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「営業支援」に関する裁判例(23)平成29年 8月31日 東京地裁 平27(ワ)10804号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)

「営業支援」に関する裁判例(23)平成29年 8月31日 東京地裁 平27(ワ)10804号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)

裁判年月日  平成29年 8月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)10804号・平27(ワ)20771号
事件名  損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)
裁判結果  一部認容(本訴)、請求棄却(反訴)  上訴等  控訴  文献番号  2017WLJPCA08316012

裁判経過
控訴審 平成30年 4月10日 東京高裁 判決 平29(ネ)4427号 損害賠償、損害賠償等反訴請求控訴事件

裁判年月日  平成29年 8月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)10804号・平27(ワ)20771号
事件名  損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)
裁判結果  一部認容(本訴)、請求棄却(反訴)  上訴等  控訴  文献番号  2017WLJPCA08316012

平成27年(ワ)第10804号 損害賠償請求事件(本訴事件)
平成27年(ワ)第20771号 損害賠償等反訴請求事件(反訴事件)

東京都千代田区〈以下省略〉
原告・反訴被告 X株式会社(以下「原告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 住田昌弘
同 小林洋介
同 小澤亜季子
同 佐藤宏和
埼玉県所沢市〈以下省略〉
被告・反訴原告 Y1(以下「被告Y1」という。)
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y2株式会社(以下「被告Y2社」という。)
同代表者代表取締役 B
上記両名訴訟代理人弁護士 戸田泉
同 池田尚弘
同 角地山宗行
同 八田博司
同 笠間健太郎

 

 

主文

1  被告Y1は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告の被告Y1に対する本訴主位的請求,予備的請求1及びその余の予備的請求2をいずれも棄却する。
3  原告の被告Y2社に対する請求をいずれも棄却する。
4  被告Y1の反訴請求を棄却する。
5  訴訟費用は,原告と被告Y1との間においては,本訴反訴を通じ,原告に生じた費用の9分の1を被告Y1の負担とし,その余は各自の負担とし,原告と被告Y2社との間においては,全部原告の負担とする。
6  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴
(1)  主位的請求
ア 被告Y1は,原告に対し,2585万5213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員(うち2585万5213円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員は被告Y2社と連帯して)を支払え。
イ 被告Y2社は,原告に対し,被告Y1と連帯して,2585万5213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  予備的請求1
ア 被告Y1は,原告に対し,797万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員(うち797万4213円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員は被告Y2社と連帯して)を支払え。
イ 被告Y2社は,原告に対し,被告Y1と連帯して,797万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  予備的請求2
ア 被告Y1は,原告に対し,317万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年6分の割合による金員(うち317万4213円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員は被告Y2社と連帯して)を支払え。
イ 被告Y2社は,原告に対し,被告Y1と連帯して,317万4213円及びこれに対する平成27年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)  予備的請求3
被告Y1は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成29年4月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  反訴
原告は,被告Y1に対し,375万円及びうち300万円に対する平成26年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち75万円に対する平成26年9月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,本訴において,原告が,原告との間で労働契約又は準委任契約を締結していた被告Y1が,原告と競業関係にある被告Y2社の副社長として競業行為等を行ったとして,主位的に,被告Y1に対しては労働契約上の職務専念義務違反若しくは競業避止義務違反(以下,一括して「労働契約上の職務専念義務等違反」という。)又は準委任契約上の善管注意義務違反,忠実義務違反,競業避止義務違反,報告義務違反若しくは告知義務違反(以下,一括して「準委任契約上の競業避止義務等違反」という。)あるいは不法行為に基づき,被告Y2社に対しては共同不法行為に基づき,連帯して平成25年4月から平成26年9月までに支払った賃金又は報酬及び経費の合計1277万4213円の損害賠償金及び逸失利益の一部である1308万1000円の合計2585万5213円及びこれに対する被告Y1に対しては催告の後(訴状送達の日の翌日)である平成27年5月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による,被告Y2社に対しては不法行為の後である同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,予備的に,被告Y1に対しては準委任契約上の報告義務違反若しくは告知義務違反又は不法行為に基づき,被告Y2社に対しては共同不法行為に基づき,連帯して平成25年10月から平成26年9月までに支払った報酬及び経費の合計797万4213円の損害賠償金及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求め(予備的請求1),また,被告Y1に対しては準委任契約上の報告義務違反若しくは告知義務違反又は不法行為に基づき,被告Y2社に対しては共同不法行為に基づき,連帯して同年4月から同年9月までに支払った報酬及び経費の合計317万4213円の損害賠償請金及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求め(予備的請求2),さらに,被告Y1に対し,前記各契約を詐欺により取り消したことによる不当利得返還請求権に基づき,同年4月から同年9月までに支払った報酬の合計300万円及びこれに対する催告の後である同年4月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(予備的請求3)事案であり,反訴においては,被告Y1が,原告に対し,原告との間の準委任契約に基づき,未払報酬金75万円及びこれに対する報酬支払日の翌日である平成26年9月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,原告が被告Y1の所有するパソコンを返却せず,その中に入っているデータを無断で閲覧したと主張して,原告に対し,不法行為に基づき,慰謝料300万円及びこれに対する不法行為の後である同月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲の証拠(枝番のある証拠のうち,その掲記がないものは枝番全てを含む趣旨である。)及び弁論の全趣旨により認められる事実)
(1)  当事者
ア 原告(平成24年1月27日よりも前の商号は「株式会社a」であるが,商号変更の前後を問わず,「原告」という。)は,建築工事等の設計,監理,施工並びにその請負,一般及び特定労働者派遣事業,有料職業紹介事業等を目的とする株式会社である。なお,建築工事に関する業務のうち,原告が行っているのは耐震診断の前提となる調査業務であり,耐震診断業務及び構造設計業務は原告の子会社である株式会社b(以下「b社」という。)が行っている。
(甲1,2,32)
イ 被告Y1(昭和34年生)は,原告との間の契約(後記のとおり,この契約の性質については争いがある。)に基づき,平成20年10月から原告の業務を行い,年1000万円の報酬を得ていたところ,平成26年4月以降は,月額75万円の報酬となった。また,被告Y1は,b社の顧問としての業務も行っていた。
被告Y1が原告の業務を行うようになった経緯は,平成20年10月当時,被告Y1が代表取締役を務めていた株式会社c(以下「c社」という。)が業績不振に陥っていたところ,同人と原告代表取締役A(昭和52年生。以下「原告代表者」という。)との間で協議の上,c社が,原告に対し,その建築人材派遣事業を事業譲渡したことに伴うものである。なお,c社は,その後破産した。
ウ 被告Y2社(平成25年8月15日よりも前の商号は「d株式会社」であるが,商号変更の前後を問わず,「被告Y2社」という。)は,建築工事の設計,施工,監理並びに請負,耐震診断,耐震補強設計,耐震改修工事の監理並びに請負,一般労働者派遣事業,特定労働者派遣事業,有料職業紹介事業等を目的とする株式会社である。なお,被告Y2社が,一般労働者派遣事業の許可を取得したのは平成26年9月1日である。
被告Y1につき,平成25年8月15日に被告Y2社の取締役に就任した旨の登記がされている。
(甲4,24)
(2)  原告と被告Y1との間の契約に係る契約書
ア 原告と被告Y1は,従前,両者の間で契約関係を示す書類を交わしていなかったが,平成25年秋頃の原告に対する税務調査への対応の際,次の内容の同年4月1日付けの業務委託契約書(甲9。以下「本件契約書①」という。)を作成した。また,その際には,既に経過した同年3月までの期間に対応した契約書も作成した。
(ア) 委託業務 関東地区の営業支援及びその他原告と被告Y1が合意の上決定した業務
(イ) 契約期間 平成25年4月1日から平成26年3月31日まで
(ウ) 報酬月額 80万円
イ また,原告と被告Y1は,平成26年3月25日,以下のa及びbの内容の業務委託契約書を1通ずつ作成した(以下,aの内容の契約書(甲10,乙4)を「本件契約書②」,bの内容の契約書(乙5)を「本件契約書③」といい,本件契約書①と併せて「本件各契約書」という。証拠(甲64,乙17,原告代表者本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば,上記のとおり契約期間ごとに複数の契約書が作成されており,契約書が存在しない期間についても,時期によって報酬額が異なるものの,税務調査の対応のために契約書が作成された経緯があり,契約期間を異にする本件契約書②と同③が同時に作成されていることなどに照らし,期間ごとに別個の契約があるのではなく,全期間を通じて同一の契約であり,平成20年10月から平成26年3月31日までと同年4月1日から同年9月30日までを含めて,時期により報酬額等の契約内容を異にするものと認められる。以下,全期間を通じていうときには「本件契約」といい,同年4月以降の本件契約書②の内容による本件契約を特定していう場合には「本件契約Ⅱ」という。)。なお,上記2通の契約書には,契約当事者として被告Y1ではなく○○と記載されている。
(ア) 委託業務 a 技術者派遣及び紹介,施工図受託,その他建設コンサルに関する業務その他これに付帯する業務
b 上記aと同じ
(イ) 契約期間 a 平成26年4月1日から同年9月30日まで
b 平成26年10月1日から平成27年3月31日まで
(ウ) 報酬月額 a 75万円
b 委託する事業に関わる売上総利益の15%。ただし,建設コンサルに関する営業委託に関してのみ売上総利益の50%
(エ) 報告義務 a 被告Y1は,原告の請求があるときは,口頭又は書面にて,遅滞なく本件業務の実行状況を報告しなければならない。本件業務の遂行に支障を生じるおそれのある事故の発生を被告Y1が知った場合,同人は,その事故の帰責の如何にかかわらず,その旨を直ちに原告に報告し,原告と今後の対応方針についての協議を行うものとする。
b 上記aと同じ
(3)  原告の就業規則
原告の就業規則には,次の内容の定めがある。
第37条 社員は,常に次の事項を遵守し,業務に精励しなければならない。
第14号 会社の許可なく,他の会社等の業務に従事しないこと。
第15号 会社の承諾なく,会社の競業を直接的又は間接的に営み,又は競業を営む事業者に就職しないこと。退職後も2年間は同様とする。
(甲13)
2  争点及びこれに対する当事者の主張
(1)  本件契約が労働契約か業務委託契約か(本訴主位的請求)
(原告の主張)
被告Y1は,平成20年10月頃,原告との間で,期間の定めのない労働契約を締結しており,原告の正社員かつ幹部従業員であった。被告Y1は,他の会社向けに提出された原告の業務文書において原告の統括責任者と記載されていたこと,原告の代表取締役も出席する幹部会議で建築事業本部長として事業の状況について報告を行っていたこと,同本部工事グループの会議において同グループ所属の従業員に対して細部にわたって業務上の指揮命令を行っていたこと,他の顧問とは異なり年間1000万円程度の賃金を得ていたこと,原告の幹部社員及び役員にのみ認められていた原告の株式を保有していたことなどから明らかなとおり,対外的にも内部的にも支配人に準ずる高い地位に就いていた。労働時間の管理はされていなかったものの,これは管理監督者として自主裁量の幅が広かったからにすぎず,実際には概ね午前9時頃から午後6時頃までフルタイムで勤務していた。
本件各契約書は,業務委託契約書という表題となっているが,これは,原告の税務調査に際し,被告Y1の給与債権差押え回避のために真実と異なる外観を仮装する書面として作成されたからであって,原告と被告Y1との契約関係の実態を示すものではない。
(被告らの主張)
被告Y1は,平成20年10月から平成26年9月までの間,業務委託契約である本件契約に基づき,独自の人脈や営業能力を駆使して顧客を原告に紹介したり,営業についてのアドバイスをしたりするなどして原告の営業を支援していたものであり,原告の指揮監督下になく,原告との間で労働契約は締結していない。このことは,被告Y1が,原告による労働時間の管理を受けず,休日・休暇等についても自由であったこと,報酬について原告の給与規定の適用を受けなかったこと,その他原告の就業規則が適用されたことがなかったことからも明らかである。被告Y1は,平成24年頃からは営業の便宜のため建築事業本部長の肩書を与えられていたものの,実質的な役職は顧問であった。また,報酬が他の顧問と比べて高額なのは,c社の事業譲渡に伴い,c社の債権者に支払をする被告Y1の生活保障のためであり,通常の従業員であれば,原告の代表取締役と同額の1000万円もの報酬が支払われることはあり得ない。
本件契約書①は,原告に対する税務調査を契機として,業務委託契約の実態を反映させて作成されたものであり,本件各契約書はいずれも本件契約の実態を表している。原告代表者自身,本件契約書②及び③を作成する際,被告Y1に対し,来期の契約を継続するか否かという話をしており,期間の定めのない労働契約ではなく,業務委託契約であることは明らかである。
(2)  被告Y1の労働契約上の職務専念義務等違反,準委任契約上の競業避止義務等違反の成否及び損害(本訴主位的請求並びに予備的請求1及び2)
(原告の主張)
ア 主位的請求
(ア) 被告Y1の義務
被告Y1は,原告との間で労働契約を締結していたものであるから,就業規則第37条第14号に基づき,原告の許可なく,他の会社の業務等に従事するのを禁じられており,職務専念義務を負っていたほか,同条第15号に基づき,原告の承諾なく,会社の競業を直接的又は間接的に営み,又は競業を営む事業者に就職するのを禁じられており,競業避止義務も負っていた。
仮に本件契約が業務委託契約であると評価されるとしても,被告Y1は,原告から年間1000万円程度の報酬及び原告の株式の保有などの高待遇を受け,原告の幹部会議や部門会議で本部長として会社への報告や部下に対する具体的な業務指示を行い,フルタイムで原告のために業務を行っていた以上,同契約に基づき,取締役又は支配人に準じて,善管注意義務,忠実義務,競業避止義務並びに競業取引及び利益相反取引に関する報告義務を負うとともに,本件契約の継続に当たり,自己の重要な兼業の状況について告知すべき信義則上の告知義務を負っていた。
(イ) 被告Y1の違反行為及び損害
本件契約に基づく平成25年3月以降の被告Y1の中核的な義務として,e株式会社等のe社グループ向け営業と派遣先への建築人材の仕入確保という二大重点業務があったところ,被告Y1は,本件契約に基づき,前記(ア)の各義務を負っていたにもかかわらず,被告Y2社の株主として株式上場による多額の上場益獲得や,実質的に自らが支配している会社に利益を得させる目的で,原告の利益を害する行為を継続的に行っていた。具体的には,被告Y1は,同月頃,原告の事業の一部を実質的に自らに移転させる意図で,原告と同一商圏内で同種の事業を営む被告Y2社の業務を行うようになり,その後,同社の取締役副社長に就任し,原告の事業と真っ向から競合する人材派遣事業を立ち上げることを含む被告Y2社の3か年計画の実行に着手した上,頻繁に株式会社f(以下「f社」という。),e社グループ各社,株式会社g(以下「g社」という。),株式会社g1(以下,「g1社」といい,g社と併せて「g社グループ」という。)等の関係者と打合せをするなどして,被告Y2社にe社グループ向け業務を受注させたほか,原告の経営資源を流用してg社グループとの業務提携を実現させるなど被告Y2社のための業務に従事し,原告の工事部門や建築人材派遣部門における職務を怠った。そして,被告Y1は,同年秋頃に本件契約書①を作成した際も含め,原告に対して全期間を通じて前記の点について何ら報告していない。
したがって,平成25年3月時点及び同年秋頃時点での被告Y1の前記行為は,労働契約上の職務専念義務等又は準委任契約上の競業避止義務等に違反する。
a 賃金又は報酬及び経費
被告Y1は,平成25年3月以降原告のために業務を行っておらず,原告に対し,同月又は同年秋頃に前記の被告Y2社のための業務遂行等について報告,告知していれば本件契約を解除又は解約できたことからすれば,原告が被告Y1に対して同年4月から平成26年9月までに支払った賃金又は報酬及び経費は,被告Y1の義務違反行為と因果関係のある損害である。その金額は,賃金又は報酬1260万円及び経費17万4213円(接待交通費9万6312円,会議費7327円,通信費5万3174円及び福利厚生費1万7400円)の合計1277万4213円となる。なお,同年秋頃の被告Y1の前記義務違反行為がなければ,本件契約書①が平成25年4月1日付けでバックデートして作成されなかったのであるから,同月以降のものを原告の損害とみるべきである。
b 逸失利益
(a) e社グループに関する取引
f社は,平成24年7月,被告Y2社を通すことなく,直接原告の建築営業本部長である被告Y1に対し,3物件の耐震調査業務を発注することについて打診してきており,原告は,f社との間で被告Y2社を介さないで直接取引ができる状況にあった。しかし,被告Y1は,平成25年5月,被告Y2社の副社長に就任し,e社グループ向けの担当役員としてf社との交渉窓口となって,被告Y2社にf社を通じたe社グループ向け業務を受注させ,これによって,原告は受注できたはずの同業務による得べかりし利益を失った。
すなわち,被告Y2社は,f社を通じ,平成25年5月31日に320万円,同年6月30日に440万円,同年7月31日に240万円,同年8月7日に627万円分の受注を得た。そして,原告は,被告Y2社を通じた過去のe社グループとの取引において粗利益率が約25%であったところ,中間マージンを得ていた被告Y2社の利益率が少なくとも5%を下回らないと考えられるので,前記売上額の利益率30%の合計額である488万1000円が損害となる。
よって,488万1000円の損害のうち,被告Y1に対してはその一部である20万1000円,被告Y2社に対してはその一部である408万1000円を請求する。
(b) g社グループに関する取引
被告Y2社は,平成26年1月当時,一定規模以上の人材派遣事業に必要な一般人材派遣事業の許可を受けておらず,同事業の実績に乏しく,求人企業に対する営業ルートを有していなかった。被告Y1は,一般人材派遣事業の許可を有し,同事業の経験があった原告の顧客リストや顧客から原告が受領していた求人情報という原告の経営資源を被告Y2社の副社長としてg社グループに渡すことにより,本来は原告が契約できたはずのg社グループとの人材派遣事業につき,被告Y2社との間で契約を締結させ,これによって,原告は受注できたはずの同業務による得べかりし利益を失った。
すなわち,被告Y2社とg社グループとの建築人材派遣業務において,両者の利益が半々であるとされているが,被告Y2社の年商が5億円,利益率が15%から25%であるから,被告Y2社とg社グループの業務提携を通じて生み出される利益全体の合計は,年間で1億5000万円から2億5000万円である。そして,被告Y1が原告のために行動していた場合,全体の4割の利益分配を見込むことができた。
よって,g社との業務提携に係る原告の逸失利益は,少なくとも当該業務提携から原告が得られるはずの利益の1年分の最低額である6000万円を下回らないので,被告らに対し,その一部として900万円を請求する。
(c) 株式会社hに関する取引
① 被告Y1は,平成25年6月頃から同年12月頃にかけて,原告の重要得意先である株式会社h及び株式会社h1(以下,両社を総称して単に「h社」という。)の業務について,原告を経由せず,i株式会社(以下「i社」という。)に受注させたが,当該業務の発注額は,同年6月14日から同年12月31日までに813万3424円である。被告Y1は,原告の営業部門がh社から施工図作成業務の委託を受け,i社の技術者を下請けとして使うことができたにもかかわらず,これを行わず,粗利益率(33%)の40%(売上の13.3%)に相当する108万円の紹介手数料を受け取ったことにより,原告に同額の損害を負わせた。
② また,被告Y1は,h社の業務について,原告を経由せず,株式会社j(以下「j社」という。)の人材を使ってk株式会社(以下「k社」という。)に受注させたが,当該業務の発注額は,平成25年10月1日から平成26年3月31日までに462万円,同年6月1日から同年9月30日までに399万1765円である。被告Y1は,h社から原告の営業部門が業務を受注し,j社の技術者を使って業務を遂行することができたにもかかわらず,これを行わず,k社に粗利率33%に相当する280万円を不当に取得させ,原告に同額の損害を負わせた。
よって,被告Y1に対し,①及び②の合計額388万円を請求する。
イ 予備的請求1
(ア) 被告Y1の義務及び違反行為
前記ア(ア)及び(イ)のとおり,被告Y1は,遅くとも,平成25年秋頃において,原告に対する報告義務及び告知義務を負っていたにもかかわらず,被告Y2社のために業務を行っていることなどを報告しておらず,上記各義務に違反する。
(イ) 損害
被告Y1が,前記(ア)のとおり,原告に対して報告,告知していれば,原告は本件契約を平成25年10月までに解除又は解約できたことからすれば,原告が被告Y1に対して同月から平成26年9月までに支払った報酬780万円及び経費17万4213円の合計797万4213円は,被告Y1の義務違反行為と因果関係のある損害である。
ウ 予備的請求2
(ア) 被告Y1の義務及び違反行為
前記ア(ア)及び(イ)に加え,被告Y1は,原告との間で自らの今後の処遇について協議していた平成26年2月17日頃,原告とg社グループとの業務提携が不成立になったことについて原告に対して報告及び告知する義務を負っていたほか,本件契約書②に基づき,本件契約に基づく業務の遂行に支障を生じるおそれのある事故の発生を知った場合に直ちに原告に報告する義務を負っていた以上,遅くとも同年4月時点で原告とg社との業務提携が失注していた事実を原告に対して報告及び告知する義務があったのにこれをしておらず,報告義務及び告知義務に違反する。
(イ) 損害
被告Y1が,前記(ア)のとおり,原告に対して報告,告知していれば,原告は平成26年3月25日付けで本件契約を継続しなかったか,又は解除,解約できたことからすれば,原告が被告Y1に対して同年4月から同年9月までに支払った報酬300万円及び経費17万4213円の合計317万4213円は,被告Y1の義務違反行為と因果関係のある損害である。
(被告らの主張)
ア 被告Y1の義務及び違反行為
(ア) 原告と被告Y1との間で労働契約が締結されていない以上,被告Y1には原告の就業規則の適用はなく,被告Y1は職務専念義務及び競業避止義務を負わない。
(イ) 被告Y1は,本件契約上,他社の取締役に就任することは禁止されておらず,原告の包括的な代表権を与えられていたような事情もないから,信義則上の付随義務として善管注意義務,忠実義務及び競業避止義務を負わない。
また,原告主張の報告義務や告知義務は,新たな労働契約や委任契約の締結を事実上制限するものであり,必要以上に職業選択の自由を制限するものであるから,明示の合意なく認められるべきではない。本件契約は,業務委託契約であるから,その性質上,受任者は,委任者の指揮命令を受けることなく,第三者との間で別の委任契約を締結することや競業取引を行うことも許されるのであり,仮に,委任契約において,受任者の競業行為による委任者の不利益を防止しようとするのであれば当該契約において告知義務を契約の一内容として定めれば足りるにもかかわらず,本件契約にはその旨の定めがない。したがって,被告Y1は報告義務及び告知義務を負わない。
(ウ) 被告Y1は,被告Y2社等に対し,原告の既存顧客リストを利用して求人企業への営業ルートを確保したことや,求人情報をg社に渡したり被告Y2社とg社グループの業務提携の成立を推進したことはなく,原告の建築人材派遣部門や工事部門での職務を怠っていない。
被告Y1がf社,e社グループ各社,g社グループ等の関係者と面談していたのは,あくまで原告のために営業活動を行っていたからである。なお,原告は,被告Y1に対するe社グループ向けの業務及び建築人材の仕入れ確保という二大重点業務について指示をしていないだけでなく,二大重点業務自体が策定されていない。
(エ) 以上のとおり,被告Y1は,労働契約上の職務専念義務等及び準委任契約上の競業避止義務等に違反したことはない。
イ 個別の違反行為及び損害
(ア) 賃金又は報酬及び経費
被告Y1は,原告から委託された建築人材の派遣先の営業等を行うなど本件契約の業務内容を履行したため,原告において,被告Y1の報酬及び経費相当額の損害は生じていない。
原告の建築事業本部の売上高が減少した原因は原告自身の営業力不足にあり,被告Y1が責任を負うものではない。
(イ) 逸失利益
a e社グループに関する取引
被告Y2社が,f社を通じてe社グループに関する業務を受注したのは,従前からのf社との契約関係によるものである。一方,原告が,平成25年以降にf社からe社グループに関する業務を受注できなかったのは,原告が従前の請負契約に関して金銭トラブルを起こしたためであり,被告らの責任ではない。そもそも,原告は耐震調査業務しか行うことができず,f社から耐震診断業務を受注することはできない上,被告Y1が被告Y2社で担当していたのは補強設計に関する業務であるから,何ら原告の利益を害するものではない。
b g社グループに関する取引
被告Y1は,原告の幹部会議において,g社グループと被告Y2社が業務提携を行い,その業務提携に原告が営業請負という形で参加予定と報告していた。つまり,g社グループとの業務連携は,被告Y2社とg社グループとの間で話し合いが先に進んでいたところに原告が参加したのであって,原告は被告Y2社から人材派遣先の企業を開拓する営業を請け負うことしかできず,原告がg社グループと単独で業務連携をすることは事実上あり得なかった。結果として,g社グループと被告Y2社の判断によって原告が被告Y2社の下部組織となることはなかったものの,被告Y1は原告のために被告Y2社とg社の業務提携の打ち合わせに参加し,原告のために派遣先開拓のための営業請負の仕事を獲得しようとしていたのであり,原告に損害はない。
c h社に関する取引
i社のh社からの業務の受注内容は人材派遣に関するものであったところ,h社からの依頼を受けた被告Y1は,原告内に条件を満たすような人材がいればその人材をh社に派遣するつもりであったが,そのような人材がいなかった結果,受注できなかったのであるから,もともと原告が受注できた可能性はなく,原告に損害は発生していない。なお,被告Y1の得た紹介料は43万7010円であり,原告主張の損害の根拠は不明である。
また,k社のh社からの平成25年10月1日から平成26年3月31日までの受注は,被告Y1とは何ら関係がない。一方,同年6月1日から同年9月30日までの業務の受注内容は人材派遣に関するものであったところ,h社からの依頼を受けた被告Y1は,原告内に条件を満たすような人材がいればその人材をh社に派遣するつもりであったが,そのような人材がいなかった結果,受注できなかったのであるから,もともと原告が受注できた可能性はなく,原告に損害は発生していない。結果として,k社がj社から人材を見つけてきたため,被告Y1は紹介料も得ていない。
(3)  被告Y2社の不法行為責任の成否(本訴主位的請求並びに予備的請求1及び2)
(原告の主張)
被告Y2社は,被告Y1を取締役副社長に就任させるに当たり,同人が原告の建築事業本部長として勤務又は業務の履行をしていることを明確に認識しながら,自社の株式の上場のため,平成25年3月以降,同人と通謀し,同人が原告の建築事業本部長として培ってきた経営資源を利用し,同一商圏内で同事業を営む被告Y2社の業務を行わせた上,同年5月には副社長に就任させ,同人が原告で行っていたものと同種の職務を行わせることで,原告の権利を侵害した。
また,被告Y2社は,被告Y1に原告との間の本件契約を合意解約させ,あるいは締結させないこともできたにもかかわらず,被告Y1を被告Y2社の副社長に就任させた事実を告げさせなかった上,重複業務の履行を予定させ,さらに,実際に履行させた事実をあえて原告に告げさせなかったことにより,原告の権利を侵害した。
よって,被告Y2社は,被告Y1と共に不法行為責任を負う。
(被告らの主張)
争う。
(4)  被告Y1による詐欺行為の成否及びそれに伴う損失(本訴予備的請求3)
(原告の主張)
被告Y1は,平成25年5月時点で,e社グループに関する業務に関して原告と被告Y2社が競業関係にある一方,当該業務が被告Y1の原告における二大重点業務のうちの一つであること,g社グループのような組織的な人材紹介先との連携が原告にとって極めて重要で,これを被告Y2社のためだけに推進することは原告の事業機会の喪失という大きな不利益になることを認識しつつ,同月以降,被告Y2社の取締役副社長に就任するなどして,平成26年3月までの間,原告のためではなく,被告Y2社や他社のために業務に従事していた。
そして,被告Y1は,原告における地位や原告の営業方針を踏まえると,自らの被告Y2社の取締役副社長への就任並びに重複業務の履行予定及び実績を原告が知れば,本件契約が継続されないことは容易に理解できたにも関わらず,あえてこれを原告に告げなかった。また,被告Y1は,本件契約Ⅱに関する交渉の際,原告代表者に対し,原告とg社グループとの提携をなんとか実現するよう努力する旨告げ,原告の錯誤に基づいて本件契約を継続させようという故意があった。
以上によれば,平成26年3月25日に継続を決めた同年4月以降の被告Y1と原告との間の本件契約Ⅱは,被告Y1による前記詐欺行為に基づくものであるから,平成28年7月20日に到達した原告準備書面(7)をもって同契約を取り消した。
よって,被告Y1は,不当利得として平成26年4月から7月までの報酬300万円(月額75万円の4か月分)の返還義務がある。
(被告Y1の主張)
被告Y1は,原告に対し,被告Y2社の取締役副社長への就任及び重複業務の履行予定等について法律上告知すべき義務を負っておらず,不作為による欺罔行為はない。
また,原告は,被告Y1から労務の提供を受けており,損失もない。
(5)  原告が被告Y1のパソコンを無断で持ち出し,閲覧したことによる原告の不法行為責任の成否及び損害(反訴請求)
(被告Y1の主張)
ア 原告は,被告Y1が所有・使用していたデスクトップパソコン(以下「本件パソコン」という。)を被告Y1に無断で持ち出した上,被告Y1からの返還請求にも応じず,本訴提起のために必要な資料収集のため,被告Y1のプライベートな情報を含め,本件パソコンの中身を閲覧した。なお,原告が主張するとおり,本件パソコンの保守管理に関する明示又は黙示の合意があったとしても,被告Y1と原告との本件契約が解除された平成26年9月20日時点で当該合意も解除されているというべきであり,その後も原告が本件パソコンを返還しないのは,被告Y1に対する嫌がらせである。
よって,これら一連の原告の行為には不法行為が成立する。
イ 原告の前記アの行為によって被った被告Y1の精神的苦痛は甚大であり,この損害を金額に換算すれば300万円を下らない。
(原告の主張)
被告Y1が使用していた本件パソコンは,c社の事業を原告が譲り受けた時点から,他の事業用資産とともに原告が保守管理することについて被告Y1との間で明示又は黙示の合意がある。また,本件パソコンは,原告の社内ネットワークに接続されており,原告が配布したIDとパスワードがなければログインさえできないデスクトップ型パソコンである。
そして,原告において,被告Y1が原告に一切告げることなく競合他社である被告Y2社の副社長に就任したことに伴い,秘密情報の漏えい等不正行為の有無を確認するという業務上の必要性から,社内ネットワークの一部を構成する電子メール用サーバ機器や端末の内部を相当な手段によって調査し,そこに保存されていた電子メールメッセージ及び文書ファイルを収集したのであるから,目的達成に必要な限度で相当な手段を用いたにすぎず,不法行為は成立しない。
(6)  原告の被告Y1に対する未払報酬の有無(反訴請求)
(被告Y1の主張)
被告Y1は,平成26年3月25日,原告との間で,報酬を月額75万円,支払時期を翌月20日までとする本件契約を締結し,それに基づき,同年4月から同年9月まで業務に従事したにもかかわらず,原告は同年8月分の報酬を支払わない。
よって,被告Y1は本件契約に基づく75万円の未払報酬請求権がある。
(原告の主張)
否認ないし争う。
第3  当裁判所の判断
1  前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)  原告における被告Y1の業務等
ア 被告Y1は,平成16年9月頃から,建築人材派遣事業等を目的とするc社の代表取締役として業務を行っていたところ,平成20年10月,c社が原告に建築人材派遣事業を事業譲渡したことに伴い,原告及びその子会社のb社の業務として,建築工事や建設コンサルティングの受注,建築人材の派遣等についての営業活動,現場の管理等を行うようになった。
そして,原告は,その後に破産したc社の建築人材派遣事業部門の雇用を承継するとともに,原告代表者と被告Y1との間で話し合い,建築関係業務の経験が乏しい原告代表者が,被告Y1の建築関係における人材派遣関係の知識経験やこれまでの取引先関係に期待するとともに,18歳も年上である被告Y1から一般的な知識経験に基づく助言等を受けることも念頭において,同事業部門の運営を主に任せ,報酬として原告代表者と同額の1000万円を支給することとし,平成20年10月に本件契約を締結した。
(甲64,乙17,原告代表者本人)
イ 原告においては,平成24年に事業部制から三つの本部からなる本部制となり,建築事業本部長の下に,人材派遣等を担当するコンサルティンググループ,施工図等の作成を担当する設計・施工図グループ,工事の受注を受けて施工等を担当する工事グループを設置していた。一方,コンサルティンググループのグループ長であったC(以下「C」という。)が平成25年3月に退職し,コンサルティンググループの人員が被告Y1のほかに一人となるに伴い,それ以降は建築事業本部長の下に人材開発グループ,外勤グループを設置するという組織体制となった。
被告Y1は,建築事業本部長として,原告の会長,原告代表者等が出席して毎月開催される原告の幹部会議に出席し,建築事業本部工事グループ等の予算執行状況や業績報告をしていたほか,同工事グループのグループ内会議で,同グループ所属の従業員に対し,売上計上の時期,経理上の項目の分類方法,業者への支払方法,注文書や請求書発行のルール,工事原価予算表のフォーマットサイズ等を指示したり,原告の社内稟議システムにおいて,継続的に原告の従業員が申し出た経費や従業員の昇給,工事業者との間の契約代金等の案件について決裁をするなどしており,原告の入社式で建築事業本部長として挨拶をすることもあった。
(甲3,6,35,46,64,原告代表者本人)
ウ 被告Y1は,平成24年から原告の建築事業本部長の肩書を使用して業務を行い,平成23年12月から平成24年4月までのe社グループ向け業務において,原告の統括責任者として,原告のプロジェクトチームを率いて社外とのやり取りを行うなど,対外的にも原告の建築事業部門の責任者として業務を行っていた。
また,被告Y1は,原告の業務を行うようになって以降,顧問の肩書の名刺を使用していたが,平成24年からは建築事業本部長の肩書の名刺も使用するようになった。
(甲33,34,39,64,乙2)
エ 被告Y1は,自己の予定を記載した業務予定表を原告内部で共有していたものの,営業活動の相手先や営業方法等について原告代表者等から指示等を受けることはなく,業務日や業務時間を含めて勤怠管理を一切受けていなかった。(甲7,乙17,原告代表者本人)
(2)  原告における被告Y1の報酬等
ア 被告Y1は,本件契約に基づいて原告の業務を行うようになって以降,多少の増減はあったが,概ね原告から年収約1000万円(月額約83万3000円)の報酬を得ていた。平成26年4月分以降は月額75万円となり,同年7月分まで支給された。なお,原告は,被告Y1から,同人の債権者からの差押えを回避したいとの要望を受け,当初は被告Y1に対して現金で報酬を手交し,その後は同人の妻名義の銀行口座に報酬を振り込んでいた。
被告Y1に対する報酬については,給与所得として源泉徴収が行われることはなく,社会保険料も控除されていなかった。
(乙6,17,原告代表者本人,被告Y1本人)
イ 被告Y1は,自己の財産に対する差押えを懸念し,被告の妻名義で,平成21年4月16日から平成26年3月4日まで,原告の株式の約4.7%を保有していた。(甲8)
ウ 被告Y1は,原告からの報酬について,事業所得として青色申告をしていた。(乙1の1,17,被告Y1本人)
(3)  被告Y2社における被告Y1の業務等
ア 被告Y1は,平成25年3月頃から,被告Y2社の業務をするようになり,同年5月20日,被告Y2社の成長戦略3か年計画に必要な人材として,取締役副社長に任命され,e社グループ向けのプロジェクトの工程管理を担当することになり,対外的にもその旨紹介され,同年8月1日,被告Y2社の取締役として登記された。
被告Y1は,被告Y2社の取締役に就任して以降少なくとも月額40万円以上の報酬を得ており,その後,毎年増額され,平成28年時点では年収1000万円を超えた。
(甲15,16,82,被告Y1本人,被告Y2社代表者本人)
イ 被告Y1は,遅くとも平成25年8月頃までに,被告Y2社の売上について,平成26年3月以降,建設コンサル部門で月間100万円,建築人材派遣事業部門で月間4800万円以上の売上を見込んだ試算をした。
また,被告Y1は,遅くとも平成25年11月頃までに,被告Y2社の株主構成等を検討し,平成28年6月に株式上場とすることを予定しており,平成26年4月頃までに,被告Y2社の株式10%を保有する株主となった。
(甲72,83,85,86,93,94,被告Y1本人,被告Y2社代表者本人)
ウ 被告Y1は,被告Y2社の肩書で,平成25年3月にl社との間で設備工事等の見積もりについてのやり取りをしたほか,同年6月に株式会社m(以下「m社」という。)との基礎設計等に関する打ち合わせに同席したり,同年11月や平成26年5月に株式会社n工務店(以下「n工務店」という。)と建築構造士に関して面談するなどした。(甲7,55,71,73)
(4)  e社グループに関する取引
ア 原告における状況
(ア) 原告は,平成23年12月頃から平成24年3月頃まで,e株式会社を発注者,総合監理をf社とする建屋耐震診断,施工工事に関し,f社から同工事を受注した被告Y2社から耐震診断調査業務を請け負い,8000万円の売上を計上した。同業務は,原告の下に,株式会社o(以下「o社」という。)等が請け負う構造となっていた。被告Y1は,同業務につき原告の総括責任者の立場で関与していた。
その後,原告とo社との間で請負金額についてトラブルがあり,被告Y2社代表者は,同月12日頃,被告Y1に対し,f社からの同月末の支払の件として,原告とo社の問題が解決することが前提となり,その解決に当たっては被告Y2社及びf社へ迷惑一切をかけない旨の書類作成等が必要とした上で,それでf社が承諾すれば被告Y2社から原告への支払が確約できるが,同月末の支払が延期となれば被告Y2社から原告への支払も延期しなければならない旨告げた。
これを受けて,原告は,f社及び被告Y2社に対し,o社からの請求が不当に高額であり,打合せをしてきたが折合いが付かない状況が続いていること,査定金額を同月9日付けでo社へ全額支払い,早期解決できるよう取り組んでいくこと,f社及び被告Y2社への金銭的な負担など一切迷惑をかけないことを記載した同月16日付けの「お詫びと今後の対応について」と題する文書を送付した。
また,原告は,f社及び被告Y2社に対し,上記文書と同内容に加えて,同月28日にf社とo社との打合せで再度査定した金額を同月30日に全額支払ったこと,同年4月4日にo社の社長との打合せを予定しており,引き続き早期解決できるよう取り組むこと等を記載した同月2日付けの「お詫びと今後の対応について」と題する文書を送付した上,さらに,o社との間で起きた請求支払問題に関して和解が成立したことを報告するとともに,金銭的な負担等迷惑は一切かけない旨を記載した同年6月13日付けの「お詫びと和解報告について」と題する文書を送付した。
(甲17,39,42,44,45,乙8,9,16)
(イ) 被告Y1は,平成24年7月23日,原告の工事グループ会議において,f社から,e社グループ向けの3物件に関する耐震診断調査等の見積依頼が来ていることを報告し,同月25日頃には,f社に対し,e社グループ向けの3店舗の耐震診断調査・評価の見積書を提出した。
被告Y1は,その後も同年8月ないし10月の同会議において,e社グループ向けの耐震診断調査として,設計を担当するf社から原告が一次請負として受注をする見込みがあると報告していた。
しかし,その後,原告において,f社から耐震診断調査等を受注することはなく,f社を通じたe社グループ向け業務の取引は,前記(ア)の案件のみであった。
(甲35の3,49,66,乙16,原告代表者本人,被告Y1本人)
イ 被告Y2社における状況
被告Y2社は,平成19年5月頃からf社と取引があり,平成22年10月29日,f社の顧客の施設に係る計画・設計関連業務に関する提携を結ぶなど継続的な取引関係にあり,平成25年5月から同年7月までの間に1000万円の受注があるなど,e社グループ向けの耐震診断調査・評価等についての案件を継続的に受注していた。(甲18,乙10ないし14,16,18,被告Y2社代表者本人)
(5)  g社グループに関する取引
ア 被告Y2社における状況
(ア) 被告Y2社は,平成25年春頃から,g社との間で,共同で,建築の経験や知識のない者を中心に建築技術者を募集した上,被告Y2社が応募者の中から従業員として雇用するとともに,g社がその者を指導して建築資格を取得させる一方,被告Y2社又はその下部組織である別会社がゼネコンや工事会社等の人材の派遣先を開拓する営業活動を行い,当該派遣先に人材を派遣するというスキームの業務提携について検討していた。そして,被告Y1は,遅くとも同年11月頃に上記の業務提携の状況について認識していた。(甲5,21,23,乙17,18,被告Y2社代表者本人)
(イ) 被告Y2社は,平成26年1月15日,g社グループとの間で業務提携について協議し,その場には被告Y1も被告Y2社の副社長の立場で出席していた。その際,被告Y2社が営業を行い,人材の派遣先を紹介した場合,g社グループ50%,被告Y2社50%の利益率とすること,被告Y2社の下部組織と位置付けられる別会社が営業を行い,人材派遣先を紹介した場合は下部組織40%,g社グループ30%,被告Y2社30%の利益率とすることが検討されていたが,配分比率等について更なる協議をすることとされた。
その後,被告Y2社とg社グループは,同年2月16日,建築人材育成・建設人材市場活性化ビジネスに関する業務提携契約を締結した。その内容は,被告Y2社が,派遣先ないし受入先である第三者との間で建設人材派遣及び建設人材紹介の契約を締結した場合に,当該人材に係る原価に利益を上乗せした額を販売価格として当該第三者に請求した上で,当該利益を被告Y2社とg社グループとの間で折半する,被告Y2社は前記建築人材育成に関する業務の下部組織として営業代行店を置くこととされたが,少なくとも原告は同業務に直接あるいは下部組織としても関与しないこととされた。
(甲22,23,24,乙15,被告Y1本人,被告代表者本人)
イ 被告Y1の原告における報告等の状況
被告Y1は,平成25年11月13日,原告の幹部会議において,過去に取引関係になかったg社グループとの間で,g社で短期の研修プログラムを受け,派遣会社であるg1社に社員で受け入れることを想定しているが,両社は教育,募集については長けているものの,未経験者を派遣させるまでの営業能力がないため,原告が営業請負で入ることを検討中であると報告した。
また,被告Y1は,同年12月11日の同会議において,g社グループの件については先月に引き続き打合せ進行中であり,平成26年1月15日の同会議においては,派遣の提携が決定し,同年2月上旬よりスタートする見込みであると報告し,同月13日の同会議では,g社グループと被告Y2社との間で契約書が締結され,4月から派遣できるよう全国に募集をかける方向であり,来期に実績が出る見込みと報告した。
その後,前記のとおり,被告Y2社とg社グループとの業務提携が同年2月16日に成立し,原告が当該業務提携に関与することはなくなったものの,被告Y1は,そのことを認識しながら,これを原告代表者に報告しなかった。
(甲6の15ないし18,被告Y1本人)
(6)  その他の取引等
ア 被告Y1は,平成25年3月頃から,pビルの耐震工事に関し,被告Y2社の立場において,施工業者として見積書を提出したq株式会社(以下「q社」という。)との打ち合わせに同席したり,施主である株式会社rとの打合わせに同席して施工業者の提出した見積もりを比較した書面を提出するなどして関与していた。同ビルの工事については,被告Y2社が設計及び管理の業務を受注し,h社が施工の業務を受注した。
一方,原告は,同年9月,同ビルの工事に関する契約に関し,被告Y1の業務の履行の結果,60万円の報酬を得た。
(甲59,67ないし70,87,88,被告Y1本人)
イ h社は,k社との間で,平成25年10月1日から平成26年3月31日までの耐震補強工事設計監理を業務委託する内容の契約(報酬462万円),同年6月1日から同年9月30日までの現場管理を業務委託する内容の契約(報酬399万1765円)を締結した。後者の業務委託についてk社が受注したのは,被告Y1が,h社から現場管理を行うことができる人材の紹介を求められたところ,原告にはそのような人材がいないとして,k社を通じてj社の人材を派遣したためである。
また,h社は,i社に対し,平成25年6月14日から同年12月31日までの施工図作成を業務委託する内容の契約(報酬813万3424円)を締結した。i社が受注したのは,h社から施工図作成等を行うことができる人材の紹介を求められた被告Y1が,原告には対応可能な人材がいないとして,原告の従業員であったCが同年5月に設立したi社を紹介したためである。なお,被告Y1は,平成25年8月から12月にかけて,i社から,人材コンサル料等として毎月10万円前後の報酬を得ていた。
一方,被告Y1は,h社からの業務について,原告に対応可能な人材がいなかったために受注できなかったことを原告の幹部会議等で報告しなかった。
(甲6の13ないし15,56ないし58,79,81,82,乙20,被告Y1本人)
ウ 被告Y1は,平成25年4月から平成26年3月にかけて,q社と多くの打ち合わせをしている。その結果,b社は,平成25年5月,同社から構造設計の業務(売上高180万円)を受注した。
(甲7)
エ 被告Y1は,平成25年11月から平成26年6月にかけて,n工務店と10回以上の打ち合わせをしており,その点を幹部会議で報告することもあったが,原告は同店から業務を受注することはなかった。
そのほかにも,被告Y1は,多くの業者と打ち合わせを行っていた。
(甲6の16,7)
(7)  本件契約を巡るやり取り
ア 原告と被告Y1は,従前,両者の間で契約関係を示す書類を交わしていなかったところ,平成25年秋頃の原告に対する税務調査への対応の際,前提事実(2)アのとおり,同年4月1日付けの本件契約書①を作成した。
イ 原告代表者は,平成26年2月ないし3月頃,建築事業部門の業績が下がっていることから,被告Y1との間で,今後の業務の在り方や報酬等について話し合いを行い,同月20日,被告Y1に対し,「業務委託報酬について」と題する書面を提示した。その書面の内容は,役職は「X社顧問 ※名刺については相談の上決定」とし,条件は「平成26年4月から平成27年9月まで業務委託報酬を75万円とすること」,「平成26年10月から平成27年3月まで業務委託報酬を建築事業本部売上総利益の15%とし,上限金額はなしとすること,別途単発のコンサル売上に関しては粗利の50%とすること」として,今期の事業実績により来期の更新を検討するというものであった。
それを受け,原告と被告Y1は,平成26年3月25日,同年4月以降月額の報酬を80万円から75万円に減額するなど,前提事実(2)イのとおり,本件契約書②及び③を作成した。なお,各契約書には,契約当事者として,被告Y1ではなく,同人の屋号である○○と記載されている。
(甲64,乙1の1,3)
ウ 原告代表者は,平成26年9月頃,被告Y2社のホームページを見て,被告Y2社とg社グループとの業務提携が開始されたにもかかわらず原告がこれに関与していないことを認識し,同月12日,被告Y1にその点を問い質した。被告Y1は,原告代表者に対し,約1年半前から被告Y2社の業務を行っていたことなどを伝え,その後,原告と被告Y1の間の本件契約は解消することとされた。
そして,被告Y1は,同日以降,原告の業務を行わず,同月20日に出社して荷物の整理を行った。
(甲64,乙7,17)
(8)  原告の売上
原告の建築事業部門の売上推移は,次のとおりである。
ア 平成24年度(平成23年4月~平成24年3月)
有料紹介事業約202万円,労働者派遣事業約2億6716万円,工事請負売上約1億3706万円,設計・施工図売上約627万円,コンサルティング売上約641万円,合計約4億1892万円
イ 平成25年度(平成24年4月~平成25年3月)
有料紹介事業約323万円,労働者派遣事業約2億3492万円,工事請負売上約3991万円,設計・施工図売上約1059万円,コンサルティング売上約818万円,合計約2億9683万円
ウ 平成26年度(平成25年4月~平成26年3月)
有料紹介事業約76万円,労働者派遣事業約1億9105万円,工事請負売上約574万円,設計・施工図売上約655万円,コンサルティング売上なし,合計約2億0410万円
エ 平成27年度(平成26年4月~平成27年3月)
有料紹介事業約120万円,労働者派遣事業約5338万円,工事請負売上なし,設計・施工図売上約462万円,コンサルティング売上なし,合計約5920万円
(甲11)
2  争点(1)(本件契約が労働契約か業務委託契約か―本訴主位的請求)について
(1)  前記認定事実によれば,被告Y1は,原告において,主たる業務である建築工事の受注等における営業活動について,その相手先や営業方法を含め,具体的な業務指示を受けることはなく,業務日や業務時間を含めて勤怠管理を一切受けていなかったことが認められる。また,原告は,建築事業本部に関する業務のほとんどを被告Y1の判断に委ねており,その業務の遂行方法,内容等について業務遂行上の指揮監督をしていたとは認められない。
被告Y1は,原告内部で共有されるパソコン上の業務予定表に自身の予定を記入していたものの,本件全証拠によっても,予定を組むことについて承認等を受けていたとは認められない上,原告の事業所外での打ち合わせが多々あるなど,時間的及び場所的な拘束が強かったとはいえない。
原告による被告Y1に対する報酬の支払に当たっては,給与所得として源泉徴収は行われず,社会保険料も控除されていない。また,原告は,被告Y1の妻名義の口座に報酬を振り込むなどしており,被告Y1は報酬を事業所得として青色申告している。
これらの諸事実に加え,被告Y1は,従前自身が代表取締役を務めていたc社の事業譲渡に伴って原告の業務を行うようになり,原告代表者が被告Y1の建築関係における人材派遣関係の知識経験やこれまでの取引先関係に期待するとともに,18歳年上の被告Y1から一般的な知識経験に基づく助言等を受けることも念頭において,報酬として原告内の最高額である原告代表者と同額の1000万円とされ,原告の株式の約4.7%を保有していたこと,自己の財産への差押えを懸念して妻名義の口座への報酬を振り込むことや妻名義での株式保有が認められていたこと,原告と被告Y1との間で,同人の屋号(○○)を用いた契約書を作成していたことなどの事情を総合考慮すれば,被告Y1は,使用者である原告の指揮監督下において労務を提供し,労務に対する代償を支払われていたとは認められず,原告と被告Y1との本件契約は労働契約ではなく,準委任契約としての性格を有する業務委託契約であったと認めるのが相当である。
(2)  これに対し,原告は,本件各契約書の表題や報酬の振込先等は被告Y1の債権者からの差押えを免れるため,同人の仮装工作に原告が協力した結果にすぎず,上記契約書の表題等にかかわらず,労働契約を締結した旨主張する。
この点に関して,本件各契約書は,原告に対する税務調査への対応に応じて作成されるなど実態を反映する意図をもって作成されたものではないと認められるので,契約書の表題等から直ちに契約の性質を判断することはできないものの,本件契約が就労実態から客観的に判断して労働契約であると認められないことは前判示のとおりであるから,この点に関する原告の主張は採用することができない。
また,原告は,被告Y1が対内的及び対外的に原告の多くの業務を行っていたことや,経費を原告が負担していたこと,原告が本件契約に関して生活保障を求めていたことなどの事情をもって労働契約である旨の主張をするけれども,いずれも本件契約が業務委託契約であることと矛盾するものではなく,原告の主張する事情は前記判断を左右する事情とはいえない。
したがって,この点に関する原告の主張は,採用することができない。
3  争点(2)(被告Y1の労働契約上の職務専念義務等違反,準委任契約上の競業避止義務等違反の成否及び損害―本訴主位的請求並びに予備的請求1及び2)について
(1)  本件契約に基づく競業禁止義務及び報告義務等について
前判示のとおり,本件契約は業務委託契約であるところ,業務委託契約は準委任契約(民法656条)であり,受任者は,善管注意義務を負い(民法644条),委任者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図り,委任者に損害を及ぼさないようにすべき義務を負う。業務委託契約の受託者について,株式会社の取締役のように競業禁止等の規定(会社法356条)が設けられているわけではないから,競業禁止の特約がない場合に競業自体が一般的に禁止されるとは解されないものの,業務委託契約の内容は,労働契約に近い内容のものや請負契約に近い内容のものなど千差万別であり,委託業務の内容,報酬額,受託者の義務等の契約内容はもとより,契約締結の経緯,実際の業務遂行の際の担当業務の内容等の業務委託契約の履行状況を含む諸事情を総合考慮の上,競業行為等の際に委託者の持つ資源等の活用の程度,競業行為の内容,相当性を個別具体的に検討して,これによって得るべき自己又は第三者の利益の内容程度やこれによって生じる委託者の不利益の内容程度等によっては,委託者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ることのないよう求める善管注意義務の一内容として,競業禁止義務や競業に関する報告義務を負う場合があり,これに違反した場合には債務不履行が成立し得るというべきである。
なお,業務委託契約の受託者が他の会社の取締役に就任することは,忠実義務を負っている株式会社の取締役(会社法355条)についても一般的に禁止されていないことに照らし,特約のない限り,善管注意義務に違反するということはできない。
(2)  被告Y1の義務違反行為及び原告の損害
(ア) 被告Y1の競業避止義務等
以上を前提に被告Y1の負うべき義務の内容についてみるに,前記認定事実のとおり,被告Y1は,平成20年10月以降,原告の業務を行い,原告の幹部会議に参加し,自己が担当する工事グループ等の定期報告をしていたほか,工事グループの原告従業員に対して,業務に関する具体的な指示をしたり,原告の社内稟議システムにおいて決裁をするなど,対内的に原告の重要な地位,権限を有しており,対外的にも建築本部長の肩書きを使用して交渉等に臨んでいたほか,原告代表者と同額の年1000万円もの報酬を得ていた上,原告の株式も保有していたことが認められる。
このように,内外ともに実質的には原告の幹部社員として活動していたとみられることに加え,原告代表者が被告Y1と業務委託契約を締結したのは,前判示のとおり,自らに建築関係の経験が乏しく,被告Y1の建築関係における人材派遣関係の知識経験や取引先関係に期待したほか,18歳年上の被告Y1からの一般的な知識経験に基づく助言等にも期待した経緯が認められることを併せ考慮すれば,被告Y1は,本件契約の期間中,原告代表者の直下にある原告の3つの本部のうちの一つである建築事業本部の責任者として,原告の取締役又は支配人に比肩し得べき立場で経営の中枢を担っていたということができ,これに見合う報酬を得ていたと評価できる。
これらの諸事情を総合すると,被告Y1は,本件契約に基づく善管注意義務の一内容として,原告に対し,自己又は第三者の利益を図る目的で,原告の事業の部類に属する取引を行うなどして原告と競業する行為を行い,原告の営業上の利益を害してはならないという競業避止義務を負うとともに,原告において被告Y1との間で業務委託関係を継続するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき重要な競業に関する情報について報告すべき義務を負い,上記各義務に違反した場合には,債務不履行責任を負うというべきである。
そして,当該行為によって原告の営業上の利益を害するような競業行為が禁止の対象であるところ,競業行為がなければ原告において受注できた相当程度の蓋然性がなければ,競業行為と損害との相当因果関係がなく損害が認められないか,又は原告の営業上の利益を害するような競業行為ではないから,そもそも競業避止義務違反が成立せず,いずれにせよ債務不履行責任を負わないというべきである。
なお,本件全証拠によっても,被告Y1が,本件契約上,原告と同種の事業を行う企業の取締役に就任すること自体が禁止されていたとは認められないので,被告Y2社の取締役に就任することそのものが直ちに法的義務に違反した行為となるものではなく,取締役に就任したことを原告に対して報告する義務があったということもできない。
以下,主位的請求及び予備的請求1,同2について個別に検討することとする。
(イ) 被告Y1の義務違反行為及び原告の損害(主位的請求及び予備的請求1)
a e社グループ向け業務について
前記認定事実のとおり,f社を通じたe社グループ向け業務について,原告は,下請業者であるo社との関係でトラブルが生じ,f社に対して何度もお詫びの文書を送付するなど同社との間で円滑な取引関係になかったこと,原告がf社を通じてe社グループ向け業務を受注したのは被告Y2社の下請けとして行った1案件のみであったのに対し,被告Y2社は平成19年度からf社との間で継続的な取引関係にあったこと,被告Y2社は上記o社のトラブル発生後もf社を通じて受注していることなどからすれば,e社グループ向け業務は,原告としてはあくまで見積書の提出段階にすぎなかったものであり,同業務につき原告が受注できた相当程度の蓋然性があったと認めることはできないので,競業避止義務違反又は損害の発生が認められず,被告Y1は債務不履行責任を負わないというべきである。
原告は,f社が,平成24年7月,被告Y2社を通すことなく,直接原告の建築営業本部長の被告Y1に対し,3物件の耐震調査業務を発注することについて打診してきており,f社との間で被告Y2社を介さないで直接取引ができる状況にあった旨主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,e社グループ向け業務については,被告Y2社がf社から一環して受注しているところ,証拠(乙16,18)及び弁論の全趣旨によれば,被告Y2社はf社から平成23年度から平成27年度までの間の各年度に数千万円から少なくとも約3億4823万円を直接受注しており,これには被告Y2社代表取締役のBとf社の担当部長であったDとの人的関係もあずかっていると認められることからすれば,原告主張に係る被告Y1に対する耐震調査業務の発注の打診については,その時点で原告がf社から直接受注することが決定していたと認めることはできず,あくまで見積書の提出段階にすぎず,この時点において,原告が受注できた相当程度の蓋然性があったと認めることはできないので,原告の主張は採用することができない。
b g社グループ向け業務について
原告は,g社グループとの業務提携の交渉当時,被告Y2社は一般人材派遣事業の経験がなかった上,被告Y1が,原告の建築事業本部長として入手したゼネコンや工務店等の求人情報を被告Y2社のために使っており,それを原告のために用いていれば原告が受注できた旨主張する。
しかしながら,被告Y1が,甲25を含む原告の求人情報を被告Y2社のために使用したことを認めるに足りる証拠はない上,原告はこれまでg社グループとの間で取引関係はなく,被告Y2社が平成25年春頃からg社との間で業務提携について交渉しており,被告Y1が同交渉に参加し始めたのは同年秋頃からであることは前記認定のとおりであることからすると,そもそも,原告がこれまでに全く取引のないg社グループとの間で業務提携の直接の相手方となり得たのかについては疑問がある。
この点に関して被告Y1は,被告Y2社とg社グループとの提携に関する平成26年1月15日の協議について,原告を下部組織として参加させるために出席していた旨供述するところ,被告Y2社作成の上記協議の議事録(甲22)には,同人の肩書が被告Y2社副社長と記載されており,原告の名称が全く記載されていないことからすると,原告を下部組織として参加させるために当該協議に出席していたとの前記供述は採用することができない。もっとも,上記交渉過程において,g社グループから供給される人材の派遣先企業を開拓する営業活動は,被告Y2社又はその下部組織が行うことが検討されていたことは前判示のとおりであるところ,本件全証拠によっても,被告Y1が同交渉の過程でg社グループに対し下部組織の候補として原告を挙げたとは認められないものの,逆に原告が下部組織の候補として全く想定できないような事情も認めるに足りる証拠はなく,交渉の過程において原告が下部組織になり得る状態になかったと認めることもできない。その意味で,原告が上記業務提携に参加するとしても,g社グループと被告Y2社の業務提携に下部組織として参入の可能性があったにとどまるのであり,仮に被告Y1が原告の立場で同交渉に参加していたとしても,当該業務提携に直接の当事者として参入する可能性があったとはいえず,下部組織としては参入する可能性がなかったとはいえないものの,前記判示に照らし,受注できる相当程度の蓋然性があったとまでは認められないから,原告の前記主張は採用することができない。
したがって,同業務提携について,競業避止義務違反又は損害の発生は認められないので,被告Y1は債務不履行責任を負わない。
c h社との取引
前判示のとおり,h社のi社に対する業務の発注やk社を経由したj社に対する業務の発注は,原告にはh社の受注に対応する派遣可能な人材がいなかったためであることからすれば,原告において,相当程度の蓋然性をもって,当該取引を受注できたと認めることはできない。
d その他の取引等
原告は被告Y1に対して二大重点業務を指示したにもかかわらず,各業務をせず,専ら原告にとって有害又は無価値な業務遂行に終始した旨主張する。
しかしながら,原告の幹部会議の議事録にも二大重点業務指示を特定した上で指示をした旨の記載がなく,この指示を裏付ける証拠はない上,原告の業務予定表(甲7)及び幹部会議(甲6)において,被告Y1がpビルやl社の案件などe社グループ向け以外の工事業務に関する打ち合わせ等を多数していたことがうかがわれるにもかかわらず,原告において何ら注意等をしたことを認めるに足りる証拠がないこと,原告の工事部門で一定の売上を上げていることは前記認定のとおりであることなどに鑑みれば,原告において,被告Y1に対して二大重大業務を指示したにもかかわらず,被告Y1がこれらの業務をせず,専ら原告にとって有害な業務ないし取引を行っていたとは認められない。そして,被告Y1が他の多くの業者と打ち合せていた状況や原告の売上高の推移に係る前判示の諸事情を考慮すると,被告Y1の担当業務の全てが全く原告の売上に貢献していなかったということはできず,被告Y1は,原告のために一定の工事業務等を行い,原告の売上に貢献していたことが認められる。
この点に関して原告は,平成24年度から平成25年度にかけて建設投資額は大幅に伸びており,同業他社の売上は増加しているにもかかわらず,原告の建築人材派遣事業等の売上が減少しているのは,被告Y1が義務違反をして専ら原告以外の業務に従事していたためである旨主張するけれども,同業他社といっても,その規模,人員構成等が異なる上,平成25年3月に建築人材派遣事業を担当していたCが退職するなど原告の組織態勢が変更したことなどにも鑑みると,単純に他社の状況と比較することはできず,原告の売上減少をもって,直ちに被告Y1において原告にとって無価値有害な業務のみを行っていたと認めることはできず,この点に関する原告の主張は採用することができない。
e 小括
以上によれば,平成25年3月頃及び同年秋頃の時点において,aからcまでの各個別取引のほか,dのその他の取引等についても,被告Y1の準委任契約に基づく競業避止義務等違反又は損害の発生が認められないので,原告の被告Y1に対する主位的請求及び予備的請求1は,理由がない。
(ウ) 被告Y1の義務違反行為及び原告の損害(予備的請求2)
a 被告Y1の義務違反行為
まず,本件契約を継続することとした平成26年3月ころの原告の認識についてみるに,原告代表者は,g社グループとの業務提携に被告Y2社が関与しているなどと聞いたことはなく,同年2月13日の幹部会議で報告された契約書は原告とg社との間のものである旨供述する(原告代表者12頁)一方で,同月17日の被告Y1との本件契約に関する打ち合わせの際,原告とg社との業務提携を実現させると同人が約束したので本件契約を継続したとも供述する(原告代表者4,5頁)。
しかし,原告代表者は,原告とg社グループとの業務提携に関する契約書の内容を確認していないとも供述するところ(同12頁),原告の規模に照らすと,自社を当事者とする業務提携に関する文書の内容を原告代表者自身が確認しないのは不自然であることや,原告代表者の前記各供述は,g社グループとの業務提携が既に成立したのか否かについて齟齬があるとも解釈できることから,その信用性は慎重に判断すべきである。もっとも,被告Y1は,原告代表者に対し,g社との業務提携について,誰と誰との間で契約が締結されたかについて原告代表者に伝えたことを認めるに足りる証拠はなく,被告Y1が原告の幹部会議において当初から営業請負として関与すると説明していることも踏まえると,原告は,同年2月の時点では,被告Y2社が業務提携に関与していることを認識していたとは認められず,少なくとも,人材を派遣する先の企業を開拓してこれをg社グループ側につなぐ形で業務提携に関与するための交渉を継続していくことになったとの認識を有していたことが認められる。
このように,原告としては,被告Y1のいう営業請負という形式を含め,g社との間で業務提携をし,人材の派遣先企業をg社につなぐというスキームを想定していたところ,被告Y1が担当していた建築事業本部の売上が減少していたためもあって,平成26年3月25日に継続を決めた本件契約Ⅱに基づく被告Y1の報酬が80万円から75万円に減額されたことに鑑みれば,原告が業務提携に参入できるか否かは,原告の利益確保の観点から重要な情報であったものであり,被告Y1が原告の幹部会議で交渉状況について度々報告していたことや,原告代表者が本件契約の継続を決定した動機となっていたことも考慮すると,被告Y1に対する業務委託関係の継続を検討するについても極めて重要な事項であった。
また,被告Y1は,平成25年3月頃以降被告Y2社の肩書でも業務を行うようになり,同年5月に取締役副社長として対外的にも紹介され,同年8月には正式に取締役として登記がされている上,平成26年3月頃には,被告Y2社の株式を10%以上保有し,被告Y2社の建設コンサル部門や建築人材派遣事業部門で相当の売上を上げることを見込んだ3年計画を立案した一方,保有していた原告の株式を全て売却したことに鑑みれば,今後,被告Y1が原告と被告Y2社の双方において両者が競業する業務を行う場合,原告よりも被告Y2社の利益を優先させるのではないか,すなわち,本件契約に基づく善管注意義務が本旨に従って履行されるのかについて原告が疑念を持って当然の客観的状況にあり,その意味からも,被告Y1が被告Y2社のためにした活動やその結果については,原告において本件契約の継続について判断する際の重要事項であったということができる。このことは,前記認定のとおり,原告代表者が,平成26年9月に被告Y1が被告Y2社の取締役副社長に就任してこれまで判示してきたg社グループ等に関する業務を行っていたことを把握した直後に本件契約が解消されたことからも裏付けられる。
以上の諸事情を総合すると,g社グループとの間で平成26年2月16日に業務提携についての契約が成立し,その相手方は原告と建築人材派遣の部門で競業関係にある被告Y2社であって,被告Y1が同業務提携の交渉に被告Y2社側として参加していること,結果的に原告が営業請負のための契約当事者としてはもとより,下部組織としても参入する余地がなくなったことは,原告にとって,同年4月以降の本件契約を継続するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき重要な競業に関する情報というべきである。したがって,被告Y1は,本件契約に基づき,遅くとも本件契約Ⅱの継続を決めた平成26年3月25日までには,同情報を原告に報告すべき義務を負っていたというべきであり,それにもかかわらず,原告代表者に対して前記情報を一切報告しなかったのであるから,本件契約に基づく報告義務を懈怠したものであり,債務不履行責任を負うというべきである。
被告らは,報告義務や告知義務は,受任者の新たな労働契約や委任契約の締結を事実上制限するものであり,必要以上に職業選択の自由を制限するものであるから,明示の合意もなくそのような義務は認められない旨主張する。
しかしながら,前判示のとおり,被告Y1は,単に他社の取締役又は従業員になること自体について原告に報告すべき義務を負っていたものではなく,本件契約に基づく被告Y1の地位,役割や業務内容,報酬等に鑑み,善管注意義務等を負っていた上,原告の事業の部類に属する取引について原告に受注させずに他社に受注させたことなど現に原告と競業する取引を行ったことや,原告よりも被告Y2社の利益を優先させることが想定される事情が客観的に認められる状況の中で,原告にとって重要な取引の経緯及び結果について報告しなかったことをもって被告Y1に報告義務違反があったとしていることは前判示のとおりであるから,不当に職業選択の自由を制限するものではなく,被告らの主張は採用の限りでない。
b 原告の損害
前記認定事実のとおり,原告は,平成26年9月,被告Y2社とg社グループが業務提携に基づく業務を開始したにもかかわらず原告がこれに関与せず,被告Y1が被告Y2社の取締役に就任していることなどを認識したため,被告Y1との間で本件契約を解消したと認められるところ,これに前判示の諸事情を総合すれば,原告において,同年3月25日に前記の報告を受けていれば,同年4月以降は本件契約を継続しなかったと認められる。
したがって,被告Y1は,前記報告義務違反に基づき,原告に対し,同月以降の本件契約を継続したことにより被った損害として,同月分から同年7月分の報酬相当額である300万円の損害賠償責任を負う。
原告は,同年4月分以降の経費についても損害として主張するが,証拠(甲29)によっても,主張に係る経費は被告Y1のみが使用した経費とは認められないばかりか,被告Y1が使用した経費額を認めるに足りる証拠はなく,本件契約書②(乙4)において同月以降は被告Y1が経費を負担するとされていたことも踏まえると,同月以降,被告Y1のために原告が拠出した経費の存在を認めることはできない。
被告らは,原告は被告Y1から労務の提供を受けており,同人の報酬相当額の損害を被っていない旨主張する。
確かに,被告Y1が,原告のために一定の行為をしていたと認められることは前判示のとおりである。
しかし,前判示に係る諸事情を総合すると,平成26年4月以降,相当程度被告Y2社等の業務も行っていたと認められるから,本件契約で想定されていた業務をどの程度行ったか必ずしも明らかでない上,上記の点を考慮して損害の発生を認めないのは,損害賠償法の目的ないし当事者間の公平に照らしても相当でないというべきであるから,被告らの主張は採用することができない。
c 小括
以上によれば,被告Y1は,本件契約を平成26年4月以降も継続するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を原告に報告しなかったことについて報告義務違反として債務不履行責任を負い,原告に対して300万円の損害賠償債務を負うというべきである。
4  争点(3)(被告Y2社の不法行為責任の成否―本訴主位的請求並びに予備的請求1及び2)について
原告は,被告Y2社が,被告Y1と通謀し,積極的に原告と競業する事業を行わせ,原告の権利を侵害したため,不法行為責任を負う旨主張する。
前記認定事実,証拠(甲15,被告Y2社代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告Y2社は,被告Y1が原告の建築事業本部長の立場で原告の業務を行っていることを認識した上で,平成25年5月に副社長に就任させ,同年8月1日には取締役の登記も経由して,自社の業務を行わせていたことが認められる。
しかしながら,被告Y2社代表者は,被告Y1について,原告との間では労働契約ではなく業務委託契約が締結されているから,被告Y2社の業務を担当させることは問題ないと認識していたと供述するにとどまり(被告Y2社代表者本人1,9ないし11,19頁),本件全証拠によっても,被告Y2社において,被告Y1と原告の間の本件契約に係る形態や交渉経緯,被告Y1の行っていた業務内容等について詳細に認識していたとまでは認められない上,原告から事業の譲渡を受けたり原告の顧客を奪うことを意図したりして被告Y1を積極的に自社に引き抜き,業務を行わせことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,被告Y2社が被告Y1を取締役副社長として業務を行わせたことをもって,社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な行為ということはできないので,被告Y2社は不法行為責任を負わない。
よって,原告の被告Y2社に対する主位的請求並びに予備的請求1及び2は,いずれも理由がない。
5  争点(4)(被告Y1による詐欺行為の成否及びそれに伴う損失―本訴予備的請求3)について
前判示のとおり,被告Y1は予備的請求2に係る債務不履行に基づき300万円の支払義務を負うので,予備的請求3に係る争点(4)について判断する必要はない。
6  争点(5)(原告が被告Y1のパソコンを無断で持ち出し,閲覧したことによる原告の不法行為責任の成否及び損害―反訴請求)について
(1)  被告Y1は,原告が被告Y1の本件パソコンを被告Y1に無断で持ち出し,被告Y1の家族の写真等プライベートな情報を閲覧した上,被告Y1による返還請求にも応じないことから,不法行為が成立する旨主張する。
(2)  前記認定事実に加え,証拠(甲15,16,18の2ないし5,21,22,64,乙7,17)及び弁論の全趣旨によれば,被告Y1は,本件契約に基づいて原告の業務を行っている際,自らの所有していた本件パソコンを使用していたところ,本件契約を解消するに至った平成26年9月20日に原告代表者に同パソコンの返却を求めたものの,原告代表者から何の連絡もなく,同パソコンが返却されていないこと,原告において,同月頃,被告Y1が被告Y2社の取締役に就任して競業行為を行っていた可能性を認識したことを契機として,情報漏えいを含め,同行為の調査を目的として,同パソコン内にあったデータについて,同パソコンに直接ログインして閲覧したほか,原告の社内ネットワークに接続されたメールサーバ上の電子メールやその添付ファイルを閲覧するなどして調査したことが認められる。
(3)  前判示の諸事実を総合すれば,被告Y1が,被告Y2社の取締役に就任して原告と同種の事業の部類に属する取引を行っていることが合理的に疑われる事情が存したと認められるから,被告Y1が業務上使用していた本件パソコン内でやり取りされていたデータの内容等を調査する必要性はあったということができる。そうすると,原告において,その調査のため,本件パソコン内のファイルに加え,社内ネットワークに接続されたメールサーバ上の電子メールや添付ファイルを閲覧するなどした際,データの内容を閲覧して確認しなければ,調査との関連性の有無が判明しないことから,本件パソコンにある被告Y1の家族の写真等の私的なデータを閲覧することは不可避な面があり,これらを閲覧したことをもって直ちに不法行為が成立するということはできない。
また,当該調査は社会通念上許容される範囲内で認められるものであり,原告において,相当な期間において,必要な範囲で調査,閲覧した後には本件パソコンを返却すべきところ,原告が本件パソコンを保有しているにもかかわらず,返却を求められても何ら応答せずに返却していないことがうかがわれるものの,同パソコンの型式等やその中に入っているデータの内容を認めるに足りる的確な証拠はなく,物的損害を超えて直ちに慰謝料が認められるような特別な事情が存在するとまでは認められないから,原告が不法行為責任を負うとはいえない。
よって,被告Y1の不法行為に基づく慰謝料請求は理由がない。
7  争点(6)(原告の被告Y1に対する未払報酬の有無―反訴請求)について
平成26年4月以降に原告が被告Y1に対して支払った報酬を債務不履行に基づく損害として認めた前判示に照らし,被告Y1は,同年8月分の報酬を請求することはできないというべきであるから,この点に関する被告Y1の請求は理由がない。
8  結論
以上によれば,原告の本訴請求は,予備的請求2のうち,被告Y1に対し,債務不履行に基づく損害賠償として,300万円及びこれに対する催告の後である平成27年5月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,原告の本訴主位的請求,予備的請求1及びその余の予備的請求2並びに被告Y1の反訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部
(裁判長裁判官 春名茂 裁判官 西村康一郎 裁判官 戸取謙治)

 

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