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「営業支援」に関する裁判例(154)平成12年 2月 3日 東京地裁 平7(行ウ)262号 法人税更正処分等取消請求事件

「営業支援」に関する裁判例(154)平成12年 2月 3日 東京地裁 平7(行ウ)262号 法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日  平成12年 2月 3日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平7(行ウ)262号
事件名  法人税更正処分等取消請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2000WLJPCA02039003

要旨
◆外国法人を基幹とするグループ企業の日本法人である原告が、法人税の申告をしたところ、被告が、経営指導料等の一部につき寄付金に当たるとして損金算入を否認し、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたため、原告がこれらを不服として各処分の取消しを求めた事案において、経営指導料が支払われた会社に対する原告の依存度が高いといった本件事情の下では、本件経営指導料は、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認められるような不合理なものとはいえないから、これを寄付金とした本件処分は違法であるとして、本件処分の一部を取り消した事例
◆法人税法37条の寄付金の該当性判断に当たっては、提供される役務に対して支払われる対価の額が、役務提供者における提供経費を超えていたとしても、当該超過部分が寄付金に該当するかどうかは、契約当事者である企業間の関係、当該役務提供契約において定められている役務内容、対価の決定方法の合理性、実際の役務提供内容、提供される役務の被提供者における便益の大きさ、役務と便益との関係の直接性、提供者において当該役務の提供がその業務に占めている地位等に照らして、役務提供の対価が、独立企業間において行われる同種契約で設定される対価の水準と著しく乖離し、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきものかどうかにより判断すべきとされた事例

出典
税資 246号393頁
裁判所ウェブサイト

評釈
細川健=川口和歌子・税務弘報 56巻6号127頁
品川芳宣・税研 16巻5号81頁
品川芳宣=荒瀬秀俊・TKC税研情報 10巻3号1頁

参照条文
行政事件訴訟法3条2項
法人税法22条3項
法人税法37条6項
国税通則法65条1項2項
国税通則法65条1項2項(昭和62法96改正前)
国税通則法68条

裁判年月日  平成12年 2月 3日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平7(行ウ)262号
事件名  法人税更正処分等取消請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2000WLJPCA02039003

主文

一  被告が原告に対し、平成元年九月二〇日付けでした、原告の昭和六一年一月一日から昭和六一年一二月三一日までの事業年度及び昭和六二年一月一日から昭和六二年一二月三一日までの事業年度に係る法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。
二  被告が原告に対し、平成元年九月二〇日付けでした、原告の昭和六三年一月一日から昭和六三年一二月三一日までの事業年度に係る法人税の更正処分(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち、納付すべき税額六億二九〇九万六六〇〇円(所得金額一五億五一九六万七〇〇七円として計算した税額から控除所得額二一七六万九四五六円を差し引いた金額)を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち九四一七万六五〇〇円を超える部分を取り消す。
三  被告が原告に対し、平成四年七月三一日付けでした、原告の昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度に係る法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
四  原告のその余の請求を棄却する。
五  訴訟費用はこれを一〇分し、その七を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求
一  被告が原告に対し、平成元年九月二〇日付けでした、原告の昭和六一年一月一日から同年一二月三一日まで、昭和六二年一月一日から同年一二月三一日まで及び昭和六三年一月一日から同年一二月三一日までの各事業年度に係る法人税の各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。
二  被告が原告に対し、平成四年七月一三日付けでした、原告の昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日まで及び平成二年一月一日から同年一二月三一日までの各事業年度に係る法人税の各更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、後者の事業年度に関する各処分については審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。
第二  事案の概要
本件は、原告の昭和六一年一月一日から昭和六一年一二月三一日まで、昭和六二年一月一日から昭和六二年一二月三一日まで、昭和六三年一月一日から昭和六三年一二月三一日まで、昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日まで及び平成二年一月一日から平成二年一二月三一日までの各事業年度(以下、それぞれ「昭和六一年一二月期」、「昭和六二年一二月期」、「昭和六三年一二月期」、「平成元年一二月期」及び「平成二年一二月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について被告がした各更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分につき、原告が、これらを不服として、右各処分(ただし、平成元年一二月期を除く各事業年度に関する処分については審査裁決により一部取消された後のもの)の取消しを求めている事案である。
一  前提となる事実(証拠等を掲げたもの以外の事実は当事者間に争いがない。)
1  フィリップスグループ、フィリップス株式会社及び原告について(甲一の7、8、四の4、乙一の3、弁論の全趣旨)
(一) エヌ・ヴィ・フィリップス・グロイランペンファブリーケン(以下「NVPG」という。)は、オランダ法人であり、フィリップスグループの根幹となる持ち株会社として、約一五〇〇以上にも及ぶフィリップスグループ傘下の会社(以下、「フィリップスグループ会社」という。)の株式を保有している。NVPGは、平成六年五月六日、フィリップス・エレクトロニクス・エヌ・ヴィに商号を変更した。
フィリップスグループにおける経営については、NVPGの最高機関である「ボード・オブ・マネージメント」が、フィリップスグループ会社の活動を指揮・調整し、活動の基本的方針を定めている。また、各製品に関する事業方針は、製品分野によって区別された複数の「NVPG製品事業本部」(Product Division)と呼ばれる機構によって統括されている。
オランダ法人であるフィリップス・インターナショナル・ビー・ヴィー(以下「PIBV」という。)は、NVPG製品事業本部の経営部門及び国際的方針作成部門と、統括的業務部門(corporate staff departments)とを有しており、フィリップスグループ全体を統制する任務を行っている。
NVPGは、事業を行う国ごとに、現地法人(National organization)を設立している。各現地法人は、所在地の国における社会情勢、経済情勢に基づいて策定された方針を推進する責任を負っている。
(二) フィリップス株式会社は、昭和三一年、「工業振興株式会社」の商号で設立された会社であり、二回の商号変更を経た後、昭和六二年一月一日、「フィリップス株式会社」との商号となった(以下、同社を商号変更の前後を問わず「PKK」という。)。
PKKは、NVPGの一〇〇パーセント子会社として設立されたものであり、フィリップスグループの現地法人として、日本におけるフィリップスグループ会社の管理運営について責任を負っていた。
(三) 原告は、昭和二八年、「日本電子開発株式会社」の商号で設立された会社であり、「日本フィリップス製品販売株式会社」への商号変更を経て、昭和四七年に現在の商号に変更した。原告は、平成二年一月一日、PKKを吸収合併した(以下、右合併前の原告を「NPC」という。)。
NPCは、フィリップスグループの企業として、①海外で製造されたフィリップスブランドの製品を輸入して日本国内で販売を行うこと、②日本においてOEM製品(フィリップスのブランド名の付いた、フィリップスの製品仕様書に基づいて日本の製造業者によって製造されたフィリップスの商品)及び部品を含む各種製品の調達を行うことを、その役割としていた。
2(一)  経営指導料
NPCは、PKKから受ける一般経営・管理・技術援助・営業・法務等の人的役務等の対価として、NPCの年間売上総(予算)額の一パーセントに相当する金額を、PKKに対して「経営指導料」として支払っていた。
(二)  輸出取扱手数料
NPCは、その会計処理において、日本において購買したOEM製品等を海外のフィリップス関連会社に対して輸出する取引に係る収入を、NPCの売上として計上しており、その売上原価として、「輸出取扱手数料」を計上し、これを損金に算入していた。右「輸出取扱手数料」は、販売価格から、仕入価格、仕入諸掛及びNPCの購買取扱手数料を控除した残高として計算される額であった。
3  原告がした、本件各事業年度の法人税に係る確定申告、これらに対する各更正処分及び加算税(昭和六二年一二月期及び昭和六三年一二月期については過少申告加算税及び重加算税、その余の事業年度については過少申告加算税)の賦課決定処分、並びに右各処分についての審査請求及び裁決の経緯は、それぞれ別表一の一ないし一の五のとおりである(各更正処分、ただし平成元年一二月期を除く各事業年度の処分については審査裁決により一部取り消された後のものを「本件各更正処分」といい、各加算税賦課決定処分ただし平成元年一二月期を除く各事業年度の処分については審査裁決により一部取り消された後のものを「本件各賦課決定処分」という。)。
二  本件各更正処分の適法性に関する被告の主張
(かっこ内に「争いがない。」と表記したものは、その金額等について当事者間に争いがない。)
1  昭和六一年一二月期
NPCの昭和六一年一二月期の所得金額は、五億八三六九万九八九八円であり、その内容は、後記(一)ないし(五)のとおりである。
(一) 申告所得金額 〇円
右金額は、NPCが昭和六二年三月三一日付けで被告に提出した昭和六一年一二月期の確定申告書に記載されていた所得金額である(争いがない)。
(二) 退職給与引当金の繰入限度超過額 三七一万三二四〇円
右金額は、自己都合により退職する場合に退職金の支給対象とならない勤続年数二年未満の使用人について、NPCが退職給与引当金の対象としたために生じた繰入限度超過額である(争いがない)。
(三) 寄付金の損金不算入額 一四億六九七一万〇二八一円
NPCが支出した経営指導料の額の一部(一三億二二一七万五〇〇〇円のうち、九億九六〇五万九〇〇〇円)、輸出取扱手数料の額(四億九二九八万三五四四円)及びキックバック収入除外金額(一五六万三九一五円)は、次の(1)ないし(3)の理由から、法人税法三七条に規定する寄付金に当たる。
したがって、法人税法三七条の規定により右各寄付金の合計額(一四億九〇六〇万六四五九円。別紙一)をその他の寄付金の額に加算して再計算した寄付金の損金不算入額は、別紙二の一のとおり一四億六九七一万〇二八一円となり、右金額は、所得金額に加算されることとなる。
(1) 過大な経営指導料の額 九億九六〇五万九〇〇〇円
NPCは、PKKに対し、PKKとの間で取り交わした一九七三年(昭和四八年)三月三一日付け及び一九八一年(昭和五六年)一二月一五日付けの各覚書に基づき、一般経営・管理・技術援助・営業法務等の人的役務の提供並びに海外の顧客の紹介及び連絡の人的役務提供の対価として、NPCの年間売上総(予算)額の一パーセントに相当する金額一三億二二一七万五〇〇〇円を支払い、損金の額に算入した。
しかしながら、右支払については、管理部門を有していないNPCの管理事務の遂行に対する費用負担の相当額として認められる部分を除き、個々の具体的な役務提供の事実が認められず、また、原処分に係る調査時においてNPCが提出した証拠資料等によっても、その経営指導料の額の計算根拠及び負担理由並びにその支払金額の相当性も明らかではなかった。
したがって、NPCが負担すべき管理事務の費用の額三億二六一一万六〇〇〇円を超える部分の金額九億九六〇五万九〇〇〇円は、PKKに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たると判断された。
右のNPCが負担すべき管理費用の額は、次の計算のとおりである。
ア 社長室及び専務室の費用
① PKK計上額 三億五五四〇万円
② ①のうちNVPG負担額 一億四二二〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 二億一三二〇万円
④ NPCの業務に係る管理費用の額(③×1/2) 一億〇六六〇万円
イ 広報室、法務室、生産企画開発室、外人給与担当及び技術本部費用
① PKK計上額 三億四七六〇万円
② ①のうちNVPG負担額 一五〇〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 三億三二六〇万円
④ NPCの業務に係る管理費用の額(③×(Ad+Bd)/2) 二億一九五一万六〇〇〇円
A 従業員給与比率の計算
a PKKの従業員給与総額 八億六二〇〇万円
b NPCの従業員給与総額 一六億九五〇〇万円
c 給与総額(a+b) 二五億五七〇〇万円
d NPCの給与総額割合(b/c×一〇〇) 六六%
B 従業員数比率の計算
a PKKの期末従業員数 一六六人
b NPCの期末従業員数 三二七人
c 期末従業員数(a+b) 四九三人
d NPCの期末従業員数割合(b/c×一〇〇) 六六%
ウ NPCが負担すべき管理費用の額(アの④とイの④との合計額) 三億二六一一万六〇〇〇円
(2) 過大売上原価の額(輸出取扱手数料の額) 四億九二九八万三五四四円
NPCは、OEM製品の輸出に際してオランダ法人のPIBVに対し、PIBVが決定した輸出価格から仕入価格、仕入諸掛及びNPCの購買取扱手数料を控除した残高を売上原価中の輸出取扱手数料として支払ったとして、右金額を損金の額に算入した。
NPCは、輸出取扱手数料を、PIBVの製品開発、製造及びマーケティングの費用負担であるとしたが、原処分に係る調査時においてNPCが提出した証拠資料等によって輸出取扱手数料の内容を検討しても、輸出取扱手数料の額の計算基準、計算根拠及び負担理由等が不明であり、NPCの負担すべき費用とは認められず、PIBVに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たるものと判断された。
(3) キックバック収入除外金額 一五六万三九一五円
ア 右金額は、KLMオランダ航空会社及びルフトハンザドイツ航空会社からの旅客運賃に係るキックバック収入である。NPCは、右収入があるにもかかわらず、収入の額に計上していなかった。なお、これらのキックバック収入については、PKKの旅客運賃に係るものも含めたところで、オランダ国のアムロ銀行アイントハーベン支店のオランダ法人フィリップス・レイスビューロー・ビーブィ(以下「PRB」という。)名義の預金口座(以下「PRB名義預金口座」という。)及びスイス国のS・K・A銀行チューリッヒ支店の香港法人フィリップス・ファイナンシヤル・クリアリング・サービス・リミテッド(以下「PFC」という。)名義の預金口座(以下「PFC預金名義口座」という。)にそれぞれ送金され、PRB及びPFCの収益にそれぞれ帰属していることから、右送金は、NPCからPRB及びPFCに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たると判断された(争いがない)。
イ NPCに帰属するキックバックの額一五六万三九一五円は、次のとおり案分して算出した(争いがない)。
① キックバックの送金額 五二一万三〇五〇円
② NPCの海外旅客運賃支払額 二一〇四万三六五〇円
③ PKKの海外旅客運賃支払額 四八二四万一六五七円
④ 海外旅客運賃支払額案分比率(②/(②+③)×一〇〇) 三〇%
⑤ NPCに帰属するキックバックの額(①×④) 一五六万三九一五円
(四) 繰越欠損金の当期控除額 八億八九七二万三六二三円
右金額は、前期以前の繰越欠損金の当期の所得金額から控除すべき額である。
(五) 前記(一)の申告所得金額に、(二)及び(三)の金額を加算し、(四)の金額を控除して求めた差引所得金額は、五億八三六九万九八九八円となる。
2  昭和六二年一二月期
NPCの昭和六二年一二月期の所得金額は、一二億二一二三万八八三五円であり、その内容は、後記(一)ないし(五)のとおりである。
(一) 申告所得金額 △七億三二六九万四〇二一円
右金額は、NPCが昭和六三年三月三〇日付けで被告に提出した昭和六二年一二月期の確定申告書に記載されていた欠損金額である(争いがない)。
(二) 退職給与引当金の繰入限度超過額 七一万八二〇〇円
右金額は、自己都合により退職する場合に退職金の支給対象とならない勤続年数二年未満の使用人について、NPCが退職給与引当金の対象としたために生じた繰入超過額である(争いがない)。
(三) 寄付金の損金不算入額 二〇億二三二五万八四五六円
NPCが支出した経営指導料の額の一部(一三億六二九二万二〇〇〇円のうち、一〇億五三一一万三〇〇〇円)、輸出取扱手数料の額(九億八〇四九万五〇五四円)及びキックバック収入除外金額(五三七万一一二六円)は、次の(1)ないし(3)の理由から法人税法三七条に規定する寄付金に当たる。したがって、法人税法三七条の規定により右各寄付金の合計額(二〇億三八九七万九一八〇円。別紙一)をその他の寄付金の額に加算して再計算した寄付金の損金不算入額は、別紙二の一のとおり二〇億二三二五万八四五六円となり、右金額は、所得金額に加算されることとなる.
(1) 過大な経営指導料の額 一〇億五三一一万三〇〇〇円
NPCは、PKKに対し、経営指導料として、NPCの年間売上総(予算)額の一パーセントに相当する金額一三億六二九二万二〇〇〇円を支払い、損金の額に算入した。
しかしながら、右支払のうち、NPCの負担すべき管理事務の費用の額三億〇九八〇万九〇〇〇円を超える部分の金額一〇億五三一一万三〇〇〇円は、前記1(三)(1)で述べたとおり、PKKに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たるものである。
右のNPCが負担すべき管理費用の額は、次の計算のとおりである。
ア 社長室及び専務室の費用
① PKK計上額 三億六二二〇万円
② ①のうちNVPG負担額 一億四四九〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 二億一七三〇万円
④ NPCの業務に係る管理費用の額(③×1/2) 一億〇八六五万円
イ 広報室、法務室、生産企画開発室、外人給与担当及び技術本部費用
① PKK計上額 三億五四七〇万円
② ①のうちNVPG負担額 三五四〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 三億一九三〇万円
④ NPCの業務に係る管理費用の額(③×(Ad+Bd)/2) 二億〇一一五万九〇〇〇円
A 従業員給与比率の計算
a PKKの従業員給与総額 一五億四二〇〇万円
b NPCの従業員給与総額 二〇億九〇〇〇万円
c 給与総額(a+b) 三六億三〇〇〇万円
d NPCの給与総額割合(b/c×一〇〇) 五八%
B 従業員数比率の計算
a PKKの期末従業員数 一九七人
b NPCの期末従業員数 四〇八人
c 期末従業員数(a+b) 六〇五人
d NPCの期末従業員数割合(b/c×一〇〇) 六七%
ウ NPCが負担すべき管理費用の額(アの④とイの④との合計額) 三億〇九八〇万九〇〇〇円
(2) 過大売上原価の額(輸出取扱手数料の額) 九億八〇四九万五〇五四円
NPCは、輸出取扱手数料を損金の額に算入した。
輸出取扱手数料の額がNPCの負担すべき費用とはならず、PIBVに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たることは、前記1(三)(2)で述べたとおりである。
(3) キックバック収入除外金額 五三七万一一二六円
ア NPCは、KLMオランダ航空会社から旅客運賃に係るキックバック収入があるにもかかわらず、収入の額に計上していなかった。このキックバック収入については、PKKの旅客運賃に係るものも含めたところで、オランダ国のアムロ銀行アイントハーベン支店PRB名義預金口座に送金されて、PRBの収益に帰属していることから、NPCからPRBに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たる(争いがない)。
イ NPCに帰属するキックバックの額五三七万一一二六円は、次のとおり案分して算出した(争いがない)。
① キックバックの送金額 二〇六五万八一七六円
② NPCの海外旅客運賃支払額 一八五六万四一六〇円
③ PKKの海外旅客運賃支払額 五二五一万二九五〇円
④ 海外旅客運賃支払額案分比率(②/(②+③)×一〇〇) 二六%
⑤ NPCに帰属するキックバックの額(①×④) 五三七万一一二六円
(四) 事業税認定損 七億四万三八〇〇円
右金額は、昭和六一年一二月期の更正処分の所得金額を基に法人税基本通達九―五―二の定めにより地方税法七二条の二二に規定する標準税率(以下「標準税率」という。)を適用して再計算した結果、別紙三のとおり算出した事業税の額であり、所得金額から減算したものである。
(五) 前記(一)の申告所得金額に、(二)及び(三)の金額を加算し、(四)の金額を控除して求めた差引所得金額は、一二億二一二三万八八三五円となる。
3  昭和六三年一二月期
NPCの昭和六二年一二月期の所得金額は、二六億九四六三万六四七八円であり、その内容は、後記(一)ないし(六)のとおりである。
(一) 申告所得金額 〇円
右金額は、NPCが平成元年三月三一日付けで被告に提出した昭和六三年一二月期の確定申告書に記載されていた所得金額である(争いがない)。
(二) 寄付金の損金不算入額 二〇億五三七四万八三二七円
NPCが支出した経営指導料の額の一部(一三億八六七九万円のうち、一一億五二三四万円)、輸出取扱手数料の額(九億二九八二万三〇五三円)及びキックバック収入除外金額(五四三万八二二八円)は、次の(1)ないし(3)の理由から法人税法三七条に規定する寄付金に当たる。
したがって、法人税法三七条の規定により右各寄付金の合計額(二〇億八七六〇万一二八一円。別紙一)をその他の寄付金の額に加算して再計算した寄付金の損金不算入額は、別紙二の一のとおり二〇億五三七四万八三二七円となり、右金額は、所得金額に加算されることとなる。
(1) 過大な経営指導料の額 一一億五二三四万円
NPCは、PKKに対し、経営指導料として、NPCの年間売上総(予算)額の一パーセントに相当する金額一三億八六七九万円を支払い、これを損金の額に算入した。
しかしながら、右支払のうち、NPCの負担すべき管理事務の費用の額二億三四四五万円を超える部分の金額一一億五二三四万円は、前記1(三)(1)で述べたとおり、PKKに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たるものである。
右のNPCが負担すべき管理費用の額は、次の計算のとおりである。
ア 社長室及び専務室の費用
① PKK計上額 三億五六一〇万円
② ①のうちNVPG負担額 一億四二四〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 二億一三七〇万円
④ NPCの業務に係る管理費用の額(③×1/2) 一億〇六八五万円
イ 広報室、法務室、生産企画開発室、外人給与担当及び技術本部費用
① PKK計上額 二億七九六〇万円
② ①のうちNVPG負担額 四七六〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 二億三二〇〇万円
④ NPCの業務に係る管理費用の額(③×Ad+Bd)/2) 一億二七六〇万円
A 従業員給与比率の計算
a PKKの従業員給与総額 一五億四六〇〇万円
b NPCの従業員給与総額 一五億九八〇〇万円
c 給与総額(a+b) 三一億四四〇〇万円
d NPCの給与総額割合(b/c×一〇〇) 五一%
B 従業員数比率の計算
a PKKの期末従業員数 二一五人
b NPCの期末従業員数 三一四人
c 期末従業員数(a+b) 五二九人
d NPCの期末従業員数割合(b/c×一〇〇) 五九%
ウ NPCが負担すべき管理費用の額(アの④とイの④との合計額) 二億三四四五万円
(2) 過大売上原価の額(輸出取扱手数料の額) 九億二九八二万三〇五三円
NPCは、輸出取扱手数料を損金の額に算入した。
輸出取扱手数料の額がNPCの負担すべき費用とはならず、PIBVに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たることは、前記1(三)(2) で述べたとおりである。
(3) キックバック収入除外金額 五四三万八二二八円
ア NPCは、KLMオランダ航空会社及びルフトハンザドイツ航空会社から旅客運賃に係るキックバック収入があるにもかかわらず、収入の額に計上していなかった。これらのキックバック収入については、PKKの旅客運賃に係るものも含めたところで、オランダ国のアムロ銀行アイントハーベン支店のPRB名義預金口座及びスイス国のS・K・A銀行チューリッヒ支店のPFC名義預金口座にそれぞれ送金されて、PRB及びPFCの収益にそれぞれ帰属していることから、NPCからPRB及びPFCに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たる(争いがない)。
イ NPCに帰属するキックバックの額五四三万八二二八円は、次のとおり案分して算出した(争いがない)。
① キックバックの送金額 二八六二万二二五四円
② NPCの海外旅客運賃支払額 一五四一万七四六八円
③ PKKの海外旅客運賃支払額 六四一七万九七六八円
④ 海外旅客運賃支払額案分比率(②/(②+③)×一〇〇) 一九%
⑤ NPCに帰属するキックバックの額(①×④) 五四三万八二二八円
(三) 繰越欠損金の当期控除過大額 七億八九七二万四七五一円
右金額は、前期以前の繰越欠損金の当期控除額であり、更正により前期以前の繰越欠損金が消滅したため、所得金額に加算したものである。
(四) 退職給与引当金の繰入限度超過額認容 二二八万八一〇〇円
右金額は、前期更正により当期の繰入限度額が二二八万八一〇〇円増加したため、繰入超過額を同額認容し、所得金額から減算したものである(争いがない)。
(五) 事業税認定損 一億四六五四万八五〇〇円
右金額は、昭和六二年一二月期の更正処分の所得金額を基に法人税基本通達九―五―二の定めにより標準税率を適用して再計算した結果、別紙三のとおり算出した事業税の額であり、所得金額から減算したものである。
(六) 前記(一)の申告所得金額に、(二)及び(三)の金額を加算し、(四)及び(五)の金額を控除して求めた差引所得金額は、二六億九四六三万六四七八円となる。
4  平成元年一二月期
NPCの平成元年一二月期の所得金額は、一〇億八四五六万〇四七五円であり、その内容は、後記(一)ないし(四)のとおりである。
(一) 申告所得金額 △三億九五八六万一四七二円
右金額は、NPCが平成二年四月二日付けで被告に提出した平成元年一二月期の確定申告書に記載されていた欠損金額である(争いがない)。
(二) 損金とならない納税充当金 二五二万〇〇五二円
右金額は、NPCがその他の管理費用に計上した納税充当金の額であり、損金の額には算入されないものであるから、被告は、右金額を所得金額に加算したものである(争いがない)。
(三) 寄付金の損金不算入額 一四億七七九〇万一八九五円
NPCが支出した経営指導料の額の一部(一二億七八三八万五〇〇〇円のうち、一一億二九一二万〇五〇〇円)及び輸出取扱手数料の額(三億六一六九万七二五四円)は、次の理由から法人税法三七条に規定する寄付金に当たる。
したがって、法人税法三七条の規定により右各寄付金の合計額(一四億九〇八一万七七五四円。別紙一)をその他の寄付金の額に加算して再計算した寄付金の損金不算入額は、別紙二の二のとおり一四億七七九〇万一八九五円となり、右金額は、所得金額に加算されることとなる。
(1) 過大な経営指導料の額 一一億二九一二万〇五〇〇円
NPCは、PKKに対し、経営指導料として、NPCの年間売上総(予算)額の一パーセントに相当する金額一二億七八三八万五〇〇〇円を支払い、経営指導料として損金の額に算入した。
しかしながら、右支払のうち、NPCの負担すべき管理事務の費用の額一億四九二六万四五〇〇円を超える部分の金額一一億二九一二万〇五〇〇円は、前記1(三)(1)で述べたとおり、PKKに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たるものである。
右のNPCが負担すべき管理費用の額は、次の計算のとおりである。
ア 社長室及び専務室の費用
① PKK計上額 三億三七五〇万円
② ①のうちNVPG負担額 一億三四〇〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 二億〇三五〇万円
④ NPCの業務に係る管理費用の額(③×1/3) 六七八三万三〇〇〇円
イ 広報室、法務室、生産企画開発室、外人給与担当及び技術本部費用
① PKK計上額 二億七六一〇万円
② ①のうちNVPG負担額 五三〇〇万円
③ 案分対象管理費用の額(①―②) 二億二三一〇万円
④ NPCの業務に係る費用の額(③×(Ae+Be)/2) 八一四三万一五〇〇円
A 従業員給与比率の計算
a PKKの従業員給与総額 二三億六六〇〇万円
b フィリップスメディカルシステムズ株式会社(以下「PMS」という。)の従業員給与総額 七億七六〇〇万円
c NPCの従業員給与総額 一五億五七〇〇万円
d 給与総額(a+b+c) 四六億九九〇〇万円
e NPCの給与総額割合(c/d×一〇〇) 三三%
B 従業員数比率の計算
a PKKの期末従業員数 三〇三人
b PMSの期末従業員数 一二九人
c NPCの期末従業員数 二八六人
d 期末従業員数(a+b+c) 七一八人
e NPCの期末従業員数割合(c/d×一〇〇) 四〇%
ウ NPCが負担すべき管理費用の額(アの④とイの④との合計額) 一億四九二六万四五〇〇円
(2) 過大売上原価の額(輸出取扱手数料の額) 三億六一六九万七二五四円
NPCは、輸出取扱手数料を損金の額に算入した。
輸出取扱手数料の額がNPCの負担すべき費用とはならず、PIBVに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たることは、前記1(三)(2)で述べたとおりである。
(四) 前記(一)の申告所得金額に、(二)及び(三)の金額を加算して求めた所得金額は、一〇億八四五六万〇四七五円となる。
5  平成二年一二月期
原告の平成二年一二月期の所得金額は、一億一九〇四万二五一〇円であり、その内容は、後記(一)ないし(五)のとおりである。
(一) 申告所得金額 〇円
右金額は、原告が平成三年四月一日付けで被告に提出した平成二年一二月期の確定申告書に記載されていた所得金額である(争いがない)。
(二) 減価償却超過額 一〇三万二〇四九円
右金額は、原告が平成二年一一月二〇日に販売促進費として計上していたブック型パソコン(東芝三一〇〇GXS単価五四万五〇〇〇円)二台の取得費一〇九万円に係る減価償却限度額(五万七九五一円)を超える部分の金額(一〇三万二〇四九円)である(争いがない)。
(三) 製品市場調査費中否認額 一億二七九六万一一八二円
右金額は、原告が製品市場調査費として平成二年一二月一一日及び二〇日にそれぞれ計上した一億一九二八万一一八二円及び八六八万円の合計額であり、次に述べるとおり、当期の費用には当たらず、所得金額に加算されることとなる(争いがない)。
(1) 平成二年一二月一一日計上額 一億一九二八万一一八二円
右金額は、原告が製品ビデオカメラレコーダーVKR九五五〇の生産中止という理由で、同製品の外注先である日本マランツ株式会社に対して計上していた製品市場調査費(一億一九二八万一一八二円)である。右調査費は、当期末までには同製品の生産が中止されていなかったことから、生産が中止された場合の在庫品の買取請求等に備えての費用の引当計上であり、当期においては、債務が確定しているとはいえず、当期の費用とはならないものである。
(2) 平成二年一二月二〇日計上額 八六八万円
右金額は、原告が製品市場調査費として計上していた製品ビデオカメラレコーダーVKR六八六〇の検査用治具専用駆動装置(単価四三四万円)二台の取得費八六八万円であり、減価償却資産の取得価額に当たるものである。
なお、同製品は、平成二年一〇月二五日から事業の用に供されているが、法人税基本通達七―五―一6の定めにより減価償却費の計上は認められない。
(四) 販売促進費中否認額 一〇一〇万五〇〇〇円
右金額は、原告が平成二年一二月二〇日に販売促進費として計上していた展示用パネルスタンドの取得費用二二〇万円並びに雑誌広告掲載料三四〇万五〇〇〇円及び四五〇万円の合計額七九〇万五〇〇〇円である。展示用パネルスタンドについては、平成二年一二月一八日に取得し、翌期の平成三年二月一九日以降に事業の用に供されていることから、右資産に係る減価償却費は当期の費用とはならない(争いがない)。また、雑誌広告掲載料については、広告掲載日が翌期以降であることから、当期の費用とはならず、所得金額に加算されることとなる(争いがない)。
(五) 雑損失中否認額 一八九八万〇三九一円
右金額は、原告が平成二年一二月二〇日に雑損失として計上していた一八九八万〇三九一円を、被告が次のとおり当期の損金には当たらないとして所得金額に加算したものである(争いがない)。
(1) 雑損失中否認額のうち、八三八万八〇〇〇円は、製品ビデオカメラレコーダーVKR九五五〇(K〇八五)の生産減少に伴い、同製品の外注先であるコニカ株式会社から同製品の生産に使用するはずであった治工具一式の買取代金である。
右金額は、減価償却資産の取得価額に当たる。なお、右資産は、当期において未だ事業の用に供されていなかったことから、減価償却費の計上は認められない。
(2) 雑損失中否認額のうち、一〇五九万二三九一円は、製品ビデオカメラレコーダーVKR九五五〇(K〇八五)の生産減少に伴い、同製品の外注先であるコニカ株式会社から同製品の生産に使用していた資産の未償却残を補償するための費用の引当計上額である。
右金額は、当期において未だ債務が確定しているとはいえず、当期の費用とは認められない。
(六) 購入ソフトウエア中損金否認額 六二二万八三三四円
右金額は、原告が平成二年一二月三一日に費用に計上していたN.V.ORIGIN社製作のソフトウエアの購入費用である。
右購入費用は、繰延資産の取得価額に当たるものの、支出の効果が翌期以降となることから、繰延資産の償却費を当期において計上することは認められず、その全額が所得金額に加算される(争いがない)。
(七) 交際費等の損金不算入額 二九九万九六一七円
原告が平成二年一二月二八日に交際費勘定から厚生費勘定に振り替えた二四七万四六四〇円は、何らの根拠もなく行われたものであり、単に金額を振り替えただけであるから、交際費等に当たると判断され、また、NPCが港南ビルの売上原価の額に算入したLCC台湾工場出張中の得意先等の接待に要した五二万四九七七円も交際費等に当たると判断された。このため、被告が再計算して算出した交際費等の損金不算入額(二九九万九六一七円)は、所得金額へ加算されることとなる(争いがない)。
(八) 合併評価益計上もれ 二六〇万五八〇三円
右金額は、NPCが平成二年一月一日にPKKを合併した際に受け入れたPKK所有の神奈川県相模原市α所在の土地(一九五一・四一平方メートル)の原告の計算による評価益額と被告の計算による評価益の差額である。原告は、当初、右土地の評価益を三億三三七五万円として計上していたが、被告の計算によれば、右土地に係る合併評価益は、三億三六三五万五八〇三円であり、右各評価益額の差額は、所得金額に加算されることとなる(争いがない)。
(九) 新規取得土地に係る負債利子の損金不算入額 七四六七万九〇〇〇円
右金額は、NPCが平成二年一月一日にPKKを合併した際に一四億六〇〇〇万円で受け入れたPKK所有の神奈川県相模原市α所在の土地(一九五一・四一平方メートル)に係る負債利子のうち、新規取得土地に係る負債利子として損金の額に算入することができない金額であり、所得金額に加算されることとなる(争いがない)。
右金額の内訳及び算出根拠は、次のとおりである。
(1) 合併により受け入れた土地の取得価額 一四億六〇〇〇万円
(2) 合併により受け入れた土地の場合の控除額 一億〇二二〇万円
(3) 調整取得価額((1)―(2)) 一三億五七八〇万円
(4) 利子率 六%
(5) 当期に含まれる負債利子損金不算入期間/一二 一一/一二
(6) 損金不算入額((3)×(4)×(5)) 七四六七万九〇〇〇円
(一〇) 損金計上の納税充当金 一〇二万一五七〇円
右金額は、原告が当期において、納税充当金の取崩しがあったものとして損金の額に計上した額であるが、納税充当金の取崩しがないことから、損金の額に算入することはできない(争いがない)。
(一一) 繰越欠損金の当期控除戻入額 七六三三万九一一四円
右金額は、前期以前の繰越欠損金の当期控除額であり、更正により前期以前の繰越欠損金が消滅したため、所得金額に加算したものである。
(一二) 寄付金の損金不算入額 八八二五万五二二三円
(1) 過大売上原価の額(輸出取扱手数料の額) 八九七二万七五五七円原告は、輸出取扱手数料を損金の額に算入した。
輸出取扱手数料の額が原告の負担すべき費用とはならず、PIBVに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与になることは、前記1(三)(2)で述べたとおりである。
(2) したがって、法人税法三七条の規定により前記(1)の金額をその他の寄付金の額に加算して再計算した寄付金の損金不算入額は別紙二の二のとおり八八二五万五二二三円となり、所得金額に加算されることとなる。
(一三) たな卸資産評価損過大否認認容 一億六〇九九万六一七三円
右金額は、原告が誤って過大に所得金額に加算していたたな卸資産の評価損の額であり、所得金額から減算されることとなる(争いがない)。
(一四) 事業税認定損 一億三〇一六万八六〇〇円
右金額は、平成元年一二月期の更正処分の所得金額を基に法人税基本通達九―五―二の定めにより標準税率を適用して再計算した結果、別紙三のとおり算出した事業税の額であり、所得金額から減算されることとなる。
(一五) 前記(一)の申告所得金額に、(二)ないし(一二)の金額を加算し、(一三) 及び(一四)の金額を控除して求めた差引所得金額は、一億一九〇四万二五一〇円となる。
6  原告の本件各事業年度の所得金額は、前記1ないし5(別表二の一及び二の二)のとおりであり、本件各更正処分における所得金額と同額であるから、本件各更正処分は適法である。
三  本件各賦課決定処分の根拠及び適法性に関する被告の主張
1  被告は、本件各更正処分をしたことに伴い、国税通則法(以下「通則法」という。ただし、昭和六一年一二月期については昭和六二年法律九六号による改正前のもの。)六五条一項、二項の規定に基づき、本件各更正処分により納付すべきこととなった法人税額(通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切捨て、以下同じ。ただし、後記2の重加算税の対象となるものを除く。)を基に、別紙四のとおり、本件各事業年度に係る過少申告加算税の額を計算し、これを賦課決定したものである。したがって、本件過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。
2  NPCは、昭和六一年一二月期ないし昭和六三年一二月期において、キックバック収入金額を除外し何ら経理をすることなく隠ぺいしたものである。
これらの所為は通則法六八条一項に該当するものであり、そこで、被告は、同項の規定に基づき昭和六二年一二月期及び昭和六三年一二月期の各更正処分により納付すべきこととなった法人税額を基に重加算税の額を決定し、過少申告加算税に代えて重加算税を次のとおり賦課決定したものである。したがって、本件重加算税の各賦課決定処分は適法である。
なお、昭和六一年一二月期については、重加算税対象の収入金額が寄付金の損金算入限度額の範囲内であることから、重加算税対象の法人税額が算出されないので、重加算税の賦課決定はされていない。
(昭和六二年一二月期)
重加算税の対象となる法人税額 二二五万円
重加算税の額 七八万七五〇〇円
(昭和六三年一二月期)
重加算税の対象となる法人税額 一〇八万円
重加算税の額 三七万八〇〇〇円
四  争点
本件の争点は、①NPCがPKKに支払った経営指導料には、提供された役務との対価性を欠くものとして、法人税法三七条六項にいう経済的利益の贈与に当たる部分があるか否か(経営指導料の寄付金該当性。争点1)、②NPCが輸出取引における売上原価として計上していた輸出取扱手数料は、NPCに帰属すべき所得ではなく、NVPG製品事業本部からの預り金と評価すべきか否か(すなわち、輸出取扱手数料は、売上原価として計上されているものの、対価性を欠くものとして法人税法三七条六項にいう経済的利益の贈与に当たるか否か)(輸出取扱手数料の性質。争点2)、③昭和六二年一二月期及び昭和六三年一二月期の法人税の各更正処分において、事業税として損金に算入されるべき額はいくらか(事業税の損金算入方法。争点3)という諸点であり、これらに関する当事者の主張は以下のとおりである。
1  争点1(経営指導料の寄付金該当性)について
(被告の主張)
(一) NPCは、PKKに対し、一般経営・管理・技術援助・営業・法務等の人的役務の提供並びに海外の顧客の紹介及び連絡の人的役務提供の対価として、NPCの年間売上総(予算)額の一パーセントに相当する金額を支払い、平成二年一二月期を除く本件各事業年度において、損金算入している。
右支払については、管理部門を有していないNPCの管理事務の遂行に関する費用負担の相当額として認められる部分を除き、右支払と対価関係に立つべき個々具体的な役務提供の事実が認められず、また、本件調査時及び本訴訟において原告が提出した証拠資料等によっても、その経営指導料の額の計算根拠及び負担理由並びにその支払金額の相当性も明らかではないことから、NPCが負担すべき管理事務の費用を超える部分の金額は、対価関係を欠いた贈与行為によるものにほかならず、PKKに対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たると認められるべきである。
(二) 経営指導料に係る原告の主張には、次に述べるような矛盾点及び不合理な点があり、認められるものではない。
(1) 原告は、NPCがPKKに対し、NPCの年間売上総(予算)額の一パーセントに相当する金額を経営指導料名下に支払った理由について、PKKとNPCとの間で取り交わした一九七三年三月三一日付けの覚書(以下「一九七三年覚書」という。)及び一九八一年一二月一五日付けの覚書(以下「一九八一年覚書」という。)に基づき、PKKからそれぞれ提供された経営指導・管理・技術援助・マーケティング・法務等の分野における役務及び海外の顧客の紹介等の分野における役務に対する対価の支払である旨主張する。
しかしながら、一九七三年覚書、一九八一年覚書及びその他の資料等から判断しても、NPCが支払った経営指導料名下の支払金額のうち、前記二1、2及び4の各(三)(1)、同3の(二)(1)で述べたNPCが負担すべき管理事務の各費用の額を超える部分については、その支払の根拠となる具体的な役務提供の事実が認められず、また、一パーセントという率の算出根拠、負担理由及びその支払金額の正当性が認められず、その支払は対価性を欠くものである。
(2) 原告は、PKKがNPCに対して提供した役務の具体例として、全世界的経営戦略会議への出席及び経営諮問会議の設置等を挙げている。
しかしながら、全世界的経営戦略会議は、本社のトップマネージメントとナショナル・オーガニゼーションの代表者が出席し、グループ全体の経営指導活動について討論を行う場であること、経営諮問会議は、PKKの内部に設置され、フィリップスグループ会社の経営全般について助言を受けるための諮問機関であり、その目的はPKK自体がナショナル・オーガニゼーションとしての役割を果すためのものであることからすれば、全世界的経営戦略会議開催に関する費用の負担はオランダ本社が、経営諮問会議を開催するために要する費用の負担はPKKがそれぞれすべきものであるから、右費用をNPCが経営指導料を支払う根拠とする原告の主張は失当である。
(3) また、原告は、NPCに対する指導その他の役務提供は、PKKのみではなく、NVPGも行っていた旨主張する。
しかしながら、NVPGのNPCに対する役務提供の有無については何ら明らかでなく、仮に、NPCに対してNVPGから役務提供があり、右役務提供の対価についてPKKに支払がされたものとしても、役務の提供を受けた先と支払った先が異なっており、右PKKに対する支払が、PKKからの役務提供に対する対価ではなく、対価性を欠いた贈与であることは明らかである。
(4) 原告は、一九七三年から一九八五年まで一三年間、NPCのした右経営指導料の支払については税務上何ら問題とされたことはないにもかかわらず、被告は、平成二年一二月期を除く本件各事業年度について、今まで一三年間もの長期にわたり是認してきた経営指導料の支払に対し、正当な対価性がないとして各更正処分を行ったとして、被告のした右各更正処分は、信義則に反し違法である旨主張する。
しかしながら、被告が、右費用について、一三年間もの長期にわたり是認してきた事実は存在せず、また、仮に被告が過去において、右費用に係る是正措置を講じなかったとしても、それは、単に見過ごされていたために更正されなかったにすぎないものである。すなわち、NPCが右のような計算根拠で経理処理をしていることは、決算書等の資料からは明らかではなく、被告が容易にこれを知り得る状況になかったのであるから、被告が右計算を認めた、あるいは黙認したということはできないのである。そして、右費用の計上に非違が存在するのであれば、それを将来に向かって正すことを妨げる理由は何らなく、原告の主張は失当というほかない。
(5) 原告は、PKK以外の企業との間においても右と同様な経営指導料の支払をしていたが、その支払については税務上何ら問題とされたことはないとも主張するが、右の事情は、本件とは別個のものであるから、本件を判断する際に何ら影響を及ぼすものではない。
(6) 原告は、関連費用の額は、親会社等の提供するサービスが親子会社などのグループ企業全体の便宜のために行われるもので、グループ企業内の各法人が合理的と認められる基準により按分して負担すべき費用であるとし、これは、OECDの移転価格ガイドラインに沿った方式である旨主張する。
しかしながら、関連費用の算出根拠等の具体的な立証はなされておらず、また、負担すべき費用は、原告が一般サービス契約(GSA)と称しているものに基づくと思料されるところ、前記各事業年度分の経営指導料の額をGSAにあてはめて計算したという具体的数値は明らかにされておらず、何の立証もされてない。さらに、右負担すべき費用を原告において適用したのは前記各事業年度分以後のことであるというのであるから、原告の経営指導料における関連費用の負担の算出方法の根拠とすることには理由がない。
(原告の主張)
(一) PKKは、NVPGから委任を受け、その指示に従い、その支援のもとに、NPCの経営全般にわたる指導、役務提供を行った。NPCは、PKK及びNVPGから受けた経営指導、役務提供に対する対価として、PKKに対して、取引高の一パーセントに相当する金額の経営指導料を支払っていたものであり、その支払は正当な経済取引である。
(二) フィリップスグループ内におけるPKKとNPCの地位
(1) PKKは、日本におけるフィリップスグループの現地法人として、管理、広報、渉外等を中心とする諸活動を行い、その業務の主たる内容は、経営指導活動であった。
すなわち、PKKは、NPCの事業に代表されるフィリップスグループ会社の日本における事業活動全体を統括する立場にあり、中でも、NPCの事業の開発及び拡大のために尽力してきた。PKKは、OEM製品を取り扱うNVPG製品事業本部と密接な連携のもとに、NPCの事業推進に携わり、また、海外のフィリップス製品については日本国内市場における新製品としての紹介等を含め諸種の活動によりその販売拡大を図ることにより、NPCの事業活動の中枢機能を果たしてきた。
さらに、このような営業上の支援に加え、PKKは、NVPGの本部あるいは上位のフィリップスグループ会社にある統括本部及び管理本部(グループ経営管理委員会、コーポレイト・スタッフ部門等)とも密接に連絡を保ち、NPCが日本においてフィリップスグループの企業理念及び一定の基準に則った事業活動を展開できるよう、支援活動を行った。
(2) 他方、NPCは、フィリップスのOEM製品及び一般の電気製品用部品等の日本の製造業者からの調達及び海外向け発送業務、並びに海外のフィリップス製品の日本市場における販売活動を行っていた。
これらの業務遂行に当たっては、NPCは、PKKから様々な営業上及び経営管理上の支援が必要であった。NPCは、管理、広報、渉外等の活動については、主としてPKKからの役務提供によって賄っており、その対価としてPKKに対して経営指導料を支払っていた。
(三) 経営指導料に関する覚書とその内容
(1) 本件経営指導料の支払は、PKKとNPCとの間で取り交わした一九七三年覚書及び一九八一年覚書に基づくものである。
ところで、一九七三年覚書が交わされた当時、NPCは、PKKと松下電器産業株式会社(以下「松下電器産業」という。)との合弁会社であり、フィリップスグループ外の企業である松下電器産業が同意した上で、右覚書が作成されたものである。このような経緯からすると、経営指導料の率は、NPCあるいはNVPGの意思により所得の移転を目的として恣意的に決定されたということはあり得ないし、第三者である松下電器産業が合理的と認めたものであることは明らかであるというべきである。
(2) 経営指導料は、NPCの売上高を基準として定められている。フィリップスグループは、全体として、電気機器類の製造販売を目的とする会社群であり、その最終的目的は、フィリップス製品の売上拡大に基づく利益の追求にあるところ、PKKの経営指導も、最終的にはNPCの製品売上増加を目的とした役務の提供であり、PKKの役務の価値の評価は、NPCの売上高の増減という形で現れる。
したがって、PKKのNPCに対する役務の価値を、NPCの売上高を基準として決するのは、極めて合理的である。
(四) PKKによる役務の提供の内容
PKKは、NVPGの支援を受け、NVPGとともに、NPCの経営全般にわたって経営指導活動、役務提供を行っていた。NPCがこれらの役務の提供により受けていた利益は、個々の役務あるいはそれに要する費用の積み重ねのみでは評価できない多大なものであったが、以下では、PKKが行った経営指導、役務提供のうち代表的な具体例を挙げる。
(1) 経営戦略、企画、情報処理、情報管理及び情報提供について
ア NVPG、その他上位の会社との交信・情報伝達
NVPGその他上位のフィリップスグループ会社が、製品・技術・営業等に関する重要な情報をNPCに提供しようとする場合には、当該情報をまずPKKに対して提供し、PKKが、適宜(場合によっては経営指導とともに)右情報をNPCに提供する、という伝達形態がとられていた。これは、PKKが日本における情報管理会社としての役割を有していたこと、及びPKKがNPCに経営指導活動を行う関係上、重要な情報についてはPKKに第一次的に伝え情報を集約する必要があったことによるものである。このように、PKKはNVPGその他上位のフィリップスグループ会社とともに、NPCに対する経営指導を行っていた。当然、その費用は、PKK及びNVPG等上位の会社の双方において生じていた。
NPCがその経営戦略等に関してNVPGその他上位のフィリップスグループ会社と会議を行う必要がある場合には、PKKがNPCに対する経営指導活動の一環として、会議の設定を行うとともに、原則としてPKKの役員、従業員を右会議に参加させ、意見を述べるなどの活動を行っていた。そして、NPCは、右会議において協議決定された上位のフィリップスグループ会社及びPKKの意見に基づいて日本における事業活動を展開していた。
イ 全世界的経営戦略会議への出席
フィリップスグループでは、毎年一回、NVPGの所在地であるオランダにおいて全世界的経営戦略会議を開催し、グループ会社に対する経営指導活動を行っていた。日本からは、PKKの社長が右会議に出席し、右会議の結果及びそこで入手した有益な情報等をNPCに提供し、NPCの製品販売促進を図っていた。
ウ 経営諮問会議の設置
一九八六年、PKKは、その費用において、PKK及びNPCら日本におけるフィリップスグループ会社の経営全般について助言を受けるための諮問機関として、外部の人材によって構成される経営諮問会議を設置した。PKKは、経営戦略等についての重要な問題について、当該経営諮問会議の助言を受けて、NPCに対する経営指導活動を行っていた。
エ 社団法人日本電子機械工業会での活動
PKKは、電子関係の業界団体である社団法人日本電子機械工業会の準会員であり、そこで入手した情報を適宜NPCに提供し、NPCの製品の販売促進を図っていた。
オ NPCの製品事業活動についての検討、指導
PKKは、NVPGその他上位のフィリップスグループ会社と連絡を取りながら、その支援を受けて、NPCの一部門である照明器具グループの活動に関して、市場開拓の準備及び他のグループ会社との利益相反がないかなどについて詳細な検討、指導を行った。
カ NPCが当事者となっている取引について相手方との折衝、交信
PKKは、NPCが当事者として関与しているプロジェクトについて、NVPGその他上位のフィリップスグループ会社と連絡を取りながら、その支援を受けて、NPCの取引の相手方であるシグナールアパラーテン・ビー・ヴィーとの折衝、決済方法についての連絡等の業務を行った。
(2) 法務について
NPCには法務を担当する部署がなく、NPCに関する法務関連業務はすべてPKKの法務部が行っていた。
PKKは、NPCの業務に関する法律問題について、法律事務所への相談、連絡業務を行った。PKKは、PKK及びNPCの活動について法律的な問題が生じた場合に、迅速に弁護士に相談し適切な対応を取れるよう、法律事務所と顧問契約を締結していた。NPCの活動についての重要な法律問題は、すべてPKKが右顧問契約に基づいて顧問先の弁護士に相談していた。
PKKは、製品関連業務以外の分野でNPCが当事者となっている契約に関連する活動(NPCの事務所についての賃貸借契約等)についての契約条件の交渉、契約の締結等の業務を行っていた。
PKKは、NPCの株主総会議事録、取締役会議事録等の作成について、法律事務所への依頼、連絡を行っていた。
PKKは、NVPGが日本において保有している特許、意匠、商標について、出願等の手続、登録料の支払、維持を行っていた。これら特許等のなかには当然NPCが扱っているフィリップス製品に関するものもあり、NPCはその恩恵を受けていた。
PKKは、NPCの従業員による職務上の発明について、NPC名義での特許出願手続を遂行していた。
(3) 経理・財務について
NPCは、NVPG製品事業本部の購買代理人として、製品の購買・輸出活動を行い、その対価として購買取扱手数料を受領していたが、その購買取扱手数料の算定方法(レートの設定)について、PKKは、NPCのためにNVPG製品事業本部と連絡を取り合い、右算定方法を決定するための折衝を行った。
(4) 製品及び技術の研究・開発について
NPCには、製品・技術についての研究・開発を行うための部署、人員がなく、日本における製品・技術の研究・開発に関する活動は、PKKにおいて行われていた。また、製品の根幹となる基礎技術の研究開発は、オランダをはじめとするヨーロッパの主要国に存在するフィリップスグループ会社に設置された研究所で行われていた。これら研究は、究極的には、NPC等の扱う製品として具体化され、その事業活動を促進していた。
PKKは独自の研究所を持ち、そこで電機分野に関する基礎技術を研究開発する基礎研究を行うとともに、フィリップスグループ会社の有する既存の基礎技術に基づく製品化のための研究を行っていた。そして、このような研究成果は、NPCが扱うフィリップス製品の性能、品質の向上として現われることとなり、間接的にNPCによる製品の販売促進に役立っていた。
(5) 市場調査、市場研究、市場開発
NPCには、市場の調査、研究、開発を行うための部署がなく、そのような活動はすべてPKKの調査関連部門において行われていた。
PKKには市場調査を行うための部署として「調査部」があり、調査部において、統計調査、業者に対する調査依頼、政府刊行物の管理、新聞・雑誌記事の収集・翻訳等の活動を行っていた。PKKは、NVPGその他上位のフィリップスグループ会社からの支援を受け、調査部の右諸活動により得た調査結果、情報を適宜NPCに提供し、また、NPCに対する経営指導活動のために活用していた。これら製品市場に関する右諸活動は専らNPCのために行われたものである。
(6) 広報活動について
NPCには、広報活動を行う部署がなく、マスコミとの対応、製品、人事についてのプレスリリース、広告塔の設置等については、PKKがNPCのために行っていた。
(7) 人事、福利厚生等について
PKKは、NPCのために、NPCの取締役の選定、面接、条件の交渉等を行っていた。
PKKは、毎年一回、NPCの従業員及びPKKの従業員に対する福利厚生の一環として、NPC及びPKKの長期勤続社員に対する表彰式典を主催していた。
PKKは、NPCを含む日本のフィリップスグループ会社全体のために、フィリップス製品の従業員優遇販売についての規則を定め、従業員の福利厚生を充実するための活動を行っていた。
(五) NVPGによる役務の提供
NVPGは、日本市場および日本産業界との事業上の関係の重要性から、日本を世界事業戦略上の最優先地域と考え、NPCに対しさまざまな役務を提供していたところ、経営指導料は、NVPGの管理統括及び役務提供に対するものでもあるということができる。
すなわち、NVPGは、NPCから受領した経営指導料の全額を(NVPGの本部で発生した経費相当額についても支払を受けることなく)、すべて日本での事業展開のためにPKKに使用させていた。また、NVPGは、日本での事業展開を支援するため、多額の支援金をPKK宛てに送金していた。
NVPGによる支援活動に対する対価として、NPCが支払うべき金額の妥当性は、PKKによるNPCのための支援活動に関連してNVPGが負担した費用を含めた関連経費の合計額をもって評価することができる。
なお、NVPGからも役務提供を受けているにもかかわらず、NPCがPKKに対してのみ経営指導料を支払ったのは、PKKがNVPGとNPCとの連絡や調整などに携わっていたからであり、また右のとおり、PKKに対し支払われた経営指導料は、PKKにおいてNVPGに代わりNPCを管理統括し役務を提供するために必要な費用として再投資されることが予想されていたからである。
(六) 被告が長期間にわたり経営指導料を是認していたことについて
NPCは、一九七三年から一九八五年まで一三年間、PKKに対し経営指導料を支払ってきたが、それについて税務上何ら問題とされたことはなかった。
判例上、税務関係においても、行政庁の不作為につき信義則(禁反言)の法理は適用されるものとされており、本件では、被告は、一三年もの長期にわたって、本件経営指導料の支払を是認してきているのであるから、信義則が適用されるべきである。
この点、被告は「NPCが右のような計算根拠で経理処理していることは、決算書類等の資料からも明らかではなく、被告が容易にこれを知り得る状況になかったのであるから、被告が右計算を認めた、あるいは黙認したということはできない」と主張している。
しかしながら、被告は、本件各更正処分の該当年度以前の決算年度に関しても税務調査を行っており、被告は、これらの税務調査において、NPCの会計処理について十分な調査を尽くし、その過程で本件経営指導料の算定方法についても知悉していたものである。それにもかかわらず、被告は、本件経営指導料の支払については何ら問題点を指摘することなく、本件経営指導料の額よりもはるかに少額な修正申告の対象となった税務申告について問題点を指摘した。これは被告が経営指導料の支払を是認していたことを端的に表わすものである。
(七) 松下電子工業株式会社が支払っていた経営指導料
本件各事業年度より前において、NVPGと松下電器産業との合弁会社である松下電子工業株式会社(以下「松下電子工業」という。)は、その親会社である松下電器産業から役務の提供を受け、これに対する対価として、売上の二・五パーセントの経営指導料を支払っていたが、それは税務上問題にされていなかった。
このことは、本件においてNPCがPKKに対し支払った経営指導料の率が合理的なものであったことを、間接的に裏付けるものである。
(八) 一般サービス契約(以下「GSA」という。)との比較
現在、フィリップスグループ会社が採用しているGSAは、フィリップスグループ会社間での費用の負担を定めるための契約であり、OECD移転価格ガイドラインに合致し、世界約四〇カ国の税務当局も承認している。
GSAは、本件で対象になっている年度には日本に適用されていなかったが、それに基づき仮定的に計算したNPCの負担額は、NPCが実際に支払った額とほぼ同じである。これはNPCの支払った経営指導料の額がやはり合理的なものであったことを示すものである。
2  争点2(輸出取扱手数料の性質)について
(被告の主張)
(一) 原告は、OEM製品の輸出に際してNVPG製品事業本部に対し、NVPG製品事業本部が決定した輸出価格から仕入価格、仕入諸掛及び原告の購買取扱手数料を控除した残高を売上原価中の輸出取扱手数料として支払ったとして、右金額を損金の額に算入し、また、輸出取扱手数料を、NVPG製品事業本部の製品開発、製造及びマーケティングの費用負担である旨主張する。
しかしながら、本件調査時及び本訴訟において原告が提出した証拠資料等によって本件輸出取扱手数料の内容を検討しても、本件輸出取扱手数料の額の計算根拠及び負担理由等は不明であって、輸出取扱手数料は原告の負担すべき費用とは認められず、本件輸出取扱手数料名下に支払われた金額は、対価関係を欠いた贈与行為によるものであって、NVPG製品事業本部に対する法人税法三七条六項に規定する経済的利益の贈与に当たるものと認められるべきである。
(二) 原告の主張によれば、NPCの購買・輸出活動は、NPCがNVPG製品事業本部の委託を受けて自らの名前で行う取引であり、右取引の利益は右事業本部に帰属するということになるが、そのような取引関係は企業経営の根幹にかかわる重要な事項である。しかるに、NPCとNVPG製品事業本部との間に、問屋契約が締結されていたことを証する具体的な資料は存在しない。
さらに、本件調査において、原告が被告に提出した説明資料の記述によれば、PKKはNPCの輸出活動に対して具体的な支援を行っていたものと判断されるところ、NPCがPKKから右支援を受けていたとすれば、NPCは単なるNVPG製品事業本部の購買代理人ではなく、輸出活動について自らが取引の当事者としてかかわっていたものと認められるべきである。
(三) 原告は、NPCの購買・輸出活動に関して、NPCは経済的及び財務的なリスクを一切負わず、実質的な取引の当事者は、契約の交渉、価格の決定、様々なリスクの負担をしていたNVPG製品事業本部である旨主張する。
しかしながら、次の(1)ないし(3)のNPCの行為からすれば、NPCがOEM製品の取引にかかわる責任等を負っていたことは明らかであり、NPC自らが取引主体となり、経済的及び財務的なリスクを負っていたというべきである。
(1) ビデオカメラレコーダーVKR九五五〇(OEM製品)の生産中止との理由で、同製品の外注先である日本マランツ株式会社の在庫買取のための引当として、一億一九二八万一一八二円を製品市場調査費として計上していること。
(2) ビデオカメラレコーダーVKR六八六〇(OEM製品)の検査用治具専用駆動装置を八六八万円で取得していること。
(3) ビデオカメラレコーダーVKR九五五〇(K〇八五)(OEM製品)の生産減少との理由で、同製品の外注先であるコニカ株式会社から同製品の生産に使用するはずであった、治工具一式を八三八万八〇〇〇円で買い取っており、同社の同製品の生産に使用していた資産の未償却残を補償するための費用一〇五九万二三九一円を負担していること。
(四) 原告は、NPCが売買差益を一時的に受け取り、それをNVPG製品事業本部又はその指定先に対して送金し、これを受け取った者が自己の収入として計上している旨主張する。
しかしながら、原告が主張するとおりNVGP製品事業本部が売買の当事者であるというのであれば、何故同事業本部の収益に本件輸出取扱手数料を含むFOB価格を計上しないのかその理由が不明である。また、原告は、NVPG製品事業本部はそれ自体一つの法人をなすものではなく、PIBVを含む四法人が中心となって役割分担している旨主張しているにもかかわらず、その税務調査担当者に対する説明では、PIBVのみの収益に計上しているとする部分があり、他の三法人に収益が帰属しない理由が不明である。さらに、原告は、審査請求段階では、本件輸出取扱手数料の一部は、NVPG製品事業本部の立場ではなく、具体的な事業を行っていない持株会社であるNVPGがその収益に計上しているとする説明を行っていた。
右のとおり、輸出取扱手数料に係るフィリップスグループ会社の各法人の役割及び収益の帰属先については、不明な点ばかりであるところ、これらの点に関して何ら合理的な説明はなく、不合理な取引をしていると認めざるを得ない。
(五) さらに、輸出取扱手数料を預り金だとする原告の主張と、次の(1)ないし(3)のNPCの経理処理(売上・売上原価)との間には整合性が認められない。
(1) NPCの経理処理上、輸出取扱手数料を含むFOB価格は収益に計上されており、輸出取扱手数料は売上原価を構成する費用に計上されていること。そして、売上先はNPCとは別人格であるから、売上先がいかなる経理をしようと、NPCとしては関係ないというべきであること。
(2) 海外取引に係る収入金額を基として算定される中小企業等海外市場開拓準備金を右FOB価格に基づいて損金経理して積み立てていること。(ちなみに平成二年一二月期末現在のその積立金残高は二四億二〇三六万円である。)。
(3) NPCの売上金額に対する一パーセントの割合によりPKKに支払う本件経営指導料についても、右FOB価格をその算定の基礎にしていること。右(1)ないし(3)の経理処理は、NPCが、輸出取扱手数料を含むFOB価格をNPCの売上として自認していた証左である。
(六) よって、輸出取扱手数料はNVPG製品事業本部に帰属する売買差益というべきであり、原告は購買代理人である旨の原告の主張は、事実に反するものであり失当である。
なお、原告は、輸出取扱手数料と輸出経費補填金(後記原告の主張(三)参照)との間には、その性質において全く差異がないと主張するが、①輸出取扱手数料がフィリップス販売会社からの輸出価格の一部として受領されるものであるのに対し、輸出経費補填金は日本国内の製造業者から受領されるものである点、②輸出取扱手数料が売上原価に計上されているのに対し、輸出経費補填金は仮受金に計上されている点は、右両者をその性質において決定的に分かつものであり、原告が主張するように両者の性質に全く差異がないなどとは到底いえない。
(七) 国際的な二重課税
原告は、一方が経費として支出した金額が損金性を否認されることにより課税の対象とされ、同時に、その金額を受領した他の一方がこれを収入として計上することにより課税されることをもって国際間の二重課税であるとした上、そのことから本件更正処分は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、そもそも国際間の二重課税とは一個の法人格に帰属する同一の所得について居住地国と源泉所在地国との双方において課税されることをいうのであるところ、原告の右主張は、二つの法人格の各々の所得についての課税を問題にするものであるから、その趣を異にするものであって、原告の右主張は失当である。
現行法人税法においては、法人が寄付金を支出した場合には、資本金額基準及び所得金額基準等によりその一定の基準を超える金額は、法人の所得金額の計算上損金の額に算入されず(法人税法三七条)、法人税が課税される一方、右寄付金の支払を受けた相手方である法人においては、受贈益等(収益)として法人の所得金額の計算上益金の額に算入される(同法二二条二項)ことは当然であって、双方の法人に法人税が課税されたからといって、同一の法人格に帰属する利益に対して重ねて課税したものとはいえず、これが二重課税に該当しないことは明らかである。
なお、本件各更正処分は、原告の居住地である日本におけるところの法人税法の各条文の規定に従い行われたものであって、オランダとの租税条約に基づき行われたものではない。本件各更正処分は、NPCが支出した輸出取扱手数料が法人税法三七条の寄付金に当たるとし、同条に基づき再計算したところの損金不算入額を本件各事業年度の所得金額に加算して計算したものであって、NPCの支出した各金員が寄付金に当たるか否かが争点である。仮に寄付金でないとされた場合には、オランダとの租税条約における二重課税回避の主張をまつまでもなく本件各更正処分は取り硝されることとなる。
よって、本件輸出取扱手数料の額が、寄付金と認定されNPCの課税所得に含められると、国際間の二重課税になるため、本件各更正処分は取り消されるべきとの原告の主張には理由がない。
(原告の主張)
(一) NPCは、NVPG製品事業本部からの委任に基づいて、その指示に従い、日本国内の仕入先の製造業者から製品を購買し、海外のフィリップス販売会社に対して同製品の輸出・請求書発行・発送を行っていた。右輸出に際しては、製品の仕入代金に、NPCの受け取るべき手数料(購買取扱手数料)と、NVPGがNPCに対して指示した輸出取扱手数料を加算し、海外のフィリップス販売会社から、右加算後の代金を受領していた。
右のとおり、輸出取扱手数料の実体は、OEM製品の購買、輸出の売買差益であり、その差益は、購買代理人(商法上の問屋、すなわち、自己の名において他人の計算で取引を行う者)として右取引にかかわったNPCにではなく、OEM製品等の取引の実質的な当事者であるNVPG製品事業本部に帰属すべきものである。
NPCは、右業務遂行にあたり、右製品取引の当事者であるNVPG製品事業本部に帰属すべき製品の売買差益を、一時的に海外のフィリップス販売会社から受け取っていたが、その実質は、預り金にすぎず、これを輸出取扱手数料という名称で、その帰属先であるNVPG製品事業本部に対して送金していた。
したがって、輸出取扱手数料は、法人税法三七条第六項の「寄付金」に該当せず、その全額につき損金性が認められるべきである。
なお、輸出取扱手数料は、NPCにおいては、売上原価として計上されており、他方、フィリップスグループ内部においては、それぞれのNVPG製品事業本部に帰属するものについてはNVPG製品事業本部を代表する会社の収益に計上されており、税務申告上は、連結納税制度のため、NVPGの収益として計上されていた。
NPCが、輸出取扱手数料を売上原価として計上したのは、製品の輸出先であるフィリップス販売会社が、輸出価格全額を製品の売上原価として計上していたため、NPCとしては、一般に公正妥当な会計処理基準に従って輸出価格全額を売上として計上しなければならず、これを売上として計上すれば、輸出取扱手数料を売上原価として計上しなければならなかったという理由によるものである。
(二) 製品の購買・輸出におけるNPCの立場
NPCが、製品の購買・輸出において、NVPG製品事業本部の購買代理人にすぎなかったことは、以下の事情から明らかである。
(1) NPCは、購買・輸出活動に関して、経済的なリスク(在庫に関するものを含む。)を一切負わず、原則として購買取扱手数料のみを自己の収益として取得していた。購買取扱手数料については、NPCとNVPG製品事業本部との間の合意により定められたが、輸出取扱手数料については、NVPG製品事業本部が決定し、NPCに指示していた。
(2) NPCは、製品の輸出先である海外のフィリップス販売会社に対して、現金引渡し基準で請求書を発行する。また、請求書の発行に関して為替リスクを負わない。
(3) NPCは、海外販売部門あるいは輸出のための海外市場開拓部門を有しない。また、仕入先の製造業者との価格・数量その他購買契約に関する条件の交渉、製品の品質及びデザイン等の指示、その費用の負担等は、NVPG製品事業本部が行い、NPCはこれを行わない。
(4) 他方、NPCは、フィリップス製品の輸入・販売を行っていたが、右輸入・販売活動は、NPC自らのために行っていたものであり、売買差益は自らの収益として受領していた。
なお、被告の主張(三)において被告が主張するビデオカメラレコーダー(VKR九五五〇及びVKR六八六〇)についての取引は、合併前のPKKが自ら開発・製造を担当して行ったOEM取引に関するものであり、合併後、原告がこれを引き継ぎ、原告が取引主体となるに至ったものであるから、NVPG製品事業本部は関与していない。したがって、本件における輸出取扱手数料に係る取引とはまったくその性質を異にする。
(三) 輸出経費補填金との同質性
本件訴訟に先立つ国税不服審判所の審理の結果、輸出経費補填金(製品取引に係る販売促進費の援助金、価格差額調整金、値引き及び運賃補償金で、日本の仕入先の製造業者からNPCが受領し、NVPG製品事業本部に送金したもの)がNVPG製品事業本部に帰属するものと判断されて、当該部分につき原処分が取り消された。これは正当な判断であり、その理は輸出経費補填金と同一の性質を有する輸出取扱手数料にも適用されるべきである。
すなわち、輸出経費補填金は、①NVPG製品事業本部が国内の製造業者と直接交渉を行い、②基本的にはその金額の決定をNVPG製品事業本部が決定し、③NPCが、購買代理人としての資格において、NVPG製品事業本部に代わって一時受領し、預り金として「VCR工具投資引当金勘定」(NVPG勘定)で経理処理し、④NVPG製品事業本部の指示に基づき、適宜、当該勘定からNVPG製品事業本部に送金していたものである。
これに対して、本件輸出取扱手数料の発生原因である製品取引は、①NVPG製品事業本部が直接国内の製造業者及び海外のフィリップス販売会社と交渉を行っており、②その価格の決定はNVPG製品事業本部が行っており、また、③本件輸出取扱手数料は預り金としてNVPG勘定で経理処理されていた、という点で本件輸出経費補填金と同一の性質を有する。
両者の差異は、支払元が国内の製造業者か海外のフィリップス販売会社か、NPCの経理処理において売上原価として計上したか仮受金として計上したかにあるにすぎない。
(四) 海外所在の取引の実質的当事者が現地の購買代理人を使って製品取引を行うことは、多国籍企業において広く行われているところであり、以下のとおり、経済上、経理上及び事務処理上の合理性を有する。
(1) 現地の他方当事者との調整を図り円滑な取引遂行を図るために便宜であること。
(2) 事務処理の上でも、日本から、NVPG製品事業本部を通すことなく、直接海外のフィリップス販売会社に対して、商品を発送し、かつ、直接これら販売会社に請求書を発行することにより、輸送及び請求書発行に係る手間及び費用を大幅に節約することができること。
(3) 製品の発送関連業務及び請求書関連業務、並びに費用の立替え払い関連業務にあたっては、現地の取引先(本件では日本国内の仕入先の製造業者)との事務連絡が必要不可欠であるが、日本の購買代理人であるNPCがこれらの関連業務を行うことによって、円滑な事務連絡、意志疎通を図ることができること。
(五) 国際的な経済的二重課税
NPCは、輸出取扱手数料の実態に基づき、これを本来の帰属先であるNVPG製品事業本部又はその指定先に対し送金した。そして、これを受け取った各当事者は、各居住地国の税法に従って、各自の法人所得申告において、本件輸出取扱手数料を自己の収入として計上し、各税務当局より課税を受けた。しかし、被告は、輸出取扱手数料をNVPG製品事業本部に対する寄付金と認定し、NPCの課税所得に含ませ、これに対する課税をした。この結果、輸出取扱手数料については、原告企業グループ内において、二重課税が生じることとなった。
しかしながら、国際間の二重課税は、日本が批准している各租税条約においても排除、除去するよう規定されている。したがって、輸出取扱手数料を寄付金と解し課税することは、租税条約の趣旨に反するものとして、許されないと解すべきである。
3  争点3(事業税の損金算入方法)について
(被告の主張)
(一) 法人が納付する租税公課のうち損金の額に算入されないものについては、法人税法三八条から四一条までにおいて規定されているが、これらの規定において定められていない租税公課については、法人税法二二条三項二号の規定により損金の額に算入され、当該事業年度終了の日までに債務が確定しないものについては、その損金の額に算入すべき金額から除かれている。
法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入すべき事業税についても、右と同様、当該事業年度終了の日までに申告、更正又は決定(以下「申告等」という。)がされていなければ、法律上は債務が確定していないものとして損金の額に算入することはできないこととなる(法人税基本通達九―五― 一)。
しかしながら、法人税について、課税庁が連続する二事業年度以上の更正をする場合には、当該事業年度終了の日までに申告等がされていない(結果として債務が確定しない)事業税についても、例外的にその納付すべき税額を見積もり、損金の額に算入することを認めている(法人税基本通達九―五―二)。
そして、この債務確定基準の特例的取扱いは、見積計算であるところから、損金の額に算入した事業税に過不足額が生じることは当然予想されており、そのときは、右過不足額については、実際に当該事業税の申告等又は納付のあった日の属する事業年度において、調整することとされている。このことから、事業税の額の損金算入だけを内容とする減額更正は、原則としてこれを行わない(法人税基本通達九―五―二(注)2)。
(二) 債務が確定していない事業税の額の損金算入については、右(一)で述べたとおり、法律上の根拠を何ら有するものではない。また、法人税基本通達九―五―二の定めによる取扱いによれば、損金の額に算入する事業税の額の計算も概算を求めるものにすぎず、あらかじめ過不足額が生じることが当然に予想されるような見積計算であって、被告が地方税法七二条の一四第一項の規定のすべてを適用して直前年度の所得を算出しなかったからといって、そのこと自体によって、本件各更正処分が違法であるとまではいうことはできない。
(原告の主張)
(一) 仮に、本件各更正処分が適法であり、損金算入すべき事業税が生じるとした場合、被告がした昭和六二年一二月期及び昭和六三年一二月期に係る更正処分における損金算入すべき事業税の額の算定には違法がある。
すなわち、納税者が法人税の更正処分を受けた場合に、当該納税者が納付すべき事業税額は、法人税の課税標準ではなく、事業税の課税標準を基準として算出されることになっている(地方税法七二条の三九第一項)。そして、法人税基本通達九―五―二は、事業税の損金算入時期の特例及び適用税率について定めたものにすぎず、事業税算定の基礎となる所得額については、あくまで、地方税法の規定に則った計算がなされるべきである。
被告は、更正処分に係る税務調査時に、原告には中小企業海外市場開拓準備金及び法人税法上の繰越欠損金(以下「準備金等」という。)があることを認識し、法人税の課税標準を算定するに当たって、これらの額を損金として控除した。他方、事業税の課税標準を算定する際には、右準備金等は、損金に算入されないものである(中小企業海外市場開拓準備金につき、地方税法七二条の一四第一項ただし書、法人税法上の繰越欠損金につき、同項本文及び地方税法施行令第二一条)から、被告は、法人税の課税標準に右準備金等の額を加算して事業税の課税標準を加算すべきであったが、被告はこれを行わなかった。
(二) 以上のとおり、被告が法人税の課税標準をもって損金算入すべき事業税の額を推定計算したことは違法というべきである。
第三  当裁判所の判断
一  前記第二の一記載の事実に証拠(甲四の一ないし4、乙一の1ないし4、証人P1、同P2、同P3、同P4のほか、文中記載のもの)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
1  フィリツプスグループの概要(甲一の8、乙一の3)
(一) フィリップスグループは、オランダに所在するNVPGを頂点とする企業集団である。NVPGは、全世界にある約一五〇〇のフィリップスグループ子会社の株式を保有している株式保有会社であり、右グループ会社の活動を統括している。NVPGは、株式の保有、諮問、意思決定を行う法人であり、自ら具体的な業務活動は行っていない。具体的な業務活動は、NVPGの下位に位置するフィリップスグループ会社が分担して行っている。
(二) フィリップスグループの業務活動の概要は以下のとおりである。
(1) 経営全般に係る業務
フィリップスグループ会社の経営については、NVPGの「グループ経営管理委員会」(Group Management Committee)が全般的に統括、指導し、NVPGの子会社でオランダ法人であるPIBVに設置されている「統括的業務部門」(corporate staff  departments)が、グループ経営管理委員会の指導のもと、具体的な事業活動を行う。
この統括的業務部門には、地域部、人事部、経営会議・経営管理委員会事務局、自動化計画部、広報部、法務部、会計部、財務部、業務監査部、製品開発調整部、標準・規格部、組織・能率部、工業デザイン部、購買部、運輸部、建物デザイン・工場エンジニアリング・情報部、及び企画.営業支援・広告部等がある。統括的業務部門は、右諸分野において、全世界のフィリップスグループ会社に対してサービスを提供し、その経営を支援している。
(2) 製品にかかわる業務
フィリップス製品に関する業務については、市場の類似性、技術の類似性等を基準として、製品を、照明機器、民生機器、産業機器等のいくつかの分野に区分し、各分野ごとに製品事業本部を設置している。
「NVPG製品事業本部」は、製品に関するグループ会社の活動を統括する機構であるが、それ自体一つの法人をなすものではなく、オランダの四法人(PIBVほか三社)が中心となって役割を分担し、全体としてNVPG製品事業本部としての機能を形成している。
NVPG製品事業本部は、技術アドバイス活動、技術情報提供活動、活用可能な技術的データ提供及び指導活動、製造分野における具体的支援活動、品質管理及び品質サービスに関する技術的支援活動、地域統括関連活動、経営戦略及び企画関連活動、営業支援活動、一般事務支援活動、管理者支援活動といった諸分野において、全世界のフィリップスグループ会社に対してサービスを提供している。
(3) 現地法人
各国には、一般に、NVPGの一〇〇パーセント出資の子会社として現地法人がおかれ、その国における経営についての責任を負っている。
各現地法人は、所在地の国における社会情勢、経済情勢に基づいて策定された方針を推進する責任を負っている。他方、NVPG製品事業本部は、その国における市場、製品及び組織の情況に従い、その国における現地法人と協議の上、製品についての事業方針を決定する。
(三) 以上のように、フィリップスグループは、NVPGを頂点として下位に広がる会社群からなる、全世界的規模の企業集団であり、企業集団として効率的なグループ運営をするために、NVPGその他上位の会社が、順次下位の会社に対してその経営及び事業活動に関する指導・支援を行い、下位の会社は、上位会社からの指導・支援に基づいて諸活動を行うという経営形態を取っている。
2  日本におけるフィリップスグループの活動(甲一の7、乙二)
(一) PKK
PKKは、昭和三一年、「工業振興株式会社」の商号で設立された会社であり、その後、「フィリップス工業指導振興株式会社」、「フィリップス工業振興株式会社」に順次商号を変更した後、昭和六二年一月一日、「フィリップス株式会社」との商号となった。
PKKは、NVPGの一〇〇パーセント出資の子会社として設立されたものであり、フィリップス・グループの現地法人として、日本におけるフィリップスグループ会社の管理運営について責任を負っていた。PKKは、設立当初、工業上及び商業上のコンサルティングサービス等を行うことを目的としていたが、日本の電機、電子及び製薬業界との各種事業交渉等におけるNVPGの出先機関としての機能も果たしていた。また、PKKは、剃刀やコーヒーメーカーの販売のための活動を行っていた。
(二) NPC
NVPGは、昭和二七年松下電器産業との合弁会社として、松下電子工業を設立した。松下電子工業は、NVPGから製造用機械、原料等を輸入する業務を行わせるため、昭和二八年、「日本電子開発株式会社」との商号でNPCを設立した。その後、右会社は、昭和三八年に「日本フィリップス製品販売株式会社」に商号を変更し、さらに、昭和四七年、現商号に商号を変更した。
NPCは、設立当初、松下電子工業の一〇〇パーセント出資の子会社であったが、松下電子工業に係る製造用機械等の輸入業務が終了したので、昭和四〇年ごろから、フィリップス製品を独占的に輸入販売することを目的とすることとなり、松下電子工業は、昭和四〇年一月、PKK及び松下電器産業に対して、NPCの株式をそれぞれ五〇パーセントずつ譲渡した。
他方、PKKは、松下電器産業との合弁会社として、昭和三六年、国際電気貿易株式会社を設立した。同社は、日本企業からの電気・電子製品の購買とNVPG及び外国のフィリップスグループ会社への輸出とを行うことを目的としていた。その後、国際電気貿易株式会社は、昭和四五年ころ、NPCと合併した。
さらに、PKKは、昭和四六年ころ、松下電器産業から、NPCの株式の譲渡を受け、NPCの株式の持分割合を七五パーセントとした。その後、PKKは、平成元年一一月一四日、NPCの株式をすべて買い取って、NPCを一〇〇パーセント出資の子会社とした。
なお、昭和六〇年以降、PKKとNPCの代表取締役社長は同一人物であった(甲一の2ないし6、二の35)。また、PKKとNPCとは、昭和六二年ころの時点で、同一住所にその活動の本拠を置いていた(甲二の26、三の15)。
(三) フィリップスグループが、日本において、現地法人であるPKKを設立するとともに、実際の販売活動等を行うNPCを置いたのは、昭和二八年に日本市場に参入した時点では、外資規制のため、一〇〇パーセント外資の子会社による販売活動ができなかったことに由来する。その後、右の規制が緩和され、PKKがNPCのすべての株式を取得するなどの経過をたどり、平成二年一月一日、NPCがPKKを吸収合併するに至った。
3  経営指導料について
(一) 経営指導料の支払に関する経緯(乙二)
(1) NPCと松下電器
産業は、昭和四六年(一九七一年)三月三〇日付けで、合意書を作成した。その内容は、①NPCは、松下電器産業に対し、一九七一年から七六年までの五年間、フィリップス会社からの輸入取引についてはFOB価格の一パーセント相当額、フィリップス又はその指定する会社との輸出取引についてはインボイス価格の〇・五パーセント相当額の金員を支払う、②一九七五年六月三〇日までに、NPCに関する事項(松下電器産業が引き続き保有する二五パーセントの株式の譲渡及び右①の取決めの見直しを含む。)について協議を行う、③今まで松下グループに属する会社とフィリップスとの間で直接行われていた取引については、実際の株式の譲渡が行われ次第、NPCを通じて行うというものであった(甲二の1)。
また、NPCと松下電器産業は、昭和四七年(一九七二年)三月一日付けで、協定書を作成した。その内容は、①松下電器産業は、NPCの輸出用日本製品の購買及び輸入製品の日本での販売を増進振興するようNPCを援助指導する、②右役務の対価として、NPCは、松下電器産業に対し、NVPG又はその子会社との輸入取引についてはFOB価格の一パーセント相当額、NVPG又はその指定する会社との輸出取引についてはインボイス価格の〇・五パーセント相当額の金員を支払う、③本契約は一九七二年一月一日から一九七六年一二月三一日まで有効なものとし、その後は自動的に終了するものとする、というものであった(甲二の2)。
NPCは、松下電器産業に対し、昭和四七年(一九七二年)から昭和五一年(一九七六年)までの間、右約定に基づいて経営指導料を支払っていた。
(2) NPCとPKKは、昭和四八年(一九七三年)三月三一日付けで、合意書(一九七三年覚書)を作成した。その内容は、①NPCにおいてマーケティングマネージャーに任命される二名の従業員につき、その給料はPKKが負担するが、その他の経費(家賃等)については引き続きNPCが負担する、②NPCの医療システム部門でアドバイザリー・ポジションに就いている一名の従業員につき、引き続き給料はPKKが負担し、一部の経費を除いた経費はPKKが負担する、③他の人々についても、パートタイムあるいはフルタイムにおいて、NPCの全般的経営、管理、技術的助力、マーケティング及び法務の分野において、援助任務のため任命される場合があること、④以上の事情を勘案し、NPCは、PKKに対し、同年一月一日以降、NPCの年間予算計上の総輸出売上高及び輸入国内販売高の一パーセントに等しい報酬を支払う、というものであった。
(3) NPCとPKKは、昭和五三年(一九七八年)一月一日付けで、合意書を作成した。その内容は、前記(2)の合意書に関して、一九七八年度分として、NPCは、その年間総輸出売上高の一パーセント、輸入国内販売高の一パーセント及び受託買付(indent sales)の一パーセントに等しい報酬をPKKに支払うことを約束するものであった。
(4) NPCとPKKは、昭和五六年(一九八一年)一月一日付けで、合意書(一九八一年覚書)を作成した。その内容は、前記(2)及び(3)合意書に関して、PKKがNPCに対して行っているサービス機能には、過去及び将来にわたり、海外顧客の紹介及び情報連絡の役割を含むものであることを確認するものであった。
(5) その後、NPCはPKKに対し右各合意に基づく支払を行ってきた。
なお、NVPG、松下電器産業及び松下電子工業は、昭和四二年一〇月一二日、事業支援契約を締結した。右契約において、松下電器産業は、松下電子工業が事業活動を行うに当たり必要とする総務、財務の人員、その他便益を利用できるようにし、松下電子工業はその対価等として受け渡し価格の合計額の二・五パーセント相当額の報酬を支払うものとするとされていた(甲二の4)。
(二) NPCの事業活動に対するPKKの関与
PKKは、NPCに対し、以下のとおり、各種の役務を提供していた。
(1) 経営戦略等
ア PKKは、フィリップスグループにおける現地法人であり、本社コンサーンセンター及び海外のフィリップス会社との正式な連絡機関となっていた。また、日本におけるフィリップスグループの関連会社の地位を強化するための戦略と方針を決定する責任を負っていた。
イ フィリップスグループでは、毎年一回、NVPGの所在地であるオランダにおいて全世界的経営戦略会議を開催し、グループ会社に対する経営指導活動を行っていた。日本からは、PKKの社長が同会議に出席し、右会議の結果及びそこで入手した情報等をNPCに提供した。
ウ PKKは、昭和六一年六月ころ、日本におけるフィリップスグループ会社の経営全般について助言を受けるための諮問機関として、富士通社長ら外部の人材によって構成される「経営諮問会議」を設置し(甲二の6ないし10)、経営戦略等についての重要な問題について、当該経営諮問会議の助言を受けていた。また、PKKは、電子関係の業界団体である社団法人日本電子機械工業会の準会員であった。PKKのこのような活動の成果は、NPCの経営指導活動に生かされていた。
エ PKKは、NPCの事業活動に影響を与えるフィリップスグループ会社の人事異動や、事業の展開について、PIBVの担当者との間で交渉を行っていた(照明器具事業につき、甲二の11、12)。
オ また、PKKは、NPCが関与する個別の取引について発生した紛争の解決のために、PIBVの担当者に対して、必要な援助を求めることがあった(航空自衛隊に納入する「ゴールキーパー」の取引に関し、甲二の14)。
カ PKKは、NPCに対して、資金の貸付けをしていた(甲二の32)。
(2) NPCを通じた輸出の振興等(乙二)
ア 日本におけるフィリップスグループの活動は、一九七〇年代、合弁事業と若干の輸出入に限定されていたが、一九八〇年代になって、PKK及びNVPG製品事業本部は、日本市場を重視する経営戦略をとるようになった。そして、PKKは、フィリッブスグループにおいて、NPCを日本からの輸出業者として利用することを推進した。
すなわち、当時、日本の製造業者は、海外営業所を設け、各地のフィリップスグループ会社と取引をすることがあったが、PKKは、フィリップスグループの中で、このような取引形態に代えて、NPCをフィリップスグループにおける日本の製造業者からの唯一の購買機関として用いることで、日本の製造業者からの購買について各製造会社に対する交渉力を高めることを強く主張し(甲三の10)、その方針が実現されるようになった。
PKKが右のような活動をしたことから、NPCが取引する世界各地のフィリップスグループ会社の数は増大し、円高にもかかわらず、NPCの輸出高は、増大した。また、このことが、NPCの国内販売にもプラスの効果をもたらした。
イ PKKは、NPCのOEM商品の輸出受注増を助けるため、顧客の要求に基づき、デザインの変更業務を行っていた。その例として、一九八六年以降におけるビデオカセットレコーダーがあった。
ウ NPCは、NPCが行う購買活動について、購買取扱手数料名目の金額を受領していた。購買取扱手数料率は、通常の予算手続において、PKK、NPC及び統括購買部(Corporate Purchasing)の間の協議により、年一回決定されていた。PKKは、NPCのために、PIBVの担当者と連絡を取り、右料率を決定するための折衝を行った(甲二の25、26、乙一六)。
また、PKKは、右担当者との間で、個別の購買契約において生じている購買サービスの費用について交渉することもあった(甲二の27)。
(3) 法務
PKKは、NPCの業務に関する法律問題について、法律事務所への相談や連絡業務を行った。PKKは、法律事務所と顧問契約を締結しており、NPCの活動についての重要な法律問題は、PKKが右顧問契約に基づいて顧問先の弁護士に相談していた。また、PKKは、NPCの株主総会議事録、取締役会議事録等の作成について、法律事務所へ依頼していた(甲二の17ないし24)。
(4) 市場調査
PKKの調査部門は、市場調査のため、統計調査、業者に対する調査依頼、政府刊行物の管理、新聞・雑誌記事の収集・翻訳等の活動を行っていた。PKKは、これをNPCに対する経営指導活動のために活用していた(大型家電製品につき、甲二の28、29)。
(5) 広報活動
PKKは、マスコミとの対応、製品、人事についてのプレスリリース、広告塔の設置等について、NPCのために活動していた(広告塔につき、甲二の30)。
(6) 人事、福利厚生等
PKKは、NPCのために、NPCの取締役の選定、面接、条件の交渉等を行っていた。また、PKKは、NPCの従業員に対する福利厚生の一環として、NPC及びPKKの長期勤続社員に対する表彰式典を主催していた。PKKは、NPCを含む日本のフィリップスグループ会社全体のために、フィリップス製品の従業員優遇販売についての規則を定め、従業員の福利厚生を充実するための活動を行っていた(甲二の31ないし34)。
4  輸出取扱手数料について(乙三)
(一) ビデオ関連製品の購買と輸出について
NPCは、国内の製造業者との間で売買契約を締結して、OEM製品等を購買し、国外のフィリップスグループ会社に対して当該製品等を輸出していた。
(1) ビデオ関連製品の取引に関して、NPCは、必ずしも独立した取引活動を行っていたわけではなかった。すなわち、輸出先の開拓については、NVPG製品事業本部及びPKKの支援活動があり(前記3(二)(2))、また、製品の仕様、価格、数量、納期等については、NVPG製品事業本部と国内の製造業者との間において直接の交渉がなされ(甲三の17ないし19、20ないし25、26)、NPCは、NVPG製品事業本部の指示により、国内の製造業者との交渉を補佐する立場にあるにすぎなかった。
(2) NVPG製品事業本部は、個々の製品の取引について、NPCの仕入価格、輸出価格、原告の購買取扱手数料のほか、「Tooling」又は「Tooling Reserve」などと表示される額(以下「ツーリングの額」という。)を通知していた(甲三の1、28)。
NPCは、右の通知に従って、国外のフィリップスグループ会社に対して、インボイスを発行する業務を行い(甲三の2)、製品を船積みする業務を行っていた。
(なお、NVPG製品事業本部が、ツーリングの額をいかなる根拠に基づいて決めていたかについては、確たる証拠がない。)
(3) NVPG製品事業本部は、NPCを通じて購買した製品の販売価格の下落や為替の変動による損失、出荷の遅延を原因として発生した運賃差額による損失について、日本国内の製造業者と交渉し、当該製造業者との契約に基づき、その一部を負担させることがあった。日本国内の製造業者は、販売促進費(甲三の6)、価格差益調整金及び運賃補償経費などの名目で、NPCを通じて、NVPG製品事業本部に対して、輸出経費補填金を支払った。NPCは、右のような損失について、売買の当事者として独自のリスクを負うことはなかった。
(4) NVPG製品事業本部のビデオ部門は、NPCに対して、ビデオ関連製品の輸出についてのツーリングの額を、特別の勘定に記録することを要求し(甲三の28)、NPCは、これを「VCR工具投資引当金勘定」と称する勘定項目に「割増金」と表示して入金し管理していた(甲三の3)。また、右勘定項目には、前記(3)の輸出経費補填金も入金されていた(甲三の7)。
右勘定からの出金として記録されているものとしては、国内支出として、品質管理費用、製品保管の利息及び倉庫費、サンプル費用、試作品作成費用、デザイン費用、金型製作費用、人件費などがあり、国外に送金されたものとして、輸出先のフィリップスグルーブ会社への値引額、「本社」への送金などがあった(甲三の3)。
(なお、右「本社」が如何なる法人なのかについては、その一つがPIBVであったこと(甲三の5)のほか、これを具体的に明らかにするに足りる証拠はない。)
(5) 他方、NVPG製品事業本部は、昭和六三年一〇月、ビデオ関連製品を世界的に担当している「ビデオグラフィービジネスユニット」の本拠地を、昭和六四年一月一日以降、日本に置くこととし、これをPKKの民生機器事業部門に編入することを発表した。また、ビデオ関連製品の購買機能を、NPCからPKKに移転した(甲三の31、乙二)。
PKKは、コニカ株式会社に対して、平成元年三月、ビデオカメラレコーダーVKR九五五〇用のレンズを発注したが、その後、原告は、平成二年一二月、右発注数量を減らしたため、コニカ株式会社から補償金を要求され、平成三年二月、八三八万八〇〇〇円を支払った。また、同年一〇月、右ビデオカメラの生産中止を決定したことから、仕掛品及び治具の廃棄費用を要求され、同年一二月ころ、右費用を支払った(甲三の33)。
(二) その他の製品等の輸出取引について
ビデオ関連製品以外の製品等の取引については、NPCを売買の当事者とせず、外国のフィリップスグループ会社が、直接、日本国内製造業者との間で契約を締結することがあった。その例として、NVPGが購入したプリンター(甲三の11)、「Nederlands Philips Bedrijven B.V.」が購入した集積回路基盤の製造用の自動システム(甲三の12)及びサーフェス・マウンター(甲三の15)、「Philips elecommunicatie en Data System Nederland B.V.」が購入した画像スキャナー(甲三の13)、PIBVが購入したレーザーダイオード組立てライン(甲三の14)などがあった。
右各契約において、NPCは、外国のフィリップスグループ会社の代理人(representative)、立会人(Witness)、仲介人(intermediary)としての地位を有し、製品の引渡しや代金の支払等において関与することとされていた。
(なお、原告は、NVPG製品事業本部からの預り金を保管する特別の勘定科目(NVPG勘定)には、前記(一)(4)記載の「VCR工具投資引当金勘定」のほかに、ビデオ関連製品以外のものを取り扱う勘定があると主張し、それに沿う証人P3の供述部分があるが、これを具体的に明らかにする確たる証拠はない。)
(三) 輸出取引の会計処理
NPCは、その会計処理において、日本において購買した製品等を海外のフィリップス関連会社に対して輸出する取引につき、FOB価格を、売上として計上していた。そして、その売上原価として、「輸出取扱手数料」を計上し、これを損金に算入していたが、右「輸出取扱手数料」は、FOB価格から、仕入価格、仕入諸掛及びNPCの購買取扱手数料を控除した残高として計算される額であった。
また、NPCは、海外取引に係る収入金額を基として算定される中小企業等海外市場開拓準備金を、右FOB価格に基づいて損金経理して積み立てていた。さらに、NPCの売上金額に対する一パーセントの割合によりPKKに支払う本件経営指導料についても、右FOB価格をその算定の基礎にしていた。
(なお、NPCにおいて、右輸出取引に係る輸出額がNVPG製品事業本部の計算でされた取引によるものであることを第三者において明確に区別しうるような会計処理を行っていたことをうかがわせる証拠はない。)他方、NPCは、ビデオ関連製品に関する輸出経費補填金(前記(二)(4))を仮受金として計上していた。
5  昭和六一年一二月期ないし昭和六三年一二月期における、NPCの売上高、経営指導料、VCR工具勘定、輸出取扱手数料の推移の状況は、下表のとおりである。

61年12月期 62年12月期 63年12月期
売上金額(乙二) 134,247,000,000 135,980,000,000 140,910,000,000
内訳 輸出 119,397,000,000 121,548,000,000 128,778,000,000
国内 14,850,000,000 14,432,000,000 12,132,000,000
経営指導料 1,322,175,000 1,362,922,000 1,386,790,000
VCR 工具勘定(甲三の3)
入金 「割増金」 191,767,990 377,973,864 753,049,277
「補償関連」 293,644,717 194,040,820 152,010,152
(小計) 485,412,707 572,014,684 905,059,429
出金 国内 34,364,917 85,705,190 300,508,872
海外 414,693,771 278,962,008 885,946,332
(小計) 449,058,688 364,667,198 1,186,455,204
輸出取扱手数料 492,983,544 980,495,054 929,823,053

二  検討
1  経営指導料の寄付金該当性(争点1)について
(一) 法人税法三七条は、どのような名義をもってするものであっても、法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合には、広告宣伝及び見本品の費用その他これに類する費用等とされているものを除いて、これを寄付金として扱い、その価額については、一定の損金算入限度額を超える部分を、その法人の所得の金額の計算上、損金に算入しないものとしている(同条二項、六項)。
右規定によれば、ある一定の役務の提供に対して金員が支払われることを内容とする契約が締結されている場合であっても、提供される役務の価値を超えて金員が支払われ、当該超える部分が、経済的な利益の贈与又は無償の供与と評価されれば、当該部分は、右条文の適用上、寄付金に該当するというべきこととなる。
ところで、提供される役務が市場性を有さず、客観的な価格が形成されていない場合、また、提供される役務が様々な内容を含むため個々具体的な役務の提供に係る対価を個別に観念し難い場合、役務提供者において当該役務を提供するのに必要な費用の額(以下「提供経費」という。)をもって、当該役務の価値を判断する基礎とすることは合理的な方法ということができるが、提供者における利益ないし報酬の部分も役務の対価として含まれてしかるべきことからすると、提供される役務の価値が、提供経費に尽きるものではないことは明らかである。特に、当該役務の提供が提供者の主たる活動になっている場合、提供した役務の価値が提供経費を大幅に上回る場合などにおいては、利益ないし報酬部分を加算しないことは不合理というべきである。そして、独立企業間で役務の提供に対する利益ないし報酬部分をどのように定めるかは、私的自治の原則により基本的には当該企業が契約により自由に定めるところにゆだねられているものというべきである。
したがって、提供される役務に対して支払われる対価の額が、役務提供者における提供経費を超えているからといって、当該超える部分が直ちに寄付金に該当すると速断することはできず、右超える部分が寄付金に該当するかどうかは、契約当事者である企業間の関係、当該役務提供契約において定められている役務の内容、対価の決定方法の合理性、実際の役務提供内容、提供される役務の被提供者における便益の大きさ、役務と右便益との関係の直接性、提供者において当該役務の提供がその業務に占めている地位等に照らして、役務の提供の対価が、独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離していて、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきものかどうかによって、これを判断すべきものと解される。
(二) そこで、本件における経営指導料について、寄付金該当性を検討するに、前記一で認定したところによれば、PKKとNPCは、ともにフィリップスグループ会社として、NVPGの経営方針に則って全世界的に展開される同グループの事業の一端を担う機能を果たしていたこと、PKKは同グループの現地法人として日本における事業の責任を負っていたが、独自の販売活動はほとんど行っていなかったこと、NPCはPKKの子会社であり、PKKは平成二年一二月期を除く本件各事業年度においてNPCの株式の四分の三を所有していたこと、PKKは、NPCに対して一定のフィリップス製品の独占的な輸入販売権を付与し、NPCがフィリップス製品の国内販売を行っていたこと、PKKは、フィリップスグループが日本国内の製造業者からOEM製品等を購買して調達する取引に関して、NPCが国内の製造業者からOEM製品等を購買してこれを海外のフィリップスグループ会社に輸出する形式の取引を行うようにフィリップスグルーブ内において主張することを通じ、NPCの取引先の確保につとめ、NPCの輸出取引に係る売上に直接の影響力を有していたこと、かくして、NPCは、日本国内における販売及び国外のフィリップスグループ会社に対する輸出の各事業に関して、その多くをPKKに依存し、PKKは、右各事業に関して経営上の助言、人的資源の提供、法務、市場調査、広報活動などの事務を負担していたことなどの事情が認められ、また、NPCが、NPCの株式の二五パーセントを所有していた松下電器産業との間で、昭和四七年から昭和五二年までの間、フィリップスからの輸入取引についてはFOB価格の一パーセント、フィリップス又はその指定する会社との輸出取引に関してはインボイス価格の〇.五パーセント相当額の金員を支払う旨の契約を締結していたことは、前記一3(一)(1)で認定したとおりである。
右のNPCとPKKとの間の役務提供契約に係る諸事実を勘案し、また、フィリップスグループ以外の会社との間における類似の契約と比較してみれば、NPCが、PKKとの間の役務提供契約に係る一九七三年覚書等に基づき、経営指導料を、NPCの年間予算計上の総輸出売上高及び輸入国内販売高の一パーセントに等しい金額と定めてPKKに支払っていたことは、前記(一)で述べた判断の諸要素に照らし、NPCの販売面におけるPKKへの依存の広範さにかんがみて、必ずしも企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきような不合理なものということはできないというべきである。
これに対し、NPCが支払っていた経営指導料の対価を、PKKが計上していたPKKの社長室、専務室、広報室、法務室、生産企画開発室、外人給与担当及び技術本部費用のうちNPCが按分負担すべき額に限定されるべきであり、その余の金額は寄付金と評価すべきであるとする被告の主張は、右の認定に照らせば、採用できない。
他に、本件の経営指導料の額が、独立企業間において行われる同種の契約に基づく対価の水準と著しく乖離していて、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作であるとすべき事情を認めるに足りる証拠はない。
(三) 以上によれば、本件各更正処分のうち、NPCが支出した経営指導料の一部を寄付金に当たるとした部分は、違法というべきである。
2  輸出取扱手数料の性質(争点2)について
原告は、OEM製品等の購買・輸出に係る取引におけるNPCの地位は、商法上の問屋であり、輸出取扱手数料は、売買の実質的当事者であるNVPG製品事業本部に帰属すべき売買差益であって、NPCとの関係では預り金にすぎないと主張する。そこでこの点について検討する。
(一) まず、NPCが売買の当事者となっていたという購買・輸出取引のうち、ビデオ関連製品等についてみれば、当該購買・輸出取引は、フィリップスグループが、NVPG製品事業本部の統括のもと、フィリップスグループ会社が販売するビデオ関連製品を日本から調達するという事業活動の一部を形成するものであって、組織化された一連の取引の一部に該当し、NPCは、フィリップスグループの一員として、右取引に関与し、自己の名前をもって売買当事者となるとともに、売買契約に必要な各種事務のうちの一部(インボイス発行、製品の保管及び船積み作業)を行っていたというのである(前記一1ないし4)。そうすると、右取引は、NVPG製品事業本部が統括し、製品内容と価格に関する決定権を有しているという意味において、NVPGが実質的当事者であると評価する余地がないではない。
しかしながら、NVPG製品事業本部は、右一連の取引を実現するために、法的な当事者として、NPC及び海外のフィリップスグループ会社を選択したものである。そして、NVPGがNPCとの間で、NPCが自己の名においてNVPG製品事業本部の計算で右一連の取引を行うものであること、その取引に係る売買差益をすべてNVPG製品事業本部に帰属させることを明確に定めた問屋契約等の合意が存在したことを認めるに足りる証拠はない。
NPCの経理やPKKとの関係についてみても、NPCがNVPGの委託に基づき問屋としての立場で右の購買・輸出取引を行ったものとすれば、NPCとしては、右取引に係る経理に関しては受託購買勘定・受託販売勘定を設けて、委託者との間に生ずる債権・債務関係の仕訳を行うこともできたし、少なくとも当該取引を他人の計算でしたことを第三者において明確に区別しうるような会計上の処理を行うべきであり、また、海外取引に係る収入金額を基礎として算定される中小企業等海外市場開拓準備金を計上する場合、その金額は右委託取引に係る売上を除いたNPCの本来の収入金額を基として算定すべきものである。さらに、右ような取引形態であるとすれば、NPCが右の購買・輸出取引に関してPKKから前記一3に認定したような多岐にわたる経営指導を受ける必要があるとは認めがたく、したがって、NPCがPKKに対して支払うべき経営指導料の額は、NPCが自己の計算において行う取引に係る売上金額を基に計算されるのが合理的であると考えられる。しかるに、①NPCは、その経理処理において、右取引に係る輸出額を自らの売上として計上しており、当該取引を他人の計算でしたことを第三者において明確に区別しうるような会計上の処理を行っていた形跡はないこと、②NPCは右の購買・輸出取引に係る輸出額を含む全体の売上金額に基づいて中小企業等海外市場開拓準備金の額を算定しこれを損金経理して積み立てていたこと、③NPCは、PKKに支払う経営指導料の額についても、右の購買・輸出取引に係る輸出額を含む全体の売上金額に基づいて計算していたことは、前記一4で認定したとおりである。
右に説示した各事情を勘案すれば、NVGP製品事業本部及びNPCは、NPCが、右一連の取引を、PKKの経営指導のもとで自己の計算においてなすものとして各種の行為を行っていたものと認めるのが相当である。
これに対し、原告は、輸出取扱手数料を売上原価として計上した理由について、製品の輸出先であるフィリップス販売会社が輸出価額全額を製品の売上原価として計上していたため、一般公正妥当な会計処理基準に従って、原告としても製品の輸出価格を売上として計上しなければならず、右輸出価格を売上として計上する以上、輸出手数料を売上原価として計上する必要があったかのように主張する。
しかしながら、仮にOEM製品等の購買、輸出がNVGP事業本部の計算でされたものであるとすれば、フィリップスグループ全体においてその趣旨を明確にして経理処理をする方法をとることも考えられ、むしろそのような経理処理が実態を適切に反映するのであるから、原告が主張するように輸出先の経理上の取扱いを所与の前提として考えなければならない必然性は認めがたく、また、仮に、輸出先のフィリップス販売会社の経理との整合性を保つため輸出額を便宜的に売上に計上するとしても、当該取引を他人の計算でしたことを第三者において明確に区別しうるような会計上の処理を行うべきが筋であることは前示のとおりである。
そうすると、ビデオ関連製品等に係る輸出取扱手数料の額は、売上との対価性が認められない限り、損金の額に算入することができないというべきである。
(二) そこで、対価性の有無について検討するに、NPCはNVPG製品事業本部から、仕入価格、輸出価格、購買取扱手数料及びツーリングの額を指示され、右ツーリングの額を「VCR工具投資引当金勘定」という勘定項目において「割増金」として表示して管理しており(前記一4(一)(4))、右割増金の額が、原告が主張する「輸出取扱手数料」の一部を構成するものと考えられる。このような独立の勘定項目における取扱いは、一連の取引の過程で生じる日本国内の費用の支出の便宜等を考えてなされたものであることをうかがわせるものではあるが、右勘定項目から支出されている国内における出金の項目(品質管理費用、製品保管の利息及び倉庫費、サンプル費用、試作品作成費用、人件費等)がそれぞれ具体的にいかなる内容を示すのかについては、これを明らかにするに足りる証拠はない。
したがって、右の額についても、売上との対価性を有すると判断することはできず、他に、右輸出取扱手数料の額に売上に対する対価性を有する費用が含まれていることを認めるに足りる証拠はない。
(三)(1) これに対して、原告は、NPCは、製品の購買・輸出において、NVPG製品事業本部の購買代理人にすぎなかったと主張する。
しかしながら、NVPG製品事業本部自体は法人格のないものであって、法的には、NVPG製品事業本部を構成するいかなる法人の購買代理人であるのか不明確であるばかりか、経済的にみても、ビデオ関連製品に係る取引は、前記(一)のとおり、フィリップスグループ全体としての事業活動を遂行するために一連の契約に組織的に分割され、グループ各社により分担して履行されていたものであり、グループの一員であるNPCは、単なる購買代理人としての役割にのみ限定されていたとも断じがたいといわざるを得ない。
よって、原告の右主張は採用できない。
(2) また、原告は、輸出取扱手数料と輸出経費補填金とは、支払元がフィリップス販売会社か国内の製造業者か、NPCの経理処理において売上原価として計上したか仮受金として計上したかの違いがあるにすぎず、その他の面では性質において同じであると主張する。
しかしながら、日本の製造業者から得た輸出経費補填金をNPCが仮受金として処理していたことは、輸出取扱手数料と輸出経費補填金との差異を自認していたものというべきであるし、また、ビデオ関連製品の取引がフィリップスグループ全体としての事業活動として行われ、NVPG製品事業本部の統括のもとに行われていたことからすれば、契約の締結と履行に関する計算と、契約締結後の事情変更に基づく輸出経費補填金に関する計算とを区別し、グループ内の取引主体を、前者についてはNPC、後者についてはフィリップスグループ会社とすることも不合理なものとまではいえず、NPCにおける右のような会計処理はこのような考え方に立つものと理解するのが相当である。
よって、原告の右主張は採用できない。
(四) その他の製品について
原告は、ビデオ関連製品等以外の購買・輸出取引においても、輸出取扱手数料を預り金として保管していたものであると主張し、証人P3の供述部分にはこれに沿う部分がある。
しかしながら、右の取引に関しては、原告が主張する「NVPG勘定」(ビデオ関連製品等において用いられた「VCR工具投資引当金勘定」に類似する特別な勘定)の内容すら明らかではなく、原告の主張を裏付けるに足りる確たる証拠はない。
よって、原告の主張を採用することはできない。
(五) 原告は、輸出取扱手数料を寄付金と認定して課税所得に含ませ、これに課税したことは、国際的な経済的二重課税を排除することを規定した租税条約の趣旨に反すると主張する。
(1) まず、原告は、輸出取扱手数料相当額は、フィリップスグループ会社において収入として計上され、各国の税務当局より課税されていたと主張し、「法人税の審査請求に係る理由」と題する書面(乙一四)にはこれに沿う部分がある。
しかしながら、輸出取扱手数料相当額が、いかなる国のいかなる法人にいつ送金されたかについて、また、送金を受けた法人がいかなる額を益金として計上していかなる課税を受けたかについて、これを具体的に明らかにする証拠はない。かえって、甲三の3によれば、「VCR工具投資引当金勘定」において「割増金」の名目で入金されたツーリングの額のすべてが海外送金されたものではないことがうかがわれる。
よって、原告の主張は、その前提において採用することができない。
(2) また、原告は、輸出取扱手数料相当額は、外国の関連法人収入に計上してその所得として課税されているのであって、被告がこれを寄付金と認定して原告に対する課税を行うことは、国際的な経済的二重課税であって、日本が諸外国と締結している租税条約において排除されているから、租税条約の趣旨に反すると主張する。
そこで、右の点を、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約(昭和四五年一〇月二三日条約第二一号。以下「本件租税条約」という。)についてみるに、本件租税条約は、一方の国の企業の利得に対しては、その企業が他方の国にある恒久的施設を通じて当該国において事業を行わない限り、当該一方の国においてのみ租税を課することができ、一方の国の企業が他方の国にある恒久的施設を通じて当該他方の国において事業を行う場合には、その企業の利得に対し、当該恒久的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の国において租税を課することができると規定しており(八条)、外国の法人が我が国で事業活動を行い得た事業所得に対して、まず属地主義により国内源泉所得として我が国の源泉所得課税がなされ、一方、属人主義に基づき外国の法人税課税がなされることとなる場合のように、一個の法人に帰属する同一の所得に対し、居住地と所得の源泉地国との両方において二重に課税されることを排除している。また、本件租税条約は、一方の国の企業が他方の国の企業の経営、支配、若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合等であって、双方の企業の間に、その商業上又は資金上の関係において独立の企業間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されるときは、その条件がなかったならば一方の企業の利得となったはずである利得で、その条件のために当該一方の利得とならなかったものは、その企業の利得に算入して課税することができると規定しており(一〇条)、関連企業間の国際取引において正常対価とは異なる対価で取引が行われた場合には独立当事者間の価格で取引が行われたものとして課税することを認めている(いわゆる移転価格税制)。
しかしながら、本件租税条約には、原告が主張するような類型の二重課税、すなわち、フィリップスグループ傘下のNPCが支出した輸出取扱手数料が寄付金に当たるとして、寄付金算入限度額を超える部分が課税の対象とされ、同時にその金額を受領したNVPG製品事業部ないしその指定する会社がこれを収入として計上することによりオランダで課税される事態については、何ら規定を置いていないのであって、わずかに、両国の権限ある当局は、この条約に規定されていない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができると定めている(二六条三項)にすぎず、本件課税が本件租税条約の趣旨に反するとするに足りる根拠はない。
そして、二個の法人の一方の他方に対する支出が寄付金と認定された場合、その一定基準を超える部分の損金算入が否認され、益金に加算されること、同時に、その支払を受けた相手方法人が受贈益として受領額に対し法人税を課されることは、我が国の課税制度のもとでは当然のことといわざるを得ない。したがって、原告の主張は採用できない。
3  事業税の損金算入方法について(争点3)
(一) 法人の行う事業に対する事業税は、各事業年度の所得によるものとされ(地方税法(平成二年法律第一四号による改正前のもの。以下「法」という。)七二条の一二)、各事業年度の所得は、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額によるものとし、原則として、当該各事業年度の法人税の課税標準である所得の計算の例によるものとされている(法七二条の一四第一項本文)。
もっとも、右の例外として、租税特別措置法五四条の定める中小企業等海外市場開拓準備金は損金の額に算入されないものとされ(法七二条の一四第一項ただし書)、また、当該各事業年度開始の日前五年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額につき法人税法八一条の規定による法人税額の還付を受けているときは、当該法人の当該各事業年度の所得の計算上損金の額に算入すべき金額は、欠損金額の生じた事業年度以後の事業年度の所得の計算上、損金の額に算入されなかった欠損金額に相当する金額とするものとされている(同法施行令二一条)。
(二) 法人が納付する事業税は、法人税法二二条三項二号の規定により損金の額に算入される。同号の費用のうち、当該事業年度終了の日までに債務が確定しないものは、損金の額に算入すべき金額から除かれるところ、法人が納付すべき事業税は、申告納税方式による租税であるから、申告分の税額についてはその申告があった時に、更正又は決定分の税額については更正又は決定のあった時にそれぞれ損金に算入すべきこととなる(法人税基本通達九‐五‐一)。
しかしながら、当該事業年度の直前の事業年度分の事業税の額については、例外として、当該事業年度の終了の日までに事業税につき申告、更正又は決定がなされていない場合であっても、これを翌事業年度の損金の額に算入することができることとされ、その場合は、当該事業年度の法人税について更正又は決定をするときは、当該損金の額に算入する事業税の額は、直前年度の所得に標準税率を乗じて計算するものとし、その後、当該事業税につき申告等があったことによりその損金の額に算入した事業税の額につき過不足が生じたときは、その過不足額は、当該申告等又は納付のあった日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入することとされる(法人税基本通達九‐五‐二)。
右規定が置かれた趣旨は、事業税は、原則として法人税の所得金額を課税標準とするものであり、法人税の更正によってその課税が修正されるという関係にあるところ、法人税の更正があった場合、特に二期以上の連年更正が行われたときに、申告等による事業税の債務の確定を待って損金に算入するという原則に従うと、担税力に不都合が生じるので、事業税の損金算入時期の特例を定めたものと解される。そして、右特例を適用するに際して、事業税の税率については、税務署の執行上の便宜を考慮して、標準税率を用いて事業税の損金算入額を計算することを許容し、その後、事業税につき申告等を行い事業税の損金算入額について過不足が生じたときは、その時点で益金又は損金に算入することとしたものである。
(三) ところで、原告は、法人税基本通達九‐五‐二は、事業税の損金算入時期の特例及び適用される税率を標準税率とする旨を定めたにすぎず、事業税算定の基礎となる所得の額については、あくまで地方税法の規定に則った計算がされるべきであると主張する。
しかしながら、前記2のとおり、同通達は、法人税の更正において損金の額に算入する事業税の額と、その後の事業税の申告等に当たって計算される事業税の額とに過不足が生じることを予定している。そうすると、同通達は、地方税法が損金の算入について法人税とは扱いを異にしている個別の規定を有している場合、地方税に基づいた計算を行わないことを許容しない趣旨とまではいえないと解されるから、更正における事業税の額の計算において、単に直前の法人税の所得金額に標準税率を乗じたとしても、これを違法ということはできないというべきである。
よって、原告の主張は採用できない。
三  本件各更正処分等の適法性について
1  所得金額
(一) 本件各事業年度の所得金額については、前記第二の二(本件各更正処分の適法性に関する被告の主張)の争いのない項目について加算、減算を行い(ただし、後記(1)ないし(4)のとおり修正して計算する。)、また、前示のとおり、経営指導料についてはその全額を対価性のあるものと認め、輸出取扱手数料については寄付金と認定して、寄付金の損金不算入額を別紙計算表1のとおり計算して加算すると、別紙計算表2の13欄のとおりの額となり、これに対する税額は、それぞれ同14欄のとおり算出される。
(1) 昭和六一年一二月期
被告の主張によれば、前記第二の二1(四)のとおり、繰越欠損金の当期控除額は八億八九七二万三六二三円となっているが、当判所の認定において右繰越欠損金の当期控除前の所得金額が減少する結果、右当期控除額は、前期以前の繰越欠損金八億八九七二万三六二三円のうち、四億八九八一万五二五八円とすべきこととなる。
(2) 昭和六二年一二月期
ア 被告の主張によれば、前記第二の二2のとおり、事業税認定損が計上されているが、昭和六一年一二月期の所得金額は零となるので、減算すべき事業税認定損はないことになる。
イ 被告の主張によれば、昭和六二年一二月期について、繰越欠損金の当期控除額は計上されていないが、前記(1)のとおり昭和六一年一二月期の繰越欠損金の当期控除額が減額となったこと及び昭和六二年一二月期の繰越欠損金控除前の所得金額との関係で、前記以前の繰越欠損金三億九九九〇万八三六五円のうち、繰越欠損金の当期控除額二億五〇四五万八〇〇〇円を計上すべきことになる。
(3) 昭和六三年一二月期
ア 被告の主張によれば、昭和六三年一二月期については、繰越欠損金の当期控除額は計上されていないが、前記(1)及び(2)イに関連して前記以前の繰越欠損金一億四九四五万〇三六五円を当期控除額として計上すべきことになる。そこで、繰越欠損金の当期控除戻入額の加算はこれを維持することとし、別に、正しく計算された右の繰越欠損金一億四九四五万〇三六五円を減算する。
イ 事業税認定損
被告の主張によれば、前記第二の二3のとおり、事業税認定損が計上されているが、当裁判所の認定によれば、前期の所得金額が零となるので、減算すべき事業税認定損はないことになる。
(4) 平成二年一二月期
ア 被告の主張によれば、確定申告により控除された前記以前の繰越欠損金は消滅したとされているが、当裁判所の認定では平成元年一二月期において翌期に繰越す欠損金額三一六四万四一六六円が発生するから、平成二年一二月期においてこれを繰越欠損金の当期控除額として計上すべきことになる。そこで、繰越欠損金の当期控除戻入額の加算はこれを維持することとし、別に、正しく計算された前期以前の繰越欠損金三一六四万四一六六円を減算する。
イ 被告の主張によれば、前記第二の二5のとおり、事業税認定損が計上されているが、当裁判所の認定によれば、前期の所得金額が零となるので、減算すべき事業税認定損はないことになる。
(二) 右(一)を前提に、被告主張の仮装隠ぺい部分以外の金額を一部修正して計算すると、右所得金額のうち、仮装隠ぺい部分以外に係るものは別紙計算表2の18欄(ただし、通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの)のとおりである。
2  以上によれば、本件各事業年度における納付すべき税額及び過少申告加算税額は、次のようになる(別紙計算表2)。
(一) 納付すべき税額
前示1のとおり、本件各事業年度のうち、課税所得金額が発生するのは、昭和六三年一二月期及び平成二年一二月期であり、これらについては、課税所得金額に税率を適用して計算した税額から、各時事業年度に係る控除所得税額を差し引いた額(別紙計算表2の16欄。ただし、通則法一一九条一項の規定により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの)が、本件事業年度における納付すべき税額である。
なお、平成二年一二月期における納付すべき税額欄(別紙計算表2の16欄)記載の額には、還付所得税額等に係る額を含まない。
(二) 過少申告加算税額
前示1のとおり、所得金額に対する税額のうち仮装隠ぺい部分以外に係るもの、すなわち別紙計算表2の18欄記載の額(ただし、通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの)が、過少申告加算税の基礎となる金額であり、これに通則法六五条一項、二項、三項二号を適用すると、過少申告加算税額は同20欄のとおり算出される。
3  したがって、本件各処分のうち、昭和六一年一二月期、昭和六二年一二月期及び平成元年一二月期に係る各更正処分及び賦課決定処分はそれぞれ納付すべき税額の認定が過大であって違法であり、また、昭和六三年一二月期に係る更正処分については、納付すべき税額が別紙計算表2の16欄の額を超える部分において、同期に係る賦課決定処分については加算税の額が同20の欄の額を超える部分において、それぞれ納付すべき税額の認定が過大であって違法であるが、その余の部分は適法というべきである。
四  結論
よって、原告の本件請求は、本件各処分のうち、昭和六一年一二月期、昭和六二年一二月期及び平成元年一二月期に係る各更正処分及び賦課決定処分については、その全部、昭和六三年一二月期に係る更正処分については、納付すべき税額が別紙計算表2の16欄の額を超える部分、同期に係る賦課決定処分については、加算税の額が同20の欄の額を超える部分の取消しを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六四条本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 青柳馨 裁判官 谷口豊 裁判官 加藤聡)
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