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「営業支援」に関する裁判例(130)平成19年 3月15日 東京地裁 平17(ワ)7089号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(130)平成19年 3月15日 東京地裁 平17(ワ)7089号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成19年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)7089号・平17(ワ)22154号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA03158006

要旨
◆原告らが、原告らの取引先でありゴルフ場から会員権購入者の紹介を依頼されていた被告信用金庫は、原告らがゴルフ会員権を購入するに際し、虚偽の説明あるいは値上がりについて断定的な説明を行った、ゴルフ会員権の危険性について説明しなかった、金融機関の優越的地位を利用して販売を行った、ゴルフ会員権の販売媒介行為が銀行法に違反するなどと主張して、不法行為に基づき損害賠償を求めた事案において、原告らの主張をいずれも排斥して、損害賠償請求を棄却した事例

参照条文
民法709条
銀行法12条
信用金庫法53条
信用金庫法91条

裁判年月日  平成19年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)7089号・平17(ワ)22154号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA03158006

東京都荒川区〈以下省略〉
第1事件原告 三森工業株式会社
(以下「原告三森工業」という。)
同代表者代表取締役 甲山A夫
東京都文京区〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社眼科器械のマキノ
(以下「原告眼科器械のマキノ」という。)
同代表者代表取締役 乙川B子
東京都台東区〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社高梨
(以下「原告高梨」という。)
同代表者代表取締役 丙谷C雄
東京都台東区〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社オーモリ
(以下「原告オーモリ」という。)
同代表者代表取締役 丁沢D郎
東京都墨田区〈以下省略〉
第1事件原告 有限会社石川べつ甲製作所
(以下「原告石川べつ甲製作所」という。)
同代表者代表取締役 戊野E介
東京都台東区〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社東京ロン
(以下「原告東京ロン」という。)
同代表者代表取締役 己原F作
東京都文京区〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社海老原ゴム商会
(以下「原告海老原ゴム商会」という。)
同代表者代表取締役 庚崎G平
東京都文京区〈以下省略〉
第2事件原告 渋谷商事株式会社
(以下「原告渋谷商事」という。)
同代表者代表取締役 辛田H吉
東京都荒川区〈以下省略〉
第2事件原告 株式会社中根材木店
(以下「原告中根材木店」という。)
同代表者代表取締役 壬岡I夫
東京都豊島区〈以下省略〉
第2事件原告 株式会社東和エージェンシー
(以下「原告東和エージェンシー」という。)
同代表者代表取締役 癸井J美
東京都足立区〈以下省略〉
第2事件原告 株式会社島原建設
(以下「原告島原建設」という。)
同代表者代表取締役 丑木K雄
東京都墨田区〈以下省略〉
第2事件原告 タイキ工業株式会社
(以下「原告タイキ工業」という。)
同代表者代表取締役 寅葉L郎
千葉県市川市〈以下省略〉
第2事件原告 ジェトル株式会社
(以下「原告ジェトル」という。)
同代表者代表取締役 寅葉L郎
上記13名訴訟代理人弁護士 道本幸伸
同 永井均
同 渡瀬耕
同訴訟復代理人弁護士 坂井崇徳
同 永井妥衣子
同 尾崎洋之
同 池田泰介
東京都台東区〈以下省略〉
第1事件及び第2事件被告 朝日信用金庫
(以下「被告」という。)
同代表者代表理事 卯波M介
同訴訟代理人弁護士 淺井洋

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告三森工業
被告は,原告三森工業に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告眼科器械のマキノ
被告は,原告眼科器械のマキノに対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告高梨
被告は,原告高梨に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  原告オーモリ
被告は,原告オーモリに対し,金4000万円及びこれに対する平成3年7月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  原告石川べつ甲製作所
被告は,原告石川べつ甲製作所に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6  原告東京ロン
被告は,原告東京ロンに対し,金3500万円及びこれに対する平成2年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7  原告海老原ゴム商会
被告は,原告海老原ゴム商会に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8  原告渋谷商事
被告は,原告渋谷商事に対し,金4000万円及びこれに対する平成3年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9  原告中根材木店
被告は,原告中根材木店に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10  原告東和エージェンシー
被告は,原告東和エージェンシーに対し,金3500万円及びこれに対する平成2年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
11  原告島原建設
被告は,原告島原建設に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
12  原告タイキ工業
被告は,原告タイキ工業に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
13  原告ジェトル
被告は,原告ジェトルに対し,金3500万円及びこれに対する平成元年12月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告らが,ゴルフ会員権の購入に関して,被告から違法な勧誘を受けたことにより損害を被ったと主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
1  前提事実(証拠等で認定した事実については,各項の末尾に証拠等を摘示した。)
(1)  ゴルフ場の経営主体等
ア 富士カントリー株式会社(以下「富士カントリー」という。)は,昭和46年12月,ゴルフ場の開発とゴルフ場運営会社への出資及び会員権販売請負を目的として設立された。富士カントリーは,自らゴルフ場事業を営むほか,有限会社大多喜城ゴルフ倶楽部(以下「大多喜城ゴルフ倶楽部」という。)を含むグループ企業の中核会社として,グループ企業に対して金融支援,営業支援及び業務支援をしていた。(甲27の1,2)
イ フジパン株式会社(以下「フジパン」という。)は,富士カントリーの株式を有していた時期があるものの,昭和61年ころ資本関係は解消された。しかし,辰口N作は,昭和26年からフジパンの取締役,昭和40年から代表取締役を務めるとともに,昭和46年から平成15年まで富士カントリーの取締役,昭和52年から昭和56年まで代表取締役を務め,また,辰口O平は,昭和40年から平成15年までフジパンの取締役,昭和48年から平成15年まで代表取締役を務めるとともに,昭和46年から平成16年12月まで富士カントリーの代表取締役を務めており,資本関係解消後も,フジパンと富士カントリー間には,人的な関係が存在した。(甲1の1,4,5,甲2の1から3まで,甲3の1から5まで,甲27の1,2,分離前相被告辰口O平本人)
ウ 大多喜城ゴルフ倶楽部は,富士カントリー大多喜城倶楽部(以下「本件ゴルフ場」という。)の開発・運営を主たる目的として,昭和61年9月,株式会社富士カントリー大多喜城ゴルフ倶楽部の商号で設立され,平成13年8月,有限会社に組織変更し,平成17年8月1日,現商号に変更した。
辰口O平は,平成元年1月から平成11年ころまで大多喜城ゴルフ倶楽部の取締役,平成元年1月から平成6年3月まで代表取締役であった。(甲5の1から4まで,甲64,甲Ⅰ30の3)
エ 大多喜城ゴルフ倶楽部は,平成元年7月以降,本件ゴルフ場のゴルフ会員を募集し,その際,富士カントリーが募集代行業者を務めた。(甲64,70の2)
(2)  被告の勧誘行為
ア 被告は,平成元年11月下旬,富士カントリーから,本件ゴルフ場の会員権(以下「本件会員権」という。)募集について,取引先等の紹介を依頼され,同年12月1日,大多喜城ゴルフ倶楽部及び富士カントリーとの間で,被告が,本件会員権の購入希望者に対して,その購入資金を融資するとともに,大多喜城ゴルフ倶楽部が購入希望者の借入債務について被告に対して連帯保証する旨の提携ローンの合意をした。(乙Ⅰ1,証人午下,分離前相被告辰口O平本人)
イ 原告三森工業は,昭和58年11月に設立された舞台機構製作据付を主な業務とする会社であり,会社設立のころから,被告東尾久支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告東尾久支店営業係長未山Q吉(以下「未山」という。)は,平成2年1月ころ,原告三森工業の事務所を訪問して,原告三森工業代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲45の1,甲70の1から4まで,乙Ⅰ2,証人未山,原告三森工業代表者)
ウ 原告眼科器械のマキノは,昭和51年12月に設立された医療器具卸販売を主な業務とする会社であり,会社設立のころから,被告湯島支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告湯島支店営業係長申川R夫(以下「申川」という。)は,平成元年12月ころ,原告眼科器械のマキノの事務所を訪問して,原告眼科器械のマキノ代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲45の2,甲70の1から4まで,乙Ⅰ3,証人申川,原告眼科器械のマキノ代表者)
エ 原告高梨は,昭和49年1月に設立された皮革製品製造卸を主な業務とする会社であり,被告浅草橋支店とは銀行取引はなかった。
被告浅草橋支店営業次長酉谷S雄(以下「酉谷」という。)は,平成元年12月ころ,原告高梨の事務所を訪問して,原告高梨代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲45の3,甲70の1から4まで,乙Ⅰ4,証人酉谷,原告高梨代表者)
オ 原告オーモリは,昭和56年8月に設立された建築資材・鋼材の販売を主な業務とする会社であり,昭和57年ころから,被告本店とは継続的な銀行取引を行っていた。
被告本店営業担当者(原告オーモリは,勧誘したのは被告本店次長の一人であると主張するが,他に勧誘者の氏名を特定するに足りる証拠はなく,以下,当該勧誘者を「被告本店担当者」という。)は,平成3年5月ころ,原告オーモリの事務所を訪問して,原告オーモリ代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲45の4,甲70の1から4まで,乙Ⅰ5,6,証人戌沢,原告オーモリ代表者)
カ 原告石川べつ甲製作所は,昭和54年4月に設立されたべつ甲アクセサリー製造を主な業務とする会社であり,昭和58年ころから,被告押上支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告押上支店営業次長亥野U介(以下「亥野」という。原告石川べつ甲製作所は,亥野ではなく,亥野の部下が勧誘した旨主張するけれども,証人亥野の証言によれば,勧誘を行ったのは亥野であると認められる。)は,平成2年2月ころ,原告石川べつ甲製作所の事務所を訪問して,原告石川べつ甲製作所代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲45の5,甲70の1から4まで,乙Ⅰ7,証人亥野,原告石川べつ甲製作所代表者)
キ 原告東京ロンは,昭和52年11月に設立された婦人フォーマルウェアの製造卸売を主な業務とする会社であり,昭和53年8月ころから,被告豊島町支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告豊島町支店営業係甲川V作(以下「甲川」という。)は,平成2年1月ころ,原告東京ロンの事務所を訪問して,原告東京ロン代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲45の6,甲70の1から4まで,乙Ⅰ8,証人甲川,原告東京ロン代表者)
ク 原告海老原ゴム商会は,昭和22年11月に設立された医療理化学工業用ゴムプラスチック製品卸を主な業務とする会社であり,昭和60年ころから,被告湯島支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告湯島支店営業係長申川は,平成元年12月ころ,原告海老原ゴム商会の事務所を訪問して,原告海老原ゴム商会代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲45の7,甲70の1から4まで,乙Ⅰ9,証人申川,原告海老原ゴム商会代表者)
ケ 原告渋谷商事は,大正11年3月に設立された不動産貸付を主な業務とする会社であり,昭和60年ころから,被告根津支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告根津支店支店長乙谷W平(以下「乙谷」という。)は,平成3年4月ころ,被告根津支店において,原告渋谷商事代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲70の1から4まで,甲71の1,乙Ⅰ10,証人乙谷,原告渋谷商事代表者)
コ 原告中根材木店は,昭和27年ころに設立された木材販売を主な業務とする会社であり,昭和59年8月ころから,被告荒川支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告荒川支店渉外係丙沢A吉(以下「丙沢」という。当時は旧姓丁野)は,平成2年1月ころ,原告中根材木店の事務所を訪問して,原告中根材木店代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲70の1から4まで,甲71の2,乙Ⅰ11,証人丙沢,原告中根材木店代表者)
サ 原告東和エージェンシーは,昭和41年に設立された大型,中型トラック及び特殊車の新車,中古車の販売を主な業務とする会社であり(現在は休業中),会社設立のころから,被告西巣鴨支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告西巣鴨支店渉外係長戊原B夫(以下「戊原」という。)は,平成2年1月ころ,原告東和エージェンシーの事務所を訪問して,原告東和エージェンシー代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲70の1から4まで,甲71の3,乙Ⅰ12,証人戊原,原告東和エージェンシー代表者)
シ 原告島原建設は,昭和59年2月に設立された建設業を主な業務とする会社であり,同年4月ころから,被告六月支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告六月支店支店長己崎C雄(以下「己崎」という。)は,平成2年2月ころ,渉外係長庚田D郎(以下「庚田」という。)を同行して,原告島原建設の事務所を訪問して,原告島原建設代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲70の1から4まで,甲71の4,乙Ⅰ13,証人庚田,原告島原建設代表者)
ス 原告タイキ工業は,昭和52年8月に設立された給・配水管清掃を主な業務とする会社であり,法人化前の個人営業であった昭和51年夏ころから,被告豊島町支店と継続的な銀行取引を行っていた。原告ジェトルは,昭和59年11月に設立された特許工法,配水管旋回洗浄の開発及びシステム販売を主な業務とする会社であり,原告タイキ工業と同様に,被告豊島町支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告豊島町支店の行員(原告タイキ工業及び原告ジェトルは,勧誘したのは被告豊島町支店融資次長であると主張するが,本件会員権購入の勧誘当時に同支店融資次長であった辛岡E介は,その陳述書(乙Ⅰ14)において,勧誘の事実を否定しており,他に勧誘者の氏名を特定するに足りる証拠はなく,以下,当該勧誘者を「豊島町支店担当者」という。)は,平成元年12月ころ,原告タイキ工業の事務所を訪問して,原告タイキ工業代表者兼原告ジェトル代表者(以下単に「原告タイキ工業代表者」という。)に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。(甲70の1から4まで,甲71の5,6,乙Ⅰ15,原告タイキ工業代表者)
セ 原告らは,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかったと主張し,原告ら代表者は,その調査回答書及び代表者尋問において,これに沿う供述をするのに対し,被告は,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が原告ら代表者に対して説明を行ったと主張する。
そこで検討すると,原告ら(原告渋谷商事を除く。)に対する勧誘を行った被告担当者(乙谷を除く。)は,いずれもその陳述書において,原告らの事務所を訪問した際,ゴルフ会社の担当者が同席していたかどうか覚えていない又は同席していないが,少なくとも1度はゴルフ会社の担当者が直接原告代表者に本件ゴルフ場の説明をしていると記憶している旨(乙Ⅰ2から4まで,7,12及び13),ゴルフ会社の担当者が同席していたかどうかは覚えていないが,少なくとも1回はゴルフ会社の担当者を連れて行き,説明させたと記憶している旨(乙Ⅰ9)又はゴルフ会社の担当者には,一度は直接お取引先に会員募集の説明をするよう依頼していた旨(乙Ⅰ6,8,11及び15)述べているが,他方,証人尋問においては,実際に富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が原告ら代表者に対して説明したかどうかは確認していない旨,又はその氏名は記憶していない旨証言しているのであって,これらの証言及び富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者と会ったり,説明を受けたことはない旨の原告ら代表者の供述に照らして,被告担当者の前記供述は採用することができず,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかったと認めることができる。
また,乙谷は,その陳述書(乙Ⅰ10)において,原告渋谷商事代表者に対しては,根津支店に来店した富士カントリーの営業担当者が原告渋谷商事代表者に本件会員権の説明を行い,自分も同席した旨述べるが,証人尋問においては,その名前及び役職は記憶していない旨証言しており,この証言及び富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者と会ったり,説明を受けたことはない旨の原告渋谷商事代表者の供述に照らして,乙谷の前記供述は採用することができず,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかったと認めることができる。
(3)  会員権の購入
ア 原告三森工業は,平成2年1月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して未山に交付し,未山は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告三森工業の入会を承諾した。
原告三森工業は,同年1月31日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同年2月1日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲45の1,乙Ⅰ2,証人未山,原告三森工業代表者)
イ 原告眼科器械のマキノは,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して申川に交付し,申川は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告眼科器械のマキノの入会を承諾した。
原告眼科器械のマキノは,同月16日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月19日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲45の2,乙Ⅰ3,証人申川,原告眼科器械のマキノ代表者)
ウ 原告高梨は,平成2年1月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して酉谷に交付し,酉谷は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告高梨の入会を承諾した。
原告高梨は,同月9日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲45の3,乙Ⅰ4,証人酉谷,原告高梨代表者)
エ 原告オーモリは,平成3年7月ころ,本件会員権を4000万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して被告本店担当者に交付し,被告本店担当者は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告オーモリの入会を承諾した。
原告オーモリは,同月18日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため4000万円の融資を受け,同月19日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金500万円を含む4500万円を支払った。(甲45の4,乙Ⅰ5,証人戌沢,原告オーモリ代表者)
オ 原告石川べつ甲製作所は,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して亥野に交付し,亥野は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告石川べつ甲製作所の入会を承諾した。
原告石川べつ甲製作所は,同月16日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲45の5,乙Ⅰ7,証人亥野,原告石川べつ甲製作所代表者)
カ 原告東京ロンは,平成2年1月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して甲川又は被告豊島町支店の行員(以下「豊島町支店行員」という。)に交付し,甲川又は豊島町支店行員は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告東京ロンの入会を承諾した。
原告東京ロンは,同月29日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲45の6,乙Ⅰ8,証人甲川,原告東京ロン代表者)
キ 原告海老原ゴム商会は,平成2年2月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して申川に交付し,申川は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告海老原ゴム商会の入会を承諾した。
原告海老原ゴム商会は,同年2月23日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲45の7,乙Ⅰ9,証人申川,原告海老原ゴム商会代表者)
ク 原告渋谷商事は,平成3年5月,本件会員権を4000万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して乙谷に交付し,乙谷は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告渋谷商事の入会を承諾した。
原告渋谷商事は,同月17日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため1000万円の融資を受け,同月20日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金4000万円を含む4500万円を支払った。(甲71の1,乙Ⅰ10,証人乙谷,原告渋谷商事代表者)
ケ 原告中根材木店は,平成2年2月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して丙沢に交付し,丙沢は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告中根材木店の入会を承諾した。
原告中根材木店は,同年3月2日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月5日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲71の2,乙Ⅰ11,証人丙沢,原告中根材木店代表者)
コ 原告東和エージェンシーは,平成2年2月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して戊原に交付し,戊原は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告東和エージェンシーの入会を承諾した。
原告東和エージェンシーは,同月16日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲71の3,乙Ⅰ12,証人戊原,原告東和エージェンシー代表者)
サ 原告島原建設は,平成2年2月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して庚田に交付し,庚田は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告島原建設の入会を承諾した。
原告島原建設は,同年3月5日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月13日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲71の4,乙Ⅰ13,証人庚田,原告島原建設代表者)
シ 原告タイキ工業及び原告ジェトルは,平成元年12月,本件会員権をそれぞれ3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して豊島町支店担当者に交付し,豊島町支店担当者は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告ジェトルの入会を,平成2年3月ころ,原告タイキ工業の入会を承諾した。
原告ジェトルは,平成元年12月29日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
原告タイキ工業は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。(甲71の5,6,乙Ⅰ14,原告タイキ工業代表者)
(4)  大多喜城ゴルフ倶楽部の推移
ア 大多喜城ゴルフ倶楽部は,被告以外の金融機関とも,本件会員権の購入に関して,前記(2)アと同様の提携ローンの合意を行い,これらの金融機関の紹介により,平成元年以降,特別縁故募集として800名の法人会員を集めた後,追加の第一次募集を行い,平成4年11月30日,本件ゴルフ場を開場した(平成12年ころの公表会員数は法人939名)。(甲42,64,甲70の2)
イ 大多喜城ゴルフ倶楽部は,本件ゴルフ場開場後,海外でのプレーを希望する会員への利便性提供の意味を含め,豊富な預託金により富士カントリー関係の海外ゴルフ場等への投融資を行ったが,その後海外のゴルフ場の価額が大幅に下落し,出資会社が大幅な債務超過に陥ったことから,出資金の回収が不能となった。
また,バブル経済崩壊後における経済不況の深刻化・長期化によって,会員権購入のためのローンの支払が困難となる会員が続出した結果,金融機関から,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して保証債務の履行請求が相次ぎ,履行ができない状態に陥った。
さらに平成7年当時約1000万円であった会員権相場が,平成15年には250万円程度に下落し,預託金券面額を大幅に割り込むこととなり,大多喜城ゴルフ倶楽部は,平成16年12月30日以降に償還時期を順次迎える預託金について,会員権の分割を条件に据置期間の延長を求めたが,その約3割について同意を得ることができず,預託金返還請求に応じられない見込みとなった。(甲28の1,甲64)
ウ こうしたことから,大多喜城ゴルフ倶楽部は,平成16年12月6日に,当庁に対して民事再生手続開始の申立てを行って倒産し,同月10日に民事再生手続開始決定を受けた。その後,平成17年4月27日,スポンサーとして東急不動産株式会社を選定し,預託金返還請求権について元本等の95%の免除を受けること等を内容とする再生計画について認可決定を受けた。(甲28の1,甲64,甲Ⅰ30の1,2,乙C6,8,9)
2  争点
(1)  本件会員権購入の勧誘を行った者(以下「被告担当者」という。)による被告の勧誘行為が,以下のとおり違法なものであって,被告の故意又は過失による不法行為に該当するか(争点1)。
ア 本件会員権に関する虚偽の説明
イ 本件会員権に関する断定的な説明
ウ 本件会員権の危険性に関する説明義務違反
エ 金融機関の優越的地位の濫用
オ 販売媒介行為の銀行法違反
(2)  被告担当者による勧誘行為について,被告は使用者責任を負うか(予備的主張,争点2)。
(3)  原告らは,被告の不法行為により損害を被ったといえるか(争点3)。
(4)  原告らの損害賠償請求権が時効により消滅したといえるか(争点4)。
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(被告の違法な勧誘行為)について
ア 本件会員権に関する虚偽の説明
(ア) 原告らについて
(原告らの主張)
本件会員権の募集当時,フジパンは富士カントリーの親会社ではなく,フジパンが,富士カントリー及びその子会社である大多喜城ゴルフ倶楽部のゴルフ場の経営や預託金の償還について責任を負担したり,保証をしたりする関係にはなかったのであるから,被告は,そのような誤解を与えることのないような説明を行うべきであった。それにもかかわらず,富士カントリーは,被告の各支店に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部をフジパンが経営母体であるとか,フジパンが関連会社であるとの説明を行い,これを受けて,被告担当者もその説明を了解して,そのまま顧客に対するセールストークとして使用することとし,原告らに対し,あたかもフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場であり,経営的に余裕があり,経営の安定性や永続性がフジパンによって保証され,このため値上がりも期待できるし,将来の預託金返還も安心できるゴルフ場であるかのような虚偽の説明を行った。
(被告の主張)
被告担当者が本件会員権に関する虚偽の説明をしたことは否認する。
被告担当者は,富士カントリーから預かった本件ゴルフ場のパンフレットを持参し,これを顧客に渡して,本件会員権の紹介をしただけであり,その際,フジパンのゴルフ場とか,フジパンがバックと説明したことはない。
ゴルフ場における「バック又は経営母体」という用語は,それだけでは色々な意味があり,母体企業の支援の内容も,精神的な意味から万が一の場合における企業生命を賭ける救済まで様々な程度が考えられる。したがって,契約における重要な事項に関する虚偽の表示といえるためには,万が一の場合は経営母体が救済するということを明言していることが必要であるが,本件では,この点に関して具体的主張立証がない。
(イ) 原告三森工業について
(原告三森工業の主張)
未山は,勧誘に際して「富士カントリーはフジパン系列である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。
(ウ) 原告眼科器械のマキノについて
(原告眼科器械のマキノの主張)
申川は,勧誘に際して「大多喜城はフジパンのゴルフ場である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告眼科器械のマキノは,富士カントリーが経営していた出島倶楽部の購入の時に土地の調査をして,役所の人が土地をフジパンにあっせんしたと聞き,フジパンのゴルフ場と安心して購入していた。本件会員権購入の際も,富士カントリーとフジパンを区別していなかったので,フジパングループのゴルフ場として購入したのである。
(エ) 原告高梨について
(原告高梨の主張)
酉谷は,勧誘に際して「大多喜城はフジパンのゴルフ場だから安心だ」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告高梨は,被告との銀行取引は本件会員権の紹介の前後を通じて全くない。また,本件会員権を購入する時は,すでに富士カントリー富岡倶楽部のゴルフ会員権を購入しており,ただ,接待用の豪華なコースと聞いて購入したのである。
(オ) 原告オーモリについて
(原告オーモリの主張)
被告本店担当者は,勧誘に際して「富士カントリーはフジパン系列である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。
(カ) 原告石川べつ甲製作所について
(原告石川べつ甲製作所の主張)
亥野は,勧誘に際して「大多喜城はフジパンがついているので経営的にはまったく安心」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。仮に亥野からその趣旨の説明を受けたとしても,原告石川べつ甲製作所は,亥野の説明を信じて購入したのではない。
(キ) 原告東京ロンについて
(原告東京ロンの主張)
甲川又は豊島町支店行員は,勧誘に際して「大多喜城カントリー倶楽部はフジパンが経営しているので,絶対安心で大丈夫です」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。
(ク) 原告海老原ゴム商会について
(原告海老原ゴム商会の主張)
申川は,勧誘に際して「フジパンの経営だから間違いない」「フジパンがついているゴルフ場だから,絶対大丈夫」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。仮に,原告海老原ゴム商会代表者が,フジパンの経営,フジパンは無借金経営だから安全と聞いたとしても,本件ゴルフ場のパンフレットに経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部と記載されていたことは原告海老原ゴム商会代表者も知っており,フジパンの話があったとしても関連会社であり,母体とかバックと理解したにすぎない。
(ケ) 原告渋谷商事について
(原告渋谷商事の主張)
乙谷は,勧誘に際して「大多喜城はフジパンの子会社」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。
(コ) 原告中根材木店について
(原告中根材木店の主張)
丙沢は,勧誘に際して「フジカントリーグループはフジパンがバックだから絶対に間違いがない」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。丙沢は普段から何かものを強力に売り込むようなことをするような人ではない。原告中根材木店代表者は,既に,富士カントリーが経営していた出島倶楽部は,フジパンがバックについているということをあらかじめ知っていたのであり,丙沢が大多喜城ゴルフ倶楽部は,フジパンがバックだと虚偽の事実を告げる必要はなかった。また,丙沢は,万が一の場合は,フジパンが援助するから安心だ,大多喜城ゴルフ倶楽部の財務体質を調べたがこの会社なら絶対大丈夫ですと虚偽の事実を述べたわけでもない。
(サ) 原告東和エージェンシーについて
(原告東和エージェンシーの主張)
戊原は,勧誘に際して,フジパンが資産のある無借金経営であることを含め「フジパンというのが母体だから絶対間違いない」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。本件ゴルフ場のパンフレットには,フジパンが母体だと書いてなかったし,大多喜城ゴルフ倶楽部と書いてあったことは原告東和エージェンシー代表者も確認しているにもかかわらず,原告東和エージェンシーは,フジパン又は富士カントリーにフジパンが母体なのかどうかということを確認していないし,フジパンという会社も調べていない。
(シ) 原告島原建設について
(原告島原建設の主張)
庚田は,勧誘に際して,フジパンが資産のある無借金経営であることを含め「フジパンのやっているゴルフ場である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告島原建設代表者が,フジパンが開発しているゴルフ場であると説明を聞いたのは,知人で当時ゴルフ場の支配人をしていた人間からである。本件会員権を購入したのは,もっぱら知人の支配人の助言に従ったからである。
(ス) 原告タイキ工業及び原告ジェトルについて
(原告タイキ工業及び原告ジェトルの主張)
被告豊島町支店融資次長は,勧誘に際して,フジパンが資産のある無借金経営であることを含め「フジパンが経営している」「フジパンが造った」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告タイキ工業代表者は,房総カントリークラブのゴルフ会員権を買った時は,フジパンが母体,フジパンが経営しているという話を受け,富士カントリーとフジパンとは一体と理解していた。したがって,豊島町支店担当者が,本件会員権の紹介に際し,詐欺的勧誘をする必要はなかった。
イ 本件会員権に関する断定的な説明
(ア) 原告らについて
(原告らの主張)
ゴルフ会員権が異常な値上がりをしている反面で,ゴルフ場の事業については不確定要素が多い状況であり,15年後という長期に亘る預託金の償還については危険性があるにもかかわらず,被告担当者は,本件会員権購入の勧誘に際し,将来値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明した。
(被告の主張)
欺罔行為に当たる説明があったか否かの判断にあたっては,当時の背景事情,説明者の立場,紹介を受けた顧客の知識・経験及び財産状況を考慮し,行為当時の当事者の立場に立って一般人がこれを判断しなければならない。
原告らはいずれも企業経営者であり,ゴルフ場や会員権相場に知識や関心を持っていたのであるから,単純に高騰するというだけでは足りず,当事者の立場に立った一般人をして相当の根拠があると誤信させる言い方でなければならない。また,預託金の返還についても,原告らが簡単に誤信することはなく,原告らが確実に預託金が返ると信じる特別事情の存在が必要である。これに対し,原告らが主張する説明内容は抽象的であって具体性がなく,詐欺的勧誘とはいえない。
本件会員権購入の勧誘当時はバブル期でゴルフ会員権相場の値上がり又は高値安定が予想された時期であり,ゴルフ会員権は,たとえ高額なものであっても,ゴルフ場の運営実績のある会社の会員権であれば,今後の高騰や高値安定の見込みから販売ができたのであり,被告担当者は,値上がりするとの不確実な事項を述べる必要はなかった。また,預託金の返還に不安を感じる者はなかったのであり,ことさらに,15年後の預託金返還が確実であることを強調する必要はなかった。
さらに,本件損害賠償請求は,本件会員権販売後10年以上も経って,大多喜城ゴルフ倶楽部が倒産してから初めて行われた。原告らは,その間,各地でゴルフ場運営会社が倒産し,会員権相場が下落した時期も,被告に対し,詐欺的勧誘を理由にローンの支払停止や損害賠償を求めることはなかったのであり,このことは,被告が詐欺的勧誘を行っていないことを物語っている。
(イ) 原告三森工業について
(原告三森工業の主張)
未山は,原告三森工業代表者に対し,「母体がしっかりしているから,最悪の場合でも金利並みの儲けは期待できる」「お金は朝日が出すし,連帯保証は大多喜城がするから心配はない」と説明した。
(被告の主張)
否認する。原告三森工業代表者は,既に別のゴルフ会員権を持ち,会員権についても知識を有していた。
(ウ) 原告眼科器械のマキノについて
(原告眼科器械のマキノの主張)
申川は,原告眼科器械のマキノ代表者に対し,「無借金経営のフジパンが作ったゴルフ場であるから,心配がない」「自分達も買っているので心配ない」と説明した。
(被告の主張)
否認する。原告眼科器械のマキノは,会員権が値上がりするとか,預託金が戻ることについては,特に危惧は抱いていなかったし,申川から詐欺的行為を受けたことはない。
(エ) 原告高梨について
(原告高梨の主張)
酉谷は,原告高梨代表者に対し,「間違いない」「安心だ」「必ず値上がりする,億カンになる」と説明した。
(被告の主張)
否認する。預託金が15年後に確実に返されることが話題とされる余地はなかった。
(オ) 原告オーモリについて
(原告オーモリの主張)
被告本店担当者は,原告オーモリ代表者に対し,「値上がり間違いなし」「預託金の返還は100%可能」「最悪の場合でも金利並みの儲けは期待できる」と説明した。
(被告の主張)
否認する。預託金が15年後に確実に返されることが話題とされる余地はなかった。
(カ) 原告石川べつ甲製作所について
(原告石川べつ甲製作所の主張)
亥野は,原告石川べつ甲製作所代表者に対し,「金利以上に上がるのは間違いない,この投資は全く有利」「最悪でも元金は間違いなく保証される」と説明した。
(被告の主張)
否認する。仮に,原告石川べつ甲製作所代表者が「金利以上に値上がりするのでこの投資は有利である,特定のお客を選んでいるので買わなくては損だ」という説明を受けたとしても,亥野の発言を信じて本件会員権を購入したのではない。また,預託金が15年後に確実に返されることが話題とされる余地はなかった。
(キ) 原告東京ロンについて
(原告東京ロンの主張)
甲川又は豊島町支店行員は,原告東京ロン代表者に対し,「フジパンが経営しているので,絶対安心で大丈夫です」「開場したら間違いなく5000万以上になるでしょうから,もし必要でなくなったら引き取ります」と説明した。
(被告の主張)
否認する。原告東京ロンは,「5000万円に値上がりする」「貴方もご存じの通り絶対安心」「被告信用金庫が引き取る約定があった」「決断をせかした」と説明されたと主張するが,このような言辞を金融機関の職員が言ったというのは余りにも非常識であって不自然であり,平成5ないし10年ころにゴルフ会員権相場が値下がりした時に,被告に文句を言ったことがないことは余りにも不自然である。
(ク) 原告海老原ゴム商会について
(原告海老原ゴム商会の主張)
申川は,原告海老原ゴム商会代表者に対し,「預託金の返還は必ず受けられる」「利益を生む会員権です」「数年で倍になる」「最悪の場合でも金利並みの儲けは期待できる」と説明した。
(被告の主張)
否認する。仮に原告海老原ゴム商会代表者が「フジパンが(バックに)付いている」と言われたとしても,この程度では,絶対潰れない,安全である,値上がりすると誤信する,すなわち将来の不確実な事項について確実と誤解することはあり得ない。申川が本件会員権を募集要項やパンフレットで紹介したところ,原告海老原ゴム商会代表者が,利殖の意味でおつき合いしたにすぎない。
(ケ) 原告渋谷商事について
(原告渋谷商事の主張)
乙谷は,原告渋谷商事代表者に対し,「フジパンは安定した会社なので大丈夫」「この会員権は将来有望」と説明した。
(被告の主張)
否認する。
(コ) 原告中根材木店について
(原告中根材木店の主張)
丙沢は,原告中根材木店代表者に対し,「銀行が持ってきたものであるから,15年後には確実に戻ってくる,絶対そんな変なものは銀行は持って来ませんよ」「億になる」と説明した。
(被告の主張)
否認する。
(サ) 原告東和エージェンシーについて
(原告東和エージェンシーの主張)
戊原は,原告東和エージェンシー代表者に対し,「フジパンだから絶対間違いない」「無借金経営だから間違いない」「買っておけば3倍になるよ」と説明した。
(被告の主張)
否認する。原告東和エージェンシーは,代表者個人の持っていたゴルフ会員権が,当時20万で買ったものが2000万になり,縁故募集の場合は当時必ず会員権が値上がりしていた事実を知っていたから,値段が上がると思って購入したものであり,預託金が15年後に確実に返される事が話題とされる余地はなかった。
(シ) 原告島原建設について
(原告島原建設の主張)
庚田は,原告島原建設代表者に対し,「フジパンなので絶対に安全です」「今回が1次募集で,2次募集のときには3800万円にはなる」と説明した。
(被告の主張)
否認する。原告島原建設代表者は,預託金の返還についての説明は一切聞いていない。
(ス) 原告タイキ工業及び原告ジェトルについて
(原告タイキ工業及び原告ジェトルの主張)
被告豊島町支店融資次長は,原告タイキ工業代表者に対し,「フジパンがついているから預託金の返還については絶対安心」「有力なお客様に損をさせるようなことはしない」「市場で取引できるようになれば絶対上がる」と説明した。
(被告の主張)
否認する。
ウ 本件会員権の危険性に関する説明義務違反
(原告らの主張)
被告は,富士カントリーの関連会社に被告の出身者を出向させており,富士カントリーが大多喜城ゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それらの事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることを知っていたか又は当然に知ることができた。それにもかかわらず,被告担当者は,これらの危険性を原告らに説明しなかった。
また,被告は,ゴルフ事業そのものが供給過多により会員権相場の崩落のおそれが予測されており,長期に亘る預託金の償還については危険性がある状況であることを知っていた。それにもかかわらず,被告担当者は,その危険を原告らに説明しなかった。
(被告の主張)
被告担当者に本件会員権の危険性に関する説明義務違反があることは否認する。
紹介者が金融機関といえども,紹介時に,ゴルフ場運営会社と特別な関係がない限り,ゴルフ場運営会社が,当該販売資金をゴルフ場経営のために有効に使うことは期待するとしても,将来の経営及び業績は予測できない。被告は,大多喜城ゴルフ倶楽部が資金を流用する意思であったとの点は全く知らない。したがって,投機取引のリスク説明をする義務など存在しない。
エ 金融機関の優越的地位の濫用
(原告らの主張)
被告担当者は,著名金融機関の行員としての社会的な信用に加えて,原告らとの継続的な銀行取引によって培ってきた信頼関係や,同原告らの経営内容や資産状況などの内情を把握しているという点や,融資している若しくは今後も融資の可否を判断する立場という総合的な優越的地位を有していた。被告は,その立場を利用して本件会員権の販売を媒介した。
(被告の主張)
否認する。優越的な地位を利用した契約誘引行為など存在しない。
オ 販売媒介行為の銀行法違反
(原告らの主張)
被告担当者は,単なるゴルフ場の紹介にとどまらず,ゴルフ場の会員契約を直接媒介して入会申込書までも原告らから受領した。ゴルフ場関係者による説明や勧誘などが一切介在しない銀行の直接媒介による入会手続は,銀行法や大蔵省の通達によって禁止されている銀行の目的外行為であり,当然に違法である(銀行法12条)。また,被告の紹介により10件入会契約が締結されると,富士カントリーから被告に対して1億円の協力預金が提供されることにより対価が支払われていたから,特にその違法性は強い。
(被告の主張)
被告は,販売行為や販売代行等はしていない。
(2)  争点2(使用者責任,予備的主張)について
(原告らの主張)
被告担当者が行った勧誘行為は,被告の事業執行に際して行われたものである。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
(3)  争点3(損害)について
(原告三森工業の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告三森工業は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告三森工業は,平成2年2月5日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告三森工業は,同年1月31日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1376万円となる。
その結果,原告三森工業は,購入代金と利息合計額の5185万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告三森工業は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金額の5%である175万円に下落したと評価される。
ウ 原告三森工業は,購入代金と利息合計額の5185万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5385万円から現在の本件会員権の価値の175万円を差し引いた5210万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年2月5日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告眼科器械のマキノの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告眼科器械のマキノは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告眼科器械のマキノは,平成2年3月20日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告眼科器械のマキノは,同年1月31日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1376万円となる。
その結果,原告眼科器械のマキノは,購入代金と利息合計額の5185万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われた。また,原告眼科器械のマキノに対して,辰口O平の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告眼科器械のマキノは,購入代金と利息合計額の5185万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5385万円から受領した179万0628円を差し引いた5205万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月20日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告高梨の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告高梨は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告高梨は,平成2年1月20日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告高梨は,株式会社協和銀行(当時)とのローン契約によって利息を支払い,10年間の支払利息の合計は1298万円となる。
その結果,原告高梨は,購入代金と利息合計額の5107万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われた。また,原告高梨に対して,辰口O平の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告高梨は,購入代金と利息合計額の5107万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5307万円から受領した179万0628円を差し引いた5127万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年1月20日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告オーモリの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告オーモリは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告オーモリは,平成3年7月19日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金500万円と預託金4000万円の合計4500万円を支払った。原告オーモリは,同月18日,被告との間で,4000万円のローン契約を締結し,15年間の支払利息の合計は2567万円となる。
その結果,原告オーモリは,購入代金と利息合計額の7067万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告オーモリは,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金の5%である175万円に下落したと評価される。また,原告オーモリに対して,辰口O平の私財提供という名目で4万6432円の支払がされた。さらに,原告オーモリは,いまだ被告に債務残高が198万円ある。
ウ 原告オーモリは,購入代金と利息合計額の7067万円に,弁護士費用200万円を加算した合計7267万円から現在の本件会員権の価値の175万円及び受領した額に残債務を加えた377万6432円を差し引いた6889万3568円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として4000万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成3年7月19日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告石川べつ甲製作所の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告石川べつ甲製作所は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告石川べつ甲製作所は,平成2年3月16日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告石川べつ甲製作所は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1376万円となる。
その結果,原告石川べつ甲製作所は,購入代金と利息合計額の5185万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告石川べつ甲製作所は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金額の5%である175万円に下落したと評価される。
ウ 原告石川べつ甲製作所は,購入代金と利息合計額の5185万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5385万円から現在の本件会員権の価値の175万円を差し引いた5210万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月16日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告東京ロンの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告東京ロンは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告東京ロンは,平成2年1月20日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告東京ロンは,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1374万円となる。
その結果,原告東京ロンは,購入代金と利息合計額の5183万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告東京ロンは,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金の5%である175万円に下落したと評価される。また,原告東京ロンに対して,辰口O平の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告東京ロンは,購入代金と利息合計額の5183万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5383万円から現在の本件会員権の価値の175万円及び受領額の合計179万0628円を差し引いた5203万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年1月20日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告海老原ゴム商会の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告海老原ゴム商会は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告海老原ゴム商会は,平成2年2月26日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告海老原ゴム商会は,同月23日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1497万円となる。
その結果,原告海老原ゴム商会は,購入代金と利息合計額の5306万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告海老原ゴム商会は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金の5%である175万円に下落したと評価される。また,原告海老原ゴム商会に対して,辰口O平の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告海老原ゴム商会は,購入代金と利息合計額の5306万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5506万円から現在の本件会員権の価値の175万円及び受領額の合計179万0628円を差し引いた5326万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年2月26日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告渋谷商事の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告渋谷商事は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告渋谷商事は,平成3年5月20日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金500万円と預託金4000万円の合計4500万円を支払った。原告渋谷商事は,同月17日,被告との間で,4000万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1549万円となる。
その結果,原告渋谷商事は,購入代金と利息合計額の6049万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会した原告渋谷商事に対して204万6432円が支払われた。
ウ 原告渋谷商事は,購入代金と利息合計額の6049万円に,弁護士費用200万円を加算した合計6249万円から受領した204万6432円を差し引いた6044万3568円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として4000万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成3年5月20日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告中根材木店の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告中根材木店は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告中根材木店は,平成2年3月5日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告中根材木店は,同月2日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,7年間の支払利息の合計は885万円となる。
その結果,原告中根材木店は,購入代金と利息合計額の4694万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告中根材木店は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金の5%である175万円に下落したと評価される。また,原告中根材木店に対して,辰口O平の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告中根材木店は,購入代金と利息合計額の4694万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4894万円から現在の本件会員権の価値の175万円及び受領額の合計179万0628円を差し引いた4714万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月5日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告東和エージェンシーの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告東和エージェンシーは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告東和エージェンシーは,平成2年2月20日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告東和エージェンシーは,同月16日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,4年間の支払利息の合計は857万円となる。
その結果,原告東和エージェンシーは,購入代金と利息合計額の4666万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われた。また,原告東和エージェンシーに対して,辰口O平の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告東和エージェンシーは,購入代金と利息合計額の4666万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4866万円から受領した179万0628円を差し引いた4686万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年2月20日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告島原建設の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告島原建設は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告島原建設は,平成2年3月15日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告島原建設は,同月5日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は997万円となる。
その結果,原告島原建設は,購入代金と利息合計額の4806万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告島原建設は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での本件会員権の実質価格は預託金額の5%である175万円に下落したと評価される。また,原告島原建設に対して,辰口O平の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告島原建設は,購入代金と利息合計額の4806万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5006万円から現在の本件会員権の価値の175万円及び受領額の合計179万0628円を差し引いた4826万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月15日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告タイキ工業及び原告ジェトルの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告タイキ工業及び原告ジェトルは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告タイキ工業は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告タイキ工業は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1374万円となる。その結果,原告タイキ工業は,購入代金と利息合計額の5183万円の損害を被った。
原告ジェトルは,平成元年12月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告ジェトルは,同月29日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,10年間の支払利息の合計は1373万円となる。その結果,原告ジェトルは,購入代金と利息合計額の5182万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われた。また,原告タイキ工業及び原告ジェトルに対して,辰口O平の私財提供という名目でそれぞれ4万0628円の支払がされた。
ウ 原告タイキ工業は,購入代金と利息合計額の5183万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5383万円から受領した179万0628円を差し引いた5203万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
原告ジェトルは,購入代金と利息合計額の5182万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5382万円から受領した179万0628円を差し引いた5202万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成元年12月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(被告の主張)
原告らの損害の主張は争う。
原告渋谷商事のローン契約の金額は1000万円である。原告高梨を除くその余の原告らについて被告とのローン契約の締結は認める。原告らの支払利息の合計額は固定金利で計算しているものと思われるが,変動金利のものも多く不正確である。ただし,現状では確認できない。
(4)  争点4(消滅時効)について
(被告の主張)
ア 被告担当者が,原告らに対し,本件会員権を紹介した時期は,昭和62年から平成4年の間である。この際,仮に原告ら主張の虚偽の勧誘があったとしてみても,契約書及び手続書類には,「フジパンが経営責任を持つ」との記載が全くなく,被告担当者が言った言辞は虚偽であることは,原告らは契約書を見て確認していたから,原告らの不法行為による損害賠償請求権は,契約の時から3年の経過とともに時効により消滅する。
イ 原告らの時効の始期は,原告三森工業が平成2年1月末日(原告三森工業の主張では同年2月5日),原告眼科器械のマキノが平成2年1月末日,原告高梨が平成2年1月7日,原告オーモリが平成3年5月末日,原告石川べつ甲製作所が平成2年2月末日,原告東京ロンが平成2年1月15日,原告海老原ゴム商会が平成2年2月末日,原告渋谷商事が平成3年5月初旬,原告中根材木店が平成2年2月末日,原告東和エージェンシーが平成2年1月末日,原告島原建設が平成2年2月末日,原告タイキ工業が平成元年12月末日,原告ジェトルが平成元年12月末日である。
ウ 被告は,平成18年10月19日の本件口頭弁論期日において,上記消滅時効を援用するとの意思表示をした。
(原告らの主張)
被告の消滅時効の主張は争う。
第3  当裁判所の判断
1  被告担当者による勧誘行為の位置づけについて
被告は,大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,被告が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件会員権の購入希望者に対して,その購入資金を融資するとともに,大多喜城ゴルフ倶楽部が購入希望者の借入債務について被告に対して連帯保証する旨の提携ローンの合意(以下「本件提携ローン合意」という。)をしたことは,前記第2の1(2)アに認定のとおりである。
そして,証拠(甲Ⅰ1,証人壬井,証人午下)によれば,富士カントリーの担当者が,平成元年11月下旬ころ,被告の理事兼業務部長である癸木G平に対し,本件会員権の縁故募集について希望者の紹介を依頼したこと,これを受けて,被告本部において,被告の有力な取引先の中でゴルフ会員権に興味のある取引先に本件会員権を紹介することを決定し,被告本部から各支店長に対し,本件会員権の縁故募集の紹介依頼と本件提携ローン合意の内容が伝達されたことが認められるから,被告担当者は,被告本部の方針に基づき,原告らに対して,被告の提携ローンを利用して本件会員権を購入することを勧誘したということができる。
そうであれば,被告担当者(酉谷を除く。)が,原告らに対して行った本件会員権購入の勧誘は,被告の営業行為そのものであるから,被告の不法行為の成否の検討においては,被告担当者の行った本件会員権購入の勧誘行為は,被告による勧誘行為と解して妨げないというべきである。また,原告高梨に対する本件会員権購入の勧誘については,提携ローンの利用を前提としたものではないけれども(乙Ⅰ4,原告高梨代表者),酉谷は,被告本部の方針に基づき,被告浅草橋支店の取引先の紹介により原告高梨に対する勧誘を行っているから(乙Ⅰ4),同様に被告による勧誘行為と解して妨げないというべきである。
2  争点1ア(本件会員権に関する虚偽の説明の有無)について
(1)  原告らは,本件会員権の募集当時,フジパンは富士カントリーの親会社ではなく,フジパンが富士カントリー及びその子会社である大多喜城ゴルフ倶楽部のゴルフ場の経営や将来の預託金の償還について責任を負担したり,保証をしたりする関係にはなかったのであるから,被告は,そのような誤解を与えることのないような説明を行うべきであったにもかかわらず,あたかもフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場であり,経営的に余裕があり,経営の安定性や永続性がフジパンによって保証され,値上がりも期待できるし,将来の預託金返還も安心できるゴルフ場であるかのような虚偽の説明を行ったと主張する。
そこで検討するに,被告は,本件提携ローン合意に基づき,原告ら(原告高梨を除く。)に対して本件会員権の購入を勧誘したものであり,取引先等による本件会員権の購入と被告からの融資は極めて密接な関連性を有しているから,被告は,取引先等に対して自ら本件会員権の内容を説明するにあたっては,信義則上,できる限り正確な説明をすべきであり,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明をしたときは,これを信用して本件会員権を購入した者に対し,上記虚偽の説明と相当因果関係のある損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
また,原告高梨に対する本件会員権購入の勧誘については,提携ローンの利用を前提としたものではないけれども,原告高梨が本件会員権を購入することにより被告は富士カントリーから協力預金を得るという利益があったというのであるから(乙Ⅰ4),原告高梨に対する勧誘についても同様に解するのが相当である。
(2)  富士カントリーの依頼内容について
原告らは,富士カントリーが,被告の各支店に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部をフジパンが経営母体であるとか,フジパンが関連会社であるとの説明を行い,これを受けて,被告担当者もその説明を了解して,そのまま顧客に対するセールストークとして使用することとし,原告らに対し,あたかもフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場であり,経営的に余裕があり,経営の安定性や永続性がフジパンにより保証され,このため値上がりも期待できるし,将来の預託金返還も安心できるゴルフ場であるかのような虚偽の説明を行ったと主張する。
なるほど,原告らが上記の事実を示す重要な証拠として指摘する「富士カントリー市原倶楽部会員募集について」と題する書面(甲Ⅰ19の1)には,「当店親密取引先富士カントリー株式会社では総力を結集して千葉県市原市に富士カントリー市原倶楽部18ホールズをオープンいたしました。ご高承のとおり,当社はフジパン株式会社の関連優良会社で,関東・中部地区を中心に459ホールズを有するゴルフ場経営最大手の一つで,当行とは極めて親密な取引関係があります。」との記載があり,同書面に添付された「ゴルフ倶楽部会員券販売情報」と題する書面(甲Ⅰ19の2)には,「経営会社:富士カントリー株式会社,系列:フジパン株式会社」との記載がある。しかしながら,これらの書面は,株式会社第一勧業銀行(以下「第一勧業銀行」という。)作成に係る書類であって(「ゴルフ倶楽部会員券販売情報」と題する書面も,第一勧業銀行作成に係る「富士カントリー市原倶楽部会員募集について」と題する書面に添付されたものであること及び照会窓口欄の「富士カントリー(株)丑葉部長」との記載の後に(当行出向者)との記載があることから,第一勧業銀行作成と認められる。),被告作成に係る書面ではなく,いずれも平成6年当時に富士カントリー市原倶楽部の会員募集に関して,第一勧業銀行八重洲口支店長から同銀行の他の支店長に対して発せられた依頼文書であることが明らかである。
同様に,原告らは,上記の事実を示す重要な証拠として「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲41)をも指摘するが,同書面は,本件会員権の募集代行業者であった富士カントリー及び東方興業株式会社が,本件会員権の募集に関して,平成元年12月7日,株式会社千葉銀行の部・室長・営業店長に宛てて送付したものであって,被告作成に係る書面ではなく,また,同書面には,事業母体が富士カントリー,運営会社が大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しない。
これらの事実に加えて,本件会員権の募集当時に富士カントリー代表取締役であった辰口O平は,本件会員権の募集当時は,募集開始と同時に購入申込みが殺到する状況であって,富士カントリーが金融機関に対して,フジパンのゴルフ場であることを説明して,金融機関の取引先に本件会員権を紹介してほしい旨依頼したことはない旨供述していること(分離前相被告辰口O平本人),被告の各支店において,支店長又は次長に対して,本件会員権の顧客への紹介を依頼した壬井F作は,パンフレット及び募集要項に基づき紹介することを依頼したものであり,フジパンのゴルフ場であることを説明してほしい旨依頼したことはない旨証言をしており(証人壬井),壬井F作が支店長又は次長に交付した本件ゴルフ場のパンフレット及び募集要項(甲70の1,2)にも,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないことに照らすと,原告らが指摘する各書面(甲Ⅰ19の1,2,甲41)をもって,富士カントリーが,被告の各支店に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部をフジパンが経営母体であるとか,フジパンが関連会社であるとの説明を行うことを依頼し,これを受けて,被告担当者が,本件ゴルフ場についてフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場である旨を説明したと推認することはできない。
(3)  原告三森工業について
原告三森工業は,未山が,勧誘に際して,富士カントリーはフジパン系列であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告三森工業代表者は,その調査回答書(甲45の1)において,未山から「フジパンの系列子会社であるので,いわゆる母体が信頼できるので安心して買えばよい」と説明された旨を述べる。また,原告三森工業代表者の妻である甲山I代も,その陳述書(甲Ⅰ11)において,「フジパンがバックのゴルフ場だから大丈夫」と説明された旨を述べる。
他方,未山は,その陳述書(乙Ⅰ2)において,大多喜城ゴルフ倶楽部が富士カントリーグループの企業であるといったことは話したが,母体が信頼できるので安心して買えばよいという説明はしていないと述べ,証人尋問においても,当時フジパンを知らなかったし,富士カントリーがフジパン系列の子会社であると説明したことはないと証言する。また,原告三森工業代表者自身,代表者尋問において,大多喜城ゴルフ倶楽部の経営母体については何か説明がありましたかという質問に対し,「特に説明はありません。フジパン系列であると,一言ぐらいは聞いたと思いますけども」「あんまり事細かな説明はなくて,ひとつおつき合いくださいませんかということぐらいでした」と述べており,未山の説明内容について具体性に欠けるといわざるを得ない。これらの証言等に照らすと,原告三森工業代表者の供述等をもって,未山が,原告三森工業代表者に対し,富士カントリーはフジパンの系列であるから安心である旨説明したこととは認めるには足りない。
念のため,仮に未山が富士カントリーはフジパン系列であると説明したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,富士カントリーがフジパン系列であるという説明は,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
また,原告三森工業代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,被告との取引を深めることが決め手であったと述べる一方,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係を調査したことはなかったというのであるから,原告三森工業が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し未山が原告三森工業代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に未山がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,未山が,本件会員権の内容に関し,原告三森工業の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告三森工業の主張は採用することができない。
(4)  原告眼科器械のマキノについて
原告眼科器械のマキノは,申川が,勧誘に際して,大多喜城はフジパンのゴルフ場であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告眼科器械のマキノ代表者は,その調査回答書(甲45の2)において,申川から「無借金経営のフジパンが作ったゴルフ場だから心配ない」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,「フジパンがやっている会社で安全なところだから買いませんか」「フジパンがやっていまして,全然心配ない」と勧誘を受けた旨供述している。
他方,申川は,証人尋問において,フジパンが経営しているとか,フジパンがバックにあると言ったことはないと証言する。また,原告眼科器械のマキノ代表者は,代表者尋問において,本件会員権購入前に,富士カントリー出島倶楽部の会員権を購入したときにも,フジパンが経営している,又はフジパンがバックにあると聞いたと供述し,申川からフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係について聞いたかははっきりしないと供述している。これらの証言等に照らすと,原告眼科器械のマキノ代表者の供述等をもって,申川が,原告眼科器械のマキノ代表者に対し,本件ゴルフ場はフジパンの作ったゴルフ場である旨の説明をしたとは認められない。
念のため,仮に申川がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告眼科器械のマキノ代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,長いつきあいもあり,お世話になっている被告からの紹介であったため購入したのであり,他からの紹介であれば購入しなかった旨述べ,また,当時,多少の余裕もあったので,買っておいて損はないと思ったし,色気もあった旨述べる一方,フジパンの経営内容についての知識はなかったというのであるから,原告眼科器械のマキノが本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し申川が原告眼科器械のマキノ代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に申川がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,申川が,本件会員権の内容に関し,原告眼科器械のマキノの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告眼科器械のマキノの主張は採用することができない。
(5)  原告高梨について
原告高梨は,酉谷が,勧誘に際して,大多喜城はフジパンのゴルフ場だから安心だという説明を行ったと主張する。
そして,原告高梨代表者は,その調査回答書(甲45の3)において,酉谷から「フジパンがバックについているから間違いはない」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,「富士カントリーは,フジパンがバックに,実質やっているゴルフ場だから安心だよ」と聞いた旨供述している。また,原告高梨代表者を酉谷に紹介した卯口J吉も,その陳述書(甲Ⅰ12)において,富士カントリー市原倶楽部及び富士カントリー富岡倶楽部のゴルフ会員権購入の勧誘の際に,酉谷から,これらはフジパンのゴルフ場であるとの説明を受けた旨述べている。
他方,酉谷は,証人尋問において,富士カントリーグループという説明はしたかもしれないが,当時フジパンを知らなかったし,フジパンと富士カントリーの関係も知らなかったので,フジパンがバックについているという説明はしていないと証言している。この証言に照らすと,原告高梨代表者の供述等をもって,酉谷が,原告高梨代表者に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部はフジパンがバックについているから間違いない旨を説明したと認めるには足りない。
念のため,仮に酉谷が大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにはフジパンがついていると説明したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにあるという説明は,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
また,原告高梨代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,信用金庫として信用がある被告の浅草橋支店次長からの紹介であったことと,また,当時ゴルフ会員権の相場が値上がりしており,投資としての魅力が大変あったことを挙げる一方,フジパンについては,製パン業者としては大手であることを知っていたものの,フジパンの経営内容について調査はしなかったし,本件会員権購入に伴い原告高梨代表者が大多喜城ゴルフ倶楽部から受領した仮領収書,領収書,入会通知書,預り証書のいずれにも,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないにもかかわらず疑問は抱かなかったというのであるから,原告高梨が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し酉谷が原告高梨代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に酉谷がフジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにあるという説明をしたとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,酉谷が,本件会員権の内容に関し,原告高梨の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告高梨の主張は採用することができない。
(6)  原告オーモリについて
原告オーモリは,被告本店担当者が,勧誘に際して富士カントリーはフジパン系列であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告オーモリ代表者は,その調査回答書(甲45の4)において,被告本店担当者から「名古屋の優良企業フジパンが100%出資,役員も派遣するゴルフ場」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,「経営はフジパンが事実上やっておるので間違いない」と聞いた旨供述している。
他方,原告オーモリ代表者は,代表者尋問において,本件会員権購入以前にも,被告の紹介で富士カントリー富岡倶楽部のゴルフ会員権を購入し,その際もフジパンのゴルフ場と説明を受けた旨供述しており,この供述に照らすと,原告オーモリ代表者が富士カントリーとフジパンとが何らかの関係を有するという認識を有していたとしても,それが,被告本店担当者が原告オーモリ代表者に対し,フジパンと富士カントリーとの関係を説明したことによるものと即断することはできない。また,原告オーモリ代表者は,その調査回答書(甲45の4)においては,勧誘者は本店次長の辰上K夫であったと思う旨供述していたのに対し,代表者尋問においては,本件会員権購入の勧誘を行った担当者が誰であったかは正確ではなく,名前の記憶はないというのであり,あいまいな点が少なくない。これらの点に照らすと,原告オーモリ代表者の供述等をもって,被告本店担当者が,原告オーモリ代表者に対し,本件ゴルフ場がフジパンのゴルフ場である旨を説明したと認めることはできない。
念のため,仮に被告本店担当者がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告オーモリ代表者は,その調査回答書(甲45の4)及び代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,被告本店担当者から度重なる勧誘を受けたのでしようがないかなと思ったと述べる一方で,代表者尋問において,フジパンという会社はあまり知らなかったし,フジパンの業績,規模,借金の状況については一切調べたことはない旨述べるのであるから,原告オーモリが本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し被告本店担当者が原告オーモリ代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に被告本店担当者がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,被告本店担当者が,本件会員権の内容に関し,原告オーモリの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告オーモリの主張は採用することができない。
(7)  原告石川べつ甲製作所について
原告石川べつ甲製作所は,亥野が,勧誘に際して,大多喜城はフジパンがついているので安心であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告石川べつ甲製作所代表者は,その調査回答書(甲45の5)において,「大多喜城ゴルフ倶楽部はバックにフジパンがついているので経営的にはまったく安全なゴルフ場」であると説明された旨を述べ,代表者尋問においても,「とにかく経営してる母体がフジパンということで,しっかりした会社だ」「フジパンがバックにいる」と聞いた旨供述している。
他方,亥野は,その陳述書(乙Ⅰ7)において,フジパンがバックにあるなどと説明していない旨述べ,証人尋問においても,説明したのはパンフレットに記載してある程度のことであり,フジパンのことは知らなかったのでフジパンがバックにあるという説明はしていないと証言する。
そこで検討すると,原告石川べつ甲製作所代表者は,亥野の説明を受けて,本件会員権の購入を検討することとし,義兄に相談したところ,義兄から「フジパンはとにかく大きい会社だし,名古屋のほうでは優秀な会社である」と聞いたというのであり(原告石川べつ甲製作所代表者),このことからすると,亥野が,原告石川べつ甲製作所代表者に対し,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部とが何らかの関係を有することを説明したことを窺い得ないではない。
しかしながら,原告石川べつ甲製作所代表者は,その調査回答書(甲45の5)においては,「積立金のかわりになるので,15年貯蓄だと思い,社員の退職金がわりに当てたら」と言われた旨述べていたのに対し,代表者尋問においては,銀行員が社員の退職金がわりという説明をしたのではなく,自分が退職金がわりになるだろうと思った旨述べており,あいまいな点があることは否定できないこと及び亥野の証言等に照らすと,原告石川べつ甲製作所代表者の供述等をもって,亥野が,原告石川べつ甲製作所代表者に対し,フジパンがバックにいる又は母体だから安全であると説明したと認めるには足りない。
そして,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,仮に亥野がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し亥野が原告石川べつ甲製作所代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に亥野がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,亥野が,本件会員権の内容に関し,原告石川べつ甲製作所の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告石川べつ甲製作所の主張は採用することができない。
(8)  原告東京ロンについて
原告東京ロンは,甲川又は豊島町支店行員が,勧誘に際して大多喜城カントリー倶楽部はフジパンが経営しているので,絶対安心で大丈夫ですという説明を行ったと主張する。
そして,原告東京ロン代表者は,その調査回答書(甲45の6)において,「フジパンが経営しているので絶対安心して大丈夫です」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,友人から富士カントリーはフジパンが経営していると聞いて知っていたところ,本件会員権の購入を勧誘した豊島町支店行員からもフジパンが経営しているので絶対安心であると聞いた旨供述している。
他方,甲川は,その陳述書(乙Ⅰ8)において,原告東京ロンに対して本件会員権の購入を勧誘したのは自分であり,原告東京ロン代表者に対してフジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部の経営母体である旨を説明したことはない旨述べ,証人尋問においても,同旨の証言をしている。また,原告東京ロン代表者は,その調査回答書(甲45の6)においては,本件会員権購入の勧誘を行ったのは,被告浅草橋支店次長の酉谷S雄であると述べていたのに対し,代表者尋問においては,本件会員権の購入を勧誘したのが誰であるのか定かではないと供述するなど,その供述は変遷している上,勧誘担当者を酉谷と特定した理由について,原告東京ロン代表者の近所に住む本件ゴルフ場の会員に対して勧誘を行ったのが酉谷であったから,調査回答書においては勧誘を行ったのは酉谷と回答したと述べるなど,その記憶にはあいまいな点が少なくない。これらの点に照らすと,原告東京ロン代表者の供述等をもって,甲川が,原告東京ロン代表者に対し,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営している旨を説明したと認めることはできない。
念のため,仮に甲川又は豊島町支店行員がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告東京ロン代表者は,甲川から本件会員権の説明を受ける以前から,友人の説明により,富士カントリーはフジパンが経営しているという認識を持っていたのであるから,仮に甲川又は豊島町支店行員がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したとしても,それが原告東京ロンの判断を誤らせたということもできない。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し甲川が原告東京ロン代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に甲川又は豊島町支店行員がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,甲川又は豊島町支店行員が,本件会員権の内容に関し,原告東京ロンの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告東京ロンの主張は採用することができない。
(9)  原告海老原ゴム商会について
原告海老原ゴム商会は,申川が,勧誘に際して,フジパンの経営しているゴルフ場だから間違いないという説明を行ったと主張する。
そして,原告海老原ゴム商会代表者は,その調査回答書(甲45の7)において,申川から「フジパンがついているゴルフ場だから,絶対大丈夫」であると説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営している,フジパンがバックについていると聞いた旨供述している。
他方,申川は,その陳述書(乙Ⅰ9)において,フジパンがついているから心配ないと説明したことはない旨述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をする。この証言等に照らすと,原告海老原ゴム商会代表者の供述等をもって,申川が,原告海老原ゴム商会代表者に対し,フジパンがついているゴルフ場であると説明したことは認めるには足りない。
念のため,仮に申川がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告海老原ゴム商会代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,利殖のためであると述べる一方,フジパンの経営内容は知らなかったが,金融機関の紹介であれば間違いないだろうと判断した旨述べるのであるから,原告海老原ゴム商会が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し申川が原告海老原ゴム商会代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に申川がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,申川が,本件会員権の内容に関し,原告海老原ゴム商会の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告海老原ゴム商会の主張は採用することができない。
(10)  原告渋谷商事について
原告渋谷商事は,乙谷が,勧誘に際して大多喜城はフジパンの子会社という説明を行ったと主張する。
そして,原告渋谷商事代表者は,その調査回答書(甲71の1)において,乙谷から大多喜城ゴルフ倶楽部が「フジパンの子会社」であると説明された旨を述べ,代表者尋問においても,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの系列であると聞いた旨供述している。
他方,乙谷は,その陳述書(乙Ⅰ10)において,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの子会社であるという説明をしたことはない旨を述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をするほか,当時フジパンを知らなかった旨証言する。また,原告渋谷商事代表者は,代表者尋問において,被告根津支店のゴルフコンペで房総カントリークラブや富士カントリー出島倶楽部でゴルフを行ったことがあり,それらがフジパン系列であったので,その関連会社である大多喜城ゴルフ倶楽部もフジパン系列であると認識していた旨供述しており,この供述に照らすと,原告渋谷商事代表者が大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパン系列であるという認識を有していたとしても,それが,乙谷が原告渋谷商事代表者に対し,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係を説明したことによるものと即断することはできない。これらの点に照らすと,原告渋谷商事代表者の供述等をもって,乙谷が,原告渋谷商事代表者に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの子会社であるとか,フジパン系列であると説明したと認めることはできない。
念のため,仮に乙谷がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告渋谷商事代表者は,乙谷から本件会員権の説明を受ける以前から,被告根津支店のゴルフコンペを通じて,大多喜城ゴルフ倶楽部はフジパン系列のゴルフ場であるという認識を持っていたのであるから,仮に乙谷がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したとしても,それが原告渋谷商事の判断を誤らせたということもできない。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し乙谷が原告渋谷商事代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に乙谷がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,乙谷が,本件会員権の内容に関し,原告渋谷商事の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告渋谷商事の主張は採用することができない。
(11)  原告中根材木店について
原告中根材木店は,丙沢が,勧誘に際して,フジパンがバックだから絶対に間違いがないという説明を行ったと主張する。
そして,原告中根材木店代表者は,その調査回答書(甲71の2)において,丙沢から「富士カントリーグループはフジパンがバックだから絶対間違いがない」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンがバックだから安全であると聞いた旨供述している。
他方,丙沢は,その陳述書(乙Ⅰ11)において,フジパンが富士カントリーグループのバックについていると説明したことはない旨述べ,証人尋問においても,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンのことは知らなかったので,フジパンがバックだから安全であるという説明をするはずはない旨の証言をする。また,原告中根材木店代表者は,代表者尋問において,本件会員権購入の勧誘当時,富士カントリー出島倶楽部は,フジパンがバックにあると認識していた旨供述しており,この供述に照らすと,原告中根材木店代表者が富士カントリーグループとフジパンが一体であるという認識を有していたとしても,それが,丙沢が原告中根材木店代表者に対し,フジパンと富士カントリーグループとの関係を説明したことによるものと即断することはできない。さらに,原告中根材木店代表者は,代表者尋問において,主尋問では,丙沢が値下がりとかそういうのはあるかもしれないと説明したと供述する一方,反対尋問においてその点を質問されると,値下がりはあるかもしれないというのは,自分が勝手に考えたことで,丙沢は値上がりすると言っていたと訂正しており,その供述にはあいまいな点があることは否定できない。これらの点に照らすと,原告中根材木店代表者の供述等をもって,丙沢が,原告中根材木店代表者に対し,フジパンが富士カントリーグループのバックであると説明したと認めることはできない。
念のため,仮に丙沢がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告中根材木店代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,担当者である丙沢が熱心でまじめな人柄であったことと,預託金は返還されるという金融機関の説明を信頼したことを挙げる一方で,フジパンについては名前だけは聞いているぐらいで,そんなに思ってはいなかった旨述べるのであるから,原告中根材木店が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し丙沢が原告中根材木店代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に丙沢がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,丙沢が,本件会員権の内容に関し,原告中根材木店の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告中根材木店の主張は採用することができない。
(12)  原告東和エージェンシーについて
原告東和エージェンシーは,戊原が,勧誘に際して,資産のある無借金経営であるフジパンが母体だから絶対間違いないという説明を行ったと主張する。
そして,原告東和エージェンシー代表者は,その調査回答書(甲71の3)において,戊原から「フジパンは親会社である」「富士パンは名古屋一帯で営業し,大変な資産を持ち,無借金会社であり,ここが母体だから絶対心配ない」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンが母体だから絶対間違いない,フジパンは無借金の会社なので絶対間違いないと聞いた旨供述している。
他方,戊原は,その陳述書(乙Ⅰ12)において,あくまでもパンフレット・募集要項などに記載してあることのみを話しただけで,フジパンが親会社なので絶対心配ないと説明したことはない旨述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をするほか,フジパンについても知らなかった旨証言しており,この証言等に照らすと,原告東和エージェンシー代表者の供述等をもって,戊原が,原告東和エージェンシー代表者に対し,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部の親会社だから絶対間違いない旨の説明をしたと認めるには足りない。
念のため,仮に戊原がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,仮に戊原がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告東和エージェンシー代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,被告に対する義理立てと,ゴルフ会員権の縁故募集の場合には当時必ず値段が上がっていたため本件会員権価格の上昇を期待したという利殖目的があると供述する一方で,フジパンについては,その当時知らなかったし,調査もしなかったと供述しているから,原告東和エージェンシーが本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し戊原が原告東和エージェンシー代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に戊原がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,戊原が,本件会員権の内容に関し,原告東和エージェンシーの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告東和エージェンシーの主張は採用することができない。
(13)  原告島原建設について
原告島原建設は,庚田が,勧誘に際して,無借金経営で資産のあるフジパンのやっているゴルフ場であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告島原建設代表者は,その調査回答書(甲71の4)において,庚田から「フジパンが開発しているゴルフ場である」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,大多喜城ゴルフ倶楽部はフジパンのやっているゴルフ場であると聞いた旨供述している。
他方で,原告島原建設代表者は,代表者尋問において,本件会員権購入の勧誘を受けたので,ゴルフ場の支配人を経験した友人に相談をしたところ,その友人から,「フジパンだから大丈夫じゃねえか」との回答を受け,「初めてフジパンがバックにいるというようなシステムの流れは熟知されたんですけども,教えられたんですけど」旨を供述しており,原告島原建設代表者の供述等においても,庚田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係を説明したかはあいまいであり,かえって原告島原建設代表者は友人からそのような説明を受けたことが窺われる。また,庚田は,その陳述書(乙Ⅰ13)において,己崎及び庚田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係を説明したことはないと述べ,証人尋問においても同趣旨の証言をする。これらの点に照らせば,原告島原建設代表者の供述等をもって,庚田が,原告島原建設代表者に対し,本件ゴルフ場はフジパンが経営しているゴルフ場である旨を説明したと認めることはできない。
念のため,仮に己崎又は庚田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,仮に己崎又は庚田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し己崎及び庚田が原告島原建設代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に己崎又は庚田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,己崎又は庚田が,本件会員権の内容に関し,原告島原建設の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告島原建設の主張は採用することができない。
(14)  原告タイキ工業及び原告ジェトルについて
原告タイキ工業及び原告ジェトルは,被告豊島町支店融資次長が,勧誘に際して,資産のある無借金経営であるフジパンが経営しているという説明を行ったと主張する。
そして,原告タイキ工業代表者は,その調査回答書(甲71の5,6)において,被告豊島町支店融資次長から本件ゴルフ場が「フジパンが造ったゴルフ場」「フジパンがバックについているゴルフ場」「フジパンだから安心」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンが経営しているのと一緒,フジパンがバックであると聞いた旨供述している。
他方,原告タイキ工業代表者は,被告豊島町支店融資次長が勧誘者である旨供述するところ,本件会員権購入の勧誘当時に被告豊島町支店融資次長であった辛岡E介は,その陳述書(乙Ⅰ14)において勧誘の事実を否定するのに対し,原告タイキ工業代表者は,勧誘者の名前や容貌については記憶がないというのであり,その記憶にはあいまいな点が少なくない。また,原告タイキ工業代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入する7,8年前に,房総カントリークラブのゴルフ会員権を購入し,その際に,房総カントリークラブはフジパンが経営しているとの話を聞いたことがあり,そのころから富士カントリーとフジパンとは一体と考えていた旨供述しており,この供述に照らすと,原告タイキ工業代表者が富士カントリーとフジパンが一体であるという認識を有していたとしても,それが,豊島町支店担当者が原告タイキ工業代表者に対し,フジパンと富士カントリーとの関係を説明したことによるものと即断することはできない。これらの点に照らせば,原告タイキ工業代表者の供述等をもって,豊島町支店担当者が,原告タイキ工業代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営している旨を説明したと認めるには足りない。
念のため,仮に豊島町支店担当者がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権募集の当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告タイキ工業代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,原告タイキ工業代表者が所有していたゴルフ会員権が値上がりしていたことから,値上がりを期待したという気持ちもあるかもしれないが,原告タイキ工業と原告ジェトルにそれぞれ1口の購入を勧められたので,それを1口になんとか減らそうという気持ちが強かったと供述する一方で,フジパンという会社は,その当時知らなかったし,売上げや借金の状況の説明もなかったと供述しているから,原告タイキ工業及び原告ジェトルが本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入に伴い豊島町支店担当者が原告タイキ工業代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に豊島町支店担当者がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,豊島町支店担当者が,本件会員権の内容に関し,原告タイキ工業及び原告ジェトルの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告タイキ工業及び原告ジェトルの主張は採用することができない。
3  争点1イ(本件会員権に関する断定的な説明の有無)について
(1)  原告らは,被告が,本件会員権購入の勧誘に際し,本件会員権が将来値崩れしない確実なものであり,預託金の返還も確実であると説明し,将来の不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そこで検討するに,被告が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件会員権の購入希望者に対して,その購入資金を融資しようとする場合において,購入希望者に対して自ら本件会員権の内容を説明する際には,信義則上,できる限り正確な説明をすべき義務を負うことは前記2(1)に判示のとおりであり,預託金返還の可能性やゴルフ会員権相場の動向等の投資判断を左右するような重要な事実について,不確実なものをあたかも確実な事実として断定的に説明した結果,購入希望者の任意かつ自由な判断を誤らせたときは,これを信用して本件会員権を購入した者に対し,上記断定的説明と相当因果関係のある損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
また,原告高梨に対する本件会員権購入の勧誘については,購入資金の融資を前提としたものではないけれども,原告高梨が本件会員権を購入することにより被告は富士カントリーから協力預金を得るという利益があったというのであるから(乙Ⅰ4),原告高梨に対する説明についても同様に解するのが相当である。
(2)  原告三森工業について
原告三森工業は,未山が,原告三森工業代表者に対し,資産価値が決して下落しないゴルフ場と断言し,将来の値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告三森工業代表者は,その調査回答書(甲45の1)において,「母体が信頼できるので安心して買えばよい。最悪の場合でも金利並のもうけは保証できる」「全額ローンであり,完済すれば,それは,定期預金が満期となるようなものである」と説明された旨を述べる。また,原告三森工業代表者の妻である甲山I代も,その陳述書(甲Ⅰ11)において,「お金はアサヒが出すし,連帯保証はオオタキジョウがするので心配はない」と説明された旨述べる。
他方,未山は,その陳述書(乙Ⅰ2)において,「母体が信頼できるので安心して買える」「値上がりは間違いない」といった趣旨の発言はしていないと述べ,証人尋問において,同趣旨の証言をする。原告三森工業代表者自身,未山の説明内容について「あんまり事細かな説明はなくて,ひとつおつき合いくださいませんかということぐらいでした」と述べており(原告三森工業代表者),その供述は具体性に欠けることは前記2(3)のとおりであり,これらの証言等に照らすと,原告三森工業代表者の供述等をもってたやすく未山の具体的な説明内容を認定することはできない。
念のため,仮に,未山が,本件会員権の購入資金は被告がローンで融資するし,大多喜城ゴルフ倶楽部が連帯保証すると説明したとしても,それは本件提携ローンの一般的仕組を述べたにすぎず,また,完済すれば,それは定期預金が満期となるようなものであると説明したとしても,それは据置期間経過後に預託金の償還請求ができるという預託金制度の一般的仕組を説明したにすぎないから,これをもって本件会員権の内容に関する断定的な説明と解することはできない。
したがって,未山が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告三森工業の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告三森工業の主張は採用することができない。
(3)  原告眼科器械のマキノについて
原告眼科器械のマキノは,申川が,原告眼科器械のマキノ代表者に対し,将来値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告眼科器械のマキノ代表者は,その調査報告書(甲45の2)において,「無借金経営のフジパンが作ったゴルフ場だから,心配ない」「自分たちも買っているし心配ない」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,「フジパンがやっている会社で安全なところだから買いませんか」と勧誘を受けた旨供述する。
しかしながら,申川が,原告眼科器械のマキノ代表者に対して,大多喜城ゴルフ倶楽部はフジパンの作ったゴルフ場である旨の説明をしたとは認められないことは,前記2(4)のとおりである。
また,申川は,その陳述書(乙Ⅰ3)において,本件ゴルフ場について「心配ない」と説明したことはない旨述べ,証人尋問においても,パンフレットをそのまま説明したので,フジパンのゴルフ場だから心配ないと言ったことはないと証言する。また,本件会員権は法人専用であること及び預託金3500万円という本件会員権の価格を考えると,申川が自分達も購入している旨の説明をしたとは考えがたい。これに加え,原告眼科器械のマキノ代表者自身,申川から本件会員権の説明を受けたときの言葉のやりとりははっきりしないというのであり(原告眼科器械のマキノ代表者),これらの諸点に照らすと,原告眼科器械のマキノ代表者の供述等をもって,申川が,原告眼科器械のマキノ代表者に対し,本件ゴルフ場について心配ないと説明したと認めることはできない。
したがって,申川が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告眼科器械のマキノの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告眼科器械のマキノの主張は採用することができない。
(4)  原告高梨について
原告高梨は,酉谷が,原告高梨代表者に対し,資産価値が堅実であり,かつ必ず大幅に上昇するゴルフ場と断言し,将来の値上がりが確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告高梨代表者は,その調査回答書(甲45の3)において,「フジパンがバックについているから間違いはない」「フジパンがバックについているので預託金返還は確実である」「億カンになるゴルフ場だ」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンのゴルフ場だから安心だよ,億カンになると説明されたと供述する。
しかしながら,原告高梨代表者の供述等をもって,酉谷が,原告高梨代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにある旨の説明をしたと認めるには足りないことは,前記2(5)のとおりである。
また,酉谷は,その陳述書(乙Ⅰ4)において,「預託金の返還は確実である」「億カンになるゴルフ場だ」ということは話していないと述べ,証人尋問においても,預託金の返還が確実であるとか,億カンになるというようなことは判断できなかったし,そのようなことは説明していない旨証言しており,この証言等に照らすと,原告高梨代表者の供述等のみをもってたやすく酉谷の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に酉谷が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,酉谷が原告高梨に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),酉谷が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告高梨代表者は,ゴルフにはあまり興味がない一方,会社の資金を有利に運用するという意味でゴルフ会員権に興味があり,本件会員権購入以前に既に別のゴルフ会員権を購入しており,当時のゴルフ会員権相場の状況についても理解していたのであるから(甲45の3,原告高梨代表者),原告高梨がゴルフ会員権の価格変動があり得ることを理解していなかったとは認められない。そして,原告高梨代表者自身,本件会員権の値上がりを信じた理由として「もちろんその当時バブル的なことはありましたから,酉谷さんも当然それを私に勧めたんだと思いますけど」と述べていること(原告高梨代表者)からすれば,酉谷が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,原告高梨代表者においても,ゴルフ会員権価格相場を背景に主観的な評価を述べたものであるという趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告高梨の任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることはできない。
したがって,酉谷が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告高梨の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告高梨の主張は採用することができない。
(5)  原告オーモリについて
原告オーモリは,被告本店担当者が,原告オーモリ代表者に対し,確実に値上がりするゴルフ会員権と断言し,将来値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告オーモリ代表者は,その調査回答書(甲45の4)において,「100%償還可能」「フジパンの経営で値上がりまちがいなし,償還も保証出来る」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,経営はフジパンが事実上やっているので間違いない,預託金の償還はフジパンがバックだから間違いないと説明されたと供述する。
しかしながら,原告オーモリ代表者の供述等をもって,被告本店担当者が,原告オーモリ代表者に対して,本件ゴルフ場がフジパンのゴルフ場だと説明したと認めるには足りないことは,前記2(6)のとおりである。
また,原告オーモリに対する本件会員権購入の勧誘当時,被告本店の営業係長であった戌沢T郎は,その陳述書(乙Ⅰ6)において,自らは原告オーモリに対する説明は行っていないものの,本件会員権購入の勧誘に際しては,あくまでパンフレット及び募集要項に記載されていることのみを話すよう指導を受けており,預託金償還の確実性や会員権の値上がりの可能性は説明していないと思う旨供述し,証人尋問においても同旨の証言をする。前記2(6)のとおり,原告オーモリ代表者の供述には,あいまいな点が少なくないこと及び証人戌沢の証言等に照らすと,原告オーモリ代表者の供述等のみをもってたやすく被告本店担当者の具体的な説明内容を認定することはできない。
念のため,仮に被告本店担当者が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,被告本店担当者が原告オーモリに対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),被告本店担当者が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告オーモリ代表者は,本件会員権購入以前に既に原告オーモリ及び代表者名義で別のゴルフ会員権を四つ所有しており,平成3年当時,それぞれが値上がりしている状況にあったことを認識していたのであるから(原告オーモリ代表者),原告オーモリ代表者がゴルフ会員権の価格変動により損失を被る可能性を理解していなかったとは認められない。そうであるならば,被告本店担当者が本件会員権の価格の値上がりの可能性について言及したとしても,これにより原告オーモリの任意かつ自由な判断が誤らされたとまでは認めることができない。
したがって,被告本店担当者が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告オーモリの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告オーモリの主張は採用することができない。
(6)  原告石川べつ甲製作所について
原告石川べつ甲製作所は,亥野が,原告石川べつ甲製作所代表者に対し,資産価値が確実で,必ず大幅に上昇すると断言し,将来の値上がりが確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告石川べつ甲製作所代表者は,その調査回答書(甲45の5)において,「バックにフジパンがついているので経営的にはまったく安全なゴルフ場だ」「金利以上に値上がりするのでこの投資はまったく有利である」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,富士カントリー出島倶楽部はもう完成してかなり上がっているんで,上がるのは間違いないだろう,最悪でも元金は間違いなく保証されると説明されたと供述する。
他方,亥野は,その陳述書(乙Ⅰ7)において,「安全なゴルフ場である」「有利な投資である」との説明はしていないと供述し,証人尋問においても,本件会員権の価格上昇や預託金返還の確実性については説明していない旨供述する。また,原告石川べつ甲製作所代表者は,本件会員権の購入について,義兄に相談したところ,「フジパンはとにかく大きい会社だし,名古屋のほうでは優秀な会社で,しっかりした,何個かゴルフ場も作ってるし。何か出島行ったらすごくいい,やっぱりフジパンのゴルフ場ですごくいいゴルフ場だ。フジパンが経営してるゴルフ場で,銀行さんが話持ってきたんなら間違いないから買っておいたほうがいいんじゃないの」と聞いたので,購入を決断したというのであり(原告石川べつ甲製作所代表者),この供述によれば,原告石川べつ甲製作所代表者が本件会員権を安全と判断するに当たって,義兄の説明が重要な役割を果たしたことが窺われるところ,原告石川べつ甲製作所代表者自身,勧誘を行った担当者は,フジパンの会社の内容については特に説明しなかったというのであるから,亥野自身が原告石川べつ甲製作所代表者に対して本件会員権を安全と説明したのかという点について疑問が払拭できない。これに加えて,原告石川べつ甲製作所代表者の供述に,あいまいな点があることは否定できないことは前記2(7)のとおりであり,これらの諸点に照らすと,原告石川べつ甲製作所代表者の供述等をもって,亥野が本件会員権について安全で有利な投資であると断定的に説明したと認めることはできない。
念のため,仮に亥野が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,亥野が原告石川べつ甲製作所に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),亥野が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,亥野が本件会員権の価格上昇について述べたとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,原告石川べつ甲製作所代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告石川べつ甲製作所の任意かつ自由な判断が誤らされたものとは認めることができない。
したがって,亥野が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告石川べつ甲製作所の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告石川べつ甲製作所の主張は採用することができない。
(7)  原告東京ロンについて
原告東京ロンは,甲川又は豊島町支店行員が,原告東京ロン代表者に対し,資産価値が必ず急激に上昇するゴルフ場と断言して,原告東京ロンの利益を保証し,将来の値上がりが確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告東京ロン代表者は,その調査回答書(甲45の6)において,「フジパンが経営しているので絶対安心して大丈夫です」「開場したら間違いなく5000万円以上になるでしょうから,当金庫で買い取るか又は販売先を責任もって引き受けます」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,同趣旨の供述をする。
しかしながら,原告東京ロン代表者の供述等をもって,甲川が,原告東京ロン代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営している旨の説明をしたと認めることができないことは,前記2(8)のとおりである。
また,甲川は,その陳述書(乙Ⅰ8)において,本件会員権の価格が5000万円以上になる,被告が買い取る旨の説明をしたことはない旨述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をする。原告東京ロン代表者は,本件会員権の購入を勧誘した者が誰であるのか定かではないと供述するなど,その記憶にはあいまいな点が少なくないことは,前記2(8)のとおりである。これらの点に照らすと,原告東京ロン代表者の供述等のみをもってたやすく甲川の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に甲川又は豊島町支店行員が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,甲川が原告東京ロンに対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),甲川又は豊島町支店行員が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告東京ロン代表者は,本件会員権購入の勧誘当時,既に別のゴルフ会員権を所有し,それが2倍程度に値上がりしていたという認識も有しており,また,自らゴルフ業界のことは知っているというのであるから(原告東京ロン代表者),原告東京ロン代表者がゴルフ会員権の価格変動があり得ることを理解していなかったとは到底認められない。そうであるならば,甲川又は豊島町支店行員が本件会員権の価格の動向について言及したとしても,これにより原告東京ロンの任意かつ自由な判断が誤らされたとまでは認めることができない。
したがって,甲川又は豊島町支店行員が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告東京ロンの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告東京ロンの主張は採用することができない。
(8)  原告海老原ゴム商会について
原告海老原ゴム商会は,申川が,原告海老原ゴム商会代表者に対し,資産価値が高い上に,すぐに急速に値上がりするゴルフ会員権であると断言し,将来の値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告海老原ゴム商会代表者は,その調査回答書(甲45の7)において,「利益を生む会員権です」「返還は必ずうけられる」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,3500万円の大変なローン代を上回る利殖になる,数年後に倍になると説明されたと供述する。
他方,申川は,その陳述書(乙Ⅰ9)において,値上がりは間違いない,預託金は必ず返還される旨の説明をしたことはない旨述べ,証人尋問においても,当時はバブルの一番いいときであり,ゴルフ会員権を必要とする人もたくさんいた時期で,ゴルフ場の紹介のために,倍に値上がりするとか,預託金の返還が受けられると言う必要は全くなかった旨証言をする。この証言等に照らすと,原告海老原ゴム商会代表者の供述等のみをもってたやすく申川の具体的な説明内容を認めることはできない。
もっとも,原告海老原ゴム商会代表者は,本件会員権購入の勧誘当時,ゴルフを趣味としておらず,本件会員権を専ら利殖のために購入したというのであるから(原告海老原ゴム商会代表者),申川が,本件会員権購入の勧誘に際し,本件会員権の値上がりの可能性に言及したことが窺い得ないではない。そこで,仮に申川が本件会員権の値上がりの可能性について言及したことがあるとして検討すると,申川が原告海老原ゴム商会に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),申川が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告海老原ゴム商会代表者は,本件会員権を専ら利殖のために購入したというのであるから(原告海老原ゴム商会代表者),申川が本件会員権の値上がりの可能性について説明したとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測を述べたにとどまり,原告海老原ゴム商会代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告海老原ゴム商会の任意かつ自由な判断が誤らされたものとは認めることができない。
したがって,申川が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告海老原ゴム商会の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告海老原ゴム商会の主張は採用することができない。
(9)  原告渋谷商事について
原告渋谷商事は,乙谷が,原告渋谷商事代表者に対し,資産価値が堅実であり,上昇も見込めると断言し,将来の値上がりが確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告渋谷商事代表者は,その調査回答書(甲71の1)において,「フジパンは安定した会社なので大丈夫」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,将来有望であると説明されたと供述する。
しかしながら,原告渋谷商事代表者の供述等をもって,乙谷が,原告渋谷商事代表者に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの子会社である,フジパンの系列であると説明したとは認めることができないことは,前記2(10)のとおりである。
また,預託金返還の可能性についても,原告渋谷商事代表者は,代表者尋問において,「預託金の返還は,普通10年とか15年に返還することはもうこれは常識ですので,当然返ってくるものと思いました」と述べるにとどまり,乙谷が,預託金返還の可能性について断定的な説明を行ったことを窺うことはできない。
さらに,原告渋谷商事代表者は,乙谷が将来有望であると説明したと供述するけれども,原告渋谷商事代表者の述べるところによっても,本件会員権につき被告が一定額での買取りを約束するとか,預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると,その意味するところは,被告が本件ゴルフ場を優良なゴルフ倶楽部であると評価していることを述べたものとみるのが相当であり,乙谷の行った説明が,本件会員権の安全性を過度に強調したものであって,原告渋谷商事が本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったとは認めることはできない。
したがって,乙谷が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告渋谷商事の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告渋谷商事の主張は採用することができない。
(10)  原告中根材木店について
原告中根材木店は,丙沢が,原告中根材木店代表者に対し,必ず預託金が戻ってくるゴルフ場と断言し,預託金の返還は確実であり,将来の値上がりも確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告中根材木店代表者は,その調査回答書(甲71の2)において,「下落しても15年後には預託金は確実にもどって来るから。そんな変な物は銀行は持って来ませんよ」「値上がりも確実ですから」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,「15年後には預託金は戻る」「何があっても戻る」「億になる」と説明されたと供述する。
しかしながら,原告中根材木店代表者の供述には,あいまいな点があることを否定できないことは前記2(11)のとおりである。また,丙沢は,その陳述書(乙Ⅰ11)において,預託金は15年後には確実に戻ってくる,値上がりも確実である旨の説明はしていない旨述べ,証人尋問においても,同趣旨を証言しており,これらの証言等に照らすと,原告中根材木店代表者の供述等のみをもってたやすく丙沢の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に丙沢が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,丙沢が原告中根材木店に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),丙沢が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告中根材木店は,本件会員権購入の勧誘当時,既に別のゴルフ会員権を有していたところ,その会員権は値下がりしており,原告中根材木店代表者自身,本件会員権は値下がりするかもしれないと思っていたというのであるから(原告中根材木店代表者),丙沢が本件会員権の価格上昇について説明したとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測を述べたにとどまり,原告中根材木店代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告中根材木店の任意かつ自由な判断が誤らされたものとは認めることができない。
さらに,原告中根材木店代表者は,丙沢が,預託金は何があっても15年後には戻ると説明した旨供述するが,仮に丙沢が会員権価格が下落しても15年後には預託金は返還されると説明したとしても,その範囲では預託金制度の一般的仕組を述べたにすぎず,これをもって断定的説明と評価することはできないし,丙沢が,この範囲を超えて,被告が本件会員権の預託金返還請求権の履行を保証するといったことまでも説明したと認めることはできない。
したがって,丙沢が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告中根材木店の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告中根材木店の主張は採用することができない。
(11)  原告東和エージェンシーについて
原告東和エージェンシーは,戊原が,原告東和エージェンシー代表者に対し,将来の値上がりが確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告東和エージェンシー代表者は,その調査回答書(甲71の3)において,「富士パンは名古屋一帯で営業し,大変な資産を持ち,無借金会社であり,ここが母体だから絶対心配ない」「第1次の縁故募集であり必ず近いうちに3倍にはなる」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,同趣旨の供述をする。
しかしながら,戊原は,その陳述書(乙Ⅰ12)において,フジパンが親会社なので絶対心配ない,必ず近いうちに3倍になる,値上がりも確実であると説明したことはないと述べており,証人尋問においても,ゴルフ会員権相場についてあまり知識はなく,値上がりの可能性について説明はしていないと証言しており,この証言等に照らすと,原告東和エージェンシー代表者の供述等のみをもってたやすく戊原の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に戊原が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,戊原が原告東和エージェンシーに対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),戊原が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告東和エージェンシー代表者自身,本件会員権購入以前に,原告東和エージェンシー及び代表者名義で既に別のゴルフ会員権を二つ所有していたところ,そのうちの一つは購入価格20万円のものが当時2000万円に上昇していたという経験を有し,本件会員権購入の動機として,縁故募集の場合には当時必ず値段が上がっていたので,本件会員権の値段も上がるだろうという利殖目的があったというのであるから(原告東和エージェンシー代表者),原告東和エージェンシー代表者がゴルフ会員権の価格変動があり得ることを理解していなかったとは認められない。そうであるならば,戊原が本件会員権の価格上昇について述べたとしても,これにより原告東和エージェンシーの任意かつ自由な判断が誤らされたものとは認めることができない。
したがって,戊原が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告東和エージェンシーの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告東和エージェンシーの主張は採用することができない。
(12)  原告島原建設について
原告島原建設は,庚田が,原告島原建設代表者に対し,絶対に安全であり,かつ将来の値上がりが確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告島原建設代表者は,その調査回答書(甲71の4)において,「フジパンなので絶体安全である」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンのやっているゴルフ場であり,2次募集において本件会員権の価格が3800万円になると説明された旨供述する。
しかしながら,原告島原建設代表者の供述等をもって,庚田が,原告島原建設代表者に対して,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係について説明したと認めることができないことは前記2(13)のとおりである。また,原告島原建設代表者自身,預託金の返還について説明はなかったと供述するのであるから(原告島原建設代表者),この点について,庚田が断定的な説明をしたと認めることはできない。さらに,庚田は,その陳述書(乙Ⅰ13)において,フジパンなので絶対安全であるとは話していない旨供述し,証人尋問においても,同趣旨の証言をするほか,その後の募集があるとは知らなかった旨も証言しており,この証言等に照らすと,原告島原建設代表者の供述等のみをもってたやすく庚田の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に己崎又は庚田が本件会員権の価格の動向や募集金額について言及したことがあるとして検討すると,庚田が原告島原建設に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),己崎又は庚田が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。また,縁故会員の募集の後の本件会員権の1次募集の金額は,預託金が4000万円,入会金が500万円の合計4500万円であったのであるから(甲45の4),仮に己崎又は庚田が本件会員権の1次募集の金額が3800万円となるだろうという予測を述べたとしても,その予測が不合理であったということもできない。
さらに,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告島原建設代表者自身,ゴルフ会員権の相場についてある程度知識はあったというのであるから(原告島原建設代表者),己崎又は庚田が本件会員権の価格上昇について説明したとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測を述べたにとどまり,原告島原建設代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告島原建設の任意かつ自由な判断が誤らされたものとは認めることができない。
したがって,庚田が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告島原建設の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告島原建設の主張は採用することができない。
(13)  原告タイキ工業及び原告ジェトルについて
原告タイキ工業及び原告ジェトルは,被告豊島町支店融資次長が,原告タイキ工業代表者に対し,預託金の返還は確実であり,将来の値上がりが確実であるゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告タイキ工業代表者は,その調査回答書(甲71の5,6)において,「フジパンが経営している様なもので市場で取引き出来る様になったら絶対上がる。有力なお客に損をさせる様な話しは持ってこない。フジパンがついているから預託金の返還については絶対安心」「フジパンだから絶対まちがいがなく,絶対損をさせない」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,有力な会社に損はさせない,損をさせるようなものは持ってこない旨説明されたと供述する。
しかしながら,原告タイキ工業代表者の供述等をもって,豊島町支店担当者が,原告タイキ工業代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営している旨を説明したと認めるには足りないことは,前記2(14)のとおりである。
また,被告豊島町支店における原告タイキ工業及び原告ジェトルの担当者であった巳下L雄は,その陳述書(乙Ⅰ15)において,自らは原告タイキ工業及び原告ジェトルに対する説明は行っていないものの,被告豊島町支店においては,本件会員権購入の勧誘に際しては,あくまでパンフレット及び募集要項に記載されていることのみを話すよう指導を受けており,預託金償還の確実性や会員権の値上がりの可能性は説明していないと思う旨供述し,証人尋問においても同趣旨の証言をする。前記2(14)のとおり,原告タイキ工業代表者の供述にはあいまいな点が少なくないこと及び証人巳下の証言等に照らすと,原告タイキ工業代表者の供述等のみをもってたやすく豊島町支店担当者の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に豊島町支店担当者が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,豊島町支店担当者が原告タイキ工業及び原告ジェトルに対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲Ⅰ17の8),豊島町支店担当者が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告タイキ工業代表者は,本件会員権購入以前に別のゴルフ会員権を二つ所有しており,そのうちの一つは250万円で購入したものが,平成2年当時2000万円から2500万円に値上がりしていたというのであるから(原告タイキ工業代表者),豊島町支店担当者が本件会員権の価格上昇について説明したとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測を述べたにとどまり,原告タイキ工業代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告タイキ工業及び原告ジェトルの任意かつ自由な判断が誤らされたものとは認めることができない。
したがって,豊島町支店担当者が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告タイキ工業及び原告ジェトルの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告タイキ工業及び原告ジェトルの主張は採用することができない。
4  争点1ウ(本件会員権の危険性に関する説明義務違反の有無)について
(1)  原告らは,富士カントリーが大多喜城ゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それら事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることや,今後のゴルフ事業には不確定要素が多く,預託金の将来の償還については危険性がある状況であったことを,被告は知り又は知り得たにもかかわらず,原告らにこれらの危険性を説明しなかった義務違反があると主張する。
しかしながら,金融機関の従業員が,その取引先等に対して融資を受けてゴルフ会員権を購入するように積極的に勧誘し,その結果として,当該取引先等がゴルフ会員権を購入するに至ったものの,自ら虚偽の説明や,不確実なものをあたかも確実な事実とする断定的な説明を行ったことにより当該取引先等の判断を誤らせたという事情は存在しない場合においては,当該従業員がゴルフ会員権の預託金の償還が見込まれないことを認識していながらこれを当該取引先等に殊更に知らせなかったことなど,信義則上,当該従業員の当該取引先等に対する説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情のない限り,当該従業員がゴルフ場運営会社の経営内容や預託金の償還可能性等について調査した上で顧客に説明しなかったとしても,それが法的義務に違反し,当該取引先等に対する不法行為を構成するものということはできないものというべきである。
(2)ア  これを本件についてみると,被告担当者は,本件提携ローン合意に基づき,原告高梨以外の原告らに対して本件会員権の購入を勧誘したものであり,原告高梨以外の原告らによる本件会員権の購入と被告からの融資は極めて密接な関連性を有していることは前記2(1)のとおりであり,また,乙Ⅰ1,証人午下によれば,被告の紹介によって取引先等が本件会員権を購入した場合,被告には,本件提携ローンの合意に基づく提携ローンの利用によって,大多喜城ゴルフ倶楽部の保証のもとに被告の融資が増加するという資金運用における利益のほかに,富士カントリーから被告に対して協力預金が行われるという資金調達における利益があったことが認められ,これらの事実は,上記の特段の事情を肯定する方向の一要素ということができる。
イ  しかしながら,証拠(甲120,甲Ⅰ14の2,甲Ⅰ16の6,甲Ⅰ17の2から8まで,甲Ⅰ18の5)によれば,昭和60年ころから,ゴルフ場の開発がブームになり,ゴルフ会員権の相場も高騰を始め,昭和63年ころから平成元年ころにかけては,さらに相場が上昇し,千葉県内のゴルフ会員権が数千万円で販売されることも珍しくない状態であったことが認められ,一部にゴルフ場の供給過剰を懸念する指摘もあったものの,本件会員権勧誘当時において,ゴルフ場を経営する会社の倒産やゴルフ場の開発の著しい遅延という具体的な状況が存し,社会的な問題となっていたという状況は窺うことはできず,一般に大多喜城ゴルフ倶楽部を含むゴルフ場運営会社が破たんするおそれがあると予見できる状況にはなかったことが認められる。
大多喜城ゴルフ倶楽部が民事再生手続開始の申立てをするに至った原因をみても,その主たる要因は,富士カントリー関係の海外ゴルフ場等への投融資が回収不能に陥ったこと,バブル経済崩壊後における経済不況の深刻化・長期化によって,会員権購入のためのローンの支払が困難となる会員が続出した結果,金融機関から大多喜城ゴルフ倶楽部への保証債務の履行請求が相次いだこと,本件会員権の相場の大幅な下落により会員からの預託金の返還請求が避けられない見込みとなったことによるものであり,いずれも,原告らが本件会員権を購入した後に生じたものである。
このほか,本件会員権購入の勧誘当時,大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーが,他のゴルフ場運営会社と比較して特に経営基盤が脆弱で預託金の返還の実行余力に乏しいと認識されていたとか,被告が大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーの将来における破綻を予測させるような事実又はその兆候を認識していたと認めるに足りる証拠もなく,これを予測することは極めて困難であったというべきである。
ウ  この点,原告らは,被告は,昭和62年ころから富士カントリーの関連会社に被告の出身者を出向させていたことから,被告は,富士カントリーが大多喜城ゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それらの事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることを知っていたか又は当然に知ることができたと主張する。
なるほど,証拠(甲6の2,3,弁論の全趣旨)によれば,昭和63年10月以降,被告における勤務経験を有する壬井F作,午山M郎,未川N介が,富士カントリートミオカクラブの取締役に交代で就任していることが認められるが,証人壬井は,本件会員権購入の勧誘当時,富士カントリーが,大多喜城ゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金をゴルフ場開発に使用すると考えており,海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出していたことは知らなかった旨証言しており,この証言に照らすと,被告における勤務経験を有する者が富士カントリーの関連会社に出向していた事実をもって,直ちに,本件会員権購入の勧誘当時,被告が大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーの将来における破綻を予測させるような事実又はその兆候を認識していたと推認することはできない。
以上のほか,本件記録を精査しても,被告が大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーの将来における破綻を予測させるような事実又はその兆候を認識していたと認めるに足りる証拠はない。
エ(ア)  原告三森工業について
原告三森工業代表者は,舞台機構製作据付を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,しかも,ゴルフを趣味とし,本件会員権購入の勧誘当時,別のゴルフ会員権二つを所有していたこと,未山から説明を受けた後,原告三森工業の経理を担当している妻の甲山I代と相談して自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたが,購入の決め手は,被告との関係を深めることであって,値上がりを期待したことはなかったこと,その当時,ゴルフ会員権のうち,会員が少ないところは値上がりするが,会員が多いところは値上がりしないという認識を有していたこと(以上の事実は,甲45の1,原告三森工業代表者)に照らすと,原告三森工業代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,未山が原告三森工業代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(イ) 原告眼科器械のマキノについて
原告眼科器械のマキノ代表者は,医療器具卸売販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,約10年のゴルフ歴を有しており,原告眼科器械のマキノ及び代表者名義で,別のゴルフ会員権を七つ又は八つ所有していたこと,ゴルフ会員権の仕組や会員権相場についての知識も有していたこと,申川から説明を受けた後,2か月程度考慮した上で,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,本件会員権を購入した目的として,長いつきあいでお世話になっている被告からの紹介もあったし,値上がりの期待もあったこと(以上の事実は,甲45の2,原告眼科器械のマキノ代表者)に照らすと,原告眼科器械のマキノ代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,申川が原告眼科器械のマキノ代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ウ) 原告高梨について
原告高梨代表者は,皮革製品製造卸を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者であること,ゴルフにはあまり興味がなかったものの,会社の資金を有利に運用するという意味でゴルフ会員権に興味があり,本件会員権購入の勧誘当時,既に別のゴルフ会員権を所有しており,本件会員権についても値上がりを期待していたこと,酉谷から説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲45の3,原告高梨代表者)に照らすと,原告高梨代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,酉谷が原告高梨代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(エ) 原告オーモリについて
原告オーモリ代表者は,建築資材及び鋼材の販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,年15回程度ゴルフをしており,既に原告オーモリ及び代表者名義で別のゴルフ会員権を四つ所有し,それぞれが値上がりしていることを認識していたこと,被告本店担当者から説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲45の4,原告オーモリ代表者)に照らすと,原告オーモリ代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,被告本店担当者が原告オーモリ代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(オ) 原告石川べつ甲製作所について
原告石川べつ甲製作所代表者は,べつ甲アクセサリー製造を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,亥野から説明を受けた後,ゴルフを愛好している義兄とも相談の上,本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,原告石川べつ甲製作所代表者)に照らすと,原告石川べつ甲製作所代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,亥野が原告石川べつ甲製作所代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(カ) 原告東京ロンについて
原告東京ロン代表者は,婦人フォーマルウェアの製造卸売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,ゴルフを趣味とし,本件会員権購入の勧誘当時,既に別のゴルフ会員権を所有していたこと,ゴルフ業界関係のことはかなり知っており,所有していたゴルフ会員権が2倍程度に値上がりしていることも認識していたこと,甲川から説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲45の6,原告東京ロン代表者)に照らすと,原告東京ロン代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,甲川が原告東京ロン代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(キ) 原告海老原ゴム商会について
原告海老原ゴム商会代表者は,医療理化学工業用ゴムプラスチック製造卸を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者であること,申川から説明を受けた後,2,3か月の考慮期間の後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的として利殖があったこと,原告海老原ゴム商会代表者自身,預託金返還は,ゴルフ場がつぶれなければ必ず戻るという信頼契約であるという知識はあり,つぶれた場合の危険性はもちろん考えたと述べていること(以上の事実は,甲45の7,原告海老原ゴム商会代表者)に照らすと,原告海老原ゴム商会代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,申川が原告海老原ゴム商会代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ク) 原告渋谷商事について
原告渋谷商事代表者は,不動産貸付を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,年に数回プレーを行っており,本件会員権購入の勧誘当時,既に別のゴルフ会員権を所有していたこと,乙谷から説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的は投資であったこと(以上の事実は,甲71の1,原告渋谷商事代表者)に照らすと,原告渋谷商事代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,乙谷が原告渋谷商事代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ケ) 原告中根材木店について
原告中根材木店代表者は,木材販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,既に別のゴルフ会員権を有していたところ,その会員権が値下がりしていたという経験を有していたこと,丙沢から説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲71の2,原告中根材木店代表者)に照らすと,原告中根材木店代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,丙沢が原告中根材木店代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(コ) 原告東和エージェンシーについて
原告東和エージェンシー代表者は,大型,中型トラック及び特殊車の新車及び中古車の販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,原告東和エージェンシー及び代表者名義で二つのゴルフ会員権を有していたこと,所有していたゴルフ会員権が大幅に値上がりしていることや縁故募集では当時必ず値段が上がっていることから,本件会員権についても値上がりを期待していたこと,戊原から説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲71の3,原告東和エージェンシー代表者)に照らすと,原告東和エージェンシー代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,戊原が原告東和エージェンシー代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(サ) 原告島原建設代表者について
原告島原建設代表者は,建設業を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,己崎及び庚田から説明を受けた後,ゴルフ場の支配人を経験した友人とも相談の上,本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的として会員権の値上がりを期待していたこと(以上の事実は,甲71の4,原告島原建設代表者)に照らすと,原告島原建設代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,己崎及び庚田が原告島原建設代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(シ) 原告タイキ工業及び原告ジェトルについて
原告タイキ工業代表者は,給・配水管清掃を主な業務とする会社(原告タイキ工業)及び配水管旋回洗浄の開発及びシステム販売を主な業務とする会社(原告ジェトル)を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者であること,本件会員権購入の勧誘当時,原告タイキ工業及び代表者名義で二つのゴルフ会員権を有しており,所有していたゴルフ会員権が大幅に値上がりしていることも認識していたこと,豊島町支店担当者から説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲71の5,6,原告タイキ工業代表者)に照らすと,原告タイキ工業代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,豊島町支店担当者が原告タイキ工業代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
オ  以上の諸点にかんがみると,本件において,信義則上,被告担当者の原告らに対する説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情を認めることはできず,被告担当者が大多喜城ゴルフ倶楽部の経営内容や預託金の償還可能性等について調査した上で原告らに説明しなかったとしても,それが法的義務に違反し,被告の原告らに対する不法行為を構成するものということはできない。
5  争点1エ(金融機関の優越的地位の濫用の有無)について
(1)  原告らは,被告担当者は,著名金融機関の行員としての社会的な信用に加えて,原告らとの継続的な銀行取引によって培ってきた信頼関係や,原告らの経営内容や資産状況などの内情を把握しているという点や,融資している若しくは今後も融資の可否を判断する立場という総合的な優越的地位を有しており,被告は,その立場を利用して本件会員権の販売を媒介したと主張する。
なるほど,金融機関が,顧客に対し,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,不利益な条件での取引を余儀なくさせた場合には,不法行為を構成する余地があるものと解すべきである(独占禁止法2条9項5号,19条及び一般指定14項1号)。
(2)  原告三森工業について
原告三森工業代表者は,その調査回答書(甲45の1)において,「この勧誘に乗って入金すれば,商取引も有利になるものと考えた。事実,借付もスムースに動くようになった」旨を述べている。
しかしながら,原告三森工業代表者は,代表者尋問において,「余りしつこくは勧められなかったと思います。つき合ってくれということは聞きましたけれども。だからおつき合いすれば,取引は深まるであろうというふうには考えました」と供述するにとどまり(原告三森工業代表者),原告三森工業代表者の供述等によっても,未山が,本件会員権を購入しなければ融資をしないとか,既存の融資の早期返済を迫る等を述べたことは窺われないことに照らせば,原告三森工業代表者の供述等をもって,未山が,原告三森工業代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(3)  原告眼科器械のマキノについて
原告眼科器械のマキノ代表者は,代表者尋問において,取引銀行の勧誘ということで特別なものがありましたかという質問に対し,「やっぱり銀行の紹介ということで。もうほかのことだったら絶対買わないです」「今までの長いつきあいもありますし,お世話になっていますしね」と供述する。
しかしながら,原告眼科器械のマキノ代表者は,その調査回答書(甲45の2)において,「私のところは会社の内容もよいから,資金調達は全然問題ないからということで,再三に渡り勧められた」と述べるのであって,申川が,原告眼科器械のマキノ代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(4)  原告高梨について
原告高梨と被告との間において,本件会員権購入の勧誘当時,銀行取引がなかったことは,前記第2の1(2)エのとおりであり,原告高梨は被告の提携ローンを利用することなく,自己の取引銀行からの融資により本件会員権の購入資金を調達したというのである(原告高梨代表者)。そうであるならば,被告が原告高梨に対して取引上優越的な地位を有していたとは到底認められない。
(5)  原告オーモリについて
原告オーモリ代表者は,その調査回答書(甲45の4)において,「朝日信用金庫には金融機関(主力銀行)として大変御世話になっていた為度重なる勧誘を断るわけにいかず」「購入を決断した」「再三の勧誘により断り切れなくなりやむを得ず入会した」と述べ,代表者尋問においても「私は余り買いたくなかったんでございますけれども,一生懸命営業に来られて,将来間違いないということであれば,しょうがないかなという考えでございました」「取引銀行は,実質上朝日信金さん一本でございまして,諸般の情勢から,ますます銀行さんにはお世話にならなければいけないということも感じておりましたので,しょうがないかなという考え方で買うことにいたしました」と供述する。
しかしながら,原告オーモリ代表者は,代表者尋問において,「銀行さんと私どもの取引はケース・バイ・ケースで,それは断る場合もございますし,断らない場合もございます」とも供述しており,そのほか,原告オーモリ代表者の供述等によっても,被告本店担当者が,本件会員権を購入しなければ融資をしないとか,既存の融資の早期返済を迫る等を述べたことは窺われないことに照らせば,原告オーモリ代表者の供述等をもって,被告担当者が,原告オーモリ代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(6)  原告石川べつ甲製作所について
本件会員権購入の勧誘当時,原告石川べつ甲製作所のメインバンクは株式会社三和銀行であって,株式会社三和銀行との取引が年間約1億円であり,それに次いで,第一信用金庫との取引が年間約2,3000万円,大東信用金庫との取引が年間約1000万円であったのに対し,被告との取引は年間200万から300万円であったというのであるから(原告石川べつ甲製作所代表者),被告が原告石川べつ甲製作所に対して取引上優越的な地位を有していたとは到底認められない。
(7)  原告東京ロンについて
原告東京ロン代表者は,調査回答書(甲45の6)において,取引銀行の勧誘ということで特別なものがありましたかとの質問に対し,「それはありました」と述べ,代表者尋問においても,当時は他の大銀行とは取引してなかったので,次の事業展開をするのに,被告からもし断られたらできないという関係を心の中に持っていましたと供述する。
しかしながら,原告東京ロン代表者は,調査回答書(甲45の6)において,甲川又は豊島町支店行員から,「購入資金は通常の運転資金とは別途の枠ですから安心してご融資を利用して下さい」と説明を受けたと述べており,そのほか,代表者尋問においても,甲川又は豊島町支店行員が,本件会員権の購入の有無によって他の融資への影響を示唆したなどの事情は窺えないことに照らせば,甲川又は豊島町支店行員が,原告東京ロン代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(8)  原告海老原ゴム商会について
原告海老原ゴム商会代表者は,代表者尋問において「小さい私どもの企業ですから,銀行に世話にならなきゃならないかなと思って,圧迫感みたいなのがあって,おつき合いも必要かなと思った」旨述べる。
しかしながら,本件会員権購入の勧誘当時,原告海老原ゴム商会の年商は約3億6000万円で,利益率は約25パーセントであったところ,被告の原告海老原ゴム商会に対する融資額は約1000万円であって,他の都市銀行2行と同程度であったというのであるから(原告海老原ゴム商会代表者),被告が原告海老原ゴム商会に対して取引上優越的な地位を有していたとは到底認められない。
また,原告海老原ゴム商会代表者自身,代表者尋問において,勧められた商品を買わないと信用力が弱まるということが現実にあったのかという質問に対し,「現実にはございません。大体買わないですから,そういう話もなかったですから」と述べるのであって,申川が本件会員権購入の有無によって他の融資への影響を示唆したなどの事情は窺えない一方,本件会員権購入の動機として利殖の意味でおつき合いした旨述べることに照らすと,申川が,原告海老原ゴム商会代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(9)  原告渋谷商事について
原告渋谷商事代表者は,代表者尋問において,「一応断ったんですけど,無理にというか,強引に,押しつけられたと言えば押しつけられたんですけど,そういうことで承諾しました」旨供述する。
しかしながら,原告渋谷商事代表者は,本件会員権は将来有望だということで,投資目的で購入したのであり,そのほか,乙谷が,本件会員権の購入の有無によって他の融資への影響を示唆したなどの事情は窺えないこと(原告渋谷商事代表者)に照らせば,乙谷が,原告渋谷商事代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(10)  原告中根材木店について
原告中根材木店代表者は,その調査回答書(甲71の2)において,「いらないと言うのに何回もしつこく勧誘して来ました」と述べ,代表者尋問においても「かなり熱心に来まして,絶対大丈夫だから,いいゴルフ場だということで勧めてました」旨供述する。
しかしながら,原告中根材木店代表者は,代表者尋問において,丙沢は,「本当にまじめで自分からは余り冗談言わないんですけど,熱心なまじめな人でした」,何かものを強力に売り込むようなことをする人ではなく,「良心的な人でした」旨述べるのであり,そのほか,丙沢が,本件会員権の購入の有無によって他の融資への影響を示唆したなどの事情は窺えないことに照らせば,丙沢が,原告中根材木店代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(11)  原告東和エージェンシーについて
原告東和エージェンシー代表者は,その代表者尋問において,被告とは創業当初から取引があり,折に触れ当座の預金残高を増やしてくれという要請があったので,本件会員権を購入した理由には被告に対する義理立てもあった旨を述べ,付き合ってくれれば借入れの限度額も増やすという説明があった旨述べている。
しかしながら,戊原は,証人尋問において,提携ローンを利用してくれれば取引限度枠を増やすという説明をしたことを否定する証言をする。また,原告東和エージェンシー代表者の調査回答書(甲71の3)においても,創業当初からの取引年数が25年にもなる被告がいい加減な話を持ってくるとは思わなかったと述べるにとどまるのであって,これらの供述等に照らすと,戊原が,原告東和エージェンシー代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(12)  原告島原建設について
原告島原建設代表者は,その調査回答書(甲71の4)において,当時の状況について,「お願いしますの一点ばりであった」と述べ,代表者尋問において,取引銀行だから,購入しておいてもやぶさかではないと思った旨を供述し,本件会員権購入後には,被告からの融資枠が増えたというのであり,この供述等に照らせば,己崎及び庚田が,原告島原建設代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(13)  原告タイキ工業及び原告ジェトルについて
原告タイキ工業代表者は,その調査回答書(甲71の5,6)において,「朝日信用金庫をメインにしていましたので」「本店融資の次長でもある為に今後の取引関係も考えた」「朝日信用金庫へ無理に入会された」と述べ,代表者尋問においても,被告豊島町支店融資次長と面会した2時間,今後の融資にも影響がある旨言われ,今後の取引上うまくいかないとまずいと思い,最終的に買わなくてはならないという気持ちで申し込んだ旨を述べている。
しかし,原告タイキ工業代表者は,代表者尋問において,「借入れに支障が出るというふうに,私は判断しました」という供述に関し,「それは何か担当者がそんなことを言ったんですか」との質問に対して,「いや,言ってない。今後の取引関係にもいい方向になりますよという話はしてました」と回答し,「本当に次長さんが,取引を制限しますよとにおわせるようなことを言ったの」との質問にも「そういう悪いほうには言ってません。今後の取引にいい方向に動きますと」と回答するのであり,この供述に照らすと,豊島町支店担当者が,原告タイキ工業代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(14)  したがって,被告が金融機関としての取引上の優越的地位を不当に利用したものとは認められず,原告らの主張は,理由がない。
6  争点1オ(販売媒介行為の銀行法違反の有無)について
原告らは,ゴルフ場関係者の説明や勧誘など一切介在しない入会手続は,銀行法及び大蔵省の通達によって禁止されている銀行の目的外行為であり,その行為に対して協力預金という名のもとに対価が支払われていたから,違法であると主張する。被告は信用金庫であるから,銀行法が適用されることを前提とする原告らの主張はその前提を欠くものの,銀行法違反の主張は信用金庫法違反の主張と解し得るから,以下においては信用金庫法違反をいうものとして検討する。
被告担当者が,原告らの本件会員権購入に際し,原告らから大多喜城ゴルフ倶楽部に対する入会申込書を受領して大多喜城ゴルフ倶楽部に送付したこと,他方,原告らは,本件会員権を購入するにあたって,被告担当者から説明を受けたのみで,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が関与したことがなかったことは,前記第2の1(2)セのとおりである。
なるほど,信用金庫法は,53条1項において,預金又は定期積金の受入れ,会員に対する資金の貸付け,会員のためにする手形の割引及び為替取引の業務を行うことができると規定し,同条2項において,会員以外の者に対する資金の貸付けができる場合を規定し,さらに,同条3項において,前2項の規定により行う業務のほか,当該業務に付随する同条3項各号に掲げる業務その他の業務を行うことができると規定し,91条1項1号において,同法の規定に基づいて金庫が行うことができる事業以外の事業を行ったときは,その行為をした金庫の役員等は過料に処するとしている。そうであれば,同法において,銀行法12条に相当する他業禁止を直接定めた規定はないけれども,信用金庫法は信用金庫の他業を禁止していると解される。
しかしながら,本件において,被告自身はゴルフ場運営事業を営むものではなく,本件会員権購入の勧誘は,被告の業務そのものである融資契約の締結を勧誘する目的で行われたものであるから,本件会員権購入の勧誘行為自体は,信用金庫法53条3項が規定する付随業務とみることができないではない。
また,信用金庫法が,信用金庫の行う業務を制限した趣旨は,信用金庫に無制限の業務を許した場合には,その業務の内容及び遂行如何によって,信用金庫が多大な損失を被り,経営基盤を危うくする事態も想定されることから,信用金庫の行うことができる業務を一定の範囲に制限し,もって,信用金庫の経営の健全性を確保することにあると解されるところ,被告の従業員が本件会員権購入の媒介をしたとしても,直接,被告が何らかの債務を負担するものではないから,本件会員権購入の媒介をすることにより,直ちに被告の経営の健全性が損われるおそれがあるということもできない。そうすると,本件会員権購入の勧誘は,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者の関与がなかったとしても,信用金庫法の趣旨に違反するとまでいうことはできない。
さらに,原告らは,本件会員権購入の勧誘が,大蔵省の発出した通達に違反すると主張し,「普通銀行の業務運営に関する基本事項等について」(昭和57年4月1日蔵銀第901号)の別紙1「銀行経営のあり方」1(3)「社会的批判を受けかねない過剰サービスの自粛」中の「他金融機関への過度な預金紹介,顧客に対する金融商品以外の商品の紹介・斡旋,顧客が振り出した他店券の見做現金扱いによる不当な便益供与,顧客の印鑑及び押印済預金払戻請求書の預かりなど正常な取引慣行に反する行為,その他過当競争の弊害を招き社会的批判を受けかねない行為は厳に慎しむものとする。」との記載部分を指摘する。しかしながら,同通達が信用金庫に対して発せられたとは認められない上,同通達の別紙1は,平成4年4月30日に定められたものであって,本件会員権購入の勧誘当時には存在しないものであったから,原告らの主張は,その前提を欠くといわざるを得ない。
したがって,原告らの主張が信用金庫法違反をいうものであるとしても,被告の行った本件会員権の購入の勧誘が,信用金庫法に違反し,不法行為に該当するという原告らの主張は,採用することができない。
第4  結論
以上のとおり,被告の勧誘行為について違法性があるということはできず,その余について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がないから,これをいずれも棄却することとしし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鹿子木康 裁判官 小川雅敏 裁判官 進藤光慶)

 

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