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「営業支援」に関する裁判例(29)平成28年12月14日 東京地裁 平27(ワ)16187号 支払金返還等請求事件(本訴)、違約金等反訴請求事件(反訴)

「営業支援」に関する裁判例(29)平成28年12月14日 東京地裁 平27(ワ)16187号 支払金返還等請求事件(本訴)、違約金等反訴請求事件(反訴)

裁判年月日  平成28年12月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)16187号・平27(ワ)24631号
事件名  支払金返還等請求事件(本訴)、違約金等反訴請求事件(反訴)
裁判結果  一部認容(本訴)、請求棄却(反訴)  文献番号  2016WLJPCA12148015

要旨
◆原告が、被告Y1及び被告Y2との間で土地及び建物の本件売買契約等を締結して被告Y1に手付金を支払い、被告会社との間で本件業務委託契約を締結して同社に業務委託料名目の支払をしたが、本件売買契約の代金支払が本件業務委託契約の業務委託料の支払に仮装されており、原告による脱税の準備行為を構成するものであるから契約全体が公序良俗に反し無効であるなどと主張して、被告らに対し、不当利得の返還を求めるとともに、被告Y1に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた(本訴)ところ、被告Y1及び被告Y2が、原告に対し、本件売買契約の解除に係る違約金等の支払を求めるとともに、被告会社が、原告に対し、未払の業務委託料等の支払を求めた(反訴)事案において、本件売買契約が本件業務委託契約と一体となって脱税を図るものであり、本件違約金条項自体が公序良俗に反することから、本件売買契約は全体として公序良俗に違反し無効であると認めて、被告Y1及び被告会社の不当利得を認定したが、被告Y1の不法行為は否定して、本訴請求を一部認容する一方、仮装の契約である本件業務委託契約は虚偽表示により無効であるなどとして、反訴請求を棄却した事例

参照条文
民法90条
民法94条
民法420条
民法555条
民法656条
民法703条
民法709条

裁判年月日  平成28年12月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)16187号・平27(ワ)24631号
事件名  支払金返還等請求事件(本訴)、違約金等反訴請求事件(反訴)
裁判結果  一部認容(本訴)、請求棄却(反訴)  文献番号  2016WLJPCA12148015

平成27年(ワ)第16187号 支払金返還等請求事件(本訴)
平成27年(ワ)第24631号 違約金等反訴請求事件(反訴)

さいたま市〈以下省略〉
本訴原告兼反訴被告 X
同訴訟代理人弁護士 小泉征一郎
東京都目黒区〈以下省略〉
本訴被告兼反訴原告 Y1
東京都目黒区〈以下省略〉
本訴被告兼反訴原告 Y2
東京都目黒区〈以下省略〉
本訴被告兼反訴原告 株式会社Y3
同代表者代表取締役 Y1
上記3名訴訟代理人弁護士 青木丈介

 

 

主文

1  本訴被告兼反訴原告Y1は,本訴原告兼反訴被告に対し,1000万円及びこれに対する平成27年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  本訴被告兼反訴原告株式会社Y3は,本訴原告兼反訴被告に対し,2400万円及びこれに対する平成27年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  本訴原告兼反訴被告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  本訴被告兼反訴原告らの請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを20分し,その1を本訴原告兼反訴被告の,その余を本訴被告兼反訴原告らの負担とする。
6  この判決の1項,2項は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  本訴
(1)  本訴被告兼反訴原告Y1(以下「被告Y1」という。)は,本訴原告兼反訴被告(以下「原告」という。)に対し,2200万円及びこれに対する平成27年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(ただし,2200万円のうち1700万円の支払は本訴被告兼反訴原告Y2(以下「被告Y2」という。)との連帯支払を求める。)。
(2)  被告Y2は,原告に対し,1700万円及びこれに対する平成27年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(ただし,うち1700万円の支払は被告Y1との連帯支払を求める。)。
(3)  本訴被告兼反訴原告株式会社Y3(以下「被告会社」といい,被告Y1,被告Y2及び被告会社を併せて「被告ら」という。)は,原告に対し,2400万円及びこれに対する平成27年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(ただし,うち1700万円については被告Y1との連帯支払,うち700万円については被告Y2との連帯支払を求める。)。
2  反訴
(1)  原告は,被告Y1に対し,4950万円及びこれに対する平成27年9月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  原告は,被告Y2に対し,4950万円及びこれに対する平成27年9月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  原告は,被告会社に対し,840万円及び内30万円に対する平成27年2月1日から,内270万円に対する同年3月1日から,内270万円に対する同年4月1日から,内270万円に対する同年5月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本訴は,原告が,土地及び建物の所有者である被告Y1及び被告Y2(以下,両名を併せて「被告Y1ら」という。)との間で土地及び建物の売買契約及び割賦払契約を締結して被告Y1に手付金を支払い,さらに,原告が被告会社との間で業務処理委託契約を締結して,原告が被告会社に対して業務委託料名目の支払をしたところ,上記売買契約における売買代金の支払が業務処理委託契約の業務委託料の支払に仮装されており,原告による脱税の準備行為を構成するものであるから契約全体が公序良俗に反し,無効であるなどと主張して,原告の支払金総額3400万円が被告Y1らに2等分されたことを前提に,不当利得返還請求権に基づき,被告Y1らに対しては,各1700万円,被告会社に対しては2400万円及びこれらに対する支払金返還請求書到達の日の翌日である平成27年2月26日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(ただし,上記請求の趣旨記載のとおりに連帯支払を求めている。),併せて,被告Y1が原告の無知に乗じて上記売買契約を締結させた行為等が不法行為に当たるとして,被告Y1に対し,損害合計500万円及び不法行為後である同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
反訴は,被告Y1らと原告との間の上記売買契約が有効であることを前提に,原告が売買代金の分割支払を怠ったため,同契約が解除されたとして,被告Y1らが,原告に対し,同契約に基づき,違約金として,それぞれ4950万円ずつ及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成27年9月5日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,併せて,被告会社が,原告に対し,上記業務委託契約に基づき,未払の業務委託料合計840万円及び各月の業務委託料支払期限の翌日から商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)  原告は歯科医師であり,さいたま市大宮区桜木町において,矯正歯科医院であるa歯科(以下「本件歯科医院」という。)を経営している。
被告Y1は,「A」との名で医業関係のコンサルタントを行う者である。
被告Y2は,被告Y1の妻である。
被告会社は,不動産売買の仲介斡旋や,不動産取引のコンサルタント業等を主な目的とする株式会社であり,被告Y1が代表取締役を務めている。
(2)ア  原告は,被告Y1らとの間で,平成26年5月1日,別紙物件目録記載1の建物及び同目録記載2の土地(以下,同建物及び同土地を併せて「本件不動産」という。)を,次の約定で買い受けるとの合意をした(以下「本件売買契約」といい,本件売買契約に係る売買契約書を「本件売買契約書」という。甲2,3)。
売買代金 2億1800万円
支払方法 平成26年5月1日に1000万円を支払い,残金2億0800万円は毎月250万円ずつの84回分割払い(ただし,最終回の支払額は50万円)
なお,本件売買契約書と一体となる割賦契約書(以下「本件割賦契約書」という。)においては,割賦金の支払開始時期は平成26年6月となっている。
所有権移転 本件不動産の所有権は,代金完済のときに被告Y1らから原告に移転する。
期限の利益喪失 原告が分割金の支払を1回又は2回以上怠ったときは,期限の利益を喪失する(期限の利益喪失に至る不払いの回数は当事者間に争いがある。)。
なお,本件売買契約書14条2項には,本件売買契約が原告の責めに帰すべき事由により解除された場合には,原告は,被告Y1らそれぞれに対して,①売買代金額の20%相当額(各4360万円),②原告による使用開始後明渡しまでの期間の賃料相当損害金,③被告Y1らの転居費用相当額として,売買価額の10%相当額を支払うとの規定がある(原告が支払うべき違約金の総額には当事者間に争いがある。以下,同条項の違約金の定めを「本件違約金条項」という。)。
また,本件売買契約書4条には,被告Y1らが原告から上記1000万円の支払を受けたときは,被告Y1らは,原告に対し,同年7月1日から売買代金完済時まで本件不動産を貸与し,原告は無償でこれを使用する旨の使用貸借の定めがある(以下,当該規定による使用貸借契約を「本件使用貸借契約」という。)。
原告は,被告Y1らから,同年7月1日より前に,本件不動産の引き渡しを受けた。
イ  原告と被告会社は,同年5月1日,次の約定からなる業務処理委託契約書を締結した(以下,「本件業務委託契約書」といい,同契約書に係る業務委託契約を「本件業務委託契約」という。ただし,契約の成否については争いがある。甲4)。
契約期間 平成26年5月1日から平成27年4月30日まで
委託業務内容 被告会社において,原告の歯科医院に係る広報活動・HP運用支援業務,顧客獲得営業支援業務,競合他社調査業務,未収金の督促業務に関する補助業務,クレーム対応業務及びこれらに付帯する一切の業務を受託する。
業務委託料 月額270万円(消費税込)を毎月末日までに支払う
(3)  原告は,本件売買契約に基づき,平成26年5月1日,被告Y1名義の口座に1000万円を振り込む手続を行い,同月2日,同口座に1000万円が振り込まれた。
また,原告は,被告会社に対し,①同月21日に250万円,②同年6月27日に250万円,③同年7月25日に300万円,④同年8月22日に350万円,⑤同年9月30日に100万円,⑥同年10月2日に150万円,⑦同月22日に250万円,⑧同年11月26日に250万円,⑨同年12月26日に250万円,⑩平成27年1月23日に250万円をそれぞれ支払った(合計額2400万円。甲12,弁論の全趣旨)。
原告は,平成27年5月末日支払分及び同年6月末日支払分の割賦金合計500万円を被告Y1らに対して支払わなかった。
被告Y1らは,本訴答弁書をもって上記500万円を支払うよう催告し,催告後相当期間内に原告が支払わなかったため,被告Y1らは本件売買契約を解除した。
(4)  原告は,被告Y1らに対し,同年2月24日付けで,本件売買契約が無効であるとして,支払済みの3400万円の返還を求める「契約無効通告」と題する書面(以下「本件通告書」という。)を発送し,同書面は同月25日,被告Y1らに到達した(甲9の1,甲9の2の1・2)。
(5)  原告は,平成27年10月又は同年11月ころ,本件不動産を原告Y1らに明け渡した。
3  争点及び当事者の主張
(1)  本件売買契約が公序良俗に反し,無効であるか否か(争点(1))
(原告の主張)
ア 原告は青山にbデンタルサロン(以下「本件サロン」という。)を開店し,経営していたところ,経営難から本件サロンの閉店を検討するようになり,そのような中,平成25年9月ころ,医業関係のコンサルタントをする被告Y1と知り合った。本件サロンは同年12月に閉店したところ,被告Y1は,平成26年4月ころ,原告に対し,被告Y1らが所有する東京都目黒区中目黒所在の本件不動産を買い取るよう強く勧めてきた。
原告は,被告Y1から,闇の裏社会とも通じているという話を何度も聞かされ,本件売買契約の締結から逃れられないと観念して本件売買契約の締結に至ったが,本件売買契約には次のとおり多くの不正が含まれている。
まず,本件不動産の適正価格は1億5000万円程度であるところ,2億1800万円という高額の価格となっている。
そして,原告を本件売買契約に拘束しておくために,本件違約金条項は,売買代金の40%(8720万円)を原告に支払わせるのみならず,本件使用貸借契約に係る使用開始時に遡って賃料相当金の2倍額を支払うことと定め,さらには転居費用名目で売買代金の10%の2倍である4360万円を支払わせるものとなっており,極端に厳しいものとなっている。本件違約金条項自体が公序良俗違反である。
さらには,本件売買契約においては,契約締結時の手付金1000万円だけは被告Y1らに支払われるが,その後の毎月250万円の分割金は本件業務委託契約の業務委託料の名目で被告会社へ支払うこととされている。これは,原告の物件購入代金を経費で処理しようとするものであり,かつ,被告らの不動産売却収入を少額に偽装するものであり,脱税工作である。本件業務委託契約は,脱税操作のために作成された虚偽,架空の契約である。実際に,被告会社は本件業務委託契約締結後に何らのコンサルティング業務も行っていない。被告会社は実態のないペーパーカンパニーである。
被告Y1は,原告をして,売買代金の支払が,歯科医院の広報活動・顧客獲得営業支援業務等の業務委託料として適正に処理できるものと誤信させて本件売買契約を締結させたのであり,本件売買契約は原告による脱税の準備行為を構成するものである上,売却代金の入金先を第三者口座とすることで,売主である被告Y1らの収入の隠匿を図るものである。これらによれば,本件売買契約は公序良俗に違反し,無効である。
よって,原告は,被告らに対し,支払済みの売買代金の返還請求権を有する。
イ 原告の支払金総額3400万円は,被告Y1と被告Y2に2等分されたはずであるから,原告は,被告Y1らに対し,それぞれ1700万円の返還請求権を有する。
また,原告は被告会社に合計2400万円を支払ったから,被告会社に対し,同額の不当利得返還請求権を有する。
(被告らの主張)
本件売買契約が公序良俗違反により無効であるとの主張は争う。
そもそも,本件売買契約と本件業務委託契約とは,契約主体も契約内容も異なる全く別個の契約である。また,割賦金月額は250万円であるのに対し,委託料月額は税込270万円であって,金額も一致しない。したがって,売買代金の支払が業務委託料名目での支払に仮装されていることにはならない。両契約の関連性は,原告の収入状況からして,業務委託料と割賦代金の両方を並行して支払うことは難しかったことから,被告Y1の計らいにより,1年間業務委託料を滞りなく支払っている限りは使用貸借による使用を容認するとともに割賦代金の支払をも猶予するという点にあった。
原告は,本件業務委託契約に基づくコンサルティングが存在しないと主張するが,被告Y1は,被告会社の代表取締役として,本件歯科医院のメイン口座を定め,かつ,患者との取引に提携ローンを導入するなどのアドバイスを行っており,被告会社によるコンサルティングが行われたことは明らかである。月額270万円という業務委託料は,本件歯科医院の収益に照らして適正な金額である。被告会社は,年間売上高2300万円~4480万円程度を計上する稼働中の会社であり,実態のない会社ではない。元々は,原告が被告Y1に接近し,多店舗展開する歯科医院のオーナーになりたいとの夢や,都内一等地での夜景の見える物件の取得,M&Aを利用したデンタルクリニックの再生及び売却によるキャピタルゲインを目的とするビジネス展開といった希望を叶えるべく,コンサルティングを依頼してきたのが実情である。
また,本件違約金条項は,原告主張の金額を違約金とするものではなく,4360万円の倍額である8720万円と売買代金額の10%である2180万円の合計1億0900万円を違約金とするものである。そして,本件違約金条項は,契約当事者双方がその内容を理解し,合意に基づいて定めたものであり,しかも,原告の収入状況や被告Y1らの負担するリスク等をも総合的に勘案して金額を定めたものであるから,本件違約金条項は公序良俗に反しない。仮に本件違約金条項が公序良俗に反するとしても,無効となるのは本件違約金条項だけであり,本件売買契約全体が無効となるものではない。
原告は,本件不動産の適正価格は1億5000万円程度であり,本件売買契約における売買代金額2億1800万円が高額すぎると主張するが,原告がその根拠とする不動産査定報告書(甲13の1)は,瑕疵物件や利用制限のある物件を基準としており,意図的に低い査定額を算定するために作成されたものである。本件不動産を適正に査定した査定書は,本件不動産を2億5336万円(乙32),2億5817万円(乙33)と査定しているのであって,本件売買契約における売買価格は適正である。
以上によれば,本件売買契約は公序良俗に反するものではなく,有効である。
(2)  本件業務委託契約が成立したか否か(争点(2))
(被告らの主張)
本件不動産に係る売買契約の話が具体化した時点においては,住宅ローンの審査が通らなかったものの,本件歯科医院の会計処理を明朗化して決算資料を整備した上で改めて住宅ローンの審査が通った時には原告が一括して代金を支払い,完全に所有権を取得することができるようにするため,原告と被告Y1らとは売買契約書と割賦契約書を取り交わすことになった。それに合わせて,被告会社と原告は,平成26年5月1日,それまで無報酬で行ってきたコンサルティング業務についても,正式に本件業務委託契約を取り交わすことになったのである。
本件業務委託契約は,原告からの強い要望を受けて,被告Y1及び被告会社が原告及び本件歯科医院の売上管理・経理処理全般を見直し,販促活動やSEO対策を講じ,さらにM&Aの情報提供及びマッチング並びに多店舗展開のためのノウハウ及び情報の提供をするために締結したものであり,被告会社は実際にこれらの業務を行っている。したがって,本件業務委託契約は架空の契約や虚偽の契約などではない。
原告は契約締結後からしばらくの間業務委託料を支払い続けていたものの,8か月が経過した時点で一方的に業務委託料の支払を停止した。
原告の未払の業務委託料は,①平成26年5月から平成27年1月までの9か月分の業務委託料合計2430万円のうち30万円及び②同年2月から同年4月分の業務委託料810万円であり,合計840万円である。
(原告の主張)
原告と被告会社との間で本件業務委託契約が成立したとの事実は否認する。
前述のとおり,本件業務委託契約は脱税操作のために作成された虚偽,架空の契約である。
被告らの主張するコンサルティングは,提携ローンの導入と,患者から受領した金員のメイン口座への入金という2点だけであって,立ち話程度の会話で済むものであり,およそコンサルティングと呼べるものではなかった。
(3)  原告が本件違約金条項に基づく違約金支払義務を負うか否か(争点(3))
(被告らの主張)
前述のとおり,本件違約金条項は公序良俗に反するものではなく,有効である。
本件売買契約においては,手付金1000万円を除いた残代金2億0800万円につき,本件割賦契約書の記載が口頭で変更され,原告が平成27年5月末日から毎月末日限り250万円を支払うとの合意がされていた。
原告が平成27年5月末日支払分及び同年6月末日支払分の割賦金の支払を怠ったため,被告Y1らは本訴答弁書をもって本件売買契約を解除した。したがって,原告は,本件違約金条項に基づき,売買代金額の20%である4360万円の倍額である8720万円及び売買代金額の10%である2180万円の合計1億0900万円の支払義務を負っている。
(原告の主張)
本件違約金条項は公序良俗に反し無効であり,原告が違約金支払義務を負うとの主張は争う。本件売買契約において,手付金1000万円を除いた残代金2億0800万円につき,本件割賦契約書の記載が口頭で変更され,原告が平成27年5月末日から毎月末日限り250万円を支払うとの合意がされていたとの事実は否認する。
(4)  被告Y1の行為につき不法行為が成立するか否か(争点(4))
(原告の主張)
被告Y1は,原告の無知に乗じて,あるいは原告を畏怖させて,原告をして脱税目的で無効な売買契約を締結させ,原告から売買代金名下に金員を支払わせたのであり,これらの被告Y1の行為は不法行為を構成する。
被告Y1の不法行為により,原告は本訴提起等のために弁護士に委任せざるを得ず,その費用を費やし,また,本件の対処のために膨大な時間を費やしたのであって,これらの損害の合計は500万円が相当である。
(被告らの主張)
被告Y1の行為が不法行為に当たるとの主張は争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実,証拠(甲2ないし6,9ないし11(枝番号を含む。以下同じ。),14ないし18,20ないし24,33,乙1ないし8,10,11,19,20,23,29,34ないし36,証人C,原告X本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
なお,被告らは,証人尋問及び本人尋問後に原告から提出された甲16号証以下の書証につき,時機に遅れた攻撃防御方法であるとして却下を求めるが,これらを取り調べたとしても訴訟の完結を遅延させることとなるとは認め難いから,却下するのは相当でない。
(1)  原告は,大宮で本件歯科医院を経営する傍ら,平成24年12月から南青山で本件サロンを経営していた。
平成25年9月ころ,同サロンが営業不振で閉鎖することとなり,それに伴い,原告は,関係者からB医師(以下「B医師」という。)及び被告Y1の紹介を受けた。その際,被告Y1は,「A」を名乗っていた。
(2)  被告Y1は,同年10月31日ころ,原告に対し,本件サロンの大家とは必ずもめ事が起きるところ,本件サロンの大家とのトラブルは全部自分が解決する,その代わり,本件サロン内の調度品や備品を全て無償で譲るようになどと述べた。原告は,被告Y1を信用し,被告Y1の方針に従うこととし,本件サロン内の調度品や備品を全て無償で譲渡した。
本件サロンは同年12月ころ閉鎖されたところ,被告Y1は,本件サロン閉鎖に伴う残務処理を行った。
(3)  原告は,同年10月ころ以降,被告Y1と連絡を取って相談することが多くなり,原告が熱海市内に所有していた別荘の売却を被告Y1に相談した。
原告は,同年11月24日,B医師と被告Y1が代表取締役を務める株式会社cとの間で,上記別荘につき,専任媒介契約を締結し,同社に報酬を支払った。
そのころ,被告Y1は,原告に対し,当時原告が依頼していた税理士を変えた方が良いと助言し,税理士法人d(以下「d税理士法人」という。)を原告に紹介した。
また,被告Y1は,原告に対し,本件歯科医院につき,診療費未回収患者の対策,医療ローンの導入,ホームページによる集患対策等につき助言を行った。
(4)  被告Y1は,平成26年ころ,本件不動産を2億9800万円で売りに出していた。
被告Y1は,平成26年3月ころ,本件不動産を原告に紹介し,原告は本件不動産を数回内見した。
原告は,同年4月,d税理士法人との間で顧問業務契約を締結し,同法人のC税理士(以下「C税理士」という。)が本件歯科医院の顧問税理士となった。
(5)ア  原告は,本件不動産の購入に乗り気ではなかったが,被告Y1が,原告に対し,本件不動産の売買代金を分割払いにして,それを本件歯科医院のコンサルティング費用とし,被告会社に支払うことにより,実質的に土地代金を支払わずに不動産が手元に残るなどと説明し,同席していた税理士も納得していたことから,原告はその手法に理解を示し,本件売買契約を締結することとした。
本件不動産は3億円に近い金額で売りに出されていたところ,原告と被告Y1は,別途コンサルティング契約書を締結することを条件として,代金額を2億1800円とすることに合意した。
イ  原告,被告Y1,C税理士及びD宅地建物取引士(以下「D」という。)は,平成26年5月1日,d税理士法人の事務所に参集した。
被告Y1は,E弁護士が原案を作成した本件売買契約書及び本件割賦契約書を持参し,原告と被告Y1との間で本件売買契約書及び本件割賦契約書を締結した。また,Dは,原告に対し,重要事項説明書に基づき,本件不動産の説明をした。
本件売買契約書の原案においては,本件売買契約書14条2項の違約金の詳細を規定する欄が空欄となっていたところ,本件売買契約書締結時において,「(1)本物件の現金販売価額の20%相当額」欄に「43,600,000」円と記入され,「(2)本契約書第4条による乙(原告)の本物件使用開始後明渡しまでの期間1か月当たり」欄に「翌月末迄に支払うものとする。」と記入され,「(3)甲(被告Y1ら)の本物件からの転居費用相当額」欄に「売買価額の10%相当とする」と記入がされた。
また,本件割賦契約書においては,「割賦支払期間」欄における数字記入部分が空白とされていたところ,同契約書締結時に,空白部分に記入がされ,「平成26年6月から平成33年10月まで」との記載となった。
被告会社と原告は,本件売買契約の締結と同一の機会に,期間を平成26年5月1日から1年間(ただし,期間満了の1か月前までに,当事者双方からの申出がない限り,半年間延長され,その後も同様とするとの記載がある。),業務委託報酬を月額税抜250万円とする内容の本件業務委託契約書を締結した。本件業務委託契約書は,C税理士が原案を作成したものであった。
ウ  原告は,本件使用貸借契約に基づき,同年7月1日までに被告Y1らから本件不動産の引き渡しを受け,本件不動産の使用を開始した。
エ  C税理士は,原告の委任を受けて,同年7月31日,みずほ銀行恵比寿支店において,原告が本件不動産を購入するに当たって住宅ローンを組むための申請をした。
同銀行恵比寿支店は,同年9月又は10月ころ,C税理士に対し,売買代金全額につきローンを組むことはできず,ローンを組むのは1億円が限度である旨を連絡した。
(6)  原告は,平成26年5月から平成27年1月まで,前記前提事実(3)のとおり,平均して毎月250万円を被告会社に支払った。
C税理士の作成した本件歯科医院の総勘定元帳においては,同医院の業務委託料として平成26年5月から同年12月まで,毎月250万円(税抜)で経理処理されていた。
(7)  原告は,毎月250万円程度の支払に苦慮したことから,平成26年10月ころ,C税理士に対し,電話で,本件売買契約を白紙撤回したい旨の相談をしたところ,C税理士は,契約を解除することはできるが,そのためには本件売買契約書において定められた違約金を支払わなければならなくなる旨を指摘した。
(8)  C税理士は,平成27年3月2日,原告から送付のあった本件通告書を受けて,本件歯科医院の確定申告書類の作成に当たり,業務委託料を費用に計上するか否かを原告に問い合わせたところ,原告は,C税理士に対し,業務委託料を費用に計上しないよう指示した。
これを受けて,C税理士は,本件歯科医院の総勘定元帳において,平成26年12月31日付けで,「事業主貸」との項目を設けた上,同年5月から同年12月までの業務委託料に係る経理処理を取り消した。
2  事実認定の補足説明
被告らは,本件売買契約における分割金の支払開始時期につき,本件割賦契約書においては平成26年6月とされているが,同年5月1日における本件売買契約書及び本件割賦契約書締結時に,1年分の業務委託料が遅滞なく支払われることを条件に,平成27年5月末まで分割金の支払を猶予し,同年6月から支払開始とする旨に口頭で変更されたと主張する。
しかしながら,分割金の支払開始時期という重要事項について,被告ら主張のとおりの合意が成立したのであれば,本件割賦契約書における「割賦支払期間」欄における数字記入部分が元々空欄とされていた以上,「平成27年6月から平成34年10月まで」との記載がされてしかるべきであるが,実際には空欄部分が手書きで補充され,「平成26年6月から平成33年10月まで」との記載となっており,特にこの点を修正する旨の覚書等が締結された形跡もないことも踏まえれば,分割金の支払開始時期を平成27年6月とする旨に口頭で変更されたとの被告らの主張を採用することはできない。
3  争点(1)について
(1)  以上の認定事実を基に,本件売買契約が公序良俗に反するか否かについて検討するに,①本件売買契約と本件業務委託契約との関係,②本件売買契約における本件違約金条項の2点に分けて,以下検討する。
(2)  本件売買契約と本件業務委託契約との関係について
ア まず,本件業務委託契約については本件業務委託契約書が存在し,その成立には争いがないところ,原告は,本件業務委託契約は実態のない仮装の契約であると主張するので,この点につき検討する。
前記認定のとおり,被告Y1は,本件業務委託契約前から原告の相談を受けており,本件サロンの閉鎖に伴う残務処理業務,熱海市内の別荘の売却,本件歯科医院における診療費未回収患者の対策,医療ローンの導入,ホームページによる集患対策等を行っている。
しかしながら,証拠(甲14,原告X本人)によれば,これらはいずれも本件業務委託契約締結以前に被告Y1が行った業務であり,本件業務委託契約締結後のものではないと認められる。
この点,被告Y1は,本件業務委託契約締結後も診療費未回収患者の対策,売上,経費の管理,ホームページによる集患対策等を行ったと供述し,証人Cも同様の証言をするが,これを裏付ける客観的な証拠は何ら提出されておらず,被告Y1及び証人Cの供述・証言を信用することはできない。
仮に,被告Y1が本件業務委託契約締結後にも何らかのコンサルティング業務を行っていたとしても,原告とd税理士法人との間で締結された顧問業務契約における月額顧問料が月額5万円にすぎないこと(甲20)に照らせば,本件業務委託契約における月額報酬250万円(税抜)は対価的均衡を欠いているといわざるを得ない。この点,証人Cは,本件歯科医院の収益状況や,一度M&Aが成約すれば多額の仲介報酬を得ることができることなどから,上記月額報酬は適正な金額であると証言するが,本件歯科医院が毎月高額な収益を上げていることを裏付ける客観的証拠や,被告Y1が本件歯科医院の事業規模拡大のために買収候補先との具体的な交渉等を行っていたことを裏付ける客観的な証拠は何ら提出されていない。実際には,原告は月額250万円程度の支払に苦慮したことから,支払開始から約6か月後の平成26年10月にC税理士に対して本件売買契約の白紙撤回の相談をしていることも考慮すれば,上記月額報酬が適正な金額であるとの上記証言を採用することはできない
したがって,原告と被告会社とが本件業務委託契約書を締結し,原告が業務委託料名目で8か月間にわたって被告会社に支払い続けてきたとしても,本件業務委託契約は実態を伴っておらず,虚偽の契約である疑いが強いというべきである。
イ 以上に加え,①本件売買契約書及び本件業務委託書締結前に,被告Y1が原告に対し,本件不動産の売買代金を分割払いにして,それを本件歯科医院のコンサルティング費用とし,被告会社に支払うことにより,実質的に土地代金を支払わずに不動産が手元に残るなどと説明していたこと,②本件売買契約における分割金の支払額は毎月250万円,本件業務委託契約における月額の支払額は税抜250万円(消費税込270万円)となっていて,支払金額がほぼ同額となっていること,③両契約の代金支払期間がほぼ重複すること,④両契約の契約主体は,本件売買契約は原告と被告Y1らであるのに対し,本件業務委託契約は原告と被告会社であって,形式的には異なっているものの,被告会社は被告Y1が代表取締役を務める会社であって,証拠(乙13ないし15)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社は実質的に被告Y1が支配する会社であると認められること,⑤被告会社は毎期わずかな売上を計上しているものの,全く利益の上がっていない会社であること(乙13ないし15),⑥本件売買契約締結以前に本件不動産は約3億円で売りに出されていたこと,⑦本件売買契約における本件不動産の売買代金額が2億1800万円であることも考慮すれば,両契約のスキームは,本件売買契約の本来の売買代金の一部分を被告会社の売上(業務委託報酬)とすることで,本件不動産の売買代金額を圧縮し,被告Y1らの譲渡所得額を低くして課税を逃れるとともに,原告にとっても,本件不動産購入に係る税額を抑えつつ,本件歯科医院に係る業務委託料として多額の経費を計上することにより課税を逃れることを企図したものと考えられる。
したがって,本件売買契約は本件業務委託契約と一体となって脱税を図るものであり,公序良俗に反するものと認めるのが相当である。
(3)  本件違約金条項について
本件違約金条項については,前記認定のとおり,本件売買契約書締結時において,「(1)本物件の現金販売価額の20%相当額」欄に「43,600,000」円と記入され,「(2)本契約書第4条による乙(原告)の本物件使用開始後明渡しまでの期間1か月当たり」欄に「翌月末迄に支払うものとする。」と記入され,「(3)甲(被告Y1ら)の本物件からの転居費用相当額」欄に「売買価額の10%相当とする」と記入がされたことや,証拠(乙20)によれば,本件売買契約が原告の責めに帰すべき事由により解除された場合には,原告は,被告Y1らに対して,①売買代金額の40%相当額(合計8720万円)及び②賃料相当損害金と転居費用を合わせて売買価額の10%相当額(2180万円)の支払義務を負うことが規定されたものと解される。
したがって,本件売買契約が原告の責めに帰すべき事由により解除された場合には,原告は本件違約金条項により,合計1億0900万円の支払義務を負うところ,これは本件売買契約における売買代金の50%にも上るものである。宅地建物取引業法38条1項は,「宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において,当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定めるときは,これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に反する特約は,代金の額の十分の二をこえる部分について,無効とする」と規定しており,上記規定は宅地建物取引業者自身が売主となる場合に関しての規定ではあるものの,この規定の趣旨に鑑みれば,本件違約金条項の違約金の額はあまりに高額であるといわざるを得ない。
被告らは,被告Y1らが負うリスクを担保するために違約金の金額を高めに設定する必要があったと主張するが,本件歯科医院の収益状況があまり芳しくなかったことが推察されることからすると,本件違約金条項は,原告を本件売買契約に拘束するために極端に厳しいものとなっているといえる。
したがって,原告自身が本件違約金条項について説明を受けて納得の上で本件売買契約を締結したものであるとしても,本件違約金条項は公序良俗に違反するというべきである。
(4)  以上のとおり,本件売買契約が本件業務委託契約と一体となって脱税を図るものであること,本件違約金条項自体が公序良俗に反するものであることから,本件売買契約は全体として公序良俗に違反し,無効と認めるのが相当である。
4  争点(2)について
以上によれば,本件業務委託契約は仮装の契約であり,虚偽表示により無効であると認められるから,被告会社は同契約に基づいて原告に対して委託料を請求することはできない。
5  争点(3)について
前述のとおり,本件売買契約自体が公序良俗違反により無効であるから,原告は本件違約金条項に基づく違約金の支払義務を負わない。
6  争点(4)について
原告は,被告Y1が,原告の無知に乗じて,あるいは原告を畏怖させて,原告をして脱税目的で無効な売買契約を締結させた行為が不法行為を構成すると主張する。
しかしながら,前記認定によれば,被告Y1が原告に対して本件のスキームを説明し,原告自身も,業務委託料名下の支払をすることで本件歯科医院において多額の経費計上ができることを目論んで本件売買契約の締結に至ったと認められるから,被告Y1が原告の無知に乗じて本件売買契約を締結させたとまで認めることはできない。
また,本件売買契約を締結する際に,被告Y1から脅迫的言辞があったのであれば,本件売買契約締結後に警察に相談するなどがあっても然るべきであるが,原告はそのような行為には及んでいない(原告X本人)。かえって,原告は本件売買契約締結後に,被告Y1と親しく接し,家族とともに被告Y1のアパートに行って被告Y1からサーフィンを教えてもらうなどしており(乙8,10,原告X本人),脅迫的言辞を受けた者とは思われない行動をしていることから,本件売買契約締結の際に被告Y1が原告を畏怖させたと認めることはできない。
よって,被告Y1が原告の無知に乗じた,あるいは原告を畏怖させたことを前提として,被告Y1の行為が不法行為に当たるとの原告の主張を採用することはできない。
7  不当利得について
以上のとおり,本件売買契約は無効であるから,被告Y1は,原告から本件売買契約の手付金として受領した1000万円につき法律上の原因なく利益を受けたものであり,原告に対し,不当利得金として返還する義務を負う。
また,本件業務委託契約は虚偽表示により無効であると認められるから,被告会社は,原告に対し,業務委託料名目で原告から受領した合計2400万円を不当利得金として返還する義務を負う。
他方で,以上を超えて被告Y1に利得があったことを認めるに足りる証拠はない。
また,被告Y2が利益を得たことを認めるに足りる証拠はないから,被告Y2に対する不当利得返還請求は理由がない。
8  結論
以上によれば,原告の請求は,①被告Y1に対し,1000万円及びこれに対する本件通告書の到達の日の翌日である平成27年2月26日から支払済みまで,②被告会社に対し,2400万円及びこれに対する催告の日の後(訴状送達の日の翌日)であることが明らかな同年7月3日から支払済みまで,それぞれ民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却し,被告らの反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部
(裁判官 戸室壮太郎)

 

〈以下省略〉

 

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