の全趣旨),単価(時給)は1950円が相当であり,原告主張の工数を要すると認められる。
ウ 以上より,運用業務(番号13)に関する相当な報酬額は,別紙4「計算根拠」欄記載のとおり,212万9400円であると認められる。
9  運用業務(番号14~18)について
(1)  認定事実
ア 本件会議にて,Bは,Aに対し,運用業務(番号14)の代金は955万円(税抜),運用業務(番号15)の代金は490万円(税抜)であり,これらを平成21年3月末までに検収してもらいたいと説明した(甲92,弁論の全趣旨)。
イ 本件会議の後,Aは,破産者に対し,運用業務の更なる追加人員を確保するよう要望した(争いなし)。これを受けてCは,Aに対し,平成21年2月15日,運用業務(番号16)の見積額を1108万8000円(システムエンジニアの単価を150万円,プログラマーの単価を120万円として算出されている。)とした見積書を交付した。Aは値引きの要望をしたため,Cは,出精値引きにより10%減額した見積書を同月17日に交付した。Aは,Cに対し,同月18日,減額後の見積書に不満を述べながらも概ね了承できると回答した(甲64,65,弁論の全趣旨)。
なお,Cは,Bに対し,「要員4名追加見積り,小言を言われながらではありますが,OKでました」とのメールを送信しているが(弁論の全趣旨),同メールはCの伝聞にすぎず,その後も運用業務(番号16)の見積書等に押印されていないことからして,同メールをもってAが確定的に運用業務(番号16)の作業を了承した事実まで認定することはできない。
ウ Bは,Aに対し,平成21年2月17日に開かれた会議にて,運用業務(番号14~16)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった(甲64)。
エ Bは,Aに対し,平成21年8月3日に開かれた会議にて,運用業務(番号14~17)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
オ Bは,被告の担当者に対し,平成21年9月4日,運用業務(番号18)につき,0.25人月分の運用引継ぎ支援業務を含んだ価格として270万円(=3人月×90万円)+消費税を考えており,被告の認識に相違なければ正式な提案書を用意したい旨のメールを送付した。これに対し被告の担当者は,ほぼ認識に相違はないが,0.25人月がどのぐらいに当たるのか分かりにくい点が課題であると返信した(甲66)。
カ 破産者は,平成20年12月~平成21年8月頃まで,別紙1「代金の計算根拠」欄記載の工数をかけて本件移行作業を行った(甲90,97,弁論の全趣旨)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
ア 原告は,運用業務(番号14,15)に関し,本件会議にて確定的な合意が成立したと主張するが,同事実を認めるに足る証拠はない。かえって,前記認定事実のとおり,破産者は,被告に対し,同作業に関する見積書等を交付したが,被告はこれに押印等しておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,同作業に関する契約は成立していないと認められる。
イ 原告は,運用業務(番号16)に関し,平成21年2月18日に契約が成立したと主張する。確かに,Aは,同日,破産者が提案した見積に対して概ね了承できると回答してはいるものの,破産者から交付された同作業に関する見積書等に対して被告は押印等しておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,破産者と被告の間に同作業に関する契約が成立したと認めることはできない。
ウ 運用業務(番号17)に関する契約が成立していないことについては,前記3(2)で説示したとおりである。
エ 原告は,運用業務(番号18)に関し,平成21年9月4日に契約が成立したと主張する。しかし,被告の担当者は「ほぼ認識に相違はありません」とメールにて返信しているにとどまり,破産者と被告の意思が完全に一致していたとは認められない上,0.25人月に関する微調整等が残っており,少なくとも同作業の代金については確定的な合意に至ったと認めることができない。したがって,運用業務(番号18)に関し,原告主張の契約が成立したと認めることはできない。
(3)  争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
ア 商法512条の適用の有無
要件定義書において,移行データの整合チェックは被告が行うものとされているところ,運用業務(番号14~18)の内容は本件移行作業そのものであるから,当該業務は被告が行うべき作業ということができる。運用業務(番号14~18)の作業は本件基本個別契約の範囲外の作業であると認められ,原告は,被告に対し,同作業に関し相当な報酬額を請求できると認められる。
イ 相当な報酬額
(ア) 運用業務(番号14~17)の単価について
原告は,運用業務(番号14~17)に関する相当な報酬額の算出根拠として,システムエンジニアの単価を150万円,プログラマーの単価を120万円等と主張している。確かに,運用業務(番号16)に関し,CとAの間で代金の交渉が行われているものの最終的な合意には至っておらず,運用業務(番号14~17)の単価を原告主張のとおりとする旨の合意が成立していることを認めるに足る証拠はない。運用業務(番号14~17)の作業は各クラブチームの会員データを整備した上で登録する等,比較的単純な作業であることを考慮すると,原告主張の単価は高額に過ぎるといえ,単価は全て31万円とするのが相当であると認められる。
(イ) 運用業務(番号18)の単価について
運用業務(番号18)の作業がされた時点においては,業務量が安定し,本件移行作業の業務内容も比較的単純化していたと認められる(弁論の全趣旨)。原告自身,当該業務については単価が安価な技術者に変更していることを考慮すると,運用業務(番号18)の単価(時給)は1950円が相当であると認められる。
(ウ) 工数について
運用業務(番号14~18)の作業は,その内容からして本来Jリーグ開幕までに完了している必要があったと認められるところ,前提事実(前記1(2))からすれば,各クラブチームが独自に紙媒体で管理する等していたため予想以上に作業量が増えてしまい,Jリーグ開幕までに完了することができなかったということができる。前記アのとおり,要件定義書では移行データの整合チェックは被告が行うものとされているものの,移行ツールの作成は破産者が行うものとされており,破産者としては,会員数がどの程度であるか,手作業がどの程度必要になるか等を事前に正確に把握した上,Jリーグ開幕までに本件移行作業が完了できるような移行ツールを作成すべきであったということができる。破産者は,データ件数を初期10万件程度であると想定していたにもかかわらず,実際は約24万件と予想をはるかに超える件数となっており(第28回弁論準備手続期日における当事者双方の陳述),破産者の調査が正確であったとはいえず,当該調査に基づいて作成された移行ツールが適切なものであったとは認められない。結局,約14万件(=24万件-10万件)の移行データに関する運用業務は,破産者が正確にデータ件数を見積らず,適切な移行ツールを作成しなかったために余分に生じた作業であるということができ,同作業に関する報酬を被告が支払うべきとするのは相当とはいえない。これらのことを勘案すると,被告は,原告に対し,運用業務(番号14~18)に関する原告主張の工数の41.7%(≒10万件/24万件)の工数に対応する報酬を支払うのが相当というべきである。
(エ) 以上により,運用業務(番号14~18)に関する相当な報酬額は,別紙4「計算根拠」欄記載のとおり,合計554万0815円(=101万8001円+47万5067円+95万0134円+264万6803円+45万0810円)であると認められる。
10  運用業務(番号19)について
(1)  認定事実
ア 破産者は,スタジアム端末に関するマニュアルを作成し,平成21年4月24日に被告に送付した(甲65,弁論の全趣旨)。
イ Bは,Aに対し,平成21年8月3日に開かれた会議にて,運用業務(番号19)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
(2)  争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
破産者と被告の間で,運用業務(番号19)に関するが成立したことを認めるに足る証拠はない。かえって,前記認定事実のとおり,破産者は,被告に対し,同作業に関する見積書等を交付したが,被告はこれに押印等しておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,同作業に関する契約は成立していないと認められる。
(3)  争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
ア 商法512条の適用の有無
当該業務はスタジアム端末に関するものであるいえるところ,前記5(3)アで説示したとおり,本件基本個別契約にスタジアム端末の開発が含まれているとは認められないから,運用業務(番号19)の作業は,本件基本個別契約で規定された作業の範囲外であるといえ,原告は相当な報酬額を請求できると認められる。
イ 相当な報酬額
(ア) 前記5(3)で説示したのと同様,運用業務(番号19)の単価は,39万円とするのが相当であり,原告主張の工数の半分につき報酬を支払うのが相当であると認められる。
(イ) 以上より,運用業務(番号19)に関する相当な報酬額は,別紙4「計算根拠」欄記載のとおり,10万2375円であるというべきである。
11  保守業務(番号20,21)
(1)  認定事実
ア 破産者は,平成20年4月以降,本件システムを稼働するに当たっての操作方法の照会や画面上の文言の修正等の改修作業を行った(弁論の全趣旨)。
イ Bは,Aに対し,平成21年8月3日に開かれた会議にて,保守業務(番号20,21)の見積書等を交付したが,被告による押印はされなかった(甲65)。
ウ Bは,被告の担当者に対し,平成21年9月4日,同月以降の保守費用を月額180万円(=1.5人月×120万円+税)と考えているとメールにて通知した。これに対し被告の担当者は,概ね同意できると回答した(甲66)。
エ 破産者と被告の間で,平成21年10月頃,「システム保守契約書」と題する書面(乙20。以下「本件保守契約書」という。)をもとに保守契約締結の交渉がされた(弁論の全趣旨。ただし,上記契約書には,破産者及び被告ともに署名,押印はされていない。)。本件保守契約書には,概ね以下の規定がある。
【保守業務の内容】(2条)
(1) 操作方法に関する問い合わせ
(2)  破産者の責に帰すべき事由による障害に対する対応
(3)  データのバックアップ,バージョンアップに関するサポート
(4)  その他破産者が被告に対して保守契約成立日までに提供してきた保守業務
(5)  その他本件システムの維持・管理に必要となる一切のサポート
【保守業務の対価等】(5条)
1  保守業務の対価として被告が仮に支払う保守料は189万円とする。
4  被告及び破産者は保守料の支払について,以下のとおり確認し,取り決める。
①  被告は,保守料については相殺等してはならず,現実に破産者に金員を支払うことを要する。
②  被告は,平成21年9月分及び10月分の保守料については,利息等を付さず,平成21年11月末までに支払うものとする。
③  被告及び破産者は,被告が破産者に対して保守料を支払うに当たり,被告が,
(ⅰ) 保守業務について,破産者の債務不履行に基づく瑕疵担保義務の履行の範囲外のものと認めたものではなく,また,新たな金銭支払いを必要とするものであると認めたわけでもなく,
(ⅱ) 保守業務の対価として,前記1項の金額が適正と認めたものでもなく,
(ⅲ) 被告の破産者に対して有する損害賠償請求権の債権額が,破産者の被告に対して有する請負代金等請求権の債権額を下回るものと認めたものでもないこと
を確認する。
【契約期間】(8条)
保守契約の有効期間は契約日より1か月とする。但し,期間満了日の2週間前までに破産者と被告いずれからも申し出がないときは,更に1か月間,同一条件で延長する。
オ 破産者は,平成21年9月~同年11月までの間,保守作業を行った(甲90,97,弁論の全趣旨)。
(2) 争点1(契約の成否及び仕事完成の有無)について
ア 保守業務(番号20)に関する契約が成立していないことについては,前記3(2)で説示したとおりである。
イ 原告は,保守業務(番号21)に関する契約が成立していたと主張するが,同事実を認めるに足る証拠はない。かえって,破産者と被告の間で,前記認定事実のとおり保守契約に関する契約の交渉がされたものの,破産者と被告の署名がなされるに至っておらず,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,保守業務(番号21)に関する原告主張の契約は成立していないと認められる。
(3) 争点2(商法512条適用の有無及び相当な報酬額)について
ア 商法512条の適用の有無
(ア) 一般に,システム開発における保守業務は,システムが完成した後に生ずる軽微な瑕疵等の対応に要する作業をいうところ,本件保守契約書2条で定められた保守業務の内容からすれば,本件においても,保守業務とは,本件システムが完成した後に生ずる軽微な瑕疵等の対応に要する作業を意味すると解すべきであり,本件システムの完成前にされた軽微な瑕疵等の修補作業は,本件基本個別契約の範囲内の作業というべきである。
前記3(3)イで説示したとおり,開発業務①(番号3~6)は,本件基本個別契約の範囲内の作業であり,当該作業が完了しないうちに本件システムが完成したということはできない。また,本件システムが有する会員管理機能を発揮させるためには,テストデータ登録作業を完了させる必要があるため,同作業が完了しないうちに本件システムが完成したということはできない。開発業務①(番号3~6)及び運用業務(番号13~18)は,平成21年8月まで行われていることからすれば,本件システムは,同月末日までに完成したというべきである。このことは,破産者自身,被告に対して同年9月以降の保守費用を請求している(前記(1)イ)ことからも裏付けられる。
なお,被告は,フェーズ1以外に本件システムの検収書を発行していないが,被告は本件システムを1シーズンのみではあるものの使用しているのであり,検収書を発行していないことのみをもって,本件システムが完成していないとすることはできない。
(イ) 以上を前提とすると,保守業務(番号20)は,本件システムの完成前に行われた軽微な瑕疵等の修補作業であるから,本件基本個別契約の範囲内の作業であるということができる。他方,保守業務(番号21)は,本件システムの完成後に行われた軽微な瑕疵等の修補作業であるから,本件基本個別契約で規定された作業の範囲外であるといえ,原告は相当な報酬額を請求できると認められる。
イ 相当な報酬額
破産者は,保守業務の対価として月額189万円(税込)を考えていると通知したのに対し,被告の担当者は概ね同意できると回答している。その後,破産者と被告の間で,月額報酬が189万円であることを前提とした上で保守契約の交渉が続けられており,破産者と被告の間では,保守業務の対価は月額189万円が相当であるとの共通認識を有していたと認められ,このことについては被告も自認している(被告第2準備書面10頁)。そうすると,相当な報酬額は,別紙4「計算根拠」欄記載のとおり,567万円であると認められる。
12 小括
(1) 主位的請求について
製品販売等(番号1,2),開発業務①(番号7),開発業務②(番号11)に関し,破産者と被告との間に原告主張の契約が成立していたと認められるから,原告は被告に対し合計1330万1400円(=499万8000円(前記2)+497万7000円(前記2)+294万5250円(前記4)+38万1150円(前記6))の報酬請求権を有していると認められる。
(2) 予備的請求について
開発業務②(番号8~10),運用業務(番号13~19),保守業務(番号21)に関し,原告は被告に対し合計1860万4915円(=516万2325円(前記5)+212万9400円(前記8)+554万0815円(前記9)+10万2375円(前記10)+567万円(前記11))の商法512条に基づく報酬請求権を有していると認められる。
13 被告による相殺の主張について
(1) 被告は,原告に対する損害賠償請求権を自働債権とした相殺を主張しているとも思える。しかし,相殺の合意に関する書面等は作成されていないところ,本件契約成立条項(甲3,3条2項)を考慮すると,被告主張の相殺の合意が成立していたと認めることはできない上,被告が相殺の意思表示をしたことを認めるに足る証拠はないから法定相殺としても成立する余地がなく,被告の主張は失当といわざるを得ない。仮に,被告が相殺の意思表示をしていたとしても,以下に説示するとおり,被告による相殺の主張は認められない。
(2) 本件基本個別契約に基づく成果物の納入期日は平成20年10月31日とされているところ,破産者は同日までに本件システムを完成させることができず成果物を納入していないため,破産者は履行遅滞による損害賠償責任を負うと認められる(なお,被告は,本件システムの瑕疵やプロジェクト管理義務違反を主張するが,瑕疵の内容や義務違反の内容を具体的に特定しているとはいえず,具体的な瑕疵やプロジェクト管理義務違反を認めるに足りる証拠もない。)。しかし,以下のとおり,当該履行遅滞と相当因果関係のある損害が被告に発生したと認めることはできない。
すなわち,被告は,自身に発生した損害として,①各クラブチームがb社に対して請求している合計6000万円につき被告が損害賠償責任を果たすこととなり,それに基づき被告がb社に対した支払った賠償金6000万円と,②本件システムの開発遅延により要した人件費を主張している。
しかしながら,①については,被告は,b社に対し本件システムに関して生じた損害6000万円を賠償する旨の合意をしたことを裏付ける証拠(乙42の1,42の2)を提出するにとどまり,具体的な因果関係を立証する証拠を一切提出していないから,破産者の履行遅滞と相当因果関係のある損害が被告に発生したと認めることはできない(なお,各クラブチームがb社に請求した6000万円の損害賠償請求権の内容につき,被告がb社に対し,訴訟で求められるような主張立証を要求していないことは被告自身認めるところである。)。②については立証がなく,破産者の履行遅滞と相当因果関係のある損害が被告に発生したと認めることはできない。
第4  結論
以上の次第で,原告の主位的請求は,1330万1400円の限度で理由があり,予備的請求は,1860万4915円の限度で理由があるから,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 澤野芳夫 裁判官 中村雅人 裁判官數間優美子は,差し支えにつき,署名押印することができない。裁判長裁判官 澤野芳夫)

 

〈以下省略〉

 

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