【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(137)平成19年 1月18日 東京地裁 平17(ワ)7089号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(137)平成19年 1月18日 東京地裁 平17(ワ)7089号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成19年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)7089号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2007WLJPCA01180005

要旨
◆ゴルフ会員権の購入に際し、被告銀行が虚偽あるいは値上がりについて断定的な説明を行った、ゴルフ会員権の危険性について説明しなかった、金融機関の優越的地位を利用して販売を行った、ゴルフ会員権の販売媒介行為が銀行法に違反する、などの原告の主張を排斥し、原告の被告に対する損害賠償請求を棄却した事例

出典
判時 1979号85頁
新日本法規提供

評釈
山本裕子・法学新報(中央大学) 117巻7・8号871頁

参照条文
民法709条
銀行法10条
銀行法11条
銀行法12条
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項5号
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条

裁判年月日  平成19年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)7089号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2007WLJPCA01180005

千葉市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 道本幸伸
同 永井均
同 渡瀬耕
同訴訟復代理人弁護士 坂井崇徳
東京都港区〈以下省略〉
被告 株式会社東京スター銀行
同代表者代表執行役 A
同訴訟代理人弁護士 丸山裕司

 

主文
1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由
第1  請求
被告は,原告に対し,金3500万円及び内金3475万1185円については平成2年3月15日から,内金24万8815円については平成6年5月18日からいずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,ゴルフ会員権の購入に関して,株式会社a銀行(以下「a銀行」という。)から違法な勧誘を受けたことにより損害を被ったと主張して,a銀行から営業譲渡を受けた被告に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
1  前提事実(証拠等で認定した事実については,各項の末尾に証拠等を摘示した。)
(1)  ゴルフ場の経営主体等
ア bカントリー株式会社(以下「bカントリー」という。)は,昭和46年12月,ゴルフ場の開発とゴルフ場運営会社への出資及び会員権販売請負を目的として設立された。bカントリーは,自らゴルフ場事業を営むほか,有限会社cゴルフ倶楽部(以下「cゴルフ倶楽部」という。)を含むグループ企業の中核会社として,グループ企業に対して金融支援,営業支援及び業務支援をしていた。
(甲27の1,2)
イ d株式会社(以下「d社」という。)は,bカントリーの株式を有していた時期があるものの,昭和61年ころ資本関係は解消された。しかし,Bは,昭和26年からd社の取締役,昭和40年から代表取締役を務めるとともに,昭和46年から平成15年までbカントリーの取締役,昭和52年から昭和56年まで代表取締役を務め,また,Cは,昭和40年から平成15年までd社の取締役,昭和48年から平成15年まで代表取締役を務めるとともに,昭和46年から平成16年12月までbカントリーの代表取締役を務めており,資本関係解消後も,d社とbカントリー間には,人的な関係が存在した。
(甲1の1,4,5,甲2の1から3まで,甲3の1から5まで,甲27の1,2,分離前相被告C本人)
ウ cゴルフ倶楽部は,bカントリーc倶楽部(以下「本件ゴルフ場」という。)の開発・運営を主たる目的として,昭和61年9月,株式会社bカントリーcゴルフ倶楽部の商号で設立され,平成13年8月,有限会社に組織変更し,平成17年8月1日,現商号に変更した。
Cは,平成元年1月から平成11年ころまでcゴルフ倶楽部の取締役,平成元年1月から平成6年3月まで代表取締役であった。
(甲5の1から4まで,甲64,甲N30の3)
エ cゴルフ倶楽部は,平成元年7月以降,本件ゴルフ場のゴルフ会員を募集し,その際,bカントリーが募集代行業者を務めた。
(甲64,70の2)
(2)  a銀行の勧誘行為
ア a銀行は,平成元年12月ころまでに,cゴルフ倶楽部との間で,a銀行が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件ゴルフ場の会員権(以下「本件会員権」という。)の購入希望者に対して,その購入資金を融資するとともに,cゴルフ倶楽部が購入希望者の借入債務についてa銀行に対して連帯保証する旨の提携ローンの合意をした。
(乙N1,分離前相被告C本人,証人D)
イ 原告は,昭和61年ころ,インテリアなどの設計を主な業務とする株式会社eデザイン・アソシエイツ(以下「eデザイン」という。)を設立し,eデザインは,平成元年8月ころから,a銀行神田支店と継続的な銀行取引を行っていた。
a銀行神田支店のE営業課長(以下「E」という。)は,平成元年11月ころ,eデザインの事務所を訪問して,eデザインの代表者である原告に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,Eは,本件会員権購入の勧誘のため,数度にわたり,eデザインの事務所を訪問したが,bカントリーやcゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲70の1から4まで,甲N17,原告本人,証人E)
(3)  会員権の購入
eデザインは,平成2年3月初めころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,cゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成してEに交付し,Eは,これをcゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,cゴルフ倶楽部は,同月15日,eデザインの入会を承諾した。
eデザインは,同月20日,cゴルフ倶楽部の連帯保証のもとでa銀行から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,cゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
その後,eデザインは,平成6年5月18日,原告に対し,本件会員権を1300万円で売却した。
(甲50,原告本人,弁論の全趣旨)
(4)  cゴルフ倶楽部の推移
ア cゴルフ倶楽部は,a銀行以外の金融機関とも,本件会員権の購入に関して,(2)アと同様の提携ローンの合意を行い,これらの金融機関の紹介により,平成元年以降,特別縁故募集として800名の法人会員を集めた後,追加の第一次募集を行い,平成4年11月30日,本件ゴルフ場を開場した(平成12年ころの公表会員数は法人939名)。
(甲42,64,甲70の2)
イ cゴルフ倶楽部は,ゴルフ場開場後,海外でのプレーを希望する会員への利便性提供の意味を含め,豊富な預託金によりbカントリー関係の海外ゴルフ場等への投融資を行ったが,その後海外のゴルフ場の価額が大幅に下落し,出資会社が大幅な債務超過に陥ったことから,出資金の回収が不能となった。
また,バブル経済崩壊後における経済不況の深刻化・長期化によって,会員権購入のためのローンの支払が困難となる会員が続出した結果,金融機関から,cゴルフ倶楽部に対して保証債務の履行請求が相次ぎ,履行ができない状態に陥った。
さらに平成7年当時約1000万円であった会員権相場が,平成15年には250万円程度に下落し,預託金券面額を大幅に割り込むこととなり,cゴルフ倶楽部は,平成16年12月30日以降に償還時期を順次迎える預託金について,会員権の分割を条件に据置期間の延長を求めたが,その約3割について同意を得ることができず,預託金返還請求に応じられない見込みとなった。
(甲28の1,甲64)
ウ こうしたことから,cゴルフ倶楽部は,平成16年12月6日に,当庁に対して民事再生手続開始の申立てを行って倒産し,同月10日に民事再生手続開始決定を受けた。その後,平成17年4月27日,スポンサーとして東急不動産株式会社を選定し,預託金返還請求権について元本等の95%の免除を受けること等を内容とする再生計画について認可決定を受けた。
(甲28の1,甲64,甲N30の1,2,乙C6,8,9)
(5)  a銀行の営業譲渡
a銀行は,平成13年6月,被告に対し,営業譲渡をした。
(甲N15,証人D)
2  争点
(1)  Eによるa銀行の勧誘行為が,以下のとおり違法なものであって,a銀行の故意又は過失による不法行為に該当するか(争点1)。
ア 本件会員権に関する虚偽の説明
イ 本件会員権に関する断定的な説明
ウ 本件会員権の危険性に関する説明義務違反
エ 金融機関の優越的地位の濫用
オ 販売媒介行為の銀行法違反
(2)  Eによる勧誘行為について,a銀行は使用者責任を負うか(予備的主張,争点2)。
(3)  原告は,a銀行の不法行為により損害を被ったといえるか(争点3)。
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(a銀行の違法な勧誘行為)について
ア 本件会員権に関する虚偽の説明
(原告の主張)
本件会員権の募集当時,d社はbカントリーの親会社ではなく,d社が,bカントリー及びその子会社であるcゴルフ倶楽部のゴルフ場の経営や預託金の償還について責任を負担したり,保証をしたりする関係にはなかったのであるから,a銀行は,そのような誤解を与えることのないような説明を行うべきであったにもかかわらず,Eは,勧誘に際して,eデザインに対し,「このゴルフ場はd社が経営している」とか「名古屋の優良企業であるd社がバックアップするゴルフ場である」という説明を行い,あたかもゴルフ事業や将来の預託金の償還についてd社が責任を負担したり,保証したりするかのような虚偽の説明を行った。
(被告の主張)
Eは,d社については,パン屋さんという程度の知識しか有していないし,eデザインに対するd社とcゴルフ倶楽部との関係の説明は,d社がバックにあるというだけであって,それ以上の説明は行っていない。
仮に,Eが,eデザインに対し,d社とcゴルフ倶楽部との関係について発言したとしても,d社がパン屋であること及びcゴルフ倶楽部のバックにはd社がいますという程度にすぎない。Eは,d社がbカントリーやcゴルフ倶楽部の親会社であるとか,cゴルフ倶楽部がd社の経営であるなどとは発言しておらず,「d社がバックにある」とは,抽象的に「信用してもいいですよ」という程度のニュアンスの発言にすぎなかった。
原告は,ゴルフを趣味とし,本件会員権以外にもeデザイン又は原告名義で3つのゴルフ会員権を有し,cゴルフ倶楽部のコース及び施設的な魅力並びに接待の目的にふさわしいという観点から本件会員権の購入を決意したものであり,Eの説明は,eデザインによる本件会員権の購入の判断に影響していない。
イ 本件会員権に関する断定的な説明
(原告の主張)
Eは,eデザインに対し,「銀行としても応援している」とか「銀行としても保証するゴルフ場である」と説明し,ゴルフ場の経営が万全であるかのような断定的な説明を行った。また,ゴルフ会員権の価格は様々な要素により変動するものであるにもかかわらず,当時の会員権相場の趨勢として相場の上昇を示唆したり,「縁故募集で安く購入できる」と説明し,「今買わなければ明日は購入できない」という話も付け加え,縁故募集であるから安く購入できるとか,将来の値上がりも期待できるとか不確実なことを断定的に説明した。
(被告の主張)
Eが価格に関する発言をしたとしても,ゴルフ会員権の価格上昇が続いていたという社会情勢下において一般的にゴルフ会員権は上がるでしょうというE個人の見解を述べたにすぎず,本件会員権の価格上昇を保証したものではない。
むしろ原告は,本人尋問において,本件会員権の価格について,妥当な価格と自ら判断したと述べている。
ウ 本件会員権の危険性に関する説明義務違反
(原告の主張)
a銀行は,bカントリーがcゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それらの事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることを知っていたか若しくは当然に知ることができたにもかかわらず,Eは,これらの危険性をeデザインに説明しなかった。また,a銀行は,ゴルフ会員権の価格暴落の危険が指摘されていることを認識しており,ゴルフ事業の今後について不確定要素が多い状況にあり,長期にわたる預託金の償還については危険性がある状況であったにもかかわらず,Eは,その危険をeデザインに説明しなかった。
(被告の主張)
a銀行に説明義務違反があることは争う。
エ 金融機関の優越的地位の濫用
(原告の主張)
Eは,著名金融機関の営業課長としての社会的な信用に加えて,eデザインとの継続的な銀行取引によって培ってきた信頼関係や,eデザインの経営内容や資産状況などの内情を把握しているという点や,融資している若しくは今後も融資の可否を判断する立場という総合的な優越的地位を有していた。a銀行は,その立場を利用して本件会員権の販売を媒介した。
また,Eは,eデザインの事務所を何度も訪問して,執拗に勧誘することによって,これを断った場合には融資に不都合が生じるとのプレッシャーを与え,それを利用して勧誘を行った。
(被告の主張)
原告は,本人尋問において,恫喝的とは決して思っていないと述べており,優越的な地位の濫用がなかったことは明らかである。
オ 販売媒介行為の銀行法違反
(原告の主張)
Eは,単なるゴルフ場の紹介にとどまらず,ゴルフ場の会員契約を直接媒介して入会申込書までもeデザインから受領した。ゴルフ場関係者による説明や勧誘などが一切介在しない銀行の直接媒介による入会手続は,銀行法や大蔵省の通達によって禁止されている銀行の目的外行為であり,当然に違法である(銀行法12条)。また,こうした銀行による媒介行為に対して,cゴルフ倶楽部からは,協力預金という名のもとに対価が支払われていたから,特にその違法性は強い。
(被告の主張)
a銀行は,ゴルフ会員権を販売したことはない。仮に,Eが本件会員権にかかる書類をeデザインから預かったとしても,当該行為はeデザインのために必要な行為を行ったにすぎない。
(2)  争点2(使用者責任,予備的主張)について
(原告の主張)
Eが行った勧誘行為は,a銀行の外回りの営業としてa銀行の事業執行に際して行われたものである。
(被告の主張)
原告の主張は争う。
(3)  争点3(損害)について
(原告の主張)
a銀行の違法な勧誘行為がなければ,eデザインは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないし,また,原告もeデザインから本件会員権を購入していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア eデザインの損害
eデザインは,平成2年3月15日,cゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。
eデザインは,同日,a銀行との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成6年5月18日までに全額返済した(利息合計966万1185円)。
その結果,eデザインは,購入代金と利息合計額の4775万1185円から原告に対する売却代金1300万円を差し引いた3475万1185円の損害を被った。
イ 原告の損害
原告は,平成6年5月18日,eデザインから本件会員権を1300万円で購入した。cゴルフ倶楽部の民事再生手続の中で,Cの私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。また,原告は,民事再生計画に基づき,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示により5.6%の返還を受けられる。結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金額の5%である175万円に下落したと評価される。したがって,原告は,支出した1300万円から支払を受けた4万0628円と下落後の実質価値175万円を差し引いた1120万9372円の損害を被った。
ウ eデザインの損害賠償請求権の譲渡
eデザインは,平成17年11月11日,原告に対し,前記アの損害賠償請求権3475万1185円を譲渡し,その旨被告に通知をした。
エ まとめ
原告は,eデザインから譲り受けた損害賠償請求権3475万1185円と原告自らの損害賠償請求権1120万9372円に,弁護士費用200万円を加算した合計4796万0557円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,eデザインから譲り受けた損害賠償請求権についての遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月15日であり,原告自らの損害についての遅延損害金起算日は平成6年5月18日であるから,内金3475万1185円については平成2年3月15日から,内金24万8815円については平成6年5月18日からいずれも支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(被告の主張)
原告の主張のうち,eデザインがa銀行と3500万円のローン契約を締結したことは認め,その余の事実は知らず,eデザイン及び原告が損害を被ったことは否認する。
第3  当裁判所の判断
1  Eによる勧誘行為の位置づけについて
a銀行は,cゴルフ倶楽部との間において,a銀行が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件会員権の購入希望者に対して,その購入資金を融資するとともに,cゴルフ倶楽部が購入希望者の借入債務についてa銀行に対して連帯保証する旨の提携ローンの合意(以下「本件提携ローン合意」という。)をしたことは,前記第2の1(2)アに認定のとおりであり,また,甲N17,証人Eの証言によれば,a銀行神田支店の営業課長であったEは,D支店長から,取引先に本件ゴルフ場を紹介するように指示を受けたこと,そこで,その指示に基づいて,eデザインに対して,a銀行の提携ローンを利用して本件会員権を購入することを勧誘したことが認められる。
そうであれば,Eが,eデザインに対して行った本件会員権購入の勧誘は,提携ローンの利用を勧誘する目的で,支店長の指示に基づき行われたものであり,a銀行の営業行為そのものであるから,a銀行の不法行為の成否の検討においては,Eの行った本件会員権購入の勧誘行為は,a銀行による勧誘行為と解して妨げないというべきである。
2  争点1ア(本件会員権に関する虚偽の説明の有無)について
(1)  原告は,a銀行が,本件会員権購入の勧誘に際し,バックアップ会社を含めてゴルフ場経営会社の経営が万全であり,預託金の償還に不安はないと強調し,あたかもゴルフ事業や将来の預託金の償還についてd社が責任を負担したり,保証したりするかのような虚偽の説明を行ったと主張する。
そこで検討するに,a銀行は,本件提携ローン合意に基づき,取引先等に対して本件会員権の購入を勧誘したものであり,取引先等による本件会員権の購入と被告からの融資は極めて密接な関連性を有しているから,a銀行は,取引先等に対して自ら本件会員権の内容を説明するにあたっては,信義則上,できる限り正確な説明をすべきであり,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明をしたときは,これを信用して本件会員権を購入した者に対し,上記虚偽の説明と相当因果関係のある損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
(2)  これを本件についてみると,原告は,Eが,勧誘に際して,eデザインに対し,「このゴルフ場はd社が経営している」とか「名古屋の優良企業であるd社がバックアップするゴルフ場である」という説明を行ったと主張する。
そして,原告は,その調査回答書(甲50)において,「銀行からの説明では,名古屋に本社を置くd社が経営(あるいは関連する信頼のおける会社)及びバックアップするbカントリーグループの新規事業」とのことであり,「名古屋を本社とする優良企業のd社がバックアップしますし,銀行としても取り引きがありますから,15年据置の少々長い会員権預託金ですが必ず返還されますから御安心下さいとの説明がありました。」旨を述べ,本人尋問においても,cゴルフ倶楽部をd社が経営していると聞いた旨供述している。
他方,Eは,その陳述書(甲N17)において,「支店長らの上司からこのゴルフ場はd社のゴルフ場だとレクチャーを受けて販売を行いました。」,「d社がバックにあると聞いてその旨をお客様に説明したのです。」,「eさんの事務所に私は何度も訪問したと思います。その時に経営母体が有名なパン屋のd社ですという説明をしました。」と述べ,証人尋問においても,d社が経営母体である旨の説明はしたものの,具体的に伝えた内容はd社がバックにあるということにとどまり,それ以上の説明はしていないと証言する。この供述等に照らすと,Eがeデザインに対する説明としてd社がバックにある旨を述べたことは認められるものの,原告の供述等をもって,Eが,d社がcゴルフ倶楽部の経営に責任を負うとか,経営を保証している旨の説明したとは認めるには足りない。
そして,本件会員権募集の当時,d社とbカントリー及びcゴルフ倶楽部との間において,前提事実(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,d社がcゴルフ倶楽部のバックにあるという説明は,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
また,原告は,本人尋問において,本件会員権を購入すると決断した一番の理由は,コース数の多さ及びおもしろさ,クラブハウスの設計の良さ等から原告がeデザインの客を連れて行けることである旨述べる一方で,平成元年10月ころは,d社の資本金,従業員数,利益額等は勿論,名前も知らなかったと供述しているから,eデザインが本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,cゴルフ倶楽部とd社との関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員募集に際しEがeデザインに交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社はcゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,d社が本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体はcゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,d社がcゴルフ倶楽部のバックにある旨のEによる説明内容が,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
さらに,原告は,Eが銀行が保証するからと説明した旨供述するが,Eはこれを否定する証言をしており,他にEが上記の説明をしたことを認めるに足りる証拠はない上,原告の述べるところによっても,本件会員権につきa銀行が一定額での買取りを約束するとか,預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると,その意味するところは,a銀行が本件ゴルフ場を優良なゴルフ倶楽部であると評価していることを述べたものとみるのが相当であり,Eの行った説明が,本件会員権の安全性を過度に強調したものであって,eデザインが本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったとは認めることはできない。
したがって,Eが,本件会員権の内容に関し,eデザインの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告の主張は採用することができない。
3  争点1イ(本件会員権に関する断定的な説明の有無)について
(1)  原告は,a銀行が,本件会員権購入の勧誘に際し,ゴルフ場の経営が万全であるかのような断定的な説明を行い,また,ゴルフ会員権の価格は様々な要素により変動するものであるにもかかわらず,当時の会員権相場の趨勢として相場の上昇も示唆したり,縁故募集であるから安く購入できるとか,将来の値上がりも期待できるとか不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そこで検討するに,a銀行が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件会員権の購入希望者に対して,その購入資金を融資しようとする場合において,購入希望者に対して自ら本件会員権の内容を説明する際には,信義則上,できる限り正確な説明をすべき義務を負うことは2(1)に判示のとおりであり,預託金返還の可能性やゴルフ会員権相場の動向等の投資判断を左右するような重要な事実について,不確実なものをあたかも確実な事実として断定的に説明した結果,購入希望者の任意かつ自由な判断を誤らせたときは,これを信用して本件会員権を購入した者に対し,上記断定的説明と相当因果関係のある損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
(2)  これを本件についてみると,原告は,Eが,eデザインに対し,「銀行としても応援している」とか「銀行としても保証するゴルフ場である」と説明し,また,当時の会員権相場の趨勢として相場の上昇も示唆したり,「縁故募集で安く購入できる」と説明し,「今買わなければ明日は購入できない」という話も付け加えたと主張する。
そして,原告は,その調査回答書(甲50)において,「大変人気があり,銀行としても応援してますので,購入して戴きたいという説明あり。」,「当時の趨勢の中で,会員権相場の上昇を説明していました。」,「縁故会員で安く購入できるという強い押がありました。」旨を述べ,また,Eも,eデザインに対し,将来つぶれる心配はないし,社会情勢から,将来損をすることはないであろう旨説明したと証言しており,これらの証拠によれば,Eは,eデザインに対し,これまでのゴルフ会員権の相場の状況からみて,将来値下がりすることはなく,値上がりする可能性があるという見込みを説明したことが認められる。
しかしながら,Eがeデザインに対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いており(甲N12の11),Eは預託金が返ってこないとは全く考えていなかったというのであり,Eはこうした状況を背景に主観的な評価を述べたにすぎないと認められる。そして,eデザインが本件会員権を購入した当時におけるゴルフ会員権相場の状況等を考慮すると,当時の状況の下において,本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したことが,全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告自身,本件会員権購入以前に既にeデザイン又は原告名義で別のゴルフ場の会員権を所有していたのであって(原告本人),原告がゴルフ会員権の価格変動により損失を被る可能性を理解していなかったとは到底認められないところ,原告も,その調査回答書(甲50)において,「当時の趨勢の中で,会員権相場の上昇を説明していました。」と述べており,原告自身,Eの上記発言の趣旨を理解していたと推認することができる。そうであるならば,Eの上記発言は,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,eデザインの代表者である原告においてもその趣旨を理解していたのであるから,これによりeデザインの任意かつ自由な判断が誤らされたものとは認めることができず,Eが「将来損をすることはない」旨説明したことをもって,不法行為を構成すべき断定的説明に該当するものということはできない。
また,Eがeデザインに対して銀行としても応援する旨や縁故会員で安く購入できる旨について述べたことを認めるに足りる証拠はないし,仮にこれらが認められるとしても,銀行としても応援する旨の説明は,断定的説明とは解し得ないし,縁故会員で安く購入できる旨の説明は,当時のゴルフ会員権の販売方法からみた一般的状況を述べたにすぎず,断定的説明ということはできない。
したがって,Eが,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,eデザインの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告の主張は採用することができない。
4  争点1ウ(本件会員権の危険性に関する説明義務違反の有無)について
(1)  原告は,bカントリーがcゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それら事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることや,今後のゴルフ事業には不確定要素が多く,預託金の将来の償還については危険性がある状況であったことを,a銀行は知り又は知り得たにもかかわらず,eデザインにこれらの危険性を説明しなかった義務違反があると主張する。
しかしながら,金融機関の従業員が,その取引先等に対して融資を受けてゴルフ会員権を購入するように積極的に勧誘し,その結果として,当該取引先等がゴルフ会員権を購入するに至ったものの,自ら虚偽の説明や,不確実なものをあたかも確実な事実とする断定的な説明を行ったことにより当該取引先等の判断を誤らせたという事情は存在しない場合においては,当該従業員がゴルフ会員権の預託金の償還が見込まれないことを認識していながらこれを当該取引先等に殊更に知らせなかったことなど,信義則上,当該従業員の当該取引先等に対する説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情のない限り,当該従業員がゴルフ場運営会社の経営内容や預託金の償還可能性等について調査した上で顧客に説明しなかったとしても,それが法的義務に違反し,当該取引先等に対する不法行為を構成するものということはできないものというべきである。
(2)  これを本件についてみると,本件提携ローン合意に基づき,Eはeデザインに対して本件会員権の購入を勧誘したものであり,eデザインによる会員権の購入とa銀行からの融資は極めて密接な関連性を有していることは前記2(1)のとおりであり,この事実は,上記の特段の事情を肯定する方向の一要素ということができる。
しかしながら,証拠(甲120,甲N11の12,甲N12の2,5から11まで,甲N13の5)によれば,昭和60年ころから,ゴルフ場の開発がブームになり,ゴルフ会員権の相場も高騰を始め,昭和63年ころから平成元年ころにかけては,さらに相場が上昇し,千葉県内のゴルフ会員権が数千万円で販売されることも珍しくない状態であったことが認められ,一部にゴルフ場の供給過剰を懸念する指摘もあったものの,本件会員権購入の勧誘当時において,ゴルフ場を経営する会社の倒産やゴルフ場の開発の著しい遅延という具体的な状況が存し,社会的な問題となっていたという状況はうかがうことはできず,一般にcゴルフ倶楽部を含むゴルフ場運営会社が破たんするおそれがあると予見できる状況にはなかったことが認められる。
cゴルフ倶楽部が民事再生手続開始の申立てをするに至った原因をみても,その主たる要因は,bカントリー関係の海外ゴルフ場等への投融資が回収不能に陥ったこと,バブル経済崩壊後における経済不況の深刻化・長期化によって,会員権購入のためのローンの支払が困難となる会員が続出した結果,金融機関からcゴルフ倶楽部への保証債務の履行請求が相次いだこと,本件会員権の相場の大幅な下落により会員からの預託金の返還請求が避けられない見込みとなったことによるものであり,いずれも,eデザインが本件会員権を購入した後に生じたものである。
このほか,本件会員権購入の勧誘当時,cゴルフ倶楽部やbカントリーが,他のゴルフ場運営会社と比較して特に経営基盤が脆弱で預託金の返還の実行余力に乏しいと認識されていたとか,被告がcゴルフ倶楽部やbカントリーの将来における破綻を予測させるような事実ないしその兆候を認識していたと認めるに足りる証拠もなく,これを予測することは極めて困難であったというべきである。
一方,eデザインの代表者である原告は,デザイン会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,しかも,ゴルフを趣味とし,本件会員権購入の勧誘当時,eデザイン又は原告名義で三つのゴルフ会員権を所有していたこと,原告は,Eからの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的,動機は,原告としても,本件ゴルフ場のコースが魅力的であり,顧客を接待できるゴルフ場が欲しかったということであったこと(以上の事実は,原告本人)に照らすと,原告が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,Eが原告の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
以上の諸点にかんがみると,本件において,信義則上,Eのeデザインに対する説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情を認めることはできず,Eがcゴルフ倶楽部の経営内容や預託金の償還可能性等について調査した上でeデザインに説明しなかったとしても,それが法的義務に違反し,a銀行のeデザインに対する不法行為を構成するものということはできない。
5  争点1エ(金融機関の優越的地位の濫用の有無)について
原告は,Eは,著名金融機関の営業課長としての社会的な信用に加えて,eデザインとの継続的な銀行取引によって培ってきた信頼関係や,eデザインの経営内容や資産状況などの内情を把握しているという点や,融資している若しくは今後も融資の可否を判断する立場という総合的な優越的地位を有しており,その立場を利用して本件会員権の販売を媒介したと主張し,eデザインの事務所を何度も訪問して,執拗に勧誘することによって,これを断った場合には融資に不都合が生じるとのプレッシャーを与え,それを利用して勧誘を行ったと主張する。
なるほど,金融機関が,顧客に対し,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,不利益な条件での取引を余儀なくさせた場合には,不法行為を構成する余地があるものと解すべきである(独占禁止法2条9項5号,19条及び一般指定14項1号)。
これを本件についてみると,原告は,その調査回答書(甲50)において,「断った場合の当方の弱みを突いた感じがありました。」,「毎日の様に銀行の営業マンが来社して購入を勧められ,当時の風潮では,今購入しないと明日は購入できないという恫喝的な案内があったと思います。根抵当で銀行から借金をしていると,断った場合の次回融資に難問が出るのではと危惧する感はありました。」と恫喝的な案内があった旨を述べている。
しかしながら,原告は,本人尋問においては,「僕も恫喝的とは決して思ってないんですが,やはりかなりお金をお借りしててお金をお返ししてる中で,こういうお話もあるからどうだっていう銀行からの勧めがあって,それもある程度優良な法人じゃないとこういう話は持ってきませんよっていうようなお話があったもんですから,それでお話として受け取っていったというのがありますですね。」,「あちらとしてはかなりギブ・アンド・テーク的な話があったような感じはありますですね。」と供述し,恫喝的ではなく相互の利益を考慮した交渉であった旨を認めていること,Eがcゴルフ倶楽部の勧誘を行っている間も,a銀行の担当者は毎週のようにeデザインに対して新規融資を受けるよう勧誘していたこと(原告本人)に照らすと,Eが,eデザインに対し,本件会員権を購入しなければ融資をしないとか,既存の融資の早期返済を迫る等の不利益を与える態度を示していたとは認められない。
したがって,a銀行が金融機関としての取引上の優越的地位を不当に利用したものとは認められず,原告の主張は,理由がない。
6  争点1オ(販売媒介行為の銀行法違反の有無)について
原告は,ゴルフ場関係者の説明や勧誘など一切介在しない入会手続は,銀行法及び大蔵省の通達によって禁止されている銀行の目的外行為であり,その行為に対して協力預金という名のもとに対価が支払われていたから,違法であると主張する。
そこで検討するに,Eは,eデザインの本件会員権購入に際し,eデザインからcゴルフ倶楽部に対する入会申込書を受領してcゴルフ倶楽部に送付したこと,他方,eデザインは,本件会員権を購入するにあたって,Eから説明を受けたのみで,bカントリーやcゴルフ倶楽部の関係者が関与したことがなかったことは,前記第2の1(2)及び(3)のとおりである。
なるほど,銀行法は,10条1項1号ないし3号において,銀行の営む業務を列挙した上,同条2項において,同項に掲げる業務その他の銀行業に付随する業務を営むことができると規定し,12条において,10条及び11条の規定により営む業務及び担保付社債信託法その他の法律により営む業務のほか,他の業務を営むことはできないと規定して,銀行が法の定める業務のほか,他の業務を営むことを禁止している。
しかしながら,本件において,a銀行自身はゴルフ場運営事業を営むものではなく,本件会員権購入の勧誘は,a銀行の業務そのものである融資契約の締結を勧誘する目的で行われたものであるから,本件会員権購入の勧誘行為自体は,銀行法10条2項の定める銀行業に付随する業務とみることができないではない。
また,銀行法が,銀行の行う業務を制限した趣旨は,銀行に無制限の業務を許した場合には,その業務の内容及び遂行如何によって,銀行が多大な損失を被り,経営基盤を危うくする事態も想定されることから,銀行の行うことができる業務を一定の範囲に制限し,もって,銀行経営の健全性を確保することにあると解されるところ,a銀行の従業員が本件会員権購入の媒介をしたとしても,直接,a銀行が何らかの債務を負担するものではないから,本件会員権購入の媒介をすることにより,直ちに被告の経営の健全性が損われるおそれがあるということもできない。そうすると,本件会員権購入の勧誘は,cゴルフ倶楽部若しくはbカントリーの関係者の関与がなかったとしても,銀行法12条の趣旨に違反するとまでいうことはできない。
さらに,原告は,本件会員権購入の勧誘が,大蔵省の発出した通達に違反すると主張し,「普通銀行の業務運営に関する基本事項等について」(昭和57年4月1日蔵銀第901号)の別紙1「銀行経営のあり方」1(3)「社会的批判を受けかねない過剰サービスの自粛」中の「他金融機関への過度な預金紹介,顧客に対する金融商品以外の商品の紹介・斡旋,顧客が振り出した他店券の見做現金扱いによる不当な便益供与,顧客の印鑑及び押印済預金払戻請求書の預かりなど正常な取引慣行に反する行為,その他過当競争の弊害を招き社会的批判を受けかねない行為は厳に慎しむものとする。」との記載部分を指摘する。しかしながら,同通達の別紙1は,平成4年4月30日に定められたものであって,本件会員権購入の勧誘当時には存在しないものであったから,原告の主張は,その前提を欠くといわざるを得ない。
したがって,a銀行の行った本件会員権購入の勧誘が,銀行法12条に違反し,不法行為に該当するという原告の主張は,採用することができない。
第4  結論
以上のとおり,a銀行の勧誘行為について違法性があるということはできず,その余について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとしし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鹿子木康 裁判官 小川雅敏 裁判官 進藤光慶)

 

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