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「営業支援」に関する裁判例(16)平成29年12月25日 岐阜地裁 平28(ワ)163号 地位確認等請求事件

「営業支援」に関する裁判例(16)平成29年12月25日 岐阜地裁 平28(ワ)163号 地位確認等請求事件

裁判年月日  平成29年12月25日  裁判所名  岐阜地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)163号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部却下、一部認容、一部棄却  上訴等  控訴<後、和解>  文献番号  2017WLJPCA12256002

要旨
◆被告と有期雇用契約を締結し就業をしていた原告6名が、被告による雇用契約の不更新を社会通念上相当でないと主張して、労働契約法19条に基づき、それぞれ地位確認と賃金請求をした事案。裁判所は、有期雇用契約について、原告らが雇用契約の更新を期待することに合理的な理由がある(同条2号)とした上で、原告らの雇止めについて、被告の雇用喪失に対する手当が不相当であったことなどを理由として、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものであると認めることはできないとし、口頭弁論終結時までに定年退職の時期を迎える原告2名を除いた4名につき地位確認の請求を認め(2名については過去の法律関係の確認を求めるものであり確認の利益はないとして訴えを却下した。)、原告6名について賃金請求の一部を認めた。

裁判経過
保全異議申立審 平成29年 9月 8日 岐阜地裁 決定 平29(モ)1012号
仮処分決定審 平成28年 3月15日 岐阜地裁 決定 平27(ヨ)71号

参照条文
労働契約法19条

裁判年月日  平成29年12月25日  裁判所名  岐阜地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)163号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部却下、一部認容、一部棄却  上訴等  控訴<後、和解>  文献番号  2017WLJPCA12256002

原告 X1
原告 X2
原告 X3
原告 X4
原告 X5
原告 X6
上記原告ら訴訟代理人弁護士 田島朋美
同 横山文夫
同 仲松正人
同 岡本浩明
同 小林明人
同 山本妙
同 安藤博ほか
上記原告ら訴訟復代理人弁護士 樽井直樹
大阪市〈以下省略〉
被告 株式会社Y
同代表者代表取締役 E
同訴訟代理人弁護士 高坂敬三
同 夏住要一郎
同 嶋野修司
同 有岡一大

 

 

主文

1  本件訴えのうち,原告X1及び原告X5が労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えに係る部分をいずれも却下する。
2  原告X2,原告X3,原告X4及び原告X6が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
3  被告は,原告X1に対し,別紙1記載の各給与支払日限り26万4236円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から平成28年3月31日までは年6パーセントの,同年4月1日から支払済みまでは年14.6パーセントの各割合による金員を支払え。
4  被告は,原告X2に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙2記載の各給与支払日限り21万1120円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り21万1120円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
5  被告は,原告X3に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙3記載の各給与支払日限り22万8064円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り22万8064円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
6  被告は,原告X4に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙4記載の各給与支払日限り22万1081円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り22万1081円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
7  被告は,原告X5に対し,別紙5記載の各給与支払日限り26万4600円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から平成29年3月31日までは年6パーセントの,同年4月1日から支払済みまでは年14.6パーセントの各割合による金員を支払え。
8  被告は,原告X6に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙6記載の各給与支払日限り21万4487円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り21万4487円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
9  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
10  訴訟費用は,これを5分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
11  この判決は,第3項ないし第8項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告らが,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあること(ただし,原告X1については平成28年3月31日まで,原告X5については平成29年3月31日まで)を確認する。
2  被告は,原告X1に対し,別紙1記載の各給与支払日限り34万5576円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から平成28年3月31日までは年6パーセントの,同年4月1日から支払済みまでは年14.6パーセントの各割合による金員を支払え。
3  被告は,原告X2に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙2記載の各給与支払日限り31万5224円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り31万5224円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
4  被告は,原告X3に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙3記載の各給与支払日限り26万3560円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り26万3560円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
5  被告は,原告X4に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙4記載の各給与支払日限り23万8390円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り23万8390円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
6  被告は,原告X5に対し,別紙5記載の各給与支払日限り30万8275円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から平成29年3月31日までは年6パーセントの,同年4月1日から支払済みまでは年14.6パーセントの各割合による金員を支払え。
7  被告は,原告X6に対し,平成27年11月20日から平成29年11月20日まで別紙6記載の各給与支払日限り22万6515円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員並びに同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り22万6515円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告らが,被告(吸収合併や吸収分割による業務移管により,原告らとの間の雇用関係を被告に承継した会社を含む。)との間で,いずれも雇用期間を3か月とする有期雇用契約を反復更新し,営業等に従事してきたところ,被告が,平成27年10月1日以降の原告らとの間の各雇用契約を更新しなかったこと(以下「本件雇止め」という。)が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないことから,上記各雇用契約は,労働契約法(以下「労契法」という。)19条1号又は2号によって継続していると主張して,被告に対し,上記各雇用契約に基づく権利を有する地位にあること(ただし,原告X1については平成28年3月31日まで,原告X5については平成29年3月31日まで)の確認を求めるとともに,上記各雇用契約に基づき,賃金及び遅延損害金の支払を求める事案である(遅延損害金の起算日については,いずれの原告も賃金の各支払日の翌日とする。遅延損害金の利率に関し,原告X2,原告X3,原告X4及び原告X6についてはいずれも商事法定利率年6パーセントの割合によるものとし,原告X1については原告X1が定年退職となる平成28年3月31日までは商事法定利率年6パーセントの割合,同年4月1日以降は賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。)6条1項及び賃金の支払の確保等に関する法律施行令(以下「賃確法施行令」という。)1条に基づく法定利率年14.6パーセントの割合によるものとし,原告X5については原告X5が定年退職となる平成29年3月31日までは商事法定利率年6パーセントの割合,同年4月1日以降は賃確法6条1項及び賃確法施行令1条に基づく法定利率年14.6パーセントの割合によるものとする。)。
1  前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者
ア 原告ら
原告らは,いずれも被告(後記イのとおり,吸収合併や吸収分割による業務移管により,原告らとの間の雇用関係を被告に承継した会社を含む。)との間で,雇用契約を締結し,雇用期間を3か月とする有期雇用契約を反復更新することにより,継続的に雇用され,営業等に従事していた者である。
原告らは,平成27年9月30日時点で,いずれも被告東海支店s営業部営業担当に配属されていたが,それ以前の原告らの雇用関係の推移は,以下のとおりである。
(ア) 原告X1(雇用契約の更新回数51回,雇用通算期間約12年)
a 平成15年10月1日から平成16年3月31日まで
株式会社a(以下「a社」という。)b部○○販売推進担当(甲B1の1の1)
b 同年4月1日から同年6月30日まで
a社b部△△営業担当マンションPT
c 同年7月1日から平成18年9月30日まで
a社(ただし,同年7月1日以降は,株式会社c(以下「c社」という。))ソリューション営業部マンション営業部門
d 同年10月1日から平成19年6月30日まで
c社営業部マンション営業部門充足営業担当
e 同年7月1日から平成20年6月30日まで
c社営業部マンション営業部門既設営業担当
f 同年7月1日から平成25年9月30日まで
株式会社d(以下「d社」という。)岐阜事業部営業部マンション営業部門既設営業担当
g 同年10月1日以降
被告東海支店s営業部コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当
(イ) 原告X2(雇用契約の更新回数25回,雇用通算期間6年3か月)
a 平成21年7月1日から平成25年9月30日まで
d社岐阜事業部営業部マンション営業部門既設営業担当
b 同年10月1日以降
被告東海支店s営業部コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当
(ウ) 原告X3(雇用契約の更新回数22回,雇用通算期間約4年11か月)
a 平成22年10月22日から平成24年6月30日まで(甲B3の1の1ないし9)
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門第一BB総合営業担当
b 同年7月1日から平成25年9月30日まで
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門コンシューマ営業担当(甲B3の1の10ないし14)
c 同年10月1日以降(甲A15,B3の1の15ないし22)
被告東海支店s営業部コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当
(エ) 原告X4(雇用契約の更新回数34回,雇用通算期間8年5か月)
a 平成19年5月1日から平成20年6月30日まで
c社営業部岐阜営業部門BB総合営業担当
b 同年7月1日から平成24年6月30日まで
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門第一BB総合営業担当
c 同年7月1日から同年9月30日まで
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門コンシューマ営業担当
d 同年10月1日から平成25年9月30日まで
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門お得意様サポート担当
e 同年10月1日以降(甲A14)
被告東海支店s営業部営業推進部門お得意様担当
(オ) 原告X5(雇用契約の更新回数推定47回,雇用通算期間11年7か月)
a 平成16年12月1日から平成17年12月31日まで
a社ソリューション営業部岐阜営業担当
b 平成18年1月1日から同年9月30日まで
a社(ただし,同年7月1日以降は,c社)ソリューション営業部BB営業担当
c 同年10月1日から同年12月31日まで
c社営業部岐阜営業部門BB総合営業担当
d 平成19年1月1日から平成20年3月31日まで
c社営業部岐阜企画部門BB総合営業担当
e 同年4月1日から同年6月30日まで
c社営業部中濃支店営業担当
f 同年7月1日から平成21年6月30日まで
d社岐阜事業部営業部中濃営業部門第一営業担当
g 同年7月1日から平成24年6月30日まで
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門第一BB総合営業担当
h 同年7月1日から同年9月30日まで
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門コンシューマ営業担当
i 同年10月1日以降
被告東海支店s営業部コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当
(カ) 原告X6(雇用契約の更新回数推定20回,雇用通算期間5年)
a 平成22年10月12日から平成24年9月30日まで
d社岐阜事業部営業部マンション営業部門既設営業担当
b 同年10月1日から平成25年9月30日まで
d社岐阜事業部営業部岐阜営業部門お得意様サポート担当
c 同年10月1日以降
被告東海支店s営業部営業推進部門お得意様担当
イ 被告
(ア) 被告は,平成14年5月1日に設立されたe株式会社(以下「e社」という。)の子会社であり,資本金1億円,登録型派遣社員を含む従業員数約2万3100人(平成27年7月1日現在)の株式会社である。(甲A2,弁論の全趣旨)
被告の主たる事業は,代理店コンサルセンタの運営業務・家電量販店販売支援業務,□□電話受付及びIPコールセンタの運営業務,営業系SOC,加入権センタ,その他特化センタ運営業務,コンタクトセンタビジネス全般・センタ運営業務・人材派遣業務,電話番号案内及び電話番号データベース整備等の受託業務,府県域営業事業等であり,府県域営業事業には,◎◎(e社の光回線を使ったブロードバンドサービス(大容量通信ができるインターネット接続サービス))の販売業務が含まれていた。
(イ) 被告は,西日本エリアに東海支店など6支店を有しており,s営業部は,東海支店の傘下にある営業部である。
s営業部には,平成27年7月1日当時,社員24人,契約社員A7人,契約社員C2人,契約社員D39人及びその他6人の合計78人の従業員が勤務していた。このうち◎◎の販売業務等に従事していた従業員は,全員が契約社員Dであり,契約社員Dの上司に当たるのが営業推進担当部長,営業担当部長であり,当時の営業担当部長はFであった(なお,被告における従業員の区分等については,後記(2)のとおり)。(乙56,証人F)
(ウ)a a社は,平成18年7月,存続会社である株式会社fに吸収合併され,新たにc社が設立された。
この吸収合併に伴い,a社に所属していた契約社員を含む従業員の雇用関係は,a社からc社に承継された。
b c社は,平成20年7月,d社に吸収合併された。
この吸収合併に伴い,c社に所属していた契約社員を含む従業員の雇用関係は,d社に承継された。
c d社は,平成25年10月,吸収分割により,コンシューマ(一般消費者)に対する営業業務を被告東海支店s営業部に移管した。
これに伴い,d社に所属していた契約社員を含む従業員の雇用関係は,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「労働契約承継法」という。)に基づき,被告に承継された。
(2)  被告における従業員の区分等
被告の従業員については,以下のとおりの区分が設けられており,区分に応じて,労働条件等についての差異がある。
原告らは,いずれも下記エの契約社員Dに属している。
ア 社員
被告に常時勤務する者であって,期間を定めて雇用される者以外の者である。(乙1)
社員の採用は,数か月間にわたり複数の選考過程を実施し,採用後も4か月の試用期間を設けた上で正式に社員として雇用するなどとされており,被告は,定年までの雇用を前提とした期間の定めのない雇用契約を締結している。(乙1,2,弁論の全趣旨)
また,社員については,業務上の必要があるときは,勤務事業所又は担当する職務が変更されることや,他社に出向することも予定されている。(乙1)
イ 契約社員A及びB
e社を退職した従業員で,被告に再雇用され,60歳で定年退職し,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づき,61歳以降は契約社員として毎年雇用契約を更新しながら継続雇用され,最長65歳まで雇用される者である。このうち,契約社員Aについては,標準的な契約形態で固定時給制であり,契約社員Bについては,個々の技能に応じた契約形態で個別時間給制である。(乙3,弁論の全趣旨)
ウ 契約社員C
被告の会社業務遂行上必要なため常時勤務する者であって,専門分野等において社員に準じて業務に携わる期間を定めて雇用される者である。月給制であり,通勤費は全額支給され,雇用期間は3年の範囲内で個別に定めている。(乙4)
エ 契約社員D
業務上の必要の都度,労働時間,労働日又は期間を定めて雇用される者である。時給制であり,平成24年7月分以降,通勤費は1か月5000円を上限に支給され,雇用期間は1年の範囲内で個別に定めている。(甲A19,乙5,弁論の全趣旨)
(3)  原告らの給与に関する定め等
ア 原告らを含む契約社員Dの給与の種類は,基礎賃金,成果賃金,調整賃金Ⅰ(以下,総称して「基準内賃金」という。),調整賃金Ⅱ(以下,基準内賃金と併せて「基本賃金」という。),職責手当,特殊勤務手当,調整手当,時間外手当,休日手当,深夜手当及び特別手当から成る(契約社員D就業規則49条)。このうち成果賃金については,累積型,洗い替え型及びインセンティブ型に分類されている(同規則54条)。(乙5,58)
契約社員D就業規則及び給与規則における給与の種類とその内容,賃金台帳及び給与明細の各項目との対応関係は,別紙7「賃金項目一覧表」記載のとおりである。(乙5,58,弁論の全趣旨)
イ 原告らの給与については,当月1日から末日までの期間で給与計算し,翌月20日(当日が金融機関の休業日に当たる場合には,その前日)に本人の指定する口座に振り込むこととされていた。(甲B各号の3,乙5,35ないし39,40の1及び2,58)
ウ 原告らの平成26年12月から平成27年9月までの賃金台帳上の給与は,別紙8「賃金一覧表」記載のとおり(ただし,同表は,賃金が支払われた月で記載している。)である。(乙60の1ないし6)
(4)  労働組合について
被告には,平成27年7月1日当時,g労働組合(以下「g労組」という。),h労働組合(以下「h労組」という。)及びi労働組合の3つの労働組合が併存していた。雇止めの対象となる契約社員C・Dが所属していたのは,g労組及びh労組であり,原告らは,同日当時,いずれもh労組の組合員であった。(弁論の全趣旨)
(5)  原告X1及び原告X5の定年退職の予定
原告X1は平成28年3月31日に,原告X5は平成29年3月31日に,それぞれ定年退職となる予定であった。
(6)  被告東海支店s営業部における業務の名称及びその内容等
本件雇止めの頃の被告東海支店s営業部における業務の名称及びその内容等のうち,本件に関係するものは,概ね次のものである(被告東海支店s営業部において使用される業務の名称は,必ずしも統一して用いられていなかったようであるが,この判決においては,以下のとおりの名称を用いることとする。)。(甲A4,5,21,23,36,37,41,42,乙14,56,証人F,原告X1本人,原告X4本人,原告X5本人,弁論の全趣旨)
ア マンション物件営業
マンション等の集合住宅に入居する複数の顧客が,1本の光ファイバーを利用して,◎◎を利用する「マンションタイプ」というサービスに係る営業をいい,マンション共用部分に光回線設備を設置させるための営業活動をいう。被告東海支店s営業部においては,本件雇止めの頃,コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当が担当していた。
イ マンション既設充足営業
上記アのマンション物件営業によって,マンション共用部分に設備が構築された後に,各入居者に対して◎◎を販売するというコンシューマ(一般消費者)向け営業活動をいい,被告東海支店s営業部においては,本件雇止めの頃,コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当が担当していた。
ウ 戸建てローラー営業
主として戸建住宅の顧客に対して◎◎を訪問により販売するというコンシューマ(一般消費者)向け営業活動をいい,被告東海支店s営業部においては,本件雇止めの頃,コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当が担当していた。
エ BBパートナー業務
e社が情報取次契約を締結している取次店からの取次ぎに対し,申込内容の確認や工事日調整等の顧客対応等を行う業務であり,被告東海支店s営業部においては,本件雇止めの頃,コンシューマ営業部門パートナー営業担当が担当していた。
オ お得意様担当業務
顧客にY社商品を利用してもらうための活動をいい,既存の顧客に対して,終了するサービスなどから新しい商品への円滑な移行を進める活動(マイグレーション活動)や,◎◎を利用する顧客の解約阻止等に向けた顧客関係構築活動(リテンション活動)などを含む。被告東海支店s営業部においては,本件雇止めの頃,リテンション活動は営業推進部門お得意様担当が担当しており,リテンション,ご愛顧,お得意様担当などと呼ばれていた。
カ SOHO営業
SOHO(スモールオフィス・ホームオフィスの略)という個人経営の企業,商店や個人事務所で光回線の利用が2回線以下の小規模ユーザー(SOHOユーザー)に対する営業活動をいう。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  争点1(原告らからの更新拒絶の有無)
(被告の主張)
被告は,営業方針の転換に伴い,s営業部においても◎◎の直接販売業務が終了することから,同業務に従事していた原告らを含む契約社員らに対して施策の概要について周知説明を行った上,再就職先等の斡旋措置や一時金等の給付措置等の雇用確保の措置の内容に関する説明会を実施するとともに,個別の面談を実施し,原告らの意向聴取等を行った。
その上で,被告は,原告らに対して,平成27年8月17日から同月25日にかけて,被告の押印済みの同年10月1日から同年11月30日までの期間の雇用契約書を交付したが,原告らは,いずれもこれらの雇用契約書を被告に対して提出しなかった。
以上のように,被告が,原告らに対して,雇用確保の措置の内容を丁寧に説明したにもかかわらず,原告らが同年10月1日から同年11月30日までの雇用契約の更新の提案に応じなかったため,同年9月30日の雇用期間の満了をもって原告らと被告との間の雇用契約は終了した。したがって,原告らは,自ら雇用契約の終了を選択したのであって,被告が雇用契約の更新を拒否した事実はない。
(原告らの主張)
被告は,原告らに対して,雇用終了への同意を要求し,さらに一方的に平成27年10月1日から同年11月30日までの2か月の雇用期間を定めるとともに,雇用更新がないという内容の,従前の雇用契約とは異なる雇用契約の締結を強いてきた。このように,原告らの同年10月1日以降の雇用契約が更新されなかった原因は,従前と同様の雇用条件を提示しなかった被告の側にあるのであって,原告らが雇用契約の更新を拒絶した旨の被告の主張は失当である。
(2)  争点2(労契法19条1号又は2号該当性の有無)について
(原告らの主張)
ア 原告らは,被告において,主として◎◎及びその関連商品に関する新規顧客の獲得のための営業活動,既存の顧客に対して行う新しい商品への切り替えに関する営業活動(いわゆるマイグレーション活動),解約阻止・契約維持のための営業活動(いわゆるリテンション活動)などに従事していたところ,これらの業務は,一時的・臨時的なものではなく,恒常的に存在する基幹業務であった。
また,s営業部における社員は管理職のみであり,原告らの従事していた上記営業活動は,部門・担当を問わず,全て契約社員Dによって担われていた。
このように,原告ら契約社員Dは,社員の人手不足を補うために雇用されたものではなく,被告における基幹業務を担う存在として位置付けられていたこと,上記営業活動においては被告の商品に関する豊富な専門知識が要求されることに鑑みれば,契約社員Dについては,社員と同様長期間にわたる業務の担当を期待されていた恒常的な雇用がなされていたものというべきである。
イ 前提事実(1)アのとおり,原告らと被告との雇用関係は,最長12年(原告X1),最短でも4年11か月(原告X3)に及んでおり,長期間にわたる雇用契約の反復更新がなされていた。
ウ 原告らは,雇用契約の更新に際し,雇用契約書を作成してはいたものの,雇用契約書については,机上に置かれていたり,レターケース等に入れられたりするなど上司から直接手交されない場合も多かった。また,雇用契約の更新に伴い就業場所が変わるなどの大きな就業条件の変更がある場合には部門全体の説明会などが開かれる場合もあったが,それ以外の更新においては,原告らに対し,更新後の契約内容等の説明はなく,更新の意思確認がされることもなかった。
さらに,契約期間が満了した後に雇用契約書が交付される場合もあったし,雇用契約書の提出が遅れた場合でも,原告らが上司から催促や注意を受けることもなかった。しかも,契約期間が満了した後に,雇用契約書を作成する場合,上司と相談した上で日付をさかのぼって記入し,事後的に契約満了日に合わせた雇用契約書を作成したことすらあった。
このように,被告における雇用契約の更新手続は,ごく形式的なものにすぎず,形骸化していたことは明らかである。
エ 原告らは,初回の雇用契約締結時において,健康で,かつ,一定以上の営業成績を収めた場合,雇用の継続を希望すれば,雇用契約が更新される旨の説明を受けていたし,以後も,雇止めの可能性があるという話は全く聞いていない。
なお,原告X6は,上司から5年以上勤務すれば正社員になれる可能性もあるなどと説明を受けていたが,上司によるこの説明は5年間の継続雇用を前提とした上で正社員になれるとの合理的期待を抱かせるものであって,5年以内に契約を打ち切ることを予定していたものではない。
その上,s営業部においては,勤務態度不良といった問題点がある場合を除き,契約社員Dが雇止めをされた例はなく,契約社員Dの雇用の継続が事実上保障されていた。
また,原告らに対する年次有給休暇の付与日数は,最初に雇用された時点を休暇発効の勤続年数起算日として,分断されることなく通算されてきたし,原告らの健康保険や●●共済の年金についても,最初に雇用された時点から同じ加入者番号で管理されている。その上,被告においては,平成28年度から,有期雇用労働者についても定年制度が導入されたところ,これは,契約社員の長期雇用を当然の前提としたものである。
さらに,被告は,平成25年10月1日,分割会社であるd社から営業系業務に関する権利義務を承継したところ,雇用契約書上原告らの労働契約は同年9月30日に契約期間が満了することとなっていたため,d社と原告らとの間の労働契約は本来被告に承継されないはずであるにもかかわらず,被告は,原告ら契約社員Dに対し会社分割に伴う労働契約承継に関する説明文書を交付している。
このように,被告は,原告らに対し,雇用契約が長期間継続されるとの期待を抱かせるような説明や,長期雇用を前提とした制度を導入するなど原告らの更新の期待の裏付けとなる対応を繰り返していた。
オ 以上の事情を踏まえると,原告らと被告との間の各雇用契約は,期限の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態であったということができるから,労契法19条1号に該当するといえる。
また,仮に労契法19条1号に該当しないとしても,雇用が継続されることに対する原告らの高い期待があるというべきであるから,少なくとも労契法19条2号に該当する。
(被告の主張)
ア 原告らは,有期契約社員として岐阜エリアにおいて,専ら◎◎の直接販売業務やリテンション業務に従事しており,契約社員Dとして,社員とは異なり,業務内容や勤務地を限定した勤務形態を採っていた。
また,契約社員Dは,時給制であること,成果に応じたインセンティブ手当の支給があることなどの給与体系のほか,労働時間や休日の設定等雇用条件の面で社員と異なる点も多く,採用に際しても面談の実施等比較的簡易な採用手続しか経ていないことからすれば,短期的な有期契約を前提に雇用契約を締結したことは明らかである。
さらに,原告らは,いずれも正社員としての勤務経験を有していたことから,被告との間で締結した契約が有期雇用契約であり,社員とは異なることを理解した上で契約社員Dとなった。原告らは,採用に際して,賃金や雇用期間などの雇用条件に加えて,業務上の必要性がなくなった場合又は成績が劣悪な場合には雇用契約が更新されない旨の説明を受けていた。
イ 被告は,原告らとの雇用契約の更新に際し,必ず対面で雇用契約の内容の変更箇所を説明し,雇用契約書の内容を確認してもらい,原告らが雇用契約の内容に同意した場合,雇用契約書に署名・押印の上,提出してもらうという過程を経て,雇用契約の更新手続を行ってきた。
原告らは,雇用契約書が机上に置かれていたり,雇用期間満了後に雇用契約書を渡されたりしたことがあったと主張するが,たまたまあった出来事を針小棒大に主張しているにすぎず,被告における雇用契約の更新手続は形式的なものではなかった。
また,被告においては,営業成績に下限の基準を設定し,契約社員Dについて,3か月間の営業成績で下限の基準を達成しているか否かを判断し,基準に達していない場合には,次の3か月間を指導強化期間と位置付けて,上司等の同行による訪問営業や営業研修等の指導を行い,なお基準を満たさない場合には,変更可能な業務がないと判断されれば雇止めをするという運用を行っていたものであり,雇用契約の更新手続は,形式的なものではなく,厳格なものであった。
ウ 契約社員Dの年次有給休暇の残日数の通算については,労働基準法(以下「労基法」という。)の解釈(昭和63年3月14日基発150号)に即した適正な取扱いにすぎず,これによって原告らの有期雇用契約が形式的であったと認めることはできない。
また,原告らの●●グループにおける各雇用契約締結の当初から,●●健康保険や●●共済において同じ加入者番号で管理していたが,これは,雇用契約の更新の都度同一契約社員の氏名コードを変更した場合の管理や事務処理の煩雑さを回避するためのものであって,このことによって,原告らの有期雇用契約が形式的であったということはできない。
さらに,被告は,労働契約承継法に従い,d社からの営業系業務に関する権利義務の承継に伴い,有期契約社員をも含む従業員の雇用も承継したが,これは,承継法指針において会社分割を理由とする労働者の解雇が禁止されていること等を踏まえ,労働者保護の観点から,契約社員等と新たに有期雇用契約を締結したものであって,同法に基づく雇用契約の締結がされたことをもって,原告らの有期雇用契約の無期雇用契約への転換を前提としているということはできない。
エ 以上の事情を踏まえると,原告らの各雇用契約は,労契法19条1号及び2号のいずれにも該当しない。
(3)  争点3(本件雇止めにおける客観的に合理的な理由及び社会的相当性の有無)について
(被告の主張)
ア 人員削減の必要性
(ア) 被告においては,◎◎の販売を中心とするe社からの販売受託収入が収益の大半を占めている状況であった。しかし,e社が,従来の営業方針を転換し,平成27年2月から▲▲モデル(他の企業に対し,光回線の卸売りをするビジネスモデル)の提供を開始したことにより,e社からの◎◎の販売受託料収入が数十億円の規模の減収となることが予想されたことなどから,被告は,従来のコンシューマ向け◎◎の直接販売業務から,▲▲モデルに関するバックアップ業務(光回線を仕入れた企業に対するバックアップやフォロー)やアライアンス営業,コンタクトセンタビジネスを中心とする成長ビジネスへ事業の軸足を移すことになった。
このように,被告においては,コンシューマ向け◎◎の直接販売業務から撤退せざるを得ないこととなったが,業務上の必要性がなくなったにもかかわらず,従前どおり契約社員を雇用し続けることは膨大な人件費を必要とし,事業運営に多大な影響を与えかねないこと,今後の販売戦略への柔軟な対応や市場が大幅に変化すること等を考慮して,職務限定・勤務地限定である原告らを含む契約社員Dではなく,社員並びに契約社員A及びBによって,SOHO営業,▲▲モデルの新規販売拡大支援の強化,CRM活動(原告らが「リテンション活動」と称するもの)等の業務を複合的に実施していくとの営業戦略に転換した。
そこで,被告東海支店においても,今後の業務量変動を見据えた事業運営の見直しが急務となり,s営業部の組織について,平成27年7月以降,▲▲モデルの新規販売拡大支援の強化等の戦略機能を有する組織に見直すことにした。その結果,原告らが所属していたコンシューマ営業部門コンシューマ営業担当及び営業推進部門お得意様担当については,従来の◎◎の直接販売業務を終了し,SOHO営業等の業務に転換を図るとともに,CRM活動を行う「営業担当」を設置することとなった。
このように,原告らが従事していた◎◎の直接販売業務そのものが終了することの結果として本件雇止めがなされたものであって,人員削減の必要性は当然認められる。
(イ) 被告においては,今後の販売戦略への柔軟な対応や市場が大幅に変化することなどを考慮し,営業部門に職務限定・勤務地限定である原告らを含む契約社員Dではなく,社員並びに契約社員A及びBを配置し,業務を複合的に実施する営業戦略へ転換しており,s営業部においても,平成28年3月末に他組織が廃止されたことに伴い,社員の営業担当者2人が異動してきたため,営業担当者が6人となった。これは上記営業戦略に伴うものであって,何ら不合理なものではない。
(ウ) 原告らは,被告には,原告らが担当すべきSOHO営業,BBパートナー業務,マンション物件営業,リテンション活動等の業務が現に存在し,かつ,原告らにはこれらの業務に従事することが可能である旨主張する。
しかし,被告が原告らを雇用契約書に記載された業務以外の業務に従事させる義務はない上,原告らの指摘する業務は,以下のとおり,いずれも縮小,廃止されるものであり,契約社員Dを充てるべきものではない。
a ○○等のマイグレーションについて
s営業部における○○マンションタイプのマイグレーション活動については,サービス終了時期である平成29年1月末時点でコンタクトがとれないごくわずかなユーザーを除き,ほぼ完遂している状況である。また,平成29年11月サービス終了の○○ファミリータイプ及び平成30年第4四半期サービス終了の■■については,サービス終了までに猶予があるから,ユーザーの対応が急務であるとして,人員確保の必要性があるということもできない。
b SOHO営業について
もともと西日本エリアにおけるSOHOユーザーへの営業の主体は,e社と業務委託契約を締結した会社や代理店といったe社グループ外の外部事業者であり,被告は,顧客との電話等による対応結果をそれらの外部事業者等に取り次ぎ,実際の顧客対応は外部事業者等に行わせていたにすぎないのであって,当面SOHOユーザーに対して◎◎の販売活動を行うこととはしたものの,今後の事業運営の方向性に照らし,いずれ縮小される業務である。
c BBパートナー業務について
▲▲モデルへの転換に伴い,光サービスの販売主体が,e社から光回線を仕入れた企業となったことから,e社は取次店との情報取次契約を解消しているため,BBパートナー業務は既に終了しているも同然である。
d マンション物件営業について
マンション物件営業は,集合住宅の共有部分に◎◎の特殊な装置を設置させるための営業活動であり,◎◎の直接販売業務とは異なる知識やスキルを要するものであるから,原告らが従事していたコンシューマ向けの◎◎の直接販売業務とは,業務の内容が全く異なるものである。
e CRM活動(リテンション活動)について
CRM活動についても,▲▲モデル提供開始後は,光回線を仕入れた事業者が担っていくことになるため,被告における役割は減少する。
(エ) 以上によれば,被告は,e社が被告に委託する◎◎の直接販売業務を縮小し,▲▲モデルの提供へという方針転換をしたことによって,被告において原告ら契約社員Dが従事していた業務がなくなることから,本件雇止めに踏み切ったものであるところ,そもそも原告らは社員とは異なりコンシューマ市場での営業業務に限定して雇用されていたのであるから,被告のかかる措置が合理性を欠くものとは到底認められない。
イ 雇止めの回避努力の存在
(ア) 被告では,契約社員C・Dの雇止めに当たり,事前に契約社員らに丁寧な説明を行った上,契約社員に係る退職金制度は設けられていなかったものの,期間中の退職については残余期間分の基本賃金を支給するとともに,勤続年数に応じて雇用終了一時金を支給することとした。また,再就職の斡旋先がe社グループ外の民間企業等である場合には,今後の生活支援等に向けた支援一時金も支給することとした(以下「本件支給措置」という。)。
(イ) 被告は,全社的方針として◎◎の直接販売業務に従事していた契約社員C・Dについて,可能な限り再就職ができるよう,自社内及びe社グループ内で受入れ可能なポストを用意することとした。
具体的に,被告が用意した再就職ポストは,自社内であれば,コンタクトセンタ業務や▲▲モデルの進展を見据えた業務であったし,e社グループ内の関連会社であれば,営業担当や営業支援担当等であったところ,原告らが要望するような営業関連業務も多く含まれていた上,原告らが通勤可能な愛知県内の再就職先の業務も提示した。
その上で,被告は,原告らを含む契約社員D全員に対して等しく斡旋先ポストの一覧表を手交し,契約社員C・Dの希望(第1希望から第3希望まで)を踏まえ,2回にわたり,e社グループ内での斡旋希望先の調整を実施した。
また,被告は,契約社員C・Dが,上記e社グループ内での斡旋による再就職とならなかった場合やe社グループ外の再就職先の斡旋を希望した場合には,再就職支援会社を活用したe社グループ外の会社の斡旋を行うこととしたが,その場合の再就職支援会社の利用期間は拠点廃止等の1か月前から最長1年間とし,再就職支援を利用するに当たっての所定内労働時間に係る服務については,勤務したものとして扱うこととするとともに,再就職支援を利用する際の費用は被告が負担することとした(以下,上記一連の措置を「本件斡旋措置」という。)。
被告は,上記の措置を受けるに当たり,契約社員C・Dに対して「雇用終了同意書兼斡旋希望確認書」(以下「本件同意書」という。)の提出を求めたが,これは,被告が,斡旋先等との円滑な調整に向けて斡旋等を希望する契約社員C・Dの人数を把握することを主目的とし,併せて当該業務における雇用契約が終了することについての認識のそごが出ないよう,被告と契約社員C・Dらとの認識を一致させるために行ったものであって,雇用契約が継続する余地がない以上,契約社員C・Dにそのことを認識してもらうために,本件同意書を徴収することは何ら理不尽ではないし,もとより労契法19条を潜脱するためのものではない。
この点,被告東海支店において,雇止めの対象者112人のうち,本件同意書を提出しなかったのは原告ら6人を含む7人のみであり,原告ら及び自己都合退職者を除く84人が本件斡旋措置を受け,77人の雇用先が確保されていること(特に,岐阜エリアでは,本件斡旋措置の適用を受けた15人のうち,自己都合により再就職支援が終了となった1人を除く全員につき本件斡旋措置により新たな就職先が決定された。)等に照らし,雇止めの対象者の再就職先の確保について,十分な実績を上げていることを踏まえると,本件同意書の提出の要請は何ら不合理・理不尽なものではない。
ウ 人選の合理性
原告X2,原告X3及び原告X5の3名は,平成26年11月から平成27年1月までの3か月間の成績が芳しくなく,基準に達しなかったために,次の3か月間は指導強化期間の位置づけとなった(なお,3名とも次の3か月間は雇用更新の基準を満たし,契約を更新することとなった)。
また,原告X4及び原告X6は,平成24年5月から同年7月までの3か月を指導強化期間と位置付けられた。原告X4は,同期間について基準を達成したものの,原告X6については,基準を達成できずに雇止めの危機にあったが,当時◎◎の解約阻止に向けた施策に重点的に取り組む方針であったこと及び本人の希望を踏まえ,同年10月より販売目標の設定されていないお得意様担当において雇用契約を締結することになった。
そもそも,原告らの従事していた業務がなくなることから被告は本件雇止めを行うに至ったのであって,人選の合理性に欠けるところはない。
エ 手続の相当性
被告は,雇止めの対象となる組合員が所属していたg労組及びh労組に対し,組織の見直しについては平成27年5月25日以降,契約社員C・Dの雇用先確保の措置については同月20日以降,適宜提案等を行い,窓口対応や団体交渉等において,契約社員C・Dの業務終了予定の6か月以上も前から,雇止めに伴う施策の内容等につき丁寧に説明及び議論を行った。
その結果,被告の従業員の過半数以上が所属するg労組は,断続的に行われた団体交渉を経て,被告が雇止めの対象者の再就職の斡旋や支援等に最大限注力することなどを条件として,同年6月9日,被告との間で,組織の見直し及びこれに伴う本件斡旋措置等につき,被告の責任において丁寧に取り組むことを合意するに至った。
他方,原告らが所属するh労組と被告とは,同月17日,同年7月3日,同月9日,同月16日,同年8月6日,同年9月1日,同月8日,同月25日にそれぞれ団体交渉を行ったものの,h労組が雇止めそのものに反対していたことから,結局合意に至ることができないまま同月30日を迎えることになったが,被告は,h労組に対しても繰り返し誠実に説明を重ねていた。
また,被告は,原告らを含む契約社員Dに対して,説明会や個別の面談を繰り返すなどした上,本来同年9月30日で雇用期間が満了する契約社員Dについて,同年11月30日までを雇用期間とする雇用契約書を手交しており(もっとも,原告らは,同年12月末までの雇用契約の更新を主張して同雇用契約書を提出しなかった。),更に雇止めに反対する原告らに対しても,その意向を確認した上,同年10月30日付けで雇用終了一時金を支給した。
このように,被告は,原告らにする十分な代償措置や労働組合との団体交渉を行った上で,本件雇止めに至っており,手続的にも違法なものとはいえない。
オ 以上の事情からすれば,本件雇止めには客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当なものであるといえる。
(原告らの主張)
ア 人員削減の必要性の不存在
被告は,本件雇止めの理由として,▲▲モデルの提供開始に伴い,◎◎の販売受託収入の減少見込みに対応するため事業再編を行った結果,これまで契約社員C・Dが行ってきた光回線の獲得等の業務が縮小し,原告らを含む契約社員C・Dが余剰人員となったためと主張する。
確かに,原告らが所属していた部門は,事業再編により消滅したものの,具体的な検討に基づく人員削減の必要性は主張立証されていないことから,直ちに人員削減の必要性が肯定されるべきではない。
また,本件雇止めの後,各部門の再編によりs営業部に統一された後も,原告らが従前担当していた○○マンションタイプのマイグレーション活動(平成29年1月末まで),○○ファミリータイプのマイグレーション活動(平成29年11月末まで),ISDN回線及びADSL回線から光回線への新規◇◇提案,○○プレミアムのマイグレーション活動等の営業活動が継続されていたところ,原告らは,これら業務に関する知識やノウハウを有していた。
さらに,被告には,▲▲モデルの提供開始後も,原告らが担当すべきSOHO営業,BBパートナー業務,マンション物件営業,リテンション活動等の業務が現に存在しており,このことは,被告自らが作成した事業契約書や労働組合向けの文書の記載に照らしても,明らかである。
しかも,本雇止めの後,s営業部の営業担当者は,平成27年12月1日時点で11人から4人に減少したものの,平成28年7月1日には6人に増えているが,そのうち2人は岐阜カスタマーセンターからの新規出向者である。その上,被告が,平成29年4月から「▲▲事業者からの販売遂行に向けたサポート」や「▲▲をお申込みいただいたお客様からのお問合わせ・ご要望対応」を業務とする新規採用社員を募集しているところ,これは,営業担当業務が残っていたにもかかわらず,被告が原告らを含む契約社員を一斉に雇止めしてしまったことにより,人員不足の状況に陥ったためである。
以上を踏まえると,被告には原告らが担当していた業務や担当可能な業務が残っていることは明らかであるから,本件雇止めに人員削減の必要性がなかったこともまた明らかである。
イ 雇止めの回避努力の不存在
(ア) 被告は,雇止めに当たり,契約社員Dに対し,斡旋や再就職支援を受けるためには,再就職先が確保される前に,斡旋希望確認書と雇用終了同意書とが一体となった本件同意書に署名・押印することを求め,契約社員Dが本件同意書を提出しない場合には,斡旋や再就職支援も受けられないまま雇用契約が終了するという極めて不当・過酷な状況を作出した。
このような被告が採った手法は,労働者を保護する労契法19条を潜脱するものであることから,本件雇止めは,他の整理解雇の要件を検討するまでもなく社会的相当性を欠くというべきであり,無効である。また,再就職先等の斡旋や再就職支援も本件同意書の提出を条件とするものであるところ,かかる斡旋や再就職支援は雇止めの回避措置としても認めることはできない。
この点,被告は,本件同意書の提出を求めた理由につき,斡旋先等との円滑な調整に向けて斡旋等を希望する契約社員C・Dの人数等を把握することを主目的とし,併せて被告と契約社員C・Dとの間で雇用契約の終了について認識のそごがないようにするためであったと主張するが,斡旋等を希望する人数の把握のために本件同意書に署名・押印まで求める必要性がないことから,その主張自体合理性を欠くものである。
(イ) 被告は,契約社員C・Dの雇用維持のため斡旋しか行っておらず,自社内での配置転換,希望退職の募集等労働者にとってより負担の少ない措置を講じていない上,被告自らが斡旋を行うわけではなく,他社に斡旋を依頼したにとどまる。
しかも,被告の提示する斡旋先は,e社グループ内の企業であっても,募集人員が不明確であるばかりか,業務内容の相違により労働者の従前のスキルを生かすことができず,賃金等の労働条件も悪化することから,労働者にとって再就職先として希望できるものではなかった。また,e社グループ外の企業にあっては,就労場所を含む労働条件が不明であり,かつ,再雇用される保証もなかった。現に,雇止めの対象となった契約社員D26人のうち,8人が斡旋を希望したものの,e社グループ内での再就職先を得られたのはわずか4人にすぎなかった。
このように,被告の行った斡旋は,適切な再就職先の提示とはいえないから,雇止め回避義務が履行されたと評価することはできない。
(ウ) 以上によれば,本件雇止めに当たり,雇止めの回避措置がなかったことは明らかである。
ウ 人選の不合理性
被告は,原告らを含む◎◎の関係業務に従事していたs営業部の契約社員Dを一律に人員削減の対象として,全員の雇止めをした。
しかし,コンシューマ向け◎◎の直接販売業務がなくなるからといって,契約社員D全員を直ちに雇止めすることが正当化されるわけではなく,人員削減の必要性,雇止め回避措置の有無,削減すべき人員の程度等を検討し,必要最小限の人員削減にとどめるべきである。したがって,契約社員D全員を一律に雇止めするという被告の対応は,合理性を欠くものである。
また,原告らは,いずれも誠実に業務に従事し,良好な営業成績を積み上げ,顧客から高い信頼を受けてきた優秀な労働者であるところ,このように優秀な労働者である原告らを雇止めの対象として選定したこと,一方で,本件雇止めの後,s営業部の営業担当者を増員していることに照らせば,被告による人員選定が合理性を欠くものであることは明らかである。
また,s営業部では,契約社員Dが本来社員において担当されるべき◎◎の販売営業という基幹的業務に従事していたにもかかわらず,被告は契約社員C・Dのみを対象として雇止めを行っているところ,これは,原告らを社員及び契約社員A・Bと比べて不利益に扱うものであって,労契法20条の趣旨に反するものであり,人員整理の合理性を否定する要素として考慮されるべきである。
エ 手続の不当性
被告は,団体交渉において,h労組から,本件同意書の提出を前提とする再就職先の斡旋という手法を批判されても,全く譲歩しなかった。
また,h労組は,被告に対して,人員削減の必要性について具体的な数値(売上げ減少の期間や予測額,経営の圧迫の程度等)を示した説明や,被告の用意した斡旋先の募集人数の内訳についての説明を求めたが,被告はこれらについて具体的な説明をすることなく,雇用契約の終了に同意することが斡旋を受ける条件である旨の説明に終始した。
かかる被告の交渉態度に鑑みれば,団体交渉の回数を重ねたところで,被告の姿勢は不誠実であるといわざるを得ず,適切な手続を踏んだということはできない。
オ 以上によれば,本件雇止めは,客観的に合理的な理由及び社会的相当性が認められないものであって,無効である。
(4)  争点4(原告らの賃金額)について
(原告らの主張)
ア 本件雇止めは無効であり,被告が原告らの労働の提供を正当な理由なく拒絶している以上,原告らは,労働の提供に対する反対債権である賃金請求権を失わない(民法536条2項)。
イ 労働契約における「賃金」とは,「賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいう(労基法11条参照)。また,任意的恩恵的給付や福利厚生的給付についても,労働協約や就業規則等によってあらかじめ支給基準が明確にされており,それに従って使用者に支払義務が生じるものは労働の対償として賃金として取り扱われると解される。
(ア) 通勤費について
被告において,通勤費について,契約社員D就業規則第76条に支給の定めがあり,就業規則上明確な支給基準が定められていたことから,通勤費も賃金の性質を有する。
(イ) 各種手当について
契約社員Dの給与体系については,基本給が時給制で低額に抑えられている一方,就業規則及び給与規則における「成果賃金(インセンティブ型)」(賃金台帳における「その他手当」,給与明細における「インセンティブ手当」)が賃金の大きな部分を占めていたこと,時間外勤務の常態化や顧客の都合に合わせた休日出勤等により,就業規則及び給与規則における「時間外手当」,「休日手当」,「深夜手当」及び「特殊勤務手当」(賃金台帳における「時間外」,「休日」,「深夜」及び「特勤手当」,給与明細における「時間外手当」,「休日手当」,「深夜手当」及び「特殊勤務手当」)も恒常的に発生していたことが,原告らの給与明細からも明らかであることから,これらの各種手当は,本件雇止めがなければ雇用契約上支給されたであろう賃金に該当する。
したがって,就業規則及び給与規則における「成果賃金(インセンティブ型)」,「時間外手当」,「休日手当」,「深夜手当」及び「特殊勤務手当」(賃金台帳における「その他手当」,「時間外」,「休日」,「深夜」及び「特勤手当」,給与明細における「インセンティブ手当」,「時間外手当」,「休日手当」,「深夜手当」及び「特殊勤務手当」)についても,原告らが得られたであろう賃金に含まれるというべきである。
ウ 原告らの未払賃金の算出に当たっては,原告らが得られたであろう賃金額を算出する最も合理的な方法によるべきであるところ,原告らの業務量は時季によって変動が大きく,その業務量の増減が賃金額に影響していたことに照らせば,当事者間の衡平の観点から,未払賃金額は,過去1年間の賃金額の平均とすべきである。
エ 以上によれば,原告らの未払賃金の月額は,以下のとおりとなる。
(ア) 原告X1 34万5576円
(イ) 原告X2 31万5224円
(ウ) 原告X3 26万3560円
(エ) 原告X4 23万8390円
(オ) 原告X5 30万8275円
(カ) 原告X6 22万6515円
(被告の主張)
ア 原告らが請求し得る賃金額は,就業規則及び給与規則における「基礎賃金」,「成果賃金(累積型)」,「成果賃金(洗い替え型)」及び「調整賃金Ⅰ」(賃金台帳における「基本給」,「成果加算等」及び「調整手当」,給与明細における「基礎賃金」,「成果賃金」及び「調整賃金Ⅰ」)の合計額とされるべきであり,これ以外の手当等については,賃金額の算出の基礎から除外されるべきである。
(ア) 就業規則及び給与規則における「成果賃金(インセンティブ型)」(賃金台帳における「その他手当」及び給与明細における「インセンティブ手当」)について
就業規則及び給与規則における「成果賃金(インセンティブ型)」は,給与明細における「インセンティブ手当」であり,契約社員Dの販売成果に応じて支払われるものであるところ,本件雇止めの後,s営業部におけるコンシューマ市場向けの◎◎の直接販売業務は終了しており,もはや原告らが,販売成果を上げることはできないのであるから,就業規則及び給与規則における「成果賃金(インセンティブ型)」(賃金台帳における「その他手当」及び給与明細における「インセンティブ手当」)の支給を受けることはあり得ない。したがって,原告らが今後支給されることのないこの手当を含めた金額を請求することは不当である。
(イ) 就業規則及び給与規則における「時間外手当」,「休日手当」及び「深夜手当」(賃金台帳における「時間外」,「休日」及び「深夜」,給与明細における「時間外手当」,「休日手当」及び「深夜手当」)について
「時間外手当」は契約社員が所定の勤務時間を超えて勤務することを命ぜられた時,「休日手当」は契約社員が週休日又は休日に勤務することを命ぜられた時,「深夜手当」は契約社員が午後10時から翌日の午前5時までの間に勤務することを命ぜられた時,それぞれ支払われるものであるところ,実際に勤務していない原告らがこれらの命令を受けることはあり得ないし,本件雇止めの後,原告らが従事すべきコンシューマ市場向けの◎◎の直接販売業務は終了していることから,時間外労働や休日・深夜労働も想定することはできない。したがって,原告らが「時間外手当」,「休日手当」及び「深夜手当」を含めた金額を請求するのは不当であり,賃金額の算定の基礎からは除外すべきである。
(ウ) 就業規則及び給与規則における「特殊勤務手当」(賃金台帳における「特勤手当」,給与明細における「特殊勤務手当」)について
就業規則及び給与規則における「特殊勤務手当」(賃金台帳における「特勤手当」,給与明細における「特殊勤務手当」)は,休日を変更した場合や深夜にわたり勤務した場合など,賃金について特別な取扱いをする必要があると認められる場合に支払われるものであるところ,本件雇止めの後,原告らが従事すべきコンシューマ市場向けの◎◎の直接販売業務は終了していることから,実際に勤務しておらず,休日の変更や深夜勤務等の生じる余地のない原告らに対し,賃金について特別な取扱いをする必要はないため,この手当は,賃金額の算定の基礎からは除外すべきである。
(エ) 通勤費について
通勤費は,本来実費支給の性質を有するのであって,実際に通勤していない原告らに通勤のための交通費が生じる余地はない。したがって,賃金額の算定の基礎からは除外すべきである。
イ また,労基法12条において「平均賃金とは,これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を,その期間の総日数で除した金額をいう。」と規定されていることからすれば,原告らが請求し得る賃金額は,この平均賃金の考え方に準拠して,原告らの最後の直近3か月(平成27年8月から同年10月まで)の賃金の平均により算出されるべきである。
ウ 以上を踏まえると,原告らが請求し得る平均賃金の月額は,以下のとおりとなる。
(ア) 原告X1 20万3487円
(イ) 原告X2 20万3487円
(ウ) 原告X3 21万3093円
(エ) 原告X4 21万3530円
(オ) 原告X5 21万3093円
(カ) 原告X6 20万7853円
第3  当裁判所の判断
1  認定事実(前掲前提事実並びに後掲括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。)
(1)  契約社員Dに係る雇用契約の締結及び更新の際の手続
被告は,原告らを含む契約社員Dとの間で新たに雇用契約を締結する際,契約社員との間で,雇用条件が記載された雇用契約書を取り交わすという手続を採っていた。(甲B1の1の1,B3の1の1,B4の1の1,B5の1の1,弁論の全趣旨)
また,被告は,原告らを含む契約社員Dとの雇用契約の更新に当たっては,契約社員Dに対し,更新後の雇用契約に係る雇用条件が記載された雇用契約書を交付し,同契約書に署名・押印の上,提出してもらうという手続を採っていた。被告における契約社員Dの雇用契約書は,雇用契約の始期を平成20年4月1日とする雇用契約書より前の雇用契約書には,雇用更新の可能性について特に記載されていなかったが,雇用契約の始期を平成20年4月1日とする雇用契約書以降の雇用契約書には,「雇用更新の可能性」について「有」と明記されるとともに,雇用更新の判断基準につき,雇用期間満了時の業務量,会社の経営状況,従事している業務の進捗状況等が列挙されるようになり,雇用契約の始期を平成23年1月1日とする雇用契約書以降の雇用契約書には,雇用更新の判断基準につき,上記に加え,労働者の勤務成績,態度,能力などが列挙されるようになり,雇用契約の始期を平成25年10月1日とする雇用契約書以降の雇用契約書には,雇用更新の判断基準から,従事している業務の進捗状況等が列挙されなくなった。雇用契約の始期を平成27年4月1日とする雇用契約書以降の雇用契約書(雇用契約の始期を平成27年10月1日とする雇用契約書を除く。)には,雇用更新の判断基準に組織の再編成・拠点集約等により従事業務がなくなる場合が付加されていた。(甲B1の1の1ないし54,B2の1,B3の1の1ないし22,B4の1の1ないし27,28の1及び2,29ないし35,B5の1の1ないし33,B6の1の1ないし6)
(2)  原告らの雇用契約締結に至る経緯・契約更新の状況等
ア 原告X1
(ア) 原告X1は,新聞に掲載された求人広告を見て応募したことを契機として,平成15年10月1日,a社との間で,以下の内容の雇用契約を締結し,b部○○販売推進担当に配属され,戸建てローラー営業に従事した。
原告X1は,採用の際,a社から,雇用契約の更新の有無については,雇用契約の打切りの可能性も含めて何らの説明も受けなかった。
a 就業場所 岐阜市〈以下省略〉 jビル
b 業務内容 ○○営業
c 雇用期間 平成15年10月1日から同年12月31日まで
(イ) 原告X1は,a社,c社,d社及び被告との間で,平成16年1月1日以降,51回にわたり,雇用期間を3か月(ただし,平成19年1月1日を雇用契約の始期とする雇用契約書よりも前の雇用契約書では,雇用期間を1か月とするもの,2か月とするものもあった。)とする有期雇用契約を反復更新し,入社半年後から本件雇止め時までマンション既設充足営業に従事した。
原告X1は,雇用契約の更新に際し,上司から雇用契約書を直接手交されることもあり,勤務時間など契約内容が変更になるときには上司と話合いをしていたが,契約内容に変更がないようなときには契約内容等について説明や確認を受けることはなく,雇用契約書が,原告X1の机上に置かれていたり,レターケースの中に入っていたりしたこともあった。また,原告X1は,更新後の雇用契約に係る雇用期間が開始した後に,雇用契約書に署名・押印し,これを提出したこともあった。
(以上,甲A42,B1の1の1ないし54,1の7,乙35,原告X1本人)
イ 原告X2
(ア) 原告X2は,平成17年9月頃からa社及びd社に派遣社員として派遣され,◎◎の販売業務に従事していたが,平成21年7月1日,d社との間で,雇用期間を平成21年7月1日から同年9月30日まで,就業場所を岐阜市〈以下省略〉kビルとする雇用契約を締結し,岐阜事業部に配属され,マンション既設充足営業に従事した。
原告X2は,採用の際,d社の部門長等から,極端に営業成績が悪くなければ雇用契約の更新を続けられるし,正社員にもなれる旨の説明を受けた。
(イ) 原告X2は,d社及び被告との間で,平成21年10月1日以降,25回にわたり,雇用期間を3か月とする有期雇用契約を反復更新し,本件雇止め時までマンション既設充足営業に従事した。
原告X2は,契約の更新に際し,上司から「また判子を押しておいてね。」などと言われ,雇用契約書を直接手交されることが多く,契約内容が変更になるときには個別に説明がされることもあったが,契約内容に変更がないようなときには契約内容等について個別に説明や確認を受けることはなく,雇用契約書が原告X2の机上に置かれていたり,レターケースの中に入っていたりしたこともあった。
(以上,甲A40,甲B2の1,B2の7,乙36,原告X2本人)
ウ 原告X3
(ア) 原告X3は,d社の当時の岐阜事業部営業部長の紹介により,平成22年10月22日,同社との間で,以下の内容の雇用契約を締結し,営業部岐阜営業部門第一BB総合営業担当に配属され,戸建てローラー営業に従事した。
原告X3は,上記雇用契約締結当初以降,d社から,雇用契約の更新について,契約期間は3か月であるものの,健康で売上目標を達成していれば雇用契約が更新され,最長65歳まで雇用を継続する旨の説明を受けていた。
a 就業場所 岐阜市〈以下省略〉 jビル
b 業務内容 ■■等戸建てローラー営業
c 雇用期間 平成22年10月22日から同月31日まで
(イ) 原告X3は,d社及び被告との間で,平成22年11月1日以降,22回にわたり,雇用期間を3か月(ただし,平成23年1月1日を雇用契約の始期とする雇用契約書よりも以前の雇用契約書には雇用期間を1か月とするものもあった。)とする有期雇用契約を反復更新し,本件雇止め時まで戸建てローラー営業に従事し,必要に応じてインターネット環境の設置作業等を行っていた。
原告X3は,雇用契約の更新に際し,上司から雇用契約書を直接手交されることもあったが,その場合も契約内容等について個別に説明や確認を受けることはなく,雇用契約書が,原告X3の机上に置かれたり,レターケースの中に入っていたりしたこともあった。また,他の契約社員の雇用契約書が誤ってレターケース等の中に入っていたこともあった。
(以上,甲B3の1の1ないし22,B3の7,乙37,原告X3本人)
エ 原告X4
(ア) 原告X4は,c社が運営するウェブサイトに掲載された求人情報を閲覧したことを契機として,平成19年5月1日,c社との間で,以下の内容の雇用契約を締結し,営業部岐阜営業部門BB総合営業担当に配属され,戸建てローラー営業に従事した。
原告X4は,採用の際,c社から,1年以上の長期間にわたり働いている人もたくさんいるので頑張ってほしい旨告げられた。
a 就業場所 岐阜市〈以下省略〉 jビル
b 業務内容 ○○ローラー営業
c 雇用期間 平成19年5月1日から同年7月31日まで
(イ) 原告X4は,c社,d社及び被告との間で,平成19年8月1日以降,34回にわたり,雇用期間を3か月(ただし,平成20年1月1日を雇用契約の始期とする雇用契約書よりも前の雇用契約書では,雇用期間は1か月,2か月及び3か月とするものもあった。)とする有期雇用契約を反復更新した。その間,原告X4は,平成24年10月から,希望により,お得意様担当に移り,本件雇止めの時まで,被告から割り当てられた担当地域において,◎◎に加入している顧客リストに基づき同営業に従事した。
原告X4は,雇用期間が満了する月の月末頃,雇用契約書を直接手交されることもあったが,その場合も契約内容等について個別に説明や確認を受けることはなく,雇用契約書が,原告X4の机上に置かれていたり,レターケースの中に入っていたりしたこともあった。また,原告X4は,更新後の雇用契約に係る雇用期間が開始した後に,雇用契約書を渡されることもあった。その際,上司から,作成日付は前回の雇用契約満了月の月末の日を記入して提出するよう指示されたため,原告X4は,作成日付を遡らせて記載した上で,雇用契約書に署名・押印し,これを提出したこともあった。
(以上,甲A41,甲B4の1の1ないし27,28の1及び2,29ないし35,B4の7,乙38,原告X4本人)
オ 原告X5
(ア) 原告X5は,公共職業安定所において,求人募集を見たことを契機として,平成16年12月1日,a社との間で,以下の内容の雇用契約を締結し,戸建てローラー営業に従事した。
原告X5は,a社に入社後,雇用契約の更新について,配属部署の課長から,「年齢は関係ない。健康で成績がよければ,いつまででもいられる。」などの話を聞いていた。
a 就業場所 岐阜市〈以下省略〉 jビル
b 業務内容 ○○ローラー営業
c 雇用期間 平成16年12月1日から同月31日まで
(イ) 原告X5は,a社,c社,d社及び被告との間で,平成17年1月1日以降,おおむね47回にわたり,雇用期間を3か月とする有期雇用契約を反復更新した。その間,原告X5は戸建てローラー営業に従事していたが,必要に応じてインターネット環境の設置作業等を行っていた。また,原告X5は,雇用契約記載の業務内容(■■等戸建てローラー営業)にかかわらず,SOHO営業にも従事していたが,この点について,上司等から注意を受けたことはなかった。
原告X5は,雇用契約の更新に際し,雇用期間が満了する日の二,三日前に雇用契約書を手交されることが多かったが,その場合も契約内容等について個別に説明や確認を受けることはなかった。
(以上,甲A22の3の2,甲B5の1の1ないし33,B5の7,原告X5本人)
カ 原告X6
(ア) 原告X6は,原告X2の紹介により,平成22年10月12日,d社との間で,雇用契約を締結し,岐阜事業部営業部マンション営業部門に配属され,マンション既設充足営業に従事した。
原告X6は,d社に入社後,雇用契約の更新について,配属部署の課長から,頑張って5年以上勤務すれば正社員になれる可能性もある旨の話を聞いていた。
(イ) 原告X6は,d社及び被告との間で,平成23年1月1日以降,おおむね20回にわたり,雇用期間を3か月とする有期雇用契約を反復更新してきた。その間,原告X6は,平成24年10月頃から,お得意様担当に移り,本件雇止めの時まで,被告から割り当てられた担当地域において,◎◎に加入している顧客リストに基づき同営業に従事した(なお,被告は,原告X6はマンション既設充足営業での成績がよくなかったためにお得意様担当に移った旨主張する。しかし,原告X6は,本人尋問において,平成24年頃に営業成績が不振であった時期もあったが,特別に指導を受けたことはなかったこと,お得意様担当に移ったのは上長から新しくお得意様担当を発足するのでそちらで頑張ってみないかと勧誘されたためであることを供述しており,被告の主張する内容を直ちに認めることはできない。)。
原告X6は,雇用契約の更新に際し,上司から雇用契約書を受領し,同契約書に署名・押印した上で,これを上司に手交するという方法を採っており,雇用契約の内容については,大きな変更がない限り,特段説明を受けたことはなく,更新日の1,2日前に上長と面談を行っていたが,その面談では,成績が優秀なのでこのまま頑張ってくれと言われていた。
(以上,甲B6の1ないし6,B6の7,原告X6本人)
キ 原告らの健康保険や年金,有給休暇の付与日数等について
原告らは,●●共済(現在の●●健康保険組合及び●●企業年金基金)健康保険や年金について,最初に雇用契約を締結したときから一貫して同じ加入者番号によって管理されてきた。(弁論の全趣旨)
また,原告らの年次有給休暇の付与日数は,最初に雇用契約を締結した時点を休暇発効の勤続年数起算日とし,雇用契約が更新されたり,吸収合併や吸収分割による業務移管に伴い,雇用主である会社が変更されても,分断されることなく通算され,年単位で増加し,2年間は年次有給休暇取得の権利が消滅しないものと扱われていた。(弁論の全趣旨)
ク 事実認定の補足
雇用契約の更新時の手続について,原告らは,新たな雇用契約書は上司から直接交付されないときが多く,更新後の雇用契約が開始されてから雇用契約書が交付される場合もあり,また,契約更新に当たり,個別に契約内容の説明を受けることはなかった旨主張する。他方,被告は,原告らとの雇用契約の更新に際し,必ず対面で雇用契約の内容の変更箇所を説明していた旨主張する。
(ア) 雇用契約書の交付の方法について
証拠(甲B1の7,1の7,5の7,原告X1本人,原告X2本人,原告X3本人,原告X4本人,原告X5本人)及び弁論の全趣旨によると,原告らは,雇用契約書を上司から直接手交されていたが,雇用契約書がレターボックスの中に入れられていたり,机の上に置かれていたこともあったことが認められる。
この点,原告X5,原告X3は,本人尋問において,雇用契約書はレターボックスの中に入れられたり,机の上に置かれていたりしたことが多く,直接手交されたことはほとんどなかった,あるいは,直接手交されたのは4割程度であった旨の供述をし,原告X3及び原告X1も,契約書が直接手交されたことがあまりなかった旨陳述書に記載するが(甲A39,A42),原告らが本件訴訟提起前に作成していた陳述書の各記載(甲B1の7,2の7,5の7)からすると,雇用契約書は原告らに直接手交されたことが多かったと認めるのが相当である。
(イ) 雇用契約書の交付時期について
確かに,原告X1に係る雇用契約書のうち,雇用期間の始期を平成25年10月1日とする雇用契約書(甲B1の1の46),平成27年1月1日とする雇用契約書(甲B1の1の51),同年4月1日とする雇用契約書(甲B1の1の52)及び同年7月1日とする雇用契約書(甲B1の1の53)には,契約書に記載された契約日が雇用期間の始期後となっていることが認められる。
しかし,原告X1は,新しい雇用契約書の署名・押印は,新たな契約が始まる前に雇用契約書に署名・押印することを指示されたことはあったが,月をまたいで提出することもあったと本人尋問において供述し,陳述書に記載している(甲B1の7)ことからすれば,上記の各契約書(甲B1の1の46,51ないし53)が交付された時期が更新後の雇用契約の始期の後であったと直ちに認めることはできない。その他,原告らの陳述書の記載(甲A42,B1ないし5の各7)や本人尋問の結果によっても,新たな雇用契約書が雇用期間の始期後に交付されたことがあったとしても,それが常態化していたとまでは認めることはできない。
(ウ) 雇用契約内容についての対面での説明について
原告X6は,契約更新の1,2日前に上長と個人面談があり,他の人も定期的に個人面談を受けていた旨供述する。
しかし,原告X6は,本人尋問において,雇用契約の内容については,大きな変更がない限り,特段の説明を受けたことはなかった旨,面談では,成績は優秀なのでこのまま頑張ってくださいと言われた旨各供述していることからすると,原告X6が供述する面談において,契約内容の説明や確認を受けていたと直ちに認めることはできない。加えて,原告X1及び原告X2は,勤務時間など契約内容が変更になるときには上司と話合いをしたり,説明を受けたりしていたが,契約内容に変更がないようなときには契約内容等について確認を受けることはなかったと供述し,原告X1,原告X2及び原告X6以外の原告らは,契約更新時に個人面談を受けていたことをいずれも否定していること,本件雇止めの頃,被告東海支店s営業部の営業部長であり,原告らの上司に当たるFは,担当課長に対しては,雇用契約更新の際には原則契約書を手交し,説明して契約書を取り交わすよう指示しており,担当課長らからは,契約書を手交できないときにはレターボックスなどに契約書を入れて,後から声掛けをしていると報告を受けていたと証言するにとどまっていることからすると,原告らとの雇用契約の更新の際に,必ず対面で契約内容の説明や確認を行っていたと認めることはできない。
(3)  本件雇止めに至る経緯等
ア e社は,平成13年8月1日から◎◎の提供を開始し,通信事業者やケーブルテレビ事業者といった競合企業との顧客獲得競争を続けてきたが,顧客獲得競争の激化やスマートフォンの普及,競合企業における固定光回線と移動回線等とのセット割引等の影響により,平成18年をピークに◎◎の販売数及び純増数は徐々に鈍化した。光回線の解約阻止に向けた施策等にも取り組んできたものの,固定電話収入における減収にも歯止めがかからなかったことなどから,e社グループでは営業戦略の転換,すなわち,ユーザーに対し,◎◎を直接販売する従来の販売方法から,光回線サービスを仕入れ,自社のサービス等と組み併せて販売する企業に対して◎◎を卸売りする営業方法(▲▲モデル)への転換を図ることとし,平成27年2月1日,▲▲モデルの提供を開始した。(乙6ないし8,52,56,証人F,弁論の全趣旨)
イ 被告は,従前,e社との販売委託契約に基づき,コンシューマ市場における◎◎の販売活動等を実施してきたが,e社による▲▲モデルの提供開始に伴い,e社からの販売受託収入が数十億円も減収となることが見込まれたことから,販売戦略の見直しをせざるを得なくなり,コンシューマ市場における◎◎の直接販売業務から撤退し,光回線を仕入れた企業に対するバックアップ・フォローとともに,SOHO市場への営業に転換を図ることとした。また,◎◎の取扱いが減少することから,◎◎のリテンション活動も減少していくことが見込まれた。
e社グループにおけるSOHO向けの直接営業活動は,主としてl社やm社等が担っていたことから,被告は,平成27年7月以降,SOHO向けの直接営業活動を当面の期間の取組と位置付け,アライアンス営業(不動産会社などの企業と業務提携契約を締結し,それらの提携先から顧客や取引を紹介してもらって営業をかける営業方式をいう。)やリテンション活動等と複合的に実施することとした。(乙10の1ないし4,乙56,証人F,弁論の全趣旨)
ウ 被告東海支店s営業部の組織は,従前,営業推進部門とコンシューマ営業部門に分かれており,うち営業推進部門は営業推進担当及びお得意様担当によって,コンシューマ営業部門はコンシューマ営業推進担当,コンシューマ営業担当及びパートナー営業担当によって,それぞれ構成されていた。被告における◎◎の直接販売の中止という経営方針の転換に伴い,平成27年7月1日以降,営業推進担当,営業担当及び▲▲営業担当の3つに再編されることとなった。そして,従前,被告s営業部における営業推進部門お得意様担当の主な機能はリテンション活動のための訪問活動やインバウンド営業等と,コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当の主な機能は戸建住宅等の直営新規営業やマンション物件営業と,それぞれされていたが,同日以降,いずれの担当も,組織再編後の営業担当に吸収されることとなった。
その結果,組織再編後の営業担当の主な機能は,SOHO営業,アライアンス営業,マイグレーション等を含むCRM活動,マンション物件営業等とされた。
(以上,乙14,56,証人F,弁論の全趣旨)
エ 被告は,◎◎の直接販売業務の終了に伴い,リテンション活動も減少することから,これらの業務に従事していた契約社員C・Dとの間の同業務に係る雇用契約を終了することとし,契約社員C・Dの雇用先確保に向けて,e社グループ内での斡旋による再雇用又は再就職支援会社を活用したe社グループ外への再就職についての斡旋という措置を講ずることとした。
具体的手続としては,まず,契約社員C・Dが,e社グループ内での斡旋による再雇用を希望する場合には,第1希望から第3希望までの斡旋希望先を聴取した上,斡旋希望先との調整を行うという形での斡旋調整を最大2回まで行うこととした。
また,e社グループ内での斡旋による再雇用とならなかった契約社員C・Dがe社グループ外への斡旋を希望する場合及び契約社員C・Dが当初から再就職支援会社を活用したe社グループ外への再就職の斡旋を希望する場合については,再就職支援会社を活用した再就職を支援することとした。なお,再就職支援会社の利用期間は,当初,拠点廃止等の1か月前から開始して最長4か月間としていたが,最長1年間と変更するとともに,再就職支援を利用する際の所定内労働時間に係る服務については勤務したものとして扱うこととし,再就職支援を利用する際の費用も被告の負担とした(本件斡旋措置)。
さらに,被告は,契約社員C・Dについて,雇用契約期間の途中で業務がなくなる場合等については,残余期間分の基本賃金を支給するとともに,斡旋等により被告との雇用関係が終了となる場合については,勤務年数に応じて雇用終了一時金を支給することとし,斡旋先がe社グループ外の民間企業等である場合には,以後の生活支援等に向けた支援一時金も支給することとした(本件支給措置)。
上記各措置に伴い,被告は,本件斡旋措置及び本件支給措置を受けることを希望する契約社員C・Dに対し,平成27年7月14日までに本件同意書を提出することを求めることとし,本件同意書を提出した契約社員C・Dについて,本件斡旋措置を実施することとした。
(以上,甲A3,乙11,証人F,弁論の全趣旨)
オ 被告は,h労組に対し,平成27年5月20日付けの「業務量変動に伴い廃止等になる拠点に所属する契約社員C・Dへの具体的対処について」と題する書面(甲A3,乙11)を交付した。
上記書面には,▲▲モデル提供後の業務量変動に伴い廃止等となる拠点に所属する契約社員C・Dについて,本件斡旋措置及び本件支給措置を実施すること等について記載されていた。もっとも,本件支給措置に係る具体的な支給金額等については記載されていなかった。(甲A3,乙11)
カ 被告は,h労組に対し,平成27年5月25日付けの「▲▲モデル提供を踏まえた今後の業務運営について(東海)」と題する書面(甲A4)を交付した。
上記書面には,被告s営業部の組織の見直しについて,現行,営業推進部門お得意様担当において実施しているご愛顧訪問,インバウンド営業業務及びコンシューマ営業部門コンシューマ営業担当において実施している直営新規営業(戸建・充足)については,SOHO営業,アライアンスの刈取り業務へ転換を図るとともに,CRM活動を実施する「営業担当」を設置し,コンシューマ営業部門コンシューマ営業担当において実施しているマンション物件営業業務についても「営業担当」において実施すること等が記載されていた。また,上記書面には,人員移行等の基本的考え方について,被告は,契約社員C・Dについて,本件斡旋措置に取り組む考えであること,契約社員C・Dは,同年11月末を期限に斡旋が成立するまでの間は,「営業担当」に所属の上,現行業務に従事することとすること等が記載されていた。(甲A4)
キ 被告の担当課長は,平成27年5月29日,原告らを含む契約社員C・Dに対し,「▲▲モデル提供を踏まえた今後の業務運営について」と題する書面(甲A5,乙14)を配布した上,▲▲モデルの提供開始に伴い,同年7月に被告東海支店の組織の見直しが行われること,組織の見直しに伴い,契約社員C・Dが従事しているコンシューマ市場向けの◎◎の直接販売業務が同年11月をもって終了すること,同業務の終了に伴い,契約社員C・Dの雇用が終了すること,雇用終了となる契約社員C・Dを対象として,本件斡旋措置及び本件支給措置を実施すること等について説明した。(甲A5,乙14,56,弁論の全趣旨)
ク 被告は,平成27年6月16日及び同月18日,原告らを含む契約社員C・Dを対象とする説明会を開催した。同説明会にはe社の子会社であり,人事総務に係る事務の外注先であるn社及び人材派遣業のo社の担当者も同席していた。
被告は,上記説明会において,契約社員C・Dに対し,社内周知資料である「契約社員C・Dのみなさまへ」と題する書面(甲A6)を配布した上,本件斡旋措置の具体的な内容やスケジュール,斡旋先ポスト等について,説明した。
また,上記書面には,本件同意書のひな形が添付されるとともに,本件同意書の上長への提出期限につき,同年7月7日とする旨明記されていたところ,被告は,契約社員C・Dに対し,本件同意書を提出しない者には斡旋を行わない旨の説明をした。
なお,本件同意書には,不動文字により,「私は,県域営業部の体制見直し等に伴い,貴社との雇用契約が平成27年11月30日を限度に雇用終了となることについて合意します。斡旋については,以下のとおり希望します。」との文言が記載されるとともに,斡旋希望先等を記入する欄が設けられていた。
(以上,甲A6,乙56,弁論の全趣旨)
ケ 原告らは,平成27年6月19日から同年7月14日にかけて,それぞれ4回から6回程度,上司との間で,雇用契約の処理などの相談を含めて個別面談を行ったが,これらの面談の過程において,本件同意書の提出期限は同月7日から同月14日に延期された。(甲B1ないし6の各7,弁論の全趣旨)
原告らの上司は,第1回目の面談の際,原告らに対し,e社グループ内の斡旋先リスト(甲A7,乙12)を交付した。同リストには,斡旋先として,被告のほか,m株式会社東海支店,l社東海支店,p社,q社及びr社が記載されており,それぞれの斡旋先ごとに主な業務内容,必要なスキル,ロケーション,勤務時間等の労働条件等が記載されていた。これらの斡旋先の勤務地は,いずれも愛知県内や岐阜県内とされており,斡旋先における担当業務も86種に上ったが,他方において,上記斡旋先リストには,斡旋可能な人数等についての記載はなかった。(甲A7,乙12)
原告らは,本件斡旋措置が雇用契約を更新しないことを条件として実施されるものであること,上記斡旋先リストに記載されている斡旋先が勤務条件等に照らして適当なものとは思われなかったこと,上記個別面談の際,上司から,希望する斡旋先に再雇用されることは難しいなどと示唆されたこと等から,本件斡旋措置に対する不満を抱いたため,平成27年7月14日の提出期限を経過しても,上司に対し,本件同意書を提出しなかった。(甲B1ないし6の各7,弁論の全趣旨)
コ h労組は,被告に対し,基本要求として,労契法20条に基づいて正社員と非正規雇用労働者及び非正規雇用労働者間での格差をなくすこと等を求めるとともに,会社施策に対する要求として,契約社員C・Dの雇止めを行わないこと等を求める旨が記載された平成27年6月2日付けの「業務量変動に伴う拠点廃止等による契約社員C・Dの対処に関する要求書」(甲A8)と題する書面を提出し,団体交渉の実施を申し入れた。(甲A8)
これに対し,被告は,h労組に対し,同月9日付けの回答書を交付したが,同回答書において,非正規雇用労働者の労働条件等については関係法令等に則り,会社の責任において適切に対処している旨回答するとともに,▲▲モデル提供後の業務量変動に伴い廃止等となる拠点に所属する契約社員C・Dについて,自社内の他業務での再契約を含むe社グループ内及びe社グループ外への斡旋に取り組む旨回答した。(甲A9)
その後,被告とh労組とは,同月17日,同年7月3日,同月9日,同月16日,同年8月6日,同年9月1日,同月8日,同月25日等にそれぞれ団体交渉を開催し,本件斡旋措置等を含む契約社員C・Dの雇止めに係る被告の対応について協議を行ったものの,両者が合意を形成することはできなかった。(甲A10の1ないし6,11,12,弁論の全趣旨)
サ 被告の担当課長は,平成27年8月18日から同月25日にかけて,退職者以外で同年7月14日までに本件同意書を提出しなかった者(原告らを含む合計7人)との面談を実施し,同人らに対し,雇用期間を同年10月1日から同年11月30日までの2か月間とし,雇用契約の更新がないことを明記した雇用契約書(既に被告の押印がされたもの)を手交し,かかる条件での雇用契約の更新に同意する場合,同年8月31日までに,同雇用契約書に署名・押印をして提出するよう説明した。しかし,原告らを含む7人は,被告に対し,いずれも上記雇用契約書を提出しなかった。(甲B1の1の54,B1ないし6の各7,乙56,弁論の全趣旨)
シ 原告らは,平成27年8月24日頃,被告に対し,従前と同内容の雇用契約の更新を求める雇用継続の申入書をそれぞれ提出した。(甲B1ないし6の各3)
ス 被告は,原告らの雇用期間が平成27年9月30日をもって満了となるが,雇用契約の更新は行わないこととした旨が記載された「雇止め予告通知書」(甲B1の4,B2の4,B3の4)を,同月1日に原告X1と原告X2に対し,同月11日に原告X3に対し,それぞれ交付したが,原告X4,原告X5及び原告X6は,同通知書を受領しなかった。(甲B1ないし6の各4,乙22ないし33)
セ h労組は,被告に対し,平成27年9月10日付けの「「雇用止め予告通知書」に関する申入書」(甲A11)を提出し,原告ら組合員への雇止め予告通知を直ちに撤回し,雇用継続を行うこと及び団体交渉において問題解決を図るべく誠実な交渉を行うことを申し入れた。(甲A11)
これに対し,被告は,h労組に対し,同月15日付けの回答書をもって,雇止め予告通知書の撤回要求には応じられないが,同月16日午後零時までに雇用契約書を提出する場合に限り,同年11月末を期限として雇用する旨の回答をした。(甲A12)
ソ 被告は,原告らに対し,平成27年9月11日に,同月16日の午後零時までに,雇用期間を同年10月1日から同年11月30日までの2か月間とし,雇用契約の更新がないことを明記した雇用契約書に署名・押印の上,これを提出した場合には,同日まで雇用する旨の申入れをした。
しかし,原告らは,いずれも上記期限までに上記雇用契約書を提出しなかった。(証人F,弁論の全趣旨)
タ 原告らと被告が雇用契約を更新しないまま,従前の雇用契約に係る雇用期間の終期である平成27年9月30日が経過し,被告は,同年10月1日以降,被告における原告らの就労を拒否した(本件雇止め)。(甲B1の7,B2の7,B4の7,B5の7,B6の7)
被告は,原告らに対しては,再就職先の斡旋等をしなかった。(弁論の全趣旨)
チ 被告が,原告らに対し,平成27年10月28日付けで,被告事務所から持ち帰ったままの社員証や事務所内の書庫の鍵等の返還を求める旨の書面を内容証明郵便により送付したところ,原告らは,これに応じ,被告に対し,いずれも同年11月12日までに上記物品の全てを返還した。もっとも,その際,原告らは,被告に対し,無用なトラブルを避けるために本来返還する必要はないとの異議を留めた上で返還に応ずること,雇用の継続が認められれば返却した物品を改めて交付するよう求めることを告げた。(甲A21)
ツ 被告は,原告らに対し,平成27年10月30日付けで一時金を支給した(なお,原告X1の一時金は17万円であった。)が,同一時金の支給に関し,原告らは,同年11月28日以降,被告に対し,一時金の受領に同意しない,又は賃金の一部として受領する旨が記載された書面を送付した。(甲A21,弁論の全趣旨)
テ 本件斡旋措置により,被告東海支店における雇止めの対象者合計112人のうち,e社グループ内で再雇用された者は49人,再就職支援会社の支援を利用し,e社グループ外での再就職を希望した者は35人,自己都合により退職をした者が22人であった(なお,その余の6人は原告らである。)。
また,再就職支援会社の支援を利用し,e社グループ外での再就職を希望した35人のうち,平成28年6月末時点において,再就職先が決定した者が21人,再就職先が決定しておらず,支援を受けている者が14人,同年10月末時点において,再就職先が決定した者が28人,再就職先が決定しておらず,支援を受けている者が7人(ただし,うち1名は本人都合により支援終了)である。
(以上,乙46,57)
(4)  本件雇止め後の被告及びs営業部の状況等
ア 被告は,平成27年11月末をもって,被告による一般消費者に対する◎◎の直接販売業務を終了した。(乙14,56,証人F)
イ 被告東海支店s営業部のコンシューマ営業担当として,平成27年4月1日時点では,マンションタイプの営業担当者が3人(うち2人が原告X2及び原告X1),戸建てタイプの営業担当者が8人(うち2人が原告X5及び原告X3),BBパートナーの営業担当者(G)が1人,営業支援担当者が3人,課長1人が配属されていたが(営業担当者としてはGを含めて12人),契約社員の雇止めに伴い,被告東海支店s営業部の営業担当には,同年12月1日時点において,BBパートナー担当の営業担当者につき,Gを含む4人及び営業支援担当者2人の配属となった。その後,平成28年7月1日時点において,営業担当者については,同年3月に他組織が廃止されたことに伴い,社員の営業担当者が2人異動してきたことにより,Gを含む6人(営業担当者4人,営業支援担当者2人)に増員となったところ,これらの6人全員が,社員又は契約社員Aであった。上記6人の営業担当者らは,○○マンションタイプ,○○ファミリータイプ(事務用),○○ファミリータイプ(住宅用)及び○○プレミアムのマイグレーション活動等に従事していた。(甲A24,25,36,44,証人G,弁論の全趣旨)
なお,○○マンションタイプのサービスは平成29年1月末に終了し,○○ファミリータイプ(事務用及び住宅用)のサービスは同年11月末に,○○プレミアムのサービスは平成31年1月末に,それぞれ終了する予定である。(甲A36,証人G)
ウ 被告東海支店s営業部では,平成27年度の振り返りとして,光サービス新規拡大(◎◎)に関し,ショッピングモールからの受注により計画が達成したこと等を挙げるとともに,平成28年度に向けて,SOHO事務用市場での販売拡大を課題として掲げ,戦略的なリストに基づく営業活動の実施や,販売機会を捉えたARPU装着の実施等に取り組むこととしていた。(甲A28)
エ 被告は,平成29年4月1日に採用予定の新規卒業の正社員を募集したが,正社員の配属予定地域は,四国支店エリア及び九州支店エリアであった。(甲A26の1・2)
オ 事実認定の補足
この点,原告らは,被告が,平成27年10月以降も,原告らが従事していた◎◎の直接販売業務を終了していないと主張し,証人Gもその旨証言する。しかし,証人Gは,その理由として,ISDN回線やADSL回線を利用している顧客が存在していることや◎◎等の商品を知らない顧客がいるために潜在的な顧客に対する営業活動が可能であることを挙げるにとどまり,必ずしも被告s営業部における現在の具体的な業務内容を根拠とするものではないし,証人G自身が,◎◎のコンシューマ(一般消費者)に対する顧客獲得のための営業や,マンションに関する直接販売営業は行っていない旨証言していることに照らせば,この点に関する原告らの主張は採用できない。
(5)  「個別指導基準」に基づく指導強化期間について
ア 被告では,遅くとも平成23年4月頃から,契約社員Dに対する「個別指導基準」を設け,被告の設定する販売実績の基準を下回る契約社員Dに対して一定の指導等を行うこととしていたところ,平成25年10月28日,「個別指導基準」に関し変更点が生じたとして,被告は,原告X1,原告X2,原告X3及び原告X5を含む対象契約社員Dを対象として,2回に分けて説明会を開催した。(甲A36,乙42,証人F,原告X1本人,原告X2本人,原告X5本人,弁論の全趣旨)
変更後の「個別指導基準」では,3か月間で24回線の◎◎の新規受注をすることを基準値とするとともに,受注件数の実績が当該基準値を下回った場合,次の3か月間を指導強化期間と位置付け,指導強化期間内に21回線の◎◎の新規受注をすることができなかった場合には,業務内容の変更等の措置を講ずるものとされていた。(甲A20,乙41,42)
イ 上記「個別指導基準」に基づき,原告X5については平成26年2月から同年4月までの期間及び平成27年2月から同年4月までの期間,原告X3については同年2月から同年4月までの期間,原告X2については平成26年2月から同年4月までの期間及び平成27年2月から同年4月までの期間が,それぞれ指導強化期間とされたが,原告X5,原告X3及び原告X2は,いずれも当該指導強化期間中の基準を達成した。
もっとも,原告X5,原告X3及び原告X2は,自らにつき指導強化期間が設定された旨の認識はなく,上司から,指導強化期間に関する告知を受けたことや,指導強化期間であることを前提とした指導等を受けたこともなかった。
(以上,甲A37,39,40,乙43,証人F,原告X5本人,原告X3本人,原告X2本人)
ウ 被告東海支店s営業部において,上記「個別指導基準」に基づき,平成26年4月末及び同年7月末に,いずれも雇止めの直前3か月間について指導強化期間と位置付けられたにもかかわらず,指導強化期間における基準を達成することができなかった契約社員Dがそれぞれ雇止めとなった。
もっとも,原告X3及び原告X5は,雇止めされた契約社員Dは,営業活動を行わない素行が悪い者であり,営業活動をしないために成績不振になった者であると認識していた。
(以上,乙43,証人F,原告X3本人,原告X5本人,弁論の全趣旨)
2  争点1(原告らからの更新拒絶の有無)について
前提事実及び認定事実によれば,確かに,被告は,平成27年8月18日から同月25日にかけて実施された被告の担当課長と原告らとの面談において,雇用期間を同年10月1日から同年11月30日までの2か月間とし,雇用契約の更新がないことを明記した雇用契約書を手交し,かかる条件での雇用契約の更新に同意をする場合,同年8月31日までに,同雇用契約書に署名・押印して提出するように説明し(認定事実(3)サ),更に被告は,原告らに対し,同年9月11日にも,同月16日午後零時までに,雇用期間を同年10月1日から同年11月30日までの2か月間とし,雇用契約の更新がないことを明記した雇用契約書に署名・押印の上,これを提出した場合には,同日まで雇用する旨の申入れをしたが(認定事実(3)ソ),これに対し,原告らが,いずれも上記条件での雇用契約書への署名・押印及び提出をしないまま,同年9月30日が経過したことから,被告は,同年10月1日以降被告における原告らの就労を拒否した(認定事実(3)サ,ソ,タ)ことが認められる。
しかし,従前原告らが被告(a社,c社及びd社を含む。)との間で反復更新していた各雇用契約については,雇用期間を概ね3か月とし,雇用契約の更新の可能性があるという雇用条件であったところ,被告が原告らに対し同年8月及び同年9月に提示した雇用条件は,雇用期間を2か月とし,雇用契約の更新がないものとする点でその内容を大きく異にするものであり,かつ,原告らが同年8月24日頃,被告に対し,従前と同内容の労働契約の更新を求める雇用継続の申入書をそれぞれ提出した(認定事実(3)シ)ことからすれば,原告らが同月及び同年9月の被告による雇用契約の申入れを拒否したとしても,このことが,被告から提示された雇用条件の拒否にとどまらず,雇用契約の更新それ自体を拒否する意思表示に当たるとまでいうことはできない。
被告は,原告らが自ら雇用契約の更新を拒絶したことを基礎付ける事実として,被告が,原告らに対し,本件支給措置に基づき,同年10月30日付けで一時金を支給したこと,原告らは,社員証や被告事務所内の書庫の鍵等の返還を求める被告の書面を受け,いずれも同年11月12日まで上記物品の全てを返還したことを挙げる。
しかし,一時金の支給に関し,原告らは,同年11月28日以降,被告に対し,一時金の受領に同意しない,又は賃金の一部として受領する旨が記載された書面を送付したこと(認定事実(3)ツ),原告らは,社員証や被告事務所内の書庫の鍵等を返還した際,被告に対し,無用なトラブルを避けるために本来返還する必要はないとの異議を留めた上で返還に応ずること,雇用の継続が認められれば返却した物品を改めて交付するよう求めることを告げていること(認定事実(3)チ)に照らせば,原告らが,一時金の支給を受けるとともに,社員証等の物品を返還していたとしても,このことをもって原告らが雇用契約の終了を容認し,さらには,原告らが雇用契約の更新を拒絶したものと認めることはできないから,上記被告の主張は採用することができない。
以上によれば,原告らが自ら雇用契約の更新を拒絶したとは認められないことから,争点1に関する被告の主張は理由がない。
3  争点2(労契法19条1号又は2号該当性)について
(1)  労契法19条1号該当性
ア 原告らのうち,雇用通算期間が最も長い原告X1については,12年で51回にわたり雇用契約が更新されている(前提事実(2)ア(ア))し,雇用通算期間が最も短い原告X3ですら,4年11か月で22回にわたり雇用契約が更新されている(前提事実(2)ウ(イ))ことに照らせば,原告らと被告との間の雇用契約に係る雇用期間はいずれも長期間にわたり,雇用契約の更新回数も多いと評価することができる。
しかし,被告は,原告らを含む契約社員Dとの雇用契約の更新の都度,契約社員Dに対し,更新後の雇用契約に係る雇用条件が記載された雇用契約書を交付し,同契約書に署名・押印の上,提出してもらうという手続をとること(認定事実(1))によって,雇用契約の更新に係る契約社員Dの意向を更新の都度,確認してきたことが認められる。また,新たな雇用契約の始期の後に雇用契約書が渡されることがあったものの,これが常態化していたと認めることはできない(認定事実(2)ク(イ))。これらによると,被告は,原告らとの雇用契約の更新に当たり,その都度,雇用契約書を提出させることによって,雇用契約の更新に係る原告らの意向等について確認していたものであり,原告らと被告との間の雇用契約の更新手続が一概に形骸化していたとまでいうことはできない。
以上によれば,原告らと被告との間の各雇用契約は,期間の定めのない労働契約と社会通念上同視できるとまで認めることは困難であるから,労契法19条1号所定の有期労働契約には該当しないというべきである。
イ これに対し,原告らは,雇用契約の更新に際し,雇用契約書を作成してはいたものの,雇用契約書については,机上に置かれていたり,レターケース等に入れられるなど上司から直接手交されない場合も多かったことや,個別の面談等による契約内容の説明,確認が行われなかったこと等をもって,原告らと被告との間の雇用契約の更新手続が形骸化していた旨主張する。
確かに,原告らの雇用契約の更新に当たり,上司が原告らに対し雇用契約書を直接手交しない場合はあった(認定事実(2)ア(イ),イ(イ),ウ(イ),エ(イ),ク(ア))ことは認められる。
しかし,原告らがいずれも営業に従事していたことからすると,事務所内において執務する時間が限定され,雇用契約書を直接手交することに一定程度の困難を伴うと推認することができること,被告は,上記アのとおり,雇用契約書の提出をもって原告らの雇用継続の意思を確認していたといえることに照らせば,原告らがその上司から雇用契約書を直接手交されず,個別の雇用契約の説明,確認が行われなかったからといって,原告らの雇用契約の更新手続が直ちに形骸化していたとまでいうことは困難であるから,原告らの上記主張を採用することができない。
(2)  労契法19条2号該当性
上記(1)で説示したとおり,原告らと被告との間の雇用契約に係る雇用期間はいずれも長期間にわたり,雇用契約の更新回数も多いと評価することができること,原告らが,a社,c社又はd社に採用された後,一貫して一般消費者に対する◎◎の直接販売業務等に従事していたところ,原告らの業務内容や従事していた期間に照らしても,原告らが従事していた業務は,被告(a社,c社及びd社を含む。)において恒常的に存在していた基幹的な業務であると認められること,雇用契約の更新について,原告X1は,打切りの可能性も含めて何らの説明も受けなかったし(認定事実(2)ア(ア)),その余の原告らについても,最初の雇用契約の締結に際し,健康で,極端に営業成績が悪くなければ雇用契約の更新が続けられる,健康で売上目標を達成していれば最長65歳まで雇用を継続する,年齢は関係なく,健康で成績がよければいつまでもいられるなど雇用の継続を期待させるような説明を受けるなどしていたこと(認定事実(2)イ(ア),ウ(ア),オ(ア)),原告らに係る雇用期間の始期を平成20年4月1日とする雇用契約書以降の各雇用契約書(雇用期間の始期を平成27年10月1日とする雇用契約書を除く。)には,「雇用更新の可能性」について「有」と明記されるようになったこと等の事情を総合的に勘案すると,原告らにおいて,被告との間の各雇用契約満了時に当該雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認めるのが相当である。
(3)  これに対し,被告は,①原告らを含む契約社員Dと社員との業務内容・業務形態,雇用条件等には,相違があり,社員と比較して,採用手続も簡便であったことからすると,原告らが,短期的な有期契約を前提に雇用契約を締結したといえること,②原告らは,採用に際して,業務上の必要性がなくなった場合又は成績が劣悪な場合には雇用契約が更新されない旨の説明を受けていたこと,③被告は,営業成績の芳しくない契約社員Dについて,「個別指導基準」に基づき,指導強化期間における指導等を行った上,なお基準を満たさない場合であって,変更可能な業務がないと判断された場合には,雇止めをするという運用を行っていたこと等に照らせば,原告らの各雇用契約は,労契法19条1号及び2号のいずれにも該当しない旨主張する。
ア 上記①の主張について
上記(1)で説示したとおり,原告らは,被告との間で,いずれも長期間かつ多数回にわたり,雇用契約の更新を反復継続してきたこと,原告らに係る雇用期間の始期を平成20年4月1日とする雇用契約書以降の各雇用契約書(雇用期間の始期を平成27年10月1日とする雇用契約書を除く。)には,「雇用更新の可能性」について「有」と明記されるようになったことに照らせば,契約社員Dと社員との業務内容・業務形態,雇用条件,採用手続等における差異に着目しても,原告らが直ちに短期的な有期契約を前提に雇用契約を更新していたものということはできず,被告との間の各雇用契約が更新される旨の原告らの期待が存在することにつき合理的な理由がないことを基礎付ける事由とはなり得ない。
したがって,上記①の被告の主張は,労契法19条2号該当性を否定する根拠とはなり得ない。
イ 上記②の主張について
被告が,原告らの採用の際,業務上の必要性がなくなった場合又は成績が劣悪な場合には雇用契約が更新されない旨の説明をしたと認めるに足りる的確な証拠は存在しない。
これに加え,原告らのうち,健康で,極端に営業成績が悪くなければ雇用契約の更新が続けられる(認定事実(2)イ(ア))とか,健康で売上目標を達成していれば最長65歳まで雇用を継続する(認定事実(2)ウ(ア))とか,年齢は関係なく,健康で成績がよければいつまでもいられる(認定事実(2)オ(ア))など,むしろ雇用の継続を期待させるような説明を受けた者も含まれることに照らせば,上記②の被告の主張を採用することはできない。
ウ 上記③の主張について
被告s営業部において,平成26年4月末及び同年7月末に,それぞれ1人ずつ,契約社員Dに対する雇止めが行われたが,これらの契約社員Dらは,いずれも雇止めの直前3か月間について指導強化期間と位置付けられたにもかかわらず,指導強化期間における基準を達成することができなかったこと(認定事実(5)ウ)からすると,被告は,営業成績の芳しくない契約社員Dについて,「個別指導基準」に基づき,指導強化期間における指導等を行った上,なお基準を満たさない場合であって,変更可能な業務がないと判断された場合には,雇止めをするという運用を行っていたことがうかがわれる。
しかし,証拠(乙41)によれば,「コンシューマ営業担当者(契約社員D)における「個別指導基準」のカウント方法等の見直しについて」と題する書面(乙41)には,指導強化期間において「基準値を下回った場合次の契約期間は「業務内容の変更」等とする」と記載されているにとどまり,変更可能な業務がない場合,雇止めとなる可能性があることが明記されていないことが認められる。
被告は,平成25年10月28日の2回の説明会のうちの1回において,契約社員からの質問に対し,当時の担当課長が,指導強化期間中にも基準値を下回り,フェーズ③となった場合には,別の業務があれば紹介するが,その時点で別の業務がない場合もあるから,別業務を必ずしも紹介できる保証があるわけではないので誤解しないでほしいと説明し,雇止めの可能性があることを念押しした旨主張し,証拠(乙42)によると,被告が主張するような内容の質疑応答があったことは認められる。
しかし,この事実によると,かえって,被告においては,平成25年10月28日の説明会では,質疑応答において,別業務を必ずしも紹介できる保証がないという回答をしたにすぎないことが認められるから,この説明会において,成績が劣悪な場合には雇用契約が更新されない旨の説明をしたと認めることはできない。
また,「個別指導基準」に基づき,原告X5については平成26年2月から同年4月までの期間及び平成27年2月から同年4月までの期間,原告X3については同年2月から同年4月までの期間,原告X2については平成26年2月から同年4月までの期間及び平成27年2月から同年4月までの期間が,それぞれ指導強化期間とされたが,原告X5,原告X3及び原告X2は,いずれも,自らにつき指導強化期間が設定された旨の認識はなく,上司から,指導強化期間に関する告知を受けたことや,指導強化期間であることを前提とした指導等を受けたこともなく,また,いずれも当該指導強化期間中の基準を達成したこと(認定事実(5)イ)が認められる。
さらに,原告X5及び原告X3は,素行が悪く営業活動を十分に行っていない者が営業不振として雇止めになったと認識していたことが認められる(認定事実(5)ウ)。
これらによると,被告が,契約社員Dについて,「個別指導基準」に基づき,指導強化期間における指導等を行った上,なお基準を満たさない場合であって,変更可能な業務がないと判断された場合には,雇止めをするという運用を行っていたとしても,かかる運用は,原告らに十分周知,認識されていなかったというべきであるから,被告との間の各雇用契約が更新される旨の原告らの期待が存在することにつき合理的な理由がないことを基礎付ける事由とはなり得ない。
したがって,上記③の被告の主張も,労契法19条2号該当性を否定する根拠とはなり得ない。
(4)  以上によれば,原告らにおいて,被告との間の各雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認めるのが相当であるから,原告らと被告との間の雇用契約は,労契法19条2号に該当するというべきである。
4  争点3(本件雇止めにおける客観的に合理的な理由及び社会的相当性の有無)
(1)  本件雇止めの判断基準
本件雇止めは,被告における経営方針の転換に伴って行われたものであって(認定事実(3)),労働者である原告らの責に帰すべき事由によるものとはいえないことから,本件雇止めについて,客観的に合理的な理由があり,かつ社会通念上相当であるといえるか否かを判断するに当たっては,期間の定めのない雇用契約との差異などを十分に踏まえつつ,整理解雇の場合に準じて,①人員削減の必要性,②雇止めの回避努力,③人選の合理性,④手続の相当性の各事情を総合的に考慮して判断するのが相当というべきである。
(2)  人員削減の必要性について
被告は,原告らが従事していた◎◎の直接販売業務そのものが終了することの結果として本件雇止めがなされたものであって,人員削減の必要性は当然認められると主張する。
確かに,被告においては,e社が平成27年2月に▲▲モデルの提供を開始したことに伴い,e社からの◎◎の販売受託収入が数十億円も減収が見込まれたことから,経営方針の転換を図るとともに,契約社員C・Dによる◎◎の直接販売業務を終了することとなったことが認められる(認定事実(3)イ,ウ)。現に,原告らが所属していた被告東海支店s営業部営業推進部門営業推進担当及びお得意様担当並びにコンシューマ営業部門コンシューマ営業担当は,被告における経営方針の転換に伴い,平成27年7月1日以降,s営業部営業担当に再編され,被告東海支店s営業部営業推進部門お得意様担当及びコンシューマ営業部門コンシューマ営業担当に配属されていた原告らを含む契約社員Dが従事していた戸建住宅やマンション等の居住者といった一般消費者に対する◎◎の直接販業務は終了したことも認められる(認定事実(3)イ,ウ,(4)ア)。そうすると,被告における経営方針の転換に伴い,従前契約社員Dが従事していた主たる業務がなくなったことから,契約社員Dに係る人員削減の必要性が一定程度生じたことは否定できない。
しかし,雇止めの対象者は,被告東海支店だけでも112人(うち,岐阜エリアにおいては原告らを含む26人(乙46))にも及ぶ(認定事実(3)テ)ところ,本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても,◎◎の直接販売業務が終了したことによって,具体的にどの程度の人員削減が必要であったか不明であるといわざるを得ないことからすると,上記雇止めの対象者の人数が適正であったと評価することは困難である。
また,現に,契約社員C・Dの雇止めに伴い,被告東海支店s営業部所属の営業担当者は,平成27年12月時点では一旦は減員となったものの,その後,平成28年7月時点には増員に転じていることも認められる(認定事実(4)イ)。
以上によれば,被告において,契約社員C・Dに係る人員削減の必要性が一定限程度生じたことは否定できないものの,雇止めの対象者の人数等に見合うほどの人員削減の必要があったか否かについては,疑義があるといわざるを得ない。
(3)  雇止めの回避努力について
ア 被告は,契約社員C・Dの雇止めに当たり,契約社員に係る退職金制度は設けられていなかったものの,本件支給措置を実施するとともに,雇止めの対象となる契約社員C・Dについて,可能な限り再就職ができるよう,本件斡旋措置を実施し,現に再就職先の確保について,十分な実績を上げていることに照らせば,被告は,契約社員C・Dの雇止めに当たり,最大限の配慮を行った旨主張する。
確かに,被告は,雇用契約を更新しない契約社員C・Dに対してe社グループ内での斡旋による再雇用や再就職支援会社を活用したe社グループ外への再就職の斡旋をすることとし(本件斡旋措置),雇用契約期間の途中で業務がなくなる場合等については,残余期間分の基本賃金を支給するとともに,斡旋等により被告と雇用関係が終了となる場合については,勤務年数に応じて雇用終了一時金を支給することとし,斡旋先がe社グループ外の民間企業等である場合には,以後の生活支援等に向けた支援一時金も支給することとした(本件支給措置)ことが認められる(認定事実(3)エ)。
しかし,契約社員C・Dが本件斡旋措置を受けるためには,平成27年7月7日を期限として,その上長に対し,本件同意書を提出することが,所与の前提とされていた(認定事実(3)ク)ところ,本件同意書には,不動文字により,「私は,県域営業部の体制見直し等に伴い,貴社との雇用契約が平成27年11月30日を限度に雇用終了となることについて合意します。」との文言が記載されていた(認定事実(3)ク)ことから,本件同意書は,契約社員C・Dにおいて,本件斡旋措置を受ける前提条件として,平成27年11月30日をもって雇用契約を終了することに合意することを求めるものであったと認められる。
上記(3)で説示したとおり,原告らが,被告との間の各雇用契約満了時に当該雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認めるのが相当であるから,労契法19条により,原告ら又はこれと同様の状況にある契約社員に対しては,雇用契約の更新の申入れを拒絶することに客観的に合理的な理由があり,かつ,社会通念上相当であると認められる場合でなければ雇止めは認められないものである。それにもかかわらず,本件同意書を提出した場合には,雇用契約を合意解約した又は雇用契約の更新の申出をしなかった若しくは申出を撤回したことから労契法19条の要件を欠くとして,同条の保護を受けられず,ひいては職を失う危険を負うことになる。現に被告は,本件同意書を提出しなかった原告らについては再就職先の斡旋等をしていない(認定事実(3)タ)。
しかも,被告が原告らに交付した斡旋先リスト(甲A7,乙12)に記載された斡旋先における担当業務は86種に上るものの,他方において,同リストには,斡旋可能な人数等についての記載がなかったことに照らせば,原告らが,再就職の可能性等に不安を覚え,被告による雇止めに際しての配慮としては不十分であるとして,本件同意書を提出しなかったことは,無理からぬものがある。
このように,本来更新されるはずの雇用契約が更新されなくなり,契約社員を失職させるような危険を伴う本件同意書を,再就職の斡旋が成立しているわけでもなく,就職のめども立っていない段階において,提出させようとする被告の対応は,殊更に合意による雇用契約の終了という状況を作出し,本来労契法19条によって保護されるべき契約社員らから同条による保護を奪うものといわざるを得ない。
そうすると,被告は,原告らを含む契約社員C・Dとの間の雇用契約の各契約社員らの雇用確保及び雇用喪失に対する手立てとして,再就職先の斡旋(本件斡旋措置)及び雇用終了一時金,支援一時金等の支給(本件支給措置)の手立てを採っているものの,これらの手立てを受けるためには被告との雇用関係が終了することに合意する旨の本件同意書を被告に提出することを契約社員に求め,提出がない場合には上記の手立てを講じないこととしている以上,このような被告の対応は,原告らとの関係に限ってみれば,一時金の支給という金銭的な手立てを行ったにとどまり(なお,原告X1は,一時金として,17万円の支給を受けた(認定事実(3)ツ)ものの,原告X1の平均月収を大きく下回る金額である。),雇止めの回避という観点からすればほとんど見るべき手立てを採っていないというほかない。また,原告ら以外の他の契約社員らとの関係においても,再就職先の斡旋等と引換えに本件同意書を提出させ,雇止めの有効性について争うことを事実上困難にさせているのであって,そのような手段は,各契約社員らの雇用の確保ないし雇用喪失に対する手当てとして不相当である。
以上によると,被告が,本件雇止めに当たり,本件斡旋措置や本件支給措置の手立てを採っていたとしても,このような本件同意書の提出を前提としている以上,原告らを含む契約社員C・Dの雇用確保ないし雇用喪失に対して十分な手当てを行ったと評価することはできず,本件雇止めの雇止め回避努力としては不十分なものであるといえる。
イ(ア) これに対し,被告は,本件斡旋措置や本件支給措置を受けるに当たり,契約社員C・Dに対し,本件同意書の提出を求めたが,これは,被告が,斡旋先等との円滑な調整に向けて斡旋等を希望する契約社員C・Dの人数を把握することを主目的とし,併せて当該業務における雇用契約が終了することについての認識のそごが出ないよう,被告と契約社員C・Dらとの認識を一致させるために行ったものであって,雇用契約が継続する余地がない以上,契約社員C・Dにそのことを認識してもらうために,本件同意書を徴収することは何ら理不尽ではないとして,原告らが本件同意書を提出しなかった以上,被告が再就職先の斡旋等を行わなかったとしても,十分に雇止めに関する配慮を行ったものであると主張する。
しかし,再就職先の斡旋を受けた契約社員が被告との雇用契約の継続を求めることによって,再就職の斡旋先との関係を損なうこと防止し,再就職の斡旋先等との円滑な調整を図るためには,契約社員との間で,再就職斡旋が成立し,再就職先と雇用契約が締結されることを条件に雇用契約を解消する旨の合意をすれば足りるのであり,また,再就職の斡旋等を希望する契約社員C・Dの人数を把握するためには,端的に再就職の斡旋等に係る希望調査を実施すれば足りるのであって,斡旋がされるか否か不明な段階において,契約社員C・Dに,被告との間の雇用契約の終了に同意させる必要があるとは認められない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(イ) また,被告は,被告東海支店管内の対象者112名のうち105名の者が当初定めた提出期限の平成27年8月末までに本件同意書を提出し,原告ら及び自己都合退職者を除く84人が本件斡旋措置を受け,77人の雇用先が確保されていることからすると,本件同意書の提出の要請は何ら不合理・理不尽なものではない旨主張する。
しかし,前記判示したとおり,原告らは,斡旋先リストや被告の説明状況からしても(認定事実(3)ク,ケ),原告らの雇用先確保の具体的な可能性の程度すら不明なまま,本来更新されるはずの雇用契約が更新されず,職を失う危険を伴う本件同意書を提出するように求められたのであって,このような被告による本件斡旋措置に係る対応は,相当性を欠くものと言わざるを得ない。そうすると,被告が主張するように,実際に本件同意書を提出した対象者84人のうち77人の雇用先が確保されたとしても,それは結果的に雇用先が確保できたにすぎないから,雇用先の確保ができたことをもって,本来労契法19条によって保護されるべき契約社員らである原告らから同条による保護を奪うような被告の本件斡旋措置に係る対応を相当なものであったと認めることはできない。
したがって,この点についての被告の主張が雇止めを前提とする斡旋の合理性を肯定する根拠になると認めることはできない。
(4)  人選の合理性について
被告において,契約社員C・Dを一律に雇止めの対象としたところ,これは,被告が,経営方針の転換に伴い,契約社員C・Dが従事していた一般消費者に対する◎◎の直接販売業務を終了するため,契約社員C・Dの担当業務が存在しなくなるという理由に基づくものであって,雇止めの対象とする人員の選択について,恣意的な判断がされたものと認めることはできない。
この点,原告らは,s営業部では,契約社員Dが本来社員によって担当されるべき◎◎の販売営業という基幹的業務に従事していたにもかかわらず,被告は契約社員C・Dのみを対象として雇止めを行っているところ,原告らを社員及び契約社員A・Bと比べて不利益に扱うものであって,労契法20条の趣旨に反するものであると主張する。
しかし,s営業部において,契約社員Dである原告らが従事していた◎◎の一般消費者に対する営業活動が終了したことは事実であるし,SOHO市場に対する◎◎の営業活動についても当面の間は継続されるものの,縮小する方針が採られていたことを踏まえれば,これらの業務に従事していた者を対象としても雇止めが行われたとしても,事業の縮小に対応すべく行われたといえることから,選択基準として必ずしも合理性を欠くものではなく,社員及び契約社員A・Bと比較して,契約社員C・Dを殊更に不利益に扱ったものと認めることもできない。
したがって,原告の上記主張は採用することはできず,人選の合理性を否定すべきその余の事情も見当たらない。
(5)  手続の相当性について
被告は,雇止めの対象となる契約社員C・Dに対し,平成27年5月29日の被告の担当課長による説明や同年6月16日及び同月18日に契約社員C・Dを対象として実施された説明会を通して,◎◎の直接販売業務の終了に伴い,契約社員C・Dの雇用が終了すること,雇用終了となる契約社員C・Dを対象として,本件斡旋措置及び本件支給措置を実施すること,本件斡旋措置に当たっては本件同意書の提出が必要であること等を周知し(認定事実(3)キ,ク),原告らは,同月19日から同年7月14日にかけて,上司との間で個別面談を行ったこと(認定事実(3)ケ),被告は,原告らが所属するh労組からの平成27年6月2日付けの団体交渉の実施の申入れに対し,同月9日付けでh労組からの要求に対する被告の回答を行った上で,h労組との間で,同月17日,同年7月3日,同月9日,同月16日,同年8月6日,同年9月1日,同月8日,同月25日等に,それぞれ団体交渉を開催し,本件斡旋措置等を含む契約社員C・Dの雇止めに係る被告の対応について協議を行った(認定事実(3)コ)こと,被告は,h労組からの同月10日付けの「「雇用止め予告通知書」に関する申入書」の提出を受け,同月15日付けの回答書をもって,雇止め予告通知書の撤回要求には応じられないなどと回答した(認定事実(3)セ)こと,契約社員C・Dが所属する他の労働組合であるg労組との間でも,団体交渉を行っていたことが認められる。
このように,被告による原告らに対する説明やh労組との交渉経過に鑑みれば,原告らやh労組にとって,本件雇止めに関する被告の対応について納得できる内容でなかったとしても,本件雇止めに当たり,被告が履践した手続が,不相当であるとまで評価することはできない。
(6)  小括
以上のとおり,本件雇止めについて,人選の合理性や手続の相当性を欠くとはいえず,また,被告において,契約社員C・Dに係る人員削減の必要性が一定限程度生じたことは否定できないとはいえ,雇止めの対象者の人数等に見合うほどの人員削減の必要があったか否かについては疑義があること,被告の対応は,原告らを含む雇用契約社員Dの雇用確保又は雇用喪失に対する手当てとして不相当であり,被告が本件同意書の提出を前提条件として,本件斡旋措置や本件支給措置を講じたとしても,本件雇止めにおける雇止め回避努力としては,不十分なものであることを総合的に考慮すれば,本件雇止めは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当なものであると認めることはできない。
そして,原告らは,被告に対し,従前と同内容の雇用契約の更新を求める雇用継続の申入書をそれぞれ提出した(認定事実(3)シ)ことから,いずれも雇用契約の更新を申し入れているところ,被告は,労契法19条によって従前と同一の労働条件で上記申込みを承諾したものとみなされることから,原告らは,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあるというべきである(ただし,原告X1は平成28年3月31日に,原告X5は平成29年3月31日に,それぞれ定年退職となる予定であった(前提事実(5))ことからすると,それぞれの定年退職予定日より後については労働契約上の権利を有する地位にはないことになる。)。
5  争点4(原告らの賃金額)について
(1)  上記4で説示したとおり,本件雇止めは無効であるから,原告X2,原告X3,原告X4及び原告X6は,いずれも被告との間で,労働契約上の権利を有する地位にあると認められるため,原告らは,被告との間の労働契約に基づき,被告から就労を拒否された平成27年10月1日以降の賃金請求権を有すると認められる。
また,原告X1については,同日から定年に達した平成28年3月31日までの,原告X5については平成27年10月1日から定年に達した平成29年3月31日までの期間についての賃金請求権を有すると認められる。
(2)  原告らの月額賃金額について
ア 通勤費について
この点,原告らは,通勤費について,就業規則上明確な支給基準が定められており,この支給基準に基づいて支払がなされている以上,賃金としての性質を有すると主張する。
しかし,通勤費は,本来実費支給の性質を有するものであって,平成27年10月1日以降,実際に被告における就労をしていない原告らに通勤費が生じる余地はない。
したがって,通勤費を原告らの月額賃金額の算定基礎に含めることはできない。
イ 就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」(賃金台帳における「その他手当」,給与明細における「インセンティブ手当」)について
この点,被告は,就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」は,契約社員Dの販売成果に応じて支払われるものであるところ,本件雇止めの後,s営業部におけるコンシューマ市場向けの◎◎の直接販売業務は終了しており,もはや原告らが,販売成果を上げることはできないため,就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」の支給を受けることはあり得ないから,この手当を原告らの月額賃金額の算定基礎に含めることはできない旨主張する。
しかし,前提事実及び認定事実によれば,就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」は,被告の就業規則及び給与規則において「基準内賃金」とされ,調整賃金Ⅰとともに「基本賃金」とされていたこと,原告らは,その多寡については格別,ほぼ毎月,就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」の支給を受けていたこと(乙60の1ないし6)を考慮すると,原告らの各雇用契約においては,就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」は,その額に変動があるとはいえ,就業規則及び給与規則における「基礎賃金」(賃金台帳における「基本給」,給与明細における「基礎賃金」)を補完する基本的な賃金と位置付けられていたと認めるのが相当であり,この点に反する被告の主張は採用できない。
したがって,就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」は,原告らの月額賃金額の算定基礎に含めるのが相当である。
ウ 就業規則及び給与規則における「時間外手当」,「休日手当」,「深夜手当」,「特殊勤務手当」及び「特別手当」(賃金台帳における「時間外」,「休日」,「深夜」,「特勤手当」及び「特別手当」,給与明細における「時間外手当」,「休日手当」,「深夜手当」「特殊勤務手当」及び「特別手当」)について
(ア) 原告らは,時間外勤務の常態化や顧客の都合に合わせた休日出勤等により,就業規則及び給与規則における「時間外手当」,「休日手当」,「深夜手当」,「特殊勤務手当」も恒常的に発生していたことが明らかであることから,これらの各種手当についても,本件雇止めがなければ雇用契約上支給されたであろう賃金に該当する旨主張する。
しかし,原告らの賃金台帳における各種手当の支給状況に照らし,「時間外」手当が,毎月必ず支給されていたわけではなく,その支給額も少なからぬ変動があった状況であったことがうかがわれることからすれば,この手当が恒常的に支給されていたとまではいえない。しかも,そもそも「時間外」手当は,時間外勤務を行う旨の業務命令があって初めて,当該勤務の時間に応じて支給されるものである(契約社員D就業規則61条,給与規則29条)ことも踏まえれば,「時間外」手当については,原告らの月額賃金額の算定基礎からは除外されるべきである。
また,「休日」手当や「深夜」手当については,原告らの賃金台帳における各種手当の支給状況によると,むしろほとんど支給された実績がないことからすれば,原告らが恒常的に休日出勤や深夜出勤をしていたとは認められず,これらの手当についても,原告らの月額賃金額の算定基礎からは除外されるべきである。
さらに,就業規則及び給与規則における「特殊勤務手当」についても,毎月必ず支給されていたわけではない上,そもそも「特殊勤務手当」が,職務環境,労働条件等にはなはだしい差異があるとき,その職務が本務以外に臨時又は一定の期間に限って付加される勤務であるとき等であって,給与について特別な取扱いをする必要があると認められる場合に初めて支給されるものであることからすれば(契約社員D就業規則59条),この手当は,原告らの月額賃金額の算定基礎からは除外されるべきである。
(イ) 就業規則及び給与規則における「特別手当」は,毎年,6月1日又は12月1日に在籍し,かつ継続雇用期間が6か月以上の者に対して支給されるものであるが,その支給額はそのつど別に定めるとされていること(契約社員D就業規則64条,給与規則35条),原告らはいずれも平成27年6月に「特別手当」の支給は受けているものの,その金額は必ずしも同額ではないため,一定の査定などを経た上で支給されていたものと解されることからすると,原告らが実際に被告において就労していない以上,この手当も原告らの月額賃金額の算定基礎からは除外されるべきである。
エ 以上によれば,原告らの月額賃金額の算定においては,就業規則及び給与規則における「基礎賃金」(賃金台帳における「基本給」,給与明細における「基礎賃金」),就業規則及び給与規則における「成果賃金(累積型,洗い替え型)」(賃金台帳における「成果加算等」,給与明細における「成果賃金」),就業規則及び給与規則における「成果賃金(インセンティブ型)」(賃金台帳における「その他手当」,給与明細における「インセンティブ手当」),就業規則及び給与規則における「調整賃金Ⅰ」(賃金台帳の「調整手当」,給与明細の「調整賃金Ⅰ」)を基礎とするのが相当である。
(3)  原告らの賃金額を算出するに当たり基礎とすべき相当な期間について
ア この点,原告らは,原告らの未払賃金の算出に当たっては,原告らが得られたであろう賃金額を算出する最も合理的な方法によるべきところ,原告らの業務量は時季によって変動が大きく,その業務量の増減が賃金額に影響していたことに照らせば,未払賃金額は,過去1年間の賃金額の平均とすべきであると主張する。
確かに,上記(2)イのとおり,就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」(賃金台帳における「その他手当」,給与明細における「インセンティブ手当」)は,原告らの各雇用契約においては,就業規則及び給与規則における「基礎賃金」(賃金台帳における「基本給」,給与明細における「基礎賃金」)を補完するものと位置付けられる。
しかし,被告の経営方針の転換に伴い,平成27年10月をもって,従前原告らが従事していた戸建住宅やマンション等の居住者に対する◎◎の直接販売業務が終了し,業務自体が行われなくなったことからすると,原告らが本件雇止め後も従前どおりの金額の就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」の支給を受けることができたとは想定し難い。
イ この点,原告らは,平成27年7月から同年9月までの就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」について,上司から積極的な営業を行わないよう,また,残業や休日出勤をしないよう指示されていたし,マンション営業については例年7月から9月までの期間は時季的に就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」が付きにくいことから,本件雇止め前の直近3か月の期間に限定して原告らの賃金額を算出するのは,原告らの本来の賃金の実態を反映していないと主張し,それに添った陳述書(甲A45ないし50)を提出する。
しかし,被告の経営方針の転換に伴い,平成27年10月をもって,原告らが従前従事していた戸建住宅やマンション等の居住者に対する◎◎の直接販売業務が廃止される予定であり,同業務自体が縮小傾向にあったことからすれば,仮に,上司による上記指示がなかったとしても,原告らに支給される就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」が平成27年10月以降に同年7月から9月までと比べて直ちに増額することにはならない。また,マンションの居住者に対する直接営業業務自体,同年11月末をもって,当初の予定どおりに廃止されたものであるから(認定事実(4)ア),仮に,原告らの雇用契約が更新されていたとしても,原告らが,本件雇止め前に従事していた業務によって,平成27年7月から9月までよりも前の期間と同程度の額の就業規則における「成果賃金(インセンティブ型)」を受けることができたとも想定し難い。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
ウ 以上によれば,原告らが得べかりし賃金額の算出に当たっては,労基法12条も考慮して,原告らが支給を受けていた最後の3か月分(別紙8「賃金一覧表」の平成27年8月から同年10月まで)の支給金額を基礎とするのが相当である。
そうすると,原告らが得べかりし賃金額は,別紙8「賃金一覧表」記載のとおりであり,その最後の3か月の平均月額は,以下のとおりとなる(1円未満四捨五入。なお,証拠(甲B1の2の1ないし12,B3の2の1ないし12,B4の2の1ないし12,B5の2の1ないし12,B5の2の1ないし9,乙60の1ないし6)によれば,賃金台帳上の支払項目と給与明細上の支払項目が一致しないものもあることが認められるが,賃金台帳は,使用者において作成することを義務付けられている書面であること(労基法108条)からすると,賃金台帳記載の支払項目及び支払額を前提とするのが相当である。)。
(ア) 原告X1 26万4236円
(イ) 原告X2 21万1120円
(ウ) 原告X3 22万8064円
(エ) 原告X4 22万1081円
(オ) 原告X5 26万4600円
(カ) 原告X6 21万4487円
6  まとめ
上記4で説示したとおり,原告X1は平成28年3月31日まで,原告X5は平成29年3月31日まで,被告に対し,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあったことになり,原告X2,原告X3,原告X4及び原告X6は,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることになる。
そして,上記5で説示したところによれば,被告は,原告らとの間の各労働契約に基づき,①原告X1に対しては,別紙1記載の各給与支払日限り26万4236円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から平成28年3月31日までは商事法定利率年6パーセントの,同年4月1日から支払済みまでは賃確法6条1項及び賃確法施行令1条所定の年14.6パーセントの各割合による遅延損害金の支払義務を,②原告X2に対しては,平成27年11月20日から平成29年11月20日までは別紙2記載の各給与支払日限り21万1120円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から年6パーセントの割合による遅延損害金,同年12月20日から本判決確定の日までは毎月20日限り21万1120円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を,③原告X3に対しては,平成27年11月20日から平成29年11月20日までは別紙3記載の各給与支払日限り20万8064円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から年6パーセントの割合による遅延損害金,同年12月20日から本判決確定の日まで毎月20日限り22万8064円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を,④原告X4に対しては,平成27年11月20日から平成29年11月20日までは別紙4記載の各給与支払日限り22万1081円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から年6パーセントの割合による遅延損害金,同年12月20日から本判決確定の日まで,毎月20日限り,22万1081円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を,⑤原告X5に対しては,別紙5記載の各給与支払日限り,26万4600円及びこれらに対する各支払日の翌日から平成29年3月31日までは商事法定利率年6パーセントの,同年4月1日から支払済みまでは賃確法6条1項及び賃確法施行令1条所定の年14.6パーセントの各割合による遅延損害金の支払義務を,⑥原告X6に対しては,平成27年11月20日から平成29年11月20日までは別紙6記載の各給与支払日限り21万4487円及びこれらに対する各給与支払日の翌日から年6パーセントの割合による遅延損害金,同年12月20日から本判決確定の日まで21万4487円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を,それぞれ負うことになる。
なお,原告X1は平成28年3月31日まで,原告X5は,平成29年3月31日まで労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めている。
しかし,一般に,過去の法律関係を確認しても,その後に法律関係に変動がある可能性もあるから,現在の法律関係を直接に確認の対象とすることが紛争の抜本的かつ適切な解決に資するものであると考えられるため,過去の法律関係の存否の確認を求める訴えは,例外的に,現在の権利又は法律関係の確定をすることによっては必ずしも紛争の抜本的な解決をもたらさず,過去の法律関係を確定することが現に存在する紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要であると認められる場合に限って許容されると解される。本件においては,原告X1及び原告X5に対しては,金銭的な給付請求が可能となり,その請求によって財産的な不利益が回避され得るから,過去の法律関係を確定することにつき,確認の利益を認めることはできない。
第4  結論
以上によれば,本件訴えのうち,原告X1及び原告X5の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えはいずれも却下し,原告らの請求は,主文第2項ないし第8項記載の限度で理由があるからその限度で認容し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
岐阜地方裁判所民事第1部
(裁判長裁判官 眞鍋美穂子 裁判官 鈴木基之 裁判官 足羽麦子)

 

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