【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(146)平成17年11月16日 大阪地裁 平15(ワ)5383号 損害賠償請求事件 〔NTT西日本事件・第一審〕

「営業支援」に関する裁判例(146)平成17年11月16日 大阪地裁 平15(ワ)5383号 損害賠償請求事件 〔NTT西日本事件・第一審〕

裁判年月日  平成17年11月16日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)5383号・平15(ワ)12919号
事件名  損害賠償請求事件 〔NTT西日本事件・第一審〕
裁判結果  棄却  上訴等  控訴  文献番号  2005WLJPCA11166002

要旨
◆一 従業員に対する業績評価が夏期及び年末特別手当の額に反映されている会社において、D評価を受けた同社従業員らによる、D評価と査定して特別手当の一部を支給しなかったことが不法行為に当たるとする主張につき、評価結果の説明や紛争処理制度などが完備されていなかったからといって、同評価制度による査定は直ちに違法にはならないとされた事例。
二 一掲記の従業員らに対する会社の人事評価が、定められた評価制度に基づいていないなど社会通念に照らして著しく不合理である場合には、人事権を濫用するものとして不法行為となると解されるが、同人らは、受注額が他の従業員と比較して低いなど成績が低かったことなどからD評価と査定されたと認められるとして、同人らへの評価が社会通念に照らして著しく不合理であるとはいえず不法行為には該当しないとされた事例。〔*〕

出典
労判 910号55頁
労経速 1928号11頁

裁判年月日  平成17年11月16日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)5383号・平15(ワ)12919号
事件名  損害賠償請求事件 〔NTT西日本事件・第一審〕
裁判結果  棄却  上訴等  控訴  文献番号  2005WLJPCA11166002

甲・乙事件原告 X1
甲事件原告 X2
甲事件原告 X3
甲・乙事件原告 X4
甲事件原告 X5
甲・乙事件原告 X6
乙事件原告 X7
乙事件原告 X8
乙事件原告 X9
乙事件原告 X10
乙事件原告 X11
乙事件原告 X12
原告ら訴訟代理人弁護士 井上二郎
同 在間秀和
同 大川一夫
同 丹羽雅雄
同 中島光孝
同 鈴木一郎
同 菱垣理英
被告 西日本電信電話株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 高坂敬三
同 夏住要一郎
同 田辺陽一
同 加賀美有人

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は,原告らの負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  原告らの求めた裁判
1  被告は,甲事件原告ら各自に対し,127万2548円及びこれに対する平成14年12月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告X8に対し,127万3276円及びこれに対する平成15年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告は,乙事件原告ら(ただし,原告X8を除く。)各自に対し,125万5504円及びこれに対する平成15年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  訴訟費用は,被告の負担とする。
5  第1項から第3項までについて仮執行宣言
第2  事案の概要
1  争いのない事実等(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  当事者
ア 被告
(ア) 被告は,持株会社である日本電信電話株式会社の下,いわゆるNTTグループに属する株式会社であり,地域電気通信事業を経営することを目的とする株式会社である。
(イ) 昭和60年4月1日,三公社の一つであった日本電信電話公社(以下「電電公社」という。)が民営化され,日本電信電話株式会社(以下「旧NTT」という。)が誕生し,日本電信電話株式会社等に関する法律(以下「日本電信電話株式会社法」という。)に従い,国内の電気通信事業を行ってきた。
その後,日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律(平成9年法律第98号)により,平成11年7月1日をもって,旧NTTは持株会社となり(以下「NTT」という。),事業会社として,東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(被告)を設立して,各社に営業を譲渡し,東日本地域における県内電気通信事業をNTT東日本が,西日本地域における県内電気通信事業を被告が,それぞれ行うこととなった。また,NTTコミュニケーションズ株式会社が設立され,同社が,県間電気通信事業を行うこととなった。
(ウ) 被告内には,NTT労働組合(以下「NTT労組」という。),通信産業労働組合,大阪電気通信産業労働組合(以下「大阪電通合同労組」という。),四国電気通信産業労働組合(以下「四国電通合同労組」といい,大阪電通合同労組と併せて,「電通合同労組」という。)等の労働組合が組織されている。
イ 原告ら
(ア) 原告らは,いずれも被告に雇用されている従業員であり,その職歴は,以下のとおりである。
a 原告X1は,昭和45年4月1日,電電公社に入社し,大阪中央電報局印刷通信部第一印刷通信課に配属され,電報入力の業務に携わってきた。電電公社の民営化の後も,同業務を継続し,平成10年7月1日からは,関西電報サービスセンタ販売部で販売促進担当として,電報関係のチラシ作り,DM発送,ポスティング,統計資料作成等の業務に携わってきた。
b 原告X2は,昭和44年4月1日,電電公社に入社し,大阪中央電報局電話託送課に配属され,電報受付・入力の業務に携わってきた。電電公社の民営化の後も,同業務を継続し,平成10年7月1日からは,原告X1と同じく,関西電報サービスセンタ販売部で販売促進担当として,同様の業務に携わってきた。
c 原告X3は,昭和38年4月1日,電電公社に入社し,天下茶屋電報電話局に配属され,19年間電話自動交換機の保守の業務に就き,その後,松原・日本橋・長居・阿倍野・新町・大正の各電報電話局に転勤した。同原告の担当業務は,電話交換機の保守・サービスオーダ工事であり,電電公社の民営化の後も,同業務を継続した。
d 原告X4は,昭和43年4月1日,電電公社に入社し,大阪中央電報局業務訓練課への仮配属の後,同局印刷通信課に配属された。その後,昭和50年にデータ通信局に転勤し,翌年大阪中央電報局印刷通信課に再び戻ったが,昭和62年以降は同局委託交付担当に配属されている。
e 原告X5は,昭和41年4月1日,電電公社に入社し,大阪中央電報局印刷通信部に配属された。その後,電電公社の民営化の後も,電報の受付・FAX電報の入力等の業務に従事してきた。平成10年7月1日からは,原告X1と同じく,関西電報サービスセンタ販売促進担当として,同原告と同様の業務に携わってきた。
f 原告X6は,昭和43年4月1日,電電公社に入社し,大阪中央電報局加入電信部に配属され,テレックスによる電報受付・入力の業務に携わってきた。その後,平成10年7月1日からは,原告X1と同じく,関西電報サービスセンタ販売部で販売促進担当として,同原告と同様の業務に携わってきた。
g 原告X7は,昭和41年4月1日,電電公社に入社し,岸和田貝塚電報電話局試験課に配属され,故障受付業務に従事してきたが,平成元年11月,南大阪支店設備部交換運営担当に配属となり,主に所内設備保守に携わってきた。平成9年8月,関西支社グループ事業推進部(TE関西)に出向配属され,専用回線サービスオーダの設計及び背(ママ)信業務に携わり,平成12年3月,社名変更後もNTTME関西の専用サービス部大阪南専用サービス担当となり,専用回線の開通及び保守業務に従事してきた。
h 原告X8は,昭和48年4月1日,電電公社に入社し,福岡県田主丸電報電話局業務課に配属され,福岡県下で,主に電話料金・加入事務を担当してきた。平成10年4月,大分支店に配転され,平成14年3月31日まで大分支店企画部企画担当で販売企画の業務を行ってきた。
i 原告X9は,昭和42年4月1日,電電公社に入社し,尾崎電報電話局配達係に配属された。数年後,堺電報電話局線路宅内課の工事係に配転され,以来電話工事関係に携わり,昭和60年4月,同公社が民営化された時,線路設備の設計部門に配属されたものの,一年で設備管理担当に変わり,その後,所外設備管理・線番選定等を担当してきた。
j 原告X10は,昭和41年10月に,電電公社に入社し,阿南電報電話局,電話運用課に配属されて,通話の接続と電話番号案内業務に従事してきた。昭和63年7月に,阿南局の業務が徳島局に集約され,徳島電報電話局情報案内課第一オペレータサービスに配転されたが,31年間余りを主に通話の接続と番号案内業務に携わってきた。その後,徳島支店パーソナルユーザ営業部116サポート担当に在籍し,116(電話受付)で受け付けた商品の申込書,使用説明書,DM等の送付の仕事をしてきた。
k 原告X11は,昭和38年4月1日,電電公社に入社し,阿南電報電話局運用課に配属され,手動通話(番号案内・100番通話等)の接続回数・配置要員の調査をする統計業務に携わってきた。昭和40年11月,徳島電報電話局運用部監査課に配転され,昭和62年2月同局営業部に配属されるまでの24年間の業務内容は変わらなかった。営業部では,主としてネットワーク商品(キャッチホン,プッシュ回線,転送電話,フリーダイヤル等)の販売業務を担当し,その後,平成11年1月に徳島支店営業部公衆電話営業担当に配属され,公衆電話の新設・廃止・故障の受付等の業務に携わってきた。
l 原告X12は,昭和45年4月1日,電電公社に入社し,約1年間訓練課に仮配属された後,印刷通信部検査課に正式配属となった。昭和60年4月1日,公社民営化時も同課に所属し,昭和62年からは電報受付・投入作業等に従事してきた。平成10年7月1日から販売促進担当となり,電報関連のチラシ作成,DM発送等の作業に従事し,それ以降も電報業務のみに従事してきた。
(イ) 原告らの所属労働組合
a 原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X5,原告X6,原告X7,原告X9及び原告X12は,いずれも大阪電通合同労組の組合員である。
b 原告X10及び原告X11は,いずれも四国電通合同労組の組合員である。
c 原告X8は,NTT労組の組合員であった。
(2)  被告の合理化計画について
ア 計画の概要
NTTは,平成13年4月,「雇用形態の多様化」と題する計画を発表したが,その概要は,NTT東日本及び被告の電話関連業務を,新設した地域子会社に移管(アウトソーシング)し(以下,地域子会社を「OS会社」という。),これに伴い,電話関連業務に従事していた従業員合計約11万人をOS会社に在籍出向若しくは転籍させるというものであった。そして,在籍出向の対象としては年齢が50歳以下の従業員,転籍の対象としては年齢が51歳以上の従業員が想定されていた。
イ 意向調査
被告は,上記計画に沿って,従業員に対し,以下の3つの類型の中から1つを選択するよう提案し,平成13年12月25日から「意向確認調書」を配布し,平成14年1月27日までに「意向確認調書」を,同月31日までに「雇用形態選択通知書」を提出するよう求めた。
(ア) 満了型
60歳まで被告で雇用されるものの,全国への広域配転等の不利益を甘受するという雇用形態。
(イ) 繰延型
50歳の時点で被告を退職した上,OS会社に再雇用されるという雇用形態。ただし,賃金水準は,被告におけるものの(ママ)比べて,20パーセントから30パーセント低下するが,OS会社における退職金等で若干の補填がされる。
(ウ) 一時金型
50歳の時点で被告を退職した上,OS会社に再雇用されるという雇用形態。ただし,被告退職時に,将来減額となる賃金の総額の半額程度の一時金が支給される。
ウ 意向を表明しない従業員に対する取扱方針
被告は,平成14年1月9日,電通合同労組に対し,「構造改革関連課題に対する会社見解」と題する書面(〈証拠略〉)を交付し,「意向確認期限においてもなお,いずれの雇用形態を選択されない方等については,『雇用形態・処遇体系の多様化に伴う意向確認等について』(2001年12月7日)にて明らかにしたとおり,『満了型』を選択したものとみなします」との見解を示した。
エ 原告らの意向表明
原告X8は,満了型を選択の上,「雇用形態選択通知書」を提出したが,その余の原告らは,「意向確認調書」と「雇用形態選択通知書」を提出しなかったので,被告は,その余の原告らを満了型を選択したものとみなした。
オ 在籍出向及び転籍
以上の合理化計画に基づく新体制は,平成14年5月1日をもって実施されることとなり,被告は,繰延型又は一時金型を選択した51歳以上の従業員に対して,平成14年2月に辞職承認通知書を交付し,同年4月30日をもって退職することを承認したと通知した。
そして,一旦退職した上記従業員はOS会社に再雇用されるとともに,多くの50歳以下の被告従業員がOS会社に在籍出向し,その結果,平成13年度末時点で5万0450人であった被告の従業員数は,平成14年5月1日時点(合理化計画に基づく新体制移行時)で1万5600人となった。
新体制移行後の被告における最大の労働組合は,NTT労組であって,その平成15年3月末の時点での組合員数は約1万2500人であり,組合員となりうる者の約96.5パーセントを組織している。原告らの多くが所属している大阪電通合同労組の組合員数は,50名弱である(〈人証略〉)。
(3)  原告らの配転
ア 被告は,平成14年5月1日付けで,原告X8を除くその余の原告らを以下の部署に配属した。
(ア) 原告X1及び原告X12を,大阪支店ソリューション営業本部・大阪北ソリューション営業部第13営業担当(茨木ビル)に配属した。
(イ) 原告X2及び原告X5を,大阪支店ソリューション営業本部・大阪北ソリューション営業部第11営業担当(淀川ビル)に配属した。
(ウ) 原告X3を,大阪支店ソリューション営業本部・SE部第2SE担当(土佐堀ビル)に配属した。
(エ) 原告X4及び原告X6を,それぞれ大阪支店ソリューション営業本部・大阪中央ソリューション営業部第11営業担当(堀川ビル)に配属した。
(オ) 原告X7及び原告X9を,それぞれ大阪支店ソリューション営業本部・大阪南ソリューション営業部第9営業担当(堺ビル)に配属した。
(カ) 原告X10及び原告X11を,それぞれ愛媛支店ソリューション営業本部・営業担当(本棟ビル)に配属した。
イ 被告は,原告X8を,平成14年5月1日,大阪支店企画担当に任命し,同月13日,大阪支店ソリューション営業本部・大阪南ソリューション営業部第9営業担当(堺ビル)に配属した。原告X8は,現在,熊本支店大分支店第1営業担当の業務に従事している。
ウ 原告らは,配転後,それぞれソリューション営業に従事している。
被告におけるソリューション営業とは,ユーザに対するシステム提案,システム導入に引き継ぐ保守提案,プライベートネットワークの提案及びトラヒック確保といった営業を意味する(〈証拠略〉)。
(4)  本件評価制度の導入
被告は,平成13年4月1日,従来の職能資格制度を改め,社員資格制度を導入することにより,新しい職員評価制度(以下「本件評価制度」という。)を実施することとなった。同制度における評価には,業績評価と総合評価(行動評価と業績評価を3:7の割合で決定したもの)が存するが,夏期特別手当,年末特別手当は業績評価が反映し,昇格や月例給は総合評価が反映することとされている(〈証拠略〉)。
従業員に対して支給されている特別手当は,支給原資の4分の3は定率部分であるが,その余は評価反映部分であり,評価反映部分の額については,当該従業員の資格等級(エキスパート資格1~3級,一般資格1~5級)及び社員資格基準に基づく従業員の業績に着目した評価結果の評価段階(A~D)に応じて定められた「資格等級別・評価段階別反映額表」の額とされ,評価は,従業員の業績に着目して行った評価(業績反映)結果により反映を行う,とされている(〈証拠略〉)。
A評価からC評価までの者に対しては,評価反映部分について,各資格等級に応じて定められた金額が支給されるが,D評価の者に対しては支給されない。
そして,業績評価基準の項目としては,以下の3つが挙げられている(〈証拠略〉)。
ア 量的側面
会社業績の向上に向けた,迅速性,効率性,販売量,作業量等の観点からみた貢献度
イ 質的側面
会社業績の向上に向けた,品質,正確性,信頼性,効果等の観点からみた貢献度
ウ 価値創造の側面
更なる会社業績の向上に向けた,市場優位性,競争力向上等の観点からみた貢献度
(5)  原告らに対する特別手当の支給
ア 被告においては,年に2回,従業員に対して特別手当が支給されており,その支給日は,原則として,夏期特別手当が毎年6月25日,年末特別手当が毎年12月10日である。そして,特別手当の評価対象期間は,夏期特別手当については,前年の10月から当年の3月までであり,年末特別手当については,当年の4月から9月までである。
イ 平成13年度年末特別手当及び平成14年度夏期特別手当
被告は,平成13年度年末特別手当及び平成14年度夏期特別手当については,原告らをいずれもC評価と査定し,これに基づく手当を支給した。
ウ 平成14年度年末特別手当
被告は,平成14年度年末特別手当については,原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X5及び原告X6をD評価であると査定し,その結果,前記原告らには,特別手当のうち評価反映部分の手当が支給されなかった。
D評価と査定された前記原告らは,一般資格1級に属するところ,平成14年度年末特別手当についての資格等級別・評価段階別反映額表によると,一般資格1級の者については,A評価と査定された者は34万5096円,B評価と査定された者は25万8822円,C評価と査定された者は17万2548円が支給され,D評価と査定された者には支給されないこととされていた(〈証拠略〉)。
エ 平成15年度夏期特別手当
被告は,平成15年度夏期特別手当については,原告X1,原告X7,原告X8,原告X9,原告X10,原告X11,原告X4,原告X6及び原告X12をいずれもD評価であると査定し,その結果,前記原告らには,特別手当のうち評価反映部分の手当が支給されなかった。
D評価と査定された前記原告らのうち,原告X8は,エキスパート資格3級に属し,その余の者は,一般資格1級に属するところ,平成15年度夏期特別手当についての資格等級別・評価段階別反映額表によると,エキスパート資格3級の者については,A評価と査定された者は34万6552円,B評価と査定された者は25万9914円,C評価と査定された者は17万3276円が支給され,一般資格1級の者については、A評価と査定された者は31万1008円,B評価と査定された者は23万3256円,C評価と査定された者は15万5504円が支給され,いずれもD評価と査定された者には支給されないこととされていた(〈証拠略〉)。
2  原告らの請求
原告らは,平成14年度年末特別手当及び平成15年度夏期特別手当について,いずれも普通以上に仕事をしてきたのであるから,C評価と査定されるべきであり,被告が原告らをD評価と査定して特別手当の一部を支給しなかったことが不法行為に当たると主張して,それぞれ,〈1〉C評価とD評価の特別手当の差額相当額,〈2〉D評価という査定が人格権侵害に当たるとして,100万円の慰謝料,〈3〉10万円の弁護士費用,〈4〉これらに対する各手当の支給日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を請求している。
第3  当事者の主張
【原告らの主張】
1  本件評価制度の問題点
(1) 本件評価制度は,被告が,時代の潮流という理由だけで,人件費を抑制するために,成果主義賃金体系を導入したものである。しかし,成果主義型賃金について,従業員が賃金を動機付けにして仕事をするという科学的根拠はないとされており,失敗例も多いのであって,本件評価制度が必要であるということはできない。
(2) 人事考課に当たっては,使用者は,〈1〉公正・透明な評価制度を整備・開示し,〈2〉それに基づいて適正な評価を行い,〈3〉評価結果を開示・説明するとともに,〈4〉紛争処理制度・労働者の職務選択制度・能力開発制度を整備する必要がある,とされている。
しかし,以下のとおり,本件評価制度は,これらの要件を満たしていない。
ア 〈1〉について
本件評価制度においては,被告が従業員の評価を行うこととなるが,各評価が公平であるためには,基準が明確であり,評価者の評価が制度趣旨に則ったものでなければならない。
しかし,本件評価制度の基準は不明確であり,具体性を欠くものであって,極めて不公平であるといわざるを得ない。また,原告らはD評価を受けているが,どのような場合にD評価を受けるのかという評価基準は,原告ら労働者には事前に開示されていない。
イ 〈2〉について
前記アのとおり,制度自体が整備されていないので,適正な評価自体があったとはいえない。
また,評価の実際の運用に当たっては,次のような問題がある。
本件において,被告は,原告らを,量的側面として売上高の大小によって評価している。しかしながら,原告らは,本件評価制度が導入されるまで,全く営業経験がなかったのであって,営業経験のある者と単純に比較することは不公平である。また,売上高については,担当する顧客によって大きく異なるが,原告らが担当した顧客は,零細企業や中小企業が多かったものであり,このような実態を無視することは不公平である。
ウ 〈3〉,〈4〉について
評価結果の開示はあっても説明はなく,また,紛争処理制度もなかった。
被告においては,評価結果に納得しない者に対して,相談窓口を設けているものの,相談によって評価を変えることはほとんど想定しておらず,紛争処理制度としての機能を果たしていない。
(3) 本件評価制度は,以上のようなものであって,恣意的な運用を許す構造になっているといわざるを得ない。
原告らは,被告の意図に従わずに,いずれも満了型を選択したか,満了型とみなされた者であり,被告が原告らをD評価と査定したことの本質は,被告の意図に従わない者に対する報復的な点にある。
2  原告らに対する評価の違法性
(1) 被告は,労働組合との団体交渉の場において,D評価は制度上存在するにすぎず,普通に働いていればC評価であることを明言していた。原告らは,いずれも普通以上に働いていたのであるから,少なくともC評価に該当する。
(2) 被告が,原告らをD評価としたのは,原告らの売上げが少なく,量的側面において劣るという点にある。
しかし,前記1(2)イのとおり,被告による量的側面についての評価は,同一条件のもとで比較されておらず,不合理である。
また,質的側面や価値創造の側面については,その定義自体曖昧でわかりにくいものといわざるを得ず,質的側面は,量的側面についての評価に影響されると推測され,量的側面についての評価を質的側面で挽回することは極めて困難である。
(3) なお,原告X8については,エキスパート3級という営業の専門家であったが,同原告の売上げが少ないことは,担当した顧客のリストが悪い(受注が期待できない顧客のリストを交付されていた)ことや,仕事が与えられなかったことなどによる。
同原告は,営業の後方支援をしていたにすぎず,直接客を担当していなかったのであるから,同原告の受注件数は他の営業担当の注文件数であり,件数が少ないのは同原告の責任ではない。
3  原告らに生じた損害
(1) 特別手当の差額
原告らが正当に評価されれば,前記のとおり,C評価以上であったものである。しかし,原告らは,被告による不当査定によってD評価と査定されたことにより,適正な査定の下に給与が支払われるとの期待権が侵害されたものであるから,少なくともC評価と査定された場合の支給金額との差額相当額の損害を被っている。
(2) 慰謝料
また,原告らは,D評価を受けているが,評価の最低ランクであり,評価対象者に対して劣っているとのレッテルを貼るものであるから,原告らのプライド,人格を著しく傷つけるものであるし,将来の賃金,昇格等にも事実上の影響を及ぼす。
原告らの精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料額は,原告ら各自について100万円を下らない。
(3) 弁護士費用
本件の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,原告ら各自10万円である。
【被告の主張】
1  本件評価制度の問題点について
(1) 本件評価制度の導入
被告は,成果・業績を重視する考え方を徹底するため,平成13年4月より,新たな人事制度として,現行の社員資格制度(従業員の評価を能力という観点から成果業績に着目して行うとともに,成果業績を短期的,直接的に給与に反映させる人事制度)を導入するとともに,給与制度についても,成果・業績を重視した制度に改めた。
従業員に対する評価方法については,業績評価と総合評価からなるところ,業績評価とは,職務遂行の結果である業績を,会社業績の向上に向けた貢献という観点から,半期ごとに評価するものであり,総合評価とは,従業員の上げた業績という結果のみならず,そのプロセスにおける高い成果・業績達成につながる行動特性にも着目し,通年で総合的に評価するものである。
なお,総合評価及び業績評価のいずれについても,複数の評価者(一次評価者,二次評価者,調整者による3段階)で評価を行うこととし,それぞれA・B・C・Dの4段階で評価する。
評価については,「期待し要求する程度を著しく上回る場合」はA評価,「期待し要求する程度を上回る場合」はB評価,「期待し要求する程度」をC評価,「期待し要求する程度を下回る場合」をD評価とそれぞれ位置付けた。
(2) 業績評価の概要,評価方法について
「業績評価」は,半期ごとの職務遂行行動を通じて達成した仕事の結果,又はその仕事の出来映えである業績に着目して,「量的側面」,「質的側面」,「価値創造の側面」の観点から総合的に勘案して評価を決定している。
つまり,「量的側面」,「質的側面」,「価値創造の側面」の3つの項目から成り立つ業績評価基準に基づき,業績評価を決定している。
ア 「量的側面」とは,迅速性,効率性,販売量,作業量等の観点からみた会社業績の向上に向けた貢献度のことを指し,金額,件数,数量等のように,「いかに必要な業務量を達成したか,迅速に処理し期日内に完了したか」などが該当する。
イ 「質的側面」とは,品質,正確性,信頼性,効果等の観点からみた会社業績の向上に向けた貢献度のことを指し,「達成した業績の内容は正確で信頼できるものであったか,その内容は緻密であり十分な出来映えであったか」などが該当する。
ウ 「価値創造の側面」とは,市場優位性,競争力向上等の観点からみた更なる会社業績向上に向けた貢献度のことを指し,「新しいビジネスモデルの創造,発明,新しいナレッジ(知識・技術・ノウハウ)の創造,組織の変革,新規ビジネスの創造,将来の糧となる全く未知の市場開拓,新しい売り方の開発」などが該当する。
(3) 業績評価の決定方法
従業員が半期の間に上げた業績を,直属上長(課長等)が上記の3つの観点から評価し,一次評価段階での業績評価を決める。次に,上位職位の者(部長等)が同様に二次評価段階での業績評価を決め,最後に調整者(支店長等)が調整を行う。
具体的には,支店を例とした場合,「業績評価」は支店ごとに,A・B・C・Dの4段階評価を行っており,その分布率は,Aが10%以内,Bが20%以内,Dが10%以内で,残りをC評価としている。
(4) 原告らの主張1(2)に対する反論
ア 同アについて
被告は,本件評価制度を広く社内に公表し,個々の従業員が自らの業績内容等を知る機会も十分に設け,公正,透明な制度運用を企図している。
原告らは,本件評価制度の導入自体に納得せず,自らの努力不足を棚に上げて,制度自体に問題があるかのように責任転嫁しているにすぎない。
イ 同イについて
また,被告は,従業員に対して恣意的にユーザを割り当てるようなことはしていない。原告らの評価においても,原告らが特定のユーザを受け持たず,被告が抽出したユーザリストに基づいて営業活動を行っていることを踏まえて,適正に評価しているが,原告らは,後記2のとおり,これを考慮しても最低と評価せざるを得ない業績であった。
ウ 同ウについて
そして,被告においては,評価理由の説明を制度的に行っていないが,日常のコミュニケーションや面談を通じて,従業員は十分に理解することができるし,評価結果についても,上長とは異なる第三者による相談窓口を設けて,従業員の納得を得られる仕組みを講じている。
2  原告らに対する評価の違法性について
(1) 平成14年度年末特別手当にかかる評価について
ア 原告X1,原告X2,原告X5及び原告X6について
(ア) 前記原告らは,いずれも平成14年5月1日から大阪支店ソリューション営業本部ソリューション営業担当に所属し,本社又は支店において,「スキル転換研修」を受講した後,同年7月から大阪府内の各エリアにおいて,中小企業,商店等に対する「Bフレッツ」(被告が提供する光ファイバーサービスの商品名),「フレッツADSL」(被告が提供するADSLサービスの商品名)等を中心とした通信サービス等の導入提案・販売する業務を行っていた。
(イ) 前記原告らが所属するソリューション営業本部は,大口ユーザを担当する者から前記原告らのように中小ユーザを担当する者までその営業範囲が異なる営業担当者が700名以上も存在することから,被告は,各部門の評価者によって評価の仕方や評価項目,基準等の認識に差が生じないように「評価者会議」を行った。そして,その評価者会議の中で,まず営業担当者の評価項目について認識を合わせた。具体的には,営業担当者評価の量的側面を,職務の性質上,「受注額(商品・サービスの売上換算額)」として統一することとした。また,質的・価値創造の側面は,すべての営業担当者に妥当する統一的基準を設けることが困難なため,制度上の考え方に沿って,総合的に判断するということにした。
その上で,まず,量的側面としての受注額について,ソリューション営業本部全体で見渡し,月平均の受注額を順位付けした。その結果,前記原告らは受注額が最下位に近い順位であった。すなわち,原告ら4名の中で最も高い原告X5でも1か月平均受注額がわずか9582円(681位)であり,原告X1が4604円(716位),原告X2が2949円(723位),原告X6は受注ゼロ(最下位タイ)という結果であった。
これは,評価当時,被告が重点的に販売に取り組んでいたブロードバンド商品である「フレッツADSL」の受注に換算して1回線にも満たないものであることからも,いかに低調なものであったかということは明らかである。原告らの所属する担当や,原告らと同様に職種転換した者の平均受注額と比較しても低調な成果である(原告らの所属する担当の平均受注額は1か月平均約4万3000円であり,職種転換した者の平均受注額は約1万6000円である。)。
また,質的側面及び価値創造面については,積極的に評価すべき点はなかった。
このように,前記原告らの受注額は,たとえ同原告らが職種転換して間もないことを考慮したとしても,極めて低いと判断せざるを得ないものであるから,被告は,前記原告らをD評価と査定した。
イ 原告X3の評価について
(ア) 原告X3は,平成14年5月1日以降,大阪支店SE部に所属している。SE(システムエンジニア)業務とは,ソリューションビジネス推進のためにシステム企画・提案,システム設計・構築,メンテナンスといった営業活動を行うものである。
(イ) 大阪支店では,SE担当者の平成14年度年末業績評価において,評価者会議を行い,まず量的側面についてはシステム受注額,ネットワーク商品受注額,メンテナンス商品受注額,提案件数,提案額を考慮しつつ,質的側面,価値創造の側面において,その提案内容について吟味することにより,総合的に判断することとした。
被告は,原告X3についても,提案活動,リストに基づく営業活動,その他友人・知人への販売等による販売成果を期待したが,原告X3は評価期間において売上実績が皆無であるだけでなく,提案した実績も全くなかったことから,量的側面,質的側面,価値創造の側面において成果が見いだせなかったので,D評価と査定した。
ウ 原告X4の評価について
(ア) 原告X4は,大阪支店ソリューション営業本部大阪中央ソリューション営業部に所属している。原告X4は,前記アの原告X1ら4名と同様に,ソリューション営業担当に所属しているが,健康上の問題による健康管理医からの指導もあって,被告は,原告X4をあえて外販活動に従事させていない。したがって,被告としては,原告X4に対し,本来は,総括業務として,同職場における営業サポート業務を行ってもらいたいところであり,ソリューション営業本部としても,販売管理資料の整理,各種資料作成等の業務に従事させるよう検討し,原告X4にも打診したが,結果的には他の従業員と同じような責任ある仕事を与えることができず,職場にかかってきた電話応対さえできないような状況であったことから,やむなく郵便物の配布,パンフレット整理,押印といった簡易な庶務的業務に従事させている。
(イ) このように,原告X4の評価については,病気に起因しているとはいえ,他の従業員のように責任ある業務を与えることができず,業績を残していない状況にある以上,標準的な評価を与えることができないため,被告は,原告X4をD評価と査定した。
(2) 平成15年度夏期特別手当にかかる評価について
ア 原告X1,原告X7,原告X9,原告X6及び原告X12について
(ア) 前記原告らは,前記(1)ア(ア)のとおりの業務に従事していた。
(イ) 被告は,前記(1)ア(イ)と同様に,前記原告らの評価を行ったものであり,量的側面としての受注額について,ソリューション営業本部全体で見渡し,月平均の受注額を順位付けした。その結果,前記原告らは,受注額が最下位に近い順位であった。すなわち,原告ら5名のうちで最も高い原告X9でも1か月平均受注額が,わずか1万9615円(615位)であり,原告X7が1万8487円(618位),原告X12が1万0192円(639位),原告X1が7572円(645位),原告X6が4878円(649位)という結果である。
これは,評価当時,被告が重点的に販売に取り組んでいたブロードバンド商品である「Bフレッツ」の受注に換算して,1回線をようやく超えるか,それにも満たない低調なものであった。原告らの所属する担当や,原告らと同様に職種転換した者の平均受注額と比較しても,低調な成果である(原告らの所属する担当の平均受注額は1か月平均約4万9500円であり,大阪支店における職種転換した者の平均受注額は約3万1500円である。)。
また,質的側面,価値創造面について,積極的に評価しうる点はなかった。
そのため,被告は,前記原告らをD評価と査定した。
イ 原告X4の評価について
前記(1)ウと同様である。
ウ 原告X8の評価について
(ア) 原告X8は,平成14年5月1日から大阪支店ソリューション営業本部ソリューション営業担当に所属し,前記(1)ア(ア)と同内容の業務に従事していた。そして,原告X8は,その家庭の事情から大分支店に配転されることになり,平成15年1月以降,大分支店営業担当に所属し,営業担当者が受注してきた契約について,その申込内容をパソコンに登録する作業や,専用線サービスの申込書をパソコンで作成する作業,データベースの作成業務といった営業担当者の支援業務を行っていた(なお,本件評価対象期間外である平成15年7月以降,原告X8は外販業務に従事している。)。
以上のように,原告X8は,評価期間中の前半(平成14年10月1日から同年12月31日まで)は大阪支店で販売業務に従事し,後半(平成15年1月1日から同年3月31日まで)は,大分支店で営業の支援業務に従事した。なお,このような場合,業績評価の評価実施事業所は大分支店であるが,大阪支店所属時における成果・業績と大分支店における成果・業績を総合勘案して評価することとしている。
(イ) 大分支店における量的側面についてみるに,原告X8のパソコンへの契約の登録件数は,平成15年1月から同年3月までの間に10数件しかみられず,積極的に営業担当者から登録を請け負うような姿勢もみられなかった。また,データベースの作成についても,作成に1,2か月を要するなど仕事ぶりは遅かった。
質的側面については,上記のようなパソコンへの登録作業や,専用サービスの申込書をパソコンで作成する作業といった事務処理の正確性や信頼性等を参考としたが,例えば専用線サービスの申込書をパソコンで作成する作業においては,送信した約50件の電子メールのうち約半数に誤りがあったため,他の従業員が修正を余儀なくされた。
さらに,価値創造の側面については,受注後の処理フローの見直し等の取組があったかを参考としたが,原告X8にはそのような取組はみられなかった。
このように,原告X8は,営業支援を専従的に行っていたにもかかわらず,その処理件数は少なく,また積極的に処理件数を増やすような姿勢もみられなかったことから,その量的側面における実績は極めて低調といわざるを得ず,また質的側面や価値創造面についても積極的に評価できる点はなかった。
次に,大阪支店に在籍していた時の成果・業績についてみると,原告X8の平成14年10月から同年12月までの間の販売実績は,8万5500円(月平均2万8032円)にすぎず,これは同人の所属していた担当の平均受注額(1か月約5万8900円)と比較しても低額で,量的側面として格別みるべき成果はなかった。また,質的側面及び価値創造の側面についても,可もなく不可もないといった程度であった。
以上を総合勘案した結果,原告X8は,大分支店での成果・業績が極めて低調であったため,大阪支店での成果・業績を勘案したとしても,結局「会社が期待し要求する程度を下回る」成果・業績であると考えざるを得ないため,被告は,原告X8をD評価と査定した。
エ 原告X10及び原告X11の評価について
原告X10及び原告X11は,平成14年5月1日以降,愛媛支店ソリューション営業部営業担当に所属し,同支店において,ソリューション営業のスキルを習得するための各種研修等を受講し,同年10月より,割り当てられたユーザに対する通信システムの導入提案や,一般ユーザに対する「Bフレッツ」等を中心とした通信サービスの導入提案・販売等の業務を行っていた。
愛媛支店では,ソリューション営業担当者の平成15年度夏期業績評価においても,評価者会議を行い,量的側面については,職務の性質上売上げに着目することとし,質的側面については「Bフレッツ」等の商品について,顧客からの注文や問い合わせに対して適切に対応できたか否かなどを,さらに,価値創造の側面については,新規の顧客開拓に向けた積極的な取組ができたか否かなどを参考とすることにした。
この点,まず,量的側面について,原告X11の売上げは6か月間でわずか1万7000円,原告X10は売上げがゼロであり,その売上げは,最下位又は最下位から2番目という極めて低調な成績であった。
また,原告X10及び原告X11については,質的側面及び価値創造面についても積極的に評価できる点がなかったため,被告は,原告X10及び原告X11をD評価と査定した。
3  原告らに生じた損害について
被告においては,成果・業績を重視した人事・給与制度を採用している以上,成果が低ければそれなりの給与しか得られないこともあり得る。現に,原告らは,被告がそのような制度に従って評価した結果,低い評価となったものである。
したがって,本件において,原告らが主張するような期待権が生じる余地はないし,いかなる人格権侵害も存在しない。
第4  当裁判所の判断
1  認定事実
争いのない事実等,証拠(〈証拠・人証略〉)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  本件評価制度
ア 新しい人事・給与制度の導入
被告は,電電公社の時代,長期にわたって,「職務分類制度」を人事・給与制度として採用していたが,民営化後の昭和62年10月に,従業員の能力と業績を処遇に反映させる「職能資格制度」を導入し,平成13年4月1日から,従業員の成果・業績をより重視した「社員資格制度」を導入することとした。
イ 新しい人事制度(社員資格制度)の概要
被告が平成13年4月1日から実施することとした社員資格制度は,従前の職能資格制度において,業務の専門性により構成していた各職能グループのうち5級構成で構成されていたエキスパート職能グループを,3級構成のエキスパート資格グループに再編し,あわせて最短在級年数を原則2年から原則3年とし,また,営業販売エキスパート職能グループや技能,労務,医療技能補助職群(職務分類制度)を廃止し,一般資格グループに統合するという人事制度の見直しを含むものである。
また,社員資格の決定の基準としては,従来,能力に着目した基準(職務遂行能力評価基準)であったものを,行動に着目した行動評価基準と業績評価基準を基準として設定し,行動評価30%,業績評価70%により社員資格を決定するというものである。
ウ 新しい給与制度の概要
給与制度については,職能賃金を廃止し,上記社員資格に対応した資格等級別定額の「資格賃金」を創設し(これが,成果・業績を重視した主たる基本給となる。),年齢賃金は,若年層の昇給額を改善し,50歳以降同額とするとともに,基本給の中で占める割合を縮小し,評価結果に応じて変動する給与として「成果加算」「成果手当」を創設し,「資格手当」は廃止するという見直しがなされた。
以上のとおり,月例給は,基本給である資格賃金が,社員資格と連動するため,行動評価と業績評価を総合した総合評価が反映されることとなるが,夏期特別手当,年末特別手当については業績評価のみが反映することとされている。
エ 業績評価基準
上記社員資格制度における評価制度(本件評価制度)の内容は,争いのない事実等(4)のとおりであるが,そのうち業績評価の具体的方法については,以下のとおりである。
業績評価は,複数の評価者がそれぞれA,B,C,Dの4段階で評価するものであり,評価については,「期待し要求する程度を著しく上回る場合」はA評価,「期待し要求する程度を上回る場合」はB評価,「期待し要求する程度」はC評価,「期待し要求する程度を下回る場合」はD評価とする。
業績評価の基準の項目は,量的側面(会社業績の向上に向けた,迅速性,効率性,販売量,作業量等の観点からみた貢献度),質的側面(会社業績の向上に向けた,品質,正確性,信頼性,効果等の観点からみた貢献度),価値創造の側面(更なる会社業績の向上に向けた,市場優位性,競争力向上等の観点からみた貢献度)である。
具体的な業績の評価に当たっては,従業員が半期の間に上げた業績を直属の上長が上記3つの観点から評価し,一次評価段階での業績評価を決め,次に,上位職位の者が同様に二次評価段階での業績評価を決め,最後に調整者が調整を行う。具体的な評価の運用については,各支店が,支店ごとにそれぞれの業務内容や状況に応じて4段階の評価を実施し,その分布率は,評価制度上,Aが10%以内,Bが20%以内,Dが10%以内で,その余がC評価として定められている。ただし,この分布率は,当時従業員に対しては公表されていなかった。
オ なお,前記のA,B,C,Dの4段階の評価基準については,被告と大阪電通合同労組との間の平成13年5月16日の団体交渉の際に,議論となった。
カ 被告の従業員に対する評価結果に関し,不満のある従業員に対しては,相談の窓口が設置されているが,相談の結果によって評価を変更するということは想定されていない。
(2)  原告らの配転及び配転後の業務
ア 原告らの配転
原告らの職歴は,争いのない事実等(1)イのとおりである。
被告は,合理化計画に伴い,従業員に対して,3つの類型の中から1つを選択するよう求め,繰延型又は一時金型を選択した51歳以上の従業員については,平成14年4月30日をもって退職することとされたが,原告X8は満了型を選択し,その余の原告らはいずれも選択しなかったことから満了型を選択したものとみなされた。
この満了型とは,被告の本社・支店において,その業務(企画・戦略,設備構築,サービス開発,法人営業等の業務)に従事するか,地域会社以外のグループ会社に出向し,被告の就業規則に基づいて60歳まで勤務する形態であり,他の2つの型のように,賃金が減額されることはないものの,勤務地が限定されておらず,広域配転の可能性のある形態である。
被告は,平成14年5月1日,争いのない事実等(3)のとおり,原告らを配転した。
イ 原告らの配転後の業務
原告らは,配転後,ソリューション営業に従事しているが,原告らの多くが所属している大阪支店ソリューション営業本部は,被告における最大の市場である大阪府下の約3000ユーザに対するシステム提案,システム導入に引き継ぐ保守提案,プライベートネットワークの提案及びトラヒック確保といった営業等を実施する組織である。
組織構成としては,〈1〉上記約3000ユーザのうち特に大規模な約800ユーザを業種・業態別に分類してソリューション営業を展開する「第一~第三ソリューション営業部」,〈2〉上記以外の約2200ユーザを地域別に割り当ててソリューション営業を展開する「大阪北ソリューション営業部」,「大阪中央ソリューション営業部」,「大阪南ソリューション営業部」,〈3〉ソリューション営業を推進するためのシステム企画・提案,システム設計・構築,メンテナンスといった営業及び中小から大規模ユーザ間のソリューションパッケージ開発と技術者育成を行う「SE部」,〈4〉これらの各部を統轄し,営業戦略策定等を実施する「ソリューション営業推進部」で構成されている。
(3)  平成14年度年末特別手当について
ア 平成14年度年末特別手当における業績評価の評価対象期間は,平成14年4月から同年9月までであった。
イ 争いのない事実等(5)ウのとおり,被告は,平成14年度年末特別手当については,原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X5及び原告X6をD評価であると査定し,その結果,前記原告らには,特別手当のうち評価反映部分の手当が支給されなかった。
(4)  平成15年度夏期特別手当について
ア 平成15年度夏期特別手当における業績評価の評価対象期間は,平成14年10月から平成15年3月までであった。
イ 争いのない事実等(5)エのとおり,被告は,平成15年度夏期特別手当については,原告X1,原告X7,原告X8,原告X9,原告X10,原告X11,原告X4,原告X6及び原告X12をいずれもD評価であると査定し,その結果,前記原告らには,特別手当のうち評価反映部分の手当が支給されなかった。
(5)  以上のようなD評価について,被告から,個別的な問題については一次評価者と面談をしてほしいという発言があったが,電通合同労組は,これを拒絶した。ただし,原告らの中には,個別に一次評価者からD評価の理由について,説明を求めた者もあった。
2  本件評価制度の問題点について
(1)  原告らは,本件評価制度について,人件費を抑制するために成果主義賃金体系を導入したものであるが,成果主義賃金体系は失敗例が多く,必要であるとはいえないと主張する。
しかし,前記1(1)によると,本件評価制度が全面的な成果主義賃金体系を採用しているとはいえず,また,成果主義賃金体系を採用した企業において失敗例があったとしても,本件評価制度に基づく評価が違法となるわけではない。
(2)  原告らは,本件評価制度の基準が不明確であり,具体性を欠くものであって,極めて不公平であると主張する。
本件評価制度によると,業績に着目して行う評価において,A評価を「期待し要求する程度を著しく上回る場合」,B評価を「期待し要求する程度を上回る場合」,C評価を「期待し要求する程度」,D評価を「期待し要求する程度を下回る場合」としているが,4段階に評価を分けること自体は使用者の裁量というべきであり,4段階に分けた際の基準として上述の基準を設けること自体が,評価の基準として不明確ということはできない。
(3)  原告らは,本件評価制度による評価にあっては,量的側面として売上高の大小によっているが,条件が異なるので,適正な評価は(ママ)いえないと主張するが,この点については,原告らに対するD評価の違法性(後記3)のところで,検討することとする。
(4)  原告らは,本件評価制度について,評価結果の開示はあっても説明はなく,また紛争処理制度もなかったと主張する。
たしかに,人事評価制度において,原告ら主張のような制度が完備されていることは望ましいといえるが,本件評価制度に原告ら主張のような制度が完備されていなかったからといって,直ちに,同評価制度による評価が違法となるわけではない。
(5)  以上のとおり,本件評価制度の問題点が,原告らに対するD評価の違法性に直接関連するとは認められず,原告らに対するD評価が,同評価制度に基づく評価であることをもって,被告の不法行為を認めることはできない。
3  原告らに対するD評価の違法性について
(1)  人事評価についての裁量
被告は,本件評価制度に基づいて原告らに対する業績評価を行い,評価基準に照らし,原告らをD評価と査定し,特別手当のうち評価を反映して支給される部分について手当を支給しなかったものである。
このような従業員に対する使用者の人事評価にあっては,基本的には使用者の裁量が認められるべきである。そして,そのような人事評価が,定められた評価制度に基づいていないなど社会通念に照らして著しく不合理である場合には,人事権を濫用するものとして,不法行為となるものと解するのが相当である。
(2)  平成14年年末特別手当における評価
ア 評価の手順
営業担当者の評価については,一次評価に先立ち,平成14年9月11日及び同年10月21日の2回にわたり,本部長・各部長等による「評価者会議」が開催された。評価者会議においては,営業担当者の量的側面に関する評価項目については,職務の性質上,「受注額(商品・サービスの売上換算額)」とすること,D評価の基準については,当時の主力商品であった「フレッツADSL」の1か月当たり1回線相当額(売上換算額で1万円相当)以下とすることで,意識合わせが行われた。以上の評価者会議の内容は,各部の企画担当課長等を通じて,一次評価者である担当課長に周知され,それに基づいて一次評価が実施された。
一次評価の評価結果は,ソリューション営業本部営業推進部営業戦略担当に集約された後,ソリューション営業本部長が二次評価を行った。
イ 原告X1,原告X2,原告X5及び原告X6に対する評価
原告X1,原告X2,原告X5及び原告X6は,平成14年7月から,被告から渡された顧客のリストを基にして,中小企業,商店等に対するフレッツADSLやBフレッツを中心とした通信サービス等の導入提案・販売の業務に従事していた。そして,大阪支店ソリューション営業本部の平成14年度上期における従業員の月額平均受注額をみると,全728名中677名が1万円以上であり,前記原告らの月額平均受注額は,原告X1は4604円(716位),原告X2は2949円(723位),原告X5は9582円(681位),原告X6はゼロ(728位)であった。
また,以上の原告らについて,質的側面や,価値創造の側面に関して,積極的に評価できる業績はなかったことから,被告は,前記原告らをD評価と査定した。
なお,大阪支店ソリューション営業本部所属の従業員(728名)の月額平均受注額をみると,全体の月額平均受注額は約4万3000円であるが(最高月額平均受注額1238万1536円,最低月額平均受注額0円),1万円未満の者は51名いた。そのうち48名が雇用形態として満了型(満了型とみなされた者を含む。以下同じ。)の者であるが,満了型の者は179名おり,そのうち131名は月額平均1万円以上の受注額を有していた。一方,D評価と査定された従業員の中で最高の月額平均受注額は1万0023円であったが,これより受注額の少ない51名のうち10名については,受注額が1万円以下でありながら,D評価と査定されていなかった。
ウ 原告X4に対する評価
原告X4は,健康上の問題があったため,外販活動には従事しておらず,郵便物の配布,パンフレットの整理,押印等の極めて簡単な庶務的業務しか行えなかったことから,被告は,同原告をD評価と査定した。
エ 原告X3に対する評価
SE担当者の評価についても,一次評価に先立ち,平成14年9月11日,同年10月1日及び同月21日の3回にわたって,評価者会議が開催された。評価者会議においては,SE担当者の量的側面に関し,システム等受注にかかわる貢献額及び提案件数や,ネットワーク商品等の受注額を考慮することとされ,前記イと同様に評価が実施された。
原告X3は,SOHOユーザを対象とした訪問活動を通じて,LAN,IPカメラ(テレビ電話等,パソコンやインターネットを組み合わせて映像等のやり取りを可能とする装置)といった簡易なシステム提案によるIP系ネットワークの拡販業務に従事していたが,売上げの実績はなかった。また,同原告について,質的側面や,価値創造の側面に関して,積極的に評価できる業績はなかったことから,被告は,同原告をD評価と査定した。
(3)  平成15年度夏期特別手当における評価
ア 評価の手順
平成15年度夏期特別手当における営業担当者の業績評価については,平成15年4月24日,同月30日の2回にわたり,各部の企画担当課長等による評価者会議が開催された。そして,量的側面に関する評価項目については,前年度同様,「受注額(商品・サービスの売上換算額)」とするが,D評価の基準については,被告が今後の営業戦略としてフレッツADSLよりもBフレッツを主力商品として位置付けて重点的に販売していこうとしていたことから,「Bフレッツ」の1か月当たり1回線相当額(売上換算額で2万円相当)以下とすることで,意識合わせが行われ,前記(2)と同様に評価が実施された。
イ 原告X1,原告X12,原告X6,原告X7及び原告X9に対する評価
前記評価対象期間について,原告X1,原告X12,原告X6,原告X7及び原告X9は,前記(2)イと同様の業務に従事していた。そして,大阪支店ソリューション営業本部の平成14年度下期における従業員の月額平均受注額をみると,全652名中614名が2万円以上であり,前記原告らの月額平均受注額は,原告X1は7572円(645位),原告X12は1万0192円(639位),原告X6は4878円(649位),原告X7は1万8487円(618位),原告X9は1万9615円(615位)であった。
また,以上の原告らについて,質的側面や,価値創造の側面に関して,積極的に評価できる業績はなかったことから,被告は,前記原告らをD評価と査定した。
なお,大阪支店ソリューション営業本部所属の従業員(652名)の月額平均受注額をみると,2万円未満の者は48名いた。そのうち43名が雇用形態として満了型の者であるが,満了型の者は126名おり,そのうち83名は月額平均2万円以上の受注額を有していた。一方,D評価と査定された従業員の中で最高の月額平均受注額は1万9615円であったが,これより受注額の少ない47名のうち5名については,受注額が2万円以下でありながら,D評価と査定されていなかった。
ウ 原告X4に対する評価
原告X4については,前回の評価時と状況が変わっていないことから,被告は,同原告をD評価と査定した。
エ 原告X10及び原告X11に対する評価
原告X10及び原告X11は,愛媛支店ソリューション営業部に所属していた。同営業部の平成14年度下期における従業員の総受注額についてみると,原告X11は1万7000円であり,原告X10はゼロであって,全51名中の50位と51位であった。
そして,総受注額が,21万4000円以下の8名のうち,1名を除く者がD評価と査定されている。
被告は,前記原告らの業績を踏まえ,D評価と査定した。
オ 原告X8に対する評価
原告X8は,平成14年5月1日,大阪支店企画担当に任命され,同月13日,大阪支店ソリューション営業本部・大阪南ソリューション営業部第9営業担当に配属され,原告X1らと同様の業務に従事した。
そして,被告は,原告X8の希望に基づき,平成15年1月1日,原告X8を熊本支店の下部の組織である大分支店に配属した。原告X8は,営業を担当したいので顧客を割り当てるよう要望したが,大分支店では,平成14年11月に顧客の見直しをしたばかりであるため,他の営業担当者のサポート等を行ってほしいと求め,原告X8は,これを承諾した。
原告X8が行うこととなった業務は,AMサポート業務であり,具体的には,サービスオーダーに関する直轄窓口として,(1)ACTサポートと連携し,関係部調整・情報周知を行う,(2)AMサービスオーダーのCUSTANET投入支援(1営・2営AMのサービスオーダー投入を行うが,特に緊急及び大量オーダー発生時の投入支援),(3)AM営業活動におけるマイライン,料金割引サービス等の全般的業務支援(料金シミュレーション作成支援,提案書作成支援,受注時のオーダー処理等)を行うこと,ISO9001導入に伴う立ち上げ支援及び導入後の事務処理支援業務として,(1)推進PTメンバーとして導入環境整備等を中心にスムーズな導入支援を行う,(2)導入後の事務処理支援及び管理・指導を行う,というものであり,業務に先立って,業務内容については原告X8に書面で説明された。
原告X8は,営業担当者のサポート等を行い,書面の作成等を行ったが,間違いが多く,その修正を指示されることも多かった。
そこで,被告は,原告X8をD評価と査定した。
(4)  このように,本件において,被告は,本件評価制度に従い,〈1〉 量的側面,質的側面及び価値創造の側面を基準として従業員の業績を評価し,一次評価,二次評価と最終調整によって,A,B,C,Dの4段階で評価するという本件評価制度を採用していたこと,〈2〉 原告らについては,量的側面に関してその成績が低かったことなどから,D評価と査定され,評価を反映して支給される部分について手当を支給しなかったことが認められるが,その評価過程における具体的な評価基準の設定や,実際の評価の結果について,不合理であると窺わせる事情は見いだせない。
(5)  D評価の基準についての約定について
ア 原告らは,被告が,労働組合との団体交渉の場において,普通に働いていればC評価であることを明言しており,原告らがいずれも普通以上に働いていたから,少なくともC評価に該当する旨主張する。
イ 証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。
被告と大阪電通合同労組との間の平成13年5月16日の団体交渉の際,業績評価におけるA,B,C,Dの4段階の評価基準について議論となった。このとき,被告側の出席者は,D評価の基準について,期待の程度を下回った場合はD評価であると回答し,さらに具体的なD評価の基準を尋ねられ,「ちゃんと仕事をすれば,そんなにDなんかはつかないでしょうね。」と回答し,D評価が存在するのかを尋ねられたのに対し,当然存在する旨回答したが,実行上はほぼない旨回答した。
ウ しかし,仮に原告ら主張のように「普通に働いていればC評価である」旨の説明がされていたとしても,そもそも「普通に働く」という言葉自体,抽象的なものであって,原告らの認識としては,出勤して,業務に従事することをもって「普通に働く」というものと推測されるが,被告の認識としては,あくまで,C評価の内容である「期待し要求する程度」を満たすことを意味するものと考えられる。また,実際の団体交渉の場におけるやり取りは,上記認定のとおりであって,被告の出席者が「普通に働いていればC評価である」と明言したと認めるに足りる証拠はなく,むしろ,被告側の出席者は,D評価がされる場合は少ないものの期待する程度を下回った場合はD評価であるという被告のD評価の基準を説明するとともに,D評価が存在する旨一貫して回答していることが認められる。
エ なお,上記認定によれば,原告ら主張の平成13年5月の団体交渉において,被告側の出席者が「D評価が実行される例はほぼない」という趣旨の発言をしたことが認められるが,一方で,上述したとおり,C評価,D評価の内容を説明していたのであるから,D評価をほとんど出さないことを約したものとはいえず,単に,期待し要求する程度の実績を上げることのできない従業員が多数生じることはないという観測(希望的観測)を述べたものにすぎないと理解するのが相当である。
実際の評価に際しては,前記(2),(3)のとおり,評価者間において評価についての意識合わせが行われ,量的側面についての具体的基準が取り決められ,これに基づいた評価が行われたことが認められるのであるが,上記基準を満たすことができなかった原告らを含む従業員に対する量的側面の評価が低くなることはやむを得ず(全体の10%以内であることは明らかである。),これらの従業員に対し,量的側面において,被告の期待し要求する程度を下回っていると評価された結果,D評価としたことについて,著しく不合理であるということはできない。
平成14年度年末特別手当に際しての評価において,月額平均受注額が1万円未満でありながら,51名中10名が,平成15年度夏期特別手当に際しての評価においても,月額平均が2万円未満でありながら,47名中5名がD評価を免れているが(C評価であったと推認される。),これらの従業員については,業績評価の中でも,質的側面や価値創造の側面を評価されることによって,基準に達しなかった他の従業員との違いが生じたものと思われるが,裁量を逸脱したという事情は窺えない。
(6)  量的側面の評価に当たっての条件について
原告らは,被告による量的側面についての評価は,営業経験のない原告らを営業経験のある者と単純に比較したり,担当した顧客の実態を無視しており,同一の条件のもとで比較されておらず,不合理である旨主張する。
しかし,前記(1)のとおり,人事評価に当たっては,基本的には使用者の裁量が認められるところ,仮に営業経験のない者にとってはおよそ上げることが不可能な成果を求めたり,担当した顧客によってはおよそ上げることが不可能な成果を求めたりして,その成果を上げられないことを理由に原告らをD評価と査定したという場合には,その評価に合理性が認められない場合もあり得るが,本件においては,前記第2の1(5)イのとおり,平成14年度夏期特別手当までは,業績の如何にかかわらず,D評価はつけられることはなく,新体制による配転後しばらくした後,量的側面の基準が明確に定められたが(平成14年度年末特別手当については,売上高1万円相当。平成15年度夏期特別手当については,売上高2万円相当),前記(2),(3)のとおり,原告らと同じ満了型の者でも,その基準を満たしている者の方が多かったものであり,原告らの担当した顧客についても,成果を上げることが不可能なものであったとは認められない(この点について,証人Mは,被告から渡された顧客のリストでは1万円の受注を取るのも全く無理である旨証言する。しかし,他方において,証人Nは,リストについては,不公平感の生じないように配慮して割り振った旨証言していることに照らせば,担当した顧客のリストを理由として,査定が違法であると認めることはできない。)。また,以上の点に照らせば,本件におけるD評価の査定が,満了型の者に対する報復的なものであるということもできない。
また,原告らは,質的側面や価値創造の側面については,その定義自体曖昧で,質的側面は,量的側面についての評価に影響されると主張する。
しかし,前記(2),(3)のとおり,大阪支店ソリューション営業本部の従業員の中で,量的な基準に達しなかったにもかかわらず,D評価を免れた従業員が,平成14年度年末特別手当の際に51名中10名(うち8名は満了型),平成15年度夏期特別手当の際に47名中5名(うち2名は満了型)おり,量的側面についての評価を質的側面で挽回することも可能であることが推認される。
したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。
(7)  原告X8の評価について
原告らは,原告X8についても,その評価の不当性を主張するが,同原告については,前記認定のとおり,ミスが多かったものと認められるのであって,D評価との査定が,社会通念に照らして著しく不合理であるということはできず,原告らの主張を採用することはできない。
(8)  まとめ
以上のとおりであるから,原告らに対するD評価については,社会通念に照らして著しく不合理であるということはできず,不法行為となるものとはいえない。
4  結論
よって,原告らの請求は,いずれも,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
(裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 川畑正文 裁判官 下田敦史)

 

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